02/02/13 第2回社会保障審議会児童部会議事録         第2回社会保障審議会児童部会議事録 時間   平成14年2月13日 10:00〜12:01 場所   厚生労働省専用第22会議室 出席委員 岩男部会長 網野委員 遠藤委員 大日向委員 柏女委員 津崎委員      堀委員 松原委員 山崎委員 渡辺委員 次第 1.開会 2.「日本の将来推計人口(平成14年1月推計)」について 3.自由討議「子どもの状況について」 4.その他 5.閉会 ○岩男部会長  おはようございます。それでは、定刻になりましたので「社会保障審議会児童部会」 の第2回会合を開催させていただきます。  まず、本日の出席状況について事務局から御報告をお願いいたします。 ○総務課長  おはようございます。本日は、阿藤委員、服部委員、無藤委員が所用のため御欠席で ございますが、それ以外の委員の方には御参加いただいております。  本日は、テーマに応じて、私どもが前回に御紹介申し上げた専門官の何人かに着席を してもらっています。  まず、こちらから鈴木専門官、新野専門官、相澤専門官でございます。  それから、お手元にパイプファイルを置いてございます。これにつきましては、これ からいろいろ資料を配布いたしますが、この中で今後の審議に参考になるような資料、 例えば今日もお配りしますが、係数資料とか、あるいは先生方からお配りいただいた資 料。こういうものを中心に、ここにとじ込んで毎回の御審議に参考にしていただきたい と思います。  以上でございます。 ○岩男部会長  前回は、皆様の自己紹介をかねて、御関心の問題についてお話しをいただきました。  いつまでに基本的な問題の報告を出さなければいけないというような、時間に追われ るような仕事ではなくて、少しじっくり腰を落ち着けて行うんだということは、前回明 らかになったと思いますけれども、今回あるいは次回はどういう切り口から進めていく か、あるいはどういうアウトプットにするのかといったようなことを、まだ少し模索す るというような段階だと思います。  今日は、まず議事の方をごらんいただきますと「日本の将来推計人口」が、去る1月3 0日に公表されておりますので、これは当部会にも大変関係が深いものでございますの で、本日は、国立社会保障人口問題研究所の高橋部長をお招きしてございます。児童部 会としての審議に入る前に、まず高橋部長より新推計の概要を御説明していただきたい と思いますので、どうぞよろしくお願いをしたします。 ○国立社会保障・人口問題研究所高橋部長  国立社会保障・人口問題研究所の高橋でございます。  今日は、お手元に資料1、資料2、資料3という3つの資料を配布しております。  まず、資料3をごらんください。最初のページになりますけれども、この資料は、推 計の手法と仮定設定ということが書かれておりまして、1ページ目の図表の1に、推計 とはどういうものかということの大体の枠組みが書いてあります。  私ども国立社会保障・人口問題研究所は、国勢調査が公表されますと、それごとに新 たな人口推計を行なって公表してきております。  今回公表しました人口推計は、平成12年の国勢調査を基準人口としまして、2001年か ら2050年の期間について人口予測を行ったものであります。  人口推計では、特に将来の出生率がどうなるのかという仮定。更には将来の寿命がど うなるのかという仮定。更に、国際間の人口移動の仮定。更には、生まれた赤ちゃんの 男女比の仮定を置きまして、将来の人口予測を行っております。  将来の予測に関しましては、3種類の人口予測を行っております。その3種類とは、 将来の出生率に関して多分に不確定要素が含まれますので、それぞれについて、中・高 ・低という3つの将来仮定値をおきまして、3種類の人口推計を行っております。  資料1の「結果の概要」という資料の1ページをごらんいただきますと、おおよその 概要が示してあります。  将来の出生率に関しまして、中位推計では長期的に、実際には2050年でありますけれ ども、合計特殊出生率が1.39の水準になる。高位推計の仮定では、将来の出生率は1.63 。低位の仮定値が1.10であります。  前回の推計は、1.61でありましたから、その水準よりも相当低い仮定設定を行って、 将来の人口予測を行っております。  まず、簡単に推計結果を御報告申し上げたいと思います。  日本の総人口についてでありますけれども、中位推計で見ますと、足元の平成12年の 日本の人口が1億2,693 万人でございました。これを今回の予測結果から見ますと、 中位推計では、2006年に1億2,774 万人というピークを迎えて、その後、日本全体の 人口は、人口減少に向かうという結果が算定されました。  前回推計では、日本の人口のピークが2007年、1億2,778 万人と予測されておりま したから、それよりも4万人少ない規模で日本の人口はピークを迎える。その後、日本 の人口は減少に向かって、2050年時点では、約1億60万人の規模に達するものと予測 されました。前回推計が、1億50万人ですから、前回推計よりも9万人ほど多い結果に なっておりますけれども、その理由は、前回推計よりも今回推計は寿命の伸びが予測さ れまして、その結果として2050年では若干9万人ほど多い人口規模になるという結果が 推定されました。 人口高齢化に関しましてですけれども、65歳以上人口の割合ですが 、平成12年のデータで見ますと、17.4%でございました。これが、今後、人口高齢化の 進展、更に出生率が低いことによる年少人口の減少に伴いまして、人口高齢化は一層進 み、2025年時点で28.7%。前回推計が27.4%でしたから、それよりも1.3 ポイント高 い数字に達します。  更に、2050年になりますと、人口高齢化の水準は35.7%と、前回推計の32.3%よりも 高い水準に達します。おおよそ、2.8 人に1人が65歳以上人口という姿になると予測 されました。  このような将来の人口なんですが、細かなデータに関しましては、別途譲るとして、 特に児童人口との関連で若干ポイントを御指摘しておきたいと思います。  6ページをごらんいただきたいと思います。今回の中位推計の結果でありますけれど も、そこに0〜14歳人口の今後の趨勢が示してございます。平成12年の0〜14歳の人口 は、1,850 万5,000人 でございましたけれども、この規模が、将来の出生率が少ない ことによって、今後低下していきまして、特にポイントとなるのは、2021年の時点で1,5 00 万人の大台を割り込むということが推定されました。その後も年少人口の減少は続 きまして、最終的に2050年では、1,084 万2,000 人という規模になるものと予測され ました。  このように、将来の出生率が低いこと、更に今後子どもを生む親の世代が第二次ベビ ー・ブーマー以降縮小していきますので、その結果として年少人口の減少が起きるもの と推定されます。  次のポイントとしましては、8ページのところをごらんいただきたいと思います。今 後の出生数の動向でございます。  まず、近年、日本の出生数は、おおよそ120 万人で、ほぼ安定的に推移してきてお りました。ところが、今後親の世代が入れ替わりますので、その影響と、更に出生率が 低いという影響を受けて、今後出生数の規模自体が大幅に減少していきます。  2014年になりますと、年間100 万の出生数の大台を割り込みまして、99万9,000 人 となると見込まれます。  その後も出生数の規模は、親の世代の縮小に伴って減少を続け、最終的に2050年では 、年間出生数が66万7,000 人という規模に達するもと推定されます。  このように将来の日本の出生数の減少、更に年少人口の減少ということでありますが 、それが表われた大きな要因というのは、将来の出生率の動向ということになります。  なぜ、今回の推計において、このような低い出生率の水準が想定されたのかというこ とを簡単に御説明申し上げたいと思います。  資料3の5ページをごらんください。将来の出生率がどうなるのかということに関し ましては、まず一つは、日本に生まれた女性がどの程度結婚するのかということが、第 一の大きな要因になります。  我が国では、出産のほとんどが結婚の中で起きております。現在、日本における非嫡 出子のパーセンテージは1.7 %でありまして、近年、毎年0.1 ポイントずつ上昇傾向 にあるとはいえ、ほとんどの出産というものが結婚の中で起きております。したがいま して、一生にわたって結婚しない女性の数が増加することによって、将来の出生率は大 幅に低下する可能性があるということであります。  平成9年推計におきましても、1980年生まれの人々の未婚化現象というのは大きく進 んでおりました。1980年生まれの人々が、最終的には女性全体の13.8%が50歳時点で未 婚であるというふうに想定をして、前回推計で人口予測を行っております。  次に、資料の6ページの上の図をごらんいただきたいんですけれども、ここに今回推 計の年齢別の未婚率が示してあります。白抜きの三角で示してありますのが、25歳〜29 歳の未婚率の動向であります。1970年代においては、この率というのは、約2割でござ いました。  ところが、1980年代に入ると、急速に未婚化現象が進行しまして、特に85年〜90年に かけては、5年間で10ポイントの増加を示しました。  その後、この増加の勢いは若干緩和はしているんですけれども、西暦2000年において は、54%に達しております。このように、今後もこの部分の未婚化現象というのは、今 後も上昇すると想定されるわけであります。  5ページに戻りまして、今回の人口予測においては、1985年生まれの人々の生涯未婚 率というのは、今後16.8%程度にまで増加をするであろうという予測を行いました。そ の結果、将来の日本の出生率は生涯未婚率の上昇の影響を受けて、若干低下傾向を示す ということでございます。 もう一つの要因は、離死別の影響でございます。ただし、 ここで離死別効果として測定しているものは、比較的古い世代のものでありまして、195 0年前後に生まれた人々の離婚による出生率の低下傾向を見込んでおりまして、古い世 代に関しては、安定的であったということがわかっております。  更にもう一つは、結婚後どの程度子どもを産むかという要因に関する考え方でござい ます。前回推計におきましては、晩婚化現象が進行しておりまして、晩婚化現象に伴っ て生まれる子どもの数は減少していくものと推定しておりました。  結婚の年齢と産む子どもの数との関係に関しましては、資料で言いますと、13ページ に図表の23というのがございますけれども、結婚の年齢は、子どもを産む期間を縮小さ せていきますので、結婚の年齢が上昇すると、一生にわたって産む子どもの数が少ない ということが、1970年代から1990年代後半の経験的なデータの中から理解されていると ころであります。  私どもの研究所でも、この関係をモデル化いたしまして、初婚年齢の上昇に伴って、 今後日本人の夫婦の出生率は落ちるものと想定を行いました。  5ページに戻りますけれども、下の「B.目標コーホートの仮定設定値」という欄が ございますが、夫婦の完結出生児数は、今後初婚年齢の上昇に伴って、前回推計におい ては、1.96人程度にまで低下すると想定をしておりました。  それ以外の要因。つまり、初婚年齢の上昇に伴って低下する要因以外のものについて は、前回推定においては、顕著な変化が見られませんでした。  どのようなものがあるのかと言いますと、結婚した夫婦が自ら何らかの要因によって 出産を抑制するという行動です。そうしたものが、前回推計の時点においては見られな かったということであります。  しかしながら、これから御説明申し上げますけれども、今回推計においては、新たに この部分の顕著な低下傾向というのが、1997年に実施しました私どもの全国調査の結果 から理解することができました。  この点に関しまして、社会保障審議会人口部会におきまして、全体で5回にわたる討 議を重ねまして、専門家の委員から御意見を伺いながら、この現象があるのか、ないの かを巡って議論をいただき、その結果、こうした1960年代生まれの人々で顕著な出生抑 制行動が見られるという結論に達しました。  それに基づいて、私どもの研究所ではそれを加味した人口予測を今回行ったわけでご ざいます。どの部分が1960年代以降の出生率低下かと申し上げますと、6ページの図表 の9に結果が示してございます。  図表9の星印しが付いた線がございます。この線は、前回推計まで用いました結婚年 齢の上昇に伴って、35歳になったときの夫婦の出生率がどれぐらいになるのかというこ とを予測した数値でございます。  このラインで見ますと、結婚した夫婦は2.0 以上産んでいるという現状が見られま すし、1955〜1959年では2.1 をやや下回る水準。1960年〜1962年の出生世代に関しま しても、2.0 を超えた水準になっております。これは予測値であります。  それに加えて、同時にここでは実際の実績データをプロットしてあります。それが、 黒く塗りつぶしたひし形のポイントでございます。この黒く塗りつぶしたひし形のポイ ントと米印しを比較してみますと、1955〜1959年生まれまでは、両者がほぼ近似的に同 じ位置にポイントを占めております。ということは、ほぼ1960年代以前の世代に関しま しては、結婚年齢の遅れから推定した夫婦の出生率と同等であったということが理解で きるわけであります。  ところが、1962年に関しまして見ますと、モデルで推定しました米印しのポイントと 、実際に測定しました黒く塗りつぶしたポイントを比較してみますと、そこに大きな乖 離が表われたということであります。つまり、初婚年齢から説明できない夫婦の出生力 低下傾向というのが60年代以降の出生世代で表われているということの認識でございま す。  それを統計的に検証しましたものが、7ページ上の図表の10というものでございまし て、62年につきましては、明らかに統計的に1%水準で優位な違いが予測値と実績値の 間で認められたわけであります。  更に、60年以降の世代でも、もっと後の世代ですが、30歳ぐらいのところでの子ども の産み方というのは、実際にどうなっているのかということを検証したものが図表の11 でありまして、1965〜1967年生まれの人々が30歳になった時点での出生率を見てみます と、やはりここでも大きな乖離が生じていたということでございます。  今回の推計では、このような実証的なデータに基づきまして、初婚年齢からは説明で きない夫婦の出生力の低下傾向ということをまず認識し、それを将来の予測に反映させ たということであります。  簡潔にお話しするために、先へ進みますと、15ページの図表の26に、今回の分析で夫 婦の結婚年齢の上昇に伴う出生率の低下以外の要因に関するものを「k」という指標で 表わすことにしました。それを名づけて結婚出生力低下係数というものであります。こ れを女性の生まれ年別に比較してみますと、1935年〜1965年まで統計的に観察可能であ ります。 これを見ていきますと、大体1955年〜1960年の間までは、「k」という水準 は1.00という水準の前後に位置しております。60年代に入ると、「k」の水準が徐々に 低下傾向を示し、95年には0.93という水準にまで低下をしてきているということがわか ります。  したがいまして、人口予測では、初婚年齢で説明できない結婚した人々の出生力低下 の影響係数である「k」という数値が、今後のどのような水準に達するのかということ が検討の大きな課題になりました。  これを推定するために、私どもの研究所では、将来の出生率に関して、特に1985年生 まれの人々の「k」の数値がどのようになるのかということをさまざまな計算によって 検証いたしました。  それを要約した図が17ページの図表の30であります。  図表の30では、年次別の合計特殊出生率を過去のものについてプロットし、更に2001 年に関しましては、10月まで人口動態統計が得られておりますので年間推計を行い、更 に2002、2003年に関しましては、過去の時系列からモデルによって先へ延長して、2000 年をはさむ数年間の合計特殊出生率を得ております。近年の合計特殊出生率の動きと、 将来の「k」の水準との関係性をここでは検証しているわけです。  すなわち、1985年生まれの人々が最終的に「k」の値で、0.93という数値を取ったと きには、1996年以降の日本の合計特殊出生率と数字的に合わなくなってしまうという結 果が得られました。  そうしますと、1985年生まれの人々の夫婦の出生力を低下させる要因というのは、0.9 3よりももっと小さな値になるはずであるということが想定されるわけであります。  これを0.92、0.91、0.90、0.89というパラメーター値を与えまして、推定することに よって近年の合計特殊出生率の動きを再現してみますと、図表の31にありますように、 統計的に見て、0.911 という水準を取ったときに、最も近年の合計特殊出生率の動き が適合的であるということが検証されました。  したがいまして、中位推計における将来の結婚出生力の低下係数というものを0.911 と設定しまして、将来の日本の合計特殊出生率を設定しております。  18ページになりますけれども、18ページの図表の33-1というのが中位、高位、低位の 仮定につきまして、それぞれの数値をどのように見込んだかということを要約した表で あります。  中位推計に関しましては、生涯未婚率が16.8%。平均初婚年齢が27.8%。初婚年齢に よって推定される夫婦の完結出生児数は1.89。これに対して、結婚出生力を低下させる 影響の度合、低下係数0.911 がありますので、修正された夫婦完結出生児数は、1.72 という数値になります。それに、離婚の影響を加味しまして、中位推計における仮定値 が1.39という数値として設定されております。  最終的に20ページをごらんいただきたいんですけれども、図表の35-1というのがござ います。  この図は、生まれ年別にそれぞれの年齢で、どれぐらいの出生率を生んでいたかとい う数値を累積してお示しした図でございます。この図でマークが付いている部分という のは、既に実際に観察された値でありまして、マークの付いた先の実線になっている部 分が今回の推計で推定された数値であります。  この図を見ていただきますと、1950年代、1960年代生まれ以降、急速な出生率低下傾 向というのが起きておりまして、今後に関しましては、そうした趨勢の延長線上で動い ていくという姿が見て取れます。  図表35-1の数値を年次別に組み換えて示したものが21ページの図表の36です。通常見 ます年次別合計特殊出生率の形にして示したものでございます。  この結果を見ますと、近年まで低迷を続けていた合計特殊出生率は、今しばらく低下 傾向を続けて、2007年の1.306 という数値を底にして、今後若干の上昇には向かいま すけれども、2050年の最終値で1.387 という水準が、今回の仮定値として設定された わけであります。  なお、2007年に若干底を打って、そこから若干取り戻しがあるように見られますけれ ども、世代別に図表の35-1で見ますと、一貫して世代別の合計特殊出生率は低下を続け ます。そうした違いが表われる要因と言いますのは、言わば結婚の遅れ、出産の遅れと いうタイミングのずらし効果が起きていますので、一時的に極めて低い出生率が年次別 に観察したときに表われるというのが、図表36の特徴であります。  ですから、意図的に戻しているのではないかという批判がありますけれども、それは 世代別に見ると全くそういうことはなくて、一貫して下がっている。それは、メカニズ ムから一旦低い値になって、若干上昇するという傾向があるということであります。  以上、将来推計の結果と、なぜこうした将来の出生率の見通しになったかということ の報告を終えたいと思います。  以上です。 ○岩男部会長  御説明をいただきまして、ありがとうございました。少子化傾向が、ますます深刻に なるということが改めて大変よくわかりました。  ただいまの御説明について何か御質問あるいはコメントがございましたら、どうぞ御 自由に御発言をいただきたいと思います。  御意見がないようですので、関連していることでコメントさせていただきますと、今 、私の方で意識調査をしておりまして、これは鶏が先なのか、卵が先なのか、どういう 関係かよくわからないんですけれども、女性側の兄弟の数と、配偶者の側の兄弟の数と いうのが、何人子どもを産むかということにかなり相関が高いようです。  兄弟が多いということは、心理的に影響があって、子どもを持つということについて 、ごく自然に受け止めるというようなことなのかもしれません。  そういうことを考えますと、例えば一人っ子同士が結婚するということになりますと 、自分自身子どもを持とうという気持ちが、それほど前向きにならないというようなこ とにもつながるかもしれないというような気がして、ごく最近のデータなものですから 、御紹介いたしました。  どうぞ、御発言ください。 ○堀委員  人口問題は、全くの素人なんですが、国としては、少子化対策というのを数年前から 一生懸命やっていると思うんですが、そういう政策の効果というのは、こういう推計に は織り込まれるんでしょうか。  基本的には、トレンドで推計しているということなんですが、例えばスウェーデンで 一時期TFRが1.8 ぐらいから2.1 ぐらいになって、また今1.5 ぐらいに下がって いる。何かこれは政策の効果があったというふうに聞いておるんですが、そういう政策 効果がそもそもそういう出生率に反映するのかどうかということと、今回推計にそうい うものが反映しているのかどうか、その点をお願いします。 ○高橋部長  政策効果に関しましてですけれども、将来の人口を予測するに当たっては、ニュート ラルな立場で将来の姿を描く必要がある。そのために、例えば将来の政策が何%効果を 上げて、待機児童の率がこれぐらいになったときに、出生率にどれぐらいはね返ってと いうことは、今回では一切行っておりません。  ただし、社会経済的な要因との関連で、それが将来の出生率に対してどのように反応 するのかという研究は別途行っておりまして、そうしたものは別途ございます。  しかしながら、将来の人口の姿を描くのには、直接的には使っていないというのが現 状です。 ○岩男部会長  どうぞ、松原委員お願いいたします。 ○松原委員  全くの素人なので教えていただきたいんですが、「k」という数値が出てきて、これ がまた低下するということなんですが、これが出てくる要因というのは何かお考えなん でしょうか。 ○高橋部長  まず、この推計において、「k」値というのは、あくまでも統計的に把握したとき「 k」という夫婦の出生力を落としている何物かがある。ただし、具体的にこれだという ことは、まだ分析ができていないわけです。  それらのものに考えられる要因としては、さまざま存在します。人口部会の方におい ても多くの先生方からいろいろな指摘を受けております。  例えば、第1点としては、バブル経済崩壊以後の心理的な影響があって、それが実証 的にも第2子を生む出生感覚をずらしているのではないかという研究の報告がございま した。更には、高学歴化ということが進行していて、特に高学歴女性の夫婦の出生率が 明らかに減少傾向にあるというデータも示されました。更に、女性の就労との関係で、 一貫就業をしている人々の出生率を見てみますと極めて低い。更にそこでの子どものい ないカップルのパーセンテージが高いという報告もございました。  したがいまして、こうした要因に関しては、幾つかの点が指摘されているわけですけ れども、それが相対的にどれが一番決定的な要因で、どれが二次的な要因なのかという 評価に関しては、今後の分析を待つという段階でございます。 ○岩男部会長  よろしゅうございますか。それでは、特に御意見がなければ議事を先に進めさせてい ただきたいと思います。  いずれにいたしましても、ここで議論をしていく児童の問題というのは、少子社会に 生きる子どもたちであるという、これだけは大変はっきりしていることだと思います。  前回は、先ほど申し上げましたように、自己紹介をかねながらお一人5分程度で御関 心の事項についてお話をいただきました。  前回は、津崎委員が御欠席でございまして、今日は御出席でございますので、津崎委 員に自己紹介をかねながら5分程度お願いをいたします。 ○津崎委員  大阪市の児童相談所の津崎と言います、よろしくお願いいたします。先回は、所用で 出席できなくて非常に申し訳ありませんでした。  先回の議事録を見せていただきましたら、それぞれが御関心のテーマなり、考え方な りをある程度御紹介されていますので、私の立場で関心があると言いますか、私自身が 感じております課題を3つ、4つ御披露申し上げたいと思います。  私は、児童相談所の現場一筋できておりまして、三十数年実務に携わっていますので 、いわゆる現場サイドから見た子どもの問題、あるいは家族の問題、地域の問題という ふうな発想になろうかと思いますので、その点はよろしくお願いしておきたいと思いま す。  特に、最近の子どもの問題の状況変化の中で、一つの課題は、戦後一貫していわゆる 家庭問題に対する社会的介入が、民事不介入という形でずっと来たわけですが、今、民 事不介入の考え方が続かなくなったと言いますか、改めて家庭に社会が介入しないと子 どもの問題は解決しないという状況変化になっているということを強く感じています。  特に虐待の問題で典型的ですが、単に虐待防止法が新たにできたということだけでは なくて、DV法ができたり、あるいはストーカー法、あるいは成年後見制度、これはす べて以前は民事不介入の部分であったわけですけれども、そういう民事不介入のスタン スでは家庭内のいろんな問題は解決しない。社会が家庭内の問題に、家庭のプライバシ ーを尊重しつつも、どういう関与をしていくのかということが改めて問われてきている というふうに思っております。  そういう意味で、今後、任意の介入、行政介入、司法介入の段階を追った家庭問題へ の介入の在り方。この辺のスタンスと言いますか、あるいはいろんな施策と言いますか 、そういうことを整備していくことを社会的に求められてきているんだろうというふう に考えています。  特に従来、援助のスタンスすべてが、どちらかと言うと、受け身の相談という形にな っていましたけれども、これからは出前型の相談と言いますか、アウト・リーチ型のサ ービス、そういうことを社会のシステムの中に導入していかないと、多分家庭内の子ど もの問題に対してうまく対応できない。そういうことが生じてきているということを強 く現場の実務の中で感じています。これが、一つの課題です。  2番目が、これとも関係しますが、従来は子どもへのサービスが保護者を窓口にして サービス提供をしていた。保護者を子どもの代理人という位置づけの中でサービスが提 供されていた。これが壊れてきている。子どもへの直接サービスということを今後考え ていかないといけない。保護者を子どもの代理人というふうに位置づけることが適切で ないような、そういう状況のケースが多々出てきている。  したがって、直接子どもにサービスをどう届けるのか。あるいは子どもですから、保 護者以外の代理人をどういう形で立てて、どういう援助の仕方をするのか。これは、民 事不介入であれば、すべて保護者が窓口になるわけですので、そうではなくて、子ども が直接サービスの受け手になるような援助の仕方ということが、やはり必要になってき ているだろうというふうに思っております。  そういう意味で、社会が直接子どもの問題に関与するという意味で法的な後見。日本 の民法は非常に古くて、私的な後見ということの位置づけだけが強いですけれども、公 的な後見であるとか、第三者が監護をどういう形で位置づけて、実際的に子どもの養育 ・監護を担うのかというようなこともより広く考えていかなければならないという状況 が出てきていると思っています。  3番目は、脱施設化というのが非常に大きなテーマだというふうに思っています。子 どもの権利条約にも指摘されていますが、家庭で育てられない子は施設でいいとは書い ていない。ところが、日本は、戦後50年一貫して、大規模施設で子どもをケアしてきて います。児童養護施設と乳児院を合わせると約三万強ぐらいの子どもの数がいると思う んですが、一貫した形で大規模施設でケアされている。  しかし、そういう大規模施設の中では、やはり子育てが基本的には機能しないという ふうに私は思っています。  特に、私自身は今、里親もしているんですが、里親として3歳の子を引き受けたとき の一時的な退行現象。そしてそれを克服して子どもの再統合プロセスを見ていったとき に、施設ではそれはできないというふうに実感しています。施設の中では、退行現象が 起きても対応ができない、そういう環境です。  里親家庭の各人々にいろいろ聞いてみますと、必ず退行現象が起きています。そうい うプロセスを経て子どもが新たな状況で、新たな家庭の中の自分の位置づけというのを 再構築しているのがよくわかるわけですけれども、そのプロセスを抜きにして単に集団 でケアするという形だけては、子どもは育たないのではないかというふうに思っていま す。  そういう意味で脱施設化、一挙には難しいですけれども、施設の規模を小さくするよ うなグループホーム化であるとか。里親の育成は、専門里親というようなことも考えて おられますが、これは基本的にボランティアの里親という考え方だけでは、里親の伸び は余り期待できないだろうと私は思っていまして、もっとプロの里親、同じようにお金 を出してケアするのであれば、プロの施設で養育するよりもプロの里親で養育された方 がいいわけですから、プロの里親をもっと育成していけばいい。  特に今、6人規模の小規模養護を国の方が進めておられますね。6人の規模の施設を 運営しようと思うと、実際には2人ぐらいの職員だと多分できないですね。泊まりのロ ーテーションを考えただけでも、2人で運営したら2日に1回泊まらないといけないわ けです。そういうのをプロの里親として夫婦で雇いまして、そこで生活を共にするわけ ですから、その方が経費的にも安いですし、実際に子どもが養育者と一緒になって生活 するというメリットもあります。子どもの養育というのは、仕事で自分がケアされると いうような形では、うまくいかないんだと思います。やはり、そこで共に生活をすると いう実感があって、子どもと養育者が一体感の中で成長していくということを考えたと きに、もっと今の施設と里親を統合できるような、そういう施策を打ち出していくべき だろうというふうに思っています。  4つ目のテーマは、自立支援ということですが、これは平成9年の児童福祉法の大幅 改正のときにも課題になったんですが、自立の年齢がどんどん後れてきていて、自立で きない子どもがすごく増えてきています。ところが自立を支援するような制度がほとん どない。これだけ後れてきていて自立が課題であるのに、この分野の施策というのがほ とんど見当たらない。結果的には、子どもが引きこもったり、非行に走ったり、あるい は正式な職業に就かずにふらふらしたりというような状態が出てきているわけです。  この部分への基本的な施策を打ち出していかないと、青年には形の上ではなったけれ ども、実際には職業人としては機能しないという事態が、どんどん広がっていくのでは ないか、そういう危惧があります。  最後ですが、子どもの状態を見ていますと、エリートの子どもたちは、エリートの子 どもたち、またそうではない子どもたちは、そうではない子どもたちで、ともに自我の 根っこの部分が育っていないと言うか、非常に弱いように感じています。  そういう意味で、いろんな早期教育とか言われますけれども、基本的に自立して自分 の力で生きていける、そういう根っこの育成みたいなものに視点を据えた施策を取らな いと、形の上では大人になっているけれども、基本的には非常に弱いと言いますか、オ ウムの青年なんかも典型ですけれども、エリートというふうな形できたけれども、実際 上は、ほとんど現実を見る力とか、現実に沿った形で行動する力が育っていないという 空洞のような人ができてくるという、そういう危惧感も非常に持っているところです。  以上、非常に簡単ですが、現在仕事を通じて思っております課題を幾つか述べさせて いただきました。 ○岩男部会長  ありがとうございました。冒頭でも申し上げましたように、当部会では、児童に関わ る施策の中長期的、かつ総合的な問題を審議していくということにしております。  今日は、これから子どもの状況について自由討議を行いたいと思いますけれども、本 日の検討の趣旨及び今後の進め方などにつきまして、まず事務局から御説明をいただき たいと思います。 ○総務課長  では、私の方から簡単に御説明をいたしたいと思います。パイプファイルの中に附せ んが張ってある前回お配りした資料4というものがございます。  これは、会長が冒頭で御紹介いただいた、この部会の検討の趣旨ですが、常にこれに 立ち返って数回やっていただきながら、この審議内容とか、あるいは2ページにありま すような審議事項を決めていっていただきたいというのが、これからの2回、3回、4 回、あるいはその後の5回でもいいんですが、その趣旨でございます。  今日お配りしたお手元の資料4というものがございますが、本日は、第2回というこ とで、今、御紹介ありました子どもの現状についてのフリートーキングを2人の先生方 のプレゼンテーション基にやっていただきたい。  3回目は、勝手に決めているわけですが、子どもだけではなくて、親や家庭の現状、 そういうものについてのフリートーキング。  4回目は、地域社会とか、行政の支援の現状あるいは課題。こういうものにとりあえ ず暫定的に分けてやっていってはどうか。  勿論、今日お話しいただく子どもの現状についても、親や家庭とか、地域に離れては あり得ないので、重複するところはありますけれども、とりあえずこういうことでやっ ていく。  お手元に資料5というものがありますが、これは前回皆様方が自己紹介の中で関心事 項をお示ししていただいたものを簡単に取りまとめたものでございます。  我々にとっても非常に示唆を含む御意見をいただいていますので、今の津崎先生のお 話など簡単に御紹介をして、今日の御議論をしていただければと思うわけですが、先ほ どの審議事項に沿って、こういう御意見が出たということでございます。  例えば「子どもを社会的にどう位置付けるか」については、子どもという特徴をとら え直す必要があるんではないか。例えば20世紀は大人との違いを強調し過ぎた余り、今 の津崎先生の話にもありますが、自立した個としての子どもということのとらえ方が甘 かった世紀なんではないか。  2番目の「子どもの発達を保証するための理念・指針」であれば、子どもの代弁者の 視点というのは非常に大きくなってきている。特に児童福祉に関わる部分が増大してい るんではないか。  「子どもの発達課題」では、先ほどの自立ということでもありますが、子ども自身の 力をつけること、これが重要ではないか。  「家庭や社会の育成責任」については、子どもをきらう日本のプライバタイゼーショ ン。これが非常に進行していんではないか。大人も子どもも自分のこと以外考えない。 そういう意味では、滅私奉公というのは反動があるのかもしれませんが、例えば活私奉 公というようなキーワードの議論もあるんではないかという御議論がありました。  「子育て社会化」につきましては、日本がはぐくんできて、きれいに壊されたものと して、「社会の親心」とか、そういうものがあるという御紹介がありました。これに対 して、家族病理にきちっと立ち向かって、日本のいいものをもう一度復活すると、そう いう意味では地域社会、行政レベルでこれを復活すると、こういう課題があるのではな いかということでございます。  子育てに闇が深まっているという中で、虐待の話もありますが、虐待に至らないグレ ーゾーンなどがどんどん増えていると。そういう意味では子育ての社会化が重要ではな いかというような御議論もありました。  「子どもと家庭支援のためのサービスの在り方」について、一般的なサービスと養護 のような個別的なサービス、このグレーゾーンと言うんでしょうか、この間が非常に切 れていると状況にあるんではないか。  「家庭の状況とサービスの在り方」については、1つの方法論ですが、子どもとか親 の個々のリスクを評価し、リスクの度合に応じた援助の種類とか、そういう方法がある んではないかという御議論。  子どもや家族の資質にあった援助の必要性、例えば父親からの虐待を例に取りながら 御紹介をいただきました。  孤立した子育て環境に社会システムはどう対応するか。そういう意味では、先ほどの 社会の育成責任ということと相通じるわけですが、社会的親とか、最適の親、子育ての 社会化をもっと議論したらどうか。  お母さんという一言でくくられない多様な母親像があるんではないか。そういう意味 では、子どもと同時に母親像。その下の「親育て」という言葉がありますが、親そのも のの教育とか、これから親になる人の教育。こういう親育て、親育ちが子育てには重要 ではないか。  保護者が介入を望まない分野での介入のシステム。 分離した後の子どもとか、親の 援助のシステム。それに加えて地域のシステム。こういったシステム整備が必要ではな いかという御議論がありました。  施設とか養護の直接の御議論は、前回はなかったように思われます。  次のページですが、「サービスの質の向上」においては、保育所、幼稚園におけるサ ービスの質をどう向上させていくか。あるいは、先ほどと同じですが、子どもや親のリ スクの評価をしながらサービスを改善する。  「人材の確保と専門性の向上」については、ここは空欄になっていますが、2〜3回 出てきたのはチームワークとか、ネットワークの組み方が重要ではないかという御議論 がありました。  「ケアマネジメントの確立」、ケースマネージメントについては、先ほど親から分離 した後の子どもを市町村の諸機関が、ケースマネージメントをどうするかというシステ ムの構築が重要ではないか。  「対象者へのアクセス等」については、先ほどもグレーゾーンと申しましたが、サー ビスを利用していない人も相当いるんではないか。そういう人たちをどう結び付けるか という入口論と、どういうふうな形で出すか、あるいは出た後どうフォローするかとい う出口論が重要だと。  特に母子保健の分野においては、適切なサービスにアクセスできていない状況も地域 ではあるという御指摘もありました。  今度は、行政の在り方としては、特に分権化の問題とか、サービス供給主体の多元化 。 地域のさまざまな保健とか、福祉の実質あるネットワークの構築の議論がありまし た。  市町村や市町村以外の民間パワーの活用。こういう御議論があったわけですが、こう した関心事項を少し積み重ねさせていただいて、先ほど申しました4回ないし5回が終 わるころには、できればどこをどういう手順で重点を置きながら、この部会を運営して いくかというものを、皆さんと一緒に決めさせていただいくと、こういうものが私ども が想定している手順でございます。よろしくお願い申し上げたいと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。それでは、渡辺委員と山崎委員からそれぞれ15分程度御報 告をいただきまして、その後事務局から若干補足の御説明をいただいて、そして自由討 議を30分程度したいと、このように思っております。  それではまず、渡辺委員からお願いいたします。 ○渡辺委員  どうもありがとうございます。私は、現在、小児科病棟でフルタイムの小児精神科医 として外来治療、入院治療を行っている立場から、小児科診療における心の問題のリア リティーについて、できるだけ日常的な雰囲気というものをお伝えしながら、15分ぐら い簡単にお話ししたいと思います。  スライドお願いいたします。  (スライド)  小児科は、実は心の問題が大変増えております。私自身は、臨床経験29年の小児精神 科医ですけれども、小児科から始まりまして、精神科、神経内科、老人リハビリテーシ ョン、障害児療育センターなどを転々としまして、小児の精神科医になりました。  お手元に、臨床現場のいろいろな取り組みについて、より具体的に書いた別冊『発達 乳幼児精神保健の風』というものをお届けしましたので、是非読んでいただければ幸い です。 乳幼児精神保健という分野は、1980年から出現したお陰で、人間の赤ちゃんと いうものが、早期から、生まれ落ちたときから、人間の心地よい和の中で、コンパニオ ンシップというふうに言われていますけれども、自ら情報を発信して、そしてその仲間 になっていくプロセスが思ったよりも早く起きている。  特に早期の0歳から3歳ぐらいの脳が一番発達して分化する時期に、よりストレスの 少ない形で、自分の自然な資質を発揮できた子どもの方が、よい愛着形成が生涯にわた って続くだろうと。ただし、その場合は、必ずしも母親である必要はない。母親、父親 という血のつながりに必ずしも縛られない質のいい安定した一貫性のある、自分の気持 ちをよくわかってくれる関係に人間の子どもは一番反応して、そのときに脳の機能が一 番よく発揮できるということが、どんどん知られております。  そういった辺りが、私どもの臨床のベースになると思うんです。どうしてもお父さん や、お母さんや、家族の問題があるときに、一時的に私どもが黒子になって、家族の応 援をすること。縁の下の力持ちになることによって、次の世代にお手伝いができるんで はないかと。  私自身は、精神科や障害児療育センターで働いてまいりましたけれども、何と言って も小児科の診療の場というのは、子どもにとって自然だと思うんです。子どもにとって 小児科の先生というのは、小さいときからずっと自分を見てもらえるし、子ども自身と 親が、一人の市民、家庭として見てもらえる場所であると思うんですけれども、私自身 は、8年前に母校の小児科教室から呼び戻されまして、小児精神科医としてフルタイム で働いてほしいというふうに言われました。  8年前には、小児精神科医は、小児科医にとって水と油だから、私は異端、異物にな るんではないかというふうに御辞退したんですけれども、小児科の教授が、これからは 小児科の身体疾患の形をして心の病気が増えてきている。現に増えているから、是非来 て小児科医をトレーニングしてほしい。小児科医が身体と、心と家族を扱える、あるい は家族の重い病理に関しては、的確な判断をして専門家に回していけるという、そうい う小児科医をトレーニングしてほしいという依頼がありました。  この8年半で約百三十名の小児科の1年医をトレーニングしまして、現在、関連病院 で若い医者たちが、自分のできる範囲で重い疾患をかなり上手に直してくれているとい う成果が上がっております。  例えば、この1年半に私どもが経験している小児科診療での心の問題の筆頭は、思春 期やせ症です。思春期やせ症の子どもたちは、救命を必要とするような命の危ない子ど もたちが15名来まして、10名は入院治療が可能でしたけれども、大変手が掛かる治療な ので、後の5名は自宅を病院のようにしていただいて、お母さんがすべてをなげうって 子どもに付き添って、赤ちゃんの段階から育て直すような形の密着した自宅ケアという ものでしのいで治療効果を上げております。  それから、虐待です。身体的、心理的、性的虐待、ネグレクトが、やはり小児科にど んどん飛び込んできます。  その背景には、アメリカ並みの離婚による崩壊家庭とか、父親の面会権に従って父親 の家に行ったら、そちらで知らない女性と赤ちゃんを見せつけられて、子どもが心理的 なショックを受けたといった非常に入り組んだ、都会の子どもにとっては非常に理不尽 な状況などが、私どもの診療に飛び込んでおります。  小児科では、腹痛となりましたら、必ず妊娠反応を取るということを、若い先生たち は常識だと思っております。去年で3名の10代の妊娠がありまして、1名が中絶、2名 が出産までこぎつけましたけれども、そのうちの1名は援助交際の15歳でした。出産に こぎつけた女の子は13歳でした。  それから、集団いじめがあります。これは、残念ながら学校現場で、少し変わってい るために、そうではないのに、アスペルガーと言われたり、ADHDと言われたり、あ るいは精神分裂病と言われて、袋だたきに遭うような形で集団から「精神科に行け」と 言われて、そして精神科ではなく小児科に来た子どもたちを、私たちが緊急避難的に入 院させまして様子を見ましたら、きれいに症状が消えて、学校の先生方と、よく学校の 集団生活等に関してお話し合いをして正常化に持っていったり、あるいは私どもの判断 で学校への登校をドクターストップしたりという形で守っているケースがあります。  それ以外の心身症として、不定愁訴、腹痛、頭痛といったものは、日常的にあります 。その背景には、夜間の脈が低い、あるいは高い。つまり、自律神経系の異常な状態が 起きておりまして、それは家庭の緊張とか、塾通いとか、あるいは過度の活動とか、自 分の資質や性格に合わない集団の中で苦労している子どもたちに見られております。  (スライド)  これが、思春期やせ症でございますけれども、この子は40キロから20キロに体重が半 分に減ってしまって、脈は40という状態です。当然ながら命が危険ですから、命を救う という小児科医しかできないことをやっていきますけれども、脳委縮、子宮、卵巣の委 縮、骨粗鬆症などが起きておりますので、このままでしたら成長障害になってしまう。 それを少しずつ体のシステムを揺さ振りながら、自ら食行動を取っていくというように 促しつつ、信頼関係に基づいて心の育て直しをいたします。体が回復しますと、本当に 1〜2歳のだだごねを激しく行いまして、それを1人の患者に関して、看護婦と若い医 者と指導員3名が掛かって、土日もなく食事を食べさせたり、荒れる場合には夜も付き 添ってという形で行って、私どもがそれを指導していきます。  と同時に、親子関係の育て直しをしながら、一度これだけ壊した体力は、約一年間ぐ らいは戻りませんので、学校の応援などをお願いして、そのことによって進学とか進級 が不利にならないように協力していただいています。  (スライド)  虐待は、緊急入院と治療という形で入ってきますけれども、すぐに私どもは児童相談 所に通告しまして、児童相談所の方々が来てくださいまして、そして合同カンファレン スをして、できるだけ家族が私どもの関与によって二次的なトラウマを受けないように 橋渡しになって、児童相談所の方たちが、最も適切な措置ができるようにいたします。  と同時に、赤ちゃんであれ、少し大きな子どもであれ、必ず虐待によるPTSDのケ アが必要ですので、児童相談所の方々と連絡を取りながら、私どもは長くフォローして まいります。  (スライド)  これは、つい最近入った2か月半の赤ちゃんですけれども、顔面にあざがあることに おばあちゃんが気づきまして、お正月にソックスをはがしてみたら、3度のやけどがあ りました。既に10日間放置されたやけどだったわけですから、おばあちゃんが緊急に病 院に連れていったら2件の病院が対応できないということで、私どものところに運び込 まれました。  真実は、定かではありません。赤ちゃんの父親の21歳の若い自分の息子が、どうやら こういう事態を引き起こしたんだというので、おばあちゃんに会いましたら、おばあち ゃん自身が語ったことは、何と我が息子の長男との相性が1〜2歳ぐらいから悪くて、 ボタンの掛け違いがずっと続いていたために、小学校から暗い子、重い余ってお母さん は、ありとあらゆる形で児童相談所に行ったりしたけれども、結局中学でいじめに遭っ て、ぐれてしまって高校では破壊行動などをして、そして同棲して生まれた赤ちゃんが こうだという、残念ながら一つの家族機能不全の打ち明け話をして、おばあちゃんが泣 き崩れていらっしゃいました。  (スライド)  そして、いじめというのは、症状がいじめの事実の訴えと一致するかどうかを外来で 聞いて、余りにも子どもがおかしな状態までいっている場合には、緊急保護入院をさせ て、安全基地を提供します。  そして、御本人、家族、学校からフェアーな聴取をしながら治療計画を立て、学校に 戻すかどうするかということを決めるわけです。  (スライド)  こういったいろんなものが小児科の中に入ってきます。小児科の若い医者はそういう 意味では、人生ドラマ、現代の社会病理の現実にさらされております。  そして一つ特徴的なのは、現代の家族機能不全の特徴がある事件で起きているんでは ない。周産期、乳幼児期の家族機能不全、それも今、よく知られているのが、工業先進 国の都会は、日本も欧米も産後の10人に、1.5 人の母親が、隠れた辛い、抑うつ状態 を3か月起こしています。それだけでボタンの掛け違いが起きてしまって、そういうも のにさらされた子どもたちの中には、敏感な子どもほど、母親の目を見なくなる。ある いは、こんこんと寝てしまったり、ぎゃんぎゃんと泣いてしまって、更に育児を苦しい ものにする。しかも、そういう、うつ状態に陥りやすい方ほど、誠実な、まじめな方で いらっしゃるから、夫にも語れない、夫も知らないという、そこら辺の苦しいものが、 一度乗り越えられたと思いながら、小児期の集団不適応に出てきたりし、そして思春期 に花開いていく。そのときには、思春期のときの親の機能不全が著名になっております し、親自身の生立ちの中で、いい父、母の機能を発揮するように自分は育てられてなか ったということをおっしゃいます。  (スライド)  ですから、0歳からの相互交流が一見、表からみると物質的にうまくいっているよう に見えるけれども、実は本当はミクロのレベルで緊張し合っている親子、緊張し合って いる夫婦などがいて、そして、表向きおとなしくて、よくできる子どもたちが、実は心 の中はグレー、二重扉、三重扉の心、本音を親にも出していないから、親も本音がわか らないまま、地雷を隠したみたいな心で思春期に入って、心がばんと爆発して不登校や 拒食症、行動障害、家庭内暴力になるというケースが一般的です。  (スライド)  結局、家族が家族の機能を発揮できない。これをもう少し家族機能で分解してみます と、まず父母が全責任を持って、語らない子どもの緊張を見抜いて、おい、お前、あい つはいい点数を取っているけれども、お母さんに気に入られたいからじゃないとか、少 し親たちの生活は忙しいんじゃないか、大人が全責任を持って、一人ひとりの 子どもの資質に合った育児をするように、父母連合が組めないことです。そのた めに、子どもも親の心配をしている。つまり世代境界がない。子どもは子どもとして、 安心して家庭の中で育つことができない。これは家庭の中だけではなくて、学校でも不 安定な未熟な教師を生徒が心配するということが起きています。  それから、思春期に掛けて、男の子は父親、女の子は母親に同一化していくという大 変なプロセスが、例えば一人っ子の男の子では、父親が不在であれば、そのプロセスに 入っていけない。あるいは父母の仲が悪い場合には、父親が娘の方に接近してしまうこ とによって思春期に、父と娘の距離が近過ぎるためにいろんな、ヒステリー状態などの 症状が起きたりということが起きやすいわけです。家族機能の父母連合を組めない。世 代境界がつくれない。性差境界があいまいであるといった辺りが子どもたちの発達を非 常に苦しくしていると思います。  (スライド)  これがお母さんですけれども、このお母さんのぼっとした不安定な、あるいは生き生 きとしない、その精神状態を間主観性、赤ちゃんは生後数か月からピックアップしてい て、敏感な子どもは、そこからそれに同調して、うつ状態になってしまう。そのために 産後うつ病が数か月間であっても、赤ちゃんの中に、母なるものは暗いもの、母なるも のは死んだものという感じが脳の中にインプットしてしまう辺りが、今、国際的に問題 になっております。つまり、愛着障害がゼロか月から起きているという実態があると思 います。  つまり、核家族のマンションというのは、長いこと人間が洞窟で群を成してきた、あ の集団の生活とは余りにも違うわけです。サファリの動物が、動物園のおりでは非常に 苦しい、毛が抜けると同じように、人間の赤ちゃんとお母さんが孤立して、高層マンシ ョンにいること事態が不自然であるという、これは1970年代のイギリスなどで研究され ておりますけれども、そういうことが日本でも広がっていると思います。  (スライド)  そして、お母さんの中には、赤ちゃんといると、むかむかとなって、思わず首を締め たくなる。特に1歳半くらいのだだごねの時期は、大事な自我が伸びる前の時期ですけ れども、ウィニーコットという小児科、精神分析医が言うように、最高のお母さんでさ え、赤ちゃんの首を締めたくなるくらい子どもの自己主張が激しい。ここでお母さんが 、包容力を持った周囲によって大丈夫だよというふうに確認してもらえないと、お母さ ん自身が自分の憎しみや、不安によっておびえてしまって、あっという間に悪循環がで きていく。  (スライド)  そういうときに夫がそれをよくわからないまま、夫も赤ちゃんの存在によってくたく たになっているときに、母に怒鳴るという三つどもえの悪循環がどんどん定着していく わけです。  (スライド)  この気の毒な状況の背景に、もしお母さん、お父さん自身の、内なるのんびりとした 身体記憶としての生立ちですね。温かく、はぐくまれて、失敗を許されて育ったという ことがあれば、まだ内面の宝として自分を自分で支えていくことができますけれども、 必ずしも戦後のどさくさの、若い両親の世代たちは、必ずしもゆとりをもって育ってい なかった。  (スライド)  それどころか、「見ざる、言わざる、聞かざる」という日本的な考えで、それぞれの 家族は一切言いませんけれども、解決していないトラウマがある。例えばシベリアの強 制収容所でおじいちゃんかすごく厳しい状況に、20歳か23歳までさらされて帰ってきた 。そうなると、もう死んだ先輩のことを、「死んでも死んでも死にきれない」という先 輩の言葉を何とか日本に伝えたいという緊張したおじいちゃんは五十何年前かの心理状 態、若者の心理状態のまま家を仕切っていきます。そうすると、でれっとテレビを見た りすることが許されない、ふわっとしない家族ができてしまって、せっかく真面目な家 族が苦しむということなどがあります。  (スライド)  さらに日本の女性たちは、戦時中に子どもを失ったりしているわけです。そういう母 に育てられ、さらに暗い母の瞳を見て育った乳児期体験がある母たちが、それを思い出 す。  (スライド)  あるお母さんは、子どもの目が見られない。「この子が自分をきらっている」と言い 続けるんです。お母さんも赤ちゃんも非常に健康、うつ状態でも何でもない。そして、 いろいろ信頼関係の中で聞いたのは、このお母さん自身が8か月のときに、乳児院に入 れられて、8歳まで施設に入っていた。刺激されるそのために、自分自身がどこか母性 的な世界を赤ちゃんの存在によって刺激される。子どもと向き合わなくなる。  (スライド)  そういった話を私どもがその方の親に代わってきき、よく乳幼児期を乗り越えたと。 あなたはすごい資質の人だよ。これからはみんな応援するから大丈夫よと言って、はげ ましていきます。するとしみじみと自分の大変さを振り返ったりすることができるよう になり、赤ちゃんと共にいることが楽しくて、自分自身が童心になって赤ちゃんと遊ぶ ということができます。  そんなわけで、私どもが親育て、家族育ての小児科、親子の安全基地としての小児科 をつくっていこうという雰囲気でやっております。  幸いに大学の病院には、あらゆるジェネレーション、20代から60代までのスタッフが 大勢おりますから、この入院の間、しっかりとお預かりして、若い先生たちも親になっ ていく練習として、子どもをかわいがるし、親のサポートをする。新しい集団体験をす る。そして、カウンセリングなどをして、父母連合と親機能を強化していきます。  (スライド)  これは拒食症の女の子ですけれども、赤ちゃんをおんぶしているお母さんに刺激され て、血のつながらない看護婦に、徹底して甘えています。  (スライド)  戦前というのは、命が本当にはかなく消えて、乳児死亡率が高かった分だけ、本当に 命をよく見守っておりました。工業化社会では、学歴とか点数とかでどうしてもせかせ かとする。そうすると、本音を出し切っていく心の根っこが育ちにくい。先ほどおっし ゃったように、試行錯誤が許されない子どもらしい、身体体験、対人関係の乏しい世界 になっていく。  であれば私どもは、この工業化社会のど真ん中にフェアな形で次の世代を守っていけ る場をつくっていく。  (スライド)  そんなアイデアで、村のような小児科というものを目指して8年やっておりましたけ れども、そこからは私どもも学び、いろいろなこと、社会の在り方などを考えておりま す。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。御質問は最後にまとめて行いたいと思います。 それでは 、山崎委員、お願いいたします。 ○山崎委員  ただいま渡辺先生から非常に深刻なお話、本当に胸を詰まらせられるようなお話を伺 いましたが、私の話は非常にアバウトなことを申し上げることになると思います。皆さ んのところに、資料を配っております。「21世紀を展望した子どもの人間形成に関する 総合的研究」における、私の担当部分と「子どもを取り巻く状況の変化と子どもの現状 」です。多田時間の関係上「21世紀を展望した子どもの人間形成」につきましては、 省略させていただきたいと思います。  ただ、私がこういった仕事をいたしましたのは、そこにも書いておきましたけれども 、今日及び今後の子どもを取り巻く状況というものが、先行き不透明で、過去の経験で は測り知れない多くの未知との遭遇をもたらすだろう。したがって、どのような状況の 変化があるか。そして、その変化を踏まえて、子どもが健全育成を成し遂げていくため には、子どもをどのようにとらえたらよいのか、光と陰、昔と変わっていないものと変 わっているものという両面があるんですが、将来像を描くためには、やはり最悪の事態 というものを予想しながら、それに対する対応策を考えていく必要があるだろう。そこ であえて否定的な面を中心に、子どもの現状をとらえてみようとしたのであります。  個別的な研究は進んでいるんですが、多角的、総合的な観点から包括的にとらえたも のというのは余りございませんので、一応そういう見取り図、あるいは大きな枠組みを つくったということで御理解いただきたいと思います。  とりわけ私は教育の問題を中心に考えてとらえたわけですけれども、しかし、この問 題は福祉の課題を解決するのにも役に立つものだと思っておりますし、私自身、具体的 にどういうような状況を踏まえて、政策を立てたらいいか、その提言の方に重点を置い て書いたつもりでおりますので、そういった部分でお話しできるのであれば、また、さ せていただきたいと思っているわけです。  前置きが長くなりましたが、「子どもを取り巻く状況の特徴」として、一応5つ挙げ ておきました。1番目が小家族化、少子・高齢化社会化、2番目が都市化・過疎化の進 行、そして3番目が消費社会化・私事化、プライバタイゼーションであります。  4番目として、価値観の多様化、多元化。  5番目が地球化、グローバリゼーション、国際化、IT革命の一層の進展であります 。  私自身としましては、3番目と4番目が非常に大事なのではないか、教育の観点から 、この辺は中心のものとしてとらえていきたいと思っておりますが、例えば、2番目の 「都市化・過疎化の進行」のところにあります、「遊び場、地域社会における居場所の 喪失」という問題は、中教審の答申などで言われております「第4の領域」、新しい地 域コミュニティーの育成のような問題とともに、やはりこの部会で今後大いに論議され る問題になるのではないかと思っております。  次に、子どもの現状ですが、先ほど言いましたように、光と陰の両面がありまして、 今の子どもたちは、私どもの世代と比べまして、非常にプラスの面をたくさん持っては いるんですが、しかし、陰の部分、否定的な側面というものも非常に目立ってきており まして、先ほど御指摘のありましたような問題も、いろんなところで起こっております 。そして、学校病理と言われるようなことも、学校教育の中で非常に大きな解決しなけ ればならない課題になっておりますので、その辺のことも加味しながら、そこに5つば かり挙げておきました。  そして、最近の調査結果を基にして、つい最近出ました千石保先生の『新エコイズム の若者たち』で書かれておりますような傾向につきまして、ちょっと付け足しておりま す。  それぞれ指摘されているものをまとめたということにすぎませんが、今後の議論のた めに簡単に御説明させていただきます。  1番目の「自立性の欠如」、これは先ほどから御指摘されたことでありますので、詳 しく申しませんけれども、私自身、自立というものは依存から生まれてくるんだとおも っております。この辺のところがどうも忘れられているんじゃなかろうかという気がし ているわけです。  最近、親御さんたちが、子どもを余り抱かなくなったとか、あるいは子どもと一緒に 過ごす時間が非常に少なくなったとか、日本は過保護の社会だということをよく言われ ていたんですが、逆の現象というものも数多く生まれておりますし、あるいは基本的な 生活習慣だとか、生活リズムが欠如して、いわゆる夜型人間の誕生ということも言われ ておりまして、自立心の十分育っていない子どもが多くなり、学級崩壊その他、いろい ろな問題の引き金になることが指摘されております。  また、「自尊感情」、あるいは「自己効力感」だとか、いろんな表現でなされており ますけれども、自信の持てない子どもの増加の問題があります。  自己評価が非常に低くて、劣等感が強い。こういう子どもたちが思春期になりまして 、まさに自分らしさの発見だとか、自分探しの旅などとよく言われますけれども、そう いったことを回避してしまう。自我の確立の未熟な子どもの増加が、先ほどありました 引きこもり現象だとか、フリーターの問題などにも、関係しているかもしれません。  逆に、自己イメージの肥大した、非常にナルシスティックな青年も多く、人の話を全 然聞かないとか、非常に自信過剰で、私などはとても付いていけないと思うような若者 たちに出会い、驚くようなこともございます。  2番目としましては「社会性、対人関係能力の未発達」、これも非常によく言われて いることでありまして、自己表現力だとか、コミュニケーション能力の低い子どもが増 えています。非常に語彙が少ない、ムカツクとかキショウとか、あるいは何でもかわい いで済ましてしまうとか、あるいは単語を並べるだけ。「先生トイレ」だけしか言わな い。先生はトイレではありませんという冗談で対応するとかいう話がよくありますけれ ども、こういう語彙の少ない、コミュニケーション能力の低い子どもがキレてしまって 、すぐ手を出すと言われています。昔はあの人は「切れる」人だというとほめ言葉だっ たんですが、このごろはどうもキレる子というのが問題の子どもということになってし まっているようです。  「対人関係がうまく結べない子どもの増加」。これもよく言われます。そこに幾つか 挙げておきました。濃密な人間関係よりも、「就かず離れず」の人間関係に快適さを感 じる。「君子の交わり」などと昔は言いましたが、そういう感じに子どもたちはなって きているのかもしれません。  それから「体面的なコミュニケーション」、熱い語り合いというよりも、メディアを 介したコミュニケーションですね。「メル友ブーム」などとよく言われますけれども、 こういったことが「ソーシャル・スキルの訓練不足」とも関係してくるのかもしれませ ん。  それから、「異年齢の人々との付き合いが苦手」、こういった形で対人関係がうまく 結べない子どもが増加しているということも言われます。  それとの関連で他者理解だとか、思いやりの不足した子どもの増加といったことも言 えるのではなかろうかと思います。  3番目に、遊び体験、自然体験、生活体験の単調化、貧困化、これもよく言われてお りますので、挙げておきました。遊びの問題、これを私は非常に大きな問題だと思って おります。遊びが非常に室内化、孤立化して、外遊び、仲間遊び、集団遊びが少なくな っています。  そして、子どもたちだけではありません。遊ばせない親もいますし、あるいは子ども と遊べない親の増加、こういった問題も併せて指摘しておきたいと思います。  直接経験に欠ける子どもの増加ということは、「メディア人間」の増加とも関係いた しますし、現実感覚の衰退は、単なる現実感覚だけではありませんで、もっと深いとこ ろで五感の能力ですね。感覚というものの能力が非常に欠けた子どもたちが増えていま す。これはやはり大きな問題です。教育の面におきましても、感覚教育の重要さはルソ ー以来強調されているんですが、私も乳幼児期の段階から、これは取り組まなければな らない問題だろうと思っております。  4番目、子どもの「完全消費者」の問題。そして、この問題と関連しまして、感動経 験、没頭体験の少ない子どもの増加、それが夢も希望もない人生のみならず、夢も希望 も社会に対して抱けない子どもたちの増加というところにもつながっているんだろうと 思います。  次に、「自己中心主義の蔓延」についてでございますが、これはよく言われます「ジ コチュウ児」の増加ということでありますが、それは、「ジコチュウ親」との相関だろ うと思っております。自分の子どもにしか関心のない「自子主義」、そういった親御さ んたちが増加しております。  そういった事柄と関連しまして、「社会・公共的なものへの無関心」、「価値・規範 意識の低下」、「善悪の基準の曖昧化」、こういう問題は教育の問題として非常に私は 大事な問題だと思っておりますが、同時にこれは福祉の問題を考えていく際にも、欠か せない論点なのではないかと思っております。  5番目ですが「現在享楽志向の増大」というのは、先のことは考えないで、今をエン ジョイするという感じです。「個人の利害・損得・物質的な価値」を優先させる、ある いは今を楽しむ、エンジョイする、そういう快楽を優先させる子どもが増えています。  したがいまして、我慢するとか、頑張るとか、努力するとか、あるいはまじめである とかいったことが軽視されています。また「モヤモヤ」・「イライラ」感、あるいはス トレスをためこんだ子どもたちが非常に増えていて、ちょっとしたことが引き金になり まして、非行だとか問題行動に走るということにもなりかねません。  それから、もう一つは、すべての子どもがそうだとは申しませんが、非常にメディア の影響に過敏な子どもが増えております。非行だとか犯罪の一般化と言われるような事 柄とも関連しておりまして、バーチャルとリアルの区別が非常にあいまいになっている 問題も指摘しておきたいと思います。  しかし、どうもバブル崩壊以降、ちょっと雰囲気が変わってきたんじゃないか、お母 さん方のしつけが、個性重視といか、子どもの特技を生かすというか、そういうところ に重点がシフトしてきたんじゃないかというよう問題意識から、2000年に「新千年生活 と意識に関する調査」すなわち4か国の青少年を対象にして、性だとか家族、社会、国 、価値観についての意識調査がなされまして、その結果、どうも現在享楽志向から「自 己決定義」、あるいは「新真面目主義」というところにシフトしてきたのではなかろう かという、千石先生の著書がつい最近出ました。非常に興味深く読ましていただいて、 新しい傾向として、そこに挙げておきました。  千石先生のおっしゃる新決定主義というのはどういうことかと言いますと、セックス は結婚前でも自由でよい、あるいは、結婚は必ずしなければならないものではないと思 っているけれども、親が年を取ったら必ず面倒見るとか、国のために何か貢献したい、 つまり、自分で決めることだったら自分で責任を取るという価値観がどうも現れ始めた のではないかということです。  例えば、自分たちで選んだ代表によってつくられた法律だったら、間違った法律でも 従う。今までそういう意識が若者たちの間に非常に少なかったけれども、そういう新し い傾向が芽生てきたというような御指摘でありまして、こういう傾向に期待を表明して いいのかどうか、私などはまだ迷っておりますが、今後いろんな形でこういう調査をも っと深めていくことによって、新しい子どもたち、あるいは青少年の傾向が捉えられる のではないかと思っているわけであります。  ごく簡単にお話しさせていただきました。御質問がございましたら、補わせていただ きたいと思います。 ○岩男部会長  ありがとうございました。  それでは、時間が少し押しておりますけれども、皆川課長の方から補足説明をお願い いたします。 ○総務課長  両先生とも関係しますので、私ども用意させていただきました資料8「子どもに関す る資料」をかいつまんで御説明申し上げたいと思います。  この資料は、今日は2回目の資料で、3回目、4回目、議事に応じて別途また計数の 資料を用意をさせていただくということでございます。  例えば、最初の法は母子保健の資料、データを用意していますが、2ページでござい ますが、2ページの下の方は、出生の場所が、戦後直後は自宅が多かったわけですが、 圧倒的にというか、昭和30年代から昭和40年代にかけて病院で生まれる、99%が病院で 生まれる。先ほど渡辺先生が、マンションと洞窟の話がありましたが、生まれたときか ら個室で、洞窟で生まれる、こういう状況でございます。  人口の関係がありますが、4ページは母の年齢別の出生割合、図を上の方に書いてあ りますが、御案内のように、30歳から34歳で生まれる割合が増え、20歳には減ってきて いるという状況でございます。  6ページでございますが、渡辺先生のお話にも少しありましたが、全体として人工妊 娠中絶が近年増えてきております。中でも、8ページでありますが、年齢別の人工妊娠 中絶の率が書いてありますが、20歳未満、あるいは20歳から24歳というところで増えて います。戦後は、御案内のように、どちらかというと高齢の部分での人工妊娠中絶があ ったんですが、近年では急激に若い、これから本当に母親の年齢になる世代の人工妊娠 中絶が増えてきています。  9ページから11ページまでは、出生直後の体重とか身長とか、胸囲が書いてございま すが、ここのところ数回の調査では少しずつ赤ちゃんが小さくなっている。私よくわか りませんが、もし御質問があれば後で栄養の専門家もいますので、お答えをしたいと思 います。 一方で、12ページで、栄養の摂取量でございますが、これはちょっと見にく くて恐縮ですが、一番下の段、平均充足率というものがございますが、先ほど、拒食症 の話がありましたけれども、若年層でエネルギーの摂取量が少なくて、我々の世代、特 にそうなんですが、必要以上にエネルギーを摂取しているという状況でございます。  それと併せて、17ページをごらんいただきたいんですが、これも家族、家庭の問題、 次回の議論となるかと思いますが、家族そろっての夕食とか朝食というのは、年を追う とともに減ってきている。そういう中で、栄養摂取量なんですが、19ページをごらんい ただくと、男女別に上下に出ておりますが、男はますます太って、女はますますやせて いく。特に、これは渡辺先生のお話にもありましたが、下の段の右の方で年齢別のやせ の割合というのが出ておりますが、20歳から29歳、あるいは30歳から39歳、こういうと ころで、お母さんになるところがやせて、私どもの年齢の上の方の図に載っております が、でぶになっていくということでございます。  そうしたお子さんが、山崎先生の話にもありますが、どんなことに熱中しているかと か、趣味とかいろいろ書いてあるのが19ページ以降でございます。男の子は、小学生は ゲームをしているとき、それから中学になりますと、スポーツや趣味なんですが、やは りゲームをしているときというのが熱中する時間の最たるもの、女性の方は、友達や仲 間といるときが多い。  21ページでございますが、先ほどキレるというお話もありましたけれども、小・中学 生が自分の性格を見ているとき、グラフにありますように、怒ったり、乱暴するとか腹 が立つ、キレるところが多い。  山崎先生のお話にもありましたが、自分らしさというのがその下の図13にありますが 、下から3つ目に、自分には自分らしさがあるかということを聞くとともに、その自分 が好きかどうかというのとともに、自分は余り好きではないということが多いようであ ります。 それからまた、山崎先生のお話にもありましたが、22ページ、特に右側の図1 5でありますが、小・中学生の逸脱行動に対する考え方、特に、小学校から中学にかけ ての変化というのでしょうか、そういう行動に対するマインドというのが非常に悪くな っているというデータでございます。  24ページ、先ほど渡辺先生の家族とか男女の話がありましたが、最も強く影響を受け るのが男女別で、大分低くなってきているのでしょうが、男の子ではお父さん、女の子 ではお母さんということにはなっているようであります。  26ページは、そういった親と自分の関係、例えば、親は自分の言葉をよく聞いてくれ るとか、尊敬しているかということを聞いたものです。  これは私どものデータですが、そうした子ども、特に乳幼児がどういうところで今生 活をしているかということですが、ここの黒とかグレーのところは保育所、幼稚園です が、3歳以上になると、ほとんど幼稚園とか保育所で過ごす。こちらの絵にはありませ んが、民間の保育所などへまだ20万人ぐらい保育をされるということで、そういう意味 では、徐々にそういう施設における保育というのは増えてきているという状況でありま す。  飛ばしまして31ページでございますが、これも山崎先生のお話にありましたが、いつ も遊ぶ場所で大きな変化が出てきておりまして、例えば、自分の家とか、公園というこ とで、外回りというのがだんだん減ってきている。その中でも、特に、次の32ページで すが、テレビとかビデオゲームを見ながら過ごしている時間がだんだん多くなってきて いる。あるいは、33ページでは、よくやる遊びでも、男の子はテレビゲームとか、女の 子でもテレビゲームの割合が非常に増えてきています。  休日の過ごし方を聞くと、34ページですが、まだそれなりに多いのが、男の子、女の 子、ともに上から3番目の家族と出掛けたり遊んだりする、次が、一番上の友達と集ま って遊ぶ、その次が男の子ではテレビゲームをする、といったところになっているよう にです。 よく引用されていますが、35ページ、学校の後のクラブ活動と塾の状況は予 想されますが、元年、6年、11年を見ていただきますと、クラブ活動をしている割合が だんだん減り、右側の塾に行っている割合が多くなってきている、よく言われているこ とであります。  38ページは、さまざまな家庭の手伝いとか生活体験、社会体験、友人関係、これの国 際比較をしています。かなり特徴的なところが出ているようでございます。後ほどごら んいただければと思います。  犯罪の面では、44ページでございますが、刑法少年の犯罪、触法少年から年長少年、 余り目立った傾向はないんですが、ただ、率で言うと若干ずつ増えてきている。特に、1 6歳、17歳の中間少年、こうした率が人口比では増えてきている。  一方、46ページですが、中でも、刑法少年に占める、これは高校生の割合が急速に増 えてきています。あるいは46ページの下の図ですが、有職、無職の少年ですと、無職の 少年の犯罪が増えてきております。  いじめの話についても言及がございましたが、これは47ページ、いじめの推移を見る と、やはり多かったピークが平成7〜8年とかあるんですが、それ以降は、文部科学省 の強力な御指導等があるんでしょうが、数としては漸減しているということでございま す。  一方で、先ほどお話がありましたが、49ページ、登校拒否・不登校が急速に増えてお りまして、図37の2.50日以上の登校拒否・不登校は相当増えているという状況であり ます。 就労の状況を見たのが50ページ以降でございますが、中卒、高卒者の就労、子 どもが減っていることもあり、数としては減ってきております。51ページの中卒者の離 職状況等を見ると、私も驚いたんですが、1年後は5割ぐらい離職している、3年後に なると7割が離職をしているということです。  最近の就職状況が悪いんでしょうか、8年から9年に書けて3年後の離職状況の率が ちっと逆行しているというような状況が見受けられます。  それから52ページからしばらくは傷害関係ですが、55ページからは津崎先生のお話し になった虐待関係の、特に児童相談所における処理件数が急速に増えている。あるいは 虐待が深刻化しております。これに関して若干、うちの専門官から補足説明をさせてい ただいて、私の説明を終わりたいと思います。 ○相澤専門官  表でちょっと見ずらい点がございますので説明させていただきます。31ページの図23 、いつも遊ぶ場所という上の黒いところでございますが、「自分の家」の黒いのが74.5 、「友だちの家」が30.7、「家のまわり」50.1、「公園」44.8、「児童館などの児童施 設」5.2 、「その他・不明」が7.9 でございます。  それから、表といたしましては、27ページと36ページの見にくいんでございますが、 上の表が出ておりまして、それを見ていただければわかるようになっておりますので、 時間がございませんので省略させていただきます。  以上でございます。 ○岩男部会長  ありがとうございました。誠に申し訳ないんですが、お約束をした30分という自由討 議の時間がちょっと無理でございますけれども、できるだけ活発な意見交換を時間のあ る限りしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。  どうぞ御自由に手をお挙げいただきたいと思います。 ○鈴木専門官  児童環境福祉専門官の鈴木です。山崎先生にちょっと御質問をしたいんですが、先生 は人間研究に関することを中心になされた場合、今回、子どもの否定的な現状について 多面的な御指摘なんですが、その中心的、また、構造的に考えるとした場合、どこが機 軸になるんでしょうか。それをお聞きしたいのと、更に、もし、こういった、今課長さ んからの方からデータの説明がありましたように、どちらかというと否定的なマイナス な状況が10年、20年もし続くとしたら、どういう社会になるのかという、描き方。  それから、3番目には、とは言っても、子どもの笑顔ですとか、子どもが非常に楽し そうに遊んでいる姿というのは大人を大変励ましますし、元気を与えます。時代と違っ た形で子どもたちのこれまでにない積極的な面もあると思いますので、もしその点があ りましたら、お答えしていただければと思います。 ○山崎委員  非常に大きなそして核心を突いた御質問をいただきまして、どう答えていいかちょっ と迷うわけですが、先ほども言いましたように、私自身は、要するに、地図のようなも のをといいましょうか、あるいは座標軸のようなものをかくことによって、それぞれの 方の関心に応じて、重点を置いてそれを見ていただいたらというつもりでこういう構造 化をしておりますので、御関心によりまして、それぞれ中心にくるものが違ってくるだ ろうと思っているんです。  先ほども申しましたが、私自身の関心としては、例えば、子どもを取り巻く状況の特 徴というところでは、消費社会化がプライバタイゼーションの問題とか、あるいは価値 観の多様化、多元化の問題が、私は非常に重要なものになっていくのではないかととら えてはおります。  例えば、しつけをどうするか、あるいは親子関係のみならず、夫婦の関係といったも のをどうとらえていくか、そして、その人たちが社会との関係をどう見ていくかという ような価値観にかかわるようなところがさまざまな問題と、その人がどう対応していく かというのにすべて関係してくると思っています。また、物事をマクロに見るかミクロ に見るか、こういうところでも違うわけです。先ほども申しましたが、学問の専門化に 伴いましてミクロの面で非常に緻密に物事を見ていく傾向は強まっているんですけれど も、しかし、全体から包括的に見て、それぞれの面を位置付けて、関係をを明らかにす るということがこのごろちょっと欠けているのではないかと思うので、私は余り力があ りませんが、一度、そういうことをやってみようということでやったわけです。  子どもの問題あるいは教育、福祉も含めまして全部そうだと思うんですが、個人の側 面と、それから社会の側面、そして、その社会というのは、歴史と伝統と文化を担って いるわけですから、したがって、個人的な側面、そして社会的な側面と文化的な側面、 この三角形をどういう形で組み合わせていくか、この辺のところはやはり一番大事な問 題でして、この3つのバランスが崩れたらやはりだめなんですね。だから、個性の重視 というのが今言われていますけれども、単に個性だけの重視で果たしていけるのかどう かという問題があるわけです。  したがいまして、子どもの現状のいろいろな否定的な面が出ているのは、この3つの どこかでバランスが崩れているということでありまして、しかもそのバランスは、決し て量的なバランスではなくて、質的に、どういう中心で全体のバランスが取れるかとい うところをダイナミックにとらえていくようなことを考えていきたいと思っているわけ です。どこが機軸かという問題は、それぞれどういうテーマを中心に考えていくかとい うところでかわっていきますから、今後、それぞれのテーマに応じて、ここで考えてい けたらなと思っているわけです。そのための枠組みをつくったということであります。  それから、こういう状態が10年、20年続いたらどうなるか、これは本当に大変なこと になるだろうと私は思っているんです。例えば、少子化で、一人っ子が中心になります が、これは今中国が一人っ子政策で非常に大きな問題を抱えていまして、子どもがみな 王子さんであり王女さんである。わがままで大変だというようなことは、中国からの留 学生がかなり言っておりまして、私のところにおります30前後の人たちが、このごろの 若い子は、というようなことを盛んに中国の子どものことをとらえて言っておりますか ら、日本も案外そういうことになるかもしれません。プライバダイゼーションが、これ ほどまで進んでおりますし、そして、全体のために責任を取ろうということがない傾向 が続きますと、総理大臣なんかになっていられないというリーダー不在の社会になるか もしれませんし、あるいは本当の意味で腹の座ったといいましょうか、腰が座ったとい いましょうか、そういう身体的な面でも、中心のあるような人たちというのはだんだん 減っていくのではないかというような非常に比較的な側面もあるんですが、しかし、私 は教育学者ですので、99%だめでもあとの1%に賭けるというところがありますし、そ れこそ絶望の縁で我々は新たな飛躍をするというのはあるわけですので、そういう闇の 中でこそ光が見えるという、私は最終的なところで希望は捨てておりません。そして、 そんなことになってはいけないということで、我々大人の責任として、きちんといろい ろな対応をこれから考えていかなければならないのではないかと思っております。  そして、現在の子どもたちのプラスの面は、私はたくさんあると思っているんです。 メディアに対する対応の仕方、私はインターネットできませんとか、あるいはカラオケ に行きまして、学生たちのうまいのにはほとほと兜をぬいでいますし、というようない ろいろなプラスの面はたくさんあるわけです。  そして、教育の面は、よいところを伸ばし、悪いところを抑えていくということを考 えないといけませんから、したがいまして、今回はあえて否定的な面を中心にお話しし ましたけれども、やはりさまざまな対応を考えていく際に、プラスの面をいかに伸ばし ていくか、マイナスの面を何とか取り除こうと思って、それこそ角のためで何とかとい うか、昔のあれがありますが、そういうことにならない、そういう施策を考えなければ ならないというようなことを考えています。お答えになりましたでしょうか。 ○岩男部会長  ありがとうございました。どうしても今ここで御意見をお述べになりたいという御希 望がございましたら、あと1問だけ、お一人だけということにさせていただきたいと思 いますけれども、よろしゅうございますか。  大変申し訳ございません。それで本来でしたら、次回以降の進め方についても、ここ で御意見を伺うところなんですけれども、とりあえずは、冒頭の事務局の御説明で次回 以降、家族あるいは行政等について討議をしてほしいという御希望でございました。  本日は大変に密度の濃い御報告、それから資料の提供がございましたので、これを踏ま えた上で、次回引き続き御質問あるいは御意見をいただくというようなことで、本日の ところは勘弁していただきまして、次回については、親、それから家庭の状況について 意見交換をお願いをしたいと思います。本日と同様、何人かの方に御報告をいただいて 、意見交換をするということにしたいと思っておりますけれども、御依頼をいたしまし たときには、是非、御協力のほどをよろしくお願いをいたします。  それでは、事務局の方で何か御報告があるようですので、お願いをいたします。 ○総務課長  事前に理事会の日程調停をさせていただきました。ほとんどの方が御参加いただける のが4月19日の13時から15時でございます。また、正式にはノーティスをさせていただ きたいと思いますが、この日に決めさせていただきたいと思います。  それから、本日、資料15で議事要旨を配付させていただいていますが、要旨としてま とめますと、なかなか皆さん方のおっしゃったことが生き生きとして出てこないという ことで、私も何回も議事録を読ませていただいたんですが、議事録に近いものを要旨と してやはりつくろうかなと思っておりますので、議事要旨をつっていただきましたら、 もう一回議事録をお配りをして、よろしければ修正をしていただいて、それを議事要旨 として出したいと思っておりますので、また、作業をお願いするかもしれませんがよろ しくお願いしたいと思います。 ○岩男部会長  何か特段の御発言がございますでしょうか。よろしければ。ちょうど時間になりまし たので、本日はこれでおしまいにさせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。 (照会先) 厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課総務係 (代)03−5253−1111(内7823)