01/10/19 第1回「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」議事録      第1回「不当労働行為審査制度の在り方に関する研究会」議事録 1 日時   平成13年10月19日(金)10時から12時 2 場所   厚生労働省専用第17会議室 3 出席者  (1) 委員(五十音順)    岩村正彦(東京大学大学院法学政治学研究科教授)    小幡純子(上智大学法学部教授)    加藤和夫(帝京大学法学部教授・弁護士)    毛塚勝利(専修大学法学部教授)    諏訪康雄(法政大学社会学部教授)    山川隆一(筑波大学社会科学系教授)  (2) 行政    坂本政策統括官、鈴木審議官、岡崎参事官、清川調査官、荒牧補佐、山嵜中労委    第一課長 他 4 議事概要  (1) 座長選出、資料説明等について  ・  冒頭、諏訪委員の研究会座長就任が了承された。  ・  自由な意見を阻害することのないよう会議そのものは非公開とするが、資料及    び議事録については原則公開(委員名は伏せる。)とする取扱について了承され    た。  ・  事務局から(1)「労働委員会における不当労働行為審査の現状」、(2)「労使関    係法研究会報告においてこれまで指摘された不当労働行為の審査に関する主な内    容」、(3)「全労委運営委員会における検討の動向」、(4)「司法制度改革審議会    報告」について説明を行った。  (2) 意見交換  ・  第1回目なので不当労働行為全般についての意見や今後の進め方についてフ    リートーキングを行いたい。  ・  特に昭和57年報告では、詳細に労働委員会の問題点が指摘されているが、報告    以後、労働委員会として審理迅速化のため、どのような取り組みをしているのか    、取り組みが困難であるならば、何が障害となっているのか。労働委員会は報告    をどこまで真剣に検討しているのかを知りたい。     現行制度の枠の中で迅速化できない実態が変わらないのであれば、審級省略、    実質的証拠法則の採用などの面で、制度を変えたところで状況が変わるとは思え    ない。     地労委を含め、審査の実態と改善に向けての姿勢を知りたい。  ・  労働委員会としても審査遅延状況について問題意識を持っている。資料No.4の    とおり命令書モデル、研修体制の充実、制度基本問題について検討を行っており    、来年には一定の結論を出す予定である。  ・  先生の御指摘の点については、資料にまとめて提出したい。ただし地労委での    審査状況に関する資料は、ヒアリングを行うことも必要であり、少し時間を頂く    ことになる。  ・  昭和52年頃に労委規則の改正があったかと思う。それにより審査委員が審問を    主導的に行えることとなったと思う。しかし現在の実務は、そうした規則改正の    趣旨を反映するものとはなっていない。  ・  本研究会とは別に、全労委での議論と司法制度改革の観点からの議論が2つあ    るが、この2つとの兼ね合いはどうするのか。  ・  例えば、研修体制の充実、モデル命令書の作成等については、全労委の中で議    論すべきことと考える。しかし法制度の改正を踏まえた議論は、労組法を所管す    る厚生労働省として対応すべき問題であると考える。一方で審級省略等司法制度    との関係の問題については、司法制度改革での議論を横で考慮にいれながら、う    まく接続することが必要と考える。  ・  労働関係民事訴訟の平均処理日数は、現在14か月を切っている。以前の民事裁    判は、長くかかり、わかりにくいという世論の批判を受けていた。そこで最初に    遅延化の原因を究明し、審理方法を改善し、その後に民訴法の制度を改正した。  ・  一方、労働委員会は資料を見る限り、3年と長期間を要している。実態を把握    し、審理方法を改善すべきと考える。  ・  制度を変えなければ進まない部分もある。制度的な改正が必要な時期に来てい    ると思う。     準備手続きは職権でできると思うが、審問となると十分な訴訟指揮を発揮でき    る体制にはなっていないのでは。     それと地労委は、地方自治であるが、国と地方との兼ね合いについては議論の    必要はないのか。  ・  従前は機関委任事務であるが、なぜそうなったのかは実は明確な理由があるわ    けではないと思う。     現在は地方自治であるが、中労委での再審査制度があり、命令の全国統一性が    担保されているので特に問題はないと考える。必要に応じて議論する。  ・  制度と運用は不可分である。調査・審問・合議等のそれぞれの場面でどのよう    な運用がなされているのか知りたい。  ・  都労委の場合、合議の際に認定事実の根拠となった証拠の摘出等が行われてい    る。  ・  裁判も主張事実の認否において、否認をするが、否認の理由が明確に主張され    ないケースがある。     そのようなケースでは、弁論準備の段階で理由のない否認などをそぎ落とすこ    とにより、すっきりとした争点整理が行われる。     労働委員会は当事者主義であるが、当事者主張に任せ切っていては、何が争点    かがはっきりしないまま、無駄な審理が長々と続くことになる。記録は膨大で、    書証は多いが、訴訟に耐えうるものが少ない場合や認定された事実に対応する証    拠が見当たらない場合がある。これでは審級省略は難しいのではないか。  ・  申立おいて、使用者のある特定の行為が不当労働行為として問題となるという    ことを意識しないで、使用者の行為ではなく、当事者が対使用者との関係でおか    れている状態を主張するケースが認められる。審査においては、使用者の行為を    裏付ける事実を書証、審問で証拠として積み上げる必要がある。にもかかわらず    、とにかく話を聞いてほしいというスタンスの申立人が多いような感じがする。    代理人に弁護士が付かないケースで特に多く見られる。  ・  公益委員が非常勤であることから、多忙であり十分な争点整理ができない状況    にある。  ・  同意見である。都労委の場合、労使参与委員や事務局職員の働きに一層期待を    したい。  ・  裁判でも争点整理や無駄な証拠調べの制限に苦労する場合があるが、主な争点    を絞り込むように努力するし、そのための技術もある。     アメリカの労働委員会(NLRB)の制度と運用を見学したことがあり、そこでの    委員と事務局との関係は、もちろん最終的な決定権は委員にあるのだが、決定に    至るまでの過程では、各委員と各補佐官が合議の席で対等な立場で議論を行って    いた。アメリカでは一般的に十分に専門的な知識をもった補佐官によるサポート    体制が整っている。サポートするだけではなく、充実した議論も行っている。     委員を補佐する事務局の役割は大きく、アメリカ等の例にならい、職員の専門    性の強化は不可欠である。     また日本では、労働裁判について、労使関係の分野での専門的知識が必要であ    るという認識をもっている裁判官は少ないような感じがする。     労働委員会として、司法に対してこうした専門性の必要性を強く認識させるよ    うな審理をすべきではないか。そうすれば、審級省略や実質的証拠法則の採用等    に理解を示すようになると思う。  ・  専門性の確保は、2つの観点が必要ではないか。1つは、法律実務の専門性を    もった職員の確保であり、2つ目は、労働関係事件の専門性をもった職員の育成    である。  ・  都労委では、法律専門職の採用を行っているが、労働委員会の採用、配属枠に    限定しているものではない。  ・  法律の実務の専門性を確保し、その中から労働関係に興味を持つ職員の専門性    を育成するということを考えるべきであろう。しかしながら地労委には、必ずし    もそのポリシーがない。     都労委の場合は、人事ローテーションの問題があり、せっかく専門性が確保さ    れたと思ったら、別な部署に異動してしまう。専門職的な人材もいるが、必ずし    もふさわしい処遇が得られないようで、本人の情熱が支えとなっているように見    受けられる。     それらの人も、今後徐々に定年でいなくなってしまう。そうなると専門性を    もった人が減少してしまう。  ・  訴訟部門のある法務局でも同じような問題を抱えていた。職員の中に登記の専    門家が多く、訴訟の専門家が少なかった。専門性を確保するために人材の起用や    研修の充実などで努力して、一定の成果を得てきた。     短期で集中的に一定の専門的知識と技能を身につけさせることが肝要で、何年    もかけて専門性を確保するようでは実際の問題の解決にはならない。法務局など    でもおおむね3年程度で異動しているので、これを前提に対応策を練っている。  ・  地労委間でも格差がある。都労委、大阪地労委の新規申立件数だけで、全体の    過半数を占めている。一方で新規申立が1件ないし2件のところもある。申立件    数の少ない地労委においては職員の専門性はなかなか育たない。  ・  退職した裁判官ではなく、現職の裁判官の協力を得る方法を考えることはでき    ないのか。     また、申立件数の減少をどうみるのかを議論する必要があるのではないか。     労使関係の安定しているから減少しているのか、それとも申立ても時間がかかり    無駄だと思われているのか。  ・  労働委員会に限った話しではないが、行政の特徴として当事者間で一定のコン    センサスを得ようとする感じがする。判定的機能を担うというよりは、カウンセ    リング的な調整機能を中心に行っている場合が多い。後者を中心に審理を進める    と本来の審査手続が二の次となりがちである。  ・  事件の性格は様々なので調整を行うことは否定はしないが、不調に終わった場    合、書証は多いが何が争点なのかがぼやけてしまっているケースが多い。  ・  裁判でも和解は当事者の納得に基づく紛争解決として有用で、頻繁に行うが、    事案についての心証に基づいて一定の方向性をもって「仲裁的和解」を行うこと    に努めている。  (3) 次回の予定  ・  本日はフリーディスカッションを行ったが、今後の検討と行うに当たって、次    回は各委員が10分程度、労働委員会の不当労働行為審査制度について意見を御報    告いただき、それを踏まえて議論を行いたいと思うがいかがでしょうか(委員了    承)。     次回研究会に配布する資料等があれば、事前に事務局まで提出いただければ、    必要部数を用意することとしたと考えます。次回に欠席の委員がいれば次々回に    意見を伺いたいと考えます。     次回は12月7日(金)午後3時からを予定しています。本日はありがとうござ    いました。 照会先 政策統括官付労政担当参事官室 法規第二係     村瀬又は岩間     TEL 03(5253)1111(代表)(内線7752)