01/11/29 社会保障審議会 第3回人口部会議事録             社会保障審議会 第3回人口部会 ○日時    平成13年11月29日(木)16:02〜18:02 ○場所    厚生労働省 省議室(9階) ○出席委員    廣松 毅 部会長    〈委員:五十音順、敬称略〉     阿藤 誠、市川 尚、岩渕勝好、駒村康平、高橋義哉、山崎泰彦、     山田昌弘、雪下國雄    〈オブザーバー〉     中央大学経済学部 和田光平 助教授    〈事務局〉     石本宏昭政策統括官、河 幹夫参事官(社会保障担当)、小川 誠政策企画官、     国立社会保障・人口問題研究所人口動向研究部  高橋重郷部長、            〃      社会保障基礎理論研究部第4室 加藤久和室長 ○議事内容 1.開会  小川政策企画官  定刻を若干過ぎましたので、ただいまより第3回社会保障審議会人口部会を開会いた します。  議事に入ります前にお手元の資料の確認をさせていただきます。  配席表、議事次第のほか、  ・資料1−1 「将来人口推計と経済・社会環境」  ・資料1−2 「結婚・出産行動の社会経済分析」  ・資料2−1 「少子化の見通しに関する専門家調査」速報結果  ・資料2−2 「少子化の見通しに関する専門家調査」参考資料  ・資料3−1 「将来人口推計の方法と仮定設定」説明資料  ・資料3−2 「目標コーホートの仮定設定」  ・資料3−3 「将来人口推計の方法と仮定設定」参考資料  ・資料4−1 「参考資料」  ・資料4−2 「平成12年国勢調査第1次基本集計結果 結果の要約」 となっております。  このほかに12月の日程調整表がございますので、委員の皆様の日程についてご記入を お願いいたします。なお、日程調整表につきましては部会終了後、事務局で回収致した いと思いますので、机の上に置いたままにして頂きますようお願いいたします。  なお、本日は秋山委員、小川委員、小宮委員、津谷委員、永瀬委員、長谷川委員、向 山委員、山路委員につきましては、ご都合によりご欠席とのことです。また山崎委員に つきましては、遅れてご参加との連絡を受けております。  すでにご出席頂きました委員の皆様方が3分の1を超えておりますので、会議は成立 しておりますことをご報告申し上げます。それでは以後の進行につきましては、廣松部 会長にお願いいたします。  廣松部会長  委員の皆様方、お忙しいところをお集まりいただきましたどうもありがとうございま す。本日の審議はお手元の議事次第にありますとおり2つございます。1件は報告聴取 で2件目が将来人口推計の方法と仮定設定でございます。 2.報告聴取  廣松部会長  早速でございますが、議事に入らせていただきます。まず報告聴取ですが、1番目は 将来人口推計に関する調査・分析というかたちで、前回、問題提起がございました「結 婚・出産行動の社会経済分析」でございます。それから2番目に「少子化の見通しに関 する専門調査」がなされておりますので、それをご報告をいただく予定にしております 。  まず、「結婚・出産行動の社会経済分析」について、国立社会保障・人口問題研究所 の社会保障基礎理論研究部の加藤久和室長の方からご説明をお願いいたします。よろし くお願いいたします。 (1) 結婚・出産行動の社会経済分析  加藤室長  それでは説明をさせていただきます。お手元の資料1−1「将来人口推計と経済・社 会環境」という1枚の紙をご覧いただければと思います。皆さんご存じのように、人口 というのは経済・社会環境に応じて、社会・経済要因といったものが人口に影響をする という一方で、また社会経済環境も人口に影響を与えるというような相互依存の関係に なっております。お手元の資料1−1の右側に経済・社会環境ということで、人口に影 響を与えるというふうに考えられているいくつかの要因というものが載せられておりま す。例えば家族・世帯形成の変化であるとか、結婚・出産に対する意識であるとか、女 子労働の変化等々がございます。現実問題として、こういった経済・社会環境は人口に 影響を与えるわけなのですけれども、しかしながら出来上がったと申しますか、こうい った影響を人口というのは実際に受けまして、すでに我々が観測している人口の諸デー タそのものは、1つの考え方として、こういった経済・社会環境の動向を裏付けて、そ の影響を含んだ結果の数字であるというふうに考えることができるわけであります。し たがいまして将来人口推計を行う場合に、経済・社会環境を中心に取り出して人口推計 をやるというよりも、将来人口推計を人口学的な方法によって行うということは、決し て経済・社会環境をないがしろにしているものではないというふうに考えることができ るわけです。  なお、これからパワーポイントで資料1−2をご説明申し上げさせていただきたいと 思いますが、こういったような考え方に基づきまして、世界では一般的に人口予測とい うのは人口学的な手法に応じて説明を行っていくというのが一般的なところであります 。それにつきまして、さらに詳しく資料1−2をご説明申し上げます。  お手元の資料1−2をご覧いただきたいと思いますが、我々は将来人口推計を行う時 に、人口学的な手法を使って物事を見ていくということを主張しておりますけれども、 そういって経済・社会環境の要因というものをないがしろにして、まったくそういった 材料を持っていないかということではなく、ある程度、こういった経済・社会環境とい ったものを含めた分析というのを行っております。それについてご紹介したいと思いま す。資料は上下で2枚になっておりますが、パワーポイントの方を見ていただきまして 、次のページ、資料でいうと2ページ目になりますが、パワーポイントの方を見ていた だければいいかと思います。  先ほど申し上げましたように、例えば人口と経済社会の関係といったものを簡単に図 式化しますと、人口の動向といったものが、例えば労働市場であるとか、消費・投資・ 経済成長であるとか、さらには財政・社会保障と様々な分野に影響を与えるわけであり ます。一方、経済成長あるいは女子労働の変化、結婚・出産の機会費用、あるいは政策 等の問題、そういった効果ですね。こういったものをやはり人口に関する結婚であると か出生に影響する。それは人口と経済社会というのは相互依存関係にあるというふうに 考えることもできるわけであります。例えばそうした場合に、経済学からこういった人 口変動を見ていく。あるいは社会学等からこういった人口変動を見ていこうという考え 方もあるわけです。  そこでこういった考え方をもとに、我々としては経済・社会環境の中から人口変動を 説明するようないくつかの計量モデルをつくっております。その中で一番最新のものが これに当たるわけなのですが、これからご説明しますモデルというのは、結婚動向とい ったものから出生を説明するという基本構造になっているのですが、しかしそういった 結婚動向については、経済社会的な要因といったものを中心に見ていこう。これは通常 の連立方程式モデルということで、いくつかのそういった結婚や出生の決定要因を、い っぺんに決定させてやるというようなタイプのモデルであります。現在考えているのは 、方程式が大体47本ぐらい。1975年から2000年ぐらいまでの期間をもとに、もとのデー タ使ってその動向を分析しようというものであります。  基本的にはいま申し上げましたように、最初には経済・社会要因から初婚数、初婚率 をとって、結婚についての動向を考えていきます。それと離婚と再婚がどうなっている かということも考えていきます。そうなりますと、結婚が決まりまして、離婚、再婚が 決まりますから、現実の世の中にいます有配偶女子人口というのが決定される。有配偶 女子人口にさらにまたこれに経済・社会要因を考えて、出生といったものを考えていく というようなモデルになります。  具体的には、こういうような構造になっています。四角で囲んだものがモデルから決 定されるような変数であります。例えば初婚率であるとか再婚率、そして下の方にあり ますが、出生数とか出生率、基本的にこれを決定していくために有配偶女子人口を決め てあり、初婚あるいは再婚、離婚というものも決めてある。そういった再婚、離婚等を 経済関係、経済・社会事情から決定していこうというモデルなわけです。因みにまたあ とでこれをご説明する時に重要になるのですが、この丸で囲んだ部分がありますが、こ れはモデルの外側から決まってくる変数であります。  初婚については、このモデルでどのようなかたちで決定しているかということになり ますと、1つは女性が一生ずっと結婚しないで働いた場合と、そしてある程度の年齢で 結婚して家庭に入り、またそこで就業を行うか行わないかといったことも含めて、一生 を過ごした場合、その両者のライフサイクルを比較して、どういうかたちでコストが違 うかといったような未婚コストというのを計算し、あるいは大学の進学率ですね。さら にこのモデルでは、若い時に結婚が少し遅れた方は、あとで結婚を取り戻すであろうと いうようなメカニズムを取り入れております。さらには労働市場ですね。需要面でいい ますと失業率の動向、供給面ですと働き方、労働力率、さらに賃金格差、社会保障とい ったものを考慮して、結婚をするかしないかといったものをモデルから決定している。  次にこういった初婚というものを決めてやって、さらに離婚、再婚を決めるという配 分の指針が決まってくるわけであります。そうしたかたちで現在結婚している、ご存じ のように99%の出生児が結婚の中から産まれてきますので、結婚を決めてやることによ って出生を決めやすくなる。ただし、有配偶女子人口だけで考えていきますと、夫婦の 出生力というのが一定ということになってしまいますので、それにも経済要因、女子賃 金水準、これは子どもの機会費用というものの代理変数であるとか所得であるとか保育 所の環境、あるいは働き方の問題等々を含めて、出生を決定するというようなモデルに なっています。  モデルのパフォーマンスですが、こういったモデルでどういうことができたかという ことをこれからご覧いただきたいと思いますが、こういったモデルは経済・社会環境を 使っているということで、各歳別の推計というものができません。したがいまして5歳 階級別に初婚率であるとか離婚率、出生率といったものをモデルから決定してやり、そ れを同時に解いてやった時に現実とモデルからの予測値がどれだけ違うかといったもの を示したのがこの表であります。例えば20〜24歳の初婚率につきましては、2.66%の誤 差がある。逆にいえばこういったモデルでは5%以下で大体収まっていれば、特に問題 ないというふうによくしばしば言われているものですから、モデルから初婚、5歳階級 別の初婚であるとか、5歳階級別の離婚率であるとか、5歳階級別の出生率を計算し、 最後に合計出生率を推計したところで、現実をほぼうまく説明できるようなモデルが一 応できております。  例えばこれが年齢5歳階級別の初婚率の動向でありますけれども、ちょうどこの20歳 から24歳、25歳から29歳、あるいは30歳から34歳というかたちで、5歳階級別の初婚率 を追ったものがこれです。ちょっと見づらくて申し訳ないのですが、例えばこれは20歳 から24歳の初婚率、ちょっと紫がかった青ですが、これが現実のデータで、それをモデ ルではこのちょっと赤い四角で囲ったもので追っていくというようなかたちになってい ます。この下の30歳から34歳ですが、ここはほぼ完全に追っているということで、モデ ルから1980年から2000年ぐらいまでの動向については、ある程度追うことができたとい うのがこの図であります。  次が合計結婚率ということで、これは合計出生率に因んだものでは、ある時点で見た 生涯未婚率というものと、ここからここまでの差がある時点で見た生涯未婚率というも のを見ていただければいいかと思いますが、これについてもほとんど追っている。  それから出生率についても、これも20歳から30代前半、5歳階級別ですが、ほとんど 過去の動向については同じで、これが一番問題の合計出生率ですが、合計出生率につき ましてはこれもほとんど同じで、モデルから過去の外挿テストについては、これはファ イナルテストというものですが問題なくできたということで、一応、国立社会保障・人 口問題研究所としては、経済・社会関係と人口の動向というものを説明するといったよ うな試みも一応備わっているということの紹介であります。  さて、それではこれがあるからといって、将来予測ができるかとうかという問題を簡 単にご説明したいと思います。そもそも先ほどの資料の1−1でお話を申し上げました ように、人口予測といったものは、基本的には人口学的な方法によって行っております 。例えば先生方の中にはご存じのように、多数の計画経済モデルがございますが、その 中では、特に人口というのは外生変数として扱われている。将来像をいろいろと描く時 のベースになっているということで、人口というのは扱われております。  さらに人口学的変数、ここでは出生率とか初婚率といったものが、先ほどありました ように、それ自体が出生率や初婚率が経済・社会的要因そのものを反映した変数である というふうに見ることもできると思います。そういったことを踏まえますと、人口の将 来趨勢を経済・社会的要因から直接推測することは実は極めて難しいということで世界 的に見ても人口学的方法による予測というのが一般的なかたちになっています。  では、どこが難しいのかということなのですが、例えば形式人口学のかたちで予測す る場合の1つの特徴ということなのですが、現在、我々が持っているデータとして、現 在の年齢別人口分布等があります。これが実は将来予測を行う時に重要な鍵を握ってい るわけでありまして、経済・社会関係で使って、1からやるよりも現実の年齢別人口分 布があるところから始めるというのは、非常に大きなベネフィットといいますか利点を 持っている。2つ目は、年齢別に見た出生率や初婚率の変動というのは、実は他の経済 ・社会変数の変動よりも非常に小さくなっている。ですから経済・社会変数が大きく変 動するのに比べて、出生とか初婚といったものは変動が小さいわけですから、直接出生 、初婚から見た方が、実は非常に確実なことが言えるということになります。さらには 長期的に見ても、年齢別出生率の方は固有のパターンを有しておりますので、そのパタ ーンを把握するのが大事だということ。人口というのはコーホートを基準にして分析す るものですが、経済・社会関係の変数というのは、ピリオドといいますか期間を基準に しているのです。ですから例えば各歳ごとのデータというのは、なかなかなかったりし ていて非常に扱いづらいというような特徴があります。  例えばいま我々がそういったモデルを持っていて将来予測をするというと、どういう かたちになるか。最初に見ていただいた経済・社会環境の先ほどの図の中で、これはお 手元の資料でいうと3ページのところにあるのですが、外生変数ということで、モデル は外側で動いてしまうような、モデルは外側で決まるような変数を先に設定してあって 、それでこのモデルを動かすという作業をしなければいけないわけです。そうするとこ れは予測に伴う諸問題としていくつかあります。まず、いま我々の出生モデル、社会・ 経済環境から先のことを考えてつくってきたと。例えば将来のGDPはどうなるか、あ るいは将来の賃金はどうなるのだろうということを先に決めなければいけないわけです ね。さらにGDPとか賃金水準を決めるためには、それ自体をまたモデルに入れなけれ ばいけない。今度はそれを賃金とかGDPを説明するために、また違う変数を持ってこ ないといけないという堂々巡りの問題が起きてしまいます。  さらには外生変数を設定するために妥当なシナリオを、現在のなかで非常にいま構造 変化が起きているこの将来を見ます時に、中で定量的に描けるかどうかということは非 常に難しい問題で、さらに機械的に外生変数をつくろうということで様々な統計的な手 法がありますが、これもなかなかそう簡単にはできないということで、こういったモデ ルというのは、なかなか超長期での予想はできない。人口の場合には2050年から、さら には2100年ぐらいまで、参考推計ということでやってきたものが、こうしたモデルを超 長期で使うということは、なかなか難しいだろうという問題が1つ目にはあります。  もう1つは、よく言われておりますが、このモデルというのは過去1975年以降、現在 にかかる行動を観察した中でつくっていたモデルです。ですからその構造変化が今後起 きた場合、どうするのか。因みに労働供給と出生行動は現在負の関係、つまり女性は労 働供給を増やそうとすると出生率は下がるという関係があるわけですが、これが政策的 に改善されると、このモデルそのもの自体をそのまま使うことはできないといったよう な問題点もあります。  さらには、これはルーカス批判と言われておりますが、我々が今後こうなるだろうと いった期待とか意識の変化そのものを、このモデルに取り入れることはなかなか難しい ということで、将来の構造変化を考慮することは難しい。さらにこのモデルでは、5歳 階級別のデータ以外に、やはり将来の人口といったものを予見としてつくっていくとい うことで、実際問題としてちょっといまの段階で、将来推計というのは難しいわけです が、しかしながらなぜここでご紹介するか、難しい難しいというものをなぜここでご紹 介したかというと、やはり最後にいままでの議論の中にありましたように、人口学的な 予測をやった上で、その値といったものが、将来の経済社会の動向ですね。そういった ものにどういうような関係があって、どういうかたちで実現の可能性があるのかという ことを、事後的にサポートするために、こういったモデルをつくっていくということで あります。  さらには社人研の中でも今後、人口問題、これは経済・社会の関係を考えていく上で も、重要なツールとしてこういったモデルをつくっていくということなのですが、実際 問題としては、直接予測までは伝えづらいというところがあるということで、以上でち ょっと拙いのですが説明を終わらせていただきたいと思います。  廣松部会長  ありがとうございました。質疑に関しましては次の報告とまとめてお願いをしたいと 思いますので、引き続き報告聴取を行いたいと思います。2番目のご報告は「少子化の 見通しに関する専門家調査」です。これにつきましては和田光平中央大学経済学部助教 授からご説明をいただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。 (2)「少子化の見通しに関する専門家調査」  和田助教授  中央大学経済学部の和田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。「少子化の 見通しに関する専門家調査」の速報結果についてご報告させていただきます。お手元の 資料がございますけれども、パワーポイントで、まず調査の概要ですけれども、皆様方 には先般ご承知のように、70年代後半以降の少子化問題に関する出生率の低下の問題は 極めて今後の見通しが難しいということがあります。またその対策や有効性や必要性が どの程度専門家の間では認識されているのかということを大掛かりに調査しようという ことで、その将来予測や少子化に関わる施策、予測の方向づけの指針とすることを目的 としております。  調査の方法、時期、対象に関しましては、まず時期に関しましては、本年の7月中旬 から8月にかけて郵送による配付・回収方法。調査対象は様々なフィールドをお持ちで しょうけれども、人口学、経済学、社会学、公衆衛生等の専門家を対象に偏りがなるべ くないように748名を対象として実施いたしました。有効回答数は329票で、有効回収率4 4%ということです。  調査主体に関しましては、少子化研究会というメンバーが厚生労働省の政策科学研究 推進事業平成11年から13年の「少子化に関する家族・労働政策の影響と少子化の見通し に関する研究」を中央大学教授の大淵寛先生をキャップとする社会経済モデル班によっ て行われました。  回答者の基本属性でございますけれども、男性が76%、女性が22%。年齢に関しまし ての分布はグラフにある通りほぼ全般的にまんべんなく、平均年齢は53.8歳です。  内容に関してなのですが、まず大枠といたしまして「少子化の今後の趨勢がどの程度 続くのか」ということを率直にうかがったところ、「少子化はいずれ止まって出生率は 回復に向かう」といういわばキャッチアップのようなイメージをお持ちの方は18.2%に しか過ぎなかった。一方この大きく緑の所ですけれども、「少子化は今後も持続するだ ろう」というふうに答えた人が7割以上も専門家の中でいたという回答結果を得ており ます。  その結果、様々な社会的あるいは経済的、その他国民における価値意識、家族規範な どについて、どういう影響が及ぶのであろうかという今後の見通しについて聞いており ます。今後25年間という限定をつけたわけですけれども、いま申し上げましたような各 種状況の見通しがどうなるのかということを伺いました。  まず最初に経済状況についてどうなのかということに関しましては、図の3−1にあ りますように、実質経済成長率、完全失業率、貯蓄率とも、悪化する方向に進むのでは ないか。これはお手元の資料には、このパワーポイントでは切れておりますけれども、 ちょっと見方がやや工夫が要るのですけれども、真ん中の明るい帯がありますね。この 黄色い帯の中心を真ん中に持っていきまして、それぞれ低下する方向が左。悪化する方 向と言ってもいいわけですが、低下する方向が左。上昇する方向がこの場合は完全失業 率は上昇するのが悪化と言うことになりますけれども、右側にずれてその割合を示して いるところです。一番左の黒い部分は、低下するというふうに答えた所です。その次の やや深い濃い緑の部分はやや低下すると、そして明るい緑の部分は変わらないという所 です。薄い緑の所につきましてはやや上昇する。白い所は上昇するというふうに断言し た所です。したがいまして、グラフのセンターラインから左側にきているものは低下、 右側にきているものは上昇というふうにご覧下さい。  結果につきまして、もう一度申し上げますが、実質経済率は景気の動向に大きく影響 するでしょうけれども、低下する方向に大きく出ている。失業率もいわば裏腹の関係に あるわけですが、上昇する方向がやはり強いのではないか。貯蓄率、これは少子高齢化 に伴いますとどうなるかというのは、やや研究者の間でも意見が分れるところでありま すが、やや低下する方向に動くのではないかという見通しが示されたわけです。  続きまして労働環境の将来見通しです。これは女性労働と少子化という問題が関わっ てまいりますので聞いた部分なのですが、「育児期間もフルタイムで働く女性の割合が 増えるかどうか」ということに関しましては、「増加する」あるいは「やや増加する」 と答えた部分が大きく右側に出ている。それからパート、アルバイト、あるいは派遣、 嘱託のような「非正規就業の女性が増えるかどうか」ということに関しましても、やは り増加の方向。男女の賃金格差が大きくなるのか小さくなるのか」ということに関しま しては、減少の方向に大きく振れている。労働時間、これは必ずしも女性と限らないの ですが、全般的に労働時間のほうも減少するのではないか。これはやはり景気とリンク する話ですので、一般的に少子化だけではないかと思われますが、こういうふうにどう してもなっていくということです。  続きまして、これは景気とも絡むわけですけれども、人口減少、特に労働力人口の減 少等に伴いまして、外国人労働者、最近ですと補充移民などという言葉もございますが 、この外国人労働者の受け入れ問題の将来の見通しはどうなるだろうか。単純労働、技 能労働、いずれも増加する方向、やや増加する方向になるのではないかということで、 大きく右側に振れているということです。  ここまでが経済・社会状況のなかでも経済状況ということだったのですが、続きまし て性あるいは生殖をめぐる環境についてはどうかということです。そこの左側の項目は 一目でわかるのですが、ピルの使用、これはやはり増加、やや増加のほうに大きく振れ ています。それから体外受精による出産、これもここ20年間大きく増えるのではないか 。それから男女の性別産み分けも今後大きく進むのではないか。10代の出産も大きく進 むのではないかということが専門家の間では認識されている。  続きまして、生殖能力の将来の見通しです。上が女性、下が男性です。いずれも低下 するのではないかということが見通しとしては示されています。今回の専門家調査には 公衆衛生の専門家も含まれておりますので、その方々からの意見も当然ここに反映され ていると思います。  続きまして家族規範、最近ですと価値観変動仮説などのように、少子化と価値観ある いは家族、伝統的な家族の考えというのが変わっていくのではないかということが考え られるわけですが、まず初めに「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」という考えが弱 まるか強まるか。これは左側に行きますと弱まる、右側に行きますと強まるのですが、 弱まる、やや弱まるというところで、9割以上を占めてきている。それから「子どもが 小さいうちは母親は育児に専念すべきだ」といういわゆる3歳児神話を反映するような 質問ですが、これも弱まる、やや弱まるのほうに大きく左に振れているということです 。それから「年とった親は子どもが面倒をみるべき」、いわゆる老親扶養義務という言 葉がありますが、それに関しても弱まるというふうに答える、やや弱まるというふうに 答えた方が多かった。それから同棲問題ですね。男女が一緒に暮らすなら結婚すべき、 これは法律婚というわけですが、結婚すべきという考えを持っている見通しに関しまし ても、弱まる、やや弱まるのところに大きく振れている。「子どもは法的に結婚した夫 婦の間で産まれるべき」という、いわゆる嫡出、非嫡出の問題ですが、これも今後弱ま るのではないかというふうに専門家は見ているということです。  最後になりますが、家族形成ですね。一般的には結婚が多くしているわけですが、離 婚、あるいは晩婚化、晩産化、無子化に関する質問項目です。30代前半の女性の未婚率 が今後どうなるかということに関しましても、これは上昇、やや上昇というところでか なり大きく右側にずれています。それから離婚率に関しましても、これも大きく今後の 見通しとしては高くなるだろうと。それから同棲の割合も同様に高くなるだろう。それ から未婚者のうち、親元で暮らす者の割合、パラサイトシングルのような状況が考えら れるわけですが、これもやや多くなるのではないかということが専門家の間で認識され ているということです。  それから子どもを持たない夫婦の割合も増えてくる。第1子出産年齢が35歳以上の割 合、これがいわゆる晩産化を表すわけですが、これも大きく右側のほうに上昇傾向が続 くだろう。それから婚外子の割合も上昇、増加するということ。  その結果、ここまでが見通しでありまして、続きまして人口指標が今後どういうふう な動向を示すのであろうかということについても、率直に調査、質問したわけですが、 話としては2つ大きくありまして、1つは女子コーホートの出産期のコーホートがどう いう動きを占めるか。これはいわば出生側の話ですね。それから死亡面の話で、どうい うふうに今後どう動向が進んでいくのかという2つの話です。まず出生面の話といたし まして、まず初めに1985年生まれ。現在でいいますと誕生日を迎えていれば16歳ですが 、迎えていなければ15歳の女性のコーホートに関しまして、3つの指標を聞いています 。平均初婚年齢・生涯未婚率・完結出生児数です。一般的に人口推計を行う上でのコー ホートに必要な仮定は出生面ではこの3つですが、これについて聞いております。標準 偏差は当然、データのばらつきを示すわけですが、注目していただきたいのはこの平均 値ですね。平均初婚年齢は1985年生まれの女性コーホートの平均初婚年齢、最初の結婚 が平均して、これは28.2人ではなくて、28.2歳ですね。失礼しましまた。28.2歳。それ から生涯未婚率は15.8%。一生の間に結婚しない、結婚の経験がないというのが15.8% になるのではないかと。まだ当然15歳、16歳ですから、これからどのくらい結婚するの かどうかは、あくまでも予測ですが、生涯未婚率は15.8%程度だと。それから一生の間 の子どもの数。完結出生児数に関しましては1.76人ということです。これは当然、専門 家の調査からでた平均値ですので、参考になるような人口推計とはまったく独立した値 ですが、こういう結果が得られます。それから死亡面でいう平均寿命に関しましては、2 050年時点の日本の男性の平均寿命の予測ですが、専門家にうかがったところ79.3年、 女性が86.1年ということで、社人研の平成9年推計は2050年の仮定値が79.4年でしたか ら0.1歳。女性に関しましては、社人研の平成9年推計では86.5歳でしたから、0.4歳短 いという回答が得られたわけです。  以上がこの専門家調査の結果になるわけですが、これと併せまして、同じようななる べく比較できるような調査に関しまして、専門家以外のいわば一般の方々にうかがうと いう一般調査も現在鋭意進めております。またこの専門家調査の内容というのは、これ は本当に大掴みのところですので、もっと細かいデータも得られておりますので、それ に関しては論文あるいは報告書等で今後報告される予定になっております。以上でござ います。  廣松部会長  どうもありがとうございました。それではいまご報告いただきました2件に関しまし て、ご質問、ご意見がございましたら、ご発言いただきたいと思いますが、いかがでし ょうか。  高橋委員  最後に専門家調査のことで、1985年のコーホートという未婚率、平均初婚年齢の数字 があったのですが、これは専門家の方がどう考えているかを書いてもらったその平均と いうことで、データ的に計算なさったわけではなくて、そういうことでいいですか。    和田助教授  はい、そうです。単純な平均でございます。  駒村委員  細かいのですけれど、加藤さんのご報告の資料の6ページで、ファイナルテストで期 間がこれは75年から2000年と、80年から2000年と違うというのはどういうことなのかと いうことと、それから5%というのは1つの目安とおっしゃったのですが、30〜34歳が7 .78%の誤差率で、こういうのは下の図の中では出てこないのでしょうか。図ではこの3 0〜34歳はかなりフィットはいいような感じもしますが。  加藤室長  一応、推定は基本的には75年から2000年なのですね。ただ、一部データが75年から80 年がないものですから、全部データが揃った80年から2000年でファイナルテストをやっ ているというのが1つ目のお答です。それから2つ目は、これはあくまでも最小二乗誤 差率なので、単純に平均誤差率といいますか、ただ単に下にありますように線が重なっ ているかどうかというようなのを見ますと、これはもう非常に低い。1%とか2%以下 の値になっていまして、これは最小二乗誤差率は乖離の幅を二乗して、全部合計してル ートを取っているということで、非常に大きめにちょっと出ています。ですから単純な 乖離差ではないのです。ということです。  廣松部会長  他にいかがでしょうか。私から簡単な質問ですが、加藤室長にご説明いただいた経済 、社会環境を取り込んだモデルに関して、社人研の方でどれぐらいの研究というか、モ デルのフォローアップや改良をなさっているのでしょうか。  加藤室長  このモデルそのものは5年ぐらい前からずっと。ただ、実はこれ、いま社人研なので すが、外でやっていたものも入っています。いま社人研の中でも計量経済モデルを経験 がある人間が何人か入っておりまして、その中でやっておりますので、ある程度経験は 積んできているのではないかと思います。  廣松部会長  ありがとうございました。他にご質問がございますでしょうか。いずれも大変興味深 いご報告で、このような問題意識をまさに今回の将来人口推計の参考資料として有効に 使えればというふうに思います。他によろしゅうございますでしょうか。それではとり あえず報告聴取に関しましては以上にさせていただきまして、もしご質問等がございま すれば、後ほど自由討議の時間をとりたいと思いますので、その場でご発言いただけれ ばと思います。 3.将来人口推計の方法と仮定設定  廣松部会長  次に本日の主たる議題であります「将来推計人口の方法と仮定設定」に移りたいと思 います。前回から大変詳しくご説明いただいておりますが、それをさらに詰めた形で、 本日、将来人口推計の方法とその仮定の設定について、ご説明をいただきたいと思いま す。国立社会保障・人口問題研究所の高橋重郷人口動向研究部長の方からご説明をお願 いいたします。よろしくお願いします。  高橋人口動向研究部長  それでは私の方から「将来人口推計の方法と仮定設定」ということで、お話しさせて いただきます。お手元にあります資料3−1をベースにして、いまからパワーポイント でお見せするものでありまして、まずそれについてお話をして、そして資料の3−2に 関しましてはパワーポイントではなく、紙に基づいてご報告させていただきます。それ ではまずこちらのパワーポイントの方でありますけれども、まずこちらで報告する内容 に関して申し上げますと、まず第1に将来人口予測のための基礎資料ということでござ いまして、これは基準人口が出たことでありますので、これに関する説明。それから2 番目は、今回新しく用いますリー・カーターモデルというものがあります。将来生命表 の作り方でありますけれども、それを実際に1995年までのデータに基づいて、2000年ま で推計すると、具体的にこのあてはまりがどうかということが宿題としてございました ので、その検討を行う。それから2番目として、今回の中心的な課題であります目標コ ーホートと合計出生率に関わる部分の報告を、まず第一にコーホート特殊出生率の構成 要素に関すること、それから2番目に年齢別未婚率、並びに生涯未婚率の動向に関する こと。それから3番目に夫婦出生力の動向がどうなっているのかということ。それから 4番目に離婚や死別といったものが与える影響、効果係数について、どのように推定し ていくかということ。それらを順に追って説明させていただきます。  まず最初の平成12年国勢調査に基づく基準人口であります。国勢調査はその中に年齢 不詳人口を含んでおります。したがいまして実際に人口推計をする場合には、そりぞれ の年齢別人口が明確に把握されていないと推計の場合、年齢不詳人口が予測できません ので、それを補正したものがこの図に示してある図ということになります。ちなみに年 齢不詳人口というのは、そこに数値で示してありますように、228,561人です。この不 詳人口をこの基準人口をつくる際の都道府県別年齢別人口によって、それぞれ年齢別に 補正して、それを全国に積み上げたものが最終的にここで出来上がっている人口であり ます。  さて次に、生命表に関わる点ですけれども、この図に示してありますのは、1960年か ら2000年までの平均寿命の動向でございます。将来生命表に関しましては、今回リー・ カーターモデルという方法によって、1995年までの実績のデータを使いまして将来を延 長し、2000年までの推定を行いました。その結果、この比較図では何を示しているかと いいますと、修正リー・カーター法で作り上げました1999年の男子の生残率、それから2 000年の男子の生残率と、それから平成9年推計の生残率がございます。それと、実際に 1999年の生命表で観察されたデータの比率を出して、100%のところで示したものです。  まず1999年に関して見ていただきますと、実はいわばこちらの年齢の高いところでブ レが生じます。現実のデータというのは、毎年毎年の偶然変動を含みますので、モデル によって推定したものと比べて、例えば1990年男子の場合は、実際値よりも若干高めに 出ている。修正リー・カーターモデルでやっても高めにでる。前回推計において用いま した生命表でやっても高めにでるのですが、年齢層の高いところ、95歳以上のところで 逆に誤差が大きかったことが分かります。  2000年の男子について見ますと、今度は下ブレをしてしまいます。2000年の場合は死 因別死亡で特異な年でありまして、非常に死亡率が低かったという事情がございます。 インフルエンザ等の流行が少なく死亡率が低かったということがございます。そういう ケースについてはモデルによって推定したものが下ブレするということが起こります。2 000年の前回推計のデータで比較してみますと、下ブレするのですけれども、やや95歳 以上のところで大きく下ブレしている。ですからこれは、この部分に関しましては、前 回推計に用いた高年齢部分のところも予測に若干問題があるということを示唆していま す。しかしながら、今回利用しようとしますモデルに関しては、そこの高年齢の部分で このような誤差が起きないということが分かっておりますので、今回の推計に修正リー ・カーター法を用いるということは妥当ではないかと考えています。こちらは女性のデ ータで99年と2000年ですが、同様の傾向を示しております。  さて、これからは大方が出生に関わる話でございます。まず最初にご説明したいのは 、コーホート合計特殊出生率の構成要素ということであります。コーホート、即ち生ま れ年別の女性に関して一生を通じて観察した合計特殊出生率というのは、どのような構 成要素によって最終的に出来上がるかといいますと、まず1つは「1−生涯未婚率」。 これは何かといいますと、ある世代で生まれた女性の何%が最終的に結婚するかという ことを表す指標になります。それに夫婦完結出生児数。その中で結婚した人々が最終的 に何人子どもを産んだかということ。それからそうした夫婦のうち何人かが、離婚ある いは死別する人も、子どもを産む人もいますし産まない人もいるのですが、その影響を 受けて、最終的な子どもの数が決まるということであります。  さて、そうして将来の出生率の水準というものが、どのような要因によって変化する のかということですが、これに関しては上の数式とそれぞれの項目に関連して変化をす る。1つは生涯未婚率の変化ですね。現在の2000年レベルでいいますと5%ぐらいなの ですが、それが今後全体推計でいいますと13.8%まで上昇する。あるいはそれ以上もっ と高くなるかもしれない。そのことによって影響を受けるということです。もう1つは 夫婦出生児数の動向です。結婚した女性がそもそも子どもを産まなくなるというような 事態になれば、出生率は下がっていく。  しかしながらこれを子細に見てみると、2つの要因があります。1つは結婚の年齢が どんどんいま晩婚化現象が起きていますので、結婚の年齢が上ることによって、いわば 生物学的に出生率がどんどん落ちていってしまいます。その効果によって出生率が落ち るという変化ですね。それがまず1つ考えられる。2つ目としては、例えば同じ結婚の 年齢の人でも、人々の行動が変化して出生率そのものに変化が現れて、最終的な夫婦の 子ども数が変化する場合がある。この2つのことをここでは指摘しておきたいと思いま す。  そして3番目には離死別効果係数の変化ですね。非常に死別が高い時代から、現在低 くなっていますが、歴史的に見るとこれは下がってきているのですけれども、一方、離 婚の方を見ますと、離婚率は上昇している。離婚率は上昇するのですけれども再婚率も 高まっているという現象がありますので、この変化は当然のことながら対称的に子ども の数に影響するということでございます。  さて次に、年齢別未婚率並びに生涯未婚率の動向がどうなっているのかということで ございます。10月30日に2000年国勢調査の最終結果が出てまいりましたけれども、それ を見ますと、このように最終値は1%集計の結果と同じなのですけれども、2000年で20 代後半女性の未婚率は54%になる。表で見ますとこのようにずっと上昇してきていると いうことです。さらに付け加えて、東京都はいったいどうなっているかというのを見て みますと、東京都はしばしば、いわば日本全体の先行資料と見られることがあるわけで すけれども、20歳代後半、25歳から29歳の未婚率は2000年で65.3%へと上昇している現 状になります。さらに30代前半の女性の未婚率も37.6%まで上昇をしてきているという ことです。もう1枚。三重県のものを見ていただきます。三重県の場合は比較的未婚率 が低い部類に入る県でありますけれども、それで見ますと、2000年で47.9%という状況 でした。  その次の図表の8−1は何を示しているかといいますと、先ほどのデータをコーホー トに組み替えてみたものです。それぞれの線がそれぞれのコーホート別にそれぞれの年 齢によって、どのように未婚率が下がってきたかということを示しております。この図 を見ますと、これは全国の図ですが、25〜29歳を見ますと1901年から1905年。相当古い コーホートでありますが、そのコーホートから比べると徐々に徐々に上がってきている ということが分かると思います。ですから世代を追加するごとに年齢別の未婚率はレベ ルを上げてきているということが分かります。  さて、そのもとのデータに対しまして、1つは機械的に将来に延長することが可能で す。先行する世代がある年齢からある年齢に進む時に、どれぐらい未婚率が減少したか ということを、先のことに関して適用して計算してみますと、例えば1981年から1985年 のコーホートですね。このコーホートについてずっと計算をしてみますと、50歳時点で1 6.7%ぐらいの将来見込みになるというふうに算定できます。それを2000年までのデー タを使いまして、各都道府県についてすべて計算してみますと、このようなデータが得 られます。1つは例えば福井県というのが生涯未婚率がもっとも低い水準でありまして1 1.2%。これは1981年〜1985年コーホートが実現するであろうと想定されるものです。 また、平均初婚年齢がここにありますように27.3歳という数字になります。福島県は生 涯未婚率は13.3%でやや高いのですけれども、平均初婚年齢が若い26.6歳であります。 こうしたところが最も未婚化晩婚化が進まないという県でありますけれども、それでも 将来未婚率でいうと11%から13%ぐらいの水準になっています。初婚年齢も26歳後半か ら27歳の前半になります。  最も未婚化が進むのはどこかといいますと、このポイントでありまして、これは東京 都の区部をとった場合です。東京都の区部をとって先ほどと同様の推定を行いますと、 生涯未婚率が22.5%。平均初婚年齢が30.2歳というふうに推定されます。1981年から198 5年の時期に、東京都の区部のような状況に日本全国がなるというのは、想定されうる 限り究極の状態だとは思うのですけれども、こうした高い水準から日本では相当低い水 準までバラツキがある状態である。これらが将来の仮定値を設定する際の1つの具体的 な計算の例ですけれども、参考にしていただきたいと思っております。  次に夫婦出生力の動向でございます。先ほど申しましたように、結婚の年齢が実は最 終的に夫婦の生む子どもの数に大きく影響を与える。したがいましてこの我々の準備作 業の段階では、まずコーホート初婚率を算定しております。それはどのように推定して いるかといいますと、1935年から1950年の出生コーホート。これはすでに実績データが ございます。1951年から1970年の世代に対しては、これはまだ50歳を超えていませんか ら未完のコーホートです。この未完のコーホートに関しましては、過去の趨勢データを パラメーターとして、つまり各コーホートの既知の生涯未婚率と各コーホートの既知の 平均初婚年齢、各コーホートの既知の初婚年齢の分布、即ち分散と形状に関する情報を もとにして、一般化対数ガンマ分析モデルを用いて推計しております。これが1935年か ら1970年生まれで、既に分かっているところの初婚率を年齢別に累積したものです。こ れに基づいて先ほどのガンマ分布モデルで将来を推定しますと、先々のデータはこのよ うに得ることができます。  これを整理して表にしたものがこの図でありまして、それぞれ1932年から1970年に関 しまして、それぞれの初婚率がございますので、生涯未婚率とそれぞれのコーホートの 平均初婚年齢を算定して、それを二次元上のグラフで示したものです。これを見ますと 、バツ印のポイント、即ち1932年から1951年生まれの人々に関して見ますと、ほぼ23歳 から24歳ぐらいのところ、そして生涯未婚率でいいますと、4〜5%ぐらいのところで 集中しています。つまり1951年ぐらいまでは日本の結婚というのは、いわば極めて安定 的な時代であったということをこのデータは示しているわけでございます。  そして1952年から1960年生まれの所ですけれども、そこで現れた状態は何であったか といいますと、平均初婚年齢の上昇傾向です。そして生涯未婚率の水準が4%台後半か ら8%台に向けて変化する過程が、1952年から1960年生まれの人々で起きていたという ことであります。そして1961年から1965年生まれに関しましても、先ほどの状態が同様 の傾向で持続的に起きている。つまり平均初婚年齢の上昇と将来未婚率の上昇でありま す。実は前回推計において用いたデータというのはここまでのデータであります。この データを用いまして将来の平均初婚年齢と生涯未婚率の水準を前回は仮定して想定しま した。したがいまして、データとしてはこの線の延長線上のポイントを将来の生涯未婚 率として前回は想定したということであります。  ところが今回新たに5年経過して、そして新たなデータが5年分追加されました。そ して見てみますと、明らかにこれまでのトレンドとは違うトレンドが出てきている。即 ち平均初婚年齢の伸び方よりも、生涯未婚率の上昇の仕方の方がやや大きいという傾向 が出ております。したがいましてこれが傾向線を表すものでありますけれども、前回推 計の前提であったこうした平均初婚年齢と生涯未婚率の動きとは、やや異なる前提を今 回の推計においては考えていかなければならないというのが、現在までの分析で分かっ たところでございます。  次の図でございます。コーホート初婚率の動向。初婚率の動向を、つまりコーホート からコーホートに対しての変化の仕方を、ここではそれぞれのコーホート5年ごとのコ ーホートで変化率を計算し、一体どういう変化が世代間で起きているのかを表したもの がこの図です。これはすべてを一斉に書いておりますので極めて複雑な形をしています が、これを年代別に整理してみますと明らかに傾向が見てとれます。  この図は1945年から1950年のコーホート、1946年から1951年というふうに、50年代の 半ばまでのコーホートに関して、コーホート間で何が起きているかということを見たも のです。これで見ますと、変化率というものが若干若い所で大きなブレがあるのですが 、これは初婚率自体が値が小さいので、大きなこういうバラツキがでるのですけれども 、ある程度信頼できるというか、20代から40代後半までのところを見てみますと、比較 的数値的に見ますとゼロに近い近辺であった、若干39歳より上のところでは、若干未婚 化現象があったということが分かります。しかしながら全体で見ますと、コーホート間 の変化というのは、それほど起きていなかったということです。  ところが1950年代の後半以降、あるいは1960年代について見るとどういう変化が起き ているのかといいますと、23、24歳から若い所ではマイナス傾向に入っている。そして 年次を追うごとにこのマイナス傾向が強くなっている。つまり何が起きたかというと、 世代を追うごとに年齢層の若いところの初婚率が前の世代と比べて急速に落ちてきたと いうことです。つまり晩婚化現象であります。そして25歳よりも上の年齢では、急速に この世代別に見た初婚率の変化率が上昇していきます。つまり晩婚化てす。年齢層の高 いところで初婚率が上昇するという現象を引き起こしているということがあります。  そしてそのあとの年代。1965年以降についてはどうかといいますと、1961年から1966 年、そして1960年から1965年についてはどうかといいますと、実は新たな現象がまたこ こで1つ起きている。どういう現象かといいますと、25歳よりも若いところでは、今度 は逆にこのコーホート間変化率が徐々に小さくなってきつつあるのです。これは何を示 唆しているかといいますと、若い年齢層で初婚率の低下傾向、つまり未婚化傾向が弱ま りつつあるということがこの若い層では起きている。  一方、年齢層の20歳代後半から30歳代、あるいは40歳代のところで見ているとどうな るかというと、これも例えば1961年から1966年のレベルがここでありますけれども、観 察される最も最近のところでいいますと、1965〜1070年に関してはレベルダウンを起こ している。つまり年齢層の高いところでの晩婚化現象も以前と比べて弱まりつつある。 こういうことがこのデータから理解できます。  平均初婚年齢及び初婚年齢分布と夫婦出生児数の関係について整理しておきたいと思 います。1つはコーホートの合計特殊出生率と夫婦出生児数は、1つは結婚の発生時期 、つまり平均初婚年齢とその分布、それから生涯未婚率によって決まるというメカニズ ムになっている。これが基本的には前回推計までの基本的な考え方で、これらによって 人口推計をこれまで行っております。その前提としては、夫婦が生む子どもの数という のは過去の経験データから得られた安定的な関係、つまり年齢が上がると夫婦の子ども 数が落ちるという関係です。それを基礎として考えていたということです。これらそれ ぞれについてはこれからデータをお見せします。ただし、これらのデータは妻の年齢40 から49歳についての情報から得られたものでありまして、最も最近の夫婦の情報という ものがありません。どういうのがあるかといいますと、いま30歳あるいは20歳代の人々 の情報というのは、この経験的なデータには反映されていないということであります。 一方、後程データを見ますが、1960年代以降に生まれた出生コーホート世代では、夫婦 の子ども数に若干減少傾向があります。したがってこれまでの予測の手法に関して再検 討を含めて、動向を把握していく必要があります。  これが先ほど申し上げました出生動向基本調査によって得られた各回調査による初婚 年齢別に見た平均完結出生児数です。このように若い時に結婚した人は、最終的には2. 5あるいは2を超える水準にあるのだけれども、30歳あるいは30歳代後半で結婚した人 々の出生率は、1ないしは1.5程度の数字になる。これが基本的には結婚が変化するこ とによって、出生率が落ちるというメカニズムです。この図表は前回の審議会でもご提 示しましたけれども、このように年齢層の高いところで結婚した方々の出生率が、3人 というのは少なくて1人がせいぜい。そして0人も増えるという、そういう関係がある ということでございます。  我々の推計では先ほどのデータをモデル化しまして、このように実際のデータに対し て数値モデル化を行っております。それをもう少し詳しく、実際の推計では第1子がど のような確率で出生するか、第2子はどうか、第3子はどうか、第4子はどうかと、こ ういうモデルをつくって人口予測を行っております。そしてこれは先ほどお示ししまし たコーホートの年齢別初婚率ですけれども、こうしたコーホート毎に年齢別初婚率を推 定して、先ほどの出生順位別の出生確率に掛け合わせて、そして最終的に予測される生 涯の出生コーホート別の子ども数を推定しています。初婚率には年齢分布がありますか ら、実際にある年齢で結婚した人は、このぐらい生むとしても、実際には年齢分布で早 く結婚する人もいれば、相当遅く結婚する人もいますので、全体を足し合わせていきま すと、出生率の水準というのは実際にはこういったカーブで出生が実現されていくとい う姿がわかります。  そしてここではこのように推定したものが、どういう状態になっているのかといいま すと、まず見ていただきたいのはこちらの水準です。この折れ線になっている線が、出 生動向基本調査によって得られた夫婦の完結出生児数実績値です。そしてこちらのピン クの線で描かれているものが、先ほど1970年まで推定しました年齢別初婚率に基づいて 先ほどの出生児数出生確率に適用して推定した夫婦の出生率推定値です。こうして見ま すと、過去のデータ、既に既知で分かっているものについて評価してみますと、ほぼ両 者は適合的であるということが分かります。そしてこの先もいま推定した年齢別初婚率 で推定していきますと、1970年レベルで夫婦の出生率は2を下回っていくという値が推 定されています。そして一方、こちらの方は平均初婚年齢なのですけれども、平均初婚 年齢も初婚率の上昇に伴って、このように年齢が上昇していって、27歳を超える水準に まで初婚年齢はいくということでございます。  ところが、新たな兆候として1つ変化が現れております。その変化とは何かといいま すと、このグラフで示してありますのは、これが実際に観察されている35歳時点の累積 出生率。35歳になった時にどれぐらいの出生率を持っているのかということを調べたも のであります。このように1934年生まれの人々に関しては、2.1から2.2のちょうど間ぐ らいの値でありました。そして1935〜1939年生まれに関しても2.1をやや超える水準 、1 940〜1944年生まれに関してもそうです。1945〜1949年生まれに関しては2.1前後、そし て1950〜1954年生まれに関してはほぼ同じ2.1の水準です。  ところが1955〜1959年生まれに関しては若干落ちてきている。実はここまでのデータ が前回推計を行った時に得られていた情報です。それ以降、1997年に出生動向基本調査 第11回目を実施して、そのデータを集計して解析してみますと、この水準がここまで落 ちている。つまり35歳時点になった時の出生率水準が、前回、前々回の水準と比べて、2 .1のレベルから1.9をやや超える水準にまで落ちていた。ですから30歳代のところでの 夫婦の出生率児数は落ちてきているということは言えるわけです。  そしてもう1つ、こちらの方に線がございます。先ほどの初婚年齢分布から推定され た完結出生児数というのがございます。それを推定してみますと、こういう水準をとる わけですね。これも徐々にここから落ちていく。落ちていくというのはなぜかといいま すと、結婚の年齢が上って、夫婦の出生確率が落ちてきますので、この水準は結婚年齢 の上昇に伴って落ちてくるということであります。  もう1つ着目していただきたい点がございます。35歳の時と、これはちょうど50歳の 時ということですが、35歳まで順調に生んできて、そのあと35歳以降で生むのがこの間 の数値ということになります。この間の数値です。この間の数値についてみますと、若 干凸凹はあるのですけれども、過去ほぼ安定的な関係を保っている。ところが1960〜196 2年に関しては、この階差が開く関係になっているということが分かります。つまり従 来どおりやっていますと、初婚年齢だけで説明をしていくと、1960〜1962年に関しては 、50歳でこれぐらいになりますけれども、ここでは夫婦が別の要因によって、初婚年齢 以外の要因によって落ちるということを考えていませんので、この階差が大きくなって いるのではないかと考えられるわけです。  先ほどのものに関して差をとってグラフ化したものがこの図です。これで見ますと、 前回までのデータがこの明るいグリーンで示しています。前回推定時点においては、こ のデータは単純に考えてみますとフラットな関係になります。ところが今回の新しく行 った第11回出生動向基本調査のデータですとこの赤い点が得られる。過去については、 ほぼ同じなわけです。ところがこのポイントだけずいぶん従来の線上に乗っていないと いうことが分かります。我々のいま現状の分析では、ここに関してどのように解釈をし ていくか。こうした夫婦の初婚年齢だけで説明できない部分がについて、いまは多角的 な検討を行っているところです。  これは先ほどのデータに関して補強する意味で、夫婦の出生意欲をみることにします 。予定子ども数といわれる比較的現実的に最終的な生む子どもの数の数字ですが、これ が年を追って一体どうなっているのかということであります。これを見ますと、予定子 ども数というのは最終値を見ますと、平均で1977年は2.13、それから1982年に関しては2 .21、1987年が2.27と、ここでは上昇傾向にあります。ところが前回調査、前々回調査で 2.16。そして11回調査では2.1となっているわけです。ですから夫婦の出生意欲がやや 落ちているということは考えられます。  もう1つデータで見るなら、子ども3人を持つ夫婦のパーセンテージはどうかといい ますと、かつては31%というのは最も多い数値でありましたけれども、それ以後26.5、2 1.8と下がっていて、これまでの調査の中では最も低い値を記録しています。そして0 人も若干、この部分は前回と前々回と同じですが、1人は9.1から9.7へと増えている。 2人が増えているという、そういう状態になっています。  それから結婚10年未満の若い夫婦に関する理想子ども数に関して見てみますと、やは りまず平均でいいますと、1987年のデータから比較すると、2.59、2.51、2.40とやや理 想も下がっている。理想子ども数3人という人々は1987年の46.6%から44.8、37%へと 下がってきている。ですから人々の意欲の面においても、若干、夫婦の出生意欲が落ち ているのではないかということを示唆しているのではないかと考えられます。  さて、もう1つの要因であります離死別の効果に関する値でありますけれども、私ど もの研究所ではこの離死別効果を測定するために、いくつかの計算を行っております。 どういう計算かといいますと、まず1つは、夫婦の出生動向基本調査に基づく夫婦の完 結出生児数を、出生コーホート別に算定をしています。もう1つが、コーホート別に人 口動態統計から得られた出生率がございます。そして生涯非婚率を人口動態統計から計 算しまして、この割り算によって仮想的な夫婦出生率を計算しています。そしてこの数 値と出生動向基本調査によって得られた数値の比を計算しまして、これを離死別効果係 数として利用しております。1935年から1949年の平均値が0.971という数値を得ていま して、グラフで見ますと比較的安定的な数値となっております。これを今回の人口推計 においても離死別効果係数として適用しようというふうに考えております。次のところ に関しましては、いったんパワーポイントを終了いたしまして、紙のほうで説明させて いただきます。  資料3−2「目標コーホートの仮定設定:1985年出生コーホート合計特殊出生率の仮 定設定」ということで、文書を用意しております。まず第1に出生率水準の構成要素で ありますが、先ほど申し上げましたように、出生率の水準というのは、生涯未婚率、そ れから夫婦出生児数、離死別の効果の3要因に分解して考えることができます。まずそ のうち、生涯未婚率の動向ですけれども、これはどういうふうに動いていくかといいま すと、前回推計時において初婚率は1960年代出生世代で大きく変化して、晩婚化という ことがおきました。これらの世代ではそうした年齢の上昇とともに大きな未婚率の上昇 をもたらしていました。その認識の前提として、前回推計においては、1980年出生コー ホートの生涯未婚率を13.8%と設定したわけであります。  そして前回推計以降も傾向として、1960年代の出生世代の晩婚型パターンへの移行と いうものは、持続しているのですけれども、新たに先ほどご覧いただきましたように、1 960年代後半以降の出生世代で、晩婚化への移行、つまり高年齢部分での晩婚化が弱ま りつつあることが観察されました。1970年代以降の出生世代に関しては、先行する出生 コーホートの初婚率の年齢パターンがあるのですけれども、そのパターンに準じたかた ちで初婚パターンを持つことになるであろうというふうに考えております。それから196 5年出生コーホートから、先ほどいいましたように、生涯未婚率と平均初婚年齢の関係 が変化しているということがございまして、それが先ほどの認識の統計的な裏付けとい うことになります。  それから離死別の効果につきましては、先ほどお示ししましたように、0.97前後の安 定的な関係を持っておりますので、それを将来にも仮定をしていきたいということであ ります。  3番目としましては夫婦出生力の動向であります。理論的にまず整理しますと、夫婦 出生力の変化に関する理論的な変動メカニズムには、まず(a)としまして晩婚化、つ まり初婚年齢分布の変化による夫婦出生力低下がございます。初婚年齢の分布が変化す る。つまり平均初婚年齢の上昇と分散が拡大する、分散することによって、期待される 夫婦出生児数が変化、つまり低下するというメカニズムでございます。2番目は(b) としまして、晩婚化以外の要因による出生力低下であります。夫婦の出生意欲が変化し ていきますと、初婚年齢というものに変化がなくても夫婦出生力が変化、つまり低下を する場合が理論的にはございます。前回推計におきましてはそこに書いてありますよう に、夫婦の完結出生児数については、過去の経験データから得られた安定的な関係を基 礎として、初婚年齢の上昇に基づく完結出生児数の低下を織り込んで推計を行っており 、今回もその関係はありますので、それは安定的であるというふうに考えております。 そして前回推計以降、新たに実施された調査データから確認できた傾向として、同じ初 婚年齢でも、最近のコーホートほど既往出生児数、つまり生む年齢別に生む子どもの数 も累積が遅くなっているという傾向がございます。  こうしたことを前提として、次のページに夫婦の出生力の低下について、ではどうい うふうに考えていったらいいのかということでありますけれども、今回新たに夫婦出生 力の低下に関する要因・見通しについては、下に述べるような修正を加える必要がある というふうに私たちは考えております。それはつまり晩婚化以外の出生力低下要因の考 慮が必要であろうということであります。前回推定以降に実施された調査データから新 たに確認できた傾向として、先ほども申しましたが、同じ初婚年齢でも、最近のコーホ ートほど出生児数が累積するペースが遅くなっている。  そしてそこで1960年代の出生コーホートで、初婚年齢の上昇に伴う夫婦出生力の低下 傾向に加えて、平均初婚年齢の上昇要因以外の低下を示唆する傾向を、夫婦出生力の推 定の要因として加味するかどうかについて検討する必要があるという認識を持っており ます。以上です。  廣松部会長  どうもありがとうございました。大変詳しい説明をありがとうございました。まずご 質問がございますれば、お受けしたいと思うのですが、いかがでしょうか。  駒村委員  2つほど教えて下さい。紙でいただいた2枚目の晩婚化以外で出生力の低下というと ころで、出生児数が累積するペースは1子、2子の間隔です。この間隔というのは安定 しているのでしょうか。それともそれは何か動きがあるのでしょうか。そのことは何か データの上で説明していただいていたのでしょうか。  それからもう1つは、図表の23の方は、これは10年未満の夫婦ということなのですけ れども、回答している値とは回答者平均年齢自体が上がっている影響はないのですか。  高橋人口動向研究部長  まず第1点のところでございますけれども、前回の審議会の部会におきまして、結婚 年次別の、結婚0年目、1年目、2年目、3年目、4年目の出生率をお示ししました。 その図によって見てみますと、1985年以降に結婚した夫婦で、その累積過程が遅れてい るという状況のデータがでておりましたので、前回の審議会ではそのデータを示させて いただきました。それから図表の理想子ども数の、あるいは予定子ども数の分布に関し てですけれども、基本的にサンプルの標本全体が晩婚化にさらされた世代でありますの で、このバックグラウンドデータである標本自体の結婚年齢も上昇しております。  駒村委員  1子、2子の生むまでの間隔が広まっているということは。  高橋人口動向研究部長  結婚から出産、第1子から第2子という間隔も広がってきております。  河参事官  前回お配りしたものを、いまコピーをとりましてお配りします。  高橋委員  いま高橋さんからご説明いただかなかったのですけれども、資料3−2の3ページ目 に今度の新推計は前回の推計に比べるとこんなつもりですよというのがございますね。 これはいま細かく数字等をチェックしたあとのご説明をいただいたのですが、前回の審 議会の時に、前回の推計の問題点等も煮詰めて、新推計はこんな格好でやりたいねとい うご説明がございましたね。それとこれは基本的にどこか違っているところがあるので すが。あるいは延長線上にあるという理解でよろしいのでしょうか。  高橋人口動向研究部長  前回審議会以降、私ども初婚年齢の推計、あるいは夫婦出生率の分析等を通じて、新 たないろいろな点がわかった部分がございます。したがいまして今回は、前回お示しし た資料に基づいて今回は新たに検討しなければならない課題について整理させていただ きました。その部分に関して特に夫婦の出生力の低下をめぐる問題に関して、審議会の 先生方に様々な観点からご議論いただいて、それを煮詰めて、そして最終的に数値を推 定していきたいというのが今回の主旨でございます。  高橋委員  主旨はそういうことなのですが、日本語として例えば晩婚化は進むだろうとか、未婚 化は進むだろうとか、あるいは子ども出生力も落ちるだろうとか日本語がございますね 。そこのイメージを大きく変わるようなことはないという理解でいいということですね 。  高橋人口動向研究部長  結構でございます。  山田委員  安定的に推定すると思って離婚のことを聞きたいのですけれども、つまり1950年出生 コーホートぐらいまでは、いわゆる離婚経験率が非常に少ない時代における死別係数が0 .97というのと、いまのように、特にいま若い世代に離婚が上昇していますから、その 時の係数というのはまったく同じであるということは、いま言ったようにパターンは変 わらないという推計であると。  高橋人口動向研究部長  先ほどの離死別係数の話ですけれど、もちろんここで使っているデータというのは194 9年までのデータですから、離婚に関するデータに関しては、相当古い情報ということ になります。ところがいわばそれ以降に関しては、この離婚死別が出生率に与える影響 に関する現実のデータがないわけです。そういう中で、ではそれは一定でいいのかどう か。一定ではない根拠がないわけですね。したがいまして我々が根拠にするのはこのデ ータしかいまのところはないということが1つ。  それからもう1つですね。まったく別の研究ですけれども、離婚の頻度というのは非 常に高くなってきているわけですけれども、それと同時に再婚の頻度も高くなっていて 、実際には離婚から再婚へのリカバーというのは相当規模が大きい。さらに離婚した人 々の出生率は前回の審議会でデータをお示ししましたけれども、その時点においても、 離婚した人々の出生率も相当高くて、したがっていわば影響の度合いというのは、最近 のデータで見てもそれは相当低いということも分かっております。したがいましてまっ たく根拠なく将来の値を決めているのではなくて、そうした状況を判断しつつ、実際の ところは得られるデータを基準にしているということです。  廣松部会長  いま、前回お配りいただいたものを、再度コピーして配っていただきましたので、簡 単にご説明をお願いします。  高橋人口動向研究部長  ただいま配りしました図表の44というのが下の方にございますけれども、結婚からの 出生の累積がどうなっているかというデータでございます。下の菱形の線というのが結 婚して1年以内ですね。0年目の人々に関する出生率でありまして、これは1971年に結 婚した人から1995年に結婚した人までのデータではございますが、それはほとんど変わ らない。0年目から1年目に行きますと、大体1985年以降、徐々に低下傾向が明確にな ってきて、やや低下傾向に入っている。典型的には結婚5年目でありますけれども、198 5年の水準から比べると、1992年の水準で見ますと相当落ちてきている。つまり結婚し てからの出生率が、累積のペースが遅れている。遅れているということは最終的に少な くなるのかどうか、あるいはただ単に先延ばしが起きているのかどうか2つの要素があ りますけれども、そうした状況が起きているということであります。  廣松部会長  ありがとうございました。他にいかがでしょうか。私の方から確認の意味で、いくつ かお伺いしたいと思います。まず今日お配りいただいた説明の中の3ページのところで 、これは前回、私の方からお願いをして、今回の修正リー・カーター法を使うことによ って、前回までの推計とどういう差が出るかということを示していただいたのですが、 それを見ますと今回は特に95歳以上のところでかなり動きが違う。これは分母が実績値 で、分子が推計値ですか。  高橋人口動向研究部長  そうです。  廣松部会長  ということは、平成9年の時の値が急に下がるということは、現実には90歳とか95歳 以上の方が、より長く生きるようになったということですか。  高橋人口動向研究部長  要するに100を切っているということは、例えば平成9年推計の場合は大きく下を切 っていますけれども、これは要するに多く亡くなっている。  廣松部会長  そういうことですね。分かりました。その意味では今回の修正リー・カーター法でい くと、そこがある程度改善されるというふうに考えればいいですね。それからこれは読 み方ですが、12ページの図表の13の1から3に関して、これはさっきのコーホート間の 変化を示していると思われますが、縦軸の変化率というのは例えば図表の13−1でいい ますと、例えば1946年から1951年のコーホートの初婚率と1945年から1950年の初婚率の 間の変化率をとっていると考えればいいのですか。  高橋人口動向研究部長  ご説明申し上げます。まず図表の13−1の黒い菱形のマークのついたデータに関して いいますと、1945年のコーホートの年齢別初婚率があります。もう1つが1950年の年齢 別初婚率があります。その2つの初婚率について、同じ年齢間で変化率を計算してあり ます。そうすると、それがマイナスの値をとるということは、1945年から1950年にかけ て、その年齢の初婚率が急速に減少した、低下したということを表しています。ですか らそれぞれが5年後のコーホートに対して、どういう変化をそれぞれ起こしていたかと いうことを、この資料によって見るということでございます。  廣松部会長  したがってこれが全体として、数値そのものはともかく、要するにプラスに向いてい るか、マイナスの方に動いているかを読み取ればよいということですね。  高橋人口動向研究部長  はい。  廣松部会長  ありがとうございました。それからこれは今日のご報告というか、ご説明の中でたぶ ん一番重要な点であろうと思われますが、18ページ図表の22−1及び2のところで、今 回新たに第11回  (97年)調査結果が加わったことによって、いま詳しくご説明いただいたようい、前 回までとは違う動きが出てきたという点が示されています。これに関して例えば推定完 結出生児数で構わないのですが、第8回から第10回までのそれぞれの出生コーホートの 出生児数の実績と、その平均と考えればいいのですか。第8回から第10回までの、例え ば1930年から1934年の出生コーホートに関してですが。  高橋人口動向研究部長  データをプールして平均を出したものです。  廣松部会長  そうすると第11回の値を加えると、ちょうどその中抜きの四角の値になるというふう に見ればいいのですね。  高橋人口動向研究部長  出生動向基本調査から得られたデータは、図表の22−1でいいますと、35歳時点の累 積出生児数のみです。上の白抜きの四角に関しては、初婚年齢のデータからガンマ分布 モデルによって推定した完結出生児数というものです。ですから別々のものです。です から上の変化の動きというのは、つまり初婚年齢が変化することによって、夫婦が子ど もの数が落ちるというメカニズムだけで動いている性質のものであるということです。  廣松部会長  分かりました。他に何かご質問はございますか。  駒村委員  その1ページ目のいま広がっているこの夫婦の出生率自体の低下です。これ自体の理 由というのはさらにどこまで社人研は理解しているのか。なぜ夫婦の出生率自体が下が っているのかという点です。  高橋人口動向研究部長  社会経済的な要因がおそらくバックグラウンドとしては存在するのでしょうけれども 、1つは社会全体の動きとううのは、いわば少子化傾向というかたちで様々現われてい ますので、そうした状況というものが夫婦をして、持とうという意欲を若干下げている 。つまり先ほどみたいな理想予定子ども数が若干低下をしてきていますので、まず具体 的に、ではそれは女子労働力率が上がったからそうなのか。あるいは保育所の数が足り ないからそうなのかということは、ひとまずここの分析では出てきません。しかしなが らそうしたことがあるという指摘は十分認識していますので、こうした理想児数が下が るということの解釈に関しては、そうした文脈で考えていますけれども。  山田委員  先ほど12ページの図表13−1のコーホート変化について、興味深く見させていただい たのですけれども、これはデータの意味はよく分かったのですが、解釈が問題で、つま りもともとの未婚の母数というものが、昔と今とでは全然異なってきていますので、図 表13−3、1961年から1966年というところのものは、つまりは早く結婚する人は早く結 婚しがちだが、晩婚化が収まったという、晩婚化パターンへの移行が弱まったというこ とは、つまり晩婚化傾向が収まったというふうに解釈するのか、それとも早く結婚する 人は結婚してしまって、30歳まで未婚化で残っている人はますます結婚しにくくなると いう両極分解の傾向が出てきたというふうに解釈してよろしいのでしょうか。やっぱり 取り戻しということではなくて、最初から早く結婚してしまう人と、結婚しない人に分 れれつつあるというふうに解釈できるのでしょうか。  高橋人口動向研究部長  我々の分析では、近年、初婚率は若いところは上昇しています。そしてもう1つはで きちゃった結婚も増えています。ですからいままで従来型のある特定の年齢に集中する 結婚があって、それが年齢シフトして晩婚化して、それが後ろにずれるというのがいま までの考え方でしたけれども、新たに起きている現象というのは、先生がおっしゃるよ うに、若い年齢層の方で初婚率が上がる。つまりいままでの単純な初婚率パターンでは なくて、そうした形状の変化ということが起きているということは、私どもも観察して います。  廣松部会長  さっき図表23、24のご説明の中でも、ある程度社会経済的な要因も考慮すべきという か、考えなければいけない要因だろうというご指摘がございましたが、私もそうだと思 います。これを見ると、1987年の値が子ども平均数のピークになっているわけですね。1 987年はバブルの真っ直中ですよね。そして1992年はバブルがはじけた年、正確には199 1年ですけれども。そうすると心理的にはちょっと遅れますから、1997年にその影響と いうか、かなり心理的な影響が出てきたのではないかなというような解釈も可能かと思 います。これも社会経済的な要因の1つといえば1つですが、そういうものに関しては 、加藤室長のご説明の中にもありましたけれど、これを取り込むというのは、ほとんど 不可能です。これらについては、おそらく今後もう少し具体的な推計値というか、実際 の数値を見ながら、国立社会保障・人口問題研究所の方で推計後の作業として、いろい ろご検討をいただかなければいけないのではないかと思います。  他にいかがでしょうか。  阿藤部会長代理  つい最近ですと、同じ初婚年齢でも結婚持続期間別でみて夫婦の子ども数の減少が見 られるというデータもあります。例えば2000年に行われた毎日新聞の人口問題調査会の 調査があるのですが、そこで質問項目の中に「経済的に苦しいかどうか」というふうな 経済関係の意識に関する質問があって、それと「生み控えをしたかどうか」という、そ ういうデータが確かありまして、その関係が結構強く見られたということです。これは あくまでも小さな標本調査に基づく1つのデータですけれども、その調査からは、一種 バブルの崩壊後の不況の影響があるのではないかと、そういうふうな新聞解説になって いたという記憶があるのですけれども、そういうものも1つあるかなと。  しかし、もしそういうものだとすると経済の変動ですから、逆にいうと経済が回復す れば出生率も持ち直すという話になってしまうのですが。しかし、もう少し、さっきも 高橋部長からご説明があったように、長期トレンドとして、結婚してもしばらく子ども を生まないとか、あるいは1人でとめるとか、そういうDINKSとか1人っ子とかそ ういうものの兆候が少し見え始めているのかもしれないと。そんなふうな両方の見方が ありうると思いますね。  河参事官  事務方がお聞きするのも恥ずかしいのですけれども、いまのポイントの部分でありま すが、資料の18ページの特に図表の22−2について、こういう数字の見方として、1ポ イントでどうなっていくのかという議論がどれぐらい有効なのかということを教えてい ただきたいと思います。この議論を踏まえて阿藤先生なり、あるいは廣松先生がおっし ゃったことについて、それをどう考えて組み合わせられるかだと思うのです。最終的に は私ども事務方も先生たちのご判断に従おうという前提で、その代わり申し訳ないです けれども、ていねいにご議論いただければありがたいというのが率直な思いであります 。まさにこういうポイントといまご議論あるようなものをどう我々は理解すればいいの かなという、いわばプロの目から見た上でというのでしょうか、あるいは専門家の方々 の読み方というのでしょうか、そういうあたりを教えていただければありがたいと思い ます。  過去の歴史をいいますと、ここの部分は日本の社会であまり変わっていないという表 現をしてきた分野でありますので、もし変わっているというならば、先ほど駒村先生の おっしゃったこととちょっと絡むのですけれども、どうしてだろうというご疑問が世の 中は出るだろうなと。それとまさにどうしてだろうなと思いますので、是非ていねいに ご議論いただき、私ども事務方も自信を持って世の中にご説明できるようにしたいとい う部分でございまして、その点、是非よろしくお願い申し上げたいと思います。  廣松部会長  いま事務方から要望がございましたので、どうぞこの点に関してお考えというか、ご 意見を多くの委員の方からいただければと思いますが、いかがでしょうか。口火を切る 意味で私から一言申し上げますと、確かに統計というかデータにある程度必然のことな わけですが、必ずバラツキがあります。したがって確かに図表22−2で、特に1960年か ら1962年のコーホートのところで、少し上っていることは事実でデータとしてはそうで すが、当然バラツキの様子を考えるべきです。  さらに、こういう言い方をするとちょっと乱暴かもしれませんが、縦軸のとり方によ って、この印象がかなり変わるわけです。これをかなり大きいと見ることも可能ですが 、縦軸の目盛りを圧縮すると、その分より小さく見えます。それから先ほど阿藤先生が おっしゃったように、80年の後半以降の日本経済全体のマクロ的な動きが社会心理的な 影響を持つというのも、当然ありうると思いますし、それからもっと長期的なかたちで 、やはり結婚・出産行動全体にある変化が見えつつあるというふうにもいえると思いま す。  ですから一番最初に私の方から申し上げましたが、どうやって説得力のある説明を加 えるかということになろうかと思います。その意味で是非この部会の委員の先生方から 多くの意見を出していただいて、ご専門家の立場から見て、こういう考え方ないしは説 明の仕方がより説得的であろうというふうにお教えいただければと思います。いかがで しょうか。  山崎委員  いままでの話からちょっと外れるかもわかりませんが、すべて結婚を前提に話が進ん でいるのですけれども、先ほどの専門家調査によりますと、同棲が増えるだろうと。そ れから婚外子も増えるだろうということになっているのですが、そういった兆候という のは既にあるのでしょうか。  高橋人口動向研究部長  まず同棲のデータに対してですが、これは前回の審議会において同棲のデータをお示 ししましたけれども、日本の状況というのは極めて低い。しかしながら1.数%ですけれ ども、極めて低い水準である。欧米のように非常に高い水準とは異なる。婚外子に関し ましては、例えばスウェーデンの1997年のデータと記憶しておりますが55%ですね。出 産の55%が婚外子である。もちろん同棲も多いですけれども、婚外子も多いと。ところ が日本のデータですと、2000年のデータで出産の1.7%が非嫡出子であると。つまり法 的婚姻関係にない女性の出産がその程度である。このトレンドはどうかといいますと、 1〜2年で0.1ポイントずつ上昇してきている。  ただし、まだ1.7%の状況ですから、0.1ポイントがずっと高齢化から10年続いて2.7 ポイントですね。そのトレンドの延長で考えるならば、まだまだ日本ではそういう影響 は少ないのではないかと考えております。  駒村委員  さらに先ほどの出生率自体の低下のその図表の22−2に絡むことなのですけれど、こ れは生物的に何か妊娠確率みたいなものが能力として落ちているのか、それとも選択な のか。選択だったら場合に、まったく生まないという選択と生むという選択がまたあっ て、生む時には何人生むか、間隔をどうするかということも重要と思うのです。その生 む人数と間隔には学歴、進学率みたいなものも影響をまた与えてくるのではないかなと 思うのですけれども、こういうのはこれまでの分析のなかでは、考慮できていたのでし ょうか。  高橋人口動向研究部長  資料でいいます。14ページ、15ページの図表の15から18のところですね。この現象カ ーブというのが、例えば第7回から第11回の19歳で結婚した人から36歳以上で結婚した 人までを重ねてみると、極めて安定している。ですからこれがある意味でいいますと、 いわば生物学的ないわば出産に関わる制約条件になっているのだろうと。それで初婚年 齢がずっと上がるにつれて、出生率が下がるメカニズムを表しているのだろうというふ うに1つは考えられます。  もう1つの例えばそれ以外のように、夫婦そのものが子を持つのを減らす要因、例え ばそれが高学歴化の影響によってそれが落ちるのではないか。それはもちろん落ちるわ けですね。なぜかといいますと、高学歴の人々の結婚の年齢というのは、明らかに高い わけですから、それは生物学的な影響によって落ちる部分というのが相当大きいと。で は学歴別に見て、結婚の影響を取り除いて、出生率が、では高いのか低いのかというこ とでありますけれども、我々の分析ではそれは教育に関しては、出生率についてはマイ ナスの効果というのはあるということは分かっておりますが、それをでは具体的にどれ ぐらい説明できるかというところまでは、まだ分析は進んでいません。  廣松部会長  それと関連して、先ほど和田委員のほうから専門家のアンケート調査の結果を説明し ていただいたのですが、そこで質問をしそこねた点として、今後25年間の状況の見通し の中で生殖能力という言葉がございましたね。そこでいう生殖能力という言葉は、いま ご質問のあったような生物的な意味での生殖能力という意味なのでしょうか。  和田助教授  おっしゃるとおりでございます。この場合は質問票としましては、日本人女性の生殖 能力、日本人男性の生殖能力が狭まるか高まるかということで、それぞれのレベルごと に聞いておりますので、こちらとしても当然、そういう生理学、生物学的な能力のこと について聞いたものです。もっともこれは見通しでございますので、単純な結果だけで すので、これがそのままそうなるかどうかということはまた別の問題です。  阿藤部会長代理  ついでといっては何なのですけれども、和田先生に、いまの調査は専門家に聞いたと いうことですね。こんなところで言っていいのかどうか、私もその和田サンプルに入っ ている。たぶん山田先生も入っていると思いますけれども、つまり専門家といっても、 私は例えば出生とか結婚とか平均寿命とか、ややデモクラフィックなものについては、 自分でも専門家と思い、そういうつもりで答えましたけれども、例えば経済のいろいろ な見通しですね。これはほとんど素人同然で答えています。おそらく専門家ですから、 まさにいろいろな分野の人が答えているわけでしょう。そのへんの、つまり全体として こういう結果が出たというのは分かるのですけれども、例えば人口分野の専門家だった ら、人口のことについて全体と違ったとか、経済については経済学の専門家の見通しと 一般とは違ったとか、そこらあたりの違いまでは分かっているのでしょうか。  和田助教授  これは当然フェイスシートでそれぞれの専門領域あるいは関心領域についてのことに ついて伺っておりますので、コントロールして再分類することは可能ですが、現在その 研究を進めているところでございます。ちょっと手元にございませんので即答できない のですけれども、専門分野に関しましては、これは329票の有効回答数がございました けれども、その中で医学、公衆衛生学をご専門だというふうに答えていただいた方は64 名。それから生物学がご専門だという方は9名。約5分の1以上、その中に含まれてい るということです。一番多かったのは経済学が専門で123名いたのですけれども、大体 それぐらいの5分の1ぐらいの、そういう意味ではそれぞれの専門領域についてはブレ がございますけれども、それぞれコントロールして再分類することは可能でございます 。以上です。  山ア委員  大学の世界におりますと、いま大学も冬の時代ということをいろいろ話題は事欠かな いのですが、いま非常に進学率が上ってきたわけですけれども、いまの動きは短大がな くなって、四大になるということですね。ということになりますと、それだけで2歳女 性の卒業年齢が遅れ、したがって婚姻年齢が遅れるということになりますが、少しずつ の動きならともかくとして、いま急速に短大が四大になっているわけですね。そうする とこれは考慮する必要があるのではないかと思います。しかも非常にいま大学に入りや すくなっているのですね。ということになると無視できないというふうに思いますけれ ども、いかがでしょうか。  高橋人口動向研究部長  もちろん前回推計においても、初婚年齢の上昇を全体では想定しているのですね。特 に前回推計においては、学歴別の人口がベースに使えましたので、東京都の大学卒の人 々の平均初婚年齢を、実は低位推計の仮定値として用いています。ですから学歴別に結 婚の動向というのは違いますので、その点は十分に加味しながらやっていこうと思って おります。  山田委員  意見と質問と半々ぐらいのものなのですけれども、たぶん今までは男性が主に妻子を 養うということを前提にして、モデルが組み立てられてきたのだと思いますし、そして1 990年前半ぐらいまでは若年男性の雇用というのは非常に安定していたという状況があ るのだと思います。しかし近年、最近私フリーターの研究をやっておりますが、フリー ターの増加であるとか、若年男性なり既婚者や若いところでの男性の失業なり賃金低下 がありますと、そちらのほうの考慮というのは、例えば加藤室長のデータだと、女性の 労働力率とかそういうものの変化というのはいろいろ変数に組み込まれているようです けれども、結婚する相手としての若年男性の例えば失業率であるとか、中高年に比べて の賃金率とか、そういう数値というのは考慮に入っているのでしょうか。  加藤室長  一部入っておりますが、具体的には男女の賃金格差そのもの自体をトレンドとして扱 ったりしていますので、ご質問の主旨だとあまり正確ではないのですが、入っていない というふうにお答えしたほうがいいかと思います。つまり全体が失業率5.3%という数 字の水準を、直接入れているのではなくて、男女間の差というもので考えているという ようなところがありますので。  山田委員  実際に若い男性自体がどれぐらいなのかと。  加藤室長  入れていないです。  廣松部会長  大体予定しておりました時間がまいったようでございますが、特にご発言がございま すでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。それでは事務局の方にご質問ですが 、資料4−1、4−2を用意していただいておりますが、これは特によろしいでしょう か。  小川政策企画官  4−1の方は前回岩渕委員のほうからご指摘があった、ドイツの出生率についての論 文でございます。4−2については国勢調査のデータでございまして、一応ご参考とし て配付しております。  廣松部会長  ありがとうございました。それでは、これらは後ほどご覧いただくことにいたします 。  本日の議論では将来人口推計の重要な論点として、夫婦の出生力の見通しをどうする かという点が提起されたように思います。具体的には資料3−2の3枚目にあります。 完結出生児数に関して晩婚化以外の要因による出生力低下があった、ないしはあるのか ということでございます。これはもしそれを取り入れるとすると、前回の推計とは大変 大きく違う点であり、同時におそらく結果もかなりそれによって左右される大変重要な ポイントではないかというふうに考えられます。残念ながら本日この点について十分な 審議の時間がとれませんでしたので、この点に関して、この部会として必ずしも合意に 達したと結論する状況に至らなかったように考えます。そこで、この点に関して、先ほ ど事務局とご相談をした結果、引き続きもう1度、この部会で審議をしたいというふう に考えます。  したがいまして最初の予定よりも1回分、部会の回数が増えることになりますが12月 にもう1度この部会を開催させていただくことにし、その間、社会保障・人口問題研究 所にこの点に関するいろいろな角度からご検討をいただいて、その結果を踏まえて皆様 のご意見をいただき、この部会としての合意に則って最終的な推計作業に入るという手 続きを踏ませていただければというふうに考えます。その点、最初に事務局のほうから もご案内がございましたとおり、お手元に日程調整表があろうかと思います。ご記入の 上、よろしくご協力のほどをお願い申し上げます。  それからもう1点、お願いでございますが、実は来月の12月13日に社会保障審議会、 すなわちこの部会の親委員会が開かれることになっており、その場で各部会・分科会の 審議状況を報告することになっております。この部会では、既に3回にわたりまして、 次期の将来人口推計の考え方とその仮定の設定に関してご議論をいただきました。また 、いまお願い申し上げましたとおり12月に入ってもう1回、引き続きこの審議を行う予 定でございます。さらに平成12年の人口動態統計の確定数、それから平成13年の人口動 態統計年間の推計も公表されるということでございますので、それらを踏まえた上で、 将来人口の推計を最終的に行うわけですが、この点に関しまして、先ほどご紹介いたし ました12月13日の本審議会でご報告させていただきたいというふうに存じます。この点 に関しまして、事務局と十分ご相談した上で、報告概要をとりまとめさせていただけれ ばと思いますが、詳細等に関しては事務局と部会長のほうに御一任いただければと存じ ますが、よろしゅうございますでしょうか。  それでは以上2点、12月にもう1回、この部会を開催させていただくという点と、そ れから社会保障審議会において、この部会の活動状況をご報告させていただくという2 点に関しましてご了解いただいたということで、本日の部会をこれで終わりたいと思い ます。先ほどご紹介いたしました人口動態統計関係の資料については、後ほど事務局か ら委員の皆様方に送付をする予定でございます。ご覧いただければと思います。繰り返 しではございますが、先ほど申し上げましたとおり、夫婦の出生力の問題に関しまして は大変重要な論点であると思いますので、もし次回の部会までにご意見、あるいはご質 問等ございますれば、事務局のほうにお寄せいただければというふうに存じます。 4.閉会  廣松部会長  以上、予定をしておりました議事は終了いたしましたが、特にご発言はございますで しょうか。よろしいでしょうか。では次回に関しましては、改めて事務局のほうからご 連絡させていただくことといたしまして、本日はこれで終了したいと思います。どうも ご協力ありがとうございました。 〜 以上 〜 照会先 政策統括官付社会保障担当参事官室 地域政策係 代)03−5253−1111(内線7785) ダ)03−3595−2160