01/11/02 第7回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録    第7回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会 議事録 1 日時 平成13年11月2日(金)10:00〜12:00 2 場所 経済産業省別館827号会議室 3 出席者 [委員]    奥平委員、勝委員、菅野委員、齋藤委員、桜井委員、              佐藤委員、辻村委員、都村委員、中山委員、堀越委員、              山路委員       [事務局]   奥田勤労者生活部長、南野勤労者生活課長 4 議題  (1) 特殊法人改革の動向について  (2) 一般の中小企業退職金共済制度の財政状況の今後の見通しについて  (3) 一般の中小企業退職金共済制度の退職金の仕組みについて 5 議事要旨 ○部会長  第7回労働政策審議会勤労者生活分科会中小企業退職金共済部会を始めます。今日の 議題はお手元にありますように3つございます。それではまず最初に、議題1の特殊法 人改革の動向について、事務局から御説明をお願いします。 ○勤労者生活課長  前回の部会以降の特殊法人改革の動きについて、資料1と資料2に基づきまして御説 明をさせていただきます。資料1、2はいずれも10月5日に行政改革推進事務局から 公表された資料です。まず資料1は、特殊法人等向け平成14年度概算要求等の検証結 果です。以前行政改革推進事務局から個々の特殊法人について、事務事業の見直し案と いうのが提出されており、既に当部会でも御説明をいたしているところであり、これが 、平成14年度の概算要求にどう反映されているかということを検証するための資料で す。  具体的には、資料のいちばん左側の欄が、以前行政改革推進事務局から示された勤労 者退職金共済機構に関する事務事業の見直し案であり、情報公開、資金運用についての 明確な運用目標の設定と適切な事後評価、予定運用利回りを弾力的に設定できるような 仕組みに改めること、資金を一括して運用する体制を整備すること、融資業務の廃止と いった指摘を受けております。  これに対して真ん中の欄に平成14年度の概算要求への反映状況を記載しております 。指摘の内容はいずれも財政支出に関する要求・要望とは、直接には結びつかない内容 と整理をしております。なお、下段は機構の平成14年度の概算要求についての数字で す。国庫補助として、一般会計からの人件費・事務費に対する補助金、労働保険特別会 計から、掛金助成に対する補助金の2種類があります。人件費については、平成13年 度予算よりも3,100万円の増額で要求をしており、事務費については、前回も御説 明したとおり、省全体の方針もあり、予算額を前年度比1割減で要求しております。し たがいまして合わせて2億100万円減の要求となっております。掛金助成については 、ほぼ前年並みの要求額となっております。  右側の欄が事務局意見であり、10月5日時点で、事務局としてはいずれの項目につ いても、引き続き事務局案の方向で見直しを行うべきであるという見解を示しておりま す。  資料2は組織の見直しに関する事務局の意見です。機構の部分だけ抜粋して出してお りますが、10月5日時点では、引き続き整理合理化について検討するということで、 ペンディングとなっており、引き続き検討ということになっております。特殊法人によ っては、廃止ないしは民営化という意見が付されているものもありますが、ほとんどの 特殊法人について、10月5日時点では引き続き検討ということとされております。 ○勤労者生活部長  特殊法人改革については私から補足をさせていただきます。いま課長から御説明をし ました流れで進んできておりましたが、10月24日に石原行革担当大臣が、坂口厚生 労働大臣を訪問されまして、厚生労働省所管の特殊法人等改革に関して、要請がありま した。そのときの内容が翌日の新聞に紹介され、勤労者退職金共済機構は、民間法人化 を検討できないかという要請があったという報道がされたわけでございます。私どもも 内容について確かめましたところ、確かに石原大臣から勤労者退職金共済機構の民間法 人化の検討についての要請があったようです。課長からも説明のあったとおり、先に行 政改革推進事務局に対して廃止・民営化の可否について回答を示しており中小企業の退 職金制度の導入のために、公的な主体が必要であるというお答えをさせていただいてお りますが、現段階におきましても、私どもはこの考えを変更する状況にはなく、引き続 き国の支援及び関与の下で、国に準ずる主体が制度を運用していくことが、不可欠であ ると考えております。再度こういう考え方を行政改革推進事務局に伝えていきたいと思 っております。 ○部会長  ありがとうございました。いまの御説明について何か御質問、御意見ございますか。 ○委員  いま説明があった廃止・民営化についての議論については、新聞でも報道されました 。このうち、最近出たのは、民間法人化が当然のように書かれていると私は受け止めた わけです。しかし、部長の説明によれば、坂口大臣が検討するということは、結局民間 法人化あるいは廃止はないということだと思うのですが、場合によってはあり得るとい う理解もできるのでしょうか。 ○勤労者生活部長  石原大臣は厚生労働省所管のいろいろな法人について要請をされています。坂口大臣 がそれらについて検討するとお答えになったかどうかも定かではないのですが、お話を 伺ったという形で会議は終わっていると聞いております。いま私が申し上げた考え方は 、省として提出した前回の意見と現段階においても同じものであります。石原行革担当 大臣が坂口厚生労働大臣に要請されて、民間法人化する方向で我々が考えを変えたもの ではないと御理解いただきたいと思います。 ○委員  非常に心配をしておりますが、資料2によれば、そういうことはあり得ないと回答し ているわけですね。その上に敢えて大臣同士が話し合うことは別にあってもいいだろう と思いますが、あれだけ報道されてしまうと何だか先が見えているような議論になって 、民間法人化の在り方を検討していると、どうしても読んでしまうわけです。いま部長 は省としてはそういうことはないとおっしゃいましたが、それならなぜ石原行革担当大 臣がそこまで念押しをするのか。ちょっと解せないのです。事務局の希望はわかるけれ ども、厚生労働省が態度を鮮明にしているにもかかわらず、どういう手法で民間化する のか、民間化したらどうなるのかということも示さないで、小泉改革のほんの小さい部 分かもわかりませんが、それで成果を上げようというのは、この部会にも各界の代表が 出ているわけですから、ひとつの世論の場と考えれば、あまりにも軽率な発言ではない かという不満を持つわけです。行政改革推進事務局に文句を言ってくれとおっしゃれば 、言ってきますが、もう今御説明いただきましたからそのように受け止めますが、民間 法人化はないと断言されていいのですか。 ○勤労者生活部長  私どもとしては国に準じた主体が行われるのが適当であるという考え方を引き続き申 し上げていきたいと思っております。 ○委員  労働者福祉とか、労働者保護の領域というのはどうしても労働保険の労使両方の拠出 によっている等の理由で、今迄わりと使い道が限定されているわけです。しかしほかの 領域というのは、国庫補助金を多く使っているわけです。だからもう少し特に中小企業 のような弱い所については、もっと一般会計からの支出というのがあっていいのではな いかと思います。この前にいただいた資料によりますと国庫補助金の全収入に占める割 合というのは、3.5%と非常に小さいわけです。それでもなおかつ民間法人化をする ということなのでしょうか。今回の特殊法人の見直しというのは、問題がある特殊法人 がいろいろあるから、一応全部廃止か民営化と打ち出して、それで例えば勤労者退職金 共済機構の他にも、例えば、日本育英会等は苦学生というか、金銭的に恵まれない高校 生や大学生、あるいは大学院生にとって、ずいぶんメリットがあると思うのですが、こ ういったものまで統合だとか廃止だとか言っているのです。一応はすべての特殊法人に ついて廃止・民営化として、その後再検討して、存在意義のあるものについて公的主体 であることが必要であるということであれば、継続するとするということなのか、本当 にすべてについて存在意義を考えずに、廃止か民営化するのか、どちらなのでしょうか 。もっと労働者保護とか、労働者福祉の領域というのは、一般会計から国庫補助が出さ れて然るべきだと思うのです。だから是非そういう要求を今後もやっていただきたいと 思うのです。 ○勤労者生活課長  小泉総理から夏の段階で、廃止または民営化を前提に検討するようにというお話があ ったわけですが、それを基に前回の部会でお出しをしたとおり、廃止あるいは民営化が 可能かどうかを検討して行政改革推進事務局に提出したということでございます。勤労 者退職金共済機構については先ほど部長が申し上げましたとおり、到底民営化あるいは 民間法人化にはなじまない組織なのではないかと思っております。その方針は、たとえ 石原大臣から要請があったとしても、我々としては引き続き行革事務局に訴えていきた いと考えております。すべての法人が廃止とか民営化ということになるということでは ないと考えておりますが、全体としてまずそこを考えてから、その次のステップとして ほかの選択肢も考えるということではないかと考えております。 ○部会長  ではまたいろいろな動きがこれからあるでしょうから、動きがあるごとに随時我々に も報告していただきたいと思います。それでは次の議題に移ります。前回も少し議論し ましたが、新しい推計等も出てきていますので説明をお願いします。 ○勤労者生活課長  まず資料3ですが、これは前回の部会のときに連合の委員から平成10年の法改正時 の審議会における議論について、簡単に整理をして出してもらいたいという御要望を受 けて、予定運用利回りの引き下げに関わる部分について、整理をしてお出しするという 趣旨のものです。また前回、委員から同様に資金運用について専門家から話を聞きたい という御要望もありましたが、私どももいろいろ検討したところ、経済学者、あるいは アナリストの方から資金運用の一般的な話を聞くというよりはむしろ、機構としてどの ような考えに基づいて、どういうような資金運用をやっているのかという点についての 御説明のほうがより適当ではないかと考えておりまして、次回11月16日の部会で、 勤労者退職金共済機構の担当理事から同機構の資産運用の考え方なり、内容について御 説明させていただきたいと考えております。このような対応について委員の御了解も得 ております。  資料3を簡単に御説明申し上げます。予定運用利回りに関わる議事の概要ということ で、平成10年法改正時に主としてどんな議論が出たかということです。公労使と分け ておりますが、公益委員の方からは、「赤字の放置は制度の信頼を損ねることとなり、 制度の安定的な運営のためには、予定運用利回りの引下げが必要である。」という意見 や、「予定運用利回りを引き下げる場合、運用効率化を図るとともに、機構の運用責任 等を明確にし、制度の信頼性を高めるべきである。」、「長期の予測に基づく資産運用 においては、予測が外れれば欠損金が膨大になるため、次の世代に負担を先送りにする ことになる点についても考慮すべきである。」というような御意見をいただいておりま す。  労側の委員の方からは、「責任準備金は100%積む必要はないのではないか。」、 「厳しい経済環境の下、平成7年の法改正以後掛金の引上げは進んでおらず、退職金水 準は下がっている。更なる退職金額の引下げは避けるべきである。」、「5年毎の見直 しを待った場合に積立不足の金額が膨大になることは承知しているが、退職金は労働条 件の一部であり、労働条件の切下げは倒産時以外には通常あり得ない。老後の生活保障 としての機能を果たすという点からも、頻繁な金額変更は好ましくない。」、「中小企 業の労働力確保の点からも、国からの助成措置を検討すべきである。」という意見のほ か、「組合のない企業の従業員にとっては、掛金を上げなければ退職金が自動的に下が るため問題である。労働条件の確保という観点から退職金水準を確保するために掛金月 額引上げについて建議に盛り込むべきである。」、「3%の妥当性についてはわからな いが、緊急措置として4.5%を下げざるを得ないことは理解している。建議に際して は、労働条件の一部という認識を明確に記述すべきである。」こういった御意見をいた だいております。  使用者側の委員の方からは、「制度の維持が重要である。将来の加入者や加入促進の ためにも、単年度で欠損金が出ない仕組みの確立を優先すべきである。」、「共済制度 であり、将来に負担を先送りすべきではない。」「単年度で赤字にならない現実的な利 回り設定すべきである。」、「市場の利回りは低下しつつあるため、予定運用利回りを 2.8%に設定して、上回った分の一部を加入者に還元するという方法もある。」、「 国が人件費・事務費を負担している分、合理的な範囲においては有利な設定としてもよ いが、中退制度と他制度の予定運用利回りの差をどのように評価するかが問題である。 」このような御意見をいただいております。  事務局の意見については、省略させていただきます。参考までに前回の建議を後に付 けております。この考え方は別紙のうち、改正に当たっての基本的な考え方の中にござ います。全体は省かせていただきますが、「こうした中で、中退制度を取り巻く状況を 見ると、金融を含む経済情勢が大きく変化し、金利は本審議会が前回の予定運用利回り の見直しを建議した平成7年1月当時には想定できなかった低い水準で推移しており、 予定運用利回りと運用実績との乖離が拡大している」、「平成8年度末時点で1,10 0億円を超す責任準備金の積立不足が生じている。このため前回予定運用利回りの見直 しの建議を行ってから3年を経過したばかりであるが、今後とも中退制度を安定的に運 営することの重要性にかんがみて、関係事業主、労働者への影響に留意しつつも、基本 退職金について予定運用利回りの見直しを行うとともに、付加退職金制度についても、 運用を一部見直して、金利の変動に対応できるようにし、制度の財政の安定化を図るこ とが重要である。」と述べております。  IIで具体的な改正の内容が示されております。予定運用利回りについては、3.0% が適当としております。なお書きで、「責任準備金の積立不足があるということは、制 度運営に対する信頼を損ね、加入者の減少を招くこと、積立不足から新たな積立不足が 生じ制度の財政の健全性を大きく損なうこと等制度に大きな影響を及ぼすことから、そ の解消を図るべきである。このため予定運用利回りを上回る運用実績を上げ利益が生じ た場合、責任準備金の積立不足があるときは、その利益の全部を付加退職金として支給 するのではなく、一部を責任準備金の積立不足の解消に充てることとすべきである。」 と述べています。これと併せて、2頁目以降で、通算制度の創設、分割支給制度の改善 等、の項目について指摘をいたしております。  続けて将来推計の御説明に入らせていただきます。資料4をご覧下さい。前回の部会 において7月の初め時点のデータを基に、今後も現行の水準が続くと仮定した場合に、 将来の中小企業退職金共済制度の収支がどうなるかという資料をお出ししております。 考え方は前回と同じですが、後ほど資料5で御説明いたします経済シナリオに基づく推 計が9月末までのデータを基に作成したものとなっているのと合わせて、現行の金利水 準を9月末時点のデータを基にして再度推計し、整理をいたしたものでございます。注 にありますように、制度の見直し時期は1年前倒して平成15年度からの改正という前 提を置いております。また各年度の付加退職金の支給率はゼロという設定でございます 。注3にございますが、金銭信託については、平成12年度の実績利回り、2.054 %ですが、これが今後も継続するという前提で推計を行っております。前回の数字と比 べますと、傾向としてはほとんど変わっておりませんが、単年度ごとに若干の出入りが あり、内容についても一部精査をした部分もございます。予定運用利回りを平成15年 度から1.5%に改めた場合を見ますと、単年度で107億円の黒字になります。ただ し平成16年度以降当期利益金が減少し、平成19年度には12億5,000万円。累 積欠損金で見ますと2,309億円となる見込みです。前回の推定からは、若干改善し ておりますが、依然として2,309億円の累積欠損金がありますので、平成12年度 末の累積欠損金の額である約2,000億円を300億円程度上回る水準ということに なります。予定運用利回りを1%とした場合についても、平成19年度末の累積欠損金 は、1,439億円という水準になると見込まれます。  2頁以降に、それぞれの予定運用利回りごとの詳細な資料を添付しておりますが、説 明は省略させていただきます。  続きまして資料5です。資料4の1枚目と照らし合わせながら御覧いただくとわかり やすいと思います。これは経済シナリオに基づく推計で今回新たにお出しするものです 。これまで予定運用利回りの引下げについて、審議会で御議論いただく場合の将来推計 は、主に資料4、現行の金利水準が今後継続する前提としてきたわけでございますが、 結果としてその推計が甘かったのではないかという御意見もあるため、そういうことも 踏まえて、今回は経済シナリオをある程度織り込んだ推計もお出しすることといたして おります。ただし今後日本経済がどう動くかというのは全く予測できないところであり 、今回お示ししているケース1からケース3までの3つのケースは、いずれも仮定の域 を出ないものであり、実際にいずれかのケースになるであろうということではなく、仮 にそれぞれのケースのような成長率の場合に、推計される収支にすぎないと考えていた だければと思います。各ケースの実質成長率は、今年度については、もうかなり厳しい 見方が一般的であり、失業率もかなり悪化し、鉱工業生産の落ち込みもかなり激しくな っております。それから第1四半期の成長率も相当低い水準になるということで、新聞 報道等においてはマイナス1%程度の成長率に留まるとの見方が強いようです。政府の 経済見通しも1%前後に修正する方向にあるといった新聞報道もなされていますので、 ケース1〜3のいずれについても、平成13年度についてはマイナス0.9%という数 字を置いております。その上で、ケース1については、平成13年度はマイナス成長と なるが、景気は早期に底打ちをし、平成14年度以降はプラス成長に回復する、ケース 2については、平成13年度と平成14年度の2カ年程度は、マイナス成長になるが、 その後プラスに転じ、緩やかに回復する、ケース3は景気低迷が長期化して4年間程度 はマイナス成長となって、その後プラスに転じるが低成長が続くというものです。これ 以外にもいろいろなシナリオが考えられると思いますが、とりあえずこの3つを提示を させていただいております。  それぞれのケースごとの収支が次の頁です。1年前倒しで平成15年度から予定運用 利回りを見直したという場合で、各年度の付加退職金の支給率はゼロという前提でを置 いて推計いたしております。まずケース1は、この中ではいちばん楽観的なケースです が、改正初年度の平成15年度においても、予定運用利回り1.5%では94億円程度 の欠損金が生じますが、平成16年度からはプラスに転じ、5年後の平成19年度の段 階では、単年度で370億円の黒字で、累積欠損金が2,124億円となります。資料 4の現行の金利水準が続くと仮定して単純に横のばしした場合と比較してみますと、平 成18年度までは若干悪いわけですが、平成19年度には改善することになります。予 定運用利回りが1.0%の場合、平成15年度の改正初年度から78億円の黒字になり 、平成19年度においては549億円の黒字で累積欠損金は1,252億円まで減少し ます。  次にケース2では、2年間程度マイナス成長となるが、その後プラスに転じ、緩やか に回復すると仮定した場合の推計です。この場合は、1.5%の予定運用利回りですと 、平成15年度と平成16年度については欠損金が生じ、その額は、平成15年度はマ イナス97億円、平成16年度はマイナス112億円です。平成17年度からはプラス に転じ、平成19年度におきましては、単年度で58億円の黒字となりますが、累積欠 損金を見てまいりますと、平成19年度末現在で2,966億円と、3,000億円近 くまで増加する見通しとなります。これは、平成12年度末の約1.5倍の水準で、資 産総額である約3兆円の1割程度にまで達することになります。予定運用利回り1.0 %の場合では、改正初年度から黒字で、平成15年度が75億円、その後平成16年度 で58億円、平成17年度以降はそれなりの黒字を確保でき、平成19年度には、単年 度236億円の黒字となります。それから累積欠損金はこの場合であっても、2,09 7億円の水準、即ち平成12年度末とほぼ同じ水準までにしかなりません。  ケース3では4年間程度はマイナス成長が続くとした場合の推計をお示ししておりま すが、予定運用利回り1.5%の場合は、平成19年度まで毎年度すべてマイナスとな ります。その結果、累積欠損金は平成19年度末で3,670億円となってしまいます 。それから予定運用利回り1.0%の場合は、年によってはマイナスとなるものの、概 ねプラスで推移しますが、単年度の剰余額は、かなり低い水準になるため、平成19年 度末の累積欠損金は2,801億円に達する見込みです。  以上がこの3つのケースでの収支の概要でございます。2枚目以降、それぞれのケー スでより細かいデータを付けておりますが、省略させていただきます。ケース1を除き ますと、資料4の現行金利水準を継続すると仮定した場合の将来推計と比べてかなり厳 しい結果となっておりますが、その要因は、先ほども申し上げました、金銭信託の部分 について運用利回り水準を平成12年度の実績がそのまま各年度に適用されると仮定し て推計をいたしております。しかしながら来年度以降もマイナス成長があり得るとする と、当然株価等の水準にも反映され、現在の金銭信託の運用利回り水準である2.05 4%を下回ることも考えられるわけです。実際それぞれのケースで見ていただきますと 、注3に各ケース毎に運用商品の利回りを記していますが、金銭信託が0%というケー スが結構ございます。これは、金銭信託については株価が下がって含み損を抱えた場合 には、売却損が発生するため売却しないという前提を置いていることによるものです。 含み益が出て初めて、プラスの利回りを計上するという考え方で推計をしているわけで す。したがって株価等の低迷により、金銭信託の水準が低くなり、含み損を抱えるとい うような状況の場合には、実現益は0%ということになるため、仮定との間でのかなり のギャップが生じる可能性が大きいといえると思います。  それからこれらの資料の前提をいくつかお話しますと、1つは御承知の最近における 失業率の悪化です。9月には5.3%という史上最悪の水準に達しており、これを推計 上どう見込むのか、非常に難しい問題があるため、推計には失業率の増加を直接には盛 り込んでおりません。加入者の推計としては、厚生労働省で行っている、将来の労働力 人口の見通しと同じ率で推移すると想定をいたしております。平成17年度がそのピー クとなりますが、脱退者は過去5年のデータをもとに、算出しており、その結果平成1 3年度から平成19年度までの間は、一般の中小企業退職金共済制度の在籍者が現在の 約270万人から徐々にではありますが、増えていくという仮定をおいております。し かし今後失業率が高まると、脱退者が増えることも予想され、資産総額が減少していく ことにつながり、運用資産が当然それによって減少するということになりますので、収 支という観点から見ますと、マイナスの影響を及ぼすと言えるのではないかと思います 。  それからさらに、米国の同時多発テロの影響についは推計に盛り込むのが難しいため 、9月末までの経済データの実績を反映させた推計に盛り込むところまで至っておりま せん。したがってテロの影響が長びき、例えば米国経済の低迷がかなり長くなると、そ れによってさらなる悪影響が出てくることもあり得ます。  続いて、資料6で他制度の利回りがどうなっているかをお示ししています。特定退職 金共済制度、適格退職年金制度、小規模企業共済制度と3つの制度について整理をいた しております。特定退職金共済制度と適各退職年金制度につきましては、全体的な統計 がないものですから、いくつかの機関や団体から、聞き取り調査を行い、それをまとめ たものでございます。支給利率とは、団体や企業がその加入者に対する支給額の計算に 用いている利率でございます。運用利回りは、運用を委託する金融機関が、団体や企業 に対して保証している利回りです。まず特定業種退職金共済制度については、支給利率 は、現段階では概ね1.0から1.5%の間にあると聞いております。まだ高い水準の まま設定されている所もあると聞いておりますが、最近利回りを見直した所は、かなり 低い水準に設定する傾向にあるようです。予定運用利回りは、生保の保証利回りが概ね 1.6%程度でございますので、そのうち生保に支払う約0.2%程度の事務手数料を 差し引くと、実質的には、概ね1.4%程度となると伺っております。補助の有無です が、団体によっては、掛金について市町村等から補助がされている所もあると伺ってお ります。  次に適格退職年金制度ですが、従業員に対する保証利回りは概ね4〜5.5%の間と 、現段階でもかなり高水準に設定されていると聞いております。ただし運用利回りは1 2年度は時価ベースで見てマイナス4.14%となっています。運用機関のうち生保の 保証利回りは、1.5%程度で、そのうち事務手数料は資産規模によって、0.1〜0 .5%程度となっています。したがって実質的には、1.5から0.1〜0.5を差引 きました1%〜1.4%程度となってにいると聞いております。支給利率と実際の運用 利回りとの間に、かなりの乖離が出てきており、事業主が不足分を補わない限り、積立 不足が発生していることになります。御承知のように適格退職年金制度については、受 給権の保護という観点からも問題があるということで、先の通常国会で成立しました確 定給付企業年金法の中で、今後10年間で廃止して、新企業年金制度や確定拠出年金制 度、あるいは中小企業退職金共済制度へ移行することになったわけでございます。  小規模企業共済制度については、中小企業庁が所管している制度でして、運営は中小 企業総合事業団で行っております。小規模企業の事業主向けの制度でして、仕組みとし ては中小企業退職金共済制度に非常によく似た制度でございます。予定運用利回りにつ いては、法律で定まっており、一般の中小企業退職金共済制度よりも1年遅れで、平成 12年度から2.50%に引下げております。ただし平成12年度の収支では単年度で 100億円以上の赤字が出ており、累積欠損金が3,000億円を超えていると聞いて おります。そういう意味では財政的には中小企業退職金共済制度と同様、かなり厳しい 状況にあると言えるのかもしれません。  次に、資料7の基本退職金の予定運用利回りの設定の考え方についてです。これをど の程度の水準に設定するかということについては、過去の法改正時には当期損益や累積 欠損金の状況に応じて考え方が徐々に変わってきております。それを簡単にまとめてお ります。平成2年の法改正において付加退職金制度が導入されましたが、平成2年まで は基本退職金のみしか支給されていませんでした。昭和34年に制度が発足して以来、 2回にわたって予定運用利回りを引上げてきましたが、その付加退職金導入前の考えと しては、退職金の予定運用利回りは将来における金利の変動等を考慮し、中長期的に給 付のための原資を確実に確保できる水準とするというように、仮に単年度で赤字になっ たとしても、中長期で見て確実に黒字になる水準に基本退職金の水準を設定するという 考え方に基づいております。次の頁に昭和34年度以降、制度発足以来の各年度ごとの 当期利益金及び利益剰余金を整理しておりますが、昭和63年度までは、単年度で見て も、ずっと黒字を継続しており、昭和63年度末で累積剰余金が278億円ほど貯まっ ております。いまから見ると隔世の感がありますが、こういうような状態が続いてきた わけです。  平成2年の改正で初めて予定運用利回りの引下げ、6.6%を5.5%に変更してお ります。このときに剰余金を原資とする付加退職金という仕組みを導入し、基本退職金 の部分を最低保証として、さらに剰余金が出た場合には、付加退職金として配分すると いう仕組みに変更したわけです。予定運用利回りについては、過去の経験に照らして、 運用実績がそれを容易に割込む可能性のない水準とするという考え方に立っています。 平成2年の改正ですから、昭和63年から平成元年頃にかけて議論しているものですが 、平成元年に初めて単年度で欠損金が生じております。まだ累積剰余金は相当程度あっ た段階での考え方でございます。  次に平成7年の法改正により、予定運用利回りを5.5%から4.5%に引下げてお ります。その際には、基本退職金の利回りは、長期的な財政の安定維持という観点から 、累積赤字額を拡大させないような水準に設定をされております。制度の魅力維持とい う観点から、他の類似の制度の予定運用利回りと同等の水準に設定するという考え方も 併せて示されております。平成5年度から平成6年度にかけて議論を行っているわけで すが、累積欠損金が平成5年度に初めて発生しており、これまで存在した剰余金がなく なりかけていた時代の議論でございます。  前回の平成10年の改正では、予定運用利回りを4.5%から3.0%に下げており ますが、その際には、基本退職金の予定運用利回りは、少なくとも単年度の欠損金が発 生しない水準とすることとされていました。予定運用利回りを上回る運用実績を上げ、 利益が生じた場合は、先ほどの建議にあったとおり、全部を付加退職金として支給する のではなく、一部を累積欠損金の解消に充てることとすべきとされており、退職金水準 の維持や制度の魅力維持に配慮しながら、累積欠損金の拡大を防いで、制度の財政的安 定を図るという考え方をとっております。時期としては平成8年度から平成9年度にか けて、累積欠損金が1,000億円を超えるぐらいの状況になったときの考え方です。 以上です。 ○部会長  資料がだいぶありましたが、資料についての御質問なり御意見はございますか。 ○委員  2点教えてください。1つは加入者の見通しですが、これはなかなか難しいですが、 10月から確定拠出年金がスタートしました。あれは、事実上確定給付型に近い中小企 業退職金共済制度とは多少違うのでしょうが、基本的には退職時以降の年金という意味 では似たような所がある。一部の大企業では企業年金の一部を確定拠出年金にシフトさ せるという動きも出ているようですし、中小企業の中でも出ているようですから、その 影響がどこまであるのかということがもしわかれば教えていただきたい。  もう1つは、この将来推計の表を見ると、本当に気の滅入るような数字なのですが、 これを見ても「まあ、なるほどそうか」というか、推計ですからなるほどそうなのだろ うとしか言えないのですが、歴史的に見て、初めてこれだけ巨額の累積欠損金を抱える という事態に立ち至ったという意味で非常に重大な時点を迎えているのだと思います。 単年度で黒字にしなければいけないというのは当然のことだろうと思うのですが、この 累積欠損金をどう見るのか、例えば2,000数百億円という金額が、これ以上増えて いったらどうなるのかということと、できるだけ減らすにこしたことはないわけですが 、運営上累積欠損金が増えれば困るという、デッドラインみたいなものがあるのかどう かについてです。これは今後の利回り設定の際のひとつの大きなポイントになると思う のですが、なかなか難しいのでしょうが、いまの時点でもし言えることがあれば教えて いただきたい。以上の2点です。 ○勤労者生活課長  まず最初の確定拠出年金の導入に伴う影響ですが、これは正直に申し上げまして、ど の程度影響が出てくるのか、非常に判断が難しい面がございます。確定拠出年金という のは、運用について例えば従業員教育をしなければいけないとか、いろいろな制約がか かってくるということもあり、はたして中小企業でどの程度導入が進むのかなかなか予 測がつかないところでございます。特に中小企業退職金共済制度の加入企業というのは 、中小企業の中でも、平均の従業員数が6人程度といった零細企業がほとんどです。こ ういった零細企業が圧倒的に多い中、中小企業退職金共済制度の加入対象となるような 企業がどの程度確定拠出年金に移行するのかについてはやや疑問が残るところではない かと思います。  2点目、将来推計における累積欠損金をどう評価したらいいかということですが、正 直申し上げまして、これについてもどの程度がデッドラインなのかというのは難しい面 がございます。累積欠損金は短期間で解消するとになりますと、その期間に加入してい る方にかなりの負担になり、給付水準を相当引下げなければならないということにもな りかねないわけですから、加入者間の負担の公平という観点から見ても、やや問題があ るのではないかという感じがしております。だからと言って、累積欠損金を放置してお けばいいのかということになりますと、これもなかなか難しく、責任準備金として積立 ておかなければならない部分を運用することで本来得られる利子収入が得られないとい うことになるわけで、結果としてそれが収支の悪化に直接結びつくことにもなり、その 退職金の給付水準の引下げという問題も出てくるわけでもございます。  私どもとしては、やはり累積欠損金についてはいずれかの時点でゼロにするというの が望ましいのではないかと思っており、そういう意味では全体の加入者の負担の公平性 という点も十分踏まえながら、累積欠損金の解消に向けて制度のあり方を考えていく必 要があるのではないかと思っております。 ○部会長  ほかに何かございますか。 ○委員  2点ほど質問させていただきます。推計の表、非常に興味深く見せていただいたので すが、3つのケースのマクロ経済予想によってずいぶん数字が違ってくるわけですが、 これをいちばん不確実にしているのは、やはり運用利回りの水準をどう見るのかという 仮定の部分だと思うのです。財政融資資金や、例えば金融債とか国債についてはある程 度予想はできると思うのですけれど、やはり金銭信託の部分は非常に不確定なわけです 。この部分は株価の動向等に左右されることが多いと思うのですけれども、先ほどの課 長の御説明のとおり、株価が下がって含み損が出た場合は0%におくということは、金 銭信託の実績が例えばマイナスになった場合でも0%におくということになるため、隠 された赤字が存在する可能性があるのではないかということになります。その場合、責 任体制がちょっとどうなっているのか知りたいのが第1点。もう1点は、先ほど小規模 企業共済制度のお話があったのですが、これは勤労者退職金共済機構と非常にバッティ ングする部分であると思うのです。中小企業庁の所管ということですが、ここも3,0 00億円ぐらいの赤字があるということなんですけれども、これ自体の資産額がいくら ぐらいであるのかということと、小規模企業共済制度の加入者が中小企業退職金共済制 度とどういうふうに住み分けがなされているかというのを、お聞きしたいのですが。 ○勤労者生活課長  金銭信託で含み損を抱えた場合の責任体制に関する問題ですが、運用責任者を処分す るのかといったようなことになりますと、平成12年度を見てまいりますと、厚生年金 基金ですとか、年金資金運用基金のように、かなりの額を株式に資産を投入していると ころは、実際にはマイナスの運用実績しかあげていませんが、これは運用者自身は誠実 に専門的な知識をもとに、効率的な運用を行わなければならないのは当然ですが、そこ には、運用者の責任に必ずしも帰さない部分があり、そのため、その運用がマイナスに なった場合についても、運用者の責任は必ずしも問わないというのが、一般的な考え方 のようです。  小規模共済制度につきましては、資産総額は7兆円少し超えるぐらいと聞いておりま す。加入者は、あくまでも小規模の事業主を対象にしております。中小企業退職金共済 制度の場合は、事業主は加入できず、中小企業の従業員のみが対象となっています。 ○委員  ちょっとよろしいですか。中小企業の場合には、適格退職年金に加入している企業が 多いのですが、御承知のように、10年以内に廃止され、受け皿として中小企業退職金 共済制度も想定されておられるわけですが、これは将来推計に影響するのでしょうか。 もう1つ、掛金助成というのがありますね。いま、大体100億円ぐらいですか。これ が将来推計に影響を与えるということはないのですか。 ○勤労者生活課長  適年からの移行については、平成14年度から10年間かけて行われることになりま すので、今のところ、実績もないため、どのぐらいの数になるのか、正直申し上げては っきりしないところもあり、推計の中には盛り込んでおりません。  それから、掛金助成について新しい制度ということではなくて、以前から継続してき た制度でございますので、この影響を将来推計には直接的に盛り込んでありません。 ○部会長  加入者の増加によって、推計に変化はあるのですか。 ○勤労者生活課長  単年度収支で見ると、責任準備金も積んでおりますので、単年度で見ると、収支バラ ンスということであればそれほど大きな影響は出てこないと思います。ただ、資産総額 そのものが膨らんだり減ったりすると、それが収支に影響が出てくるという可能性はあ ると思います。 ○委員  ちょっと関連していいですか。失業率5.3%になって、坂口大臣は談話の中で、こ れは異常事態だというようなことをおっしゃっていましたが、厚生労働省の大臣が、そ の数字を見て、異常事態だなんていうようなことを言うのは、そんなの知っていて当た り前のことなんだと思います。統計を出しているところが違うから、そうなのかもしれ ないけれど、昨今の大手のリストラの状況を見てれば、よくわかると思いますし、それ から、小泉改革に別に反対はしないけれども、不良債権の早期処理というのをだんだん やっていくわけですけれども、私の場合、建設業ですが、今非常に厳しいですよね。貸 し渋りをとおり越して、貸しはがしという、そういう言葉がある。もう、そういう目に あった企業は、次から貸してもらえない。全部担保にとられて、つぶれてしまう。いま 中小企業全体の倒産数の3分の1ぐらいが、建設業だと言われていますね。建退共制度 がありますから、中退制度の加入者270万人の中には、建設業はそんなに多くないの ですが、中小企業については10万社から20万社つぶれるという予測もあって、悲観 的なことを言えば、加入者数も減少するということになるのではないだろうかと思うの です。もちろん加入者がやめていくというケースもあるでしょう。中小企業も大きな打 撃を受けて、非常に厳しい状況にある。そうすると、なかなか予測は立たない。このケ ースをいろいろ考えられた人は、それなりの条件を考えられたのだと思うけれども、前 も言いましたが、経済財政諮問会議においては、そういうような状況ではあっても、そ のうち花が咲くよなんていうようなことを言っているんですね。2、3年たてば、経済 成長はプラスに転じるということを言っている。提示された推計は、全部これ、将来回 復しないという前提になっているのです。何が言いたいかというと、中小企業の労働者 にとっては何も明るさがないのではないかというわけです。事業主の方もお見えですけ れども、もう明るさがないような話ばかりしか出てこないのですね。その見通しの中で 、こういう単純な3つのケースだけでは、将来も、経済成長は鈍化してしまったままい くんだというふうにしか見えないんですね。そんなのでいいのですかね。 ○部会長  将来の日本経済がどうなるかという認識の問題なのでしょうが、改革があったとして も、日本がかつての高度経済成長のように高い成長率を回復するという説は、いまのと ころどなたもあまり言われないんだろうと思うのですね。先生方のほうがお詳しいので しょうけれども、マイナス成長から、ある程度の低成長へ乗っていくということが構造 改革のねらいだというふうに私は思っているのです。だから、それが将来の明るい姿と 言えば明るい姿なんでしょうね。  推計にもいろんな方法がありますし、さっき課長も言ったように、あくまでも推計な んであって、我々が物事を考えるに当たっての1つの参考資料だというふうに思うので すね。だから、必ずこのとおりになるとかいうふうに思い込むと、ちょっと具合が悪い のだろうと私は思うのです。 ○委員  言っていることはそんなに無理なことは言ってないので、ケース2、ケース3の運用 利回りを相当先まで見たって、これは成長率とある程度並ぶような数字ですよね。実際 は違うでしょうけれども、ほとんど近いところ。平成19年度になっても、1.8%だ と。2.0%という年がありますが、これは加入者の年齢構成とかいろんなことおっし ゃった。これを見ても、もう日本経済はこの2.0%より上がらないと。あるいは、ケ ース3でいけば、いつまで経っても1.0%の低いところにとどまってしまう。そうい うことを予測しているのと一緒のことですよね。機構の方が推計されたんだろうけれど も、そんなことしかこういうところで言えないのですかね。こういうような推計が出る のは残念だと言っているだけです。 ○部会長  確かにもうちょっと急激に経済成長率が上がるという説明ができないわけではないの でしょうけれども、そうすると、もう少し早く赤字が解消できるということにはなるの でしょうね。 ○委員  何でこういうことを言うかというと、3.0%に引き下げたときの議論の説明があり ましたが、事務局側の説明で、3.0%なら何とかということを、人は変わっているけ れど、一生懸命おっしゃったわけですよ。我々も、やむを得ないなと言って、苦渋だと か何とか言って、労働者の労働条件の一部だということを明記するとかいうようなこと を言って、意見の中に入れていただいた。あのときと、いまと、世間は変わっているわ けですが、あのときの議論だって、もうこれ以上下がることはないだろうというように みんな思ったわけです。後のほうで出てくるゼロというのがありますけれども、何だか 非常に寂しい議論ですよね。私たちは、270万人の中退制度に加入している中小企業 の労働者を、ある意味では代表して出ているわけで、制度が早い時期に悪くなっていく と、雇用も不安だけれども、雇用を断ち切られたときに出る退職金も、本当に微々たる ものだということになれば、我々は委員として何のために出ているのかという、非常に むなしさを感じるわけです ○委員  将来推計ではなくて、退職金の給付の設計について、こういうことが考えられないか と思うのですけれども、それは前回いただいた資料で、「退職者の年齢別・退職理由別 構成比」というのをいただきましたよね。これ、非常に興味深いのですけれども、若い 層では8割ぐらいが自己都合で退職しているわけですよね。だけど、40歳代、50代 、60代というのは、3分の1が事業主都合による退職なんですよね。それで、中小企 業の労働者といった場合に、やはりその中には、将来の独立を志して中小企業を選択す るという人もいるでしょうから、いろんな専門的な知識とか仕事を修得して、できれば 将来独立して経営者になりたいとか、そういう人もいらっしゃると思うのですよね。だ から、そういう、どちらかというと若いグループにとっては、福利厚生とか退職金とい うものに対する期待というよりも、むしろそちらのほうが結構大きいのではないか。問 題は、この40代、50代、60代で、各年度とも約3分の1が事業主都合の退職とい うことですよね。だから、ここのところをその給付設計において何かウエイトづけとい うか、配慮するということで、雇用保険では今年の4月1日から、中高年のリストラ層 に対して求職者給付を重点化するという改正が行われましたよね。中高年の人たちを中 心に、倒産とか解雇によって辞職を余儀なくされたという人達に対しては、いままでよ りも給付期間を長くする一方、自己都合で辞めた人については、むしろ短くするという ような、そういう改正が行われたのですけれども、この前回いただいた資料の、40代 、50代、60代の退職者の約3分の1が事業主都合で退職しているというのは、その 先も非常に厳しいということだと思うのですね。だから、退職金への期待というのもも ちろん大きいでしょうし。20代では、8割が自己都合で辞めているわけですよね。だ から、その辺を何か給付設計において配慮できないのかなというふうに、この前いただ いた資料見ていて思ったのですけれども。 ○部会長  いまのお話は議題3の「退職金の仕組みについて」というお話になるだろうと思いま す。今のところは、とりあえず財政状況の今後の状況だけお話させていただいたほうが いいだろうと思いますので、次の資料を御説明いただいて、そのときに併せて御議論い ただきたいと思います。 ○委員  はい、わかりました。 ○委員  他制度における支給利率についてなんですが、これらの制度は、ここに支給利率の数 字は入っているのですが、変動するとき、何年ぐらいで変動させることができるのか。 そういう制約があるのかどうかということも、ちょっと1つお聞きしたいのと、この中 小企業退職金共済制度がこれだけ累積欠損金が増えた理由には、利率だけではなくて、 社会情勢に的確に対応できなくて、ある程度の年限が決められて、それでないと改正で きないということもあると思うのですね。だから、その辺の両方を含めた討議というの は、これから少しでも赤字を減らしていくためには必要ではないかと思うのですけれど も、その辺も1つ御検討の中に入れていただきたいと思うのです。 ○勤労者生活課長  小規模共済につきましては、これは法律で定まっておりますので、基本的には中小企 業退職金共済制度と同じように法律改正を行って、利率を変動させるということになる と思います。それから、特退金制度と適格退職年金制度については、支給利率の部分に ついては、団体と加入者との間での考え方にもよるんだとは思うのですが、これは適宜 見直しは行っているというふうに聞いております。また、金融機関が、団体及び企業等 に保証している利回りですが、これも運用環境によってかなり見直しが行われていると いうふうに理解しております。 ○部会長  財政の問題はこれぐらいにしまして次に制度の仕組みの話について説明をお願いしま す。 ○勤労者生活課長  資料8を御覧いただきたいと思います。一般の中小企業退職金共済制度の仕組みにつ いてです。1のところで、現行の仕組みと書いておりますけれども、先ほども御説明い たしましたが、中小企業退職金強制制度については、共済契約者の掛金の追加負担がな いということで確定拠出である一方、退職金の給付額が予め定められているということ で確定給付でもあるという仕組みです。このため、経済・金融情勢が変化した場合等の 調整ということにつきましては、その制度設計を見直しまして、見直し後の掛金納付に かかわる退職金の給付額を変動させることにより、行われてきたところです。昭和34 年の制度創設以来、平成2年の法改正で、付加退職金の導入が行われておりますけれど も、基本的にこの仕組みは変わっておりません。先ほども御説明いたしましたように、 過去3回ほど予定運用利回りの引下げを行ってきたところですが、引下げ時の予測以上 に、経済・金融情勢が悪化しまして、結果として累積欠損金を増やしてきたという状況 にあるわけです。そういう意味で、果たしていまの仕組みを踏襲することが適当なのか どうかというようなこと、あるいは、前回御説明いたしましたとおり、行革本部からも 「経済・金融情勢に的確に対応した制度設計を可能となるよう、予定運用利回りを弾力 的に設定できるような仕組みに改め、計画的に積立不足を解消する。(法律事項を政令 事項に変更)」という指摘を受けているわけですが、こういうような指摘も踏まえ、一 度ここで、いまの仕組みのまま今後踏襲するのがいいのかどうかという点についても、 御検討いただきたいということで、事務局のほうで用意をした資料です。  新しい仕組みとしてどういう仕組みが考えられるかということですが、2つほどこれ は事務局のほうで、こういう案も考えられるということで、お出しするものです。(1) ですが、基本退職金の利回りをゼロとしまして、すべて付加退職金によって剰余を配分 するような仕組みにするということです。いちばん下の注のところにございますが、こ れは(1)(2)に共通ですけれども、累積欠損金が解消するまでの間は、剰余金について付 加退職金の支給と累積欠損金の解消にどのように配分するかということは別途検討する 必要があるわけですが、一旦累積欠損金が解消されれば、欠損金は出ない仕組みになる ということは言えるわけです。そういう意味では、累積欠損金が出ないというメリット はあるわけです。  他方デメリットもあるというふうに考えておりまして、退職金の給付額の不確定部分 が増えるということから、共済契約者や従業員にとってわかりづらい仕組みになる恐れ があります。今の中小企業退職金共済制度の仕組みというのは、比較的わかりやすい仕 組みになっており、事業主が掛金をいくら納めれば、退職時に退職金がいくらもらえる かというのが、比較的わかりやすい仕組みになっています。それが各年度の運用実績に 応じて配分するということになりますと、一体退職金がいくらもらえるのかがわかりづ らくなるのではないかということです。それから、もう1つは、現在の中小企業退職金 共済制度は、退職金カーブを設けてありまして、長期間勤続すれば、若干手厚く退職金 の支給を受けられるというような制度設計になっているわけですが、これを各年度ごと の運用実績に応じて配分するということになりますと、こういうような長期勤続を優遇 する制度設計に無理が生じるのではないかということです。以上が1つ目の仕組みです 。  それから、2つ目の仕組みは被共済者(労働者)の加入期間によって付加退職金の支 給率に差を設け、欠損金が生じていた期間に加入していた被共済者については、付加退 職金の支給率を低く設定する仕組みということです。ちょっとわかりづらいと思います けれども、基本退職金としての最低給付額が保証されているということで、基本退職金 が運用実績を上回る時期に加入している者については、運用実績以上の退職金がもらえ るということになりますので、ある意味では得をするということになるわけです。他方 、例えば累積欠損金を解消するために、運用利回りを低く設定した時期に加入している 方にとっては、過去の負債部分というか、過去のマイナス部分も、その時期に返してい かなければならないということになるわけですので、そういう意味では損をするという ことが言えるわけです。そういう意味では、加入時期によって加入者間に不公平が生じ ることがあり得るということでして、そういう不公平を是正するという意味で、被共済 者の加入期間に応じて付加退職金、各年度ごとに付けていく付加退職金の支給率に差を 設けるという考え方です。メリットとしては、加入者間の給付の公平性が図られるとい う面が挙げられるわけですが、ただ、これもデメリットがありまして、それはそれぞれ の加入期間における収支というのは、基本的には制度そのものに由来するものであり、 基本的には制度設計に起因するものであると言えるわけで、それを被共済者の退職金の 給付額に反映させることは、問題があるのではないかという点です。それから、付加退 職金の仕組みが非常に複雑になる。これは制度としても非常に複雑になって、かつ、わ かりにくくなるのではないかということです。  次の頁ですが、3つ目として現行の仕組みの継続です。現行の仕組みを継続し、基本 退職金の利回りについて累積欠損金の解消に資する水準、確実に累積欠損金を減少でき る水準まで引き下げるという考え方です。メリットとしましては、基本退職金プラス付 加退職金ということになりますので、一定の利回りの基本退職金額とともに、それぞれ の掛金納付期間の経済・金融情勢に応じた付加退職金を受けることができること、それ から、退職金の給付額の不確定部分が少ないことから、共済契約者及び被共済者にとっ ても、非常にわかりやすい制度になることです。確定拠出であり、なおかつ、確定給付 の部分もあるということで、仕組みとしてもわかりやすい制度になるわけです。デメリ ットとしては、これまでのところはそうだったわけですけれども、実際の経済・金融情 勢が、基本退職金額の利回りの設定の前提となるその経済・金融情勢の見込みよりも悪 化した場合には、損失金が発生することになってしまうということです。 ○部会長  ついでに、さっき委員が言われた退職事由によって退職金額に差異を設けるかという 点と、もう1つ、委員が言われた、経済事情の変動に、もっと早急に対応できるような 仕組みがあるのかどうかということ。 ○勤労者生活課長  退職事由別にということになりますと、これは退職金共済制度として、そのあり方を どう考えるかという問題になろうかと思います。制度としてそういう仕組みを設けると いうことも、全く不可能ということではないかと思います。若干手続は面倒になるかと 思いますけれども。まさにこの中小企業退職金共済制度をどう考えていくかということ に関わってくるのではないかと思っております。 ○委員  雇用保険の改正では、「自己都合」と、それから、「障害者」及び「再就職が困難な 者」、「倒産、リストラによるもの」と3つに分けて、給付期間を短縮したり、長くし たりしましたよね。それはいまの1とか2の案ですと、その加入していたときの状況が どうかということですけれども、辞めるときに自分の都合で転職するなり、独立するな り、何か希望というか、夢を持って次に行く若い人たちと、それから、50代とか40 代になって、事業主都合で辞めさせられざるを得ない人と、退職する時点での状況、そ れをやはりある程度考えること、すなわち、もともとそんな財源も大きくないわけです から、退職金の給付額も、それほど大きくないのでしょうが、退職事由についても配慮 するということがやはり必要ではないかという気がするのです。それはできるかどうか はちょっとわからないのですけれども。 ○委員  雇用保険が、原則、強制加入で、こちらのほうはそれぞれの事業主と、そこに働く従 業員の方の総意に基づいて加入するという仕組みですから、逆に言うと、若い人も、途 中で転職をして、別の新しい、より魅力的な仕事に就くという場合には、ポータビリテ ィーはあるんですけれども、そこの先でそういう制度がないと切れてしまうというよう なことがあって、そういう仕組みをうまく整合的にできるのかどうかという基本的な問 題がちょっとあるような気がします。雇用保険のほうは、当然自己都合か事業主都合か ということで、今回支給に差を設けたわけですけれども、ちょっと同一にはなかなか扱 いにくいのではないかという気がいたします。 ○委員  前回出された「共済制度の課題」というペーパーがありましたね。それと、今回出さ れているのが、どうも事務当局がお考えになっている結論のような気がするのです。そ の中で、先ほどあった意見とは反対なんですが、法律事項を政令に改めるというのは、 手続簡単、自由自在ということで、これはやはり国会にかけて、それなりに議論もして もらうというのは、必要なことではないかと思います。国民の見ている前で、やはりや るべきではないかというふうに思うのですね。そこまでこの文章が踏み込んでいるとし たら、ちょっと言い過ぎではないのでしょうか。そういう議論をこちら側から言ってい るわけではないし、提起をされることは自由ですが、前回の資料なんか見ると、そんな ように読めるし、今回の文章についてもそのように読めるので、これは十分議論をして いただいてから、お決めいただくと。審議会としては、そう早く結論を出すような問題 ではないのではないかと思います。 ○部会長  このほかにもいろんな仕組みが考えられるんでしょうし、その辺は皆さんもいろいろ 御意見があれば出してください。 ○委員  どうしてもこういうケースを用意して出されると、その中でどれがいいんだというよ うなことになると思うのですが、やはりあの現行制度はそれなりに歴史的な経緯もあっ て、いまは非常に困難な時期にあるけれども、いい制度だということになると思います 。それで、全くゼロにしてしまってというようなことは、非常に日本経済が落ち込んで いる中では、これもなるほどなというような気もするけれども、そんな制度にしてしま ったときは、本当にわからなくなってしまいます。こういう福祉に関する制度というの は、あまり複雑にしないほうがいい。加入者である労働者も、それから、事業主も、さ っぱり訳がわからないということになりかねない。私の退職金どうなっていますかと聞 かないとできないようなものは、やめたほうがいいと思うのです。いまでも結局、何回 も運用利回りが変わってきているから、長く入っている人の計算は非常にややこしくな っているんだと思うけれども。すなわち、頻繁に利回りは変えない。そして、そういう 重要な問題は国会にかける。そして、今回も、まだ結論的に言う必要はありませんが、 利回りの問題については、もう少し慎重に審議をしてほしい。そう御意見を申し上げま す。 ○委員  私も、いまちょっと委員がおっしゃられたように、あまりがらっと変えてしまう、特 に1みたいに原則当期の影響を配慮するという仕組みにしてしまうというのは、ちょっ とそもそも問題があるのかなと。逆に言えば、401Kでメニューを1つしか出さない と、当期ごとに計算していくということだと思うのですけれど。私は現実的にいままで の制度ということを考えながらいくのがいいと思います。付加退職金という制度が実際 何ら機能してないというのは、やはり目一杯ウィッシュフルな予定利回り率を設定して いるが故に、現実とちょっと乖離してきているために機能してないということだと思う のですけれども、そういう面ではやはり基本部分の予定運用利回りをある程度安全サイ ドに置いて、それで、そこを上回る実績をなるべく上げていただく努力の中で、累積の 積立不足と付加退職金にどういうふうに配分するのかということで、現実的に、積立不 足を累積しないような運用の仕方をもっと真剣に考えていくべきだというふうな気がし ます。  あと、委員がおっしゃられたのですけれども、いろんな意味で、やはり迅速にという ことの関係で、今委員からは法律で手当をする仕組みを維持すべきだという話がありま したけれども、私はこういう審議会の手続とか、パブリックコメントとか、あるいは場 合によると、加入者企業を含めて、意見聴取、加入従業員の意見も一定の期間公募方式 で聞いて、こういう場でまた紹介できるような仕組みも考慮しながら、政令で手当をす るというやり方のほうが実質的な意味があるのかもしれないと思います。どうしても法 律で国会承認という手続を経ますと、年度末の通常国会にかけて、その通常国会も3月 末に手当をできないと、計算の関係で、翌年の4月からという、かなりタイムラグを伴 ってしまう。今回のように、実際かなり予定運用利回りと運用利回りの実績が乖離して いるということであれば、政令事項化した場合に、今年の夏から秋にかけて手当をすれ ば、来年の4月1日から施行できるような周知期間を例えば3カ月ぐらい取れば、見直 しができているのかもしれないのですね。だから、そこはやはりもう少し真剣に考えて いただくほうが、制度の安定性という面から重要なことなのではないかなという気がい たします。 ○部会長  ほかに何かございますでしょうか。 ○委員  2点ほど申し上げたいのですが、最後の退職金の仕組みについてですが、これはおそ らく、結論的には現行の仕組みを継続というのが事務局の案なんでしょう。確かに代案 として出された2案は、デメリットが多すぎると思うのですが、その現行の案で、これ は少々乱暴な考えということをあえて承知の上で申し上げるのですが、付加退職金につ いてはおそらく歴史的にさまざまないくつかの経緯があって設けられた制度だと思うの ですが、そもそも論から言うと、やはり退職時期によって、たまたま経済・金融情勢が いいときに居合わせた人たちにとっては、付加退職金がもらえて、そうでない人はもら えないという不公平がやはり生じるわけですよね。歴史的に振り返って見たら、これは 結果論ですけれども、その付加退職金の分を渡さずに、積立金に回しておけば、今回の ような事態になることはある程度避けられたのではないでしょうか。その意味ではある 程度退職時期によっての不公平は避けられたのではないかと思うのですね。考え方とし てこれをどう考えるかという問題ですが、やはり中長期的に考えるのであれば、その退 職時期によって、つまり、経済・金融情勢によって付加退職金がもらえるような仕組み を存続させることが、妥当なのかどうかということを改めて考えてみる必要があるので はないかということを、あえて提起しておきたいと思うのです。  それから、もう1点ですが、退職金の支給水準について国会の議決を経ずして、政令 で規定するということについては、確かに機動的な運用という意味合いから言うと、そ うしたほうがいいと思うのですが、その場合に、国会というチェック機関が働かないと いう問題が明らかに生じるわけですから、審議会としての役割というのは非常に重要に なると思うのですね。もしそういうことをするということであれば、審議会としての位 置づけをきちっとして、ハードルを高くするような位置づけをしない限り、政令で機動 的に運用することについて、私は反対です。 ○委員  この制度が中小企業労働者に大変有益な制度であるということで、これからできるだ け健全に存続することを希望するのですが、ただ、あまり制度が変わるということにつ いては、特に退職金の額に変動をきたすということになると、これはちょっと困るなと 思います。それと、提示していただいている経済予測は、やはりどう見ても、相当深刻 すぎるような気がするのです。いろいろな研究機関が将来予測をしているのですが、や はり将来2%成長、3%成長が可能な時期も来るはずだと思うのですが、そうすると、 やはり剰余金が出てくるわけですから、先程の御説明のとおり、累積欠損金のリミット については考えてないということであれば、欠損金が出る期間、逆に剰余金が出る期間 、それぞれあって運営していけばいいと思うのです。累損があるからこの制度はもうつ ぶれるというような制度ではないですから、とは言っても、累損をできるだけ減らして いくということは考えなければいけないので、できるだけ安定した予定運用利回りを設 定する必要はありますが、あまり深刻な数字だけでの論議をしないでいただきたいと思 うところです。 ○部会長  他にどなたか御意見ございますか。 ○委員  先ほど公表にするか国会で承認を得るかという問題があったと思うのですけれども、 資料7の2頁目に、過去の予定運用利回りの推移と実績の運用利回り、欠損金の推移が あると思うのですけれども、これを見ても、やはり平成3年から平成7年まで5.5% の予定運用利回りが続いたわけですが、この間にかなりの赤字はたまってしまった。そ れにキャッチアップするために、今回もかなり大きく引き下げざるを得ないということ になっていて、そうすると、もちろんこれは経済情勢をどう見るかということも絡むわ けですけれども、ある程度機動的な対応をしていかないと、安定した制度設計はできな いし、やはりいつ辞めたかによって、加入者間での不公平が必ず出てきてしまう。特に この制度は昭和34年にできたのだと思うのですけれども、そのころと比べて、市場は 随分構造的に変わっている。つまりボラティリティーが非常に高まっているという意味 で、環境が大きく変わっていることも、考慮に入れなくてはいけないのではないかと思 います。例えば長期金利にしても、従来のように安定した金利が続くというわけではな くて、市場の動向によって随分変わってしまうし、株価も、日本の株式市場の機能があ まりうまく働いていないということもあり、1年間で半減してしまうような、そういう 環境の中にいるということも考えなくてはならないということです。それはもちろん、 日本経済全体としての制度設計をもう少しうまく行う、つまり、証券市場の整備という ことにも関係するわけですけれども、そういったことも考えても、やはり機動的に運用 利回りを設定して、折角の付加退職金という制度も十分活用するためには、例えば3年 とか4年に1回変えていくというよりも、やはりこの審議会でその都度チェックしてい くというような体制を作っていく。もちろん今回の案1にあるように、基本退職金の利 回りをゼロにしてしまうというのは反対なのですが、ただ、もう少し弾力的な対応がで きる制度にしておくことが、実は公平感に繋がってくるのではないかと思うのですけれ ども。 ○部会長  ほかに何かありますか。 ○委員  委員が前回の会議で臨時国会に間に合うようにしたらどうかと、そういうことまでお っしゃったので、やはりこれ、みんな当事者なわけですし、本当の当事者はたくさんい るわけですが、マスコミに報道されることもあまりないから、私たちの周辺だけ承知す る。連合さんは連合さんでやるでしょうけれども、あまり知られないうちに物事がどん どんいくというのは、それは芳しくない。これまでの説明で、臨時国会で上げてしまお うなんていうことはないとおっしゃっているので、今日はそのことだけ確認したいと思 います。 ○勤労者生活部長  すでに次回の日程をもうお知らせしておりますが、委員から最初に御意見として出て おりますように、慎重に審議をして決定をしていきたいという考えに全く変わりはあり ませんので、その辺は御理解を賜りたいと思っております。それから、私どものほうも 、この審議の内容につきましては、ここだけでとどまることなく、広く知っていただこ うということで、これは厚生労働省のホームページの中に「審議会等」という欄が出て きますが、そこをクリックしていただきますと、その審議会の議事録が、発言者の名前 は出ていませんけれども、発言をほぼそのまま発表しています。その意味では、広く皆 さんに審議の内容をお知らせしながら、これについては議論を進めていきたいと考えて いるところであり、精一杯の努力をしているということを御理解いただけたらと思いま す。 ○部会長  あと、法律案等も公表することになっているのですけれども、あれは特殊な法律だけ ですか。 ○勤労者生活部長  政省令についても全部ということにはなっておりませんけれども、広く意見を求める 必要があるものについては、パブリックコメントというものをやっております。 ○部会長  ほかに何か。それでは、また次回議論することにして、今日はこれくらいにしましょ うか。 ○勤労者生活課長  では、次回は11月16日、2週間後の金曜日に開催させていただきます。次回の議 題は、現在のところ考えておりますのは、1つは資金運用についてもうちょっと詳しく 御説明をさせていただきたいと思っています。機構の担当理事も含めまして、資金運用 の考え方について御説明させていただきたいということです。それから、もう1つが、 付加退職金の配分の方法について、これは先ほど委員から、付加退職金はいらないので はないかというような御意見もございましたが、予定運用利回りを引き下げまして、単 年度で剰余金が出た場合に、それを累積欠損金と付加退職金とどういうふうに配分して いくか、その配分の考え方について、事務局の案を示させていただきたいというふうに 思っております。 ○部会長  それではまた次回引き続いて議論をすることにいたしまして、今日はこれで終わりと いうことにさせていただきます。どうも御苦労さまでした。ありがとうございました。  配布資料  (1) 行政改革推進事務局「特殊法人等向け平成14年度概算要求等の検証結果」(平    成13年10月5日)(抄)  (2) 行政改革推進事務局「特殊法人等の組織見直しに関する各府省の報告に対する意    見」(平成13年10月5日)(抄)  (3) 平成10年法改正関係中小企業退職金共済審議会における議事の概要  (4) 将来推計(今後も現行水準が続くと仮定した場合)(予定運用利回り2.0%、    1.  5%、1.0%)  (5) 将来推計(ケース1〜3)  (6) 他制度における支給利率等について  (7) 基本退職金の利回り設定の考え方について (8) 一般の中小企業退職金共済制度の退職金の仕組みについて (注)配付資料については多量のため省略しておりますが、厚生労働省(大臣官房総務   課広報室又は労働基準局勤労者生活部勤労者生活課)において供覧しております。 ┌─────────────────────────────┐ │ 照会先 厚生労働省労働基準局勤労者生活部勤労者生活課  │ │     担当:河野・武村                │ │    03(5253)1111(内線5376)     │ └─────────────────────────────┘