介護給付費分科会団体ヒアリング 補足資料
平成14年4月8日
社団法人シルバーサービス振興会
1.シルバーサービス業界の現況について
(1)21世紀の成長分野として期待されるシルバーサービス
○シルバーサービス分野は、政府において21世紀に拡大が予想される新規成長分野としてとりあげられ、とりわけ雇用創出などへの期待が大きい。
1997(平成9)年に閣議決定された「経済構造の変革と創造のための行動計画」では、「医療・福祉関連分野」が成長分野の上位として、市場規模は現在の38兆円から2010年には91兆円へ、雇用規模は現在の348万人から2010年には480万人へと拡大することが見込まれている。
2001(平成13)年、経済財政諮問会議において、サービス産業重点9分野のひとつに「高齢者ケアサービス」が挙げられ今後5年間で50万人の雇用創出が見込まれている。
(2)介護保険制度下でのシルバーサービスの状況について
(1)介護保険制度における民間事業者の参入への期待
○介護保険制度においては、民間事業者をはじめとして多様な供給主体の参入を認め、利用者がその選択に基づき、心身の状況等に応じて適切なサービスを総合的に受けられる仕組みとなっている。
○増大する介護ニーズに的確に対応するためには、従来の自治体や社会福祉法人に限らず民間事業者をはじめとした多様な供給主体からのサービス供給を積極的に促しながら、健全な競争を通じて効率的で良質な介護サービスが提供されることが期待されている。
(2)在宅サービスの供給主体として大きな役割を果たしている
○指定居宅サービス事業所全体の15%を民間事業者が占めている。
厚生労働省によると、平成13年9月現在で指定を受けた指定居宅サービス事業所数は289,480事業所であり、そのうち民間事業者(営利法人)は23,647事業所となっている。この指定居宅サービス事業所全体には、医療系のサービスでみなし指定により法人種別が把握できていない135,190事業所が含まれているため、これを除いた介護保険施行後の事業所指定の状況としては民間事業者は15.3%を占める。さらに、これを民間事業者が参入できるサービスに限ると19.9%を占める。
サービスごとの民間事業者参入状況
居宅サービスの供給の担い手として、民間事業者の果たしている役割は大きい。
サービス種別 | 指定事業所数(合計) | 民間事業者(営利法人) | 割合(%) |
訪問介護 | 13,809 | 5,682 | 41.2% |
訪問入浴介護 | 2,811 | 893 | 31.8% |
特定施設入所者生活介護 | 355 | 252 | 70.9% |
福祉用具貸与 | 5,381 | 4,753 | 88.3% |
事業所数の増加率の比較(平成12年4月を100とした場合の伸び率)
民間事業者の事業所数の伸び率は全体と比較して非常に高い。
サービス種別 | H12,4 | H13,9 | 増加率(%) |
訪問介護 | 全体 11,916 |
13,809 | 115.8% |
民間事業者(営利法人) 4,507 |
5,682 | 126.1% | |
訪問入浴介護 | 全体 2,501 |
2,811 | 112.3% |
民間事業者(営利法人) 715 |
893 | 124.9% | |
通所介護 | 全体 7,510 |
9,202 | 122.5% |
民間事業者(営利法人) 244 |
845 | 346.3% | |
福祉用具貸与 | 全体 3,329 |
5,381 | 161.6% |
民間事業者(営利法人) 2,863 |
4,753 | 166.0% |
(3)「介護保険下での居宅介護サービスにおける事業の実態調査」結果より
(平成13年度、社団法人シルバーサービス振興会)
本実態調査は、平成13年4月末時点で事業所指定を受けている全民間事業者のうち訪問介護サービス(3,355事業者)、訪問入浴介護サービス(405事業者)、福祉用具貸与サービス(3,530事業者)を対象にアンケートを実施したものである。回収率は、それぞれ、訪問介護サービス(21.6%)、訪問入浴介護サービス(32.8%)、福祉用具貸与サービス(23.8%)であった。
○民間事業者の参入は増加したものの、中小零細な事業者が多い。
資本金では、約4分の3(77.1%)の訪問介護事業者、約3分の2の訪問入浴介護事業者(62.2%)・福祉用具貸与事業者(69.2%)が資本金1千万円以下の小規模事業者である。
指定事業所数でも、訪問介護(82.1%)、訪問入浴介護(76.2%)、福祉用具貸与(88.7%)と大半の事業者が1事業所のみで事業を行っており、10ヶ所以上の事業所指定を受けている事業者は非常に少ない。
○平成13年4月と9月の月別利用者数、単月売上高の比較では、いずれのサービスもおおむね増加傾向にあり順調に推移していることが伺えるものの、売上高自体は小さい。
訪問介護の利用者数実績では、20名未満が4月29.9%から9月21.4%に減少し、それ以外の利用者数ではいずれも9月が上回っている。利用者の増減率をみても、20%未満の増加26.5%、20%以上100%未満の増加41.3%、100%以上の増加8.9%と合計で76.7%の事業者で利用者が増加している。
他のサービスでも概ね同様の結果が得られている。
平成13年4月および9月の利用者数実績(訪問介護・事業者単位)
平成13年4月から9月にかけての利用者増減率(訪問介護・事業者単位)
利用者増と同様に単月売上高実績においても増加傾向が見られるものの、200万円未満が4月45.8%、9月37.1%と高く、400万円未満まで合わせると4月64.7%、9月60.0%と単月売上高自体は小さく、経営は依然として厳しい状況であるといえる。
平成13年4月及び9月の単月売上高実績(訪問介護・事業者単位)
○訪問介護事業者の運営経費構成においては、管理職、サービス提供責任者、常勤ヘルパー、非常勤ヘルパーなどの人件費コストが76.2%にのぼっているなど経営上の課題も多い。但し、昨年調査よりは改善傾向にある。
平成13年9月の運営経費構成比(訪問介護事業者・平均値)
訪問介護の事業運営に大きな影響を与えている問題点(5つまで選択)