02/04/19 第5回「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」議事録        不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第5回)議事録 1 日時   平成14年4月19日(金)10時から12時 2 場所   厚生労働省専用第19会議室 3 出席者  (1) 委員(五十音順)    岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)    小幡純子(上智大学法学部教授)    加藤和夫(帝京大学法学部教授・弁護士)    毛塚勝利(専修大学法学部教授)    諏訪康雄(法政大学社会学部教授)    山川隆一(筑波大学社会学系教授)  (2) 行政    坂本統括官、鈴木審議官、岡崎参事官、清川調査官、荒牧補佐、山嵜中労委第一    課長 他 4 議事概要  ○ 前回の議論をふまえた上で、事務局の方で取りまとめた論点案について説明願い   たい。  ○ (資料No.1「不当労働行為の在り方に関する論点(案)」についての説明。) ○ それではこの論点案をめぐって、ご自由に意見を出してもらいたい。  ○ 表現上の問題であるが、1のニで、「取消訴訟を提起できる仕組み」となってい   るが、取消訴訟を提起できない仕組みというのは憲法上考えられないと思う。    これらの仕組みをどう考えるか、とかいったような表現の方がいいと思う。  ○ 1のロで、「一般にADRの特色として、簡易性、迅速性、廉価性、専門性・・・   」とあるが、これは一般のADRに共通することなのか、あるいは不当労働行為の労   働委員会だけの特色なのか。    「救済の独自性」ということもADRの一つの特色といえる面があると思うが。  ○ 柔軟に解決するという観点はどうか。  ○ 解決の柔軟性はいえることだと思う。 ○ 「柔軟性」を加えておく。  ○ 弁護士がついているかどうかという資料はあるのか。まれに小規模の事業場など   では使用者側についていないケースがある。こちらでいろいろと教えながら審理を   進めるという感じになる。  ○ 中労委のケースだと、現在継続中の事件で97.5%に代理人がついている。  ○ 3のロのところで、「当事者主義的な運営」と書いてあるが、「当事者主義」と   いうよりはいわば当事者まかせに近い運用をしていることが問題なのではないか。   もう一つは、ハのところでいわれている公益委員の訴訟指揮が重要ではないか。「   職権尋問の積極的実施」というのもその中に含まれるが、審理迅速化の規定をどう   やって積極的に使うかということだと思う。  ○ 裁判所は当事者主義であり、一方、労働委員会は職権主義という原則をとってい   るのではないか。裁判所ではどのような運用がなされているのだろうか。  ○ 労働委員会審理の規則や実態からみてとうてい職権主義とはいえないと思うが、   裁判では、当事者主義をいかに無駄なく、充実した形で運用するかという意味で、   訴訟指揮を行い、裁判所がいろいろと手を貸すという形になっている。  ○ 労働委員会の制度の仕組み自体は、当事者主義というより審問主義というのが明   確にあると思うが、その辺の違いを意識してはどうか。もっと本来の職権主義的運   用でいいのではないかと。労働委員会制度はそういう仕組みになっているのではな   いかと思う。その辺の違いをそもそも当事者は意識していないのではないかと思う   。  ○ 民事訴訟の場合は当事者主義であるが、行政訴訟の方が多少職権主義でもいいの   ではないかというのが一般の理解だと思うし、労働委員会の場合も同様に当事者主   義でなくてもいいはずであるが、現実には当事者主義的な運用を行っている面があ   る。  ○ 実際、民事訴訟の方がはるかに職権的な部分が多く、裁判官は訴訟指揮をいかに   効果的に行うかについて心血を注いでいる。それに比べて労働委員会は、当事者ま   かせの感がある。  ○ どのような主張をし、その立証活動をどのようにするかという点については、そ   の書証なり人証を出すという部分では当事者が一番事情をよく知っているので、こ   こは当事者にまかせるしかないと考える。問題は、その後の審理の進め方のところ   で、どこまで争点を絞れるか、特に背景立証のところを審査委員がイニシアチブを   とって、どこまで整理して審理を行えるかというところが大きな問題である。    本来は、労働委員会規則を見ても、審査委員の審理指揮は可能ではあるが、調査   をやっていく過程で、いろいろと説得はするものの、なかなか最終的に折れてくれ   ないことが多い。陳述書ではなく、とにかく審問の場で証言したいといったことが   多々ある。  ○ 参与委員がなんらかの形でそれをサポートするのではないか。  ○ 参与委員にサポートしてもらうこともあるが、委員によっては対応に差があると   は思う。当事者が望むのであれば審問の場で証言しても良いのではないかという心   情が、特に労側委員の場合あるのではないかと思う。    それと民事訴訟法なら必要ない証拠は採用しなくていいという規定がある。労働   委員会規則では、採用しないということを正面からは規定していない。  ○ それは前提だと思うが。  ○ ただ、それを正面から規定していない。  ○ 尋問制限の規定があるということは関連性のない証拠調べはしないということを   前提にしている。  ○ 要するに、この証拠は採用しないと正面切っていえるのか。  ○ それは当然できると思うが。  ○ そこがむずかしい。  ○ そこは訴訟の裁判官と労働委員会における公益委員の違いなのではないか。  ○ 民事訴訟法のように正面から規定してあれば、何かいわれても条文に書いてある   ということで理由になる。それが悩みどころである。  ○ 理屈は当然証拠の採否はできると思うが、必要なら改正して確認的に規定を入れ   れば良いのではないか。  ○ 結局調査の過程でかなり当事者と交渉して、説得していると、使用者も当然反論   してくるから審理がどんどん長くなってしまう。  ○ 組合が裁判において裁判官に期待しているものと違うものが労働委員会にはある   のではないかと思う。訴訟では主張しても仕方がないということも、委員会なら主   張できる。  ○ そういう裁判もいくつかある。しかしそればかりやっていると審理ができなくな   ってしまう。それをいかに制限して審理を迅速に進めるかについて裁判官は苦労し   ている。    公益委員もいろいろ苦労はあると思うが、どうやって効率的に、円滑にやってい   くかということをよほど考えないと、何を審理しても結局、現状と同じことになっ   て、やたら時間がかかってしまうだろう。  ○ 労働委員会の位置づけが、とりわけ労働組合にとっては団体交渉の延長線上とい   う色彩が強いことがある。労働組合にとっては運動論的な主張を行う場所となって   いる面がある。それにふりまわされることもないとはいえない。また他方で、それ   を制限しようとすると次々と別の問題が起こりうる。これが審査制度の迅速化との   間でうまく整合しないところである。  ○ その場その場でどう指揮するかというのは、別の問題だと思う。審理の場でその   証言を制限したら、相手がどういう反応になるか、反応によっては審理が長引いて   しまうのかどうか、ということを裁判の場でも常に考えながら審理を進めている。    つまり、この場ではこう対応するのが一番適切であるとの認識の上に立って審理   を進めている。  ○ 労働委員会は、公労使の三者構成であり、その点裁判所と差異があり、単純に比   較することはできない。労働委員会もすべて当事者まかせというわけではないが、   それにしても今の指摘のとおり、全体としては裁判所よりずっと腰がひけていると   の印象を与えるかもしれない。  ○ 1ページの和解のところで、「労働委員会では和解による解決が志向されている   」という記載は気にかかる。労働委員会だけでなく、当事者も実は和解で解決しよ   うと考えている部分があるのではないか。  ○ 志向というより重視では軽すぎるか。  ○ 地労委では9割近くが和解であることを考えると、重視というより志向といえる   だろう。  ○ ハのところで、和解手続きと審理手続きを分離するというのは具体的にいうとど   ういうことなのか。和解の段階と審査の段階を分離するということなのか、それと   もアメリカの制度のように和解担当者と審査担当者を分離するということなのか。  ○ それはいろいろある。場合によっては地労委が和解を行い、中労委が判定を行う   ということもある。  ○ 「あっせん」と違うのか。  ○ 調整が不調に終わった場合、最終的には判定が背後に控えているから和解という   機能が成立する。判定が分離してしまうと、果たして調整がうまく機能するのかわ   からない。しかし、両者を分離しないでやっていると無意味に審査が継続し、下手   すると争点がわからなくなってしまうおそれがある。  ○ 裁判所で弁論兼和解というのがあったが、手続内容を見るとやはりほとんど和解   作業を行っている。争点整理と和解を分けないとその弊害はかなり大きいので、新   民訴法ではその点を明解にした。しかしながら担当者まで一々分けるのは効率の上   でマイナス面が大きいのではないか。  ○ しかし地労委で和解ができない場合は中労委で判定するというように当事者が審   査の流れを承知していれば、和解は和解で早く終わらせるようにしようという心理   が働くかもしれない。  ○ それと、中労委で和解が成立しやすいようにするには、どういう命令を出すべき   かということも地労委としては考える。要するに初審段階で命令が出れば、それを   土台に中労委で和解できるのではないかということを考えている。  ○ そのような制度にするとすれば、東京だけでやるのではなくて中労委の職員が出   張するか、あるいは地方ごとに中労委の出先機関がないと、地方の当事者に負担が   かかってしまうという問題が生じる。    他に気づいた点を指摘してほしい。  ○ 3ページの審査体制のところでも記載されているように、審査委員が必ずしも法   律家ではないということと、弁護士や裁判官でない人は、我々学者も含めて、手続   の面で非常に実務に弱い。そうすると、手続ということについてなんらかの形で公   益委員などの研修を考えても良いのではないか。実体法の問題はともかくとして、   手続法の問題とか審理指揮の問題とかは、今は完全にOJTでやっているので、研修   なしでやっているというのは非常に問題があると思う。   ○ 法律家以外の委員に対しては手続の面と労働法の両方、弁護士や元裁判官の人に   対しては労働法を、労働法の学者に対しては手続の面を、それぞれ研修する必要が   あろう。要するに公益委員の特性に応じた適切な対応が必要ではないか。    ただこれは最初のヒアリングなので、あまり細かな意見を言われるとせっかくの   ヒアリングが木を見て森を見ない結果ともなるので、全体としてもっと大局的な意   見でもいいのではないかという気がしている。時間を2時間ぐらいにして、そのう   ち1時間ぐらい意見を述べてもらい、残りの1時間がディスカッションということ   で良いのではないか。    他にこれは落ちているとか、これはいらないという意見はないか。  ○ これは当然論点になると思うが、司法審査との関係で現在の労働委員会の実態が   変わらないまま審級省略を採用した場合の弊害について論議してもらいたい。これ   は裁判所が一番関心を持っている点である。    裁判所へのヒアリングを行ったらどうか。司法審査の問題をテーマにするのであ   れば、それは是非聞いてほしい。    今の高等裁判所は以前に比し審理期間も短いし、新しく証拠調べするのも特別の   場合に限られるので、そういう実情もふまえて審級省略のことを考えてほしい。だ   から省略するのであれば、高裁を省略するのか、地裁を省略するのかをも議論する   必要があると思う。  ○ 裁判官からのヒアリングということでいえば、司法制度改革の労働検討会では、   5月1日に裁判所からのヒアリングがある。その資料等は公表されるので参考にな   るのではないか。  ○ それと重なる点も多いかもしれない。  ○ 代理人の役割についてはどうか。特に審理の迅速化という観点からは期日の指定   の仕方などについて、連合、日経連とか労働委員会に聞くのはどうか。  ○ 審理計画の中に入るかと思ったが、確かに具体的に考えると期日の指定というの   を入れておいた方がいい。  ○ 前回のアンケートの中で、事件処理計画の作成についての調査があり、興味を持   ったが、実際にどこまで計画的な審理が行われているのだろうか。  ○ 事件によっては事件処理計画を立てる場合がある。早い段階で証人申請が出てく   る場合は、審問回数が把握できる。手続は、最初に調査を行うわけだが、標準的な   パターンでいえば、3〜4回程度行うこととなる。その後に審問を行うが、間隔は   1ヶ月程度空くことになるので、申立人から証人が多数申請され、審問回数が多く   なる場合などは、結審まで1年近く経過してしまうことが予想できる。そこで審理   を計画的に行うため、申立人に理解を求め、証人の絞り込みを行うよう努めたりし   ている。    また特に多数の代理人が選任されている場合などは、当事者から次々回まで日程   を決めてほしい旨の要望がでることがある。  ○ 月1回の調査・審問はどのぐらいの時間を予定するのか。  ○ 2時間程度ではないか。通常、月1回あるいは3週間に1回は 入る程度ではな   いか。委員は非常勤なので、このあたりが限界ではないかと考える。  ○ 予め審問等の日程を入れるのは次々回までが限界ではないか。  ○ 中労委の場合は初審を経ているので、主張・立証が相当に出尽くした段階で審査   を行うことになる。したがってどこを新しく主張・立証したいかということを絞れ   る。したがって、その日のうちに主尋問・反対尋問を同日に行うのを原則としてい   る。ただし期日の指定は次回と次々回くらいしかできないのが実情ではある。それ   に公益委員だけでなく両参与委員も非常勤なので、あまり先まで予定は入れられな   い。特に労側の参与は現役の組合の役員であったりするので、多忙であり日程確保   が難しいこともある。  ○ 他には何か意見はあるか。なければ論点(案)に関する議論はここまでとしたい   。これまでの意見をふまえ、事務局に論点の修正をお願いしたい。今後は、この論   点ペーパーを関係団体に示してヒアリングに入りたい。    次にヒアリングの実施方法についてであるが、その方法等について事務局から説   明をしていただきたい。  ○ (資料No.2「研究会におけるヒアリングの実施について(案)」の説明。)  ○ それではご意見いただきたい。ヒアリングの時間配分であるが、半分を意見陳述   とし、残りを質疑応答にする感じでいいか。  ○ 労働者団体と使用者団体で、どのレベルの人が出てくるかによって意見が違って   くる。実体を知っている人が出てくるのを希望する。  ○ 弁護士などの他のユーザーについては、論点を公開し、パブリックコメントの形   で広く意見を集めるのか。  ○ 事務局はそういう考えだが、それについても何か意見があれば発言をお願いした   い。  ○ このヒアリング項目に対する答えというだけではなく、労使もある程度自分たち   の考えを持って発言してもらいたい。積極的な改革提案があれば、それも含めて示   してもらいたい。  ○ 労働委員会の事務局OBで適当な人がいれば話を聞いてみたい。  ○ ヒアリングは4回で終わりなのか。  ○ 4回でなければいけないというわけではないが、あまり回数を増やしてもどうか   と思う。  ○ 他に意見はあるか。なければヒアリングの実施についてはこれまで意見いただい   たような方向で事務局にご検討願いたい。  ○ 公益委員について、どの地労委からヒアリングを行うのかをご議論いただきたい   。  ○ 申立件数については地労委間で格差がある。申立件数の多い地労委からヒアリン   グを実施するのか、そうでない地労委を対象とするのか。あるいは、申立件数が平   均的な地労委からヒアリングを実施するというもの一つの考え方ではある。    申立件数の多い地労委なら都労委、大阪地労委、北海道地労委、神奈川地労委、   福岡地労委が考えられる。  ○ 愛知地労委はどうであろうか。東京などに比べれば事件数は少ないが、それでも   一定の申立件数はある。  ○ ある程度事件数があって、改革意欲を持って具体的に何か取り組んでいたり、検   討したりしている地労委の方に来ていただきたい。  ○ 基本的に法律家の委員にヒアリングを行うことでよいか。  ○ 中労委でもかなり改革のための検討会を開催していると聞いているが、その検討   会のメンバーの方から意見を聞いても良いのではないか。  ○ では、ヒアリングをするにあたって聞いてみたい点があれば意見を出してほしい   。  ○ 現在の問題点についてそれぞれがどういう改革案をもっているのかを聞いてみた   い。  ○ 当事者は労働委員会を「ミニ裁判」だと認識しているのか。また労働委員会、特   に地労委に何を期待して、どういう機能を果たすものと考えているのかを聞いてみ   たい。  ○ 最初から労働委員会に申し立てないで裁判所に行くのはどのくらいの件数なのか   。  ○ 不当労働行為を理由とした判決は、年間10件ぐらいあり、それほど多くないと思   う。  ○ 裁判と労働委員会、両方提訴することがある。  ○ どちらか選択させるようにすると、労使関係にどういう変化が起きるのか。  ○ それはわからない。最近使側から、裁判所よりも労働委員会で和解したいという   ことを代理人から聞いたことがある。なぜかというと、その方が参与委員がついて   いることもあって、実情をわかっているので、和解成立後の労使関係がうまくいき   そうな気がするとのことであった。労側はどう思っているのかわからない。  ○ 訴訟を提起する場合であるが、争点は不当労働行為だけでなく、他にどのような   ことを争点としているのか。  ○ 労組法第7条違反として救済命令を労働委員会に求めている一方で、裁判の方で   はこれは解雇の事案だからということで解雇無効を訴えている場合がある。  ○ 団交拒否といいながら、争点の本質は不当労働行為というより解雇事案というケ   ースがある。その場合、労働委員会に申し立てている以上、不当労働行為以外のこ   とを主張したとしても、労働委員会では審査できず、個別に訴訟を提訴するしかな   いということを説明している。  ○ 紛争解決の手段として、労働委員会と裁判所の選択はどのようになされるのか。   紛争解決システムとして労働委員会と裁判所ではどのような役割の違いがあるか。   どのシステムを利用するかによって、その後の労使関係にどのような影響があるの   であろうか。  ○ 経験からいうと、当事者はそこまで考えていない。要するに使えるチャネルは使   うという感じではないか。  ○ これから裁判所の審理はどんどん早くなってくる。そうすると裁判では早く判決   が出る。しかし、弁護士の方でこれは負けそうだということになると労働委員会の   方を選ぶのではないか。そのような選択がおそらく起きてくるのではないか。  ○ 両方かかっている場合であるが、労働委員会の方は、裁判の状況を見守るという   結果になってしまうケースがある。  ○ 裁判所に提出した書面と同じものを出してきて、そこには不当労働行為以外のこ   とがかなり記載してある。  ○ 場合によっては、この争点は労働委員会で争うのか、裁判所で争うのかというこ   とを当事者に聞くこともある。  ○ 聞くと不当労働行為であるので労働委員会で争うと主張するが、書面上は違った   りする。  ○ 必ずしも労働組合側は簡易迅速を求めてないということなのか。  ○ 当事者、特に組合側であるが、早期に命令を求めていながら、証人尋問の際には   絞り込みをしないで申請していることがある。  ○ 裁判所は少なくとも審理期間半減に向かって最大の努力をするので、労働委員会   でもそれと同じような問題意識を持っていないと乗り遅れてしまって、最終的には   制度としてあまり使われなくなるのではないかという気がする。  ○ 確かに、例えば合同労組が申立人となっている事件などは、実際には不当労働行   為以外の個別解雇だったり賃金差別が争点だったりすることがしばしばであること   から、裁判で解決を求める方が良いケースもある。労働委員会だと団交促進の部分   しか対応できなかったりする。    しかし、労働委員会はともかくコストがかからないし、行けばいろいろと親身に   なって主張を聞いてくれるという面がある。  ○ そこに裁判所とは違う労働委員会への期待感があるのだろうと思う。そういう期   待に応えるのが労働委員会だとすれば、「ミニ裁判」のようなことをしなくてもい   いということにもなる。  ○ 裁判所が労働事件の審理期間を半減するということになると、労働委員会に対す   る第三者の評価が厳しくなるというのが率直な感想である。しかし労働委員会が同   じようにしようとすると、制度面の問題だけでなく、労使の反発も予想される。す   べての当事者が期間を半減することを必ずしも期待していないという現実が一方で   あるような感じがする。そこで何ができるかが問題である。  ○ ユーザーの側でも、労働委員会の審理期間をできるだけ長く引き延ばした方がい   いというニーズがあるということなのだろうか。  ○ そういうことを許すと制度自体に対する不信が強まる。  ○ 裁判所だと訴訟費用がかかるが、労働委員会なら申立や審査の費用は無料である   。両方係属してもコスト的には問題が生じない。    だから労働委員会の場で団体交渉的なことを行うなど、本来の紛争解決と違う目   的がそこに入ってきてしまう。  ○ それとの関連であるが、少数で交渉力の弱い組合の場合などは、労働委員会での   審問の場を借りて団体交渉のようなことをやってしまう面もないではない。そのよ   うな組合は、必ずしも労働委員会での審理が早期に終結しない方がいいと思ってい   るのではないか。    このように労働委員会の審理は必ずしも判定機能だけで動いているのではないと   いう現実が一方である。労使の委員は必ずしもそれを悪いことだと思っていない感   じがする。  ○ 労使紛争の解決という本来の機能を棚上げして、そのようなことをしていると制   度としては立ちゆかないのではないか。そういうふうにならないためには何をすれ   ばいいのか。参与委員が判定機能の方にまで関わるとか、いろいろな解決方法があ   ると思うが。  ○ 参与委員は、審理の過程で当事者を説得してもらうなど軌道修正の役割を果たし   てもらっている。  ○ 改革の方向性は2通りあるのではないか。本来のあるべき姿に戻すか、現実の労   働委員会の機能にあわせた改革をするか。  ○ どちらの選択をするにしても現行の運用をかなり見直す必要が生じる。  ○ 労働委員会で団体交渉的なことを行うことは、調整という側面からみれば、一定   の役割を果たしていると考えることができる。しかしそれが審査手続の中で行われ   ると、本来の趣旨・目的とは違ってくるのではないか。    最終的に命令を発出するという判定機能が背景にあればこそ調整がうまくいくと   いう面があるが、判定と調整の手続の兼ね合いというのはうまくいかないものだろ   うか。  ○ 争点とは関係のない事項を尋問すると特に使用者側の代理人から異議が出るケー   スがある。  ○ 陳述書を活用し、証人申請を制限していけば、多少時間的にも制約はできるので   はないか。  ○ 審問の途中で和解作業を行う場合があるが、和解は調査段階で集中的に行うよう   にしたらどうか。そこでは多少、団体交渉的な進め方になっても、ある程度は容認   することとし、和解が不調なら集中的に審問を行うようにしたらどうか。もちろん   その場合は、結審後は早期に命令を出せる体制になることが必要になる。  ○ 司法審査でも、労働委員会の審理の段階で争点整理がされていないと、記録の中   から争点を見つけだすのに非常に時間がかかってしまう。争点が整理されていれば   結審まで時間をかけずに済むのではないか。  ○ その通りだと思う。そうすると次に問題となってくるのが、審理の途中で事務局   の担当職員が異動したり委員の交代が起きたりする。これが今の制度の問題点の一   つではないだろうか。  ○ 陳述書を見る慣行が定着して、証人の採否、立証事項についての審査委員側の明   確な取捨選択権が出てくれば、かなり整理ができると思う。ただ、申立書の記載が   わかりにくいものがあり、その場合、そこからどうやって要件事実を引き出すかと   いうのが難しい。  ○ 申立書の書式を工夫することにより、ある程度解決できるのではないか。  ○ もう一つ、労働委員会が他の判定機関と比べて非常に特殊だと思う点は、単純に   今ある紛争を解決しようというだけではなくて、将来にわたって労使関係をどうす   るかという観点が必要となるということではないか。単に要件事実をもって判断す   るのはいかがなものかという問題が出てくる。    いずれにせよ中労委が中心となり少しずつ実務の流れを作っていく方が適切な気   がする。    例えばこの地労委では労使関係の背景的な主張については、審問ではなく陳述書   を出させているというような、ある意味での慣行が出来上がっても良いのではない   か。  ○ 指摘があった事務処理の運用が、地労委ごとに異なっているという点については   どうか。申立件数が少ない地労委では、申立があると公益委員全員が出て何回もや   っている傾向があるのではないか。    労働側の場合、全国的な組合だったりするので、地労委間の差がわかりやすい。   あの地労委では審問で証言できたのに、ここの地労委では陳述書だけで済ましてい   る、ということにもなる。  ○ 弁護士も地労委をまたいで代理人として選任されているケースもある。  ○ 他に意見がなければ本日はこれで終わる。次回はヒアリングを行う。最初のヒア   リングは地労委の公益委員に対するヒアリングを行う(6月7日10時から)。                                      以上             照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係 村瀬                 TEL 03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734