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第10回「ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題に関する研究会」(議事概要)

日時 平成13年11月29日(木)10時00分〜12時00分
場所 厚生労働省5階専用第13会議室
出席者 浦川委員、高橋委員、鴇田委員、堀内委員、森島委員、野々下専門家
 厚生労働省医薬局長、総務課長、医薬品副作用被害対策室長、
 血液対策課課長補佐、審査管理課オーファンドラッグ専門官等

議事
 1.日本製薬団体連合会代表者からのヒアリング
 2.日本血液製剤協会代表者からのヒアリング
 3.日本赤十字社代表者からのヒアリング
 4.今後の研究会の進め方について

[主な発言内容]

(1)日本製薬団体連合会代表者からのヒアリング

  〈日本製薬団体連合会の意見〉

 ヒト等由来医薬品等による未知の感染被害の発生は完全には否定し得ないが、事例が極めて少なく、いつ、どのような被害が発生するか想定できない状況下では、救済制度の創設は困難であると思われる。医薬品副作用被害救済制度の創設当時は、既に副作用報告制度ができており、厚生省には年間どれ位の副作用報告が来て、重篤なものはどれ位であるといった予測ができたものである。
 英国では救済制度を作らず、社会保障制度を充実することによって対応し、スウェーデンでは民間保険により対応し、西ドイツでは無過失責任を課し、強制保険によって対応してきた。我が国では基金制度で救済を実施してきたが、必ずしも基金制度だけが救済として妥当かについては、いろいろと考えることが必要である。
 血液製剤による問題を除けば、ヒト乾燥硬膜によるクロイツフェルト・ヤコブ病感染の問題だけしかない現状で、将来の発生の可能性は否定できないとしても、1例だけで救済制度を考えていくということが果たして可能なのか疑問がある。
 万一、ヒト等由来医薬品等による健康被害が発生した場合、災害等と同様、国が救済策を講ずるべきである。
 今後の検討の中で、救済制度として成り立ち得る案が出てくれば、医薬品業界として検討するにやぶさかでない。その場合でも、対象は感染症に限定すべきか、プリオン病、免疫学的反応及び再生医学を利用した場合のがん化等を対象に含めるかどうか、慎重に検討すべきである。また、これらは副作用とは性質を異にするものであるから、現行の医薬品副作用被害救済制度とは別個のものとすべきである。さらに、医薬品と医療用具を一緒にしても良いか、別とすべきかは、両者の実態調査、想定される被害、想定される救済制度等を勘案して検討されるべきである。
 血液製剤による健康被害の救済制度創設は、十分検討に値するものと思われる。この場合、当該健康被害は感染被害と思われ、副作用と性質を異にし、また、製造業者、輸入販売業者も限定されるので、既存の医薬品副作用被害救済制度とは完全に独立した制度とすべきである。
 現在では大変技術が進んで、肝炎や感染症の発生率が下がっており、被害の発生率や拠出について計算できる状態になっていると思われることから、基金制度として成り立つのではないか。その場合でも、現行の医薬品副作用被害救済制度の枠組みを利用することは結構だと思うが、会計は別途独立のものとしてほしい。

  〈意見交換〉

 現行の医薬品副作用被害救済制度の創設当時は、いつ、どれ位の被害が発生するか想定できないから、このような制度を作ることになったのではないか。
 当時は、想定できないといっても、副作用被害が発生するだろうという蓋然性があった。想定できないという点では同じだが、現実に可能性があるという面では、ヒト等由来医薬品等による感染被害とはかなり差があるのではないか。
 確実性を持って予想できないから、このような制度を作るのではないか。また、当時もリスク計算はできず、きちんと測定できないという点はあったのではないか。
 我が国の医薬品副作用被害救済制度は、欠陥と言えないような副作用もカバーしているという点で優れていると思う。しかし、ドイツの薬事法による製造物責任では開発危険の抗弁を認めていないのに対し、我が国の製造物責任では開発危険の抗弁を認めており、遅れているのではないか。
 EU法は一般に開発危険を認めているので、EUの製造物責任法は日本と変わらないのではないか。ドイツでは限度額があまり高い金額ではない。それぞれ制度には優劣がいろいろとあり、開発危険の抗弁だけをもって、日本は遅れていると一概には言えないのではないか。
 未知の部分は負担できないといっても、未知の部分も現実として負っているのではないか。
 未知の部分を負担できないということではなく、前例もほとんどなく被害の発生頻度等が予測ができないときに、基金の制度設計がどうやって想定できるのか。
 現行の医薬品副作用被害救済制度では、当初のリスクの見積もりが大きすぎて後に拠出を下げたと言われるが、下げたのは、医薬品機構が別の事業を開始するに当たって課税問題が持ち上がったためである。
 救済範囲を一次感染に絞らないと、制度の予測はできないのではないか。また、二次感染、三次感染まで全部含めて製造業者等に負担させるのは、公平性から言って納得できない。
 感染被害に係る救済制度ができたとしても、不法行為責任は現在も存在する。ある時点以後の被害に過失があるとされれば、損害賠償が請求され、救済制度の対象から除外される。この制度がメーカーを救うとは思わない。
 給付額を毎年スライドさせ、それも想定して責任準備金を積み立てている。それを4%の利率で計算しているため、財政的に厳しくなってきている。ただし、それは制度設計の問題ではないか。
 限度額の範囲内については民間保険で対応し、それを超えた部分について政府が引き受けるなど、リスクを分担する制度設計は考えられないか。予測を超えるから成り立たないというのではなく、どうやったら制度が運用できるかという発想はできないか。
 予測ができないから、国が災害と同様に対応すべきとなると、メーカーには責任がないと言っているように聞こえる。メーカーにも責任があるのではないか。
 制度として成り立ち得るようなものが出てくれば、検討することにやぶさかではない。
 現行の医薬品副作用被害救済制度の創設には9年かかったが、今回の救済制度はそこまで時間をかけないで作りたい。製薬業界にも今までの経験もあるので、積極的に意見を頂くとともに、御協力いただきたい。

(2)日本血液製剤協会代表者からのヒアリング

  〈日本血液製剤協会の意見〉

 医薬品により健康被害が生じた場合、その要因が何であれ、救済が必要であり、感染症による被害についても医薬品副作用被害救済制度と一体化した救済制度が望ましい。なお、治験薬は、治験依頼者の自己責任により実施されるものであり、救済対象品目には含めない。
 副作用と異なり、感染症の場合、医薬品以外の感染ルートも考えられる。したがって、因果関係については、現行の医薬品機構法第29条で求められている医学的・薬学的見地に立った認定が必要である。また、感染症という性質上、薬事・食品衛生審議会において企業が意見を述べる機会を付与してほしい。
 救済は、発症時を起点としてほしい。ただし、感染の事実から発症が予測され、治療を必要とする場合は被害の発生とみなすことが適切である。
 救済の対象者は、原則として一次感染者とする。ただし、一次感染者が感染した事実を知らないで夫婦間又は親子間で感染させた場合は救済する。
 費用負担については、感染症被害に対する救済を、現行の医薬品副作用被害救済制度と一体化させてほしい。また、健康被害発生の蓋然性の高低を考慮した負担割合としてほしい。ただし、感染症被害の救済に係る拠出金を特に設ける趣旨ではない。
 感染症被害が大規模に発生した場合には、社会的救済の観点から、医薬品機構法第43条を積極的に活用するなど、特段の配慮が必要である。

 〈意見交換〉  

 二次感染・三次感染の場合の救済対象の範囲を夫婦間又は親子間としているが、医療関係者についても、感染した事実を知らずに更に感染した場合には、対象とするべきだと考えている。感染した事実を知らないで感染した場合ということがポイントになると考えている。
 感染した事実を知っていたか知らなかったかは、厳密に区別する必要はないのではないか。
 日本製薬団体連合会の代表者は、血液製剤による被害は予測が可能ではないかと言っていたが、現実的には難しい。厚生労働省に提出されることになっている感染症例報告書が一つの材料になるのではないかと考えている。協会としても調査を行いたかったが、各社の企業秘密があり、協会が集めることは無理であった。
 製品は、スクリーニングなど二重・三重に管理しているが、そのような管理をすり抜けてくるという状況がどれ位の確率であるかについての予測は難しい。

(3)日本赤十字社代表者からのヒアリング

  〈日本赤十字社の意見〉

 最善の安全対策を講じたにもかかわらず発生する不可避ないし無過失のウイルス感染等の副作用は、行政救済の対象とすべきである。
 献血血液は、HBV、HCV及びHIVの3つのウイルスに対して同時にNAT検査を実施しており、これにより副作用の発生は極めて稀となっている。
 輸血用血液は、現行の医薬品副作用被害救済制度から除外されているが、救済制度の対象に含める段階にあると考える。
 善意の献血者が被害を受けた場合についても、行政救済を図るべきである。

  〈意見交換〉

 救済制度は必要であると考えているが、どのような制度をするかについては更に議論を深める必要がある。
 安全性は高まっているが、被害は完全には否定できないと考えた場合、日本赤十字社としては費用負担についてどう考えているのか。
 血液製剤の製造費用は、すべて健康保険の薬価で賄われている。救済制度に対して応分の費用負担を求められるのであれば、薬価や事業費で面倒見てもらいたい。
 献血者に対しても、医薬品によるものではなく、対象とすることは難しいかもしれないが、何らかの形で救済制度を作っていただきたい。日本赤十字社も見舞金制度の中で対応しているが、これには限界がある。
 GVHDは放射線を照射すればほぼ完璧に防げるのではないか。現在はほとんど照射血がつかわれているため、GVHDの副作用報告はゼロであると認識している。まれに起こるのは、病院が照射をしないためにおこるものであり、むしろ医療事故に分類されるのではないか。

(4)今後の研究の進め方について

 今後の研究会は、最終報告の取りまとめに向けて議論をお願いしたい。
 現行の医薬品副作用被害救済制度の創設には9年かかったという話があったが、なるべく方向性は早い時期に出したい。


照会先:医薬局総務課医薬品副作用被害対策室
    野村
    03-5253-1111(内線:2719)


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