1 年金扶養比率
一人の老齢・退職年金受給者を何人の被保険者で支えているかを表す指標である。この場合、老齢・退職年金受給権者(老齢・退年相当)とは、その制度における被保険者期間が老齢基礎年金の資格期間である25年を満たしている者(経過的に20〜24年の者を含むほか、中高齢の特例による期間短縮を受けている者を含む。)及び旧法の老齢・退職年金受給権者を対象とする。
(参考) 補正された年金扶養比率
補正された年金扶養比率とは、上記の年金扶養比率を「支出額から追加費用を控除した額の支出額に対する割合」で除して補正したものである。
ここでいう支出額とは、
支出額=給付費 | +基礎年金拠出金−基礎年金交付金 |
国共済、地共済、旧3公社共済においては、共済年金制度発足前の恩給公務員期間を引き継いだことにより、制度発足当初から年金受給者が多く発生する仕組となっている。そのため、年金扶養比率が低くなる。しかし、この恩給公務員期間に係る給付費用は、全額「追加費用」という形で事業主たる国・地方公共団体が負担している。
この影響を除くため上記の補正を行ったものである。
【国共済の年金扶養比率】
区分 | 1986 | 1987 | 1988 | 1989 | 1990 | 1991 | 1992 | 1993 | 1994 |
年金扶養比率 | 2.78 | 2.64 | 2.50 | 2.56 | 2.26 | 2.21 | 2.16 | 2.11 | 2.08 |
補正された年金扶養比率 | 5.22 | 4.85 | 4.40 | 4.42 | 3.38 | 3.19 | 3.10 | 3.01 | 2.93 |
2 総合費用率 (純賦課保険料率)
被用者年金制度について、ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄う部分(国庫・公経済負担を除いたもの)が、その年度の標準報酬総額に対してどれくらいの比率になっているかを表す指標である。積立金及びその運用収入がない状態で、単年度ごとに完全な賦課方式の財政運営を行った場合の保険料率に相当する。
ここで、実質的な支出とは、給付費から追加費用や基礎年金交付金を控除すること等により定められる独自給付費と基礎年金拠出金とからなっており、制度横断的な給付と負担を行う仕組みである基礎年金制度を考慮して、公的年金各制度が、ある年度において社会保険方式として実質的に負担することとなる費用のことである。
実質的な支出 | =給付費+基礎年金拠出金−基礎年金交付金 +制度間調整拠出金−制度間調整交付金 +年金保険者拠出金−国共済連合会拠出金収入 −追加費用 −職域等費用納付金 |
独自給付費とは、実質的な支出から基礎年金拠出金を控除したものであり、制度横断的な給付と負担を行う仕組みである基礎年金制度に対する負担を除外して、公的年金各制度独自に社会保険方式として負担することとなる費用のことである。
自営業者等を対象とする国民年金については、標準報酬の総額という概念がないことから、総合費用率は定義されない。
○国庫・公経済負担
被用者年金制度においては、当該制度の基礎年金拠出金の3分の1に相当する額等と、昭和36年4月前の加入期間に係る給付に要する費用のうち追加費用を除いた費用の一定割合(厚生年金は20%、国共済・地共済は15.85%、私学共済は18%、農林年金は19.82%)に相当する額とが国庫負担(又は地方公共団体負担)されることから、これらの合計額が各制度における国庫・公経済負担となる。また、国民年金においては、基礎年金拠出金の3分の1に相当する額等と、国民年金の独自給付費における国庫負担額との合計額が国庫負担となる。
○給付費
厚生年金にあっては「保険給付」に、国共済・地共済・私学共済にあっては「長期給付」に、農林年金にあっては「給付」に、それぞれ要する費用の額のことをいう。
昭和60年改正後の国民年金法(新法)に基づく基礎年金の給付に要する費用は、ここにいう各被用者年金制度の給付費には含まれていない。
一方、昭和60年改正前の厚生年金保険法・国家公務員共済組合法等(旧法)に基づく給付に要する費用は、各被用者年金制度の給付費に含まれる。この給付には、基礎年金に相当するとみなされる給付も含まれていることから、各被用者年金制度の給付費には、基礎年金に相当するとみなされる給付に要する費用(みなし基礎年金給付費)が含まれている。
また、昭和60年改正後の厚生年金保険法・国家公務員共済組合法等(新法)にもとづく特別支給の老齢厚生年金・退職共済年金(60〜64歳の者に支給)の給付(この給付には報酬比例部分のほか定額部分等も含まれる)に要する費用も、各被用者年金制度の給付費に含まれる。
○基礎年金拠出金
基礎年金給付費とみなし基礎年金給付費の合計額から特別国庫負担額を控除した額である保険料・拠出金算定対象額を、各公的年金制度が、それぞれの制度の被保険者数(各被用者年金制度についてはそれぞれの第2号被保険者で20歳以上60歳未満の者及び第3号被保険者。国民年金については保険料納付者である第1号被保険者。)で按分して負担する仕組みとなっており、それぞれの制度の負担額を基礎年金拠出金という。
各制度が負担する基礎年金拠出金の額は、具体的には以下のように算定されるものである。
●基礎年金拠出金算定対象者=保険料納付者である1号被保険者、2号被保険者で20歳以上60歳未満の者及び3号被保険者
●拠出金単価=基礎年金拠出金算定対象者1人当り保険料・拠出金算定対象額
●各制度が負担する基礎年金拠出金額=拠出金単価×当該制度の2号被保険者で20歳以上60歳未満の者の数と3号被保険者数の計、国民年金にあっては、拠出金単価×保険料納付者である1号被保険者の数
○基礎年金交付金
昭和60年改正前の旧法による給付のうち基礎年金に相当する給付
(みなし基礎年金給付)に要する費用として基礎年金勘定から被用者年金各制度に交付される額(国民年金にあっては国民年金勘定に繰り入れられる額)をいう。
○ 制度間調整交付金
被用者年金制度間の費用負担の調整に関する特別措置法(平成9年4月1日廃止)に基づき厚生年金の制度間調整勘定から各被用者年金制度に交付される調整交付金の額をいう。 ○ 制度間調整拠出金
同法に基づき、上記調整交付金の負担及び交付に要する費用に充てるため、厚生年金及び共済組合が負担する調整拠出金の額をいう。 |
○ 年金保険者拠出金
旧3公社共済(日本たばこ産業共済、日本電信電話共済及び日本鉄道共済)の厚生年金への統合(平成9年4月)に伴う支援措置に基づき、国共済、地共済、私学共済及び農林年金が分担する支援額として、厚生年金に納付する拠出金をいう。 ○ 国共済連合会等拠出金収入
旧3公社共済組合の厚生年金への統合に伴う支援措置に基づき、国共済、地共済、私学共済及び農林年金から厚生年金に納付される拠出金の合計額をいう。 |
○追加費用
国共済・地共済・旧3公社共済において、制度発足前における恩給公務員期間等を引き継いだことにより発生した費用で、事業主たる国・地方公共団体等が負担する費用。
○職域等費用納付金
旧3公社共済の組合員であった期間に係る職域年金部分(いわゆる3階部分で、統合により厚生年金で支給するものとなった部分。)に要する費用として、旧3公社共済の存続組合が厚生年金に納付する額をいう。
○積立金相当額納付金
旧3公社共済の統合に伴い、必要な積立金を旧3公社共済から厚生年金へ移換することとなった。このため、旧3公社共済の存続組合が移換金を分割して納付する額をいう。
3 独自給付費用率
被用者年金制度について、ある年度の独自給付費のうち、保険料拠出によって賄う部分(国庫・公経済負担を除いたもの)が、その年度の標準報酬総額に対してどれくらいの比率になっているかを表す指標である。基礎年金制度に係る保険料負担を除外して、被用者年金制度の独自給付費に関して単年度ごとに完全な賦課方式の財政運営を行った場合の保険料率に相当する。
共済年金の独自給付には、職域年金部分と呼ばれる年金の額も含まれる。これは、元来、共済年金制度は、公的年金制度としての性格を有すると同時に、公務員制度等の一環としての年金制度という性格を有していたことによるものである。共済年金においても、厚生年金と同様に、昭和60年改正により昭和61年4月から基礎年金が導入されたことに伴い、従来の共済年金は基礎年金と報酬比例年金を給付する新共済年金とに分解されたが、新共済年金については、厚生年金と同様の年金額計算式からなる厚生年金相当部分に職域年金相当部分が加算されるという仕組みが採られることになった。この職域年金相当部分は、厚生年金の報酬比例部分の20%に相当する額となっているところである。
4 収支比率
ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄わなければならない部分(国庫・公経済負担を除いたもの)が、保険料収入と運用収入の計に対してどれ位の比率になっているかを表す指標である。
5 積立比率
ある年度の実質的な支出のうち、保険料拠出によって賄わなければならない部分(国庫・公経済負担を除いたもの)に対して、前年度末に保有する積立金がその何年分に相当しているかを表す指標である。