02/02/06 第3回「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」議事録      不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会(第3回)議事録 1 日時   平成14年2月6日(水)10時から12時 2 場所   厚生労働省共用第6会議室 3 出席者  (1) 委員(五十音順)    伊藤 眞(東京大学大学院法学政治学研究科教授)    岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)    小幡純子(上智大学法学部教授)    加藤和夫(帝京大学法学部教授・弁護士)    諏訪康雄(法政大学社会学部教授)    村中孝史(京都大学大学院法学研究科教授)  (2) 行政    鈴木審議官、岡崎参事官、清川調査官、荒牧補佐、山嵜中労委第一課長 他 4 議事概要  (1) 議事進行   ○ 座長から、引き続きフリートーキングを行いたい旨提案された。  (2) 意見交換   ○・  最初に手続きについてであるが、いかに迅速かつ公正に進めるかが問題で      あると考える。そのためにどうすれば良いか。    ・  まず労働委員会規則が審査委員の十分な訴訟指揮を発揮するための手がか      りを与えるようにすることを考えてみてはどうか。    ・  「調査」と「審問」で何をやるのかということがはっきりしておらず、実      務で学んでいくしかない状態である。したがって「調査」とは何か、「審問      」とは何か、どのようなことをするのかを明文上明らかにした方が良いので      はないか。それにより審査委員又は事務局職員に対する指針となるのではな      いか。    ・  「調査」にはいろいろな要素が入っている。たとえば(1)申立人の不平不満      を聞くといったコンサルティング機能や(2)和解の気運があれば、第1回か      ら和解のための調整作業を行うこととなり、(3)和解が困難な事案であれば      、審問に向け、争点整理を行うこととなる。特に(3)番目の争点整理につい      ては、労働委員会規則には証拠の提出(第37条第1項)等の規定はあるが、      何のための行うのかがはっきりしていないのではないか。    ・  「審問」についても同様に、労働委員会規則の中では、その定義つけが明      らかにされていない。使用者側に対して不利益命令を出すのであれば、命令      を出す前提としての一種の行政手続上でいう聴聞であるという位置づけなの      かというと必ずしもそうではない。       実務での審問の場で、当事者から陳述を聞くことはほとんどなく、当事者      による証人尋問の手続きとなっている。そうだとすればそれに即した形で労      働委員会規則を改正すれば制度的にはすっきりするのではないか。    ・  現行の労働委員会規則では申立から原則30日以内に審問を行うこととなっ      ているが(第39条第1項)、これは非現実的な規定ではないか。       審問を行っても、人証を行うわけでもなく争点が明確でないまま延々と過      去いかに使用者から不当な扱いを受けてきたかを述べてしまう場合がある。      審査委員が的確に交通整理できるように権限をもっと明確化すべきではない      か。    ・  次に、申立書の工夫をすることを考えてみてはどうか。       労働委員会規則(第32条)でも、不当労働行為を構成する具体的事実や請      求する救済の内容等を記載すべきとの規定があるのみである。申立書の中に      は、組合結成から労使関係の経緯が延々と記載されているが、何が不当労働      行為なのかがはっきりしないものが見られる。       そこで、定型的な様式を作成するという工夫をしてみてはどうか。団交拒      否、解雇、配転差別等の類型別に○印を付けさせ、さらに解雇や配転差別の      場合は、いつ行われたのか、使用者がそれについて示した理由等を箇条書で      記載させる等である。その上で組合側が主張する使用者の不当労働行為意思      を裏付ける間接事実を、いつ、誰が、何を言った等を箇条書きで記載させる      。最後に背景事実として、組合結成以来の労使関係を書きたいならば書かせ      れば良いという書式にすれば良いのではないか。       つまり申立書の段階における争点整理である。これができれば後の調査な      り、審問などのかなりのスピードアップにつながるのではないか。    ・  次に命令書の簡素化を考えてみてはどうかという点がある。ただこの点に      ついては、課題も多い。       命令書の草案を作成するのは事務局職員であるが、職員は法律家としての      トレーニングを受けているわけではなく、短く書く方がむしろ困難であるか      もしれない。       それに司法審査との関係では、短くした場合、重要な論点を落としており      、裁判で判断が覆されるのではないかという懸念を持つのかもしれない。    ・  次に不当労働行為審査制度に限っていえば、地労委を一定程度統合するこ      とを考えてみてはどうか。       たとえば、現在の地労委を高等裁判所の所在地に統合しブロック化できな      いか。一種のNLRB方式である。申立人の利便性を考慮し、各都道府県には事      務所は置くが、申立書の受理や第1段階での初期調査に限定し、踏み込んだ      審査をブロック毎に行うこととするといったことが考えられる。    ・  次に委員及び事務局職員の専門性の確保を図るため、より一層の研修体制      の充実が必要である。特に委員についてであるが、非法律家の審査委員や法      律家であっても労働法の専門でない委員の研修が必要である。    ・  次に使用者が労働委員会の審査の場において証拠を出さない場合があるが      、これを制度的に何とか証拠を提出させることを考える必要があるのではな      いだろうか。       使用者が労働委員会では積極的疎明活動をしないときには、労働委員会と      しては労働組合側の主張を聞き、命令を出さざるをえない。その命令が取消      訴訟の場に持ち込まれ、初めて使用者は争点に係る証拠を出してくる。それ      により、命令が取り消されることとなる場合が生じる。どこかでこの悪循環      を断ち切る必要がある。    ・  次に司法審査(取消訴訟)の関係では、できれば再審査前置主義を取った      方が良い。    ・  またどのように命令書を位置付けるかという問題がある。       裁判所の判決に近いものと考えるのか、それとも行政命令として位置付け      るのか。どこまで精密さが要求されるのか。命令を迅速かつ簡素なものにし      ても、裁判所が、結局精密に審査し直すというのでは意味がなくなってしま      う。というのは、それがはねかえって労働委員会でも取消訴訟に耐えうるよ      うに慎重に審査を進めざるをえないという悪循環となるからである。その悪      循環をどう解決するのか。この解決策は現状では、地労委に期待するのは困      難である。    ・  最後に法曹教育の中で労働法を充実させる必要がある。使用者側の顧問弁      護士が労働法を知らない人が多いような気がする。そのため起きなくとも良      い問題が起きてしまうことがある。商法、税法だけでなく、労働法も重視す      べきである。これを何らかの形で働きかけるべきである。   ○・  これまでの経験では主として和解で解決する場合は多いく、事件によって      は3、4回の調査で和解が成立するケースもあったところである。また特に      団体交渉拒否事件では、和解で解決しない場合は当然、その後に命令書交付      や取消訴訟が控えており、そのことが和解で解決しようとするインセンティ      ブが働くのではないかと考える。    ・  また現実には実際には厳密な意味での不当労働行為の救済というよりは民      事的は解決をもとめるような申立が多く、その場合には、命令による解決と      いうよりは斡旋的な運用による解決が適している。    ・  その一方で不当労働行為救済制度の中で解決すべき古典的な労使紛争につ      いては、準司法的手続きが求められ、弁論主義・当事者主義が取られている      。しかしながら、その割には審査委員は非常勤であり、また事務局職員は法      律職でなく、準司法的手続きが機能するための人的リソースが十分でないの      ではないか。審級省略、実質的証拠等の制度も存在しないため行政委員会の      準司法的制度としては、どこか中途半端な面がある。    ・  簡易で迅速な救済を行うという観点で言えば、労働委員会は「民−民」間      の紛争なので一律に比較することはできないが、他の行政審査会などは職権      主義的に行われており、後は書面を活用している。    ・  制度的な問題であるが、簡易迅速な処理を求めるのであれば、職権主義的      な運用を行うことになるが、この場合、非常勤の審査委員がどこまでできる      か、事務局職員の専門性をどこまで確保できるかということがネックとなる      のではないか。       他方で本当に職権主義での運用を行うと、現実に期待されているところの      調整的な機能が鈍化してしまうのではないかという問題もある。    ・  実際上の解決策としては、いろいろ考えられるが、公益委員の一部常勤化      、職員の専門性の強化であなかろうか。それに公益委員会議は公益委員全員      の参加で行うが、判定は公益委員1人で良いのではないか。    ・  最後に、事件は個々に違うことは理解できるが、それにしても過去に労働      委員会ではの多く命令が出されているのだから、もう少しマニュアル的なも      のが整備されていても良いのではないか、ということである。 【意見交換】  ○ フリートーキングを行いたい。  ○ 使用者が労働委員会に証拠を出さない具体的な理由は何か。  ○ すべてではないが、使用者の中には労働委員会に対して不信感を持っている者も   いる。つまりどんなに証拠を提出しても、労働委員会は労働側に立っているので、   結局は救済命令が出されるものと考えている使用者がいる。そういう使用者は労働   委員会で争うことはせず、命令書がだされた後に取消訴訟で本格的に争う戦術を採   る場合がある。  ○ 民事訴訟においても重要な証拠は控訴審までは出してこないという戦術を採るこ   とがある。新民訴法の下では、一審の証拠調べが終了するまでの間に必ず提出する   のが前提であり、原審で証拠が出せなかったのなら、新民訴法のように理由を説明   させることを徹底させる必要があるのではないか。  ○ 例えば最近の例ではあるが、使用者側は労働委員会では査定の証拠を一切出さず   、取消訴訟の段階になって査定の資料を全て出してきた。その結果命令が取り消さ   れた例がある。そうなると何のために審問を行うのか分からなくなる。  ○ 意見の中で調査と審問の棲み分けの話がでたが、「調査」は争点整理であり、「   審問」は人証調べということであると考えているいるが、これに何か問題があるの   か。  ○ その理解のとおりと考えるが、労働委員会規則上、その考え方が明確に定義され   ていないところに問題があるのではないか。一部の組合ではあるが、調査における   争点整理の重要性が理解されていないのではないかと感じることがある。とにかく   審問を早くおこなってほしい旨の意見が出される。    審問は、争点整理の結果、書証で具体化できない事項を明らかにさせるというこ   とであるが、実際にそのような運用がなされず、極端な場合には単なるパフォーマ   ンス的な場になることがある。    人証取り調べの際の審査委員の権限が曖昧なので、争点には関係がないと思って   も、尋問を許可しなことは実務においては困難である。  ○ 結局争点が明確となっていないため争点と無関係なことを審問で行ってしまうこ   ととなるのではないか。  ○ 合同労組などでは、組合役員が証人に立つ場合があるが、これは争点を明確にし   、事実を立証しようという意味ではないような場合がある。  ○ 審査委員は裁判官ではないので職権主義的にやろうとするとどうしても限界があ   る。尋問を許可しないと怒りだし、その後処理が円滑に進まなくなる。もちらん審   査委員のトレーニングによりある程度はカバーできることではあるが、前提となる   権限が不十分ではないか。  ○ 当事者主義といっても、労働委員会規則では審査委員は当事者に尋問することも   できるし(第40条第第9項)、尋問を制限することもでき(第40条第11項)。また   進行を確保するために必要な指示を与えることもできる(第40条第12項)旨の規定   がなされているところである。こういった規則を最大限活用すべきであり、これら   の規定で不十分であるならば規則を改正して強化すべきである。  ○ もちろんそうである。しかしながら組合側から、自分たちが救済の申立を行った   のだから、最後に委員長や書記長の証言も許可してほしいと主張する。それを斥け   るのはなかなか難しい。  ○ 労働委員会の場合は、労使参与は委員会の運営にも参与している。したがって、   本来ならば審理指揮を発揮し迅速に行わなければならない部分であっても、労使委   員の立場も考慮しなければならず、指揮が発揮しずらい部分もある。規則の上はも   う少しいろいろなことができても、労働委員会特有の公労使三者構成の中で、それ   が発揮しづらいという部分があるのではないか。裁判所でも、例えば弁護士が裁判   所の運営に関与しているとすれば、裁判官は指揮を発揮しづらいのではないか。    公労使の委員が同じ数だけいて、基本的なコンセンサスを受け委員会を運営して   いる。そしてこれらの人たちが事件の参与委員となっている。良い悪いの議論は別   として、現実の問題として、このような労働委員会体制は、審査委員の権限発動に   影響を与えているのではないか。  ○ 参与委員の役割であるが、単なる申立人の利益代表者なのか、それとも労使関係   の専門家として参与しているのか、そこをはっきりさせる必要がある。もう一つ公   益委員の権限の確立とそれを発揮できる体制をなんとか確立できないのか。  ○ 審問の場面においては、労働委員会規則上は尋問の制限が確かにできるが、それ   やると混乱する場合があり、その混乱を鎮める担保がなく、実際にその権限を使う   のをためらう場合が多々ある。  ○ しかしそれで議論が終わってしまうと前進がない。  ○ 裁判所でも改革が進んでいるが、労働委員会で同じ改革をやっても仕方がないの   ではないか。労働委員会は公労使の三者構成であり、その点裁判所とは異なってい   る。労働委員会が裁判所の一部となってしまっては、労働委員会の意味はなくなる   のでは。  ○ 手続きをどうするかについてNLRBでも同じ議論があった。NLRBは、準司法的機能   を持つ機関として司法審査にも耐えなくてはならいとして、委員が司法審査のノウ   ハウを導入し、訴訟手続きに使い対応をしている。  ○ 労働委員会の特徴としては、労使関係について専門的知識経験を有する委員会が   その裁量により個々の事案に応じた適切な是正措置を決定できるということであろ   う。    労働委員会が信頼され、労使関係の紛争については、専門的知識を有する労働委   員会に持っていく必要性を感じさせるようにしなければならない。そのための改革   であるが、公益委員の常勤化は必要であろう。常勤であるならば、より一層の改革   の意識を持つこととなる。  ○ 委員が非常勤の現体制での改革は限界があるのではないか。  ○ 人的リソースに絞って議論を続きたいが、この点について何か意見があるか。  ○ 争点整理を行い実質的に意味のある証拠調べを行おうとする場合、もちろん事務   局職員のサポートも重要であるが、基本は委員の能力や意欲・姿勢が一番重要では   ないかと考える。裁判でも、裁判官の争点整理の良し悪によって審理の充実促進の   程度が左右される。また裁判官と書記官との連携がうまく行っている際には、争点   整理、証拠調べ等について裁判官の意向を受けた書記官の言うことを弁護士も聞く   ようになっている。そうなれば審理が短期間でスムーズに進むことに寄与する。  ○ 現在地労委は47都道府県にあり、その委員数は地労委ごとに5人〜13人いるが、   ごく一部の地労委の除き、全ての地労委で常勤化を行うのは不可能ではないか。や   はり現在の地労委を高裁所在地に統合し、ブロックごとに選任された委員について   常勤化し、人材を確保することならば可能となる。    審問中心主義から調査中心主義とし、審問は必要があれば行うことにはできない   か。陳述書を活用し、最終的に人証を行わざるを得ない者については審問でやると   いうことの方が良いのではないか。しかし調査中心主義で審理を進める場合、非法   律家では審理の進行が困難となる。  ○ 労働法以外の委員がいることは、全体としてはバランスがとれてて良い面もある   が、公益委員は1人で事件を担当することとなり、その担当委員が労働法の専門で   ないことは本来の趣旨からすればおかしいのではないか。  ○ 法律家であっても、手続面で詳しくない委員の研修をどうするのかは今後の課題   であろう。また労働法以外の委員をどうするかであるが、実際、労働委員会では労   働法学者が数える程しかいない。これは明らかに不自然である。    この人的リソースの問題は今後詰めることとし、それ以外の項目について少し議   論したい。  ○ 申立書についての議論があったが、例えば簡易裁判所の申立書の記載例などは、   類型化されたものがあり、参考となるのではないか。    申立を類型化することは、その後の争点整理と連動する。また命令の簡素化につ   いては、民事判決などは、審理充実が進展してからその長さが従来の3分の2ぐら   いに短縮された。短い方がポイントをついており、評判が良い。類型毎に要件事実   を整理することが重要ではないか。  ○ 申立書の工夫することにより少なくと労組法第7条第1号、第2号事件について   は、かなり争点整理が楽になるのではないか。3号事件については難しいとは思う   が、過去からの蓄積をもとにある程度は類型化が可能と考える。  ○ 類型化され、マニュアル化されれば、当事者が審問の場でパフォーマンス的なこ   とをしてもしょうがないと考えるようになり、いい意味で改善がなされることにな   るのではないか。  ○ ある程度、類型化・マニュアル化が進みテキスト的なものができれば、職員の研   修にも使えるし、さらに言えば手続き面に詳しくない審査委員の研修にも使えよう。  ○ 労働組合の同意が得られるかという問題が一方である。  ○ 個別紛争が形をかえて申立が行われたものや、団交拒否事件などについては、マ   ニュアル化して簡易迅速化しても問題ないのではないか。    問題は3号事件とか、あるいは審問において争点と関係のない事項を延々を述べ   る組合がある場合である。いきなり方向転換した場合は、議論にもあったが反発が   予想されるだろう。  ○ 労働委員会に係属していることに意味があるという事件もあり、そうすると迅速   な解決を望んでいない場合がある。    使用者側にしてみても労働委員会の場を利用して問題解決を図っている部分もあ   る。  ○ その点裁判所と相違がある。  ○ 裁判でも、当事者が訴訟が係属していることに意味があるという事件も中にはあ   る。また、被告の立場では判決が出るのを引き延ばし、原告の立場では早急に判決   を求めるスタンスをとる傾向があるが、弁護士は原告も被告も代理するので、一般   論としては審理迅速化に反対し難いはずである。    以前の民事裁判は判決がでるまで時間がかかり、特に経済界から紛争解決機能に   疑義が出された。裁判所としても国民の期待に応えるべく頭の切り替えを行い、何   が合理的か、どうしたら無駄を省けるかという観点から10年程前から改革に取り組   んだところである。    不当労働行為の救済を求める側が、主として救済ではなく、係属していることに   意味を見いだしているのであるならば、制度を考え直さなくてはいけないのではな   いかという気がしなくもない。 確かに先ほど申したとおり、裁判でも係属していることに意味があると考えてい   るものもあるが、それは少数であり、それなりの対応をすれば良い。  ○ 区分けが難しい。ある時は早急に解決を望む場合もあるが、別の場面ではそうで   はない場合もある。労使関係は両方の面が混在している。  ○ その中で現在の審問中心主義から調査中心主義にかえていった時に反発がでてく   る。  ○ 主観的に、当事者が労働委員会に係属していることに意味を見いだし、迅速な紛   争解決を望まない場合には、客観的に見ても迅速する必要はないと考えるのか。  ○ 労使双方ともに問題を迅速に解決しようとする意欲に欠けているケースが中には   ある。  ○ 現状を変えた方が良いことは間違いない。どこをどう変えるのかという問題があ   る。ただ現実の運用を踏まえた上で議論しないと難しいのではないか。特に労働委   員会は半世紀の歴史があり、労使関係は今でこそ安定しているが、慎重に対応しな   いと難しい問題を招きかねないこととなる。    これまでの議論で(1)人的リソースの問題、(2)手続きの迅速化の問題が提起され   たが、さらにもう一つくらい問題提起があれば議論を行いたい。  ○ 中労委が再審査の際の便宜として、初審命令書の証拠の摘示を求めているが、こ   れをやらないと中労委は不便なのか。    当然に再審査申立人がいるわけだから、その者がこの事実認定は誤認がある等を   主張するはずである。初審命令書について逐一証拠を摘示しないと再審査の関係で   本当に利便性に欠けるのかがわからない。  ○ 証拠の摘示の行えば、便利である程度ではないか。  ○ 担当者は事件記録を全て読んでいる。初審命令書の段階で争点となる事実がどこ   にあるのかを把握できれば便利であることには違いない。  ○ 裁判でも同じような問題がある。しかしながら重要な争点であるにもかかわらず   、どこに証拠があるのかわからない事件が一番困る。部分的に細かい争点まで逐一   摘示する必要はなかろう。重要な争点について証拠を摘示すれば足りるのではない   か。  ○ 一番重要な争点は一つか二つぐらいと考える。重要な争点はともかくとして、周   辺事実についても摘示していることを聞いたことがあるので疑問に思った。    基本は認定した事実に基づいて労働委員会がその権限を適切に行使した命令を発   出したかどうかであると考える。  ○ 公正取引委員会も準司法的機関であり、こちらは審級省略や実質的証拠主義の採   用が明文化されているのではないか。    労働委員会では、命令が交付されても取消訴訟があるのだからという意識がある   のではないか。 ○ 公正取引委員会の審決は内容的に充実している。要するに委員会が信用されてい   ることではないか。  ○ 同じ行政委員会でも労働委員会とは性格が違うのではないか。  ○ 先ほどの議論で審査と和解との関係が出たが、NLRBでは申立の90%近くが和解で   解決している。和解前置がうまく機能している。  ○ 個別紛争が形を変えて集団的労使紛争として労働委員会に申立が行われる場合、   通常和解で解決するのではないか。うまく行かない場合は取り下げとなるのではな   いか。  ○ 不当労働行為審査制度を持つ国は少ない。大部分は労使紛争が起きた場合は裁判   や実力行使をとることとなる。またヨーロッパでは細かな事案が裁判になっている   。  ○ 外国では解雇規制等、実体法で詳細な禁止行為が規定されている。  (3) 次回の予定  ○ 時間なのでここで議論を終了する。次回は不当労働行為審査制度の実態調査票の   取りまとめ結果の報告を事務局にお願いする。またこれまで3回にわたりフリート   ーキングを行い、その中で委員の方から意見を伺ったところであるが、事務局の方   でこれら意見の論点整理をお願いする。それをもとに関係団体からのヒアリングを   行うことを視野に入れつつ今後の議論の進め方について検討したい。    なお次回は3月13日午前10時を予定している。  ○ 司法制度改革推進本部においては、「労働検討会」が今月から開催される。平成1   6年には一定の結論が出されると聞いている。これらの議論を踏まえながら本研究   会でも議論を進めたい。 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係     村瀬     TEL 03(5253)1111(内線7752)、03(3502)6734(直通)