01/11/30 第7回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録           第7回 厚生科学審議会生殖補助医療部会                 議 事 録          厚生労働省雇用均等・児童家庭局 母子保健課         第7回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第 日 時  平成13年11月30日(金)15:00〜17:50 場 所  厚生労働省共用第7会議室(本館5階) 議事  1.検討課題1について  2.その他 ○桑島生殖補助医療対策準備室長 定刻になりましたので、ただいまから「第7回厚生 科学審議会生殖補助医療部会」を開催させていただきます。  本日は、お忙しい中、お集まりをいただきましてまことにありがとうございます。  本日は相良委員、町野委員から欠席のご連絡をいただいてございます。何人かの先生 は遅れられると思います。それから、小泉先生につきましては、遅れられるというご連 絡を今いただいてございます。  それでは早速、議事に入りたいと存じます。矢崎部会長、どうぞ議事の進行よろしく お願いいたします。 ○矢崎部会長 では、議事に入ります前に資料の確認をよろしくお願いします。 ○桑島室長 それでは資料の確認をさせていただきます。欠落等ございましたらご指摘 お願い申し上げます。資料は資料1、毎回ご用意させていただいている検討の事項につ いて。資料2は、前回、小泉委員からご要望がございました、それぞれの各(案1)、 (案2)等が出てございますけれども、それぞれの案のメリット、デメリットを整理を させていただいたものを付けさせていただいてございます。ただ、この表、まだ不十分 でございまして、時間の関係がございまして、検討課題1の前半部分のみ整理をさせて いただいてございます。また、後ほど後半部分を整理したいと思ってございます。資料 3、これは各委員からお寄せいただいたご意見。それから参考資料、机上配付資料を一 部ずつ用意させていただいてございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長 資料2はできるだけフランクに客観的に事務局にまとめていただいたつ もりですので、ご議論の参照にしていただければと思います。半分ということで、か えって全部そろえておられると済まさなければいけないのではないかとプレッシャーを 感じます。きょうは少なくとも事務局で整理されたところまで議論できればいいのかと いうことで、そういう意味で私もありがたく思います。  まだ渡辺委員がいらっしゃいませんが、資料をいただいておりますので、いらっ しゃってから簡単にご説明いただきたいと思います。  では議事1.検討課題1について、2回り目の議論を始めたいと思います。前回、各 委員の間で大変活発な意見交換を行っていただきました。今回も同様に事務局の方で議 事録に基づいて、前回の議論の結果を資料の中に盛り込む形で整理していただきまし た。前回は「精子・卵子・胚の提供の条件」についてご議論をいただいたと思います が、(4)の「精子・卵子・胚の提供者と提供を受ける者との属性の一致等の条件」の ページ数で言いますと、21ページ、上部に囲んだ部分、「精子・卵子・胚の提供者と提 供を受ける者との属性を合わせるか、また、合わせる場合どこまで合わせるか」から、 検討課題1の最後であります23ページの(5)の「その他の条件」の提供された精子・ 卵子・胚の保存期間についても、具体的に期間を決めなくてよいかの設問まで、今回新 しく「●」あるいは(案1)、(案2)というように付け加わった部分があるかと存じ ます。  そこで、今回付け加えた部分について、事務局から少し説明お願いします。 ○桑島室長 それでは資料1、21ページから、今、部会長からおっしゃっていただいた 部分からご説明を申し上げます。21ページの上の部分でございますが、属性を合わせる かということで、合わせる場合にはどこまでかというご議論からいただいてございま す。この部分は「●」をいただきまして、ABO式血液型について、提供を受ける人の 希望があり、かつ可能であれば、精子・卵子・胚の提供者と属性を合わせることが出来 ることとする。  それ以外の属性については、希望があっても属性を合わせることは認めないというこ とでご議論をいただいてございました。  その次でございますが、属性以外の提供を受ける人の希望に応えることについてはど うか。その範囲についてはということで、第2子、第3子も同じ提供者から提供してほ しいというようなご希望があった場合についてのご議論をいただいてございます。  この場合、第1子が生まれた後、提供された精子・卵子・胚の残りを第2子のために 使用することについては、2つに分かれてございまして、(案1)では、可能な限り認 める。ただし、精子・卵子・胚を提供する際に、当該提供について、第1子だけでなく 第2子も生まれる可能性があることについて、提供する人に対し、インフォームド・コ ンセントをちゃんと取っておく。  (案2)は、そもそも認めないということで議論が分かれてございます。  それから、次のところでございますが、精子・卵子・胚の提供を行った結果、子ども が生まれたかどうかを、提供した人に対して医療機関は必ず自動的に知らせることとす るのかということですが、「●」をいただいてございまして、提供する人の希望がない 限り知らせないこととするということでございます。  その次は派生した問題でございますけれども、提供する人が希望した場合はどうなの かということと、それ以外、どの程度の情報を知らせるのかということについては、前 回のご議論の中では十分な結果をいただいたわけではございません。  次のページ、22ページ、要検討事項、箱で囲った部分でございますが、提供された精 子・卵子・胚による生殖補助医療により生まれた子の出自を知る権利というところでご ざいます。ここでは「●」をいただいてございますが、提供された精子・卵子・胚によ る生殖補助医療により生まれた子の出自を知る権利を認めるということでございます が、出自を知る権利の範囲としては、精子・卵子・胚を提供した人に関する個人情報の うち、ここから2つに分かれて、(案1)では、提供した人を特定することができない もので、提供した人が開示することを承認した範囲内の個人情報に限るという案と、 (案2)が個人を特定することができる個人情報も含めて開示することができる。  次のページでございますが、1つ目、提供者が死亡した場合の精子・卵子・胚の取扱 いについてでございますが、ここは「●」を付けていただきまして、提供者の死亡が確 認されたときには、提供された精子・卵子・胚は廃棄することとする。  それから、保存期間についてでございますけれども、まず「●」をいただきましたの は、精子・卵子につきましては、保存期間は2年とする。  胚については3つのパターンに分かれてございまして、1つはまず提供された余剰胚 については、保存期間を10年とする。ただし、当該胚は、移植前であれば配偶子の由来 する提供者のうち、いずれか1人の申し出により提供の撤回ができ、廃棄できるものと する。 2つ目が精子・卵子両方とも提供いただいた胚については、これも(1)と同 様でございます。  (3)は意見が分かれました。これは精子・卵子いずれかがご夫婦のもので、一方が 提供された胚でございますけれども、これも保存期間としては10年といたしますが、た だし以降が分かれました。(案1)当該胚は、提供者からの申出による提供の撤回、廃 棄を認めないものとする。(案2)当該胚は、移植前であれば提供者からの申出により 提供の撤回ができ、廃棄できるものとする。この2つに分かれたわけでございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。  それでは、渡辺委員がいらっしゃいましたので、机上配付いただいた資料についてご 説明いただけますでしょうか。 ○渡辺委員 それでは、配付資料について簡単にご説明させていただきます。私が配付 させていただきましたのは、中京大学心理学部教授の古澤頼雄先生の「親と子の心のふ れあい 若年養子という選択」という、去年の「乳幼児精神保健研究会」での講演の詳 録をわかりやすくまとめたものを配付させていただきました。  古澤頼雄先生は、日米の子どもの発達比較研究でアメリカの子どもと日本の子どもの 妊娠前からの経過を既に25年以上追って、単に乳幼時期だけではなくて、文化の違いに よってどのような人格の形成がそれぞれの国々で起きるか。その育児の質の特徴の違い とか、そういうことをかなり厳密に研究していらっしゃる国際的なライフスパン、人生 にわたる発達研究者なのですが、特に新しい時代に多様化した親子関係の中で、特別養 子縁組とか生殖補助医療による子どもたちが生まれている現実がありながら、その子ど もたちの人格形成や深層心理の葛藤の問題を社会的に扱っていない現状に関しまして、 1つ古澤先生なりに問題提起という形で、去年FOUR WINDSの大会という、こ れは乳幼児精神保健研究会で、助産婦さん、保健婦さん、小児科医、新生児科医、産婦 人科医など臨床現場の全国の人々が集まる約 300名ぐらいの会なんですけれども、そこ で話されました。  そこでは実証的な研究に基づきまして、特別養子縁組の夫婦の関係や親子の関係に関 して、そのデータをお話くださいましたけれども、そのときに生殖補助医療の子どもた ちのことにも触れておられます。それがページで言いますと、p4になりますので、こ こら辺の問題をもう少し私ども国民が共有できていくことが本当の意味で心理的にも身 体的にも安全性の高い利用者にとって本当に有意義なこういう医療の進歩になる、そう いう手がかりになるのではないかと思って、ぜひ皆様に読んでいただきたくてお出しし ました。  具体的には、例えば1998年にオーストラリアのビクトリア州では、18歳に達した非配 偶者人工授精の子どもたちが 100%、自分の父親の氏名や身元を知る権利を保障すると いう、そういう法律になっているということですので、私どもも生まれてくる子どもた ちが安心して成長していけるような社会づくりとして、諮問機関とか監視機関とか法律 とか、そういうものを少し子どもの側に立って具体的にしていくということを望んでお りますので、ぜひ参考にしていただきたいと思います。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。貴重な資料を提供いただきました。  そして、前回の部会におきましても、ご意見の資料をいただいたところですが、委員 がご欠席ということでご説明いただくことができなかったわけで、今回ご出席いただい た委員の方から、前回提出していただいた資料、ご意見を補足的に説明いただきたいと 思いますが、まず加藤委員から。 ○加藤委員 欠席したとき、荒木先生と松尾先生に対して意見を出させていただきまし た。荒木先生からは私が誤解しているというご回答をいただきましたので、大変よくわ かりました。  松尾先生からもご回答いただきまして、松尾先生は「近親相姦」という言葉を使われ た意味がどういう意味かということで、これは松尾先生からご説明がありましたので納 得いたしましたけれども、その程度でいいでしょうか、コメントは。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。あと、福武委員。 ○福武委員 これは法律上の規定を述べたまでで、結婚を禁止するというのは別に近親 相姦とかそういう話だけでなくて、かなり倫理的な面も含まれていると。結婚を禁止す る範囲をどこにするかというのはそれぞれの国の考え方で、韓国の場合にはそれはかな り広いのだということを記載しただけです。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。 ○荒木委員 一言で言えば、心理的圧迫または心理的干渉というのは、必ずしも提供者 だけではなく、子どもを持たないと決めたカップルも事実たくさんいらっしゃるわけで す。そのカップルの決断に対して、いかなる心理的葛藤を与えたくないというのが私の 気持ちです。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。松尾委員、何かコメントを。 ○松尾委員 特にございませんけれども、1人ひとりの人間というのは、自分の出生の 物語というのがないと自己は形成されないわけでございますので、それが混乱するとい うのは非常にまずいことだと思っております。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。  今回ご意見いただいた順に、金城委員から。  ○金城委員 2ページ訂正していただきたいのですけれども、上から6行目ですが、 (1)、(2)、(3)。(2)と(3)については、もう一つ番号が付いてしまって途中で化けたのか もしれないのですが、そこはカットしておいてください。  私は人権の視点からこの問題を考えていきたいということでずっといろいろなところ で原稿書いてお話をしたりしてきたのですけれども、ちょっと人権の視点が審議の過程 では欠落しているのではないかということで、その点について3点ばかり述べておりま す。まず生殖の自由・権利ということで、不妊治療を受ける人たちの人権ですけれど も、これについては可能な限り保障するべきだ。特に代理懐胎の禁止については、私は 反対だということを書かせていただきました。  これはしかし、既に決まったということですので、少数意見ということで提出させて いただきます。  それから、次は生まれてくる子どもの人権ということで、これは子どもの出自を知る 権利、これを保障するべきだということで、まだ、これは決定になってないところです ので、強調して書いておきました。これから審議ということになりますけれども、参考 にしていただければ幸いでございます。  きょうの渡辺委員からの資料も大変感銘を受けていただいております。  最後に患者の人権の保障ということ。これはまだ審議が行われておりませんので、そ の際に参考にしていただけたら幸いでございます。  以上です。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。今のご意見は、今度2回り目のとき、また議 論に加えていただければと思いますので、その節はよろしくお願いいたします。  次は小泉委員から、2つのご提言をいただいております。 ○小泉委員 いずれも短い提言ですが、1つは匿名の問題で、AIDで精子提供者を匿 名とすることの、それには利点と欠点があるということです。前回、吉村委員から、こ れまで一貫して匿名性を守ってきたことで、提供者のプライバシーは確保されてきた が、今後については何とも言えないという旨のご発言がありました。確かに匿名であれ ば、提供した人にとってはメリットですが、生まれた子どもの出自を知る権利にはデメ リットになります。それを調整するためには、あらかじめ提供者に対して提供前に十分 説明して確実な同意を得ておくということで、両者を何とか調整両立させるという方策 を考える必要があるのではないかという意味の提言でございます。  2つ目は「医師の裁量」についてです。既に決定事項で、「医師の裁量」に関して、 「国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基本を示す」という、これは但し書きの 方ですけれども、原則医師の裁量ということですが、その但し書きの「基準」ですが、 国が基準を示すというのではなくて、よく言われております、EBMに基づく診療ガイ ドラインを設定するときに、関連学会のメンバーが学問的な根拠に基づいて作成し、信 頼性が担保されるのと同じように、学問的な根拠に基づいて、準則となる考慮すべき基 本が求められるといいましょうか、定められることを希望するという趣旨の提言でござ います。以上です。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。この件につきましても、小泉委員の提言に 沿って議論を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  最後に才村委員からご意見を頂戴しています。よろしくお願いいたします。 ○才村委員 前回、欠席いたしましたので、前回の論議は書面上でしかわからないので すけれども、全般的に特別養子縁組の条件といいますか、特別養子縁組を進める上での 条件が余りにも日本では厳しく、そして生殖補助医療ではそういう補助医療を受ける方 への条件が余りにも何もないというふうな落差が大き過ぎるということを少し感じてい ましたので、特別養子縁組との関連についてということで、そういったデータも少し出 しながら意見を述べさせていただきました。  特別養子縁組はここの5ページの表にもありますとおり、これは8年で古いですけれ ども、1年間に 500ぐらいの数で、そのうちの6割ぐらいは児童相談所の里親というこ とでのあっせんということで、特別養子縁組が成り立っているわけですけれども、その ときの里親さんになる条件というのが、6ページの真ん中に少し示しましたとおり、里 親と家庭養育運営要綱というのが真ん中の上あたりにあると思うのですけれども、里親 申込者についてのいろんな健康状態ですとか動機、養育の熱意、方針などいろんなこと についての調査をされた上で児童福祉審議会の諮問をした上で知事が認定をすると。そ れでしかも最後に家庭裁判所の審判の上で決定されるという中での、かなり関門がたく さんある中で縁組されているということ。  だから、生殖補助医療の方では、夫婦として子どもを育てるに耐えられるかというこ との条件が余りにも、その辺の落差が大きいというのはどうかなと思いまして少し意見 を書かせていただきました。  それともう一つは、子どもが出自を知る権利のところで、子どもというときに、委員 会の意見では成人ということになっているのですけれども、私は成人だけではなくて、 20歳未満の子どもの年齢も出自を知る権利があるのではないかというところで、そこは まだ論議がされてないのですけれども、例えばというところで、養子が15歳未満の場合 には法定代理人が要りますけれども、15歳になれば、縁組の承諾やさらに離縁まででき ると民法に規定されていますし、20歳以上でしか出自を知れないというのはおかしいか と思いまして、その辺のことを意見として述べさせていただきました。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。今のご意見も今後の議論に反映できる ように努めていきたいと思います。よろしくお願いいたします。  ご意見いただいた委員の方々からコメントをいただきました。  先ほど桑島室長から、前回の議論を、今までのように案として提示させていただきま したけれども、これについて何かご意見ございますでしょうか。一応このような整理に して、また2回り目に議論を深めるということでよろしくお願いしたいと思います。  前回でようやく検討課題1のひと回り目の議論が終了したかと思います。これまで検 討されました検討課題1については、今ご説明申し上げましたように、「●」あるいは (案1)、(案2)という形で意見を整理させていただきました。  今後は整理された、特に(案1)、(案2)と、案が分かれたものについて主に議論 を進めていこうと思います。検討課題1の中だけでは結論がなかなかできない。例えば 検討2、検討3の状況がかかわってくるものについては、また議論をするということ で、しかし検討課題1の中で検討できる項目については、できるだけ「●」、ある程度 の方向づけをつけさせていただきたいと思います。  そういう次第で、本日2回り目ということで、ページ2から、「提供された精子・卵 子・胚による生殖補助医療を受けることができる者の条件」、(1)のところから確認 をしながら議論を進めていきたいと思います。まず、桑島室長から読んでいただけます か。 ○桑島室長 それでは資料1の2ページ、読ませていただきます。それから併せて資料 2もお手元にご用意いただきながら見ていただければと思います。それぞれの案の、各 委員からおっしゃっていただいた理由等を整理してございますので、よろしいかと思い ます。  それでは、(1)「提供者された精子・卵子・胚による生殖補助医療全般に関わる条 件」の(要検討事項)のところでございます。「ウイルス性の性感染症や遺伝性疾患を 理由とした提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施は認めないということ でよいか」ということでございます。  「本部会の検討課題とはしない」ということで「●」をいただいてございます。まず 1つ目でございますが、よろしゅうございますでしょうか。 ○矢崎部会長 子どもを欲しながら、不妊症のために子を持つことができない法律上の 夫婦に限るということでありますので、この条項は我々のタスクフォースから外れたも のであるということで、検討課題とはしないと結論いただいたと思います。  それでは、2番目の「加齢により〜」というところを。 ○桑島室長 「加齢により妊娠できない夫婦は対象とならない」。  「『加齢により妊娠できない』ことの具体的な判定基準はどのように設定するか」 (要検討事項) (案1)医師の裁量とするが、自然閉経の平均年齢である50歳ぐらいを目安とし、それ を超えて妊娠できない場合には、「加齢により妊娠できない」こととみなす旨の判定基 準を国として示す。 (案2)医師の裁量とするが、自然閉経を基準とし、自然閉経をもって、「加齢により 妊娠できない」こととみなす旨の判定基準を国と示す。 (案3)医師の裁量とする(国としては、「加齢により妊娠できない」という以上の具 体的な基準は示さない)。 ○矢崎部会長 実際に議論は、(案1)、(案2)、(案3)に分かれましたけれど も、(案3)については、この議論のまとめを参照しながら、また記憶を呼び戻してい ただければ大変ありがたいと思いますが、何も決めないということに関しては余り積極 的な支持がなかったかと思います。ポイントは(案1)と(案2)、すなわち具体的に 年齢をこのぐらいというのと自然閉経ということの2つの言葉のとらえ方だと思います が、それと同時に医学的な根拠と次の設問にもありますけれども、生まれてくる子の福 祉の視点、すなわち養育の問題とか次の課題と関連しますが、そのバランスで年齢が語 られたのではないかと思いますが、何かこの件につきまして、もう一度ご議論ございま すでしょうか。 ○鈴木委員 1回目のときも申し上げたのですが、この表現はわかりにくいのではない かと私は感じました。後半、卵提供における卵のエージングの話と非常に紛らわしい部 分があるなと思ったのですね。前回のご議論で、どうやらこれは年齢の上限を何らかの 形で示すことが必要であるという目的で入れられた一文だと理解しましたので、むしろ 「加齢により」という単語を修正した方がわかりやすいのではないかと思ったのです。 「加齢により」という言い方を取り外した方がよいのではと。あと、もう一つ、下限を どうするのかということは、皆さんのまたご意見いただきたいと思うのですが。 ○矢崎部会長 今のご意見は次の課題にあります特別養子制度のように、親となる者の 年齢の下限ということですね。 ○鈴木委員 下限の話はまた次ですので、ここの文章の中では上限を示したいという意 図があるわけですよね。だとすると、加齢により妊娠できない夫婦というのが非常にわ かりにくい。もともとの表現がわかりにくいのではないかと思ったのと、なぜかという と、卵のエージングの話がここに混在してきてしまうように考えるからです。わかって いただけましたでしょうか。 ○矢崎部会長 要するに、上限をどう決めるかということと解釈してよろしいわけです ね。 ○鈴木委員 閉経というのは1つのラインとして出てきたかと思っておりますけれど も、だったら、むしろ「加齢により」という単語よりは、「○」の方に「自然の生殖期 間」という言い方になるのか、それがよくわからないのですけれども、「加齢により」 という単語の方を直していただきたいと考えるということです。 ○矢崎部会長 そうしますと、鈴木委員のご意見は(案2)に近いと考えてよろしいの でしょうか。 ○鈴木委員 医師の裁量のというのはまた別の問題です。 ○小泉委員 先ほど意見として読み上げましたものですが、「医師の裁量」ということ で、「医師の裁量とするが」という、その後に「判定基準を国として示す」というと、 これは結局医師が裁量する場合に参考にする基準ということになろうと思うのですが、 しかし、それを国が示すというのは、非常に強く響いているように思うのです。医師と いう専門職で判定するに当たって参考になる基準ですから、医学に基づいて、医師の間 (専門家)で一定の線が出されると。それが国がこういうのがありますよという形で示 すという基準であれば私は賛成ですけれども、この文章のままですと、これで行けとい うような、そういう印象を与えますので少し抵抗を感じます。 ○矢崎部会長 そうですね。ここだけがそうなっていて、ほかのところはすべて、「医 師の裁量とする(法律・ガイドラインで、国として義務的な基準は示さない)。ただ し、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す」。これが背景だと思うの ですが、ここだけちょっときつい言葉になっていますね。これは何かありましたか。 ○小林主査 最初の整理のときに、国として考慮すべき基準というところまで至らな かったので、もし、そういう意味で何らかの基準をつくるということであれば、2回り 目のときにそういう形で決定いただければ、それでよろしいかと思います。 ○矢崎部会長 そうしますと、「加齢により」という項目だけが、小泉委員のご指摘の ように、国が基準が示すとなっていますので、2回り目の議論では訂正させていただい て、先ほどのほかのところと同じようなことで、国が実施に当たっての準則となる考慮 すべき基準を示すということで、自然閉経の年齢云々ということを申し述べていきたい とまとめ直しますので、それでよろしいでしょうか。 ○小泉委員 わかりました、結構です。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。  それでは本論に戻りまして、いかがでしょうか。1つは年齢の上限を卵のエージング ではなくて、次の課題に関連しますが、子どもをしっかり養育できるかどうかという観 点もあって、委員の方々のご意見を拝見しますと、そういう意味で年齢がある程度決め られている部分も多かったかと思います。 ○加藤委員 「加齢による」というのを加えた根拠は、その人が子どもを育てるのに年 取り過ぎているかどうか、育てるという観点を抜きにした判断ではないかと私は思いま す。加齢により妊娠できない夫婦が対象とならないというのは、加齢によって妊娠でき ない人は不妊症とみなさないという趣旨だったのではないかと思います。  そして、「医師の裁量による」ということの中には2つの意味があって、このチャン スを受けることのできる人を一般的な基準として、例えば53歳以下にするとか、57歳以 下にするとかというと、画一的な基準として全体のグループを定めることになりますけ れども、そうではなくて、ケース・バイ・ケースで判断するということがまず第一で、 ですから、あなたは53歳だけれども、オーケイです。あなたは55歳だけどだめですとか というふうに、ある意味で年齢によってはちぐはぐになるかもしれないけれども、ケー ス・バイ・ケースでもって判断すると。ケース・バイ・ケースで判断して、この人はい わば一種の不妊症で妊娠できないのか、それとも自然的な状態として妊娠できないのか ということは医師の判断によるという趣旨だと思うのですね。  ですから、医師の判断によることについて、さらにこういう条件を決めて、こういう テストをしろとかというようなことを、例えば国の判断枠として、やるかやらないかと いうのはまた別の問題で、趣旨としては何歳以上とか何歳以下とかという画一的な枠を 決めるのでなくて、ケース・バイ・ケースで判断し、それは「医師の裁量による」とい う趣旨だったと思うのですけれども。 ○矢崎部会長 よろしいでしょうか。 ○鈴木委員 質問です。そうしますと、30代前半ぐらいから不妊治療を受けてきて、40 ぐらいになって、それこそエージングで卵が採れなくなった人は卵子提供は受けられな いというふうに、この文章によってそう規定されるということでしょうか。今、加藤委 員がおっしゃったのは。 ○加藤委員 いや、そういう言い方では、私には判断がつかないのですけれども、つま り不妊症か不妊症でないかということを問題にしていて、自然的に不妊になった人は不 妊症ではないということが、クライテリオンのラインだと思うのですね。 ○鈴木委員 ごめんなさい、ちょっと私には今のご意見がよくわからないのですが。 ○吉村委員 残念ながら男性と女性というのは生殖機能というのは全く違うものであり まして。 ○加藤委員 残念じゃないです。 ○吉村委員 男性というのは、生殖機能があれば60歳、70歳でも子どもをつくる能力が あるわけですね。女性というのは自然閉経というのがあります。これは太古の時代から そうでありまして、要するに45歳から50歳、人によって違いますけれども、46歳ぐらい から卵子がなくなるわけです。排卵は起こっているけれども卵子はないわけです。受精 能力がない。これは残念ながら女性にとってはしようがないことでありまして、哺乳動 物というのは一般に、人間以外はすべて生殖機能が終われば死亡する。それを我々は、 人間の英知かどうかわかりませんけれども、それが70、80まで生きられるようになった だけです。サルでもそうですし、おばあちゃんは子どもを産んだらすぐ死にます。  ですから、これに関して「加齢により」ということはどういうことかというと、50歳 以上の方で子どもを産める方というのは非常に極端に少ないわけてす。そういう意味 で、私の理解ではこの「加齢により妊娠できない」というのは、女性側に対して与えた 言葉であるというふうにあのときは理解していました。  もう一つ出てくる「加齢により」で私はいいのではないかと思うのは、子どもの福祉 ということを考えると、ご両親がある程度の年齢以下であった方がいいのではないかと いうことで、私は鈴木委員と違いまして、「加齢により」はすばらしいいい言葉だと思 いますけれども、それで理解できませんでしょうか。  その加齢が幾つまでかということが大変難しいので、一番初めのときには判定基準を 国が示したらどうかとか、そういう意見も私はあったのではないかと思いますが、なか なかこの基準は医師の裁量だけで、我々が裁量しなさいと言われても大変難しいところ がありますと。今おっしゃったように、53歳で、この人はまだ大丈夫ですよ、といわれ る方もいるでしょうし、48歳で、それはちょっと無理かなといわれる方もお見えにな る。その辺をどういうふうに言うかは難しいので、自然閉経の年齢ぐらいがよろしいの ではないかというようなご意見に私は賛成しましたけれども。 ○新家委員 自然閉経が50歳ぐらいだということで50歳未満、それは一応納得できる線 です。しかしながら実際に周産期医療に携わっている者にしてみれば、例えば45歳から 49歳までの間に妊娠した人で人工妊娠中絶を受けた人が大体年間 2,500人ぐらい。自然 に死産してしまう人は、死産率と中絶率はほぼ同じため、同じぐらいの数。そうすると そこで 5,000人ですね。実際に45歳以上で生まれている方は何人かというと 450人に満 たないのです。ということは、5,300 分の 400ですから、ほとんど生まれていないと思 うんです。  ということは、人工妊娠中絶の適応としているのは、1つは身体的な理由があるだろ うと思います。高齢であって妊娠・分娩のリスクに耐えられないというお母さん側から の意見と、それから45を過ぎていますと、当然3人目、4人目になってちょっと経済的 には苦しいと。経済的、身体的な理由が2つそこにあるわけですね。もう一つは、半分 の 2,500人の方が実際に産もうと思っても妊娠の40週までは到達しえないということを 考えていきますと、50歳でも私は高いと思っているのです。それは広げた方がいいとい う意見であれば、私は納得いたしますけれども、実際にその医療に当たっている産婦人 科の医者は相当のリスクを負うと。1人の赤ちゃんが生まれるまでに。  これは不妊症の話ですから、やっとできたのにということに私はなると思うので、で きたらば、もう少し年齢を下げていただきたい。その中で医師の裁量権がプラスマイナ スで出てくる、というぐらいの方が私は安全だと思っています。 ○吉村委員 今いいことをおっしゃったので言いますけれども、厚生省の統計では、40 歳以上の自然妊娠の方の妊婦死亡率しか出してないわけです。これは45歳以上とかとい うのは今おっしゃったように数が少ないので出していないと思います。40歳以上でまる めて報告してあるのですけれども、妊婦死亡が 1,300人に1人ぐらいです。かなりよく なってきまして、昔は 800人とか 900人に1人ぐらいだったのですけれども、40歳以上 の死亡率は 1,300人に1人ぐらいです。 1,300人に1人をどうとらえるかということで すね。それを多いというふうにとらえるか。我々は多いととらえますけれども、不妊治 療を受ける夫婦にとっては、1,300 分の1だったら、私は 1,299になると思われるのが 普通だと思うんですね。その辺をどうとらえるか。  ですから、これは医師の判断でやるといっても、我々にとっては非常に難しい。です から上限は50歳ぐらいがせいぜいではないかと。私は初め専門委員会では45歳、その線 で言ったわけですけれども、45歳と書きますと、46歳の人は受けてはいけないのかとい う意見があるので、自然閉経という線で、あとは医師の裁量権でいくということの方 が、しかし、その医者は責任を持って患者さんに対してお話をし、患者さんもそれに対 してリスクを納得しないとこの医療はできないと思います。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。 ○荒木委員 今、産婦人科の立場として吉村委員や新家委員からのご発言があったと思 います。生殖補助医療に携わる医師は産婦人科医の中でも生殖医療を専門にやっている わけでございますから、こういう対象となる場合は適応と状況を十分に知っているはず でございますので、ケース・バイ・ケースによっていろいろ差が出てくると思います。 私は(案3)にしていただいて、あとは「加齢」とか「閉経」とかを数字で決めるべき 問題ではないと思います。当然我々は適応を十分認識しており、45歳とか50歳というこ とで、年齢を超えたことはしないという医師が大部分だと思います。この医師の裁量だ けにしていただいた方がよろしいのではないか、そういう気持ちでおります。 ○矢崎部会長 荒木委員は、第1回目の議論からそういう主張をされておられたと思い ますが。 ○加藤委員 ちょっと聞きたいのですが、「加齢により妊娠できない夫婦は対象となら ない」という条文はそのまま残して、それについて「医師の裁量による」という。 ○荒木委員 そのとおりです。 ○高久委員 医師の裁量だけにしますと、例えば60歳のご婦人に頼まれて、どうしても 断れないといってやるような方が出てくるわけですね。ですから、医師の裁量だけでは 危険なのではないでしょうか。レシピエントの希望を最優先する医師が出てこない保証 はないと思います。私は前から自然閉経が良いのではないかと思っています。何か基準 を設けておかないと、問題が起きてくるのではないか。もう現実に起こっていたわけで す。また起こるのを防止できないのではないか。 ○才村委員 子の福祉の観点からということで、医学的なことと織りまぜて論議ができ るのかどうなのかよくわからなくて平行線になる可能性もあると思うのですけれども、 私は子の福祉の観点からの(案2)の「夫婦の年齢のみならず、健康状態、経済状況、 精神的安定度などの子どもを安定して養育できるかを〜国が基準を示す」というふうな 意見なんですけれども、もし年齢を定めるとしたら、女性のみの年齢ではなくて、子育 てに耐えられるということは、男性の方も50歳ぐらいまでといいますか、子育て、特別 養子縁組のところでも少し話してましたけれども、里親さんの認定のときには、乳児を 委託する場合には、いくらお年取っておられたとしても大体45歳ぐらいまでが乳児委託 可能な年齢というふうに、それは夫婦ともですけれども、考えていました。というのは 経済的にも、18歳まで、自立させるまで夫婦が責任持って育てられるという子の福祉の 観点から考えておりましたし、45歳がどうかなというのは人によって経済的なこと、肉 体的なこととかいろいろ違いますので、それとすれば、50歳としても、女性のみだけで なくて男性ともども、夫婦とも50歳といった年齢。  そして、下の特別養子縁組制度のように、「親となるものの年齢の下限を設けないの でよいのか」というのはちらっと言いましたけれども、この辺の根拠は私も、なぜ特別 養子縁組が25歳以上になっているのかということについては余り詳しくわかりませんの で、でもそちらの方で設けられていて、生殖補助医療の方ではそういうことは全く考え られなくていいのかということで、この辺は話したということです。この辺について は、また皆さんのご意見を聞かせてもらいたいと思っています。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。先ほど吉村委員から、最初の(案1)、(案 2)、(案3)は女性ということで、今、才村委員からコメントいただいたのは、(案 1)、次の子の福祉の観点からということで議論させていただいてもよろしいでしょう か。最初は自然閉経というメインテーマがございますので一応女性に焦点を絞らせてい ただくということで。 今、自然閉経というのが自然のならわしであるけれども、自然 閉経についても、前回の議論では非常に幅が大きいので、ホルモン補充療法とかそうい うことで閉経の年齢は定めにくいと。従来の平均年齢で50歳ぐらいを目安にして、準則 として、それで医師の裁量に任せるというのが(案1)ではなかったかと思います。  もう一度、確認ですが、鈴木委員の加齢がいけないという、卵のエージングと……。 ○鈴木委員 私は、この後、後半でまた話していくとは思うのですけれども、卵提供の 話の中で、つまり40歳で、主にエージングが理由と見られて卵が採れない人にも卵提供 をやってもいいのではないのかというご意見が、というか、そこがはっきり決まってい なかったように思うのです。卵提供を受けられる人と受けられない人の話の中で。エー ジングによる人たちは卵提供は受けられないということが明らからになっているのであ れば、私はここは「加齢により妊娠できない」というのがそういう意味なのかと思うの ですが、というか、後半の話で、そこがどっちだったのかというのが1つあるのですけ れども。 ○石井委員 それはまだ決まってないです、(案1)、(案2)は。 ○鈴木委員 逆に言うと、ここの文面で加齢によるということを、例えばここで今決定 となると、それは自動的にエージングの人たちは外されるという意味になるのでしょう かということを伺っているのですが。そのことは未検討のまま、ここでこの言葉はとに かく決めちゃいましょうということなのか。例えば1つの提案なのですが、これは「加 齢により」という単語ではなく、「生殖年齢を超えた夫婦は対象とならない」というよ うな言い方ではいかがでしょうというのは1つ提案としてあります。では生殖年齢は幾 つかというのは、この閉経とかという話とか、逆にドクターのいろいろなご意見もある でしょうから。 ○加藤委員 吉村さんに確認したいのだけれども、これは本来は妻の加齢により妊娠で きない夫婦という意味なんですよね。 ○吉村委員 そうです。 ○加藤委員 夫婦ともに、夫が加齢によりという場合もあるだろうけれども、それはも ともとの含意として含まれていないのですよね。ですから、例えばここに「妻の加齢に より妊娠できない」というふうに「妻の」と入れるという案もあると思うのですね。  それから、高久先生のご意見だと、「妻の自然閉経により妊娠できない夫婦」、もう ちょっと露骨になるけれども、「加齢により妊娠できない」というのは当然妻の自然閉 経により妊娠できない夫婦というふうに読んでくれるのではないかと思って書いたと思 うのですけれども。 ○鈴木委員 それは必ずしも一般の方はそうは思わないでしょうし、これは解釈をいろ いろむしろされるのではと思うのですが。 ○吉村委員 鈴木さんがおっしゃったのは、生殖……、何でしたか。 ○鈴木委員 私は今のは、妻ばかりが規定されるのも何か変ではないかという気がする のですね。では、男性が80でも90でもいいのかと。もちろんそれはきっと審査とか何か やるのであれば話は別ですが、妻の側ばかりかぶせるというのも変な話で、夫婦2人の 生殖年齢というのは1つ問われるのではないかと思いますので。 ○吉村委員 生殖年齢というと、もっと漠然としてくる。 ○鈴木委員 で、私はそれの1つの指針として、女性に関しては閉経が目安であるとい うような一文が付くとより一般の人にもわかりやすいのではと思いましたがいかがで しょうか。男性についての基準の示し方は、男性は基準なしでいいのか、むしろ私は聞 きたいですけれども、これが一般の方にというか、例えば法律なりに、どういう条文に なるかわかりませんけれども、そのときに受ける側の私たちはこれをどう解釈すればい いのですかということを考えているのですけれども。 ○矢崎部会長 議論が錯綜していると思いますが、もし「生殖年齢」をといったら男性 の場合は当てはまらなくなってしまうのですけれども、それでもよろしいのでしょう か。何もジェンダーで差別ということではないので、生殖機能を基準にして……。 ○鈴木委員 もちろんそこまでは言っておりません。例えば女性30、男性80のカップル なら、これはいいわけですか。 ○矢崎部会長 それはいいか悪いかはまた次の議題で、ここは単に生殖機能としてどう かということを決めるのであって……。 ○加藤委員 不妊治療を受けられる必要条件を述べているので、それで十分ですかとい うことは別にここに書いてあるわけではないんですよね。 ○矢崎部会長 (案1)と(案2)と(案3)で、(案1)は50歳という、ある程度め どになる数字があって、これに対して随分抵抗を感じられる委員の方と、自然閉経とし た場合にはいろんなケースが出てきて、かえって難しくなるのではないか。  それから「医師の裁量とする」というのは、確かに荒木委員の専門家としては確固た る自信があるかもしれませんが、高久委員が言われたような事態もこういう医療で起こ り得るかもしれないということで(案1)か(案2)でどう委員の方……どうぞ。 ○金城委員 補足なんですけど、これから非常に栄養状態がよくなっていくとか労働状 態も改善されていくとか、そうなったとき「50」なんて決めちゃっていいですか。 ○吉村委員 その点については昔から研究されている方がお見えになりまして、閉経年 齢というのはほとんど変わってないんですね、江戸時代から。哺乳動物というのは50万 年、何万年という生殖をやってきたわけですね。この現象というのはほとんど変わって ない。ですから昔の方が、例えば江戸時代、明治時代の非常に食料状態が悪いときに45 歳とか40歳であったらば、それはいいとは思うのですけれども、本当に2年ぐらいしか 違ってないんですね。 ○金城委員 2年違う。 ○吉村委員 2年ぐらい。だから、それは始まりと終わりによっても違いますから、そ れが一足飛びに60になるとか70になるとかそういう問題ではないので。そこは「50歳」 と決めるのは問題かもしれないので、いわゆる自然閉経の平均年齢に合わせれば、それ はそれでよろしいのではないかと思うのですね。  私はこの案については、残念ながら私たちは生殖機能から言っているのであって、 ジェンダーを問題にしているのではないです。頭の中で物を言っているわけではないで すので、生殖機能に関しては、女性が加齢により妊娠できないという場合にはやむを得 ないと。そして夫婦に関しては、次の子どもの観点から、「年齢のみならず」、(案 2)ぐらいをとって、養育できるかどうか、そういう折衷案みたいなものではいけない のでしょうか。 ○鈴木委員 確認ですけれども、そうすると、これの意味するところは、そういう人は まずここからは除外されますよという意味でよろしいわけですね。 ○吉村委員 そうです。 ○鈴木委員 とにかく、まず第一にこの人たちは除外されると。わかりました。 ○矢崎部会長 そうしますと……。 ○石井委員 せっかくまとまりつつあるところに申し訳ないのですが、もともと報告書 の趣旨は、最初に加藤先生がおっしゃったとおりで、不妊症ということをはっきりさせ ると、そういうことだと思うのですが、私は先ほどの新家先生の話を聞いて、45歳とい うのが大変説得力があるように思ったのですね。自然閉経という以上に45歳。つまり人 から卵をもらう年齢として考えれば、自然閉経ではなくても、子どもがつまり育たない 可能性がかなり高いということを示している年齢ですね、45歳を超えると。そうして子 どもを持つということは危険性も高まるということであるならば、そこが1つの基準、 それをどういう形で示すかというのはあるかと思うのですけれども、治療としての基準 としては45歳というのも1つの基準として示すということは根拠のあることなのではな いかと思ったものですから。 ○金城委員 それについてはケース・バイ・ケースだと思うんですね。 6,000の 300と いうこと、いくら少ないとはいえ45歳を過ぎてもちゃんと生まれている人もいるわけで すから、それについてはわざわざ排除する必要はないのではないかと思います。もちろ んインフォームド・コンセントですから、危険性その他については十分説明をして納得 をして治療を受けるということですので、余り排除的な規定は入れない方がよいと。最 終的にはお医者さんとご本人の判断で決められる。幅は広くしておいた方がいいのでは ないかと思います。 ○石井委員 私の観点は受けられる人もそうなんですけれども、提供する側としては、 卵を提供して子どもが生まれる。そのために提供される貴重な卵です。それを誰にあげ るかということを考えた場合に、45歳以上で生まれない確率が高くなる。そういう人に あげるよりは、本当に30歳で子どもが欲しくてもできない。そういう人にこそ治療とい うものはなされた方がいいのではないか、そういう観点です。 ○平山委員 子どもを望まれる気持ちと年齢とは全然違うと思います。40を超えている からとか30歳だから受けられるべき資格が違う、年齢によって違うということは、私は 基本的にはないと思います。ですので、これは基本的に先ほど荒木委員がおっしゃった ように、この医療を行うプロフェッショナルですから、ケース・バイ・ケースで判断で きるというふうなことを信じています。たとえもし50歳で提供を受けてもいいだろう と、ドクターやドクターのするインフォームド・コンセントあるいはカウンセラーや何 らかの専門職が行う面接等で、この方々であれば、育てられるであろうという方であれ ばいいと思うのですね。それは子の福祉という観点からも、別に年齢が高いから幸せに なれないということは決してないと思いますので、年齢の数字で決めるというのには私 はどうかなと思うので、(案3)の方に賛成したいと考えております。 ○新家委員 生殖補助医療を実施する医師と、それを引き継ぐ、つまり妊娠と分娩を管 理する医師が同一ならばいいです。ところがみんな違うのです。だからその辺のところ もある程度考えに入れていただかないと、これが50ちょっとぐらいのところで来られた ら、相当病院は大変になる。まして生殖補助医療で妊娠したということを聞けば、その 医療機関の気持ちは相当大変になると私は思います。 ○吉村委員 私たちがワーキンググループでやったときには年齢が入っていたんです。 女性は45歳という年齢にしていたんです。全体の専門委員会に入ったときには、それを 現実面として、今みたいなご議論は必ず出てきますよね、45歳、50歳でやるとしても。 自然閉経50歳。でも子どものことを45歳という考え方は非常に正しいと思うんですね。 ここでできなかったので、「医師の裁量」、「加齢により」というふうにしたんです ね。  今、新家先生もおっしゃいましたけれども、今の生殖医療というのは、生殖医療でつ くった方が全部最後まで責任を持って……、我々は小児科の先生からいつも怒られるの ですが、あなた方は産ませるだけではないですかと言われるのですけれども、そこまで ちゃんと生殖医療をやる医師がやればいいんです。その転帰がどうなったかということ がわかれば、私はそれはいいと思うのですけれども。ですから、この45、50はいつまで たったても平行線だと思うのですね。ですから先に進まないといけないので、この辺は 「加齢により妊娠できない」というのは非常にいい言葉であると私は思いますけれど も。 ○荒木委員 参考までに症例を示させていただきます。4〜5日前、私どもの病院で、 53歳の自然妊娠の方が送られてきた。これは異常妊娠だったわけです、胞状奇胎。その 方は自分は月経不順なので閉経だと思っていたんですね。だから避妊も何もしないわけ です。たまたま53歳で妊娠しちゃったわけです。非常に個人差というのはあるんです ね。それ故、年齢で自然閉経とか何とかということを、誰がどの条件で決めるかは非常 に難しいものなんです。閉経だと思っても閉経でないことがあるわけですね。また閉経 であっても、その他の原因で出血というものが出てくれば、まだ月経があるのだと勘違 いする方もある。だから、年齢でこういう医学上の症状を切ることは非常に難しいので はないかということを、私は自分のところの病院に送られてきた患者からつくづく感じ ました。 ○高久委員 (1案)の表現は非常にうまくできている。「自然閉経の平均年齢である 50歳くらいを目安と〜」と書いているのですね。その前に「医師の裁量」とありますか ら、何も50とは言ってないのです。50歳くらいを目安にしてくれと。その目安は医師の 裁量でしてくださいよというのが一案。45でも良いのですが、自然閉経の平均年齢の50 歳くらい、という方が一般の人がこれを見たときにわかりやすいと思います。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。私もここまで言いたかったのですけれども、 高久委員に言っていただいて大変ありがたいと思うのですけれども……。 ○鈴木委員 追加で、母体の健康というのでしょうか、母体の安全とか生まれてくる子 のことを考えたら、45歳までが望ましいとか、そういうことをつけ加えるのはだめなの でしょうか。 ○矢崎部会長 それはもう一回、3回り目で議論していただいて、今、高久委員から言 われたように、私もこれは非常にうまくできていると思うんです。「加齢により」とい うとなかなか判断が難しいので、小泉委員のご指摘のとおりに裁量とするがこれを判断 基準で国で決めるというのもまたいかがなものかと思いますので、ほかの案にございま すように、「医師の裁量とする。(法律やガイドラインで国として義務的な基準は示さ ない)ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す」ということ で、(案1)を一応「●」ということで、あと、もう一回議論のときに、鈴木委員が おっしゃったような、さらに付則の付則を設けたいというご議論があれば、そのときに またお申し出いただければと思います。どうもありがとうございました。 ○福武委員 今の言葉ですけど、法律、ガイドライン、準則ということをおっしゃった んですけど、どこが決めるかというのがあるのだと思うのですね。法律という話になれ ば、それは国会が決める話になるのですけど、そこまで言っているのではないだろうと 思うんです。そうするとガイドラインとか準則というのも、誰がどうやって決めるかと いう問題になると、例えば管理機関が決めるとかいろんな問題が、どのレベルで決める かというのをある程度考えておかないといけないのではないかという気がするのです が、明らかに法律事項ではないと思います。 ○加藤委員 (案2)を採用した場合には福武先生の意見も有効だけど、(案1)を採 用すれば、別に。 ○矢崎部会長 これはプロセスとして、この部会で、専門委員会が出された答申につい て、我々がもう一度議論して、さらに実際に医療を行う場合の細かい点をブレークダウ ンしてここで決めるというふうになっていますから、ここで決めた後の、今、福武委員 のご質問ですね。どういうふうな手順になるか、それはちょっと……。 ○加藤委員 さっき高久先生の言ったのは、前半部分で、それを超えて妊娠できない場 合というのはなくてもいいのではないですか。 ○高久委員 私は前半の方だけで、後の方は余り考えていません。 ○矢崎部会長 大変すっきりします。では、今おっしゃったように案文を事務局でもう 一度直してください。  それから、今、福武委員のご質問に局長からお答えいただけますか。 ○岩田雇用均等・児童家庭局長 どうもご議論ありがとうございました。それで国会が 法律で基準を決めるということではないということは確認していただいたわけですが、 私どもの理解では、国が、例えばこの部会の議論を踏まえて、それを準則と呼ぶのかガ イドラインと呼ぶのか指針と呼ぶのか呼び方はいろいろあると思いますが、法律に何か 根拠があるもので、個々の医者の裁量ではあるけれども、医師が判断するときに参考に していただく基準を厚生労働省が定めるということです。今ご議論いただいた「自然閉 経の平均年齢である50歳くらいを目安とする」というのは、ガイドラインの中身、準則 の中身である、そういう形で整理をしていくことになるのではないかと思います。 ○矢崎部会長 福武委員がおっしゃったのは、これを逸脱した行為に関して考慮されて いるのでしょうか。 ○福武委員 いえ、そういうわけではありません。今おっしゃったのは、厚生労働省の 省令または基準というレベルで決めるということですね。ただ今後、管理機関の話が出 てくるのだと思うのです。それでいろいろな審査とかそういうのをするときに、むしろ 私としてはそういったところがそれなりの基準やガイドラインを決めた方がいいのでは ないかと思っているものですから、どこで決めるのかというのが少し気になったという ことです。 ○加藤委員 今、高久先生がおっしゃったように、(案1)を医師の裁量とすれば、自 然閉経の平均年齢である50歳ぐらいを目安とするというふうにして、後の「それを超え る場合は」という部分は削除という措置をとっておくのはいいのではないですか、この 場合。 ○福武委員 もちろんそれでいいのだと思うんです。 ○矢崎部会長 福武委員はどこでオーソライズして実行させるのかというお話ですよ ね、これは。 ○岩田局長 これまで私ども厚生労働省が、省令になるのか告示になるのか、そういう レベルのもので、個々の医者が判断していただくときの参考基準を策定するというふう に思っておりましたけれども、これは今ご提起がありましたように、管理機構がどうい う機能を担うのかということとのかかわりで管理機構の方で決めていただくことが適当 なのか、行政機関が決めることが適当なのかという判断をもう一度していただければよ ろしいかと思います。 ○矢崎部会長 検討する内容によると思います。もう少し専門的な見地からディスカッ ションを進めないといけない場合には恐らく少し専門家にお集まりいただいてそこで議 論いただくことになるかと思います。恐らくそういう問題はもう少し後の公的機関云々 で入るかもしれませんですね。ただ、今、「加齢により」とか大きなまとめに関して は、この審議会の答申がそのまま厚生労働省が今後いろいろな生殖補助医療を決めると きの貴重な、貴重なのかどうかわかりませんけれども、重要な基準になるというふうに 我々はとらえていけば、それでよろしいわけですね。あとは局長にお任せしていただく と、それでよろしいでしょうか。 ○福武委員 はい、結構です。 ○矢崎部会長 次の問題点を、室長、お読みください。 ○桑島室長 それでは3ページのところでございますが、引き続きお願いいたします。  「子の福祉の観点から、今度は夫婦が子育てに耐えられるという要件も必要なのでは ないか」ということで、(案1)では医師の裁量とする。  (案2)では、先ほどの議論の「夫婦の年齢のみならず、健康状態、経済状況、精神 的安定度などの子どもを安定して養育できるかを、提供された精子・卵子・胚による生 殖補助医療の実施に関する全般的な基準として国が示す」というところでございます。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。これも物すごく議論があって、事務局の(案1)、 (案2)は大変粗削りの案でございますので、先ほどみたいに少しブラッシュアップし ていただければ大変ありがたいと思います。  これは前の検討事項と違って、医師等とは別の視点からカップルを評価するという、 評価するという言葉適当ではないかもしれませんが、生殖補助医療を行えるご夫婦であ るかというものを少し違う視点から見る必要があるのではないかという設問ではないか と思われます。  それにつきましても、したがってカウンセリングが極めて重要なファクターになって くるのではないか。(案1)は医師の裁量ですけれども、(案2)はそういう医師以外 の視点からのサポートが必要ではないかというご意見でございます。 ○加藤委員 この問題は、例えば「夫婦の年齢のみならず、健康状態などについて十分 考慮しなければならない」ということだけ書けばいいので、それについて国の基準を決 めるというのは、例えば所得水準を幾らにするとか、年齢をどうするか、そんなこと 言っても書けるはずがないのだから、ただ、そういうこともちゃんと考えてやりなさい ということを言えばいいのではないでしょうか。それをまた「医師の裁量とする」とい うことも言う必要はないので、したがって、そういうことを十分考慮してなすべきであ るという条文を書けばいいのではないかと思います。 ○矢崎部会長 そのご意見は、そうしますと、ここではそういうふうに触れて、検討課 題2でもう少し詳しく議論すると。そこにありますように、検討課題2というのは、カ ウンセリングとかそれをメインにして検討しようと。これは産婦人科以外の小児科の先 生のご意見もちょっとお伺いした方がよろしいですね。 ○松尾委員 加藤先生のご意見に賛成ですけれども、さっき才村先生おっしゃったもの との整合性も必要ではないかと思うのですが、片一方だけ非常にしっかりして、こちら がルーズという感じがありますので。 ○矢崎部会長 先ほどの、加藤先生の言葉でまとめさせていただいてよろしいでしょう か。 ○岩田局長 具体的に個々のケースを判断するのは、最終的には医師であるのでしょう か。その医師が判断するときの準則、先ほど前のテーマで出てまいりましたけれども、 準則の1つとして、夫婦の年齢、健康、経済状態等々、子どもの安定した養育が可能な 環境にあるかどうかということを含めて、医師が判断するときの準則の内容であると理 解してよろしいのでしょうか。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。 ○加藤委員 厳密な意味でこれはメディカルな判断を少し超えているわけですよね。で すからメディカルな判断として、さっき言った不妊症かどうかということについては、 これは医師の裁量権限だという態度で押していっていいと思うんですよ。ただ、これは 厳密な意味でのメディカルな判断ではありませんので、これも医師の裁量に委ねるもの とするということを明記しない方がいい。ただ、お医者さんとクライアントが相談し て、こういうことをよく考えて決めなさいよというぐらいでいいのではないでしょう か。 ○荒木委員 今、局長のご質問ですけど、我々産婦人科医としては健康状態は判断でき ますけど、経済状況とか、産婦人科が具体的に精神的安定度まで、これは専門専門があ りますから、精神科専門医に委ねることも必要かもわかりませんが、医師の裁量だけで は難しいと思います。 ○矢崎部会長 でも結局、そういうカウンセリングの方で違った視野から見ていただい て、最終的に実行するのはドクターですので、最終判断は誰がするかというのが局長の ご質問だと思うのですけれども、やはり最終的には医師が行うのではないでしょうか。 ただ、そのときにこういうことを十分に参考にしなさいということを国がきっちり準則 としてドクターに、医学的な判断だけではなくて、そういう判断も十分に入れて、とい うのはすなわち医師ではできない部分はほかの方からしっかりした情報を得て最終的に 判断する。  ですから「医師の裁量」とは言えないけれども、局長へのお答えは最終的には医師が するのですけれども、医師の裁量権の中から……、裁量権は医師にあると思います、最 終的な。ただ、判断する材料が医師の手元にある情報だけではなくて、こういう医療で すから、先ほど才村委員から言われた特別養子法では相当きっちりした条件があります ので、それと対比して余り齟齬のない基準があってもいいのではないかというお話でご ざいます。  ただ、特別養子のケースみたいな法的な相当サポートというのは必要なのでしょう か。○金城委員 特別養子縁組のときの要件をできるだけこれにというのは、私は的外 れなのではないかと思うのです。何でかと言えば、普通治療を受けないで子どもを産む ときには何もないわけですね。しかし子どもを産んだ人はちゃんと育てるだろうという 信頼でやっている。それと同じだと思うのですね。むしろ既に子どもが生まれちゃっ て、その人をどうするかというのではなくて、これから産むわけですから、自然の生殖 と同じに考えて、それほど詳しいことを入れておく必要はないのではないかと思いま す。  ただし、カウンセリングの方でかなり強力にカウンセリングをして、問題のあるよう なケースについては、夫婦に思いとどまらせるような方向でカウンセリングをするとい うような方向をもっていくのであって、自然の生殖と比較をして、ここで生殖医療を受 けるためには、これこれ、これこれ要件がなければいけないと書くのはちょっと難しい のではないかと考えています。 ○小泉委員 私も今のご意見に賛成で、そもそもここで「加齢により妊娠できない」と いうのが「子の福祉の観点から」というところと同列に並ぶのは矛盾していると思うの です。もし言葉を選ぶとすれば、「子の福祉の観点から」というよりは、加齢により妊 娠することが適切でないといいましょうか、妊娠すれば当然分娩(出産)・育児という ことにつながるということを想定して言っているわけですから、それを加齢により妊娠 できないという、母体という意味で妊娠できないということと同列に並べるということ が私は矛盾していると思うのですが、どうでしょうか。 ○矢崎部会長 なかなか難しいですね。 ○小泉委員 妊娠できないのでなくて、妊娠及びそれに伴う事項が的確と思われない。 ○矢崎部会長 おっしゃるのはよくわかります。この括りの中に入るかどうかというこ とですね。 ○小泉委員 そうです。 ○矢崎部会長 わかりました。才村委員、何か。 ○才村委員 先ほど特別養子縁組と同列に考えるのはおかしいというふうに言われたの ですけれども、もちろん同列に考えているわけではないのですけれども、生殖補助医療 も人工的に子どもをつくるということでは、自然に出産する子どもさんではありません ので、そこには人間が手を下して子どもを誕生させるわけですから、その子どもができ るだけ幸せに育っていくという条件を保障しないと私はいけないと思いますし、そうい う意味では、もちろん特別養子縁組と同列にするのではないのですけれども、夫婦の子 育てできる条件も加味しないといけないと思います。  その場合に、先ほど最終的には医師の裁量といいますか、医師が判断するというふう なことで今おっしゃっているわけですけれども、公的管理機関ですか、それがどのよう なものになるのか、まだ論議がされてないのでわからないのですが、それが例えば全国 1カ所しかなければ、そういうところですべての方に行ってもらうわけにいきません し、それが何カ所かあるということでしたら、そういうところには一度は行き、カウン セラーになるのか、もう少し私は社会的な面での夫婦としての子育てに耐えられるよう な方かどうかといったことを、医師とは別の視点から見て、それで意見をお医者さんの 方にかなり採用していただくような、そんなシステムができないものかと思います。そ れが国が示される基準なのか、その辺が中身的にはよくわからないのですけれども。 ○矢崎部会長 ちょうど4時半ですが、休憩をとりたいと思いますが、今のところ、ご 議論を踏まえて、(1)で提供された配偶子による生殖補助医療全般に関わる条件で 「○」が1つは対象ですよね。2番目が加齢により妊娠できない夫婦は対象とならな い。準則として、医師の裁量とするが、自然閉経の平均年齢である50歳ぐらいを目安と すると。  それで3番目に「○」にして、誰が裁量するかどうかは次の議論にしますけど、一応 先ほど加藤委員が言われた夫婦の年齢のみならず、健康状態、経済状態、精神的安定度 などの子どもを安定して養育できるかを、何という言葉にしましょうか。もうしっかり カウンセリングを受けて評価を受けなければいけないということを準則として加えたい のですよね。 ○福武委員 むしろここのところでこれを全部省いてしまって、検討2か検討3の方 に、全般的な問題として回した方が落ちつきはいいように思うのですけど、いかがです か。そうしないと、社会的なほかの面がばさっとここだけ入ってきていると、非常に落 ちつきの悪い形になっていると思うのですが。 ○矢崎部会長 どうしましょうか。法律家として、石井委員……。 ○荒木委員 平山委員、今、先生を中心として不妊カウンセラーを検討していますよ ね。学会は生殖遺伝カウンセラーについて検討しているんです。不妊カウンセラーは経 済的な状況までカウンセリングの対象とするのですか。 ○平山委員 そこは非常に微妙なところだと思います。カウンセリングというふうに 言ってしまうとどうかなというのは確かに思うんですね。先ほど言ったように、社会的 な面を考えるのであれば、才村委員がおっしゃったように、ソーシャルワーク的なもの もかなり必要なのでしょうし、それはカウンセラーがそれをカバーするのは難しいよう に思います。  では不妊のレシピエント・カウンセリングというのはどういうふうにしていくかとい うのはまた検討課題2の方で詳しく議論になるとは思うのですけれども、ここに書いて あることをカウンセリングと言ってしまうのは私も抵抗があるところです。 ○石井委員 確かに2の問題なのかもしれませんが、1つはまさしく手続きの問題で、 養子類似のどこかの判断を受けた上でこの治療を受けられる、医師だけではなくてとい う、そういうシステムをとるかどうかということにかかわるのではないかと思うのです ね。  先ほど前の報告書は治療としてとらえるという観点ですから、医療の枠組みの中で処 理するという形で考えてきていると思うのですけれども、人工的にというだけではなく て、血縁ではなくて親子関係をつくるという点で養子と同じに見るという意見はかなり あると思うのですね。その養子と同じ手続き枠組みを構成する。それが裁判所にする か、それはまたもう一つ考え方はあるかと思います。これは養子とは違うのだから、新 たな公的管理機関のようなところという考え方もあるかもしれませんが、医師以外のも のが、今ここで挙げられているような条件を考慮する。そういう手続きを考えるのかど うかというのは、検討課題2で考えることなのかどうかということにもかかわると思い ます。  それと先ほど福武委員は2の方に回したらとおっしゃったのですが、それはそれでも いいかもしれませんけれども、ここのところの(1)は、法律上の夫婦に限るという形で書 いている、法律上の制限と同じように、健康状態、経済状況、精神的な安定度などを考 慮して、安定して養育できる夫婦に限る。そういう形で書くという書き方もあるのでは ないかと思います。それがどれだけの意味を持つかというのは、どれだけの審査をする かということにかかわってくるのだろうと思います。 ○矢崎部会長 議論するとだんだんいい案が出てきますが、実際には専門委員会では不 妊治療という立場で議論されて、一応子の福祉ということも十分考慮されていますけれ ども、この委員会ではもう少し子の福祉の立場からということで、これも重要な案件だ と思いますので、今、おっしゃられたような文言で少しまとめさせていただいて、また 議論があれば、次の機会にさせていただきたいと思います。  それでは一応3ページの中ごろまでは事務局でそういうふうにまとさせていただい て、45分から、あと1時間ということで限ってやらせていただきます。ありがとうござ います。                   休 憩                   再 開 ○矢崎部会長 では後半の議論を進めたいと思います。先ほど特別養子制度のように、 親となるものの年齢の下限を設けないでよいかどうかというのは、今議論のありました (案2)の中に組み込んでいただいて、特別これはあえて下限をつけないということで お願いしたいと思います。  当然それは生殖補助医療を受ける夫婦を考慮したときは、それが考慮の中に入ってい るというのは、夫婦の年齢という項目に入ってくると思いますので、よろしくお願いし ます。  では3ページの次の「○」からお願いします。 ○桑島室長 それでは中ほどの「○」でございます。自己の精子・卵子を得ることがで きないというところですけれども、要検討事項、「自己の精子・卵子を得ることができ る」ことの具体的な判定基準はどのようにするかということでございます。  次のページに移らせていただきますが、「●」をいただいてございます。医師の裁量 とする(法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さない)。  ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  ということでございます。この部分はよろしゅうございますでしょうか。 ○矢崎部会長 この部分については、後で繰り返し議論になりますので、大原則として 皆様から、こういう案をご承認いただいたということで、個別的に次の項目からお願い します。 ○桑島室長 その下でございます。  精子・卵子の提供を受けることができる者について優先順位を設けるかということで ございます。括弧の中は省略させていただきます。 (案1)法律やガイドラインを含め、国として基準は特に示さない。 (案2)法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さない。ただし、国が実施 に当たっての準則となる考慮すべき基準は示す。  具体的な考慮すべき基準としては、 (案2−1)待機期間を基準とする優先順位を示す(先着順)。 (案2−2)医学的理由(無精子症、ターナー症候群・早発閉経など)や待機期間、そ の他の理由(年齢、既に有している子どもの人数など)などを総合した優先順位を示 す。  この2つの案に分かれてございます。以上です。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。大きく分けて2つの案、細かく分けますと3つの案 がございます。(案1)の国として基準は特に示さないということに関しましては不透 明になって公平性を欠くおそれがあるということで、これをサポートされた方は少な かったように思います。  議論があったのが(案2−1)で、準則として考慮すべき基準が待機期間を優先順位 にする。すなわち先着順であると。  それから(案2−2)が、医学的理由や待機期間などの総合的に判断するということ であります。  (案2−1)の方は一見公平であるけれども、念のために、早く登録してしまうと か、そういう人為的なファクターが入ってしまうのではないかとか、いろいろ議論があ りました。  (案2−2)は原因が明確な不妊症の方が優先される案ではないかと委員の皆様の議 論から、そのような印象を受けましたが、これに関しまして、どなたかご意見ございま すでしょうか。 ○加藤委員 この案は提供された精子や、特に受精卵なんですけれども、すべて中央の 管理機関に登録されて、そこで再配分を受けるという、そういう前提で書かれているの でしょうか。この案全体の中で提供者があった場合に必ず中央の何かの機関に登録し、 そこで配分をされると、そういう案がどこかに出てないと、実際できないということに なるのではないかと思うのですが。 ○矢崎部会長 ただ、これが全国でできるかどうかというのもまた全国1つの、情報セ ンターをつくるということは、委員の皆様に許しを得ていただいたのですけれども、情 報だけでもできるわけですね、マッチングというのは。今までは施設ごとでやっておら れたんですね。 ○吉村委員 そうですね。 ○矢崎部会長 これはいかがでしょうか、それは可能でしょうか。 ○松尾委員 とても大変だと思いますので、施設ごとというふうに理解していたんで す。 ○矢崎部会長 配偶子、精子の場合と卵子の場合と胚の場合、また状況が違うと思いま す。これは精子・卵子を一緒くたにしちゃったので、吉村委員、卵子の場合はいかがで しょうか。これからの問題が大きいと思いますが。 ○吉村委員 これは大変難しい問題だと思うのですね。胚ができるのは施設ですし、精 子はそういうことはないかもしれませんが、卵子に関しても、例えばクライアント夫婦 が例えば兄弟姉妹を連れて来られるにしても、兄弟姉妹を認めるということになると施 設ごとということになるかもしれませんですね。許可は公的管理運営機関に登録して、 そこで審査を受けてから、姉妹から卵子をいただくことになるのですけれども、卵子に 関しては、全くの匿名の第三者からいただくということになりますと、どこかでその情 報を持ってすべて一元化で管理していかないと大変難しいのではないでしょうか。  ですから、この3つについてはさまざまなケースで考えていかなくてはいけないの で、それをいちいちつくっていくことは大変だと思います。 ○矢崎部会長 卵子の場合はドナーとレシピエント条件を合わせないといけないですよ ね。要するに妊娠がうまくできるように。 ○吉村委員 そういう必要性はないと思います。先生、それは属性を合わせるというこ とですか。 ○矢崎部会長 いや、そうではなくて、卵子をいただいて、ご主人の精子と受精したと きに着床する。先生のお考えは、胚まで作成して凍結しておくと。 ○吉村委員 凍結しておく。卵子をどうやっていただくかという方が大変なのではない でしょうか。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか、それでよろしいでしょうか。 ○加藤委員 いろんな場合があって、例えば5人のクライアントがいて、それぞれみん な妹さんから卵子もらうことにして、だけど、匿名性を確保しなければならないので、 5人の依頼者が、それぞれ5人の妹から得た卵子を全部1カ所へ集めて、それをその5 人の人にまた再配分するというふうになると、それは何とか症候群の人は途中から横取 りしようと思っても横取りできないわけですよね。だから、私は妹連れてきたのだか ら、私に必ず配分してくださいと言いたくなりますよね。 ○吉村委員 その方法はフランスの方法ですよね。そういうことを想定されているわけ ではないですよね、専門委員会の意見は。私が連れて行った姉妹の方から卵子をいただ くということですね。 ○加藤委員 その場合には再配分というのはないわけですね。 ○吉村委員 再配分はないということになります。原則は匿名の第三者からいただくと いうことになっているわけですね。そうすると卵子は非常に少ないと思いますから、ど こかで情報を全部集めておかないと、それを各施設ごとにやっていくことになると、そ れは大変難しいと思いますね。そうすると各施設では姉妹しかやるケースはなくなるの ではないでしょうか。そういうことは考えておかなくちゃいけない。 ○加藤委員 フランス方式を許容したような仕組みをつくれば、少しは可能性が広まる のではないでしょうか。 ○吉村委員 それはその可能性はありますね。 ○加藤委員 しかも匿名性も同時にある意味で確保できる。 ○吉村委員 完全にフランスはそうやってやっていますね。ですからあるクライアント 夫婦は誰かを連れてくるわけですね。友人でも姉妹でも連れてきまして、それを登録す るわけですね。登録しますと、それは自分に返ってこないことだけは事実でありまし て、誰かのものが返ってくると、こういったので匿名性を担保しながらフランスはやっ ていますね。 ○石井委員 今、おっしゃった加藤先生のは、中央で管理しててもできるのではないで すか。そういう場合には優先順位を1位に持っていくという、それを入れるかどうかの 問題だけだと思います。 ○加藤委員 ええ。 ○矢崎部会長 精子の場合は特によろしいでしょうか。 ○吉村委員 後から出てくる出自を知る権利がこういうふうに言われるようになってく ると、精子も提供者は少なくなると思いますけれども、スウェーデンのように、出自を 知る権利が認められている国は、これは当然のことながら提供者は減ると思います。 ○矢崎部会長 そうしますと一応情報センターは国がつくると。ただ、マッチングまで できるかどうかは後の議論にして、ここで優先順位、そこはいろいろなケースを頭に入 れながら、優先順位だけは考えられると思いますけれども、いかがでしょうか。先着順 というのと、いや、それだけではなくて、総合的に判断しましょうと。ですから(案2 −2)は原因がはっきりした不妊症の方は、ある程度心構えもできてやろうという。 ○鈴木委員 多分この話は、匿名の第三者からのをまず前提に話がつくられているのだ ろうということを理解しております。もう一つ、情報センターは確かに1つかもしれま せんけれども、実施施設は、全国5カ所とかになることもあり得るし、情報センターが 全国5カ所になるということも十分あり得ると思うのですね。この場合、いずれにして も大事なのは、待っている人たち、もらいたいと言っている人たちに公平性と透明性が きちんと保障されているということだと思います。臓器移植などポイント制になさって いるとおっしゃっていましたよね。確かにそれも1つの公平性というか、待っている人 にとってのわかりやすさを保つ意味では非常にいい方法なのかと思いましたので、私は (案2−2)、どちらかといえば、そうなのかなと。  確かに2人目が欲しいかどうかという話は結構大きなファクターなのかなと。あな た、既に1人いるのだから、ちょっと待っててという気持ちも受ける側にとってはあり 得るなと思いましたし、ただ、具体的にその他の理由、今ここにはっきり示すかどうか はちょっとどうかなという気もしますけれども、あともう一つ、逆に医学的理由は、む しろその他の理由の中に含めて外してもいいのではないかと考えるんです。逆に1回目 でも申し上げましたが、ターナー症候群の方と早発閉経の方、どちらがポイントが高い かというふうには判断としても難しいのではないかと思いますが、いずれにしてもここ はポイント制にしてはどうかということだけがわかるような文章にすればと思うんで す。以上です。 ○矢崎部会長 その他いかがでしょうか。いかに今言われたように、透明性、公平性を 保つにはどうしたらいいかということが一番のポイントであるかと思います。医学的理 由を全部外しちゃうのも少し問題ですので、(案2−2)で、その他の理由について は、そんな詳しく書かないで、その他の理由などを総合した優先順位を示すと。それで は(案2−2)ということで括弧は除かせていただくと。  次のは情報の、これはどうしましょうか。これは次の公的機関のところで議論させて いただくということで、5ページお願いします。 ○桑島室長 それでは5ページに移らせていただきます。AIDのところに入りますけ れども、検討事項としては、真ん中のところに書いてございますが、「精子の提供を受 けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するかということ でございます。次のページにまいります。  1つ目、「●」をいただいてございますが、医師の裁量とする。  ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  具体的な基準については、日本産科婦人科学会の会告及びその解説に準ずることとす るということでいただいてございます。 ○矢崎部会長 一応これはご議論いただいて、学会の会告に掲載されております見解に 基づく。 ○鈴木委員 1点ですが、よろしいですか。 ○矢崎部会長 はい。 ○鈴木委員 これについては、学会の会告に準ずるというのは全く賛成できません。学 会の会告が変わり得るということもありますし、あるいは1団体の会告に準ずるという 言い方はちょっとおかしいのではないかと思います。現状としてはもちろん参考にぜひ すべきだと思いますが、あえてこういう文章にする必要はないのではと考えます。 ○矢崎部会長 そういうご指摘もあるかと思いますが、いかがいたしますか、これは。 極めて専門性の高い医学的な判断は専門家の方々に頼らざるを得ないというところがご ざいますね。そういう意味では日本産科婦人科学会の見解と、今のところはそういうふ うに。 ○岩田局長 事務局の整理の意図がしっかり伝わってなくて申し訳なかったのですが、 学会の会告や解説に準ずるということを準則として書き込むということではなくて、準 則で書き込むことは、今の学会の見解、解説の中身、具体的な中身です。即ち(※ 1)、(※2)で書いてあることを厚生労働省が定める準則に盛り込む、こういう整理 にしてはいかがかということです。 ○加藤委員 学会の規定を剽窃するということですね、趣旨は。 ○矢崎部会長 鈴木委員の言われたのは、学会の見解が厚生労働省のこういう文章にそ のまま載っていいかどうかという、そういうようなご意見だったのではないか。 ○鈴木委員 それも含まれております。 ○矢崎部会長 ただ、現時点ではやはり学会で、これは単に学会、これをつくるのには 相当時間と専門家の英知を重ねてつくられたのではないかと思いますが。 ○荒木委員 日本産科婦人科学会の会告をつくるにあたっては随分時間をかけて専門家 が検討し、また法律家にも相談し、また他学会、泌尿器学会、不妊学会、受精着床学会 等の承認を経て学会として会告として出しているわけです。勝手に私ども日本産科婦人 科学会だけで決めたわけではございません。いろんな法律家まで含めた方々の検討をお 願いして、学会として見解を発表したわけですから、誤解のないようにお願いいたしま す。 ○鈴木委員 見解の内容について特に異議を持っているわけではありません。ただ、1 団体に限るというようなこういう感じの書き方に、私もちょっと誤解があったのだと思 います、ここの書き方については。 ○荒木委員 それは確かに1団体の見解であって、私どももこだわるわけではない。 さっき局長がおっしゃったように、学会の会告なんて削ってもいいのです。内容がしっ かりしたものであるということを再確認していただきたい。 ○矢崎部会長 それでは、そういうことに囚われないようにといっても……。 ○加藤委員 内容が厳し過ぎるのではないですか、この学会の基準は。 ○吉村委員 だけど、大体AIDというのはこういう条件でやるというのはありますか ら。今、顕微授精もできるようになってまいりましたし、精子のある方については、夫 婦間で子どもさんを持っていただくと。これだとICSIを何度も何度もして、例えば 3回、4回して、妊娠できない方はAIDの適応になるわけですから、それほど厳しい ものではない。 ○加藤委員 わかりました。 ○吉村委員 ただ、事務局の方にお願いするのですが、(※1)と(※2)を両方とも まとめる形で入れていただきたいと思います。 ○矢崎部会長 その方がいいですね。会告どおりに入れるのではなくて、それは荒木委 員とご相談の上、皆さんに準則としてわかりやすい、学会の会告と一般の臨床医、国民 の皆さんに理解されるガイドラインというのはちょっと違うところがあると思いますの で、少し専門家集団のつくられたものを、これでもわかりやすいのですけれども、うま くまとめていただければ大変ありがたい。どうもありがとうございました。 ○小泉委員 学会の会告の内容を準則としてということには私は異論ありませんけれど も、このことについては学会の会告として先ほどから荒木委員のご説明にあるように、 年月を経て慎重に検討した末につくられたものがあるというか、それに準拠したという ところまでむしろ書き込んでいただいた方が、医師が裁量するに当たっての基準という 意味では私は望ましいと思います。1団体の会告という扱いでは、医師はそれを参考に するのには心許ないのではないか。 ○矢崎部会長 なかなか整合性が難しいので、一応学会の会告がベースになっていると いうことでまとめていただいた案を準則としてつくっていただくということで、荒木委 員も委員に入っておられますので、そこは十分理解していただけるかと存じます。  では次の「精子提供についての優先順位を設けるか」、これにつきましては先ほどの 議論で一応決着をつけさせていただいたと思います。  次の「提供精子による体外受精」の「○」からよろしくお願いします。 ○桑島室長 それでは6ページの下のところからになります。「女性に体外受精を受け る医学上の理由がある」ことの具体的な判定基準はどのように設定するかということで ございまして、次のページにまいります。  医師の裁量とする(法律やガイドラインで、国として義務的な基準は示さない)。  ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  具体的な基準については、  「精子の提供を受けなければ妊娠できない」ことについては、日本産科婦人科学会の 会告に準ずる。  「女性に体外受精を受ける医学上の理由がある」ことについては、(以下、要検討) としてございますけれども、(案1)日本産科婦人科学会の会告並びにその解説に準ず る。 (案2)日本産科婦人科学会の会告並びにその解説に準ずる。ただし、「機能性 不妊」や「原因不明不妊」、「AIDの施行回数」などの基準を別途示す。  ということで、さらにプラスされた形で(案2)が出てきてございます。 ○矢崎部会長 これは皆様のご意見では、AIDとほぼ同じなので、この「会告に準ず る」という文言はまた工夫するにしましても、(案1)のところで、(案2)について はAIDの施行回数とかそういうのを述べるのは、むしろリスクの高い検査や治療を患 者さんに強要する可能性があるので、むしろこういうことは入れない方がいいというご 意見だったと思いますので、(案1)ということでまとめさせていただいて、今の 「●」の部分からの文言を次回に少し、荒木委員とよく相談していただいて、注意書 き、(※1)から(※4)までをどういうふうにまとめるか、荒木委員、よろしくお願 いいたします。 ○荒木委員 吉村先生も一緒に。 ○吉村委員 わかりました。 ○矢崎部会長 吉村委員にもよろしくお願いいたします。  次の精子提供についての優先順位については、これはAIDと同じですので、前の ページを参照していただければと思います。  では、8ページの下段のところ、お願いします。 ○桑島室長 それでは、8ページの下段、(3)のところでございますけれども、「卵子の 提供を受けなければ妊娠できない」ことの具体的な判定基準はどのように設定するかと いうことでございます。  これも医師の裁量とするということで、括弧の中身は先ほどと同様でございます。 (案1)ただし、国が実施に当たっての準則となる考慮すべき基準を示す。  具体的に基準については、 (案1−1)自己の卵子が存在しない場合のみならず、自己の卵子では、妊娠できない 場合も対象とする。  具体的な基準は、 (案1−2)自己の卵子が存在しない場合に限る。 (案2)実施に当たっての準則となる考慮すべき基準も国として特に示さない。 ○矢崎部会長 ありがとうございました。3つの案がございます。(案1−2)は、こ れは荒木委員が学会の意見では(案1)には選択肢がないというお話をいただきました が、専門委員会では(案1−1)があってもいいのではないか。具体的な基準について は、これはまた専門の方々のご意見で詰めていかなければいけないと思いますが、また (案2)で、基準は何も示さない方がいいのではないかというご意見も少数ながら承っ たように記憶しています。いかがでしょうか。  大多数の方は(案1−1)ですが。 ○石井委員 私は(案1−2)なんですけれども、(案1−1)の具体的な基準という のがどの程度になるかということにかかわるかと思うのですけれども、1つ危惧される のは、今、不妊治療をやめたら妊娠したという例が結構あると言われるわけですね。つ まり原因不明不妊で卵子提供を受けて子どもができる。その後で自分の卵子で子どもが できるということになるというのは、私は子どもにとって、それが不幸になってもらっ ては困るのだけれども、環境としては大変難しい環境に置かれることになると思うんで すね。  だから、そういうことがないようにしていただきたいと思うんです。かなり今、安易 にと言ったらいけないのですけれども、体外受精というものが広く使われている中で、 卵子提供もそういう原因がわからない。卵子をもらえばできるのではないですか、とい う形で行われていってしまっては困ると思うということが一番大きい。(案1−2)だ と厳格過ぎるかもしれませんけれども、今言ったような、私は(案1−2)を考える理 由としてはそこがあります。 ○矢崎部会長 学会派ですね。どうでしょうか。 ○金城委員 不妊治療の分野ではわからないところがまだたくさんあるのではないかと 思うんです。ですから、一番問題が起こらないということであれば、(案1−2)でも いいのですけれども、そうすると提供を受けなければ妊娠できない人を排除しちゃう可 能性がまだあると思うんですね。ですから当面の間は(案1−1)としておいて、そし て、将来さらに研究が進んでいろいろわかってきたところで外していったらいいのでは ないか、もっと厳しくしていったらいいのではないかということで、当面は(案1− 1)ということをご提案したいと思います。 ○新家委員 私は(案1−2)に絞るべきだと思います。どうしても安易に、妊娠しな いからといって卵子の提供を受けてしまう場合があると思いますし、一旦緩やかな規制 をつくりますと、それを今度強めるのは私大変だと思うんです。逆に厳しくて、傾向を 見て緩めるなら楽ですけれども。ですから当面は(案1−2)、自己の卵子がない場合 だけに限定すべきです。 ○矢崎部会長 これは大分……。 ○平山委員 (案1−2)にしますと、多分卵子提供を受けたいと望まれる方のほとん どが対象外となると思います、生殖医療の現場においてのことですが。この案は、自己 の卵子が存在しない人だけですよね。不妊患者さんはみんな治療に苦しんで苦しんで何 度もやったけれどもできない、でももしかするとほかの人の卵子をもらえばできるかも しれないという期待をかけて、この治療が認められることを望んでおられる声を私は毎 日聞いています。それを「安易に」と言うのはその人たちの苦しみを非常に理解してい ない。不妊患者さんはわがままだとよく言われますけれども、そうとは言えないと私は 思います。  本当にこの医療を必要としている人は誰なのかということを、もう一度しっかり考え ていただきたいと思います。 ○渡辺委員 平山先生のご発言に対し、先生の側からの視点と、生まれた子どもを引き 受ける小児科の側からの視点があって、現実はそれは対立してしまうのですね。例えば 私が実際に不妊治療の結果子どもさんを産んだお母さんたちのカウンセリングをしてい る現場では、不妊治療を頑張って頑張ってやって、やっと妊娠した子どもたちが蓋を開 けてみたら障害児であるというケースがたくさんあるのです。それを医者は知っていた はずだ、体重が増えない時点で障害を知っていたはず、確かにいろいろリスクのことは 言われたけれどもまさか実際にこういうことになるとは思わなかった、という思いをし ている方たちの現実があるわけですね。  その確率は1000分の1であっても、1つに当たってしまった人は諦めることさえもで きないで、その赤ちゃんと一緒に過ごしていきながら、自分が足を踏み入れてしまった 現実を納得できずに苦しみ続けておられるわけですね。  結局このような現実を背負わされる女性を可能な限り守っていくことが社会的になさ れていませんと、隠された悲劇が増えていきます。この方たちは生殖補助医療を受けた お医者さんには恩がありますから、まず決して生殖補助医療の医師には語りません。私 たちがそれを聞くことになるわけですね。  不妊治療とか生殖補助医療に足を踏み入れざるを得ない女性は、その時点でリスクを 負うわけです。不妊治療そのものの持つ大変なストレスもあるし、非常な不安の中で妊 娠・出産するわけですし、仮にうまくいっても、この問題が思春期になったときどうな るかという恐れの中で育てていくわけです。ですから私はどこかの時点で、正式に社会 がこういった状況の中で生まれてくる子どもと、その子どもを育むお母さんやお父さん を社会的に承認するというシステムの中に置いてあげないと余りにも可哀相だと思うん ですね。  そういう意味では、私は先ほど才村先生がおっしゃっていたように、特別養子縁組制 度などと同じように生殖補助医療制度もちゃんと制度としてオープンにして、その制度 が決めている手順を経たご夫婦が社会的に承認されて生殖補助医療に入るという流れ を、スタートのところからやるべきだと思うのですね。不妊治療の段階で、それだけし か頭になくなってしまっている方たちの中には、うまくいかなかった場合に精神的な破 綻を起こすリスクを持つ方たちもいっぱいいるわけです。それは本人は、ここまできた 以上止められないという感じがある。そういう方に対してきちんとフェアに、よく時間 をかけて話していくというそういうソーシャルなものをつくっていかないと……。  私は女性として、女性の幸せを積極的に考えたいのですけれども、それを考えていく にはたくさんの経験と症例と、その症例を見ていくだけのシステムをつくらないと無理 だと思うんですね。  金城先生が資料として今日お出しになられた論文には、「安全性の保障されている不 妊治療」という言葉を用いて積極的に道を開こうと書かれているのですけど、安全性な んかどこにも、つまり 100分の1、1000分の1の確率の1になってしまった人にとって は安全性というものは抽象的な架空のものなわけですね。現実に私たちの小児科には不 妊治療の結果生まれた、障害を持っているお子さんたちがたくさん来ておりまして、私 たちはルーチンの仕事の時間外でそのお母さんたちを救わなければならないのです。そ のお母さんたちが精神的な破綻を起こすところまできてから、やっと私たちが呼ばれる というわけですね。  もっと不妊治療の入り口で制度上の手続きを踏んでいただくようにして、そんな手続 きを厭わない方たちがこの医療を受けていけるようにしていくべきです。ただし、私は その手続きの中身やプロセスが意地悪であってはいけないと思うのです。その手順を踏 んでくださった方に対しては、私たちの制度に入っていただいた以上、その制度として できる限りの公的な支援をしましょうと、最初からオープンサポートにしてゆくので す。  カウンセリングも、どこかで困ったときに救急車を呼ぶみたいに私たちが呼ばれるの ではなくて、問題があろうとなかろうと最初からすべての人が、その振り分けのシステ ムに入るところから皆さんに同じように入っていただこうと。そうすると、そのプロセ スを経験した女性同士は仲よくなれるのですね。その結果、古澤先生の研究のように特 別養子縁組制度はリサーチができているわけですね。オープンなリサーチができてい て、どれくらいこのプロセスに入ったおかげで、夫婦が苦しんだけれどもいい点もあっ たとか、悪い点もあったということをちゃんと科学的に研究者が入ってリサーチできる のですね。もう少しソーシャル・ネットワークをきちんとしないと、それぞれの立場か ら正反対のことを言っていて議論が噛み合わないと思うんですね。 ○矢崎部会長 また、議論がもとに戻っちゃうみたいですけれども、その議論は3ペー ジの「子の福祉の観点から」というところで「○」にして、その点については、また議 論をしたいと思っています。  今の9ページですけれども、ですから自己の卵子が存在しない場合、当面限るという のか、(案1)をするか。どちらがあれですかね。 ○石井委員 今、渡辺先生がおっしゃったこととも関連すると思うのですが、つまり安 易だというのは別に患者が安易というよりは、私は、申し訳ないんですが、お医者さん が安易に利用するのではないかと思うんですけれども、先ほどの審査のシステム、どこ がきちんとするか。きちんとしたシステムができるならば、具体的な基準、それに基づ いて公正な判断で安易な利用が防げるという形で(案1−1)という可能性もあるかと は思うんです。(案1−2)だときつすぎるということならば。ただ、そこのところが 保障できないと、先ほどから申しましたように、私は(案1−2)、当面、限るの方が いいとは思います。 ○矢崎部会長 ほかの委員の方々、どうでしょうか。 ○鈴木委員 結論から言うと、私も(案1−2)です。当面はというふうに入ってもも ちろんいいと思いますし、現実にとりあえず(案1−1)で始めてしまった場合に物理 的に大混乱になるであろうということがまず1つ。  私も先ほどの平山委員の意見も、私も不妊の当事者として悩んできた人間ですからと てもわかるのですけれども、例えば不妊治療を5年、10年続けて、なおかつ40代になっ て、卵提供を望む方というのはいろいろな問題を抱えていらっしゃることが多いなとい うのが私の10年間自助グループをやってきた中での印象なんですね。そうやって子ども をつくることで、その方の悩みの本質が解決するかというと、私ははっきり言って、問 題は実は子どもができる、できないにあるのではないというふうに思っております。子 どもができることで、その方の人生のいろんなことは実は解決しないのですね。そうい う意味では安易という言葉もある意味では当たっている。それこそ医師が、あなたたち が欲しいのだから卵提供を受ければできるよ、という形で勧めるのは非常に安易な勧め 方だと考えております。  以上のようなことで、当面(案1−2)です。 ○矢崎部会長 いかがでしょうか。 ○岩田局長 さっき合意していただいた提供精子による体外受精のところは学会の会告 などがあって、その内容が合意できたのですが、学会の会告の理解の仕方なのですが、 8ページの上のから6行目、7行目ぐらいに書いてあるのですけれども、これは原因不 明の不妊症も対象となるとなっているんですね。本件はそれとのバランスなどは考える 必要はないのかどうか、専門家のご意見をお伺いしたいと思います。 ○矢崎部会長 これはAIDとの相違だと思いますがいかがでしょうか。荒木委員か、 吉村委員。 ○吉村委員 これは体外受精の適応に関することでありまして、これは夫婦間の卵子を 用い、夫婦間の卵子と精子で行う場合のことを述べているわけでありますから、これと 違っても特に問題はないのではないか。精子をもらう場合、卵子をもらう場合にはさま ざまな問題が出てくるということを考慮すれば、これは(案1−2)であっても決して 矛盾するものではないと。例えばご夫婦で体外受精をする場合にはこういったことが原 因不明の不妊も体外受精の適応となってもよろしいですよということなので、この場合 は、人から卵子をいただくということになってまいりますと、厳しい基準であっても全 然それはおかしくない。矛盾はしないのではないかと思いますが、もし何かあれば、ま た言っていただければいいのですが。 ○岩田局長 すみません、理解が悪くて申し訳ございませんが、さっきまとめていただ いた8ページは、第三者から精子をもらって体外受精をするときの基準として、夫婦間 の体外受精の基準と同じものを採用することについて合意されたと理解してよろしいで すね。 ○吉村委員 女性側の原因がということですね。体外受精に関しては、これは女性側の 原因だというふうに、原因不明不妊の場合はそう考えていただいて。 ○岩田局長 そうですね。今ご議論いただいている卵子をもらう場合の基準として、そ ういう原因不明、機能性の問題、即ち物はあるけれども、機能に問題があるとか原因が わからないというようなケースは排除するというのは、先ほどお決めいただいたことと バランスを欠いてないかどうかということをちょっとお尋ねしたかったのです。 ○荒木委員 8ページの上は精子提供なんですね。今、議論しているのは卵子提供なん です。これは同じ提供でも、これは安全性の問題等に随分差があるわけです。卵子提供 の場合は排卵誘発剤を使って更に採卵という、ある意味では危険が伴うことになります から、別に考えてもよろしいのではないかと思います。特にそういった危険性を考慮し て厳しくしていただきたいというのが学会の見解です。 ○鈴木委員 私も多分局長の混乱している点は何かわかるような気がするのですが、つ まり一番最初の精子提供を受けられる人、カップルというところに、今学会の見解に準 ずるという話を持ってきちゃったから、機能性不妊のカップルでも、精子提供、つまり AIDは受けられるというような話に今ここなってきてしまったわけですね。精子提供 による体外受精も多分それに準ずるだろうからという話で、ただ、その場合は女性に必 ず体外受精を受ける理由がなければだめだよという話で来たのだと思うんです。 ○石井委員 AIDは原則として本法の施行は無精子症に限定されるべきである。 ○鈴木委員 べきであるというふうに学会の会告はなっているのですか。 ○吉村委員 なっています。 ○石井委員 なっている。 ○吉村委員 もちろん。AIDはそれ以外に。 ○鈴木委員 現実にはそうでない……。 ○吉村委員 いやいや、そんなことは絶対ないです。 ○鈴木委員 いや、そんなことない。絶対ないというか、いや、私たちのデータの方で は、乏精子症なのは確かでしょうけれども、ご夫婦たちで体外受精や顕微授精をやって きて、受精卵ができなかったという理由でAIDに移行されている方がいらっしゃいま すので。 ○吉村委員 それはこの適応でよろしいかと思いますけど、そういう方がいないという ことは私は言っておりません。それはAIDの適応で当たっていると思いますけれど。 ○鈴木委員 つまり、それは原因不明不妊のカップルもAIDは最終的には受けられる ということですよね。 ○吉村委員 原因不明のカップルではないですね。原因不明不妊というのは女性側の原 因であることが多いですから、unexplained infertilityという言葉は、女性側に不妊原 因がある場合を言いますから、このAIDの適応のところを……。 ○鈴木委員 ごめんなさい。そうすると機能性不妊で、例えば人工授精なり体外受精を 繰り返ししてきたにもかかわらず妊娠しない例は、このAIDの適応には入ってないと いうことなんですか。 ○吉村委員 入ってないです。 ○鈴木委員 わかりました。 ○吉村委員 AIDをする場合には、男性側に何らかの原因がないとAIDはできませ んので、女性側に機能性不妊の……。 ○鈴木委員 ということですね。 ○吉村委員 そういうご理解で結構です。  私は局長さんがおっしゃっているのは、こういう意味かと思ったんですね。男性側は 精子が少しあっても、顕微授精やってもこのAIDの適応になっているのに、女性側は 全く卵がないという人だけが適応にしかならないのか。それは女性側に対して余りにも 厳しいのではないかというご質問かなと思ったんですが。 ○岩田局長 ごめんなさい、私が混乱していたら困るのですが、今、先生の教えていた だきました8ページの上から、先ほどの7行目、8行目に書いてある原因不明不妊症と あるのは、これは女性側の原因不明の不妊症ですね。 ○吉村委員 一般的にはそう考えてくださって結構です。 ○岩田局長 そうですね。 ○吉村委員 例えば男性側に原因があれば、これは原因不明不妊にはなりません。要す るに乏精子症であれば男性不妊になりますので、よろしいでしょうか。そういった原因 がないということです。 ○矢崎部会長 むしろ局長さんみたいに、ドクターでない方が疑問を持たれて、十分理 解されないとなかなか難しいところがありますので……。 ○鈴木委員 私も確認していいですか。 ○矢崎部会長 はい。 ○鈴木委員 6ページの復習になるわけですけれども、提供精子による体外受精を受け られるのは、男性も例えば精子が少ないとかないとかの問題があって、なおかつ女性に も卵管なりに問題がある。そういう組み合わせのカップルのみということになります ね。 ○吉村委員 それは違います。 ○鈴木委員 違うんですか。 ○吉村委員 それは違います。男性側にそういった原因があって、女性側に原因不明、 体外受精……。 ○鈴木委員 体外受精の適応があるという言い方ですね。 ○吉村委員 はい。 ○鈴木委員 女性側の体外受精の適応には実は機能性不妊、例えば子宮内膜症とか、原 因はわからないけど妊娠しないというケースもあり得るということですよね。 ○吉村委員 ですから、これが認められるとすると、鈴木委員がおっしゃっているよう に、AIDをやっていた方が、妊娠できない場合に、機能性不妊となった場合には、A IDを受ける条件があって、体外受精も受けることができるような状況になります。 ○鈴木委員 はい、わかりました。 ○矢崎部会長 それと自己の卵子が存在しない場合に限るという局長のご質問は、そこ の間に齟齬がないか。 ○吉村委員 私が局長さんがそう思われたのではないかと思ったのですが、そうではな かったような感じを私は受け取っているんですけれども。 ○矢崎部会長 それでは、9ページの「●」ですけれども、(案1−2)で、「自己の 卵子が存在しない場合に限る」というと永遠に限りますから、「当分」という字を入れ させていただいて、「当分の間、限る」ということで、(案1−2)を生かしていただ ければというふうに思います。  次は「提供胚の移植」でございますけれども、これは極めて大きく分かれて、ごめん なさい、室長さん。提供胚を認めるというのと認めないというのと、もう極端に分かれ ています。それでどうも私も議事録を読み返しますと、何となく専門委員会は認めると いうことで出発していますけれども、ご意見見ると、当分の間は認めないというご意見 が多いようですけれども、これに関して、これは金城委員が言われたように、子を持つ 権利とか、そういう話も大きくかかわってきますので、きょう時間がございませんの で、一応これは次回にさせていただいて、またご議論をいただければと思います。次回 もこの重たい問題から、9ページから入らせていただきます。  事務局から何か。 ○谷口母子保健課長 すいません、質問といいますか、確認をさせていただきたい事項 が2つばかりございますので、よろしゅうございますでしょうか。 ○矢崎部会長 どうぞ。 ○谷口課長 4ページでございます。優先順位のご検討の中で、一応(案2−2)とい うふうにおまとめいただいたかと理解しておりますけれども、例えば括弧内をとるよう にご指示もあったかと思います。それでまとめさせていただきたいと思いますけれど も、例えば前提としてポイント制といったようなものを、こういった場合に導入すると きにかなり詳しい基準を多分つくっておかないと実際問題として難しいとは思うのです けれども、例えば医学的にどういった基準みたいなものができるかといったものにつき ましては、何か学会の方で、これまでご検討されたようなことがあったのでしょうか。 それがあれば、非常に我々としても整理がしやすいと思うのですけれども。 ○荒木委員 今まで検討したことはありません。 ○谷口課長 それはこれから。 ○荒木委員 その発案の根拠は臓器移植から出ているのですね。私どもは臓器移植とこ の生殖補助医療とは別個に考えており、臓器移植に関することを参考にしての検討や、 または参考にしようというような意見はないので検討しておりません。ポイント制を含 めて。 ○矢崎部会長 なかなかポイントは難しいかもしれませんね。 ○谷口課長 現実問題ではないという。 ○矢崎部会長 だから、これでまとめていただいて、また、もう一回の議論のときに、 また課長さんからご指摘いただいてもいいかと思いますので。 ○谷口課長 わかりました。もう一点、よろしゅうございますか。 ○矢崎部会長 はい。 ○谷口課長 9ページでございます。「卵子の提供を受けなければ妊娠できない」とい うところで、医師の裁量で、(案1−2)の方、こういう形でまとめていただいたかと 存じますけれども、その際に、「自己の卵子が存在しない場合に当分の間、限る」とい うことであった場合に、その場合の医学的な証明というのは、これは専門家から見れば 簡単な話なのだというふうに理解してよろしゅうございますでしょうか。 ○吉村委員 厳密には大変難しいと思いますが、医学的には検査をすることによって、 例えば卵巣から一部バイオプシーをすることによって卵子がないということを確認する ことは簡単です。それから、ある程度、ゴナドトロピンの値によって判定することはで きます。  しかし、卵巣を全部とって調べるわけにいきませんので、とってしまったらなくなっ てしまうわけですから、そういうことまで言い出すと厳密に言うと難しいということで すが、そういうことは可能です。 ○谷口課長 わかりました。 ○吉村委員 その場合に基準を、腹腔鏡をやって、卵巣を生検しなければならないと か、そういったことをまた医学的に決めますと、これはまた大変になってくる。実際に これをやるにはそうしなくちゃいけないのかと。それはある程度医師の裁量に任せてい ただいてよろしいのではないか、そういうふうに思うのですが。 ○谷口課長 今、最後のお言葉が、部会のご意見だというふうに理解させていただけれ ば、我々としてはそれで問題ないと考えます。 ○矢崎部会長 物理的に卵子がないと証明するのはなかなか難しくて、臨床的に判断す るということでとどめていただければ大変ありがたいと思います。 ○谷口課長 ありがとうございます。 ○矢崎部会長 それでは、事務局からよろしくお願いします。 ○桑島室長 次回の当部会の開催の予定をご連絡申し上げます。次回は12月21日(金曜 日)の14時から17時までの予定とさせていただきたいと存じます。場所につきまして は、本日と同じ場所でございまして、厚生労働省5階の共用第7会議室でございます。  なお、毎回先生方にお願いしてございますが、各委員のご意見やご指摘を引き続き、 メールあるいはFAX等で事前に頂戴できればと思ってございます。申し訳ございませ んが、締め切りは12月19日(水曜日)午前中まで頂戴できればと考えてございます。事 務局からは以上でございます。 ○矢崎部会長 どうもありがとうございました。参考資料として、11月3日から26日ま でお寄せいただいたご意見がまとまっておりますので、また後で見ていただければと存 じます。  それでは、本日もご熱心なご討議ありがとうございました。また次回もよろしくお願 いいたします。  どうもありがとうございました。                     照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課                          03−5253−1111(代)                              桑島(内線:7933)                              小林(内線:7939)