02/02/13 社会保障審議会第5回介護給付費分科会議事録          社会保障審議会 第5回介護給付費分科会議事録 1 日時及び場所    平成14年2月13日(水) 10時から12時    厚生労働省 省議室 2 出席委員    西尾、井形、青柳、喜多、木下、木村、京極、見坊、笹森、田中(滋)、    田中(雅)、中村、橋本、樋口、堀江、村上、矢野、山口、山崎、山本の各委員    新井、鈴木の各参考人    岡委員、下村委員、澄田委員は欠席 3 議題  (1)介護報酬について    (介護老人保健施設、短期入所生活介護・短期入所療養介護、その他)  (2)その他 ○ 資料1に沿って、介護老人保健施設、短期入所生活介護・短期入所療養介護、その 他の報酬体系を考える視点等について、福本企画官より説明。 ○ 「国民にとってよりよい介護保険制度の実現を目指す立場から」について、山口委 員より説明。 (山本委員)  6か月を超えて入院している患者の自己負担を増やすという議論が中医協でされてい るが、自己負担増に耐えられずに退院した人が、施設も含めて、全部介護保険に転換す るのはおかしい。市町村側も受け入れが非常に難しくなり、混乱してしまう。病状等を 十分検討して、特定療養費化の対象患者の基準をつくるべき。 長期入院の特定療養費化については、介護で受け入れやすいように、自己負担額や実施 時期等について、中医協で十分検討していただくとともに、事務局は保険局と十分調整 してほしい。  療養病床をそのまま介護保険に持ってこられると市町村は大変困るので、事業者の指 定権限を持つ都道府県は、転換型老健の指定に当たっては、市町村の意見を十分に聞い ていただきたい。介護タクシーについても、県は指定だけして、実施の責任は市町村が 負っている。 (中村委員)  介護保険3施設の入所者の退所先を比較すると、介護老人福祉施設から34.9%、介護 老人保健施設から38.2%、介護療養型医療施設から33.1%と、医療機能のあるなしに関 係なく、退所後の行き先が医療機関となっている。その流れからすると、安易な転換型 老健の導入は介護保険の命取りになりかねない。介護保険は、従来介護サービスだけに 絞って少ない掛け金となっているわけだから、この際、医療療養型と介護療養型の整理 整頓を完全にしてほしい。  なぜ介護療養型ではなく老健への転換なのか教えてほしい。介護療養型を縮小させて いって2施設体系の方向に持っていくというなら分かるが、やはり医療保険から介護保 険への5万床・40万円、約2,000億円の費用転嫁ではないか。 (外口老人保健課長)  医療保険適用療養病床に入院している患者のうち、入院医療のニーズが低く患者側の 事情により入院を継続している者、いわゆる、患者調査や医療経済研究機構調査で約4 割を占める受け皿が整えば退院可能な者、あるいは、容態急変の可能性が低く施設や在 宅でケアできる者に対して診療報酬の特定療養費化が検討されているが、そういった 方々の本来あるべき行き先としては、医療ニーズの必要な介護療養型を含む病院より も、老健、特養、ケアハウス、グループホーム等の方が適切であると思う。  また、受け皿の施設は半年や1年で急に建てることはできないので、まずは特例を提 言して、それから次のステップへ進めていく必要があると考えている。 (中村委員)  介護療養型と転換型老健、さらに医療と介護の整合性や機能分担について、もう少し 明確化してほしい。また、実際の医療必要度の問題とデータがあまり一致していないの で、もう一度精査して、安易な流れに持ってこないようにしてほしい。 (木下委員)  療養病床に入院する必要のない者を在宅で受け入れるというなら分かるが、直接老健 でという議論はすっきりしない。本来は、在宅で見ることができるよう、在宅支援の サービスを充実させるべき。  費用面でお金がかかるから介護療養型医療施設はけしからんという話ではなく、利用 者の特性を考えて、どういうサービスが必要で、どういうスタッフがいる施設がいいの か、あるいは在宅で暮らせるのか、それには費用がいくらかかって、それを誰が負担す るのか、といった議論した上で、療養病床への入院が適当かどうか判断すべき。 (京極委員)  転換型老健については、もう少し検討の余地がある。  東京都の苦情処理委員会では、老健の保険外負担の苦情が非常に多い。これは介護保 険の制度の問題なのか、老健側の対応の問題なのか、教えていただきたい。 老健は看護婦が中心で、介護職員は無資格者も多いが、介護福祉士、社会福祉士、精神 保健福祉士等を、相談業務等も含めて、もっと積極的に活用すべき。 (山口委員)  施設によって様々であり、老健に限らず対応があまり適切でないケースはあろうかと 思う。老健は歴史がまだ浅いので、そういった苦情が出たのかもしれないが、そういっ たことがないよう研修等を通じて最大限の努力をしているところ。 介護の質の観点からは、ケアワーカーは当然有資格者が望ましいが、養成校を卒業する だけで国家試験なしで資格が与えられる介護福祉士の国家資格には少し疑問がある。国 家試験を必要とすることと、現在2年間の養成期間を看護婦の養成校の教育レベルまで もっていくことを、国の方にお願いしたい。 (木村委員)  財団法人日本公衆衛生協会の地域リハビリテーション懇談会の報告書にもリハビリの 必要性が書かれている。病院や老健から在宅に復帰するときに、個別のリハビリのプロ グラムを伝達することにより、その方の残存能力を生かした生活につなげていくことが できるから、その間の連携を加算で評価してはどうか。  訪問リハの実効率が非常に低い理由としては、専門性が高い個別プログラムのリハビ リが少ないことと、訪問リハの拠点が整備されていないことが考えられる。 (青柳委員)  山口委員から提出された資料によれば、老健の在宅復帰率低下の要因は医療機関でも 同じであり、長期入院への対応としての転換型老健はある意味においては、あまり根拠 がなく短絡的な考え方ではないか。  老健の在所日数が大幅に増えた理由は、逓減制の廃止以外には何があるのか。  老健にどこから入所してきているかのデータと、医療機関へ戻った人はどういうニー ズで戻っているのかの分析を教えてほしい。  老健の在所が長期化し医療ニーズが専門化・高度化する中で、50名定員施設で0.5人 の医師の配置で専門的な医療行為ができるか疑問。専門的な医療へのアクセスを阻害す る要因はできるだけ取り払うべきであり、入院基本料の水準を少し下げ、老健施設が提 供する医療行為のポジティブリストを縮小した上で、専門的な医療を医療保険上認める ということも考えられる。ただし、これには診療報酬上の対応が必要であり、診療報酬 と介護報酬の改定が年度を違えて行われる中で、どう整合性を図るのか。 (喜多委員)  施設の規模によって固定経費についてスケールメリットが働くので、規模別の報酬を 検討すべきではないか。  老健が在宅復帰の拠点であるというのはその通りであるが、都市部においては空き地 が少なく人口が密集しており、老健の整備は難しい。  医療療養型、介護療養型、老健の境界・機能分担を国民に明快にする必要があるが、 いずれにしても、介護保険の中で医療費を負担するのは反対。 (井形委員)  制度導入時に、保険料を払うことによるサービスの選択については、ケアマネを含め 強くPRしてきたが、どういう状態の人がどの施設に向いているというPRは不足して いる。 施設のあり方を明示するようにして、自由な選択権と合理的な選択が両立する 方法を考える必要がある。 (矢野委員)  老健の在所期間が伸びている原因の調査・分析を行うべき。山口委員提出資料では、 在宅復帰の阻害要因として家庭の事情が指摘されているが、在宅サービスと施設サービ スの給付のバランスが適切かどうかといった視点も必要。 (田中(雅)委員)  要介護度別の在所日数を示した資料と、制度導入時から現在までの間に在所者の方の 要介護度がどれくらい改善したかを示したデータを出してほしい。 (鈴木参考人)  中医協における長期入院の特定療養費化の議論では、所得との関係についてはあまり 議論されていないが、低所得者に対する支援は福祉の問題ではないか。  健保組合の老健では要介護度が高い方が増えており、介護職員を増やす必要があるた め、採算は悪くなっている。したがって、要介護度が重度の方の報酬をある程度上げ て、軽度の方を抑える見直しが必要ではないか。  転換型老健は、現実的なやり方であり進めるべきである。 (橋本委員)  平均7日の利用というサービスの特性もあり、ショートステイについてのクレームは 東京都では平均の3倍である。  施設サービスの30日間の初期加算がショートステイにないのはどうしてか。 (福本企画官)  資料1の23ページにあるとおり、ショートステイはそもそも短期間の入所であり、 施設に長期間入所されている方に比べて手間がかかることから、施設サービスの単位数 に、食事分と30単位の初期加算分をオンした報酬設定となっている。 (樋口委員)  ショートステイについては、歩けなくなった、体重が減った、褥瘡ができた、言語能 力が落ちた等の苦情が非常に多い。家族にとっては、ショートステイのおかげで在宅で 介護できるという面もあるので、ショートステイのあり方について、単独型・空床利用 型・併設型のどれがいいのか、どういう苦情があるのか、本人にとっていいのか・家族 にとっていいのかを含め、研究していただきたい。 (村上委員)  介護の目的は自立支援だが、現在の在宅介護は自立支援につながっていない。現行の 要介護認定においては施設のタイムスタディを在宅に準用しているため、見守りの時間 が認定でカウントされないことが一因となり、ヘルパーが待てずに手伝ってしまい、か えって自立支援を妨げている。在宅サービスにおける自立支援には、見守り機能が非常 に重要であり、見直しに当たっては、この点を十分に留意すべき。 (中村委員)  在宅復帰をしたい人にとっては、やはり夜間が不安であるので、退所後2〜3か月な どの一定期間、支給限度額をアップさせることによって、在宅復帰を誘導できるのでは ないか。  短期入所生活介護と短期入所療養介護の整合性を分かりやすく整理し直すべき。 (田中(雅)委員)  特養よりも老健の方が現行報酬設定時の平均要介護度が低いのに、報酬が高くなって いるのはどういうことか。  支給限度額を超えている利用者は、経済的ゆとりがあるから限度額を超えて利用して いるとは言えない。要介護5でも在宅で暮らせるように支える仕組みが介護保険であっ たと思うが、このままではお金のある人だけが在宅で暮らせるということになりかねな い。このことに対して対策を考えるべきではないか。 (福本企画官)  特養と老健の報酬差については、老健では医療行為を行うという施設の機能の違い、 医師、看護婦等の職種及び人件費の違い、医薬品等の物件費の違いを反映して差がつい ているものであり、制度導入前の措置費と施設療養費の差を基本的にそのまま移行させ ている。 (山崎委員)  老健の運営基準では、3か月ごとに退所判定することになっているが、実態として、 行政・現場はどのように対応しているのか。  転換型老健はいかがなものかと思う。長期入院の特定療養費化の対象となると言われ ている5万人が、社会的入院であれば在宅に行くべきであるし、老健の入所者よりも訪 問看護の対象者の方が平均要介護度が高く、医療依存度も高いというデータもある。転 換型老健をつくっても5年後には改修費用がかかるため、ダブルの投資であり、社会的 コストが高い。  ショートステイは同じ要介護度でも23種類もの様々な報酬設定となっていて、利用 者には分かりにくい。また、ショートステイに関わっている実際のマンパワーについ て、専従・兼務、夜勤体制等の職員配置がどうなっているのか、示していただきたい。  支給限度額についての今回のデータはあまり議論の材料にならない。単品ケアプラン が49%あり、また、訪問看護は医療保険にも請求できるので、限度額超の利用者が本 当に2%程度か疑問。施設から在宅へソフトランディングするための支給限度額の初期 加算など、給付費ベースでもう少し在宅に手厚く給付するべき。 (矢野委員)  平均利用率が約40%、限度額超の利用者が約2%というデータからすると、利用率 を高めるためにはどうしたらいいかの議論が先で、支給限度額そのものを変更する状況 にはない。 (山本委員)  ショートステイの利用率を教えていただきたい。私のところのショートステイは、1 0床中多くても3床しか利用しておらず、1週間利用して帰るショートステイはあまり 効果がなく、無駄も多いということである。それよりも、デイサービスを強化した方が 効率的。 制度導入時より施設入所者の要介護度は重くなっており、その分収入も増えているの に、施設の内容や設備は全然変わらない。施設の経営状況の公開と実態調査が必要。  私のところは利用率が高い方であるが、それでもまだまだ低い。介護サービスの区分 を整理統合して介護を受けやすくすることが大事。例えば、訪問介護については、身体 と家事を分ける必要はなく、要介護度別に時間単位で報酬を設定すべき。1週間単位で 区切って、その都度本人の希望を聞いてプランを立てた方が、より効果的でヘルパーも やりやすい。利用を希望する時間は朝10時などの特定の時間に集中しているが、時間 単位にすることによって対応できる。施設についても時間単位でやることが必要。施設 は24時間態勢だと言われるが、職員が誰かいても寝ている時間はあるわけだから、常 時介護しているということはない。  要介護認定は顔を見ないでペーパーのみで判定しており、マンネリ化しているので、 調査・検証が必要。  介護費用を上げる方向だけの議論は止めてほしい。むしろ、療養病床の報酬など下げ るための議論が合理的である。 (田中(滋)委員)  限度額超の1.5%の利用者の属性として、生活にゆとりがある方が多いのは当然である が、ゆとりがないために限度額近く使ってそれ以下で我慢している15%の方が、どうい う状態にあるのか別途調査する必要がある。難病や障害の方の場合に限度額近くまで利 用されていると聞くが、そういう方に対しては介護保険だけで生活を支えるのは無理な ので、限度額の引き上げではなく、医療や社会福祉制度との組み合わせが上手くできる ように支援することが必要。  老健への転換推進自体はいいが、基準の特例を認められた転換型によって老健全体の 評判を下げないことが必要。 (笹森委員)  利用率が100%近くの家族の会の会員の意見を訊くと、そこで我慢しているかどう かのデータはないが、限度額超の自己負担が重いという意見よりも、必要な望ましい サービスがないからそれ以上利用しないという意見が多い。したがって、在宅復帰のた めに限度額を加算するというよりは、どこでも公平に受けたいサービスが受けられるよ うに基盤整備を進めることによって、利用率を上げることが必要。 (喜多委員)  支給限度額については、基本的に次期改定では引き上げる必要はない。 (見坊委員)  以前資料要求した措置の実施状況について回答がない。約2割、50万人の方は介護 保険に不満を持っており、低所得で利用したくても利用できない人、介護放棄や虐待を 受けている人を救済するには、老人福祉法に基づく市町村による措置の活用が必要。介 護保険でカバーしきれない周辺の問題を解決できて初めて介護保険制度もいい制度にな るので、市町村における措置の実情を把握していただきたい。 (木村委員)  要介護者の自立支援を目指すケアマネが、要介護度が下がると収入が減る事業者との 間で板挟みにあって困っているという話を聞く。このままでは、自立支援に向けたケア プランの作成が進まない。したがって、要介護度別の報酬設定に異論はないが、要介護 度が下がった場合の自立支援を加算で評価するか、ケアマネを事業者から独立した形で 位置づけるか、などの組み替えが必要。 (京極委員)  施設からの退所時・退院時の相談加算をもう少し手厚くして、きちんとした退所・退 院計画をつくるようにすべき。  個室・ユニット新型特養について、自己負担を基本としつつ低所得者に配慮すると、 高所得者と低所得者しか個室に入れないという矛盾が起きる。将来全部個室になったと きに介護保険のカバレッジが個室にかからないようではいけないので、財政状況が厳し い現段階では仕方ないかもしれないが、将来的にはホテルコストの一部に公費を導入し て、介護保険でカバーしていくことも考えるべきではないか。 (樋口委員)  支給限度額に対する利用率を上げるには、サービス内容の問題もあるが、退所時に限 らない緊急・救急・初動時の限度額加算による介護保険の救急車的機能があってもいい のではないか。  お金がある人が多く利用しているようであるが、要介護5になると、一人暮らしの属 性も影響が大きい。社会的属性で区別しないのが介護保険の特徴であるが、限度額を少 し超えた場合には、自己負担を超過額の50%にするなどの考え方があってもいいので はないか。  老健の特徴は、そこで死なない施設であると思うが、3か月ごとの退所判定は入所者 や家族にとってはつらいので、在宅復帰を言うならば、どこに受け皿があるかを考えな ければいけない。 (橋本委員)  社会保障費全体の中で現実的な議論をすれば、現状では、支給限度額は今のままでい い。その前に、施設から在宅へ利用者をシフトさせていくことと、限度額一杯までの サービス利用の奨励が必要。  医療保険から介護保険に余分なサービスを持ってこないでいただきたい。 ショートステイは特養や老健並みの報酬ではやっていけないので、もっと手厚い配慮が 必要である。 (外口老人保健課長)  第6回は、3月25日(月)の16時30分からで、議題は、介護報酬の各論とし て、痴呆対応型共同生活介護(グループホーム)、福祉用具貸与・購入、住宅改修、特 定施設入所者生活介護(有料老人ホーム、ケアハウス)、その他を予定している。 (西尾分科会長)  本日はこれをもって閉会とする。 照会先 老健局 老人保健課 企画法令係     TEL 03(5253)1111 内3948