02/03/14 第2回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会         第2回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会                  日時  平成14年3月14日(木)                      10:00〜                  場所  中央合同庁舎第5号館専用第21会議室 ○櫻井部会長  委員の皆様お揃いのようでございます。ただいまから第2回労働政策審議会安全衛生 分科会じん肺部会を開催いたします。  本日は、工藤委員から欠席とのご連絡をいただいております。また、労働者代表の柴 垣委員に代わって新しくじん肺部会の委員に就任されました全国セメント労働組合連合 会委員長の谷本勝美委員からもご欠席という連絡をいただいております。  しかし、労働政策審議会令第9条に規定する定足数を満たしておりますので、この部 会が成立していることをご報告申し上げます。  そのほかに委員の交代がございましので、ご紹介いたします。使用者代表の森山委員 が退任され、川崎製鉄株式会社取締役の南波佐間義之委員が就任されました。  次に事務局の安全衛生部長、労働衛生課長がそれぞれ交代しております。播安全衛生 部長、上田労働衛生課長です。続きまして、事務局から今日の資料の確認をお願いいた します。 ○労働衛生課長  それでは、皆様のお手元の資料ですが、1枚目が「次第」です。次に座席表、次が本 部会の委員の方々の名簿でございます。資料番号bPが「平成12年じん肺健康管理状況 」資料番号bQが「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会」関連資料と なっております。  資料番号bPを1枚開けますと、「じん肺健康診断実施結果の推移」次の頁が「随時 申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移」となっています。資料番号bQは1枚開 けますと、「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会」のメンバーの名簿 、その検討会におけるこれまでに至る経緯などが、それから同検討会の検討状況という 形で構成されています。もし不足の点がございましたら、事務局までお知らせください 。 ○櫻井部会長  特段不足の方もいらっしゃらないようですので、早速、今日の議題に移ります。今日 の議題は報告ということです。報告案件が2件ございます。まず最初は、平成12年じん 肺健康管理状況について、事務局から説明をお願いいたします。 ○辻村主任(中央じん肺診査医)  それでは、資料番号bPに基づきまして、平成12年じん肺健康管理の状況についてご 報告申し上げます。平成13年のデータについては今月いっぱいで集計する予定ですので 、平成12年の数字がまとめた直近の数字ということで、平成12年についてご報告させて いただきます。  まずじん肺健康診断の結果ですが、適用事業場数4万7,306、粉じん作業従事労働者数 35万427、じん肺健康診断実施事業場数1万6,868、じん肺健康診断実施労働者数18万7,3 23という状況になっています。  このじん肺健康診断が行われ、有所見が疑われるということで都道府県の労働局長に 上がってきて管理区分の決定がなされたものがその下の表です。有所見者の合計が1万2 ,053。内訳は管理2と決定された労働者が1万610、管理3が合計で1,421。そのうち管 理3のイが951、ロが470です。管理4が22となっています。合併症り患件数については2 4件となっています。これがじん肺健康診断の結果です。  次に平成12年における随時申請にかかるじん肺管理区分決定の状況ですが、管理区分 件数が3,223。うち有所見者の合計が2,474。内訳として管理2が1,226、管理3が合計で 884、管理3の内訳は、管理3のイが373、管理3のロが511です。管理4については364 となっています。全体として随時申請の管理区分決定のうち、合併症り患件数が770と いう状況になっています。申し遅れましたが、表それぞれの下の括弧内に割合をパーセ ントで記載してあります。  平成12年中に合併症の療養を開始した者の内訳ですが、いちばん上の「じん肺健康診 断の結果」と同様の報告様式によって集計したものですが、療養を開始した者67となっ ています。内訳としては肺結核19、結核性胸膜炎5、続発性気管支炎18、続発性気管支 拡張症2、続発性気胸23という状況になっています。  平成12年のじん肺健康診断の結果、1ですが、合併症のり患数は24件で、療養を開始 した数については67ということで、正確な理由は個別には把握していませんが、多くが 労災の補償の申請が認められ、それに併せて12年中に療養を開始したという報告の事例 が多数と推測しております。以上が平成12年じん肺健康管理状況です。  次の頁は、じん肺健康診断実施の結果の昭和55年から平成12年までの年次推移を表に 記載してあります。平成12年の適用事業場数、粉じん作業従事労働者数等は、1頁目の 数字と対応するものです。それらの数字について昭和55年から推移を記載したというこ とです。昭和55年現行のじん肺法が改正され、昭和55年以降、同じような基準で統計が とられています。  適用事業場数については、昭和55年3万4,780から平成12年4万7,306という推移で、 その記載にもありますように、増加傾向にありますが、最近数年については適用事業場 は減っているという状況です。  粉じん作業従事労働者数については昭和55年から減少傾向です。それに伴い、じん肺 健康診断事業場数、あるいはじん肺健康診断受診者労働者数についても減少という傾向 を見せています。  次に新規有所見労働者数および新規有所見者発生率ですが、昭和55年新規発生者が6,8 42となっておりますが、平成12年については367ということで、年次推移を見ても激減 しているという状況です。新規有所見発生率については、じん肺健康診断受診者数から 以前に有所見と言われた方を除いて新たに発生した方を加え、それを分母として新規有 所見者を割り返したということで、新しく発生した方がどのぐらいの割合かという指標 ですが、昭和55年3%が、平成12年0.2%となっています。  右半分にそれぞれじん肺管理区分決定の割合、内容を管理1から管理4に分けて記載 してあります。それぞれ管理2、管理3、管理4と重症化した管理区分については、概 して割合が減ってきているという状況です。  合併症り患数についても同様に減ってきているという状況です。いちばん右に有所見 率、有所見者が、じん肺健康診断受診者数の中にどのぐらいを占めるかということです が、その割合も昭和55年の16.3%から平成12年の6.4%というように減ってきています。  なお平成12年の報告をさせていただきましたが、平成11年、12年の1年間の比較をし ますと、ほぼ同様な状況ですが、新規発生有所見労働者数については、若干ですが、減 る傾向を示しております。じん肺健康診断実施の推移については以上です。  次の頁は、「随時申請によるじん肺管理区分決定件数等の推移」です。これも同様に じん肺法が改正された昭和55年から平成12年までの数字を記載してあります。随時申請 のじん肺管理区分決定件数の総数ですが、昭和55年4,300件から平成12年3,223件という ことで、前の頁の数と比べて、若干減る傾向はありますが、近年については、特に横這 い状況です。  管理区分決定の内訳ですが、健康診断に比べて、随時申請による決定内容については 、有所見者の数、あるいは管理3、管理4の者の割合が多いということです。有所見者 数についても、昭和55年4,060から平成12年の2,474と若干減る傾向にはありますが、前 の頁の減少傾向と比べて、減少の割合が非常に少ないということです。  合併症のり患件数については、随時申請者における合併症の件数は高いという状況で 、平成12年は770件という状況です。以上が平成12年じん肺健康管理状況についての報 告です。 ○櫻井部会長  ただいま資料番号bPについて説明がありました。これについてご意見、ご質問があ りましたらお願いいたします。 ○田上委員  2、3点教えていただきたいと思います。平成12年の管理状況の報告の中で、合併症 のり患者の件数が24、随時申請は合併症り患者件数770という数値が上がっています。 合併症の療養開始した者の内訳67ということで報告されています。私の聞き落としかと 思いますが、67といまの24、随時申請の770との関係がどういうところから67がきてい るのかということが1つです。  併せて随時申請の770の合併症り患者の内訳も合併症になっているわけですから、肺 結核から続発性気胸のそれぞれの内訳の部分があろうかと思います。その点について教 えていただければ有難いと思います。  もう1点は、じん肺健康診断の実施結果の推移の点についてですが、大変順調に改善 され、減少していることは、これまでの努力の成果だと評価されます。1つだけ気にな るのは、対象労働者数がこれだけ減少しているにもかかわらず、適用事業場数がさほど でもない、逆に増加しているというのがあります。この付近の背景をどのように捉えて いるのかを教えていただければと思います。 ○辻村主任  まず1点目の合併症の数の問題ですが、正確には把握しておりませんが、事業所から の報告は、前年、あるいはそれ以前に合併症という診断を受け、補償等で給付がなされ たということをもって合併症の治療を開始したという報告もあったのではないかと理解 しております。  随時申請は、主に労働者、あるいは元労働者であった方が、自らじん肺ではないかと いうことで申請してくる制度ですから、このうち770件が合併症であったということで す。この内訳について、どういう疾病だったかは集計してありませんが、正確な数字は ここで申し上げることはできませんが、続発性気管支炎が大きな部分を占めているかと 思います。  適用事業場があまり減らないのに対し、粉じん作業者が減っているという状況ですが 、粉じん作業適用事業場そのものは法定等であまり変化がないと考えております。しか しながら、そこに働く粉じん作業労働者については、機械化等でそこに従事する労働者 が減っていると理解しております。自動化等で相当の部分そこに直接かかわる労働者が 減っていると理解しています。 ○櫻井部会長  いまのお答でよろしゅうございますか。 ○田上委員  ありがとうございます。 ○櫻井部会長  ほかにご質問、ご意見ございますでしょうか。それでは、ないようでしたら、以上ご 説明いただいた件については、当部会として報告を承ったということにしたいと思いま すが、よろしいでしょうか。              (異議なしの声あり) ○櫻井部会長  引き続きまして、2番目の報告案件は、「肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関 する検討会」についてです。事務局から説明をお願いいたします。 ○辻村主任  それでは資料番号bQに基づきましてご報告させていただきます。「肺がんを併発す るじん肺の健康管理等に関する検討会」ですが、資料番号bQの1頁です。「趣旨、目 的」についてはけい肺の原因物質である結晶質シリカについて、内外の学会等の指摘が あります。それを受けて検討事項としてけい肺と肺がんの因果関係を検証するというこ とを受け、肺がん検査を含めたじん肺健康診断の在り方を検討するということで、検討 会をお願いしています。  構成については、学識者をもって構成するということで、次の頁に検討会のメンバー の名簿を提出しております。主に疫学関係の専門家、呼吸器に関係する内科、外科の専 門家、病理の専門家等にお入りいただいております。特に日本産業衛生学会のほうでご 見解をまとめていただいた関係で、中核的な役割を果たされた先生方にもメンバーとし て参加していただいております。  次の頁です。先ほど内外の関係学会と申しましたが、当検討会を発足させるに至った 結晶質シリカの発がん性の評価について、これまでの経緯を簡単にまとめてあります。1 997年国際がん研究機関(IARC)が結晶質シリカの発がん性について、グループ2 Aからグループ1というように評価を変えています。グループ2A、グループ1につい ては、下のほうに発がん性の分類を記載してあります。  一方、2000年11月については労働省の職業がん対策専門家会議の検討結果で、「シリ カの発がん性を的確に評価することは現時点では困難であり、シリカそのものの発がん 性については、引き続き情報収集に努めることが望ましい」ととりまとめられています 。  同時期に労働省の労災補償の関係から、「じん肺症患者に発生した肺がんの補償に関 する専門検討会」が報告をまとめており、以下、記載がありますように、「職業性の結 晶質シリカばく露者に発生した肺がんを石綿、コークス製造工程等と同様の労働基準法 施行規則別表第1の2の第7号「がん原性物質若しくはがん原性因子又はがん原性工程 における業務による疾病」に該当する業務上疾病として取り扱うには、根拠が不十分で あると判断せざるを得ない」というまとめをされています。  2001年4月ですが、日本産業衛生学会に属する「許容濃度に関する委員会」が、IA RCの1997年の見解を評価して、学会として発がん性の分類を第2群から第1群の評価 替えを行うという提案を、産業衛生学会の総会でしています。同学会は、当該の提案を 了承して、学会の通常とる方法として、1年間学会内外の意見を求めたあと、正式に学 会の見解として決定を行うとしています。以上のような結晶質シリカの発がん性に関す る評価の経緯がありました。  次の頁です。当検討会の検討状況については、平成13年7月3日に第1回目の検討会 を開催しています。議事の概要については、結晶質シリカの発がん性にかかる最近の知 見についてということで、前の頁に記載したようなことについてご議論いただいていま す。特に中心となるのは、日本産業衛生学会の見解がどのような過程で、どのような根 拠に基づいてなされたのかを、検討会の場で解説いただき、委員からご議論いただいた ということで、特に発がん性の評価に関して、喫煙の影響についてどのように評価した のか、考慮したのかということに主たる議論が行われました。  そういう議論を踏まえて検討会としての検討方針については、結晶質シリカの発がん 性について疫学的検討から着手することということで、第1回目の会議を終わっており ます。なお、会議については、原則公開ということを、検討会委員で申し合わせられて おります。  2回目は、平成13年10月11日に開かれており、第1回目で結晶質シリカの発がん性に 関して、いろいろな文献が出ておりますが、そのような文献を検討して、喫煙の影響が どのように評価されているかを、主に議論しています。そのような議論を踏まえて、さ らに今後の検討会としての検討方針については疫学的知見について、IARC、あるい は日本産業衛生学会が検討に際して使用した文献、さらにそのあと出た文献を含め、統 一的な観点、喫煙の影響評価はどのようになされているか、あるいは肺がんだったとい う診断がどのような方法でなされているか等、統一的な観点から文献を評価・分析する 。いろいろな文献をしっかり検討しようということを申し合わせています。第2回目の 検討会を踏まえ、現在、特に委員の中の疫学を専門とされる方を中心に、各文献を検討 中という状況です。肺がんを併発するじん肺の健康管理等に関する検討会の検討状況に ついては以上です。 ○櫻井部会長  ただいま検討会の検討状況の説明がありました。これについてご意見、ご質問があり ましたらお願いいたします。 ○町田委員  教えていただきたいと思います。的が外れているかもしれませんが、3月12日の新聞 で、じん肺の肺がんについて労災認定の枠を拡大したということで、管理区分3という ところまで新聞発表がされています。今日の中身には、それは触れられてないわけです か。 ○辻村主任  この検討会は、けい肺の原因物質の発がん性について検討するということで、一方で 労災補償の検討の観点から検討会が持たれており、そこで従来は管理4について補償す るということから、管理3まで拡大するという報告をいただいております。したがって 、観点が異なる検討会が同時に走っているという状況です。  なお、資料番号bQの3頁目ですが、2000年12月に補償の関係の報告書がまとめられ ましたが、これを受けて引き続き補償の観点から医療実践上の不利益、じん肺があれば 診断の遅れ等があるのかどうかという観点から検討がなされていたという状況です。そ の報告が先ほど委員が言われた管理3に拡大するという内容です。 ○櫻井部会長  そのほかに何かありますか。 ○中桐委員  これは質問なのか意見なのか整理できませんが、資料番号bQにもありますとおり、1 997年のIARCの指摘からこれが始まっているわけで、すでに5年を経過しています。 2000年11月の報告書のときも、この部会で報告があったと思いますが、動物実験等とこ こに記載があります。そういったもので結論は出ずに引き続き情報収集ということでし た。  今回の先ほどご説明のあった検討会についても、ホームページに議事録が出ています ので、拝見させていただきました。先ほどのご説明のとおり、喫煙者の問題についての 議論をずっとされています。前回の動物実験等とは少し視点が違うのかと思いますが、 この5年間、現実にIARCが「ヒトに対して発がん性である」という指摘をし、昨年 日本の産業衛生学会も同じ指摘をしています。それがあるからこそ、もう1回検討して いるというのはよく分かるのですが、5年間これを放置しているということは、いま議 論されている喫煙の問題にしても、「喫煙者であるからがんなのだ」と言わんばかりの 議論です。喫煙者であるからこそ余計がんの発生が多くなるというのは分かりやすいの ですが、現実にじん肺患者で肺がんを併発されている方は、管理3ではなく、管理2で もたくさんおられると聞いています。  そういった意味でこの間5年経っているわけです。現実にそういう方々が増えている ことについての予防措置はどうとられてきたのか。検討会の結論が出ない限り、予防は とれないのかどうか。前回の専門家会議の中で、適切なばく露対策をとれば発症しない のではないかという指摘もあったように思います。昨年隧道工事に関連して、その粉じ んについての対策をしているということですが、それも1つの対策かと思います。隧道 工事だけがばく露する場所ではありません。ほかの所も含めて予防についてどう思って おられるのか。先ほどご質問のあった補償課の所管の検討会の報告というのは、検討会 の専門家、事務局の方々が大変なご努力をされて、あそこまで実証されたということは 、私どもも高く評価いたしますし、敬意も表しますが、もう1つ大事なことは予防だと 思います。  じん肺それ自身も死に至る病ですし、合併症で肺がんを併発すれば、もちろん死に至 ります。そういう方々がどういう対策を受けながらこれまできたのか、今後もどうされ るのかを、少しこの部会として検討する責任があるのではないかと思いますので、これ までとってこられた対策等々について、今後どうされようとしているのか、検討会もい つごろ結論を出せるのか分かりません。世界の権威ある機関が指摘をし、ある意味では 日本のいちばんの学会だと思いますが、そこが指摘をしているにもかかわらず、まだ検 討されている。どこまで行けば認めるのかも含めてご説明をお願いしたいと思います。 ○辻村主任  委員ご指摘のとおり、1997年にIARCが評価替えをしております。それを受けて日 本産業衛生学会も4年後にしているという状況です。厚生労働省としては、シリカの発 がん性については、まさに現在専門家、産業衛生学会の中核の方にも入っていただき、 検討しているという状況です。  なお、じん肺は大変重篤な病気ですが、これについてはばく露対策に全力を挙げてい るという状況でございます。その結果として、新規発生者数については激減しています ので、大変効果はあると思いますが、なお徹底する必要があるという状況だと認識して おります。  なお、検討会については、先ほど申し上げましたとおり、いま鋭意検討を行っており ます。具体的に申しますと、内外の知見を非常に幅広く集め、疫学的な因果関係につい て検討していただいておりますので、一定の疫学的な考えをまとめて、この検討会で検 討し、対策が必要ならば対策、あるいは疫学的な結果をどう評価するかという作業に入 るべきものと考えており、数年かけて検討するといった性質のものではないと考えてお ります。 ○中桐委員  具体的にとられている対策を知りたいのが1点です、それから1つの危惧として、安 全と衛生の文化が日本はおかしくなっていないかという指摘は、ずっとこれまでされて きていると思いますが、私も職場を見ていて同感です。同じ所管というか、同じ厚生労 働省ですから申し上げますが、食の安全という意味での狂牛病を見ていても、EUの指 摘があったにもかかわらず放置していて発生したと報道されています。この問題もよく 似ているなという気がすごくするわけです。世界の権威が指摘をし、日本の権威が指摘 をしても、政府としては動いていない。すでに患者はたくさん発生しており、亡くなっ た方もたくさんいます。それにもかかわらず行政は何もしていない。一体誰が責任をと るのだろうということが起きるわけです。先ほどのようなご説明ですと、一体どういう 対策がされているのかというのがよく見えないのですが、あとから言ったことも含めて ご説明いただければ有難いと思います。 ○環境改善室長  予防対策については、基本的対策として「粉じん障害防止規則」という規則を昭和5 4年から施行してきています。  それと併せて、中期的な計画ということで、5年間の計画を過去何回か策定してきて おり、現在は、第5次の粉じん障害防止総合対策を推進しています。それを基本として ばく露防止対策、健康管理対策を進めています。  1例を申し上げますと、先ほど中桐委員からお話がありましたトンネル建設工事の粉 じん対策については、粉じん障害防止規則で講じるべき対策が決まっています。一方、 第5次の粉じん障害防止総合対策の中で、トンネル建設工事の粉じん対策を重点として 進めようということが明記されており、それを受けて平成12年12月にトンネル建設工事 の粉じん障害防止対策のガイドラインを出しました。単に法令で書いてあることだけで はなく、粉じんへのばく露防止のための具体的対策もその中で明記しています。  そのガイドラインについては平成13年以降、周知を図るとともに、現場で改善対策に ついての指導をしています。構造的には、粉じん障害防止規則で細かいいろいろな規定 が認められ、その中で5カ年間で重要視しなければいけないことについては、現在は、 第5次の粉じん障害防止総合対策に盛り込まれ推進しています。その中で特に重点を挙 げているような事項については、トンネルのガイドラインのような形で具体策を示して いるということです。 ○中桐委員  隧道工事の対策以外には、けい肺にかかわるような具体的にとられている対策はあり ますか。 ○環境改善室長  例えば、第5次の総合対策の中で、溶接作業についても重点として挙げられています 。溶接については、人が動き回りますし、風が吹くと品質に悪影響を与えるということ で、環境改善対策が非常にとりにくいわけです。そういうものについても、いままでの 局所排気装置ではなく、プッシュプル型換気装置という新しい方式のものが開発され法 令で認められた措置ということで、すでに規則の中に取り入れられています。 ○安全衛生部長  先ほどの全体の時系列で、新規のじん肺の発生の方は減ってきているということは、 大きな傾向ですが、その後の先生方からのご質問でも随時申請をどう捉えるのか、ある いは事業場数が、十数年前に比べると増えているという見方もできて、私どもは全体と してじん肺の数は減っているが、じん肺の実相、たえず新しいじん肺のようなものがあ るのかどうか、あるいはじん肺の姿が変わってきているのか、これは心して見なければ いけないと心得ているつもりです。いまごろ何を言うのかと思われるかもしれませんが 、随時申請とか事業場数の増加などは、より一層掘り下げて見ることによって、実相を 見失わないようにしたいという考えを持っています。  私も事務屋ですから、全く検討の内容は分かりにくいのですが、中桐先生のお話にあ った検討会については、いわばこの分野の最も研究をされている方にお集まりいただい ており、しかも議論の公開性を極めて高めるという中で、審議を急いでいただいている と承知しております。誤りなきを期すために公開性を高めるということを申し合わせて いただいていると承知しております。 ○中桐委員  最後にもう1点だけ申し上げますが、検討会の内容についてホームページで拝見した と申しました。日本という国の問題だと思いますが、途上国中心に職業病というものは あまり認めないというか、認めたがらないという傾向があると思います。最近は日本も そうなのではないかと思いますし、そうおっしゃる専門の方々もおられます。シリカの 問題を見ている限り、本当に前向きに認める気があるのだろうかという気がすごくする わけです。初めての検討会ではありませんし、前回の検討会も拝見しました。  先ど狂牛病の話も出ましたが、責任というのは、行政において大変大きな問題ですし 、また聞くところでは、今年ILOの安全衛生の世界会議がありますが、次回は日本へ の招致もお考えだと聞いております。そのような発想をされるのなら、世界に日本の職 業病対策、作業関連疾患も含めて、特にじん肺を見る限りでは、「これだけ進んでいま す」と言えるような実状でしょうか。その辺がどうなのか、そんなに世界に日本にいら っしゃいなどと言えるのでしょうかと、これを見る限りでは思うわけです。  そういった意味で検討会の方々の文書しか読んでいませんが、前回の報告書を拝見し ても、職業病というものを積極的に取り上げて研究しよう、認めようというようにはと ても見えないというのが、私どもの実感でして、今回はそうならないように要望として 申し上げます。その間にも患者の方々は発生しているわけですから、発がん性であるな らば大変なことになります。そのリスクは大変あることを考えて、早期に結論を出して いただきたいと要望したいと思います。 ○櫻井部会長  ご要望として承るということでよろしいでしょうか。 ○中桐委員  はい。 ○櫻井部会長  そのほかご意見、ご質問はいかがでしょうか。  それでは、ほかに特にないようでございますので、ただいままでの説明の内容につき まして、当部会として報告を承ったということにしたいと思いますが、よろしいでしょ うか。               (了承の声あり) ○櫻井部会長  ありがとうございます。1番目の議題が終わりまして、「その他」ということですか 、何かご意見、ご質問ございますでしょうか。この前の議題に関連して出していただい たということでしょうか。それでは、特段ないようですので、今日の会議を終了したい と思います。  なお議事録についてですが、労働政策審議会運営規定第6条第1項によりまして、議 事録には部会長の私と私が指名する委員お二方が署名することになっております。誠に ご面倒でございますが、慣例で署名は労使代表1名ずつとなっております。今日の議事 録の署名を田上委員と北田委員にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいた します。  それでは、皆様お忙しい中、ありがとうございました。これで終わりといたします。             ┌─────────────────────────┐             │照会先;労働基準局安全衛生部労働衛生課      │             │    じん肺班  佐々木、小笠原(内線5493)│             └─────────────────────────┘