01/09/25 毒性・添加物合同部会議事録 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・添加物合同部会議事録 日  時:平成13年9月25日(月) 10時00分〜11時53分 場  所:厚生労働省 省議室 議  題   (1)食用赤色2号について   (2)臭素酸カリウムについて   (3)その他 出席委員(敬称略): 石綿肇、井上達、井村伸正、江崎孝三郎、黒川雄二(毒性部会長)、鈴木勝士、鈴木久 乃、高仲正、津金昌一郎、長尾美奈子、成田弘子、西島基弘、林眞、廣瀬雅雄、福島昭 治、米谷民雄、山川隆、山崎幹夫(添加物部会長)、山添康、吉池信男 事務局:尾嵜食品保健部長、石井基準課長、坂本課長補佐、吉田課長補佐 ○基準課長  おはようございます。定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 の毒性・添加物の合同部会を開催いたします。  本日はご多忙のところ、ご参集いただきましてまことにありがとうございます。  本日の合同部会の出席状況でございますが、毒性部会につきましては委員12名中10 名、添加物部会の委員13名中12名がご出席予定で、お一人遅れておられますが出席予定 となっており、本日の部会は成立いたしますことをまずご報告申し上げます。  それでは、まず初めに食品保健部長からごあいさつを申し上げます。 ○食品保健部長  おはようございます。食品保健部長の尾嵜でございます。  本日は、先生方にはお忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。 また、平素から食品衛生行政の推進にご協力またご理解いただきまして、まことにあり がとうございます。  本日、合同部会に2点ご審議をお願いしておるわけでございますが、後ほど事務局の 方から詳細に資料に基づきましてご説明させていただきますが、両方とも食品添加物の 関係でございますが、1つは食用赤色2号の関係でございます。ご承知だと思います が、過去にアメリカで発がん性があるというふうなことが報じられまして、その後、我 が国での食品衛生調査会、当時でございますが、あるいはWHO等、そういった関係の 国際機関でも議論がされ、結果的には発がん性がないという判断がされているものでご ざいます。ただ、取り扱いにつきまして我が国では現在も認めておるわけでございます が、アメリカではそういったことのあった以降も、引き続きこれまでこの食用赤色2号 については使用を禁止しておる状況でございます。取り扱いが異なっておるというとこ ろがございます。  もう一つは、臭素酸カリウムの関係でございます。これにつきましては、発がん性が あるということについては、国際的にもまた我が国も同様の認識をいたしておるわけで ございまして、そこのところは異なった整理がされているわけではございませんが、現 在、我が国ではパンにのみこの使用を認めておるところでございます。また、最終製品 にはこういったものは残留しないということがあわせて要件となっておりまして、そう いう要件のもとに認めておるわけでございます。ただ、これにつきましては、アメリカ の方では別に規制はいたしておりませんが、ヨーロッパを見ますと、イギリスがまず先 駆けて使用禁止をし、EU全般が現在この臭素酸カリウムについては使用を禁止してお るという状況でございます。これにつきましても、EUあるいは日本、アメリカ、そう いったところの取り扱いが異なっているというところでございまして、これらにつきま しては国会の方でもご議論がございました。  今回お集まりいただきましたのは、この2つの添加物につきましてそういった議論が あった以降の情報も含めて本日資料としてお出しさせていただくということで、我が国 の今の考え方について、今後新たな試験を実施する必要性があるのかどうかということ も含め、この時点でご議論いただければありがたいと考えておるわけでございます。  今後の取り扱いにつきまして、先生方の忌憚のないご意見をいただき、ご審議をいた だければありがたいというふうに考えております。どうぞよろしくお願い申し上げま す。 ○基準課長  それでは、本合同部会の座長につきましては、毒性部会長でいらっしゃいます黒川委 員にお願いしたいと思っております。黒川先生、どうぞよろしくお願いいたします。 ○黒川座長  おはようございます。黒川でございます。  恒例によってということで、部会長が二人おるのですが、先輩の山崎先生をさしおい て座長をやらせていただきます。  それでは、まず配付資料の確認をお願いいたします。 ○事務局  本日、先生方のお手元には座席表の1枚紙とファイルを1冊置かせていただいており ます。ファイルにつきましては基本的には事前送付させていただいたものでございます が、資料1につきましては、21日付で厚生労働大臣より薬事・食品衛生審議会に対して 諮問させていただいておりますので、その諮問書の写しと説明資料に差替えさせていた だいております。それから、資料2といたしまして、6ページの資料をつけてございま す。その後ろには資料2−1から2−10ということで、関係するそれぞれの文献をつけ させていただいております。ファイルの半ばほど、下の方に赤で3と書いてございます 資料3といたしまして、7ページの資料をつけさせていただいておりまして、その後ろ には資料3−1から3−10ということで臭素酸カリウムに関する文献等をつけさせてい ただいております。よろしくご確認をお願いいたします。 ○黒川座長  お揃いでしょうか。 ○黒川座長  よろしければ今日の審議に入りたいと思います。  今日は食品保健部長のお話にもありましたように、2つの食品添加物、食用赤色2号 と臭素酸カリウムの取り扱いについて審議するわけでございますけれども、本件につき ましては厚生労働大臣よりこの薬事・食品衛生審議会に諮問されたものが本合同部会に 付託されているという形をとっているということでございます。  それをご理解願って、まず本諮問の概要について事務局からご説明いただきたいと思 います。 ○事務局  資料1をご覧いただければと存じます。  資料1、表に「食用赤色2号及び臭素酸カリウムについて」ということが書いてござ います。1枚開けていただきますと、諮問書の写しでございます。9月21日付で厚生労 働大臣より薬事・食品衛生審議会に諮問させていただいたものでございます。  「食品衛生法第6条及び第7条第1項の規定に基づき、食用赤色2号及び臭素酸カリ ウムの今後の取り扱いについて、貴会の意見を求めます」ということでございます。  1枚めくっていただきますと、内容につきまして書いております。  食用赤色2号及び臭素酸カリウムについて、「1. 諮問の概要 食用赤色2号及び臭 素酸カリウムの食品添加物としての今後の取り扱いについて」ということでございま す。  「2. 諮問の背景」でございますが、我が国で指定されております食品添加物のう ち、食用赤色2号と臭素酸カリウムは、欧米においてその安全性等の懸念から使用が禁 止されたということでございます。食用赤色2号については、米国において動物実験に より発がん性が疑われる試験結果が得られたことから、昭和51年に食品への使用を禁止 する措置がとられております。また臭素酸カリウムについては、動物実験において発が ん性が認められ、当時定められていた使用基準では食品中に残留しないという確証が得 られないとして、英国において平成2年に食品添加物リストから削除されております。  海外におけるこのような状況に加え、第151 国会においても、これら品目について新 たに安全性に関する試験を実施する必要性があるのではないかという指摘がなされたこ と、食用赤色2号については安全性に関する新たな知見も報告されていることなどに鑑 み、今般、我が国においてもこれら品目の食品添加物としての取り扱いについて薬事・ 食品衛生審議会においてご審議いただくものでございます。資料1につきましては、以 上でございます。 ○黒川座長  ありがとうございました。これが今日お集まりいただいた目的でございます。  それでは、まず最初に食用赤色2号に関してご議論いただきたいのですが、その前に 関係資料に関して事務局からのご説明をいただきます。 ○事務局  それでは、本日お配りしたファイルの資料2に基づきまして、食用赤色2号(別名: アマランス)につきまして、ご説明申し上げます。  まず初めに、1番目、経緯でございますけれども、本品につきましては昭和23年に我 が国において食品添加物の指定を受けております。その後、昭和51年(1976年)でござ いますが、後ほどご説明いたしますけれども、米国において発がん性を疑う試験結果が 得られたため、米国において使用禁止の措置をとっております。この品目につきまして は、同年、我が国におきましても食品衛生調査会の委員等による検討を行った結果、当 該データは発がん性を疑う根拠とはならず、食用赤色2号は人の健康を損なうおそれが ないという結論を得ております。  その後、国際的な評価でございますけれども、昭和53年JECFAという専門会議が ございますが、そちらの方で検討した結果、発がん性が認められないとの評価を得てお ります。昭和59年(1984年)におきましても、その後得られた追加試験成績等をもとに 最終評価し、発がん性は認められないという結論を得ております。  2番目としまして、我が国における本品の使用状況でございますけれども、本品の用 途としましては着色料といたしまして、菓子、清涼飲料水、冷菓などに使われておりま す。ただ、使用基準といたしまして、使われることによる鮮度誤認のおそれがあるとい うものにつきましては、使用してはならないという使用基準が定められております。  下にいきまして、3番目の欧米の状況でございますけれども、(1)米国、これは先 ほどご説明いたしましたとおり、1976年以降発がん性を疑う試験結果が得られたことか ら使用禁止という措置がとられております。1枚めくっていただきまして、(2)EU でございますけれども、EUにおきましては使用可能、ただしここに掲げてありますよ うな品目について使用基準が設定された上で使用されております。なお、EUにおきま してはADIは0〜0.8mg/kg体重というふうに評価されているようでございます。  ここから後、本品の安全性に関する知見という形で(1)、(2)、(3)という形 でまとめさせていただいております。  (1)でございますけれども、FDAにおける食用赤色2号に関する実験結果とその 問題点、今回のアメリカで使用禁止の措置をとった基になった実験結果でございます。 これにつきましては、資料2−1の英語の資料の3ページの一番最後のあたりにこの詳 細は出ておりますが、試験結果の概略としましては、各群、雄50匹、雌50匹の離乳した ラットに、体重換算で0、1.5 、15、150 あるいは1500mg/kgの食用赤色2号を約2年 半混餌投与したという結果でございます。なお、この動物群は親ラットに対しても食用 赤色2号を投与しておりまして、そこから生まれたF2a同腹子の中からランダムに選 んだ動物が選ばれております。  この投与結果から得られた結果でございますが、2行目くらい下がったところでござ いますが、いろいろな良性及び悪性の腫瘍が観察されております。しかし、コントロー ル群と投与群では明らかな差は認められなかったという結果でございます。ただ、病理 学的データを統計解析した場合に、一日量1500mg/kgの投与を続けた雌のラット群で悪 性腫瘍数の有意な増加が認められたということが報告されております。ただ、良性腫瘍 と悪性腫瘍の全腫瘍数には高投与群とコントロール群との間で有意差は認められていな い。また、全身状態、生存率、体重増加、血液学、臨床化学あるいは関連組織重量等々 の指標にも影響は認められていないという結果でございます。  この結果につきまして、2)問題点としまして、「サイエンス」という科学雑誌でこ の試験成績について問題点が指摘されています。資料2−2という形で「サイエンス」 の抜粋を掲載させていただいております。  その問題点を要約いたしますと、大きく4つあげられております。  (1)といたしましては、本実験がコントロール群を含めて5群に分けて投与されたわけ でございますけれども、十分な動物の管理が実施されておらず、不特定数のラットが誤 ったケージに入れられてしまっているということがまず1点目の問題点でございます。  (2)の問題点でございますけれども、実験途中で死亡したラットに対して、速やかな剖 検が実施されなかったため、途中死亡ラットに関する評価可能データが収集できていな いということがあげられております。  (3)といたしましては、途中死亡ラットが非常に多く、実験終了まで生存し正当に剖検 が実施されたラット数が、結果としまして500 匹中96匹しかいなかったということがあ げられております。  最後、(4)でございますけれども、今回の「発がん性の疑いあり」という根拠になりま したのが、FDAの生物学統計学者が、良性・悪性の総数において有意な差は認められ ていなかったわけですけれども、高用量群の雌で悪性腫瘍数に着目すると有意な増加が 認められているということを報告したわけでございますけれども、その良性腫瘍と悪性 腫瘍をどのように判定したかということが不明であること、それから個々のラットと各 腫瘍との関係が不明であるということから、実際に行われた統計処理について、それが 妥当であるかどうかということが判断できないだろうという4つの問題点が指摘されて いるわけでございます。  次に、(2)としまして、国際的な評価としましてJECFAにおいてはどういう評 価がなされているかということをア)からウ)という形で紹介させていただいておりま す。  まず、ア)でございますが、1975年第19回JECFAにおいて、本品については評価 が行われております。その資料といたしましては、資料2−3、2−4ですが、資料2 −3がJECFAの報告書の概要でございまして、資料2−4が実験の詳細、結果の詳 細がもう少し詳しく書かれた資料という形になっております。  その概略をご説明いたします。75年の評価におきましては赤色2号の発がん性と催奇 形性について当時の新規データにより評価が行われております。ただ、幾つかの試験結 果が得られたわけでございますけれども、当時の評価においては添加物の規格がばらつ いていたといいますか、委員会が設定した規格と異なっているものが使われて動物実験 が行われていたということから、評価が難しかったということがございますけれども、 規格に適合するものが使われている場合には、毒性学的根拠に基づき暫定ADIは0〜 0.75mg/kg体重とすることが適正であろうという評価が得られております。  なお、委員会におきましては規格のばらつきがございましたので、標準的なサンプル を用いた国際的な共同研究の実施が必要であろうということがあわせて提言されており ます。  続きまして、イ)でございますけれども、1978年第22回のJECFAの評価でござい ますけれども、これにつきましては資料2−1あるいは資料2−5ですが、資料2−5 が評価結果の概略となっております。  その概略を申し上げますと、当時評価しました2種のラットを用いた催奇形性試験に おいて、食用赤色2号を200 mg/kgの用量で強制経口投与あるいは飲料水として飲水投 与した場合の副作用は観察されなかった。さらにネコでの結果も考慮しておりまして、 ネコでも催奇形性は認められなかったということになっております。  下線を付させていただいておりますけれども、資料2の3ページで米国において実施 されたラットの長期投与試験結果も当時入手可能であったわけでございますけれども、 この実験には技術的な不備があったために適切な評価ができなかったということがこの JECFAの評価結果でも報告されております。その他、委員会としましては、この化 合物の構造から判断して、経口的に摂取される場合には発がん性は有さないだろうとい う見解も示されております。  そのほか、委員会としましては、長期投与による追加試験の実施を要求しておりま す。ADIにつきましては、0〜0.75mg/kg体重については暫定の扱いで結論が延長さ れております。  続きまして、ウ)の1984年第28回のJECFAの評価でございますけれども、これに つきましては資料2−6から2−8という形になっております。資料2−6が第28回の JECFAの報告書の概要、資料2−7がそれのもう少し詳しい試験結果を載せた報告 書の概要、それから資料2−8は1987年にパブリッシュされた論文でございますけれど も、位置づけとしましてはこのJECFAで評価された試験成績、当時はまだアンパブ リッシュのデータでございましたけれども、これを1987年にこの試験実施者が公表文献 という形で報告したという位置づけのものでございます。  また資料2に戻っていただきまして、この試験結果でございますけれども、ラットに おいて子宮内暴露期間を含んだ長期混餌投与試験が新たに実施されております。この結 果を考察いたしましたところ、用量依存性の腎盂石灰沈着症が認められたものの、発が ん性は認められないという結果が得られております。最高用量群とその次の投与群でご ざいますけれども、250 mg/kg及び1250mg/kg投与群においては盲腸肥大が認められた わけでございますけれども、これにつきましてはミネラルの吸収率が変化し、腎盂石灰 沈着の生成に影響を及ぼしたという考察が加えられております。  JECFAといたしましては、基本的には2つの動物種における長期試験が必要であ るわけですが、今回のこの成績、それからこれまで実施されてきた既存の幾つかの混餌 試験の結果が入手可能であったことから、これらのすべてのデータを評価し、食用赤色 2号の評価を完了させることが可能であるというふうに考えております。食用赤色2号 についてはADIについて0〜0.5 mg/kg体重という形で設定されております。これが JECFAにおける成績でございます。  (3)としまして、最近の知見という形で、ア)イ)という2つの情報をご紹介させ ていただいておりますが、これはその後の安全性を疑わせる試験成績あるいは情報につ きまして、事務局の方で文献検索をいたしまして、ご検討いただく必要があるだろうと いう形で引っ掛かってきたものを2つご紹介させていただいております。ただ、ア)は 公表文献でございますけれども、イ)につきましては今年の6月に日本トキシコロジー 学会学術年会で発表された講演要旨というものでございまして、これの論文はまだパブ リッシュされていないというふうに理解しております。  まず、ア)の「Toxicological Sciences」という雑誌に投稿された文献についてでご ざいますが、文献としましては資料2−9でございます。これは、八戸高専の佐々木先 生らのグループが実施した試験成績でございますけれども、具体的に実施した試験とし ましては大きく2つございます。1つは、妊娠期のマウスに赤色2号、それから赤色40 号、それから赤色106 号を投与して行うComet assay という遺伝子傷害性を見る試験成 績でございます。これは実際には2000mg/kgの用量をこのマウスに投与し、その後、時 間を追って脳とか肺あるいは結腸、膀胱、胎児等のサンプルをとってきて、それを電気 泳動して遺伝子障害性を見るという試験系でございますけれども、この実験を行った結 果、赤色2号それから赤色40号につきまして、投与3時間後の結腸において陽性反応が 見られている。また、赤色2号においては6時間後の肺においても弱い陽性反応が認め られたという結果が出ております。なお、赤色106 号についてはDNA損傷性は誘導し なかったという結論が出ております。  真ん中あたりですが、次いでと書いてあるところですが、大変申しわけありません、 誤植がございまして雄性ラットと書いておりますが、これはマウスでございますので、 お詫びして訂正させていただきます。  同じComet assayを今度は雄性マウスを用いまして、赤色2号、赤色40号、それから赤 色102 号の3つの色素につきまして、同じくComet assay を行っております。その結果 といたしましては、今回新たに行った試験色素の3つの色素において、結腸において12m g/kgの用量からDNA損傷性が誘導されたという結論を得ているようでございます。赤 色102 号につきましては、市販の紅ショウガ漬けの浸出液を用いて試験も行っておりま すけれども、その結果、結腸、腺胃及び膀胱においてDNA損傷が認められたという結 果となっております。  イ)でございますけれども、これは講演要旨でございますが、詳細は次の5ページを お開きいただければと思いますけれども、これにつきましては試験の成績がついていな くて大変申しわけございませんけれども、そのほかの食用色素についてもComet assay を実施したということが報告されております。その結果といたしましては、azo 型の色 素の赤色2号、102 号、黄色4号、これについて結腸で強い遺伝毒性が認められたとい うことが報告されております。  その次、6ページをお開きいただきます。参考という形で、一覧表をつけさせていた だいておりますけれども、事務局の方でご参考までにつけさせていただいたわけです が、これは今申し上げました最近行われたComet assay の結果、結腸において陽性反応 が認められたazo 型の色素4つについて一覧という形でつけさせていただいておりま す。構造式、アメリカ及びEUの状況、毒性という形でこれは「食品添加物公定書解説 書」という本がございますけれども、資料2−10にそのコピーをつけさせていただいて おりますが、この解説書の方に毒性の分についての記述が若干ございますので、それに ついて特に慢性毒性/発がん性に関する部分のみ抽出いたしまして、ここに記述させて いただいた次第でございます。  毒性を見ますと、慢性毒性/発がん性試験、今回のazo 型色素はいずれも発がん性試 験が実施されておりまして、その結果としては発がん性は認められない、毒性は問題な いというような結果を得ているということがこの解説書の中にも記載されております。 審議のご参考にしていただければと思ってつけさせていただきました。  長くなりましたけれども、赤色2号の資料については以上でございます。よろしくご 審議のほどお願いいたします。 ○黒川座長  どうもありがとうございました。  まずは委員の先生方で今のご説明に対してご質問とか、あとは追加のデータがありま したらどうぞ。  事務局に今お聞きしていいかどうかわかりませんけれども、資料2−6、7、8にな っている84年の評価に用いられた試験なんですけれども、アメリカとしては前にあった 試験がかなり問題点のある試験だけれども陽性に出た、それを踏まえて禁止にしてい る。その次に出た試験というので、これに対する反応はどういうことだったわけです か。これは無視しているということになるのでしょうか。 ○事務局  正式なコメントをいただいているわけでございませんけれども、結果として使用禁止 の措置を解除していないということから、一つは無視しているという可能性もあるので すが、アメリカにおいてはほかの代替品もあるということによって、あえてこのものに ついて評価するまでもないという扱いをとっている可能性もございます。そのあたりの アメリカはどう評価したかということについて正式なコメントは、申しわけありません が、事務局でも入手しておりません。 ○黒川座長  それから、今の84年の評価に用いられたデータは、ここにはJECFAの評価という ことはあるのですが、調べてもらいましたが、この結果について当時の食品衛生調査会 的なレベルにおいてはっきり評価可能かどうかということは正式にはやっていなかった ようでありましたので、今日特にこの場で長期発がん性試験などのエキスパートが何人 かいらっしゃるので、ぜひご意見をいただきたいというふうに思っております。廣瀬先 生、福島先生あたりから、評価に関してご意見をいただきたいと思います。 ○廣瀬委員  発がん性の試験ですけれども、1950何年ごろから幾つかやられておりまして、その中 の一部でちょっとあやしいことがあったということで、最終的に1987年の発がん性の試 験のデータが出された。これはウィスターラットを用いておりまして、先ほどご説明が ありましたように、腎盂に石灰沈着があるということで、二次的な状況としまして腎盂 の上皮に過形成の変化が見られたということで、腫瘍の増加はどこの臓器にも見られな いということでこれはこれでいいかと思います。ただ、一つ気になることは、資料2− 4の9ページに下の方にラットのlong term studyのサマリーが幾つか出ておりまして、 これはいずれもかなり古いデータで、ラットの匹数も少ない、あるいは観察期間も少な いものなのですけれども、例えば10ページの一番上の段落の試験では、intestinal carc inomaが見られたという所見、それからその下の方の第6段落ですか、「Groups of 24 w eanling 」というところですけれども、これでははっきりした腫瘍は出ておりません。 その下の一番最後の段落ですが、これでもintestinalの腫瘍が被験物質を投与したラッ トに出ていると。それから、11ページの一番上の段落ですけれども、これも1群50匹の ラットで行われた試験ですけれども、intestinal carcinomaが数は少ないですけれど も、被験物質を投与した動物に出ているというような変化があります。このintestinal の腫瘍が大腸あるいは小腸かはっきりわからないのですけれども、このデータと先ほど のマウスの遺伝毒性で「最近の知見」というのがさっき事務局でご紹介されましたけれ ども、ラットとマウスは違いますけれども、マウスの結腸でかなり赤色2号を投与した もので、DNAのダメージが起こっているというようなことを考えますと、大腸にひょ っとしたら何か起こっているのではないかというインプレッションが若干あります。  ただ、後ほど林先生にいろいろお聞きしたいのですが、このComet assay の信頼性が 発がんの標的性と必ずしも一致しないところにいろいろ陽性所見が出ているということ もありますので、その辺の信頼性が一つ問題になるかなということがあります。ですか ら、発がん性の試験からいいますと、ウィスターラットで行った発がん試験ではまず発 がん性はなかろうということですけれども、ただあれはウィスターラット一つのストレ インでやった試験でありまして、パラパラとああいうような大腸あるいは小腸にintesti nalな腫瘍が出たということを考えますと、ひょっとしたら弱いながら発がん性がこのス トレインではあるのではないかという危惧が若干いたします。以上です。 ○黒川座長  どうもありがとうございました。Comet assay についてはちょっと後でまとめてとい うことで、とりあえず発がん性試験、87年のペーパープラスいろいろ過去にもあったよ うですので、そちらの方を。福島先生、いかがでしょうか。 ○福島委員  今、廣瀬先生が申されたことで付け足すことは特別ありませんが、私も先ほど廣瀬先 生が言われました腸管のがんというものがパラパラと出ているということが、これは発 がん性がないにしても、ちょっと気になる変化だというふうには理解しました。  一般的に、どの系ということでもそうですけれども、ラットでのintestinal carcinom aの自然発生腫瘍というのは低いというのが一般的なデータですから、ここのところに出 ているのがどの程度かということ、もっといえばこの系でのバックグランドも一度調べ ると一番いいんですけれども、それは現実的には不可能だと思いますが、基本的に少し 出ているな、しかし発がん性はネガティブなのかなというのが、僕のこれを見させても らったときのインプレッションです。  もう一つ、これは後でお教えいただきたいのですが、このものに関する遺伝毒性に関 するデータをまとめて林先生にお知らせいただけるとありがたいと思います。 ○黒川座長  発がん性のことでもう少しご発言ありますか。  よろしいでしょうか。それでは、先ほどからリクエストみたいになっておりましたけ れども、林委員の方から遺伝毒性全般、まずは過去のデータを説明していただいて、今 度の新しい知見とComet assay ということでお願いします。 ○林委員  まず、遺伝毒性に関して、少し解説的なところから今回のデータまでということでお 話しさせていただきたいのですが、まず化学物質の遺伝毒性を評価する場合には、遺伝 子突然変異というものと染色体異常の誘発性というものについて検討するのが一般的で して、通常、それらは細菌ですとか、培養細胞を用いる試験管内での試験系、それから さらにはマウスとかラットが扱う個体内での染色体異常誘発性というようなものを評価 する方法がとられているわけです。  これは食品添加物ではないのですけれども、医薬品の場合には今言いましたように試 験管内での試験系で遺伝子突然変異と染色体異常試験、それからマウスなりラットを使 う齧歯類での個体を使った染色体異常試験というような組み合わせで評価するというこ とが行われておりまして、その3種類の試験ですべて陰性であったというようなことが 認められた場合は、その化学物質に遺伝毒性はないであろうという結論を下そうという のが国際的な合意事項というふうになっております。  ここで、今の赤色2号の遺伝毒性をもう一度眺め返してみたのですけれども、まず、 細菌を用いる復帰突然変異試験というのは幾つかデータがあります。そのうちの一つで は、かなり新しい敏感な試験菌株等も使われておりまして、これはすべてネガティブと いう結果が得られております。  それから、もう一つの哺乳類の培養細胞を用いる染色体異常試験の結果なのですけれ ども、これは大きく分けて2つ試験がありまして、その1つでは染色体異常の誘発とい うのが認められております。その再現性を見るために追試験が行われたのですが、そち らの方ではほとんど認められておりません。その違いが何かといいますと、認められた 方につきましては純度がそれほど高くなかった、91%程度の純度の標準品で試験をした 結果でして、2回目のものはもう少しそれの純度が上がったものを使った試験結果とい うことが報告されております。  それから、もう一つは、マウスの骨髄を用いた小核試験といって染色体異常の誘発性 を見る試験があるのですが、その試験の結果は陰性であったというような報告がござい ます。  今の3つのデータから総合的に考えられることは、ひょっとして試験管内では染色体 異常の誘発性があるかもわからないですけれども、それは動物の個体の中、体内ではほ とんど発現しないだろうというようなことが考えられます。  今回、出てきました新たなComet assay と呼ばれる単細胞ゲル電気泳動法という試験 は、細胞をバラバラにして、寒天の中に埋め込んでそれをさらに過酷な条件でアルカリ 処理して、DNAの二重鎖を一重鎖に戻してから電気泳動をするという方法で、これに よってDNAに傷がついたかどうかということを評価することができます。ただし、こ れはDNAに傷がついたかどうかという非常に初期のイベントを見ているだけでして、 これが即遺伝子突然変異だとか染色体異常の誘発ということを意味するものではありま せん。  Comet assay というもので検出されるDNAについた傷というものは、かなりの部分 が速やかに修復されます。DNA修復機構がありますので、それで修復されるような傷 を見ているのだということがあります。もう一つ、このComet 試験は比較的新しい試験 法でして、かなり感受性の高い試験だということは知られておりまして、それの一例と しまして、人がジョギングをしますと、要するに走るというエクササイズしたヒトの血 液細胞を見るだけでもこのComet 試験で陽性になってくるというくらい、非常に感度の 高い試験です。したがって、この試験をしまして陰性であった場合には非常に強く陰性 ということを自信を持っていえるのですが、陽性の結果が出たときに、その陽性の結果 は慎重に解釈しないといけない。false positiveというものもあり得る。実際に報告の 中でComet 試験で陽性になったけれども、遺伝子突然変異も染色体異常も出なかったと いうような報告もございます。  そのほかの遺伝子毒性試験に関してなのですが、これはかなり調べてみたのですが、 あまり報告はございません。ただ、一つ、赤色2号の代謝物についての報告がありまし て、それはマウスリンフォーマTK試験をやったときに、かなり高用量で少しポジティ ブになったという話と、それから同じものを使いまして、ラットの個体を使った優性致 死試験という、要するに次世代にその異常が伝わるかどうかというようなことを見る試 験なのですけれども、その試験を行った結果、それは陰性であったというようなこと で、先ほどと同じように試験管内では何か作用があるかもわからないですけれども、個 体内ではほとんど影響がなかろうというような結論になっております。  これらを総合的に考えますと、Comet 試験で陽性結果が出た事実というのはそれは認 めざるを得ないわけですけれども、問題点とすれば被験物質の純度の問題も一つあると 思いますし、あと試験の再現性というものがあると思うんです。先ほど資料が2つあが っていましたけれども、データ自身は同じですので、それで再現性があるということで はございません。  あとは、先ほども言いましたように、false negativeは少ないけれども、false posit iveというのはあり得る試験だということで、その解釈を気をつけないといけないという ふうに考えています。発がん性がほとんどなかったというような話なので、今回のこれ に関しても特段気をつけないといけないというような結果ではないかと思うのですが、 今の話にもありましたように、腸でintestinal tumorというようなことがあり、Comet a ssay の結果も結腸の粘膜上皮細胞でかなり出たということも考えあわせますと、この辺 のことに関してはもう少し検討する必要もあるかというふうには思います。  今のComet assay の結果だけで、今すぐに何か我々にadverse effectがあるというよ うなことは非常に考えにくいというふうに思います。以上でございます。 ○黒川座長  ありがとうございました。  ほかにこの遺伝毒性関係の先生方、いかがでしょうか。 ○長尾委員  私はComet assay というのはin vivo でのDNAダメージを知る一つの手法だと思う んです。発がん性に関しまして、マウスのストレインがちょっとよくわからないのです が、いろいろストレインがありまして、大腸がんにセンシティブとか、レジスタントと かいろいろストレインがありますので、その辺のことをよく考慮してもう少し検討する 必要があるだろうと思います。 ○黒川座長  動物実験の方は、ラットで有意差がないけれども、腸腫瘍が見られたということです ね。Comet はマウスでやっているということです。 ○長尾委員  マウスも使っていますね。P.3にマウスのことが書いてありますけれども、これで 特に……。マウスも大腸癌に高感受性の系統を使えば発がんする可能性があるかと思い ます。 ○黒川座長  ほかにございますか。  林先生、先ほどこのComet assay という方法は非常にセンシティブであるけれども、 逆に言うとセンシティブ過ぎてプラスをもってしてすぐ行動は起こせないということと 八戸の先生方がやられた実験でのピューリティの問題もあるということ、それから再現 性云々ということ……。  事務局として、今後の進め方についてご提案があれば。 ○事務局  今の林先生のご指摘であれば、まずサンプルの純度をはっきり確認したものでComet a ssay 試験の再試験をしてみるというのは一つの考え方だとは思っておりますが、林先生 のお話の前に出ていた腸管で動物で出ていた所見というのは、あれは基本的には有意差 がないというふうに理解してよろしいのでしょうか。それとも、先ほどのご指摘はそう いうところ、要はComet assay 試験からの後の組立をどういうふうに考えるのかという ところがあるように思っているのですが。 ○黒川座長  私の理解では「気になるけれども、別に統計的な有意差が出ている試験ではない」と いう解釈ですが、廣瀬先生、もう一回。 ○廣瀬委員  資料が不十分でして、単に腸管に腫瘍ができるというだけなんです。ですから、もと のオリジナルのペーパーに戻って、腸管が大腸であるのか、小腸であるのか、その辺か ら確かめないとまずいけないと思います。  もし、これが大腸に出ているということでしたら、やはり自然発生で大腸に腫瘍がで きるというのは非常に少ないものですから、ひょっとしたら大腸に何かの影響があるの ではないかということが疑われてきます。そういうことを考えますと、もしComet assay をもう一回するのでしたら、マウスよりラットでされた方がいい……。できるんでした っけ? ○林委員  できます。 ○廣瀬委員  そういう方がいいかなと思います。  それをやるにしても、あといろいろストレインがありますので、どういうストレイン を選ぶかということも重要になってくるかと思います。 ○事務局  確認でございますけれども、もしComet assay 試験をもう一回やろうとしたときに は、先ほどの林先生のお話では再現性を見ろという趣旨だったと思ったのですが、そう しますと再現性を見るのであればやはり同じ動物種の方がよろしいのでしょうか。 ○廣瀬委員  再現性ではそうですけれども、ただ標的が本当に腸にあるのかどうかということです ね。知見的に考えるにはラットの試験も必要かなと思います。これは、またちょっと先 の話ですが。 ○山添委員  佐々木さんの試験ですけれども、論文上、たしかこれが資料2−9にありまして、そ こにTokyo Kaseiで食用に使用するものの純度のものを使っているとあります。それと、 再現性についてはComet assay そのもののデータは多分そんなに揺るがないと思うんで す。ただ、先ほど林先生がおっしゃったように、本当に初期の障害だけを見ているもの で、時間の経過とともに障害が減っているということで、実際にはリペアーをおそらく されているので障害は減っているのだろうと思うんです。  ラットでも確かにできるのですが、僕もやったことがありますけれども、小腸の粘膜 組織をどういうふうにはぎとるかという、そのほんのわずかな傷の具合だけでもコント ロールと差が出にくくなるという、非常にテクニカルには微妙なところのあるassay だ と。その含みを考えておかないと、実験者が変われば値が非常に変わってしまうよう な、Comet assay のそこが弱点なのですけれども、そのことも考慮しておく必要がある かと思います。 ○黒川座長  ありがとうございました。どうぞ。 ○長尾委員  今の山添先生のおっしゃったことにちょっと異論があるのですが、リペアーの問題を 持ち出すのはちょっとまずいんだと思うんです。すべていろいろなassay 系で、リペ アーのない系を使ったりして感受性を上げていますので、やはりDNAダメージかあるかど うかというのだけを情報としてとるべきだと思うんです。 ○林委員  今の山添先生ので気がついたのですが、確かにここで出ている結腸とか、そういう粘 膜上皮の細胞のデータは非常に振れるということがやはり言われていまして、そういう 意味ではかなりきちんとした評価ができるところに頼んでデータをとる必要はあるので はないかというふうに思います。 ○黒川座長  私、ちょっとまとめますと、マウスの試験がこれが陽性に出ている、それが再現性試 験をするかどうかという問題点がありますし、それからラットはin vivo の試験で疑わ しい点があるからベターではないかということもあるけれども、方法論的に非常に難し い。  これを両方考えると、再現性とラットでちょっと欲張って、佐々木先生のやられたよ うな再現性も見るけれども、同時にといいますか、ラットの試験もちょっと問題がある けれども、やるということは時間とお金の関係でどうなのか。事務局、いかがでしょ う。 ○事務局  さらに詳細な計画につきましては、申しわけございませんが、林先生などにご相談さ せていただいて、プロトコールを詰めた上で実施することは可能だと考えています。 ○黒川座長  今言ったような欲張ったプランでもいいかなということですね。いかがでしょう、そ ういうことで。  極端なことを言えば、発がん性試験というのはそこに行く前にいろいろやるというの がこの頃当然ですので、その辺でそのデータがまたできたら、皆様にご審議いただくと いう形かと思います。 ○井上委員  座長が今まとめられましたので、基本的にはそういうことだと思うのですが、現段階 の認識を明確にしておきたいと思うのですが、Comet assay を含めた遺伝毒性の結果を 精査する必要がある。それが出る段階まではこのcarcinogenicityについては少なくとも 有意差はない。しかしながら、若干の危惧が有意差のない範囲で認められる。それはリ スクアセスメントの課題としては現段階では発がん性として認識する段階にはないとい う考え方でよろしゅうございますか。 ○福島委員  今、井上先生が言われたのは、発がん性を認識する段階ではないという意味は、発が ん性がないというふうに理解していいわけですか。僕は、これは発がん性がないと理解 しております。 ○井上委員  そういう意味で申し上げました。 ○黒川座長  ちょうど1時間たちましたが、もう一件ございますので、今申し上げたように、ラッ ト、マウスでComet assay をまずやってみる、詳しいことは林委員を中心として考える ということにさせていただいてよろしいでしょうか。               〔「はい」という声あり〕 ○黒川座長  ありがとうございます。それでは、臭素酸カリウムに移りたいと思いますが、どうぞ ご説明をお願いいたします。 ○事務局  資料3に基づきまして、臭素酸カリウムについてご説明申し上げます。  まず経緯について簡単にご説明いたしますと、本品についても昭和28年に食品添加物 として指定されております。使用基準としましては、魚肉ねり製品と小麦粉にここにあ るような使用基準が設定されておりました。  その後、昭和57年(1982年)でございますが、我が国で実施されたラットの発がん性 試験で臭素酸カリウムの発がん性が認められたということから、当時の食品衛生調査会 で審議を経まして、使用基準の改正を行っております。その内容としましてはパン以外 への使用を禁止し、パンにおいても小麦粉に30 ppm以下の添加、それから最終食品には 残存してはならないという使用基準の改正が行われております。  その後、国際評価でございますけれども、1989年にJECFAにおいてADIを設定 できない。それから、最終製品に残存すべきではないという評価を得ております。た だ、当時はまだ小麦粉への使用量は60ppm以下まで添加していいという評価でございま した。  その後、平成2年(1990年)でございますが、イギリスにおきまして市販のパンを使 った分析結果から臭素酸カリウムが最終食品、パンに残留しないという確証が得られな いという理由から、イギリスにおいて使用の禁止措置をとっております。  92年にはJECFAにおきまして、このイギリスの措置をとったデータも踏まえて評 価した結果、パンへの使用を含め、臭素酸カリウムの使用は適切ではないという評価を 下しております。我が国におきましては、平成9年(1997年)におきまして、科学技術 の進歩に対応しましてパン中の臭素酸カリウムの分析法を改定しております。我が国に おける現在の状況でございますが、小麦粉改良剤という形で使われております。使用基 準としましては、パン以外の食品に使用してはならない。臭素酸カリウムの使用量は小 麦粉1キロにつき、0.03グラム以下でなければならない。かつ最終食品の完成前に分解 又は除去しなければならないという形になっております。  ここで、臭素酸カリウムについてなじみのない先生もいらっしゃるかもしれませんの で、簡単にどういうものかということをご説明いたしますが、資料3の6ページの参考 資料をお開きいただきたいと思います。  これは事務局でまとめさせていただいた資料でございますが、製パンにおける酸化剤 の役割ということを記載させていただいております。イーストを醗酵させて焼成するタ イプのパンでは、基本的には酸化剤が必要というふうに言われております。酸化剤の目 的はここに書いてありますような目的で使われておりまして、小麦粉の強度を増すこと により、パンの容積を膨らませ、食感を改良するというような目的があるようでござい ます。  酸化剤としましては、反応速度の違いによりまして、大きく即効型と遅効型という2 つに分けられるようでございます。即効型としましては、ヨウ素酸、アスコルビン酸、 アゾジカルボナミド等がございまして、もちろんのことながら生地の早い段階から効果 を発揮する。遅効型については、臭素酸カリウムのみということのようでございます が、パンの生成の後の方で効果を発揮するというふうに言われております。  遅効型は臭素酸カリウムしかないということを今申し上げましたが、それを使わなか った場合にどうするかということでございますが、アスコルビン酸等が代替として用い られるようでございます。この場合には、基本的には即効型でございますので、酸化作 用の発現を遅らせるための工夫としまして、高融点の油脂によるコーティング処理、そ れから生地物性の改良等を施す必要があるというふうに聞いております。ただ、アスコ ルビン酸では製造工程にブレが生じた場合の醗酵安定性に欠けるとか、アスコルビン酸 がそもそも酸化剤、還元剤、両方の作用を有することから、最適化の条件の判断が難し いといったような問題を含んでいるというふうに聞いております。  製パンの方法と酸化剤の関係について、その下の方に書かせていただいております が、大きくパンの製法は4分類あるようでございます。従来の方法として、中種生地法 という一番左のものから、生地醗酵省略法という一番右端のチョーリーウッド法といっ た製パン法があるようでございますけれども、それの製法と酸化剤の必要量を下に書か せていただきましたが、一番左の中種生地法が一番少なく、一番右のチョーリーウッド 法に行くほど酸化剤の必要量は多くなるというような傾向があるようでございます。  現在、日本とか諸外国でのパンの製法としましては、日本や米国においては酸化剤の 必要量が一番少ない中種生地法が主流のようでございまして、一方、臭素酸カリウムが 検出されたと言われていますイギリスにおきましてはチョーリーウッド法が主流でござ いまして、そういったような製パンの背景の違いがあるというふうに言われておりま す。  臭素酸カリウムの添加量以外に残留臭素を減少させる要因としましては、焼く時間と か焼く温度、その他の添加剤の併用が考えられるというふうに言われております。  また、資料3の1ページにお戻りいただければと思います。  欧米の状況でございますけれども、(1)としてアメリカの状況でございますが、ア メリカにおいては使用可能という状況になっております。パン生地調整剤及び小麦粉改 良剤として実際に使用されておりまして、使用するときの添加量としましては50 ppm以 下という許容量が設定されているようでございます。なお、FDAにおきましては、パ ン中の臭素酸残存量の安全レベルというのを20 ppb以下というふうに評価しているよう でございまして、この値を超えないように残留臭素酸のモニタリングが行われていると いうふうに聞いております。  (2)でございますが、EUにおいては使用禁止という措置がとられております。  4番でございますけれども、JECFAにおける安全性評価の概略というのをここか ら記載させていただいております。  合計4回、JECFAにおいては評価を受けております。順を追ってご説明いたしま すが、(1)としまして1983年第27回会合における評価がございます。資料といたしま しては3−1、これがJECFAのレポートのサマリーでございまして、資料3−2と しましてそれのもう少し詳細な試験方法及び結果が記載されたレポートという構成にな っております。  まず、1983年の評価でございますけれども、この段階で飲料水とともに摂取したとき のラットにおける発がん性試験成績を評価しているようでございます。ずっと省略しま して、一番下のところでございますけれども、結論としまして下から3行目でございま すけれども、委員会としましては、臭素酸カリウム処理した小麦粉から調製したパン製 品には臭素酸カリウムは残留しないという条件とともに、以前に設定した小麦粉処理剤 としての臭素酸カリウムの許容量を暫定最大許容量として、小麦粉1kgにつき75mgに変 更するという決定をしております。  3ページ目に移りまして、(2)の1989年の評価、第33回の会合でございますけれど も、資料としましては3−3、3−4をつけさせていただいております。今回の89年の3 3回会合においての評価でございますけれども、委員会としましては発がん性に関するそ の後の得られた新規のデータ、それからそれ以前の研究からさらに高感度の手法で実施 されたパン小麦粉中の臭素酸の残留に関する新規の研究結果、こういったような新しい データを評価したようでございます。  残留に関する新規試験成績におきましては、小麦粉に対して62.5mg/kgのレベルまで 使用した場合には、最終製品であるパンに臭素酸は検出されない。分解産物は臭化物で あるということが同定されたようでございますが、75mg/kg以上の処理濃度ではパン中 に残留臭素酸が検出されたというような結果になっているようでございます。  こういったような結果も踏まえ、委員会の評価としましてはパン製造時の小麦粉処理 に関する許容レベルを以前の75mgまでという許容量から0〜60mgまでに引き下げており ます。なお、この結論を導くにあたりまして、委員会としましてはマウス及びラットに おける長期投与試験で臭素酸処理した小麦から製造した製品では毒性所見は認められて いないというような結果にも着目しているというふうに記載しております。  それから、(3)1992年評価、第39回会合での評価でございますけれども、添付資料 としては3−5と3−6という形でつけさせていただいております。92年の評価におき ましては、新しい毒性学的データが評価されております。それによりますと、その当時 新しく実施された試験としまして、慢性毒性/発がん性併合試験の結果が得られたよう でございまして、その結果によりますとラットにおいて腎細胞腫瘍、腹膜中皮腫、甲状 腺ろ胞細胞腫瘍が発現した。ハムスターにおいては腎細胞腫瘍の発現率のわずかな増加 が認められたというような結果になっているようでございます。  委員会としましては、これらの試験結果、それから従来から得られているin vivo 、i n vitroでの変異原性試験結果に基づきまして、臭素酸カリウムについては遺伝毒性発が ん性物質であるということを結論づけております。  このときの会合では、新しい高感度の検出方法を用いた残留臭素酸のデータも検討し ているようでございますが、残念ながらその検出方法についてはお示ししました資料3 −6の中では記載されておりません。ただ、この新しい高感度の検出方法では、小麦粉 処理剤として許容レベル範囲、すなわち当時60mg/kgでございますけれども、許容レベ ル範囲内での使用であっても、パン中に臭素酸が検出されたという結果でございます。  委員会の結論としましては、新しい安全性データ、それから臭素酸の残留に関する新 規データに基づきまして、委員会としては小麦粉処理剤としての臭素酸カリウムの使用 は適切ではないという結論を出しております。パン製造での小麦粉処理に関する許容量 もしたがいまして削除されているということでございます。  最後、1995年の評価でございますが、誤植がございまして、これは第42回会合と書か せていただいておりますが、44回会合の間違いでございます。お詫びして訂正いたしま す。資料としましては3−7をつけさせていただいております。  95年の評価におきましては、前段の安全性の部分につきましては、基本的に臭素酸カ リウムが遺伝毒性発がん物質であるという結論を支持しております。今回の95年の会合 におきましては、後段の部分でございますけれども、パン中の臭素酸を測定するために 開発された分析法GC/MS法、それからICP−MS法を用いた、新しいより高感度 の分析法による結果を入手しております。この分析結果というのがイギリスで臭素酸カ リウムを禁止したときに用いた分析法と同じ結果でございますけれども、この分析結果 をもってJECFAの方で評価したわけでございますが、この結果からパン中に臭素酸 の残存がやはり検出されたということで、結論としましては、臭素酸カリウムは遺伝毒 性及び発がん性を有し、臭素酸カリウム処理した小麦粉から製造したパン中には残留物 が存在する可能性があることから、JECFAとしましては39回会合の結論、すなわち パンでは臭素酸カリウムの使用は適切ではないという結論を引き続き支持するという結 論を出しているようでございます。  最後、5番目としまして、分析法のことが問題になってきているわけでございますの で、その分析法についてどうなっているかということをまとめて記載させていただいて おります。  (1)でございますけれども、我が国における現在の分析法に関する資料をつけさせ ていただきました。資料としましては3−8、3−9という形になっています。資料3 −8は、日本の分析法を検討するに当たってのいろいろな基礎条件といいますか、条件 決定に当たるいろいろな基礎データを提供するような文献というふうにご理解いただけ ればよろしいかと思います。  それから、3−9は実際に国立衛生試験所(現:国立医薬品食品衛生研究所)の方で ご検討いただきました結果を公表した文献という形になっております。我が国における 現在の分析方法でございますけれども、高速液体クロマトグラフ法による測定法が採用 されております。これは先ほど経緯のところでご説明いたしましたけれども、平成9年 に制定された方法でございまして、平成12年、昨年でございますけれども、カラムの内 容を一部変更させていただいております。高速液体クロマトグラフ法の測定法の概略を 簡単にご説明しますと、臭素酸イオンを液体クロマトグラフィにより分離して、その 後、ポストカラム法によりo−ジアニシジンと反応発色させ、定量するという方法が採 用されております。この方法による検出限界としましては10 ppbという値となっており ます。  1枚めくっていただきまして、アメリカにおける分析法でございますけれども、これ は日本と同様の測定法が現在も採用されているというふうに理解しております。  最後に、(3)としまして、イギリスで検出されたということで、これはJECFA でも評価されたデータでございますけれども、英国における分析法としましては一つは GC−ECD法と、もう一つ、HPLC−ICP−MS法というものがこの文献の中で は出ております。この分析法のことを記載したイギリスのサンプルを実験調査した結果 も含めて資料3−10に記載させていただいております。資料3−10の概略でございます けれども、2つの方法がありまして、GC−ECD法とHPLC−ICP−MS法でご ざいますけれども、1989年にイギリスの小売りパンのサンプルの調査を実施した際に は、GC−ECD法で検出しているということでございます。実際の検出結果でござい ますけれども、臭素酸は未包装のパンにおいては6検体をやったわけですが、これです べて検出された。その中央値は35 ppb、レンジとしましては17−317 ppbという結果で ございます。  一方、包装されたパンにつきましては、22検体やったわけでございますけれども、そ のうち7検体で臭素酸が検出されたという結果になっているようでございます。その中 央値としましては、12 ppb未満、レンジとしましては12未満から238 ppbという結果に なっているようでございます。  これはGC−ECD法の場合には、臭素酸を揮発性の誘導体に変えて検出しておりま すので、本当に測っているものが臭素酸と対応するかどうかということを別途確認する 必要がございまして、それの確認法という意味も込めてICP−MS法で同定確認を行 っているわけでございます。その方法を行った結果、結論としましては今回イギリスで 計った結果はきちんと臭素酸を測っていることが確認されていると記載されておりま す。当時のサンプルパンを計るときの検出限界はGC−ECD法による検出限界であり ます12 ppbであったということになろうかと思います。  以上、長くなりましたけれども、よろしくご審議のほどをお願いいたします。 ○黒川座長  ありがとうございました。  お気づきのように、今回ここで審議するということは、いわゆる毒性学的データで新 しい問題ができたということよりは、そうではなくて分析法に関して最新の情報もあ る。それを踏まえてどうしようかということかと思いますが、まずご質問や何かござい ましたら。 ○廣瀬委員  この臭素酸カリウムですが、ここでは厚生労働省ということでパンの残留問題が問題 になっていますけれども、そのほかにパーマネントの溶液中に非常にたくさん含まれて いるということもありますし、また水道水、特にオゾンで殺菌する場合に水道水の中に も多く含まれてくるということもいろいろ書かれておりますので、ここでいろいろ検討 すると同時にほかの省庁とも情報を交換して、最終的にいろいろ判断していただきたい なということがあります。 ○黒川座長  ほかにいかがでしょうか。 ○井上委員  臭素酸カリウムは、発がん性が認められるということになっているわけですが、この 発がん性は黒川先生等も長年ご研究になってこられた遺伝子傷害性の発がん物質として 認識されているわけです。現在、ここで討議されておりますのが、廣瀬先生もご指摘に なったように食品ですので、残留量がゼロが基本になるわけですが、検出限界との関係 あるいはそれ以外の認識等の関係で、このものの食品の場合に対象になりませんけれど も、形式的にTDIのようなものを求めるとするとどのくらいの値になるのかというこ とはわかりますでしょうか。 ○事務局  TDIという形で計算した形のものはございませんけれども、今回お示ししました資 料3の中の2ページで、FDAでこのものの安全レベルをどう考えているかということ がございます。これはTDIという閾値のある化学物質についての安全性の考え方を採 用しているわけではどうやらなさそうなのでございますけれども、FDAの考え方とし ましては、許容安全レベルを20 ppb以下というふうな値を考えているようでございま す。これはVSDと申しましょうか、そういう考え方で100万分の1以下の危険性であ れば問題にする必要はないだろうという考えに基づいて、20 ppb以下という値を一つの 値というふうに評価しているようでございます。 ○黒川座長  ありがとうございました。先ほど申し上げたように分析法ということで、今度新しい 進展があるというふうに聞いておりますけれども、その辺ご専門の石綿委員の方からち ょっとご説明願えますか。 ○石綿委員  イギリスで臭素酸の残存が認められたということで12 ppb検出限界ということでやっ ているわけですけれども、日本の方法は10 ppbで今現在やっております。そう数は多く ないのですが、市販品では今のところまだ残存していたという結果は得ておりません。 ただ、試作品、資料でいいますと3−9の6ページ、食品衛生研究のコピーですけれど も、試作したパンで結果を見ますと、0 ppmでは当然不検出、それから15 ppmでも不検 出、これは添加量ですが、小麦粉に対して臭素酸カリウムを30 ppm添加すると、下の方 のロールパンあたりで残存が認められる。これはあくまでも試作したパンであります が、この場合のNDが10 ppbということであります。ただ、10 ppbで検出されないとい うことでありますが、少し方法を改良して、さらに感度を上げてその下あたり、例えば 感度を倍に上げれば5 ppbまでいくわけですけれども、そういうところで残存が実際あ るのかないのかというようなことはさらに今後必要になるのではないかというふうに考 えております。  ただ、既にかなり感度の高いところですので、また方法を改良するのは大変なことだ ろうと思いますが、感度を少し上げて市販のパンなどをもう一度サーベイしてみる必要 はあるかと存じます。 ○黒川座長  現在が、日本で10 ppb、それを今5くらいとおっしゃったのですか。 ○石綿委員  5以下、数 ppb……。残存してはならないということですので。 ○黒川座長  そうすると、世界で最も感度の高い方法を開発するべきかなということですか。 ○石綿委員  そうですね。文献としては3−8の資料の1ページ目ですが、これは日本の報告です けれども、左側にサマリーがあって、ちょうどその真ん中あたりですか、「method had a detection limit of 3ng/g 」というような報告も出ております。これは我々より感度 の高い、基本的には方法は同じですが、少し改良することによってこの辺の感度までは もっていける可能性があるのではなかろうかというふうに感じます。 ○黒川座長  その辺に関して、ご専門の先生方、どうでしょうか。食品添加物そのものということ で。 ○米谷委員  先ほどの石綿委員の説明の追加なのですが、資料3−9の6ページのデータで石綿委 員から説明させていただきましたけれども、4ページの表1にHPLCのデータがあり ます。表2はガスクロの方だと思いますけれども、両方比べていただいて、若干大小は ありますけれども、傾向は同じということで、ちゃんと臭素酸を検出しているのだとい うことだと思います。  それから、今後如何に検出限界を下げていくかということなのですけれども、3−8 にありますように、これで分けて、あと検出をいかに高感度にするかというのが一つの 課題だと思います。世界的にもいろいろやっておりますし、米国ではFDAなどもやっ ております。FDAでやっているドクターワーナーが以前うちの食品添加物部で1年間 一緒に研究をしていた間柄ですので、そのあたりと連絡をとりあって、お互いに検出限 界を下げるような努力はできるかと思います。  あと、HPLCや、GCで、ほかの検出方法ではどうかということなんですけれど も、HPLCで分けて最後に検出するときに、一つ文献が出ていますけれども、IC P−MSの方に持っていく。ICP−MSですと、普及型の四重極型がよく使われてき ましたけれども、最近では高分解の二重収束のさらに感度がいいやつもありますので、 それであればもう少し検出限界は下がるかと思います。  あと可能性としては、キャピラリー電気泳動とか、そっちの方へ持っていってどのく らい下がるかなのですが、そちらの方ですと定量性に逆に問題があるので、現段階以上 になる保証はありませんけれども、幾つかトライする方法はあるかと思います。以上で す。 ○山崎部会長  念のために伺いたいんですが、今、例えばHPLCとか、GCとか、あるいはMSそ のものの改良で感度が上がっていく可能性があるわけですね。その前の試料の調製とい うところでの影響は、この感度を上げていくというところではあまり要因にはならない のでしょうか。 ○米谷委員  そこが、今回、パンの中の臭素酸を測る上でネックになっておりまして、当然、パン ですので、たんぱくがある、あるいは食塩からの塩素が入っている、それが妨害してく るので前処理の方が大変で、あとの方はきれいなサンプルさえできれば機械に頼って検 出感度を下げるという方向にいけます。  ですから、前処理の方が困難で、そちらの方が課題になるかもしれません。 ○山崎部会長  先ほどの石綿先生のデータでも山型パンと食パンで検出の感度が違うみたいなところ がありましたね。私は、素人考えで、ああいうパンの形態で前処理の段階での影響が出 てこないかなというのをちょっと感じたものですから、今、質問申し上げたわけです が。 ○石綿委員  そういう可能性はあると思います。ただ、今、資料9のページ6の表は食パン、山型 パン、ロールパンと。サンプル処理による検出云々ではなくて、検出感度はいずれも10 ppbでやっておりますから、その影響はないと思います。ただ、なぜ結果が違ってくる か、臭素酸が残ってくるかというと、焼く時間ないしは焼く温度。時間が長いほど、温 度が高いほど、臭素酸が分解しやすいということで、逆にいえばロールパンみたいに小 さいパンは比較的低温で短時間なので残る可能性があるというふうに私は解釈しており ます。  それで、今、山崎先生がおっしゃられましたように、これから感度を上げる分析法を 開発するとなると、パンと一口にいってもいろいろなパンがありますので、それによっ てパンの種類によってなかなか感度を上げられないものもあるかもしれません。最終的 なパン、食べられる状態のパンではなくて、食べられる直前までもってきて冷凍してい るパン、いわゆる生のパンですとグルテンがまだ粘性がありますので、下手に水を加え ると全体がドロッとしちゃって、感度が10分の1くらいに逆に落ちてしまうというよう なこともあるかと思います。方法を開発していく上でその辺も念頭に置いて、この席で 「感度の高い方法を開発できます」というのは、やってみないとという点はあると思い ますが、その点を検討していけばいいのではないかと思います。 ○西島委員  私どもも大体この食品衛生研究と相前後して同じようなことをやって、同じような結 果を得ているのですね。そのときの経験ですと、パンの焼き方によって非常にデータが ふらつくような気がしました。  食品衛生学雑誌に既に出してあるのは、大体同じような結果を出してあると思うので すが、食塩の多いのは非常に難しいですね。それと、もう一つ、こういうことをやると きには既に私ども今までより感度を高く、正確にということで飛びついてしまうのです が、果たしてどの程度までをやる必要があるか、そこがいつも問題になるわけです。ほ かの自然界にあるようなものを、こういうものだけを感度高く、高くということで今ま ではやっていましたけれども、どのくらいまでが必要かということを常に悩みながら、 つい感度がいいのが出ると、見境もなく学会に発表していたんですが、そこら辺も非常 に問題かなという気がします、感度競争になるんですね。その値が意味があるかどう か。  ですから、逆に、ここまでは最低必要だから、努力目標で検討してよと言われた方が 非常にありがたいと思うんです。これは恐らくこういうことをやっている、ほとんどみ んな同じような悩みを持ちながら感度競争になっているような気がします。ですから、 5 ppbまでやらなければいけないのか、どうしてももっと下げる必要があるのかという ことがあると、それに合わせてみんな試験方法をつくっていくと思うんです。 ○黒川座長  その辺、事務局、どうでしょうか。  その前に市販のパンというけれども、何となく国内だけと思っているけれども、聞く ところによるとハンバーガーチェーンなんていうのはパンを輸入している。輸入のパン もあるわけでしょう。そういうところのデータはどうなんですか。 ○事務局  ご指摘のように輸入のパンは確かにございまして、それについて検証して分析した結 果としましては、検出されていないという結果が出ております。本日、そのデータにつ いてはお示ししておりませんけれども、そういう結果になっております。 ○成田委員  市販のパンからは全然出ていなくて、試作品の方からは高濃度が出ているのですけれ ども、パンを長くおいてしまうと出にくいのか、それとも使用実態がどの辺のところで 使っているのかというのがわかれば教えていただきたいと思います。 ○黒川座長  臭素酸カリウムそのものの使用実態ですね。先ほど、これはイフェクティブなもので あるというお話もあって、代替がどの程度できるのかとか、その辺がちょっと。 ○成田委員  60 ppmいっぱい使っているのか、それともずっと低いところを使っているのか、それ から使ってもパンをしばらく放置すると出なくなってしまうのか、その辺がわかればと 思います。 ○西島委員  もう一つお聞きしたいのですが、何年くらい前だったでしょうか、やはり臭素酸が問 題になって、「うちは臭素酸を使っていません」という小さなパン屋さんでも貼り紙を 出すような、異常な事態があったのですが、そのときにパンが本当にまずくなったんで すね。本当にまずくなりました、どのパンを買ってもまずくなりまして、その代替があ るかどうかというのが非常に気になるところなんですね。  今、日本のメーカーで臭素酸を使わなくても同じくらいのおいしいパンができるのか どうか、そこもぜひ教えていただければと思います。 ○事務局  まず、成田委員のご指摘で実際に何 ppm加えて使われているかということでございま すが、申しわけございませんが、残念ながら私どもの方で具体的に何 ppm使っていると か、そういうデータは持ち合わせておりません。  西島委員からのご指摘とも関係してくるわけでございますけれども、確かに平成9年 のころでございますけれども、臭素酸カリウムが検出されたという事件がございまし て、そのこともあってですが、日本の大手のパンの工業会ですとか、イースト工業会で すとか、そういう大手のパン屋さんが加盟している団体におきましては、臭素酸カリウ ムについての使用を自粛するということを申し合わせをしているようであります。現在 もその申し合せについては生きているといいますか、その申し合せを守っているという ふうに私どもは聞いております。  大手のパン屋さんということで、小さなパン屋さんを含めてすべてのパン屋さんが工 業会とかそういうところに加盟しているわけではないということ、輸入のものについて はもちろんのことながら、申合せの対象になってまいりませんので、結論からいいます と、使っていないという話もありますが、使っているかもしれない、使って全然問題な いわけでございますので、使っているということも考えられます。ただ、最終的には残 っていないということを、実際の市販のパンを使ってやった結果を見て残っていないと いうことを確認するというのが現状でございます。 ○事務局  先ほど感度のお話のご指摘がございましたが、仮に正式に話が進みましたら、今でも 要は公定の試験法ということになりますので、感度競争というお言葉もありましたが、 既に今ある学問水準で可能であって、公の試験法として確立できるくらいのものであれ ば、これまでもできるだけいい試験法を取り入れていきたいということで添加物の試験 法をやってきている経緯がございます。  ですから、感度はいいんだけれども、日本で1カ所か2カ所しかできないような測定 方法とか、そういうのはこれまでも公定の試験法としてはまだ採用できないだろうとい うことになってきているかと思いますけれども、一定の水準で学問的に見て、ここら辺 まではできるということであれば、そういう範囲の中ではできるだけ感度がいいものを やっておくべきだと思います。あとはそれぞれの試験法によってどちらをとるかという ことはありまして、再現性だとか、例えば、簡便だから、感度は悪いのだけれども、簡 便でそれで事実上問題ないということであればというお話はありますが、本件の場合に は、基本的に最終に残らないということを確認しようということでございますので、可 能であればやはり感度は上げた方がいいのではないかという議論にどうしてもなってし まうところがございます。 ○山崎部会長  今の事務局のご発言のつけ足しのようになりますが、私もこれは残存しないというこ とが大切なことだと思うんです。ですから、感度はできるだけ普遍的に使える範囲で高 感度のものが開発されるべきだと。それが公定の測定法として定着すべきだと思うんで す。  先ほど西島先生の方から自然界にあるもの、無意味ではないかというふうなご発言が ありますけれども、やはり人為的に加えるものについて、その食品としては残存しない というのは原則的なルールだというふうに私は考えております。ほかにあるから、感度 のいい測定法をつくるというのは無意味ではないかというふうなことは、この場合には 通用しないのではないか。ちょっと固いことを申し上げましたが、そういうふうに私は 考えておりますので、意見として申し上げたわけです。 ○井上委員  先ほどの事務局のお話に関連して、毒性についての私の考えを申し述べたいと思いま すが、これは食品添加物という性質がありますので、今、山崎先生のおっしゃられたよ うな位置づけになるわけですが、毒性そのものに関する限り、現在新しい問題とすべき ものはないという、今日までそういう認識できたということをまず1点確認しておきた いと思います。しかしながら、検出法が向上したという新たな段階に立ち至った。これ に基づいてどう考えるかということだというふうに理解いたしております。以上、確認 いたしたいと思います。 ○黒川座長  時間もあれですから、山崎先生もおっしゃったことの繰り返しですけれども、公定法 として可能な限りといいますか、リーズナブルなレベルでなるべく低いという新法をま ず開発するということで、現時点で市販されているパンにどのくらい残留、していない 方がいいのですが、それのサーベイも先にやるというのが私の感想なのですが、事務 局、いかがですか。 ○事務局  はい、そのようにいたしたいと思います。 ○福島委員  この問題とは外れるのですが、今、山崎先生がいわれた人為的なものに関しては、い わゆる自然界にあるものとは別の対応をすべきだと言われましたが、僕はちょっと違っ た意見を持っておりまして、最初に井上委員がTDIですか、今回の臭素酸カリウムの 発がん強度のことを聞かれまして、それとそれから残留性の問題を考えてみると、我々 はやはり自然界には確かに人工的なもののみならず、カビ毒というような汚染物質とし ての発がん物質、これは非常に強いわけですけれども、そういうのがいっぱいあるわけ ですね。それらに対しましても、たしか僕の理解ですと、検出限界以下であるとという ような状況であると思います。  そうすると、人工的だから、それから自然界にあるからという対応を分けようという 考え方ではむしろなくて。 ○山崎部会長  先生、途中ですけれども、自然界のものと人工的なものというふうな意味で申し上げ たのではなくて、カビ毒の場合は自然に混入してくるおそれがありますね、食品を貯蔵 したような場合。この場合には、製パン工程の中で加えるものですね。そういう意味で の区別を私は申し上げた。混入とわざわざ添加するという、そこの差で申し上げたわけ です。 ○福島委員  わかりました。それはそれにしましても、僕は全体的な考え方として、検出限界とい うもので当然判断するわけですけれども、これからはある物質があった場合に、発がん 性の強さというのは一体全体どのくらいなんだと。そして、実際に我々がそれを使う場 合には量はどうなんだとか、そこら辺のバランスを考えて対応していく必要があるので はないかと思います。 ○山崎部会長  それはその通りでしょう。 ○黒川座長  これは福島先生のライフワーク的なあれで、私もいつも拝聴しているのですが、この 食品添加物に関しては今山崎先生がおっしゃられたように、人為的に添加しているとい うことで、この際は検出されないような方向へいきたいというふうに私は思っておりま す。  ですから、先ほど事務局がまとめられたような方向で、この臭素酸カリウムに対応し ていきたいと思っております。よろしいでしょうか。  それでは、臭素酸カリウム、食用赤色2号について論議が終わったと思いますけれど も、ほかに事務局何かありますか。 ○事務局  本日いただきましたご意見として、まず赤色2号につきましては、先ほど申しました ように発がん性はないという判断ではございますが、遺伝毒性試験としてのComet 試験 陽性のデータがありますので、この再現性の確認、それからほかの毒性試験と比較する という観点からマウスとラットでのComet 試験を実施させていただきまして、その結果 をまたこちらの部会の方にお持ちしたいと思っております。  それから、臭素酸カリウムにつきましても分析法の検討、市販品のサーベイ等、こち らは最終段階になるかどうかわかりませんが、一段落つきましたところでまた部会の方 にご報告といいますか、その結果をお持ちしたいと思っております。 ○黒川座長  それでは、ほかにないようですので、今日は長時間ありがとうございました。                                     −了− 照会先:医薬局食品保健部基準課 吉田、中井     電話(代表)03−5253−1111       (内線)2489、2453