01/11/22 第3回「医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」    第3回「医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」                日時 平成13年11月22日(木)                   10:00〜                場所 厚生労働省共用第6会議室 ○新木室長  傍聴の皆様にお知らせいたします。傍聴に当たりましては、すでにお配りしておりま す注意事項をお守りくださるようにお願いいたします。それでは部会長、よろしくお願 いいたします。 ○矢崎部会長  ただいまから「第3回医療安全対策検討会議ヒューマンエラー部会」を開会させてい ただきます。委員の皆様方には大変ご多忙の中をご出席いただきまして、誠にありがと うございます。本日は9名の委員のご出席をいただいております。川村委員、山浦委員 、堺委員が欠席で、長谷川委員がちょっと遅れて来られます。  本日の主な議題は、第1に「医療安全に資する情報の収集、分析、評価等について」 です。この関連で、前回、武藤専門委員から座長を務めておられる「インシデントレポ ート収集等に関する検討会」の検討状況についてご紹介いただきました。今回さらに進 んだ報告をいただくことになっておりますので、よろしくお願いします。  また、この関係で「インシデントレポート収集等に関する検討会」のメンバーである 日本赤十字社看護婦幹部研修所講師の増子ひさ江さんに、今回ご出席いただいておりま す。よろしくお願いいたします。  このほか審議の時間がございましたら、お手元にある資料の「個別分野における医療 安全対策の推進方法について」も、事務局のほうから説明していただこうと思います。  それでは、事務局から資料の確認をお願いします。 ○新木室長  本日はお手元に配付している資料と、机上配付のものがあります。「第3回ヒューマ ンエラー部会議事次第」のあと、資料1〜資料4まであります。参考資料として、前回 の議事録があります。また、大部のため委員のみの配付となっていますが、参考資料の 1つとして「重要事例情報」の原文を載せております。  また、看護協会から本日ご説明いただくように聞いておりますが、安全な医療を提供 するための啓発に関するグッズを委員の皆様にお配りしております。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。まず、「医療安全に資する情報の収集、分析、評価等」に ついて議論を進めてまいります。この関係では、去る10月18日厚生労働省から「医療安 全対策ネットワーク整備事業への協力について」という通知が出されておりますので、 本通知について事務局から説明方よろしくお願いいたします。 ○新木室長  資料1−1および資料1−2をご覧ください。資料1−1が概要、資料1−2は実際 に10月18日に発出した通知の全文です。  資料1−1に基づいて説明いたします。この事業は各医療機関のインシデントについ て、全国的な傾向を把握すること、また、他の医療機関での有用な事例を公表すること によって、解決方策の知恵を共有することを目的として行うものです。先ほど申し上げ たとおり、今年の8月から検討してきましたが、それがまとまりましたので10月18日に 開始する旨、通知を出しております。  収集するインシデントの事例は3種類あります。1つはインシデント事例全般につい て、その傾向を把握するための「全般コード化情報」。2番目が医薬品・医療用具が要 因となって発生するものに関して把握する「医薬品・医療用具・諸物品等情報」。3番 目は、医療事故を防止する観点から、重要な事例について報告をいただく「重要事例情 報」です。 なお、ここで言うインシデントとは、誤った医療行為が患者に実施される 前に発見されたもの、もしくは、実施されても結果として影響を及ぼさなかったもの、 という範囲にしております。この報告をいただく対象機関は、特定機能病院82、国立病 院・国立療養所及び国立高度専門医療センターが200ほどで、合計280ほどになっていま す。  2頁。収集の方法としては、できるだけ提出していただく医療機関の負担にならない ようコンピューターのシステムを開発して、それで入力していただいています。その方 法がインターネットのWebを利用したものと、指定フォーマットに則って提出してい ただくためのソフトを用いていただくものの2種類があります。  さらにインシデント事例の実際の収集方法ですが、4頁目に図がありまして、参加医 療機関から医薬品機構に対してインシデント事例に関する情報を提出していただき、そ れを集計して、厚生労働省に報告していただきます。医療安全対策検討会議等で検討い ただいて、その結果を国民・一般の医療機関、参加医療機関、さらに業界団体・個別企 業等へ情報を提供していく仕組みです。  なお、情報の取扱いに関しては、本情報がプライバシーに関係するということから、 患者、関係する医療従事者の名前はもとより、具体的な個別の情報と医療機関名が明ら かになるような形での公表はしない。またその機密に努める、ということで運営してお ります。 1回目のインシデント情報の収集については、3頁ですが、8月〜10月まで の3カ月分を11月19日締切で集めたものです。以上です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。それではこれに関しまして、インシデント事例の分析・手 法等についての検討を行っておられます武藤専門委員および当検討会に属されておられ る増子さんから検討内容をお伺いして、その上で質疑応答を行うことにしたいと思いま すので、よろしくお願いいたします。 ○武藤専門委員  資料2−1をご覧ください。先ほど新木室長からもお話が出ましたが、現在収集する 医療事例はインシデントレポートをコード化した事例と、重要事例の2つについて分析 を行っております。  収集は10月18日、特定機能病院、国立病院・療養所の280カ所から集めております。 先ほど言いました「コード化情報」と「重要事例」の2つを収集しており、橋本先生か らはコード情報に関する分析を、増子さんには重要事例に関する分析をしていただいて おります。  別紙1が「インシデントレポート収集等に関する検討会」の名簿です。ここで国立病 院が4施設、特定機能病院が全部で7施設集まって、ここでやったことはコード化情報 のためのコードの標準化を行いました。そして、コードの標準化及び重要事例の記載様 式などを検討しました。  この検討会には、それぞれの情報分析のためのグループを置いており、「重要事例情 報分析グループ」のチーフが増子さんです。それから「全般コード化情報分析グループ 」のチーフが橋本先生です。  1頁に戻って、2の「結果の概要」です。 (1)「報告対象期間の設定」、全般コード化情報については、平成13年8月1日から1 0月31日までの3カ月間に発生したインシデント事例に基づくものとしました。重要事 例に関しては、インシデント事例が発生した時期にかかわらず報告可能としてあります 。 (2)「報告期間」は、平成13年10月18日から平成13年11月19日まで、いまのところ わずか1カ月ほどですが、もうかなり集まりました。 (3)「報告施設数」、現在のところ78施設あります。先ほどの280施設のうちですか ら、大体3割ぐらいでしょうか、非常に短期間の間に大変ご協力いただきまして、感謝 しております。 (4)「情報別報告数」は、下記のとおりです。全般コード化情報として集まったのが2 ,406事例です。重要事例報告ですが、110事例となっています。なお、そのほかに医薬 品や物に関する情報が101事例集まっています。  今日は「全般コード化情報」と「重要事例情報」に関して、それぞれ橋本先生と増子 先生からその結果内容について、ご説明していただきたいと思います。  非常に収集期間が短かったにもかかわらず大変ご協力いただきまして、内容も非常に 貴重な情報が出てきて、大変興味深い情報が集まっています。この報告は大体3カ月に 1回ぐらいヒューマンエラー部会にご報告させていただいて、ここで審議していただく 予定になっています。まず「全般コード化情報」に関して、橋本先生からご報告をお願 いしたいと思います。 ○橋本委員  私から「全般コード化情報の分析」ということでご説明いたします。  資料2−2ですが、構造としては2つに分かれていて、6頁までが現時点までの分析 についていくつかの所見を載せています。そのあと別紙が続くわけですが、これをグラ フ化したもの、あるいは表の形のものがあります。さらにその後に頁が打っていないの ですが、単純集計のものと、クロス集計のものがあります。それぞれ申し上げたいと思 います。  「全般コード化情報の収集状況」としては、いまお話があったように、参加登録をし ていただくことになっていますので、現在のところ262施設登録していただいています 。そのうち11月19日までに報告があったのは78施設、そのほか取り組んでいただいてい るとは思うのですが、まだ報告をいただいていない所がいくつもある、ということです 。収集結果としては、事例が2,406件あります。その中で若干無効と判断されるものが33 7件あって、有効事例数が2,069件となります。無効事例の内訳は、入力内容が不足して いて使えないというのが12件、明らかな入力ミスがあったと思われるもの、つまり、こ れを入れていくと分析の上で問題があるものが283件、コード変換ミス、これは同じよ うなことだと思いますが、42件あります。その件数が337件を除いた2,000強の件数があ ります。  2頁目、まず集計の方法としては、単純集計をすること。その中でも重要なものとし て年齢、勤続年数、部署配属年数については、ひとつひとつの連続した数値でいただい ているのですが、区分ごとの集計をしたということです。  2番目、収集した事例について、発生場面、これを一々申し上げていると大変なので すが、Lコードというものと、内容についてのMコードという体系があります。その相 互関係が重要です。つまり、どんな場面でどんなことが発生しているのか、ということ です。そういうもののクロス集計を行いました。  その他、どんなものがどういう内容で起こっているのかを見る項目として、おそらく 重要なのは、発見者は誰だったのか、当事者の職種、勤務年数、部署配属年数、発生時 間帯、発生要因といったものについて、クロス分析も同時に行っています。分析項目は いま申し上げたようなことを含めたものが下に列記してありますので、ご覧いただけれ ばと思います。一番下の項目として、Oコードというものがあって、「間違いの実施の 有無およびインシデントの影響度」とありますが、この影響度は、おそらく相当重要な 変量になると思います。あとで申し上げますが、いまの段階では、重要度は大変なもの は、まだわずかしか集まっていないということです。  3頁目、「発生場面×発生内容」のクロス集計、「発見者×当事者の職種」等々クロ ス集計の視点が書いてあります。  4頁目以降の分析にまいります。まず単純集計では14項目ほどあります。ここでお断 りしておきたいのですが、依頼してから短期間で収集されたということや、これが初め てであったこと、Webでお願いしたり、いくつかの方法論上のシステムとしてまだ慣 れていない部分があるということもあって、単純集計は11月19日の時点で分析を締め切 ったものを報告します。それが先ほどから申し上げている2,069件です。クロス集計に ついては、集計の時間が若干かかりますので、11月15日を内部的締切として、11月15日 の段階の920件を用いてクロス集計しております。  まず「単純集計」ですが、1番目、発生月では10月が最も多い。これは10月の至近の 所から集めていますので、当たり前の話です。発生曜日は火曜日から金曜日が多くて、 次いで月曜日、土曜日であるということです。行われている業務の量との関係があると 思いますが、当たり前のことが当たり前に出てくるということですが、確認しておく意 味があると思います。発生時間帯では、午前10時から11時をピークとして、午前中が多 かったということです。そこに集中していたということではなくて、他の時間帯にも分 布していたが、ピークがそこにひとつあったということです。  インシデント報告が多い場所は「病棟」、これは業務の量から言うと、当たり前の話 かもしれません。種類として「集中治療室」「薬局」「放射線撮影室・検査室」、それ から「検査室」単独のものであり、「手術室」「分娩室」は少なかったということです 。注意していただきたいのは、インシデント報告が多かったということです。そこを頭 に入れておかないと、読み間違う恐れがあります。患者の性別は男性がやや多く、年齢 では60歳代、70歳代が多く、平均は54.41です。これも現時点でのデータです。それぞ れの入院されている患者の性別や年齢別はもともとの母集団の構造に規定されますので 、注意して読む必要があると思います。  患者の心身状態は「障害なし」が最も多く、以下そういうことです。7番目辺りは、 ちょっと重要です。発見者の5割は当事者、本人から報告があるということです。次い で同職種者、他職種者の順でした。  ここから言いますと、それなりのインシデントを報告して、それを糧として何か改善 していくためには、職種間の連携やコミュニケーションといったものが重要であること は示唆される、それは間違いないことだと思います。それから患者本人とか家族、他の 患者が発見者の事例も、それほど多くはないのですが見られたということで、そのこと も押さえておきたいと思います。患者あるいは家族の参加が必要である、ということが 示唆されると思います。  インシデントの当事者は「看護婦・士」が最も多く、以下「医師」「薬剤師」「臨床 検査技師」の順で、これは従来から言われているとおりです。当事者の勤務年数、これ もちょっと注目していただきたいのですが、約3分の1が「1年未満」であり、「3年 未満」は約半数を占めていたということです。配属年数では45%が「1年未満」であっ た。(9)と(10)はクロスといいますか重なりますので、(9)番だけでよろしいかと思います。 (11)番目、インシデントの発生場面では、「処方・与薬」が最も多く、これはまだ精査 する必要があると思いますが、医師あるいは看護婦が患者に与薬をするときに、という ものが入っているのだろうと思います。ですから、看護婦のエラーや、与薬のエラーが 多いことと関連があると思います。「その他の療養生活の場面」「ドレーン・チューブ 類の使用・管理」といったような所が多く見られます。  療養生活の場面の中身は、「転倒」「転落」です。インシデントの発生内容は、「処 方・与薬」では中身を見ますと、「与薬量の間違い」「投薬をしなかった」「速度の間 違い」「時間・日付間違い」「薬剤間違い」「患者間違い」が見られました。「ドレー ン・チューブ類の使用・管理」では「自己抜去」が圧倒的に多く、66%と3分の2ぐら いは自己抜去である、というデータが出ております。申し上げましたが、療養生活の場 面では「転倒」「転落」が多かったということです。  インシデントの発生要因では、「確認」という事故が最も多く、これはかなり広い意 味合いでとられると思いますが、やはり「連携」「確認」「コミュニケーション」とい うことになるのかなと考えられます。以下、「観察」「勤務状態」「判断」「連携」。 連携と確認はある程度どこかで共通するので、そういうことだろうと思います。  先ほど申し上げましたが、影響度について見ますと、「小さい」が最も多かったとい うことです。「中程度」「大きい」も見られましたが、まだ2,069件の段階では、影響 度が大であるというものが12件でした。なお、影響度についての定義は、先ほど新木室 長からありました別紙3の17頁にございます。「インシデントの間違い及びインシデン トの影響度」ということで、口頭で申し上げます。  間違いが実施前に発見された事例をかなり多く取ってそれが報告されているわけです が、「小」というのは仮に実施されていても患者への影響は小さかった。つまり、処置 が不要であったと考えられる事例、もしくは、間違いが実施されたが患者に影響がなか った事例をひっくるめて、影響度を「小」としております。「中」が仮に実施されてい た場合、患者の影響度は中程度、処置が必要と考えられるものです。これは「大」との 関連で決められると思います。「大」というのは、仮に実施されていた場合、身体への 影響は大きい、生命に影響し得ると考えられる、このように判断されたものをそれぞれ 小、中、大としています。いま申し上げたことをもう1回申し上げますが、仮に実施さ れていた場合、身体への影響度は大きい。つまり、生命に影響し得ると考えられる事例 は、今日の時点で報告されている事例としては20件程度であったということです。  次頁、クロス集計です。「発生場面と発生内容」、これはとても大事なものです。15 日までの報告数920件の中から抽出しています。「処方・与薬」では、「注射」及び「 内服」とともに「与薬量の間違い」、これはすでに申し上げました。それから、「時間 ・日付間違い」無投薬が多かったということです。「注射」だけで取り上げますと、「 速度の間違い」の頻度が多かったということです。「ドレーン・チュープ類の使用・管 理」では「自己抜去」が多い、これは2,069件と同じ状況です。  「療養上の世話」では、「転倒」「転落」、あるいは「移動中」での「転倒」「転落 」は車椅子とかそういったものを使っている場合だろうと思いますが、そういう「転倒 」「転落」が多かった。  その他のクロス集計としては、職種ごとの発見というクロスをやってみますと、看護 婦・士は当事者による発見が多い。医師、薬剤師、他職者による発見が多い。これはど の時点で業務をしているか、ということと関わってくると思います。看護婦・士は、与 薬が多いわけですから、例えば、与薬するときに当然発見されるということになります 。処方のオーダーを出すということに限って言いますと、そこで発見されるというより も、むしろ、そのあと他職種で発見される、という事例が多い。これもすでにある知見 です。  医師のインシデントは、勤務年数1年未満のものが多いが、他の職種のインシデント は1年以上の勤続年数でも多い状況です。医師のインシデントというのは、これまで分 かっていなかった事例だと思いますが、これが少し分かってきました。ただ、内容から 言うと、もう少し精査が必要かなと思われます。つまり、医師のインシデントを報告さ れているものから見ますと、処方が多いのですが、要するに、指示を出すところに関与 している医師がどういう人たちなのか、ということだろうと思います。それでも医師の インシデントがそれなりに出てきているということは、このインシデントレポート、総 括的な言い方になりますが、なかなかいい調査となっているというふうにも評価される と思います。看護婦・士、薬剤師、臨床検査技師は、年数の長短にあまり関係なく報告 されていたということです。  発生要因の「連携」について見ると、「看護職間の連携の不適切」が最も多かった。 看護職という同じ職種のほかに、「医師と看護職の連携が不適切」であったということ も、どのような場面でも見られるということです。標語の問題にもありましたが、むし ろ、職種間を越えた連携が着実に確保されていなければこういうインシデントが起こり 得る、ということが示されていると思います。すでに申し上げたことですが、医師のイ ンシデントでは、勤務年数が1年未満のものが多かった、ということになります。  すでに一部考察申し上げておりますが、このシステムの運用も含めていくつか申し上 げたいと思います。今回初回ながら傾向について一定の結果が得られたのは、大きな成 果と言えると思います。併せて、全般コード化情報の収集システムがより一層有効に機 能するために、いくつかの改善点に関する示唆も得られました。  まず今回の結果について、初回の集計にもかかわらず、2,000例以上の事例が収集さ れた。この問題の大きさと、おそらく、それに対する熱心な参加意欲があるのだろうと 思います。国としてこのようなインシデント事例収集は世界でも初めてであるというこ とですが、興味深い結果が示されたことから、今後より多くの事例を収集し、インシデ ント事例の発生状況を明らかにしていくことが必要であると思われます。  そのためには、報告数あるいは参加医療機関数を増加させることが、やはり、重要だ と思われます。そうすることによって、正確な結果が得られることになります。そのこ とを支援するためには、コード化情報の入力方法、あるいは、コードの解釈に関するマ ニュアルは一応ありますが、それをさらに充実していくことなどが、医療機関の参加し やすい条件になると思います。  さらに大事なことは、何のためにやるかということの1つですが、医療機関への情報 のフィードバックがきちんとされなければならない。他施設の情報と比較した自施設で のインシデントの特徴を把握できる。そのことによって、医療安全対策への取組みが進 められる。これだけでということではないと思いますが、かなり重要な資料になるので はないかということです。このためには全国的な集計結果を提供するだけではなくて、 参加医療機関が、自らの目的に合った加工ができるような集計プログラムを配布する等 の取組みが必要であると思います。  さらに、インシデント発生の現状をより明確にする分析手法を開発することが重要で ある、と思われます。これは今後の課題ということになると思います。別紙1、別紙2 を1つひとつ対応させて説明する時間がありませんので、その部分は省略して概要を申 し上げました。 ○武藤専門委員  どうもありがとうございました。続いて増子さんのほうから、「重要事例の結果報告 について」、よろしくお願いします。 ○増子参考人  「重要事例情報の分析」について報告いたします。資料2−3ですが、委員の方のみ 参考資料として全事例を集めたものをお手元に配付しておりますので、よろしくお願い いいたします。重要事例の総事例数は、11月19日までに110事例集まっております。分 析対象事例は、この中から10事例を選定しました。分析の方針としては、医療事故を防 止する観点から、報告を行う医療機関から考えて広く公表することが重要だと考える事 例について、発生要因や改善方策などを記述情報として収集しております。収集したイ ンシデント事例より、分析の対象に該当するものを再選定して、より分かりやすい表記 に修文した上で、タイトルやキーワードを付けました。さらに、事例の特徴や医療安全 対策に資する内容について、専門家からのコメントを付けております。この専門家とい うのは、委員が対応しております。  専門家のコメントの考え方としては、各事例に対し検討会において、次の視点からコ メントを付けました。医療安全に関する専門的立場からのコメントとする。要因や改善 策について、事例に記述された以外の視点から分析したり、不足している情報や参考と なる考え方を提示するなど、読む人の今後の取組みに参考となるものとする。対象事例 の重要性について解説することとしました。  2頁、「分析対象事例の選定の考え方」ですが、収集された事例のうち、特に有用な 事例を選定し、分析を行いました。選定の考え方はインシデント事例の具体的内容、発 生した要因、改善策がすべて記載されており、事例の理解に必要な情報が含まれている こととしております。それから、次のいずれかに該当する事例であること。「発生頻度 は低いが、致死的な事故に繋がる事例。インシデントの要因について深くかつ多角的に 分析ができている事例。改善策が斬新で、組織的に改善した事例で他施設でも活用でき る事例」。特に後2点は重要かと思います。  「事例のタイトル及びキーワードの設定」ですが、まず利用者が検索しやすいように 、タイトルとキーワードを考えております。各事例に、内容が一目で分かるような20文 字程度のタイトルを付けました。キーワードは、多過ぎると大変検索に不備となります し、そういったことから場所、手技・処置及び診療科の3項目について、各予め設定さ れたものを選定して、設定することにしました。  キーワードは医療・看護分野のテキストを参考に、場所、処置・手技などについて、 キーワードとなり得る用語を網羅的に体系的にリストアップしております。収集された 用語から、以下の視点で選択しております。収集されるインシデント事例が多く該当す るもの。場所、手技・処置など、さらに診療科に特有の危険を表わし得るもの。関連す る他の研究における分類項目を参考としました。部署とキーワードで重複するものは、 部署項目を優先しております。  次の頁に、その分類項目、キーワードのデータ提供フォーマットを出しておりますが 、最初の「場所」の所では、「大項目」として「外来部門」「病棟部門」「診療部門」 「事務部門」「その他」としております。  「手技・処置など」の所では「日常生活の援助」「医学的処置・管理」「情報と組織 」「その他」。細かい分類項目については、ご覧いただきたいと思います。  3番目として「診療科」、12科とその他として、ここに含まれないものでは外科系、 内科系ということで、診療科は14項目に分けています。  選択した110事例の中から重要事例として私どもが選定したものを、分かりやすく一 覧表にして6頁に載せています。薬効が類似した薬品の取扱い、輸液ポンプ使用時のク レンメ操作エラー、動脈ラインの接続はずれ、同一処置のある患者の誤認、包装が類似 した返品薬剤の取扱い、医薬品の充填ミス、ストレッチャーのストッパー破損による転 落、前投薬の指示の重複、下肢の筋力低下に伴う転倒、点滴混注時の薬剤の取り違え。 よくある事例ですとか、あるいは、皆様よく活用していただけるもの。それから、これ を選んだ根拠は2頁に入れておりますが、きちっと記述されたものから選ばせていただ いております。 「分析結果及び考察」ですが、収集されたインシデント事例の中には 、ひとつ間違えると深刻な事故問題となり得る事例が見られました。こういった事例の 要因分析や改善策の公開によって、他の医療機関においても同様の事例を未然に防ぐこ とに貢献できると考えられます。治療の進歩に応じた医療機器の使い勝手や使用に際す る安全性確保に関する遅れや、間違いやすい薬剤名、デザインなど、一医療機関の努力 だけでは改善が困難な事例も見られました。こういった事例について情報収集し、現状 についてメーカーを含めた関係者に広く公開し、議論を喚起することができれば、全国 規模で事例を収集することの意義は大変大きいと思います。  複数診療科からの重複した指示など、橋本先生のほうからいろいろなご指摘もあった かと思いますが、部門間の連携不足に起因するインシデントが見られ、改善には部門を 越えた病院全体で取り組む組織的な対応が必要である、ということが指摘されました。 輸液ポンプのクランプ操作ミスなど、基本的な行為を怠ったことによるインシデントが 見られました。これは基本的な行為に関しては、チェックリストの作成など、記憶に頼 らずに済むような「外部化された知識」の活用により、ミスを起こさないようにするこ とが必要である、との指摘もしております。  以上のように、重要事例情報として収集された情報として、この内容や改善について 、医療従事者が他医療機関の事例によって警告を得られることや、医療安全のための取 組みの参考とすべき事例が得られていて、収集事例を広く公開し、医療安全の取組みを 推進するという本システムの意義は、私ども改めて確認された次第です。  「今後の課題」として、収集された事例の中には、参考資料が全事例を網羅したもの をお配りしていますが、次のとおり記載の改善が必要なものが見られました。事例の具 体的内容についての記述が不足している、あるいは曖昧で事例の状況が分からないもの 。改善策について記述が不足している、あるいは改善策の具体的内容が分からないもの 。要因分析が表面的で根本原因分析にまで至っていないため、改善策が「確認の徹底」 など表面的なものになってしまっているものがありました。   このため記載すべき内容を分かりやすく示す記載用紙(別紙1)、記入例(別紙2) を作成しました。別紙1の15頁をちょっとご覧いただきたいのです。できるだけ有用な 事例を集めたいという今後の課題にもなりますが、記載用紙、別紙1です。「事例:粘 性の高い薬剤は輸液ポンプ指示量に注意」、これはタイトルです。発生部署が病棟、キ ーワードが機器一般とか輸液ポンプ。それから発生診療科は泌尿器、腎臓内科となって います。そして、「インシデントの具体的内容」、「インシデントの発生した要因」、 「実施したもしくは考えられる改善策」、「専門家からのコメント」ということで、記 載用紙はこのような形に考えております。  これに対して「記入上の注意」ということで、別紙2が16頁にあります。「医療事故 の予防上、特に有益と考えられる事例については、以下に入力してください。なお、医 療機器・機具・医療材料、薬剤、諸物品が要因で発生した事例については、要因の各々 の部分に入力してください」ということです。  インシデントの具体的内容、「何をしようとしていたのか」、これはあるわけですが 、「インシデントが発生した状況が詳細に分かるように、「誰が、いつ、何を、どこで 、どうしたか」の5W1Hを明確に記述してください。特に、診療科や事故の当事者の 職種はなるべく記入してください、ということです。  それから、「インシデントの発生した要因」。この太字はすでにフォーマットとして あるわけですが、「直接的な要因のみでなく、その根本的な要因まで十分検討した上で 記入してください。先入観や勘違い、確認不足、知識不足といったものは、概ね直接的 な要因と言えます。一方、根本的な要因とは、人間の記憶や確認への依存、人員配置の 不備、教育の不足など構造的な欠陥を指します。根本的な要因のために、SHELLモ デルや4M4E法、ルートコーズアナリシスなどの手法があります」。勉強して参考に してください、というような意味が含まれております。  「実施したもしくは考えられる改善策」については、改善策の検討の視点として、シ ステム面での改善、工学的な面での改善、人の問題に関する改善の3つがあります。改 善策としては、上記の根本的要因の分析を踏まえた上で、「確認の徹底」など人に依存 するもの以外の対策も検討してください、ということです。  元に戻って、8頁をご覧ください。全般的に「今後の課題」としては、データの入力 ・収集も今後ずっと続けていって、たくさんの事例を分析する必要があると思います。 今後の分析体制としては、医療安全体制ネットワーク整備事業によるインシデント事例 の収集は、3カ月に1回の締切を設定し、今後も継続して事例の収集・分析を行ってい く予定です。  「データの提供について」は、収集・分析された重要事例情報は、見やすく、検索し やすい形でデータベースとしての公開の方法が望ましい、と考えております。それから 、「冊子形式の事例集の公開」も考えておりまして、この冊子形式の事例集の作成・配 布も有用であると考えておりますので、その編集イメージを次の9頁以降に載せてあり ます。表紙と目次をこのようにしておりまして、「外来部門」とか「入院・検査部門」 、事例1、事例2はタイトルを付けていく形になっています。  最後に、17頁から私どもが選定した10事例を、そこに載せています。全部見るには時 間が限られておりますので、18頁をご覧ください。「輸液ポンプ使用時のクレンメ操作 エラー」ということで、発生部署は放射線部門、手技・処置として機器一般、輸液ポン プ、発生診療科は不明でした。「インシデントの具体的内容」は、3カ月経験の看護婦 が先輩看護婦と2人で輸液薬剤を10ml/hで輸液ポンプを使用して投与中、MRI検査 のためポンプを除去する際、先輩看護婦が滴下が早くなったことに気付き、輸液ポンプ のルートのクレンメがクランプされていないことを指摘したわけです。発生時刻は13時2 5分、その後の患者の状態は、身体変調がないことを確認後、MRI検査を施行しまし た。  「インシデントの発生した要因」は、新人看護婦の輸液ポンプをはずす際のクレンメ 操作に対する知識が不足していたこと、ポンプを除去する際に先輩看護婦に声かけを行 わなかった、また、助言を求めなかった。  「実施したもしくは考えられる改善策」として、再調査を施行し、実態を把握し、リ スクマネージメント会および安全対策委員会で、事例ごとに要因に対して対応した。輸 液ポンプ操作に対しては、以前より数回にわたり安全対策委員会および各部門を通じて 注意喚起、書類通達を実施してきたということで、この四角の中に入っていたものが事 例として出されたものです。  「専門家からのコメント」を委員が付けたわけですが、常に輸液ポンプをルートから はずす場合は、ルートに付いているクレンメを使わずに、鉗子を用いるように取り決め る。ポンプには簡単な操作手順を作って貼る。特に新人看護婦の手順の遵守・徹底を指 導する。本事例は、頻度の高いインシデント事例の1つであり、医療従事者の注意は当 然であるが、ルートを外しても輸液が急に流れないような仕組みを有する輸液ポンプの 開発も期待されるというような事例です。  24頁の事例8をご覧ください。「前投薬の指示の重複」ということで、発生部署は病 棟、手技・処置などでは注射、発生診療科は心臓外科です。「インシデントの具体的内 容」は、1年目の看護婦がペースメーカー植え込み術の患者に7時に麻酔科から指示の 出ている前投薬を服薬させた。その後、7時40分に手術室より連絡があり、8時15分に 手術室へ向かった。持参物品については、事前にリーダー看護婦と確認を行った。患者 入室後、手術室より病棟へ電話連絡が入り、心臓血管外科から指示が出されていたアタ ラックスP12.5mgが施行されていなかったことが判明した。重ねて注射用ワークシート も忘れてしまい、手術室への申し送り時に、その確認作業が漏れていた。手術は無事に 終了した。  「インシデント発生の要因」は、7時40分に手術室から入室時間についての連絡が入 ったときに、通常は8時30分ころなので予測していなかったため、また準備もできてい なかったためにあせってしまった。前投薬が、麻酔科と心臓外科の指示が重複して出さ れていた。  「実施もしくは考えられる改善策」として、「午前中の手術は他の手術が中心になっ たりした場合、9時からの手術に突如繰り上がることもあるため、深夜看護婦が物品を 正確に揃えておくこととした。手術のための準備物品の項目を列記したメモ用紙を用意 し、オリエンテーションや諸々の処置が終了するたびにチェックを行い、その用紙を最 終的にカルテカバーの表表紙に添付し、急いで準備したときも、最終的にその用紙で再 度確認できるようにする。前投薬単科に任せ、今後事情があって両科より出る場合は、 ワークシートのコメント欄に必ずコメントを入れることとなった」という事例、要因、 改善策が出されております。  それに対して「専門家からのコメント」として、「本事例は『インシデントの発生要 因』の(2)(前投薬が麻酔科と心臓外科の指示が重複して出されていた)が組織的に取 り組むべき重要な課題である。2科以上で併診する場合は、処方の重複は多々ある。特 に麻酔科と外科の周術期における処方の取り決めが必要。あるいは、クリティカルパス の活用も効果がある。指示出し、指示受けシステムを明確化する。注射実施のチェック 並びに確認の徹底を行う。注射ワークシートを活用する」。あとの事例はご参照いただ きたいと思います。  110の事例をいただきましたが、始まったばかりですので10事例の選定に留まってお ります。課題の中に示しているように、この事例をたくさん集めて、そして、有用なも のは公表していくということ。そして、いろいろな機関がそのことを参考にしてやって いただく意義というものを、私ども委員の中では確認されまして、このグループの設定 された意義が十分ある、と認識しております。以上です。 ○武藤専門委員  どうもありがとうございました。以上、「全般コード化情報」については橋本委員か ら、「重要事例情報」については、増子委員から報告させていただきました。またご検 討をお願いいたします。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。今の報告をもとに質疑、コメントをいただきたいのですが 、この医療安全対策検討会議にもう1つ「医薬品、医療品等対策部会」がありまして、 先ほどご説明のあった「医療安全対策ネットワーク整備事業」の中に、医薬品・医療用 具・諸物品等情報についても収集しているということですので、この件について、伏見 室長からご説明いただきたいと思います。 ○伏見室長  本日お配りした資料3ですが、「医薬品・医療用具・諸物品等情報の分析」について 簡単に説明します。インシデント事例の収集の中で、具体的に医薬品あるいは医療用具 、それから、それ以外のいわゆる物に関するインシデント事例を収集する部分がありま す。それらに関して今回報告いただいたものを総括してまとめたものが1枚目です。総 事例数104件、医薬品に関するもの88件、医療用具に関するもの13件、その他の諸物品 に関するもの3件となっています。その他というのは、ベッド、スクリーンといったも のです。「医薬品関連情報の概要」については以下にありますが、インシデントの要因 ということで、これは報告様式の中に選択肢があって、どの選択肢を選んだかに従って 、区分分けをしております。  2枚目は医療用具に関しても、同様の選択肢に従って分類しております。諸物品に関 しても、同様です。  3枚目以降にやや具体的な医薬品名や、医療用具名などを記載しております。 先ほど部会長からもご説明があったように、実は医薬品・医療用具等検討部会というの がありまして、この物に関する分析、収集結果に関しては、そちらの医薬品・医療用具 等対策部会において検討していただきたいと思っておりまして、実は12月に開催する方 向で調整をしております。この集まった事例の取扱いやそういったことも含めて、そち らで相談させていただき、検討をお願いしたいと考えております。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。この「物」だけに関する問題をヒューマンエラーの部会と 一部重なるかもしれませんが、もう一方ではこういうふうな検討を行っていることを、 委員の皆様にお知りおきいただきたいと思います。それでは、いままでのご説明につい てご質問などをいただきたいと思いますが、武藤専門委員の委員会からのご報告、橋本 委員からは初めて実際にコード化された情報を基に分析された結果、さらに増子参考人 からは、重要事例の分析結果をもとに、その注意点や今後の対策あるいは方策の提案な どをいただいたと思います。  資料が大変分厚くて、いま全部把握するのは難しいかと思いますが、橋本先生および 増子先生からまとめて大変要領よくお話いただきましたので、個々の事項でもよろしい ですし、全般的なお話でも結構です。262施設の中の78施設で、まだ数は少ないです。 実は私どもも1,000床近い大きな病院でして、今日初めて運営部とかそういうのを通っ た最終的な書類が私の所に来て、今日厚生労働省に届いているのではないかと思います が、大変申し訳なく思っています。 ○松月委員  増子さんに伺いたいのですが、18頁の事例2の「専門家からのコメント」の中に、「 輸液ポンプをルートからはずすときは鉗子を用いるように取り決める」とあったのです が、例えば、すごく小さなボトルだったりすると、例えば、100ccぐらいのボトルです と、鉗子もいろいろありますので、多分個人持ちの鉗子を使うということだと思うので すが、その重みで引っ張られたりということもあるのですが、委員の方で検討なさった ときに、これがいいというようなことがあったのでしょうか。 ○増子参考人  これに合った鉗子ということなのですが、十分1つひとつに関して検討できなかった 部分もあります。再検討します。ご意見をいただきましてありがとうございました。 ○星委員  全体的なことで4つほど聞きたいのですが、1つは、Webで報告をするというのが 原則になっているようでして、あとCSVファイルということなのですが、どのぐらい の割合なのか、というのが1点です。報告があったのが78施設ということですが、これ には多分濃淡があるのですね。施設あたり1件、2件というところと、100件、200件と あるのではないかと思いますが、その辺りがどうなのかということ。それから、いま部 会長からもお話がありましたが、施設内での取扱いがどんなふうになっているのか、つ まり、最終的にどなたかが責任を持って報告することになっているのでしょうけれども 、そういうルートがどのようになっているのか。あるいは、いままでやってきたレポー トのシステムと違うわけですから、そのレポートにかわって本レポートが院内で活用さ れているのかどうか、その辺りを教えていただきたいのです。 ○新木室長  1施設当たりの報告数にかなりばらつきがあって、いちばん多い所で、たしか700例 ぐらいの施設があります。その一方、1施設当たり数件というようなものがありまして 、発足当初ということだと思いますが、ばらつきがあるのが現状です。  WebとCSVについては、いま調べております。院内のルートですが、これをお願 いするときに、冒頭に病院長宛てにお願いいたしました。その際に病院内での担当窓口 になる方を指定していただきまして、その人と直接的に情報のやり取りをするという形 としております。 ○武藤専門委員  その院内の流れですが、これは多分施設によってだいぶ違うのではないかと思います 。1例で国立長野病院の例を見ますと、いまリスクマネージャーさんが大体30人ぐらい 任命しております。そこにまず生のインシンデントレポートが上がってきまして、それ をコード化する作業をリスクマネージャーさんにお願いしています。そのコード化情報 を病歴管理室に集めまして、そこで入力作業を行うという段階的なステップでやってい ます。これは病院によって違うのではないかと思いますが、その流れについて詳細は規 定していません。 ○橋本委員  私も委員として、それから特定機能病院の担当者として状況を説明させていただきま す。私たちもすでにコンピューターに入れている書式がございまして、その他にテキス ト情報を我々は持っています。それをいまの用意された情報の中に組み込むのは、1つ は現実的に難しいというところがあります。そこは何とか解決してくれるものだと思い ます。それから、今回の場合には相当コード体系を意識されたものが作られていると思 うのです。  ただ、我々の場合には、個別的な状況かもしれませんが、起こり得る問題というのは 先に見えてきて、それを中心に構成しているものですから、なかなかこういうコード化 されたものには適合しにくいという面があります。ですから、たぶん先行されている武 蔵野日赤なども、おそらくそういう問題を抱えているのかなと思いますが、やるとした らそういう問題があるのかなと思います。 ○新木室長  現地点で78施設のうち、Web方式で入力しているものは64施設。CSV形式を用い ているものが14施設です。CSV形式を用いるものについては、プログラムをこちらか らお配りしておりますが、配るのが大幅に遅れて、そのためにこちらの数が少なくなっ ていると思います。開始時の希望としては、CSVを用いたいというお話を70、80ぐら いから問い合わせがあったと聞いておりますので、この割合は少し変わってくると思い ます。 ○星委員  入力用のソフトはWeb上の見た目と変わらないソフトなのですか。 ○橋本委員  オフラインでできるということです。ですから、複数で同時進行できるという利点は あると思います。 ○星委員  それともう1点ですが、医薬品・医療用具等の分析のうち事例104ということですが 、これは私の理解がまずいのかもしれませんが、全般コード化情報の中に含まれている ものの中から抜き出したと考えるべきなのか、それとも切っているのか。あるいは重要 事例も110ありますが、それとの関係がどうなっているのか。 ○新木室長  この3つの情報につきましては、本来別々に入力していただくことにしています。と 申しますのは、1つには医薬品や医療用具の情報、重要事例は別に3カ月以内というこ とではなく、過去から重要なものということで、別々の入口から入力できるようにとい うことで考えており、リンクが相互にはないという状況です。  ただ今回システム上の不備もありまして、若干一部その辺が誤解されていたというか 、入力しにくくなっている部分がありますので、次回にはその部分を修正して、完全に 独立してと思っております。 ○矢崎部会長  ただ初めから独立するということではなくて、ヒューマンエラーでチェックした中で 、本来、医薬品・医療用具に入る情報が入ってきた場合には、それは写していいわけで すね。 ○新木室長  例えば医薬品の部分とヒューマンエラーの部分は1つの事例で両方あると思います。 それは両方入力していただくことは部会長がおっしゃるとおりです。 ○星委員  その施設の判断ということになるわけですね。 ○土屋委員  少し細かいことですが、コーディングの問題ということで言えば、この医薬品・医療 用具・諸物品等情報の報告の資料3の3頁を見ていただきたいのですが、上から4つ目 の例と6つ目の例が全く同じ事例だと思うのです。発生した施設は違うのでしょうが。 ただ、その分類が片方は「容器が類似していた」、片方は「色や形が似ていた」と。こ のコーディングのところが不統一です。例えば下から3つ目の「ソリタT3」「ソリタ T1」というのと、4頁の真ん中にある「ST3G」「ST3」というのも、これは「 薬剤名が似ていた」と判断する人もいれば、「複数の規格が存在していた」と。同じ3 頁の下から4つ目の例で言えば、ボルタレン坐剤「25mg」「50mg」というのは明らかに 複数規格と本来はやるのですが、やはり結構この中の多くが「薬剤名が似ていた」と言 っているのです。  これをざっと数えただけですが、薬剤名が似ていたというのは、そういうことから言 うと9件ぐらいに減って、複数規格というのをもう少し同一商標とか同一ブランド名と いうことで括ると22件ぐらいになるのです。  これは元のデータのコーディングのミスと言うべきなのか、判断が違っているという のはこれから先かなり影響が出てくると思います。例えば、この元のコーディング表を もう少し見やすくというか、判断ミスが起きないような、もちろん説明書を付けるとい うのも一つの手です。また、用語そのものの記載方法を変更して、例えば「包装容器の 類似」とか「薬剤本体の類似」とか、薬剤名が似ていた他には、「複数規格」の替わり に例えば「同一ブランド名」というふうにすれば、判断ミスがなくなるのかなと考えま す。  とにかく、今のうちにコーディング表を変更しておく、あるいは一部のものについて は解説を付けるということをやらないと、これから多くの事例が収集された場合に大変 になってしまう気がします。 ○伏見室長  どうもご指摘ありがとうございます。具体的にどういうふうな対応が可能か、変更が できるのか、あるいは説明書を充実させるのか検討させていただきます。 ○矢崎部会長  それでは12月に開かれる会で、詳しく具体的に検討していただきたいと思います。そ の他にありますか。 ○山内委員  これは出すほうはインシデントだということで出しておられますが、重要事例を見て いるとやはりアクシデントというものがあります。  例えば19頁の事例3に、「右手部の寝衣に血液がにじんでいた」と。たしかに出すほ うは軽微だったということでインシデントだと考えているようですが、いま私はかなり 長く入院していて思っていますが、こういうことはやはり事故です。すごく精神的にも ショックを受けるし、終わった後もその出血が止まるのに相当時間がかかります。  私の事例では2回ほど小さなアクシデントがありました。1つはCT検査のときに造影 剤を入れて内出血したのですが、その後「まあ、大したことないですね」という形で終 わってしまうわけです。でも、私からすればとんでもないことです。  もう1回は検査に行く途中に、点滴台を引っ張っていく人と車椅子を押す人とスピー ドが違って、IVHルートの途中の三方活栓が壊れたのです。たまたまお二人ともその後 の措置がわからなくて、血液が逆流し始めたのです。私自身はそれを三方活線の使い方 を多少知っていたので止めました。でも、このとき思ったのですが、私自身はその後逆 流したのを戻してやることは可能ですが、このルートは経済的損失です。こういったも のというのは、結構多いのではないかと思います。  私はインシデントという形で集めることはとてもいいことだと思いますし、そのほう が収集しやすいというのが今の日本の現状だというのもよくわかっています。しかし、 分析する側は何かもう1つポイントを持っておかないと、これから先に間違った方向に いくのではないかと思います。しかも経済的な損失、患者の精神的なダメージをとらえ 損うのではないかという気がしています。いますぐにこんなことを何百施設に言い始め ると「じゃあ出さないよ」となるかもしれませんが、集めていく方でそういう視点を持 っておかないといけないのではないかという気がしています。是非その辺、どうぞよろ しくお願いします。 ○矢崎部会長  貴重なご意見をありがとうございました。武藤先生、おそらくそういう目からでも情 報を集めていると思いますが。 ○武藤専門委員  インシデントレポートとアクシデントレポートの境界が非常に難しいところなのです 。やはり患者に身体的に有害事象が生じなかった事例といっても、実際、いまおっしゃ ったように心理的、精神的にいろいろショックを受けるとかあります。ただ、そこまで いきますと、どこまで有害事象とするか、この定義付けが非常に難しいのです。今回は 身体的な有害事象というところで線引をさせていただく、そういうことになると思いま す。もちろんそのご指摘は非常に重要と考えますが。 ○山内委員  それともう1つは経済的な問題です。いま医療費の抑制云々と言っていますが、イン シデントといっている中の相当な部分に経済的な損失が入っていると思うのです。是非 、その点も含めて考えてほしいと思います。 ○三宅委員  インシデントというのは、インシデントという認識を持てることがいちばん大事なの です。ですからインシデントという認識がなければ出てこないわけです。ですから、私 はむしろある意味ではアクシデントのほうが情報量は多くて、非常に役に立つ分析がで きると思っているのです。ですから、インシデントも大事ですが、まずインシデントだ という認識を持てるように意識改革するということは大事ですが、そのきっかけを作る のはやはりアクシデントだと思います。ですから、アクシデント情報を大事に集めて分 析するということが、私は非常に有効なのではないかと思います。ですから、ここから そういうふうな方向に少しずつ広がっていくと、かなりいいデータが集められるのでは ないかと思います。 ○武藤専門委員  インシデントレポートの限界を重々承知しています。つまり、ご指摘のように、報告 の基準が個人の中の内部基準である、ということが非常に問題であるわけです。ですか ら、かなりばらつきも出てきますよね。ただ、もう1つは集めていく過程で、その内部 の気付きの基準を少しでも上げていくという、そうしたことも情報を収集する過程で同 時に我々がやっていかなければならないことだと思います。 ○矢崎部会長  その他にいかがですか。 ○三宅委員  医療用具についてですが、この最後にベッドというのが入っているのですが、たまた ま私どもの施設でこの委員会が立ち上がった6月末に、こういう事例があって非常に厚 生労働省がよく対応してくださったというお話ですが、72歳の男性で肺がんで脊椎転移 があって下半身マヒの患者さんが、患者さんの希望もあって、化学療法をするというこ とで入院されたわけです。その方が6月末ですが、朝5時55分に看護婦さんが巡視した ときには、ちゃんと寝ていたのですが、6時半に検温に行ったときに電動ベッドなので すが、電動ベッドがいちばん高い所、パッと見では90度と思ったのですが、電動ベッド というのはいちばん高くして70度だそうですが、そのいちばん高い所までベッドが立ち 上がって、患者さんが横へ倒れて、ベッド柵が2つ付いているのですが、その間に首が はさまって亡くなっていたのです。  それがあって、これはパラマウントベッドという会社ですが、即私どもはその会社に 連絡して、このベッド柵の間が7センチなのですが、少し問題があるのではないかとい う話をしたら、実はそのベッド会社は、昨年そのベッド柵の間の7センチを5センチの 柵に作り変えていたわけです。そういう情報も私どもにはなかったわけです。  それで5センチであれば本当に大丈夫なのか、ということでまだ問題は少しあるので す。そのベッド柵の間にスペーサーと言って、止める金具もメーカーは作っていたので すが、それを使うと今度はベッドの動きが非常に難しくなるということで、むしろプラ スチックでパチンと止めるようなものがいいのではないかという話をして、そしてその ことを厚生労働省に話しましたら、ちょうど安全ネットワークということで、いろいろ 話を聞いてくださって、厚生労働省として、メーカー及び業界に対しても少し指導して いただいたと思います。非常に迅速にメーカーが改善策を出して、そしてベッドを使っ ている消費者といいますか、施設に全部安全情報を流してくださいました。それで、メ ーカーのほうもたしか10月だったと思いますが、そのスペーサーというのを無料で提供 するということで、そういう対策をインターネットでも公表して注意情報を流したとい うことで、非常に迅速に対応していただきよかったということで、一応ご報告させてい ただきます。  ただ、この問題はその後私どもの看護婦で少し実験をしてみたら、ベッドというのは ベッドとマットとの関係でいろいろな状況が違うのです。それでベッドを起こすと、ち ょうど折れ曲がった所にはかなりのスペースができてしまうのです。それもまたいろい ろ今後問題が起きる可能性があるということは改めて私どもは認識したのです。そうい う問題はまだありますが、そういう安全対策に対して厚生労働省の指導で、メーカーも 非常に早く対応してくださったことはありがたいと思います。 ○星委員  やはり先ほどの発言が気になるので、もう1度確認したいと思います。医薬品・医療 用具に基づくものなのか、どうなのか。あるいはヒューマンエラーに属するものなのか どうなのか。これは先ほどどういうふうな認知で、どういうふうに報告者が感じるかと いうことで決まってしまうということでしたが、多くのものが複合要因なのです。やは りその関係が、つまり我々がそれを報告するところの意識のずれが、結局最後の結果の ずれに、結果というのは改善をするとか、事例集として出すというときに、ずれてしま うことを大変懸念しています。  ですから、むしろ私は1つの入力フォーマットで最終的にある一定の基準で、我々が 両方の目から見て分けていくという作業をするほうが、むしろいい結果を得られるので はないかと私は感じるのですが。その辺りを是非お考えいただきたいと思います。 ○新木室長  いま星委員がご指摘いただいたことは、我々のほうでも大変重要な問題だと思ってお ります。例えば18頁の事例1に、「輸液ポンプ使用時のクレンメ操作エラー」。これは 物と言えば物ですが、そういうユーザーアビリティーのもとでどういうふうに従事者が 使っていくかというヒューマンファクターの部分もありますし、両方にかかる部分だと 思います。大変貴重なご指摘でしたが、一層気を付けて勉強を図りますのでありがとう ございました。 ○山内委員  いまヒューマンエラーと物品の不都合という話がありましたが、もともと人間という のはいつでもエラーをしそうになる。だからいまヒューマンエラーというのは、何か別 なところにあるのではなくて、いつでも起こりそうな、それを誘発するもの側として物 品の不都合が出てくるというか。だからどこまで物品を整備するかという、それは経済 的な問題もあるかと思いますが、そこをあまり分けてしまうと失敗する人間がいるので はないかとか、特別な人間がいるのではないかということになってしまうので、そこは 加減していただきたいという気がいたします。 ○矢崎部会長  そうですね。インシデントもアクシデントも、要因を解析するときはどうしても「物 」という座標軸と「人」という座標軸と、さらにはもしかすると「時間」という三次元 で解析しないとなかなか難しい。あるいは、その関係する物と人だけではなくて、周囲 の状況がどうであったかということもやはり重要なファクターになっていますので。私 個人的にはあまり分けなくても、物だけである程度解決するようなものはそちらである が、こちらのヒューマンエラーの部分が少しでもあれば、それがダブってあっても、必 ずしもきっちり分けて、それを独立して報告するというのではなくて、視点をちょっと 違えて、物がこういうふうに変われば、人の間違いがうんと少なくなるのではないか、 というメインのところと、人がメインで切り口ということで、境界部分は両方に入って もある程度いいのではないかと、我々医師サイドは考えますが、先ほど星委員が言われ たように、それぞれの管轄で線が分かれると、その場合は2つに同じものが両方いって も構わない。トータルの例数とか、そういうのがまた気になられるかもしれませんが、 先ほど言われたように本当にきっちり報告していただくというのが基本です。  施設によって医師の数とか、看護婦さんの数とか、そういうのは違うかもしれません が、あまりばらつくのは安全文化の認識のレベルが施設によって違うということを1つ 表しています。少ない所が絶対にヒューマンエラーがないということはないと思います ので、先ほど山内委員が言われたようなものも明らかにインシデントであるし、患者さ んの立場から見たらアクシデントではないかということもある。そういうことも報告で きるように、また武藤先生よろしくお願いします。 ○三宅委員  この医薬品などに関しては、私は誰が見ても明らかなファクターがあるわけです。例 えば名前が似ているとか、間違えやすいとか、そういうことこそ行政がきちんと指導し て、似たような名前は許可しない、というふうなことをきちんとやるべきだと思うので す。それから例えば外用薬と注射に使うアンプルは形状を変えるとか、そういう基本的 なことをやるのが私は行政の仕事だと思うのです。それをまずきちんとやっていただか ないと、いくらインシデントを集めても私はあまり大きい成果にはならない。そういう ことをやる前に人間として、それこそ山内先生ではないけれど、ヒューマンファクター として間違いやすいという問題はわかっているわけです。そこはもう初めからきちんと 押さえて行政指導するのは仕事ではないかと私は思うのです。それをまず出発点にしな いと、非常な時間と労力を使って無駄なことをやっても仕方がないと思うのです。まず やるべきことは基本的なことは押さえると。そこから出発したほうが私はいいのではな いかと思います。 ○矢崎部会長  器具の方が焦点をしぼっていろいろ言えると思うのです。例えば医療用品のメーカー さんがそういう視点から安全対策をどこまで真剣に検討しているかというのは疑わしい と思うのです。というのは例えば、自動車ですと徹底的に安全対策で企業がお金を吸い 込んで開発しますね。ユーザーとメーカーさんが直結するような所は、非常にそういう フィードバックがよく効いていると思うのです。  医療用具に関しては、間に医療機関があって患者さんに行っていますので、メーカー さんに入る情報がワンクッション置いているので直接的な情報でないというところがあ るのかなと。  例えば人工呼吸器のケーブルなどにつまづいてソケットがはずれるので、何十年も経 ってからソケットをはずれないように対策をしたとありますが、そもそも普通のソケッ トだったらはずれると我々は考えるのですが。  最初から人工呼吸器みたいに止まったら大変なものは絶対はずれないようなソケット をメーカーさんは最初から考えてやるべきだと思うのです。  そういうところはものすごくたくさんあるのですが、なかなか対応できないというの は、どうも医療機関と患者さんですから、メーカーさんがそこに大きな資本を落として 何か改善すると、インセンティブがわきにくいところがあるのかなと思うのです。です から、できるだけ我々が情報を伝えて、そしてなかなかインセンティブがわきにくいと ころはJISマークではないのですが、そういうものを何か医療安全マークみたいなも の、規格でもいいですが、それでメーカーさんにインセンティブを与えるような仕組み があると、三宅委員が言われたようなことがさらに進んでいくのではないかと思います 。 ○長谷川委員  いまの部会長と先ほどの星委員のご意見に関して、海外の事例で日本ではいいかどう かわかりませんが、私どもでいま人工呼吸器の安全について研究班で小班を作ってやっ ておりますので、聞きましたことをご紹介しますと、ヒューマンエラーであろうが、機 械内エラーであろうが、FDAのほうに全部登録してしまって、しかも誰でも見れると 。ですから膨大な数の人工呼吸器に関するありとあらゆる、考えられないような事故例 が全部集まっているそうです。それがWebサイドで全国で見れることになっていて、 それが結局メーカーなりにプレッシャーになっていると。  部会長がおっしゃったように、ワンクッション置いていないような情報の収集と、そ して皆さんがそれをアクセスできるということが1つ可能性である。ポイントはヒュー マンエラーと機械のエラーと分けてないそうです。FDAの管轄は機械なのですが、詳 しく調べようと思っていますが、FDAはヒューマンエラーに関する部分もリコメニュ ーとして出すのだそうです。ですから、私は部会長の意見に賛成で、ほとんどの場合は 発見できないことが多いと思うのです。以上です。 ○山内委員  病院にいると、朝の9時、10時ぐらいから1、2時間、それから夕方の4時から6時 ぐらいまで看護婦が点滴の準備をしています。おそらくこれはものすごいエネルギーで す。先ほど三宅先生が言われたように、このときに非常にわかりやすいスタイルになっ ているとよいのですが、私は看護婦がすべきかどうかという問題もいろいろ議論があり ますが、少なくとも国立がんセンター中央病院ですら、朝と夕方と充填しているのです 。これはものすごいエネルギーですし、そこで失敗することもありますし、そこで使わ れたエネルギーが別な所で使われないというか、だから別な失敗を招くというか、何か そういう現状がありますね。例えば10人ぐらいいたら、6人ぐらいが点滴の充填に張り 付いているのです。これはやはり何とかしないと、本来の患者のベッドサイドでの治療 というか、そこでエネルギーがさけないというか、そのためにも先ほど三宅先生が言わ れたように、半年、1年でというわけにはいきませんが、5年以内ぐらいにはこんなふ うにしなさいとか、実験的でもいいですから、そうするともう少し事故というのは減る のではないかという気がします。 ○星委員  いま言われたことに関連して。患者に対して看護婦が何対何という話がよくあります が、おっしゃるように非常に忙しい時間帯というのが限られていまして、その時間帯に 事故が起きやすいという報告もあるわけです。業務を平準化して、なるべくそういうも のが起きないようにという努力にも限界があって、そういう時間帯だけそのお手伝いを するような人がいてもいいのではないかというような議論をするのですが、やはり診療 報酬上何対何で、何人いなくてはいけないとか、この時間帯にこうしていなくてはいけ ないみたいなそういう取り決めが、ある意味実態から離れていくというようなことも1 つの要因になっているのだと思うのです。  ですから、ヒューマンエラーを考えていくときに、行為者がうっかりして何をしたと いうような話、そして組織として取り組まなければいけないもの、そしてもう1つは制 度として安全を考えていくときに足枷になったり、手枷になったりするものがあるとす れば、もっとある意味専門家を信用してもらって、そういうところの制限といったもの についても我々は考えていかなければいけないのではないか。そういうことをしないと 、やはりご心配のような件はなくならないだろうし、そういうものをどういうふうな方 向に持っていくのか、ここで議論するのかどうかわかりませんが、そのことは言ってお きたいと思います。 ○松月委員  山内委員の発言にあった、勤務している10人の看護婦のうち6人が点滴業務に張り付 いている業務の中身ですが、指示票の確認作業とダブルチェックを行っています。具体 的には指示内容が前日の指示と異なっていないか、患者の病態とは一致しているのかや 、手書き指示で文字の確認などです。そして点滴混注作業では薬剤と指示の照合ダブル チェックを行っています。その作業は医師と薬剤師など医療チーム間のコミュニケーシ ョンエラーによって発生する、またヒューマンエラーによって発生する。そこでのミス を最終は看護婦が防いでいるということになるわけです。 ○星委員  もう少し言わせていただくと、これは皆さんはご存じのことだと思いますが、例えば アメリカでは病床200床当たりの人員が日本の4倍だとか、何倍だとかという話が出て いて、我々はそういう少ない人数でやっているという努力も一方であるわけです。たし かにpoorなのです。非常に人のエネルギーというか、そういうものに依存していて、人 というものに対してある意味では非常に過度に期待していて、それは結果として負担と いう形になっている。そしてどこかで破綻を来たしてしまう。  ですから、そういう問題を考えていったときに、いまの人数でやっていく最善の方法 は何かというビジョンもあるでしょうが、もっと遠くを考えたときに、医療費の話をし たくはありませんが、このぐらいの費用でやるのだとすればこの程度までです。という ことはある限界があるのだということを知っておかなければならない。インシデント事 例を集めて分析して活用するという今の努力を続けていけば、ミスがゼロになるのだと いうのではなくて、つぎ込む資源とリンクしているのだということを常に考えておかな いと、物を見間違って、それこそ根性を出せと、根性出せというかつての日本のスポー ツ選手のようなことになって、結局は壊れてしまうと。やはりそういうことが科学的に 、あるいは国民がその理解をしてくれるような努力をしていく必要があるのではないか と思います。そのためにこういうものが役に立つということを信じて事例を集めている のだろうし、その結果は国民のために役に立つものにしていかないといけないと思いま す。 ○武藤専門委員  インシデントレポートの件で報告システムに関してですが、先ほど認知レベルに依存 するとかいろいろ言われましたが、考えてみますと、これからやりたいことは事故を予 防的介入するという場面では、やはりアクシデントを未然に回避した例を分析すること が非常に重要だと思うのです。それを集めまして、やはりそこから見ると、薬の問題、 ドレーン・チューブの問題、点滴の問題も出てきましたが、そうした予防的に介入でき るようなところを、まず分野をどうやって同定するとかが非常に重要だと思います。  あと、アメリカの航空安全報告システムでは年間大体インシデント報告が3万件ぐら い集まりまして、そうしたことで航空安全が非常に改善されたということもありますが 、医療分野としては、おそらく世界的にもインシデント報告を集めたシステムはこれが 初めてだと思います。そうした観点から分析を進めていきたいと考えております。 ○三宅委員  私はこれは始まったばかりで3カ月ぐらいのことですから、今後これが積み重なって いろいろなデータが出てくるだろうと思っています。ですから、そういった意味で期待 はしているのですが、先ほど追加として私はそういう希望をお話したということです。 ○楠本委員  先ほどの山内先生のご指摘の件ですが、確かに医療事故の中で薬剤に関するものがと ても多いということで、看護協会では非常に問題になっておりまして、1つは自分たち の業務の確認のあり方、そういったものをきちんと見直していこうということで、二重 、三重にチェックするというように、かえって業務量を増やしていくような状況が1つ あります。  もう1つは、薬剤師との分担という役割の見直しということを進めております。これ については来月ぐらいから、200床以上の病院の全数調査で少し病棟の薬剤業務、それ から薬剤師さんとの連携の有り様を少し調整して調査をしまして、実態を示しながらあ り方を考えていこうということを考えているわけです。最終的にはやはり星委員は嫌っ ていらっしゃいますが、何対何というお話につないでいくことになるかと思いますが、 看護の部分では非常にその部分では患者さんにも意識をちゃんと持っていただいて、ち ゃんと判断能力がある方には「これを毎日飲んでくださいね」と。「これで1週間で、 これだけお渡ししますから」という自己管理も進めていっていいのではないかと思いま す。多方面にわたっての確認といったことを進めていきたいと考えておりまして取り組 んでおります。 ○土屋委員  先ほどのお話も含めまして、やはり薬剤師がきちんとやらなくてはいけない部分をよ り拡張していくと。またそれを言い出すと定員問題が出てくるかもしれませんが、ただ 、そういったことをきちんとやっていくという姿勢をやらなければいけないわけですか ら、このインシデント事例を見まして、看護婦さん側のインシデントとは言うものの、 それは薬剤師の調剤方法、あるいはそういった前の段階での出し方によって随分防げる のだということがわかってくると思うのです。それを一体誰がやるのがふさわしいのか ということを考える。  私はやはりいちばん必要なことは、事例分析のときに誰が行為者であったかというこ とを考えること。それは事実として必要だと思うのですが、これをもっと普遍性を持た せて、全国どの病院でも利用できるようなフィードバックされた情報にするためには何 が必要かといいますと、例えば注射なら注射というものが、購入から実際投入されるま で、どういうプロセスがあるのかということのプロセスをきちんと出して、おそらくそ れはどの病院でも共通だと思います。ただ、それを誰がやっているかはそれぞれの医療 機関によって違うという状況だと思います。  国立国際医療センターはそこの細かい行為が分析されている数少ない病院だと思いま すが、そういった所のせっかくの財産をもう少し叩き台ではないですが出していただい て、その標準な手順にそれぞれの病院はそれを誰がやるのか、誰が責任を持って誰が行 為者になるのかということをきちんとやっていくと、そのマッピングというものが出来 上がると、それぞれでこういう事例を当てはめたときに、「これはたまたま看護婦さん だけど、うちは薬剤師だね」とか、そういうふうに全体の安全が図られていくのではな いかと思います。  ここでいちばん必要なことは全体の行為表といいますか、アクションのリストの標準 的なものが出ると、それは大病院であっても小病院であってもそれはみんな一緒だと思 います。そういうデータが1個出るとかなり効果があるのではないかと思います。 ○矢崎部会長  できればその方向にまとめていきたいと思いますが、この部会はまず最初の使命は医 療機関において安全文化というか、インシデントを認識する、それが基本にあって、そ れによってどうアクシデントを防げるかということで、そういう意味で注意を喚起する という意味でこの事業が始まっていると思うのです。  ただ、細かい話を具体例でどんどんやっていきますと、一般の患者さん、あるいはメ ディアの方もこうしないとやはり看護婦さんの責任ではないか、というようなことにな って、どんどんプレッシャーが医療の現場の人たちにかかってしまうというのも1つ大 きな問題です。  私は第1回目に医療現場の方に、ともかく日本の中で安全文化のあるレベルを全体的 に保ってもらいたいというのが我々の願いで、それ以上わが国全体の医療事故を防ぐ次 の手立ては、やはりいろいろなことを考えていかなければいけない。だからそのために 新しい医療用具を開発する、あるいはいろいろな情報システムを整備するとか、あるい は何かヒューマンエラーをブロックするような仕組みも考えて、フェールセーフのネッ トワークをやってもヒューマンエラーはいつまでもなくならないというご意見もあるか と思いますが、できるだけそういうもので救えるものは救ってあげると、やはり看護婦 さんの現場のすごいプレッシャーが少しでも解放できるのではないか。  ただ、そう行く前の安全認識のレベルがあまりにも凸凹があるということで、それを 何とか一定の基準までキャンペーンをして、ここにいらっしゃる先生方は皆さんいかに 医療事故を少なくするか、前向きに考えていらっしゃる先生方が多いので、この部会の 英知を医療安全対策検討会議に反映して、そしてわが国の医療全体の安全性を高めると いうことで、今後もこの活動を行い、かつ次の方策をどうするかということも我々で考 えていかないといけないのではないかと思います。  今日は大変大量のご説明をいただき、また、貴重なご意見をいただきました。また次 回以降も先ほど申し上げたように、私の所からすごい量の報告が行くと思いますので、 また事務局のほうでさらにまとめていただいて、こういうレベルの病院でも、こんな問 題があるのだということがおわかりいただけると思います。そういうことを出すこと自 体が重大な事故を防ぐ第一歩であると、私ども職員みんなも実感していますので、非常 に細かいことまで情報を提出するシステムができています。これが我が国全体でそうい うシステムが普及するような、これは少しも診療報酬には関係ないので大変なことなの ですが、それを叱咤激励してやっています。そういうことで、またご意見をいただきた いと思います。  時間が残り少なくなっていますが、事務局で「個別分野における医療安全対策の推進 方策」というのが資料のいちばん最後にあると思いますので、事務局からご説明をよろ しくお願いします。 ○新木室長  それでは資料4に基づきましてご説明いたします。ただいま座長からお話がございま したように、インシデント報告の制度が始まりまして、いろいろな情報が集まってきて おります。本日委員の先生方からいろいろご議論をいただきましたが、具体的な分野の 改善方策に関する意見が出ております。このような状況になってきましたので、この当 部会のもう1つの任務である「個別分野の具体的な安全方策」を進めていく上での検討 ということについて、その分野の考え方の素案を例示させていただきました。それが資 料4です。  どのような分野に優先的といいますか、取り組むかについては、その2頁目にあるよ うに、いろいろな「To Error is Human」から代表的な諸外国での分野、こういう分野 に取り組んでいるというものを例示させていただきました。また、下にはわが国におけ る例として、都立広尾病院におけるインシデントレポートの分類とか、当部会の委員で ある川村治子先生がまとめられました「ハイリスクエリアのまとめ」等を参考にしてま とめたものが1頁目です。  1として、エラーの発生例リスクがかなり高いということで、定評があるといいます か、意見が一致しやすい分野を1として例示してみました。「与薬ミス(注射、内服) 及び転倒・転落、輸血」です。  また2番目としてその次にくるような分野ですが、「ICU、人口呼吸器、麻酔、ド レーン・チューブ類の管理、産科、手術、小児」。これは必ずしも診療科もの等をきれ いに整理したものというよりも、リスクが高いと言われている分野をそういう順に選ぶ と、このようなものが出てくるのではないかと事務的に整理したものです。  また3として「その他」、これからインシデントレポート等が集まりますと、いろい ろな分野が出てくると思いますが、当面このようなものについて優先的に具体的な検討 を進めていってはいかがかと思っております。なお、このいくつかの部分については、 本日ご指摘いただいている長谷川先生はじめ、何人かの先生方にすでに研究でいろいろ 検討をお願いしている状況です。今日は時間もありませんので、具体的にというよりも こんなことで考え方のご意見をいただければと思いまして例示させていただきました。 以上です。 ○矢崎部会長  もう少し的を絞って、個別分野で特にリスクの高い分野を取り上げて少し方策をまと めていったらいいかという事務局の考え方でした。大変リーズナブルな方策だと思いま す。よろしくご承認いただければと思います。ありがとうございました。  お手元の資料に、日本看護協会の何ともかわいらしい資料をいただきましたが、ご説 明していただけますか。 ○楠本委員  来週からの「医療安全推進週間」に向けまして、各都道府県協会を通じまして、会員 、それから関係団体等に配付するためにこのグッズを作りました。  基本的には10の要点を普及、啓発していこうということが趣旨で、このファイルと、 今日はお持ちしなかったのですが簡単な10の要点の考え方についてのパンフレットも作 る予定です。これはナースがポケットに入れるということで考えています。これらを活 用しながらやっていくということです。もう1つスクリーンセーバーで10の要点を作っ ておりまして、昨日から日本看護協会のホームページでダウンロードしております。こ れはどなたでもご活用いただけますので、是非お使いいただきたいということで、少し 社会の注意を喚起していこうと考えております。ありがとうございました。 ○矢崎部会長  こういうものを作る資金とか、そういうものは。 ○楠本委員  今年度は本当に予算の計上もなく、事業を計画しておりませんでしたので苦しい中か ら捻出いたしました。会員の会費からのものです。 ○矢崎部会長  厚生労働省の予算ではないのですか。 ○楠本委員  いいえ、自助努力でございます。 ○矢崎部会長  すごいですね。こういう努力をされるということは。もう1つ長谷川先生から資料を いただきましたが。 ○長谷川委員  お手元に資料を配ったのでご覧ください。考えますと院内のリスクマネージメントの システムというのは順番に進化していくのではないかと思っております。例えば最初は 訴訟対策といいますか、リスクマネージメント対策というか、これはどこの病院でもや っているかと思うのですが、近年、問題になっている安全対策、つまり院内から全部情 報を集めてきて、今日のアクシデントやヒヤリハット事例を集めて分析し、その安全文 化を醸成していくという、全病院での取り組み段階です。次の段階は今日お話のあった 危険領域を同定して、そこにむしろ積極的に予防システムのようなものを作っていく。 先ほどからお話があったプロアクティブ、プロシステムのようなものです。最後に国際 的な潮流では、質と安全管理というのは一緒だと、つまり質が非常に悪いというのは、 極端なはずれ値が事故になっているのではないかという観点から、必然と上げていくこ とが事故も予防するのだと思うのです。  次に第2段階のステップとしては、安全領域を同定して、そこに安全管理システムを 構築していく。しかし病院全体というのは危険領域ですから、重点を置いてどこが危険 かということを同定する必要があると思いますが、同定の仕方は先ほど事務局からご提 案があった診療科とか治療法、逆に起こっている事例から考えていくという方法がある と思いますが、診療科というのはあまりよくないのだと思われます。先ほどもお話があ りましたが、あるプロセスの中で起こってきて、セクショナリズムというか、この診療 科、この診療科、あるいは職種というのでやっている谷間にいろいろな問題が起こって 事故が起こるということですので、むしろ発生した事故からその原因を追求していくと いうことはありましょうが、やはりプロセスが重要と思います。  それで私の研究班でいろいろ考えてみたのですが、次の頁、ミスのパターンのような ものから考えたらどうかということで、患者さんの状況を理解し、判断をし、指示が出 て執行すると。このサイクルに何かいろいろなことが起こってくるのではないかと。そ して療養環境全体の問題と考えますと、先ほど事務局からご提案があった10ぐらいの領 域を左から並べてみますと、例えば投薬とか輸血というのは指示から執行へのミス、指 示の転記とか、執行のエラーの部分が大きいと思います。それに対して、危険な検査と か、麻酔等は指示者が患者さんを認識する、どんどん患者さんが変わっていく。それを 認識するところで判断というか、間違いのようなことが多いのかと思います。いわゆる 転倒とか、あるいは感染症というのは環境の部分が大きいということで、エラーにパタ ーンがあるのではないかと。先ほど申し上げた3つが典型例ではないか。  つまり、指示と執行のアームが非常に長い行為と、麻酔のように指示者と執行者がほ ぼ一緒である、刻々患者さんが変わっていくものがあります。3つ目に環境の部分です 。ということで、偶然投薬というのは非常に注目されていますし、麻酔、出産というの は非常に大きくかかわっています。それから転倒。こういうことをきちんと分析して、 システムができてくると、その類似のミスパターンにも応用できるのではないかと考え ております。私どもは今年度、厚生科学研究所からいただきました研究ではそれぞれチ ームを作って、現在そのプロセスを1個1個ちぎってどういう所に問題が起こってくる かということで、それをカバーする手法を安全工学と他の産業分野での知識を応用しな がら考えている現状です。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。この部会は何か起こったときにいちばん患者さんが強く感 じますので、先ほどから山内委員からシビアな言葉をいただきましたが、今後も大いに 何か気付かれたらコメントをいただければ大変ありがたいと思います。一応、今日は時 間がまいりましたので、本日はこれまでとさせていただきます。次回の日程について事 務局からお願いします。 ○新木室長  次回の日程については、委員の皆様の日程を調整した上で後日ご連絡をいたしたいと 思っております。なお、次回の「インシデントレポート」がほぼ3カ月後ぐらいにまと まりますので、その辺りが目安かと思います。またご連絡させていただきます。またか ねてお知らせしているとおり、11月25日から「医療安全推進週間」がございます。これ に合わせて、厚生労働省においては参考資料のとおりシンポジウムの開催などを行うほ か、今日ご紹介もございましたが、関係団体においても医療安全に関する様々な取り組 みを予定しております。以上です。 ○矢崎部会長  それでは本日の部会をこれで終了いたします。大変お忙しい中、また貴重なご意見を いただきまして本当にありがとうございました。 (照会先) 医政局総務課医療安全推進室企画指導係 電話 03-5253-1111(内線2579)