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参考資料

御意見募集で寄せられた意見(平成13年11月27日〜平成14年2月26日)

受付番号:42
受付日:平成14年2月3日
年齢:33歳
性別:女性
職業:会社役員
氏名:(匿名化の要否不明)
所属団体:(匿名化の要否不明)
この問題に関心を持った理由:
 この問題に感心を持った理由は、代理出産です。私も代理出産を真剣に考えている1人だからです。

御意見
 題名「精子・卵子の生殖補助医療について」
 代理出産に、厚生労働省は、禁止の動きで考えているようですが、どうしてなのでしょうか?
 もし、本当に子供がほしい人がいて、医学が進歩して代理出産という手段を使えば、自分の赤ちゃんができる希望が私には、唯一生き甲斐なのです。
 7年前に早期胎盤剥離で死産で、その時出血多量になり、子宮を摘出しました。
 私は、子供がほしかったのでそれからお金を貯めてアメリカで代理出産をする!という決断をし、貯金を始めました。でもニュースで、長野のお医者さんが日本での代理出産を成功させたと聞いてとてもびっくりしたのと、とてもうれしくなりました。私も、日本でうめるかもしれないと思ったからです。
 厚生労働省様、禁止の法案をださないでください。本当に、生めない人間のかすかな希望をとらないでください。倫理的な問題は分かりますが、本当に産みたい人はどうなるのですか?そういう決議を取る前に、ぜひ納得するよう説明してください。もしくは、日本のそれを希望する人たちを集めて一度会議を開いてください。
 世の中には、中絶や、産んだのに殺してしまう人がいます。私達のように、産めない人の気持ちを考えて審議してください。どうしても事情があって、産めなくなった人に限りとか、すこし譲歩する形での審議をぜひお願いいたします。もしこのメールを読んでくださってお返事をいただけるとうれしいです。宜しくお願いいたします。


受付番号:43
受付日:平成14年2月16日
年齢:下記参照
性別:下記参照
職業:下記参照
氏名:下記参照(匿名化希望なし)
所属団体:妊娠・出産をめぐる自己決定権を支える会
この問題に関心を持った理由:
 私たち「妊娠・出産をめぐる自己決定権を支える会」FROMは「患者の妊娠・出産に関する諸問題」を時代の推移に伴う社会の変動と患者達の変化に即し、当事者の自己決定権を尊重して解決することを目的に、ボランティア精神を発揮し、ある特定した生殖医療を自己決定した患者自身とその家族並びに生まれてくる子供の人権を擁護するために、活動している。しかし、厚生労働省に設置された厚生科学審議会が発表した結論は、近視眼的であり、当事者の意見を幅広く汲取った公平な意見とは言えるものではなく、立法までの期間に、改正するべきところは改正せずに法制化されたら、禍根を残すことになると憂慮し、FROMはここに意見書を提出する。

御意見
 私たちは平成14年2月3日「第2回妊娠・出産をめぐる自己決定権を支える会サテライトシンポジウム/総会」を東京で開催したが当日は九州や東北、関西など遠方からの参加者も多数おり、参加者総数は100名を越した。職業も産婦人科医師をはじめ、助産婦、ナース、弁護士、大学教員、不妊治療を受けている方、これから受けようとしている方、生殖医療について学んでいる学生、法学部学生及び大学院生等と多方面の方々の参加があった。
この総会でFROM におけるガイドラインが提案され参加者に意見を仰ぎ下記のようにまとまったので国民からの意見として聞いていただきたい。

2002年2月3日

Fromガイドライン

第1 基本的考え方(12原則)
 1.妊娠・出産をめぐる当事者の自己決定権を尊重する
 2.生まれてきた子の福祉に充分配慮する(養子・特別養子・非嫡出子・親の離婚/死亡/窮乏の場合などにおかれる子をも含めて、福祉の充実を計り、差別を禁止する)。
 3.協力者の善意・ボランティア精神を尊重する。
 4.インフォームド・コンセントを保障し、安全性に充分配慮する。
 5.優生思想を排除する。
 6.過度の営利主義を排除する。
 7.生殖補助医療を実施するにつき人間の尊厳を守る。
 8.生殖医療専門医の自主的裁量的判断を尊重する。
 9.カウンセラー、法律家、他の医療機関などの協力を重視する。
 10.学会・任意団体の自由な討議と情報公開を促進する。
 11.国の許可免許制度をとらず、国は医師の届け(義務)に基づく情報の維持・管理に努める。
 12.刑事罰で規制しない。法律は本12原則を中心とする基本原則のみ定め、詳細は各医療機関、各任意団体の可変的ガイドラインによる。

第2 非配偶者間体外受精又は代理懐胎

1.精子・卵子・胚の提供又は代理懐胎などによる生殖補助医療を受けることができる人は、子を欲しながら不妊症のために子を持つことができない法律上の夫婦及び内縁の夫婦とする。事実上の夫婦については個別に判断する。

(1) 精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、提供精子により人工授精を受けることができる。

(2) 体外受精を受ける医学上の理由があり、かつ精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、提供精子による体外受精を受けることができる。

(3) 卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、提供卵子による体外受精を受けることができる。

(4) 胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦が、提供された余剰胚の移植を受けることができる。なお、卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦も卵子の提供を受けることが困難な場合には、提供された余剰胚の移植を受けることができる。また胚の提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、余剰胚の提供を受けることが困難な場合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植を受けることができる。

(5) 代理懐胎については、原則としてホスト・マザーとし、母親または姉妹が代理母となることは許容される。その他の代理懐胎は、個別に判断する。

(6) 加齢により妊娠できない不妊夫婦を対象としうるかは、個別に判断する。

2.自己の精子・卵子を得ることができない場合には、それぞれ精子・卵子の提供を受けることができる。子宮のない場合には代理懐胎をうけることができる。例外(卵巣又は子宮の機能不全)については個別に判断する。

(1) 精子を提供できる人は満60歳未満の成人を原則とする。卵子を提供する人は既に子のいる成人に限り、満40歳未満を原則とする。但し、自己の体外受精のために採取した卵子の一部を提供する人は、既に子がいることを要さない。同一の人からの卵子の提供は3回までを原則とする。

(2) 精子・卵子・胚の提供及び代理懐胎に係る金銭などの対価を供与すること、及び受領することは原則として禁止される。但し、実費・経費及び儀例的謝礼についてはこの限りではない。

(3) 親族以外の第三者からの精子・卵子・胚を提供される場合には、原則として第三者について匿名とする。

(4) 兄弟・姉妹などからの精子・卵子・胚の提供の場合には、匿名性の保持は当事者の自己決定権に任されるものとする。

3.充分な説明及び書面による同意

(1) 生殖補助医療を行う医療施設は、当該生殖補助医療を受ける夫婦、精子・卵子・胚を提供する人、代理母及びそれらの配偶者に対して、これらの者が下記(2)の同意をする前に、当該生殖補助医療に関する十分な説明を行なわなければならない。

(2) 生殖補助医療を行う医療施設は、当該生殖補助医療の実施の前に、当該生殖補助医療を受ける夫婦、精子・卵子・胚を提供する人、代理母及びそれらの配偶者から書面による同意を得なければならない。当該同意は当該生殖補助医療の実施前であれば撤回することができる。

4.カウンセリングの機会の保障

 生殖補助医療を受ける夫婦、精子・卵子・胚を提供する人、代理母及びそれらの配偶者は、専門団体等による認定等を受けた当該生殖補助医療に関する専門的知識を持つ人によるカウンセリングを受ける機会が与えられなければならない。

5.協力者の個人情報の保護

(1) 生殖補助医療への協力者(精子・卵子・胚の提供者及び代理母)は、正当な理由なく、次項6に基づき、医療施設に提出する個人情報以外の自己の個人情報の提出を求められない。

(2) 当該生殖補助医療に関して提出された個人情報を保有する医療施設は、当該保有する個人情報を適正に管理しなければならない。

6.協力者の個人情報の提出・保存

(1) 生殖補助医療を実施する施設は、協力者の個人情報のうち、後記第3の3(2)但書きの個人情報及び当該生殖補助医療により生まれた子に開示することを承認するものの提出を受けて実施しなければならない。

(2) 当該医療施設は、上記により提出された個人情報を、保存しなければならない。
 当該実施を移管する場合には、その移管先の医療施設に対して、上記により提出された個人情報を併せて移管しなければならない。

7.同一の人から提供された精子・卵子・胚の使用数の制限

(1) 同一の人から提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けた人が妊娠した子の数が10人に達した場合には、生殖補助医療に使用してはならない。代理懐胎は原則として1回とする。

(2) 上記医療施設は、上記生殖補助医療の実施の内容に関する情報を保存しなければならない。

8.子宮に移植する胚の数の制限

 体外受精・胚移植又は提供胚の移植に当たって、1回に子宮に移植する胚の数は、原則として2個、移植する胚や子宮の状況によっては、3個までとする。

第3 生殖補助医療の実施と管理

1.以下のものに限り、罰則を伴う法律によって規制する。

(1) 医師以外の者による営利目的での精子・卵子・胚の授受の斡旋、営利目的での代理懐胎の斡旋

(2) 提供された精子・卵子・胚又は代理懐胎による生殖補助医療に関する職務上知り得た人の秘密を正当な理由なく漏洩すること
第2の「非配偶者間体外受精又は代理懐胎」において述べた結論については、上記のものを除き、罰則を伴う法律によって規制せず、法律に基づく指針又は各機関のガイドラインに従い、実施・管理する。

2.親子関係の確定

 以下の内容について、解釈論でも可能であるが、法律で確認してもよい。

(1) 提供された卵子・胚による生殖補助医療により子を妊娠・出産した人を、その子の母とする。

(2) 妻が夫の同意を得て、提供された精子・胚による生殖補助医療により妊娠・出産した子は、その夫の子とする(嫡出推定の準用)。

(3) 妻が提供された精子・胚による生殖補助医療により妊娠・出産した場合には、その夫の同意は推定される。

(4) 精子・卵子・胚を提供した人は、当該精子・卵子・胚の提供をもって、当該提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子の父母とはされない。

(5) 代理懐胎の内ホストマザーの場合には、生殖補助医療を依頼した夫婦の妻を母とする(分娩した者を母とする判例の例外とする)。

3.告知及び出自を知る範囲

(1) 親が子に生殖補助医療を使用したことを告知するか否かは親の自己決定権に任せる。親が子に告知する場合には、子に対するカウンセリングを実施する。

(2) 精子・卵子・胚の提供者の個人情報については匿名とし、後記6の機関又は実施した医療機関が厳格に管理する。但し、提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子は、結婚などのために必要な範囲で提供者の個人情報を知ることができる。

4.提供された精子・卵子・胚又は代理懐胎による生殖補助医療の実施に関わる体制の整備

(1) 国は各生殖補助医療の利用に関して各機関が、倫理的・法律的・技術的側面から検討を行い、必要な提言を行うことを支援する。

(2) 生殖補助医療の実施管理、運営については、生殖医療専門の医療機関が依拠すべきガイドラインを公開し、これに従い、責任をもって行うものとする。

(3) 上記医療機関は、他の生殖医療専門医師、法律家、カウンセラー、有識者、患者と協力してガイドラインを作成し、かつ実施・管理する。

(4) 生殖補助医療の実施の前に関係者の間で適切なる契約(公正証書等)を締結することが奨励される。

5.生殖補助医療を行う医療施設

 生殖補助医療を行う医療施設は、自己又は第三者により公に公開された基準・ガイドラインに基づくことを明らかにすれば、この基準に合致する医療施設において、このガイドラインに従い当該の生殖補助医療を行うことができる。

6.公的情報管理機関

 国は、生殖補助医療の情報を保存・管理する機関を設立し、医師・医療機関は、この機関に対して実施した生殖補助医療の内容及び前記第2の6の個人情報を届け出る義務を負う。上記機関設立までは、各医療機関、各任意団体が情報を保存・管理する義務を負う。

(注:精子・卵子・胚の提供又は代理懐胎の生殖補助医療を行う医療施設は公的管理運営機関の事前の許可や審査を受けなければならないというような条件は規制緩和の政策に反するので全く必要ではない。)

以上

[妊娠・出産をめぐる自己決定権を支える会]
会長  医学博士 飯塚理八(70代)男 産婦人科医 慶應大学名誉教授(産婦人科学)
 所属団体: 日本産科婦人科学会(名誉会員、元会長)
日本不妊学会(名誉会員、元理事長)
日本受精着床学会(名誉会長、元理事長) など

副会長  医学博士 星野一正(70代)男 京都大学名誉教授・元産婦人科医・発生学者・癌研究者等・米国イエール大学講師・カナダ・マニトバ大学教授
ドイツ・フライブルグ大学医学部病理学研究所客員教授
医療の倫理・インフォームド・コンセントの専門家
 所属団体: 米国内分泌学会(名誉会員)
米国解剖学会(名誉会員)New York Academy of Science(会員)
日本解剖学会(名誉会員)、日本生命倫理学会(初代会長.現常務理事)
国際バイオエシックス学会(1990年設立準備委員会以来の創設会員)
財団法人先端医療振興財団「先端医療センター生命倫理審議会」(初代会長)
京都大学再生医科学研究所「ヒト幹細胞に関する倫理委員会」(初代委員長)
日本医学教育学会(名誉会員) 等

議長  法学博士 遠藤直哉(50代)男 弁護士 桐蔭横浜大学教授
 所属団体: 第二東京弁護士会、桐蔭横浜大学法学部(教授)

会長補佐 医学博士大野虎之進(70代)男 医師 東京歯科大学名誉教授(産婦人科学)
 所属団体: 日本産科産科婦人科学会(功労会員)
日本不妊学会(功労会員)、日本受精着床学会(名誉会員)

議長補佐 釘澤知雄(40代)男 弁護士
 所属団体:第二東京弁護士会、中央大学法学部非常勤講師(民法)

事務総長 医学博士柳田洋一郎(70代)男 産婦人科医 東京マタニティークリニック院長
 所属団体:日本産科婦人科学会、日本母性衛生学会(功労会員)、米国医療情報学会

広報部長 塩田美津子(30代)女 東京マタニティークリニック医療情報部




受付番号:44
受付日:平成14年2月25日
年齢:44歳
性別:女性
職業:大学教員
氏名:殿谷 成子(とのや しげこ)(匿名化希望なし)
所属団体:大阪国際女子大学
この問題に関心を持った理由:
 これから出産を経験するであろう若い女性(大学2年生)が生殖医療問題、特に代理母(借り腹)について授業で取り上げ考えました。既に法律が制定された国々では法律家や医療関係者だけでなく国民も交えた活発な議論が行われました。日本でも幅広い年齢層、特に子どもや青少年も含めた国民からの意見も求めるべきだと思います。授業の中で学生から、「代理出産で生まれた子どもがそのことを知った時どう思うか」という意見が出ました。医者や不妊に悩む大人だけの意見で法律が制定されていいのだろうか、子どもからの意見も大切にすべきではと考えさせられました。そこで20歳前後の女性の代理出産(借り腹)に関する意見を届けたいと思います。

御意見
 大学2年生の女子学生が代理出産(借り腹)について身近な人にアンケ−ト調査を行い、学び考えた結果の文章です。

 学生A 「代理出産と可能性」
 もし子どもができない場合、代理出産を依頼するかについて聞いた質問で依頼しないと答えた人が過半数を占めていました。なぜ依頼しないのかを考えた結果、夫婦の力で子どもを作ってこそ自分達の子どもであって、いくら遺伝的につながりがあっても、お腹を痛めていない母親が代理出産で産まれた子どもを自分の子どもと思えるかという問題があるからだと思いました。私は代理出産で産まれた子どもを自分の子どもだと思えません。なぜなら、お腹を痛めて子どもを産むという事が女性にとってとても重大な事だと思えたからです。こんな言い方をしたら女性は生殖道具のように聞こえるかもしれないけれど、私は子どもを作り産むことによって本当の女性(母親)になれると思うからです。代理出産を依頼したら自分を否定しているように思えたからです。

 学生B 「代理母」
 アメリカで代理母をする人にはたくさんのテストや精神鑑定をすることになっている。それでも代理母と依頼人の間で子どもをめぐる裁判が起きている。厳しいテスト等だけで代理母と子どもを引き離すには解決できない問題がある。アンケ−トの代理母を依頼するか否かの質問に対し、子どもを持つ既婚者では依頼しない、子どもをあきらめるという意見が多かったのに比較し、子どものいない未婚者では代理母を依頼するの意見が多かった。実際に出産経験のある女性の考えではお腹を痛めずに産んだ子どもを「我が子」と呼べないのだろう。生まれた子どもに関する事や代理母自身との関係など様々な問題がたくさんある。代理母をする・しない・頼む・頼まないと言った簡単な問題ではない。私の今の考えでは子どもができないから代理母を依頼した場合、生まれたその子になんと言えばよいのか、子どもが真実を知った場合困惑するのではないかと考えるから代理母には反対である。しかし、子宮がないなどのやむを得ない場合などの時は悩んでしまう。日本で代理母を認める認めないにしても、個人的にも社会的にも支えるケア−が整った基盤を確立して欲しいと思う。

 学生C 「代理母について学んで考えたこと」
 この世の中にはいろいろな人がいて、子どもが欲しくても何らかの理由で産むことができなくて悩んでいる人もたくさんいます。経済的にではなくて父親と母親の生殖能力の低さや、夫婦でお互いの健康面で不安があるというような、そんな人たちを助けるために生殖医療がめざましい発展を遂げていることは素晴らしいと思います。不妊治療、人工授精、体外受精、卵子提供、代理母などで今までどれだけの人たちが、心から欲しいと願った子どもを授かることができたでしょうか。でも、産まれてきた子どものことを考えると、人間が生殖を操作することは良いことだと言えないと私は思います。遺伝的に全くつながりのない人が親であるとは思いにくいでしょう。また代理母の制度で産まれてきた人が皆割り切って考えることはできないと思うし、人権のことを考えると、親の勝手な考えで子どもの人権は無視されているような気がします。しかし、これからもっと技術が発達して世間に広まって「代理母」という制度があることをもっとみんなに知ってもらえたらいいなと思います。

 学生D [代理出産について」
 代理出産で一番問題だと思うのが、代理出産によって生まれた子どもの将来的な問題である。子どもを代理出産で産もうと思うのは親の判断である。しかし、その判断にはただ子どもが欲しいという親側の一方的な思いからだけではないだろうか?そこには親たちの自己満足だけで、生まれてくる子どものことは考えられていないと思う。もし、そこで生まれてくる子どものことが考えられているのなら、代理出産を選択する人たちはあまりいないと思われる。なぜなら、代理出産によって生まれてきた子どもたちにはいろいろな問題があるからである。それは、子どもにとって生みの親と育ての親とどちらが本当の親なのかという問題や、そこから生まれる葛藤、親子の信頼関係、子どもが親に対する不安感を抱くなどの問題があげられる。もし、自分がそのような立場だとすればどうだろうか?どちらが本当の親なのか悩んでしまうだろう。果たして、育ての親に対して心から「お母さん」と言えるだろうか。きっと物心つくころにその問題は大きくなるだろう。このように親たちの自己満足、自分たちだけの幸せのためだけに犠牲になってしまう子どもたちの気持ちも同時に考えていかなければならない。未来ある子どもたちに心の傷を負わせないためにも、代理出産を考えるなら生まれてくるこどものことも考えて欲しいと思う。

 学生E 「親子について」
 いったい親子って何なのだろう。血のつながりや遺伝上のつながりがあれば確かに親子と言えるでしょう。しかし、ある日突然今まで自分を育ててきてくれた人が、自分とは血のつながりや遺伝上のつながりもない全くの他人であると分かった場合、その時点から親子ではなくなってしまうのでしょうか。もしも私が親とは全く関係の無い他人だと知ったら、戸惑い、傷つき、苦しみます。しかし、一緒に暮らしてきた時間や自分を育ててきてくれた時間など、血のつながりや遺伝上のつながりよりも愛情や心の絆の方が大切ではないかと思います。日本の社会が代理出産を認めるならば、代理出産する人だけでなく、周りの人々の理解も必要だと考えます。これからは生殖医療の発展と共に親・子どもそれぞれの心のケア−が必要不可欠だと思います。

 学生F 「子どもへの告知」
 代理出産のことで一番興味を持ったのが「もし代理出産によって子どもを持った場合、生まれた子どもにその事を告げるか、告げないか」という問題だ。告げる、告げないでは将来的にも大きく違ってくる。この問題に対する私の答えは「告げる」である。どちらかというと告げなければいけないと思っていた。私がその子どもなら、告げられた時は辛いかもしれないが、いずれは告げてほしいと思うからだ。今回のアンケ−ト結果では、「告げる」31人、「告げない」17人と告げないひとが約33%もいた。
 まさかこんなに告げない人が多いとは思っていなかったので、本当に驚いた。また告げるとしたら、いつ言うかが大きな問題になってくる。代理出産の事が理解できる年齢になっていなくてはいけないし、それを受け止められる年齢でなくてはいけない。
 また時期、タイミングも大切になってくる。告げる側の心構えもいるだろう。告げるとなるといろいろと大変ではあるが、事実を知り、受け止めていかなければならないと思った。

 学生G 「両親の気持ちと子どもの気持ち」
 代理出産を行う人たちは子どもが欲しくてたまらない、と思っているはずである。女性に生まれた限り子どもが欲しいと思う事が一般的だろう。子どもに夢を与えながら育てていく両親の気持ちは理解できる。だが、実際代理出産によって生まれてくる子どもは、必ずと言っていいほど辛い思いをする。もし自分が代理出産(借り腹)によって生まれてきたとしたら、絶望感に陥ってしまうだろうし、たとえ遺伝的なつながりがあったとしても、産みの母でないとおもうだけで、母親を信じられなくなるし、何に対しても反抗的になってしまうだろう。それとは逆に、周りの人が真実を話してくれなかったとしたら、私は知らないのだから、その方が平穏な生活を送る事ができるのではないか、と思う。子どもに真実を話さない、となると、子どもに気付かれないように全てを隠し通さなければならない。もし何らかの事情で子どもに気付かれてしまうと、年齢などにもよるけれど、非行や人間不信になってしまう可能性がある。そういったいろいろな問題が生じてくるはずである。現在、成長過程に問題があったことが事件を起こすことにつながったとよく言われているが、代理出産もそのうちの一つに入ってくると思う。子どもに真実を話すか話さないかは両親の判断である。子どもの時から何も隠さずに話す方がよいのか、大人になってから、全てを理解できるようになってから話すべきなのか。私が代理出産で生まれた子どもだとしたら、告げないで欲しい。生まれてくる子どもの気持ちも考えてはいるだろうけれど、子どもが欲しいという両親の願望だけで子どもを誕生させないでほしいと思う。

 学生H [代理母の問題点」
 代理母について世界では賛否両論がある。私個人の意見は反対である。その理由のいくつかを書いてみると、代理母は受精卵から体重3kg前後の赤ちゃんになるまで多くの栄養を充分に摂取し約9ヶ月の妊娠期間中、胎教に心がけ立派に育てようと愛情を注ぎながら生活していく。代理母とは、妊娠期間と出産までの過程を経て、子どもを夫婦に引き渡すまでを依頼されることである。現在日本の法律では、出産した女性が子どもの母親と決められている。子どもをお金を払って代理母から依頼した夫婦に引き渡すことは子どもを売買しているように思える。私自身子どもができるかどうかは分からない。例えできないにしても代理出産は選ばないだろう。

 学生I 「代理母は善か否か」
 日本では代理出産は認められていないものの、昨年日本でも代理出産が行われた。
 私は、決して代理出産に反対というわけではないが代理出産についてくる複雑な問題を考えると簡単には賛成できない。複雑な問題とは、子どもの将来、子どもの障害、代理母と依頼者との関係など多くの事がからんでくる。しかし、問題も多くある一方で代理出産をしたことにより再び生きる力をとりもどす人もいる。ある夫婦の話では、医者から「あなたは、赤ちゃんができない身体です。」とはっきりと突然宣告され、奥さんは夫のためににも離婚をも考え悩んだそうだ。しかし、夫や周りの人に励まされ、赤ちゃんが授かれるようにがんばろうと心に誓い最終的に代理出産という形をとった。今、その夫婦は自分達の子どもを持ち、代理母となってくれた人にも感謝いっぱいで幸せに暮らしている。いい結果に必ずしも行き着くとは限らないが決してマイナスな事だけではないと思う。代理出産が善となるか否となるかはある程度は解っても真の所は誰にもわからないのかもしれない。代理出産を行う時は、個人個人にあったカウンセリングや治療を行っていき、夫婦自身の心構えが必要になってくるのではないだろうか。また、周りにいる人、社会みんなで守っていく必要があるのかもしれない。

以上

代理出産に関するアンケ―ト(結果)
回答者数52名

*あてはまるものに○印をしてください。
(性別) 男9名(17.3%) 女43名(82.7%)
(職業) 中学生1名(1.9%) 高校生2名(3.8%) 大学生31名(59.6%)
 社会人7名(13.5%) フリ―タ―3名(5.8%) 主婦8名(15.4%)
(結婚の経験) ある13名(25%) ない39名(75%)
(子どもの有無) 子どもがある13名(25%) 子どもがない39名(75%)

※次の質問のあてはまるものに○印、あるいは( )に記入してください。
1. あなたは代理出産を知っていますか。
 (  )よく知っている15名(28.8%)
 (  )やや知っている25名(48.1%)
 (  )あまり知らない8名(15.4%)
 (  )全く知らない4名(7.7%)

 不妊の夫婦のために夫婦の体外受精卵を第三者の女性の子宮に入れ第三者の女性が代わりに出産することを代理出産(借り腹)といいます。

2.もし自分たちに子どもができなくて代理出産(借り腹)で子どもを持てることがわかった場合、あなたならどうしますか。<複数回答がありました>
 (  )子どもをあきらめる31名(58.4%)
 (  )養子をもらう10名(18.8%)
 (  )代理出産を依頼する8名(15.3%)
 (  )その他4名(7.5%)
 (可能性がある限り自分達の力で何とかする)
 (どうするか今のところわからない)
 (他の方法を探してみる)

3. もしあなたが代理出産(借り腹)を頼むとしたら誰に頼みますか。
   <複数回答がありました>
 (  )自分の姉妹22名(40.0%)
 (  )配偶者の姉妹7名(12.7%)
 (  )友人3名(5.5%)
 (  )他人15名(27.2%)
 (  )その他3名(5.5%)
 (親戚1名、アメリカとかのように代理出産を仕事としているような人に頼む1名、他 未記入)
  無回答5名(9.1%)(誰にも頼まない2名、他 記述なし)

4.もしあなたが代理出産(借り腹)を頼まれたらどうしますか。(女性のみ回答してください)   <女性43名が回答>
 (  )引き受ける3名(7.0%)
 (  )断る35名(81.4%)
 (  )その他5名(11.6%)
 (考える)
 (頼まれた人によるからわからない)
 (その時に自分で一度でも出産していれば引き受ける)
 (時と場合による)
 (頼まれる人による。他人なら引き受けたくないし、姉妹などでも状況などによる)

5.もしあなたが代理出産(借り腹)によって子どもを持った場合、生まれた子どもにその事を告げますか、それとも告げませんか。
 (  )告げる31名(36.5%)
 (  )告げない17名(33.3%)
 (  )その他3名(5.9%)
 (子どもがどうしても知りたがった時に告げる。ただし、18歳の時を除く)
 (大人になり理解できるようになってから告げる)
 (時期やタイミングを見て話す場合もある)

6.代理出産(借り腹)によって生まれた子どもに将来問題は生じないと考えますか、あるいは問題が生じると考えますか。問題が生じると答えた方はどのような問題か書いてください。
 (  )問題は生じない19名(36.5%)
 (  )問題が生じる33名(63.5%)
 〔どのような問題〕

7.代理出産(借り腹)によって生まれた子どもが障害を持っていた場合、健常に生まれた子どもと同様に愛することができますか。
 (  )はい27名(51.9%)
 (  )いいえ1名(1.9%)
 (  )わからない24名(46.2%)

8.代理出産(借り腹)について日本あるいは世界で賛否両論があります。あなたは代理出産(借り腹)に賛成ですか、反対ですか。またその理由を書いてください。
 (  )賛成である26名(50%)

 (  )反対である21名(40.4%)

 無回答3名(5.8%)
 どちらでもない2名(3.8%)

アンケ―トにご協力ありがとうございました。



受付番号:45
受付日:平成14年2月26日
年齢:グループのため該当せず
性別:女性
職業:会社員
氏名:さくらの会有志(匿名化希望なし)
所属団体:さくらの会
この問題に関心を持った理由:
 私たちさくらの会会員の多くが借り腹について潜在的に関わりがあるためです。
 なお、私たちは生殖補助医療部会にて借り腹が代理懐胎の中に分類されていることに違和感を覚えます。なぜなら借り腹は代理母と違って卵子の提供が介在しないからです。
 また、借り腹という言葉自体にも違和感を覚えます。なぜならそこには正に人を生殖の道具として扱っていると誤解されるような意味が含まれているからです。従って、私たちは以下の意見文でホストマザー出産という用語を借り腹の代わりに使用いたします。

御意見
 私たちは、ホストマザー出産を全面的に禁止する方針を、撤回していただきたいと切に願います。
 私たちは先天的に膣および子宮がありません。これをロキタンスキー症候群(=MRK syndrome)といいます。しかし、卵巣は機能しています。この私たちにとってホストマザー出産の可能性は人生における一筋の光明だからです。
 今回、同じロキタンスキー症候群の女性にアンケート調査を行いましたが、ほとんどの人がロキタンスキー症候群という障害のために恋愛や結婚に対して悩み躊躇することがあり、また、実際にホストマザー出産を依頼するかは別として、ホストマザー出産の可能性が存在することそのものに人生の希望を感じると答えています。
 これまで長年にわたり切望しても不可能だったことが新しい生殖補助医療の進歩によりようやく可能になったにもかかわらず、それが少しも活かされないまま全面的に禁止されようとしています。その理由がはなはだ不可解なので有志合議の上、意見を述べさせていただきます。
 ホストマザー出産に反対する人々はそれが「人をもっぱら生殖の手段として扱い、また、第三者に多大なリスクを負わせるものであり、さらには、生まれてくる子の福祉の観点から望ましくないため」だとしています。しかし本当にそうだと断定できるのでしょうか。
 人をもっぱら生殖の手段として扱うといいますが、現在既に数多く事例があり日本産科婦人科学会でも認められているAIDは、第三者の精液を用いているという点で、その第三者を巻き込む程度の差こそあれ、本質的には人をもっぱら生殖の手段として扱っていると言えます。この点で矛盾するのではないでしょうか。
 また、ホストマザー出産は第三者に多大なリスクを負わせると言う人がいます。確かにホストマザーとなる人は妊娠のために時間的にも精神的にも肉体的にも少なからずのあるいは多くの負担を受けることになります。無事に子供が産めれば良いのですが、妊娠中毒症や流産で健康に重大な障害を起こすこともありますし一時的には生命に危険が生ずることすらなくはありません。しかし一方で、出産という行為は人類史上何千何万年もの間綿々と無事に続けられてきたものでもあります。それこそ一昔前には妊娠中に農作業をする人も多く、現在でも出産直前まで働いている女性はたくさんいるのです。それなのにリスクばかりを過大に重視して可能性をゼロにしてしまう必要があるのでしょうか。
 ホストマザーになる人は確かにリスクを負います。しかし、それは出産がホストマザーだからというわけではありません。私たちが間違っていたら産婦人科のお医者様方に教えていただきたいです。出産をする女性は皆リスクを負っているのです。しかし、リスクばかりが多大なのであれば、そもそも社会は出産する全ての女性にとんでもない危険を冒させているのではないでしょうか。出産がそれほど危険でやめさせた方が良いのであれば、社会は傍観せずに直ちに全ての女性が出産しないよう検討したほうが良いのではないでしょうか。
 身体的リスクを負わせるという点で、私たちのような第三者が同意を得た人に出産を依頼することが罪であるのならば、夫が妻に子供をほしいと求めること自体も罪になるのではないでしょうか。そんなことはないと思います。いずれの場合でも最終的に決めるのは出産をする女性だと思うのです。同意してくれる人がいればお願いして何故いけないのでしょうか。産んであげたいという人の産む自由さえも、危険という名のもとに奪うのでしょうか。無論、強要したり、心理的圧力があってはならないと思います。しかし、引き受けてあげようという人の善意を生かすことが間違っているのでしょうか。
 第三者のために子供を産んであげても良いと考えている人がいるのも事実です。アメリカ等の外国では人のために子供を産んであげても良いと、それが人間愛に基づいた慈善精神の発露であるとしてホストマザー出産を引き受ける人が少なからずおられると聞いています。もちろん商業的な流れを助長したいと思っているわけではありません。それこそ人を、子供を産み落とす道具にしてしまうからです。しかし、善意にもとづいて差し伸べられる救いの手がある場合、それをみすみす握りつぶす理由がわかりません。「義を見てせざるは勇なきなり」といいます。自ら義を行わないのみでなく、人が義を行う機会さえも奪うことは誰にもできないはずだと思うのです。
 また、ホストマザー出産に反対する人はそれが生まれてくる子の福祉の観点から望ましくないためだとしています。しかし、生まれてくる子はこのような出自を本当に望ましくないとばかりに感ずるのでしょうか。特に昨今は両親による子供の虐待事件が頻発しています。それなのに切望されて生まれてくる子が不幸だと考える方が不自然ではないでしょうか。
 もちろん生まれてくる子は単純ではない人間関係の中で生きていくことになります。しかし養子の人でも自分には4人も親がいて幸せだという人もいるのです。ホストマザー出産で生まれてきた子供にも、あなたには遺伝上つながっていてこれまで育ててきた親と、この世の中に産み出してくれた親とがいるのよと教えてあげれば、必ずしも不幸と感じないのではないでしょうか。ホストマザー出産で生まれてきた子は育ての親と血のつながりがあります。従って成長してからも心の葛藤が少なくてすむのではないのでしょうか。私たちは血縁主義を絶対的価値観と考えてはいるわけではありません。しかし実際問題、ホストマザー出産で生まれてきた子は自分の遺伝子上のルーツについて空白が起きないのも事実です。だから例えば、自分が生物学的な親のどんな癖を引き継いでいるのか、どういった遺伝的疾患を受け継いでいるのかということで思い悩むこともありません。この点ではむしろ他の生殖補助手段と比べて遥か出自に関する問題が起きません。それでも子供はホストマザー出産ならば生まれてこなかった方が良かったと思うでしょうか。
 私たち自身、膣と子宮がないという障害を負っています。自分たちのことを不幸と思いませんし、そう思わないようにしていますが、それでもこの障害のために恋愛・結婚・人生・なんのために生まれてきたのかについてものすごく悩み苦しむことがあります。もしこのまま私たちの体を理解してくれる人が現れなかったら、生涯ずっと一人でさびしく過ごすのだろうか。誤解のないように言いますが、私たちは生涯独身という生き方を否定しているわけではありません。ただ、自ら一人でいることを選ぶのと、そうせざるを得ないのとでは、全く感じ方が違うのです。将来に対する不安、人生に対する喜びが全く違うのです。しかし、そんな私たちでも、死にたいとか生まれてこなければ良かったと思ったことは一度もありません。先天的な障害のため両親にも責任の一端がないとは言えないのですが、この世に生を受けたこと、両親のおかげでそれが可能だったことは感謝しています。そもそも生まれてこなければ喜びも悲しみも感じられないのですから。
 それなのに、望まれて、多くの人の協力で生まれてきた子供が不幸と感じるでしょうか。むしろこの世に生を受けたことの感謝の念や人と支え合うことの大切さ、また、環境や立場の違う人々を理解できる人間に育つのではないでしょうか。私たちはそう期待しますし、そう育てたいです。
 私たちがホストマザー出産を依頼するならば、母親、姉妹からまったく見ず知らずの人まで幅広く募集します。それは母親や姉妹だけに限定すると、協力しなければならないという心理的な圧力を加えかねないからです。そして、全くの第三者にも協力をしても良いとする善意の人がいるのではないかと思うからです。
 また、無事に出産ができるようにしなくてはなりません。そのためには例えば最低二人は子供を無事に出産した経験のある人にお願いしたいです。産む方の安全を考える上でとても大切な条件だと思います。逆にこのような自信がなければホストマザーも引き受けてくれないと思います。
 生まれてきた子は私たちが各々全責任をもって育てていきます。たとえば、ホストマザーが妊娠中に不幸にもわたしたちが離婚した場合、まるでそれまでの話がなかったかのような無責任なことはしないです。私たちがそれぞれ引き取って育てます。誤解を恐れずにいいますが、たとえ障害を持った子供でも生まれてきたら育てるのが当然だと思います。
 これらの点については法的にも明確にしていく必要があると思います。ホストマザー出産を検討するにあたっては必ずこのような各論の問題が起きてきます。考えられる問題点について法的整備を行いトラブルを未然に防ぐ努力は当然必要になってきます。極論ですが、現在の自動車社会では事故によって多くの死亡者が出ています。しかし、だからといって車は全面禁止されていません。アメリカでは銃の使用が認められており、銃犯罪が多発していますが、全面禁止にはなりません。ホストマザー出産も仮に認められるようになれば、悪用されたりもしくは、最初は悪意によらなくても後になってトラブルが発生することはありえます。だから一定の取り決め、法的整備は不可欠です。この努力を払いたくないがためにホストマザー出産を十把一絡げに全面禁止することは、人間の自由、幸福追求のために存在するはずの法律の意義を本末転倒にしてしまうのではないでしょうか。
 授かった子供に対しては出来るだけ早い時期に産みの親について話したいです。子供に自分の生まれ方に不安を感じてほしくないし、皆の協力でこの世に生まれてきたことが分かれば、自分が望まれてきた子供なのだと感じとってくれればけして間違った育て方にならないと思うからです。ホストマザー出産では育ての親と子供が遺伝上つなっがっています。そのため、子供に事実を伝えなければ、子供が何の疑問も感じなければ、産みの親について何も知らないまま過ぎてしまうことになります。しかし、それこそ産みの親を無視した、まさしく子供を産む道具として扱うのと同じ行為になってしまうのです。
 だからまた私たちは、子供を産んでくれた人には具体的に感謝の意を表していきたいです。例えば子供の誕生日には産みの親を招待するとか、ビデオレターを送るなどを考えています。なぜこのようなことをするかというと、子供にも産みの親と自然なかたちで触れ合ってほしいし、何よりも産みの親も、たとえそれが無償の善意にもとづいたものであっても、ある種のやりがい、行動の証を感じたいだろうと思うからです。
 このように望まれて見守られて生命を育むことがどうして許されないのでしょうか。
 私たちはロキタンスキーという障害のために、それでなくても多くの人にとって人生の大事業である恋愛・結婚で辛い思いをしています。もちろん幸運にもこの体を理解してくれる男性にめぐり合うこともあります。子供はいなくてもいいとか、養子をもらえばいいと考えてくれる男性もいます。しかしそれはそうせざるを得ないからそう考えるのです。障害があれば私たちはそれを当然のように受け入れなくてはならないのでしょうか。障害ある者がより幅広い選択肢を求めることがそんなに生意気でぜいたくで反社会的なことなのでしょうか。公序良俗に反するというのであればどの点であるかご指摘下さい。
 私たちはホストマザー出産を強要するのではありません。ただ、それに協力してくれる人がいるならば是非お願いしたいというだけです。善意の人がいるかも知れない、こんな私でも子供が授かれるかも知れないという可能性そのものが私たちを勇気づけてくれるのです。どうか識者の方々にはこの希望の芽をつぶさないでほしいです。

以上


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