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第9回「ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題
に関する研究会」(議事概要)

日時 平成13年11月15日(木)10時00分〜12時00分
場所 厚生労働省16階専用第17会議室
出席者 浦川委員、高橋委員、鴇田委員、堀内委員、矢崎委員、野々下専門家
厚生労働省医薬局長、総務課長、医薬品副作用被害対策室長、血液対策課課長補佐、審査管理課オーファンドラッグ専門官等
議事
   1.HIV訴訟原告団代表者からのヒアリング
   2.日本医療機器関係団体協議会代表者からのヒアリング
   3.今後の研究会の進め方について

[主な発言内容]

(1)HIV訴訟原告団代表者からのヒアリング

〈HIV訴訟原告団の意見〉

○ 患者は、医薬品、医療提供者及び国を信頼して治療を受けており、その安全性を疑っていない。
○ 万一健康被害が発生したときは、公平に救済を受けられるようにすべきである。
○ 血液製剤によるHIV感染の問題では、当初医薬品副作用被害救済基金(現:医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構)からの救済を受けられず、民事訴訟で被害救済を確保したが、被害者の負担は大きい。
○ 血液製剤による健康被害に対する救済制度を早急に確立してほしい。
○ 日弁連では、既に、医療被害補償について具体的な検討がなされている。
○ HIV問題が発生する前には、肝炎の問題があったが、その当時は、血液製剤の特殊性から、患者側は受忍した覚えはないにもかかわらず、その健康被害は患者側が受忍すべきという取扱いがされていた。
○ HIV問題を契機として、米国、カナダ、フランス、ドイツで血液行政の改革が行われた。
○ カナダのクレーバー委員会の報告では、血液製剤のリスクを患者側が受忍すべきではないとし、無過失救済制度の必要性を勧告している。
○ 健康被害について、訴訟による解決を否定するものではないが、それにかかる時間、費用や患者が被る苦痛は筆舌に尽くし難いものである。
○ 血液に関する新たな法律案が検討されているが、救済の問題を取り残すことは容認できない。

〈意見交換〉

○ 「これまでの議論の中間的なまとめ」の方向性で早急に進めてほしいという御意見であると理解して良いか。
○ 実現を早期にということであれば、この方向で更に話をまとめてほしい。
○ この研究会では、救済のための給付は定額のものを考えているが、どうか。
○ カナダにおけるC型肝炎に対する救済では、患者の状態に応じて給付額を分けている。給付額の点については、制度設計の段階で議論してもらえれば良い。
○ 訴訟の問題とは別に、一般的に広く被害救済をするのであれば、現行の医薬品副作用被害救済制度の給付水準は妥当ではないかと考えている。
○ 「患者の権利法をつくる会」の要綱案の骨子では、転倒、転落など、医療の過程に起因するあらゆる被害が入っているが、医療はパーフェクトではない。防止のための対策はいろいろと工夫しているが、完全に防止することは難しい。
○ 患者は治療を受ける際に医療の安全性を疑わないとしているが、こういう前提が成り立つかどうかは疑問である。防止のための努力はしても、医薬品には副作用が起こる可能性があるというのは否定できない。
○ インフォームド・コンセントは重要なことであるが、被害を受けたときに運が悪かったでは済まされない問題である。そのため、広く一般的な救済を作ってほしい。
○ 因果関係の認定の問題については、輸血前検査等の整備がすべての医療機関に徹底されていれば、そういう厳密なことも可能であるが、今の日本の実情にかんがみれば、簡単な立証で行うべきである。
○ 副作用等の健康被害では、医療過誤の問題、メーカーの問題という場合もあるが、患者側からすれば、この点は厳密で分からない。輸血した事実と、輸血の結果としてこういう被害が生じるという蓋然性があれば救済し、医療過誤やメーカーの責任ということになれば求償するという、患者にとって利用しやすい制度にしてほしい。
○ 血液製剤による健康被害に対する救済制度を早急に作ってほしいと述べたが、ヒト由来製品全体に対する救済の枠組みができるのであれば、それを否定するものではない。
○ 因果関係の認定の問題については、厳密に調査するとなると、かなりの被害が排除されてしまうので、感染ルートの問題、最終的な因果関係の問題については、後の調査の段階で調べていただきたい。
○ 救済制度ができることによって、医薬品や医療の安全性も高まっていくことを期待している。
○ 被害の原因が未知の場合の因果関係は非常に難しいだろうが、因果関係は、ウイルス学的というよりも、疫学的な視点においてある程度立証すれば救済されるようにしてほしい。
○ ルックバックできるようにするため、検体を保存しておくことは、重要な問題であると思っている。
○ 「これまでの議論の中間的なまとめ」にある因果関係の認定方法は、HIVなど既知のものに対しては合理的だと思うが、未知のものに対しては危惧する。一般的にそのようなルールを決めておくとしても、蓋然性の高さにより救済するような余地を残しておくことが大切だと思う。
(2)日本医療機器関係団体協議会代表者からのヒアリング

〈日本医療機器関係団体協議会の意見〉

○ ヒト・動物由来の材料を取り扱っている会社は、医療機器関係団体の中で非常に限られており、業界の中で多面的な議論ができていない。
○ このような救済制度については、前向きに議論させていただく。
○ いろいろな材料を医薬品、医療用具で使用しているが、時代時代の変化の中で予測されないことが出てくる可能性があるということを想定したときに、「ヒト細胞組織等に由来する」という括りの中の製品だけで議論を進めて良いのかということが一つの懸念する材料であると思っている。
○ 医療用具業界は非常に中小企業で、このような救済制度に対して支払能力が非常に乏しく、新しいヒト細胞組織等に由来する製品に対しては、リスク回避という観念があり、なかなか国内産業としては手が出しにくい状況がある。
○ 医薬品及び医療用具を含んだ全体的な救済制度を検討していただきたい。

〈意見交換〉

○ 市場が成熟してから救済制度を導入するよりも、あらかじめ制度を作っておいた方が、参入の際のリスク計算としてはかなり安心なのではないか。ある程度リスク分散の制度として、このような制度を確立した方が良いのではないか。
○ 予測できないことのためにはこのような制度が必要だと思うが、このような製品の製造等を予定している企業に対する救済の原資の求め方が議論になる。特定の企業は賛同するだろうが、業界全体の総意として、このような救済制度を受け入れるかどうか十分に議論できていない。
○ 医療機器全体の救済制度の創設の御要望については、機械に伴うリスクと、医薬品やヒト由来製品によるリスクは、性格が違うのではないか。そういう意味では、分けて議論すべきではないか。
○ 「細胞・組織等に由来する」という切り口で、医薬品、医療用具を横断的にまとめて制度を考えているので、医療用具だけを取り上げれば非常に小さいが、全体としては大きな範囲をカバーできるのではないか。
○ 医薬品、医療用具に対する規制は、従来は別々の規制・基準を設けていたが、バイオロジックスの観点から、医薬品、医療用具に対して横断的な規制、基準を上乗せすれば、医療用具が危ないということではない。
○ 医薬品にしても医療用具にしても、リスクは製品によって高低があると思われるので、リスクの程度に応じて拠出金を変えるなど、ある程度公平にするために、どのように分散するかという問題も絡んでくるのではないか。

(3)今後の研究の進め方について

○ 次回11月29日(木)の研究会は、日本赤十字社、日本製薬団体連合会及び日本血液製剤協会からのヒアリングを予定している。


照会先:医薬局総務課医薬品副作用被害対策室
    野村
    03-5253-1111(内線:2719)

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