01/11/27 第6回医師臨床研修検討部会議事録 第6回医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会          日時 平成13年11月27日(火)                       10:00〜                    場所 厚生労働省本館専用第21会議室 ○医事課長  おはようございます。ただいまから「医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会」を 開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席い ただきまして誠にありがとうございます。本日は委員の全員がご出席でございます。そ れでは、矢崎部会長、よろしくお願いいたします。 ○部会長  それでは議事に入りたいと思いますが、本日はこれまでに行ってきた論点検討を踏ま え、要望等をいただいた、さまざまな医療関係団体の方々から、考えておられる臨床研 修のあり方等について、お話を伺っていきたいと思います。初めに事務局から資料の確 認と本日のヒアリングの進め方について、説明をお願いします。 ○事務局  まず資料の確認ですが、お手元の「次第」「資料一覧」に続いて資料1「議事録」、資 料2は本日のヒアリングに関連する資料として、2−1から2−5までの資料です。資 料3は、宮城委員から提出された資料です。さらに、資料4として、前回の審議会以 降、厚生労働省宛てに臨床研修に関連する要望書が日本老年医学会、日本小児科学会か ら提出されておりますので、参考資料として付けております。  本日のヒアリングは、4つの団体の方々から発表をいただくわけですが、おおむね20 分間の発表をいただいた後、先生方の意見交換をお願いいたします。本日追加の資料と して、最初に発表される四病院団体協議会の構成される日本病院会の奈良先生からの、 2枚紙の資料があります。以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。何かご意見はございますか、よろしいでしょうか。そ れでは早速、要望団体等からのヒアリングに入りたいと思います。初めに、四病院団体 協議会のご意見をお願いします。本日は日本病院会副会長の奈良先生と、関先生にお願 いします。では奈良先生からお願いします。 ○奈良医師(四病院団体協議会)  私は、四病院団体協議会の医療制度委員会の委員長をしております日本病院会副会長の 奈良でございます。私は、栃木県足利市にある足利赤十字病院の病院長を、11年務めて おります。内科が専門で、さらに神経内科ということをやっております。医道審議会臨 床研修検討部会のヒアリングに出席させていただいて、意見を申し述べることができま すことを大変光栄に存じております。資料2−2をご覧いただきたいのですが、本年5 月17日に厚生労働省伊藤雅治医政局長に、第4次医療法改正に伴い、平成16年度にス タートする臨床研修制度への四病院団体協議会からの要望書を提出しました。  同じ内容のものを5月7日、日本医師会坪井会長宛てに提出しております。内容は4 点に集約されています。まず第1が、これからの臨床研修は現在大学病院を中心に行わ れている研修から、厚生省臨床研修指定病院を中心にした、第一線の病院群で行うよう にしていただきたいのです。  実は足利赤十字病院も厚生省の臨床研修指定病院ですが、私の足利赤十字病院は、6 大学医学部からの研修医を受け入れております。多少の差はありますが、大学から派遣 されている研修医のほとんどが専門志向です。例を挙げますと、内科医であっても自分 の目指す専門分野以外には、消極的にしか興味を示さない欠点が目立ちます。当直勤務 は救急センターに配属になっても、安易に小児科のオンコールを呼ぶ傾向が目立ちま す。理由は自分の守備範囲を逸脱するまいという安全主義ですが、経験のない者は自信 がない、危ないものは手を出さない、といったことであると思います。  大学によっては小児救急の教育研修がほとんどない大学もある、と聞いております。 しかし、将来日本の医療を支える家庭医として育てるためには、小児医療も第一線の現 場で、必須で経験させていただきたい。各科の専門医は、すべての通常診療を経験した 医師が次のステップとして志すものでして、ごく普通の一般疾患を診療できない医師 は、ちょっと厳しい表現を使いましたが「偽専門医」と申しました。このような専門医 ばかりを育てますと、医師を何名つくっても足りないことになります。  2の問題があります。研修医も生活がありますので、司法修習生のように国費で面倒 をみていただきたいと思っております。いたずらにアルバイトに走らぬよう、安心して 研修に励めるよう、月20万程度は支給していただきたいと思っております。仮に年額240 万とすると、1万6,000人の研修医の支出は380億円程度に収まり、個人的な意見ではあ りますが、現在研修医の闇夜の機関銃のような検査の無駄が省かれれば、医療費も節約 できるものと考えております。また、指導医については、研修病院あるいは診療所に適 当な額の補助を支給していただきたいと思っております。  3が、一時2年間の研修が終わるまでは保険診療を認めないという話があったと聞い ておりますが、昔のインターン制度と異なり、今回の研修医は医師免許を所持している のでありますから、所定の手続を行えば、保険診療を認めるべきであると思います。な ぜならば、全人的な医師を育てるためには都会の大病院ばかりでなく、地方の小病院、 診療所、離島、へき地の診療も経験させる医師研修プログラムも、必要になると思って おります。これは都会の大病院への医師の偏在の傾向を改める助けになるのではない か、と思っております。  実は地方の小病院・診療所に、本当の患者のための医療を行っている立派な医師がい ることを知っております。いま若い医師に欠けていると思われる温かい人間的な医療を 経験させることが、日本の医療にとっても最も大切な改革であると存じます。具体的に は、研修期間の2年の前半を厚生労働省に承認された臨床研修指定病院群で研修させ、 後半を地方の小病院、診療所、離島、へき地で腕を磨かせることが必要かと思います。  ところで、臨床研修病院の要件に剖検率がいまだに問題になっておりますが、CT、 MR、超音波、内視鏡などの進歩した現在、剖検率を問題にすることは時代の流れにと り残されるのではないか、と危惧しております。栃木県の県北、二次医療圏の中核病院 に、大田原赤十字病院という病院があります。実は500ベッドで医療機能評価機構も立派 に合格し、三次救命救急センターを運営し、救急患者数は年間3万以上、小児救急8,000 の病院であり、そして地域医療、病診連携を見事に行っておりますが、この辺の地域住 民の意識でしょうか、剖検率だけがどうしてもクリアできません。大田原赤十字病院 は、臨床研修病院としての資格は十二分にあると存じております。  なお、赤十字病院92中臨床研修指定病院38病院、三次救命救急センター病院24病院、 医療機能評価機構認定合格病院が13ですが、医療機能評価機構認定であっても、臨床研 修指定病院でない病院も複数ございます。これらは剖検率を問題にされて合格いたしま せん。厚生労働省御当局の御英断で、剖検率の再検討をお願いしたいと思います。私見 ですが、臨床研修は医療機能評価機構認定、臨床研修指定病院、救命救急センターの3 条件を満たした病院を責任の核として臨床研修病院群を組織し、研究させるべきだと思 います。  4番目に、本日、私ども四病協の意見を聞いていただきありがとうございました。今 後とも我々地域医療の担当者から、広い日本、特に市町村の医療の現場について、ご諮 問いただきたいと思っております。以上、私が申し述べることを今日抄録にまとめてま いりました。  実は私どもの病院に、大変立派な医師がおります。石倉医師と申しまして、早稲田の 法学部を卒業してから、父島の町役場にまいりました。そこで救急医療がいかに大切か ということを身にしみて感じて、それから佐賀医大に学士入学いたしました。それから しばらく佐賀医大の範囲内の離島で診療しておりましたが、やはり臨床研修を受け直し たいということで、私どもの病院に応募してこられました。足利赤十字病院で2年研修 しましたが、人間的に非常に立派なドクターであり、先般三宅島の噴火の救護隊には率 先して出陣してくれたのです。内科ですが内科だけでなくあらゆる科を満遍なくクリア できました。  もう1人、島田医師という女医がおりますが、これは北海道の獣医科の大学を出て、 それから、やはり医師になりたいということで、富山医科大学を卒業しました。富山医 科大学に行っている間に、ボランティアとして国外援助のスタッフとして参加しており ます。いま盛んに戦乱のある中近東にも行っておりました。やはり、臨床研修をやりた いということで、足利赤十字病院に赴任してまいりました。大変常識のバランスのとれ た立派な医師です。  もう1人山根医師という者がおりまして、同志社大学を出てから、やはり滋賀医大に 入りました。それからハーバード大学に留学して、帰ってきて日赤にまいりました。い ま我が病院のPTCAベテランとして、活躍しております。なぜこの3人が大学に残ら なかったかを聞いてみると、大学の医局制度が非常に窮屈である。それから、医局に入 ると研究、研究ということでやられるので、それだったら思い切って現場へ出たいとい う希望が強かった、というふうに言っております。  私はその3人のドクターを見ていて、大変立派なドクターである。これからはこうい うドクターを育てなければいけないと思っています。私は栃木県ですが、栃木県の那須 の山の中に見川泰山先生という、皆さんご存じだと思いますが、『本日休診』という小 説をお書きになった先生がいらっしゃいます。90歳を超えているのですが、いまだに診 療をやっておられます。ときどきお会いしてお話を承りますが、非常に温かみのあるい い診療をしていらっしゃいまして、何か我々が忘れていた人間味を見川先生が持ってい らっしゃる。90歳でもまだ活躍しておられますが、臨床研修制度が出来たときには、是 非、見川泰山先生の所にも研修に行けるよう、そして、地方の小さい病院でも、へき地 においても立派に診療を続けている医師がおりますので、そういう所で是非勉強させた いと思っております。  非常に優秀な金時計級の者がうちの病院に結構来ておりますが、そういうふうに社会 的経験を積んだ医師と比べると、やはり、人間的にもう少し磨きがかかったほうがいい と思うことがありますので、臨床研修については、是非そういう研修をお考えいただき たいと思っています。私からは以上です。次に精神病院協会のほうから、発表させてい ただきます。 ○関医師(四病院団体協議会)  日本精神科病院協会の医療政策委員をしております関でございます。私は、松本にある 精神科を含む臨床13科を有する医療法人病院の、理事長、院長を務めております。今日 は四病院団体の代表ということでもありますが、特に精神科の卒後初期臨床研修に関し て、意見を述べさせていただきます。  まず人間存在というものは、単に肉体的なものであるだけではなくて、心理、社会的 存在でもあります。WHOの健康の定義にもありますように、健康とは、physical ment al and social well being というふうに書いてあるのですが、ここには、そういった 心理、社会的な面がきちんと理解されているわけです。  一昨年、WHOの総会において、これにさらにSpiritualという言葉を加え るということが議論されたのですが、そのときには採択されませんでした。これはいろ いろな宗教的な理由や、さまざまな問題があったのです。こういった動きは、人間の本 質が心にある、ということを世界中が追究していることの証しだろう、と理解していま す。  さて、医学教育においてもbio−psycho−socio−ethical−v iew.生物学的あるいは心理的、社会的、そして倫理的な視点というものが大変強調 されておりまして、近年これが重要であるということに、改めて注意がそそがれていま す。卒後初期研修で習得すべきことは、救命からターミナルケアまで将来医師として遭 遇する医療のさまざまな場面において、的確な判断と手技が行われるよう訓練すること にあることは言うまでもありませんが、医師として信頼され、尊敬されるに足る基本的 な診療姿勢が身に付けられる。そして、人格が涵養されるところにもある、と考えられ ます。  それは、医の倫理が強調される所以でもあると思います。ことにこれからの移植医療 であるとか、遺伝子治療等の先端医療においてはなおのこと、倫理的にしっかりとした 診療姿勢が求められています。  私ども日本精神科病院協会は、他の関連諸団体と精神科七者懇談会を形成していま す。これは奈良先生の資料の3頁にあります。ご覧になって分かるように、日本精神神 経学会、これは学会です。ほか講座担当者会議、あるいは日本精神科病院協会、国立精 神療養所院長会議、全国自治体病院協議会、日本精神科診療所協会、日本総合病院精神 医学会といった、現在、精神科の医療に、あるいは、教育に携わるすべての団体がこの 七者懇談会を形成して、共通の課題について検討しているわけです。  ここで私どもは卒後初期臨床研修に関しても平成12年から検討を重ねておりまして すでに各関係方面に対して、七者懇の名前で3度アピールを行っています。いちばん最 近の資料は健康政策局の中島課長宛てに要望を出したものですが、その他の諸関係団体 にも、これを送付しております。  私がここで申し上げたいのは、まず現在患者が病院・診療所等を訪れたときに、大変 多いのが不安、抑うつ状態です。WHOによると、近い将来、うつ病の患者が癌をしの いで最も多くなる、ということが言われています。ひるがえって、うつ病の診断はみん ながどの程度できるのかということを考えた場合に、ちょっと古い資料ですが、199 0年代ぐらいに世界の各都市で調査を行ったことがあります。これによると、日本にお いて医師がうつ病を正しく診断する率は、諸外国に比べて非常に低いことが分かってお ります。  その反面、現在いわゆるうつ病の治療薬である抗うつ剤は、むしろ精神科以外の科で 処方される例が大変多くて、その割合は一般科で6割ぐらい出されています。抗不安薬 も当然一般科が大変多いです。もう1つ睡眠剤です。これは私ども精神科の専門医から 言わせると、少し野放し状態ではないかと思われるぐらい、たくさん使われています。 こういったことは、きちんとトレーニングを受けて処方ができないと、大変問題です。 特に薬の処方等に関しては、卒前の教育では基本的には無理でして、卒後の早い段階で そういった正しい薬剤の使い方等も、研修していく必要があるということが1つありま す。  そういった意味で、精神科の教育の重要性ということがだんだん認識されていて、文 部科学省の医学部の卒前教育のコアカリキュラムの中にも、精神科が入っています。こ こで挙げられているものは、私どもが今後卒後初期研修で行うのに必要な精神科の教育 の問題と大体共通するわけですが、それはさらに卒前の教育を補完するものである、と いう理解があります。  私どもは先ほど申した七者懇を含めて、こういった卒後初期研修を受け入れる体制を 十分整える自信がございます。年間約7,500人という研修医が出てくると思いますが、こ の方たちに対して、最低1カ月、あるいは2カ月ぐらいのプログラムを組んで、この研 修を行わせることが可能であるということを現在検討しております。  これは実際、四病院団体の会議においても、こういったことが理解されていて、今後 精神科を是非必修化していただいて、特に全人的な医療を行える医師の養成ということ に対して、その辺りを是非ご検討いただきたいと思います。お配りした資料に細かく書 いておりますので、その辺りをまたよくご覧になっていただけたらと思います。以上で す。 ○部会長  ありがとうございました。いまご説明いただいた内容についてのご質問、あるいは、確 認等があれば、委員の皆様からお願いしたいと思います。 ○福井委員  2つほど質問させていただきます。いま関先生がお話になったことですが、私は国立大 学附属病院のほうの検討部会の委員をしていて、いろいろなルートから要望書をいただ いて読ませていただきました。私も一般内科をやっている者として抗うつ薬や抗不安薬 を処方せざるを得ない場面がものすごく多いし、プライマリーケアでは、ある統計によ ると3割近くの患者さんが、何らかの精神的な問題をかかえていると思います。そのた め、研修医には精神的な疾病の診断と処方は教えなくてはならない。しかし、それが直 ちに、精神科でのブロック・ローテーションが必要になるという話になるわけではない と個人的には考えております。一般外来でそういう患者についてのトレーニングをする ことも可能で、ずっと精神科をローテイトしなくてもいいのではないか。精神科の先生 にコンサルタントとして教えていただくことも、形としては考えられるのではないか、 というのが1つです。  もう1つは、奈良先生のおっしゃった人間味のある医療ができる医師を養成したい、 というのはみんながそのように願っていまして、そのようなカリキュラムを是非作りた いし、制度にしたいと思います。先生のおっしゃった3人の方のうち1人の方について は、私はかつて佐賀医大におりましたので、個人的にも面識があったのではないかと思 うのですが、研修でそういう人間味のある人に育ったのか、もともとそういう人間味の ある人がそのようなルートを辿ってこられたのかということは、どちらが先なのでしょ うか。 ○奈良医師  卵と鶏の関係かもしれませんが、やはり、諸外国では医師になるのに社会人を経過して からなる国もあります。私どもの病院は、こういう所で言っていいかどうか分かりませ んが、実は、現在の慶應の医学部長も、私どもの病院の外科部長でした。非常に優秀な ドクターが我々の病院に来て研修していくのですが、やはり、大学だけで研修した先 生、特にいまの体制ですと、どうしても大学で医局の入局を前提として研修を始める者 が多いものですから、内科なら内科でも我々の大学では7専門科があるわけですが、ど うも初めから研修に紐付きで来る者が多いわけです。そうすると、極端な場合、非常に 優秀な神経内科の専門医が胃の透しを一度もやったことがないとか、胸部写真は見落と しがあると心配だからと称して、呼吸器の専門家をつかまえて読んでもらう、そういう わりに他力本願のドクターを育ててしまうのではないか。  ところが、佐賀医大のイシクラ君は、まずスタートが小笠原群島の父島の村役場の職 員をやっていたのです。そして、医療というものがいかに大切かということで、医療と いうものは離島などでいろいろなことを経験しているうちに、やはり、勉強するべきも のであるということで佐賀医大にお世話になって、おそらく佐賀医大の教育は非常によ かったのだろうと思います。ただ、私どもの病院は6大学が入っています。大学にもい ろいろな特徴があります。非常に人間味あふれる教育をしておられるのではないかと思 われる大学があるかと思うと、何か学者様を育てるように、学問、学問、症例報告とい ようなことを頭に叩き込んでくる者もおります。  ですから、私は一般臨床をやって、ありとあらゆることが出来た上に専門をやるべき である。私事になって申し訳ありませんが、私の父親は大正の初めに医者になりまし て、ずっと一開業医で済んでおりましたが、私の父の機械戸棚の中には耳鏡も入ってい ましたし、額帯鏡も入っておりました。私は子供のときに、何か金属製のアヒルのくち ばしみたいな機械が入っていたので、一生懸命それで遊んでいたら大変怒られました。 いろいろ聞いてみると、クスコでした。  やはり、第一線の医師は、例えば、昔は婦人科でも何でもある程度これは危険なお産 であるとか、そういうことを見分けることができるような体制をとっていたのではない か。それがだんだん専門化して、専門化することがいいような錯覚を起こしているので はないか。これは私、口が悪くて申し訳ないのですが、大学の教育に多少問題があるの ではないか。ですから、一般研修をきちんとやって下地ができてから、改めて研修をす るべきであると思っています。  研修しているうちに、私どもは地方に赤十字病院がいくつかありまして、医師も来な い、看護婦も来ないという非常に厳しい状況ですが、そういう所に手伝いに出します と、大事にされてとてもいい気持だということで、居残る人がいます。昔我々はイン ターンを1年間やって、ある程度自信を付けてから医局に入ったわけです。やはり研修 医も地方のそういう病院で、1年目からは無理だと思いますが、ある程度の常識を得て 経験を積んだあと地方の病院に出して、場合によってはへき地の診療所にポーンと飛ば してもいいと思うのです。そこで自分を磨かせることも必要だと思います。そうすると 医師の偏在が、いくらか是正されるのではないかと思っております。以上です。 ○関医師  一言、精神科にはコンサルテーションないしリエゾンという領域がありますが、これ は、いわゆる旧医療法の総合病院であればそれは可能なのですが、そればかりではない のです。精神科がない旧総合病院もたくさんあります。つまり、総合病院の定義には精 神科が入っていませんでしたので、そういう意味で言えば、先生がおっしゃるようなコ ンサルテーションも簡単に出来るわけではありません。  むしろ、基本的に、薬剤だけではないのですが、患者のそういった精神的な面につい ては、早い時期にトレーニングを積むというのは、むしろ一般科を専攻した先生たちに 対して、非常に心配しているところです。そういう意味でも、最初にそういった時間を 取っていただくことが必要だろうということです。それでよろしいでしょうか。 ○部会長  結構です。予定の時間が過ぎておりますので、簡単にご質問していただいて、ご返事も 簡単によろしくお願いしたいと思います。 ○堀江委員  奈良先生への質問は省略します。関先生、私たちの大学では、ストレート研修をやめる 方向でいま議論が進んでいます。精神科については、私も大切だと思いますし、それを 取り入れようという考えでやっておりますが、受入がどれだけ可能なのかが、1つ問題 になっています。全員必修は難しいのではないか。したがって、内科系だけではどうか ということで進んでいます。  もう1点は、精神神経学会としてということになるかもしれませんが、精神神経学会 では専門医制度が確立されていないと思います。そうしますと研修の指導医認定と研修 カリキュラムがどういうことを目標にして組まれるのか、画一的なものが可能なのかど うかという疑問があります。その辺についていかがでしょうか。 ○関医師  精神科においては、いわゆるプラクティカルな医療が大変大事でして、先生がおっしゃ っる専門医や認定医というものは、資格に必ずしもそういう要件が欠けていることがあ ります。精神科においては、精神保険指定医という厚生労働省が制度化したものがあり ます。これが今日出した資料にもあるように、かなりの数があって、こういった精神保 険指定医は十分指導をすることができます。  先ほど申したように、七者懇はすべての精神科の医療にかかわる団体が入っておりま して、この中で十分量的にも研修を受け入れられるだけの体制を整えておこうというこ とで、実は今日夕方にその会議があるのですが、今後はそういったことに向かって、皆 様にいろいろな提案ができるだろうと思っています。 ○横田委員  奈良先生にお尋ねします。理念に基づいてものが動いていくのだと思いますし、先生の 理念は大変素晴らしいものだと思うのですが、実態的に、研修内容の提示をしなければ いけない。それから、研修のクオリティの維持をどのようにして図るかということが、 実は非常に大きな問題だろうと思っています。内容に関しては先生の言われた思いやり の、いわば医道ということ。  さらに専門性というのは決して悪いものばかりではなくて、医療技術はいろいろ進歩 しているわけですから、その習得をしなければいけない。しかも、それが2年間の枠の 中でしなければいけない。そうすると、研修内容の提示であるとか、質のコントロール を具体的にどうするかという問題が大きいのではないかと思うのですが、その辺は持ち 合わせでしょうか。 ○奈良医師  私は、2年間は専門の教育をすべきでないと思います。一般的なものを広くやるべきだ と思います。専門というのは先ほど申したように、一般的な医療を体得してから専門に 走るべきであって、あまり早い時期に、研修医時代から専門教育をしようとするから、 いまのような非常に視野の狭いドクターができてしまって、内科医であるのにほかの領 域は一切手を出さない。まして、小児科の患者は、全部小児科のオンコールを呼ぶ、と いうおかしなことが起こっています。これは諸外国でも非常におかしなことだと言われ ております。 ○部会長  ありがとうございました。 ○高梨委員  奈良先生にお伺いします。先ほどのご説明ですと、研修医に月額20万円程度の報酬が渡 される、という感じがいたします。伺いたいのは、保険診療を認めるべきだということ になってきますと、診療報酬が指定病院として得られるわけですが、その得られた中か ら研修医の人に何がしかの報酬を20万円とは別に渡すことをお考えなのか、20万円だけ なのか、という点が1つです。  もう1つは、ペーパーのほうで「研修医のアルバイトは禁止」となっています。いま 現在はアルバイト先で保険医療をやっているケースがあるのだろうと思っているのです が、保険診療を認めるべきだということを言っているということは、臨床指定病院群の 中だけで保険診療をやりましょうというご主張なのか、その辺を教えていただきたいの です。 ○奈良医師  臨床研修指定病院の中には、場合によっては、へき地の診療所といったものも入ってい ます。そういうものは保険診療をやっていますから、そこで保険診療をするときには所 定の手続をとって、県に届け出てやるわけです。ですから、研修医は医師免許を持って いますから、よろしいと思います。  これは大変暴論でこういう所で申し上げていいかどうか分かりませんが、私はタバコ 税を思い切って上げろ、1箱1,000円ぐらいにしろと。1,000円にすると何と7兆5,000億 円ぐらい入ってくるのです。英国は850円だそうで、諸外国の平均的な金額は、欧米諸国 では500円だというのです。日本ほどタバコに甘い国はない。別に何ということはありま せんが、予算がないのでしたらタバコ税をポンと上げて、2円、3円などケチなことを 言わないで、ボンと1本10円ぐらい上げてこういう教育研究とか、老人医療に充てたら どうかと思いますが、これは暴論です。 ○部会長  ありがとうございました。一応四病院大学協議会のご意見を拝聴しました。奈良先生か ら2年間の研修のうち前半の1年は研修指定病院で、そのあとの1年はそれ以外の病院 で、というご提案もあったかと思います。それについては、制度設計上どういうふうに 考えるかということも問題ですので、もし病院会のほうで何か具体的なものが考えられ るようでしたら、またあとでご意見として提出していただければと思いますので、よろ しくお願いいたします。本日はお忙しいところ、ご参加いただきましてありがとうござ いました。 ○奈良医師  どうも失礼いたしました。 ○関医師  ありがとうございました。 (奈良・関両先生退席) ○部会長  次に、全国自治体病院協議会からご意見を賜りたいと思います。本日は小山田会長と、 青沼先生にご出席いただいております。20分間で、よろしくお願いいたします。 (小山田・青沼先生着席) ○小山田医師(全国自治体病院協議会)  全国自治体病院協議会の会長、小山田でございます。ただいまの奈良先生のご発言と重 複しないような形でお話させていただきたいと思います。現在私ども全国自治体病院の 中で臨床研修指定病院に認定されている施設が、全指定病院の32%に当たる156施設が入 っております。その実績と経験を踏まえて、今後臨床研修必修化に向けての取組みは、 基本的には全人的医療に根ざした地域医療ができる、そのための基本的な臨床能力をそ こで培うということが必要だ、と思うわけです。そのためには次の点について、強く要 望するわけです。  まず先ほど来も出ていましたが、その卒業生が研修する場合に、できればその出身大 学でない所、あるいは、それがもしあまりきついのであれば、出身大学にこだわらない 全国にある地方の指定病院で研修するような配置をしてほしいということ。それから、 研修医並びに指導医に対する給与はこれまでのような診療報酬からではなくて、その全 額を国から支給すべきだということです。  次には、いわゆる指定病院と指導医のことですが、私どもは2年間の研修の中で、い わゆる救急医療、へき地医療、保険医療、また福祉・介護等の包括医療も、ある期間是 非体験させたい。そのためには現在ある主病院をはじめ、その地域にある、いわゆるそ うした分野で十分に指導できる医師を有している中小病院の2つ以上の病院を従病院と して指定して、その主・従の病院でしっかりとしたカリキュラムを編成してやるべき だ、という考えです。  このことについては、私ども協議会の中に中小病院委員会がございます。そこで現 在、医院長をやり、そして、実際、田舎の小さな病院で研修医の指導に当たっている青 沼委員長が今日来ておりますので、青沼先生から中小病院のあり方を含め、そうした場 合の従病院の指導医がどういう形であるべきか、というような点について述べていただ きたいと思います。 ○青沼医師(全国自治体病院協議会) 全国自治体病院協議会中小病院問題委員会におります青沼です。若干小山田会長が発表 されたことに付け加えたいと思います。私たち中小自治体病院の臨床研修が大変高い医 師の育成に期待できる理由を、2つ考えております。その1つは、大病院ではなかなか 研修できない大切な部分、すなわち、病んだ人を看、家族の気持にまで配慮して、地域 の問題にまで思いを及ぼすことができる医師、つまり、全人的医療を展開できる医師を つくり出せるということです。  現在の国の指定基準では、疾病とか臓器を診る医師が中心でして、そういう医師の養 成が中心であるように思われます。臓器別の専門医療も大変重要な医療であるというこ とは、私も重々分かっておりますが、その一方で、地域包括医療を実践し得る中小自治 体病院や診療所のように、住民のすぐ傍にいて、住民と同じ位置に立ち、同じ目の高さ で話すことのできる医師、患者とその背後に広がる種々の事柄も含めて見ることのでき る医師をつくり出すための研修も、必要ではないでしょうか。専門分野の疾患を治療す るのみの医師では、これから本当に国民が期待する医師を育てていくことができない し、また、医療を十分に担っていくことは難しいのではないかと思います。  第2の理由は、地域医療の確保です。医師の偏在が叫ばれて久しいわけですが、一向 に改善される兆しがありません。私は、いまここで地域に医師がいないから医師をよこ してくれというわけではありません。地域に多く存在する中小自治体病院で実際に働い てもらうことによって、大病院なる都会のみが医師の活躍する場所ではなくて、広く日 本全体に医療の場があり、それぞれが重要な役割を果たしているのだ。そして、それら の場所で、医師は非常に渇望されている。また、それに応えていくことが、医師として の職業人としての大切な使命ではないか、ということを若い人たちに理解していただく ことが臨床研修の目的にかない、また、地域に最も確実で優れた医師を確保する方法で はないか、と考えております。  そういう中で、やはり研修となりますと、基準が必要であろう。そして、施設の指定 基準が必要であろうかと思っています。私どもはいま考えているところですが、その中 でお願いしたいことは、臨床研修指定病院は、必ず医療圏内にある地域包括医療を展開 している他の1つ以上の中小病院、もしくは、診療所などと群をなして指定を受けても らいたい。それから、我々地域医療をやっている者としては、地域医療の実践が5年以 上経験がある。さらに、地域医療を展開している病院には、できるだけ病院だけではな く療養型病床群とか、介護老人保健施設、介護老人福祉施設、在宅介護支援センター、 訪問看護ステーションなど、いろいろ複合的な施設を併設していることが望ましい、と いうふうに考えております。  また、人員基準としては、地域包括医療を展開する認定医、並びにそういう指導医と いうものをきちんと確立していく必要があろうと思います。そういう意味で、これは全 国自治体病院学会とか、全国地域医療学会などとも連携を取りながら、そういう指導 医、認定医の規定をしていかなくてはいけないと思っております。また、地域でそうい う医療を展開するときに、医師のみならず、いろいろなコメディカルスタッフの協力を 得られるような、そういう環境が必要であろうと思っています。  最後に、研修プログラムとしては、保険医療、福祉を連携した、いわゆる地域包括医 療を学べるカリキュラムに基づいた、研修のプログラムがきちんとあるということ。臨 床研修指定病院群の中に臨床研修委員会をつくり、互いに連携し、より良い研修にする ための協議をきちんとするということ。研修に当たっては、院長もしくは所長が研修の 全責任を負い、該当医療機関全体で研修に当たるべきであるということ。そして、研修 についての評価を、医療機関と研修医の双方において行い、場合によっては指導医や指 導体制への第三者機関の評価が必要である、というふうにも考えています。以上、私た ち全国自治体病院協議会で考えている臨床研修のあり方について、述べさせていただき ました。この考え方は、全国国民健康保険診療施設協議会とも十分連携を取った上で、 こういうことを考えております。以上です。 ○部会長  ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、ご質問あるいは確認するこ とがありましたらどうぞ。まず山口委員からどうぞ。 ○山口委員  2点ほど発言させていただきます。1つは、いま地域包括医療が自治体病院の、特に中 小病院では現在やっていますし、またそういうことを医師の臨床研修で研修してもらう 必要がある、こういうお話でした。まさにそのとおりだと思います。そこで私ども国保 の直診というものは市町村立でして、病院が400弱、診療所が800あります。私自身の病 院もそうですが、自治体病院協議会の会員でもあり、国保の国診協の会員でもあるわけ です。  いま先生のおっしゃった地域包括医療の実践は直診の理念でもあるのです。いま先生 のおっしゃったように中小病院というのは、大体市町村立病院です。自治体病院には都 道府県立もありますし、大病院から小さい病院までいろいろあるのですが、大体市町村 立病院というふうに理解していいのかどうか。それが1点です。  2点目は、こういう地域包括医療を行って、特に専門医療ではなくて在宅医療、老人 医療、先ほどおっしゃった介護保険の分野まで、私も実際にそれが必要だと思っており ますが、そういうことをする場合に、病院の若いお医者さんが「そんなことは」という わけで理解しないといいますか、抵抗を示さないかどうか。もしそういう場合を経験し ておられれば、どのようにして解決されたのか。これが2点目です。 ○小山田医師  1点目は私からお答えします。市町村とか県だけを考えているわけではありませんで、 民間でも研修の従病院であれば、それは十分連携してやっていくべきだと考えておりま す。 ○青沼医師  2番目の質問にお答えします。私の数少ない経験ですが、私の病院に来た先生も、大変 肝臓や膵臓の専門の先生でした。ただ、私たちと一緒に仕事をしている中で、これは面 白い、やりがいのある医療である、大変充実している、というようなお話を伺っていま す。若いお医者さんたちの中には、地域医療に情熱を持っている人たちが結構いるので はないかと思います。ただ、いまの教育システムの中で、そういうものに接する機会が ない。そういう意味で、この臨床研修のある一時期を地域の病院で過ごしていただい て、その人たちが全部地域医療をやれというわけではありませんで、そのうちの何割か の方に地域に戻ってきていただく、それが大事だろうと思います。  日本は東京だけで動いているわけではありません。地域があって動いているわけで す。地域で皆さんが安心して暮らせるようにするために、地域医療というものは大変重 要なものだと思っております。 ○山口委員  お考えは、大体分かりました。私自身そう思っていますし、自治体病院が国保の直診だ けではなくて、全国にこういう地域包括医療を実践している病院は、たくさんあると思 うのです。民間も含めて、最近は社会保険病院、済生会、日赤といった公立病院も、 我々の仲間がたくさん増えてきつつあります。今度これを機に、みんなが大同団結し て、研修ができる場を作っていただければありがたいと思っていますので、今後いろい ろ諸団体とも連携プレイを取っていただくように、お願いしておきたいと思います。 ○中野委員  私の地域でも中小自治体病院に該当する病院がありまして、現行ですと、私が九州大学 からの派遣側の代表だろうと思います。研修医にとってどういう役割をしていただける のか、いつも悩むのです。そこで、この資料2−3の3枚目に、自治体病院ご推奨の臨 床研修カリキュラムが掲げてあります。この中を見てみると、第1週がおそらく現有の 診療科体制における研修、ということを表わしておられるように思うのです。例えば、 産科、小児科等プライマリー性の高いものが入っていないとか、そういうことではない のですが、どういう理由でこういうカリキュラムを作られたのか、という質問にしまし ょうか。  というのは、お話を聞きますと、プライマリーケアの社会ニーズということで、カリ キュラムの大切さでご説明されたし、私もそれはよく理解できます。一方において、人 材確保の安定化というお気持を持たれていることも、現場から承知しています。そうい うことで見ると、例えば、ただいまのようなカリキュラムを組み上げざるを得ないとい う経営実態等々照らして、カリキュラムの安定供給に対する不安というものを私たちは 感じるのですが、その辺はいかがでしょうか。そこで先ほどの3枚目、研修カリキュラ ムの第1週目の「診療科の選択」というのは、どういうことでこういう表現をなさった のでしょうか。 ○小山田医師  原則的にはそれぞれの病院、それが従病院の担うべき役割と、できる能力範囲がありま すので、これは一例でして、いくつもの選択肢があるようなカリキュラムを作るべきだ と思うのです。ですから、その病院にとってそれぞれの、1カ月はどの分野、2カ月は どの分野ではなくて、その主病院と従病院との間でいろいろな形でそれが満足されるよ うな期間と指導医との関係で、決めるべきだと考えています。 ○中野委員  そうすると、経営などということで必然性があって、そういう診療科を中心に研修サー ビスができる、という話とは全く違うと。 ○小山田医師  全然違います。 ○中野委員  分かりました。 ○小山田先生  あくまでも教育でありますから。 ○中野委員  小児科とか産科をあえて外されたのは、どういう施行方法なのでしょうか。 ○青沼医師  これは外したわけではなくて、中小病院ですべての診療科を備えるというのは、なかな か難しいのです。いま会長が申し上げたように、ここはひとつこの病院、これは実際に ある病院です。この病院でできることはこういうことなのです。この部分で足りない部 分は、やはり主たる病院できちんと小児科とか産科というものはやるべきであろう、と 考えています。 ○杉本委員  先ほど、指導医あるいは認定医が指導に当たるというふうにおっしゃられたのですが、 この指導医あるいは認定医というのは、どのようにして育て、どのようにしてその資格 を認定なさるのか、というのが1つです。もう1つは、研修の評価を第三者機構で評価 するということも言われましたが、おっしゃる第三者機構とは、それの病院あるいは施 設群に付置される第三者機構なのか、あるいは、全国的に非常に大きな国家的規模の評 価機構というようなものをお考えになっておられるのか、この2点を教えていただきた いのです。第1点目は、包括医療あるいは地域医療の指導医をどのようにして育て、そ れをどのようにして認定なさるのかということですね。 ○小山田医師  現在は学会的な面で実際の地域医療の指導医というようなしっかりしたものはありませ んが、将来はそうしたことで、例えば、私ども自治体病院とか、地域の医療をやってい る所で構築していくべきだろうとは思いますが、現在は少なくとも、そのところでこう いう包括医療、あるいは地域医療を何年間か、こちらで考えているのは少なくとも6年 ぐらい経験して、周りの主病院あるいは従病院の群でも、個々のところでは、この先生 であればこの分野については十分な指導能力がある、という方をそこで認定といいます か、主病院との間で、あるいは、それが大きな立場でそうした資格を与えられるように なれば、いちばんいいのですが、いまはそういうようなことを考えています。それか ら、評価につきましては、これはまずは病院、あるいは病院群で評価すべきですし、全 国的な視野での評価は絶対に必要だと考えています。 ○杉本委員  そうしますと、いまの指導医の認定というのは、いわば中核病院が認定したものという ふうに考えてよろしいわけですね。 ○小山田医師 中核病院だけではなくて、病院群の中で。 ○杉本委員  地域の中でそれなりに評価をされたものということであって、具体的な評価基準とかい うようなものがそこにあるわけではない。 ○小山田医師  現在のところはないですが、おおよその目安はいま言いましたように、例えばへき地医 療であれば5年、6年、そこに住んでおって実際にやって、この方はへき地医療につい て十分な経験があり、指導力があるという所にはどのぐらい行くか。2週間か、1カ月 か。それは言うことができる能力があるかどうかというのを、病院群の中で検討して決 める。現在はそのようなことを考えています。 ○杉本委員  どうもありがとうございました。お尋ねしたのは、いまおっしゃったような形の研修の スタイルというのは、前々からいつも言われているわけですけれども、それが一向に具 体的なものになっていかないというのは、指導医をどのようにして求めるかということ がネックになっていたためだと思うのです。それで、それについてのアイディアを何か お持ちでいらっしゃるだろうかと思って、お尋ねしました。 ○小山田医師  現在、私どもの所で、いま私が申し上げましたような形で、私どもが自信を持って、こ の方はこの分野で指導できるという方が何人おるのか。どの方がどうかということを、 現在調査中なのです。 ○辻本委員  全国の患者さんの電話相談などを受けて、個性的かつ先進的な医療を実践していらっし ゃるということが中小病院の強みで、そういうことを努力されていることを重々承知の うえで、あえての小さな危惧を申し上げたいと思うのです。いまのお話を伺っておりま して、地域病院、中小病院なら、なぜ研修医の人間性が磨かれるのかという根拠が私に は見えてこなかったのです。実際には電話相談など、言ってみればレベルがバラバラと いうのでしょうか、医療の質が低いと思われるような中小、地域病院の現状を訴える声 が、いまもたくさん届いているのです。そういう中で、果たしてどういう根拠で立派な 研修医、医師を育てますというふうにおっしゃっているのかということをお聞きしたか ったことが1つです。それから、ますます経営ということが厳しい現実に晒されていく 中で、本当に教育ということの余裕がおありなのかどうか。その辺りを確認させていた だきたいと思います。 ○小山田医師  中小病院が地域医療というものに対して、十分にそれを研修させるだけの質の良い医療 をやっているかどうかという点、これは中小病院だけではなくて、私ども全体の問題で すので、地方病院は駄目なんだとか、それはないと思うのです。  次は経済的なものでなくて、初めからこれは労働力としてやるものではない。国がや るのであれば、しっかりとした体制と指導がなければいけない。ですから、給与に対し ても国で出してほしいということを言っているのでありまして、決して経済的な、ある いは労働力としてやるということは、最初からそれではいかないというのが基本的な考 え方です。その労働力でなくて、研修をさせるということについての意欲と、それだけ の組織があるかということは十分に私どもは持っておりますし、これからも調査しま す。それで、十分に責任を持って研修を受け入れるという体制を、今後もまたしっかり としたことをイメージしていきたいと思っております。 ○高梨委員  いまの関連ですが、研修医の給料は国から直接に支給ということですけれども、研修医 は保険診療は行うのでしょうか、行わない、あるいは禁止するのでしょうか。それか ら、国が給料を直接支給ということは、研修医の身分は国家公務員ということを考えて おられるのでしょうか。もし事故があった場合の責任の問題ですが、国家公務員であれ ば国が責任を負うと、こういうことになるのだろうと思いますが、先ほど研修の指導に ついて、指定病院が全責任を負うということをおっしゃっていたのですが、そこのこと との関係をどういうふうに理解していいのか。 ○小山田医師  保険診療をやってはどうかということですが、これも先ほど来申し上げましたように、 労働力ではなくて教育でありますから、あくまでもそれは保険診療であれ、そうでない 診療であれ、指導医の下でやるのが原則だと考えています。そうしたことで、責任の所 在はどこにあるか。それは国ではなくて、やはり指導医であり、指導医を抱えた研修指 定病院にあります。  それから、指導医並びに研修医に対する給料を国からということは、国家公務員にな るということではなくて、どんな形でもいい。ただ、診療報酬から支給されますと、こ れはやはり労働力になります。ただいまはそのようになっております。ですから、労働 力として使われる、アルバイトもするという格好になるので、そういうことをさせない ために、形はどういう形かわかりませんけれども、少なくとも診療報酬、あるいは研修 指定病院の経営的な負担にならないような形でやっていくべきだという考えです。 ○高橋委員  量的なご質問をします。中小病院というのが全国にいくつぐらいあって、そのうちこの 臨床研修を積極的にやりたいという意欲を持っている病院は、何割ぐらいあるのでしょ うか。 ○小山田医師  先ほど申しましたように、いま大体156施設が研修指定病院ですが、この大部分は大病院 です。中小病院はいま310ぐらいあります。そのうちの半分ぐらいがおそらく先ほど私が 申しましたような、いわゆる従病院群といいますか、主病院の周りを囲む病院群になり 得るだろうというふうに考えております。  さらにそのほかに、私がいま申し上げましたのは病院だけです。診療所もあります。 施設もあります。ですから、そうしたことでかなりのことができるだろうと思います が、そこに指導医が本当にあるかどうかということと、それだけ入れる能力があるかと いうことが、まだいま明確には答えられないということです。 ○内村委員  実際、いままでの実地調査でも、従病院のあり方というのは基準がほとんどないので す。そういう意味で、どういう形の基準がいいかというのが問われていくのではないか という気がするのです。1つは確かに指導医がちゃんとしていくことだと思うのです が、指導医に認定制度等がまだないということで、例えば私の所の近くに佐賀医大があ りますが、あそこは総合診療科が非常に動いております。そこでちゃんとやった人たち が、例えば国保診療所の所に行って、そこでやっておられるのです。そういう関連があ ると、なるほどなと思うのですが、私はそちらの専門ではなく精神科のほうなのでよく わからないのですが、そういう総合診療科の医師というのはどのぐらい育ってきている ものなのか。福井先生なんかはご存じだと思いますが、そういう人たちが総合診療科の 認定を持って、そういう所でちゃんとすればなかなかいいなと私も思うのですが、その 辺はいかがでしょうか。 ○小山田医師  それは先生のおっしゃるとおり、私どもも念願しているところです。 ○井部委員  この「臨床研修カリキュラム」を拝見しますと、老健とか訪問看護実習とかというのが あるのですが、いまの議論を聞いていますと、研修医の指導に当たるのは、あくまでも 医師に限定して、指導医という人たちが指導に当たるというふうにされるのか、あるい はこういう所は、他職種が専門家として活動していると思うのですが、そういう方たち は指導的なかかわりはあまり考えないのか、という点についてはいかがでしょうか。 ○小山田医師  例えば福祉施設であるとか介護とかいうことになりますと、医師だけでなくて、いろい ろな職種が絡んでまいります。そういう面で、当然そこで研修をするということは、そ うした医療、あるいは福祉にかかわっている方々からも教えていただきたいということ は十分だし、それが可能だろうと考えておりますが、実際に先ほど来申し上げている体 制、あるいは基準ということになりますと、もっともっと厳しくなってくるので、まず は指導医がどのような所でやっているか。1人でやっているわけではありませんで、看 護、あるいはそのほかの福祉、その他の部分のそうしたシステムの中でやっているとい うことが条件になるというふうに考えています。 ○福井委員  このカリキュラムですが、学生の見学型実習に近いような気がします。プライマリーケ アの研修をする場合に、どこかに張り付いて、業務の一部として研修するというカリキ ュラムも考えていただければありがたいです。 ○青沼医師  これは先生がおっしゃるとおりだと思います。見学型のカリキュラムになっているわけ です。ただ、期間の問題がありますし、私たちもやはり2カ月とか3カ月必要だと思っ ていますが主病院との関係があります。ですから、3カ月用のプログラムもあるので す。ただ、一応例として1カ月を出させていただきました。先生のご指摘どおりだと思 います。 ○部会長  このカリキュラムですと、是非、卒前教育の中に取り組んでいただければ大変ありがた いと思います。貴重な時間を割いてご出席いただき、また資料を整備していただきまし て、ありがとうございました。 (小山田・青沼先生退席、津田・畑尾先生着席) ○部会長  日本医学教育学会から、よろしくお願いいたします。本日は津田先生と副会長の畑尾先 生にお出でいただいています。20分をメドに、簡潔によろしくお願いいたします。 ○津田医師(日本医学教育学会) 日本医学教育学会を代表して、提案をさせていただきます。私たちは、医学教育の32巻 4号に「卒後臨床研修カリキュラム」を提案させていただきました。これは皆様のお手 元に届いている冊子です。このカリキュラムは、研修ローテーションに関する提案と、 これはかなり時間を割いているのですが、研修目標および研修システム作りについて提 案しております。詳しくはその中を見ていただいたらおわかりいただけると思うのです が、それを作った趣旨を説明させていただきたいと思います。  あとで別冊として配布させていただいた資料ですが、私たちはローテーションカリキ ュラムを考えるについて、2つの点から検討しました。1つは21世紀の医師として、社 会的ニーズはどんなところにあるのかという点です。そして、そういう社会的ニーズに 対応できる医師が育ちつつあるのかどうかを、まず卒前の教育について検討しました。 そして、そのレベルに応じて卒後を考えるという形で検討したわけです。  21世紀の医師に対する社会的ニーズとして、いろいろあろうかと思いますが、特徴的 な点はそこに挙げている3つで、高齢化社会で、非常に多くの疾患を持っている人が増 えてくるということ。そして、そういった人たちのQOLを向上させるような仕組みを 作るには、予防・医療・福祉を統合した地域包括医療が必要であるということ。お年寄 りの倫理的問題が増加してくるであろうということ。それから、慢性疾患患者が増加 し、患者の権利意識は増大しているということです。こういうニーズに合う医師づくり をしているかという点ですが、残念ながら卒前ではそれに応える医師は全然つくってい ないではないかと考えたわけです。  そのことを検証するために、私たちは医学教育に関する世界のスタンダードと考えら れている、1993年に出された英国の「Tomorrow's Doctor」、これを基に検討したわけで す。そうしたところ、大まかにそこに書いてある6つの点が挙がってまいりました。1 つは、医療面接とか身体診察といった、基本的臨床技能教育が非常に欠如している。こ の1、2年で急速にこれに取り組む大学が増えてまいりましたが、まだまだ欧米に比べ ると非常に不足しているということです。それから、生物医学偏重の教育で、医療にと って特に大事な行動科学の教育がほとんどなされていないという点があります。徹底し た専門家志向の教育なので、プライマリ・ケア教育がほとんどなされていないという点 があります。ですから、ほとんどの医師が卒業時点で専門家を志向するといったことが 起こっているわけです。それから、講義中心ですので、自分で能動的に生涯学習しよう という姿勢が育まれていないという点があります。ベッドサイド・ラーニング、あるい は最近クリニカル・クラークシップと言われながらも、実際は見学に終わっている。で すから、実地臨床能力が不足しているというわけです。エビデンスベースド・メディス ンが欠如しているという点があります。  こういったことから、私たちは今後の卒後研修2年間のカリキュラムとしては、結 局、欧米のレベルに到達するには、卒前に行われていない、つまり、クリニカル・ク ラークシップの中で行われていないところを補完する形の卒後研修にならなければ仕方 ないのではないか、という結論に至りました。もちろん、今後クリニカル・クラークシ ップが充実してくれば、卒後研修2年間が1年間というような形になってくるかもしれ ませんが、当分の間2年間、欧米でやっているクリニカル・クラークシップに相当する ところプラスアルファぐらいのレベルを考えなくてはいけないのではないかと考えたわ けです。ですから、医師としての基本的臨床能力を育てるためのコアをスーパーロー テーションで回る必要があるということ。そして、その中にプライマリ・ケアの研修を 必ず入れるべきであるということ。そのコアの中で、行動科学が十分研修できるように 仕組みを作る必要があるということ。全体を通して、エビデンスベースド・メディスン の研修ができるようにすることです。  こういう観点から、内科、外科、小児科、産婦人科、救急、こういったものは昔から 言われていると思いますが、それプラス行動科学およびプライマリ・ケアを必修、つま り、6科を必修と考えたわけです。この代表的なローテーション表については、緑色の 別冊の202頁の「ローテーションの例の2」にあるように、オリエンテーションを4月中 に行って、5月1日から回り始めて、まる2年間、24カ月を回るという仕組みです。3 カ月単位で回っていって、必修6科プラス選択を2科ということになります。これがベ ストと考えていますが、それ以外のものも提案させていただいています。  ここで小児科は、どういう科に進んでも小児を扱いますので、小児の特徴を学ぶとい うことは必要であるし、アメリカ流に言いますと、Women's Health Issueと言われる女 性の健康問題を考える、それに対処できる能力は基本的に必要であると考えているもの ですから、産婦人科も必修です。それから、救急はもちろんですが、それプラス、プラ イマリ・ケア、行動科学を入れ込んでいます。これは各施設によって、できる所、でき にくい所があろうかと思いますが、現在利用できるものを最大限利用して行うべきであ ると思いますし、先ほどから議論になっている総合診療部があれば、そこが拠点になり 得るだろうと思います。ただ、大学病院の中の総合診療部だけではこの研修は不足しま すので、地域包括医療がやれるような先ほどの地域の病院、コミュニティーのホスピタ ル、あるいはクリニックに行くということも是非やっていただきたいと考えておりま す。  欧米のカリキュラムでは、いまや大学病院、あるいは大病院だけでは教育はできない という考え方で、既に先進諸国は大学・大病院が半分ぐらい、コミュニティーのホスピ タル、あるいはコミュニティーのクリニックで3割から5割の卒前および卒後の研修を やるような仕組みがかなり普及してきております。そういうことも勘案しますと、ここ に書いてあるカリキュラムは大病院・大学病院でやることに限らないで、むしろ一般外 科や一般内科はコミュニティーのホスピタルのほうがいいのではないかと、そういうこ とも考えています。  研修目標はお手元の資料でおわかりのように、非常に細かく提案しております。研修 医が自分で学習するときの目標となるような、細かい点まで列挙しているというのが特 徴であろうかと考えています。そういうような目標およびカリキュラムが出来上がって も、実際の研修システムに問題があると教育はうまくいきませんので、最後に研修シス テム作りについて少し提案させていただいております。それは、まず診療チームを作る ということです。先ほど来、教育と労働力は違うという話でしたが、私たちは労働力と なりながら、それが教育になるという仕組みを作るべきであると考えているわけです。 ですから、診療チームの中に組み込まれて労働力となりつつ、そこで質の高い教育が行 われるということを考えれば、教育に手間を取るとかそういう考えがなくなっていいの ではないかと考えているわけです。  そして、それの実行をあらしめるために相互の評価システムを構築すること。エビデ ンスベースド・メディスンの環境作り、インターネットでアクセスできる環境を作って あげるということ。教育責任者会議、研修指定病院および協力病院が一緒になって作る ということを前提に考えておりますので、そういった諸々の部門の教育責任者会議が開 かれて、そこで全体を統括していく、そういう仕組みが必要ではないかということを考 えているわけです。今回私たちは、教育に関することだけを提言させていただきたいと 考えております。 ○部会長  どうもありがとうございました。ただいまのご意見にご質問、あるいはご確認等ありま したらどうぞ。 ○横田委員  論理的にきちんと流れがとれていて、私は大変わかりやすかったと思います。ただ、1 の、医師に対する社会的ニーズの中で、確かに高齢化社会というのは非常に大きな問題 なのだと思いますが、同時に少子化が進んでいるわけです。その中で、小児の医療、特 に小児の救急医療というのは全国的な話題になっていますし、問題になっています。そ このところで、研修の中で3カ月間、小児科をやればいいということですが、私は実は これは第一ステップだと思っていまして、いずれ小児科というのは成人医療から独立す べき分野であろうと思っているのです。第1ステップとして、小児科をコアローテーシ ョンの中に組み込んでいただいたということは、大変ありがたいと思うのです。高齢化 に対してのもう一つの少子化、産科、小児科の医療というところについて、日本医学教 育学会はどのようなお考えでいるのか。  もう一つ、2の中で、6の「エビデンスベースド・メディスン」は確かにそのとおり なのですが、臨床をやっている人間にとっては、診療・医療というのは、1つは経験の 学であるという部分が大変あると思うのです。そこがきちんと伝えられないというとこ ろが大きな問題だろうと思っていて、日本医学教育学会のお話の中にいつもそれが出て こないので大変不満なのですが、その辺どうお考えかという点です。 ○津田医師  小児の問題ですが、先生のおっしゃるとおりですので、私たちはコアと考えたわけで す。ただ、社会的ニーズの中に少子化という問題を列挙しなかったのは少し不足したか もしれませんが、考えていることは同じであります。ですから、小児科をコアと考えて いますし、産婦人科については先ほど申しましたように、女性の健康問題を考えられる 能力を持っていないと、どの科に行っても困るということなのです。 ○横田委員  例えば、欧米の医学部の中に小児科というのはないのです。アメリカで言えば、ハー バード大学医学部があって、ボストン小児病院があるのです。小児の医療というのは独 立しているのです。ですから、医学教育学会のほうがその辺をきちっと見据えてほしい と思っているのです。 ○津田医師  それは独立であろうと何しようと、要するに最低限の医者作りの2年間の中に、そこで 一定期間の研修を積むという考え方です。それから、エビデンスベースド・メディスン を強調しすぎた感がありますが、研修目標の中をご覧いただくとよくわかるのですが、 エビデンスだけでは成り立たないのは確かに現実の問題で、それを補完する形で、いま ナラティブベースド・メディスンという新しい考え方が出てまいりました。これは私た ちがいままで経験とか何とか言っていたところをもう少し集大成して、論理的に組み立 ててきているわけです。要するに患者さんの物語を大切にした医療を行おうということ です。エビデンスだけでは成り立たない、それを相補完する形で、つまりこれからの医 師はエビデンスベースド・メディスンとナラティブベースド・メディスンをうまく調和 させながら医療をやるべきである。それは一部の目標の所にちゃんと掲げております。 ○相川委員  私は普段からこの学会に関していろいろ勉強させていただいておりますが、今回のお話 では卒前教育と卒後教育と、両方の視野からご提言なさっているということ、これは極 めて大事なことだと思っています。特に日本の医学部6年間の教育の中では、その目標 というのは、米国のライセンスに相当する部門として考えるとステップ2を目指してい ると思うのです。卒後にステップ3が通るレベルの人を目指しているのに非常に近いの ではないかと思っております。ここにお示しになった202頁のスーパーローテーションの 例等も、我々が作っていく目標の1つのケースに非常にマッチするのではないかと、私 は個人的に考えております。  ちょっと指摘をさせていただきたいのですが、これはいまご発表のところのほかに、 前の奈良先生のところとか、いくつかあるのですが、救急に関してです。決して細かい ことを言うわけではないのですが、スーパーローテーションの例の1の所の救急をいち ばん最後にする。これもプログラムとしては非常によいと思いますが、*の4の所で、 最後のほうに「救急部がない場合は、ICUや麻酔科などでの研修も可と考えます」と 書いてあるのです。これは間違っていると思います。ICU、あるいは麻酔科と救急 は、似て非なるものです。  最初の部分の、「救急部で二次患者の研修を中心とすることが望ましい」、これは私 は個人的にはよいことだと思います。先ほどの奈良先生の所のお話では、救命センター を持っているということが3つの条件の1つとなっておりましたが、むしろ私は救急の 卒後研修に関しては救命センター、すなわち生命危機に陥っているような、死にそうな 三次救急患者さんを見せるよりは、一次、二次救急患者さんだけを見せるほうが研修の 目的にかなっていると思います。しかしながら、それがなければICUや麻酔科に置き 換えられるということは、間違っています。救急の本質をもう少しご理解いただきたい と思います。  1つの例で申し上げますと、例えばかなり急激な頭痛がきた患者さん。しかし、意識 ははっきりしている患者さん。これは救命センターには行きませんね。そういう患者さ んに、クモ膜下出血があるのかどうかというようなことをまず診て、それを早く診断 し、血圧をコントロールし、脳外科医等に相談するという能力が求められると思いま す。あるいは急激に背中が痛くなった患者さん。それが腰痛ではなくて、乖離性の大動 脈瘤の初期の症状であることを見抜いて、血圧をコントロールし、適切な診療科の先生 方に早く連絡をする。こういう能力を付与する2つの例ですが、そのようなものはIC Uや麻酔科の研修では代用できないと思うのです。むしろ救急というのは急性の症状、 あるいは急性の外傷を持ってきた患者さんに、自分がファーストドクター、つまり最初 の医者としてアテンドしたときに、何も診ないでほかの人にその患者を回すのではなく て、自分の判断と初期治療をして、チーム医療に連携するということであると思います ので、是非その点をご理解いただきたいと思っています。 ○津田医師  先生のおっしゃるとおりで、私もそのとおりだと考えております。ところが、現実には 救急部がない、あるいはそういう指導医がいないという施設が結構あるという声を聞き ますので、これは妥協の産物なのです。先生はそれは妥協できないとおっしゃるのかも しれませんが、現実を見据えて、やらないよりはましだろうという程度の妥協なわけで す。ですから、先生のおっしゃるようなことができる施設を探すというのがベストであ ります。 ○花井委員  今日配布された資料の1頁のいちばん下の所に、「我が国の卒前教育の問題点」という のが掲載されております。この問題点の最大の理由をどのようにお考えなのか、お聞か せいただきたいと思います。次の頁に書かれていますが、これが解決されないままに、 卒後の臨床研修だけで補えるのだろうか、ということもあわせて、お聞かせいただけれ ばと思います。もう一つ、研修医の給与のあり方、その財源をどのようにお考えなの か。2つ、お願いいたします。 ○津田医師  そういう危惧をなさるのはごもっともだと思います。卒前の教育がいかに遅れている か。欧米に比べて大体15年から20年遅れていると言われているわけですが、いま文部科 学省を中心に改革が進んでいるわけです。3つの改革と1つの拡充という形で進んでお ります。そこではコアカリキュラムにし、そしてクリニカル・クラークシップで参加型 の実習をするということで、いま成果が上がる方向に急速な勢いで進んできています。 ですから、最初に申しましたように、そういう卒前の医学教育改革がこの4、5年ぐら いで、かなり進むと思います。そうしますと、かなり質の高い卒業生が出てくると思い ますので、卒後がさらに充実してくるという方向で、プラスに変わっていくので、明る い方向で考えていいと思っております。  給与については、今回私たちは全然言及しておりませんし、また私たちの委員会でも 検討はしておりません。ただ、1995年に卒後研修委員会、畑尾委員長のときに、給与に ついての提言をさせていただきました。 ○畑尾医師(日本医学教育学会)  1995年に学会提言させていただいた中に、先ほど来お二方の中にありましたような「給 与を保障するべきだろう。それが望ましい」ということを盛り込んでおります。それは 国が考えることです。私どもは財源を持っておりません。 ○堀江委員  このカリキュラムの提案については、既に拝見させていただいておりまして、大学内で 議論しましたが、小児科、産婦人科を含むというのは十分理解できます。 ただ、特に小児科ですが、我々は3つの附属病院がありますので、それをすべてロー テーションすることによって、1カ所では一次、二次救急、一方では周産期センター等 の研修ができます。ただ、教育と現場の診療とを、合わせて考えてみたときに、研修医 全員の受入れが果たして可能なのか、というのが大きな議論になっています。小児科の 現場として、教育の必要性というのは十分わかりますが、受入れと全員必修化が実際に 可能かどうかというところがちょっと危惧されます。 ○津田医師  先生のおっしゃることは産婦人科についても言えると思うのです。私たちは産婦人科の 委員と小児科の委員も入って検討しているわけですが、1カ所の研修施設で可能ならし めようというのは、まず不可能という結論です。ですから、研修施設群を組む。それは 私たちは大病院、大学病院、プラス、むしろコミュニティーのホスピタルを選びたいと 考えているわけです。そこで、教育するスタッフがいるのかという議論によくなります けれども、先ほど来申し上げていますように、労働力となりつつ診療チームの中で教育 されていくという、そういう欧米型の教育システムを作り上げないと、言いかえると教 育と診療が別個だという考え方でいると、これは不可能だと思います。 ○宮城委員  必修化に向けて私がいちばん気に掛かっていることは、従来の日本の臨床教育に急性疾 患の教育が非常に欠けていたということ。日本の臨床医療を今日の状態に堕ちさせたの は、急性疾患に対する教育の取組みが全く行われなかったという点です。大学の先生方 は、急性の疾患を扱うのは論文を書くうえで時間的に非常に不利であるために、慢性疾 患を中心に勉強し、教育して来たという実態があります。最近は大学病院に救急講座と いうのができていますが、それでも教授1、講師1というような非常におざなりな救急 医学講座を作って、そして救急をやっていますというような言い方をしています。日本 の教育で欧米に比べていちばん欠けているのは、急性疾患をちゃんと教えるという仕組 みが全くできていない。  私は今回の必修化において、臨床研修指定を受けるに当たっては、一次から三次まで のアクティブな救急室を持っている病院だけに積極的に手を挙げてもらいたい。アクテ ィブな救急室を持っていない所で、どうして急性疾患も慢性疾患も共に学べるのか、私 は非常に疑問に思います。私たちの病院では、一次から三次の救急患者が1日100人位来 て初めて急性疾患の教育ができているわけで、救急というのは三次救急だけ見ていては 教育には決してなりません。相川先生がおっしゃるように、若い人の研修は三次救急で はありません。一次、二次に本当の急性疾患の教育の本筋があるわけです。大学病院、 多い所で1日に救急が20人とか30人、しかも研修医は100人いるというような所で、どう して急性疾患の教育ができるのでしょうか。  私が今回この教育カリキュラムの中でいちばん大事にしてほしいのは、急性疾患をど の科も、真剣に取り組んで教育して欲しいと言うことです。小児科とか産婦人科とか挙 げていますが、小児科の救急はどこで学ぶのか。産婦人科の救急はどこで学ぶのか。疾 患には急性と慢性があるということ。そして、日本の医学教育は、あまりにも慢性を中 心に何十年もやり続けてきすぎたということ。ここが今回、必修化をしていき、臨床教 育の改善をしていくうえでの大きなポイントだと思いますので、急性疾患をどう教える のか。卒前でも卒後でも急性疾患をどう教えていったらいいのか。そこをカリキュラム の重点課題にしてほしいと思います。 ○部会長  これは宮城先生の従来のご主張ですので、教育学会に対応するということではなくて。 ○津田医師  私たちとしても、やはりそういう点は大事だと思っております。ですから、大学病院に 頼っている教育カリキュラムでは駄目だということです。コミュニティーにもっと出て いくカリキュラムを作らないと駄目だ、というのが私たちの主張したいところです。 ○三上委員  先ほどのお話の中にもありましたが、これからの卒後臨床研修の場というのは、おそら く単独ではなくて、病院群あるいは施設群で対応していくということが基本的な姿にな ると思うのです。その場合に、主と従という考え方に対して、大きい病院が主で、小さ い病院が従というような考え方というのは本当にいいのかどうかというのは、私はちょ っと疑問なのです。例えばいまの指定基準の中には、「大学病院は従であってはならな い」とあるわけです。ところが、先ほど来の話にあった、全人的医療云々、あるいはプ ライマリ・ケア云々というのは、実際には大学では非常に困難なわけです。その場合 に、大学は中小病院に頼むことはできても頼まれることはしてはならない、というよう なことが今の規定の中にあるわけです。主病院であって、従病院であってはならないと いう、本当にこんなことが必要なのかどうかということが私は1つ疑問です。  もう1点、距離の問題があります。現在の主と従との関係というのは、日常診療にお いて提携ができていることというのが主と従との基準の中にあるわけですが、先ほどの 話にもありましたが、1年間研修病院でやって、2年目はどこかへ行って別の所で研修 するということであれば、日常診療において連携が取れていることというのは必ずしも 必要でないというか。そういう意味でこれは質問なのですが、第1点の主と従という、 その中で大学病院は従であってはならないというようなことが本当に必要なのかどう か。2番目に距離の問題として、主と従との関係というのは、日常診療の中で連携が取 れているという規定が本当に必要なのかどうか。私は取り外すべきだと思っているので すが、それについてはいかがでしょうか。 ○津田医師  これは私たちが答えることではないのかもしれないのですが、私たちとしては先生のお っしゃるとおりだと思っております。そういう形にしないと、良い研修はできないと思 います。実際、私的なことを申し上げますが、三重大学に移りまして、三重大学は研修 指定病院8つと三重大学が対等な関係で、研修グループを作って、今年、平成14年度か らメディカル・コンプレックスという形で研修プログラムを立ち上げる検討をしている ところです。そういう所では、実際に主従の関係というのは成り立たないです。そんな ことをしたら、相手はもう結構ですということになってしまいます。ですから、対等 で、診療の連携も、ちょっとはあっても深い関係はないというのが現実です。 ○部会長  だんだん世の中が動いて、いま関連病院という言葉を使うと怒られて、連携病院なら許 すというような状態ですので、そういう点ではあまり危惧される必要はないかと思いま す。 ○内村委員  「行動科学」という言葉を使われて、なるほどなと思ったのですが、行動科学は主に精 神科領域であり、心の問題も必修化すべきというのが我々の意見です。ところが、精神 科というと偏見を持たれまして、一般科の先生に対しても偏見を持たれているような気 がするのですが、これからの時代というのは、心の問題というのは大きな問題になって いくと思うのです。そういう意味で、ほかは「科」と書いてあるのですが、ここは「行 動科学」というふうに書いてあるので、それは言葉の響きとしては非常にいいし、イ メージとしても一般科の人たちも受け入れやすいかと思ったのですが、その意図を一言 ご説明いただければと思います。 ○津田医師  今日お配りした資料の2頁目の最後に参考として、「行動科学とは」というのを挙げて おります。行動科学の定義はいろいろ考え方があろうかと思いますが、私がここで採用 しているものは、米国で医学教育にかかわっている行動科学者が作った学会が提案して いる行動科学に含まれる範囲です。もちろん、この範囲はもっと広いものですが、その 中で大事なものをここに列挙したわけです。先生がおっしゃるように、精神科領域とい うのは、医者の基本を作るという意味では、精神分裂病とかそういうことが中心になる べきではなくて、むしろ心の問題という形での取組み方であります。それは5番目に 「メンタルヘルス」と書いてありますが、日本では不定愁訴としてほったらかしにされ ている。実はこういった人たちは外来では30%も占めているわけですが、そういった人 たちはどういう科にも来るので、そういった人たちにちゃんと対応できるようなこと、 あるいは家族の問題、医師・患者関係等、心理的な問題、こういうところが行動科学の 中でも大事なところだと考えているわけです。そういうことを教育できる人は、精神科 に限らず、心療内科でもいいし、総合診療でもいいし、できる所でやっていただくとい う考え方であります。 ○部会長  日本医学教育学会の津田先生と畑尾先生、今日はお忙しいところご出席いただきまし て、また資料もいただきまして、どうもありがとうございました。 (津田・畑尾先生退席、櫻井先生着席) ○部会長  日本医師会からご意見を拝聴したいと思います。常務理事の櫻井先生、最後になってし まって、時間も押し迫ってお待たせして大変恐縮でございますけれども、20分をメドに ご説明いただいて、委員の方々のご許可を得て、定刻より伸ばさせていただきたいと思 います。よろしくお願いいたします。 ○櫻井医師(日本医師会)  お手元に「卒後臨床研修に関する意見」という形でお配りした資料で説明します。当 然、日本医師会常任理事という肩書きが付いていますから、日本医師会の立場というこ とが1つと、もう一つは、やや個人的になりますけれども、この臨床研修の問題という のは、インターン制度があって、それがいろいろな批判を受けて中止になり、臨床研修 の努力義務的なことが30年ぐらいあって、それではうまくいかないから必修化という流 れがあったと理解しております。ここにいる多くの先生方は、インターン制度を経験さ れたドクターの方々が多いわけです。そのときの個人的な経験で、これも全員とは言い ませんけれども、そのときのインターン制度は批判を浴びましたが、やや小さめの外の 病院とか、実践的な病院でインターンをやった人たちは、インターン制度は非常によか ったと言っている人が多い。私自身がそのように思っているという立場を踏まえて、今 日のご説明をしたいと思います。  資料の2頁、3頁、4頁は、日本医師会がこの問題について取り組んできた経緯を簡 単に示してあります。これは日本医師会の星委員からもこの委員会でご説明があったか もしれませんので、簡単にいきますが、2頁では平成元年、3年という今から10年以上 前の段階から、日本医師会はこの問題についてのいろいろな提言をしてきたということ です。いちばん上のは、医学教育の一貫性を認識し、卒前・卒後の臨床研修・専門教 育・生涯教育の連携の中で考えたいということ。3番目のですが、研修のカリキュラム は基本を決めたうえで自主性、多様性を尊重すべきだ、というような提言がここに出て います。  3頁ですが、さらにこの同じ懇談会が、平成4年にこの懇談会としての結論報告を出 した中にも、複数の病院を跨る研修が効果的で、それぞれの病院で行われる研修内容 は、相互に補完するようなカリキュラムが必要だというようなことの提言があります。 いちばん下のほうですが、学会、医師会、その他の関係者による合同委員会、この場合 は臨床研修教育委員会という仮称を言っているのですが、そのようなものが必要だろう ということをここで提言しています。  4頁ですが、さらに平成8年に生涯教育推進会議という日本医師会の中の専門委員会 がこの問題を取り上げて、医師の養成過程全体を通したような臨床研修とか、必修項目 の水準をある程度決めたうえでは自由なプログラムということ、その他、プログラム、 計画、そういうものを評価するような機関が必要ではないかという提言をしています。  5頁の「臨床医が初期研修終了時に求められる要件」ですが、ここは1つには先ほど 申し上げましたインターンを経験して、悪い点はあったけれども、昔のインターン制度 で良かったと思っている部分の感想が入っています。その後、努力という形で行われて きましたが、それがうまくいかなかったというのは何がいけなかったかという問題点を 踏まえて、求められる要件を書き出しました。  さらにもう一つ、星委員資料という形で、1枚の資料が出ているのですが、これは日 本医師会で私は生涯教育を担当しているのですが、『日本医師会雑誌』という雑誌で、 「卒後臨床研修(必修化)に関するアンケート」というのをやりました。その結果が冊 子になっているものの1枚なのですが、ここに「あなたが受けている研修で不足してい ると思われるのは何ですか」ということを、現在研修医である先生方、600人近い人に聞 いた回答です。これを見ていただくと、いちばん多いのが「救急医療の研修」で43%で す。これは今いろいろな話が出ていました。  これは想像も入っていますが、救急医療といっても、本当に何救命の三次救急とかい う問題ではなくて、まさに一次救急というか、これは私のインターンのときの経験、あ るいはいま開業している医者としての経験ですが、救急といっても、いまナイフでバッ と手を切ってしまったとか、転んで怪我をしたとか、あるいは鼻血が出て止まらないと か、そういうような救急医療に対して、つまり先ほど相川教授が言いましたような、実 際に専門家が立ち向かわなければならないような問題ではなくて、小児科で言えば引き つけたとか、そういうのが多いはずなのです。それに対応することだろうと私は想像し ています。  2番目の「給料」というのは、ご本人たちとしてはごもっともかと思いますが、置い ておきます。「地域の(診療所・老健など)での研修」が38%で3位になっています。 これは、いまの研修医の人たちが自分たちが不足していると思っているわけですから、 こういうことが足りないと思っていらっしゃるということがよくわかりました。そのあ と、30%以上という意味では下のほうに、「研修医からの相談や苦情を受け付ける体制 がない」ということを研修医の人たちが思っているというのも、これも重要な事実かと いうふうに捉えました。  6頁が臨床研修カリキュラムの基本的な日本医師会の考え方です。「地域医療の担い 手となる質の高い医師の養成が求められていて、一貫したものとしての体制作り」。 「地域医療を担う後輩医師の養成」、つまりこれは我々のあとを担ってくれる後輩の医 師の養成なのだということで、先輩医師集団としての役割ということを考えるべきだと いうふうに考えています。大学病院に関しては、いま大学病院本院はみんな特定機能病 院となっていますので、むしろこの問題は大学病院から外すべきではないかというのを 原則的に考えています。研修の所から大学病院は外れてほしい、というふうに考えてい ます。  4番目は、1つの病院に対したものではなくて、例えば二次医療圏、ちょっと二次医 療圏が無理だったら、ある一定地域の中での複数の医療機関を利用した研修制度。仮称 として「地域施設群研修委員会」という名前を付けたのですが、そのようなものを作っ て、ある地域で1つのプログラムを作りやっていくことをされたらいいかと思っていま す。でも、そうは言っても、全国的な統一性を図るために、コアのカリキュラム、全国 統一的なものを作る、そういうものは必要かと思います。その上でその地域特性に基づ いた、やや自由な発想のプログラムが作られていいのではないかというふうに考えてい ます。ただ、それを研修医が選択できるように、そのプログラムなり何なりを完全に公 開して、「こういう研修プログラムでうちの地域はやるから、是非応募してください」 という形で研修医を集めるというようなことが行われるべきかと思っています。  7頁は、いま言いましたようなことをイメージ図で書きました。このイメージ図は、 我ながら出来が悪いと思うのですが、上のほうに「原則として」と書きましたが、二次 医療圏でなくてもいいのですが、ある一定地域を設定して、医師会から言えば医師会立 病院とか、研修指定病院、普通の病院・診療所、あるいは老健施設・福祉施設等も含め た1つの群を想定して、そこで研修医の人たちに研修をしてもらう。それをコーディ ネートしたり、評価したり、情報提供をしたり、場合によっては研修医の身分保障をす るような「地域施設群研修委員会(仮称)」というものを作って、そこでコーディネー トするようなものを考えたらどうか。  その全体的な統合を図るためには、「全国臨床研修委員会」みたいなものを作って、 先ほど申し上げたような基本的なものを作ったり、施設間のコーディネートを行うよう なことを考えたらどうか、というのがイメージ図です。そのイメージ図を説明したのが 8頁と9頁で、8頁の「全国臨床研修委員会の役割」と、9頁の「地域施設群研修委員 会の役割」という形で考えています。  非常に端折りましたけれども、おそらく質問がたくさんあるのではないかと思うの で、また質問にお答えします。 ○部会長  だいぶ時間が少なくなって恐縮です。櫻井先生のいまのご説明についてどうぞ。 ○磯野委員  2頁のいちばん最後に「アルバイトなき研修の実現のために、研修医の身分保障、待遇 改善が必要であり、政府の努力を求める」と書かれていますが、日本医師会として研修 医の身分保障、待遇改善の問題について、どのようにお考えでしょうか。 ○櫻井医師  これは日本医師会統一の意見からやや逸脱している部分があることを承知のうえでお聞 きいただきたいのですが、先ほどから研修医は教育だけであって労働力でないというご 意見がありましたが、現実の問題としては私は両方だろうと思っています。ですから、 労働力であり、指導される立場でもある。でも、そうかといって学生ではないわけです し、医師免許証を持って、当然、保健医の指定も取ってもらったうえでなければ、指導 を受けるにしたって保健診療ができないですから、それが必要だと思います。ある程度 一人前、一人前というのは、国が認めたのですから私はそう思うのですが、それが一人 前か半人前かは別としても、医師ですから、それはそうで構わないと思っています。  私は地域でのコーティネートの所で、一方では法律で決めた以上は国が責任を持つべ きだと思いますから、ある程度の身分保障、あるいは先ほどから出ている指導する先生 に対する保障も含めて、国は考えるべきだと思います。労働力的なところがゼロとはど うしたって言えないと思うので、それは働く所、つまり研修病院であったり、地域の病 院であったり、地域の我々のような診療所も含めてなのですが、そういう所からある程 度、できれば地域がコーディネートする形で一人ひとりにアルバイト料として払うので はなくて、拠出するような形で、地域のそういうものを集めて、国からのお金も入れた うえで、そこからお給料を払うようなものを考えたらいいと思っているのです。  例えば責任問題という話もありましたが、責任は指導医とか何とか言いましたが、そ れももちろんあり得るでしょうけれども、私は医師である以上は何か起きたら本人も責 任を負うべきだと思っていますので、医師賠償責任保険等にきちっと入るべきだと。先 ほどのインターンの個人的な経験というところで申しましたが、私は自分はよかったと 思っているのですが、確かに全く無資格の医学部を出たというだけの者が、はっきり言 えば医師まがいのことをやったわけです。それは大問題があったけれども、そのときの 経験は、はっきり言えば感動なのです。医師にとっては患者さんを自分で診て、その人 をどう診断してどうするかということを自分で決めていくという、その感動がなかった ら、何でも指導医の下でしかできないということでやっていたら、いつまで経ったって 良い医師が育たないと私は思いますので、その代わり、逆に医師である以上は責任を取 るべきだと思っています。そうであれば、待遇も含めて、いま言った給与とか何かの問 題はそのようにしたらいいと私は考えています。日本医師会の統一的な意見とちょっと 外れている部分もあるかもしれません。 ○横田委員  たくさんの病院が研修医の育成にかかわるとなると、それぞれの病院のクオリティー・ コントロールが非常に大事になると思うのです。医師会はその辺はどう考えられている かということ。 ○櫻井医師  1つは地域に仮称の委員会を作りましたから、その所である程度コントロールするべき だと思います。これもやや個人的な意見ですが、いままでお話を聞いていると、指導医 の認定の資格とかいろいろおっしゃいましたが、私はあまりそれにこだわる必要はない と思っています。先輩医師であればいいという先ほどの概念でいくべきで、これは専門 性を教えるのでしたら、きちっとした認定のご専門を持った先生が教えるということに なると思いますが、医師としての最初の道を教えるのですから、私は先輩であればいい と思っているぐらいです。  もう一つは、これも私の個人的な意見ですが、やはりそれは本人次第のところもある のです。自らどうやって学んで、自ら判断して、自ら患者さんと接触して、自分が医師 として育っていく感動をどれだけ感じるかなので、これは本当を言うとどうしようもな いのです。でも、そのうえで解決することで、私は何かの資格を持った人が教えなけれ ばいけないとか、そういうことは必要ないと思っています。 ○中野委員  6頁の「卒後臨床研修に対する基本的な考え方」の3つ目の・の大学病院は駄目だとい うのは、そうかなと思わないでもないものですから、大変勉強になりました。ただ、こ ういう書き起こしで「特定機能病院」ということをしていらっしゃいますね。「地域医 療サービス」というのをまず前に持ってくること、私も賛成です。「サービスを類型化 し、あるいは機能分担し」の1つが特定機能病院である。医療を行う場合の水準と領域 という格好から括られたというのは合理性があると思うし、それには賛成です。研修に しても、大学病院は特定機能病院ですが、一方では教育研修病院であって、学部を補完 するための実習の場というものは一生懸命努力して、内部に内部に、あるいは連携によ ってやってきているのです。すなわち、教育と研修を切り放すことはできないので、こ のままお書きになりますと、スクール機能というのを地域に求めるのだという新しいビ ジョンをお示しにならなければいけないわけです。日本医師会としては、スクールを外 にお作りになるというお考えなのでしょうか。 ○櫻井医師  ですから、学生の教育は大学の役目ですから、あくまで大学です。研修医は医師になっ てしまったわけですから、それは地域で教えればいいというふうに我々は考えていま す。特定機能病院は地域医療をする病院ではない、というふうに考えています。もっと 高度のことをやるために、法律のことはあまり我々は言いたくないので、法律で決めら れたことに反発するのが我が医師会の特徴ですけれども、法律では特定機能病院はそう いうものではなくて、地域医療の中核ではない。だから、当然、大学病院というのは大 学の病院ですから、学生の教育は是非お願いしたい。そこで医師免許証を取ったら、地 域でそれを教えるという考え方でいいし、正直申し上げて、インターン制度のときの我 々の仲間で大学病院でインターンをやった人は、1年間何にも役に立たなかったという のが感想です。その後も30年にわたって努力目標でやってきたのも、ほとんどが大学病 院でやっているわけです。それが駄目で変えるわけですから、駄目なものはやめるより しょうがない、というのが私たちの意見です。 ○中野委員  ありがとうございます。迫力あるご返答で、2番目の質問をする気もなくなるのです が、2頁の卒前・卒後の臨床研修・専門教育・生涯教育の連携というのをお考えになっ ているわけで、卒前卒後は実は先ほどからもお二方のヒアリングの際に大変ポイントと して、どのようにどこを自己完結するか、あるいは補完するかというのがむしろ非常に 重要な点だというご指摘があったのです。そのようにお書きになっていらっしゃるので すが、教育と研修という分け方でポンと切るということは、合理性もありますが、同時 にしなければいけない手当ても必要で、それなりのリスクが伴うことだと思うのです。 そのことはご理解いただけると私は自信を持って、もう一回お尋ねしたいと思うので す。 ○櫻井医師  逆に言えば、いまでも大学に別に残らないで外へ出て研修をして、また大学に戻ってい る人はいるわけですから、それはリスクと言えばリスクでしょうけれども、そう問題に ならないと思うのです。ここまで言うと言い過ぎなのですが、7頁のイメージ図の所 に、「全国臨床研修委員会」と書いたのは、いま卒後研修が問題になっているからこの ように書いたのですが、我々とすれば、もっと大きな意味で医師養成全国何とか委員会 みたいなものがあったら、それこそ卒前教育どころか、医学部入学のところまで対象に したいのです。はっきり言えば、先ほどどなたからか、そういう人は研修を受けたから そういう良い医者になったのか、もともとそうだったのではないかというお話がありま したが、私はもともとそうだったという部分があるような気がしてしょうがないのです 。ということは、高校を卒業して医学部に入ってしまうと医者になるしかないですか ら、本当を言うと医学部の進学指導がいちばん大事だと私は思っているのです。だか ら、本当を言えば医学部の進学指導から始めなければいけないとさえ思っているぐらい なので、いまは高校の先生が「お前、何か偏差値いいみたいだから医学部行けよ」とい うので指導しているのであれば大問題ではないかと思っているところから、考えがここ に来ているというふうにお考えいただきたいと思います。 ○中野委員  いま最後のお言葉を引きずり出しましたので、議事録に残るというだけの発言です。あ りがとうございました。 ○花井委員  少し細かい質問なのですが、8頁に「全国臨床研修委員会」とありますが、ここのいち ばん最初の所に代表の関係機関が書いてあるのですが、ここの中には例えば患者とか、 そういう方というのは入らないのですか。そういう検討はされましたか。 ○櫻井医師  確かにこれは医学関係ばかり書いてありますから、私も当然そういう方にも入っていた だいていいと思います。そうなると、ちょっとこの書き方が悪いです。「医学教育に関 係する団体等」と、役所ですと「等」の中にみんな入っているというところですが医者 がそういうことを言ったらいけないですから、本当でしたらそういう人たちも入るべき です。花井さんとか、こちらの辻本さんとかも入っていただいて結構だと思います。 ○相川委員  先ほどの大学病院原則禁止について、もう一度お話したいのですが、既に中野委員から もお話がありましたが、先生の「大学病院偏重を改め」というところは私も賛成なので す。しかし、医師会が2頁でおっしゃっているように、基本を決めたうえで、それぞれ 自主性、多様性を尊重すると。この多様性を尊重するというところには、現在大学病院 で診ている患者さん、あるいは大学病院で診てほしいことを希望してくる患者さん、こ れは実際にいるのです。大学病院で診てほしいということを希望してくる患者さん、そ ういう患者さんの診療の経験というのも、これはこの2年間で是非やるべきだと思いま す。  ですから、最初から大学病院を原則禁止というようなことで除外するというのではな くて、この前の所の「大学病院偏重を改め」という程度はいかがなものでしょうか。私 どもは大学病院にいますと、卒業して2年間のお医者さんを見て、一緒にその人たちを 指導するべき疾患、あるいはそれを求めてくる患者さんというのは実際にかなりいると 思いますので、そういうチャンスを2年間の研修医から奪うということは、多様性とい うことからも見て、私自身はあまり納得できないです。 ○櫻井医師  大学の先生からいろいろ言われるのは覚悟できましたが、一応、我々の考えとしては、 大学病院、特に特定機能病院は、大学で診てもらいたい人が直接行く所ではないという ふうに認識していますから、それは一般地域から紹介状を持っていく所だと考えている わけです。だから、その紹介状を持って大学に行くにはどうしたらいいかというところ を、2年間の人に勉強してもらえばいいのであって、紹介でもって来た人を診る勉強 は、2年が終わってから大学に戻ってやればいいというのが私どもの考えなわけです。  これは、わかりやすく言ってしまえば、医学部が8年になったと思えばいいのではな いでしょうか。大学が8年終わってから、先生方が言うような大学で診なければいけな い人を診はじめるということで、これは医学部を8年にしてしまうとまた蒸し返します から、医師免許証を与えているのですから、本当はそうは言えないのですが、アメリカ だって8年かかっています。ここにはそこまで古い先生はいらっしゃらないかもしれな いですが、昔の先生は3年やって4年やったのです。我々も、インターンを入れれば7 年やったわけです。アメリカだと4年が終わってから4年やるのでしょう。8年です。 そう思えば、2年間だけ目ろ瞑っていれば、その人たちが大学に来ますから、先生方が 教えることは臨床研修が終わった6年プラス2年、先生方から見れば8年の大学教育を 終わったような人が来たと思えばいいのではないですか。2年間旅に出したと。 ○相川委員  大学に来なくなるから困ると言っているのではないのです。それから、いま特定機能病 院で大学病院は紹介状をもらった人が来ると言いましたが、現実は紹介率というのは30 %から45%程度かもしれません。そうすると、実際に大学病院に来る患者さんの5割以 上は、紹介状がない患者さんが来ています。これは建て前が違うではないかと言って も、実際にそういう患者さんがいるのです。大学病院としても、「あなたは紹介状がな いから来てはいけません」とは言えない患者さんがいるのです。そういう患者さんも含 めて、研修の場として、大学病院もそれなりのものをやっていると思いますので、最初 から原則禁止として門前払い的なものよりは、やはり多様性のあるプログラムを組む中 の1つには大学病院というものも考慮していただくべきかなと私は思っています。 ○櫻井委員  同じ名前だから弁護するわけではないのですが、櫻井先生は「大学病院で研修すること を原則禁止」ということで、「原則」と入れているのです。それが1つです。  もう一つは、このステートメントは現在の大学病院での研修のあり方に対して、痛烈 な反省を求めている。そういった考えで取っていただきたいと思います。 ○黒川委員  1つは、これは日本の大きな転換期で、前の議事録を読んでいただくとわかりますが、 この間も財源の話をしているのです。財源はタックスペアーのお金だから、パブリック がこれをどう見るかというのはすごく大事なことで、どういうプログラムが出てくる か。今日4人の先生方の話を聞きましたが、あれで皆さん納得して、それに財源を出す ことをいまの苦しい時期にするだろうか。だから、厚生労働省に頑張れというのではな くて、厚生労働省が財務省から予算を取れるような研修プログラムはこれで国民の皆さ んが納得しますかということがすごく大事だと思うのです。  欧米でという話はする必要はないのですが、いまの大学病院のこともそうですが、医 療制度をこれから変えていかなければいけない。5年ぐらい先には、大学病院は紹介し かいかない。という話になってくればそうですが、いまはそうではないわけで、これは すごく乱暴な意見だなという気がします。大学病院はそういう研修から出てしまってい るというのはすごくおかしな話で、それは外から見ても全く異常だなと思われてしまっ たらマイナスなわけです。  もう一つは、アメリカもイギリスもそうですが、大きな病院が別経営になっているわ けです。だけど、大学に連携(アフィリエイト)していて、学生も研修医も行くし、先 生も一緒だというような体系になってくれば、初めてそういうことができるわけです。 日本では、そういう話にまだなっていないから、大学の附属病院というのは大学が経営 母体になっていて、国立の附属病院は国が経営母体になっているというような特殊な状 況で大学病院という話を位置付けるのも、もうそろそろ限界に来ているわけです。その 辺をもうちょっと、いま移行期だから、国民から「ああ、こういう研修だったらお金を 出してもいいかな」という話が出てこない限り、なかなか協調も厳しいのではないかと 思っているし、それがこの委員会のいちばんの役割だと思うので、よろしくお願いしま す。 ○高梨委員  大学病院で研修を行うことを原則禁止というのは、現状の問題点が大きすぎるからこう いう考え方が出てきているのだろうと思うのです。そのことは、こういうことが端的に 言えるのではないでしょうか。大学の卒業生が、その大学の附属病院で卒後研修を行 う。要するに、ある意味での囲い込みみたいなことをするということは、原則としてで はなくて絶対禁止ということにして、こちらの大学を卒業した人が別の大学、特に全然 違う大学の附属病院で卒後研修を受けるという、そういうことはあってもいいのかなと いう感じがいたしますが、その点はいかがでしょうか。 ○櫻井医師  この提案は、どちらかというと地域でという提案をしているわけです。だから、先ほど 同姓の櫻井委員から援護をいただきましたが、原則というところももちろんあるわけ で、例えば地域のコーディネートの中で、大学病院もその群の中に入れようということ であっても良い。これは細かいことは言いませんでしたが、実際私が考えているイメー ジとしては、二次医療圏にこだわりませんが、二次医療圏が300いくつかあるのです。 例えば二次医療圏の程度の大きさとすると、1年間で20人ぐらい引き受ければ、大体 8,000人ぐらいの卒業生ですから、いいわけです。そのぐらいのことで、例えば定員 を、1年に取る人数はこの地域のA群は20人ということで、その中に何とか大学病院が 入っているというような形であっても、それは構わないかなと思います。それはその地 域のコーディネートです。  定員を決めて、きちっとプログラムを公表して、研修医になる人はそこを希望する。 先ほど言った待遇とか報酬も、各々オープンにしたらいいと思うのです。「うちは金を 出さないよ。でも、こういうことをやるよ。それでも、いい人来なさい」と言って、い まみたいに自分の大学に囲い込むという徒弟制度みたいなものにしたくないですから、 ちゃんと20人なら20人という定員を決めて、どうしてもオーバーしたら試験をするなり して選抜して、そこに落ちた人はA群は入れないからB群に行って研修とかというよう なことをきちっとやれば、やるほうもすごく一生懸命やると思うのです。  先ほども言いましたように、これはやるほうの熱意の問題というのも随分関係してく ると、私は思っているのです。自分のことを別に手前味噌で言うわけではないのです が、私なんかインターンで、あの当時たしか給料なんてほとんど何にももらわないで、 毎晩泊まり込むような形でめちゃくちゃなことをやって医者まがいのことをしていたけ れども、1年間楽しくてしょうがなかったです。楽しくて、うれしくてしょうがなかっ た1年間があったわけですから、いまの医学生にもそういう人がいるのではないかと私 は思っています。 ○辻本委員  医師会にということではなくて、今日の議論ということに対してですが、先ほども小児 科のお話がありましたけれども、今日のお話をずっと伺っていて、患者の立場としては 「何なんだろう、これは。陣取り合戦かしら」というような議論に聞こえてしまいまし た。先日もある難病を抱えた子供さんの母親の会に招かれたときに、そのお母さんたち が異口同音におっしゃったのは、「研修医が見学のような意識で、将来は別の専門医に なりたいとはっきり言っている学生たちに対して、全く理解もできなければ、怒りに近 いものを感じている」。そういうことから考えると、特に小児科の母親というのは教育 に参加するような余裕はないのかもしれませんけれども、今日の議論の中で確実に欠け ている研修医の教育ということは、患者の協力があって初めて成り立つもの。そのこと を是非、最後にお願いということで皆さんにお伝えしたいなというふうに思いました。 ○部会長  櫻井先生、最後まで、そしてまとめの発言をしていただきまして、ありがとうございま した。いま辻本委員が言われたようなご意見も踏まえて、制度設計を含めて、新しい研 修制度をどのようにやっていくかというのが今後の問題になるかと思います。今日は時 間がなくて総合討論ができませんでしたが、4団体の先生方のご意見を伺って、ある程 度の方向性が見えてきたように思いますので、本日はお忙しいところご参加いただき、 またご熱心な討論をいただきまして、ありがとうございました。 ○徳永委員  今日みたいなヒアリングというのは、今後何か計画されているのか。いままでのヒアリ ングを伺っていますと、大学のことに対して、かなり理解不足みたいな話がベースにあ りながら進んできていて、ヒアリングが公正さを欠いているような気がしますので、今 後の計画を事務局からご説明いただきたいと思います。 ○医事課長  今後の日程、計画につきまして、次回についてご説明させていただきますと、12月18日 の火曜日、10時〜12時までヒアリングを予定しております。ヒアリングをする対象の 方々につきましては、現在調整中のところであり、その後につきましても、さらにいろ いろご意見をいただくところについて、もう一度ぐらいヒアリングの可能性を検討して いるところです。 ○福井委員  国立大学附属病院の研修カリキュラムも今週、最終案がまとまりますので、説明の機会 を是非いただきたいと思います。 ○ 部会長  それは事務局もよく勘案していますので、よろしくお願いいたします。それでは、今日 の審議会を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 (照会先)    厚生労働省医政局医事課    03−5253−1111     内線 2563 染谷        2568 手島