02/03/25 第5回 これからの医業経営の在り方に関する検討会議事録       第5回 これからの医業経営の在り方に関する検討会 日時    平成14年3月25日(月)14時00分から16時00分 場所    厚生労働省専用第22会議室 出席委員  石井孝宜、大石佳能子、神谷高保、川合弘毅、川原邦彦、小山秀夫、       田中滋、谷川和生、津久江一郎、豊田 堯、西澤寛俊、西島英利、       長谷川友紀、南  砂                              (五十音順、敬称略) 議事内容 ○田中座長  ただいまから、第5回「これからの医業経営の在り方に関する検討会」を開催いたし ます。  委員の皆様方におかれましては、ご多忙のところ検討会にご出席いただき、まことに ありがとうございます。本日は内田委員が都合により、ご欠席とのご連絡をいただいて います。  早速議事に入りたいと存じます。本日は、前半で中間報告書素案について検討してい ただきます。そのあと、石井委員から医療機関における会計基準の今後の方向性につい てお話いただき、勉強させていただくつもりでいます。  最初に、事務局から資料の確認をお願いいたします。 ○田村補佐  資料を確認させていただきます。お手元に座席表、議事次第、「これからの医業経営 の在り方に関する検討会中間報告書(案)」、その次に石井委員からの資料で、「医療 機関における会計基準の今後の方向性について」、参考として社会保障審議会医療部会 の第5回と第6回の議事要旨を配付してあります。以上です。 ○田中座長  では、前回の議論における方向性を踏まえて、取りまとめた中間報告書(案)を読み 上げていただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○田村補佐  (資料読み上げ) ○田中座長  ただいま読み上げた報告書(案)について、ご意見があればお聞かせください。 ○神谷委員  報告書(案)の3頁目の2つ目の○の「本検討会において」という文章で始まる項目 ですが、ここは私の見解と大分違っています。どういうことかと申しますと、すべての 医療法人に債権者に対する開示だけではなく、債権者以外の者に対する開示も義務付け る根拠はある、と申し上げたと思うのです。医療法人に有限責任という恩典が与えられ ている以上、理論的にはやはり開示しなければいけないのですが、開示をする社会的な 条件が整っていない。いろいろな問題があって、いまの営利法人についてはこれが行わ れていないわけです。ですから、営利法人でやっていないことを医療法人のほうがすぐ やるべきだという意見に賛成はいたしませんが、決算情報の開示の根拠はちゃんとあり ますので、こういう文章で、意見の「一致をみた」と言われますと非常に困ります。も し、この私の意見にほかの方もご賛同いただけるのであればまた別の表現になるかもし れませんが、「ただし」という文章の前の部分は、「との見解で1人の委員を除き一致 をみた」というような形で文章を直していただければ、というのがお願いなのです。こ れは事実の問題ですので、そう書いていただくしかないのかなと思います。「根拠に乏 しく」ということではなくて、根拠は大いにあって、いまも商法の課題として残ってい るわけです。商法改正のときにやろうとして、経済界の方の反対があってうまくいって はいないのですが、そういう社会的環境が整えば債権者以外の者に対する開示をすべき だということについては法律家の中にはコンセンサスがあると思うのです。ですから、 いろいろなお立場がありますので、大多数はこうであったという形でまとめられるのは もちろん結構ですが、最後の一文で「大多数の意見が一致をみた」とするか、「1名の 委員を除き一致をみた」というふうに、事実の問題ですので、していただければと思い ます。 ○田中座長  主に上の「根拠」の部分ですね。 ○神谷委員  ええ。 ○田中座長  この点いかがでしょうか。いま言われたのは、根拠はあるけれども実態として企業で も行われていないからというご指摘ですね。 ○神谷委員  営利法人がやっていないのを、先に医療法人がやれというのは酷な話なのですが、こ ういう文章で書かれるとすれば、私はちょっと賛成できないのです。 ○田中座長  それを含めて、多分「根拠」と言っているのだと思います、実態がないと。 ○神谷委員  でも、「乏しく」というのではなく、根拠は大いにあるわけです。ですから、この文 章が私も含めた形になるというのでは非常に困るので、「見解で」の次に「1人の委員 を除き」という文章を入れていただきたいということです。 ○田中座長  「1人の意見を除き」というのはあまり穏当な表現ではないので、むしろ「根拠に乏 しく」のところを納得できるように柔らかくするほうがいいと思います。理論的根拠で はなく、一般に企業のほうでもそもそも行われていないからという意味ですよね。それ を表わすようなちょっとした修正ができれば考えましょう。 ○小山委員  おそらく上か下かを直せということですので、一律に義務づけることは現実的でない ということは先生のご意見でも一緒ですので、私としては「すべての医療法人に一律に 義務づけるべき」を切って、「一律に義務づけることは現実的でなく」だったらいいで すか。 ○神谷委員  それだったら結構です。 ○小山委員  一律に義務づけることは現実的でなく、だから言い難い。だから、「ことは適当とい う意見で一致をみた」と。「根拠に乏しく」というのは、根拠はあるのだと。でも、現 実的ではないというニュアンスで。 ○神谷委員  乏しいとも言えないが、現実的ではないというのならそれで結構です。 ○小山委員  では、「義務づけることは現実的でなく」ですかね。 ○田中座長  いまの小山委員の提案はいかがでしょうか。事務局はいいですか。 ○神谷委員  ありがとうございました。 ○西島委員  いまの神谷委員の話ですが、法制化はされていないのですね。 ○神谷委員  法制化をしようとして、まだ実現していないのです。理論的にはすべきだという見解 が強いと思いますが。 ○西島委員  そういう意見はあるわけですが、法制化されていないということは、何かを決めると きにその法制化というのが1つの根拠にはなりますよ。 ○神谷委員  ですから、「一致をみた」と言われると困るということなのです。 ○田中座長  「根拠」の理解が、法律面なのか学術的な理論面なのかとの解釈をめぐる議論でした 。 ○神谷委員  社会的な条件がまだ整っていないということなのです。ありがとうございました。 ○田中座長  では、ここはこの論争に立ち入るのは避け、かつ1人が反対したというのはあまり穏 当ではないので、「現実的ではない」ということにさせていただこうと思います。  ほかにいかがでしょうか。 ○長谷川委員  2点あります。1点目は3頁のいちばん下の○に該当するかと思いますが、この文章 でも取り様によっては取れるかもしれないのですが、非常に重要なことは設立主体によ って会計基準が異なるという現実がありまして、それが比較可能性を損なっている事実 があるのです。少なくとも会計基準の統一化という事柄が明確になるような文章を、4 つ目がよろしいと思うのですが是非入れていただきたいというのが私の意見です。  2点目は、2頁目の2つ目の○で、これもどの部分までが大勢を占めたのかが若干問 題だと思うのですが、「法人運営にも医学的専門知識が不可欠」、これは大勢を占めた と思います。「適正な医療の確保が最重要な課題」も大勢を占めたということで、ほぼ ご異存はないかと思うのです。「立法の経緯等」というのは富士見病院の話ですが、個 人の人格に拠を求めて適正な医道を図るというのは、むしろ組織としてはあまりいい方 法ではないのではないかという形で私は意見を申し上げたと思いますので、この「立法 の経緯等からして、現行の理事長要件を堅持すべき」と書かれてしまいますと、若干趣 旨が違うと思います。私自身の見解としては、法人運営にも医学的専門知識が重要であ る。そして適正な医療の確保が最重要の視点である。それを踏まえて理事長要件そのも のを現在撤廃することは現実的ではないということで、医師・歯科医師以外の人材を登 用する途を広げる、という文脈が明らかになるような形にしていただきたいと思います 。 ○田中座長  具体的には「立法の経緯等からして」はいらないという意味ですか。 ○長谷川委員  これはミスリードだと。 ○田中座長  2つのご意見が出ました。先に前者の3頁のいちばん下の、会計基準の統一はできる かどうかについて、そもそもそれを我々が提案する立場にあるかどうかはわかりません が、ご意見はおありでしょうか。会計を見比べられるようにする取り組みはとても大切 なことですが、よそに会計のあり方を変えろと我々が言えるか否かはちょっとよくわか らないにしても、石井委員、会計の基準の違う主体の統一化はどうなのでしょうか。 ○石井委員  後段で私がご説明をするはずの資料の中に、6/9頁のいちばん最初に「検討すること が必要と考えられる事項」といたしまして、「開設主体が異なるとしても出来る限り同 一の会計基準(例えば、病院会計準則)によって処理されることが望ましい」と記載し ましたが、その下に病院の開設主体というのは極めて多様で、開設理念あるいは組織構 造は極めて異なる性格を持っていますので、国立であるものと個人というものを全く同 じ処理基準で会計上処理を行うこと自体は残念ながら不可能だというのが会計の実務的 なサイドからの意見です。だからといって、比較可能性が全くないのがいいということ ではなくて、異なるけれども、出来る限り比較可能性はやはり確保すべきです。これは 、あとでまたお話をと思っていましたが、グローバリズムの中における異なる国の中で の企業経営の比較可能性もありますし、最近最も進んでいますのは、非営利組織の会計 と営利会計であったとしても、出来る限り比較可能性は確保すべきだという考え方が主 流になってきていますから、完全に統一した基準という言い方はちょっと会計の論理か らいうと無理なので、出来る限り比較可能性を確保すると。 ○長谷川委員  趣旨としては、比較可能性を担保するということをするために、だから全く同一であ る必要は必ずしもないと思うのです。ただ、目的としたら比較可能性も担保をやはりさ れるという形が望ましいと。 ○神谷委員  文章としては、中間報告書(案)の3頁の下から2行目の「医療法人会計準則」とい う言葉の前に、例えば、「より比較可能な医療法人会計準則とする方向で検討すべきで ある」というような形で文章を入れられたらどうですか。要するに、それぞれの業態で お互いにルールを近づける方向でエールを交換し合っていかないと良くなっていかない ○田中座長  ステークホルダーが違う以上、会計準則が違う。 ○神谷委員  だからルールを近づける方向でエールは交換しないといけないので、より比較可能な 、またはより比較可能性の高い医療法人会計準則とする必要があると思うのです。 ○石井委員  基本的には、もし長谷川先生のおっしゃっていたところのコメントを入れるとすると 、最初の文章に入ります。病院会計準則は、すべての開設主体に適用される性格の準則 で、これは開設主体が異なっていても比較可能性を確保すべきで、2つ目の文章は医療 法人に関するということですので、これは逆にいうと法人を限定していますから、これ に関しては最初の文章にお入れいただく形だろうと。 ○神谷委員  迷いがあります。どこに入れるべきかという点は、ちょっと難しいですね。 ○長谷川委員  ちょっと不勉強でお教えいただきたいのですが、病院会計準則は開設主体を問わず、 すべての病院に適用されるのでしょうか。 ○石井委員  現在そういう解釈で、病院会計準則は通知として生きています。その説明もちょっと 後で。資料化はしてありますが、基本的には医療法人に限定は全くしていませんし、病 院会計準則そのものが作られた最初の経緯は、公的医療機関の経営をもう少しきちんと わかりやすくしようというところが発端ですので、まさに現行の規程そのものが医療法 人という規定には全くなっていません。「すべての病院」という言い方をしています。 ○長谷川委員  事実として、それがすべての病院で採用されているのでしょうか。 ○石井委員  100%かどうか、例えば地方自治体の病院であれば地方公営企業法に基づいて、病院 会計準則のフォーマットでそういう計算書は作られていますし、貸借対照表も作られて います。 ○長谷川委員  それは、比較可能性が担保されていると考えてよろしいのですか。 ○石井委員  残念ながら、その辺が100%十分とは言い難いので、検討の余地があるということに なるかと思います。 ○長谷川委員  例えば公的の組織などは、違った手法でやっておられると理解しているのですが。 ○石井委員  地方公営企業法で規定されている自治体病院の場合は、いわゆる公会計とは別に病院 会計準則に従った公営企業年鑑用の財務諸表を作っていますので、それを見ていただく と比較はある程度できる。現状ではそうなっています。 ○小山委員  一応、病院管理研究所は大昔に指導課さんにちゃんとあれして、一緒に病院会計準則 を作ったことがあったらしいので、ちょっと申し上げます。いま長谷川先生が言ってい ることと、病院会計準則の目的としていることにちょっとずれがあるのではないかとい うことをまず申し上げたい。一般的にいまは新会計基準とかのアメリカの会計基準です が、ビジネスというのとプロフィットというのを考えていただきたい。経営というとプ ロフィットと言う。経営をビジネス、ノンビジネス、プロフィット、ノンプロフィット と考えていただくと、ノンビジネスでノンプロフィットといったら、日本だったら国立 療養所のハンセン療養所なんかはノンビジネスでノンプロフィットかもしれないですよ ね。ビジネスでノンプロフィットもあれば、ビジネスでプロフィットというのもあるわ けです。この4者を可視的に比較検討できる会計基準に各国ともなっているかという議 論をするのであれば、多分別々のものだと思います。ですから、大もとそういうことだ と。  病院会計準則についてはご指摘のように、公立病院や公的病院等、あるいは民間の医 療法人の報告例の中にはそこまでいくのですが、個人病院というのがまだいくつかあり まして、ここでは必ずしも病院会計準則が適用されていない実態があります。したがっ て、病院会計準則を日本中の病院の経営状態を比較するために統一しろというお話と、 きちっと病院に合った会計の準則というのを用意するべきだという議論は、会計学上も 国際比較上も病院経営上も、いろいろな要素が入っていると思うのです。ですから、も し病院会計準則を比較可能なものにするということになると、またなかなか難しいかな と思うのです。個人病院の場合ですと、例えば利益の中から院長の所得というのが出て きますから、人件費として医療法人の理事長の給与、理事長分の給与、医師としての給 与とかいろいろなことを言い出すと、なかなか比較可能性はないのではないか。ただ、 会計学のすべてをわかっていれば、見る人が見ると比較はそんなに難しくないというこ とですよね。 ○石井委員  後半の私に今日与えられましたテーマにそのまま入ってしまったのですが、少なくと も個人病院に関してはいま小山先生からご指摘がありましたように、まさに個人という スタンスでいちばん働いているオーナーである院長先生の給料が数値として一切顕在化 されていませんから、ある部分、組織としての病院における適正な会計基準がどうある べきかというニュアンスが適用しずらい。個人病院についてどうするかは、現実に四病 協等でも考えている委員会等の議論の中では、どちらかというと捨象されています。せ ざるを得ないということがあります。 ○神谷委員  方向性としては、公的な病院も含めて、比較可能性を高めていくことが必要だと、い うことについては多分コンセンサスがあると思いますので、報告書(案)の3頁の最後 の○の項目の最後に「病院会計準則については、より比較可能なものとする方向で検討 すべきである」とか、そういう文章を入れられれば多分皆さんはご納得いただけるのか なと思ったのです。いかがでしょうか。 ○田中座長  特定の固有名詞としての何々会計準則ではなくて、会計が比較可能になるような努力 が必要であるとのご意見でした。特定の基準や準則にはいま小山委員が言われたように 、それぞれ性格があると思いますが、ほかにどなたか。 ○西澤委員  病院会計準則自体となると、いろいろな問題があるかもしれませんが、私たち民間病 院の立場としては諸外国のように公立と民間の機能や支払い方式が異なる場合は比較も そんなに必要ないのでしょうが、日本のように全く同じ診療報酬点数で経営している場 合には、その比較というものをする必要があるのではないかなと思います。そういうこ とで、この文章の中にきちっとした言葉でなくてもいいですが、将来設立母体が違って もいろいろなことが比較できることが必要なので、そこを文言で言っていただければあ りがたいなと思います。 ○小山委員  病院会計準則についてはこの会議に毎回出ていて、別に何も詳しく話し合ったわけで はありませんよね。これは中間報告で「病院会計準則の専門家による見直し作業を急ぐ べきで、専門的な検討が必要である」と書いてあるから、もう1回言いますが、会計準 則がすべての病院の経営比較性を担保しているとは言えませんと申し上げているのです 。それに、そんなことは会計準則に課されたすべての義務と考えられないのです。です から、比較可能性ということと会計準則の在り方の問題というのは全く同じではないわ けですから、そんなことは書けないのではないですか。 ○西澤委員  私が言ったのは会計準則のことではなくて、それはそれとして比較可能なものは別に というふうに提案を申し上げたのです。 ○小山委員  だからこの下に書くのではなくて、その意見があるとすれば医療法人の在り方、医業 経営の在り方についてはいろいろな病院の設立主体があるから、経営が比較できやすく するように方策を考えるとかの文章ならいいのですが、この○のパラグラフは病院会計 準則のことを書いているわけですから、ちょっと違うのではないかと申し上げているの です。 ○長谷川委員  固有名詞としての病院会計準則がどうあるということは、ちょっと別にお考えいただ いたほうがいいと思います。会計ルールが比較可能性を担保したものであることという ふうにご理解いただくとよろしいと思うのです。だから、病院会計準則という固有名詞 に関しては、当初想定された以外の用途は目的外だとおっしゃることは、理解し得る話 です。ただ、ここでは会計準則という言葉が出ていますが、会計ルールとお考えいただ ければよろしいと思います。 ○神谷委員  比較するのは会計基準の重要な目的の1つですから、それは目的ではないと言われる とちょっと賛成できません。会計準則というのは、比較できなくてよいという建て前で できているものではないと思うのです。 ○田中座長  ほかにいかがですか。この節のタイトルは「医療法人の経営情報について」となって いて、国公立病院はどうしろとのタイトルではありません。それから、小山委員が言わ れたように、それについていままで話し合ったわけではないので、今後の検討課題であ ると各委員が認識していただければ、それでいいのかもしれません。 ○川原委員  先ほど来の皆さんのご意見はよくわかるのですが、私の理解不足なのか、いま一度確 認ということで質問をさせていただきたいと思います。上段の「病院会計準則について は」ということで、「企業会計基準の動向を踏まえ専門家による見直し作業を急ぐべき である」と、ここで一旦切っています。次にこれとは別に、「医療法人会計準則という ものを制定していく」ということで、二段構えで書いているわけです。そうすると、い ま議論されているのは病院会計準則についての議論として入れるべきなのか、あるいは 医療法人会計準則のところに入れるべきなのか混濁した意見になるのです。ここに書か れた趣旨というのは今後我々が検討する対象としては、医療法人会計準則なのか病院会 計準則なのか、両方を議論していくのか、これはどういうことなのでしょうか。いま座 長がおっしゃったようにまだ論じているわけではないのです。ですから、これから論じ ていくべき問題であって、どちらを論じていくのかによってまた表示も変わってくると 思うのです。それをちょっとお聞かせいただきたいと思います。 ○石塚指導課長  今日はその辺を石井先生から方向性だけをお伺いして、専門的な作業になりますので 、一定の作業の節目節目に石井先生からこの場でご報告をいただいて、病院会計準則そ のものと医療法人会計基準というのが正確かもしれませんが、医療法人としての基準と 両方をこの場でご議論をいただく。また別途、国立病院や公立病院の基準そのものをど うするかをなかなかこの場で論ずるわけにもいかないと思いますので、ただ一方で比較 可能性の議論はあると思うのですが、そこをどう担保するかは前からいろいろ課題には なっているけれどもなかなか難しくて、これまでいい知恵が出ていないのが正直なとこ ろです。 ○田中座長  今日の後半で勉強するところからスタートするという理解でいえば、今後どうしてい くかはいままで議論していないので、この報告で上げなくてもいいかなと思います。皆 さんは、今日できる限り比較可能なものにしたいとの気持はおもちですけれども、具体 策についてデータを見て検討したわけではない。今後の方向に向かって石井先生から発 表をいただきながらさらに討議して、他の経営主体との比較可能性も重要であると本報 告の段階で取り上げる扱いでよろしいでしょうか。 ○川合委員  いままでの議論の中で、病院会計準則という言葉が当たるのか当たらないのかはいず れにしましても、こういうものが少し時と共に古びてしまったというのは共通認識なの ですよね。ですから、「見直し作業を急ぐべきである」というあたりで止めて、あとは 全部削除するというのはいかがなのでしょうか。「併せて、医療法人の事業と医療法人 会計準則と云々」という話は、まだ全然議論も何もしていないです。ただ、経営情報の 開示というところで、まず病院会計準則等をもう少しちゃんと変えなければ駄目よとい うところまでは意見は一致しているわけですよね。ですから、今度は下から3行目の、 いままで議論したことのないようなことを削ったほうがいいのではないですかというこ とです。 ○石井委員  私の頭の中の整理としては、前段にありますように医療法人の決算情報開示業務は、 ここまで方向的な具体的イメージが出ていますが、先ほどからご議論いただいています ように、病院会計準則は病院という施設について適用される会計の基準で、現在医療法 人は全国の介護老人保健施設の7割を開設していますし、訪問看護ステーションの60% 以上を運営していますし、病院も開設しています。実は介護老人保健施設に関しては、 「介護老人保健施設会計・経理準則」という別の準則がありまして、医療法人というも のがもし決算情報を開示しようとしたときには、病院会計準則だけではその基準にはな り得ないのです。もし開示の議論をするとなると、どうしても医療法人としての付帯業 務その他を考えたときに、最近特にかなりの業務的拡大性を持っている医療法人の経営 情報開示ということを、もしこういう形で中間報告をおまとめになるとすると、その会 計の基準というのは病院会計準則とは別に必要です、医療法人としての会計の基準がな い、開示のスタンダードがありませんよということは、はっきりしていることなので、 名称はいろいろあるかと思いますが、病院会計準則や老人保健施設の会計・経理準則の 趣旨を生かしたところでの医療法人としての会計の基準がないと、経営情報、決算情報 の開示が現実的にどのようにやるのでしょうか。株式会社の場合は商法に計算書類規則 がありますし、上場会社の場合には有価証券取引法に財務諸表規則というのがあります ので、同じように考えて医療法人会計基準という結論に矛盾なく到達するのではないか と私は考えています。 ○小山委員  今日の議題の1つは、中間報告の案について、いいかどうかという議論をしているの が1点。それから別紙が付いていて、「今後検討を深めるべき課題」で「会計基準の在 り方」と書いてあるわけです。ここにどうして議論していないことを何か付け加えると いう議論が成り立つのかがわからないのですが、私もこの文章で別に何も問題ないと思 うのです。いまのお話で医療機関の経営の比較性とかという議論をするのであれば、い ままでのところはやっていないわけですから次回からして、それで次回が最終報告かわ からないのですが、そこに盛り込めばいいだけの話ではないのですか。そういう理解だ と申し上げているのです。 ○長谷川委員  議論していないというのは、どの程度深まった議論かは別にして、私の意見陳述では 「会計準則」という言葉は使っていませんが、会計ルールは統一化しないとパフォーマ ンスの特定はできないという形で申し上げていますので、全く触れていないわけではあ りません。ただ、「会計準則」という言葉について今後どうあるかということが中間報 告に出ている。しかも、これは議論していない。これについては私の理解でも、会計準 則そのものが議題に上ったということはないと思います。したがって、この項を削除し て会計基準の統一化、比較可能性を担保する方向で検討をするという項目を入れていた だければ、それで結構だと思います。 ○田中座長  経営情報の開示という観点からすると、この流れはそのまま読めると思うのです。あ くまでここは医療法人の経営情報の開示の話であって、病院が違う国立や日赤等とどう 見比べるかはこの報告書のタイトルには入っていないので、それは今後討議するとのニ ュアンスで報告書は出来上がっています。それは、いま小山委員に言っていただいたよ うに今後議論しないわけではない。 ○豊田委員  これに関して議論がなかったということは議論が少なかったのですが、私自身もこの 経理内容を開示のところで発言しているはずですが、そのときに医療法人協会のアンケ ートを例に挙げてお話したと思います。医療法人の中でもこの会計準則を使っている所 があれば、一般企業会計に基づいて会計処理をやっている所もあればと、いろいろある わけです。ですから、その開示の問題についても、その辺をきちっと環境整理しなけれ ばという発言はしたはずなので、これはこれからの大きな検討のテーマになることは間 違いないわけで、四病協でも今回、医療法人会計基準ということで新たに取り組むこと が決まっています。いま、そういう状況ですから、今日の後段で石井先生からそういう お話が提案されてくると思うのです。今回の中間報告という段階では、私はここに記載 されている文章でよろしいのではないかと思います。 ○田中座長  ありがとうございます。4頁の「今後検討を深めるべき課題」のほうでは、会計基準 の在り方で比較可能性も討議をするという理解を皆さんにしていただければ、文章はこ れでよろしいのではないかと考えますが。 ○川原委員  私は豊田委員と全く同意見です。長谷川委員がおっしゃるのは、むしろ各論の議論が なされていった段階で比較可能であるかどうかだとか、いろいろなものが議論されてい くのであって、これからこういうものを議論の対象にしてやっていくという段階で、そ こまで踏み込んだ各論的な文言を入れることの是非というのはやはり考えておかないと いけないのではないか。いろいろと各論的な議論がなされていく中には、何も比較可能 云々だけの問題には止まらないと思うのです。この文章体でいいと思います。むしろ、 いまおっしゃったように次のステージで各論的な議論に入った段階で、いろいろなこと を皆さんで議論し合って、そこでしっかりしたものを作り上げていけば、それはそれな りに我々の初期の目的は達成すると思うのですが、いかがでしょうか。 ○神谷委員  この議論は今日で3回目だと思うのです。1回目で私が石井先生と大分やりまして、 次に私の意見書の中で書きましたようには、これも石井先生とお話したと思いますが、 公法人会計が、はっきり企業会計一本でいくべきだという意見が強くなってきていると 言っているのです。まさにこれは比較可能性の問題で、また更に長谷川先生のご意見の 表明の時にもちょっとありましたので、今日は3回目というぐらいの感じだと思うので す。どうしても入れるべきだという程度の話まではいきませんが、長谷川先生がそこま でこだわられるのであれば、それはとても重要なことであり、また、ここでいままで議 論していない論点ではありませんので、どなたかがどうしても認めないとというなら別 ですが、病院の会計準則についてはより比較可能なものとする方向で検討すべきだとい う文章を入れても、どなたにも迷惑はかからないのではないかと思ったのです。 ○西島委員  これは、あくまでも医療法人の医業経営の在り方の検討会ですので、そこで出てきた 医療法人の収支決算書等々を見てどう考えていくのかが、いちばん主な問題だと思うの です。それと、やはり公的と私的との在り方についてはいろいろな問題点も出てきてい ますが、これは何もこういうところで比較する話ではないと思うのです。例えば公的な 病院であれば、さまざまな補助金が入ってきているわけで、それが我々の補助金のない ところでの経営と比較してもしようがない話であって、その前に公的私的の在り方をき ちんと検討していかなければいけないので、これは別のところでやることになっていま すから、私はこの文章でいいのではないかなと。そして、今後の話の中でそういうもの が出てくれば、そのときに検討すればいいと思っています。 ○田中座長  両方の意見が出ましたが、趣旨としてはいま話に出ましたように、「医療法人の経営 情報」とのタイトルで出来上がっているので、精神は理解した上で議事録にはそのとお り残りますが、今後話し合ってみないと比較可能かどうかは本当によくわからないし、 経営情報の比較だけではなく実態として公私の役割の話も入ってきてしまうので、1行 で書くには大きい話なので、今回はこれでいかせていただこうと思います。  もう1つの長谷川先生がご指摘になった2頁の上から2つ目の○で、富士見病院事件 を思い出させるような「立法の経緯等からして」の辺りは、要らないのではないかとい うご意見がありました。ここはいかがでしょうか。 ○西島委員  これは長谷川委員だけがおっしゃった話ではなくて、富士見産婦人科の事件が個人的 な問題としてよく意見として出されるわけです。それは決して個人的な問題でないわけ で、あの事件が起きて、あってはならないということで、そこで理事長要件が改正にな ったわけです。まさしくこれは歴史的な経緯でありまして、そういうところから現行の 理事長要件は規程すべきというような意見を私自身も申し上げたと思います。そういう 意味ではこの文章は、必要な文章であろうと思います。 ○田中座長  ほかに、この点についてご意見はありますか。 ○神谷委員  私はそもそもこの理事長要件の規定は不要だという立場ですので(笑)、もちろんこ れは外したほうがいいと思っています。少数意見かもしれません。 ○田中座長  これは幸いに「大勢は」と書いてあって、「全員は」とは書いていないですから。全 員一致はなかなか難しいし、どうしても不満が残るかもしれません。幸い「大勢は」な どの言葉をうまく使い分けて、両方の意見も一部の意見があったと謳っているところも あります。申し訳ありませんが今日いただいた事柄のうちでいうと、3頁の「根拠に乏 しく」のところを「義務づけることは現実的でない」に改める。 ○神谷委員  「現時点では現実的ではない」だと本当にありがたいのですが。 ○小山委員  「現実的ではなく」で、いいのではないですか。「現時点では現実的ではなく」で、 いまは現実的ではないかもしれませんが、将来的に現実的になるかもしれない。言葉の 厳密性という意味では意味が通ればいいわけで、別にいいのではないでしょうか。 ○神谷委員  そこまでおっしゃるのであれば、それで結構です。つまり「現時点では」でなくても 結構です。 ○田中座長  現実的でないとのご意見は、「現時点では」のニュアンスが当然含まれているので、 多分大丈夫だと思います。  テクニカルですが、石井先生、下の医療法人会計の会計準則は会計基準ですか。 ○石井委員  申し訳ありません。医療法人という形のはっきりとした括りができますと、公益法人 も、独立行政法人も、社会福祉法人も皆「会計基準」と言っていますので、できました ら「医療法人会計基準」というふうにコメントしていただけるとわかりやすいのではな いかと。 ○田中座長  実際、国立病院の独立行政法人化もあるので、ちょっと全体をどうするかは我々はま だこの時点では言えないと思います。  いまのテクニカルな「準則」を「基準」に直す点と、「根拠」を「現実的ではない」 に変えるというところでまとめさせていただきたいと思います。もう一度皆さん方に確 認をいたしますが、いまの点で事務局とまとめることでご一任いただきたいと存じます 。修文後の扱いは、一両日中に発表でよろしいですか。 ○石塚委員  ここだけであれば直したもので案を取って、今日の日付を入れて終了してということ にでも。 ○田中座長  いまの2カ所程度でしたら、今日中にできるのですね。 ○石塚委員  それだけということであれば、いまのように直した上で今日の日付で出させていただ きたいと思います。 ○田中座長  ありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。また、中間報告につ いて、どうもありがとうございました。  続きまして、石井委員から「医療機関における会計基準の今後の方向性について」の ご説明を願います。 ○石井委員  それでは、30分ほど事務局より時間をいただいております。お手元に「医療機関にお ける会計基準の今後の方向性について」というテーマの資料をお付けいたしまして、最 初に資料の説明をさせていただきます。  1/9頁からの最初の9頁は、私が今日のご報告のために作りました私見としてのメモ 等です。そのあとは頁を振ってありませんが10頁目に参考資料といたしまして、医療法 人における決算書類の行政に対する届出の様式というのが、6枚コピーしてあります。 次の7枚目のところに平成12年8月の「病院会計準則等研究についてのワーキンググル ープ報告書」が、約20枚にわたって添付してあります。このワーキンググループ報告書 は、四病協の研究グループから出しております報告書です。  本論に入らせていただきまして、2/9頁をご覧ください。もう前段でかなり濃厚な議 論をしていただいたわけですが、いちばん最初に先ほどからご議論をいただいておりま す病院会計準則の性格のようなものを書いたものが(3)にあります。その文章で「病 院会計準則第2条第2項において『病院の経営管理者は、当該病院の会計規則を定める 場合には、この会計準則に従うものとする』」と。この病院会計準則自体の性格として は、制定された当時は医務局長通知でありました。したがって、ここでご覧いただきま すように、「医療法人の」というような記載は一切ありません、あくまでも病院という 施設に対する会計の基準ですという言い方になっております。そして、その病院会計準 則自身が予定しています財務諸表が、同頁の上の(2)「医療法及び病院会計準則の計 算書類」の中の表の右側に記載してありまして、損益計算書、貸借対照表、利益金処分 計算書、又は損失金処理計算書、付属明細表となっています。  例えば先ほど申し上げましたように、地方公営企業法でもこの病院会計準則の考え方 というものを踏襲して作っていますが、地方公営企業法あるいは国等で利益金処分計算 書があるのかしらという議論に入りますと、なかなか整合しない部分ということになり ます。  これに対して、医療法人のほうに議論を絞ります。医療法人の場合は医療法の中でま た別の規程を諸々持っておりまして、この表の左側の医療法(医療法人)と書いていま すが、医療法人は法的には第52条において、財産目録と貸借対照表と損益計算書を作る 義務を課せられています。この財産目録、貸借対照表、損益計算書が従前の委員会でご 説明がありましたように、(1/9頁に戻っていただきまして)神谷先生からもお話があ りましたが、医療法人の債権者が帳簿閲覧をする場合に、閲覧権として存在しているも のが何かというと、この財産目録、貸借対照表、損益計算書です。そして1/9頁の囲い にあります医療法の第51条「決算の届出」をご覧いただきますと、いまの財産目録、貸 借対照表、損益計算書を実質的にはベースにして、決算を都道府県知事に届け出るとい う義務を医療法人が負っています。一般の株式会社の場合にはこのような義務はありま せんが、医療法人の場合には決算書を都道府県知事に届け出る。この届け出るべき決算 書は、同じように施行規則のほうで財産目録、貸借対照表、損益計算書と定義をしてい ますが、具体的な貸借対照表、損益計算書の様式イメージが先ほど参考資料でご覧いた だいた10頁以降のフォームになります。したがいまして10頁以降のフォームを再度ご覧 いただきますと、最初に「様式1」と左上に書いてあります。これは医療法人全体とし てのイメージです。先ほど、医療法人会計基準の必要性をご説明申し上げた経緯といい ますのは、ここにありますように医療法人における本来事業が、病院と診療所と老人保 健施設である。それ以外に付帯事業もある。それぞれについて施設としての会計準則が ある。医療法人全体に関する基準は残念ながらないというあたりで、医療法人会計基準 必要論ということがあるのではないかというご説明をいたしました。  次の頁に「様式2−1」があります、これが病院会計準則に準拠した形のほぼ大科目 に匹敵する状態での、損益計算書のフォームです。一般の企業会計のように売上高があ って売上原価があって、粗利があって、販売費及び一般管理費があるというイメージで はなくて、人の力と医薬品、設備の力をもって全体として医療サービスを提供している イメージがありまして、医業収益に対して総費用としての医業費用が対応するというイ メージの、少し一般の企業会計と異なった形の損益計算書のフォームになっています。 これが病院会計準則の基本的な大括りでのイメージです。  1/9頁に戻りまして、医療法の中には医療法人においては病院会計準則に準拠しなさ いという規定はありませんが、1/9頁のいちばん下に「医療法人運営管理指導要綱」の 抜粋があります。この医療法人運営管理指導要綱も通知ですが、その中に「病院又は介 護老人保健施設を開設する医療法人にあっては、それぞれ原則として『病院会計準則』 又は『介護老人保健施設会計・経理準則』によって処理するものとする」という規程が ありまして、医療法人の場合、まさにこの運営管理指導要綱及び、いまご覧いただきま した県提出決算書類のフォーマットからいって、一般的に病院会計準則による処理方針 というのを基本的には持っているはずである。そして、現状は相当部分普及していると 思われるという情勢です。  そのあたりを、もう少し医療法人というスタンスだけでまとめましたのが3/9頁で、 したがって現在、医療法人に適用される会計準則等というのは先ほど来から申し上げて いますように、病院や診療所だけではなくて老人保健施設、訪問看護ステーション等を 開設するということになりますので、病院会計準則、介護老人保健施設会計・経理準則 、指定老人訪問看護の事業の会計・経理準則、その他の施設・事業ごとの運営基準や指 導指針というものが適用されて、医療法人の会計が行われているという現状です。  これに対して、この委員会でも議論をいろいろしていただいていますが、実はさまざ まな社会環境の変化等がありまして、病院会計準則自体に関しても見直しということが 考えられてよろしいのではないかと、私自身も発言させていただいておりますが、その 辺を簡単にコメントしたのが、9/4頁です。「病院会計の現状・変化の必要性」であり ます。  (1)が「変化の内容」です。1つは、先ほどご説明しておりますような流れで、医 療法人の財政状態が規模的に大きくなっているケースもあります。その前提となってい る医療費は非常に巨額になるし、公的な医療機関の再編も起きるし、医療保険と介護保 険の関わりという問題もあります。従来、例えば10年、15年ほど前のように、単一の病 院だけをやっている状態ではない医療法人も増えてきている。こういう意味では、医療 法人という開設主体における構造変化というものが、非常に顕著にある。  それ以外に、いわゆる会計をめぐるさまざまな変化があります。それが◎で3つ記載 しております。1つは、企業会計の動向の変化ということで、いわゆる「会計ビッグバ ン」比較可能性議論というのが先ほど行われましたが、もともと会計ビッグバンはグロ ーバリズムというものがあって、企業が国境を明らかに越えて、その国境を越えている 営利企業の経営の比較可能性を、どの国に企業が所属しているかということに関わりな く持たないと、会計の機能が果たせなくなるのではないかと。これが簡単に言いますと 、会計ビッグバンです。  そういう関係で、具体的に出てきた変化がキャッシュ・フロー計算書の基本財務諸表 への組み入れであったり、退職給付会計であったり、税効果であったり、時価会計であ ったりということです。後ほどもう少し細かく、その辺をコメントいたします。現在こ のような傾向があります。これに関して、医療法人、あるいは病院会計において導入す べき性格のものがあるかないかということを、検討すべきではないかと考えます。  2つ目の問題ですが、先ほどご覧いただいた参考資料で、20頁に及ぶワーキンググル ープ報告書の基本になりましたのが、2番目の◎です。会計理論に基づく利益概念ある いは採算概念と、税法の、特に医療法人は課税法人で、普通の株式会社と同様の法人税 課税を受けておりますので、法人税法上の課税所得が大きく乖離いたしまして、現実的 なイメージとしては、次の5/9頁に「税法基準変化の具体的内容」をご覧下さい。  平成10年度の税制改正で、基本的に引当金が廃止になってしまった。ここには貸倒引 当金、賞与引当金、退職給与引当金と書いてあります。退職給与引当金だけが引当率を4 0%から20%に下げまして、温存されましたが、今年度の税制改正は閣議決定済みです が、この部分については14年度改正で全廃ということになりましたので、課税所得計算 においては、適正な期間損益計算をするために必要な引当金概念が認められなくなって しまう。特に病院の場合は人件費が半分になっておりまして、期末決算時点において期 間経過をしている賞与、あるいは過去勤務債務としての退職給付の費用、そういうもの が会計上認識されない、税法基準だけによっていると認識をされない。したがって、適 正な損益が出せない。こういう情勢が出ておりまして、その辺を縷々細かく具体的なイ メージをレポートにまとめましたものが、後半に付いている報告書です。必要があれば お読みいただければと思います。  4/9頁に戻ります。したがって、この問題は病院会計準則の本質的な問題ではないの ですが、実はそれほど大規模化していない民間の医療法人の場合は、どうしても税法基 準に引っ張られた会計処理をしています。これをそろそろ本気で是正していかないと、 経営実態が表示されない要素があると。これが2番目の論点です。3番目は、周辺分野 においても会計基準との変化が非常に、まさにこの2、3年で起きています。先ほど申 し上げた社会福祉法人会計基準の制定。社会福祉法人会計は、従来は資金収支会計がメ インで、いわゆる損益とか事業活動収支というものをイメージしておりませんでしたが 、それが導入されました。  また、独立行政法人会計基準は、今後移行が予定されている国立病院・療養所の独法 への変化の中で、適用される会計基準かと思われますが、これはいわゆる企業会計方式 を取っております。さらに、公益法人会計基準の見直しに関する論点の整理(中間報告 )が、つい先ごろ公表されまして、パブリックオピニオンという形で総務省から出して おりますが、公益法人の会計基準の中身も資金の収支だけではなくて、いわゆる企業会 計型の損益に近いような概念のものも入れようという変化が起きはじめております。そ ういう意味では、先ほど非営利組織の会計と営利組織の会計は、完全に同じ基準で比較 することはできないけれども、ある程度、比較可能性を担保しようという発想は、会計 としては時代の流れでございます。  もう1つは、現在医療法人の場合は、先ほどご覧いただきましたように、病院会計準 則の中で、期間の諸表として損益計算書しかありませんが、企業会計の流れもキャッシ ュ・フロー計算書という資金の流れを認識する。それから、公益法人、独立行政法人等 も、資金の流れだけではなくて損益的な概念も入れるということで、期間の計算書類は 、いま2本立ての傾向がメインになっています。お金の動きを明らかにするものと、会 計的にきちんと採算概念といいましょうか、損益概念を表示するものと2つ必要だと。 一方だけではミスリードをしてしまう可能性が多いという流れがあります。そういうよ うな観点から、実は病院会計準則もそろそろ見直しをすることが望ましいのではないか ということであります。  次の5/9頁をご覧いただきたいと思います。変化に対するところの対応についてです が、5/9頁の真ん中の(1)〜(3)と1行ずつ記載しておりますが、今回資料として添付を させていただきました「ワーキンググループ報告書」が、12年の8月、医療法人協会の 当番で四病協にて作成されました。また、昨年の3月19日から既に月に1回ほど会議を しておりますが、同じく四病協で病院会計準則研究委員会を開催しております。2番目 の病院会計準則研究委員会は、公的な開設主体にもほとんど出席いただいておりまして 、病院会計準則についてのあるべき姿の議論を、病院団体として検討しております。  その中で日赤、済生会、厚生連等の公的な医療機関、自治体、民間医療法人レベルの 各実務担当者の委員から出ている統一的な意見といいますのは、財務諸表に関して、で きれば完全比較はできないけれども、ある程度の比較ができることが望ましいというこ とです。実務家レベルでありますが。  3番目は、本年3月18日に今までの流れを受けまして、医療法人会計基準の研究分科 会を、先ほど日本医療法人協会長の豊田先生からもご発言をいただきましたような形で 、この間約2年近い流れを経て、最終的に医療法人会計基準の必要性を見直す、あるい は考え直す、場合によってはつくるという方向で、本格的に検討しようという流れであ ります。  6/9頁の「今後の方向性について」でありますが、先ほど1番目についてはご説明い たしました。特に病院については、開設主体が異なるとしても出来る限り同一の会計基 準によって処理されることが望ましいと。2番目は、病院が採用すべき適正な会計基準 はどういうものなのかということを考えなければいけない。3番目は、いわゆる「会計 ビッグバン」における新会計潮流への対応の必要性を検討することが望ましいと言わざ るを得ないであろう。4番目は、非営利であるということと利益概念。いま現実に病院 会計準則は企業会計型ですので、当期利益という言い方をしますが、利益概念という表 示の仕方イコール営利ということではなくて、非営利であっても利益という言葉を使う ということが、会計の中では比較的一般化していることは事実であると。この再認識を しなければいけない。つまり、会計上「利益」という言葉を使っているから、イコール 営利という議論にはならないと。5番目に、医療・介護・その他の付帯事業を行ってい る医療法人については、全体としての医療法人会計基準というものを考えざるを得ない 、特に情報開示議論をしていくからには、スタンダードがなければ開示はできない。以 上であります。  最後に、いわゆる「会計ビッグバン」、新会計基準というものが新聞等でもよく出て おります。基本的なイメージだけ簡単にご説明するということで、6/9頁の(4)です 。先ほど申し上げましたように会計ビッグバンがいま世界中を吹き荒れておりますが、 日本の場合は具体的には、現在すべての株式会社に適用されているものではなくて、主 に証券取引法適用上場会社等の有価証券報告書作成会社において採用されております。 実は中小会社議論というのが起きております。大企業の会計基準とは別に、ドメスティ ックな、国内だけの事業を行っている中小会社に関しては、日本型の会計基準があって もいいのではないかという議論が、一部から起きております。会計ビッグバンは、あく までもグローバルな活動をしている規模の大きな国際競争を行う企業におけるところの 、比較可能性確保が最初の理由ですだからという根拠です。  会計ビッグバンの内容を三本柱で申し上げると、下から2行目にありますが、1つは 「連結会計」です。個別財務諸表から連結財務諸表主体へという、計算書類作成の移行 です。2つ目は「時価会計」です。取得原価で、買った値段で評価するのではなくて、 時価で評価をする方式です。また、大変重要なことは、資産だけではなく負債も時価で 評価するという概念が、いま主流になりつつあるということです。3番目は、キャッシ ュ・フローです。資金の動きを明らかにすることが必要との考え方です。大きな3本柱 の変化があると、どうしても課税所得計算と会計上の損益が大きく離れますので、そこ で「税効果会計」というものが自動的に導入されなければいけなくなります。これが会 計ビックバンといわれる流れです。  最近日本において個々の会計処理として具体的に出てきたものが約10項目出ておりま す。この中で特に医療法人会計や病院会計を見直すときに必要と思われる要素を、3点 だけ簡単にお話いたします。7/9頁の(2)の「退職給付会計について」が1つです。退職 給付会計は、従来日本の企業が行っていた「退職給与引当金」の会計とは大きく異なり まして、将来支払うべき退職給付を一定の割引率等によって現在価値に割り引いて、そ して退職給付債務を計算して、これを引当金計上するという考え方です。基本的には債 務の時価評価という形になります。  これをこの2、3年で、日本の大手上場企業が導入いたしました。7/9頁の下から2 行目ですが、実は当時一説では、東証の一部上場企業だけで、この退職給付債務積立不 足額が80兆円もあったと。これを現実に積み立てた流れの中で、大手企業の決算報告が 大変悪くなったということが、現実にございました。病院を開設している医療法人、な いしは病院という施設は、人件費が一般的に収益の約半分と言われておりまして、退職 給付債務をこういう形で計算しますと、とてつもない不足があるということは想像に難 くないという感じがいたします。  従いまして、病院会計準則や医療法人会計基準を新たに見直ししたりつくったりした 段階で、適用するための時間的な余裕というものをどの程度考えるかを検討しなければ なりません。移行に伴うところの経過的な措置の問題と、適用すべき施設ないしは法人 はどれなのかも決める必要があります。医療法人の場合には、どの程度の規模のものを 対象にするのかということは、非常に大切なことであろうかと考えます。  8/9頁に「税効果会計」について簡単に記載してあります。真ん中よりちょっと上に 囲った形でイメージが出ています。会計上の正しい採算利益概念というのは、収益から 費用を引きます(収益−費用)。これに対して、法人税法で課税所得を計算する課税所 得概念は、益金−損金という概念になりますが、実は引当金制度が全くなくなってしま ったおかげで、会計上の利益と法人税法上の課税所得が全く一致しないという形になっ ております。中小企業である医療法人は、どうしても税法基準に引っ張られて決算を組 んでおりますので、特に平成10年以降適正な損益を表しているかということに関して、 残念ながら疑問があります。  具体的な計算例を同じく退職金で例を取りましたが、資料のイメージになります。計 算例の表の真ん中に「損益計算書」がありまして、税引前当期純利益が1億5,000万円 です。ところが、1億5,000万円を計算する前提で、税法上では認められていない正し い計算をしたら、退職金の引当てを2億しなければいけなかったとします。その引当を 今期1期間でやってしまったとします。そうすると、「法人税等の計算」の所に書いて ありますが、税金申告上は今年度で一次に繰り入れた退職給与引当金の不足額の2億円 は損金とみてくれませんので、損益計算書の1億5,000万円の税引前利益に2億を加算 して、3億5,000万円の概ね40%の税金を税務上申告しなければいけません。  そうしますと、損益計算書は税引前当期純利益1億5,000万円、課税所得は2億足し ますので、その40%ということになると税額は1億4,000万円。差引きすると当期純利 益が1,000万円になってしまいます。普通は利益に対して40%税金がかかるはずなのに 、1億5,000万円利益を出しているけれども、実は1,000万円しか最終の利益が出ないと いうような不整合が起きます。  このために税効果会計を適用しまして、税引前の会計上の正しい利益の1億5,000万 円に対応した正しい法人税等を計算して、最終の税引後利益を税引前の利益にリンクし た形に調整してあげようという計算をいたします。これが税効果会計であります。非常 にわかりづらいですが。単純に言うと、会計上の利益にリンクするように、法人税の負 担を計算するという考え方です。蛇足でありますが、大手の企業はみんな税効果会計を 採用しております。銀行の場合、有税で不良債権の償却をいたしますと、税務上、それ は損金で落ちません。そうしますと、いまここで計算したことと同じことが起きます。  資料の計算例では税効果会計を適用した場合、法人税等調整額として△80,000千円と 書いてありますが、このマイナス8千万円が場合によってはマイナス8,000億円という ような形で、流動資産や固定資産に資産計上されるという問題も、いま一部で起きてい ます。税金計算と会計計算をリンクさせるために、税効果というものの会計をしなけれ ばならないため調整額を資産に計上しますがその資産の価値自体を評価する必要が生じ るからです。  こうなってきますと、会計情報を損益計算書だけで読むことは難しくなります。言っ てみれば読みづらさを解消するための1つの方法として、8/9頁のキャッシュ・フロー 計算書が必要になります。つまり、会計上の利益概念は、会計基準によってその数値が 異なってしまう。また、判断の要素が非常に大きい。恣意性というものを完全に排除す ることができない。現金というスタンスで考えた場合には、これを排除できますので、 そこでもう1つのイメージとして、キャッシュ・フロー計算書というものが出てきわけ です。  その一般的なイメージというのが、9/9頁に記載してあります。間接法表示のキャッ シュ・フロー計算書の例示をしておりますが、下から3行目に、現金及び現金同等物の 当期におけるところの増減額があります、期首における現金及び現金同等物の残高を足 すと、当然期末の現金預金同等物の残高になるという計算になっています。現金同等物 とは何かというと、普通預金、通知預金、当座預金あるいは回収期間が短期間、概ね3 カ月の定期預金などが現金同等物と言われています。まさに目の前のわかりやすい支払 資金というイメージのものになって、その増減が出てきます。ですから、会社計算上利 益が出ていても、時として現金及び現金同等物の増減額がマイナスになることもあると 。昔の商人の言い方で「勘定合って銭足らず」というようなことを言いますが、勘定と 銭の関係、両方とも財務諸表化をしようという流れが、現在の大きな会計のトレンドで す。  税効果会計は非常にわかりづらくて、説明も十分ではなかったかと思います。時間的 な制約もありますので、これで説明を終わらせていただきます。 ○田中座長  どうもありがとうございました。BIS規制をめぐる議論で、税効果会計が銀行の自 己資本の多くを占めるといわれる意味がよくわかりました。専門的でしたけれども、ご 質問等があれば、この機会にお願いいたします。 ○神谷委員  2点教えていただきたいのですが、商法を教えている者から見ますと、やはり法的な 根拠の問題がいちばん大きいと思います。せっかく努力されても、砂の上に家をつくっ ているようなところがありまして、商法には公正な会計基準を斟酌すべしという規定が あって、そ れに基づいて法律の根拠の上に会計が載っかっているという形になってい ます。ところが、医療法人に限れば、建前としてそのような法律上の根拠はない。例え ば医療法の52条で財産目録作成・閲覧という規定がありまして、このあとにでも会計慣 行を斟酌してやりなさいという法律の規定があれば良いと思うのです。現在の医療法の 規定は、建前は公正な会計基準を使わなくてもいいような世界になっています。ですか ら、まずそこを改めるべきではないかと思いますが、それはなぜそうならないのでしょ うか。根本的ないちばん大事な質問ですが、そこを教えていただきたいと思います。 ○田中座長  それは会計の方よりも、むしろ法律の話ですね。 ○神谷委員  多分これは石井先生がよくご存じかと思います。 ○石井委員  すいません、私の能力を越えております。 ○石塚指導課長  石井先生、1/9頁にありますが、法律的には決算書は自治に届けることになっていて 、その様式は施行規則で貸借対照表の様式で決めております。いまは細かい基準までは 決めておりませんが、やろうと思えばそこを詳細化すればつくることはできますが、い まはそこまでの細かい規程は置いていないということです。  医療法人も、診療所を開設している、いわば1人医療法人というような小規模なもの から、大きなものまでありますので、小規模なものまで含めて、事務処理に手間がかか る会計基準を一律に適用するのはどうかという議論もあるものですから、両方すべてに これでやれという形はいまは取っていないというのが現状です。 ○神谷委員  規模の問題は何度も石井先生とも議論をしましたが、規模の小さい所にはそれなりに というのが原則にあると思います。ですから、例えば決算を届け出るという点にしても 、上場している企業であれば当然届出をしているわけです。比較するとわかりますが、 上場企業は届出もしていて、そうでない営利法人も開示はしていると。しかし、医療法 人では、いちばん土台の法律上の根拠のところが抜けています。これでは、ちょっとい まのご説明だけでは、なかなか世の中通らないのではないかと思います。だから、少し 短期的には無理だとしても、中期的にはお考えにならないといけないのではないか。そ れができないのであれば、その理由をもう少し説明される必要があるのではないかと思 います。  第2点目は、石井先生のレポートの1/9頁の52条の債権者の規定のところですが、こ れも商法に同じようなものがありまして、債権者の定義について、商法の分厚いコメン タールを見ても、なかなか載っていません。これを断言する自信はありませんが、ここ に治療を継続している「患者の一部」が含まれるという見解は十分成り立ち得ると思い ます。その辺りも少し心にとめておかれたらいいかと思います。その2点だけ申し上げ たいと思います。 ○田中座長  これはコメントですか。 ○神谷委員  はい。 ○田中座長  ほかにコメントでも結構ですし、石井委員への更なる質問でも結構ですが、いかがで しょうか。 ○小山委員  石井先生のプレゼンテーションで、医療機関における会計基準の今後の方向性という ことでは、いまの病院会計準則を見直すのは必然だろうということと、いろいろご説明 がありましたが、あとは医療法人会計基準をつくればいいということでしょうね、結論 は。それだけですよね、今後の方向性は。ほかには方向性というのはないのですか。 ○石井委員  私どもの立場からのスタンスでいけば、当然その2つだろうと考えております。 ○小山委員  会計準則を22年もやってきまして、いろいろ議論がありますが、平成6年の12月1日 の医療法人制度検討委員会では、いまの会計準則はいろいろ問題だから、決算届に役員 変更届を付けて、簡易な様式で事業報告をして、事務の簡素化を図れと言っているので す。これは昔の議論ですが、よく覚えています。あまり病院にいろいろなものを、ああ しろ、こうしろと言われたって、事務処理能力もないし、会計士を雇うお金もないし、 という問題も実態としてあるのでしょう。  それから、医療法に、会計基準どおりに会計をやれと書いていないというのは、根拠 がなくていかがなものかと、さすが本当にほれぼれしてしまう法学者の議論ですが、実 態が伴わないのでしょう。だから、書ききれなかったんだし、そんなことは予定してい なかったということなので。  先ほどの議論に戻りますが、医療経営がほかの病院全部の経営状態の比較検討をしな ければいけないのか、それとも会計情報についてもなるべく開示しようということで、 大きい病院については監査も入れたらどうかという中間報告を、いまやったばかりです よね。だから、そういうスケジュール闘争というか、少しずつ順番にやっていくと。一 気にやらなければ駄目だという人もいるかもしれませんが、そういう性格のものだと私 は思います。いままでやっていなかったので、理屈が通らないから新しい基準を付けて 、石井先生がおっしゃっているように、どうやって実際にやっていくかということにな ると、かなり大変ですよね、9,200からの病院全部という話になると。各病院団体も名 前を連らねているから、やりたいということなのでしょうけれども、病院会計準則研究 会の下に社団法人の名前が4つ書いてあるから、社団法人は4つとも同じ方向性なのか どうかよくわかりませんが。現実的にどうかということと、法律的にどうかということ と、会計上正しいかどうかということは、大変大きいと思います。  退職金の評価のことを言いますと、自治体病院の公益4年間ということが出ています が、これは退職金を100%積むと大変な金額ですよ。自治体病院は、数値上では赤だ、 黒だと言っていますが、退職金を実際に全部積んだら、真っ赤。びっくりするぐらいの 真っ赤なのです。それをやってみるのはいいですけど、私はあまり怖いものは見たくな いほうですから、そんなことをやって公立病院の全部の経営実態ということになると大 変だと思います。その分、病院経営にご理解いただける方が多くなるかもしれません。 私は方向性といった場合に、そういった現実的な話と、机上の整理の議論の2つあるの ではないかと思います。そこをどう埋めていくかということに関しての方向性というも のをご示唆いただけたらなと思います。 ○神谷委員  法律の根拠の話ですが、商法の規定は小さな八百屋の株式会社にも適用されていて、 そこでそれなりに会計慣行を斟酌するということになっていて、決してフライ級の人に ヘビー級のルールでやれと言っているわけではありません。しかし、そういう会計原則 に反したことをすると責任がありますよという土台をつくらないと、法人制度というも のは結局健全にならないというふうに考えるべきだと私は思います。そこはなかなかご 意見が一致しないかもしれません。つまり、小さな企業にも営利法人の場合には、そう いうルールが適用されているということだけ申し上げたいと思います。 ○石井委員  という小山先生のお話がありまして、今回の中間報告において、だからこそ専門家に よる見直し作業を具体的に急ぐべきで、医療法人会計基準についても検討をしようとい うことであろうかと存じます。先ほどのご議論のように、これからまさにそれを確認し ていただいて、具体的な作業のイメージをつくるということなのだろうというふうに解 釈をしております。  それからもう1点、自治体病院のみならず、退職給付会計を入れますと、民間の医療 法人病院もかなりの件数が大赤字になるだろうと私は認識しております。 ○田中座長  結論が出るというより、勉強して今後の討論のための材料を仕入れたとの位置付けで よろしいと思います。法律的な立場、会計学の立場、現実の政策論は、それぞれ微妙に 違うとご指摘をいただきました。それを踏まえて議論しましょうということだと思いま す。ほかによろしいですか。 ○神谷委員  石井先生に伺いたいのですが、実際にどの規模の医療法人にどういうルールを適用す べきかという問題、それが本当にクルーシャルな問題になってくるのではないですか。 ○石井委員  もちろんどの規模にということと、先ほど申し上げましたように、退職給付にしても 、この基準は正しいということで導入を即、単年度でやるという形は取れないだろうと 。いわゆる会計上も税法上も激変緩和措置がありますので、そういう問題等、これは具 体的な議論です。私はこの段階のご説明で具体的に、この規模ということを私自身が線 引きをする立場には当然ありませんので、そういうことも含めたところで、具体的に早 急に検討をするということが望ましいと考えております。 ○神谷委員  素朴なイメージはおありですよね。この程度の法人にはここまでは要らないというこ とが、直感的におありだと思いますが、それをもし可能な範囲で伺えればと思います。 ○石井委員  具体的なイメージとして1つ参考にされるとすれば、お手元にある過去の委員会資料 のどこに入っていたか私は忘れましたが、株式会社や他の法人における情報開示のサマ リーが入っておりましたが、ああいうものが1つの参考にはもちろんなるだろうと思い ます。ただ、それぞれの主体によって基準が全く異なりますので、その辺をどういうふ うに、どれが最も適切な判定の基準になるかということを、皆さんで議論をしていただ くことになるのではないかと思います。 ○田中座長  テクニカルな質問ですが、病院の世界でもPFIとかREITとかを通じて、SPC が入ってきてもこれは対応できるのですか。それはまた別になるのですか。 ○石井委員  先生、私はPFIは専門外なので。 ○小山委員  だから、証券化してくる部分が出てきます。そうすると、いまの病院会計準則に耐え られないということは事実なのです。だから、病院会計準則がいまの時代に合っていな いのが正しくて、現行法上の指導課の業務を続けていくとすれば、病院会計準則を見直 すことは必然なのです。それが1つです。もう1つ申し上げたいのは、医療法人に関し ては、石井先生が説明されたように、医療法人はいろいろなことがあったので、医療法 人用の会計基準というのはあってもいいのかなというふうに言えるのです。  私が「これからの医療経営の在り方に関する検討会」のほかに、多分会計準則の委員 会ができたり、医療法人会計準則をどうするのかという、ここで議題になるのか私はわ かりませんが、いままでの議論では患者さんへの情報提供はどうするのかという観点、 あるいは説明責任というのがあるという観点ですよね。例えば診療情報の開示がありま す。どういう手術をやったらどのくらいかとか。今回の診療報酬改訂では、手術も3段 階になって、何々について50例以上、10年以上の医師がいてどうだという点数が付いて いるのです。あるいは心臓系については、3年以上の医師が付いたら何点、そうでなけ れば70%しか算定できないとか、そういう点数が付いてしまった時代なのです。だった ら、むしろ何科に何人お医者さんがいて、手術例は何例かという診療情報の開示をした ほうが、患者さんがそういうことを望むのならば、それはそれで診療情報の開示という 情報開示の議論の中では、会計開示の議論と同じように診療情報の開示、あるいはスト ラクチャーレベルの、職員などがどのくらいいて、どういう人がどのくらいいるのかと いうほうが、患者さんから見れば欲しいのではないかという話があります。  ですから、私の気分としては、情報開示の話と会計準則が出てると、儲かっている病 院と儲かっていない病院だったら、儲かっていない病院に行くのはやめようとするのか 、儲かっている病院に行ったら、負けてくれって言うのか、企業経営の内容について患 者が何を判断するのですか。私にはよくわからない。  診療情報の開示とかいう議論があって、それの一連で会計情報の開示という議論が出 てくるのかなと思ったら、会計情報は石井先生は専門だから、お話していることはよく わかります。変えなければいけないし、それはいいのですが、もう1つ、医療経営の在 り方として、内容を知られるというだけではなくて、説明責任といいますか、医療機関 として地域に開かれた経営をしていくとか、住民の協力を得ながら地域医療を貫徹して いくという観点で、情報提供、情報開示という議論が1つあったほうがいいのかなと思 います。 ○長谷川委員  実際、診療報酬改訂で、施設ごとの症例数がどの程度意味があるのか、根拠があるの かというのは、これはまた別の話としまして、良い医療機関がそれなりに報われるとい うのは、良い医療を提供、確保するという意味でいちばん重要な視点だと思います。そ れに、ある種患者さんの選択であるとか、コンペティションができるような環境を整え ると。そのためには、1つアウトプットの情報というのが絶対要るわけです。それは症 例数かもしれないし、長期の予後かもしれない。それとはまた別に、インプットの情報 というのがどうしても要るわけです。そのインプットの情報というのは、結局コストパ フォーマンスがどうなるのかという話につながるわけで、インプットの情報が全くない ところで、アウトプットだけ考えても、これは意味はありません。  もし、アカウンティングを良い医療の確保ということで考えるのであれば、これは比 較可能性なのです。もし医療法人だけの議論であるとすれば、これは非常に不十分な議 論に留まらざるを得ないのです。公的病院とかほかの病院等も含めて、比較可能性をど うやって担保するのかを考えなければいけないのです。  インプットの情報が結局何につながるかというと、資源を診療報酬だけで全部やるの であれば、また話は違うかもしれませんが、もし何か別な形での資源をある医療機関に 投入するとすれば、それはアウトプットに基づいて、なおかつアウトプットだけではな くてインプットも比較して、何らかの形で決めていくというルールをつくっていく必要 があります。  例えば財務会計のデータを患者が見たら、患者が選ぶか。これは非常に可能性は乏し いと思います。ただ、社会的に資源をどういう形で投入するかを決めるうえでは、非常 に重要な情報になることは間違いないと思います。患者が選べるかどうかだけで、財務 会計の情報というのは評価すべきではないと思います。 ○神谷委員  座長が先ほど言われたSPCというのは、資金調達の関係でもどうかという問題です か。 ○田中座長  資産のあるほうが外へ出ていってしまうので、医療法人会計が見かけ上小さくなるか もしれません。それをどういうふうに扱うかということです。 ○神谷委員  いま長谷川先生が言われたコンテクストとは別に、今後議論することだと思いますが 、資金調達を外部からするということになれば、当然、会計情報は非常に重要なもので す。ご存じのとおり、諸外国ではそういう形で大きな病院の資金調達をしているわけで す。私の親友のカナダ人で、トロントのいちばん大きい病院のファイナンスを担当した 弁護士さんがいらっしゃいますが、最先端の病院をつくるときには、そういうことを当 然手法の1つとして考えなければいけないと思います。そういうときに会計情報という のは絶対に不可欠で、そういうことを考えていかなければいけない、潜在的にはすごく 大きな問題だと理解していかないといけないのではないかと思います。 ○谷川委員  石井先生の言われている退職給付債務というのは、私なりに理解をしますと、医業経 営の健全性みたいな概念だろうと思います。お医者さんというのはいろいろなパターン があります。小さな医院から大きな病院まであると思います。その中で退職給付債務と いう観点を入れていかないと、将来的に退職金倒算もするし、あるいは適正に費用が当 期の中で償却されないというのは、それはやはり問題ではないかというのは非常によく わかります。  それをやることが、1つの退職給付債務でPBOを認識しているというのはわかりま すが、私ども民間企業の経験から言いますと、退職給付の債務までくるのに、最初は退 職給与引当金の半分ぐらいしか引き当てられないとか、税法ギリギリのところまでしか やれないとか、何とか要支給額の100%をやりたい。やりたいと思っていたらだんだん 税法が変わりまして、税金を払わないで引き当ててはいけないと言われて、最後はいま の形になっています。  そうなりますと、健全性とか、民間企業経営という観点からいきますと、年金に逃げ ざるを得ません。私はよくわからないのですが、各医療法人の、しかも民間の医療法人 の年金はどうなっているのでしょうか。それがないと、PBOの議論とうまく一致しな いのかなと。  それから、先ほどから出ていますように、基本的にはお医者さんが中心の経営になり ますので、かなり年金そのものは専門化していますし、わかりづらい言葉も多いもので すから、いまの世の中の状態がどうなっているのかというのがよく見えないものですか ら。 ○石井委員  時として非常に鋭く細かい質問が第1回目から出ておりますが、まさにいまのこと  を一言で申し上げると激変緩和をしなければいけないのかなと。もう1つは、お医者様 というご議論がありましたが、組織的な病院経営の場合は、いちばんメインのマンパワ ーは看護師さんで、それ以外にもかなり大量のコメディカルを採用しておりまして、こ ういう時勢の中で比較的離職率も、民間の場合でも落ちてきているといいますか、安定 してきている傾向があります。そうなってきますと、確かにかなりのボリュームで退職 金の問題を考えなければいけないと。  私もまさしく同じ意見で、非常に細かい退職給付会計議論をするよりも、いわゆる従 来型の期末要支給額の自己都合による100%目標ぐらいが、第一段階における実務的な 判断であろうかなと、個人的な見解としては思います。会計的にも一団として300人以 下の場合は、保険数理的に不適用という議論がありまして、そういう辺りの対応もでき るであろうと考えております。まさにそういう具体論を今後検討していくうえでも、1 つ1つ考えていかなければいけないだろうと感じております。  それから、年金の問題はなかなか難しくて、企業年金に入っているところもあるし、 日精協さんは年金か何かをおやりになっていましたし。加入しているところも、全然対 応していない所もありで、さまざまであります。 ○谷川委員  私どもの場合は、企業の中に病院がありますが、全員企業年金に加入して、正規従業 員ですので。 ○小山委員  民間と国公立病院の職員の給与を比べていただくと、すべての職種で国公立の給料が 高いのです。事実です。誰でも知っています。医師でも追いつかないです。看護職なん かも、すごい給与の差が出ていて、実際に民間病院のほとんどは、政管健保と厚年の単 発だけという形ですよね。厚生年金基金をつくりたくても、なかなかお金もないし、給 与額が低くて蹴られた所もあるという、とんでもないところです。  実際に401kとか、民間でも従業員は大切ですから、401kとか退職金とか、経営の近 代化とか、安定化とか、働く医業従事者の福利厚生面の向上というものを一生懸命考え ていますが、そういう面では非常に民間の置かれている立場というのは結構厳しいとい うことが、1つ言えると思います。普通ですと、大企業と全然違った形になると思いま す。ですから、実際問題として退職金1つ取っても、大きい所はいいですが、数の上で は中小企業が多いです。大体140床ぐらいが日本の病院の平均ですから、4,500ぐらいの 病院は、それより下なのです。  140床ということは、多くても200人ちょっといるかいないかですよね。病院のタイプ によって違います。日本の病院で議論しているときには、半分以下は従業員200人以下 の、非常に地域に根づいて頑張っている病院だということを考えていただくと、大きい 病院は目立ちますけど、小さい所を少し、その平均値ぐらいで視線を当てていただくと 。あまり恵まれていないかなと思います。 ○田中座長  テーマが会計から年金、退職金のほうに移りました。大体時間になりましたが、よろ しいですか。何とか中間報告までまいりました。それぞれ意見の違う方もありましたが 、議事録は全部ネットで公開されますので、それなりに精神は伝わると思います。議事 録を読んで大学院に入って医療を勉強したいという人が出てくるようになりまして、や はり効果がありますね。大学への宣伝効果だったかもしれませんが、医療に興味を持っ て、これから医療を勉強したいとの意欲を与えたわけです。勉強の場所については大学 院、あるいは小山先生の研究所なのかもしれませんが、こうして議事録を公開する意味 は大いにあります。  いまの病院会計基準の見直しについては、またさらに進んだらお願いすることもある かもしれません。では、今後の日程等について事務局から説明をお願いします。 ○石塚指導課長  本日は報告書をまとめていただきましたので、書類の修正を加えて今日の日付で対外 的に発表させていただきたいと思います。委員の皆様方には、別途夕方にでもファック スを、直したベースで入れさせていただきたいと思います。  政府における規制改革関係の動きですが、今月の29日の金曜日に3カ年計画の見直し の閣議決定ということで、最終的にいま調整が進んでおります。その辺のご意見も踏ま えて、関連の通知等の改正という作業に入るつもりです。29日は金曜日ですので、おそ らく年度をまたいで4月の早々にでも関連の措置を講じるという予定になろうかと思っ ております。  次回以降ですが、次回は概ね5月下旬を目途に次回を開催するということで、夏休み 前に2回か3回取れればと思いますが、4月に入りましたらまとめて一括して日程調整 をさせていただきたいと思いますので、後ほどご連絡を申し上げます。よろしくお願い いたします。 ○田中座長  それでは、今年度の検討会はこれで終了いたします。また来年度もよろしくお願いい たします。どうもありがとうございました。                                    (以上) 照会先 厚生労働省医政局指導課 医療法人指導官 橋本 昌男(内線2560) 医療法人係長  手島 一嘉(内線2552) ダイヤルイン 3595-2194