02/04/19 第3回社会保障審議会児童部会議事録          第三回社会保障審議会児童部会議事録 時間   平成14年4月19日(金) 13:00〜15:00 場所   経済産業省別館1111号会議室 出席委員 岩男委員 阿藤委員 遠藤委員 大日向委員 柏女委員 津崎委員      服部委員 堀委員  松原委員 山崎委員  渡辺委員 ○岩男部会長  それでは、定刻になりましたので、第3回社会保障審議会児童部会を開催させていた だきます。本日は大変お忙しい中、御出席をいただきましてありがとうございました。 本日の委員の出欠状況、それから、事務局の体制で若干異動がおありになったようです ので、それに関して御報告をお願いしたいと思います。 ○皆川総務課長  本日は網野委員と無藤委員が所用により御欠席ということになっております。今、柏 女先生と遅れている先生方がおられますが、基本的には2名の方が御欠席ということで ございます。  また、この4月から事務局の体制が一部変わりましたので御紹介させていただきたい と思いますが、育成環境課長古川に代わりまして林が新任でございます。それから、児 童福祉調査官の安沢でございます。それから新任ではないのですが、組織の増設等に伴 いまして、蒲原児童手当管理室長が母子家庭自立支援担当の企画官ということで併任を かけてございます。それから、吉野少子化対策室長が、最近の情勢に合わせて子育てN GO地域調整官という任務も担うことになりました。よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  それでは、議事に入らせていただきます。前回は、渡辺委員と山崎委員から、「子ど もの状況について」ということで、大変密度の濃いお話をいただきました。本日は、大 日向委員と遠藤委員から「親・家庭の状況について」ということでお話をお願いをした いと思います。まず、大日向委員からお願いをしたいと思います。大体20分ぐらいお話 をいただければと思っております。では、よろしくお願いいたします。 ○大日向委員  恵泉女学園大学の大日向と申します。本日は、最近の親の子育て事情とその観点から 考えられる、今、必要とされている子育て支援のあり方について話をさせていただきた いと思います。  今日、私が提出させていただきました資料は、お手元のレジュメ3枚と「こころの科 学」の103 号です。「こころの科学」では、ちょうど育児不安をテーマとした特別企画 を組みまして、本来5月1日発行なのですが、事情を話しましたら、この会に合わせて 昨日刷り上げていただけたということで、先生方のお手元に1冊届けさせていただきま した。  私は、今日の親の子育て事情、特に育児不安に焦点を当ててお話しをさせていただき たいと思いますが、育児不安をまずどういうふうにここでは定義するかということから 御説明に入ります。レジュメのところにも書いてございますが、育児不安は子どもの成 長発達の状態に悩みを持ったり、自分自身の子育てについて迷いを感じたりして、結果 的に子育てに適切にかかわれないほどに強い不安を抱いている状態というふうに定義し て使わせていただきます。  今、育児不安を抱えている親が増えたといろいろ言われますが、しかし、私は、基本 的に育児不安を抱くこと、それ自体は余り問題ではないと考えております。なぜなら、 子育て、特に初めての子育てというのは、悩み、不安があってもある程度当然だろうし 、悩みや不安があるから、かえって自分の子育ての有り様を振り返ることもできますし 、ほかの方に子育ての知恵や援助を求める謙虚さを持つことにもつながるだろうと考え るからです。しかしながら、自分が直面している悩み、迷いを客観視したり、建設的な 方向に気持ちを転換することができないで、ただ漠然と不安感を募らせる状態に陥る。 その結果、子どもを育てるということに消極的になったり、嫌気が非常に強くなったり 、その反対に、不安をかき消すかのように、過剰と言わざるを得ないほど、子育てに異 様な熱意を注いでいる事例が昨今目立っております。  本日は主として、こうしたどちらかというと病理的な様相を呈するほどに不安を強め ている最近の親の状況について、その状況・背景と対策を考えてみたいと思います。こ れから御紹介いたしますデータは1993年から始めまして、現在も続けております調査で す。当初調査票の調査は約6,000 名でしたが、インタビューも同時に始めまして、現段 階で600名を若干超すお母さんたちに全国をまわって、インタビューをさせていただいて います。お母さんたちの悩みというふうに今申しましたが、育児に関して悩みを訴える 、不安を訴える親のほとんどが母親です。これが、今の子育ての実態を考える1つのヒ ントになると思います。育児の負担の大半を担っているのが母親だということが、育児 相談の背景からはっきりと見えます。そして、悩みの具体的内容ですが、母親たちはい ろいろな表現を使います。子どもの成長発達が平均値に比べて遅れているのではないか とか、子どものしかり方・ほめ方がわからないとか、聞き分けのない子どもにどう接し たらいいかとか、子育ての仕方で祖父母と意見が違うのだけれどどうしたらいいでしょ うか。さらには、子育てが辛い、子どもをかわいく思えない、私は母親として不適切な のではないでしょうか。こんな表現形態をとります。これは、ある意味でいつの時代も 繰り返されていた悩み、不安かもしれませんが、しかし、こうしたお母さんたちの悩み に耳を傾けておりますと、必ず母親たちは共通して「こんなはずではなかった」という 言葉を使います。  さて、それでは何が「こんなはずではなかった」ということでしょうか。レジュメの 1枚目の下の方に5つ挙げさせていただいております。1つは、イメージと実際の子育 てが余りにもかけ離れているということに戸惑います。それでは、どんなイメージを抱 いていたのかと言いますと、昨今若い女性たち、結婚前の女性たちは、結婚とか子育て に案外夢を抱いています。それは,例えて言いますと、子どもは本当に愛らしくて、我 が子を胸に抱いた母となった自分の姿は、聖母とまでは言わないまでも、美しいものと いうイメージ化をしております。こうしたイメージは、雑誌、映画等でよく展開されて いるものなのですが、これを現実と思ってしまう。それはなぜかというと、やはり、実 際の子育てを見る機会がなく育ってきたということが挙げられるだろうと思います。  もっとも、理想と現実がかけ離れているということは、私たち日常生活ではよくある ことで、そういうことに直面しても、理想を現実に合わせて変更していく柔軟な姿勢が あれば、それはそれでまた問題はないと思うのですが、そうした柔軟な姿勢をなかなか 持ちにくい。それはなぜかといいますと、2番目に書いてございますが、育児を1人で 担っている心身の負担感が非常に大きくて、自分を客観視できるような余裕がないとい うことです。それは、例えて言いますと、トイレに1人で入る時間もままならないとか 、本当にほっとする時間がない。そういう状況に置かれて、自分自身をあるいは自分が 置かれている現状を客観視するということはなかなか難しいのが現実です。さらに3番 目は、社会から疎外されるという不安感が、今のお母さんたちに非常に強いです。「誰 とも話すことがなく1日が過ぎていきます」とか、そういう生活を送っていると「私の 脳から言語が消えていくみたい」とか、「育児に明け暮れていると世の中から取り残さ れていくみたいでむなしい」、「誰々ちゃんのママとしか呼ばれない」、「私が私でな くなっていくみたい」こういう言葉を使って訴える母親たちの悩みといいますのは、い わゆる密室育児の状況に置かれて、家に閉じこもる生活を余儀なくされていることに起 因しています。幼い子どもを抱えてなかなか外出もままならない。視野がどんどん狭く なってきまして、ささいな子どもの言動、あるいは成長の遅速に過敏となって不必要な 不安を抱かざるを得ないということです。  もう一つ注目しなければいけない社会からの疎外感に関する不安で、今申し上げたの は子育て中の今の時点で感じる社会からの疎外感なのですが、それに加えて、子育てが やがて一段落するであろう数年後を見通したときに、自分自身の将来の生活に展望が持 てないという不安を持つ母親が非常に増えております。空の巣症候群と言われまして、 かつては子どもが巣立って、夫が仕事人間になる中年世代に入った女性たちが、自分に は何も残らないという悩みを訴えたのですが、今、若い世代の母親たちが数年後の空の 巣症候群を想定して不安感を強めているというのが現実です。  4番目、こうしたいろいろな辛い状況に置かれているのですが、周囲の方々、とりわ け夫の理解が得られないということです。夫がなぜ妻の窮状に気がつかないのか、いろ いろ理由はあるだろうと思います。長引く不況で職場環境が厳しくて、夫は妻の悩みに 耳を傾ける心身の余裕を失っているということも十分考えられます。それに加えて、" 母親が子育てに悩むなんておかしい。母親は育児が楽しいはず。女性は生来的に子育て の適性を備えているはずだ"。こうした母性観を信じて疑わない男性が、まだ日本の現 状では非常に多いということです。  そして5番目、自分自身がこんな人間だとは思わなかったという悩みです。今申し上 げたようないろいろな辛い経験を重ねていくうちに、ささいなことで声を荒らげたり、 ときには子どもをたたいたりする現実に直面するわけです。"私がこんなに怒りっぽい 性格とは思わなかった"。というのは、子どもを産んで初めて自分自身の性格がわかっ て、自己イメージが崩れていくという不安感です。そして、それは私もいつ虐待するか わからないというおびえにもなっています。  こうした不安をいろいろ訴える女性たち、母親たちなのですが、ここに共通した原因 があるだろうと思います。それが、レジュメの2枚目ですが、2つ原因を指摘したいと 思います。1つは、これまでも少し触れましたが、日本社会に根強い母性愛神話の弊害 です。母親なら立派に育児ができて当たり前とする母性観。これは、近代以降の「男は 仕事、女は家事、育児」という性別役割分業体制を必要とした社会的経済状況のもとで つくられた、いわば近代社会のイデオロギーであるということは、学問領域の世界では もう既に常識となっておりますが、一般的には、それは常識ではなく、まだまだ産む能 力を持つ女性は自動的に子育ての適性も備えているはずなのだという母性観を信じて疑 わない方々が少なくありません。それが、母親に育児負担感をどんどんどんどん押しつ けていくということがひとつ原因となっています。  さらに、この母性愛神話といいますのは、今、子育てに苦しんでいる母親たちの実情 を覆い隠してしまうだけではなくて、何か子どもに問題が起きたときに、育児の適性を 備えている母親がすべて育児を担ってきたではないか、子どもが何かを非行等で問題を 起こすと、それは、母親の子育てに問題があるのだという母親批判の声につながる傾向 は依然としてメディア等で繰り返しみられます。ですから、神戸の少年事件以来、母親 たちはちょっとたたいただけでも、今の私のしつけが、この子たちの将来を誤らせてし まうのではないだろうか、こういう恐怖の子育てをしております。さらには、虐待事件 の報道がない日はないといっていいぐらい虐待に対して社会の関心が高まっています。 ちょっと泣かせたということに対して虐待を疑られるのではないだろうかと、すべきし つけもできないところまで恐怖感を募らせている母親たちが出現しているのも、昨今の 特徴ではないかと思います。  それからもう一つ、育児不安の訴えの裏にある原因の2つ目としましては、効率性最 優先社会の弊害だろうというふうに思います。母親たちが訴える声の中に、こんな声が 昨今非常に増えております。「子どもがこんなにも聞き分けがないとは思わなかった」 。あるいは、「子育てがこんなにも評価されないとは思わなかった」という声です。今 の若い母親世代というのは、結婚して子どもを産み、仕事を辞める前までは男性と同じ ように職場で仕事をしております。仕事は厳しくとも、経済効率という物差しで努力の 成果を計ることができた。目標の達成感や満足感が得やすかったことでしょう。一方、 子育ての満足感も私はすごく大きなものがあると思うんです。ただ、仕事の満足感、達 成感とはやはりリズム感が違うでしょう。仕事上ですと、1か月、半年という目標を立 てて、プロジェクトを組んで、期間内に明確にその成果が得られる。でも、子どもとい うのは、同じことを何度も何度も繰り返すようにして、なかなか成長が見えづらい。成 長のペースが緩やかです。それに親が耐えられなくなっている。しかし、これは母親だ けの問題でしょうか。そうではなくて、今の日本社会全体の加速化現象としてとらえる 必要があるだろうと思います。  さらに、レジュメの3番目に移りますが、もう一つ新しい現象として注目しなくては いけないのは、今までは育児不安を訴える母親たちを紹介させていただきましたが、「 私は育児不安は全くありません」と言明する母親も一部で出てきております。タイプは 2つ分かれます。理想的で完璧な母親を演じている人たちです。よくいろいろ生活実態 を伺ってみますと、実はいろいろ問題があるのです。しかし、その問題を直視すること を避けるかのように懸命に育児をする。例えて言いますと、赤ちゃんが飲んでいるミル クの量を虫眼鏡で見なければわからないほど細かい字できちんと記録をつけ、ミルクを 飲む量の多寡で一喜一憂するとか、あるいは子どもの教育に全て徹底的に手づくりを貫 こうとします。手づくりもいいとは思いますが、度を超して、そこまでやったら息苦し くないかしらと心配になるくらいの手づくりに陥っている。あるいは、一週間にオフの 日が1日もないくらいにびっしりと塾、おけいこごとのスケジュールを組んで、子ども に塾通い、おけいこ通いをさせている母親たちです。一見懸命に子育てに励んでいます 。問題は見えないのですが、その裏に"立派に子育てをしなくてはならない、子どもの 成長が私自身を評価してもらえる一種の通信簿だ"と思い込んでいる息苦しさがかいま 見られます。もう一つは、そうした息苦しさが背景にあったのだろうと思いますが、" よい母親を演じる必要などない、子どもと相性が悪い母親がいたって当然"という、あ る種露悪的と思えるほどの言動をとりまして、今申し上げた理想的で完璧な育児を演ず る母親とは対象的に、育児放棄と見えるような言動をとる母親もいます。例えば、食事 もほとんどつくらなかったり、深夜までカラオケで子どもを床に寝かせたまま遊び興じ ていますが、自分がリフレッシュすることが育児には必要だというようなことを理由と して、そうした行動をとる母親たちも見られるようになってきております。いずれも率 直に育児の悩み、不安を訴えないだけに、抱えている問題もまた一層根の深いものがあ るだろうと思います。  さて、こうしていろいろお話させていただきました今の母親たちの現状に対して、ど ういう支援が必要かということで2ページ目の後半、3というところにまとめさせてい ただきました。1つは、悩むことへのエールを送りたいと思います。育児不安を抱くと いうことそれ自体は、冒頭でも申し上げましたが、決して病理ではない。それなのに悩 んでいるということ自体を問題視する風潮が、やはりあるのではないだろうか。その背 景には、母親というのは育児は悩まないものという母性観があるとしたら、ここからや はり解放されなくてはいけない。悩むことがあって当然、「悩むことに悩まないで」と いうメッセージを支援の基本的な視点とする必要があると思います。そして、じっくり と耳を傾ける、周囲の方々のそうした配慮が必要だと思います。いろいろな育児相談を させていただいていすが、母親たちは話すことでいやされていきます。話すことである 程度自分で解決の道を見出す母親たちも少なくないということです。そうしますと、支 援側にやはりそれなりの聞くための力量、専門性が必要だという2番目のことになって くると思います。今、子育て支援ということがあちこちで言われ始めております。なお のこと、支援側の専門性の向上に力を入れることが必要だと思います。  そして、3番目。これは、今まで育児不安に陥る原因等いろいろ話をさせていただき ますと、やはり、育児に閉じ込められている女性と仕事人間となって育児・家庭生活に 十分関われない男性のひずみというのが明確ではないだろうか。性別役割分業を前提と した社会構造の改革の必要性につながると思いますが、母親の社会参加支援、そして父 親の家庭参加支援ということが必要だと思います。こうした支援は各地で実はいろいろ な動きが日本でも起こっておりますが、それを十分御紹介する時間もございません。諸 外国の例の一つとしてニュージーランドのプレイセンターを3枚目のレジュメにまとめ させていただきました。そして、この例は、お配りした「こころの科学」の84ページに も写真等つけて紹介をさせていただいております。  84ページです。ニュージーランドはいろいろな子育て支援機関というのがございます 。その中で50年余の歴史を持ち、既にニュージーランド全国に523 か所プレイセンター というのがありまして、0歳〜5歳の子どもたち約1万6,000 人が通っているセンター があります。このニュージーランドにおける子育て支援の基本的な視点というのは、保 護者も子どももそれぞれが多様な保育的・教育的要求を持っているのだから、多様な要 求に最大限応えることが必要だということです。そして、今私が最後に女性の社会参加 ということを申しましたが、ニュージーランドの子育て支援は、その根幹に女性の社会 参加を推進するということを明確にうたっております。その歴史的経緯は「こころの科 学」の中に書いてありますので、後でお読みいただければ幸いです。  さらに、プレイセンター活動のもう一つの基本的な理念は、"初めから立派な親はい ない。子育て支援というのは実は親育て支援なのだ。そして、その親を育てるというこ とは、お母さんだけを対象とすることではなくて、家族全体で育ち合う"ということで す。当然そこには、お父さんも参加できるようなプログラミングが工夫されています。  そして、3番目なのですが、政府等の支援が非常に徹底していることです。子育て支 援は親育て支援だという理念は、センターの運営、補助金にも反映されております。プ レイセンター連盟はニュージーランド政府に教育訓練提供機関として登録されておりま す。これは親たちが自主的に施設の運営から管理、そして子どもと遊ぶことまで全部や るわけなのです。それに対して政府から、幼児教育のための助成金と生涯学習のための 助成金が出ております。これはどういうことかというと、子どもの発達を支援するため に幼児教育からの助成金が出る。一方、親育てということで、生涯学習から助成金が出 ているということです。  さらにもう一つ大切なことは、先ほどプレイセンターの活動は50余年の歴史があると 申しました。長年かかって親育ての綿密なプログラムができているということです。そ の一つとして、全国共通の保育カリキュラム〜Te Whariki(テファリキ)〜というもの がありまして、これも世界的には随分評価の高いものですが、このテファリキ作成の課 程にも先ほど申しましたプレイセンター活動の基本的な視点である保護者、子どもの多 様な教育的、保育的要求に応えるということ、そして親育てということを子育て支援の 前面に出しているということがカリキュラムの中にも随所に見られるということです。  大変急ぎ足でお話させていただきましたが、ちょうどちょうだいした20分がまいりま したので、このあたりでとりあえずお話を終わらせていただきたいと思います。ありが とうございました。 ○岩男部会長  どうもありがとうございました。御質問は遠藤委員のお話が終わってから後でまとめ てということでお願いをしたいと思います。  それでは、遠藤委員にお願いをいたします。 ○遠藤委員  では引き続きまして、遠藤の方から発表させていただきたいと思います。私は現在、 山梨県立看護大学で、母性看護学と助産学の担当の教員として勤務しております。本日 は、助産師という立場から親、家庭の現状について山梨県という非常にローカルな地域 の中から具体的なものをデータとして持ってまいりましたので、そのお話をさせていた だきたいと思います。               (スライドによる説明)  まず、このデータに関しましては、最近3月に発行されました日本子ども家庭総合研 究所、愛育研究所から日本子ども資料年鑑というものが毎年出ておりますが、その中か ら引用したものでございます。現在、母親の心身状態が「心身ともに快調だ」と答えて いらっしゃるお母様方というのは、平成2年に73%だったものが、平成12年では64%に なっています。育児に関する自信に関しましては、先ほど来丁寧なお話がございました が、総論的に言いますと、「自信が持てない」、あるいは「育児に困難を感じる」とい うお母様方が12年では3分の1ぐらいいらっしゃいます。「何とも言えない」という方 が3分の1いらっしゃいますので、その6割以上の方がとても日常的に育児に対して自 信が何となく持てない。さらに虐待感を持っているかどうかをみますと、「子どもを自 分は虐待しているのではないか」というお母様方は18%、また、「虐待しているのかど うか何とも言えない」という方が16%ぐらいいるというデータが出ております。また、 お母さん自身が、「ご自分の時間がある」と答えられた方は平成2年に73%だったもの が、平成12年には68%と非常に主観的な時間ということになりますが、減ってきている という実態が出ておりました。  一方、父親の方は、「心身ともに快調である」というふうにおっしゃった方が平成2 年に73%であったものが、平成12年では62%ということで、父親自身も非常に健康感に 関しては下がってきている状況です。父親の家事参加に関しまして、「よくやっている 」という父親が12%、「時々やっている」という父親が38%。一方、育児に関しては「 よくやっている」というお父様方が37%、「時々やっている」という方が45%というこ とで、今までのデータと比べますと、若干上がっているような形ですが、これも非常に 主観的な時間というふうにとらえております。母親の精神的支えになっているかという ことでは、「なっている」というふうに答えていらっしゃるお母様方が65%いらっしゃ る。「なっていない」という方が7%、「何ともいえない」という方が24%ぐらいいら っしゃるというデータが出ておりました。これらのデータに関しましては、ひとまずこ こで置きまして、そういうお父様やお母様の実態の中で、私が助産師として母子保健法 という法律が我が国の中ではございますけれども、その中に新生児訪問という条文がご ざいます。これは、所内では市町村であったり、従来ですと保健所も行っていたのです が、そういうところで乳児相談であるとか、新生児相談を行うともありますが、必要に よって医師、保健師、助産師またはその他の職員をして保護者を訪問して必要な指導を 行うということができるという条文がひとつあります。これは、新生児だけでなく、乳 児になっても引き続いて行えるわけです。このことに関しまして、従来は子どもが地域 の子どもというあたりでは、新生児訪問が日常的に助産師によってなされていた頃もご ざいましたけれども、非常に身近に新生児訪問が減っているなという実態を感じており ます。そこに焦点を当てながら少し検討をしてみました。  まず、ここに示しました数値は、妊産婦保健指導数、乳児保健指導数でございますが 、平成8年に出生が約120 万ございますが、その中で「妊婦相談を受けた方」が36万件 、大体25%ぐらいでしょうか。そして、「産婦相談を受けた方」が12万人ぐらいですの で10%ぐらい。平成9年というのは、いわゆる地域保健法というものが施行されまして 、母子保健が今まで保健所等で機能していたものが市町村に、住民の身近なところで、 もっと身近なサービスを直接的に受けるという趣旨のもとで、母子保健事業のかなりの ものが市町村に移管されました。そうしますと、出生数が平成9年は119 万、約120 万 でございますが、乳児の指導が平成8年の90万から51万という形で、これは数値上か らも明らかに減ってきております。これは市町村のデータですので、保健所に関しまし ては今までやっていたものがほとんどやらなくなってきておりますので、相談数として は非常に減ってきております。相談する窓口が減り、相談者数が減ってきているという ことになるかと思います。  同じように、妊婦・産婦も若干減っております。行政指導で市町村の主体性というこ とを訴えて、平成10年になりますと、その数値は若干回復してきているものの、妊婦さ んで出生120 万のうち現在でも4割ぐらいの方しか実際に保健指導のチャンスがない、 あるいは産婦に至っては約1割強ぐらい、強くみても15%くらいだと思います。さらに 乳児に関しましては、平成10年も67万件ございますので、約半分強という実態です。保 健指導の機会があるというふうにとらえていただいて結構かと思います。  そうしますと、今のような保健指導とか、訪問指導を実際的にお母様方が御存じなの かどうか、実際にどのくらい受けたのかという調査もございます。これは厚生労働省の 監修されています母子保健の主なる統計の中に出ておりますが、平成8年のデータだと 思いますが、総数の一番上の右側の妊娠中の訪問指導というところを見ていただきたい と思います。妊娠中の訪問指導、「知っていた」という方が24%、「知らなかったとい う方」が73%という数値になっております。さらに、それを妊娠中の訪問指導を受けた かどうかというのに至っては、「受けた」が4.6 %、「受けていなかった」というのが8 6.6%、あとは無回答です。出産後の訪問指導を知っていたかということを、これは出 産後ですから母子両方の訪問対象になりますが、「知っていた」というのが67.8%、「 知らなかった」というのが30%、恐らくこちらの妊娠中と出産後のこの違いは、病産院 等でそういう制度についての紹介等あるから知っていらっしゃる方は非常に増えてはき ています。実際に受けたかどうかに関しましては31.9%というような状況になっており ます。  さらに、これは不安や悩み、指導を受けるという方々が不安や悩みがどういうものが あるかと、まず、不安や悩みがあったというのは、あって当然というお話が先ほど来ご ざいましたが、本当にあって当然だと思います。88.6%の方は当然「ある」というふう にお答えになっていらっしゃいます。その中身を聞きますと、「御自分自身の健康」に 関しては34.6%ですが、「子どもの健康・発育」が76.2%、それから「出産における痛 みや恐怖感」というのは49.6%、「育児に自信が持てない」というのが11.9%という実 態でした。これを初めて子どもさんを持つ、第1子をお産されたお母さん方に聞きます と、若干不安や悩みがあったという方も増えておりまして91.9%、その中には「子ども の健康・発育」の不安が78.2%、「出産における痛みや恐怖感」というのは60%にも上 っております。「育児に自信が持てない」という方も当然先ほどの数値よりは少し上が りまして15.1%というデータが出ております。  そのような背景を踏まえまして、私どもでは従来、保健指導であるとか訪問指導は市 町村が窓口にならなければならないシステムをもう少し自由な形で支援できないだろう かということで、現在主に在宅医療をしていらっしゃる老年の方とか、あるいは病気を 持って自宅で在宅医療をなさっていらっしゃる方にケアを提供しています訪問看護ステ ーションというのがございますが、加えて子育て支援事業もできないだろうかという形 で訪問看護ステーションに看護職員を配置し、母子の訪問看護を通して地域での子育て 支援の方向性を見出すという形で平成12年に事業を展開いたしました。  その事業の内容は5つございましたが、ここでは調査をしたその結果を報告したいと 思います。この事業自体は、本人の希望等も考慮しながら、通常新生児に関しての訪問 指導は、市町村から訪問に行く、あるいは市町村の委託を受けた助産師が訪問に行くと いう、市町村からの契約によるルートが普通です。今回は市の保健師より出生連絡票を 訪問看護ステーションが委託を受けるような姿を想定して、そのルートが1つ。それか ら、里帰り等が非常に多うございますので、そういう場合には市町村から抜けてしまい ますので、直接病院から電話をステーションに行くルートが1つ。さらには、病院等に リーフレットを置いておきまして、そこで見た母親が直接アクセスする方法が1つとい う、この3種類の方法どれでもいいということで、訪問をして、その結果は居住地の保 健師に報告する、あるいは病院に報告するというルートをたどりました。これは行って いる助産師とお母さんの写真です  そこで、12年度の事業でございますので、12年7月〜13年の1月までにこの事業を受 けた母親147 名に調査をいたしました。119 部の回答で報告をさせていただきます。こ こでは、初産婦さんが73.1%、分娩様式では「普通のお産」が84.9%、「帝王切開」15. 1%ですが、大体このくらいがどの地域も標準値だと思っております。「有職者」は19. 5%でした。子どもは39週で生まれて三千ちょっとくらいの平均体重です。「核家族」が 80.7%という状況でございます。退院後の生活は、実家に帰られていらっしゃる方、こ れはお母様の実家ですが、61.3%と73名、非常にたくさんの方が里帰りという、まだま だ多い状況を示しております。「夫の実家」にも6.7 %、合わせますと3分の2は、産 褥1か月ぐらいは実家にいらっしゃる姿というのが見えてくるかと思います。「退院後 の心配なこと、困ったことがあった方」は89.9%でございます。  ちょっと小さくて見づらくて申しわけございませんが、濃い紫の方が訪問に行った時 期までに困ったことがあったかどうかという内容で、紫の方が訪問したときにどのよう なことの相談を受け、どんな支援をしたかということでございますが、訪問に行ったと きには助産師が訪問するものですから、当然お母様自身のことですと乳房トラブルとか 母乳に関してというような援助が非常に多いのが特徴でございますが、これまでにどの ような心配事があったかということに関していいますと、睡眠が「非常に眠れない」、 あるいは「睡眠感が得られない」、「疲れている」、「涙もろくなった」、「イライラ する」というふうな、あるいは「腰痛や肩こり」といったようなお産後直後のマタニテ ィブルーズと言われているような状況というのが出産直後にあることがうかがえます。  赤ちゃんのことでは、訪問したときにはどのようなことがあっただろうかということ では、湿疹であるとか、おむつかぶれであるとか、ほ乳の状態が心配であるとか、体重 が増え過ぎるとか足りないとか、そういったことが訪問時の悩みでございます。それま での状況においては、新生児訪問ですから、その時期に応じた悩みというのが非常に多 いかと思いますが、泣いているとか、寝ないとか、吐くとか、目やにが出るとか、皮膚 がかさかさしているとか、おへそが何となくじゅくじゅくしているとか、そういった状 況でございます。  そして、特に出産後1か月くらいは母乳量が安定しないものですから、どのくらいミ ルクを足したらいいかわからないというふうな、非常に赤ちゃんの栄養に関しての質問 が非常に多いものですから、栄養に関して挙げたものですが、ここはちょっと省略させ ていただきます。  では、今のような悩みはどのくらいの時期に訪問したのかといいますと、第1回目の 訪問を受けた時期というのは、この紫の時期を示しておりますが、出産後1週間以内の 訪問で、非常に早い時期にこのモデルは訪問をしております。最近では、入院期間が非 常に短くなってきております。4日ぐらいで帰りますと、とても母乳も安定しませんし 、赤ちゃんにも不慣れな状況ですので、そういう方は即行くということを心がけて19.4 %の方が1週間以内、大体退院されて1週間以内、生まれて2週間以内、このあたりが 母親の疲労のピークになるものですから25%、あるいはもう1週間追加したぐらいのと ころで26.9%というような状況で、とにかく早い時期に行く、即必要なときに行くとい うことをやっております。主としてそこで問題が生じて2回目の訪問をまた続けていつ の段階に行ったかという状況ですが、これは恐らく今までのシステムだと4週間でよう やく行けたとか、1か月以降でないと行けないとかというデータが非常に多い中で、画 期的な状況だと思っております。  そして、伺ったことによって母親自身はどんな反応を示していらっしゃるかといいま すと、聞いてもらって本当に安心した、困ったことを教えてもらったとか、わからない ことを教えてもらったということもありますが、いろいろと相談に乗ってもらった、話 を聞いてもらえた、それから自分だけでなくてほかの人のもそうなのだということを支 援者を通して聞けたと、そういったことです。特にこれといってないが来てもらって安 心したというような方ももちろん16.7%といらっしゃいました。  その特徴的なケースを3例程、御紹介をしたいというふうに思っております。まず、 実家の一室でこもっていた初産婦さんというのは、産後実家に帰られたのですが、お寿 司屋さんを経営していらっしゃって、実家には帰られたけれども非常に忙しいと。そう いう中である部屋にこもっていて、自分でしなくてはいけないというふうに思っている こと。それから、自分ではできるはずだということで、食事もとにかく自分のペースで したいから部屋へ運んできてもらって、我々は実家に帰ったのだからみんなで暮らして いるだろうというふうに通常思いますが、その部屋にこもりっきりで、二人で赤ちゃん に向き合いながらお母さんが育児をしていた。そうすると、訪問した助産師は、行った ときにお母さんが、ぐずぐずしていてとても気になって一日中泣いている。ああ、寝た い、もうノイローゼ状態だ、最初は可愛くて声をかけていたが、今は声もかけたくない というような状況で、行ったら母親に泣かれていた。子どもが泣くということを聞く中 で、そんなに一人で頑張らなくても、みんなあなたが子どもを産んだということをとて も喜んでいるし、みんなで育児するということで生活空間を広げながら調整してきたと いうようなケースだったということです。実家にいれば安心だなどというふうに思って はいけないのだということを学んだケースでした。  それから2例目の出産時の状況が育児に影響をしていた初産婦といいますのは、出産 のときに破水という状況があるのですが、それが普通の破水よりもちょっと早い時期に 破水をしていらしたものですから、羊水が感染を起こして少し濁っていたというふうな 状況で、余り長くその状況で保ちたくないので、お産も促進という形で少し誘発するお 薬を入れてお産をして、専門的になってしまいますが、赤ちゃんはアプガール8点とい う、そう悪くはないですけど、満点ではないというくらいの状況だったのですが、一応 生まれたときに多呼吸ということで呼吸もちょっと早いので、保育器に入れて様子を見 た。お母様の方はとてもそのことを心配していたのですが、医療者側からいうと、完全 に正常分娩ではないけれども、少し抗生物質の投与をして観察をすることで、5日目の 退院で親子一緒に退院できたというふうな状況で退院されたのですけれども、お母さん はその状況というのが結局十分理解できずに、帰って育児をしているときに、泣くのも 破水が影響をしているのではないかとか、あるいは、ほ乳力が弱いのも、もしかしたら それが障害になっているのではないかという形で、今後の発育不安を非常に心配されて いたというのが訪問によってわかったケースでした。普通でしたら入院中にそのことを 医療者の方に言っていただければ、それで済む話なのですが、なかなか言えずに産後ず っと引きずっているというふうな状況があったそうです。訪問して3時間くらいその話 を聞いて、とにかく今この赤ちゃんはとても元気なのだということ、授乳の状態も普通 であるし、反射等も一緒に見ながら大丈夫だということを説明しながら、2日後にまた 訪問したら、同じ状況だけれども、前は同じ状況を見ても悪いと思っていたのが、これ でいいんだというふうに思えるようになってきた。訪問した助産師は、出産のことをこ れだけ気にしていらっしゃるのですから、病院の方にフィードバックして話を聞くチャ ンスをつくって、もう一度病院に照会して話ができて、安心してその後の育児に向かえ たというケースでした。  もう一つのケースは、上に子どもさんがいらして、敷地内に御両親と住んでいらっし ゃるのですが、いわゆる上の子どもがおじいちゃん、おばあちゃんになついていて、す ぐそちらに行ってしまうということで、上の子どもは私が嫌いなんだと、おじいちゃん 、おばあちゃんの方が好きなんだというふうなことから、下の子どもが生まれて忙しい こともあって、子どもが近寄ってきたら上の子をついつい叱責してしまうというふうな ことを悩んでしまっていたケースです。おじいちゃん、おばあちゃんと一緒にうまく暮 らすということとか、そういうふうに思わなくても、子どもの親はあなたしかいないと いうふうなことを話の中で納得できていたケースです。行ってみなければ、なかなか実 態が見えないケースがあるということを学びました。  以上のような結果を踏まえ、本日のまとめとしまして何を感じたかということをまと めたいと思います。  1点目は、年々育児の困難感とか不適応と感じるお母さん、お父さんは増加している ということをまず一つ感じております。  2点目に、それはあるリスクのある群というふうな状況ではなくて、特定な母親、家 庭に育児困難があるわけではなくて、すべての人に育児の悩みというのはあるという前 提に立たないと、スクリーニングすると、そこである人、ない人というのを分けて援助 できるということではもうないというふうに思っております。  3点目には、育児の伝承の場が明らかに変わってきているということで、結婚したら 新しい家庭を持つのは当たり前と思っていましたけれども、最近子どもの数が少なくて 、その子どもが親になっていくときに、パラサイトシングルというふうな状況ございま すが、それの延長線で里帰りが非常に多いというのを申し上げましたが、結局、里帰り したまま帰っていらっしゃらないということで、一、二か月いるのは当たり前、場合に よっては1年も実家にいる親がいるということも実態で、そのことで育児困難感がなく なるかというと、そうでは決してありません。それから、核家族の実態というのは、数 的には圧倒的に多いですから、そこを踏まえた支援をしなければならないだろうという ふうに思います。  4点目に、出産というものに対して育児の出発点というところで、産むことに対して 先ほど不安や悩みがあるという、初産婦さんに至っては60%もあるということを申し上 げましたけれども、不安や悩みはあるのですが、出産された後、自分が産んだことへの 誇りとか、自信とか、出産の納得というのをやはりきちんとしておかなければ、育児に 関して非常にしこりを残すということを考えております。  5点目に、必要なときに必要な支援ができるという、時の重要性、これは非常にポイ ントになるだろうと思います。  そして6点目、些細なことの重要性ということで、他人から見るとどうということは ない。自分もこんなことぐらいやれなくてはという些細なことが、マタニティブルーズ あるいは産後のうつ病等にも些細なことの積み重ねとして出てまいります。子育てには 非常に大事な視点だと思います。  7点目に、現実を避けると孤立感は強まりますので、とにかく現実を受け止めていく 、現実を見て、それを一緒に支援するということを支援者側から支えなくてはいけない というふうに思います。  8点目には、援助を受けて、そういう支援を受けて初めて感じられる他者からの思い やりという、そのことが実は育児に関しては自分の行動と非常に密着に関係ありますの で、そのときというのは親としての成長、自分自身の価値観の変容にもなりますし、い ろいろな価値観を認めることにもなります。そういう支援や援助を受けられるというこ とがまず大事なことであります。妊娠、出産、育児期の特に初期というのは変化できる 時期であるということで、この時期は親もアクセスしやすいですし、分娩が99.8%施設 内で行われる、あるいは母子健康手帳をほとんどの方が市町村の窓口でもらうという接 点がものすごく多いこの時期を変化できる時期というふうにとらえています。ぜひとも 「健やか親子21」で妊娠、出産の安全性と快適さという一本の柱がございますが、地域 保健法で市町村に移管して一般財源化されて、市町村の主体性になっております。市町 村というのも国が動かなければ動かないという、まだなかなか難しいところもございま して、妊娠中からの支援、チャンスを使いながらすべての人に、先ほどの大日向先生の 場の提供というようなことも、あるいはプログラムということもありまして、一地方か らでございますが、実感として感じることを報告させていただきましたので、ぜひ御検 討いただけたらというふうに思います。  以上でございます。御静聴ありがとうございました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、事務局の方から関連の説明といいますか、補足 説明があるということですので、15分くらいお願いをいたします。 ○皆川総務課長  どうもありがとうございました。今、両先生のお話は現場あるいは家族に密着したお 話ですが、私どもの方から、我が国全体として家庭と家族をめぐる状況はどうかという ようなデータに基づいて少し御説明をさせていただきたいと思います。  御留意願いたいのは、前回子どもそのもののデータをお出ししました。今回、家庭と 家族をめぐるデータをお出ししています。それから、両先生のお話にありました行政の 対応、これは次回に私どもとしてまた御用意をさせていただきたいと思います。それが 1つ。それから、きょうお示しするデータ、資料は、既存のいろいろな調査に基づいて いますが、私どもなりに問題意識を持ってやった調査がありまして、それはまた次回御 紹介したいと思いますし、それから1回目にのときにお話し申し上げましたが、この会 で何かこういう調査が必要であるということであれば、今年度ももう既に予算を計上し ておりますし、また、必要があれば来年度予算の議論もありますので、ぜひそういうも のを念頭においてと御議論いただければというのが2点目です。3点目は恐縮ですが、 資料6は1回目にお出しした資料なんですが、今何をやっているかということを常に御 念頭に置いて御議論いただきたいと思うのです。要するに次回ぐらいまでは、今後どこ に重点を置いてこの会を運営していくかというポイントを絞る作業を先生方にやってい ただいていますので、前回は子ども、今回は家庭、次回は行政と、そういうデータを示 しながら少し御議論をいただければというふうに思っています。  資料3でございますが、100 ページほどありますので、どこに何が載っているかとい うことだけの御説明になるかと思います。1番から9番までございますように、こうい った分類でいろいろなデータを集めてみました。例えば1は、婚姻と離婚、2番は出生 と家族構成、子育ての現状、家庭生活あるいは経済状況、子育てと労働、意識・家族観 、それから教育の問題、こういうことに分類をして、オールジャパンあるいは少し地方 の問題もありますけれども、こういう資料を集めてみました。  1ページをお開きいただきますと、婚姻と離婚の状況でございまして、婚姻はベビー ブーム、大人になって昭和四十五、五年ころ増えるわけですが、ずうっと減って今また ベビーブーマーの子どもたちが少し結婚している。こういう状況で婚姻は大体80万件前 後で最近推移をしていますが、一方で、その次の欄のように離婚が非常に増えていまし て、昭和40年代以降ずっと増大傾向、バブル時期一休みをしましたが、それ以降もかな りの勢いで離婚は増えてきている。これが相当日本の家族をめぐる状況変化をさせてい るのではないかと、これは私どもの理解でございます。中でも都市部、右の下の方にあ りますが、東京都区部とか札幌とか、そういう大都市で離婚率が大きくなっているとい うことでございます。  それから2ページの下の表は人口圏の表でございますが、女性の晩婚化が特に進む中 で、2ページの表の一番右でございますが、結婚の男と女の年齢差が非常に縮小してき ているという状況をお示しをしたわけです。ただ、晩婚化が進む中で、どうして独身に とどまっているんだというのが3ページでございますが、よく言われていますが、3ペ ージの左の方、「適当な相手に巡り会わない」、出会いの少なさ、あるいは「自由や気 楽さを失いたくない」、それから下の方から4番目、「異性とうまく付き合えない」と 、こういうのが晩婚化の要因として挙がっております。  ただ、結婚についてはいろいろな希望を感じておられまして、4ページ以降、結婚観 のデータでございますが、例えば、結婚に対して喜びや希望を感じたかというと、「非 常に感じる」とか、あるいは「どちらかといえば感じる」というのがかなり多くなって いますが、一方で5ページ、結婚に対して負担を感じるという方も決して少なくないわ けで、特に女性の負担は男性よりも大きくなっているということでございます。その中 でどういうところに負担を感じるかというと、6ページですが、男性の方は「経済的な 負担」、それから女性の方は特に下から1つと2つですが、「仕事と家庭を両立させる のが困難な負担」、あるいは「育児の負担」、両先生のお話にありましたが、こういう 負担が出てきているということでございます。  離婚については7ページ。離婚が増大しているという表と離婚の原因が8でございま すが、先ほどは結婚についての負担が経済的なものあるいは育児と書いてありましたが 、離婚の原因としては、どちらかというと性格が合わないとか暴力の問題、こういうも のが直接的な引き金になっている。ただ、離婚の原因は、我が国はほとんど協議離婚で 、これは10%の裁判離婚のデータです。協議離婚の方のデータは含まれていませんので 、これは留意してみる必要がある。  ちなみに9ページ、諸外国の離婚の状況、離婚制度というか、離婚に関わる仕組みの 状況を載せてございますが、その9ページの一番下の方に「離婚率」と書いてございま す。アメリカは離婚率4.2 %、日本よりはるかに高い、1,000 に対して4.2 。フランス などは日本と近いのですが、フランスの下の方に書いてございますように、結婚しない 非婚同居家族が多いという状況で、離婚の状況というのは、国際比較をするときは留意 をしてみなくてはいけないのかなとは思いますが、日本も大分先進諸国に離婚率が近づ いているという状況でございます。  それから、10ページは離婚の際の養育費の状況ですが、一言でいいますと、日本の場 合離婚に際して養育費が取れていない。取れているとしても女性の2割ぐらいしか取れ ていない。生活がそういう意味では養育費の問題では非常に困難になっているというこ とでございます。  11ページ以降は、2つ目の項目の出生についての情報でございます。11ページの一番 左でございますが、出生数、先ほど来御説明がありました120 万でございますが、これ もこの前人口圏の御説明のように、2012年を過ぎると100 万人を切る。2020年を過ぎる と80万人台になる。2050年には667,000 人ということで、急激に出生数は減少していく と、こういう御説明でございました。その中で、出生の中でも日本ではまだ少ないので すが、12ページ、非嫡出子が数としてのレベル少ないのですが、着実に増大をしている という状況が示されています。また、出生に至らない人工妊娠中絶がしばらくは減って いたわけですが、平成10年以降徐々に徐々に増えてきている。中でも、下のグラフにご らんいただきますように、20代それから30代前半の人工妊娠中絶が増えてきている。一 方で、14ページでございますが、不妊治療を受ける患者さんも次第に増えてきておりま して、Iの2の「結果」の合計欄の一番上にございますように、約30万人弱の方が現在 不妊治療を受けているということでございます。それから、子どもを持つ理由が「子ど もがかわいい」からとかいろいろあります。16ページ以降は後でごらんいただきたいと 思いますが、姿勢というのでしょうか、子どもを持つことに対して女性も男性も非常に 積極的なんです。ポジティブな面が16ページから19ページまで出ております。  20ページ以降は世帯とか家族構成でございますが、後での関係でちょっとごらんいた だきたいのは20ページの下の方に、子どものいる世帯は、今、日本全体で1,300 万世帯 あるわけですが、中でも30歳から40歳にかけて子どもがいる世帯が当然多いということ でございます。中でも、21ページの上の表でございますが、先ほど核家族世帯というふ うにおっしゃいましたが、核家族世帯が71%を超える。それからその下の表ですが、一 人っ子が1,300 万世帯のうち540 万世帯ということで、約4割が一人っ子世帯というこ とでございます。  それから23ページに飛んでいただきますと今度は子育てです。きょうの両先生から子 育てのお話が出ましたので、この項目は少し飛ばさせていただきますが、23ページから 子育てのいろいろな状況がございます。23ページの上の方は、本当は別のグラフがあっ て、子育てを楽しんでいるかと聞いたときに、「楽しんでいない」という人に聞いたの が、上の方の子どもの人数別に応じてイライラするとか、あるいは生活に追われてゆと りがないと、こういうデータが23ページの上の方です。  それから、その場合の子育ての相談先などが、先ほど訪問看護センターなどもありま したが、やはり相談の先としては、24ページにありますように「友だち」、「母親」、 そしてちょっと出て来るのが「小児科のお医者さん」あるいは「保健所・母子保健セン ター等」が主として相談先になっているということでございます。  それから、子育ての情報等についてどこから得ているかが、東京都のデータですが、2 5ページ、26ページ、27ページ。それから育児はどうやっているかというようなことを2 6、27ページまででございます。  それから先ほどの東京都の26ページのデータでは、大日向先生にもあった子育てグル ープに参加したことがあるかというのが、一番上ですが、参加経験が9割近くあるわけ です。29ページの真ん中から「図32」というのがあるのですが、子育てサークルの参加 、これは全国のデータなのですが、東京ではかなり高いのですが、オールジャパンです ると、「はい」というのが15%程度。ですから、子育てサークルの意味が東京の周辺と 地域で違うのか、あるいは認識の違いが大分あるのかわかりませんが、全国のデータと 東京都のデータをお示しをいたしました。  それから、大分男の話が出ているわけですが、これ以降男性の話も出てまいりますが 、30ページからは男性勤め人の家事時間というのは10年前と比べてあまり変化がない。 棒グラフの左が1990年、右が2000年なのですが、特に今度折れ線グラフで、むしろ家事 の行為は、やった人は33.8から23.9と落ちてきているという状況も示されています。  32ページ以降は、実際どういう家事とか子育てを夫がやっているのかと、ちょっと具 体的に見たものですが、例えば上の方は0〜2歳の男の育児分担で風呂に入れるとか、 2つ飛ばすと食事を食べさせるとか、あるいは次のページは一緒に遊ぶとかいろいろ出 ていますが、0〜2歳というのは比較的男性も参加をしていると。今回の資料には0〜 2歳しかお示しをしていませんが、この3歳以降になるとだんだん参加の程度が落ちて くる。  それから風呂とかは入れるのですが、33ページの「身の回りの世話」などは、やはり 奥さんにお任せするというようなことで、35ページにございますように、家庭での家事 は主に誰が負担しているか。もっぱら「妻」と。9割近く。一番上のグラフですが、家 事は誰が分担しているかといえば「妻」になっている。それから2番目の子どもの世話 ・子どものしつけや教育、両先生のお話にもありましたが、もっぱら「妻」が6割ぐら いやっているというようなことが全国のデータでも出ております。  それから、例えば今子どもが6歳までおられるわけですが、家庭において約半分、そ れから保育所と幼稚園で昼間半分ぐらい過ごしているわけですが、例えば保育所の状況 を簡単にお示ししたのが36ページです。約200 万人弱が保育所でケアをされていますが 、保育所もしばらく減ってきたのですが、ここのところ随分増えてきています。ただ、 増え方はどちらかというと、保育所の場合は0歳、1歳、2歳、低年齢児を受け入れる ことによって増えてきた。幼稚園も同じぐらい、約200 万人弱、要するにあわせて三百 五十、六十万人ぐらいの子どもが、家庭と同時に昼間はこういった施設で日本では養育 されているというような状況でございます。  38ページですが、全体からいうと半分強なのですが、例えば平成12年、一番上の5歳 児の一番右側ですが、5歳児に至りますと95.6%が保育所か幼稚園で昼間は保育をされ ているという状況でございます。それから一方、その中で本日も虐待のお話がありまし たが、子どもの虐待というのは、これは児童相談所に対する報告件数ですが、40ページ 一番上にごらんいただきますように、統計を取り始めてから11年目で20倍弱に増えてき ている。特に最近では、40ページの下の方ですが、中ほどのネグレクトというケースが 増え、さらには、きょうのお話と少し符合するわけですが、41ページの上の表ですが、 誰が虐待者かというと、母親が虐待者になっているケースが極めて多いということでご ざいます。  42、43ページはその他の養護施設等で、どうして要養護になったかという理由を中心 にお示しをしていますが、やはり多いのは上から4番目ぐらいの「母の行方不明」とか 、真ん中からちょっと上の「母の入院」とか、下の方からちょっと上の「母の精神疾患 等」、こういうところが養護状態になるケースの原因として多い。  44ページ以降は家庭生活の状況ですが、一言で言うと、なかなか家族でみんな一緒に 過ごす時間が少ない。例えば44ページの一番上のグラフですが、折れ線グラフの右の方 が、半分以上の方が家で過ごす時間、要するに家族みんなが団らんで過ごすのは19時と か20時とか21時、このぐらいしかないというような状況でございます。  家庭を重視する男の割合は45ページですが、少し調査としては落ちてきている、なぜ かちょっとわかりませんが落ちてきている。46ページ以降は、家庭で過ごす場合のいろ いろな形態、レジャーとかコミュニケーションの状況。  それから47ページですが、お父さん、お母さんと休日の行動に対する希望というので すが、ここで顕著なのは、高校生、中学生になると、どちらかというと、「お父さんと は別々にいたい」とか、お父さんはしたいようにしてもらって、自分もしたいようにし たいというケースが非常に多いということでございます。特に49ページになりますと、 親との会話の程度が「ほとんど話さない」というような子とか、あるいは51ページです が、親との会話の程度に関する考え方ですが、余り積極的ではない。小・中学生は決し て悪くはないのですが、高校生になると親とのコミュニケーションというのでしょうか 、だんだんそういうものが少なくなる。  一方で52ページは、今度はお父さん、お母さんだけではなくて、おじいさん、おばあ さんなのですが、上のグラフ2つが父方のおじいさん、おばあさんとのコミュニケーシ ョン、下が母方のおじいさん、おばあさんとのコミュニケーションですが、父方に比べ ると、かなり母方の祖父母とのコミュニケーションが多いというような状況でございま す。  それから55ページ以降では、家庭の経済状況でございますが、いろいろな見方がある のですが、ここでは家計調査の全般的なことを55ページでお示しをしていますが、中で も子育て期は教育費が相当かかっているということがよく言われていますし、示されて います。  57ページの上のグラフをごらんいただきますように、いろいろな物価は落ちています が、教育費はそのシェアを次第に伸ばしてきている。特に58ページ、59ページをごらん いただきますと、例えば58ページの一番上が公立幼稚園、私立幼稚園と分けているので すが、私立幼稚園では32万円でしょうか、中でも58ページの一番下の表になりますと、 私立中学校になると90万円とか、右の私立高校になると70万円に落ちますが、かなり私 立と公立では違う。そのほかに59ページの下、学校外活動費というのですが、特に小学 校の6学年とか中学校の3学年とか、高校の3学年になりますと、補助学習費の中で学 習塾というのでしょうか、その経費がかなり大きくなっているということです。  60ページは、先ほどの大日向先生にありましたが、男の関わりが就業時間の関係で極 めて厳しいということでございます。真ん中のグラフにございますように、年を追って 就業時間は落ちているのですが、先ほどごらんいただきました30代から40代の子育て期 の男の平均の就業時間が、例えば50時間とか50.8時間ですから、平均ですから、その下 に年齢別のさらに細かく見たのがございますが、かなり就業時間が多い、下のグラフの 黒い右側の黒い上の方は、これは確か60時間以上働く男性を表しているわけですが、な かなか仕事の関係で関われないというような、子育て期の男性の姿が反映されておりま す。  それから63ページでございますが、子どものいる世帯の母の状況は、例えば一番下か ら2つ目をごらんいただきますと、総数では非労働力人口は43.8なのですが、お子さん の年齢が右に行くほどお母さんが労働力人口、就業人口になるというのが顕著にあらわ れている。0〜3歳までは7割が非労働力人口ですが、次第に就業人口になっていくと いう、それもかなり大きな割合となっていくということでございます。  子育ての関わり方についての意識調査が64、65、66ページぐらいでございますが、結 構楽しいと感じる人が多いわけですが、67ページは「楽しいと感じるときと辛いと感じ るときが同じくらい」、あるいは「辛いと感じるときが多い」という方に対して、その 原因を聞いたものでございますが、1つは男性の方は「子どもの将来の教育にお金がか かること」と。女性の方は2番目ですが、「自分の自由な時間がなくなること」、ある いは3番目の「子どもの相手は体力や根気がいること」。  69ページは、きょうのお話とも関係ありますが、子育てに関して配偶者に望むことで ございますが、女性が男性に望むのは2つ目「子どもとふれあう時間を多くしてほしい 」、それから真ん中ぐらいに「子どもが悩んでいるときは話し相手になってやってほし い」、それから下の方から4つ目「子どもが尊敬できるような人でいてほしい」、こう いうことを女性が望んでおるようです。  それから71ページは母親の子育て意識ですが、きょうのお話にもありましたが、74− 1とか74−2の方は、上の方はネガティブな意識なのですが、下の方もネガティブな意 識と同時に、きょうのお話にもありましたが、ポジティブ意識も決して少なくない。ポ ジティブな意識をどうやって支えて、あるいは増やしていくかということが課題なのか なというふうに思っております。71ページの後半からは、少しそれを分類をしたもので す。  74ページは、育児不安とか育児のいい面、悪い面を記述式でいろいろ聞いていったも のの抜粋ですが、お話にあったようなこともここにちょっと書いてございます。  75ページは、男の子育て意識ですが、体罰とかということも結構。右の上ですが、子 どもへの体罰経験、「おおいにある」、あるいは「ややある」とか結構少なくない。そ れから、体罰はいいのかということに対して、「おおいに必要」とか、「やや必要」と 肯定的でございますが、その結果、右の方ですが、体罰をされているということです。  82ページからは、幾つかの家族観の調査でございますが、やはり構家族第一に考える という人は、全体で9割弱と男も女も少なくない。83ページにありますように、家族第 一に考えるほど生活の満足度も高い。ただ、現実とその意識とが大分ずれているのかも しれません。それ以降、親子の関係について、例えば親子は友人関係であっていいとか 、長男に関する考え方等を89ページまで掲載しておりますので、後ほどお読みいただき たいと思います。  最後に、学校と地域、社会に対する親の意識、これは主として文部科学省からのデー タでございますが、例えば90ページ、学校行事への参加の状況、特に父親に比べて90ペ ージの下ですが、母親が多い、小学校高学年が非常に多いとか。それから地域活動への 参加ということで、92ページ、93ページ、比較的地域活動には参加をしておるようです が、ただこれ学年別に見たものでないので、どのレベルで参加しているのかちょっとわ かりませんが、そういう参加の程度がございます。  それから最後に、子育てや教育の問題点について、96、98ページにございますが、特 に家庭でのしつけや教育の内容あるいは受験競争についての不安、あるいは問題意識が 多いようでございます。  以上、両先生のお話を補足する意味で御説明させていただきました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、時間の配分を少し考えないといけないのですけ れども、当初もう少したくさんの自由討議の時間をと思っておりましたが、最後にまた 事務局からの御説明もございますので、大体30分ぐらいきょうの御報告に対する御質問 、あるいは親、家庭の状況についていろいろ御意見がおありだろうと思いますので、そ ういうことを含めて御自由に御発言をいただきたいと思います。  なお、ただいま皆川課長から大変たくさんのデータについて御説明がございましたけ れども、これは基本的に単純集計のものが多いわけですけれども、例えば独自の調査を するときに、もっとクロスで見られるようなものをしたいというような御意見もあれば 、そういうことも含めて御発言をいただければと思います。  どうぞ御自由に御発言をお願いいたします。 ○服部委員  冒頭に口火を切らしていただきます。お二方の先生の大変細やかな、そして非常に示 唆に富んだプレゼンテーション、どうもありがとうございました。  私も子育て不安を大変大きなテーマとして考えておりますので、特に大日向先生の6,0 00 人以上の御調査やらインタビューやらをお伺いしながら大変敬意を表するところで ございます。子育て不安というのは、1つは親が追いつめられ、その結果子どもの育ち を悪くするということと、親自身の人生の停滞あるいはネガティブイメージを増すとい う2点で非常に問題だろうというふうに私は思うわけでございます。先生の子育て不安 の背景の分析その他を伺ったわけでございますが、母性神話というようなこともござい ますし、それから、こんなはずではなかったということも、これは遠藤先生からも出ま したが、個人ではなくて、多くの人々に見られるというお話もございましたが、この背 景になっているのは、密室であるとか社会から阻害されているとか、あるいは自分のポ ジティブのイメージを持ち難いとか、どちらかというと専業主婦という人たちの育児不 安ではないかというふうに思います。そこで、最初に質問をさせていただきたいのは、 働く母親の育児不安というのは別の様相なのでしょうか。育児と仕事の両立が難しいと いうのは昔からあるテーマでございますが、特にこの育児不安というのは、先生のお話 ではほとんど専業主婦の話かなと思うわけでございます。  例えば保育所に預けていれば、全く社会から阻害されるというわけではなく、何らか の形で社会に参加しており密室に閉じこもるわけではなくなりますし、あるいは自分の 仕事を続けているという意味では職業的アイデンティティというのが続くであろうとい うように思いますと、先生のおっしゃる育児不安とは別の不安なのかなと思うわけです 。そこで働く母親の育児不安がどうなのかということをひとつお伺いしたいのです。そ れと専業主婦の場合もどのような人に育児不安が多いのでしょうか。私も大阪レポート というのを書かせていただき、かなり細かに分析をし子育て不安に関して5つほどの要 因を挙げさせていただきました。先生の育児不安の要因には過去に子どもとの接触経験 があるかないかとか、現在実家の母とうまくいっているか、あるいは思春期も母とうま くいったかどうかとか、友だちが多い人なのかとか、メディアによっていろいろな英才 教育や、あるいは子どもの発達の情報が余りに多くっておびえているのかどうかとか、 育児不安に至る要因のようなものを先生が御研究の中で見出しておられましたらお伺い したい。もしそうであるなら子どもとの接触が必要なら早いうちから子育て経験をさせ ればいいし、メディアの問題なら、メディアに我々は声を高くして親の不安をかき立て ないような方法についての良識あることを言わねばなりませんので、そういう意味の子 育て不安の要因のもう少し細かなヒントをいただけたらということでお伺いできればと 思うのが1点でございます。  2点目は、子育て不安に対していろいろな支援対策が必要です。不安の親を支えるた めに話を聞いてさしあげるとか、あるいはプログラムをつくるというようなお話もよく わかります。そのとおりだと思いますが、子育てを誰がするかはともかくも、子どもと いうものを育てていくというのは、頭で考えるのではなくて、経験を通して子どもを育 てる力というものを発達させねばなりません。不安の気持ちを聞いてあげるのが第一段 階で、それで安らぎを与えて親の自信を取り戻す。そして次が教育プログラムです。先 ほど親がしつけをしながらも、これは虐待ではないかとおびえるというのもがありまし たが、これも子育てをたくさんしているうちに、ここからはしてはならぬということが 、親側にも自然に育っていくものですから、どうしても子育てというのは密な関わりを することが大切です。もちろん時間的に一日じゅうというのは余りの膠着状態ですが、 私は相当細やかな、つまり育む力というようなものを親たちが育てることが大切と思い ます。子育て不安を解消するということの危険性の一つは、じゃ私が育てなくてもいい のか、あるいは夫がすべき、他者がもう少しすべきと。母親自身の主体的な子どもとの 関わりの質も量も減っていくことで、その果てにネグレクトとか虐待がでてきはしない か、今の親の危うさのようなものも出てくる危険性がちょっと見える気がします。私自 身が子育てグループ支援などもしており、親たちを支えるのですが、支えて安らぎや自 信を得た上で、そこからいよいよ本格的に親であることの深みをどのように自らが発達 をさせていくのかを支援する、そのプログラムが非常に重要だろうというふうに思いま す。話を聞いてさしあげたり、グループに誘うところまではわかるのですが、その後子 どもを預けて、自分はもう遊んだらいいんだ、自分の人生なのだからという動きが、多 少私自身やっておりまして親御さんの中に感ずるのです。そして何となく育てる力の発 達というのでしょうか、それが危うくなりはしないか、そのあたりのヒントを私自身も 探しているわけでございますが、大日向先生のお考えをお聞かせいただければと思いま す。  といいますのは、私は思春期屋ですので、思春期の若者の非常に未熟になっている精 神性というものに向き合っており、子ども時代の親子関係が必ずしも悪意には満ちてい なくとも、深みのない非常に未熟で粗いといいましょうか、人間性の深みが育っていな くて、思春期にたどり着いて様々な問題行動を起こす子どもたちに思春期クリニックで 会います都度、子ども期の育ちというものは、誰が育てようと、子どもを育てる力を発 達させた上で次の世代を育てねばならないと思うのです。そしてまた、その子たちがす ぐ親になりますから、その子たちがもう既に親になる過程を歩んでいる。そのための親 学といいましょうか、親になる教育を子どもの時間にどうすべきか、そして親になって どうすべきか。という親の発達というあたりに大日向先生の深い御示唆に富んだ御研究 からお伺いできればと思ってお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○岩男部会長  それでは大日向委員からお答えいただきたいと思いますが、ただいまの服部委員から の御指摘の点に何か関連して、これも併せて伺っておきたいというような方がございま したら、それをあわせて伺おうと思いますが、よろしゅうございますか。  それでは、小日向委員、ただいまの御質問にお願いをいたします。 ○大日向委員  いろいろ御質問をいただきましてありがとうございます。最初の御質問で、働く母親 の育児不安はどうかということですが、私がきょう御説明させていただきましたデータ は主に専業主婦の方々です。大体年齢的には20代後半から30代で0〜3歳ぐらいまでの お子さんをお持ちのお母さんたちでした。先ほど皆川課長の御紹介に出ていた中に、そ のくらいの年齢の母親の7割は専業主婦というデータがあったと思いますが、私がきょ う御紹介したのはまさにそういう母親たちです。  一方、働く母親たちも、もちろん調査対象にしておりますが、不安の質はやはり違い ます。社会からの閉塞感とか密室育児の不安は働く母親には少ないといっていいでしょ う。しかし、共働きといっても家庭内で夫の協力が得られていないという実態は、これ はやはり専業主婦家庭に比べて、あまり変わっていません。両立の心身の負担感という のものは非常に大きく、それに加えまして、働くお母さんに対して日本社会の典型的な 一つの特徴かもしれませんが、3歳児神話プレッシャーというのがあります。子どもが 小さいときにお母さんが自分で育てないでいいのだろうかといろいろと周囲からの責め られ、母親自身もその3歳児神話にとらわれて苦しんでいます。  さらに、今の子育ての問題だけではなくて、将来子どもが思春期ぐらいになって、思 春期といいますと、服部先生の御専門だと思いますが、いろいろ問題を起こします。思 春期にはある程度問題を起こしても自然かなというようなこともあると思いますが、そ のときに原因はいろいろあると思いますが、母親が働いている家庭だと、あなたが3歳 ぐらいまで育児に専念しなかったからだというようなことを周囲から、あるいは夫から も責められるという、3歳児神話の亡霊というようなものに苦しんでいるということを 追加させていただきたいと思います。  それから、2番目の御質問で、私がいろいろ育児不安の原因となるものを列挙させて いただきましたが、もっと基本的な根底的なものがあるのではないかという御質問でし た。それは確かにそのとおりでして、こうしたことに悩む人と悩まない人がいます。ど こが違うのだろうかと。そこまで申し上げると議論が広がり過ぎるものですから、あえ て省かせていただきましたが、人間関係能力だろうと思います。密室状況だとか、育児 と仕事の両立の負担感等、悩みはいろいろあります。壁にぶつかったときに、壁にぶつ かりながら次のステップに進めることができる人と、できない人というのは当然分かれ ます。その違いを見てみますと、親となってからでは実は遅いわけで、小さいときから の人間関係能力の育成が大切だと思います。こういうことを申し上げると、小さいとき から子育ての経験がないからというようなところに短絡的に結論を求められるのです が、子育て経験だけではないだろうと思います。親や周囲の友人と、あるいは教師、地 域の方々と人間的に触れ合いながらコミュニケーション能力を発達させていく経験です ね。しかも、そのコミュニケーションは直接的なコミュニケーションが必要です。で も、十数年前から伝言板世代と言われ、そして今は携帯電話世代です。直接的な人間関 係に触れずに育っていく。その世代がこれからますます増えていくときに、人間関係能 力をどういうふうに育んでいくかということは、かなり子育て支援の遠大な、そして究 極の目的の一つではないかと思います。  それから3番目、いろいろ育児支援をして、育児不安を取り除くというようなことを することが、もしかして親として成長するチャンスを阻害してしまうのではないかとい う懸念を表明されました。確かにそうした面もあると思います。そのことに触れるため に私は3番目のニュージーランドのプレイセンターの事例を御紹介させていただきまし た。ニュージーランドのプレイセンターは親を育てる支援です。そこでは、いろいろな 問題を抱えていたり、抱えていなかったりと、親の状況はいろいろなのですが、子ども と遊びながら親としての責任をしっかり受容していけるようなプログラムができていま す。しかし、その親というのは、先ほども申しましたが、お母さんだけではなくて、お 父さんも含めてということです。さらにそこに専門的なチューター役の人が加わりなが ら、一番大事なことは、子どもと遊びながら親としての成長を保障していくということ です。これは先ほども申しましたが、日本でもいろいろな活動の中で萌芽的なものはあ ります。だけど、まだ点だと思うんです。点を線につなげ、面につなげていくために、 私はニュージーランドのプレイセンターが政府主導型で50年かけてプログラミングを行 ってきたということを御紹介させていただきましたが、日本でも行政府がいっそうの支 援を推進していただきたいと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。服部委員からの御質問の第1点に関連して、私が最近行っ た調査結果を申し上げますと、働く母親で子どものいる人たち、それから専業主婦で子 どものいる人の比較なのですけれども、「子育てを楽しいと思っているか」、それとも 「辛いと思うか」という質問に対する回答では、働いているお母さんたちの方が子育て を楽しんでいるんですね。これは密室の中で一日じゅう子どもと向かい合っていないと いうことから気分転換もできるし、いろいろ社会との接点もあるしというようなことで 子育てをするときにも楽しめるということなのか、それとも、もともとタフな人たちが 子育ても仕事も両立させているのか、そこはよくわかりません。いろいろな要因が関係 していると思いますが、明らかに働く母親の方が子育てを楽しんでいるというような調 査結果がございますので、御紹介をしておきます。 ○服部委員  ありがとうございます。私の大阪レポートも同じです。 ○岩男部会長  そうでございますか。 ○服部委員  そうしますと働けばといいということにも、ある意味では解決として出てくるという ことですね。ということの証明ということでございますね。 ○岩男部会長  そうなんですね。ですから、男女共同参画社会の実現が非常に大事だということの証 左だろうというふうにも思います。 ○服部委員  これは先生いつのですか、最近のですか。 ○岩男部会長  先月シンポジウムをして発表いたしました。 ○服部委員  そうでございますか、ありがとうございました。 ○岩男部会長  それでは、どうぞ御自由に御質問、あるいは御意見をお願いしたいと思います。  遠藤委員にお尋ねなのですけれども、最後にまとめられた中で、必要なときに必要な 支援ということで、時の重要性ということをおっしゃって、それから些細なことの重要 性というようなことをおっしゃったと思うのです。反復の重要性みたいなものもあるよ うな気がいたしますが。この支援事業がどのくらい反復されるのでしょうか。先ほどの 御紹介では2回まで訪問するというところまではわかったのですが、私自身はアメリカ で子どもを産んで、親とか実家とか全く関係のない世界におりましたから、それで訪問 看護婦さんたちが頼りだった。そのときに、家に来ていろいろ質問に答えてもらうので すけれども、わかったような気がしちゃうんです。ところが、彼女が帰ると途端に赤ん 坊に一声泣かれると、もうわからなくなってしまうというようなことがありました。で すから、比較的頻繁に最初は来ていただくと、その後は自立できるのですけれども。そ ういう反復訪問というようなことの重要性はおっしゃらなかったのですが、そういうの が必要ではないかと思ったのですが。 ○遠藤委員  ありがとうございます。全くそのとおりでございまして、多くの方が2回くらい訪問 すれば、かなり楽になっていらっしゃるのですけれども、ケースによって、一番多い方 はたしか8回というふうに伺っています。あと、昼間はまだいいのだけれど、夜になっ たらとても耐えられないということで、特に訪問看護ステーションというのは24時間型 でございますので、携帯電話を持っていまして、電話だけで済むこともあれば、訪問す るというシステムが既にターミナルのケースの方ででき上がっていたものですから、こ のモデルもそういうことをなさったようです。ただ、その場合、これは行政のことです ので、また次回の課題ということになりますが、支援する側が整えていかなくてはなら ないと思いますが、夜11時ごろ訪問したというような状況もございますし、回数もケー ス・バイ・ケースということでございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。はい、どうぞ。 ○柏女委員  遠藤委員の御発表に非常に感銘を受けたのですけれども、訪問看護ステーションとい う、本来ならば子育て支援を行うところでないところが、独自のネットワークを使って 、あるいは機動力を使って子育て支援のためのサービスを展開すると。こういう例とい うのは、いろいろなところで先駆的な試みが行われているのだろうと思うんです。例え ば、生協での暮らしの助け合いの会とか、ああいうところが子育て支援サービスをした り、あるいは高齢者に配食サービスをしているところが父子家庭のための、周りに父子 家庭の方がいらっしゃれば、そこに食事を提供したりとか、こういう独自のネットワー クや機能を使って子育て支援をしている。そういう先駆的な事例が集められないかなと 。それは調査のということでお話がありましたので、次回の方にもしかしたら出るのか もしれないのですけれども、それを1つ思いました。  それからもう一つ、遠藤先生がもしおわかりでしたら教えていただきたいのですけれ ども、保健師さんあるいは助産師さんの、つまり母子保健上の関わりが今度は保育師を 中心とする活動につながっていく、そのつなぎのところが割とうまくいっていないよう な気がするのですが、この辺のところで産みのところから今度は育てるところに、専門 職同士のつなぎ、あるいは場のつなぎというか、その辺でうまくいっている、あるいは 、うまくいくためのポイントみたいなものがあましたら教えていただければありがたい んですけれども。 ○遠藤委員  御質問ありがとうございます。全く私も柏女先生がおっしゃったことを実感しており まして、きょう事例で余り細かく紹介できませんでしたが、3例目の上の子どもさんと の関係の事例等に関しましては、私どもだけではフォローアップするには限界がござい ますので、当然市町村の方の、これは社団法人がつくっているステーションでございま すので、市町村の保健師に継続したわけなのですけれども、その市町村の保健師さんは 通常的に虐待のケースで、児相とのミーティングというのを定期的に持っていらっしゃ います。やはり、児相と協力する事例なのかどうかということをもう一つ医療から、そ ちらの方にスライドさせていくということが非常に重要だということをおっしゃってお りました。確かに一緒にディスカッションしてみると、新聞等で報道されたような事例 が、振り返って見るとすべての人が関わる、関わるといいますか、通ってはいるのだけ れど、中身的に関わっていない、つないでいないということを実感として感じておりま す。 ○岩男部会長  柏女委員がおっしゃった最初の点の先駆的なケースというのは、もしできれば事務局 の方で次回でも集めていただいて。 ○皆川総務課長  そういう調査も、やれというならやりますし、やりたいと思っています。実はお手元 の少子化対策関係資料集、これも大日向先生の本と同時にできて、きょうお配りできて いるわけですが、これは前の方に、いろいろな市町村の独自の事業なのですが、これが 市町村の事業なのですが、その多くが多分きょうお話があった民間のそういった先駆的 な事業が地域であって、その地域のものを市町村に取り上げている。それは柏女先生の 言っている一部かもしれませんが、ここにかなり載っている。もっと氷山の下の方にか なりいろいろな動きが出ていますので、それは我々も調べたいと思っていますが、動き が早いというのも事実です。子どもの分野はものすごくいろいろのものが動いて、調べ たらすぐ古くなってしまうということもあるので、どういう調べ方をするか先生方と相 談してやらせていただきたいと思います。 ○岩男部会長  どうぞ。 ○柏女委員  先駆的なパイオニア的な取り組みということよりも、この間、国土交通省のプロジェ クトと厚生労働省のプロジェクトが組んで商店街を使ってやるような、ああいう共同プ ロジェクトみたいなものをできればもっともっと仕立てられないかと。そうすると、例 えば厚生労働省の中だけでも、高齢者サービスと児童福祉サービスが結びつくのではな いか。そういう可能性を検討できる事例がたくさん集まるといいかなという思いであり ます。 ○岩男部会長  ほかの御質問、あるいは御意見。どうぞ。 ○津崎委員  ちょっと教えて欲しいのですが、お産をするときは、日本の実態の中で、実家の方に 父方、母方合わせると大体7割ぐらい帰っていますよね。母親なり父親も含めてかもし れませんが、そういう形で出産というものが支えられている部分がある。帰っただけで 支えられていないというような報告もありましたが、その辺のところ、欧米の現実、欧 米の方ではどういう形でお産がサポートされているのか、実態を御存じの方に教えてい ただきたいのが1つです。  もう一つは、皆川課長の方からも報告がありましたように、離婚家庭が極めて増えて いっていますよね。これはもっと増えていくのだろうと思うんです。私たち児童相談所 の現場から見たときに非常に危惧していますのは、継父、内夫、あるいは継母、内縁の 妻、そういう複雑な家庭背景の中で子育てがうまくいかない、そういうケースが非常に 目につきまして、その子育てがうまくいかなくなると極めてひどい状態になっていくと いう実感を持っているんです。そうすると異父母との親子関係、これから増えていくで しょうけれども、その辺の部分についての子育ての実情であるとか、それを支えるよう なサポート体制あるいは実態調査的なものがあるのかないのか、もしデータ等があれば 教えていただきたいという2つでございます。 ○岩男部会長  どうぞ。 ○新野専門官  後ろから失礼させていただきます。欧米のお産前後の支援サービスはどんなふうにな っているかということなのですけれども、イギリスに関して私が知っておりますのは、 地域に助産師もいますし、病院の中でも助産師がいまして、地域の中で登録制になって いて、お産の場合は医師を選ぶか助産師を選ぶかということで、どちらを選んでも、例 えば病院でお産をしたい場合は、どちらかがずっと妊娠中からフォローする。割合多く の方々が助産師を選ぶということもありまして、ホームバース、自宅出産ということも できますし、病院をオープンシステムという形に使うこともできます。産んだ後は大体2 4時間ぐらいでうちに帰ります。その後継続して助産師がずっと定期的にほぼ毎日のよ うに訪ねていくようです。ちょうど1か月目になりますと、問題さえなければ、今まで はお母さんの産褥期ということと、それと赤ちゃんを1か月以内の新生児ということで 見ていたのが、今度は家族全体のヘルスを見る保健師につなぎますということで、一緒 に保健師と訪ねて顔合わせをして、これからはこの人にバトンタッチをしますというよ うなことで、実際に私の友人でイギリスでお産した人も日本人の方でいたのですけれど も、安心して子育てをすることができたので、とてもよかったというふうに聞いており ます。  また、アメリカの現状なのですけれども、アメリカは貧富の差もありまして、なかな か一律にいかない部分もありますし、お金を持っている人たちにとっては、とても高度 な医療施設でお産をする場合もありますし、その場合でも、医師を選ぶか、また助産師 を撰ぶかという部分もありまして、私自身も実際に見学に行ったこともあるのですが、 例えば大きな病院でも昨今は女性たちの意識も上がってきまして、バースセンターと病 院の中に、医療ではなくて、まるで家にいるような部屋のつくりの中でLDR方式が行 えるという環境がありまして、何かあればすぐに医療も出るというようなところでお産 をして、24時間あるいは48時間ぐらいでうちに帰って、あとは助産師が訪問し、母子の ケアするというふうに聞いています。 ○津崎委員  余り実家に帰るというようなことはないのですか。 ○新野専門官  アメリカに関しましては、すごく国土が広いですから、州にまたがるようなこともあ りますので、やはり自立して、自分で必要なサービスを選択するということが原則で、 必要な場合は公的、私的な支援を受けているということがほとんどでした。 ○岩男部会長  私の場合は大分前の話ですけれども、私がお産をしたときにクラスがあって、一緒に 教えてもらった仲間で、実家へ帰ったなんて聞いたことがなく、実家という言葉が出て きたことは全くありませんでしたから、そういうものはまず考慮しないということでは ないかと思います。 ○坂本(事務局)  それでは、津崎委員の2点目の件なんですけれども、確かにステップファミリーは増 えてきているだろうと思われます。悲惨な虐待の死亡事例の中でもやはり目立っており ます。ですから、児童相談所でもそういった事例が目立つということだろうと思います 。それで、多様な家族形態が増加していくだろうということで、様々な家庭への支援と いうふうな観点から、今年度からですけれども、ステップファミリーに関する実態把握 、それから支援のあり方等に関して研究を始めていただくということになっております 。その成果を見まして、子どもあるいは家庭支援に関わるスタッフの研修内容などにも 生かしていけたらなというふうに考えております。 ○岩男部会長  研究を始めていただくとおっしゃったのは。 ○坂本(事務局)  厚生科学研究でそういったテーマを設定いたしました。 ○岩男部会長  それではどうぞ。 ○渡辺委員  遠藤先生、大日向先生のお話ありがとうございました。今、岩男先生がおっしゃった ことなどとも関連するのですけれども、これからの時代は血縁のつながりももちろん大 事ですけれども、体験のつながりということが恐らく新しい時代のお母さんや子どもた ちを支えるのだと思うんです。今、専門官が御報告いただいたように、欧米はもう個人 主義で、しかも多民族主義ということを割り切っておりますので、血縁とかそういうも のをもうないという前提でシステムが組まれているので、私もイギリスのロンドンの助 産婦さんたちを指導したことがあるのですけれども、その方たちは、産前産後のビジッ トをするというのが、その親子の大事な目に見えない支えになっていくので、毎日毎日 行くんだと。毎日行って様子を見て、そしてうまくやっているときには本当にさりげな く引いて、うまくいっていないときにはいくらでも時間を費やしてという、黒子のよう にうまくやっていくと、どんな意固地なお母さんでも1か月経てばなついてくる、いわ ゆるアタッチメントというのですか、信頼をしてくださると。一度その信頼ができてい て、自分自身の24時間の電話があれば、何かあったときに必ず電話をくれるというシス テムができるから、そういう意味で初期にお客様ではなくて、本当に頼りがいのある人 として関わってあげると、ずっとは必要ない。そして、その人がうまくやっていれば便 りがない、うまくいかなければ便りがあるという形になっていくから、そこら辺が大事 だというふうにいっていて、非常に合理的だというふうに思うんです。  それからもう一つは、日本でもこれから大きな問題になってくるのが、産後うつ病だ と思うんです。産後うつ病は日本の全国調査などでは、大都会では10人の産後のお母さ んたちの1.5 人です。産後うつ病というのは、恐らく退院後の自宅のスタートのところ で支えられていると随分発生を予防できるのではないかと思うんです。それは必ずしも 1か月以内には起きないから、1か月の後に起きてきたときに、産後うつ病というのは 、赤ちゃんがかわいくないという、人には言えないことですよね。特に、もともと開き 直って、いい母親にならなくてもいいというお母さんならそれは言えますけれども、自 ら完璧にないしは専業主婦をやっているお母さんが、我が子がかわいくないということ は、口が裂けても夫にも言えないから、日本の場合、気をつけないと表と裏のお母さん をつくってしまうと思うんです。臨床現場では、実はその産後うつ病だった方たちの、 産後うつ病の苦しい母子関係のそこからボタンをかけ違ってしまった後遺症の子どもた ちを見ている。その子どもたちは例外なくみんな敏感ですばらしく早熟でいい子たちな んです。いい子たちがお母さんの落ち込んでいる状態に対して、すごく責任を感じたり 、怖さを感じているということがあるんです。ですから、遠藤先生の助産師さんたちの ビジットの中に、産後うつ病の早期派遣と予防の観点は自ずと入っていらっしゃると思 うのですけれども、そこら辺と時期をかみ合わせていくというあたりは、もう一段階シ ステマティックにやりますと、例えば早期に重点を置けば予防ができて、発生率が低く なるかもしれないとか、あるいは何かあったときに必ず産後うつ病は10人に1.5 人起き るから、あなたが起きないという保証はないから、あなたが起きても言って構わないの だからというふうに言っておけば、例えば電話くださるとか、そういうふうに実態的に やりますともう少し効果的になっていく可能性があるのではないか。だから1か月以内 でいいとは思わない。やはり2か月、3か月見なければいけない人もいるのではないか とかというふうに、そういうようなことを伺っていて思ったのですけれども。 ○岩男部会長  ありがとうございました。実は時間がもうきてしまいまして、本来ですと45分には事 務局の方に渡すということになっておりましたが、今、渡辺先生が御指摘になったよう な柔軟性というのはすごく大事だと思うんです。時間がないのに、こういうことを言っ て恐縮なのですけれど、私の場合でも、訪問看護婦さんがお医者さんと掛け合ってくれ たのです。つまり私は何もわからなくて、これは異常だとかなんとかということはわか らなかったのですけれども、看護婦さんがこれはすぐお医者さんに連絡をとって、あな たは再度入院した方がいいというような判断をしてくれた。お医者さんとの話し合いと いうのは、患者の立場というのは非常に弱い立場で、なかなか表現がうまくいかないと いうようなこともありますので、大変に助かったということがございます。そういう専 門性の向上という話もございましたけれども、すごく大事な支援のシステムではないか と思います。  それで、次回につきましては、行政、地域社会による支援の現状についてということ で、引き続き意見交換をするということになっております。 ○皆川総務課長  ありがとうございます。きょう別にまた、母子寡婦福祉法等の一部を改正する法律案 を提出しておりますが、これはまた次回でも結構です。また時間があるときにお時間を いただければと思います。 ○岩男部会長  それでは、時間がまいっておりますが、何かぜひこの場で御発言をということござい ましたら。松原委員どうぞ。 ○松原委員  調査をということがありましたので、きょうは何人かの先生のお話を伺っていて、例 えば大日向先生は、育児不安は持ってもいいんだと。では、病理的な様相を呈さなかっ た人たちが多分いるはずです。それから、津崎委員がおっしゃった、いわゆる継父、継 母が心配だ。しかし、虐待を起こしていない家族がいるはずなので、そういうのは全部 個人的な資質だけではないと思うので、ぜひ何らかの機会に、病理的に様相を呈さなか ったのは、どういう社会的なサポートがあったのか、いわゆる継父、継母、ステップフ ァミリーになっても、そういう問題を起こさなかったというのはどういう社会的なサポ ートがあったのかということを明らかにすると、全体的な問題を考えるときに有効だと 思うんです。ぜひそのことをお願いをしたいと。1点だけ、すみません。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、本日の会合は以上でおしまいにさせていただき たいと思います。次回はいずれ正式な御案内は事務局から参ると思いますが、6月の11 日火曜日の午前10時から12時ということになりますので、どうぞよろしくお願いをいた します。また、本日と同様に何人かの先生に御報告をお願いすると思いますが、その節 はどうぞよろしくお願いをいたします。時間の配分が悪くて申しわけございませんでし た。本日はお忙しい中、どうもありがとうございました。                                     (了) (照会先)  雇用均等・児童家庭局総務課総務係  03−5253−1111(7823)