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第8回企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会議事録


日時: 平成13年12月11日(火) 10:00〜12:00
場所: 厚生労働省専用第17会議室(中央合同庁舎第5号館16階)
出席者: 【研究会参集者・50音順】
  柴田 和史 (法政大学法学部教授)
  内藤 恵  (慶應義塾大学法学部助教授)
  長岡 貞男 (一橋大学イノベーション研究センター教授)
  中窪 裕也 (千葉大学法経学部教授)
  西村 健一郎(京都大学大学院法学研究科教授、座長)
  守島 基博 (一橋大学大学院商学研究科教授)
【厚生労働省側】
  坂本政策統括官(労働担当)
  岡崎労政担当参事官
  清川調査官
  荒牧室長補佐

【議事概要】

○ 連合神奈川副事務局長 砥上 康二氏より、西相信用金庫(以下「西相信金」という。)から、さがみ信用金庫(以下「さがみ信金」という。)への営業譲渡に伴う問題点等について説明が行われた。その内容は以下の通り。

(西相信金及びさがみ信金の沿革について)

(営業譲渡が行われた理由)

(西相信金の労働者であった者の取扱いについて)

(当該営業譲渡事例に対する、連合神奈川としての取組み)

(企業組織再編に伴う労働問題全般について)

○ これを受けて、意見交換が行われた。その内容は以下の通り。

Q: 両信金間の事業譲渡の中身について詳しく確認したい。
A(砥上氏:以下同じ)
 : 譲渡されたのは、西相信金の預金である。
 西相信金の12店舗は全て閉鎖されて、さがみ信金の窓口が新たに4つ開設された。
 おそらく、湯河原・真鶴地域の旅館・ホテル業者との間では、根回しが進んでいたのではないだろうか。

Q: 西相信金の12店舗自体が、さがみ信金によって使用されていることはないのか。
A: 閉鎖された西相信金の12店舗のうち、1店舗のみ使用されている。

Q: メーカーと金融機関とでは異なる点もあるが、預金者から資金を預かり、それを貸し付ける業務全体が譲渡されたのであるならば、それは商法上の営業譲渡を構成する。
A: 金融機関の資産と言えば、預金等の金融資産、土地や施設等の不動産資産に加えて、従業員等の人的資産が密接に絡み合っているものと考えられるのであり、労働組合としては、今回の事例のような預金のみの譲渡を、商法上の営業譲渡として考えることには、納得がいかない。

Q: 事業譲渡先のさがみ信金に再就職した、元西相信金の従業員が管理職中心であったと言うが、これは譲渡される預金の管理の観点から導かれた結論であると考えるか。
A: その点は不明である。金融機関内部での管理職の定義についてはよく分からない。 対外的効果といった観点もあると思うが、確かなことは言えない。

Q: 企業会計の観点から言えば、人的資産はバランスシート上には表れてこない。営業行為に必要不可欠な労働者に対するプラスアルファの部分が現出してこない。要するに、会計的側面からは、営業譲渡に際して労働者の要素が必ずしも不可欠なものとは言えない。
A: しかしながら、人件費に人的資産が反映されているはずであり、今まさにリストラの対象となっているのが、この部分である。だからこそ、労働組合として問題視しているのである。

Q: 譲渡先のさがみ信金についても、かねてよりリストラが進んでいるということであったが、そもそも、さがみ信金に西相信金の従業員を引き継ぐだけの企業としての体力があったのかどうか。その体力がないにもかかわらず、従業員の引継を無理強いすることによって、却って譲渡の話自体が壊れることになったのではないか。
A: 確かにそのとおりではある。さがみ信金が西相信金の預金を引き取ったこと自体については、それなりに評価している。

Q: 当該事例の発生時にはまだ施行されていなかったが、営業譲渡と類似した企業組織再編手法として、会社分割制度がある。会社分割制を活用する場合、労働契約承継法により、該当営業部門の労働者の労働契約は原則として維持されることになるが、経営側の観点からは些か硬直的であり、交渉の余地のある営業譲渡の方が活用しやすい面がある。仮に今回の事例において、西相信金の労働者を一体化して取り扱うとすれば、却って望ましくない結果になると思うがいかがか。
A: 労働組合の立場からは何ともお答えのしようがない。

Q: 今回のヒアリング事例は、譲渡元である西相信金が滅失した特殊な事例であるが、営業譲渡後に、自立的に解散したのか。
A: 営業譲渡が完了するまでは、営業を継続させている。

Q: 加盟単組が存在しない事例を受けて、上部組合がサポートに回るというのは、随分特異なケースに思うが、そもそも信用金庫の労働組合は連合傘下に加盟しているものなのか。
A: 地方単位では、連合に加盟しているものは皆無である。連合本部でも数えるほどしか加入がない。譲渡先である、さがみ信金には従業員組合が存在し、箱根信金の吸収合併時には、職員同士で話し合いの場が持たれていたようである。

Q: 仮に、西相信金とさがみ信金に連合傘下の労働組合が組織されている場合、連合としてどのように対処するのか。
A: 難しい問題である。西相信金の従業員全員を引き継がせた結果、譲渡先のさがみ信金の企業体力が低下することになれば、元も子もない。両者の間で慎重に落とし所を探ることになる。労働組合としても「大人の対応」が求められることになる。

Q: 西相信金を解雇された後、さがみ信金に再雇用された者の労働条件はどの程度変化したのか。
A: その点については把握していない。先程も申し上げたが、組織として非常にバタバタしていたこともあり、管理職員の労働条件の確保までは手が回らなかった。

Q: 両信金間での譲渡に際して、西相信金を解雇された者のうちの約50名がさがみ信金を受験しているが、そもそも会社側で、再就職先確保の努力はあったのか。
A: 一部には、そのような努力はあったと思う。我々に交渉権を任せてもらえば、頑張ったのであるが・・・。いずれにせよ、当該労働者が連合とは連携したくないというのだから、どうしようもない。地域性と言うほかない。

Q: 西相信金の地盤となる地域の主力産業が、ホテル・旅館であるそうだが、これらの業種の労働組合の組織化はどのような状況か。
A: チェーン化されたホテルであれば、ゼンセン等に加盟している場合が多いが、土着の小規模なホテルの場合であれば、いざ争議が発生してきたときしか、連合にも泣きついてこない。

Q: 仮に西相信金が、本件譲渡に係る交渉の一切合切を連合に任せていたら、どのような戦略で臨んだか。また、その勝算はどの程度と考えるか。
A: 正直よく分からないが、本件譲渡事例の実態が、より明らかにはなったと思う。

Q: 西相信金の不良資産はどのように処理されたか。
A: 地元農協が7割を引き取り、残りの一部については真鶴町のリゾート会社が引き受けたと聞いている。

Q: 連合神奈川として、営業譲渡に関わる実態をどの程度把握しているのか。
A: 規模の大きな事例は承知していないが、従業員10人程度の会社では日常茶飯事である。これらの事例では、労働者を全て承継しているようだ。  こうした中小企業が重なって企業グループとなった場合に、営業譲渡か吸収合併かの選択が問題となるであろう。そのような場合は、営業譲渡の方が選択されやすいと思う。

Q: 具体的にどのような点が問題になっていると認識しているのか。
A: 規模の小さな企業は同族経営が多く、そもそも条件が劣悪で、どうにもならなくなる前に組織再編を行うケースが多い。また、後継者がいない場合や、技術者が高齢化したものの未だ現役の場合に、どこが引き取るのかという問題があるが、最大の問題点は、我々労働組合として、労働者という人的資産が、商法慣行上営業を構成する必須の資産であると考えているにもかかわらず、現実にそのような取扱いがなされていないことである。
 実際には、民事再生法が絡んだ営業譲渡事例の問題がほとんどで、一般的な営業譲渡事例では問題が生じていない。

Q: 民事再生法絡みの事例で、連合神奈川として関わったものはあるのか。
A: 池貝鉄工や新潟鉄工の事例がある。特に池貝鉄工の事例は、会社側が、民事再生法の適用を申請しても認められないであろうと思って申請したら、予想に反して認められたので慌てた、というケースである。
  •  営業の遂行上如何に重要な役割を担う労働者であっても、当該営業の譲渡に伴い承継させる仕組みがなくては、資産とは言えない。
  •  「人的資産」は、言葉自体が使われているほどには、一般的な概念ではない。

○ 事務局より、資料No.1「会社分割制度の利用状況」及びNo.2「会社分割の実態」について説明が行われた。これを受けて、意見交換が行われた。その内容は以下の通り。

Q: Y社の事例についてだが、当該部門の営業に許認可が必要なことからすれば、そもそも違法ではないのか。
A(事務局:以下同じ)
 実際の作業工程はY社が担っているが、製品自体はX社のものとして世に出ている。

Q: 会社分割制度の活用例が、来年4月の時点で4ケタになるというのは、かなり多い。
A: 企業において組織再編の必要性が高くなっていることの現れであると考えられる。

Q: C社の事例で、本社機能を分割したのは何故か。
A: 分割しようとする半導体製造装置グループが、いわゆる成長分野であって、C社において、当該成長部門を商社機能を有するD社に承継させることで、販売の効率性を高めることが企図されている。
  •  新製品開発部門と販売部門の垂直統合ともいえる。
  •  D社にも開発機能を持たせたいという見方もできる。

Q: D社とE社との間での「営業譲渡」は、商法上の「営業譲渡」か。
A: 商法上の「営業譲渡」と言えるかは疑問で、一般的な資産の譲渡であるので、いわゆる「営業譲渡」としている。

Q: F社及びG社による共同新設分割の事例では、新設されるH社では出身母体ごとで労働条件が異なることになるが、新設分割後、労働条件の再調整が行われているのか。
A: まだなされていない。
  •  この点は、労使間の最大関心事であろう。
  •  平成12年の商法改正により会社分割の規定が設けられる前より、所謂「物的分割」は可能であったが、検査役の調査が必要なため、財界から疎まれていた面がある。

○ 事務局より、資料No.3「アメリカ合衆国での実態調査時における訪問先とヒアリング事項(案)」について説明が行われた。これを受けて、意見交換が行われた。その内容は以下の通り。

Q: 企業組織再編について、アメリカではどのように分類しているのか。日本における分類と概念の違いはあるのか。
A: いわゆるM&Aや、会社分割にもスピンオフやスプリットオフなど様々な形態があるが、必然的に概念の違いはある。
  •  調査の折りには、組織再編の契約書について、労働関係の部分の記述に限らず、幅広く入手していただければ有り難い。

以上

担当:政策統括官付労政担当参事官室法規第3係(内線7753)



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