02/04/15 第4回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会議事録       第4回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会            日時 平成14年4月15日               13:00〜          場所 経済産業省別館825会議室 ○新木室長  傍聴人の皆様にお知らせいたします。傍聴にあたっては、すでにお配りしてある注意 事項をお守りくださるようお願いいたします。  それでは矢崎部会長、よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ただいまから医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会を開会させていただきます 。委員の皆様方におかれては、お忙しい中をご出席いただきましてまことにありがとう ございました。本日は7名の委員の方の出席をもちまして、この検討会を開催したいと 思います。欠席者は川村委員、堺委員、土屋委員、長谷川委員、山浦委員です。  本日の主な議事は、「医療安全対策ネットワーク整備事業」の第2回報告についてで す。この報告をしていただくために、前回の会議と同様、武藤専門委員及び日本赤十字 社看護婦幹部研修所の講師の増子ひさ江参考人にも今回ご出席いただいております。  それではこれから議事に入らせていただきます。まず、事務局より資料の確認をお願 いします。 ○新木室長  資料の確認をさせていただきます。本日お配りしております資料は、資料1−1から 資料1−2、資料1−3、資料2、資料3、参考資料の1、2です。資料1−1は、医 療安全対策ネットワーク整備事業、第2回目の結果と分析の概要です。資料1−2は、 全般コード化情報の単純集計のデータです。  資料1−3は、重要事例の情報についてで、参考として重要事例情報のすべての結果 を載せております。また、資料2として、医薬品、医療用具等検討部会による「医薬品 ・医療用具・諸物品等情報の分析について」と、その元となるデータを添付してありま す。  資料3は、今後の医療安全対策ネットワーク整備事業の進め方で、後ほどご検討いた だきます。なお、参考資料1として、医療安全対策ネットワーク整備事業の概要、参考 資料2として、現在、総会のほうでご検討いただいている、医療安全推進総合戦略案の 概要を載せております。 ○矢崎部会長  それでは本日の議題に入らせていただきます。まず第1は、医療安全対策ネットワー ク整備事業の第2回報告です。これに関して、インシデント事例の分析手法等について 検討を行っておられる武藤専門委員及び同検討部会に属しておられる増子参考人などか ら、報告の分析結果をいただきまして、その上で最後に質疑応答を行っていきたいと思 いますので、よろしくお願いいたします。  それでは武藤専門委員からお願いいたします。 ○武藤専門委員  それでは報告させていただきます。資料1−1をご覧ください。今回は11月22日 に引き続き2回目の報告で、平成13年11月1日から平成14年1月31日までの3 カ月を調査対象としております。今回の特徴は、報告施設数が113、前回の78施設 に比べて1.5倍と増加していることです。調査の対象期間が前回より長く、また、こ の調査に対する関心も高まって、このように増えたものと思います。  情報別報告件数は、全般コード化情報については、5,928件です。前回の2,4 06件に対し2.5倍ほど増えています。  重要事例の情報は、446件で、前回110件でしたので、これも4倍ほど増えてい ます。  そのほか医薬品等の報告に関しても増えております。情報量が増えて、分析のほうの クロス集計の分析の結果や、重要事例に関する分析もかなり進みました。この調査事業 は、2つのグループに分けて検討しております。1つが、全般コード化情報に関する分 析で、これは橋本先生から報告していただきます。2番目が「重要情報」、これは文字 情報として集めている情報で、この分析に関しては増子参考人から報告していただきた ます。  最初に橋本委員のほうから、全般コード化事例の分析結果についてお願いします。 ○橋本委員  コード化された情報を分析する「全般コード化情報」分析の第2報ということでお話 をいたします。  資料は1−2です。これは単純集計についての図表です。3カ月の間に、113施設 からコード化情報の事例数が5,928件集められました。これを前回同様に、まず単 純集計、それからいくつかのものについて範囲を設定して集計。さらに発生場面、内容 、相互関係を見なければならないと思われるものについては、クロス集計を行いました 。重要な項目としては、当事者の発見者、発生場面、発生要因、等を検討しました。  物的項目は確定時期、発生曜日、発生時間帯、発生場所、性別、年齢、心身状態、発 見者、職種、勤続年数、部署配属年数、発生した場面、発生した要因、インシデントの 影響度です。これらの1つ1つの変量について概算した後、クロス集計を行いました。 クロス集計も、ほぼ前回と一緒ですが、データの量が増えたために検討が可能になった 項目があります。それは、「影響力」です。前回の有効回答2,069ではクロス集計 に耐えられるようなものが出ないので、ちょっと保留したいような言い方をしましたが 、今回は少し見ることができたと思います。ただ、これは、あくまでも前回よりはとい うことです。  発生場面と発生内容ですが、分析しているのは、発見者と当事者の関係。当事者の職 種と発生場面。当事者の職種と発生要因。発生場面と発生要因、発生場面と影響度とい うことで、この項目でクロス集計を行っています。  分析結果についての概要が2頁以降に書いてあります。  まず、全体の報告数が増加しただけでなく、前回報告が少なかった、母数が少ないと 出てこなかったであろう手術や処置に関する報告も出ています。ただこれが、頻度が少 ないためにということなのか、それともまだ出すことに関してバリヤーがあるのか、そ こら辺はよくわかりません。つまり、この頻度が正しいかどうかはわからないというこ とです。  2番目、各項目についての単純集計の結果は、1回の集計とおおむね同様の傾向でし た。  3番目、クロス集計により人工呼吸器を使用する場面での点検管理エラー、移動中や 排泄介助のときの転倒が多い。それから、輸血及び医療機器等の使用場面での影響度の 大きい事例が多いことは、結果として得られました。影響度分析がある程度できたとい うことです。  要因としては、確認行為に問題があったというふうに表現されるものが多い。ただ、 システムの問題という認識があるかどうかは別の問題です。  「インシデントの発生状況」ですが、月別の発生件数は、各月とも2,000件です 。  曜日を見ると、休日はインシデントの発生が少ない。平日はインシデントの発生件数 は曜日による大きな差はないと言ってよいと思います。これは、活動している量に依存 していることだろうと思われます。  時間帯別に見ると、朝の6時台から、つまり病人が起き出す頃から、数が多くなって いきます。そして、10時から11時台というのが、ピークを示しています。これは前 回も同じような結果でした。この辺は変わっていません。  発生場所では、当然ですが病室がいちばん多いということになります。その他の場所 では、集中治療室、あるいは薬局、輸血部での発生が比較的多いように観察されます。  患者さんの性別でいうと、男性が多いということです。これも前回と同様です。年齢 は50歳から80歳が多く、10歳以下の子供たちのインシデントもそれなりに多く報 告されています。報告されたものに基づき作成したグラフですので、入院されている患 者さんに対する量ということではないということを申し添えておきます。  患者の心身状態については、「障害なし」というのがいちばん多く1,800件くら いです。それから、「ベッドの上で安静にしている」「歩行障害」の順で、こういう要 素をもった患者さんたちが多かったということです。この場合、「障害なし」というの を除いて考えるべきかもしれません。  発見者は、6割近くが当事者、本人以外でした。前回は5割くらいだったと思います が、多少のブレがあるということです。患者本人や家族、他患者による発見も1割以上 を占めています。これをどう読むかだろうと思いますが、インシデントが起こるような 状況に対して、何人かの目でそれなりに見ていれば、本人しか発見できないということ より逆に良いという考え方も成り立ちます。  当事者(または報告者)の職種は看護職が圧倒的に多い。次いで医師、薬剤師です。 一般的に医師からのインシデント報告が少ないということで、前回も2,069例中9 0例くらいでしたが、今回は347例が医師から報告されています。比率としては、少 し医師の報告数が増えてきました。  職種経験年数が1年未満の従事者によるインシデントが約2割で、部署配属年数も経 験年数と比較的同じような傾向を示しています。  発生場面では、「処方・与薬」が最も多く、チューブ類の使用とか管理、療養上の世 話、が多い。  発生要因では、「確認不十分」が最も多く、以下、「観察」「勤務状況」「心理的条 件」「判断」「連携」の順です。  間違いが実施される前に発見された事例は、全体の約4割である。そのうち6%の事 例は、間違いが実施されていれば、中程度の影響が出た可能性のある事例であったとい うのが、影響度からいわれることです。  次にクロス集計で見ると、「処方・与薬」については、投与量の間違い、与薬時間、 日付間違い、無投薬が多かったとことが分かります。注射では速度間違いも多かった。 調剤では、数量間違いと取り違えが多かったということです。  医療機器の使用に関していうと、人工呼吸器では点検管理ミス、輸液・輸注ポンプで は設定忘れや電源入れ忘れといったミスが多かったということです。  ドレーン・チューブ類は、いくつか問題があると思いますが、半数が自己抜去と、相 変わらず多いということです。中心静脈ラインでは、自然抜去や閉塞、末梢静脈ライン では点滴漏れや接続外れが、自己抜去以外では多く見られます。  検査については、患者の取り違えは採血と一般撮影時に多い。採血では検体採取時の エラーが多いということです。療養上の世話も、転倒転落が多い。移動中、排泄介助や 移動介助時の転倒が多かったということになります。  その他のクロス集計としては、当事者と発見者をクロスした結果によると、医師・薬 剤師が当事者である場合には、当事者本人よりも、同職種や他職種による発見が多いの に比較して、看護師が当事者の場合には、半数近くが当事者本人による発見でした。  当事者職種と発生場面、発生場面では、医師・看護師ともに、「処方・与薬」に関す るインシデントが最も多いほか、医師はオーダー・指示出し、看護師はドレーン・チュ ーブ類の使用管理や療養上の世話、療養生活そのものが多かった。当然こうなるのかな という気がします。  「職種と発生要因」、各職種とも確認不足によるインシデントが多かったという報告 が多く、医師・看護師では、連携の悪さを原因とするものが多いのに比較して、薬剤師 では少なかったということです。  発生場面と発見要因をクロスしてみると、多くの場面で、確認の問題に起因するイン シデントが半数以上を占めたのに対して、システムの問題によるものは1割にも満たな かった。確認の問題というふうに認識されているということです。  発生場面と影響度ということですが、輸血及び医療機器等の使用管理の場面では、間 違いを実施していた場合には中程度以上の影響があったと考えられる事例が多かったと いうことです。  今回の考察としては4点ございます。施設数と事例数に関していうと、施設数も事例 数も増加しており、対象機関の積極的な参加意欲が見られるということです。そのほか に、報告するシステムがそれなりに病院で整備されてきたということもあるかと思いま す。  2番目、今回の集計では、前回は報告が少なかった手術・処置に関する事例や、影響 度が大きい事例の報告が増加しました。事例数がボリュームが増えたということで上が ってきたということに加えて、この報告事数が定着してきたということも見逃がせない と思います。  3番目、さらに詳細な検討が必要と考えられる領域です。「処方・与薬」や「転倒・ 転落」は、インシデントの発生件数が多いことから、また、輸血や医療機器等の使用管 理の場面では、間違いを実施したりした場合の影響が大きいことから、これらは今後さ らに事例を分析するなど、詳細に検討すべき領域であると考えられます。事例数の多い もの、それから影響度の高いものというくくり方ができるかなというのが、今回考えら れたことです。  4番目は、要因分析についてで、先程来申し上げているように、確認の問題という報 告が出てきたインシデントが多くを占めます。その一方で、システムの問題によるもの が少ないということは、まだインシデントの要因を個人の問題として捉えていることが 多いのではないかというふうに推測されました。システム全体を見直していくという発 想につながっていっていないのではないかという、そういう現状を示したものと考える ことができます。  今後、個人の取組みだけではなく、システム全体で事故を予防していくことが重要で あることから、分析手法を普及し、的確な要因分析が行われるようにする必要があると いうことになります。 ○矢崎部会長  それでは引き続いて増子参考人、よろしくお願いいたします。 ○増子参考人  重要事例情報の分析について報告させていただきます。今回の収集期間は平成13年 11月19日から平成14年3月26日までです。資料に関しては、いま資料1−3と 、参考資料の中に、全事例が載っておりますので、ご参照ください。  施設数は266施設、報告施設が113施設です。収集件数に関しては、446件で したが、記載不足や、意味合いが十分汲み取れない無効件数が65件、重複件数が11 件で、有効件数は370件でした。前回110件でしたので、3倍強の情報が寄せられ たということになります。  「分析の概要」ですが、前回同様、報告する医療機関が事故防止上重要と考える事例 について、発生要因や改善方策などを収集しています。分析が必要と考えられる事例を 選定して、よりわかりやすい表記に修文した上で、タイトルやキーワードを付していま す。この資料の1の3の6頁の後から分析事例を載せております。なお本文の意図が変 化しない程度に、わかりやすい表現に変えさせていただいております。右側が専門家か らのコメントというふうに、見開きに表現してあります。  よりわかりやすい表記に修文した上で、タイトルと分類コードのキーワードを載せて います。  さらに専門家からのコメントとして、事例内容の記入の仕方や、記入の際に留意すべ き点などを記入方法に関するコメントとして、また報告事例に対する有効な改善策の例 や、現場での取組み事例をできるだけ深く学習していただくために、参考情報など改善 策に関するコメントとして記載しています。  分析対象事例は収集された事例から医療事故防止のために特に有益な事例を選定しま した。選定の際に、インシデント事例の具体的内容、発生した要因、改善策がすべて記 載されており、事例の理解に必要な情報が含まれているかどうかなどを検討しています 。発生頻度は低いけれども致死的な事故につながる事例や、他施設でも活用できる有効 な改善策が提示されている事例、専門家からのコメントとして有効な改善策が提示でき る事例、専門家からのコメントとして参考になる情報が提示できる事例を選択しました 。  なお、個人が特定し得るような事例は除います。報告された事例には、ものに関する 事例も含まれていましたが、人がものを取り扱う際のヒューマンエラーを防止するとい う観点から、有効な知見やコメントが得られると判断して、事例を検討しています。  事例のタイトル及びキーワードの設定は、2頁、3頁に載せておりますので、参考に していただきたいと思います。  改善策として有効な対策が検討されている事例が、前回より非常に多く見られており ます。報告数が比較的多かった事例としては、手技・処置区分に横断的に手書きの指示 の誤読、伝達不十分、記載の誤りといった、医療従事者間の連絡、伝達ミスに関する事 例が報告されています。  与薬(点滴・注射)に関する事例が50件で13.5%。「転倒・転落」に関する事 例が37件で10%。チューブ・カテーテル類に関する事例が8.9%。内服・外用薬 に関する事例が30件。処方に関する事例が22件で5.9%。調剤に関する事例が1 8件で4.9%でした。そのほかに伝達・連絡のミスというものが、32件で8.6% ということになります。  これらについては、いずれも多くの医療機関で共通の問題として、有効な改善策を公 開共有することで、同様な事故の防止に貢献できると考えられます。  与薬に関する事例では、薬の種類や量の間違い、三方活栓、輸液ポンプなどの操作の 間違い、患者の間違いなどが報告されています。  薬の種類や量に関するインシデントに対しては、間違いやすい名称の薬、複数の規格 がある薬のリストなどを作成し、研修で活用する。病棟内の間違いや、間違いやすい薬 をリストアップして提示するなどの工夫が必要だと考えられます。  間違いやすい薬剤や三方活栓の取扱い方、医療機器操作など、ものに関するインシデ ントは、人がものを取り扱う際のヒューマンエラーを防止するという観点から、ものの 使用や操作方法を検討していく必要が今後もあると考えています。  「転倒・転落」や「チューブのトラブル」については、患者本人の自発的行動による ものが多く、先ほどの全般コード情報の自己抜去と重なりますが、発生を完全に防止す ることは非常に困難です。報告事例でも、頻回に訪室して観察するといった対策が多く 、有効な対策が立てにくいことが窺われております。  「転倒・転落」「チューブのトラブル」とも、医療機関側で防げるもの、そうでない ものを明確に区別して、それぞれに応じた対策を講じることが重要であると考えます。  患者の自発的行動によるものは、参考資料に添付してあるアセスメントシートなどを 利用して、患者の特性別のリスク評価、事前の予防的対策、対応を行うために、今後と も効果的なアセスメント方法及び予防策の検討を行っていくことが必要です。  医療従事者間の連絡・伝達ミスに関する事例は、手書き指示による間違いや、伝達が 不十分で受け手の解釈が異なっているなどの事例が見られました。特に指示を変更した 場合や、通常と異なる指示などの場合の伝達ミスが多く報告されています。チーム医療 を進めていく上で、確実な指示伝達や情報の共有が重要であって、指示伝達系統の明確 化が必要であると考えます。  医師と薬剤師、看護師、検査技師など、コメディカルとの連携によって、伝達ミスを 未然に発見した事例など、チーム医療による相互チェックが有効に機能している事例も 報告されています。情報の確実な伝達や共有に関しては、IT化を推進することが対策 として有効であると考えられますが、一方で、コンピュータへの入力ミスなど、IT化 に伴う新たな課題も報告されています。  その他の報告事例としては、研修医の薬剤指示ミスとか、あるいはアルバイトの人の 患者さんの呼び入れの順序のミスなどの事例が報告されています。  まとめですが、前回の報告後に収集されたインシデント事例の分析を行いました。報 告件数は前回から大幅に増加しています。改善策として有効な対策が検討されている事 例が、前回以上に見られております。分析の内容では、確認不足であったため、今後は 確認を徹底するという当事者個人の問題として、発生原因を特定し、今後の改善策を検 討している事例が多く見られました。全般コード化情報の分析でもありましたが、人は ミスを犯し得ることを前提に、システムとしてそれが事故に発展する前に発見されるよ うな仕組みの構築を引続き検討することが必要です。  今後の課題としては、前回同様、収集事例の中には、事例の具体的な内容についての 記述が不足している、あるいは、曖昧で事例の状況が明らかでないなど、記載の改善が 必要なものが見られています。これに関しては、記載者が誰なのかという問題がありま す。専門のリスクマネージャーが記入したのか、当事者が記載したものであるかという ことです。 また改善策について記述が不足している、あるいは改善策の具体的な内容 が明らかでないもの、組織的な背景や要因を分析しておらず、改善策が確認の徹底など 、個人の責任に帰しているもの、職場内の解決策にとどまっていることも残念です。  今回の分析に当たっては、今後の記入の際の参考となるような各事例に、「記入方法 に関するコメント」を付しました。記入の仕方、事例はこのように記入したらどうかと いうふうな記入方法に関するコメントをつけています。  前回報告した「記載用紙」及び「記入例」と併せて、インシデント報告における事実 の把握方法、記述の方法、分析方法などに関する情報提供を、今後とも行っていくこと が必要と考えています。   ○矢崎部会長  次に、医療安全対策ネットワーク整備事業では、医薬品・医療用具、諸物品等情報に ついても収集しておりますので、参考までにこの件についても事務局の伏見室長からお 願いします。 ○事務局  事務局よりご説明申し上げます。資料2をご覧ください。併せて参考として、個別の 事例の表を付けてありまして、これが資料2(参考)というもので、両方を並べてご覧 いただきたいと思います。  資料2に沿ってご説明申し上げます。医療安全対策ネットワーク整備事業では、ここ に掲げたような医薬品・医療用具、あるいは諸物品といったものに関する情報も収集し ていまして、この集計結果をこの資料2としてまとめています。  まず、分析対象は平成13年11月19日から今年3月26日までにご報告いただい た分になっています。  事例数としては228で、分析対象事例数としては229ということです。これは、 (注)の所に書かせていただいていますが、報告のあった事例のうち1事例、、医薬品 と医療用具双方に関わる情報があったため、重複してカウントしたためです。  その内訳は、医薬品関連情報については全体の8割弱で、179例です。医療用具に 関しては15%36例の報告をいただいております。  あと、諸物品として、ベット等のいわゆる医療用具、あるいは医薬品の範疇に入らな いものに関する事例が、14例ありました。  2は、医薬品関連情報をインシデントの要因別に分析した結果です。前回と見比べて いただくと、大まかな傾向がわかるかと思います。今回も前回同様、薬剤名が似ていた 、あるいは複数の規格が存在したといった事例が多い状況です。  それと併せて、管理が悪かったというものが全体の15%程度ありました。  次の頁で、「医療用具関連情報の概要」。これも前回と同様、管理が不十分だったと いうものが最も多く、前回の3割を占めておりました。それに続いて、欠陥品、不良品 だった、あるいは機器の誤操作といったところが5件と続いています。  4番目に、「諸物品等関連情報の概要」。これは、全体の例数が14例と少ないです が、この中で最も要因として多かったものが、管理が不十分だったというもので、全体 の4割強ということで、6件ありました。以上がものに関する分析結果です。  お手元にお配りしてある資料2(参考)に、いまご紹介したそれぞれの事例に関して 示してあります。表の読み方だけを少しご説明したいと思います。資料2(参考)の1 頁は医薬品に関連する情報ですが、表の中の左側から、要因から始まって、内容、間違 えそうになった薬剤等々、インシデント事例の収集の報告様式に基づいて、ここに整理 させていただいています。  なお、表の冒頭に注記のとおり、この集計表というのは、あくまで報告いただいた内 容を忠実にそのまま整理したものです。ここではあくまで報告していただいた事例の紹 介ということです。これらの事例の分析、あるいは検討というものは、これから関連の 場で具体的な検討を行っていくということです。  具体的に個別の報告事例を医療関係者のほうに情報としてフィードバックすることで 、医療を行う上で参考にしていただけるのではないかということで紹介させていただき ました。 ○矢崎部会長  ご報告いただきました件につき、委員の方々からご質問コメントがございますでしょ うか。 ○星委員  3つほど聞かせてください。1つは、前回、全般コード化について物に対するインシ デント事例の集め方と、人、ヒューマンエラーの集め方が違うという質問で、なぜそん なことをするんですかと言ったら、取り扱っている部署が違うからだという返答があり ました。その後どのような検討が行われたのか。今回はそういう方式で行われたのか否 か。この点についてご説明をお願いします。  次に、全般コード化情報が何となく飽和状態だなという印象を受けましたが、その中 で気になるのは、経験年数が1年未満の人、あるいは部署に配属されてから1年経って いないという人たちが飛び抜けて多いのですが、これは何が影響しているのか。緊張し ているからなのか、何が原因なのか、これだけではちょっとわからないのです。そうい う辺りのことを検索できる様式なのか、どうか。経験年数、あるいはそのミスの中身、 その変化、あるいは自己申告率、あるいは自己発見率の変化などがもしあるとすれば、 例えば教育をしていきましょうというようなことをするときに、では何年目研修くらい にはこういうことをすべきだというようなことに結び付くのではないかと思います。  3つ目のコメントは、最後の資料が大変よくできていて、今日は持って帰って見せた いと思っています。これの非常に良いところは、自分たちの改善したという中身が、い やいや、そうじゃないんじゃないですかという、やさしい言葉できつく中身を書いてい ただいているところで、こういうものは、実際に添削を受けなくても、自分の所でレポ ートシステムをやっている人たちすべてに、すばらしい情報として使えるのではないか 思います。そういったものを、みんなの目に触れるようなものにする用意があるのかど うか。この3点についてお答えをお願いします。 ○新木室長  ただいまの星委員からご指摘いただいた3点についてお答えします。まず第1点目、 「集め方を一緒にする」というご指摘ですが、実は前回ご指摘をいただいて、その後事 務的にも検討してまいりまして、それを含めた今後の進め方のご相談を、次の議題とし て、資料3としてご相談させていただければと思いますので、その節にご検討いただけ ればと思います。  2番目の、「全般コード化情報」、特に経験年数の解釈です。確かにご指摘のとおり 、この情報のみから1年未満が多いのか、一生懸命報告してくれているだけなのかとい うことは、わかりかねるという点がありますので、そのほかの情報と併せて、疫学の研 究の通例だと思いますが、それが実際に社会的な常識とか、そのほかから得られる知見 と合わせて矛盾がないかどうか。そういうことと併せて検討すべき問題であるというふ うに思っております。  そういう意味では、研修医にミスが多い。比較的特定というか、慣れてきた人と違う 傾向のミスが多いのではないかということは、そのほかの機会にもいろんな先生方から ご指摘を受けていますので、おそらく、これは当たっているのではないかと思います。  しかしながら、ご指摘のとおり、今後どのような教育研修システムが必要かなど、対 策にも結び付いていく問題だと思いますので、さらに検討を進めていきたいと思います 。  ただ、いかんせん、武藤専門委員、橋本委員からお話がありましたとおり、まだ例数 が比較的少ないというようなことから、ほかの検討方法、研究方法と併せて検討してい くべき問題ではないかというふうに思っております。引き続きご助言をいただければと 思います。  さらに3番目については、できるだけ早くホームページにどんどん載せていきたい。 また、今後蓄積していけば教科書的なものになっていくだろうと思うのです。それは、 こういう検討キーワードを付けた電子的な教科書であると同時に、印刷されたものとし て、皆さんにご覧いただく。さらにそのエッセンスを、何らかの形でもう少し検討して いくというような形で、できるだけ広く、かつできるだけ早く流通させていきたいとい うふうに考えております。 ○矢崎部会長  大変貴重なご質問をいただきまして、ありがとうございます。そのほかにございます か。 ○武藤専門委員  いまの星委員のお話で、1つは、全般コード化、飽和状態ではないかとおっしゃいま したが、まだまだ飽和状態ではないと思います。今回も、やはり大きな数が集まること で見えてきたことが結構あります。例えば、影響を3つに分類して、影響の大きなもの を取ったら、数はまだ少ないのですが、例えば輸血とか手術とか、医療器具の使い勝手 とか、使い方とか、そういうことが浮かび上がってきました。やはりこれはさらに報告 数を増やしていくことによって見えてくるものがかなりあると思います。  それから、そのお誉めいただいた重要事例の話で、やはり皆さん使っていただけるよ うに、例えばキーワード検索ができるとか、何らかの形で我々が現場が使いやすいよう な形で是非ともやっていきたいと思います。 ○橋本委員  私は厚生労働省のほうから研究費をいただいて、臨床研修病院の安全管理の教育プロ グラムということについて、調査をさせていただいています。いまちょっと集計中です が、その質問項目の中に、研修医に対してインシデントレポートを書くようなシステム を病院の中でつくっているかどうかという質問項目がありまして、ちょっと大まかな話 で申しわけないのですが、半数に満たないくらいです。それは個々に任せているという ことです。つまり、どちらかというと、報告しないほうに傾いているのではないかとい う感触の結果が出ています。  ただ、研修指定病院は、安全管理についての教育プログラムについての情報を共有化 したいというご希望が随分出ています。 ○楠本委員  細かいことで恐縮ですが、橋本先生に、「影響度」のところで、間違いが実施される 前に発見された事例が全体の4割で、もし実施されていれば、中等度以上の影響が出る 可能性がある事例だったとあるのですが、これはどの領域のものが事前に防げていたの か。将来的には、これがどんどん増えていけば、重要な事故が少なくなって、みんなイ ンシデントになってしまうのではないかと思うものですから、もし何かそこまでできて いるようなら、ちょっと教えていただけませんでしょうか。 ○橋本委員  私のレベルではちょっとわからないのですが、事務局は何かデータをお持ちですか。 ○宮本専門官  今回の集計としてはデータはないのですが、もし必要であれば、あるデータを集計し 直せば、出すことは可能かと思います。 ○楠本委員  細かい質問ですが、前半のほうで、連携の悪さというか、当事者の職種と発生要因を かけたときに、確認不足のインシデントが多かったけれども、医師・看護師では、原因 としては連携の悪さが多いというのがあったのですが、これは看護師から医師のという 申告が多いのか、あるいは医師も看護師との連携だというような意識が変わってきて、 見られるのか。むしろ看護師が「医師との連携だ」というような状況で止まっているの か。いかがでしょうか。 ○宮本専門官   いまのご質問の点については、両方、医師の側も連携の問題としているケースが多い という結果です。 ○楠本委員  それからもう1つ、増子参考人にお聞きしたいのは、随分重要事例の記載が増えてき て、例数も多くなったということで、大変よい傾向だと思うのですが、施設ごとにある 意味でバラつきが出てきているのではないか。施設の中の職種ごとのバラつきとか、そ ういった、報告によって非常に熱心に取り組んでいる施設とあまりそうでもないのかな というところが出てきているのかなという感じがしています。それから、そういう傾向 がないかということです。  もう1点は、分析手法として、専門家の皆さんとの集まりで、何かお使いになってい るツールがあるのか。あるいは、そこそこのフリーディスカッションとか、そういう形 でお進めなのか、その辺を。というのは、看護職の間で、少し一定したツールを教えて もらえないかというような要望が増えてきていますので、そのあたりについて有効なも のがあれば、ご示唆いただければと思いまして。 ○増子参考人  施設に関する情報は、私どもは一切知らされておりません。  それと分析手法につきましては、例えば薬剤師会とか、川村委員の研究成果とか、そ ういったもの、あるいは、いろんな先生方が本に書かれている範囲のもので、本当に暗 中模索で分析しているというのが、実際のところです。  私ども、ここに参加しているメンバーは、必ずしもオーソリティではありませんし、 中に、確かにリスクマネージャーの方も含まれていますが、薬剤師さん、医師、看護師 、あるいは看護学校の先生といったいろんなメンバーが、科学的にいろんなディスカッ ションをしながらという形で、分析させていただきますので、模範回答というふうなと ころまではいっていないと思います。 ○新木室長  ただいまご質問いただいた件ですが、この個別の情報については、その窓口となると ころですでに施設IDなどの情報を消して我々のところへ届けられます。それを元に専 門家の先生方に分析していただきますので、現時点ではその情報を持ち合わせておりま せん。  2点目の、分析の手法ですが、先生のご指摘のとおり、確かにどう分析したらよいか というのは、各医療機関、現場では非常に困っているようですので、現在、厚生科学研 究の一環として、分析していただいています。おそらく、唯一この方法がほかの方法に 比べて絶対にいいんだというようなことは、なかなか難しいと思いますので、いろんな 先生方に、こうやってこういうところに注意しているというような形で報告できるよう にいま研究していただいているところでございます。 ○三宅委員  私も星委員と同じように、この重要事例の分析というのは、先ほど新木室長もおっし ゃいましたが、できるだけ広く医療機関に知っていただくことが非常に大事だと思うの です。  先ほど増子参考人のお話の中で、かなり情報が不足しているようなことをおっしゃっ ていましたので、集めるべき情報のフォーマットのようなものを、少しほかの産業界の ご支援もいただいて、何かそういうものをつくったらどうかなという気がしています。  分析方法についても、いま新木室長がおっしゃったように、いまいくつかの取組みが されているとのことなので、できればそういうものをできるだけ早い段階で、皆さんに 知っていただくことが大事なのではないかと思います。 ○矢崎部会長  そのほかございませんか。今日、報告をいただいて、件数も飛躍的に多くなって、分 析も非常に細かく、クロス集計とその分析、あるいは要因の検出などしていただけまし たし、先ほどコード化の問題点も指摘されましたが、いまのところは非常にきれいに整 理されて、少なくとも分析可能な状況に環境整備されたのではないかと思います。いま 繰り返しお話のあった、重要事例につきましては、この資料のようないろいろなコメン トが貴重な対策を立てるデータベースにもなりますので、こういうご努力を今後ますま す続けていただければと願っております。  インシデントレポートは、最初のうちは医療の現場でなかなか根づかなかったきらい もありますが、いまはほとんどの病院で、それぞれの約束事を了解のうえで報告を出し ていただいておりますので、少なくとも現状のインシデントをしっかり的確に把握して おられるのではないかという印象を受けています。個々の方々の行為に起因する部分は みんな共通にあるわけですが、ヒューマンエラーを防止するときに、個人の努力だけで はなくて、システムとしてしっかり対応していく。今後そういうシステムをどのように 構築していくかということも、我々に課せられた大きな課題ではないかと思います。こ ういう事例を集めながら、本当に的確な対処法を考えながら、それをシステムとして汲 み上げていくというか、そういうことも今後努力していきたいと私どもは思っています 。よろしいでしょうか。 ○三宅委員  医薬品と医療用具に関してですが、これは以前から言われていたとおりに、薬剤名が 似ていたとか、複数の規格があったとか、それは管理の問題もありますが、こういう明 らかに間違えると思われていたものが、データとしてもこういう形で出てきているわけ で、これに関しての何らかの改善策は何かやられるのでしょうか。 ○伏見室長  医薬品の販売名の類似性あるいは外観の類似性ということもあろうかと思いますが、 やや中期的な問題としては、Aという販売名とBという販売名がどの程度似ているかと いうことをできるだけ定量的に評価して、似通っているものはできるだけ避けていくと いったシステムというか、ソフトウェアをいま開発中です。これはできるだけ早くそれ を公開して、各企業が開発の段階で、早期の段階でそういった手法を導入していただく ことがひとつ重要であろうと思っています。今後出てくるものに関しては、徐々に明ら かな類似性は排除できていくのではないかと思います。  あと、すでにあるもので、ここにいくつか例示がありますが、似ているものに関して は、まず最低限やらないといけないのは、こういった似通っている情報があるのだとい うことを世の中に、特に医療関係者の方に知っていただくことが必要だと思います。し たがって、この情報は、前回も含めてですが、すでに公開させていただいています。そ の中でも、特にリスクの高い組合わせがあり得ると思いますので、そういったものに関 しては、個別に私どもなりが関連する企業と改善策を協議していくという形で取り組ん でいきたいと考えています。 ○三宅委員  似たような薬品がありますよ、ということを知らせたらそれでいいというものではな いと思うのです。ですから、やはり現在あるものについては私は改善命令などで改善し ていただかないと、同じことを繰り返すということは、どうしても避けられないと思う のです。今後の問題は、おっしゃったとおり今いろいろな取組みをされていると思うの ですが、現在あるものを何とか私は変えていただきたいという気がしているのです。 ○星委員  重ね重ね言っていることではあるのですが、医薬局のこれまでの対応を見ていると、 正直申し上げて、製薬企業を大切にしているのか、国民を大切にしているのかどっちな のだと言いたくなる場面があります。新しく出させる薬の名前はこれから評価して、似 たような薬の名前は作らせませんよということは当然していただくにしても、現在個別 の名称が出て、指摘を受けているものがあって、アンプルの形態だとか名前が似ている というのは、極めて特定のものが指摘されているのです。注射器のメーカーだとかもい ろいろ問題があって、医薬局が指導して、新しい規格を作っていろいろなことをやって いるようですが、この医薬品については製薬企業の取組みの状況が見えてこない。少な くとも我々の耳に届かない。  現場では毎日その似た名前を覚えるのに苦労し、呪文を唱えるように勉強し、毎年新 しく入ってくる看護師に教育をし、「この紙を覚えてね。間違わないようにね。似てる からね」と我々は毎日言っていて、患者さんのために、こんなに苦労しているのに、一 方製薬メーカーは「いや、だって金かかるんだもん、大変なんだもん。だって承認受け てるんだもん」という態度をもし取っていて、それをもし医薬局が放置しているのだと すれば、改善命令が法的に可能かどうかはわかりませんが、どのようなものかなと。こ れだけ経済が悪い中にあって、唯一増収増益を重ねている企業が、金がかかるから安全 はできませんよ。現場で頑張ってください。情報を提供しますよというレベルで、本当 に医療の安全が確保できるのか。パートナーとして、医薬品メーカーというのは本当に つき合えるのかということを考えなくてはいけないぐらい深刻な問題だと、私は三宅先 生のお言葉は、担当部局である医薬局に対してまさにそういうことをおっしゃりたかっ たのだろうと思います。 ○伏見室長  特に医薬品企業の対応に関して申し上げますと、この医療安全対策検討会議がありま して、そこで医薬品の販売名の類似性についてもいろいろご検討いただいてきたところ でございます。その中の報告書においても、特に医薬品企業の情報提供は、これまでは いろいろな副作用であるとか、相互作用などに重きが置かれてきたわけですが、少なく ともこういった販売名なり外観の類似性が大きな1つの問題になっておりますので、そ ういった問題を予防、防止するための情報に関しても、きちんと情報提供をさせていく べきであるというご指摘をいただいています。したがって、我々としてもそれを受けて 、しかるべく必要な指導を行っていきたいとは考えております。 ○星委員  これ以上は言いませんが、ただ、医薬品メーカーと言われている業界の人たちが、果 たしてこの問題をどのように捉えてどういうプレイヤーとして参加するのか。医療の安 全を守るための、あるいは患者の安全を守るためのアクションにどういう立場で、どう いうスタンスで、どういう気持で参加されるのか。そのあたりを私は明確にしてほしい と思うのです。これまで医薬品メーカーがどういう取組みをしているかについては、何 ら我々に情報はありません。今おっしゃったように、室長さんが「情報を提供しましょ うね」と言って、「はい、はい」という状況は聞こえてきますが、それ以上に、自分た ちがいまの医療の現場に対する責任をどう感じ、どうアクションを起こすつもりなのか 。あるいはどういうアクションを起こしているのか。少なくともそれを我々に、あるい は国民に知らせていただく必要があるのではないかと私は思います。 ○医政局審議官  いまの星委員のお話ですが、局長は退席してしまいましたが、医政局も経済課があり まして、医薬品産業について、振興の面からも行政をやらせていただいています。それ から規制の面からのご指摘もありましたので、私からも医薬局長にきちんと伝えまして 、いまの点について我々のほうでも検討し、それなりの回答なり、それから星委員から は製薬産業としてどのように取り組んでいるか、その辺も見えてこないというお話でし たので、産業界とも話をしてみまして、またその状況を担当者から報告させたいと思い ます。 ○三宅委員  薬品というのは最終消費者は患者なのです。しかし、中間で我々医療業界というもの が消費者でもあるわけです。結局何か事故が起きたら我々に全部責任はかかっているの です。製薬メーカーというものは副作用とか何とかいろいろなことを書いて、いまのよ うに情報は流していますよということで、すべて責任を回避していると私はそう思うの です。  ですから、製薬業界が最終消費者に対して責任をどう取るか。そこをはっきりしても らいたいと私はずっと思っているのです。ですから、是非そういった意味で、いま改善 できることは改善していただきたいというのがお願いです。 ○矢崎部会長  私も痛切に思って、この部会でしばしば発言していますが、医薬品・医療用具等検討 部会が片一方でありますね。あれは医療器具がメインなのでしょうか。 ○伏見室長  医薬品と両方扱う格好になっております。 ○矢崎部会長  そういう実際に医薬品その他を使っている方々も出席されて、そういう議論もそこで しっかり行われていると理解してよろしいのでしょうか。 ○伏見室長  このインシデント事例などはいずれまとめまして、医薬品・医療用具等対策部会でご 検討いただくことになろうかと思います。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。いまの話のようなこともヒューマンエラーの中に入って しまうと最終的にはヒューマンエラーと定義づけられてしまいますが、その前の段階で システムの問題とか、いまのような問題をできるだけ整理していく必要があると思いま す。医療器具の問題も、いつもシンプル・イズ・ベストで、間違いやすい機械を間違い やすい人が使うのではなくて、間違いやすい人が使っても間違わない機械にしてくれと 、それが医療安全の基本ではないかと思います。人工呼吸器なども益々ファンシーにな ってきて、それだけ故障あるいは間違いが多くなるということもありますので、そうい う点も今後しっかり見つめて、検討していかないといけないと思います。  それでは時間も過ぎてきましたので、次の議題の「医療安全対策ネットワーク整備事 業の今後の進め方」について、いまお話になりました今後の部会におけるインシデント 事例の検討について、ご相談したいと思います。まず事務局から説明をよろしくお願い します。 ○新木室長  先ほど検討の中でお話がありましたように、現在は武藤専門委員の下で、厚生科学研 究の研究の一環として、分析方法の確立を含めて分析をしていただく、それを本日のよ うな形で出させていただいたというのがこれまで2回の内容です。2回検討していただ き、方法論も、研究班における分析方法もかなり確立してきたということ、また新年度 になってということもあり、検討体制を当部会の中で位置づけてはいかがかと思います 。資料3をご覧いただけますでしょうか。このような形で今後分析をしてはいかがかと いう案です。  当部会及び医薬品・医療用具等対策部会共通の作業部会として、インシデント事例検 討作業部会(仮称)を設けてはいかがか。ここに医療機関、途中には医薬品副作用被害 救済研究振興調査機構及び医療情報システム開発センターがありますが、ここで必要な 情報のマスキング、チェック等をして、これをこのインシデント事例の作業部会に報告 いただき、ここで検討して、分析としての結果の公表と還元をし、さらにその内容を両 部会にご報告して、両部会において、各々の立場から必要な対策、さらに広い視点から のご検討をいただく。それに基づいてインシデント事例の検討作業部会に対して、この ように改善したほうがいいという点がありましたら、そこにご指摘いただくという体制 を考えています。このような進め方で、次回以降進めさせていただければ、先ほど星委 員ご指摘の2つの入口からで、なかなか調整が困難ではないかというご指摘を含めて、 改善が図られるものではないかと考えておりまして、ご提案させていただく次第です。 よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。いままで研究の一環として、この膨大な資料の収集と解析 をしていただいた武藤委員、橋本委員、増子委員に厚く御礼申し上げます。いまの事務 局のお話のように、これを少し公式な作業部会としてお認めいただき、広い視野から今 後検討を行っていく部会にしてはどうかというご提案です。 ○星委員  結局これを見ると、いままでと集め方は変わらないのです。紙はそれぞれ3種類違っ て、出し先も違う。しかし、では現場でその3種類別々に我々が作っているかというと そうではなくて、1種類なのです。我々はそういうものを作っている。その中からこれ は物だな、あるいはこれは改善事例だなと分けて、また書き直して出すということをや っているわけです。  全般コード化情報がこれほど多くて、物の情報がすごく少ない。物に本当は理由があ って、名前が似ていて間違えたのに、「これは確認のミスです」と真面目に答える医療 者の非常に真面目なところが、実はこの件数に如実に出ているのではないかと思いたく なるぐらいです。ですから、そういう流れの中であえてまた分けて、物は物ですと、全 般コード化はコード化ですと言って別のレポート様式、あるいは別の報告先を設定して おく必要があるのか。  やはりここは報告する側は全般コード化で入れたけれども、これは物なのではないか というようなものを、物のほうに流せる仕組みをここで作るのか、あるいは入口で作る のかという議論だと思うのです。だとすれば、私は入口のところで作るべきだと思いま す。「これは確実にヒューマンですね」「これは確実に物ですね」「間に随分残りまし たね。これはどうしましょうね」ということをこの部会でやっていただけるのであれば 、私はそれに100%賛成します。これまでどおり物は物でやるのであれば、いままでと 何ら変わらないと思いますが、いかがなのでしょうか。 ○新木室長  いま星委員ご指摘の点は2つあろうかと思います。1つは医薬品とヒューマンエラー の問題、それからもう1つは高度化情報と定性的というか、ナレイティブというか、記 載情報の問題と2つあろうかと思います。そしてより重要なのは、星委員ご指摘の薬に もヒューマンエラー的な要素と、そうでない要素と両方あって、それをきちんと分ける ことはなかなか難しいし、また対策も両方ともやっていくべきだということだと思って います。  そういう意味では、ここに書いてある「医薬品・医療用具・諸物品等の情報」の部分 と、「重要事例」の部分は両方とも記載情報で、「全般コード化情報」は実は薬も何も すべてコード化されている情報で、今後はコード化された部分と、記載するナレイティ ブな情報と、そういう意味で2つに分けて、ものとヒューマンファクターという分け方 でないことも集め方として十分あり得る。ただし、その場合には、実は記載するほうで 十分その辺を注意していただく。我々の制度の制約上、誰がこの情報を出したかという ことのトレイサビリティをなくしておくことがこのシステムの当面の前提条件です。あ とで電話で問い合わせたりできないという状況では、十分事前にその辺を情報提供し、 また記載していただくほうでも十分注意していただくことが必要になってくるかと思い ます。  また、その兼ね合いもありますが、記載様式については我々もやっていて、改善する 点があるのではないかと。今日橋本先生、増子先生からももう少し分析の充実というこ とがありましたが、それは言葉を換えますと、我々が集める様式を見直してはどうかと いうことだとも思います。また、分析、記載事例のモデルを示すことだとも思いますの で、その辺はこの作業部会の中でも十分ご検討いただいてと思っております。 ○矢崎部会長  大いに期待しておりますので、よろしくお願いします。インシデントレポートのとき にいま新木室長が言われたように、ナレイティブの部分の細かい情報がもう少し入れば 、情報を両方の部会に出していただいて、両方で議論することもあり得ますね。 ○星委員  具体的に申し上げると、このインシデント事例検討作業部会というのは、「各検討班 で分析した結果の取りまとめ」と、「公表、還元、部会に報告」としか書いていないの ですが、この間の3つの取扱いの仕方、あるいは確かに分類して検討しなければならな い、あるいは分類して、最終的な結論を得なくてはいけないものもあるのでしょうから 、検討班は3つ立てるにしても、この3つの調整をここの作業部会の役割にしておかな いと、それぞれがやったことが、今までどおり上に上がってくる方向だけだと、結局行 き先はいままでと同じなのです。ですから、私はこのインシデント事例検討作業部会を 1つのものにしたのだとすれば、ここに我々の部会から直接検討班に言うのではなくて 、部会がもっと機能するような役割を与えて運用するようにされてはいかがでしょうか 。 ○新木室長  いまのご指摘を踏まえまして、総合的な調整、総合的な企画を持たせるようにしたい と思います。 ○矢崎部会長  そうですね。この部会の位置づけは、そういう作業部会から持ち上がったものにどの ように対応していくか、ということを検討する部会ですので、そこのところできっちり 対応していけば、十分ではないかと思います。そういうことをしっかり頭に入れながら 、部会の運営を行っていきたいと思います。  この「インシデント事例検討作業部会」は、いままで厚生科学研究費の班会議でやっ ておられたのですね。これを今後改組する、人選も新たにするということですね。そう すると、人選をどうするか。いま星委員、三宅委員から言われたことも十分考慮して進 めていきたいと思います。一応医薬品・医療用具等検討部会は桜井先生が座長ですので 、桜井先生と私とでよく相談して、人選を進めていきたいと思いますので、よろしくご 承認のほど、お願いいたします。それでは、早急にまたこの作業部会を組織して、また この部会でご承認をいただきたいと思っております。  その他で事務局、何かございますか。 ○新木室長  参考資料2に基づいて、経過のご報告です。昨年5月より、医療安全対策検討会議、 この部会の親会ですが、こちらで3月18日までに11回ほど、今後の医療安全対策の 進め方についてご検討いただいてまいりました。4月17日の明後日ですが、この対策 が取りまとめられる予定となっておりますので、その全体及びそのうち特に今日ご議論 いただいたインシデント事例の収集・分析等に関係する部分を抜粋して持ってきました ので、簡単にご報告させていただきます。  医療安全対策検討会議では、4つの視点からご検討いただいています。1つが「医療 機関における安全対策」。1つが「医薬品・医療用具等にかかわる安全性の向上」。も う1つがここでもご指摘いただきましたが、人の問題、「教育、研修」の問題が大きい ということ、さらにそれらを支える「環境整備」という4つの視点からご検討いただい ています。  「医療機関における安全対策」としては、医療機関の特性や機能に応じた安全対策の 充実をお願いするということで、すべての病院及び有床診療所に対して、現在特定機能 病院で実施している安全対策を実施することにしています。また、無床診療所は同様に 、上記に準じた体制整備を勧奨するということです。特定機能病院及び臨床研修指定病 院は、特に高度な医療を行う。さらに様々な医療を行いながら、多様な新人を含めた職 種がいることから、高度の安全対策として、ここに書いてある3つをお願いすることで 意見をいまご検討いただいているところです。  医薬品・医療用具に関しては、ここでも先ほどご意見が出て、伏見室長からご回答い たしたような内容についてご検討いただく。ユーザーサイドの意見をどうメーカーサイ ドに反映させていくかということを中心にご検討いただきます。また、医療安全に関す る教育、研修の目玉としては、国家試験に義務づけるということでご検討いただいてい ます。  なお、環境整備としては3つあります。1つは「苦情相談体制の整備」です。これは 基本的には現場で解決していただく。それでも解決できない場合には、医師会等での機 能の充実をして、さらにそれらを最終的に支えるものとして、都道府県等に医療安全の 相談機能を設けるということで、3段階の構成を考えています。(2)は後ほど、次の 頁でご説明します。(3)はここでもご議論いただいたように、研究が必要であるとい うことを受けての話でございます。  インシデント事例については、次の頁からになっています。なお、「インシデント」 という言葉がなかなかほかの産業界、また諸外国と使い方が違って整合性がないことか ら、この検討会議では、現時点において「ヒヤリ・ハット」という言葉で統一してはい かがか、ということでご検討いただいています。  これについては、結論的には次の2頁ですが、第3章です。これは具体的になってお りますが、1つには事例分析、ここでは定性的というか、医薬品の情報や重要情報など については対象施設を増やして、すべての医療機関から情報を提供していただけるよう に拡大すべきではないか。また、先程来いろいろなご意見がありますコード化されての 情報、定量的な分析については、多くの医療機関からそのときどきにいろいろ出すとい うよりも、定点から報告をいただくことでもう少し報告の精度も上げることが必要では ないかということで、定点報告体制の対象となる医療機関を登録していただいて、そこ から報告いただいて分析するということで、検討を進めていく必要があるというご意見 です。  なお、いずれにしても先ほども出ましたが、これらのことは医療界にとってかなりま だ新しい部分ですので、分析の方法、活用の方法、そのほか様々なノウハウについて、 研究の一環として国としても情報を整理して、提供していくということで充実を図って いきたいということでいま検討していただいていますので、参考までにご報告させてい ただきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。何かご意見はございますか。いままでこの医療安全 対策というのは、病院とかそういう所がメインになっていましたが、さらに無床診療所 を含めた医療機関全体にわたって、こういう情報を伝えていくことも今後進められるわ けですね。よろしいでしょうか。それでも時間がまいりましたので、本部会はここまで としたいと思います。次回についてはどうでしょうか。 ○新木室長  次回の日程については、委員の皆様と日程を調整し、部会長とテーマ等をご相談した うえで、またご相談させていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  それでは、本日はこれで閉会いたします。いつも大変お忙しいところをありがとうご ざいました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係 電話 03-5253-1111(内線2579)