02/03/19 第2回社会保障審議会年金部会議事録             平成14年3月19日         第2回 社会保障審議会 年金部会 議事録 日時  :平成14年3月19日(火) 15:00〜17:20 場所  :厚生労働省 省議室 出席委員:宮島部会長、神代部会長代理、井手委員、今井委員、大澤委員、大山委員      岡本委員、翁委員、近藤委員、杉山委員、堀 委員、向山委員、矢野委員      山口委員、山崎委員、若杉委員 ○ 福井総務課長  それでは、ただいまより第2回社会保障審議会年金部会を開催をいたします。  議事に入ります前に、お手元の資料を確認させていただきます。  座席図、議事次第のほかでございますけれども、まず人口推計関係で4点ございます 。資料1、先般の将来人口推計結果の概要でございます。資料2が将来人口推計そのも の、資料3、この推計の考え方を書いたものでございます。資料4、夫婦の出生力が落 ちているということでございますが、その低下要因につきまして、経済・社会的要因の 分析をしたものでございます。  次に、2番目の議題に関連するものでございますけれども、この1月に閣議決定をい たしました、いわゆる中期展望と呼ばれるものでございまして、資料5、「構造改革と 経済財政の中期展望」、資料6、これは閣議決定の対象とはなっておりませんが、内閣 府が作成いたしました参考資料でございます。資料7、年金部会における当面の議論の 進め方(たたき台)でございます。それから、国民年金の事務の関係でございますが、 資料8−1から3まで、国民年金事務の見直しについて、年金広報ポスター、納付者と 未納者の比較に関する資料でございます。資料9でございますが、社会保障審議会年金 部会委員名簿、これは部会長、部会長代理の表示を付けさせていただいたものでござい ます。資料10が前回の議事録でございます。  また、参考資料といたしまして、「少子化に関する基本的考え方について −人口減 少社会、未来への責任と選択−」人口問題審議会(平成9年10月)、これは現在までの 少子化対策、政府で行ってきております少子化対策の考え方の基本となっているもので ございます。それから、平成12年度社会保険事業の概況、先般発表させていただいたも のでございます。  資料の関係は以上でございます。  次に本日初めてご出席いただきます委員がおられますので、僣越ですが、事務局より ご紹介申し上げます。  大山勝也JAM書記長でいらっしゃいます。  翁 百合日本総合研究所調査部主任研究員でいらっしゃいます。  向山孝史日本労働組合総連合会総合政策局生活福祉局長でいらっしゃいます。  なお、本日は、渡辺委員におかれましては、ご都合でご欠席ということで伺っており ます。また、大澤委員、杉山委員、矢野委員におかれましては、遅れてお見えになると いうことでご連絡をいただいております。ご出席いただきました委員の皆様方が3分の 1を超えておりますので、会議は有効に成立いたしておりますことをご報告申し上げま す。  それから、役所の側について申し上げますと、辻年金局長、冨岡社会保険庁運営部長 につきましては、本日これから参議院厚生労働委員会に出席をすることとなっておりま すので中座をいたします。あらかじめお断りを申し上げたいと思います。  それでは、以後の進行につきましては、部会長にお願いいたします。よろしくお願い いたします。 ○ 宮島部会長  年度末の大変お忙しいところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。  それでは早速議事に入りたいと思いますが、本日は先ほど資料の説明でございました ように、まず本年の1月に発表されました最も新しい日本の将来人口推計について説明 を受けたいと思っております。言うまでもなく将来人口推計というのは、年金制度を考 える上で極めて重要な意味を持っておりますけれども、前回の部会の際に、これは事務 局から話があったように、今後年金制度を考える上で、こういう新しい人口推計を前提 として考えていくのか、あるいは今後の年金財政、年金制度を考える上で、年金制度の 中で例えば少子化対策のようなことが議論されてまいったという経緯もございますので 、そういう点も含めてどのように考えていくのかということがおそらく重要な論点にな るのではないかと思われますので、そのための基礎的な勉強を、今日まず行いたいと思 っております。  本日は、国立社会保障・人口問題研究所の高橋重郷人口動向研究部長においでいただ きまして、詳しいご説明をいただきたいと思います。ただ、時間の制約もございますの で、ご説明、質疑合わせまして、四、五十分程度を考えておりますので、高橋部長には 大変申し訳ございませんが、詳しく、しかも簡潔にという非常に難しい注文をいたしま すけれども、ご説明をいただきたいと思います。高橋部長から一通りご説明いただきま して、それから質疑に入りたいと考えます。それではよろしくお願いいたします。 ○ 高橋人口動向研究部長  国立社会保障・人口問題研究所の高橋と申します。今日は資料1から4について簡潔 にご報告させていただきます。  まず、資料4をご覧ください。資料4は、「夫婦の出生力の低下要因について」とい うものでございますが、まず表紙をめくっていただきますと、「将来人口推計と経済・ 社会環境」という図が1枚入っております。この図を用いまして、将来人口推計そのも のをどういう考え方で私たちが行っているのかということを簡単に説明して、それから 推計そのものについて入っていきたいと思います。  左側の図を見ていただきますと、将来人口推計というブロックがございまして、実は 人口予測というのは基本的に人口学的手法という方法を用いまして人口予測を行ってい ます。そこで用いられる基本的なデータというのは、国勢調査でありますとか、あるい は人口動態統計、あるいは出生動向基本調査という人口学的なデータを積み重ねて、そ のもとで将来の出生率の仮定、将来の生残率、つまり将来の生命表、死亡率に関する仮 定、さらに国際人口移動の仮定、それから生まれた赤ちゃんが男の子か女の子かという 生まれる比率であります出生性比の仮定を将来において、それに基づいて人口予測を行 っております。 一方、出生率の変化、寿命の変化というのは、日本社会の経済・社会 環境の結果として出生率が下がったり、あるいは未婚率が高まったりという現象があり ます。従来、そうした結婚行動の変化であるとか、女子労働の変化、高学歴化といった 社会・経済的な要因と将来の出生率の関係をいかに考えるかということが課題になって おりました。  私たちは、こうした社会・経済的な変化ということが出生率に影響を与えているとい うことを十分分析した後、基本的には初婚率、つまり結婚する率であるとか、あるいは 年齢別の未婚の割合であるとか、あるいは結婚した夫婦が産む子どもの数というのは、 そうした社会・経済的な変化の結果として存在している。つまり人口動態統計であると か国勢調査の未婚率データの変化の中には、そうした社会・経済的な要因というものが 反映されている。それらの反映されたデータに基づいて、将来についてモデル化を行っ て推計することによって十分社会・経済的な要因というものが反映された推計ができる 、という整理を行い、そうした考え方を社会保障審議会人口部会の方に提示し、その考 え方について吟味をいただいて、今回、推計を行っております。  個々の社会・経済的な要因と出生率の関係、あるいは未婚化の関係については、人口 部会の方におきましては、次のページ以下の様々な論点が議論されてきているところで ありますけれども、この部分に関しては後ほど質疑の中でお答えさせていただきたいと 思います。  具体的に推計の中身に入りますと、資料3をご覧いただきたいと思います。3ページ 、図表4をご覧いただきたいと思います。私たちの社会保障・人口問題研究所では、前 回推計を平成9年に発表しております。その推計から、今回平成12年の人口をベースに した推計を行うに当たって、前回推計の評価ということを行っております。その結果、 図表4にありますが、人口推計で誤差が大きかった部分はどこにあったのかという評価 をしてみますと、5歳未満のところ、すなわち出生率の仮定設定において、中位推計が やや高めで、低位推計がやや低めであったという結果がございました。したがいまして 、将来の出生率の動向に関して、今回は詳細な分析を行って新たな出生率仮定を作成し ております。  もう一つが、80歳以上の年齢層におきまして、死亡率というものは過大に前回推計で は予測されていた。したがって、高齢者の人口の伸びというものがやや少なめに見積も られていたという結果がございました。それらの問題点につきまして、人口部会の方で 議論をいただき、今回は新たな将来の生命表の作成手法というものを用いまして、将来 の人口予測を行っております。  今、説明した二つの問題、出生率をどう改定するのかということ。もう一つは、将来 の死亡率をどう改定するのか。そのことに関して、人口部会において議論されたポイン トを絞ってご説明させていただきます。5ページをご覧いただきたいと思います。  5ページは将来の出生率の見通しに関して前回推計と今回公表しました推計において 、どのような考え方の違いに基づいて将来予測を行ったかということの整理が行われて おります。  まず第1は生涯未婚率でございます。我が国では、出産の98%が結婚の中で起きてい ますから、生涯未婚率が長期にわたって上昇してまいりますと、日本の将来の出生率は 大幅に低下をします。今回、これを分析するに当たって、次の6ページの上の図表8と いうのをご覧いただきたいのですけれども、これで見ますと、特に白抜きの「△」で示 してある図がございますが、これが20歳代後半の未婚者のパーセンテージであります。 既に1970年代においては2割の人々が未婚でありましたけれども、その後、徐々にこの 未婚率が上昇しまして、特に1985年から90年にかけては、5年間で10%、10ポイントの 増加を見たところでありました。それが1990年代に入りましても、その後もやや増加の 勢いは鈍ってはきているものの、依然として未婚化現象が続き、平成12年(2000年)に おいては、20代後半女性の未婚者のパーセンテージは54%になるという状態を迎えてお ります。したがいまして、今回の審議会での議論においても、将来の生涯未婚率の水準 というのは相当高まるであろうという認識のもとに生涯未婚率を想定しております。  もう一つ、大きな点は、夫婦の産む子どもの数の問題でございます。結婚してから産 む子どもの数というのは、従来、比較的安定的に推移しておりました。ただ、一つだけ 夫婦の産む子供の数が下がる条件というのはどういうところにあったかといいますと、 結婚の年齢が上昇し、それに伴って再生産期間が短縮して、それに基づいて夫婦の産む 子どもの数がやや減少するというのが前回推計の前提でございました。  今回の推計におきましては、6ページをご覧いただきたいと思いますけれども、6ペ ージの図9というのがございます。ここでは幾つかの計算に基づく予測値と実際に観測 された夫婦の産む子どもの数の分析を行っております。この図の中で「*」で引いてあ る太い線がございます。例えば1930〜34年では「◆」のマークと重なっておりますけれ ども、約2.15ぐらいの水準が1930〜34年生まれの人々について数値があります。この「 *」の線は何かといいますと、結婚の年齢の上昇に伴ってつくられる、夫婦が35歳にな ったときの平均的に産む子どもの数の水準です。もう一つの「◆」は、出生動向基本調 査で得られた実際に1930〜34年生まれの人々が35歳になったときの産んだ子どもの数で あります。1930〜34年生まれにつきましては、この両者というものがよく一致しており ます。その後も、1935〜39年についてもほぼ一致しておりまして、それが1955〜59年生 まれまでそういう状態が続いていました。ですから1950年代終わりまでの世代に関して 言いますと、結婚した夫婦が産む子どもの数というのは年齢の制約条件によってのみ夫 婦の子ども数は決まっていたというのがそれまでの状況でございました。  ところが1997年に実施しました第11回出生動向基本調査によって得られたデータと、 その予測値を比較してみますと、1960〜62年生まれに関して見ますと、予測値と実態と の間に大きなギャップが生まれてきたわけであります。この部分というのが、実は結婚 の年齢が上昇してしまって、そして産むタイミングが若干少なくなって出生率が落ちる という以外の要因によって、つまり夫婦自体の出生行動の変化によってもたらされた夫 婦の出生力低下分があらわれているということであります。  このことについて、さらに図表11において、30歳時点では一体どうなっているのか。3 0歳時点ですと、もう少し後の世代までもこの出生率の変化ということが観察されます 。それを見てみますと、1960年代前半もそのように低下をしていたのですが、30歳時点 で見ますと、1965〜67年という60年代後半世代も大きく結婚の年齢以外の要因によって 出生率が落ちているということが明らかになったわけでございます。  その結果、人口部会において様々な別のデータからも議論をいたしまして、こうした1 960年代以降の夫婦が結婚してからの子ども数を減少させる、つまり縮小させていると いう状態が存在しているという共通認識に立ちまして、今回の人口推計における出生率 の仮定設定に関しては、以前とは異なり、結婚してからの夫婦の出生力低下を見込むと いう前提を置くことにいたしました。  その結果、今回予測されました将来の夫婦の出生率は、前回推計と比べて、前回推計 の中位推計が将来の合計特殊出生率が1.61でございましたけれども、今回は1.39という 大きな見直しを行ったわけでございます。もちろん議論の中では、こうした夫婦の出生 率が下がっているということが、実はバブル経済崩壊以降の一時的減少ではないかとい う議論が多分にございました。これらに関しては、今後の夫婦の出生動向を観察中でご ざいまして、そうした評価を今年新たに行う調査によって確認しながら、この追跡を行 っていきたいというふうに考えております。  最終的に将来の出生率の仮定値は、21ページの図表36に示してあるとおり、2000年に おける合計特殊出生率である1.36の水準が今後も緩やかに低下傾向を続け、そして2007 年を底にして、若干の上昇をするに至るという出生率の仮定値を設定したわけでござい ます。  もう一方の死亡率の仮定でございます。死亡率の仮定につきましては、22ページに今 回どのような手法で行ったかということが示してございます。将来の寿命を予測するに 当たって、今回はアメリカの人口予測でも用いられているリレーショナルモデルによる リー・カーター法というのがございますけれども、その手法を日本に適用して将来の寿 命を設定しております。それらは22ページの図表38−2、あるいは38−3にあるような 、要はパラメータ化したモデルによって推計を行っております。  その際、将来を見るのに関して重要な意味を持つパラメータが図表39にあるkという パラメータでありまして、これが1965〜2000年までの数値をプロットしたものでござい ます。このプロットしたポイントについて、幾つかの期間に分けてこの線の動きを追っ てみますと非常に特徴的なことが出てまいります。といいますのは、ここに幾つかの近 似線が書いてあります。一つは、1971年〜1980年のデータに関しての近似線であります 。もう一つは、1981年〜1990年のデータについて近似した線であります。そして1991年 〜2000年に関して近似したデータでございます。これらを比較してみますと、近年のデ ータを使えば使うほど傾きが小さくなってくる。すなわち寿命の延びというのは、以前 に比べてやや緩やかに寿命の延びが将来に向かって落ちていく傾向があるということで あります。したがいまして、日本の将来の寿命の水準というのは、これまでのような順 調な寿命改善というものがずっと続くわけではなくて、寿命に関しては頭打ち傾向とい うものが今後あらわれるということであります。  そうした分析の上にのりまして、将来の寿命を予測してみますと、最終的に得られた ものは25ページの図表41でありまして、このように寿命の水準というのは、2000年の水 準の男性77.64年、女性84.62年から、最終的な数値であります2050年の数値で言います と、男性80.95年、女性89.22年となっておりまして、男女差が現在の約7年の水準から 、約8年の水準へと大きく広がっていくという結果を得ております。  特に、前回推計に用いた将来の生命表に比べまして、今回の寿命の改善というのは相 当良いものが使われております。といいますのは、前回推計までに用いた推計というの は、死因別死亡に基づく将来の寿命の予測の手法を用いておりました。死因別死亡率を 用いた将来の寿命予測におきましては、個別に寿命水準を死因別に出すことによって、 将来的にはブレーキがかかりやすいという性質を持っておりました。したがいまして、 今回は平成2年推計、あるいは平成9年推計に今回用いた新しいモデルを用いて再推定 を行ってみますと、その後の人口予測には、今回新たにつくったものが極めてよいとい う結果を得ております。したがいまして、今回は新たな手法を用いて、寿命の予測手法 を大幅に見直して、今回のような将来の寿命水準というものが決められております。  さらに理論的にも様々な将来の死亡率に関する研究が行われておりますけれども、日 本の寿命水準というのは世界で一番良い水準に到達していますけれども、寿命学者の様 々な研究によれば、今後とも寿命の改善に関しては、従来予測された以上に良い水準に 到達するだろうというのが疫学者あるいは人口研究者の見解でございます。  その第一の理由は、一つは80年代あるいは90年代に入って、これまでなかなか低下が 見られなかったがんによる死亡率の改善というものが相当進んできている。そのことが 理由の一つ。さらにもう一つは、今後いわば老化というプロセスそれ自体の減速が期待 できるという学問的な状況があらわれている。したがいまして、従来想定されていた寿 命水準よりも、今後の寿命水準というのはもう少し高くなるだろうという学問的な見解 がございます。それらを加味して、今回の推計では寿命水準の改定を行ったわけでござ います。それ以外にも、国際人口移動の仮定、あるいは出生の性比等の仮定について見 直しを行っております。  さて、そうした前提に基づく結果でございますけれども、結果は既に様々な新聞報道 等によって広く伝わっているところと思いますので、ごく簡単に説明させていただきま す。資料1、「結果の概要」の1ページをご覧いただきたいと思います。出生率の将来 仮定につきましては、従来どおり、中、高、低位という三つの仮定を置きまして、中位 推計に関しては、先ほどのロジックに基づきまして、将来の出生率を1.39と見積り、高 位推計については1.63、低位推計については1.10という設定を行っております。  得られた結果でございますけれども、平成12年に12,693万人という国勢調査人口が、 今後若干の人口増加をみまして、2006年に12,774万人のピークを迎える。前回推計では 、2007年でしたから、1年前倒しになりまして人口ピークを迎え、その後、人口減少が 始まるということでございます。そして2025年の12,114万人を経て2050年には10,059万 人に達する。  しかしながら、前回推計の2050年の人口規模は10,050万人でありました。ですから今 回推計の方が将来の人口規模に関しては若干大きくなっております。その理由というの は、出生率が低下するにもかかわらず寿命の改善がありますので、その分、現在の人口 に滞在する人口規模というのは大きくなりますので、2050年の人口は若干ですけれども 、多くなる。  高齢化の水準でございますけれども、2000年の17.4%の水準が、今後徐々に増加を迎 え、2025年には28.7%の水準に達する。3.5 人に1人という水準でございます。それが2 050年に35.7%の水準に達するということでございまして、前回推計の結果が、2050年 時点で32.3%でしたから、それと比べて3.4 ポイント高齢化の水準が高くなっておりま す。  その理由というのは、一つには、その下に65歳以上人口というのがございますが、205 0年時点で、前回推計では3,245 万人でございましたけれども、今回推計では3,586 万 人、約340 万人の65歳以上人口の増加が寿命の改善によって見込まれますので、そのこ とが高齢化の水準を押し上げると同時に、年少人口が減少するということが起きており ますので、その結果、相対的に高齢化の水準というのが前回よりも押し上げられたとい うのが結果でございます。以上、結果については簡単ですけれども、今回公表しました 将来人口推計の概要についてご報告申し上げました。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。高橋さん、「夫婦の出生力の低下要因について」の資料4 については、質問で少し扱うことにさせていただけますでしょうか。 ○ 高橋人口動向研究部長  はい。 ○ 宮島部会長  わかりました。それでは、今、高橋部長の方から、新しい人口推計の、特に推計の方 法、その結果について簡潔に、しかも要点を踏まえてご説明いただきました。今後この 部会では、将来人口推計あるいは人口の問題というのは絶えず議論の対象にしていくこ とになると思います。今日はその1回目ということでやや勉強会的な面がございます。 高橋部長が今日はしばらくおいでいただきますので、ご自分のご意見を開陳されるとい うことも必要かもしれませんが、その前に必要であれば、ただいまのご報告について、 もう少し詳しい説明を求めるなり、質問がございましたら、まずその方から、私の方に 特に許可を得ずに構いませんので、ご自由に議論していただきたい。議論というよりも 、とりあえず質問から始めていただければと思いますが、いかがでございましょうか。 どうぞ。 ○ 岡本委員  資料3の25ページ、図表42のご説明があったのですが、2050年に男性が80歳、女性が8 9歳と、今から考えると驚くべき高齢化社会であるわけなんですが、今、世界の高齢化 が進んでいる国の現状なり、あるいは今高齢化が進んでいる国の将来統計で、日本と比 べて非常に高齢化が進むような国というのはどのようなところなんでしょうか。 ○ 高橋人口動向研究部長  2000年の国際連合による人口予測に基づきますと、全般的に35%の高齢化水準を超え る国々というのは極めて出生率の低い水準の国ですね。イタリアは合計特殊出生率が1.2 0になりますけれども、イタリアを代表とする、南ヨーロッパ諸国の人口高齢化水準と いうのが極めて日本と同じように高い水準になるということが報告されております。た だし、寿命に関しては、日本の寿命水準というのが他の先進諸国と比べて、極めて寿命 の水準が良いということがございまして、国際連合の人口部の日本に関する寿命予測に おいても、私どもが行った寿命予測と同等あるいはそれ以上の寿命改善ということを予 測しております。 ○ 神代部会長代理  資料3の27ページに、図表44、45というのがありまして、外国人の入国超過数の推定 が出ておりますが、これについては、ただいま詳しいご説明ありませんでしたが、かな り増える仮定を置いておられるようですが、どういうお考えなのでしょうか。 ○ 高橋人口動向研究部長  まず今回の日本と外国への人口の出入りに関しては二つに分けた予測を行っておりま す。従来の人口予測では、外国人も日本人も込みにした入国超過率というデータを使っ て予測をしておりましたが、近年外国人の動きと日本人の出入国の動きに相当違いがあ るということがよく理解されてきましたので、今回は外国人は外国人について入国超過 数を想定する。日本人に関しては比較的安定したパターンを持っておりますので、これ は日本人の入国超過率という一定率を使うという手法を用いております。  外国人に関しては、この図表44をご覧いただくとわかりますように、極めて年次的に は大きく変動しております。特に1985年以降のバブル経済期においては、外国人の入国 超過数の絶対量が大きく増えました。その後、1990年を過ぎると、いわば日本の経済が 不調になったこともあって、入国超過数というのが大幅に減少してゼロを割り込むとい う事態になりましたが、95年前後から今度は一転して外国人入国超過傾向というものが 顕著に出てきております。  したがいまして、こうした超過傾向があるということを前提にしまして、直近の2000 年の数値を将来的には実現する数値というふうに統計的に推定を行いまして、今回は202 5年レベルで言いますと、女性の入国超過数が年間約5万人、男性の年間入国超過数が 4万5,000 人程度を想定して、推計に用いております。 ○ 神代部会長代理  そうすると、これは過去の実績値をこういう対数、タンジェントかなんか、単なる統 計的な当てはめをやっただけで、入管政策に関する前提その他は現状のままということ ですか。 ○ 高橋人口動向研究部長  現状のままでやっています。ですから特に外国人の入国・出国に関しては、経済の状 態あるいは政策の変更によって大きく変化はしますけれども、現状においては人口予測 の場合は、現状のもとで投影をするというのが原則でございますので、このような設定 になっております。 ○ 若杉委員  ちょっといじわるな質問なんですけれども、2006年に人口のピークが来るということ ですが、正確にいつ頃かわからないのですけれども、6〜7年前にはピークは2010年ぐ らいだというふうに政府から発表されていたと思うのですが。その頃も私が聞いたとこ ろでは、実は本当の予測は2006年ぐらいがピークなんだけれども、いろんな事情があっ てそういうことは言えないのだというようなことを嘘か本当か聞いたことがあるのです が、実際にだらだらとピークの時期が早まって、今回とうとう2006年になったわけです 。ちょっといじわるな質問で恐縮なんですが、推計の信憑性というか、そこを確認した いのですが。 ○ 高橋人口動向研究部長  平成9年推計というのが前回推計でございまして、どなたからお聞きになった話かわ からないのですけれども、平成9年の人口予測では、2007年がピークであると公表して きています。今回は1年早まった、2006年、それは出生率が低迷しているということが 理由なんですけれども、ですから相当前倒しになってきたという認識を私は持っていま せんし、人口推計でもそのようなことを示したことはないはずであります。 ○ 若杉委員  私が聞いたのは、もうちょっと前のことかもしれません。 ○ 宮島部会長  そのほか、ございませんか。 ○ 近藤委員  資料4の(意見5)の生殖能力の低下という問題、これは推計にどのように入れてい るのでしょうか。私もこの1カ月ぐらい資料を一生懸命集めたのですけど、ほとんどな くて、唯一手に入ったのが、人工授精の患者が、例えば平成11年ですと2万4,000人台 いて、実際に生まれたのが5,870 名ぐらいというような形のデータで、あとは患者調査 を見ますと、これは女性だけのデータで、これもおかしいと思うのですけれども、不妊 の過去3回のデータを見ますと、毎回の調査は1割5分ぐらい治療を受ける人が増えて いっています。それが一体これにどういう影響を与えているのか、推計に今回入れられ なかったのかどうか、ちょっと教えてください。 ○ 高橋人口動向研究部長  資料3の14ページ、図表24をご覧いただきたいと思います。この推計では、将来の出 生率を算定するに当たっては、一つは生物学的なメカニズムとして、結婚の年齢によっ て、第1子、第2子、第3子、第4子がどの程度生まれているかということが基本的な モデルとして存在している。基本的に結婚の年齢が上昇するということは様々な生理学 的な要因によってなかなか子どもを産めなくなるという条件が入ってくる。それらの手 がかりとして、私たちは過去の、第7回出生動向基本調査から、第11回出生動向基本調 査のデータをもとにしまして、何歳で結婚した人が最終的にどれぐらい子どもを産んで いたかというデータを積み重ねて、そのもとでいわば結婚の年齢の上昇のもとで出生制 約がかかって出生率が落ちると、そういうメカニズムまでは取り込んでいます。  ところが近年急速に起きている、例えばダイエットが多くなったとか、あるいは排卵 障害というものが相当大きくなったということが別途あるとすれば、その部分はこのモ デルから直接反映できません。しかしながら、もう一方、結婚の年齢以外の要因によっ て出生率が低下する部分を見込んでいますから、間接的にはそれらの中にそうした事態 が起こっていれば入っているというふうに考えられます。 ○ 岡本委員  資料3の5ページの図表7の生涯未婚のところの新推計で、結論として、「勢いを衰 えさせながら進行するとの認識」と、こういうご説明ございましたね。これは認識とい うことで、このとおりになるのかならないのか、これはわからないわけだと思いますが 、もし、進行せずに、今の状況の程度で将来とも横ばいになるというような認識であれ ば、今ご説明いただきました将来の人口について、どの程度の影響が出てくるのでしょ うか。 ○ 高橋人口動向研究部長  それを説明するには、資料3の5ページをご覧いただきたいと思います。5ページの 下の方に、「B.目標コーホートの仮定設定値」というのがございまして、生涯未婚率 に関しましては、前回推計においては、1980年生まれの人々で13.8%になるものと仮定 を置いております。今回の推計では16.8%と置いております。例えば、今、現在50歳の 人々の未婚率というのは約6%でありますから、推計では相当強い未婚化の効果という ことを見込んでいるわけです。したがって、合計特殊出生率に対してどういう影響を与 えるかというと、ちょっと見にくい数値なんですが、5ページの一番下のところに将来 の出生率をどう計算するかという算定式がございますが、(1−生涯未婚率)×夫婦完 結出生児数……云々というのがあります。ですから、(1−生涯未婚率)が現在と同じ なら、5が0.06になりますので、相当高い頻度で結婚するということになりますので、 その分、パーセンテージを入れ替えれば、それがどの程度影響を与えるのかということ は容易に計算できます。 ○ 山口委員  資料4のところで、今まで晩婚化とか、出生率低下の中でいろいろなことを言われて いた中で、今回、私の認識が余りなかった、夫婦の出生率の低下というのが非常に大き いと、乖離があるということが出ています。非常に重要な視点だと思うのですが、先ほ ど幾つか質問が出ているのですが、ここで1から6まで意見が出ておりますね。これは 人口部会の指摘事項をまとめたということですが、それぞれどういう議論経過の中でま とめられたのかということと、順番、つまり、1から6までがどういう位置づけなのか ということをお伺いしたい。 ○ 高橋人口動向研究部長  この資料4に出ています問題は、私どもが夫婦の出生力が相当落ちているのだという データをお示しして、その過程で、それぞれ委員の先生方が、それに関連してはこうい う側面があるという形で並列的に夫婦出生力の低下の要因として掲げられたものを事務 局の方で整理したものです。 ○ 山口委員  例えば、意見というところでは、バブルの経済崩壊の心理的影響というのはどういう 意味なのか、この文言だけではイメージできないところがあります。そういうところで 、特にそれぞれの意見を補完していただけないでしょうか。 ○ 高橋人口動向研究部長  簡単にご説明させていただきます。最初の(意見1)に関してですけれども、特にポ イントとなったのは、毎日新聞社が2年に1回、「家族計画世論調査」というのを実施 しておりまして、そのデータを日本大学教授の小川先生が分析をなさいました。その中 で先生が見出された結論というのは、バブル経済崩壊後に出産のタイミングというもの をはかってみると、1子から2子に産むプロセスというものに相当遅れが出ている。調 査データから観察してみると、それが統計的に有意に遅れが出ている。その結果、夫婦 出生力が近年、90年代に入ってから落ちる要因の一つとしてそれがあるのではないかと いうことをご指摘になったわけです。  2番目に関しましては、これは女性の就業ということと出産ということが極めてトレ ードオフの関係にあるというご指摘がございまして、私どもの方で調査を行っておりま すので、そこからそれに見合うデータをお示ししたということであります。特に意見2 のポイントとしては、上に図がありますけれども、人口集中地区で一貫就業の人々の出 生率が低いということが第1点。そして、ここには直接データは示していませんけれど も、その人々で結婚5年未満あるいは10年未満のところで、子どものいないカップルが 他の人々、つまり専業主婦の人々、パートタイム就労している人と比べて子どものいな いカップルが多い、そういうデータがあったということでございます。  (意見3)は、特に女性の高学歴化ということと出産の遅れ、あるいは出生率低下そ のものと密接にリンクしているのではないかという社会学者等からご指摘があって、そ れをデータで確認することができるはずだというご指摘を受けました。それに基づいて データを整理してみますと、これも同じ出生動向基本調査でございますが、これを見て いただきますと、特に学歴別に見た35歳時点での累積出生率を見てみると、大学以上の 卒業者で、特に1960〜62年生まれの人々の出生率が極めて低い数字になる。ですから日 本の社会全体が高学歴化する中で、高学歴女性の出生が抑制的になっているという実態 があるというのがポイントでございました。  それから、もう一つの意見は、これも家族・社会学者の先生からのご指摘でしたけれ ども、特に高学歴要因というのは、本人そのものの問題もあるけれども、社会全体が高 学歴化した人々が増えることによって、自分の子どもにも高学歴を期待する、それがい わば教育費の負担を考慮して、子どもを少なくして高い教育を受けさせようという行動 があるのではないか。これは仮説レベルでのご説明でありました。  それから(意見5)に関しては、そうしたものだけではなくて、現在、生殖関連のと ころで大きな問題があるというご指摘がありました。  (意見6)に関しては人々の態度の問題です。人々は出産という選択よりも、自らの 生き方ということを重要視している人々が90年代に入って、2回の調査を比較してみる と、そういった実態がある。  そうした背景というものが指摘され、議論されたということでありまして、それを総 括的に考慮して、夫婦出生力の低下の傾向というのは、今後も続くであろうという全体 認識に至ったということでございます。 ○ 山崎委員  後の今後の議論のところで申し上げてもいいのですが、前回も、私、二、三申し上げ ましたけれども、我々いただいております課題は、次の財政再計算とそれに伴う改正に ついて審議すると、こういうことなんですけれども、この出生率の低下につきましては 、一時的な要因も部分的にあるかと思うのですが、恐らくそういう社会になってしまっ たという、かなり構造的な要因があるように思います。  そこで、私はこの人口推計に基づく財政再計算とともに、あわせて今後本格的な総合 的な次世代を育成する政策を推進することを前提にし、一定の仮定を置いて、独自の新 しい人口推計をしていただけないだろうかというふうに思います。その作業は当然社人 研にお願いするわけですが、その仮定の置き方、考え方につきましては、この部会で十 分検討するということと、それから本格的な政策を遂行するということについては、国 レベルで十分検討していただいて、単なる思いつきではなくて、本当に政策を推進して いくのだということを前提にして、是非もう一本の、こういった社会・経済的要因を加 味した、そして政策効果を見込んだ推計を是非お願いしたいと思います。これは前回、 ここでも申し上げましたし、人口部会でも同じ発言をしました。よろしくお願いします 。 ○ 宮島部会長  今の発言は、まさにここで今後議論していく一つのテーマでございます。ただし、私 は今それに対して、特に方向づけについてはまだ尚早だと思いますのでいたしません。 ただ、ご意見は十分承っておきます。  それでは、高橋部長、どうも長時間ありがとうございました。今日は1時間拘束いた しまして、大変お忙しいところ申し訳ございませんでした。それではご退席いただいて 結構でございます。              (高橋人口動向研究部長退席) ○ 宮島部会長  年金部会を開始するに当たって、事務局に、初めに、きちんと勉強したいという注文 をつけました。まず人口推計、次は経済状況の見通し、もう一つは労働のことでござい ました。労働の方は少し時間がかかるということでございますが、今日は、人口推計ほ どパースペクティブは長いものではございませんが、議題2といたしまして、「構造改 革と経済財政の中期展望」につきまして、これから少し議論をしたいと思います。これ は閣議決定されております構造改革と経済財政の中期展望と、経済財政諮問会議におき まして、この審議について、参考資料として内閣府が作成された試算でございます。今 日はこれを事務局からご説明いただくことになりますので、よろしくお願いいたします 。 ○ 福井総務課長  座って恐縮でございます。ただいま部会長からお話ございました資料5の「構造改革 と経済財政の中期展望」、それから、参考資料ということでの資料6、これにつきまし て、私の方から簡単にご説明をさせていただきます。  資料5はいわゆる中期展望と呼ばれているものでございますけれども、去る1月25日 に閣議決定をいたしております。ページを追いましてポイントを若干ご説明をさせてい ただきたいと思います。  目次がございまして、その後、「はじめに」とございますが、2ページをご覧いただ きたいと思います。下から二つ目のパラグラフでございますけれども、「改革と展望」 の対象期間は2002年度〜2006年度の5カ年とする。これが対象期間とされております。  それから、4ページをご覧いただきたいと思います。これは現状認識ということにな りますが、1.といたしまして、4ページの表題に「日本の経済社会についての現状認 識」と出ております。(1)の二つ目のパラグラフ、2行目でございますが、「急速な 少子化・高齢化等による社会保障制度の持続可能性への不安などが消費や投資を抑制し 、民間需要を低迷させてきた。」、このようにされております。  それから、7ページでございますが、「2.中期的に実現を目指す経済社会の姿」で ございますけれども、7ページ、8ページ、9ページと渡りまして各々関連することが 書かれているわけでございますが、14ページをご覧いただきたいと思います。「3.構 造改革を中心とする経済財政政策の在り方」ということでございまして、16ページ、一 番上のパラグラフでございますが、「(生涯現役社会、男女共同参画社会の構築)」と いうことでございまして、1行目に、「年齢や性別にかかわりなく能力に応じて働ける 社会を構築していく。」ということが書かれております。  それから、4行目の後の方でございますが、「女性の就業意欲を阻害しないよう、社 会保険制度等を見直す。」といったことが書かれております。  それから、そのパラグラフの下から3行目一番最後でございますが、「更に、子ども を産み育てやすい環境を整備し、少子化の流れを変えるため、積極的な対応策を社会全 体で進める。」とされているところでございます。  19ページをご覧いただきたいと思います。2番目のパラグラフ、小見出しで「(国民 負担の在り方)」と書いてあるところでございますけれども、そこの2行目、「将来に わたって持続可能な社会保障制度の構築や地方の自立など真に必要な行政サービスのた めに、今後必要となる財源をどのように確保していくのか、構造改革の進展などを踏ま えつつ検討を行う。」。  その下でございますが、「(21世紀にふさわしい税制)」ということでございます。 1行目から、2行目にかけて、「持続可能な財政の確立に向けて」、その後、幾つか観 点が書いてございますが、「少子化・高齢化という観点」も含めて、4行目でございま すが、「税制改革を行っていく必要がある。」とされているところでございます。  社会保障について具体的に書かれておりますのは21ページでございます。「(5)持 続可能な社会保障制度」ということで、柱書き的に書いてございまして、最初の小見出 しが「(社会保障の総合化)」ということでございます。  それから、医療の関係を一つ飛ばしまして、「(持続可能な年金制度の構築)」とい うことでございます。これは昨年6月のいわゆる骨太方針の方がもう少し詳しく書いて あったかと思いますが、いわゆる骨太方針をコンパクトにまとめたものでございます。 「年金制度については、今後とも給付と負担の均衡を図りながら、持続可能な制度に向 けて、国民の信頼を高めていくことが重要である。」という柱書きのもとに、以下、一 つは、「特に若い世代の理解を深める取組みが不可欠」ということが書いてございます 。2番目でございますが、「国民年金の未納未加入問題について厳正な適用と保険料徴 収の推進など徹底的な対策に早急に取り組む必要がある。」ということでございます。 3番目でございますが、「就労形態の多様化・個人のライフスタイルの多様化等に対応 した制度設計の見直し、勤労収入等のある高齢者に対する年金給付の在り方の見直し、 世代間・世代内の公平を確保するための年金税制の見直し、年金保険料引上げの早期凍 結解除、平成12年度改正法附則(『当面平成16年までの間に、安定した財源を確保し、 国庫負担の割合の1/2への引上げを図るものとする』と規定。)への対応、年金積立 金の在り方のほか、将来に向けて持続可能な制度を構築するための具体的な方策につい て、議論を深めていく必要がある。」ということで結ばれております。  以上、閣議決定をいたしました中期展望の内容をかいつまんでご説明申し上げました 。  それから、資料6をご覧いただきたいと思います。申し上げましたように、参考資料 という位置付けでございまして、1月16日の前回の年金部会の2日後でございますが、 1月18日に経済財政諮問会議へ内閣府が作成して提出をいたしました資料でございます 。  この表紙のところに文章が出ておりますが、その3行目、「閣議決定の対象となるも のではない。」、こういう位置付けのものでございます。この「試算の性格及び前提」 ということで、1ページでございますけれども、2の「試算の主要な前提」ということ でございますが、「改革と展望」の考え方の下で、以下の種々の前提を置いて行ったと いうことでございますが、具体的には2ページをご覧いただきたいと思います。  「(2) 社会保障費」と書いてございます。年金のところをご覧いただきたいと思い ますが、年金につきましては、2002年度(平成14年度)につきまして物価スライドは凍 結をするという前提でつくられております。2003年度以降(平成15年度)は法律に準じ るということでございまして、来年度については特例法案を今国会に提出をいたしてお りまして、これからご審議を賜るということでございますが、この試算の前提としては 、2003年度以降は法律に準じるということでございます。  それから保険料でございますが、1999年(平成11年)の財政再計算による保険料率の 見通しを前提にしているということでございます。  以下、国庫負担割合が1/3 ケースの厚生年金の保険料率、国庫負担1/2 ケースの厚生 年金の保険料率、これは月収ベースのパーセンテージでございますけれども、こういっ た数字を前提にしているということでございます。  もう一つ、年金のところの一番下の「・」でございますが、「国庫負担割合1/2 ケー スでは、安定的な財源を確保すること(増税)を前提」にしているということでござい ます。ただ、これは内閣府におきまして責任を持って作成をしたものでございまして、 この増税の中身というのは一体何かということについては、私どもは承知をいたしてお りません。  そこで数値をご覧いただきたいと思いますが、3ページが国庫負担割合1/3 の場合と いうことでございます。5ページにマクロ経済の姿ということで、上の表でございます けれども、実質成長率、名目成長率、一つ置きまして物価上昇率という数字になってお りますが、2003年度が実質成長率0.6 、2004年度が1.5 、2005年度が1.5 ということで ございます。名目の成長率は各々0.6 、2.3 、2.5 ということでございまして、物価上 昇率は当然のことですが、0.0 、0.8 、1.0 、こういう数字になっております。  それから、1ページおめくりをいただきまして6ページでございます。後ほど1/2 の 数字と比較をしていただくということになるわけでございますけれども、上の表でござ いますが、国の一般会計の姿、上が歳出でございますが、歳出の中の一般歳出、その中 の社会保障関係費というところでございますけれども、2004年度が19.6兆程度というこ とで、対前年度比:0.7 兆のプラス、2005年度が同様に20.3兆程度ということで、0.7 兆円のプラス、2006年度がプラス0.6 兆ということでございます。  歳入の税収のところをご覧いただきたいわけでございますが、2004年度は前年度対比 で1.3 兆の増収、2005年度は同様に1.4 兆の増収となっております。  それから、国庫負担1/2 のケースの場合でございますが、11ページをご覧いただきた いと思います。1/3 のケースの場合と比較をしていただくということですが、マクロ経 済の姿、実質成長率、名目成長率、物価上昇率ということでございますと、先ほど申し 上げました年度で、2003年度が0.6 、1.5 、1.5 、名目成長率が0.6 、2.6 、2.7 ,物 価上昇率が0.0 、1.1 、1.2 となっております。  最後の12ページをご覧いただきたいのですが、これが国庫負担1/2 の場合の歳出、あ るいは歳入、税収の関係ということになるわけですが、社会保障関係費のところでござ いますけれども、2004年度は20.8兆で、対前年度比1.9 兆円程度の増ということでござ いますし、2005年度は対前年度で2.0 兆円程度の増ということで22兆8,000 億となって おります。  それから、税収の方でございますが、2004年度は48.8兆ということで対前年度2.4 兆 程度の増。2005年度は51.5兆程度ということで対前年度2.7 兆程度の増ということにな っているところでございます。  以上、簡単でございますが、中期展望の関係、あるいはその関係の参考資料について ご説明を申し上げました。以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。ご説明いただきましたように、これはまさに中期ですので 、先ほどの人口の将来推計とは随分パースペクティブは違っておりますので、もちろん あわせて考えるというのはなかなか簡単ではございません。今日ご説明いただいたのが 内閣府の方ではないので、質問しても的確にお答えいただけるかどうか、私にはよくわ からないのですが、例えば先ほど説明のあった新しい人口推計はこの中にはまだ考慮さ れていないというふうに解釈してよろしいですか。 ○ 福井総務課長  この中期展望の試算につきましては、あるいは文章編もそうでございますけれども、 先ほどご説明がございました新人口推計につきましては織り込まれておりません。 ○ 宮島部会長  すいません、私、勝手に初めに質問させていただいて。多少テクニカルな内容でござ いますけれども、別にこの中身でなくても、いわゆるマクロ的な経済推計など、将来を どのように考えるかということもあると思いますし、何かご質問ございますでしょうか 。  逆に、これは厚生労働省では、以前は行ったと思いますが、独自の将来の推計、いわ ゆる長期推計というものは今後作成するつもりはございますでしょうか。 ○ 福井総務課長  厚生労働省として、今回の推計につきましてはかかわっていないわけですけれども、 今、部会長お話の長期の推計ということでありますとすれば、これはまさに年金の分野 におきまして、今後制度をどうしていくか、財政をどうしていくかということに当たり まして、重要なベースになる推計ということになりますので、これはご承知のとおり、 5年ごとに財政再計算のいろいろな前提という形でもってやらさせていただいておりま すので、すぐに、ということではございませんが、今後の審議の過程の中で経済的な前 提も含めまして数字を出させていただいてご議論に供したいと思っております。 ○ 神代部会長代理  今の資料6の基礎年金の国庫負担割合1/2 のケースと現状の1/3 のケースと比較した 場合に、税負担というのですか、何で取るかは別として、要するに財源を税金で補てん をしなければいけないわけですね。それは幾らぐらいでしたか、差額は。 ○ 坂本数理課長  数理課長でございます。恐れ入ります、これは内閣府作成の資料でございますので、 多分に想像が入るところでございますけれども、2004年度から国庫負担を上げるという 前提になっているのではないかと考えられるところでございまして、社会保障関係費の ところで、2004年度から、この1/2 と1/3 のケースで差が出ております。これがおそら く1/2 に引き上げたことによる必要となる、より多くの税額ということではないかと考 えられるところでございます。例えば2004年度では20.8兆円に対しまして、1/3 の場合 には19.6兆円でございますので、1.2 兆円の増となっていると。これが恐らくそれに相 当する額ではないかと考えられるところでございます。 ○ 吉武審議官  国庫負担1/2 は11年度ベースで私ども計算をしておりますが、11年度ベースで申し上 げますと、現行の1/3 から1/2 への引上げに要する所要額は2兆5,000 億というオーダ ーです。 ○ 宮島部会長  ほかに何かご質問ございませんでしょうか。 ○ 若杉委員  この中期展望の中で年金について書かれていることは、みんなできるだけ働いて、年 金を余り頼りにするなということが書いてあるわけで、この間、政府が出してくるいろ いろな社会保障大綱とかは、みんなもっと働けということが書いてあるわけですね。そ れはどうしてかといいますと、年金に限らず社会保障はそうだと思うのですが、基本的 には所得の再分配を行っているわけですね。公的年金であれば、基本的には賦課方式で 現役世代から老齢世代への所得分配。それから、企業年金や個人年金であれば積立方式 の部分は個人が現役の世代から老後の世代へと自分の所得を再分配しているわけですね 。そういうことですから、基本的に再分配ということで、労働の所得が十分になければ 再分配できないということですね。  ですから、豊かな社会でなければ、つまり所得が毎日を食べるのに精いっぱいぐらい の所得しかないようなところでは一生働いてなければいけないわけですが、豊かな生産 性の高い経済であれば、所得がもっと得られるので、ほかの人のためや将来の人のため にとっておけるということが一つあるわけですね。もう一つは、積立方式で蓄えておく 間に資本に投資をして、それを産業に役立てて増やしてもらうという、二つの面がある わけで、いずれにしろ、経済が豊かでなければ、つまり生産性が高くなければ年金はで きないわけですし、また社会保障も基本的には同じ性格持っているわけですね。  ですから、そういう意味で言いますと、今のように思いがけず経済が低迷してきて生 産性が下がってくれば、社会保障とか年金は当然今までよりずっと貧しくならざるを得 ないわけですね。今、政府が出しているいろんな改革案というのは、基本的にはずっと 生産性の落ちた、効率性の落ちた経済を前提として、もっとみんな我慢しろ、働ける人 はみんな働け、年取ってもできるだけ働け、女性も子どもがあっても家庭があっても働 け。それから、障害のある人なんかもバリアフリーにするから働けということを言って いるわけで、これは必ずしも社会保障としては進歩とは言えない面もあるわけですね。 もちろん働くことをどういうふうに意義づけるかということはまた別問題がありますか ら、そういうこととの兼ね合いもありますが、今の社会保障の改革の方向を見ていると 、余りにも貧しく、突然貧しくなってしまった日本の経済を前提として、社会保障がシ ュリンクしているということがあるわけで、これから我々は、そういうものを前提とし て年金の問題や社会保障のことを考えていくのか、ということがあります。  あるいは同時に、もっと社会というか、生産性の落ちた企業社会を再生させるという ことをどこか視野に置かなければいけないのではないかということもあるわけですが、 この年金部会でも、少しその辺、長期的な展望で、この中期展望は5年とかそのくらい ですけど、もうちょっと経済を再生するという、そういう視点も入れていかないと、よ り豊かな社会保障というのが我々の希望なわけですから、そういうものに応えられない のではないかと思いますので、ぜひ、その辺を議論に入れていただけないかというお願 いです。 ○ 杉山委員  すいません、先ほどの人口部会のご説明があったときに言った方がよかったのか、ち ょっと躊躇してしまったのですけれども、少子化がこんなに進んだということで、1998 年に「少子化への対応を考える有識者会議」という会議がありまして、そちらの方の委 員もやらせていただいて、あちらの今井先生も一緒にいろいろと少子化についても考え てきた経緯から発言させていただければと思っております。有識者会議では、最終的に 提言を出させていただいて、「家庭に夢を分科会」ということで、若い夫婦が子どもを 産み育てていくためにはどういったふうになったらいいだろうかというようなことも議 論したり、「働き方分科会」の方では、仕事と家庭の両立についてもいろいろと本当に 議論を重ねまして、提言の方では、こういったことをやっていけば、少しは少子化の問 題も解決するし、若い世代も産み育てていこうよ、というふうに思えるような社会にな れるのではないのかというようなことをずっと話してきました。  それが98年で、今、2002年ですよね。なのに全然数字が上がってこないというのは、 ご関係の方々にはには、申し訳ないかもしれませんが、正直申し上げて、余りやってく れていないのではないのかという気持ちがあります。先ほど、もう少し少子化のことを 考えてみたらという意見もあったと思うんですけれども、年金部会として、出された今 の状況に対して、さあ、どうしよう、年金を使って何かできないかどうかというのもも ちろん大切なことではありますが、その前に、少子化についての全体を見渡した議論が あってからではないかと思っております。少子化もこんなに進んでいるし、経済もこん な中で、不安感を感じない方が、むしろおかしいのではないでしょうか。若い世代には 、元気なんだから働いて、子供も産んで、さらに年金も納めろというのかと、ますます 不安を募らせる、という悪循環ではなく、安心して子供も産んでいいんだよ、将来の年 金だって大丈夫だよというメッセージが伝わるような、そんな話し合いができたらなと 、思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。 ○ 岡本委員  若杉委員がおっしゃったように、私は、基本的に、議論として、社会保障制度で夢の ある議論をするのはいいと思うのですが、この社会保障制度というのは基本的にはお金 の要る問題でもありますし、そういう意味では、これまでの日本の社会保障制度の議論 というのは、やはり高度成長であり、人口が増え、いろんな意味で、経済財政というよ うな基盤が大きくなるという中で、戦後の荒廃から改革の議論、改定の議論というのは いい議論ができたわけですけれど、これからは客観的に見て、先ほど部会長がおっしゃ ったように、どのように人口を見、どのように経済を見るかという、その辺があるわけ ですけれど、やはり厳しいという状況は人口推計からも認識されますし、それから、経 済の状況についても、かつてのような高度成長というのは大変難しい状況であるという のはグローバライゼーションの中で理解できるわけでありますから、そういう意味で、 夢を持ちながら、現実のいろんな諸条件というものを勘案して、時代に合った厳しい議 論も私はしなければならないと。だから夢ある議論と同時に、厳しい実態があれば、厳 しい議論をしながら、若い人に、あるいは国民全体に理解できるような、持続可能な制 度の議論をするということも必要かなと。あえて反対の考えではありませんが、ちょっ と申し上げたいと思います。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。もう既に、実質的に次の議題に少し入っておりますので、 一応今の中期展望の話は終わらせていただいて、実はこの中身を議論してもらうことは 必ずしも私の目的ではございませんで、むしろ私がこういうことをお願いいたしました のは、年金制度を議論する上で、もちろん従来人口推計というのは非常に重要な役割を 担っていたということは確かでございますが、しかし、いずれにしても、今後例えば基 礎率などを定めますときに、経済財政に関する議論、積極的に議論できないにしても、 少なくとも評価能力をある程度持っておかなければいけないということもあります。そ れから、おそらく今、山崎委員、若杉委員、杉山委員、ほかの委員それぞれからお話が ございましたように、私としては、今後この年金部会を議論していく上で、人口推計も 当然でございますけれども、経済、財政、労働、税制、さらに企業経営といった、いわ ゆる年金制度の重要な議論におさまらないことは覚悟しておりますけれども、少し全体 をよく見ていく。その中で、もちろんお互いの政策の整合性でありますとか、これは従 来は全く外から与えられたものとして考えざるを得なかったものを、場合によっては、 これは政策論として議論できるのかどうか、そういうことも含めて、なるべく幅の広い 議論を今後していきたいと思っております。  折に触れて、先ほど申しましたように、これから労働についても、私一度説明してほ しいと思います。それから、社会保障、税制の議論も一回やりたいと思っておりますし 、企業経営などについてもご議論いただくことがあると思いますので、今後実質的な審 議の中で勉強を少し深める部分も取り入れながら、今後視野を広げて年金の議論をして いきたいと考えております。  このことも含めまして、実は次の議論が、これは前々からお約束になっておりました 今後の議論の進め方ということでございまして、若干これはスケジュールの問題と、も う一つは、どういうことを論点として、今後議論をしていくか、論点整理を今後どうい う形で行っていくかということでございます。これにつきましては、神代先生とも、私 、直接ではございませんが、とりあえずこんな形でどうであろうかということをお話し いたしまして、それを事務局に伝えて、今日、当面の議論の進め方(たたき台)として 、本日、私の方からとりあえず提出させていただきました。ただし、これはあくまでも たたき台でございまして、加わるものも減らすものも何もないという名ぜりふには多分 ならないだろうと思いますので、これから、皆様方にさらに論点をつけ加えていただく ことが重要であろうかと思います。それでは資料7につきまして、これも総務課長から 説明をしていただきたいと思います。 ○ 福井総務課長  資料7をご説明させていただきます。「年金部会における当面の議論の進め方(たた き台)」、部会長、部会長代理ともご相談をさせていただいたものでございます。「I 」でございますが、「年金制度の現状とこれまでの様々な動き」ということで、これは 検討項目のところに、書かさせていただいているとおりでございまして、前回、1月16 日の日でございますけれども、女性と年金検討会報告書などにつきましての報告を含め 、既にご議論をいただいたものでございます。  「II」のところでございますが、「年金制度と将来の我が国の経済社会」ということ でございまして、ただいま、人口推計という切り口で、ご議論を賜ったのかと思ってお ります。改めて申し上げるまでもないわけでありますけれども、年金制度は、「我が国 の経済社会」という大きなシステムのサブシステムであり、それをどのように考えるか ということ、将来の経済社会をどのように見通すかということが重要であり、新人口推 計等の説明を受けるとともに年金制度と少子化対策との関連もご議論をいただくという ことでございます。  「なお」と書いてございますが、人口推計との関係の問題につきましては、この「少 子化問題についての幅広い検討の状況も見ながら」と書いてございますが、実はこの点 につきましては、今月の3月27日に立ち上がる予定でございますけれども、厚生労働大 臣の主催いたします外部有識者からなります「少子化社会を考える懇談会」、これが今 月27日の日に設置されるということでございます。要は我が国の経済社会全体の在り方 につきまして、少子化の影響や要因の分析、少子化対策の拡充策、あるいは労働分野で の対応も含めまして、1年程度をかけて報告を取りまとめるということで聞いておりま す。また、必要に応じて、中間的な取りまとめも行うこととされているわけでございま して、事務局といたしましては、この部会におきまして、この検討状況も見ながら、引 き続きこの点についてご議論をいただいてはどうかと考えております。  「III 年金制度の役割と財政方式等」というところでございます。国民のセーフテ ィネットとしての公的年金制度が求められる役割を将来に向けて果たし続けるというこ とのためにはどういった在り方がいいのかということでございまして、制度における給 付と負担の関係、あるいは様々な財政方式、財源といったことの在り方を踏まえてご議 論をいただいたらどうかと思っております。  その場合に、少子高齢化の進行や低経済成長の下での年金制度の改革は先進諸国にほ ぼ共通したテーマでございまして、様々な対応がなされているわけでございます。スウ ェーデン他、諸外国の年金改革の潮流を概観いたしまして、そういったことのねらい、 共通点等を把握いたしまして、我が国における議論の参考にしていただいたらどうかと 思っております。  右側に検討項目の例ということで掲げさせていただいております。「(1)国民のセー フティネットとしての役割」は、公的年金制度の役割、本質的な意義というのは何なの かということでございます。  「将来に向けた公的年金の給付と負担の関係」を「(2)」ということで掲げさせてい ただいておりますが、これに関連いたしましては、前回(11年)の財政再計算に今回の 新しい人口推計、出生率が落ちている、寿命が延びている、こういうご説明が今日あっ たわけでございますが、今回の新しい人口推計の数値で置き換えました試算を次回、遅 くとも次々回には提出をさせていただきましてご議論に供したいと思っております。  「(3)」でございますが、「(1)」の公的年金制度の役割、本質的な意義、あるいは給 付と負担の関係といったものもあるわけでございますけれども、この制度の役割にふさ わしい財政方式なり財源ということで、従来から言われているわけでございますが、賦 課方式と積立方式、確定給付と確定拠出、社会保険料と税といったようなことでのご議 論を賜れればと思っています。  「(4)」は「公私の年金制度」でございます。  それから、その次の「・」でございますが、先ほど先進諸国と申し上げましたが、ス ウェーデン、アメリカ、ドイツ、イギリス、既に改革が行われたところ、あるいは検討 途上のところもあるわけでございますけれども、こういった諸外国各国につきまして、 これも資料を提出させていただいてご議論に供したいと思っております。  このIIIの年金制度の役割と財政方式等につきましては、2回ぐらい時間をとってご 議論をいただいたらと思っております。現在各委員、ご日程を調整をさせていただいて おりますが、このIIIのところで、4月に1回、連休明け5月に1回というようなこと を現時点では念頭に置いております。  1ページおめくりをいただきまして、IVの「年金制度とその財源」というところでご ざいます。年金制度と税制というのは密接な関連を有しているわけでございまして、年 金財政の安定、将来に向けての保険料負担の見通し、あるいは世代間・世代内の公平と いった観点から、一つは年金の財源としての税制、もう一つは年金そのものに対する税 制等につきまして、経済財政諮問会議等と書いてございますが、今伺っているところ、 あるいは報道されているところによりますと、経済財政諮問会議も政府税制調査会もこ の6月に税制の基本的な方針を取りまとめるということで聞いているわけでございまし て、諮問会議、政府税調の状況を見ながらご議論を賜ればと思っております。  年金の財源としての税制ということで申し上げれば、直接関係いたしますのは、すぐ その一つ後の「・」ですが、基礎年金国庫負担割合引上げのため、法律では「安定した 財源」と書かれているわけでございますけれども、1/3 から1/2 に引き上げるための財 源。すぐ上になりますが、年金に対する税制ということで申し上げれば、例えば公的年 金等控除があるということでございまして、こういったものをどう考えるのか。あるい は理論的な考え方の整理といたしまして、公的年金に税財源を一部充てることの考え方 等ということがあろうかと思っております。  「V」でございますけれども、「総論的な議論について整理」ということでございま して、I〜IVの議論等を踏まえまして、総論的な論点につきまして、議論の整理をいた だいたらどうかと思っております。時期といたしましては、本年の9月ないし10月と、 私ども事務局としては考えているわけでございます。今後長丁場の議論ということにな るわけでございますけれども、やはり節目をつくりまして、ご議論の成果を整理をして いただいて、世の中にオープンに発信をしていくということもこの年金部会の重要な役 割の一つではないかと考えているところでございます。  「VI」でございますけれども、「具体的な制度設計上の論点(各論)についての検討 」ということでございまして、「V」の整理を踏まえて、具体的な制度設計上の論点に ついて、優先順位をつけまして、将来に向けた給付と負担の基本骨格に関わる論点など を先行いたしまして、各論点についてひとあたりご議論をいただいてはどうかと考えて おります。  右側の例のところに書いてございますが、給付につきましては、当然モデル年金の考 え方を含みますが、給付水準、特例的なスライド停止による財政影響への対応、スライ ド制そのものの在り方。負担ということでは、保険料の引上げは凍結をされているわけ でございますが、凍結解除も含めまして、保険料の負担の水準、最終保険料の水準、各 々国年、厚年、第3号被保険者制度に係る保険料負担の在り方。支え手を増やす取組。 女性と年金に関わるいろいろな論点。次のページになりますが、少子化問題についての 幅広い検討を踏まえた対応。財政再計算の在り方、経済的前提も含めます財政再計算の 在り方。あるいは特殊法人改革との関係における年金積立金の運用の在り方等々。企業 年金と私的年金に関する諸課題があるわけでございますし、それから保険料収納対策と いったようなことで、年金現業業務の関係、その他ということもあるわけでございます 。以上、これは例でございます。  ちょっと前のページにお戻りをいただきまして恐縮でございますが、真ん中の欄です が、年金制度についてのご議論ということでございますと、既にいろいろと議論が出て いるわけでございますが、例えば短時間労働者等に対する厚生年金の適用の問題、雇用 と年金に関する論点があるわけでございまして、これにつきまして、私ども厚生労働省 の年金局に、別途学者・研究者によります研究会、仮称でございますが「雇用と年金研 究会」といったものを設けまして、専門的なご研究をいただきまして、当部会における ご議論に供し、活かしていただくということにしてはどうかと考えております。この「V I」のところにつきましては、本年秋以降と考えております。  それから3ページでございますが、「VII」のところでございます。「VI」の総論・ 各論の議論に並行いたしまして、当然のことながら、当部会にもご相談、あるいは当部 会におけるご議論も参考にさせていただきながら、役所といたしまして選択肢を提示し ながら有識者調査を実施し、また、当部会の各委員のご協力も得ながら、シンポジウム 、公聴会なども実施して、広く国民の意見をいただく手続を踏んでまいりたいと考えて おります。  それから、「VIII」でございますけれども、「総論・各論にわたる議論の整理」とい うことでございまして、今までの議論、そういった手続を踏まえまして、総論・各論の 全体にわたりましてご議論の整理を行っていただいてはどうかと思っております。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。私から若干補足させていただきます。先ほど私が申し上げ ました、例えば労働、経済、財政、税制あるいは金融、産業、企業経営、こういう問題 は、検討項目に直接挙がっておりませんけれども、それをここで直接の検討項目にする わけにいきませんが、あくまでも我々はきちんとそういうものは勉強する中で、年金制 度としての直接の検討項目はこういうものになるだろうと、そういう理解でございまし て、抜けているわけではございません。  私は事務局に伺いたいのですが、社会保障審議会、要は親委員会との今後のこういっ た関連がどうなるのかということ。それから、若杉委員が座長を務めておられます資金 運用関係の分科会、堀委員が座長を務めていらっしゃいます年金数理部会、こちらとの 連携なりは今後どのようにとっていくつもりなのか、その辺のところを、事務的なこと ですが、聞きたいと思います。 ○ 福井総務課長  今、部会長からお尋ねがございました、第1点の社会保障審議会との関係でございま すけれども、社会保障審議会は、今までのところ、年に数回ということで開かれている わけでございますけれども、本来、社会保障の年金、医療、介護、その他いろいろな分 野を横断的に議論をする場ということで、今般の審議会改革の中で設置をされたという ことでございます。したがいまして、年金だけの議論ももちろんあるわけでございます けれども、今、申し上げた他の分野との関連、いろいろな意味での優先順位づけ、各制 度間の位置関係と申しますか、こういったものをどうしていくのかというようなことも あるわけでございまして、こういった点につきましては、社会保障審議会(親審議会) の事務局と具体的な話をしているわけではございませんですけれども、今後この当部会 におきまして、一定の議論といいますか、整理がなされれば、それを社会保障審議会( 親審議会)にご報告申し上げ、今、私が申し上げましたような点についても、ご議論を いただく場面というものが出てくるのではないかと思っているところでございます。  それから、年金数理部会、年金資金運用分科会の関係でございますけれども、直接こ の年金の制度論、あるいは財政論といったものは、現時点では特に関連というわけでは ございませんが、年金資金運用分科会との関係で申しますと、例えば財政再計算の議論 の前提といたしましては、公的年金の資金の運用、これの収益をどう見込んでいくのか というようなことがあるわけでございますし、そういったこととの関連で、当部会での ご議論があろうかと思っております。  それから、年金数理部会ということで申し上げれば、これは現時点におきましては、 各被用者年金の財政の検証ということで今までご議論を賜ってきているということでご ざいます。将来に向けての財政的な問題といったようなことを議論するに当たりまして は、年金数理部会における議論、決算の結果といいますか、直近の状況につきまして、 当部会において、私ども事務局の方で数字を出させていただいて、ご議論に供すること になるかと考えているところでございます。以上です。 ○ 宮島部会長  それでは、この進め方(たたき台)につきまして、検討項目、趣旨、若干スケジュー ルのことにつきまして、ご意見があれば、これも少し自由に今日伺っておきたいと思い ます。どうぞ。 ○ 向山委員  先ほど新人口推計の話がありましたように、非常に厳しい数値が出るわけでございま して、そういったことを考えますと、推計値の結果だけをとらえますと、やはり国民の 社会保障に対する不信というのはますます高まっていくものだろうと考えております。 むしろ、そういった現状を、こうすればこうなるのだというようなことを少子化対策と して、国を挙げて議論をしていく必要があるだろうという部分もこの検討項目に入って いますが、そういったものを今後十分議論をしていきたいと思っているのが1点。  それと、検討項目の中に、給付と負担の問題等が書いてあります。この部会では年金 に関するテーマを中心に議論するわけでありますが、高齢化の進展に伴って医療や介護 の給付と負担の問題も大きな課題であるだけに、年金の負担と給付の問題だけでなく、 社会保障全体で負担と給付の問題も考えていく必要もあるだろうと思っております。  また、ここに社会保険料と税と書いてあるのですが、現行の社会保険方式を前提とし ての議論ではなくて、基礎年金の税方式化ということも含めて、社会保険方式と税方式 、といった議論も含めて「社会保険料と税」という検討項目と整理されているのか、確 認をしたいと思っています。  最後に要望したいことがあります。これまで年金については、5年に1回の改正をし てきているのですが、その都度経過措置がとられていることから、制度の仕組みが非常 に複雑でわかりづらくなっているのも事実でございます。そういった中では我々メンバ ーの共通の認識ということも必要かと思いますので、できれば、昭和60年改正以降、12 年改正までの経過についても是非説明をお願いしたいと思っています。 ○ 宮島部会長  少しまとめて、重複する論点が出てくる可能性もありますので、初めに一括して伺っ ておいて、そして後で事務局、私の方から少し回答させていただきたいと思います。 ○ 矢野委員  4点ほど申し上げておきたいと思います。まず最初に新しい人口推計に基づいて、前 回の財政再計算についての変数を変えたシミュレーションをやるというお話ですが、そ れが今後の議論の出発点になると思っています。たとえ厳しい数字であっても、それが 基にないと話が始まらないと思っておりますので期待しております。その場合に、これ は言わずもがなだとは思いますけれども、賃金とか物価、利回り、そういった経済的要 素が変わった場合にどうなるかというような検証もして提示していただければと思いま す。これが第1点です。  第2点は、部会長のお話で、今回の部会の今後の課題を論じていく場合に、幅広い経 済社会の状況に対する見方というものについても認識しておくことが大事だとおっしゃ ったことは大変もっともなことだと思っております。その点で、外国人労働者、特に移 民の問題も含めた問題について検討する必要があると思います。おそらくこれは次の財 政再計算の時期に結論を出すということではないかもしれないけれども、5年、10年と いうことを考えていった場合に、新しい年金の支え手という観点もあるし、労働力の問 題もあるし少子化の問題、いろいろ幅広い意味合いで、一度しっかりした議論をしてお く必要があるというふうに考えておりますので、その問題もどこかで論議するというこ とが必要なのではないかと思っております。  3点目は、議論の進め方のたたき台のIIIとかIVに関係していることでありますが、 公的年金の財源の問題でありまして、いわゆる1階部分と2階部分のそれぞれの機能、 役割に沿って、それにふさわしい財源を確保する必要があると思いますので、その点に ついて十分論議する時間をとる必要があるということを強調しておきたいと思います。 私個人といたしましては、1階部分の財源は全額税にすべきだというふうに思っており ますが、いろいろなお考えがあると思いますけれども、この点について時間をかけて論 議する必要があるのではないかということでございます。  もう一点は、現役勤労世代の負担の限界という問題です。これはしっかり論議してお く必要があると思います。現行の制度では、依然としてというか、これまで以上にとい うか、世代間の負担と給付のアンバランスがますます拡大していくわけであります。し かもそれは少子高齢化の進行ということが一番大きな要素でありますが、低成長という これからの将来を考えた場合にその問題が大きくなってくるわけでありまして、現役世 代の税、社会保険料の負担の増加が見込まれておりますので、それが勤労意欲の減退と か経済社会全体の活力をそぐことに大きな懸念が持たれるわけです。そういった意味で 現役勤労世代の負担の限界という観点で、給付の在り方について、これまた少し時間を かけて論議する必要があるのではないか。  以上、4点申し上げたいと思います。 ○ 宮島部会長  ほかにいかがでございましょうか。 ○ 岡本委員  向山委員がお述べになりましたので重複しますけれど、2050年に向かって65歳以上が 35%という率になります。男子が80歳、女子が約90歳というような社会ということを考 えますと、介護保険というものは今後ますますいろんな意味で重要になってくるわけで す。社会保障制度がいろいろあって、言ってみれば、その制度間のハーモナイゼーショ ンというのでしょうか、制度間の整合性というのでしょうか、そういう問題というのは 、今回の我々のところで議論される論点であるかどうかは別にしまして、やはり健康保 険であるとか老人保健であるとか、介護保険であるとか、生活保護とか、それと厚生年 金等々のインターフェースがどの程度あって、論点があるのかないのか、そのあたりは 事務局の方でももう少し整理いただければありがたいと思います。 ○ 若杉委員  個々の問題としては全体に出ているのですが、やはり国民の相互扶助で行う公的年金 、企業の人事の一環として行う企業年金、それから個人の自助努力としての個人年金と あるわけですが、それをどういう割合にするかというのは非常に大きな問題だと思うん ですね。今までは公的年金を6割とか中心でやってきたわけですが、これからそういう ことでいいのかどうかということですね。特に公的年金は賦課方式を中心としているわ けですが、その賦課方式は人口構成の変化に非常に弱いわけですから、今、人口の問題 、今日も取り上げられているわけですけれども、そういうことを考えると、もう少し賦 課方式の割合を減らすというようなことも考えられると思いますね。  そういうことで、ぜひ三本柱の構成ということ、早くそういうことを考えておかない と、時間がかかるので、そういうような準備をしていただきたい。また、企業年金が、 確定給付型に加えて確定拠出型が入ってきたわけですが、確定給付と確定拠出の企業経 営における効果というのは違いがあるわけですね。ですらか企業や業種によって、その 両方をうまく使い分けられることが必要だと思うのですが、今の制度では企業年金とは 別のところに確定拠出年金が入ってきまして、個人年金とも企業年金とも性格があいま いな形できているわけで、是非企業年金として確定給付と確定拠出をとらえて、そうい うものを企業が大きな枠の中でその二つを使い分けられるような、そういう仕組みとい うのは必要だと思いますので、是非、そういうようなことも、できるだけ早くきちんと 整理していただきたい。そういう意味で言いますと、年金の体系をきちんとコンシステ ントなものにするという、そういう準備を早く始めていただきたいという希望です。 ○ 堀委員  従来から公的年金制度の一元化が進められてきて、給付面では、1階も2階もほぼ同 じになっているのですが、負担面で格差がまだ残っているわけです。給付面でも若干格 差が残っています。今年の4月から農林共済が厚生年金に統合されることになっており 、一元化の方向に向かっていますが、今後も特に負担の公平ということからそれを進め ていく必要があると思います。こういった問題は検討項目のどこにあるのか、ちょっと 読めないのです。厚生労働省は厚生年金、国民年金の所管ということで、その問題だけ 議論するのか。一元化は別々の懇談会があるようですけれども、やはり従来からも議論 されているようですし、私としてはそういった問題もこの場で議論して方向性を示して いく必要があるのではないかと思います。 ○ 大澤委員  若杉委員がおっしゃったことと岡本委員がおっしゃったことと関連しているのですが 、今日は人口の推計ですとか、経済財政関係の中期見通し等いろいろと情報を提供して いただきまして、厳しい現実を見据えなければいけないという議論がされてきたわけで す。ただ、そういう将来人口の在り方とか、あるいは経済財政の見通しといったことを 完全に与件と考えて、年金制度はそれに対して受け身というような位置づけで果たして いいのかどうか。若杉委員がおっしゃったように、将来に希望の持てる社会保障制度を 再構築する上で、年金制度の立て直しといいますか、改正というのが非常に重要だとい うふうに考えれば、例えば消費者心理を回復するとか、年金をきちんと立て直すことに よって影響が及ぶという面も考えるべきだと、私は思っております。  ここ5年ぐらいの経済財政の状況というのは非常に惨たんたるものでございますけれ ども、これがあと25年あるいは50年続くというような前提では、むしろ日本経済や社会 の方が駄目になってしまうので、そういう前提を単純に引き延ばすということはどうし てもあり得ないのではないか。厳しい現実を見据えることは必要ですけれども、やはり 希望の持てるものの再設計というような視点を忘れたくないということを申し上げたい と思います。 ○ 宮島部会長  論点はいずれ今後つけ加わってきますが、今、6名の方から大変貴重なご意見いただ きまして、この論点の読み方でありますとか、扱う際の姿勢の問題ということがござい まして、これから少し総務課長に、今出たご意見についてお答え願いたいと思います。 ○ 福井総務課長  各委員からご意見なり、ご質問なり伺いました。可能な限り、整理しながらお答え申 し上げたいと思っております。  先ほど向山委員から、人口推計、これだけ見ると暗いというような話があって、少子 化でこうすればこうなるという議論もすべしというお話があったかと思います。この点 につきましては、先ほど申し上げましたが、少子化に関しまする会議が、「少子化社会 を考える懇談会」、これが一方で始まるわけでございまして、場合によっては中間的な 取りまとめも行うというようなことで聞いているわけでございまして、こういった議論 も踏まえながら、この部会におきましてご議論いただきたいと思っております。  それから、これもご質問かと思いますけれども、給付と負担ということであれば、医 療・介護というものもあるではないか、といったご趣旨の、お話があったかと思います 。それから、岡本委員からも同様に、介護・医療保険といったご発言、これにつきまし ては、先ほど申し上げましたように、当部会は基本的には年金についてのご議論を賜る 部会であると思っております。先ほど申し上げました社会保障審議会設置の趣旨といっ たことからいたしましても、私は第一義的には、これは社会保障審議会(親審議会)に おいてご議論いただくということだと考えておりますけれども、なお、年金とのいろい ろな絡みもあるということでございますれば、年金を中心といたしまして、給付と負担 ということでご議論に供することはあろうかと思っております。  それから、社会保険方式、税方式の問題、これも向山委員からございました。それか ら、矢野委員からも、1階、2階とそれぞれ年金の役割にふさわしい財源、個人的には 、全額税方式と、1階部分でございましょうか、そういう議論があったわけでございま すけれども、この点につきまして、私ども大いにこの場でご議論賜ればと思っているわ けでございまして、初めからこうだと決めつけるといったことで受けとめられたとすれ ば、そういうことではございませんで、年金制度の本質、役割に照らして、どういう財 源、財政方式が適切なのかということでもって十分にご議論を賜ればと思っております 。  それから、矢野委員から、賃金とか物価とか利回り、とかも織り込んだ試算を、とい う話もあったわけでございますけれども、ここまではちょっと物理的な作業の関係でお 出しすることはなかなか難しいかと思っております。したがいまして、前回の財政再計 算に人口の推計のところを置き換えたもの、これを提出をさせていただきたいと思って おります。  それから、外国人労働者、移民というお話もあったわけでございます。これもいわば 人口の問題を考える上において、あるいは経済社会の支え手をどうするかということの 関連におきまして一つの論点かと思います。この点につきましては、今、労働担当部局 と今回の人口推計を踏まえて労働力の将来見通しを早く出すようお願いいたしているわ けでございますけれども、労働力の見通しといったような議論の中で可能であれば、今 お話の外国人労働者・移民の問題についてもご議論を賜ればと思っております。  それから、矢野委員の4番目でございますけれども、現役勤労世代の負担のご議論が あったわけでございます。時間をかけて議論せよということでございますが、私どもも この給付と負担の問題、非常に大きな問題であると考えておりますので、十分時間をと りましてご議論をいただければと思っております。  それから、若杉委員がおっしゃられましたのは、公的年金、私的年金、個人年金の役 割分担と組み合わせ、というご議論かと思います。この点につきましても、次回公私の 年金制度ということで、先ほどご説明させていただきましたたたき台の中に入っている わけでございますけれども、さらに各論の中で企業年金と私的年金に関する諸課題とい うことで、確定拠出年金も含めまして、これもご議論をいただければと思っております 。  それから、一元化の関係につきまして、堀委員からお話があったわけでございます。 これにつきましては、先般農林共済の統合に際して閣議決定があるわけでございます。 お話のとおり、農林共済につきましては、この4月1日から厚生年金に統合されるわけ でございますが、被用者年金の成熟化が進む21世紀初頭において、この一元化について 推進していくという趣旨の閣議決定が行われているわけです。当面その中で、農林共済 が厚生年金に統合されるということで、残るのは国共済、地共済、私学共済ということ でございますが、大どころの国共済と地共済につきましては、堀委員ご案内のとおりで ございますけれども、次期財政再計算までに財政単位の一元化をするということで、こ れは今、国共済、地共済サイド両方寄って今検討が行われているということで聞いてい るところでございます。こういった動きも見ながら、必要があれば、当部会においても ご議論いただくということでございます。  具体的な話というようなことになれば、これは先般第1回のときに若干ご説明申し上 げましたが、別途設けられている一元化懇は今休止状態でございまして、廃止をされて いるわけではございませんで、一元化懇においてご議論をいただくということかと思っ ております。  それから、大澤委員のご意見でございますが、これはまさに基本論、今度の年金制度 改革に当たっての基本論だと思います。少子化の問題につきましても、あるいは経済の 状況をどう考えていくかということにつきましても、スタンス・基本論だと思っており ます。ただ、1点申し上げたいのは、年金の場合には、なかなか他の行政分野には見ら れないわけでございますけれども、25年、50年、場合によっては100 年といった、非常 に長期的な観点からの議論が必要だということは1点申し上げたいと思いますが、これ はまさに基本論・スタンスの問題でございますので、各委員からさらにご意見を賜れば と思っております。  以上です。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。もう一つ、議題がございますので、今、総務課長から説明 ございましたように、論点としては、私はなるべく広く、来るもの拒まずとしたいと思 います。ただし、この年金部会で議論をし、意見を仮に集約が求められる論点というの は必ずしもこの検討課題すべてとは言い切れない面があります。特に外国人労働者の問 題というのはもちろん重要な問題ではあるけれども、ここで意見を詰めるというわけに おそらくいかない。もちろん経済、財政とか税制もそういう点もございます。ただ、論 点としては、余り初めに限定せずに、なるべく広くとって、進めていきたいと思ってお ります。  なお、今、貴重なご意見をたくさんいただきましたので、この進め方のたたき台は、 さらに改定をしなければいけないというふうに私は思います。これは「等」で読めると いうようなことではなくて、なるべく中身がわかるような形で、次回のときに改訂版を 出していただく必要があるかと考えております。  そういうことで、この議題は一応ここで終わらせていただきます。 ○ 向山委員  先ほど要望としてお願いしたと思うのですが、60年改正以降の経過について、一度そ ういうご説明をいただけないかというお話をさせていただいたのですが、それに対して のお答えがないものですから、すいません。 ○ 福井総務課長  要望ということでございましたので、大変失礼をいたしました。可能な限りわかりや すい資料を作成をさせていただきまして、ご議論に供したいと思います。 ○ 宮島部会長  なお、今後この多くの議論を詰めていきますときに、審議の時間をいかに確保するか というのは極めて重要な課題になると思います。定例的なやり方でいいのか、場合によ っては、どこかで集中的な審議をする、こういうような必要も出てくるかもしれません ので、これはむしろ皆さん方のご協力をお願いしたいと考えております。  それでは、最後でございますが、議題といたしましては、前回、山崎委員から要請が ございました国民年金事務の見直しについてということで、申し訳ありませんが、これ をごく簡潔に最後にご報告いただきたいと思います。 ○ 河野社会保険庁年金保険課長  社会保険庁の年金保険課長でございます。前回、山崎委員のご要請がありました国民 年金事務の見直しに関してでありますが、言うまでもなく現行制度の下での事務あるい は対策ということでありますが、この事務のやり方が国と市町村の役割が一部変わると いうこともありまして、委員の皆様方には既にご承知のこともあろうかと思いますが、 おさらいという意味も含めて簡単にご紹介申し上げます。  平成11年に成立しました地方分権一括法で国民年金に関する事務の一部が、平成12年 、14年の2段階で市町村と国の役割分担が見直されることになりました。このうち本年 の4月からは現年度と言っておりますが、1年分の保険料収納事務、これは従来市町村 に法定受託をしておったわけでありますが、これも含めて国が取り扱うということにな りました。あわせて第3号被保険者の届出、これも市町村を経由しておりましたものを 、この4月から会社の事業主を経由するというふうに変更になるところであります。別 紙1に資料をお渡ししてあると思いますが、見直しの役割分担のスケジュールは後でご 参照いただきたいと思います。  次にこうした状況に対応するために、社会保険庁での事務処理体制といいますか、こ れを少しご説明します。従来市町村では、国民年金業務に従事する職員が約1万人ぐら いいたということでありますが、この事務の分担の変更によりまして、おおよそ半分ぐ らいの業務量が国で実施されるということになるわけでございます。社会保険庁ではこ れに対応するために、事務の効率化、集約化、あるいはアウトソーシングをして、でき るだけ効率的に処理をしたいというふうに思っております。  具体的には2ページをご覧いただきたいと思いますが、まず外部委託でございますが 、保険料の納付案内書の作成などは、今後は全国分を一括して外部に委託するというふ うに考えております。また、保険料未納者の方に対する催告状、こういったものもすべ て外部に委託して実施するように考えております。  次に事務の集約化でありますが、これまで全国310 ぐらいの社会保険事務所単位でや っておりました各種の事務、あるいは通知書の発行でありますとか発送、そういったも のは都道府県単位にすべて集約して実施したいと考えております。その内容は金融機関 からの領収済通知書といいまして、納めた実績でありますが、これを機械で自動的に読 み取らせる事務を、都道府県単位の事務センターで一括してやるとか、それから未納者 に対しては電話の納付督励をやるわけですが、これも都道府県単位でやる、そういった ことを考えております。  それから、また、正規の職員とは別に非常勤の国家公務員としまして、国民年金推進 員というのを全国に1,858 人設置することが決まっております。これらの方に未納者に 対する個別訪問なり、制度の周知、納付督励などをやっていただきたい。従来から、市 町村でもこのような事務を行う非常勤の職員がいたと聞いておりますが、今回の1,858 人は、これに比べても決して見劣りのしない人数を確保しているつもりでございます。  さらに、こういったことも踏まえて、口座振替がさらに促進されれば、一層収納事務 が効率化になると考えております。  次に未加入・未納対策でございますが、未加入・未納者は資料の5ページをご覧いた だきたいと思いますが、資料8−1の5ページでございますが、合計で、細かい数字で 恐縮ですが、上から中段ぐらいのところに書いてありますが、約360 万人ほどいるわけ です。この数は公的年金加入者全体、一番上に数字があると思いますが、パーセントで いうと7,140 万の約5%でありますので、確かに未加入・未納対策というのは国民年金 事務の運営に最大の課題であると認識しておりますが、総数から見ますと決して空洞化 によりまして、公的年金制度全体が立ち行かなくなっているというような状況ではない というふうに認識しておりますので、その辺もおわかりいただけると存じます。  このうち、未加入者は20歳に到達した方のうち、自ら被保険者の届出を行わない方で ありますが、この方には年金手帳を送りまして、適用対策を進めているということであ りまして、その数も暫時減少しておりまして、現在約99万人ぐらいと推定しております 。  一方、未納者は、このように手帳を送っても保険料を納めてこられない方ですが、な かなか意識が必ずしも高くない方もいらっしゃるということで、また現在の厳しい経済 情勢の影響もあると思いますが、増加傾向にあります。しかしながら、6ページのグラ フをご覧いただくとわかりますように、未納者と納付されている方、こういった方の所 得の分布状況をグラフにしてみたわけですが、いずれも似通ったようなグラフになって おります。総所得の高い、低いによってこういった意識が違ってくるのではないという ふうに思っております。  また、未納者の中にも、生命保険や個人年金にかなり加入している方がおられまして 、保険料も払っているという方が相当いるという実態もございます。このように未納者 の方は、決して保険料負担能力が一方的にないという方ばかりではないと思います。こ のような未納者の老後に対する意識を調べたものでありますけれども、納付者と比較し て、老後の生活設計について、特に考えてないという方が未納者には多い。また、老後 生活に備えるという意識が低いのではなかろうかというふうに思っております。  それから、未納・未加入者対策、これからどうするのだということでありますが、3 ページに戻ってご覧いただきたいと思いますが、未納・未加入者には、従来から中学、 高校向けの年金教育、あるいは年金週間における集中的な広報をやりまして、知識の理 解と周知を図っているところでありますが、20歳になられた方には、当然のことながら 年金手帳をお送りするということで適用しております。また、様々な機会をとらえて勧 奨などを実施しております。  学生さんにつきましては、社会人になってから保険料を納められるという仕組みを12 年から創設しておりまして、これの推進を進めてきたわけであります。このうち年金教 育につきましては、7ページの別紙3というのをご覧いただきたいと存じますが、ご案 内のとおり、若い世代の方々の関心を高めるという観点から、平成5年から実はこの「 年金教育」というタイトルで実施をしているわけですが、平成10年からは全都道府県に 拡大して実施しております。  この教育は何をやっているかということでありますが、副読本なるものをお配りして 、教員のOBの方、あるいは社会保険OBを活用してセミナーを開きましたり、学校に 行きまして、じかに時間をいただいて制度の説明をしているというやり方をとってござ います。  今後の課題でございますが、さらに実施校を拡大する必要があると思っておりますし 、教員のOBの方をさらにご委嘱を申し上げて、この普及に努めてまいりたいというふ うに思っておりますが、教員の方々のあるいは学校のご協力ということになりますと、 文部科学省とも連携をしてまいりますので、昨年来、連絡協議会を設置て、この課題へ の取組みに前向きに検討しているところでございます。  こういうことをやりまして、いろんな角度からいろんな対策を進めることとしており ますので、この事務の見直しがありましても、円滑に実施ができるものというふうに私 どもは見ているところであります。  続きまして、もう一点、手短に申し上げますが、資料8−3というのについて簡単に ご説明申し上げます。 ○ 安部社会保険庁数理調査室長  時間もございませんので、中身につきましては省略させていただきますが、この資料 8−3は、納付者と未納者につきましての所得分布、8−1の6ページに付けておりま すが、それをさらに年齢階級別に分けたものが1、2、3ページ、そして4、5、6ペ ージは所得を世帯全体ではなくて、本人に限定して分布を見たものの2種類をお付けし ております。特に個人単位になりますと、個人では所得はないけれども、世帯で所得が あるということがありますので、所得なしのところの割合が高くなっているというとこ ろをご注意いただきたいと思いますが、特にそれを念頭に置いた上でご覧いただきます と、未納者と納付者の一致度というのが個人単位で見るとより高くなるという点は注目 されるところであるかと思います。  以上でございます。 ○ 宮島部会長  ありがとうございました。時間のない中でご説明いただきまして恐縮でございました 。もちろんいろいろご質問あるかと思いますが、時間が大分過ぎてしまいまして、少し 進行上不手際もございましたけれども、おそらくそれ以上に、今日は皆様ご熱心にご議 論いただいたことでありまして、やむを得ないものと、お許しいただきたいというふう に思います。  それでは、次回でございますけれども、今回の議論を受けまして、少し議論の進め方 の訂正版をつくっていただきますと同時に、一応この議論の進め方に沿いまして、年金 制度の役割と財政方式、基礎的な問題から、論点に沿ってこれから議論をしていきたい と考えております。事務局の方では今日の議論を踏まえまして、必要な資料を、先ほど ございました経緯なども含めまして、必要があれば、次回お願いしたいと思っておりま すので、その資料の準備をよろしくお願いしたいと思います。  日程の方は、また皆様方の日程調整をさせていただきますので、その際、よろしくご 協力のほどお願いしたいと思います。大分遅れましたが、本日はこれで年金部会を終了 いたします。ありがとうございました。 ○ 福井総務課長  ありがとうございました。  (照会先)  厚生労働省年金局総務課企画係  (代)03-5253-1111(内線3364)