02/02/20 薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会 平成14年2月20日議事録 薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会 議事録 1.日時及び場所   平成14年2月20日(水) 14:00〜   医薬品医療機器審査センター第2会議室 2.出席委員(10名)五十音順  ◎池 田 康 夫、 上 原 至 雅、 川 嵜 敏 祐、 小 池 克 郎、   菅 谷   忍、 早 川 堯 夫、 藤 上 雅 子、○堀 内 龍 也、   三 瀬 勝 利、 吉 村   功 (注) ◎部会長 ○部会長代理   他 参考人1名   欠席委員(7名)   板 倉 ゆか子、 垣 添 忠 生、 神 谷   齊、 木 村   哲、   後 藤   元、 小 室 勝 利、 溝 口 昌 子 3.行政機関出席者   鶴 田 康 則(大臣官房審議官)、 池 谷 壮 一(審査管理課長)、    黒 川 達 夫(安全対策課長)、   豊 島   聰(医薬品医療機器審査センター長)    姫 野 孝 雄(医薬品医療機器審査センター企画調整部長)、    平 山 佳 伸(医薬品医療機器審査センター審査第一部長)、   山 本 弘 史(医薬品医療機器審査センター審査第二部長)、   橋 爪   章(医薬品医療機器審査センター審査第三部長)  他 4.備  考   本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。 ○審査管理課長 それでは定刻になりましたので、医薬品第二部会を開催させていただ きます。本日はお忙しい中御出席いただきまして、誠にありがとうございます。委員数 17名中現在9名の御出席をいただいておりまして、後ほど菅谷委員がいらっしゃいます ので10名となりますので、過半数を超えていることを御報告させていただきます。本日 は議題1におきまして、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構顧問の梅田先生にお 越しいただいております。梅田先生、よろしくお願いいたします。それでは部会長、よ ろしくお願いいたします。 ○池田部会長 それでは早速本日の議題に入りたいと思います。本日は審議事項が四つ ですが、議題1〜3は一括して審議をいたしますので、実際には議題は二つということ であります。事務局の方から資料の確認と資料作成に関与された委員の報告をお願いい たします。 ○事務局 それでは事務局より資料の確認をさせていただきます。資料1〜9までのう ち資料7については少し遅れましたが、これが事前に先生方にお送りした資料でござい ます。報告事項の議題2〜7まで、資料4〜9までがバイオテロ対策に関する品目であ りまして、今回の部会に報告できるよう迅速処理を行ったのですが、資料の作成が通常 の資料発送に間に合いませんでした。ここにおわび申し上げます。席上配付資料といた しましては、番号の付いていない3枚ですが、議事次第と部会の委員名簿、それから座 席表がございます。それから番号の付いたものといたしまして、「厳重管理」の印が押 してあります資料1-1が最初の議題に関する承認条件についてでございます。この内容 については審議の際に御説明申し上げます。それから資料7はバイオテロに関する品目 の中で一品目資料の作成が遅れまして、当日配付資料として置かせていただきましたバ クシダール錠に関する資料でございます。それから資料10は毎回お配りしております が、今回審議される品目の分科会における取扱い、それから毒薬・劇薬の指定に関する 資料でございます。それから資料11といたしまして、専門協議に御参加いただきました 専門委員の名簿でございます。  それから平成13年1月23日の薬事分科会申合せに基づき、資料作成に関係された委 員の確認でございますが、議題4の医薬品パシル点滴静注液等につきまして、池田部会 長が関与されております。申合せによりまして、池田部会長には議題4の審議では席を 外していただき、議事進行につきましては堀内部会長代理にお願いいたしたいと思って おります。よろしくお願いいたします。 ── 菅谷委員着席 ── ○池田部会長 どうもありがとうございました。ということですので、議題4について は堀内先生にお願いしたいと思います。それでは早速審議に入りたいと思いますが、最 初の議題につきまして、審査センターの方から審査概要の説明と後ほど梅田典嗣先生か らそれについての御説明をいただきたいと思います。初めに審査センターの方からお願 いいたします。 ○事務局 それでは議題1のオメプラール錠10他、議題2のクラリス錠200他、議題3 のパセトシンカプセル他の承認の可否等について審査センターより御説明いたします。 資料番号は資料1になります。  オメプラゾールはプロトンポンプ阻害薬であり、国内では平成3年に胃潰瘍、十二指 腸潰瘍などの適応について承認されております。クラリスロマイシンはマクロライド系 抗菌薬であり、国内では平成3年に承認されております。アモキシシリンは経口用ペニ シリン系抗菌薬であり、国内では昭和49年に承認されております。本申請は3剤併用に よるヘリコバクター・ピロリの除菌について申請がなされたものであります。消化性潰 瘍の再発抑制にヘリコバクター・ピロリの除菌が有効とされ、オメプラゾール、アモキ シシリン、クラリスロマイシンの3剤併用療法は欧米において標準的治療法とされてお ります。なお、国内では一昨年9月にランソプラゾール、アモキシシリン、クラリスロ マイシンの3剤併用によるピロリ除菌療法が承認されております。 本申請の専門委員としては、井上委員、岩田委員、梅田委員、奥村委員、後藤委員、佐 藤委員、正田委員、林委員、山口委員、吉村委員、渡邊委員を指名いたしました。  審査センターは、毒性及び薬理については特段の問題点はないものと判断しておりま す。 有効性については、胃潰瘍・十二指腸潰瘍を対象とした4本の海外第III相二重盲 検比較臨床試験及び1本の国内第III相二重盲検比較臨床試験から、除菌率は90%前後で あり、有効性は認められるものと判断いたしました。  用法・用量については、ブリッジング試験とされた国内第III相臨床試験において、海 外の臨床用量であるオメプラゾール1日40mg、アモキシシリン1日2000mg、クラリスロ マイシン1日1000mgの用量と、海外と国内における薬物血中濃度から設定されたオメプ ラゾール1日40mg、アモキシシリン1日1500mg、クラリスロマイシン1日800mgの2用 量で検討が行われ、除菌率はいずれも80%前後で同程度の有効性が示されました。これ らの結果から、用法・用量はオメプラゾール1日40mg、アモキシシリン1日1500mg、ク ラリスロマイシン1日800mgと設定されました。  安全性については、国内臨床試験における申請用量での有害事象発現率は66.4%とや や高いものの、その内容は下痢や味覚障害など重篤でなく可逆的なものであったこと、 また、1週間の短期間投与であることから、臨床現場において許容される程度のもので あると判断いたしました。  市販後においては、耐性菌の出現に関するモニタリングとオメプラゾール代謝遺伝子 多型の除菌率に及ぼす影響に関する調査が必要であると考えております。また、本日お 配りいたしました資料1-1にございますとおり、安全性に関する市販後調査を実施する ことを承認条件とすることが適当と考えております。なお、アモキシシリン、クラリス ロマイシンに関しては、ランソプラゾールとの3剤併用療法の承認の際に、安全性及び 耐性菌出現に関する承認条件が既に付されております。  以上のような審査の結果、3剤併用によるヘリコバクター・ピロリ除菌の有効性及び 安全性は認められると審査センターは判断いたしました。また、本申請は新効能又は新 用量医薬品であることから、再審査期間は4年とすることが適当であると判断いたしま した。また、薬事分科会には報告を予定しております。御審議よろしくお願いいたしま す。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは早速ですが、ただいまの審査センタ ーの説明も踏まえて、梅田典嗣先生からお話しいただけますでしょうか。 ○梅田専門委員 ヘリコバクター・ピロリHelicobacter pyloriは現在のところ胃潰瘍、 十二指腸潰瘍の主な原因として、大体9割ぐらいを占めるだろうと言われております。 また、発癌の原因の可能性もあるということで、過去十数年間広く議論されているとこ ろであります。そういうことから胃の粘液中に存在するヘリコバクター・ピロリを除菌 することによりまして、再発率が極めて低くなることが証明されてまいりました。その ようなことから最近広く用いられるようになってきております。既にランソプラゾール とアモキシシリン、及びクラリスロマイシンという組合せで2年くらい前に承認されて おりますが、オメプラゾールも同じプロトンポンプ阻害剤として多数の治験がございま して、ヘリコバクター・ピロリ除菌に3剤併用で非常に効果があるということが証明さ れましたので、今回ここに出させていただいております。  現在分かっていることは除菌が完成した後、例えば胃潰瘍の場合ですと最近では胃潰 瘍の再発率というのは普通は2年間で66%ぐらいなのですが、それが16%ぐらいに落ち ているということ、十二指腸潰瘍においては同じく3分の2は再発するのですが、やは りもっと良くなって1.6%ぐらいまで再発率が落ちるということから、除菌療法が非常 に賞用されるようになっておりまして、最近では一般の開業医でも行われるようになっ ております。我々としても是非これは推進していきたいと考えている療法でございます。 また後で質問がありましたらお答えいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは梅田先生からも御説明いただきまし たけれども、委員の先生方から何か御質問ございますでしょうか。既にランソプラゾー ルに関してはアモキシシリンとクラリスロマイシンで、ピロリの除菌について3剤併用 で認められていると。ランソプラゾールのほかに、同じプロトンポンプインヒビターの オメプラゾールではというお話でございます。御質問はいかがですか。 ○堀内部会長代理 この除菌の場合に胃内のpHが大変重要であり、オメプラゾールの 代謝酵素はCYP2C19によってかなり大きな影響を及ぼすということが最近報告されてい ると思います。特に日本人の場合ですと、CYP2C19については20%ぐらい変異を持って いるということですので、その辺の関連についてお伺いしたいと思います。 ○梅田専門委員 まずそれからお答えいたしますと、EM(Essential Metabolizer)とP M(Poor Metabolizer)がありますが、日本人は結構EMが多いですね。それは浜松医大 のグループからも報告されておりまして、確かにそういうものがある場合には効きが悪 いということがあるのですが、データではEMの患者でも十分除菌ができているという ことで、臨床上EMとPMではそれほど差がないというふうに報告されております。 ○堀内部会長代理 そうですか。差がないのというのは、どのようなデータから差がな いというのでしょうか。 ○梅田専門委員 除菌率ですね。 ○堀内部会長代理 例えば除菌率が7〜8割のものと、100%のものとの違いはいかがで しょうか。 ○梅田専門委員 そこまでは行きません。ここにも書いてありますけれども、最近では 耐性の問題がございます。前は10%以下だったのですが、オメプラゾールのときに是非 やってくださいということでやってもらったところ、16%ぐらいの耐性率なのです。耐 性があるとやはり効かないのです。そういうことがありまして、有効率が下がってきて いるというのが現状だと思います。 ○堀内部会長代理 そうすると、CYP2C19のことについては添付文書等に特に記載をす るほどのことではないということですね。 ○梅田専門委員 そう思います。 ○池田部会長 そのほかにいかがでしょうか。診断基準のことなのですが、今非常に簡 単にできるものですから抗体を測定したりいたしますね。ですから、その辺で診断基準 に少し変化が現れたり、当初ランソプラゾールが承認されたときと比べて診断に関して 少し変化があるということはございませんか。 ○梅田専門委員 現在ヘリコバクター・ピロリの診断というのはほとんどの場合、「ゴ ールドスタンダード」というものがありまして、最初の内視鏡検査をやったときに生検 をやりまして、その生検の組織を用いた迅速ウレアーゼテスト、胃粘膜組織中のピロリ 菌を証明する鏡検法、それから培養の三者が陽性の場合を「ヘリコバクター・ピロリ陽 性」としているのです。実際に主に使われているのは迅速ウレアーゼテストで、その確 診率が90%前後です。ヘリコバクター・ピロリの除菌が完成したかどうかを見るのは、 迅速ウレアーゼテストをやる場合もありますが、多くの場合はUBTという呼気テスト でやっておりまして、これもやはり90%ぐらいの確診率がございます。  問題は今おっしゃった抗体の件ですが、抗体というのは御存じのようにあくまで前に 感染があったということでございますから、今認可されている要件というのは、抗体法 を用いた場合にそれによって6か月後に抗体価が著明に下がる、その場合に除菌が完成 したという判定がされております。ですから、一般的には抗体法というのは余り使われ ていないと思います。ただ、除菌が完成したかどうかを見るのは普通は4週以上なので すが、偽陰性ということもまれにございますので、安全域を考慮して6週後ぐらいの方 がいいのではないかというふうに消化器病学会などでは考えております。一方、日本ヘ リコバクター学会は4週以降をもって判定の条件とすることになっております。 ○池田部会長 ありがとうございました。一回目で除菌がうまくいかなかった場合に追 加してやるということについては、何かコンセンサスがありますか。 ○梅田専門委員 二度やっても余り意味がないと思いますので、その場合には開業医や 一般病院では無理ですから、その場合耐性テストをきちんとやりまして、耐性がなけれ ばメトロニダゾールを入れた療法を使うのが一般的でございます。 ○池田部会長 ありがとうございました。そのほかに委員の先生方から御意見はござい ませんでしょうか。どうぞ、小池先生。 ○小池委員 これの適応は「胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ の除菌の補助」となっているのですが、保菌者で健常人といいますか、潰瘍になってい ない人にこれを用いることはできないのですか。 ○梅田専門委員 現在のところは認められておりません。ただ、やはり同じヘリコバク ター・ピロリの中でも発癌に関係している可能性のある菌があるものですから、将来的 にはそういうものが研究されて適応になってくる可能性はあると思いますが、現在のと ころは潰瘍性疾患だけでございます。 ○池田部会長 実はその点に関してなのですが、今難病で血小板減少性紫斑病という病 気があるのですが、その患者さんにヘリコバクター・ピロリの除菌をしますと血小板が 上がってくるという報告が米国からも日本からも出てきているのです。しかもその方た ちは必ずしも潰瘍ではないのです。これはもちろん潰瘍の患者さんを対象にして許可を されているのですが、今おっしゃったように、そういう使い方がひょっとして起こって くるのでないかと思うのです。 ○梅田専門委員 当然起こってくると思います。特に慢性胃炎の患者、慢性胃炎という のはやはりヘリコバクター・ピロリ感染によるものでございまして、特に幼児期に初感 染する場合が多いとされています。日本人には極めて多くて、大体60歳以上で6割以上 持っています。それに対してアメリカでは非常に頻度が低いのです。結局それが胃癌の 発癌率の差になっているのだろうという推測をされていますし、また、最近日本では上 村直美先生がヘリコバクター・ピロリに感染した患者と感染していない患者の長期経過 を追いまして、ピロリに感染していない患者では癌は起きないという報告が、2001年の 「The New England Journal of Medicine345:784,2001」に出ています。そういうことも 一つのきっかけになって、そちらの方の研究が今非常に進んでいる最中なのです。です から将来的には多分胃炎も適応になってくる可能性があります。ただ、我々が一番問題 にしているのは、ここで申し上げていいかどうか分かりませんが、ヘリコバクター・ピ ロリというのは大体が経口感染ですから、例えばバングラディッシュなどの不衛生な所 ではせっかく除菌しても再感染してしまう可能性があります。日本の場合に問題になる のは、やはり内視鏡機器を通じて再感染が起きる可能性が高いということがありまして、 最近では内視鏡の洗浄というのが非常に重視されてきております。そういうこともあり まして、私は内視鏡が専門なのですが、内視鏡学会からは相当費用がかかるのでそれだ けは認めてくれるようにということで、厚生労働省を含めて疑義解釈委員会で要望を出 している最中です。 ○池田部会長 当然のことながら、再感染は十分に起こり得るということですね。 ○梅田専門委員 あり得ることです。ですから再感染させないようにするのです。 ○池田部会長 そのほかにいかがでしょうか。 ○梅田専門委員 その点では、例えばバングラデッシュの報告が最近の Gastroenterologyという雑誌に出ていまして、バングラデッシュでは除菌をやった後で その患者を追いかけたところでは、大体30%が再感染しているという報告でございます。 ○池田部会長 そのほかにいかがですか。それからクラリスロマイシン耐性のピロリ菌 が増えてきているというようなことは、あるいはそれの代謝…。 ○梅田専門委員 先ほど申し上げたように、今回のオメプラゾールのときで大体16%で す。つい最近までは10%だったのです。なぜそのようなことが起こるかというと、主に は呼吸器疾患の治療に起因している可能性があります。クラリスロマイシンの低用量の 長期投与ということを呼吸器科でやっているものですから、それが原因の一つではない かと思っています。 ○池田部会長 ありがとうございました。委員の先生方から何かございますでしょうか。 添付文書と資料1-1として配られました承認条件について、何か御意見を頂けますでし ょうか。今回オメプラゾールが認められるに当たって、ここに記載されました承認条件 を付すことが適当であるということで、市販後調査によって安全性のデータを集積しな さいということでございます。よろしいですか。添付文書についても特に御意見はござ いませんでしょうか。もしないようでしたら、これはランソプラゾールでも十分に議論 されましたし、それから同じような条件でオメプラゾールもお認めいただくということ でよろしいでしょうか。もし御意見がなければ承認を可とさせていただいて、薬事分科 会へ報告とさせていただきたいと思います。梅田先生、お忙しいところをどうもありが とうございました。 ── 梅田専門委員退席 ── ○池田部会長 これで議題1〜3を終わらせていただきます。次に議題4ですが、先ほ ど事務局から御説明がありましたように、私は関与委員ということなので、この議事の 進行は堀内部会長代理にお願いしたいと思います。先生、よろしくお願いいたします。 ── 池田部会長退室 ── ○堀内部会長代理 それでは議題4について、池田先生の代わりに進行を務めさせてい ただきます。本議題につきまして、審査センターから審査の概要について御説明をお願 いいたします。 ○事務局 議題4、資料2のメシル酸パズフロキサシン、パシルM、パシル点滴静注液 300mg、同500mg、パズクロス注300、同500の承認の可否等について、審査センターよ り御説明いたします。  メシル酸パズフロキサシンは、富山化学工業株式会社により合成されましたパズフロ キサシンをメシル酸塩とし溶解性を向上させたものであり、富山化学工業株式会社とミ ドリ十字(現 三菱ウェルファーマ株式会社)により共同開発された新規のニューキノロ ン系抗菌薬の注射剤であります。なお、パズフロキサシンにつきましては経口剤として の開発も進められ、平成□年に承認申請されましたが、GCP調査の結果GCP不適合 となり、申請が取り下げられております。  本剤の申請時点では、国内で承認されたニューキノロン系抗菌薬の注射剤はありませ んでしたが、平成12年にシプロフロキサシンが国内初のニューキノロン系抗菌薬注射剤 として承認されており、本剤が承認されますと同系薬注射剤としては国内で2剤目とな ります。 本剤の専門協議では専門委員として、井上委員、岩田委員、奥村委員、斧委員、折笠委 員、後藤委員、小西委員、谷本委員、林委員、渡邊委員を指名いたしました。  規格・安定性、毒性、薬理、ADMEについては、特段の問題点はないものと審査セ ンターは判断しました。  有効性については、細菌性肺炎及び慢性気道感染症をそれぞれ対象とした第III相比較 臨床試験において、臨床効果では対照薬であるセフタジジム群に対する非劣性が証明さ れているものの、細菌学的効果では菌陰性化率において対照群に比べ有意に劣っている という結果が得られております。この理由については肺炎球菌での菌陰性化率が低かっ たためとされ、肺炎球菌検出患者とそれ以外の菌検出患者に層別した解析が行われまし た。肺炎球菌以外の菌検出患者における菌陰性化率は細菌性肺炎で本剤群92.3%、対照 群100%、慢性気道感染症で本剤群74.1%、対照群85.7%と大きな差が見られなかった ことから、肺炎球菌以外の菌種による感染症に対しては有効性が認められると判断され、 肺炎球菌を適応菌種より除外するとの見解が申請者より提示されました。肺炎球菌を除 外するという解析は事後解析ではあるものの、ニューキノロン系抗菌薬は一般に肺炎球 菌に対して抗菌力が弱いことは周知の事実であること、肺炎球菌を除いた菌陰性化率で 差が見られなかったことから、審査センターは肺炎球菌を適応菌種から除外するという 申請者の見解を了承いたしました。  複雑性尿路感染症を対象とした第III相比較臨床試験においては、臨床効果で対照群に 対する非劣性が証明されました。細菌学的効果は菌陰性化率において対照群との統計学 的有意差は認められませんでした。その他、一般臨床試験において外科領域、産婦人科 領域の疾患についても有効性が認められております。  用法・用量については、第III相比較臨床試験が1日1000mgを2回に分けて投与する用 法・用量で実施され、対照群に対する臨床効果における非劣性が検証されていること、 同用法・用量において安全性に大きな問題が見られていないこと、また、高齢者や腎機 能低下患者では用法・用量の調節が必要となることから、「通常、成人には1日1000mg を2回に分けて点滴静注する。なお、年齢、症状に応じて適宜減量し1日600mgを2回 に分けて点滴静注する」としました。  安全性については、副作用発現率は3.4%、51件であり、その種類としては消化器症 状が21件と最も多く、重篤な副作用は報告されておりません。また、従来のニューキノ ロン系抗菌薬で問題とされてきた痙攣や意識障害などの中枢神経系症状や、光線過敏症、 ショック様症状等の副作用としての報告は認められませんでした。なお、臨床試験中に 16例の死亡例が認められておりますが、いずれの症例についても本剤投与との因果関係 はないと判断されております。基礎疾患が重篤であった症例が多かったことから、因果 関係は否定されておりますものの、適切な情報提供及び市販後の情報収集が必要である と審査センターは考えております。  また、本剤については配合変化を起こす薬剤、補液が多いことから、「原則として他 剤及び輸液と配合しないこと」とし、その旨を添付文書に記載し情報提供しております。 さらに、製剤のラベルにおいても注意喚起を記載しました。  本剤はニューキノロン系抗菌薬の注射剤として、泌尿器科領域の効能を有する初めて の同系薬注射剤であること、主軸となる呼吸器と尿路の2領域感染症の比較臨床試験に おいて主要評価項目である臨床効果で有効性が検証されていることから、審査センター は本剤を承認して差し支えないと判断しました。しかし、本剤は海外における使用実績 がないこと、経口剤としても広く使用された実績がないこと、国内ではニューキノロン 系抗菌薬注射剤に関する使用経験が少ないことを踏まえ、原則として一次選択薬として の使用は避けるべきと判断しました。さらに細菌学的検査を実施した後に投与すること、 原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること等 の投与対象を適切に選択する旨を添付文書に記載するよう指導しました。  以上のような審査の結果、本薬の有効性及び安全性は認められると審査センターは判 断いたしました。また、本申請は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は 6年とすることが適当であると考えます。なお、本薬は原体及び製剤共に毒薬又は劇薬 に該当しないと判断いたしました。また、薬事分科会には報告を予定しております。御 審議よろしくお願いいたします。 ○堀内部会長代理 どうもありがとうございました。シプロフロキサシンに続いて二番 目のニューキノロン系の注射剤ということだと思いますが、モダシンと比較をして臨床 試験は行われているということです。日本で開発されたニューキノロン薬です。先ほど お話がありましたように、GCP不適合で取り下げられているということで経口剤はな いということです。そのような特徴を持っていると思いますが、御審議をお願いいたし ます。この薬剤には経口剤がなくてGCP不適合ということですが、この経口剤自体が 問題ということではなくて、何が問題で取下げになったのでしょうか。 ○事務局 具体的にGCP不適合となった事項としましては□□□□□□□□□□□□ □□□□□□□□□、□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□、 データの信頼性ということからGCP不適合とされております。それが前期第II相試験 だったのですが、前期第II相試験が不適合だったためその後の試験全体が評価できない ということで取り下げられております。 ○堀内部会長代理 ということだそうでございます。特に効かなかったから取り下げた というわけではないということですね。御意見よろしいですか。どうぞ。 ○小池委員 一つちょっと気になったので質問しますが、このものの毒性のことで記載 されている中に、この薬の致死量と最大臨床用量の開きが10倍ぐらいと書いてあるので す。更にこのものを静注した後の血中濃度を見ていくと、ネズミから大型実験動物まで あるわけですが、大型になればなるほど血中濃度の持続が長い、血中濃度が高く持続さ れると。効き目に関してその方がいいのだろうと思うのですが、逆の見方をするとそれ だけ毒性も強くなると思うので、毒性に関してネズミを中心にしたデータで全部来てい るような感じがするのです。例えばその一つに光毒性試験などはマウス、モルモット、 ラットだけなので、大型になって、特にヒトなどではもう少し毒性が強く出るのではな いかと思うので、その辺については十分に検討をされましたか。 ○事務局 まず大型動物なのですが、大型になりますと技術的に投与が難しいことがあ ります。例えばサルなどでは安全域が4倍しかないということですから、これ以上投与 できなかったということで、投与できるものとして小型のマウス、ラットを使っており ます。それから先生が御指摘になりました安全域が10〜20倍しかないということです が、これはAUCよりもむしろCmaxが関連しているものでございまして、一時的に 大量に入ってCmaxが上がったためにそのような異常が出てきたということで、無毒 性量が低くなっているものです。実際にはAUCで見ますと安全域が22〜41倍となって おりまして、安全性は十分に確保できると考えております。  それから、光毒性につきましてはモルモットを使っておりますけれども、これはモル モットが一番感受性が高いということで、適切な動物としてモルモットを使って検討し ておりますので、これについて特にヒトでの光毒性は問題となる可能性は低いと考えて おります。 ○堀内部会長代理 小池先生、よろしいでしょうか。 ○小池委員 ヒトの場合に何か実際のデータはあるのでしょうか。ヒトでなくても大き な動物でイヌとかそういうものでも…。 ○事務局 イヌなどは皮膚が非常に厚くて、むしろモルモットなどよりも光毒性が出に くいということで実際には…。 ○堀内部会長代理 ニューキノロンの毒性とは光毒性あるいは相互作用によるもの、 NSAIDsとの相互作用による痙攣などいろいろなことが考えられますが、それは市販後で チェックをしながらやるということですね。現在では副作用の発現率は3.4%というこ とで、治験の段階では大きな副作用は現れていないということかと思います。ほかにご ざいますか。  臨床試験の比較をモダシンとやっているわけですね。本来ならばニューキノロン同士 で比較をして、同等性あるいは非劣性があるかどうかということを比較するのが妥当だ と思うのですが、市販されていなかったということで、現段階でシプロフロキサシン、 すなわち同じニューキノロン系の注射剤と比較してどんな特徴があるか、もし調べてあ れば教えてください。 ○事務局 堀内先生が今おっしゃったように、この時点ではシプロフロキサシンはまだ 発売されていなくて、シプロフロキサシンとの比較試験はされておりません。臨床試験 上は今回菌陰性化率でモダシンに負けてしまったという結果なのですが、シプロフロキ サシンも同様の結果になっております。どういう特徴があるかと申しますと、今回シプ ロフロキサシンにはない泌尿器科領域の効能が取れております。シプロフロキサシンは 臨床試験途中の段階で尿路感染症に対して余り有効性が見い出せないということから、 申請者から自主的に引き下げられた経緯がございます。パシルの方は尿路感染症におい て比較試験をして、臨床効果、細菌学的効果に有効性があるということで泌尿器におい て適応は通っております。その他の特徴としまして、同様に産婦人科領域にも適応が通 っておりますし、シプロフロキサシンよりたくさんの菌種が通っておりまして、セラチ ア、プロテウス、モルガネラ、プロビデンシア、アシネトバクター等、特に尿路感染の 禁忌になり得る菌に対して効能を取っております。 ○堀内部会長代理 そうすると違いは効能のところだけと考えてよろしいですか。 ○事務局 細かいところを申しますと、シプロフロキサシンは肺炎のみですが、パシル の方は慢性呼吸器疾患の二次感染も適応を取っております。それから、シプロフロキサ シンは敗血症は取っているのですが、パシルの方は適応は取れていないと、そういう細 かいところはあります。 ○堀内部会長代理 どうもありがとうございました。ほかに御意見ございますか。よろ しいですか。どうぞ。 ○早川委員 承認の可否に関する問題ではなく、細かいことで恐縮ですが、審査報告書 の6〜7ページにかけて規格試験法のことが書かれております。一つは中ほどの3パラ グラフ目ぐらいに「製剤については」というところから始まった文章がありまして、□ □□を設定する意義について説明を求めたところ回答があったのでこれを了承したとい う下りがあるのですが、この中身についてちょっと御説明いただきたいと思います。つ まり製剤を造るときの原薬段階から製剤に至る間に、□□□が入るようなことがあるの かどうかということが一つお聞きしたいことです。  それから7ページの二つ目のパラグラフのところで、「製剤については」というとこ ろから始まった安定性に関する部分ですが、例えば発熱性物質、エンドトキシン等を安 定性のパラメータに使っているのですが、この製剤が保存期間中に発熱性物質やエンド トキシンが生じるような可能性があるのかどうか。ないのであればパラメーターとして は適切ではないといいますか、逆に言えばこの試験をすること自体がいわば無駄と言い ますか、意味が余りないので、なるべく意味のない試験はしない方がいいということで す。重ねて細かい話で恐縮ですが、前回の部会に提出された資料でも同じようなことが ございましたので、ちょっとコメントを述べさせていただきました。 ○堀内部会長代理 何でもやればいいということではなくて、必要なものについてきち んとやるというスタイルにという御意見だと思います。事務局の方から何かございます か。 ○事務局 審査センターから御報告いたします。□□□については、どこで入るかとい うことについて今ちょっと経緯を確認したいと思います。恐らくそれほど大きなところ はないかと思うのですが、それについて調べて先生の方に後ほど御報告させていただき たいと思います。  それから安定性試験でエンドトキシンやそういったものを入れる意義についてです が、先生のおっしゃるように、これは最初にあればその後増えたり減ったりというもの ではございませんので、基本的にはないと思います。規格の中で適切なものを選んで評 価するようにというガイドラインではあるのですが、これは私の想像も入るのですけれ ども、機械的に全部やってしまうと。特に長期を要する試験なので、最初に何かでやり 残したことがもしあったりすると追試をするのに非常に時間がかかりますので、メーカ ーは非常に恐れています。そういったことで、余り意義はないものの念を入れてやった のではないかと推定しております。こちらとしてはそういうことがあったという事実を 記載しているのであって、それについて大きな評価をしているという観点で記載してい るものではありません。 ○堀内部会長代理 この問題については後で早川先生の方に連絡を取っていただいて、 また適切な御意見を頂いて参考にしていただければと思います。ほかにございますか。 どうぞ。 ○藤上委員 ニューキノロン剤は一般的に小児に禁忌になっているのですが、たまたま バクシダールは小児用がありますね。これはかなり前に出たものだということですが、 これは多分幼若イヌによる関節炎に対する影響で小児に対しては禁忌になっていると思 うのですけれども、バクシダールのときとこれのときでは何か違いがあるのでしょうか。 注射剤の製剤が出ますと、多分小児でも使う症例が出てくるのではないかと思ったもの ですから。 ○堀内部会長代理 この表現は「用法及び用量」のところは成人のみということですか。 ○藤上委員 一般的にニューキノロン剤は小児には禁忌になっているらしいのです。 ○堀内部会長代理 これは小児には禁忌になっているわけですね。 ○藤上委員 小児に禁忌になっている理由として、関節に対する影響が挙げられるとい うことなのですが、バクシダールに関しても同じような注意書きがありますけれども、 どういう差でこういうふうになったのかと思いましたので。 ○事務局 開発当時ですが、バクシダールにつきましては、他のニューキノロンに比べ 関節障害の影響が動物実験のレベルで少なかったということで、小児に対する臨床試験 が実施されることになりました。実際に臨床試験が実施され、臨床試験上は関節に対す る影響等は特段認められなかったということで承認になったと聞いております。 ○藤上委員 バクシダールは臨床試験をやったということですが、ほかのニューキノロ ンに関しては関節への影響が強いということで、小児に対して臨床試験が行われないと いうことですか。 ○事務局 現在のところは、開発なり臨床試験を行っているということは聞いておりま せん。 ○藤上委員 このバクシダールとそれ以外のものとでは、かなり差があるのでしょうか。 添付文書上では余り差がないかと思いながら見ていたのですが。何が言いたいのかと申 しますと、注射剤が出てきますと小児にも使われることが出てくるのではないかと思い ましたので。 ○事務局 毒性の方の観点から申し上げますと、ニューキノロン系の薬剤というのはす べて共通して幼若動物を用いて見た場合関節毒性が出ます。本剤も関節毒性が明らかに 出ていますので、小児に対して適用されていないと思います。バクシダールについては 恐らく関節毒性が低かったためにそういう検討が始まったものと考えております。 ○堀内部会長代理 よろしいですか。ほかにございますか。どうぞ。 ○小池委員 余りいい質問ではないかもしれないですけれどもよろしいですか。どの薬 にも同じことが言えるのかもしれませんが、特に抗菌薬のところで関係してくるだろう と思うので。抗菌薬の有効性ということについて、対照薬と比較しての有効性などをい ろいろ検討されているわけですが、例えば今まで既に出ている薬に比べてある菌に対し ては余り効かないというものでも耐性が出てきてしまっているので、その耐性菌には効 くという薬がもしあった場合、有効性というのはどちらで判断するのですか。実際にそ のものが本来の菌に効くことで有効性を比較しているのか、それとも耐性菌に対しては 使えるので有効だというのか、その二つは多分意味合いが少し違うのではないかと思う のです。有効性というのはどこで、それともその両方なのでしょうか。 ○堀内部会長代理 どなたか答えてください。 ○審査第一部長 審査センターの平山です。基本的に普通のこういう同系列の薬であれ ば非劣性試験を行って、臨床的に治る率に遜色なければ有効性があります。本来はそこ にプラスαとしてこのものだったら…、抗菌剤の世界ですからそれほど大きな変化は望 めないのですが、例えば安全性の方に少し有意な点があるなどのそういうメリットがあ れば、その薬そのものは二剤目として同じようなフィールドで使っていただくという有 効性はあると思います。  そして先ほどの耐性の件ですが、例えばバンコマイシインのようにMRSAに特徴的 に効くというようなことでそれを承認したものはございます。したがって、そういう耐 性菌に対して効くかどうかというのはあくまでも臨床現場で見るわけですが、臨床現場 でいろいろ試してみてこれは耐性菌であると、あるいは菌を同定してみて耐性菌でほか の薬は効きそうにないというときには、こういう薬を使いましょうという臨床的な有効 性があると思います。要するに臨床の場で使い方を考えたときに、それを使う価値があ るかどうかというところが非常に有効性に絡んでくるだろうと考えております。一般的 には同じような系列であれば同じような効き目があって、プラスαとして何らかのメリ ットがあるというところをねらうということです。それからそういうものとはまた系列 が違って、耐性菌に特化して開発しようという場合もあるかと。その両方について臨床 現場での使い方、余り耐性菌にばかり目が行ってそのほかに対しては弱いというような ケースがありますと、余り使い過ぎると別の菌に対して更に耐性ができてしまうという デメリットがありますけれども、その辺の使い方をきちんとコントロールして耐性菌が できるだけできないような、あるいは耐性菌ができたとしても有効的に使えるような抗 生物質等を開発していくというやり方でしか、人間は細菌とは付き合い切れないという ことだろうと思っております。 ○堀内部会長代理 よろしいですか。 ○小池委員 有効性というのは両方の意味合いがあるということですね。 ○審査第一部長 そうですね。その薬、その薬の特徴で判断していきます。それが臨床 の現場において誤用されるということがないような形で使い方を考えていくのが、やり 方ではないかと思っております。 ○吉村委員 よろしいですか。 ○堀内部会長代理 手短かにお願いいたします。 ○吉村委員 今のことに関しては、実際に何で判定をやるかということに関して、実は ガイドラインなどを作るときに随分議論したのです。やはり今のような特殊なものにつ いて、つまり特殊な効果を認めるときには普通の意味での有効性というのでなくて、や はり有用性というふうに直してどういう場合に役に立つかということを主にして判断す べきであるということを、過去にガイドラインなどを作るときに議論したことがありま す。ただこの耐性菌の問題に関しては、たしかこの間のオメプラゾールの専門協議のと きでしたでしょうか、耐性菌だけを相手にして臨床試験をやればいいではないですかと 言ったら、耐性菌だけ探してやるという方法はないから駄目なのだと皆さんから笑われ てしまったのです。そうすると今言われたように、結果として臨床試験に入ってきた人 たちの中でこれは耐性菌であった、これは耐性菌ではなかったという形で区分けをして、 いわばそういう別の因子で解析を行って判定するより仕方がないだろうということにな っていますから、それ自身がかなりはっきりしたものであるならば、それはそれで判断 できると思っております。 ○堀内部会長代理 少し基本的な議論になりましたが、今後同じような問題が出てくる 可能性がありますので、参考として検討させていただきたいと思います。それではこの パシルM、パシル点滴静注液300mg、同500mg、バズクロス注300、同500の製造につい ては承認ということでよろしいでしょうか。先ほども出ましたように、海外での使用経 験はないということと経口剤もないということですので、市販後調査をきちんとやって いただくこと、再審査については先ほど御提案があったように6年、それから毒薬・劇 薬の指定はなしということで承認をして、薬事分科会へ報告ということにさせていただ きたいと思います。それでは池田先生をお呼びいただけますか。 ── 池田部会長入室 ── ○池田部会長 堀内先生、どうもありがとうございました。それでは事務局から報告事 項をお願いしたいと思います。説明をよろしくお願いいたします。 ○事務局 それでは報告事項の議題1〜7までを簡単に御説明させていただきます。  まず報告事項の議題1でございますが、資料3をお願いいたします。こちらは協和発 酵工業株式会社からの申請でダカルバジン注協和でございます。こちらの品目は悪性黒 色腫の効能で昭和60年に承認されましたダカルバジンに、新たにホジキン病の適応を追 加するものでございます。本品目は「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」 という通知に基づき申請がなされまして、審査センターでの審査の結果、本剤の申請効 能及び用法・用量に対する有用性は医学薬学上公知であると認められることから、承認 して差し支えないと判断したものでございます。本品目につきましては、承認症例にお ける安全性を確認する市販後特別調査を承認条件としております。  資料4から最後のものまでは、いずれもバイオテロ関連の迅速審査を行った品目でご ざいます。前回の1月の部会でも第一弾で御報告させていただきましたが、その第二弾 でございます。資料4はクラビット錠ほかでございまして、一般名はレボフロキサシン、 第一製薬株式会社からの申請でございます。炭疽、ペスト、野兎病、ブルセラ症、Q熱 に対しまして効能・効果、それに関しての用法・用量が追加されております。  資料5は販売名がスパラ錠100mg、一般名がスパルフロキサシンでございます。申請 者は大日本製薬株式会社で、炭疽、コレラ、ペスト、野兎病、ブルセラ症、Q熱に対し まして効能が追加されております。  資料6はオゼックス錠75ほかでございまして、富山化学工業株式会社、ダイナボット 株式会社から申請されております。有効成分の一般名がトシル酸トスフロキサシンでご ざいまして、こちらの方は炭疽、コレラに対しまして効能が追加されております。  資料7はバクシダール錠100mgほかでございまして、杏林製薬株式会社からの申請で ございます。一般名がノルフロキサシンで、こちらの効能追加は炭疽、野兎病に関して でございます。こちらまでがニューキノロン系の抗生物質です。  資料8、9がテトラサイクリン系のものになっております。資料8は販売名がビブラ マイシン錠、一般名が塩酸ドキシサイクリン錠、申請者はファイザー製薬株式会社でご ざいます。こちらの方の効能追加は炭疽、コレラ、ペスト、ブルセラ症、Q熱に関して ございます。  最後に資料9をお願いいたします。販売名が点滴静注用ミノマイシンほかでございま して、一般名が塩酸ミノサイクリン、申請者名が日本ワイスレダリー株式会社でござい ます。こちらは炭疽についての効能追加でございます。簡単でございますが、以上でご ざいます。 ○池田部会長 ありがとうございました。以上の報告事項について、御質問がございま したらお願いいたします。先生方、いかがでしょうか。ダカルバジン以下抗生物質でご ざいますけれども、特にございませんでしょうか。どうぞ。 ○三瀬委員 非常に迅速に審査をしていただいてよかったと思うのですが、資料9のミ ノサイクリンはコレラなどにも随分効くと思うのですけれども、これは一つだけだった という理由はどういうことか教えていただければと思います。 ○事務局 今回申請のありました抗生剤すべてなのですが、基本的には臨床報告まで含 めるとかなり限られますので、薬理学的試験で何らかの報告があって有効性が期待でき るものとして今回効能追加をしております。ミノサイクリンについては準備の時間の関 係もあるかもしれませんが、今回申請者の方から頂いてこちらでも若干検索した結果で は、取りあえず炭疽だけということで今回効能追加を行っております。 ○池田部会長 よろしいですか。どうぞ、吉村先生。 ○吉村委員 このようにいわば臨床試験を経ないでいろいろな薬理的な試験を主にして 効能・効果を認めた場合に、実際に使って万一効かなかったということがあると多少問 題になると思うのです。そういうことのためにこういう臨床試験などをやらないで承認 した効能に関しては、実際に使った場合には必ず報告するというような条件を何か付け ないでいいものでしょうか。 ○池田部会長 事務局の方、何かありますか。課長、どうぞ。 ○審査管理課長 今回のものにつきましては、緊急避難といいますか、要するに危機管 理という観点からやらせていただいております。当然お使いになったら何らかの報告が 企業の方から上がって来ると思っておりますので、これは今までのものとはちょっと違 う承認の仕方ということで御理解いただければと思っております。 ○池田部会長 吉村委員、どうぞ。 ○吉村委員 私が言いたかったことは上がってくるだろうではなくて、必ずそういう報 告はするようにという条件は付けられないものかという意味なのですが。 ○事務局 そこのところは薬事法上そういった重篤未知な副作用でありますとか、ある いは効かなかったというようなネガティブなデータについては、厚生労働省に報告する ということで義務付けられておりますので、その点は心配ないかと思います。 ○吉村委員 ちょっとよろしいでしょうか。 ○池田部会長 どうぞ。 ○吉村委員 むしろ逆にポジティブなものをきちんと報告していただかないと…。つま りネガティブなものであるのか、使っていないからだれも知らないのかということが分 からないわけですから、逆にこれを使ったら間違いなく効いたということであれば、む しろそちらの報告の方が後の人にとっては重要な情報になるのではないかという気がす るのですが。 ○池田部会長 課長の方から、どうぞ。 ○審査管理課長 その点につきましては、私の方から企業の方を指導させていただきま す。 ○池田部会長 企業の方に十分に指導していただければ…。どうぞ、堀内先生。 ○堀内部会長代理 一般的には医学薬学の知識から公知の事実であるということで適応 追加になったものは、かなり頻度が高く使われているものだと思います。その場合に全 部報告するようにというのは余り意味のあることではないだろうと思うのです。ですか ら、それを条件にするのはかなり大変なことだろうと思います。 ○吉村委員 ただ、ここの承認のときになぜ臨床試験をしなくていいのかということに 対しては、ほとんどまず患者が出てこない、非常に少ないというのが条件になっている わけです。逆にそういう非常に少ない条件の場合には、多分皆さん経験が余りないから だんだんと品目をやった場合に、その中に効くものと効かないものがきっとあるのでは ないかという気がするのです。ですからそういう非常にまれな特殊なものに関しては、 やはり使用経験はなるべく集積していった方が後のためにいいのではないかという趣旨 です。 ○池田部会長 どうぞ、課長。 ○審査管理課長 当然こういうものがはやるということは、大変な事態が起こっている ことになりますので、国の方としても十二分に監視していくことになると思います。そ ういうことですから、当然供給している企業の方を通じ、その他関係するところから報 告が上がってくると思いますので、適切に対処したいと思っております。 ○池田部会長 事が炭疽、ペスト、コレラという重大なことですので、もちろん行政の 方からも企業に指導いたしますでしょうし、その報告が上がってくるというふうに私ど もは信じております。それでよろしいでしょうか。 ○三瀬委員 まれと言ってもコレラの方は年間100件近くずっと出ていまして、それの 耐性検査などはいずれもすべてデータとして厚生労働省は把握していますし、我々も見 ようと思えば見ることができます。それから炭疽は10年に1つ、2つという程度です。 それからペストは1926年以来ずっと入っていない非常にまれな病気です。多分吉村先生 の御心配はないと思います。 ○池田部会長 ありがとうございました。よろしいでしょうか。そのほか委員の方から 報告事項について御質問ございますか。よろしいですか。ありがとうございました。そ れでは本日予定していた審議は以上でございます。事務局から連絡事項をお願いいたし ます。 ○審査管理課長 次回は4月になります。また別途委員の皆様方に予定をお聞かせいた だきまして、検討させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○池田部会長 ありがとうございました。それでは本日の審議はこれで終了させていた だきます。堀内先生、どうもありがとうございました。これで終わりたいと思います。                                     (了) 連絡先: 医薬食品局 審査管理課 課長補佐 佐藤(内線2734)   - 21 -