02/03/19 第10回 医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会       第10回 医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会                        日時 平成14年3月19日(火)                           10:30〜                        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○医事課長  ただいまから、「医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会」を開会いたします。 部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席いただきまして誠にありがと うございます。本日は、黒川委員、高梨委員、仲村委員が欠席です。本日も、文部科学 省高等教育局医学教育課の担当者が出席しております。なお、篠崎医政局長は、本日国 会答弁の用務が入りましたために欠席させていただいております。それでは、矢崎部会 長よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  議事に入ります。これまで本検討部会でさまざまな方から意見をお聞きしてまいりま した。本日は、最後に大学関係で独自の取組みをされてきた事例についてのご発表と、 臨床研修必修化に向けての保険者の立場からのご意見をお伺いします。ご意見を伺った 後、本日の後半でまとめの議論に入りたいと存じておりますのでよろしくお願いいたし ます。  初めに、東北大学におけるこれまでの臨床研修の取組みについてお話を伺います。本 郷道夫東北大学医学部教授、総合診療部・卒後研修担当でいらっしゃいます。早速です がよろしくお願いいたします。 ○本郷氏(東北大学)  本日は、東北大学のこれまでの取組みのお話をする機会をいただきましたことを感謝 申し上げます。東北大学のこれまでの研修の歴史というのは資料にありますが、私たち の使う言葉では「三者協システム」という方法での研修をしてまいりました。これの基 本的な理念は非入局2年間の研修ということです。その点についてのお話を申し上げま す。  資料の2枚目に、これまでの東北大学の三者協システムが出来上がるまでの経緯を書 いてあります。昭和42年にインターン闘争が始まっています。その年に東北大学では、 インターン運動というのは、医学教育改善運動であるという捉え方をして、第1回の医 学教育シンポジウムを開催しております。ここに参加しましたのは教授会、教室員会、 青医連、学生という組織です。  教室員会という組織は、大学病院内すべての医師(但し教授を除く)の団体です。つ まり、教授会に対していろいろ提言するための団体です。教授会と教室員会、そして学 生を中心としてこの医学教育シンポジウムが開催されました。そして昭和43年に医師法 の一部改正が行われましたが、そのときから非入局・病院公開制という形での研修の自 主的なプログラムを作成し、そこで卒業生が自主的な研修を始めるようになっておりま す。  昭和44年に第1回の三者協議会設置準備会が開催されております。ここで、その当時 の医学部長の槙先生のおっしゃった言葉は、いまでも全くこのまま通用するのではない かと思います。「現行の法律とは無関係に、卒後研修はいかにあるべきかの問題につき 、現場で直接診療に従事する市中病院の先生方に意見を聞き、東北大学としての望まし い研修形態を確立していきたい」という理念の下に、三者協議会方式をスタートさせま した。  三者協議会の構成が次の頁に出ています。東北大学医学部の教授会・教室員会、そし て市中病院の院長・指導医、そして研修医・学生の三者の協議会です。三者協議会の歴 史の中では、教授会の発言力は極めて弱いものであり、教室員会という教授を除いた組 織が大きな主導権を持っております。この教授を除いた団体と、学生・研修医、市中病 院の指導医の3つの団体が研修についてのいろいろな調整、あるいはプログラムの策定 をしてまいります。  昭和46年に最初の初期研修カリキュラムの策定が行われています。この時点では52病 院の参加がありました。この形で三者協議会方式として、非入局の研修方式が始まって おります。当初は内科、外科以外のすべての科が入っていましたが、だんだんと内科、 外科を中心とした非入局の卒後研修という形態が定着していきます。  昭和62年になり、三者協議会で担当する研修以外の部門を、東北大学関連病院協議会 が担当することとして、組織が一部変わりました。平成5年になり、卒後研修の必修化 が取り沙汰されるようになってきてから、三者協議会を艮陵協議会と名前を変えました 。艮陵というのは、東北大学医学部の同窓会の名前です。その名前を取って艮陵協議会 という組織をつくり、ここに卒後研修の部門と、卒後研修以外の部門を含めて、三者協 議会を発展的解消したわけです。  この組織が、卒後研修カリキュラムチェックリストを策定しました。翌年は、それの 改訂版を作りました。これはB5判の小さなものですが、学生、研修医、指導医が中心 になって策定したものです。卒後研修が必修化になるのが極めて具体化してきた段階で 、平成9年に大学病院内でのスーパーローテート方式を提言しております。  次に、その三者協議会方式の特徴について申し上げます。最後の段階では内科、外科 の志望者を主に対象としております。研修が終わるまでは非入局という条件を付けてお ります。研修病院については、学生のときの5年生から6年生になるまでの春休み、あ るいは6年生の夏休みを利用し、自分の研修したい病院を見学をした上で研修先を決め ますが、人数の調整が必要な時には学生の間で自主的に調整いたします。それで2年間 の研修に入るわけです。  人気のある病院というのは、時代とともにどんどん変わってまいります。あそこの病 院の、あの指導医の下での研修が良いとなると、そこには常に優秀な学生が集まる傾向 があります。ただし、その病院は常に同じではなくて、時代とともにどんどん変わって いきます。つまり、指導者の力量が落ちてくると、学生あるいは研修医が見くびって違 う病院に行ってしまうということがあります。その点で研修医の獲得あるいは研修先の 決定は自由競争といって良いでしょう。ただし、そのときの問題点としてカリキュラム 、あるいはその評価ということが明文化されておりませんでした。  1980年からの20年間の東北大学の卒業生の研修先を調査したデータがあります。およ そ半数の卒業生は、三者協加盟病院での研修をしております。そのうち研修指定病院で あったものが12%です。三者協ではなく、大学病院での研修をした者が全体の3分の1 です。それ以外の病院で研修した者が20%です。  東北大学での研修医の採用状況ですが、1年目がおよそ50名、2年目がおよそ40名毎 年コンスタントに東北大学での研修として東北大学に参ります。このうちおよそ半数が 東北大学の卒業生です。2年目になると少なくなるのは、1年目に院内研修が終わった 後に、2年目は外の病院に出る研修医が何人か出るという状況を反映しております。平 成12年に研修医が極端に減りました。これは、院内ローテートを必修化するという噂が 流れたために、卒業生が東北大学学内でのスーパーローテートに強い反発を示したとい う解釈をしております。スーパーローテートは必修ではなく、選択であるということの 説明をした結果、平成13年になって、大学での初期研修希望者が回復して、平成14年度 は例年どおりの数に回復してきております。  東北大学の研修方式としては、三者協議会方式を基にして、研修必修化をにらんで、 スーパーローテート、あるいはそのカリキュラムの策定を進めてまいりました。平成9 年にスーパーローテートプログラムの作成をし、さらに平成10年にはスーパーローテー トではなく、選択をしたローテートプログラムを策定いたしました。さらに平成11年に は院内だけではなく、院外の協力病院との複合ローテートプログラムを策定しておりま す。  東北大学としては、その他卒後臨床研修内規の策定、そして関連研修施設群の基準の 策定、卒後臨床研修センターの設置をこの年に行っております。そして平成12年にスー パーローテートを開始したのですが、これが必修であるという誤解の下に、研修医が極 めて少なくなってしまいました。  平成13年、卒後研修記録カリキュラムと評価を策定いたしました。本日ここに持って まいりましたが、これはルーズリーフ方式で作ったもので、その内容を時代の要請に応 じていつでも交換できるような形にしたい。固定ではなくて、自由に変更ができる、あ るいは将来の専攻科に併せた新しいプログラムを追加できるという形での、こういう記 録評価表を策定しております。  昨年、東北大学方式の検討として、東北大学卒後研修のあり方に関する委員会で次の ような提言をしております。これまでと同様に卒後2年間は非入局、そして東北大学独 自のカリキュラムを策定すること、救急診療の実践の場として麻酔科、救急外来、救急 当直を活用すること。必修として内科、外科、麻酔科、さらに選択科を加えるといった ローテートを行う。  研修の場として大学病院だけではなく、研修指定病院、あるいは研修可能と判断され た協力病院を加える。協力病院は病院ごとではなくて、診療科ごとに指導者数、常勤医 師数を考慮して判定すること。卒後研修委員会が研修先の調整を行う。ただし、これは 研修医の希望を重視するということになります。研修指定病院であっても、大学との共 同ローテートを可能とすること。そして大学病院指導医、研修病院指導医、他大学から の委員、あるいはコメディカル部門からの委員を加えて評価委員会、つまりこれが評価 機構となりますが、ここで研修の評価を行うようにしたいということで、この提言に基 づいて現在準備中です。  実際の研修プログラムをその次に示してあります。2年間すべて院内研修をする、と いうのはプログラムとして提示してありますが、主に2番、3番といった形で、協力病 院との密接な連携を持った研修を進めていきたい。協力病院との、その期間の設定につ いては、1年間を院内、1年間を協力病院でするか、あるいは最初の3カ月だけを院内 で基本的なトレーニングを行い、残りを院外での研修とする。こういったいろいろ柔軟 なプログラムを策定していきたいと考えております。  研修協力病院と協調することのメリットとしては、研修内容に大きなバラエティがで きるということ。特にプライマリ・ケアの実践が可能となること。救急患者への対応が できる。特に1次から2次の救急、3次救急はもちろんですが、そういったさまざまな レベルの救急への対応ができること。そして地域医療、在宅医療への参画ができること 。大病院、あるいは大学病院ではともすると専門に偏りがちですが、専門に偏らない総 合的診療の実践ができること。地域での予防医学への参画ができること。こういったメ リットが考えられますし、さらに研修病院と協力することによって、研修指定病院の規 模を満たさなくても、優れた指導医の下での研修が可能となること。  そういった指導医の下では、少人数の研修医に対してのマンツーマンの指導体制が確 立できること。そういう指導体制の中で、医学知識、医療知識ばかりではなく、指導医 をrole modelとして、人間性の習得が可能であるといったメリットがあります。また少 人数であるために、緊張感を持った研修が可能である。こういったことが協力病院と協 調することのメリットと考えております。  ただし、協力病院でのデメリットとしては、評価システムがないことが多い、カリキ ュラムが不備のことが多い、研修医同士での勉強会などの学習システムが不足しがちで ある、専門家の意見を聞く機会が少ないといったことがあります。  そういったことを踏まえ、大学としては協力病院との密接な協調をしていくことによ り、研修内容を充実させたいと考えております。つまり、大学が研修内容の監督あるい は評価を行う。研修内容の調整、研修状況の査察を行い、さらに評価機構により研修の 最終の評価を行う。これは、大学側からの一方的な指導ということではなく、研修病院 との密接な協力の下で行うということで進めてまいりたいと考えております。  これまでの研修医の受入れ状況ということで、東北大学の平成12年の成績をお示しま す。500床以上の病院から、100床以下の病院までいろいろな病院がありますが、100床 規模の病院でも、かなりの数の研修医が研修しております。それぞれの病院での平均的 な受入数は、大規模の病院では当然受入数が多く、小規模な病院では少ない。ただし、1 00床規模の病院でも平均で2.8人の研修医が研修をしております。  なぜそういう病院で研修をするかと申しますと、次に評価システムの有無ということ で、研修システム、あるいは評価システムということについて調査成績をお示しします 。100床規模の病院でも、調査した対象数は15施設ありますが、2つの病院で研修シス テム、あるいは評価システムを既に備えています。そういった病院では研修医が実際に 研修しております。当然大規模な病院は研修システム、評価システムを備えている所が 多くあり、小規模な病院では、そのシステムが揃っていない所が多くなりますが、だか らといって小規模な病院が研修に一切向かないと断言することはできませんし、大病院 だからといって、研修システム、評価システムが揃っていない所では、必ずしも研修が 可能とは考えられません。  したがって、これは病院での研修が可能かどうかということを一つずつ丹念に調査し ていかなければ研修に適しているかどうかということの判断ができない、ということを 示していると思います。  また同時に内科研修認定ということで見てみますと、100床規模の病院、あるいは200 床規模の病院でも、内科研修認定を受けている施設が2施設あります。こういった施設 では、少なくとも内科研修に対しては十分な指導体制が揃っているし、十分な研修がで きるであろうと考えます。また、ここに内科研修という認定は受けていなくても、それ に近い病院も決して少なくないであろう。  これは内科研修だけではなく、ほかの診療科においても一つずつ丹念に調査していけ ば、この辺も研修可能な病院がたくさん浮かび上がってくるのではないか。そういった 病院について大学、あるいは研修認定機構を使って調査をした上で、そういった病院を 有機的に統合した研修システムを東北大学としては検討していきたいと考えます。その 基本には三者協議会で培ってきた非入局、そして学生の自主的な、学生の希望を踏まえ た、そしてその内容を十分に把握できるような研修体制をいままで行ってきたというこ とがあります。  最後に、この研修の基本原則ですが、これは国立大学附属病院長会議でも提言されて いるのと全く同じです。研修医が、自分が研修を受けたい病院で、どのような研修を受 けたいか、そういった研修医個人の個性と希望を尊重した研修であること。その中で良 質な医療人が育成できるという条件を備えること。そして、研修医の経済的環境を十分 に保つことが必要であろうと思います。  また、社会の医療に対する要請などを踏まえ、成長性、柔軟性を持った者、つまり本 日持ってまいりました研修記録のように、その状況に併せていつでも変更できるような ものを作っていきたい。そういうものを作っていくときに、大学病院単独ではなく、地 域の医療機関、あるいは協力病院と密接な関連、あるいは連携を持って進めていきたい と考えております。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明に対し、ご意見やコメントがございます か。 ○横田委員  5頁のところで、研修修了まで非入局ということですが、研修修了後の入局を約束し て出る方たちが多いというお話も聞いているのですが、その辺の問題はどうでしょうか 。 ○本郷氏  これは約束ではなくて、慣習として多くの研修医が、研修を修了した時点で、あるい は最近は研修2年だけではなく、もう1年余計に研修するのもありますが、十分に研修 をできたという時点で、それぞれの判断で大学に戻ってくる者が大半です。ただし、こ れは約束でも何でもありません。 ○横田委員  10頁の3番目のコースで、最初の3カ月は院内でということになっていますが、実質 上はいま5月中旬からの研修をせざるを得ないです。そうすると、最初の段階では1カ 月半、あるいは2カ月という研修になると思います。その件で研修医からのクレームは ないでしょうか。 ○本郷氏  最初の1カ月の部分、実際に医師免許が来るまでの時間帯は講義に当てております。 講義で、医師になるための必要な知識ということで、これは卒前にしている講義を、さ らにもう一度繰り返すことになりますが、保険制度の問題やいろいろな書類の書き方と いった類の講義をいたします。 ○横田委員  最近数年カリキュラムが変わった後の、研修医からの制度に対する評価というのはい かがでしょうか。 ○本郷氏  スーパーローテート、特に大学の中だけでのスーパーローテートには、この数字で出 ましたように強い反発があります。それは臨床実習の延長にすぎないのではないかとい う危惧です。彼らは、実際に患者のそばに立って、臨床の場での訓練を積みたい、とい う意見が非常に強く出ております。そのために、スーパーローテートを院内で必修化す るかもしれないという話が出た時点で、ボイコットに近いような形で、大学での研修医 が減った状況です。彼らに対して、大学が臨床実習の場として、関連協力病院での研修 を約束するという形で、彼らの理解を得ております。 ○相川委員  確認と質問です。7頁の棒グラフの東北大学というのは、その前の頁の円グラフの左 下の大学病院のことなのでしょうか。別の用語が使われていますが、ともに東北大学病 院と理解してよろしいのでしょうか。 ○本郷氏  はい、これは東北大学病院です。ただ、ここの数字は一致しません。 ○相川委員  初期は内科、外科以外の科の研修も、三者協議会方式でしたが、だんだん内科、外科 に絞られてきたということですと、近年では例えば小児科、婦人科等々の場合には、6 頁の円グラフではどこに入るのでしょうか。小児科や婦人科を希望していく人は、主に 円グラフの左のほうに入っていくのですか。 ○本郷氏  最初に大学での研修を始めた研修医ですので、大学病院に入ります。 ○相川委員  主に右のほうは内科、外科の方が非常に多いということですか。 ○本郷氏  ほとんどが内科、外科です。 ○相川委員  左の東北大学病院の中の32%というのは、卒業生に対しての32%でしょうから、比較 的内科、外科ではない方が多いと理解してよろしいですか。 ○本郷氏  卒業生の32%です。 ○相川委員  大学病院で研修を受けているのは、内科や外科以外が多いということですか。 ○本郷氏  内科、外科はほとんどここには入りません。 ○相川委員  次の棒グラフのところでも、この棒グラフの数というのは、主に内科、外科以外の科 の方がここに入っているということですか。 ○本郷氏  はい。ただし、メジャーな内科、メジャーな外科以外ということで、神経内科、脳外 科、胸部外科といったものはこちらに入ってまいります。 ○相川委員  円グラフのその他というのは、例えばどういうものでしょうか。 ○本郷氏  これは、三者協加盟病院及び東北大学以外です。 ○相川委員  例えば東京の病院とか、そういうことですか。 ○本郷氏  はい。そうです。 ○櫻井委員  7頁のグラフがちょっと気になります。平成12年度に院内ローテートを必修とすると したら急減したということですが、これは大学病院でローテートするのをいやがって減 ったのですか。この人たちは、協力病院でならばローテートはいいと言っているのです か。それとも、協力病院でもローテートはいやだと言っているのですか。 ○本郷氏  この時点ですぐアンケートを取りました。大学病院でのスーパーローテートは、臨床 実習の延長で見学で終わるかもしれない、という懸念を彼らが訴えております。ローテ ート研修自体には、学生は一向に反対しておりません。 ○宮城委員  大学病院で研修する場合と、協力病院で研修する場合の、研修医の生活の保障に差が あるのですか。例えば大学病院で研修を受ける者はアルバイトを認められて、そうでな い病院ではアルバイトを認めないというような生活の保障に差があるのですか。 ○本郷氏  大学病院の場合には、規定の金額だけです。協力病院の場合には、研修指定病院の場 合には研修医としての給与だけですが、研修指定でない小規模の場合には、職員として の給与が出ております。研修先の外の病院で研修している研修医は、ほとんどアルバイ トはしていないはずです。 ○宮城委員  大学で研修を受ける人たちは、アルバイトを許可されているわけですね。 ○本郷氏  大学での研修医は、献血車程度のアルバイトを認めております。 ○磯野委員  東北大学では、医学面で大変改革に努力されていることに敬意を表したいと思います 。3頁の表で研修医・学生と書いてありますが、研修医・学生はどの程度、どういう形 で参画するのですか。 ○本郷氏  これは、三者協議会でどのような形で研修病院の調整をするかということですが、こ れには特に6年生の学生はほとんど全員が参加いたします。 ○磯野委員  研修医もそうですか。 ○本郷氏  研修医、その先輩という形で各病院から代表で数名が参ります。それぞれの病院から ということです。 ○磯野委員  学生の希望によって、その病院を選定するということですが、おそらく病院によって 数がかなり決まっておりますので、希望する病院では数で制限されてくるのですか。 ○本郷氏  はい。 ○磯野委員  第1希望にするか、第2希望にするかという希望の問題は、この協議会でもって決め るのですか。 ○本郷氏  学生の間で自主的に調整いたします。 ○磯野委員  10頁の卒後研修プログラムで、2と3の研修を終わった後の研修に関して、おそらく 大学病院に帰ってこられた先生方の評価などはどのようにされているのですか。 ○本郷氏  その評価機構をこれから設置しようと考えております。 ○磯野委員  まだ、やっていないのですか。 ○本郷氏  また、実際には動いておりません。 ○杉本委員  まだ設置していないということですが、14頁の評価機構というのは、研修医を評価す るのでしょうか、あるいは病院を評価するのでしょうか。 ○本郷氏  3番に、研修状況の査察ということで、これは病院の査察というのは大学でしたいと 思います。研修機構では、研修医の研修内容についての研修医の評価を評価機構で行い たいと思います。 ○杉本委員  これは病院を評価して、協力病院を研修病院として認定するというようなことではな くて、そこで研修を終えた方の結果を評価するという趣旨ですね。 ○本郷氏  はい、そうです。 ○杉本委員  この場合、協力病院に研修医が出向くという格好なのですけれども、そうすると東北 大学を中心とした地域の協力病院ということになります。そこに入らない遠方の病院と いうのもその他として括ってあるというお話がありましたけれども、これを拝見してお りますと、評価機構による評価というようなものは、大学レベルで行うよりは、国レベ ルで行ったほうが、より効率的、効果的なのではないかと思うのです。 ○本郷氏  そういうものができれば、そちらにお任せしたいと思いますが、現時点ではまだそう いうものがないので、東北大学としては、ひとまずこういうものをつくりたいと考えて おります。 ○杉本委員  いま、実際に厚生労働省にこういう臨床研修部会があって、臨床研修病院の指定を行 っております。これが、あるいは1つこういったものに近いことをやっているのではな かろうか。そういった部会の機能を、より拡充していくということでもよいのではない かと思うわけです。 ○本郷氏  その点は、そういう活動ができるようになれば、柔軟に対応できるようにしたいと思 います。途中にも書きましたけれども、この評価研修のシステムということ自体は、常 に硬直したものではなくて、時代の状況に併せて柔軟に変更できるものでなければいけ ないと考えております。 ○内村委員  12頁に「指定病院の規模を満たさなくても」というのがあります。例えば100床とか ありますが、その具体的な基準みたいなものはあるのでしょうか。 ○本郷氏  指導医の評価ということで見ています。単科の専門病院でも、一定期間であれば研修 に向いていると判断いたします。 ○堀江委員  昭和43年の時点で非入局と書いてありますけれども、全員が非入局ですか。 ○本郷氏  この時点は、全員が非入局です。 ○堀江委員  その後、内科、外科ということで変わっていますね。 ○本郷氏  その後、内科、外科を中心に非入局です。 ○堀江委員  現在も研修に入る人たち全員が非入局で2年間やっているのでしょうか。 ○本郷氏  内科、外科は全員非入局です。それ以外の科は、入局している研修医があります。 ○堀江委員  内科、外科等は必修と言うけれども、産婦人科とか、整形外科といった専門の方々は ローテーションはやらずに、その領域だけの研修をやっているということですか。 ○本郷氏  はい、いままではそうしております。 ○山口委員  2点教えてください。いま、協力病院については規模別に表が出ていますけれども、 大病院は大体研修指定病院なのでしょうか。それから、中小病院はそうではないのでし ょうか。特に300床以下はそうではないと思うのですが、質は担保しなければならない 問題だと思います。学会の認定施設がありますが、そういうのを多くの協力病院は認定 施設の認定を受けているというふうに理解してよろしいのですか。 ○本郷氏  少なくとも、認定施設は受けております。 ○山口委員  優秀な指導医がいるというのは、そういうふうに理解をしてもいいということですか 。 ○本郷氏  最低の条件として、認定施設であること、あるいは指導医として、学会認定の指導医 、もしくは専門医、そういった形の指導医がいる。これだけは最低限必要な条件です。 ○山口委員  2点目は、11頁に「地域医療、在宅医療云々」と書いてありますが、確かにこういう メリットはあるのですが、具体的に東北大学の協力病院で、地域医療や在宅医療をかな り積極的に推進している病院というのは、全体の協力病院の中でどのぐらいありますか 。 ○本郷氏  およそ2割から3割だと思います。研修指定病院のような大規模な病院での研修もお ります。むしろこういうことは、規模の小さな病院で積極的に行っているので、全体の 2、3割と考えます。 ○山口委員  それは、大学とすれば大事なことだと認識をしているのでしょうか。 ○本郷氏  はい。 ○矢崎部会長  三者協議会システムというのは、いまでもそういう香りが残っているのですか。先ほ ど、教室員会が主導し、教育の最終責任者である教授会があまりタッチしていないとい うお話でしたが、これは将来どのように変わるのでしょうか。 ○本郷氏  三者協での教授会の力が弱かったというのは、医局支配という形を嫌ったために、教 授会の発言力がかなり抑えられました。それで教授会を除いた教室員会が大学の代表と いう形で、大学人としてどのように研修があるべきかということで機能しておりました 。  ただ、研修必修化という状況を目の前にして、大学がそこに責任を持たないわけには いきません。むしろ大学が積極的に研修の調整に当たろうとしております。ただし、こ れまでの三者協システムの非入局という形、そして研修医が自分の研修したい病院を前 もって調査した上で研修を始める。そういった利点を残したい、ということが東北大学 システムの基本です。 ○矢崎部会長  ローテートではなくて、ストレートに入っている方が相当大きな部分を占めておられ るのですが。必修化に目指した対応はどういうふうにとられる予定なのでしょうか。 ○本郷氏  いま、ストレートをやっている診療科のほとんどが、新しい改正でのローテートに同 意していただいております。 ○矢崎部会長  本郷先生には、東北大学の研修制度の実情、それから将来の展望をお話いただきまし た。お忙しいところをありがとうございました。次に、保険者の立場から、健康保険組 合連合会の下村健副会長にお話を伺います。 ○下村氏(健康保険組合連合会)  本日は、臨床研修についてのお話をする機会をいただきましてありがとうございます 。私に対して意見を求めるということは、保険と臨床研修との関係をどう考えるかとい うところがいちばんの焦点だろうと思っております。臨床研修の費用を、保険でなんと かしたらどうかというご意見が従来からあります。それについても、原理的には考えら れないことではないと思っております。ただ現実問題として言うと、それについて2つ のことを言っています。  1つは、保険財政の状況が、それを負担するに耐えるだけの状況でなければ駄目だと いうことです。具体的に言うと、厚生労働省に対して言っていることは、かねてから私 どもは保険制度の改革を基本的な要求として言っています。保険制度の改革を実現し、 保険の財政を安定させてくれ、ということが基本的な条件になるのではないかと言って いるわけです。  もう1点は、臨床研修を必修化することによって、医師の質の向上が図られるので、 それについては皆保険ということで、医師の質の一般的な向上は当然保険者、あるいは 医療保険にとって利益があるわけだから、当然費用を持ってもいいのではないか、とい うことをおっしゃるわけです。それは、研修の内容がちゃんと行われて、あるいは内容 が明らかにされて、医師の質の向上に確かに結び付いている、ということが実証された 上の話であって、その2つの条件が満たされなければ、現実的にはいまの保険制度が、 研修費用を負担することはできないのではないかと言っているわけです。  この辺の問題については、従来からいろいろな議論があり、10年以上前ですけれども 、大学病院側と保険側とでだいぶ議論をした時期があります。大学が、日本の医療を悪 くしている元凶ではないか、という議論が行われた時期がありました。それは、大学の 医局を出て、町の病院などに出てくると、大学で習った同じように、むやみに新しい薬 を使う、いろいろな検査をやる、というような診療をやるというのは、大学で行われて いる医療が、そのまま民間病院に持ち込まれることになっているのではないか、という 種類の批判があったのでそんなことになりました。  確かに、保険の医療費の統計から見ると、大学病院の医療費は一般より何割か高いの です。我々から言うと、高いことが果たして合理的に医療の内容が、それだけ良いもの だということに結び付いているかどうかというところが問題になるわけです。それを巡 って、いろいろな議論をしたわけです。  そのときに大学側が言ったのは、大学というのは三位一体でやっているのだと。教育 ・研究・医療の3つを三位一体でやっているので、3つを区分することはできないのだ と言うのです。私どもは、それに対して確かにその三者を分離するというのはなかなか できないところもあるでしょうけれども、一応それぞれの機能がどの程度のものかとい う評価ができなければ、診療報酬や大学の医療費が高いのか安いのかという議論はでき ないのではないか、と言ったわけです。  私どもは、現在でもそういう意味では、研修にかかっている費用のいくらかは払って いるのではないか、どうもそうなのではないかと思っております。これは、臨床研修医 が労働者かどうか、という議論が一方であって、昨年関西医大の判決が地裁で出て、労 働者だということになりました。労働基準局のほうは、臨床研修医を一律に労働者だと 判定するわけではなく、個別の実態を見て判断をするのだけれども、関西医大の場合は 、明らかに労働者だという意見です。  我々として言うと、現在は学部卒業のときに国家試験を行って免許を与えられて、一 応医師としての就労が認められている状態にあって、実際に大学病院で医療をやってい る。それは研修のためだと言われる場合もあるのだけれども、果たしてどちらにウエイ トがあるのか。そこが実態としてよくわからない。  臨床研修が義務化されるということで何が変わるのか、ということがこれまでの議論 を拝聴していてもよくわからないのです。我々は専門家ではありませんから、もうちょ っと実態を理解するように努力をしたいと思うのですけれども、どこがどう変わるのか 、新しく付け加えるものは何なのか、現状とどこが変わってくるのかということが、な かなか明確になっていないように思いますので、私どもとしては、基本的なところでど うもわからない。いまの臨床研修というのは一体どうしようと言っているのだ、という ことがわからないのです。  そういう点からすると、まず1つは、現在行われている臨床研修の実態の評価という ものを正確にやってほしい。その上で、必修化ということでどこがどう変わるのか。い ままで三位一体という曖昧な議論が行われていたのだけれども、何が変わっていくかと いうことを明確にしてほしいと思っております。  それから、臨床研修が終わったところで、ただいま東北大学のお話の中でも、評価と いう問題がありましたが、評価は必ずやってほしいということです。我々からすれば、 必修化されて、臨床研修によって一人前の医師ができるということであれば、その研修 によって保証された内容、医師の質が明確にされるべきではないかと思います。  そういう意味からすると、制度として考えると、学部を出たときに国家試験をやって 免許をやって、そこではまだ一人前ではないような感じの医者をつくっておいて、臨床 研修が終わって一人前だと。そこのところでは、大学で誰が判定すればいいのか、とい うのも制度論としては非常にわかりにくいところだと思います。国民の側からすると、 一体国が保証しているのは何で、あとの評価のところは大学がやるのだと。大学がやる のだということであれば、大学は何を国民に対して保証してくれるのか。それは、本当 に大学が保証すれば大丈夫なのか、というようなところも制度的な疑問としていえば、 私どもとして思っているわけです。全体的に言うとそんなところです。  実態として言うと、大学病院にいる医師は、大体保険医登録をやっているはずです。 保険医登録をやって、医療法上の医師数にも参入している場合もされない場合もあるの でしょうか。県によっては参入しないと、標準定数に足りないから参入している県もあ るという話があります。それは保険側からすると、保険診療に、ちゃんと一人前の医師 としての医療費は支払っているのだということになるはずなのですが、その辺は一体ど う考えるのか。いろいろ細かく分けていくと、そういう点がわからないのです。  私どもから言うと、個人の希望によって、どういう研修を受けるかとか、何の研修を 受けるかというのがある程度決まるようなお話に受け取っています。医療費そのものの 面から見ると、間違いなくあと10年ぐらいかもうちょっと先になるかもしれませんが、 5割以上の医療費は老人医療になる、というのは確実の事実になります。老人医療をや ろうという医師は、大学は一向にそういうものをつくることについては関心を持ってい ないと思います。一体社会のそういう需要に対して、大学は何も応えないのだろうか。 個人の希望と大学側の従来の教育内容だけでやっていく、というところはマーケットと の関連の点から見ると、非常に問題があるのではないか。  我々からいうと、老人医療は非常に大きな分野になって、お年寄りといえども、ちゃ んと医師に医療をやってほしい、という希望が強いのですけれども、老人については何 も教えないという所が多いのではないかと思います。実態として言うと、特養であると か、療養型病床に入っていて、急性期の病院へ移ると、かえって病状が悪化する、とい う話さえ伝わってくるぐらいです。いまの急性期の病院で、老人はどんな医療を受けて いるのか。医療の中身は、その患者の状態によっていろいろあることは確かですけれど も、そういった面でも研修内容についてもいろいろ考えていいのではないかという気が しております。  私は専門的な話はわかりませんので、以上のようなことですが、我々とすれば新しい 制度に移行するということであれば、全体としての臨床研修のシステムをきちんとつく って、国民が理解できる形にしてほしいというのが希望です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。明確にご説明いただきまして、大変資するところが大かっ たのですが、ご質問のある方お願いいたします。 ○徳永委員  3つお尋ねします。原則的には研修、あるいは教育に対してお金を保険の立場から出 すことには賛成であるとおっしゃったように思いました。私がどこかで聞いた議論では 、保険や社会保障制度の中には、教育費という支出項目がある・ないでいろいろ議論が あると聞きました。いまのお話では、日本の保険の担当者として、教育の費用を分担し てもいいと思っていらっしゃるのかどうかを1点確認させていただきます。 ○下村氏  私は、賛成とか反対ということを申し上げたのではなくて、社会保険制度の中で、そ ういう費用を分担する仕組みを作ることは可能性があると言っているのです。ただ、現 状から言うとなかなか難しいですよ、ということを申し上げたのです。したがって、現 在のような保険制度の状態で、そういうものは持つべきではない、という議論は当然出 てくると思います。  ただ、制度として考えると、そういうものを取り込んだ制度も可能であろう。それは 、ここでもお話が出ているかもしれませんが、アメリカのメディケア、老人医療などで は、そういう費用を調整係数という形で、ある程度織り込んで支払っているということ もありますので、制度として考えることは可能性がないわけではない。ただ、現状では なかなか難しいですよと申し上げたのです。 ○徳永委員  国や大学が研修医の研修をどこまで担保しているのか、責任を持っているのかそれが 曖昧だとおっしゃいました。それは6年目の卒業の時点なのか、さらに2年研修が終わ った8年後の時点なのか。それは、私たちも悩んでいるところなのです。ですから、そ の2年間の研修期間を充実させようということでいろいろやっているわけです。その話 に、いまお話のあった労働者であるとかないとか、研修医は労働者であるかどうかとい う話を明確にどっちかに当てはめるというのは現実では非常に困難だと思っています。 それは、こういう議論の結果新しくできる制度によってはっきりしていく部分が非常に 多いと思っているのでご理解いただきたいと思います。 ○下村氏  二面性を持っているのだと思うのですが、一方から言うと現在の臨床研修のカリキュ ラムや内容が明確でなくて、そのためにそういう議論をかえって誘発するものとなって いるのではないかと思っております。 ○徳永委員  若干誤解があるように思いますので説明させていただきます。カリキュラムが明確に なっていないというのは、かなり大きな誤解だということを申し上げたいと思います。 将来老人医療が増えるから、それに対応していないというお話ですが、医科大学の使命 というのは、いろいろな方向で能力を発揮できる、あるいは国民その他の期待に応えら れる医者を養成する、という目標でやっていますから、最初から老人だけに適した人が どんどん出てくるというのは、大学の使命、あるいは医育機関の使命としてはセカンダ リーなものではないか。  しかし、卒業して年限数が経ったり、あるいは社会が変わっていけば、そういう医者 がニーズに応じてできていくというものでいいのではないかと思います。いま、大学は 老人に適した医者をつくっていないから、現在の大学の医育の仕方が悪いというふうに お考えいただくと、我々としては困るという気持ですので、よろしくご理解いただきた いと思います。 ○下村氏  私の身近な所で見ると、開業医はみんな内科の看板を上げて、老人のお客様を当てに する。それから、かなりの所に老人の療養型であるとか、いろいろな所に医師はいるの ですけれども、老人医療を積極的にやろうと思ってやっていらっしゃるドクターは少な いように思うので、こんなことでいいのかと申し上げたわけです。 ○磯野委員  先ほど、何のために必修化をやるのかということのご説明に対しまして、これは国の ほうでこのために必修化をやるのだというきちっとしたお答えが出ると思っております 。第2点の問題は、大学病院に対する云々の問題が出ておりますが、私はこの後、全国 医学長病院長会議において、いろいろな改正・改革点についてカリキュラムを踏まえて の説明があると思うので、これは逆になったほうがよろしかったのではないかと思って おります。あるいは、いまのままでまって、大学病院の説明をしていただいて、後で議 論に加わっていただいたほうがよろしいのではないかと思います。 ○下村氏  必修化というのは、ある意味で一つの進歩かもしれないとは思うのですが、それに対 して大学側に何ができるか、ということを具体的に示していただきたいと言っているわ けです。 ○磯野委員  この後ご説明があると思いますので、そのご説明をお聞きになって、十分ご理解をい ただいた上でご議論いただかないと、あまりご理解されていないように私は感じており ます。いま、ここでやっても、もう一度国立大学のほうの問題が出てまいりますので、 二重に時間が取られてしまうと思います。 ○山口委員  2点教えてください。保険者の立場で、いまの研修医の身分ですが、保険医として登 録はしております。今度、臨床研修必修化で2年間と、その後一人前と言いますか、研 修後と、そこで保険医の身分に線引きをすることの是非についてのご意見をお聞かせい ただければと思います。  第2点は、いまの医学は医療技術者は非常に専門化、細分化方向へどんどん進んでき ました。そういうことから、下村さんがおっしゃった老人医療を本当にやっているドク ター、あるいは地域医療を本当にやっているドクターがどのぐらいいるのだろう、我々 も頭を痛めている問題です。  今度の臨床研修必修化で、そういう意味では老人医療も地域医療も、私どもの介護保 険施設も、とにかくみんな研修の中に入れ込んで、期間は別として学んでもらおうと。 そういう医者を育てないと、介護保険の主治医の意見書もきちっと書けない医者も出て くるのではないかという危惧の念を持ってそういう発言をしていますが、2点目につい て保険者というより国民の立場でも結構なのですが、ご意見をいただければと思います 。 ○下村氏  全体としての構成をどう考えるかという点はあるのではないかと思いますが、私はあ る程度のことは教える必要はあるのではないかと思っています。先ほどのように移して くるということもありますし、現在の日本の大学病院でいくとかなり大きな規模になっ て1,000ベッドぐらいにはなるわけだから、正確な患者分類についての統計を我々は見 ていませんのでわかりませんが、いろいろな患者が当然入っているのだと思うのです。 そうすると、その中にも老人はかなりいるはずだと思いますから、当然老人に対する処 遇というのは同じ急性期の医療の中でも、多少違った面が出てくるのではないだろうか という意味で、そういった教育はなされるべきではないだろうかと思います。  もう1つ、最後に付け加えるようで申し訳ありませんが、我々からいうと正直を言っ て、どうも大学によってかなり内容に差があるのではないかと思っているところがあっ て、大分差は縮んできたのですが、医療保険の統計でいくと大学病院の平均在院日数は いちばん短い所は20日ぐらいで、いちばん長い所は40日ぐらいあります。2倍ぐらいの 開きがあるので、いったいこの違いは何なのだろう。正直を言うとよくわからないので す。患者を平均40日以上入れる所と20日で回転しているところと、そこで行われている 医療の差は何に由来するのか。いちばん長い所は北のほうで、寒いからだという説明も あるのですが、夏でも長いですから本当だろうかと。我々から言うと、患者を40日入れ る所と20日でやっている所と全く同じ医療が行われているとはなかなか理解できない。 大学自体のそういう差をいったいどう考えるのかも、我々にとって問題だということも 申し上げておきます。逆に言えば、それはおそらくそのまま臨床研修の内容や何かにも 跳ね返ってくるのではないだろうかと思っているということです。 ○山口委員  さっきの保険医の位置付けで、2年で線引することの是非について質問したのですが 、どういうお考えでしょうか。 ○下村氏  これはこれまであまり議論したことがありませんので、やってみなければいけないの ですが、できなくはないのでしょう。ただ、その場合には先ほどの冒頭の話に関連する のですが、医療法や医師法の体系でそこは区分しているのかどうかという問題が1つあ るわけですが、医師法の体系でできていないとすれば実態上、現実の医療の場で臨床研 修医とそれが終わった医師と、何かの仕様を使って差があるのだという説明がいるのだ ろうと思います。それをやった上で保険制度の上ではその差を認めて、保険としての対 応を考えるのだということであれば理屈としてはできなくはないと思います。 ○星委員  いろいろおっしゃっていただいて、私も言いたいことがたくさんあるのです。1つは 保険医として保険請求しているのですから、研修医が保険診療をしているのはルールに 従ってやっている以上当然だと思います。研修医が保険診療で請求する外にももちろん 研修に要する費用が発生し、それは保険財政でみてもらう必要はない。むしろ保険診療 から出す、保険財政から出す理屈が立たないと思います。もし理屈が立つのだとすれば 、大学教育にも出すのかということと連動します。したがって、私どもは保険財政の中 から研修にかかる部分についてお金を出していただく必要はないと考えていますので、 はっきり言わせていただきます。  それと途中の発言で老人の客を当てにするとか、一生懸命に老人を診ている先生は少 ないという発言がありましたが、何に基づいてそんなことをおっしゃっているのか。そ れは先生のご印象なのかもしれませんが、私どもとしてはそういう発言は容認できない なと思う部分があります。  それから、研修を引き受けているのは大学だけではありません。民間の医療機関も大 変に力を注いでいますので、大学だけを相手にした議論ではないということを認識いた だきたい。  最後に在院日数のことですが、病院にもよりますが、その診療の中身がどうかという 話の評価、そしてそのあとを引き継ぐ医療機関がその周辺にあるのかどうかと合わせて 考えなければならないことであって、その地域によっての差がある、大学によって差が あるということは、すなわち研修の内容に差があるとご発言なさいましたが、それは誤 った認識だと思います。大学の先生方があまりご発言をされないので、私が代わりに発 言をさせていただきました。 ○下村氏  老人の問題について、真面目にやっているお医者さんを傷付けたとしたら申し訳のな いことですが、かなりのお医者さんが積極的に老人をやろうと思ってやっているという よりは、やむを得なくてやっている感じの方が多いという意味のことを申し上げたわけ です。これは実態です。 ○星委員  それは先生のご印象ですね。 ○下村氏  いや、いろいろな医師の話を聞いた結果でそう言っているわけです。もう1つは、診 療所は大概内科標榜の看板を上げているのも実態です。しかし皆さんがすべて、開業し ているお医者さんが内科標榜に値するのかどうかという点は、必ずしもそうは言えない と思います。内科・整形外科、内科・眼科という看板もあるわけで、しかも複数の医師 がいるわけではないのだから間違いないのではないですか。  それから平均在院日数が違うということは、そこで行われている医療の内容に違いが あるのだから、もちろん当然臨床研修指定病院にも差があると思いますが、私はただ大 学の統計が正確なものとして存在しているから、それを申し上げているわけです。そこ で行われている医療が違うのだから、臨床研修というのはそこで行われている医療に実 地に従事しながら研修を受けるわけですよね。医療内容が違えばその研修内容も違うの ではないですか。どうして違わないと言えますか。 ○相川委員  私は大学人ですが、保険者の立場から最初に「大学が日本の医療を悪くしている」と いうご発言があったときに、びっくりしました。「大学から出た医者が今度は地域医療 に行ったときに、大学と同じようなことをやって検査が多い、新しい薬をどんどん出す 」とおっしゃいましたが、確かにそういう事例がある。しかし、保険者の方も患者さん も、医療側、教育者もみんなで医療を盛り上げていくときに、それをもって大学が日本 の医療を悪くしていると言われると非常に残念なのです。実は私どもには老年科があり ます。そこには、私どもの大学からも外の大学からも希望して入局する卒業生がいます 。それが支払いで5割だから、5割ぐらいなくてはいけないのかということは別として 、そういう人も実際にはいる。  いま、私の病院に5人の重症熱傷患者がいます。そのうち3人は80歳以上です。それ に対して超過勤務を付けないで、一生懸命に命を助けようとしています。そういう重症 熱傷患者は、どこも取ってくれません。そうしますと治るまでにどうしても2カ月、3 カ月がかかります。そういう患者さんを追い出すわけにはいきません。我々大学病院も 一生懸命にやっているということを是非ご理解いただきたいと思います。  もう1つは、例えば大学病院の平均在院日数が違うから、研修の内容が違うではない かと。確かにそういう見方もあるかと思います。しかし、研修の内容は画一的なもので ある必要があるのかどうかも、これから考えていかなければいけません。全く画一的な 研修プログラムを作ったら、日本の医者は画一的な医者になります。私はむしろ、いろ いろなバラエティーの持ったプログラムがあってこそ、国民のニーズに対応した医師を 育てていくことができるのだと信じています。ですから、画一的なプログラムが示され なければおかしいというお考えは、このあとのプログラムのことも聞いていただいて、 もう少しご理解をいただければありがたいと思います。 ○下村氏  誤解があっても困りますので、大学の問題を議論した時代には大学がまるで日本の医 療を悪くしているかのような議論もあったぐらいだというふうに申し上げたのです。大 学には悪いところも良いところもあると思っています。すべてを肯定するわけではあり ませんが、問題もあると申し上げているわけです。老人医療をやっているお医者さんも 、いろいろなお医者さんがいると言っているだけで、ただかなりの老人医療をやってお られる方の中に積極的に取り組むというよりは、どうもやむを得ずやろうかと思ってい る人がいらっしゃるように思うと申し上げているわけです。それは間違いないと思いま す。 ○磯野氏  いちいちここでご議論をする必要はなくて、次の国立大学病院がどういう形でやられ ているかということを是非お聞きになっていただいてご議論いただかないと、1つひと つの問題点で論議しても始まらないと思うのです。先生には是非この次の論議に加わっ ていただいて、ご理解を深めていただきたいと思います。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。初期臨床研修から全体の医師の育成までに議論が発展して 、ちょっといまお聞きしていると収拾がつかないような感じです。これは、本当に初期 臨床研修の場面だけを議論するということで、大学の医局とかの観点ではないので、あ まり両方の方が過剰反応されると大変困るのです。  副会長、どうもありがとうございました。私としては保険者の立場から臨床研修必修 化に向けての期待と、我々や大学も含めた研修関係者への注文について率直にお話をお 伺いしたと思っています。やはり保険者、引いては国民の方々の理解が得られる研修制 度作りがいちばん大事ではないか。これがこの必修化の最初の目的というか、基本的な 捉え方だと思いますので、その点については十分に留意していただきたいということで す。  ただいまご意見を拝聴しまして、まとめの議論に進んでまいりたいと思います。議論 に入るに当たりまして、第8回の検討部会だと思いますが、制度設計のための試案を中 野委員が提出されており、これを基に議論を行っていきたいと思いましたが、先ほど磯 野委員からお話のあった中野委員の試案をベースに、全国医学部長病院長会議のワーキ ンググループが検討を進めておられていますので、その検討結果を基に議論してはどう かというご提案もありました。中野委員からもそういうご要望がありましたので、まず 中野委員からご意見を簡単にいただきまして、本日は全国医学部長病院長会議の千葉大 学大学院長の福田康一郎先生、東京大学医学部附属病院長の加藤進昌先生、東京医科歯 科大学附属病院長の西岡清先生にご参加いただいていますので、トータルで20分で収め たいと思います。大変恐縮ですが、まずは中野委員から簡単にお願いします。 ○中野委員  機会を与えていただいて、ありがとうございます。昨年末から制度設計の討論に移っ ていただきたいという気持に駆られましたもので、勝手にこの1月にこういった資料を お出しした次第です。  ご覧の資料を簡単に掻い摘んで申し上げますなら、1頁目の真ん中ぐらいのパラグラ フの2番「基本的な視点」というのを先ほども東北からのご紹介がありましたように、 研修医個人に着目すること、良質な医療人の養成であること、研修の経済的環境の条件 が必要であること、さらには制度自体が成長性、柔軟性があることといった基本的な視 点をまず設けることが必要である。3番目の試案の第1は研修実施体制の話で、(1) 、(2)を合わせまして簡単に申せば公募と応募によるマッチングの実現です。(3) は流動性の確保で、当該大学の卒業生の数を2分の1あるいは3分の1以下にするとい うことで、全体のミキシングを図ろうと。こういったマッチングとミキシングを基本と した体制が必要であろうと書いています。  2頁。その上で5番目で、先ほども出てまいりました管理体制。例えばここでは卒後 臨床研修センター。申し遅れましたが、これは国立大学の立場で1月の時点では出しま したので、その中での言葉が出てまいるのですが、2年間の全研修終了のモニタリング を行うといった意味です。2番目は第2パラグラフの環境条件(6)国は、研修環境整 備のための措置をしなければいけない、(7)国は、当該研修に対する手当等を負担し なければいけない。第3パラグラフのカリキュラムの(9)例えば2年間の研修期間を 設定して、コアローテーション等研修プログラムというものを発表しなければいけない 。もちろんのこと、これを公表しなければいけない。(10)さらに全国卒後臨床研修委 員会と、ここで「大学は共同して」という書き方をしていますのは、国立大学のスタン スからこれをお出ししたからですが、全国にこういったものがあって全体のマネージを 行うことが必要である。次のその他、簡単に言いますと7の給与保障を前提にいたしま してアルバイトの禁止を行う。  4頁は、こんなものかなというので絵を書きました。いくつか中心施設と群を形成す る施設とがあるであろう。パターンがA、B、C、Dぐらいになるのかなと。例えば群 Aを見ますと「施設を他の群と共有しながらも」というわけです。●が両方で交差して います。群Bは共有なしの1個で包む形成、Cもそうでしょうか。この全体の輪として 、定員を公開した上で持っているプログラム、さらにはカリキュラムを公開し、それに よって公募し応募するといった基本的な考え方はいかがであろうかというのが、この制 度設計の入口になるかしらというので出しました1月の試案です。  今日、お手元に勝手に配付させていただいたわけですが、最後の黒綴じの「国立大学 附属病院の医療提供機能強化を目指したマネージメント改革について(提言)」という のが、この3月に国立大学医学部附属病院長会議の常置委員会でまとめられました。た またま中野がこのまとめ役のお世話をしたということもありましたが、昨年の秋から暮 れにかけましてこの討論が平行して進んでいるということもありまして、先ほどのよう な卒後研修に関した制度設計というものを引きずり出したわけです。この中を見ますと1 7頁で総合診療部等を1つのモデルに出しまして、卒後研修等を営まなければといった 新しいマネージメントシステムを考える中にフィットさせるようなことで、制度設計と いう私のアイディアが出てきたものです。これは今日は説明いたしませんので、適当な ときにご覧をいただければと思いますが、これまで国立大学病院がいろいろと思ってい ました問題やするべき点であったりというのを点検し直しまして、もう1つ本当の意味 の統合化していこう。診療科イコール講座という体制そのものも見直していこうという スタンスから、こういったものをまとめています。こういった背景ということで、合わ せてご紹介をさせていただきました。  先ほど矢崎先生がご紹介のように、実はこのあと国公私立大学が集中的に議論なさい まして、全国医学部長病院長会議のタスクフォースの結果が既に出ているということな ので、よろしければそちらのほうに振っていただきまして私の説明はこれで終わりたい と思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。  それでは、全国医学部長病院長会議のご報告を、よろしくお願いします。 ○福田氏(千葉大学)  本日は、ヒアリングの機会を与えていただきまして厚く御礼を申し上げます。  私どもの会議は全国のすべての国公私立医科大学、大学医学部、附属病院を網羅した 会議ですので、例年卒後臨床研修に関して厚生労働省及び文部科学省のほうに要望書を 提出してまいりました。平成16年からの卒後臨床研修制度の必修化に伴って、具体的な 制度設計はどうあるべきかということを前から議論してまいりました。昨年暮れに国立 大学のプログラムが出ました。それから先ほど中野先生からもありましたように、基本 的な考え方についてのご提言もありました。これと平行いたしまして、これらを参考に しながら全国の国公私立すべての大学の先生方に、具体的な制度設計に向けた議論を始 めたいということで、大学病院の医療に関する委員会の加藤病院長の下に卒後臨床研修 制度ワーキンググループを形成いたしまして、この正月からかなりきつく作業をしてま いりまして、かなりフィードバックをかけまして、大学病院だけではなくて、大方の研 修指定病院も納得していただけるのではないかという制度設計の基本骨格を提言させて いただきました。これについて、実践ワーキンググループの座長を務められた西岡先生 からご説明をお願いして、後に必要でしたら加藤先生から補足をお願いします。 ○西岡氏(東京医科歯科大学)  先生方のお手元の資料、「卒後臨床研修の制度設計の基本骨格」をご覧いただきたい と思います。この制度設計を行うに当たりまして、私たちは基本的には研修というもの が卒後研修だけの限られた期間のものではなくて、卒前教育、卒後の一般医あるいは専 門医に向けての教育、研修といったものの中の初期研修ということで位置付けて考えて います。また、それを受けます研修医というのは日本の次の時代の医療を支える非常に 重要な人材であるといったことを考えています。この提言は全国医学部長病院長会議の 中で作りましたので、主語が「大学附属病院」という形になっていますが、この部分を 各研修病院といったような形で読み替えていただかれても、いい形になっているのでは ないかと思います。  1頁をご覧ください。先ほど来東北大学の先生が引用してくださっていましたのと、 中野先生の試案にありましたように基本的原則というものを5つ挙げています。これは 研修医個人に着目したもの、研修医が自由に選べること、また各診療科のエゴが入って こないこと、あるいは安い労働力として使われないようなことを考えた上、なおかつ研 修医が良質な医療人として育ってくれることができる制度であること。それから研修医 の経済的環境条件を保障できる制度であること。また、社会のニーズ、医療に対するニ ーズを踏まえて成長性、柔軟性のある制度であること。もう1つは、大学附属病院と地 域の医療機関が密接に連携した研修制度であることという基本的原則を掲げています。  2の項目の卒後臨床研修の施設ですが、これは大学附属病院と厚生労働省の研修指定 病院、専門診療施設。例えば産科の研修などを受けたいときは産科医院、そこに指導医 がおられるのは当然ですが、そういったものも考慮した形での病院群を形成する。そし て、大学附属病院だけが研修の中心病院となるのではなくて、大学病院が研修の中心施 設として病院群を形成することもできますが、別の研修指定病院で作る病院群の協力病 院としても参加するといった形を考えるほうがいいのではないかということです。そし て群の中で研修医がローテーションをする形を考えた上で、受入人数などを決定して必 要に応じた情報を公開していく。そのときに非常に重要なのは、各病院群の研修の代表 者によります研修連絡協議会を置いて、その中で研修の質の向上を図っていくというこ とです。  研修医の受入れですが、医学部を卒業して国家試験をパスされますと研修を始められ ることになりますが、これは各大学附属病院の卒後臨床研修センターが公募をいたしま して、その公募に応じて研修医がそれに応募して研修医となるということです。また医 学部卒業後、基礎医学のほうに進まれる方もおられますので、そのような方が途中で臨 床のほうに変わりたいときには、その時点で研修資格があるような形にしてはどうかと いうことです。このときにいつも問題になっていますが、臨床の大学院に入学した人を 研修として認めるかどうかというのがあります。むしろ、これは非常に特化した形にな ってしまいますので、大学院の在学期間というのは研修期間には含めないでおこうと考 えています。また、この研修体制を整備しながら、できるだけ早く研修医の公募あるい は受入れのための全国的なシステムを確立していこうということです。  4の研修医の受入定員ですが、これにはいろいろと論議があると思います。研修医の 受入定員を決めるときにいちばん大事なのは、先ほどの東北大学のお話にもありました ように指導医数が重要です。それと、研修に必要な症例数が整っているかどうか。これ は入院患者だけというわけではなしに、外来患者も含めた形での研修に必要な症例数を 勘案して、受入定員を決めてはどうかという考え方です。そこに例を載せています。ま た、研修医の指導に当たりましては研修医の上に受持医、さらにその上に指導医。これ は受持医と指導医が重なっている場合もありますし、そうでない場合もあります。さら にその上に教官、教員といったような形での屋根瓦方式の研修を組み立ててはどうかと いうことです。そして受入定員の中のミキシングのことで、自学出身者と他学出身者の 比率が問題となります。これは地域によりましてもかなり差がありますので、その地域 の条件も十分に考慮した上で、また研修の病院群を形成するときのいろいろな条件を整 えながら、将来的に1対1の比率を目指してミキシングを行うことを考えています。ま た、研修医の受入れの定員というのは、実際にはそこで行われた研修効果が最も大事で すので、その効果を評価しながら随時見直しを図るということです。  5の研修期間はもう決まっています。卒後臨床研修期間は2年間ですが、その間に病 気や妊娠、出産といったような場合にはそれを補足できるようにするということ。また 初期臨床研修というのがありますが、これだけを切り離すことはできません。実際には いま卒前教育の改革がどんどん進んでいます。例えば共用試験やOSCEの試験、それ からクリニカルクラークシップというものが導入されてきていますので、そうなります と現在初期に考えました研修の中身のかなりの部分が、卒前教育でもカバーできてくる ということがあります。そういった中で、研修期間の短縮も考えたような形での検討を 今後していかなければならないのではないかと考えています。そして受け入れられまし た研修医は、病院長の直轄にすることを私たちは考えています。直轄にいたしまして病 院長の下に卒後臨床研修センターを置きます、実際にはいくつかの大学でそういったも のの活動が行われています。  卒後臨床研修センターは卒後研修にかかわる企画、運営、管理などのすべての業務を 統括するということです。具体的には次に並んでいますが研修カリキュラムの策定、プ ログラムの作成及び実施、研修医の公募・採用、個々の研修医の研修内容とその到達度 についての管理と評価、研修協力病院・病院群との連携、指導医の確保と指導医の教育 、また研修医手当、指導医手当の支給管理といったようなことを行うことになります。 この卒後臨床研修センターというのは、病院内で病院長の直轄に置くのですが、これは いろいろな診療科のエゴが加わらないような形で独立した組織として運営するのが望ま しいと考えています。  8の研修プログラムですが、前々回に私自身、国立大学病院の研修の必修化に向けて の指針のところで、国立大学病院が提案していますカリキュラムをご紹介させていただ きました。それも検討いたしました上で、国公私立の中で各大学病院はコアローテーシ ョン及び選択的なカリキュラムから成るスーパーローテーションなど、病院群を活用し た多様なローテーションプログラムを用意する。そして研修希望者は、その多様なロー テーションプログラムの中から自由に選択することができるようにするということです 。ここでコアローテーションという名前が出ていますが、これは総合研修が必要とする 総合臨床の必須の項目をここで収めていただく。そして、その選択的なカリキュラムを 加えていただきまして、これで各研修施設が特徴的なカリキュラムを作っていただくこ とを考えています。いままでは研修医は大学に集まるということが言われていましたが 、いまの研修医の人たちはかなり自由度を持ちまして、本当にいいプログラムがあると ころに流れているといった状況が私たちの大学では出来上がってきていますので、そう いった特徴あるカリキュラムを作って研修医を受け入れる必要があろうかと考えていま す。このときに各科2週間ぐらい回るとしますと学生のBSLとあまり変わりがありま せんので、できれば2カ月から4カ月程度の期間でそれぞれの科を回るといった形でや ってはどうかということです。この研修プログラムも医学の進歩、社会の医療に対する ニーズなどによっていろいろ変わってまいりますので、随時それに合わせて見直してい くということです。  研修が終了いたしますと、卒後臨床研修センターがこの研修の評価を行いまして、病 院長が研修修了認定を発行するということです。このとき、米軍病院や海外の研修施設 で研修の一部を行う人が出てくると思います。その人たちに対しましては、それぞれの 研修のプログラムを吟味した上で、その当該の病院長が研修として認定していただくと いうことを考えています。  10が非常に重要なことなのですが、このような研修制度を作っていくに当たりまして 、実際には研修医が安心して研修に専念できる経済的な保障や社会的な身分の保障を是 非とも行っていただきたいということです。これがないと、この研修制度自身も非常に 将来が危なくなってくることが考えられます。このような保障が行われました上で、こ の研修期間中はアルバイトは全面的に禁止する。そして、研修に専念していただくとい うことです。  指導医の資格として考えましたのは、大体臨床経験が最低5年以上の方ということで はどうか。大体、学会の認定医あるいは専門医が取得されるのが5年ですので、5年を 目処としてこの方たちに指導医になっていただく。ただ、専門医になったからすべて指 導医というのでは具合が悪いと思いますので、指導医にはやはりいろいろなものを教授 するためのテクニック、考え方がありますので、そういった指導医の講習会を受けてい ただく。また、この指導医というのは非常に大変な仕事ですので、これに対する手当も 支給できるように検討していただきたいということです。研修医に対しましては、図書 室や当直室、研修医ルームといったようなものを用意していただくのはもちろんですが 、これと現在ではインターネットを使った情報収集などが行われます。医学情報がそれ で入ってまいります。そういった研修環境も整備していただきたいということです。こ ういった研修に対する費用を国がサポートしていただくという、国からの措置を是非と もお願いしたいと思います。  実際の研修施設、研修のプログラム、受入れなどに関しまして各大学附属病院あるい は研修の中心病院はすべて公開して、研修医がいつでもわかるような形にしなければい けません。その中から研修医が選択できるということです。  この次が非常に大事なポイントですが、大学附属病院及び研修協力病院が行います卒 後臨床研修全体の評価、改善、指導を行うために、全国医学部長病院長会議は国公私立 大学が集まっている組織ですが、これが中心となりました全国的な第三者組織を設置し てはどうかということで、現在これの設置に向かって活動を開始しています。この中で 、ここにありますような研修に関する評価の方法を確立する。例えば研修体制、これは 受入定員も含ます。研修の環境、研修プログラム、研修医の公募方法、また研修医の到 達度がどうであるか、指導医はどうか。指導医自身も評価していただかなければいけま せんので、こういったものの評価法の開発と評価の実施を行うということで、臨床研修 の質を向上させる組織を作るということです。また、卒後臨床研修のあり方に関するガ イドラインもここで策定していただきまして、指導医の資格認定基準の設定、指導医の ためのワークショップなどの企画なども行っていただくといった形の第三者機関を設置 して、研修制度を質の高いものにしていくことが必要ではないかということで、ここで 提言させていただきました。以上です。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。  加藤先生から何か追加はありますか。 ○加藤氏(東京大学)  それでは時間もないので、ごく手短に背景だけ少し発言させていただきます。  大学病院は現在はストレート研修という形が中心ですが、現在であっても大体1年か ら2年の内部研修、それに外部病院での研修を組み合わせているのがほとんどだと思い ます。そういう意味で、総合的な研修はかなりできているはずだと信じますし、私の周 囲で見る限りはそう思います。ただ、これについて疑念があるとすると、プログラムと いうかなかなか全体についての公開がされにくいことと、評価システムを入れることが 今回の眼目ではないかと思います。  もう1つは、先ほど三位一体論というのが出ました。研究と教育、診療という形でよ く言われるわけですが、こういう研究志向あるいは専門医志向ということに対する批判 が非常によく聞かれるように思います。しかし、大学病院の使命として考えれば研究を しないことには、病気を治す治療法が見付からない限りは大きな進歩は望めません。そ れから、それぞれの研修医が自分の力量を試していくうちに、専門医により専門的にな っていこうというのは当然ですし、それを進める必要があるわけです。問題は、そうい うことが3つ一緒になってよく見えないということです。だから、これは現在独法化を 控えて私どもはやっていかなくてはいけない、それを外に見える形で制度設計をしてい く必要があるだろうと考えています。それを保障するものとしては卒前教育の充実が現 在は急務であろうと思っています。  もう1つ付け加えさせていただくと、ここで常に問題になるのは研修医を安い労働力 として使うことについては、非常に厳しく排除しなくてはいけないだろうと考えていま す。以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。この大学の研修の改革案の内容は、先日読売新聞の 社説に「これからの臨床研修のあり方」と出ていまして、それと内容がほとんど一致し ているような感じがしますが、タイトルが「大学の医局で研修させるな」なのです。だ から、その辺の世の認識と先生方の認識と少し離れるかなと。結局、前に京都大学の病 院の田中先生からお話をいただいたときは、中野先生が出されたペーパーに比べると非 常に漠とした改革案で、今日は本当にきっちりした内容なのです。1つは先ほど本郷先 生のをお聞きしたところ、大学の中でも結構抵抗勢力があるのではないかという感じが しましたが、これが実現するかどうかで下村副会長が言われたのは、おそらくアウトカ ム、要するにこういうことで、いま大学の先生方が出されて、卒業された臨床の研修医 がどれほど質の保障が担保されるか。こういう改革案は非常にいいけれども、実際にそ れがきっちり反映されるかどうかの担保がほしいというようなご意見のようでありまし た。  私が平成5年か平成6年に呼ばれて申しましたときには、審議委員会のすべての先生 から「大学は駄目だ、駄目だ」と最初からレッテルを貼られましたけれども、今回は身 方も大変多いし、いろいろな意見がこの検討部会では出されていたと思うので、そうい う意味では非常にオープンになったと思います。  この部会は、ある程度皆さんの意見を聞いて中間まとめを出さないといけないという ことで、最終的にはいまのお話あるいは保険者側の下村副会長のお話、大学側のお話な どを含めて、ちょっとご議論いただければ。私のほうで一応まとめの提案をさせていた だいて、それについてまた委員の方やほかの方々からご意見をいただいて、次回ぐらい にできればある程度の。ただ財源が決まっていないので、こうしろ、ああしろというこ とはなかなか盛り込めないと思います。ですから、最終的には財源を確保してくれとい うことで、ちょっとご議論をいただければ大変ありがたいのです。 ○桜井委員  いま先生方がおっしゃった中に、卒前教育が充実すればそれに合わせて変えることも あるということは、おっしゃったとおりです。卒前教育が充実していれば、時代によっ てはおそらく、こういった2年間の研修は必要でないような時が来るかもわかりません 。けれども、それが不備だからこういった議論があるので、それだけにきちっとした、 先ほど下村先生がおっしゃったように、外から必修化によってどう変わったのかがわか るような改革をする必要があるのではないかと思います。  私自身は、前から大学や病院といえども自動的に研修指定になるのではなくて、やは り認定を受けてなるべきではないかという意見を持っています。大学はそういった意味 で非常に責任があるのですが、必修化されても、あまり変わらないのではないかと懸念 します。よく規則には「原則として」ということがあるのですが、こういった言葉を入 れるとあまり意味がないようなことがあります。その中に1頁のいちばん下の行に「適 切な数を決定し」とあるのですが、文章としてはいいのですが誰が適切な数を決定する のでしょうか。  2頁に「1対1を目指して調整する」とあります。この「目指す」というのも、考え 様によっては非常にフレキシブルなものです。程度がいろいろあると思うのです。こう いった文言がありますと、実際上は始まってみたらあまり変わらないということも懸念 されるのですが、その点はどういうお考えでしょうか。 ○西岡氏  お答えいたします。今回は比較的に原則的という言葉を抜こうということで話を進め させていただきました。定員の受入れで少しぼやけたような表現を使っているところが ありますが、例えば受入定数のところで1人の指導医が2人の研修医を指導する、ある いは1人の研修医に6ベッドを受け持たせるといったような具体的な数字を出していま す。どうして6ベッドなのかということですが、これに関しましては国立大学病院のカ リキュラムに、大体200ぐらい経験が必要な疾患があります。それを研修医が2年間で 研修するためには、どのくらいの患者を見なければいけないか。在院日数を20日ぐらい という設定をいたします。それから割り出してまいりますと、大体3.3ベッドぐらいで 一通り見られるだろうと考えられます。しかも、これを一度だけの経験では非常に具合 が悪いということで、2年間のうちに二度経験するといったようなことを考えました。 そういたしますと、大体6ベッドぐらいで計算値としては出てまいります。ですから、 ある程度の具体的な数値として私たちは例示させていただいたつもりです。 ○桜井委員  それはわかるのですが、誰が決めるのですか。大学自身ですか、それとも外部機関で すか。 ○西岡氏  実際には指導医の数と研修医の数で、初期は大学が決めます。ただ、そのアウトカム の評価が必ず第3者機関で行われますので、それがあってなければ提示した定員数とい うのは削減されるというものです。ここでいちばん重要なのは最後の第3者機関で、ア ウトカムを評価していくということです。これがないと、この研修制度というのは、い ままでご指摘のありましたようになんとなくやっていたなということになりますので、 それは許されない形になってくるということです。  もう1つの「目指して」のご指摘のポイントですが、本当は完全にミキシングして、 これからでも始めたいというご意見もありました。ところが、いま実際の研修医になら れる方のご希望を聞きますと、そう簡単にはミキシングができない状況なのです。先ほ どの東北大学のお話にありましたように「スーパーローテーションは嫌だから、ストレ ートにさせろ」という意見も多数ありますし、また「大学に2年縛られるのは嫌だ」と いう人もいます。逆に大学で「2年間研修してみたい」と、いろいろ多様なものがあり ます。実際に私の大学では、学生の意見と教官の意見とを取り入れた形でディスカッシ ョンを重ねていますが、そういったことがありまして都市部では1対1は達成しやすい わけです。ところが都市部でない所へ行きますと、自学の出身者の半分以上はどこかへ 行ってしまうといったような現状がありますので、こういった地域の特殊性といったよ うなものも考えないと、ここから1対1だということはなかなかできにくいということ で、病院群を実際に作りましてその中でいい形での受入体制を構築しながら、1対1に なるような形を目指したいというのが私たちの考えです。 ○福田氏  ちょっとそこに補足させていただきたいのですが、ここのところは非常に議論があり まして、首都圏の大学と地方の大学といろいろありまして、一律にやらないほうがいい という考えがあります。あまり杓子定規に何割は大学としてしまうと、かえって窮屈に なってしまう観点があるという議論もありました。  卒前の教育は、いま大規模に改革が進んでいますので、是非この部会でその現状を知 っていただくと。かなり卒後研修へ向けた準備がなされていますので、是非そのチャン スがあればお話をさせていただきたいと思うぐらいです。よろしくお願いいたします。 ○徳永委員  やっと、制度設計の具体的な提案がなされて大変ほっとして嬉しく感じますが、すべ ての項目は大変重要なことをうまくまとめていらっしゃると思います。しかし、ちょっ と気になるので質問ですが、2頁の7の卒後研修センターのことで院長直下の組織とし て置くことになっていますが、書いていることはこれでいいと思いますが、3頁の上に 書いていますように院内に置かれた独立の組織として、専任の医師や事務担当職員を置 くとなっています。これはやはり身内だけになってしまった場合に、過去のいろいろな 大学での問題がまた再現される可能性があるわけです。それと、これだけの業務、特に 評価をするということになると、かなりの作業量というかシステマティックな仕組が必 要になってくると思いますが、そういう意味で構成員といったことをどのように考えて いらっしゃるか。それから、例えば非常勤でも結構なのですが、地域医療あるいはプラ イマリ・ケアなどの専門家、学識経験者、医師でない患者の立場なども代弁できるよう な学識経験者が、こういうところに入るのがいいのではないかということ。  それから、この文章を見ると「置くことが望ましい」と大変弱い表現になっているの ですが、この辺はやはりもうちょっと地域に解放されたような、あるいは学外に解放さ れたようなものがよろしいのではないかなと個人的に思いますので、その辺のご見解を いただきたい。  最後に、研修施設群のいろいろな代表者から成る研修連絡協議会との関係といいまし ょうか、単に連絡調整の意見交換の場なのか、あるいは最初の基本理念にありました発 展的と言いましたか、弾力的なという成長性、柔軟性のある組織の制度を担保する1つ のキーになるのではないかと思いますので、その辺のお考えをお聞きしたいと思います 。 ○矢崎部会長  手短によろしくお願いします。 ○西岡氏  この卒後臨床研修センターというのは、設置されている所とされていない所とあるの が現状で、いまのところはこういった望ましいという表現しかできていません。実際設 置されている所では学外の方も入ったような形で、連絡協議会も取り込んだ形で卒後研 修センターというものが動き始めています。これは、いろいろな地域での特殊性その他 のニーズに答えまして、その構成人員はフレキシブルに作っていただければいいのでは ないかと私たちは考えています。 ○辻本委員  失礼を承知でお尋ねしたいと思います。全く素人の立場の私どもの耳には、時々思い がけない話が飛び込みます。特に大学病院の病院長の権限というものは、ほとんど無き に等しい。それが良いのか悪いのかは私どもにはよくわかりませんが、このお話を読ま せていただくと、かなり病院長の権限というものが確立していないとできない取組みで はないかという印象を持ったのですが、その辺りはいかがなのでしょうか。 ○西岡氏  ご質問ありがとうございます。そういった意味では、先ほど中野委員が参考資料とし て出された「マネジメントシステムの改革」というところで、病院長の権限をもっと強 くするという取組みが始まっています。特に研修医問題に関しては、病院長が完全にリ ーダーシップを握るという形で物事を進めたいというのがこの考え方です。  実際には国立病院、あるいは公立病院の病院長はちょっと力が弱いのですが、私大学 の医学部の病院長というのは非常に強い権限を持っております。そういった形でいろい ろお話するときに少し温度差はあるのですが、これから国立大学も公立大学も同じよう に、医局のエゴというものを完全に排除した形でやらないといい研修医を育てることは できないという原則を私たちは考えております。そういった形で強化するということで す。 ○中野委員  すみません、先ほどの資料を少しアピールさせていただきます。黒い背表紙の5頁を ご覧いただいて、専任化の話等々強化を書いているのでよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  あとお1人だけ、花井委員どうぞ。 ○花井委員  1頁のいちばん最初の「基本的原則」の(1)に「研修医個人に着目した」という「個 人」という言葉があります。システムの構築をどうするかという中で、あえて個人とい う言葉を使われている意味合いがあれば教えていただきたいということが1点です。  それから評価制度の問題ですが、私は患者として何度も病院へ行っていますが、ほと んど患者と目を合わせない、コンピュータだけ見ている先生に何回か会ったことがあり ます。何を聞いても「わからない」と言われたこともあります。どうしてこういう方が 医者でいるのかと思ったこともあるわけですが、そういうことが改善されるというか、 適性ということも評価されるような中身を含んだものと考えていいのでしょうか。以上 です。 ○西岡氏  最初に「研修医個人に着目した制度」というので、これはすごくわかりにくいという 批判を受けたのですが、実はこの中には研修医がいろいろな研修のプログラムを自由に 選べる、研修病院を自由に選べるということが1つあります。それから、いろいろな診 療科のエゴで前もって入局の約束をしていないと云々ということがあってはいけません 、そういうエゴを全部排除するということ。それから研修医が安い労働力として使われ ることも起こっているので、そういうことが決してないような形で、なおかつ研修医の 研修の質が向上するような形、研修医の将来を考えた形での研修制度でなければならな いということで、「研修医個人」という言葉を使いました。  もう1つのご質問で、患者の目を見ないで診察する医者が増えているということをい ろいろなところで伺いますが、それは卒前教育の段階で改善が行われています。先ほど 少しお話した共用試験という全国一斉に試験が今年は試行されますし、来年から実施さ れます。それと同時に、模擬患者を目の前にしたオスキー(OSCE)という、対人関 係、どういったものの聞き方をするか、どのように患者さんに接するか、何をやるかと いった試験も実施されています。そういうご批判はあると思うのですが、これからそう いった医者が少なくなると期待しています。  また、研修の評価のところで、いちばん問題になるのは患者さんとトラブルを起こす 方です。それもちゃんと研修の評価でできるようにする。もう1つ、研修医が指導医を 評価するということもここへ取り込んで、指導医の質のよさも担保できるようなシステ ムをつくっていきたいと考えております。 ○矢崎部会長  大体時間もきたので、ここで一応議論を終了したいと思います。先ほど言ったように 、中間とりまとめ案をまとめたいと思いますが、それに先立って、これまでの議論の主 たる論点概要で、6点まとめまして、私の私見が入っているかもしれませんのでその点 はお許しください。  先ほど櫻井委員から、「研修の2年間は卒前教育が充実されればもう少し短縮される のではないか」という話がありました。これもいま必修化という黒船来襲で、大学側が このような抜本的な構造改革案を出されて、さらに卒前教育についても抜本的な、例え ば共用試験の導入など、そういうもので抜本的に変えようとしていることも、皆様方も 頭の中に入れながら、大学側の努力を切に期待しているのでよろしくお願いいたします 。  まず6項目あって、まず第1の項目は、必修化後の臨床研修の基本的なあり方、これ はずっと議論されているところですが、いまは2年ということですが、その間に基本的 、一般的な診療能力をつけて、医者として国民が納得できる保証つきの医者をつくると いうことです。したがって、これはストレートに専門の科だけに入るということは今後 は不可能であろうというのが第1点です。  2番目の項目は、病院での診療、これは大学病院も含みます。それのみならず地域医 療とか、先ほど話題になった地域の保健福祉施設も含めた、幅広い研修が必要であると いうのが基本的な2点です。  2番目は研修の施設についてですが、2点あります。1点目は、いま言った基本的な あり方を実体化するためには、臨床研修のための病院群の拡大とか、いままであった指 定要件を根本的に見直して、より多くの臨床研修に熱心な病院が臨床研修に実際に取り 組めるような道を残しておく必要があるということです。  2点目ですが、一般の国民側から見ると、大学病院での研修はいままでさまざまな問 題があったということは事実で、それを見直しが必要で、それは先生方の構造改革案で 随分前進されていると思います。今後は大学病院においては学内の研修体制をさらに整 備されるとともに、研修が学内だけではなくて地域の医療機関等と連携して、幅広い研 修を提供できる体制を構築していただきたいということです。それには診療所、保健所 、高齢者施設なども組み込んだコースを選択できるようにすることが必要ではないかと いうことです。  3番目の項目は研修内容について3点申したいと思います。まず、1点目は研修内容 をはっきり見えた形で示すためには、各研修施設がプログラムを作成し、それを公表す ることが重要ではないかと思います。  2点目はプログラムの内容ですが、これは先ほどの「基本的あり方」に述べられたよ うな、基本的な診療能力、幅広い診療領域をカバーできる、そのような臨床能力を身に つける。そのためには基本的な診療科をローテーションすることを具体的に明示するこ とが必要である。  3点目は、プログラムが多様性があってもいいのではないかということです。いまま でのは基本ですが、それにプラスアルファの特色を持ってプログラムを作成することは 自由に、むしろそれを大いにやっていただきたいと思います。  4番目の項目は、研修施設の選択とマッチングについてです。これは3点にまとめら れると思います。1つは、適切な研修を確保するためにプログラム及び大学病院を含め た研修施設に定員を設けることが必要であるということです。2点目は、研修のプログ ラムと研修医のマッチングを行い、研修機会のオールジャパンで、各地域に濃淡なく研 修医が全国に散らばっていけるような制度設計をするためには、マッチングが重要であ ると思います。3点目は、大学病院で出された、研修医は自校出身者に限らず他校出身 者も混じえて採用をすることを原則とすることではないかと思います。  5番目の項目は、研修委員会における研修医の指導・監督。これは最も重要な部分で 、プログラム、研修医施設のネットワークができても、それを卒業した研修医がちゃん と合格の判子を押して評価する必要があります。これは2点にまとめられて、研修医を 研修機関を通して指導・監督するための研修施設にそれを見る研修委員会などの体制を 構築する必要があると思います。2点目が、研修委員会は研修の実施状況、研修医の勤 務体制、勤務医の勤務態度、処遇などを監督して、個々の研修医の成果を評価する。そ してそれによって国民の納得、保険者も納得するような医者をつくってほしいというこ とです。  最後の項目は研修医の処遇の問題です。これは適切な処遇に要する財源を確保してく ださいと。この部会ではこういう研修で是非方向性を持ってやるので、財源を是非出し てほしいと。そういう6項目に、いままでいろいろな団体、委員の方々のご議論の中で そういう問題に集約されるかと思います。  奇しくも、今日全国病院長医学部長会議で出された内容にほぼ匹敵する内容は、すで にこの部会で検討されて、大学側がそういう案を持ってきていただけたということで、 私はこの部会長として心底感謝感激なのですが、これがうまく実施されることを願いな がら、この中間まとめの案でこういう点が足りないのではないか、もう少しこういう点 を詰めるべき、こういう点を加えるべきという点があれば、事務局のほうにお寄せいた だいて、何とかここで中間まとめを出したいと思っていますので、よろしくお願いいた します。  それでは最後に、日程についてお話しいただけますか。 ○医事課長  次回の日程は4月5日(金)の午後に開催させていただきたいと思っています。ただ いま部会長から中間まとめについて話がありましたが、そのような議論をお願いしたい と思っていまして、委員の皆様にはよろしくお願いを申し上げます。 ○矢崎部会長  下村会長、最後まで。 ○下村氏  初めて出て来て今日ような話を聞いて、ちょうどまとめのような話だったのですが。 これをまとめたら厚生労働省がこの提案に沿って具体案を実行するのですね。 ○矢崎部会長  この部会ではそういう答申を出すということですから、あとは大学側と厚生労働省管 轄の病院でそれに沿って、研修プログラムからプログラムの公開までタイムスケジュー ルで。 ○下村氏  あと2年ですよね。 ○矢崎部会長  ただ、平成16年から全部やるというのは、いま80%の人が大学でやっていて、そこが 非常にいまの理想論と懸け離れた、例えばたくさんの研修医を抱えている大学病院があ りますが、それを一挙にこの方向に転換するというのは難しいので、やはり何年間の猶 与期間をおきながら、最終ゴールに向かってやっていただくということになるかと思い ます。 ○磯野委員  私も心配なのは、いちばん最後の点1つ取っても、「研修医の処遇の改善、財源を確 保する」というだけでまとめられています。それではこれをどういう形で議論したかと いうこともなく、研修医に対して財源をどうするかとか、いくらぐらいが適当かとか、 議論ひとつしてないのです。 ○矢崎部会長  財源を取ってくるようにお願いをするという。 ○下村氏  今日出たところでも、医師会は保険から出すのは絶対反対だとおっしゃる。 ○磯野委員  確保するというまとめだったら、どういう形で確保していく方向に持っていくのか、 さらにどのくらいのものが必要なのか云々という具体案を1度も議論していなくて、最 後にまとめで「確保する」というのだったらいままでのとまるで変わらないのですよね 。 ○矢崎部会長  でも先生、そう言っても随分大学は変わりましたよ。 ○宮城委員  委員の間では本当にディスカッションしてないのですよ。しかも非常に大事なことを 委員間でまったく討論していません。例えば定数の問題にしても、受入施設についても 、施設基準についても、1度も議論していないし、私はこれからだと思っているのです 。 ○矢崎部会長  そうです。 ○宮城委員  ですからここで「まとめ」というのは。 ○矢崎部会長  「中間まとめ」です。 ○宮城委員  ヒアリングだけをこの何カ月間やってきただけで、委員の間では細かい議論はまった くありません。 ○矢崎部会長  そういう意見も含めて。 ○山口委員  会長おっしゃったのは中間とりまとめは柱立てという理解でいいわけですね。ああい う柱立てに沿って、いまから議論をしていく、こう理解をするといいのですよね。 ○宮城委員  ヒアリングとしてはこういうことが出てきたというまとめですよ。 ○矢崎部会長  いま言ったのは、これまでの議論の主たる論点概要ですから、それのまとめですから 。 ○磯野委員  議論というよりもヒアリングを今日までやったというわけですよね。ヒアリングにす ぎない、それに徹したと思うのです。これをまとめという形にしてまで、医道審議会の 今後の方針はありますか。 ○医事課長  私どもとしてはこれまでのヒアリング、それに伴うその後のディスカッション等を含 めて、ただいま部会長からおまとめがあったような基本的な方向性が相当に明確に示さ れたものと思っています。したがって、そうは言ってもその方針は具体性がない部分も あるので、実施可能性という部分、財源の問題、これはいつの時点で決着するのかとい う問題もありますが、そういうことも含めてこれから事務的な作業を詰めたいと思って います。然る後にまた事務的作業の結果についてお諮りしたいと考えています。 ○宮城委員  施設基準の問題とか、定数の問題とか、生活保障の問題とか、指導医の手当とか、施 設に対する補助金の問題とか、細かい議論をこれから1つひとつ討論するのですね。 ○矢崎部会長  それはもう十分、それはずっと前から討論しているのですが。 ○宮城委員  具体的には1度も話をしたことはありません。 ○矢崎部会長  この部会ではやっていないのですが。私は学部長のときには厚生省と談判して、この ぐらいの予算がなければ我々は引き受けないと頑張ってきたわけですが、いまはもう法 制化されてしまっているので、平成16年にどのようにうまく混乱をなくして、実施され るようにするかということを考えていかないといけないですから。 ○宮城委員  細かい詰めをしていかないと混乱が起こるのではないですか。 ○矢崎部会長  まずいちばん大きな問題は、やはり大学病院の先生方がどういう対応をするかという のが問題で、今回大体議論された方向に。 ○中野委員  ちょっと違うような気がするのです。大学という1つの職域なり場所というのが目立 ちすぎるのが、この部会の最初からの欠点で、わかりやすいからという話はわかるし、8 0%が入っているからというのもわかりますが、部会を構成している皆さんと一緒に共 有体験を持って、共有責任を持つ立場で参加している私としては、一生懸命やったとい う自己満足ではありませんが、粛々とこなしたという、これぐらいのお土産ではこの部 会から去るわけにはいきません。  例えばどこまでいくのかわかりませんが、政治にどう踏み込むかとか、ホームページ に対するアクセスがどうであって、どのような世論の情勢に役立っているかとか、あれ これストラティチックにやることがあるのではないか、そのこと自体を話題にしてもい いのではないか、こういうプロセスはあってもいいと思います。 ○矢崎部会長  次回にそういう意見をまとめて議論をしたいと思うので、よろしくお願いします。今 日はどうもありがとうございました。 ※ 第11回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会は、4月22日(月)に延期 となった。                        照会先                         厚生労働省医政局医事課                         電話03−5253−1111                           内線 2563,2568