戻る

小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方
についてのこれまでの主な議論

 これまでに、「小児慢性特定疾患治療研究事業の今後のあり方と実施に関する検討会」で行われた議論の主なものは以下の通り。

1 基本的考え方について

○子育て支援の一環として、患児の療育環境の向上・確保及び患児家族への支援を包括的に行い、これにより患児の持つ生命的・社会的・精神的可能性を十全に発揮させること及び患児の家庭の負担軽減・崩壊防止を目指すことが必要ではないか。

○具体的には、他の施策と連携しつつ、これまで、小児慢性特定疾患治療事業が主として行ってきた医療支援を中心としつつ、療養環境の向上支援、医療技術の向上支援にも努めるべきではないか。

○一方で、医療費支援を行うことにより対応できる患者も相当の割合を占めることに留意する必要があるのではないか。

○予算的な制約を意識して制度を改良していくことが重要なのではないか。

○患者の要望は、(1)医療費用が過大になることなく良い医療を受け、可能な限り治癒・回復を図ること、(2)家庭の崩壊を防ぎ、家族がまとまりながら患者を支えつつ、家族全員がそれぞれの人生を充実して送ること、(3)患者の学校参加や就職等の社会参加を全うすること、に集約される。小児慢性特定疾患治療研究事業だけでなく、他の行政施策や、民間の取り組みも含め、全体の方向性を考えるべきではないか。この全体の方向性の中で、小児慢性特定疾患治療研究事業が果たす役割を検討するべきではないか。

2 現在の小児慢性特定疾患治療研究事業が抱える課題について

○対象年齢が疾患によって、18歳未満と、20歳未満に分かれており、公正性に欠けているのではないか。

○適応範囲が1ヶ月以上かつ入院治療に係る医療費のみを対象とする疾患と、通院までをすべて対象とする疾患に分かれおり、公平性に欠けているのでないか。

○現在の小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患において、症状が軽微であったり、急性に経過したりする疾患も含まれており、事業の目的に照らして不適切なのではないか。

○現在、小児慢性特定疾患治療研究事業に対象となっていない疾患についても、既に対象となっている疾患と比較して、症状が軽いとは言えず、事業の対象に加えるべき疾患があるのではないか。

○「治療研究事業」とはいえ、既に治療法が確立されている疾患も相当部分を占めているのではないか。

3 今後の支援の対象とすべき疾患と対象者の基本的考え方

○今後の医療(費)支援の対象疾患を考えるにあたっては、重点的に考えるべき視点があるのではないか。具体的には、生命の危険(生命を長期にわたって脅かす疾患であるか)、生活の質に与える影響(症状や治療が、長期にわたって生活の質を低下させる疾患であるか)、医療費の負担(長期にわたって高額な医療費の負担が続くか)、症状の経過(慢性に経過する疾患であるか)を考慮すべきではないか。

○今後の医療(費)支援の対象者を考えるに当たっては、現在の病状だけでなく、将来の病状変化の見通しも考慮するべきではないか。

○症状の程度に応じたサービスにするべきではないか。

○今後の医療(費)事業に新しい疾患を追加するに当たっては、対象疾患の優先性を考慮し、順次加えるべきではないか。

4 事業の名称について

○今後の事業のあり方を考えると、これまでの研究事業という名称を変更し、適切な事業名に変更するべきではないか。

5 申請を行う医師・治療を行う医療機関の資格について

○現在の小児慢性特定疾患治療研究事業では、医師であれば申請のための意見書を書くことができるが、身体障害者の認定等においては資格要件を定めた指定医制を実施している。一方、小児慢性特定疾患治療研究事業の実施主体には、認定を行うための専門医らによる協議会が設置されており、これによって認定審査の水準が維持されている。今後この点についてどう考えるべきか。

○小児慢性特定疾患治療研究事業は、自治体と医療機関が契約し、実施しているが、事実上、小児慢性特定疾患の対象疾患を治療するすべての医療機関が事業を実施している。今後この点についてどう考えるべきか。

6 今後の事業疾患の見直し方法について

○疾病の構造変化や、診断技術の進歩などによる状況の変化に伴い、小児慢性特定疾患治療研究事業の対象疾患を見直す方法を検討するべきではないか。

7 制度の安定化について

○小児慢性特定疾患治療研究事業は、法律に基づかない予算事業であり、今後の安定的な実施について不安がある。安定を図るため、法律に基づいた事業とするべきではないか。

○他の医療費助成制度が基本的に全て一部自己負担を徴収していることから、制度の安定化を図ることを目的として、法律に基づく事業とする際には、他の制度と同様の負担能力に応じた自己負担となるのではないか。

○自己負担を徴収する場合、煩雑とならない仕組みを考えるべきではないのか。

8 適切な医療福祉の提供など医療助成以外の取り組みについて

○患者の要望には、医療助成以外にも様々なものがあり、他の行政施策や、民間の取り組みも含め、連携して取り組む必要があるのではないか。

・一人一人の状況にあった適切な医療の提供
・療養に必要な情報の入手と、サービスの調整
・病棟保育士の設置を進めるなどの入院している患児のサポートの充実
・障害を未然に防ぐための日常生活用具・補装具の給付
・在宅で介護をしている家族が休息をとるためのサービス(レスパイトサービス)の充実
・遠隔地で療養する際の家族のための宿泊施設の整備
・カウンセリングなどによる患児を持つ家族のサポート
・一人一人の療養状況に合わせた学習機会の確保
・一人一人の療養状況に合わせた就労機会など社会参加の機会の確保
・関係者や一般の、疾病や患児に対する理解の促進

9 その他

○小児慢性特定疾患治療研究事業の申請や更新の手続きの簡素化を図るべきではないか。


トップへ
戻る