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第3回社会保障審議会人口部会資料3−2
平成13年11月29日

目標コーホートの仮定設定:
1985年出生コーホート合計特殊出生率(CTFR)の仮定設定

(1)出生率水準の構成要素

 出生率水準は、(1)生涯未婚率、(2)夫婦出生力、(3)離死別の効果の3要因に分解することができる。

コーホート合計特殊出生率=(1−生涯未婚率)×夫婦完結出生児数×離死別効果係数

(1)生涯未婚率の動向

 前回推計時において、初婚率は1960年代出生世代で大きく変化し、晩婚型パターンへ移行する傾向が見られた。これらの世代は、年齢の上昇とともに大きな未婚率上昇をもたらしていた。その認識を前提として、前回推計においては、1980年出生コーホートの生涯未婚率を13.8%と推定した。

(2)離死別の効果

 離死別の効果については前回推計と同様の方法で推計ができ、どの出生コーホートでも0.97前後の安定的な関係を将来も仮定する。

(3)夫婦出生力の動向

 夫婦出生力変化に関する理論的な変動メカニズムとして、下記の(a)と(b)がある。

(a)晩婚化(初婚年齢分布の変化)による出生力低下
 初婚年齢の分布が変化(平均年齢の上昇と分散の増大)することによって、期待される夫婦完結出生児数が変化(低下)する。

(b)晩婚化以外の要因による出生力低下
 夫婦の出生意欲が変化し、初婚年齢に変化がなくとも、夫婦出生力が変化(低下)する場合。

 前回推計においては、夫婦の完結出生児数について、過去の経験データ(出生動向基本調査)から得られた安定的な関係を基礎とし、初婚年齢の上昇に基づく完結出生児数の低下を織り込んで推計を行っており、今回もその関係は安定的である。

 前回推計以降、新たに実施された調査データから確認できた傾向として、同じ初婚年齢でも、最近のコーホートほど、既往出生児数が累積するペースが遅くなっている。

(2)夫婦出生力の低下について

 今回、新たに夫婦出生力の低下に関する要因・見通しについて、次のように修正を加える必要があるのではないか。

[晩婚化以外の出生力低下要因の考慮]

前回推計以降に実施された調査データから新たに確認できた傾向として、同じ初婚年齢でも、最近のコーホートほど、既往出生児数が累積するペースが遅くなっている。

そこで、1960年代の出生コーホートで、初婚年齢の上昇にともなう夫婦出生力低下化傾向に加えて、平均初婚年齢の上昇要因以外の低下を示唆する傾向を、夫婦出生力の推定の要因として加味するかどうかについて検討する必要があるのではないか。


参考表.将来出生率の見通しの比較

A.目標コーホートの仮定設定考え方の比較

要因 平成9年推計
1980出生コーホート
新推計
1985出生コーホート
生涯未婚 平均初婚年齢の上昇にともない未婚化は進行するとの認識。 平均初婚年齢の上昇にともない未婚化は、勢いを衰えさせながら進行するとの認識。
離死別効果 離婚率は上昇しつつも、同時に再婚率も上昇。離別者の平均子ども数はほぼ安定。 離婚率は上昇しつつも、同時に再婚率も上昇。離別者の平均子ども数はほぼ安定。
完結出生児数 晩婚化効果による出生力低下 晩婚化が進行し、平均初婚年齢の上昇にともない完結出生児数は以前より減少するとの認識。 晩婚化が進行し、平均初婚年齢の上昇にともない完結出生児数は以前より減少するとの認識。
晩婚化以外の要因による出生力低下 推計時点で顕著な傾向が見られず。 1960年代の出生コーホートで、初婚年齢の上昇にともなう夫婦出生力低下化傾向に加えて、夫婦出生力自体の低下を示唆する兆候。


B.目標コーホートの仮定設定値

要因 平成9年推計
1980出生コーホート
新推計
1985出生コーホート
生涯未婚 50歳時の生涯未婚率:
4.6%(1941-45年生まれ)→13.8%
50歳時生涯未婚率:
5.2%(1946-50年生まれ)→  
離死別効果 離死別効果係数
k=0.957
離死別効果係数
k=0.971
完結出生児数   1.96人 α人−β人
晩婚化効果による出生力低下(α) 初婚年齢の上昇にともなう低下:
2.18人(1943-47年生まれ)→1.96人
初婚年齢の上昇にともなう低下:
2.13人(1948-52年生まれ)→α人
晩婚化以外の要因による出生力低下(β) 一定(β=0) 平均初婚年齢の上昇要因以外の効果(β)を考慮する必要があるのではないか。


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