02/02/08 第9回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会議事録      第9回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会議事録                        日時 平成14年2月8日(金)                           10:30〜12:30                        場所 厚生労働省専用第21会議室 ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから、医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会 を開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席 いただきまして、誠にありがとうございます。初めに、本日の委員の出欠状況について ご報告させていただきます。高梨委員、中野委員、花井委員から、ご欠席のご案内をい ただいています。また、本日も文部科学省高等教育局医学教育課から出席しております 。どうぞよろしくお願い申し上げます。それでは矢崎部会長、よろしくお願いいたしま す。 ○部会長(矢崎)  それでは早速、議事に入りたいと思います。これまで、ご要望をいただきましたさま ざまな医療関係団体の方々からお話を伺ってまいりましたが、本日は、前々回以来横田 委員からご要望があった、小児科関係のご意見などをお伺いしたいと思っています。早 速ですが、初めに小児医療の専門家の立場からご意見をいただきたいと思います。ご出 席は、鳥羽剛先生(日本小児科学会理事・総務担当、千葉県こども病院長)、加藤達夫 先生(日本小児科学会理事、聖マリアンナ医科大学横浜西部病院教授)でいらっしゃい ます。大変恐縮ですが、お2人で20分ということでご意見をいただければと存じます。 よろしくお願いいたします。 ○鳥羽氏(日本小児科学会理事)  おはようございます。卒後臨床研修義務化に伴います総合研修において小児科を必修 科にしていただきたいということで、本日意見陳述の機会をお与えいただきましたので 、伺いました。本来でしたら、会長の国立大蔵病院長の柳沢正義が伺うべきところです が、私、総務担当理事の鳥羽が、聖マリアンナ医科大学教授で、理事の中でもこのこと に関しまして強い推進的な意見を持っています加藤教授に同道していただきまして、お 話申し上げたいと思います。よろしくお願いいたします。資料は、お手元の資料2−2 でございます。  私ども小児科学会は、昨年の11月25日の理事会におきまして、表記の件につきまして 決定いたしました。そして翌26日に、やはり私が代表しまして、厚生労働大臣ほか宛に 要望書を提出させていただきました。さらに翌日の27日の第8回の部会の際に、委員の 皆様方に要望書をお届けいただいていると伺っております。今日は、私ども2名に理事 会を代表しまして当部会に意見陳述の機会を与えていただきまして、どうもありがとう ございました。この件につきまして一層のご理解を賜りたいと思いまして、資料を添え て発言させていただきます。  初めに、総合研修において小児科を、これは「コアローテーション」とおっしゃって いるかと思いますが、必修科にしていただきたい理由についてお話いたします。まず1 番ですが、小児科は内科と同様に総合診療の基本診療科であるということです。小児、 特に乳幼児は、病状を自分から言葉では的確に表現しません。しかし、全身で正直に、 診察者の我々にいろいろな訴えをしてくるのでございます。  診療に当たりましては、この情報と、それから必ず保護者がいらっしゃいますが、そ れから得られる情報を重ね合わせまして、全身状態、一般状態の判断に始まりまして、 病気の診断、重症度、治療法と養護法、合併症や予後、感染症の場合には感染源ですと か、この子から兄弟あるいは保育所その他の周りの者にうつるかどうかといったことま で注意を払いまして、患者ならびに家族に対応することになります。  子供を全人的に診て対応する一方で、保護者や家族に対する接し方にも習熟する必要 があり、これはやはり総合診療の骨格となるものかと思います。小児科は、言い換えれ ば「小児内科」と申していいと思いますが、内科にほぼ匹敵するサブスペシャリティを 持っていまして、その意味でも総合診療が基本となりますので、総合診療医に必須の診 療科であると考えます。  2番目ですが、小児科は「かかりつけ医」、これは「家庭医」と申し上げてもいいか と思いますが、それにとりましての基本診療科であり、多くのプライマリケア医にとっ ても必修の診療科であるということです。今日、総合診療の能力を有する「かかりつけ 医」の必要性が社会的に望まれ、認められるようになりまして、これも卒後研修の義務 化の要因の1つだと思います。したがって、1で述べました総合診療医の延長線上には 、彼らの将来あるいは進路の選択肢の1つには「かかりつけ医」あるいは家庭医という ものがあり、プライマリケア医が考えられるわけでございます。  少子社会になりまして、子供は少ないわけですが、逆に、少子社会であるからこそ、 これまで以上に子供は大切にされるということで、核家族化の少ない家族の中で大切な 子供たちが生活しているという現状がございます。したがいまして、「かかりつけ医」 には、そういう大切な子供らを、あるいは日本の未来を担う子供たちを診られる医師と しての基本的な素養として小児科研修は必要であると考えます。  3番目に、学校医活動や乳幼児健診・予防接種業務などに携わります内科小児科の標 榜医、それから今話が出てきました「かかりつけ医」、家庭医には、小児科の研修が必 須であると考えます。これらの小児保健活動は、現在でも地域の小児科医師のみの力で は担い切れていません。近い将来におきましても、小児科の医師数が飛躍的に増えると いうことのない限り、今の状態は続くと考えられます。  小児科の対象年齢は、新生児、乳幼児、学童、思春期と年齢的に区分され、それに伴 う成長・発達があります。それぞれ特有の疾病構造、あるいは頻度の高い疾患というも のがありまして、それに関する知識も必要でございます。最近、各地で、担当医師の経 験不足、あるいは知識の不足によると思われます予防接種事故などの報告も散見されま す。これからの日本を背負う子供たちのための保健活動こそ、安全かつ適切に行われな ければならないと考えます。このためには、小児の保健活動に参加し得る医師の底辺を 広げる必要がございます。卒後研修における小児科研修の意義は、この点でも大きいと いうふうに考えます。  4番目ですが、研修医師たちに小児科の臨床や小児保健に関心を持ってもらうこと。 最近、新聞の特集記事ですとかテレビのドキュメント報道などで取り上げられまして、 社会問題にもなっています小児救急医療の現状には、多くの問題点がありますが、最大 の問題は、小児科医の減少と高齢化です。小児科、特に病院小児科の不採算に伴う小児 科部門の縮小などの話に、小児科の将来性に疑問を抱く医学生も多いと聞きますが、そ れとは別に、卒後研修における小児科研修を通じまして、少しでも子供や小児科に興味 や関心を抱く若年医師を増やしたいと思います。病気が治って明るさを取り戻しました 子供の笑顔ですとか、あるいは家族の安堵した笑顔に接しまして小児科医を目指す者が 多いわけですが、若年医師にもそういうことを期待したいと思っております。  少子社会になり、子供の数は減ってきましたが、決して小児科医の需要は低下してい ないのです。むしろ、繰返しになりますが、少ない子供を大切に、心身とも健全に育成 するために、小児科医の活躍の場は広がっていくということを若年医師に知ってほしい と思います。以上の4点が、小児科を卒後臨床研修の必修科にしていただきたい私ども の理由でございます。  次に、小児科学会の対応についてお話します。資料1をご覧いただきたいと思います 。日本小児科学会では、学会認定の研修施設において卒後4年以上の研修を積んだ小児 科医について、認定試験を行い、小児科学会認定医の認定を行ってまいりました。暫定 制度につきましては、昭和60年から始めています。4年間の研修は、学会教育委員会の 手になります小児科医の到達目標、小児科認定医の教育目標に基づいたカリキュラムに 沿って行われてきましたが、専門医制度が学会の認定制度から第三者機構による認定を 目指します専門医認定制協議会に改組されたことを機会に、小児科は、小児科学会認定 医制度から専門医制度に移行することを決定しました。お手元の資料は、先日完成した ばかりの新しい小児科医の到達目標でございます。  小児科専門医は、研修年限を従来より1年長い5年間としまして、この5年間には平 成16年度実施予定の卒後臨床研修の2年間を含むということにしました。小児科研修の ための新しい到達目標も、お手元の資料のとおりです。理事会では、卒後2年間にコア ローテートで小児科を研修した者も、小児科専門医コース2年間の研修者も同じように 扱う、すなわち全医師の基礎的素養と考えて取り扱うということを決定しています。  次に、小児科の研修システムについてお話します。資料2の図をご覧いただきたいと 思います。真ん中に、私どものような小児医療センターといいますか、小児総合医療施 設が座ってしまいました。これは矢印の作り方の問題で真ん中に来てしまったのですが 、いちばん大事なのは左側の医育機関、大学の付属病院でございます。ここでは、収容 能力が不十分であれば、地域基幹協力病院に小児科の単科、あるいは麻酔科とか産科の 研修というものを依頼するということで、研修を進めていけると思います。  Bの、私が属しております小児医療センターですが、やはり大学病院からコアローテ ートを含めた研修協力を期待されています。私は千葉ですから、千葉大学からこういう お話が来ています。また、私どもとしましては、小児医療センター独自に卒後臨床研修 を行って小児科医の養成をしたいという希望、意思がございます。しかし、私ども小児 医療センター単独では成人領域の研修が不可能ですので、既存の研修指定病院に成人部 門の研修協力を依頼しまして、研修指定を受けると。この図ではBとCの間に「協力病 院(必須)」としてありますが、この関係なしには研修指定病院にはなり得ないのです 。  現在25あります小児医療センターのうち、埼玉県の県立小児医療センターだけが、成 人部門の研修を大宮赤十字病院に依頼して研修指定を受けています。3月1日オープン の国立成育医療センターは、国立病院東京医療センター、昔の東二に成人部門の研修を お願いしたいということで、準備中でございます。そういった形で、小児科研修のコア ローテートの一環を担おうという考えでございます。Cは、従来からある研修指定病院 で、ここは独自に小児科の研修ができます。図の下の「研修指定病院」に「協力d病院 」と書いてあります。これは地域によって違うかと思いますが、大学からコアローテー トの小児科を受け入れるというような話があるところもあると思いますので、矢印で結 んでございます。  いずれの場合にしましても、小児科研修として欠ける領域がある場合には、適切な関 連施設の協力を得るということを考えております。例えば初期の救急医療につきまして は初期救急診療所、プライマリケアの研修は、学会の分科会の1つに日本外来小児科学 会というのがありまして、その会員の診療所では今、医学生を受け入れて臨床の現場を 見せるという活動をしていますので、そういったシステムをこの場合にも繰り入れてほ しいと考えています。また、小児保健は、保健所や保健センターを利用するという形に していただけたらと思っております。  最後に資料ですが、1の到達目標の新しいもの、それから小児科の研修システムの図 は説明済みです。3番目は、コアローテートの3カ月の研修についての資料でございま す。これは、原案は順天堂大学病院でしたが、私ども理事会の有志が手を加えまして、 ここに提示させていただいています。先ほどお目にかけました到達目標は、各分科会が 研修してほしい内容をA、B、Cのランク付けをして列挙したものです。ちょっと詳細 にすぎるところがありますので、3カ月のコアローテートの研修は、もう少し煮詰めて といいますか、選び出してもう少し簡略にしたものを用意する必要があるということで 、作ったものでございます。  4番目は、東北大学医学部付属病院医師研修カリキュラムの小児科部分を抜粋したも ので、約10頁に及ぶものです。先ほどの到達目標では、Aは是非経験してほしいもの、 Bは、できれば経験してほしいし、知識を持っていてほしいもの、Cは少なくとも知識 だけは持っていてほしいもの、というようなランク付けをしていますが、先ほど言いま したように、ちょっと細かすぎます。この評価をどうするかということを考えますと、 この東北大学の小児科部分は、大学全体にそうなのですが、比較的評価をはっきり出し やすい形に作られていると思います。そして5番目の資料は、聖マリアンナ医科大学の 初期研修プログラムの小児科部分のコピーでございます。私からは以上です。どうもあ りがとうございました。 ○部会長  どうもありがとうございました。それでは、今のご意見についてのご質問、あるいは 確認などがございましたら、どうぞ。 ○杉本委員  大変プラクティカルなことをお伺いしますが、この「小児科研修(3カ月)実施要項 」というのを見ますと、コアローテートは病棟が主体の研修ということになりますね。 それから、小児救急医療の研修ということも重視しておられるわけですが、今の臨床研 修病院は、小児科に関してはかなりベッド数を削減しているという状況がありますし、 また、小児科は置いてあっても小児科の当直はやっていない、小児科救急医療というの は表向きはやらないという形をとっている病院も多いように思うのです。そういう場合 は、先生の病院のように小児医療についてかなり充実した機能を持っているところと提 携して小児科研修をおやりなさい、ということになるわけですか。 ○鳥羽氏  基本的には、そういうことでございます。ただ、小児科の縮小傾向、あるいは病院小 児科の弱小化といったことに関する私どもの活動はまた別問題でして、是非元のように 、あるいは、これまで以上に充実していただいて対応するということをしていただきた いと思っております。大学病院、あるいは私どものような小児総合医療施設では、救急 患者の中心がどうしても二次あるいは三次というものになりますので、初期研修につい てはやはり一般の研修病院のほうが、先生がおっしゃるようにちょっと不十分にはなっ てきてはいますが、研修できると思います。また、あまりその部分が弱体であれば、各 地にあります初期救急診療所、あるいは夜間救急診療所に出向いて研修を受けてもらう ということも、必要かと思っています。 ○杉本委員  これは小児科3カ月必修ということになった場合のことですが、そういう場合に、そ ういった病院での受入れ機能、キャパシティというものは十分にあるとお考えですか。 ○鳥羽氏  現実的には、やはりその病院の小児科のキャパシティを考えて人数を制限せざるを得 ないと思います。もしそういうことが問題になるとしますと、こちらの部会などで必修 化ということをお認めいただけるのであれば、さらに各市中病院の小児科の拡充につい てもお力添えいただきたいと思います。 ○杉本委員  わかりました。ありがとうございました。 ○堀江委員  私たちの都内3付属病院の中で、特にある付属病院は、団地の中にありまして、年間 1万5,000件の小児救急を抱えています。したがいまして、小児救急、あるいは小児科 診療の重要性というものは実感をしていますし、地区医師会の先生方とも、連携を保ち ながら推進をしているところです。  従って、コアとしての小児科臨床研修の必要性ということも、十分に理解はしている のですけれども、先生は先ほど専門医の教育ということでお話されたと思いますが、実 際に指導医になる立場の人がどのぐらいいるのか。臨床研修における指導医について明 確な定義付けはされていないと思いますけれども、専門医制度における指導医的資格、 あるいは専門医の資格を持っている人たちの数がどれぐらいで、研修可能な施設がどの ぐらいあるのかということは、議論の対象になると思います。コアとしての必要性は理 解しますが、対応がどうなのかというところが、問題になると思うのです。その辺につ いてはいかがでしょうか。 ○鳥羽氏  現在、小児科学会の会員は1万7,000人ですが、そのうち認定医は1万2,700人ぐらい かと思います。それから、学会の認定している研修病院は400弱だと思います。もちろ ん、その中には大学病院もすべて含まれています。教育要員が十分でないことも十分承 知ですけれども、先ほどお話させていただきましたいくつかの理由によって、小児科に 関する認識を高めていただくというために、加藤教授もはっきりおっしゃるのですが、 万難を排して必修化を受け入れたいという考えでございます。 ○堀江委員  実際に小児救急の患者さんを受け入れている状況の中で、その多くは一次レベルで、 準夜帯に来られる患者さんが圧倒的に多いという実状があります。そういう小児の患者 さんに対応していくために、3カ月の研修は必要だろうと思いますけれども、すべての 研修医が、小児科研修に来ることによってかえって内容的に希釈されないだろうかとい う危惧もあります。コアとしての取組みより、むしろ内科系の研修を行う医師について のコアとして、あるいは外科系研修医についてはコアとしないのはどうか、ということ も議論の対象になっていますけれども、その辺についていかがでしょうか。 ○加藤氏(日本小児科学会理事)  先生のご意見は非常に的を射ているご意見ですが、先生のようなご意見があるからこ そ、小児科は最低でも3カ月間は研修していただきたい。先生がおっしゃっているとお り、一次救急というのは小児科医だけで賄えるものではないのです。日本でいいますと 、半分以上は内科の先生方がご覧になっている可能性が非常に多い。このようなシステ ムになってきて、もし将来、小児科を全く学ばない者たちが内科を標榜して第一次救急 をやるということになりますと、小児科を全く知らない者たちが救急をやらなければな らない時代がやってきます。  私たち小児科学会が3カ月と申し上げているのは、3カ月で十分と申し上げているわ けではありません。最低3カ月やっていただくことによって、まず子供が怖くなくなる のです。私どもの大学では、もうすでにこのシステムを導入して3年になりますけれど も、当初は、子供を触るのは嫌だ、怖い、逃げるという感覚で皆さん入ってくるのです けれども、3カ月研修することによって、子供というものが怖くなくなって、自分から 積極的に向かっていけるような医師になっていきます。したがって、指導医云々の技術 的なことはまた別としまして、最低限度3カ月間の診療・実践での小児の教育というも のは不可欠であろうと考えています。 ○相川委員  小児科をコアローテート、必修科にすることに関しまして、私は大賛成です。最低3 カ月以上ということに関しても大賛成です。特に、先ほど堀江委員からご発言がありま した小児救急の問題は、今まさに国民が臨床医に求めているいちばん切実なところでは ないかと思いますので、小児科を標榜している専門医の先生だけに一次、二次を含めた 小児救急をやっていただくということでは、日本の医療はなりたっていかないと思いま す。  いくつか質問したいのですが、今日のお話は、例えば将来自分は耳鼻咽喉科、眼科、 精神科等を専門にしたいと考えている、あるいは心臓外科医になりたいと考えている方 に対するコアローテートのお話と、小児科医を育てるための研修医制度のお話との資料 が混ざってしまっていて、非常にわかりにくく感じました。ここにいただいている資料 の一部には、平成16年以前の、つまり小児科医を育てる初期研修のことが書いてありま すね。その場合、小児科を標榜したいと考えている人たちは、逆に外科、内科、産婦人 科、救急などがコアローテートになる可能性がありますので、その辺をお考えになって 書いていただきませんと、小児科になる方は2年間これでいって、ほかの科でなる方は 小児科医を回るというわけにはいかないと思うのです。ここで質問したいのですが、将 来小児科医を標榜したいと考えている方のプログラムとしては、どのようなほかの科に 回すということをお考えなのでしょうか。 ○加藤氏  将来小児科医になる方々は、相川先生のご質問にお答えするとすれば、万が一小児科 に2年間回ってきてくださらなくても結構だと考えます。でも、私どものところでは、 まず5カ月間小児科を学びまして、そのほかの時期で、外科、内科、救命救急、麻酔科 というふうにローテートしています。資料がちょっと複雑になってしまいまして、申し 訳ありません。最初の1の資料は小児科学専門医としての指標ですので、これはもしか したら今日の場には必要なかったかもしれません。3番目の資料が、このコアローテー トに対する3カ月間の予定ですので、むしろこちらのほうをご覧になっていただくとわ かりやすいかと思います。  前段のほうは、小児科学会としての意向をお示ししたということです。3の資料に関 しましては、このコアローテートをする上において、最低限この辺のところを到達目標 にしたい、というものです。すなわち、小児科医としては将来専門として小児科医を担 う者であっても他科のローテートはしていただきたい、それが全人的な医療につながる であろう、将来全く小児科に関係ない科に進む方に関しては、先ほど申し上げたような 理由で、是非小児科を最低3カ月間は研修していただきたいと、こういうことでござい ます。 ○相川委員  今日お示しいただいた資料の5は、1つの例として挙げられている聖マリアンナ医科 大学の資料ですけれども、これは、将来小児科医になりたいという方の初期研修のプロ グラムですか。 ○加藤氏  いいえ、そうではありません。先ほどお話しましたように、3年前からうちの大学で はこういうシステムをとっていますので、最低限度3カ月間小児科へ回る方々用に作っ たものです。 ○相川委員  ありがとうございました。 ○櫻井委員  私は繰り返し、患者の数、症例の数と研修医の数の問題を申し上げたいと思います。 この小児科研修3カ月というのは結構なのですが、3カ月とした根拠は何なのでしょう か。おそらく各病院、これは大学も含めてですが、1万6,000人が対象になると思われ る研修医に対して、ベッドキャパシティ、症例の数というの点でかなり苦労しているの ではないかと思います。その意味で、3カ月とした根拠はどういったことなのでしょう か。 ○加藤氏  私どもが実際にやっていますのは、最低限度3カ月の間に、例えば小児科に入る方は 小児科を少し手厚くやっていただく、内科を志望する方は少し手厚くやっていただくと いうことです。今後は違う形になると思いますけれども、現在は入局システムにしてい ますので、当初入局したところでは5カ月間研修をすることにしています。そのほかで 、内科系、外科系、救命救急センター、麻酔科、それからもう1つという形で選びます と、どう計算しても2年間で3カ月以上は研修できない仕組みになってしまいます。分 割しているために3カ月間になってしまうということでして、大変やむを得ない事情で ございます。しかしながら、最低3カ月間やれば、少なくとも小児科においては、比較 的小児科医として慣れた医者が育ってくるのではないかと私は考えています。 ○星委員  小児科の義務化については私も賛成なのですけれども、3カ月という話、それから症 例をどのぐらい見られるのかというお話があったときに、資料2だけを私は何となく違 和感を持って見ていました。つまり、大学病院、25の小児センター、あるいは高々400 の臨床研修指定病院で、7,000人、あるいは1万何千人に小児科の研修をさせることが 可能なのかというと、答えは「ノー」だと思うのです。むしろ地域で1万何千人かの認 定医の先生が頑張っていらっしゃると思うのです。そのディストリビューションがどう なっているのかということを是非知りたい。  これも各科共通なのでしょうけれども、これらの施設にどのぐらいの医者がいて、ど のぐらいの症例があるのか、そして、実際には研修指定病院になれないでいる、あるい は今やっていないという病院の中に、そういうポテンシャルを持ったものがどのぐらい あるのか、ということをある程度明確にしていただかないと、3カ月やりましょう、し かし、3カ月間で見た症例はこれしかありませんでした、というのでは何とも仕方ない 。先ほど、症例をどのぐらい見られるのかというお話がありましたが、母数はどれぐら いなのか、どういうグループで研修に参加していただく施設なり先生方を集められるの か、割り戻したときにどのぐらいの目標値が設定できるのかというようなことについて の検討は、あるのでしょうか。 ○加藤氏  これは全国の大学によりけりだという意見が出ています。国公立大学を含めますと全 県に1校ずつはあるわけですが、その中で、そこの大学を卒業した者がその大学に残る 人数が30名しかいないところもありますし、60名のところもありますし、80名のところ もあります。例えば60名ですと、それを5科が回るわけですから、5分の1にすると、 その者たちが各科にローテートで回ってくるということになるわけですけれども、逆に 、ある国立病院では300人の研修医が入ってしまうということもあるのだそうです。し たがって、前にこの会で、各大学での研修医の数を何パーセントにするというようなご 意見が出ていたと伺っていますが、そのような検討も必要かと思います。  もう1つは、各大学とも一般的に言う地域基幹協力病院というものをお持ちであるは ずですので、それらの機関を十分に活用することによって、先生が危惧されていること は、それほど大きな問題でなく解決できる可能性も残されているのではないかと思いま すが、今後の大きな課題であろうかと考えています。 ○星委員  先生方は大学の先生ですから、大学から下を見るような見方をされていますが、そう ではなくて、1万2,600人の専門医の先生が一体どれだけ大学に行って、どれだけの教 育の機会を持てるのか、そこにどれだけの、どういう質の患者が来て、どれだけ診てい るのか、そこでできる研修というのはどういう研修なのか、ということを示してほしい のです。医療のうちで、あるいは研修の機会として、大学で受け持っている部分という のはごく一部なのです。そのごく一部のことから類推をして、協力病院の協力を得れば いいのだというような発想を持っている限り、私は実現しないと思うのです。いかがで しょうか。 ○加藤氏  実現するかしないかということと、小児科を必須科としてローテートするかどうかと いうことは、別の次元として考えざるを得ないと考えます。先生のお話は先ほど私が申 し上げた技術的な問題の方向に入りますので、それは今後十分に、新たに検討しまして 、小児科学会としてもお答えを出したいと考えています。 ○鳥羽氏  具体的に申しますと、千葉大学では1年に140名ぐらいの初期研修を考えています。 大学の小児科学教室から私どもに「何人受け入れられるか」という話があるのですが、 私どもの病院は200床で、医師が60人ほどおりまして、その中に小児科の専門医が30人 ぐらいおります。研修内容のことを考えまして、1回に10人とざっと計算しますと、3 カ月ごとで1年に40人です。ですから、千葉大学の140人のうち3分の1から4分の1 程度の者は私どもの病院だけで受け入れられる。その他、加藤の申します地域の基幹病 院がありますので、何とかなるのではないかという感じを持っているわけです。症例の ことをご心配のようですが、二次病院あるいは地域の基幹病院は、先生がご心配になる ような偏ったことはありませんし、先ほどから話題になっている初期の救急患者のよう な、基礎的な経験として持っていてほしいものも、研修の機会はあると考えています。 ○宮城委員  この臨床研修必修化は、どこに進むのであれ、初期研修の2年間はゼネラルな、コモ ンセンスを培う研修にするという出発点であるわけです。ですから、将来小児科医にな るとかならないとか、外科医になるとかならないとか、そういったことはあまり考えて ほしくない。どこへ進むのであれ、この2年間の研修は共通なカリキュラムで、国民が 求めているように、耳鼻科医だから小児が診られないとか、外科医だから内科に接しな いという医者を育てないようにする、というのがこの研修必修化の初期の目的なのです 。将来小児科になるから5カ月は要らないとか、将来小児科にならない者でも3カ月と か、そういう考え方でなしに、コモンなカリキュラムをとにかく2年間、どこへ進むの であれ受けるのだ、という考え方で考えてほしいと思います。 ○部会長  どうもありがとうございました。初期臨床研修必修化の最終的な像はどうあるべきか 、ということに関連すると思いますが、大変貴重な小児科関係のご意見を承りました。 ありがとうございました。両先生には大変お忙しいところをご出席いただきまして、あ りがとうございました。次に、地方の中小病院の立場からご意見をお伺いしたいと思い ます。中富町早川町組合立の飯富病院長でいらっしゃいます長田忠孝先生です。長田先 生、よろしくお願いいたします。 ○長田氏(中富町早川町組合立飯富病院長)  山梨からまいりました飯富病院の長田でございます。私がこの場に登場した理由です が、全国自治体病院協議会の中に中小病院問題委員会という会を全自病の小山田会長が つくりまして、その中で、中小病院の必要なスタッフをどのように確保するかというこ とになったときに、この2年間の臨床研修を是非ともやらなければならないという話に なってきて、そのときに厚生労働省のほうに要望書を提出した際に、私が今日資料とし て出しました前半の部分がそれに付いていったということが理由ではないかと考えてい ます。お手元の資料は、このお話が昨年の10月にありましたときに、私たちの病院の職 員、主に医者と、中富町と早川町の町長、両町の議員に配付した資料です。そのために 、皆様にとりましては非常に読みづらいところもございますでしょうけれども、ご容赦 願いたいと思います。  私たちの病院は、対象の人口が約1万人と言われています。山梨県の南部にありまし て、2,000人弱の早川町と、4,500人の中富町が設立した病院です。2,000人弱といいま すのは、そのうちの数百人が、町民といっても実際にそこに住んでいない人たちだから です。実際には1,700人ぐらいでしょうか。このような病院は全国にいくつもあるので すけれども、中核になります医師の派遣病院としましては、大学病院から忘れられたと は言いませんが、良好な関係をつくることのできない病院としてずっとやってきた病院 です。  昭和56年に自治医大が第1期の卒業生を出しまして、私はそのころにこの病院に赴任 したのですけれども、それからようやく、ある程度の質を持った医師が確保できるとい う体制になってきました。田舎の病院ですので、24時間、365日、やることは何でもや ります。最近は医者も労働基準法などということを言い始めましたけれども、そんなこ とを言っている暇もないような病院です。私がどういうわけでここに来たかという理由 は省きますけれども、来たときにいた医師たちの質と自治医大から派遣してきた医師の 質では格段に違いがありまして、しばらくするうちに、前にいた医師は全部辞めていき ました。  現在は、私と自治医大の卒業生の医師5人の6人と、そのほか非常勤がいますけれど も、これだと定員に2名足りないということになります。この医者のほかに、看護婦、 薬剤師などさまざまな職種がありますが、こういう職種を確保することが非常に難しい わけです。そういうときに、どうしたらいいか。医者を公募しますと、確かに現れてく るのですけれども、とても使い物にならない、来ているだけでかえって手がかかる、と いうような事態になります。皆様方はそういう病院にいられたことはないと思いますが 、そういう状態でして、県がいろいろ言うのですけれども、いい医者を探すまで2人欠 員ということになっています。こういう中で、医師を中心に優秀なメンバーをそろえま して、何とか地域の医療を確保したいということで、今回の臨床研修病院になるという ことを、両町および病院の職員に提案させていただいたわけです。その文章が、そこに あります文章です。  おそらく我々クラスの自治体病院が担う部分というのは、通常の大学病院や300床以 上の研修病院では経験することのできない分野だと思います。これは後ほど実際に述べ ますけれども、先ほどの小児科の先生のお話を聞きまして、ますます私の考えが間違っ ていないと思いました。これが第1点です。我々のやっている包括医療、福祉、介護保 険、在宅の医療などに関する優秀なスタッフを確保するためには、どうしてもうちの病 院で研修をするということは避けて通れません。そういう提案をしましたら、中小病院 の全自病の会議の中で「それは、もっともだ」ということになりまして、急遽全自病で このような提案をすることになったわけです。キャパシティはどうか、という意見がご ざいます。現在、国診協と全自病の全病院に対して、研修病院となることは可能かとい う調査をしています。この結果がもう1カ月もすれば出ますので、もし必要であれば、 また改めて資料を提出したいと思っていますが、私は十分やる価値があるし、十分力が あると考えています。  信じられないような田舎の病院です。皆さん驚かれるかもしれませんが、入院患者の ほとんどが70歳以上です。このような病院でうかうかしていますと、何が何だかわから なくなってしまうわけです。そういうところに定期的に優秀な人材が通りすぎるという ことだけで、我々は「勉強していかなくてはならない」「ともに高め合っていかなくて はならない」という気持になるわけです。向上心のある病院は、どこもそのように考え ているようです。  今日お集まりの先生方の病院は、みんなが「ここに行きたい」と思われている病院で すからいいわけですが、我々のところは、うっかりしますと、病院の職員が「ここの病 院にいることが恥ずかしい」と思うような病院に成り下がってしまいます。私たちが昭 和56年に来たときには、まさにそういう状態でした。何とか「この病院に勤めているの だ」ということをみんなが胸を張ってアピールしていけるようにしなければならないと 考えて、いろいろなことをやってきました。今日ここに来ましたことを、私は非常に喜 んでいます。「ついに厚生労働省に行ってくるぞ。うちの病院もこの程度になった」と 話しましたら、みんな非常に喜んでくれました。  一方、そういう病院になると、仕事が忙しい、何をやっているのだ、という奴も出て くるわけですけれども、これは全国どこの我々クラスの病院でも同じです。全自病の中 小病院の委員も、言い出したものの、実はこの提案を引っ込めたいと思っています。と いうのは、今で手いっぱいなのです。我々のところも手いっぱいなのですけれども、言 い出した以上やり切らなければならないし、「そろそろ院長は外科の腕も落ちたから、 私が代わりにやる。だから院長、この医者たちと付き合ってください」と言う優秀な人 材が出てくるかもしれない。そんなわけで、今日は来たわけです。  多くの専門医という形がありますから、自治医大でも、当初は燃えるように地域医療 に目覚めていた人たちが、最近はほとんど全部専門医になってきました。信じられませ ん。我々の努力が足りないのでしょうか。実は、いくつかの逸話があります。小児科の 先生か内科の先生かわかりませんが、ひざを擦りむいた子供が来ましたら、「私には診 られないから、よそへ行け」と言ったそうです。でも、これは無理もないことだと思い ます。仕事をしても何もいいことはありません。症例にもなりません。78歳の寝たきり のおばあさんが、久しぶりに食べた餅をのどに詰まらせました。大概のどに詰まらせた ら、もう終わりですよね。救急隊を呼びまして、すぐ近くの病院に「こういう患者がい るんだけど、診てくれないか」と言ったら、そこには整形外科の医者が当直していまし て、「私にはできない。専門医のところへ行ってくれ」と言ったそうです。  基本的な技術、考え方、素質、資質というものが、どうも医者から少しずつ消えてい っているのではないかと思うのです。そういうことをつくるのだ、と先ほどおっしゃら れたのを聞いて、私は非常に心強く思いました。そういう医者は駄目なのですけれども 、残念ながら、そういう医者がものすごく増えてきています。私たちの周辺が良くない のでしょうか。皆さんのところはどうでしょうか。皆さんのところは優秀な病院ですか ら、わかりませんが、我々のところはものすごく増えているのです。田舎ですから、そ こに住んでいる医者に合わせてレベルの低いのが集まってきているのかどうかは、わか りませんけれども。そういうことを感じまして、この文章を書きました。  前半は終わりまして、次に、実際に関連施設での研修をどういう具合にしたらいいか 、ということを書きました。我々のクラスの病院は介護保険と福祉施設の接点になる病 院だ、と私は考えています。皆さん方の病院にはおそらくいないでしょうけれども、私 たちのところでいちばん困っている患者さんは、死ぬことができない人なのです。  厚生労働省のお考えか、皆さん方のお考えか知りませんけれども、病院機能がどんど ん分化していきまして、長く入院できないということで、治らないような患者さんが、 大きな病院からどんどん田舎の病院や民間の病院に移ってきました。お笑いになるかも しれませんが、目も見えない、口もきけない、物も食べられないような人が、2年も3 年も生きて入院しています。どうするか。我々のところでは、どうしようもありません 。特別養護老人ホームのほうにお送りしようとしても、なかなか行きません。そういう 人たちが、また肺炎などを起こして入院してくるのです。これは助けなければいけない 。そんなことの連続なのです。  今日は文部科学省の方もいらしていると思いますけれども、やはり、人間はどこまで 生きるべきかとか、人間の生命とは何かとか、そういうことを学んでいかなければなら ないと思います。わずかな臨床実習の中で、こんなことは学べません。医学部受験のと きの選別、または医学部の教育の中で、これをやっていかなければならない。困るので す。80歳、90歳の方が脳卒中を起こして病院に来ます。「家族が来るまでは何とか助け てください」と言われて、「はい」と言って始めたことが、植物状態の入口であるわけ です。もうどうしようもない現実が、そこにあるわけです。このようなことを実際に勉 強する場が、やはりほしいわけです。それが私たちの病院であろうと、私は思っている わけです。  私たちのところは日本でも有数な過疎地で、過疎地の無医地区にいくつもの診療所を 持っています。これらを維持していくのに大変な労力も要るわけですけれども、もう一 方で、在宅の医療という素晴らしい医療を私は20年前に経験しました。「目から鱗が」 ということを感じました。これは、いくら言葉で言っても駄目なのです。感受性もなけ れば駄目ですし、「なるほど、こんな素晴らしい世界があったか」ということを感じな ければなりません。いちばん悲惨な痴呆とか脳卒中の後遺症の方々が、在宅で生き生き と最後を迎えることができるわけです。がんのホスピスをつくっていますが、がんなど 全然怖くありません。すぐ終わりが来ます。  そういう福祉との接点の部分が、我々クラスの中小病院が受け持つべき仕事なのでは ないかと思います。医者になった人たちには、是非ともその臨床の場に来てほしい。在 宅に来てほしいと思うのです。そうすれば、先ほどから何度も「全人的」という言葉が 出てきましたけれども、家族のこともわかります。その人が何という名前を持って、そ の人が家族にとって地域にとって、どれほど大切な人かということもわかります。我々 は病院にいると、私は肺がんの診断をやっていますけれども、レントゲン写真に影が映 る点だけしか見ていません。在宅に行くと自ずとすべてのことがわかります。私も20年 いて、ずいぶんいい医者になったような感じがします。  このような経験を是非とも、皆さんに経験してほしいと思っています。卒業して、医 師になって長い間やっていく人たちに経験してほしい。そういうことに気を配って、い くつもの職種の人たちがやっているわけですけれども、是非ともそういうことを一緒に 考えていってほしいということが私の考えです。そこで、非常につたない臨床の研修の カリキュラムですが書いてきました、お読みください。  それから、在宅の考えということで、私の出している雑誌を50部だけ厚生労働省にお 送りしました。お読みくださると、我々田舎の地域のことがおわかりになるかと思いま す。是非ご参照くださればと思います。 ○部会長  どうもありがとうございました。ただいまのご説明に対し、どなたかご質問はありま すでしょうか。 ○山口委員  先生のおっしゃること、よくわかります。私たち自身がそういう立場ですし、地域で いろいろなことをやっている。長田先生がここにも書いていらっしゃる「臓器を見て人 を見ていない」、「生活という視点が大事だ」、この点は非常に共鳴というか、いまか らの医者にはこのようなことが必要なのだなとつくづく痛感し、この場でもそういう発 言をしています。  1、2教えていただきたいと思います。確かに、専門医という制度は各学会を通して 、我々の時代に比べると、比べものにならないぐらいにそういう仕組みが行き渡ってい ますし、新しく医者になった方も専門医を目指す傾向があります。先生方の病院で地域 医療を学ぼうという、自治医大の先生がもしいらっしゃった場合に共鳴して、この病院 に居残ってやろうという方が過去いらっしゃったかどうか、これが第1点です。  第2点目は、我々が言っている地域包括医療、老人医療、在宅医療、いま先生が例を いくつか挙げておっしゃっていました介護保険施設、そのような保険福祉も踏まえた、 本当に全人的な医療を研修してもらうことが必要だと思っています。私のところの国診 協もそうですし、また全自病でもこのヒアリングの場に出てきていただいてそういう意 見を述べていただきました。国診協は特に仕組みに関して、いままでの大病院中心の研 修と我々のような地域療養の分野の研修、さらにはヘルスケア、介護保険施設というと ころでやる研修。「ABC」と言っていますが、それらの組み合わせによる研修が必要 だろうという主張をしています。こういう国診協の主張について、先生ご自身はどうお 考えになるのかが第2点です。この2点を教えていただければと思います。 ○長田氏  先生に2番目の点についてお話するのは非常に堅苦しいのです。私は知識も何もない のですが、そのとおりだと思います。  ただし、いくつもの施設があって、例えばヘルスケアのようなことについても非常に うまくやっているところもありますが、なかなかできないところもありますから、どこ で線を引くかということが問題になってくると思います。最低、在宅をやっているとこ ろでは研修病院になり得ると思っています。それ以上はお許しください。  もう1つですが、実は私たちの病院に来たいという医者が遂に来ました。うれしいで す。実は避けていたいような病院なわけですが、遂に来ました。山口先生のところでし たら引く手あまたでしょうが、我々のところにもやっと、自治医大を卒業して「あそこ に行きたい」という人が来ました。聞きましたら、「先生の病院には行きたい人がたく さんいますよ」と、またうまいことを言うのですが、幸い1人、ようやくそういう状態 になりました。  ところが、大学が駄目なのです。大学はもうあまり視野に入れず、公募できればと思 っているのですが、それほど力がないのです。幸い1人入りました、大変ありがたく思 っています。 ○高橋委員  期間はどのくらいをお考えなのですか。 ○長田氏  私は半年ほしいと思っています。というのは、スタッフがいないわけです。1カ月で は来たらホイ、来たらホイで、とてもたまらないわけです。いま、中小病院のように2 カ月にしようかと出ています。その程度の哲学しかない人間の集まりなので、2カ月が いいのではないかと思っています。 ○高橋委員  2カ月にせよ半年にせよ、ここの病院だけで完結は絶対できないわけです。その場合 、どのようなシステムをイメージされているのでしょうか。特に疑問に思ったのは、山 梨医大や県立中央病院と病院群を作るのは難しいということですと、具体的にどうやる のですか。 ○長田氏  平成5年に出た基準によると、山梨県の中で300床以上の研修病院の資格をクリアで きるのは、山梨医大と県立中央病院しかないわけです。しかし、どうも、そこも剖検と かいろいろなことで引っかかってきてうまくいかないのです。  我々のところでは県立中央病院か山梨医大か、そういう病院とリンケージしていま言 ったようなシステムをやっていこうと考えています。それ以外にはないわけです。ただ 、全国公募なので、形としてはどこでもということになると思いますが、山梨県の中で はその2つを考えています。  もう1つ、うまくいかないというのは、我々のところで医師の定員が2名足らないの です。こういうところは研修病院になれないということになっていますので、そこは取 り払ってくれないかという要望を出しているわけです。うまくできないというのはそう いうことです。 ○福井委員  いくつか質問させていただきたいと思います。おそらく先生のようなところ、それか らもっと在宅を中心的にやっているようなところに研修医が行くと、医師から学ぶだけ ではなくて、それ以外の職種の人にたくさんのことを学ばないと駄目だと思います。そ のような、医師以外の方が教える体制というのは大丈夫というか、そういう人材が一般 的にいるとお考えでしょうかというのが1つです。  2番目に、1年目の人はかなり難しいのでしょうか。やはり2年目以降の人でないと 、ドクターの地域医療へのスーパーバイズがかなり難しくなったわけです。そうすると 、やはり2年目でないとかなり難しいと先生はお考えなのかどうか。  3つ目に、将来ドクターを大学から派遣してもらうというタイプではなくて、おそら くどこも自分の自己責任でドクターを採用していくというようにならざるを得なくなる と思います。一旦雇ったら、つまり駄目な人を握ったら、あと10年、20年、その病院が 全く機能しないなどということ、どうすれば医師の流動性ができるとお考えでしょうか 、ちょっと難しい質問ですがお答えいただければと思います。 ○長田氏  それができれば苦労がないというところですね。私たちの病院は院長と副院長、副院 長は自治医大なのですが、この人と私がコンビでやっています。副院長は15〜16年、へ き地医療と在宅をやっています。私はもう20年近くやっています。それ以外は自治医大 の若い先生方で、あと途中で入ってきた、どうも手のかかる方々は仕事場がないという 環境に自ずとなっていき、みんな辞めていってしまい、医者が辞める分についてはあま り困らないのです。ただ、ほかの職員、看護職は本当に困っています。辞めてほしい人 もいます。そういうことで、現在のところはあまり困っていません。  医師供給システムを中に書いておきましたが、おそらく都道府県別にへき地の診療所 なり病院に対し、医師のローテーションということを大学がやったことではなくて、県 庁の厚生部あたりがきちんとした考え方を持ってやるべきだと思っています。こういう 考え方がなくてやっているものですから、自治医大を作った最初のころは闘う相手があ りましたから、彼らも一生懸命でしたが、いまはどこに行ってもいい病院になり、すっ かり専門医になってしまいました。この点、中央病院を中心とした医師のローテーショ ンシステムを作ってやっていけないか。中央病院に入ったら最後、院長までというコー スはあり得ないというものを作る必要があると思います。それから、もう1つは何でし たか。 ○福井  医師以外の方で、いろいろなことを教えてくれるスタッフは十分いるでしょうか。 ○長田氏  医者はほかの職種から習う、ということを極度に嫌います。先生は心が広い方ですか らそうなのです。介護保険関係、ケアマネージャーあたりは素晴らしい人間がいます。 いま、事務長の反対を押し切ってもう1人入れ、この体制に合うようにして医者も1人 入れ、私とケアマネージャー、それから看護婦、看護婦も優秀な人材がほしいわけです 。ことにケアマネージャーがキーになりますので、この人たちにいろいろ教えてもらう ということを最初からやっていこうと考えています。 ○福井委員  それから、1年目の人でケアするのが難しいでしょうか。 ○長田氏  経験ですので、1年も2年も同じだと思います。ただ、全自病のほうでは一応2年目 からにしていただいたほうが、こればかりでは医者はやっていけません。基本的な技術 や知識というものは絶対必要なことなのです。我々のところでは、いま言った介護保険 の接点となるような点を是非見ていただきたい点があるわけです。もちろん、私の手術 を真似ていただいても結構なのですが、それはほかの大きな病院で十分研修をなさって くださればいいと思います。それが大体2カ月でしょうということです。 ○三上委員  先生のお話、非常に同感なのです。おそらく、ここにいらっしゃる委員の先生方の病 院で、我々の病院がいちばん小さいのではないかという感じです。我々の病院は京都市 内にあります民間病院なのですが、306床の急性期病院と老健施設、特別養護老人ホー ム、それから6つの診療所というのが我々の病院の構成です。当然、その中では在宅医 療と病診連携をやっているわけです。  その中で、先ほどの先生のお話にもあったことで、全く同感と思いましたことは、我 々の病院における研修医のプログラムの中で、在宅医療の位置づけというのは普通、一 般内科を5年以上やった人を在宅医療の担当に決めていたわけです。ところが、実際に 5年以上過ぎますと、なぜ自分がそのようなことをやらなければならないのかというこ とで、スペシャリティー、あるいはサブスペシャリティーのほうに目が向いてしまう。  そこで、途中からプログラムを変えて、初期の2年間の間に在宅医療3カ月を入れた のです。そうしたら、最初の段階で非常なショックを受けるのです。いままでは病院の 中でしか人を見ていなかったものが、実際に町の中に行って、患者のところで在宅医療 にかかわって見るようになると、非常なショックを受けるのです。研修医の医療に対す る考え方というものが非常に変わりました。そういうことで、我々のところでは在宅医 療の位置づけについて、以前は5年以上過ぎた者が担当するとしていましたが、途中か ら、初期2年間の間に在宅医療、老健施設、特養の研修を必ず回るというプログラムに 変え、それが非常に良かったなと思っています。そういう意味で非常に同感でした。  もう1つ、先ほどの先生の病院のお話を伺っていて、在宅医療などとの関わりによっ て、ほかのところでは得られないものが得られるというのは確かにそうなのです。とこ ろが、先ほど先生もおっしゃいましたように、そうしたら医療の質としての、技術だけ ではなくて、技術も含めてきっちりとした卒後研修を保障する。そういうものをどこで 保障するか、という問題がやはり問われるわけです。その場合、我々の病院でも今後の 問題として考えているのは、お互いに病院群を作ることで助け合うというか、より良い 研修をどこで受けさせるかという形で考えていくべきではないかと思います。そのこと が第2点です。  その場合、「山梨県では云々」と話がありましたが、私は全国どこでもいいと思いま す。いまの指定病院の要件の中に、概ね日常的な診療の上で連携が取れる範囲であるこ と、というのが要件になっているわけです。あのようなものは全然必要ないと思います 。長野県で何カ月か、あるいは1年半の研修を受けて、それを終えて在宅医療の部分、 あるいは福祉関係のところは先生のところにまた戻ってくる。距離などを外して、しか し研修委員会の相互の連携はもちろんしっかりとしたものを作った上で、距離要件をな くした形にすればもっと自由な選択が可能になるし、在宅医療についても大学の研修医 にもそのような機会が得られてではないかと思います。そういう意味で先生のお話、同 感という感じでお聞きしました。 ○長田氏  ありがとうございます。優れた仕事をしている民間病院はたくさんあって、是非我々 もということを言ってくるわけです。しかし、一応、私も全自病の代表ということなの で、病院群を作って、あとでそういうところがちゃんとやっているかどうかも見ていか なければなりません。一応、先生のお考えは非常にありがたく思います。 ○宮城委員  ある意味では非常に耳の痛い、問題点の多いご発言だったと思います。先生は自治医 大の先生方ですら、どうしてスペシャリストになりたいと思うと思いますか。 ○長田氏  そういう医者しか、現在は認められないからだと私は思っています。 ○宮城委員  いや、私は超専門家が食べていけるからだと思います。超専門家であってもどこかで 、食べていける医療の仕組みがあるからだと思います。超専門家になって医者として食 べていけなければ、超専門家になる人はいないと思います。  超専門家になるということは、ある意味では楽なのです。同じことを朝から晩まで、 例えば、鏡をのぞいているだけでいいとか、右の耳だけ見ていれば飯が食えるとか、そ ういうことで食べていける仕組みがあることが超専門家を育てていると思います。です から、私たちは医療の仕組みをもう1度考え直していかなければいけないのではないか 。そういう人はもう医者として食べていけないというように、仕組みをもう1度見直し ていく必要があるのではないか。そうすれば、先生がおっしゃるように理想的な全人的 な、頭のてっぺんから足のつま先まで興味の持てるいい医者ができると思います。 ○長田氏  私もそう思います。でも、どうも現在のシステムがそうなってはいないわけです。実 は、「ここに来たい」という医学部の学生の実習もやっているのですが、これが非常に 好評で、眠れないぐらいに忙しいのです。  来たいと思ったならば、自分の仕事を見つけてから来たほうがいいとお話しています 。そうしないと、いまの全人的な医療だけでは医者はやっていけないのです。私もちょ っとしたライフワークみたいなものを持っていて、それがあるからあの田舎でもやって こられたのだなと思っています。医者のシステムで、全部が専門医などという馬鹿な話 はないわけです。でも、そういう現実はあるわけですから、その仕組みを変えていかな いと、どうしてもこういうような医療には人が来ないということになると私は思ってい ます。 ○辻本委員  現在議論されている広告規制の緩和の中でも、専門医、認定医の資格をどう広告でき るかという意見があります。実際に患者の側もそういう情報をほしがる時代になってき てしまっています。それが現実です。  いま、長田ドクターのお話をお聞きしながら、横で涙が出そうなぐらい感動を覚えま した。本当に患者が求めている医療というのは、おっしゃる中にあると信じていますし 、大きな期待も持っています。しかし、現在の若い医学生が、研修医がそこに魅力を見 つけていく機会をご提供いただけるのか。最近、特に地域医療などでマスコミ受けする ようなヒーローも登場してどのようにおられますが、先ほどのお話は、20年のご経験の 中で力説なさった、たった一人、「いい医者が来たのです」というお話というのは、あ る意味ではとても寂しいなと思って聞きました。  全自病というグループの中で、その魅力をご自分たちがどのように、将来を目指す若 い人たちにアピールなさるおつもりでいらっしゃるのか。そこのところで、全自病のお 仲間がお互いの切磋琢磨を具体的に、どのように組み立てていこうとお考えになってい るのか。その辺、素人の私でわかるようにお話願いたいと思います。 ○長田氏  そのようなことを聞かれても何もわかりません。家族のもとにいる医者というのが大 切なことだと思います。いろいろなことでご相談を受ける場合があると思うのですが、 いちばん最後に、「もういいではないか」といつも言っています。おばあさんもよく生 きた、ここでもういろいろなことをやめようと言えるような医者になりたいと思ってい ます。現にそのようにやってきました。そういうことの言える人たちがどんどん周りか らいなくなっているのです。ビルで開業しても勤務医と同じです。なぜなら夜に働きた くないから、もっともです。  そういうような人たちを作っていかなければいけないということではいいのですが、 全自病、私の病院よりももっともっとうまくやっている人たちがたくさんいます。是非 、今度、我々の中小病院のメンバーにお会いになって、その辺のことを聞いてみてくだ さい。私はいまの方法で来る医学部の学生、あるいは医師に見せてあげる。どうだ、こ れで20年田舎でやってきたのだということでしかアピールの方法がございません。  こういう医師に、何とかという学会の認定医をという話もあるのですが、何かどこか で聞いたような話で、これはうまくいかないなと思うわけです。はっきり言って家庭医 という、非常に大切な分野を担う医者を作り損っているのです。そこを考えていく上で は、我々のところが頑張らなくてはいけないと思っています。お答えにならないかもし れません。 ○井部委員  先生のお話、非常に感銘深く伺いました。先生の病院ではおそらく、現在、誇りを持 って仕事をされている職員が多いと思います。研修医を引き受けることがある意味で負 担になるというのは、特に看護職などはそう考えてしまうのですが、訪問看護などを実 際に研修するに当たり、指導医と研修医のペアで往診することが実際に可能なのかどう か。あるいは、訪問看護婦と研修医という組み合わせで往診をするのかといった、実際 的なマンパワーの問題。もう1つは現状で、いろいろな問題を抱えた所に行って、いろ いろなことを学ぶことができると思うのですが、受け入れ側の医師以外の職員の整備、 あるいは職員の質の問題をある程度整備してから研修指定病院になったほうがいいのか 。その辺、先生はどうお考えでしょうか。 ○長田氏  できあがってから何かするという話は、すべてのことにおいて駄目だと思っています 。そういうものをやりながら作っていくわけなのです。ここでも述べたように、研修病 院になって我々自身が、病院自体が高めていくというのは最も大切なことかもわかりま せん。  看護婦もそのとおりだと思います。実は、看護大学というものができても何もいいこ とはない。いや、大きな病院にばかり行って、我々のところに何も回ってこないのです 。 ○井部委員  そのうちに回ってくると思います。 ○長田氏  そういう発想はだいぶあとの話なのです。そういうようなところで、まずその人たち が来てからということではなく、勉強して実際にやっているわけですから、我々自身が 実際の経験を活かしていく。こういう形の中で、看護大学卒業よりも優れた看護婦がう ちの病院にはいる、という形を作り出すことは可能だと思っています。  いま、看護婦たちは嫌がっています。医者も嫌がっています。でも、院長がそういう ことをやりたいとずっと思えば、必ず実現するというのが、うちの中小病院の会議の中 の相言葉です。できれば返上をしたいけれども、言い出した手前、もうしょうがないと いうことです。 ○黒川委員  皆さんの意見を、みんなそれぞれもっともだなと思います。いままでの日本の医療政 策もそうだけれども、医者のあり方も、すべてがそこの枠組みで出てくるわけなのです 。例えば、アメリカもイギリスもそうですが専門医の数は決められていますから、外科 だと1人で5年間のレジデントをやって500例手術しなければいけないわけです。2人 でやってはいけない。レジスターされていますから、それだけの手術の症例のない病院 ではできないようになっているわけです。もし、それより少なければ6年かかって、手 術が終わらない限り絶対なれないようになっています。脳外科でも7年、そこは1年間 1万6,000人卒業するけれども、70人しか採らないようになっているわけです。そのよう に全体の骨太というか、専門医であればそこまでのことをやっていなければ保障しない としているわけです。誰でも選べるようになって、脳外科を10年やったのだけれども大 した手術もしていなくて、そのうち開業したら脳神経内科・外科などとなっているわけ です。  その辺、篠崎局長としても、今回の医療政策1.3%も結構だけれども、公的な病院は 、例えば20万の地方都市だと国立大学付属病院があり、国立病院があり、県立中央病院 がありということを整理してもらわないと、それぞれがみんな循環器、消化器などを持 っているわけですから、セーフティネットとしての公的な病院のネットワークをきちん とする。それだけでやってしまうと、私立の病院がなくなるとどうなるかというと旧ソ 連連邦のようになってしまって、必ず低下していきますから、競争することによって質 を維持するとか、全体の政策が出てこないから常にその場あたりの議論になってしまう ということがあります。是非、その辺を局長としても、これは厚生労働省のやる仕事な のか、政治家がやる仕事なのかよくわかりませんが、その辺を出してこないとならない だろう。  前から言っているように、2年の卒後研修というのは、結局2年のクリニカル・クラ ークシップがよくできていないから、それをやっているだけの話なのかもしれないので す。最初から、卒業したら外科へ行くのだったら、5年でこれだけやりましょうとなれ ばいいのだけれども、まだそこまでの臨床教育が十分にできていないので、中途半端と 言っては何ですが、そのようになっているのだなと非常に感じます。是非5年、10年先 にはそれに向けた、もう1つ大きな、政策のブループリントのようなものが出てこない といけないのではないかと思います。よろしくお願いします。 ○部会長  そのほか、よろしいでしょうか。 ○高橋委員  もう1つだけ質問します。2人足りない病院は指定基準の法改正が必要なのですか。 ○長田氏  それを書いたときに、先ほど言ったように「平成5年の何とか」をやりました。中島 課長から、そこのところを言うようにと言われましたけれども、法改正が必要でなけれ ばよろしいですし。 ○高橋委員  これは大事なポイントだと思います。 ○長田氏  我々国診協も要望として、定員に足りないという項目を緩和してくれないかという点 を出しています。 ○高橋委員  この点、局長はいかがなのですか。 ○篠崎局長  臨床研修の指定基準は法律改正ではないのです。 ○部会長  よろしいでしょうか。それでは、長田先生には大変迫力のあるお話を伺いました、あ りがとうございました。  最後に、地域医療連携の実践者の立場からということで、三重野龍彦先生、大分市医 師会立アルメイダ病院副院長でいらっしゃいます。そして杉村忠彦先生、大分市医師会 理事、アルメイダ病院学術担当の先生でいらっしゃいます。大変恐縮ですが、20分とい う時間をお守りいただきたいと思います。よろしくお願いします。 ○三重野氏(アルメイダ病院副院長)  卒後研修という問題で、大学病院、それからいままでの臨床研修指定病院が当然中核 を成しているわけです。その選択肢にさらに1つ加えて、地域医療を一生懸命やってい るような地方の中核病院が何とか第3の選択肢になれないか。同じような要求がほかの 団体からも出ているわけですが、そういった形でいままで何度か、もう既にヒアリング が済んでいますので、基本的なコンセプト、どういった利点があるかといった抽象的な ことに関しては、少なくとも話が済んでいるという前提に立ってお話したいと思います 。  今日、私のお話する主な内容というのは、実際、具体的にある地方の医師会の病院が どういう規模で、どういうことをやっているのかを1度は理解していただかないといけ ないのではないか。先ほども小児科など、いろいろな問題が出てきている中で、実態が 見えてこないものだから話が進みませんが、まず代表的な医師会病院の内容をお話した いと考えます。  資料にはありませんけれども、日本医師会が現在研修をやっている医師にアンケート を取ったところ、皆さんもご存じだと思いますが、いまの研修制度で不足している点、 上位3つに関しては救急医療が足りないだろうというのが1番でした。2番目はどうし ようもないですが給料、3番目が地域医療のことを勉強したいという結果が出ています 。  この中で、多くの医師会病院というのは救急、地域医療に関しては、まず大体両方や っているという状況です。個々の、いわゆる臨床研修指定をクリアできない、条件面で のハンディはあるものの、それにほとんど劣らないような研修システムを構築できると 私たちは考えています。  自分たちの病院の宣伝をするわけではないのですが、やはりどういった規模で、何を しているかということは一応お話をしなければなりません。資料の1頁目から、大事な 点だけ読み上げたいと思います。大分市の医師会に属していますけれども、実際には大 分市の医師会は大分市の中の3つの医師会のうちの1つ、人口42万の大分市の中の一部 をカバーしている医師会です。医師会の中に病院が32あります。この中の主要な病院は 、県立病院と日赤という形になっています。  当医院は社団法人大分市医師会の事業として、いまから30年ちょっと前に創立された わけです。現在は385床という規模の病院です。病院の名称は省略します。病院の特色 としては、医師会による共同医療施設、ですから高額機器を共有してみんなで使う。そ れからオープンシステム、開放型の診療形態を取っています。ですから、開業の先生が 自分の患者を当医院に入院させて、院内の担当医と一緒に主治医として患者さんを見る 。あるいは、必要に応じて患者を入院させたまま、そこに自分が来て手術をするという ような形態を取っています。一般、フリーの外来は扱っていないのですが、救急をやっ ていますので、夜間の1次から3次までの救急はそれこそジャンジャンやってくるとい う状況があります。  病院の規模は385床です。もちろん病理はこの中には書いてありませんが、当然病理 も常勤医がいます。ほとんど、大体の科は網羅できているわけですが、多くの病院にあ りがちな精神科、眼科、耳鼻科、歯科に関しては常勤医がおりません。  次の頁、医師会で3次救急をやっているところは非常に少ないのですが、30床という 規模でやっています。2番目の「病院の常勤職員」、385床で医師、常勤医が42名、現 時点での研修医は6名です。研修医の状況に関しては、またのちほど改めてお話をしま す。  常勤医は42名なのですが、先ほどからの指導、資格の問題といったことがいろいろ取 りざたされるわけです。病理を含めて27名が何らかの形で、いわゆる学会の指導医、あ るいは認定医、専門医の資格などを持っています。  研修医の受入れ状況について、あらましとしてはそこに書いているように、最近ちょ っと減ってきてはいますが、大体8名前後の受入れがあります。資料の後ろのほう、「 研修医の受入れ状況」という横に見る一覧表があります。いまのところ大分医大、関西 医大、東京女子医大、愛媛医大、これらはあくまで医局の人事としての研修医の受入れ で、何も公募したわけではないのです。対象は現時点では主に2年目です。卒後10カ月 ぐらいで来たケースはありますが、ほとんどが2年目を対象として研修をしています。 医局の人事ですので、多くは1つの科を特定してきます。関西医大の場合は、本人の希 望があれば複数の科を回ってよろしいという形で選択させるようにしています。  卒後臨床研修ということに関して、実際に取り組もうとすれば、いままでのような2 年目を主体という形では許されません。当然1年目、まだホヤホヤの状況からの受入れ ということにも対応していかなくてはいけない。ただ、そのときの人数は、おそらく8 名という人数は不可能なので、指導するスタッフなどいろいろな観点から、それなりの 人数に絞らなければいけないことは事実です。  しかしながら、単独でやるというのはなかなか難しいので、いままでと同様に大分の 場合であれば大分医大、あるいは臨床研修指定を受けている県立病院との連携を何らか の形で取らざるを得ないことは事実です。ただし、その中で、当医院が主たる役割を果 たすことは十分可能と考えます。  そういったことを実際、現実的に進めていくためには、当然プログラムをきちんと作 成しなくてはいけません。しかし、残念ながら当院独自としてはまだプログラムはでき ていません。必須な項目として、全国共通の部分が当然あると思いますが、それに上乗 せするような形で地域の特性を活かして独自のプログラムを構築し、もちろんそれをオ ープンにし、研修医のほうに選んでもらうというシステムが当然必要になると思います 。  こういった形で、訪問看護や介護支援、それから健診、付属施設も全部同じ敷地内に ありますので、保健所も含めて複数の施設を統合してやらなければいけません。各施設 の協力をうまく得て役割分担をしてもらうという、まだ現実的に話が煮詰まっているわ けではありませんが、そういった方向での策定が必要になります。  こういった形で、複数の施設を行ったり来たりという形がどうしても起きますので、 いちばん問題になってくるのが給料も含めた、研修医の身分の保障が大事になってきま す。給料に関して私はどうこう言う立場にありませんが、身分に関して1つ考えている のは、市であろうが県であろうが、医師会というものに所属させるという方法が1つあ るかなと考えています。要するに、医師会の職員の中でいろいろな手続、保険の問題、 訴訟の問題を解決していく。研修医自身に負担にならないような形で医師会が動いてく れればありがたいと考えています。  先ほどのアンケートの中でもあったのですが、研修医の不満の中の大きな項目として 、いろいろな悩みごとを打ち明ける機関がないというのがあります。これはそうだと思 います。自分が研修を受けているところのトップ、上司に直接、それほど赤裸々な悩み を打ち明けるのはなかなか難しいと思います。医師会としての、大きな形での受入れが もしできれば、医師会の中にそういった相談を受けるようなグループを作り、言わば里 親みたいな形で、親身になって話を聞いてあげるようなシステムができるのではないか と考えています。こういったところを市あるいは県の医師会にバックアップをお願いし たいという形で尽力しているところです。 ○杉村氏(大分市医師会理事)  いま、アルメイダ病院の状況は、三重野副院長から縷々説明があったとおりでござい ます。日本医師会が進めています、地域医療に密着した臨床研修ということから考える と、我々アルメイダ病院がいちばん最適ではなかろうかと思っています。というのも、 特にいま、研修医からのいろいろなアンケートの中で、いちばん多い不満が救急医療の 経験がないということでした。  アルメイダ病院は昨年まで、実は大分市から認められていた第3次救急の唯一の医療 機関でした。それをいまも引き続いてやっています。医師会病院というのは共同利用施 設ということで、あくまで会員からの紹介というものが第1番となります。そうなりま すと、会員を通して我々病院のほうに来るということになるわけです。  ただ、救急医療に関しては2次だから、3次だからというだけではありません。プラ イマリケア的な、1次のものもかなり多く来ています。それに対して、いつでもお断り をしない。困っておられるすべての患者をお引き受けすることが我々のモットーで、そ のとおりに実践しています。各方面からも非常に高い評価もいただいています。行政の ほうからも本当に高く評価していただいています。  大分市はいま、43万ぐらいの市です。大分市、住民、それから医師会、この三者によ って大分市の地域保健委員会というものを設けています。そこで住民の方からもいろい ろなご意見をいただきます。13の委員会がございますが、医療に関してのいろいろなご 意見をいただき、我々はそれを十分に受け止めて対応していくということを行っていま す。言葉としては言い過ぎかもしれませんが、非常に良い状況、最高のものと思ってい ます。  先ほど宮城先生からご発言がありましたように、大学を卒業していろいろなものを経 験する。それに立ち向かっていくためにいろいろなものを吸収するという点から考える と、現在救命救急ですから3人体制ということで、当然ながらトップにはいろいろなこ とを思慮できる専門の医者がつきます。それから中間、研修医という形で、いつもいつ も実践をしているような状況です。そういう意味では全く問題ないのではないかと思っ ています。  あと2つほど申し上げます。現在は2年目の方ですが、研修医が医局に戻ったときに どう感じるかという点です。実は医局長、あるいは教授からお話を伺うと、経験してき た者からは「またアルメイダに戻りたい」という意見がたくさん出てきます。ただ、最 初に出てくるときには、「アルメイダに行きたい」という意見も実際、研修医としては 個人の意見は通らないと思うわけです。たまたまアルメイダに行きなさいと言われた方 はいいわけですが、すべて通るわけではない。先生方、教授といろいろお話すると、で きるだけ希望を通してあげるようにしたいと思うけれども、いかんせん数が決まってい るということです。何とかしてあげたい気持はありますということでした。  九州の片田舎、大分ですので、外科は女子医大にお願いしているわけです。実は、私 も女子医大の外科出身です。私がたまたま大分の出身だったものですから、当初は熊本 大学と女子医大と、2名ずつでカバーし合うという状況でした。その後、すべて熊大が 引きまして、東京女子医大に任せるということになりました。それによって4名、現在 、非常に人気があるものですから7名の先生が来ています。私もいろいろ連絡を取るな どしているのですが、どうしてもアルメイダ病院は人気があるということで、本当にあ りがたい気持です。そのような医局の先生方の声も強く出ていますので、是非、1年目 からの研修もお引き受けするような体制を整えていきたいと思っているわけです。  それから、当然医師会で作っている会員で作っていますので、医師会のA会員という のは大体200人ちょっといます。そういうような方たちの意見にしても、現在、アルメ イダ病院の対応が非常によいということです。紹介があっても、それを必ず会員のとこ ろにお返しするという形を取っています。そのような連携もうまく取っています。  今後は赤十字病院、あるいは県立病院という連携も考えていますが、大分県の中に医 師会病院という共同利用施設は、アルメイダを含めて5施設あります。大分が42〜43万 ということでいちばん大きいわけですが、各地方、海の地域もあり山の地域もあり、小 さな地域のところに4カ所があるわけです。そのような医師会病院との連携も取ってい きたいと思っています。当然のことながら老健施設も持っていますし、我々のところは 特養も持っています。隣設したところには研修センターもございます。そのように、い ろいろな勉強をして吸収できる体制が整っているという状況でした。是非、地域に密着 して頑張っていきたいと思っています。 ○部会長  どうもありがとうございました。 ○櫻井委員  かなり以前、私がアメリカから帰ってきて、仕事がなくてトラックの運転をしていた ころがあります。その当時、アメリカタイプの診療をさせてくれるのではないかという ことで非常に興味を持った、懐かしい病院なのです。  今回は研修の話なので、教育についてお伺いします。いままでのお話を伺っていると 、普通の医療法人、または一般国公立の病院とあまり変わらないような感じがします。 特にお尋ねしたいのは、オープンシステムで開業の先生が患者をつれてきたときに、ど の程度診療に関与しているのか。そして、その先生たちが教育にどういった形で関与し ているのか、ほかの病院と違うのかどうかをお伺いしたいと思います。 ○三重野氏  ほかの病院がどうかというのは知らないのです。これは各会員の先生によって全然違 うのです。単にお任せして、預けてという形で、ときどき顔をのぞきに来るような先生 もいれば、主治医とディスカッションしていろいろ勉強するような先生もいらっしゃい ます。千差万別なので一概には言えませんが、概して言えばお任せする形のほうが多い ことは率直に言って事実です。その病院に見えて、患者を一緒に見る先生も、例えばそ れがそのまますぐ研修医に教育するという形のシステムにはなっていません。そうある べきでしょうね。 ○星委員  アルメイダのお話というのは、実は以前に日本医師会の桜井常任理事が来て、「地域 施設群研修委員会方式」という名前で、提案をしたものの具体的な例と考えて頂きたい 。地域において病院群を作って、身元引受人たる医師会なり、そういう組織が面倒を見 て、研修の評価をする。つまり、研修の中身がいいのか悪いのか、お任せするのではな くて第三者が見る。それは先輩集団がいちばんいいのではないか、という発想でお話を されましたが、まさにそのモデルになっている病院と私たちは考えています。  1つの方法として施設に着目した、つまり臨床研修指定病院、あるいは大学病院とい う建物、物に着目したものと、今日いろいろお話がありましたが、それらを総合してみ るともう一つはやはりプログラムに着目したしくみであろう。そして、そのプログラム がきちんと評価されることであり、あるいは実習を引き受ける先生方は外形的に指定さ れる、つまり「何とかの指導医を持っている」、「何とかを持っている」ではなくて、 どういう症例を持っていて、どのような内容で指導しているのかということこそが評価 されるべきだ、ということを示唆しているのではないかと思います。何々病院に行って よかった悪かったではなくて、どのようなプログラムなのか。コアになるカリキュラム は決めてもらわなければいけないことがあるのだと思いますが、その上に例えば大変な へき地で勉強する。あるいは、一定の診療科に着目したものをその上に上乗せするとい うのは、個人がそれぞれの施設、あるいは施設群の中で、先ほど「里親」という話があ りましたが、里親の先生方と相談しながら、自分の進路を一緒になって考えていくとい う仕組みが取り得るのではないかということを私たちは考えるわけです。  今日の長田先生のお話も、そういうものにつながる大変いいものではないかと感じま した。先ほども指定病院の基準というものがどうも足かせになって、皆さんの頭の中に3 00床以上、総合病院、あるいは剖検率といったものがあるようです。つまり、外からは められる条件よりも、むしろ中身がどうなのか。カリキュラムの問題、プログラムの問 題、あるいは評価の問題というものが実はいちばん大事だと。しかし、その大事なこと に、実は私たちはどこかに預けることにあぐらをかいて、自分の責任を果たしてこなか ったということを痛切に反省いたしました。 ○宮城委員  アルメイダのお話を伺って感じるのですが、これは地域医療指定病院です。したがっ て、外来の患者も非常に制限しているし、救急患者も1次から3次まで受けつけている という割には、1日20名ぐらいしか来ないわけです。年間7,300とか7,800ぐらいでしょ うか。医師会の先生方が既にトリアージをして送ってくる患者もいるわけですから、ク ルードな、いわゆるプライマリケアにおける全監別診断技術が育つような感じがあまり しないのです。ですから、プライマリケアという点ではこの内容では。ここは何も、臨 床研修指定医にする、しないというディスカッションの場ではないのですが、入院だけ が前面に出ているような病院という印象を受けるものですから、やはり最初の初期研修 というのは外来、救急が活発なところで行う。医師会の先生方も見ていない。患者が直 接病院に来て、そこで一から見ていくという訓練を若い先生方にはしてもらいたいと思 うのです。これを見ていると、非常に大学的なニュアンスの強い内容のように思うもの ですから、それで本当にいいのかどうかという疑問は感じます。 ○星委員  私が答えるべきではないのかもしれませんが、いま、「医師会の先生も見ていない」 という発言がありました。医師会の先生の見ていないプライマリケアというのは一体何 なのか、よくわかりません。いまの発言は多分、「医師会病院の先生が」の言い間違い だと思いますが、だからこそ医師会病院なのです。これは私が答えるべきことではない のかもしれませんが、そういうコモンなものについて言えば開業されている先生、ある いは地域で中小病院をやっている先生、いろいろな先生方がいらっしゃるわけです。そ の方々のいろいろなリソースをどう組み合わせるのか、ということに尽きるだけなので す。  いま、アルメイダ病院1つですべての研修を引き受けます、2年間全部やりますとい うことを宣言しているわけではありません。むしろ、多くの関連する先生方、あるいは 直接関係がなくても同じ医師であり、あるいは実地医家である先生方のあらゆるリソー スを使って研修をやるという仕組み、それらの施設郡の中の中核的なものとしてアルメ イダ病院というものがあるというものがあるという発表と受け止めましたし、アルメイ ダ病院はそのような研修を検討されているのだと私は思います。 ○内村委員  確かにそういう点があるのかなと、お話を聞いていて思いました。やはり、開業医の 方は、実際に看護婦と一緒に行って訪問して、家の中を見るわけです。家の中を見るこ とで、お家族のお互いの関係、それから経済レベルからすべて見られるわけです。全人 的医療、というのはその辺だろうと思います。そういう意味では、開業の先生がいちば ん見ておられるのは当然なのです。  先ほど星委員が言われたように、この病院がどのようにして連携を取って、どういう プログラムを作って、どういう指導をするか、その点が非常に大きいのではないか。そ ういう意味では、開放型であれば紹介した先生は副主治医につくとか、その辺をもう少 しきちんとしていかないと、開放型のシステムというのはそういうところに非常にいい 点があるのではないかと思います。もう少しシステム化して、開業の先生が一緒に勉強 していくという体制を義務化するなどしていただくと、研修医には非常にいいシステム ができるかなと思います。 ○部会長  実は今日、地域医療連携という意味でご意見を承ったので、その病院の中ですべて、 研修を完結するプログラムではないと私どもは理解していたわけです。そのほか、何か ご意見はありますか。 ○仲村委員  いままで出た意見と重複する部分があるかもしれません。オープンシステムであるこ とと臨床研修の制度とを結びつける特色というか、地域医療自体は賛成なのですが、こ の病院の現状の診療、あるいは研修体制でもいいのですが、それがオープン病院である がゆえに非常に有効だとか、そういう理由をもう少し教えていただければと思います。 ○杉村氏  共同利用施設ですので、当初から、患者がそこに駆け込んでというのは原則としてで きないというのが1つの条件でした。オープン病院ということなので少しでも患者をつ れていって、我々が開業しています状況というのはそこで一緒に診療するということを しています。以前、我々がアルメイダにいたころは、必ず主治医はアルメイダ病院、副 主治医は紹介してきた者と、極端な話をすると、毎日のように回診に来た先生方はたく さんいらっしゃったのです。  最近の傾向として、若い先生方も少しずつ開業し始めてきていて、以前の考え方が少 し変わってきたかなという感じもあります。というのは、患者に対して一生懸命になる のはいまでも同じなのですが、以前はその地域の方との密着ということで、何が何でも 患者に最善を尽くすということでついていった。いろいろなこともやっています。ただ 、最近の若い先生方が開業するとクリニック形式が多いもので、ある程度自分が紹介す ると、そこで離れてしまう。いわゆる、割り切った考え方が非常に強いのです。  我々が考えていたオープン化システムというものは本当によかったと思うのですが、 それをいま、医師会としてももう1つ啓発していかなければならないなと思っています 。こういうようなことをやっていけば、送ったほうも卒後1年目、2年目ではなくても 研修もできるし、再研修という形もできます。それから、そこにいる若い先生方、いま は2年目ですが、そういう先生方ともいろいろディスカッションできる。医の1、2、 3というお話もできる。それと同時に、アルメイダのほうにいる先生方との連携という ことで、メリットというのは非常に多いのではないかと思います。  最近の傾向として、あまりにも割り切っている先生が出てきていて、オープン化シス テムについて、ただ任せればいいではないかという考えが少し出てきているように思い ます。この点は確かに反省しなければならない点だろうと思います。しかし、すべての 先生方でそういう考え方がなくなっているわけではございません。オープンになって、 自分たちが行って手術をするとか、いろいろなことをするというのも実際には行ってい るわけですので、いろいろなディスカッションをしていきたい。それから、各医師会の 中でも症例検討をする会がいろいろありますので、そういうところに出てきて一緒に先 生方と医療のことを語り合おう。人生を語り合おうということもしているわけです。決 して、オープン化というのはいろいろ悪いわけではありません、よいことだと思います 。 ○相川委員  私も、オープンシステムは決して悪いとは思っていません。私も櫻井先生と同じよう に、アメリカから帰ってきてオープンシステムの病院があると聞いたのです。  事実関係だけお聞きします。医師会の先生で、開業している先生が、自分の患者を手 術するときにアルメイダ病院に送って、その先生が手術をなさるのですか。開業の先生 が術者として手術をなさる割合というのはどのくらいなのでしょうか。アメリカだとビ ジティング・サージャンという考えで、ほとんどそうしているわけですが、先生のとこ ろは実際どのくらいなのでしょうか。 ○杉村氏  非常に頭の痛いご意見なのですが、最近はそれが非常に少ないのです。 ○相川委員  何割ぐらいなのでしょうか。例えば、胆嚢炎と診断して先生のところに送って、自分 が術者になって、先生のところにいるレジデント、研修医を使って手術をするというの は何割ぐらいなのでしょうか。 ○三重野氏  正確な数字はないのですが、例えば耳鼻科など、ある程度特定の科に限られています 。ほかの大きな外科系、いわゆる消化器系という形での手術には、いまは入っている先 生はほとんどいらっしゃらないのです。ですから、数パーセントを切るぐらいの感じに なっています。 ○相川委員  それがいい悪いは別で、実情を把握する意味でお聞きしました。ありがとうございま した。 ○部会長  時間がきましたので、本日の審議はこれで終了したいと思います。ここではもともと 、一般臨床医と専門医の話がいつもとび交っていますが、専門医を考える場合のレベル が委員の方々でずいぶん違う。宮城委員の考えている専門医と、辻本委員が考えている 病院の専門医が何人いるか、患者側から知りたいということ。それから、黒川先生から 言われるような超エリート、その国のトップレベルの医療を賄う専門医とで、ずいぶん 意味合いが違っています。そういう意味で、専門医というのは我が国ではアメリカ型の 専門医と違い、その領域である程度のレベルが担保された医者というレベルにあるので はないかと思います。そのような、医師の基本的な捉え方の点もあるので、なかなか議 論がまとまらないところもあります。三重野先生、今日は本当にありがとうございまし た。  この検討会も回を重ねて、次回が10回目となります。次回は保険者の立場を代表して 、健保連のご意見をお伺いしたいと思います。それから、先日中野先生から、大学病院 でのある程度の制度設計の資料を出していただきました。次回には中野先生もいらっし ゃるので、それをご説明いただこうと思っています。そして、これまでの意見を踏まえ て、まとめの意見交換を進めていきたいと思っています。よろしくお願いいたします。 次回の検討会の日程について、事務局からご説明ください。 ○医事課長  次回の日程については、3月19日(火)の午前中を予定しています。委員の皆様には よろしくお願い申し上げたいと思います。 部会長  本日はこれで閉会したいと思います。お忙しいところ、どうもありがとうございまし た。                         照会先                         厚生労働省医政局医事課                         電話 03−5253−1111                         内線    2563,2568