戻る

介護療養型医療施設の現状と課題

介護療養型医療施設連絡協議会
会長  木 下 毅

1.介護職員3:1を配置している施設は、厚生労働省の調査では、指定介護療養型医療施設の約58%を占め、平均要介護度は4.0以上となると聞いております。また、当介護療養型医療施設連絡協議会会員を対象とし平成13年4月に行われた調査では、約78%が3:1の介護職員を配置しています。このように、半数以上の介護療養型医療施設で3:1介護が行われているのは、次のような理由によるものと思われます。

(1)痴呆がある人の率は、他の介護保険2施設とほぼ同率であるが、ランクIVが29.6%、ランクMが11%と重症痴呆の人数が多い。

(2)次のような看護の手がかかる人の率が高い。

(3)上記の様な合併症のある痴呆患者の比率も高い。

2.1病棟あたりの夜勤体制は、最低基準として、看護職員1人、介護職員1人とされておりますが、この体制では、入院患者30人に対応することしかできません。その根拠は、あくまでも経験値でありますが、夜勤2人のうち1人は看護職でなければ実施できない業務に専念し、残り1人の介護職が排泄介助、トイレ誘導を担当することになります。したがって、この他の介護を行うためには、入院患者30人が限界です。痴呆患者のケアや身体拘束のゼロを目指し、安全で質の良い医療・ケアをすすめていくためには夜勤帯の必要人数も考えなければなりません。それゆえ、当会の会員病院の多くでは、3人夜勤(看護1・介護2)を実施し、さらに患者の状態等によっては4人夜勤を実施しています。
 また、看護介護労働は、1,800労働時間と月8回(2交代制では4回)の夜勤に制限されていることから、現行の3:1介護でも病棟規模によっては基準より増員しないと勤務が組めないのが現状です。

計算証拠例   月8回×12ヵ月=96日
イ.(準夜勤2人+深夜勤2人)×365=1.460人日 ÷96=15.2人
ロ.(準夜勤3人+深夜勤3人)×365=2.190人日 ÷96=22.8人
ハ.(準夜勤4人+深夜勤4人)×365=2.920人日 ÷96=30.4人
 上記の計算から、現行の看護6:1・介護3:1の合計2:1の人員でイの2人夜勤では、30.4床以上、ロの3人夜勤で45.6床、ハの4人夜勤では60.8床以上の看護単位でない限り勤務体制が組めないことが示されます。

3.問題点

 高齢化率が今後も伸展する中で、現在の施設に課せられた人的配置で全ての人に安全で、良質な高齢者の医療・看護・介護が提供できるかどうかは疑問であると考えます。その一つの理由として、社会問題となっている転倒等の介護事故例を挙げる事ができます。特に、介護療養型医療施設における現在の人的配置基準(看護職6:1、介護職3:1)を廃止し、6:1、4:1に下げるようになっていることについて、労働基準法を遵守し、なおかつ、良質なサービス提供と看護・介護夜勤体制を維持するためには、現状の6:1、3:1の看護・介護基準は最低限度必要な配置数と考えられます。
 以上の通り、介護3:1の配置基準を増員している経営努力が、介護4:1に引き下げられることになれば、夜勤体制を現状の3〜4人夜勤から2人夜勤に引き下げざるをえなくなってしまい、著しいケアの低下を招くおそれがあります。また、同時に、5,600人の雇用の機会が減ることになります。このようなことは、老人医療を実践してきた医療者としては、実施することはできません。
 介護4:1の配置基準は最低基準なのだから、病院が必要であると考えるのであればその人員数を確保すればよいのではないかという意見もあります。しかし、介護職の配置数が3:1から4:1となれば収入は6.5%減となり、この収入減を無視して雇用を続けることは困難と思えます。
 高齢者施策の根幹をつくるべきこの時期に、高齢者の医療・介護の場において科学的根拠に基づく人員配置の適正な基準を諸外国の実状等もふまえて提示していく必要があると考えます。


トップへ
戻る