01/09/03 女性の年金の在り方検討会第10回議事録 女性のライフスタイルの変化等に対応した         年金の在り方に関する検討会               第10回議事録 平成13年9月3日(月)             於 全国都市会館 第2会議室 ○袖井座長  それでは、定刻になりましたので、ただいまから「女性のライフスタイルの変化等に 対応した年金の在り方に関する検討会」を開催いたします。  本日は大変お忙しい中、また雨の中をお集まりいただきまして、誠にありがとうござ います。また、傍聴の方もたくさんいらっしゃって、大変ありがたいことだと思いま す。  それでは、事務局より委員の出席状況を報告していただきたいと思います。 ○企画官  御報告申し上げます。本日は今井委員と藤野委員が所用のため欠席しておられます。 それから、住田委員がまだいらしていない状況でございます。その他の委員の方は全員 出席しておられます。  以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございます。  それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は、これまで御議論いただいた内容 や委員の皆さんから御報告いただいた内容等を踏まえまして、この検討会としての考え 方の大きな方向性、総論に当たるようなものについての御議論をお願いしたいと思いま す。  いろいろな議論がございますが、個々の論点ごとの検討は後日に譲ることとして、本 日はこれまでの議論を踏まえて事務局に整理していただいた「『女性と年金』問題を検 討していく上での諸論点(案)」を基に、女性のライフスタイルの変化等を踏まえた御 議論をしていただきたいと考えております。  今まで随分たくさんの御意見が出ておりましたので、それをまとめるのはなかなか困 難かと思いますけれども、事務局がまとめていただきましたので、これまでの検討会で の検討内容と女性のライフスタイルの変化等を踏まえた女性と年金の問題に関してアウ トライン的なものをお話しいただいて、そして皆様に御議論していただきたいと思いま す。  その際には、女性のライフスタイルの変化とか多様化に関する数字的なものや、デー タも提供していただけますけれども、そういう細かい統計数字とか、そういうことより も、もう少し骨太といいますか、大きな骨格について年金制度全体の方向性とか、年金 水準とか、年金水準を考える際のモデルをどのように考えるか、あるいは世帯、あるい は個人に置くのかというようなことを中心に議論をしたいと考えております。  一応、今日はその第1回目ということですから、非常に大きな枠組みといいますか、 そういうことを皆様に議論していただきたいと思います。  それでは、事務局から資料の御説明をお願いいたします。 ○年金課長補佐  本日は3種類の資料を準備いたしました。まず、資料の1番目が「これまでの議論の 概要」ですが、これまで9回ありました検討会の議事録から課題を整理するためにピッ クアップをしたものでございます。それから、資料の2番目でございますが、「『女性 と年金問題』を検討していく上での諸論点(案)」という資料を準備しております。こ れは資料1の「これまでの議論の概要」の中から課題を抽出をして事務局なりに整理を 試みたものでございます。それから、資料3でございますが、「女性のライフスタイル の変化・多様化と年金制度」ということでございます。これまで、様々な議論があった わけでございますけれども、こういう大きな総論的な議論をしていく上で、女性のライ フスタイルの変化・多様化というものがどういうふうにとらえられ、また年金制度が今 それをどういうふうにとらえているかということについてまとめてみたものでございま す。この順番で説明をさせていただきます。  まず、資料1「これまでの議論の概要」からお話を申し上げます。これは先ほど御説 明いたしましたように、9回の議論について基本的な考え方、それから第3号被保険者 の制度、それから短時間労働者への適用の問題、育児期間の取扱いの問題、離婚時の年 金分割の問題、遺族年金の問題と、それぞれ論点ごとに今までの議論の中で主な発言を 整理をしたものでございます。  最初の基本的な考え方についてということですが、大きくまとめてみますと、年金制 度の要請として必要な給付を行うということが求められますが、その中でも公平性です とか中立性といったものをどういうふうに配慮していくか。特に、環境として女性の社 会進出が進んでいる、あるいは将来に向けて労働力確保の必要性がある、あるいは働き 方が非常に多様になってきているということの中で、公平性とか中立性というものを一 体どのように考えていくのかという御発言だったとまとめることができるかと思いま す。  それから、2ページ目の1行空いているところの下ですが、女性に対する年金の保障 の在り方ということですが、今の日本のような世帯主モデル、主に生計を維持する者が 負担を支払い、その者への保障を通じて生活を保障していくというスタイルは新しいタ イプへの変換が求められているのではないか。特に、ライフスタイルの多様化というこ とを考えると、女性が自ら働いて、ここには高い水準とありますが、高い水準の年金を 得られるというような形での制度設計というものが必要ではないか。その場合に、3 ページ目にまいりますが、出産、育児という問題が必ず出てまいりますので、こういっ たケア活動を担うということで不利にならないという配慮が必要ではないかといった御 意見があったと思います。  それから、1行空きまして、単位の問題でございますけれども、様々な配慮が必要で あるけれども、保険料を支払って年金を受給するという個人を単位にとらえていくべき ではないかという意見がございましたけれども、一方では、例えば消費とか労働といっ たものについてはかなり世帯を単位に動いている部分もあるので、必要性ということを 考えた場合にここをどういうふうに考えていくかという問題であったかと思います。  また1行空きまして、そのほかに幾つか考慮すべき要素があるということで、1つは 世の中が徐々に移り変わっていくという中で、制度的には壮大な経過措置を構築する、 常に過渡期であるということを踏まえた制度設計が必要ではないかという御意見もあっ たかと思います。  それから、ページをおめくりいただきまして、4ページ目ですけれども、年金制度の 改正に当たっては共通する、特に被用者保険制度の整合性、あるいは社会保障制度の中 での整合性というものもきちんと考えていく必要があるということが論点として挙がっ ておりました。  それから、2番目の項目でございます第3号被保険者制度ということでございます が、まずは第3号被保険者制度とはどういう制度か、どのような意義を持っているかと いうことについての御議論があったわけでございます。その中で、負担がなく給付があ るということで、特に第1号被保険者との関係というものも問題提起されたわけです が、その点につきましては、5ページ目に参りますけれども、負担する原理が異なって いるということで単純な比較はできないというお話があったかと思います。  それから、この第3号被保険者の給付というものをどういうふうにとらえるかという ことについては、かなり扶助原理的な色彩の濃い仕組みではないかという見方が示され ましたが、一方で、これはもともと扶助原理と保険原理の混合の中でやっていることだ ということの御説明もあったかと思います。  それから、中ほどより下のところですけれども、育児との関係ということで、育児期 間中にはどうしても離職をするという現実がある中でこの問題をどういうふうにとらえ るかという論点があったかと思います。  それから、専業主婦家庭は高所得が多く、その高所得家庭を優遇する仕組みかどうか ということについては、一方で所得が高ければ被用者保険の定率の負担で多い負担をし ているということの説明がありました。  それから、1行空いた次のところですが、専業主婦に負担を求めるということで、よ く、無収入の者からどうやって負担をという議論があるわけですが、そこは婚姻費用を 共同に負担をするという中で、潜在的な持分権との関係で必ずしも矛盾しないというお 話がございました。ただ、それに関しては潜在的持分権の議論というものをどこまで射 程に置いて考えればよいかといったような問題も提起されたと思います。  また1行空いて、6ページの下のところになりますが、被用者年金制度について、世 帯を単位に見れば報酬に比例して能力に応じて負担をしているということですが、ここ について応益負担原理を一部加味するというような論点も提起されたかと思います。  そのような議論の中で、1つは片働き家庭に追加的な負担を求める根拠として帰属所 得というような考え方も論点としては出されましたが、これもまた帰属所得ということ に関してどこまで射程に置けるかというところの議論があったと思います。  8ページ目の方の1行空いて、急に変えるということは世の中との関係でいろいろな 問題が出てくるのであれば、ある程度改正の時期を明示することで、中高齢の世代には 安心感を与える一方で、若い世代には経済的な自立を促していくことが重要ではないか という時間軸の設定に関しての論点もあったかと思います。  それから、8ページ目の中ほどで、短時間労働者への適用の論点でございますが、最 初のところで、就業調整行動については、特に被用者年金の適用の問題、あるいは被扶 養者基準といったものが就業調整行動というものに寄与していることの御説明があった と思います。  それで、1行空いて、では具体的にどのように見直していけばよいかということにつ いては、130 万円という被扶養者の認定基準というものを考慮すべきであるというこ と、それから次の9ページに行きまして、4分の3以上の時間を働いている人を被用者 保険に適用するという、この労働時間の方の基準を例えば2分の1に下げるということ も議論として提起されました。  ただ、この場合に考えなくてはいけないのは、1つはどのような負担を求めるかとい うところの保険料率の問題、もう一つはそれに対してどのような給付を保障するかとい う給付の問題ということで、基礎年金の存在によってある程度所得再分配的な効果が効 いてきている中で、給付あるいは負担の設計というものをどのように考えるかという論 点が提起されたかと思います。同時に、第3号被保険者で基礎年金の部分は保障されて いて、追加的に負担をした場合のメリットが小さいという見方もあったかと思います。  いずれにしても、9ページ目の一番下でございますけれども、年齢が上がるにつれて 非正規化する傾向という中で報酬比例部分をなかなか持てなくなってくるというような 問題も提起され、いわゆる非正規労働者に対して厚生年金をどういうふうに考えていく かという問題も提起されたと思います。  それから、10ページ目の育児期間の取扱いの点ですけれども、年金制度はどうしても 賦課方式の色彩を色濃く持つので、前の世代の老後の負担というものを実際に負担をし てくれる次世代を育てる負担というものを何らかの形で考慮する必要があるのではない か。具体的にはということでは、例えば保険料の軽減措置、あるいは給付におけるメリ ットといったような御提案があったかと思います。  一方で、年金制度で少子化対応ということに関しては、少子化対応は少子化対応の方 であるのではないかという御意見もあったように思います。  それから、11ページ目の離婚時の年金分割でございますが、年金の一身専属性との関 係というものが一つ論点になり得るというような御説明をしたかと思いますけれども、 その関係では、やはり共同生活を送ってきた夫婦ということに関しては配慮すべきであ る。それから、実際に年金の差額の何割かを払うというような裁判例も出てきていると いうようなお話がございました。  ただ、年金を分割するとして、割合を2分の1というふうに固定的に決めてしまうか どうかということについては議論があったように思いますし、どのようなときにという ことについては、中長期的な課題としては離婚の分割というものをやはり検討していか なければならないのではないかということであったかと思います。  それから、6番目の遺族年金の論点でございます。よく個人単位化をすると遺族年金 は廃止というようなことで言われるわけですけれども、例えば若齢時に死亡したような 場合に子どもを抱えた母子が残されるということをどういうふうに考えるか。廃止でき るという話もありますし、廃止が難しいのではないかというような御意見、あるいはそ ういうことは福祉できちんと保障すればよいというような話があったかと思います。  それから、遺族年金は男性と女性の場合で若干支給要件が異なるような仕組みになっ ていますが、この男女差というものをどのように考えるか。  それから、配偶者の老齢相当の4分の3の相当というのが遺族厚生年金の水準という ことでございますけれども、この場合、現役時代に共働きであったか片働きであったか によって、特に老齢になってから遺族になった場合の給付の水準が世帯としては同じで も異なる場合があり得る。この場合に、両方の合算額の一定の割合というものを遺族厚 生年金の金額にするというのも一つの案ではないかというような御意見があったと思い ます。  ほかにも御紹介すべき点があるかもしれませんが、時間の関係で資料2の方に移りた いと思います。これまでの議論の方から資料2に書きました「女性と年金」問題を検討 していく上での諸論点というものの抽出を試みてみました。大きく5点ぐらいの太字で 書いた論点と、それに細かな論点が付随するような形でまとめております。順々に御説 明してまいりたいと思います。  まず一番最初に、社会保険制度としての年金制度の「能力に応じて拠出し、ニーズに 応じて給付をする」という原則の下でどのように制度を見直すべきか。年金制度は社会 保障としてやっておりますので、必要な給付の保障というのは大命題でありますが、そ の中で様々な環境変化に従ってどのように制度を考えていかなければいけないか。 ま ず、ライフコースが非常に多様化している中で、平均的に見ると、男性に比べて報酬額 が低く、被用者年金の加入期間が短い一方で、平均寿命が長いため、老後の期間が長い というのが女性と年金制度を見た場合の大きな特徴でございますけれども、そういう女 性に対して必要な年金をどのように保障していくのか。  昭和60年の改正で基礎年金についてはきちんと女性に保障がされるという体制になっ たわけでございますけれども、その後の環境変化というものを含めて、例えば短時間労 働者の厚生年金の適用の問題ですとか、あるいは子育て期間の評価、あるいは離婚時の 年金の扱い、あるいは遺族年金の扱いなどの論点について、大きな考えの中でどういう ふうに組み立てていけるのかということになろうかという点であります。  2つ目ですが、所得再分配によって生活保障を行う年金制度において公平性をいかに 確保すべきか。また、生計が世帯を単位として営まれている中で、年金の給付を行い負 担を求める単位として個人と世帯の関係をどのように整理すべきか。  例えば、片稼ぎの家庭もいらっしゃる、共稼ぎの家庭もいらっしゃる。あるいは、世 帯としては御夫婦ということもありますし、単身の方もいらっしゃる。世帯もまた世帯 として見るのか、あるいはそれぞれ個人一人一人の単身者というふうに分解して見るの かというようなこと。それから、所得階層、あるいは男女の間での様々な公平性といっ たものをどういうふうに考えていくかということですが、その中でも特に、年金の給付 あるいは負担を求める単位として個人と世帯の関係をどのように整理すべきか。基本的 には個人を単位に適用する仕組みにはなっておりますけれども、機能的に考えた場合に は、被用者年金制度が世帯単位の応能負担になっており、その辺のバランスというもの をいかに考慮するかということだろうと思います。  3点目でございますが、公平性を確保していくためには「能力に応じて拠出をし、 ニーズに応じて給付をする」という原則の中に、例えば「受益に応じた負担」という考 え方を入れていけるのかどうか。あるいは、「貢献度に応じた給付」という要素を強化 するかどうか、できるかどうかということ。  それから、4点目に、年金制度において男女共同参画をどのように進めていくか。こ のように課題を抽出をしてみたわけでございます。  2点目ですが、個人の多様な選択に中立的な制度を目指すために、どのように制度を 見直していくか。中立的に働いていない典型的な例は短時間労働者の就業調整問題であ るというご指摘でございますけれども、では、このような雇用形態の多様化に対応し、 働いた分が自らの年金、老齢年金ということもございますし、女性の場合は遺族年金と いうことにもなってきますが、そのようなものに反映できるようにどういうふうに制度 を見直していけばよいか。あるいは、仕事と家庭の両立支援ということに向けて、子育 て期の保険料負担や年金給付というものへの配慮をどういうふうに考えるかということ を論点として抽出してみました。  3点目でございますが、急速な少子高齢化の影響を緩和するためには、支え手を増や すということが必要であるけれども、このためにはどのように制度を見直すべきか。繰 り返しになりますが、被用者年金制度の適用対象になっていない短期間労働者ですと か、あるいはこれからいろいろな働き方が増えてくるという雇用形態の多様化というこ とに対応して、働いた部分が自分の年金に反映できるように制度をどういうふうに考え ていくか。あるいは、世代間扶養の年金制度において、出産、育児といったものへの支 援というものを今以上にどのように考えるかということが、この問題の論点であるかと 思います。  4点目ですが、具体的に論議すべき制度設計上の論点ということで、幾つか掲げてご ざいますが、まずはどのような世帯を標準モデルとして年金の給付設計を考えていく か。勿論、実際には様々な給付があるわけでございますが、実際に今モデルとして示し ておりますのは、片稼ぎ世帯で夫婦2人の基礎年金に夫の報酬比例年金で、これが合わ せて23.8万円で、現役時代の手取り所得の6割程度というような説明をしているわけで すが、これが適当ではないということでありますれば、どのような世帯というものを一 つのモデルとして考えていくか。そういう中で、第3号被保険者の在り方、あるいは短 時間労働者に対する適用の在り方、育児期間の取扱い、離婚時の分割の問題、それから 遺族年金の給付水準ですとか男女の取扱いの違いといったものをどういうふうに考えて いくか。  ただ、いろいろ考えていく中では、今後一層厳しくなることが予想される年金財政の 健全さの確保とこれらの論点の間の調整というものをどのように図るかといったことで すとか、次のページに参りますと、年金制度の国民生活に与える影響の大きさ、現に二 千数百万人の方が年金制度で暮らしていらっしゃるわけですけれども、この大きさを考 えると、現行の仕組みからの円滑かつ着実な移行というものをどのように考えていくか ということが挙がってまいります。  最後の5点目ですが、「女性と年金」問題の検討と併せて、次のような環境整備が必 要ではないか。これは年金制度だけでは解決できない問題ということについて、パッ ケージでどこまで考えていけるかということです。1つは、女性の就労支援のための施 策の充実が必要ではないか。  それから2点目ですが、世代間扶養を基本といたします公的年金において、次の世代 を担う者の育成が本質的な問題であるという中で、年金制度での対応と、それから各方 面における少子化対策、子どもを産み育てることの支援、あるいは環境づくりといった ものを積極的にどこまで支援をしていけるか、必要ではなかろうか。  それから3点目ですが、先ほど他制度との関連も申し上げましたが、被用者に対する 制度としての構成が共通する健康保険ですとか、あるいは国民に負担を求めるという意 味での税制の問題、あるいはある程度裁判が関係してくるということになりますと、法 律的なところでの対応ですとか、あるいは民間の行いではございますけれども、企業が 支給しています扶養手当というような問題についても併せて検討していくことが必要に なるという論点が出てくるのではないか。  以上、いろいろ課題を抽出をして整理してみたものでございますが、このような点に ついてどのように議論をしていくか、あるいはこのような論点が抜けているのではない か、あるいはこのような見方は適当ではないのではないかといったことについて、今日 御議論をいただければ幸いに存じます。  それから、それを議論をいただく上で、女性のライフスタイルの変化なり多様化と年 金制度というものをどのようにとらえるかということで、今までの検討会の中で御説明 してきた資料と若干重なるものもあるかもしれませんが、まとめてみましたので、若干 お時間をいただきまして御説明させていただきます。  資料3でございます。大きく4部構成にしております。女性の就労に対する意識、そ れから女性就労の実態、それから結婚とか離婚の問題、最後にそれが年金制度において どうなっているかという4つの切り口に分けて資料をまとめております。  まず最初に1ページ目、2ページ目でございますが、これは女性の就業の意識という ことでございます。最初の1ページ目は、これは定期的に行っています世論調査の中か ら、女性がどういうふうに答えられたかということについてまとめてみました。  2ページ目は、人口推計の関係で独身者ですとか御夫婦に対して調査を行っているわ けでございますが、このページでまとめておりますのは18歳から49歳までの独身者を対 象に行いました調査の結果でございます。いずれも結婚をしても職業を持つという認識 はかなり一般的であるということです。その中で多い認識としては、子どもが大きくな ったら再び職業を持つ方がよいというものでありますが、子どもができてもずっと職業 を続けているということに対するという志向がだんだん高まっているというのが両方の 調査で言えるかと思います。  ただし、2ページ目に、同時に実施いたしました御夫婦に対する調査での既婚者の実 態というものはなかなか望みどおりになっていないというデータが出ております。3 ページ目には、以前検討会でもお示しをいたしましたが、さきの制度改正に際しまし て、第3号被保険者を無作為に抽出してやりました調査の御報告を重ねて資料としてつ けておりますが、4ページ目の下の方に、第3号被保険者が常勤の仕事をしていない理 由ということで、20歳代、30歳代は育児や介護、家事が大変である。40歳代になります と、それは減りますが、常勤で働ける職場がないですとか、あるいは税制上の優遇措置 を受けるためというような割合がこういうふうに大きくなっているという現実がござい ます。 それから、次に女性の労働ということでございますが、7ページ目からでござ います。これは男女問わず労働力人口ですとか労働力率というものについてデータをま とめたものでございますが、近年いろいろ経済状況もありまして、頭打ちになっていま すが、長い目で見れば増加傾向にあったということであろうかと思います。  その中で、8ページ目でございますが、女性の年齢別労働力率の推移ということで は、毎年毎年だんだんM字のいわゆる落ち込みというものが緩和をしてきているという データでございます。ただ、次の9ページ目の方に参りまして、これをいわゆる未婚者 と有配偶者で分解をしますと、実は有配偶の方の女性の労働力率というのは余り変化が ない。実際には雇用労働者はだんだん増えてきているということでございますが、一方 で、自営が減ってきており、合計した有配偶の方の女性の労働力率というのはほとんど 変化がないような形に出ている。  それから、今度は10ページ目でございますが、特別調査の中で末子の年齢と就業状態 というものを並べてみて、それをどのような労働形態かということで分解をしてみたも のでございますが、平成元年と11年で、全体の労働力率はわずかに増加をしているとい うことですが、これも見ていただいてわかるとおり、一番下の黒い部分、35時間以上の 非農林業の雇用というものの実態は実はほとんど変わっていない。真ん中の35時間未満 というゾーンはこの図で見ても明らかに増えているということが言えるかと思います。 現に、11ページになりますが、短時間雇用者の数というものは近年非常に増加を見せて いるということです。  ただ、この短時間労働者の関係につきましては、12ページに参りますが、いわゆる健 康保険や厚生年金でカバーされているというのは、パートタイム実態調査報告によりま すと大体三十五%程度ということでございます。  それから、就業形態の多様化ということでは、13ページには、今後政策的にはどのよ うなことが志向されているかということで、平成11年に閣議決定されました雇用対策基 本計画から該当の部分を抜いております。政策的には多様な働き方というものが志向さ れているというふうに言えると思います。  特に、15ページになりますが、例えば高齢者の就業ですとか、あるいは性別にかかわ らず主体的に職業選択を行って能力を発揮するということとの関連で、多様な働き方を 可能とする環境の整備というものが課題になっているということです。  それで、現に個人が主体的に働き方を選択できる社会の実現という各論のところに、 仕事と育児・介護の両立支援対策ということが位置づけられておりまして、(1)でござい ますけれども、育児・介護を行う労働者が就業を継続するためには、これらの労働者が 多様でかつ柔軟な働き方を選択できる雇用環境というものを整備していく必要があると いうようなこと。 それから、次の16ページに参りまして、多様な働き方を可能とする環境整備ということ で、パートタイム、在宅就労、派遣の問題、あるいは契約労働、テレワーク、SOH O、ワーカーズコレクティブ、NPOの就業などが掲げられております。  それから、結婚と離婚ということでございますが、18ページに参りまして、まず年齢 階級別未婚率でございますが、平成12年の国勢調査の抽出の速報が発表されまして、 1995年、あるいはそれ以前と比べても未婚率が上昇というデータが出ております。独身 者の人口推計の関係で調査をいたしますと、結婚への志向ということについては、生涯 独身を通すという人の割合は必ずしも高くないわけでございますが、ただ現実の問題と して未婚率は上昇しているということです。  それから、次の19ページでございますが、人口動態統計から結婚・離婚の件数という ことで、離婚件数が非常に増加してきている。結婚の件数と比べますと、今では3分の 1ぐらいまで離婚の件数が大きくなってきたということです。  20ページは年齢別の離婚件数というものでございまして、当然のことながら、若い時 代に山があるわけでございますが、黒い平成10年の離婚件数を見ますと、40歳代、50歳 代のところで一つまた膨らみも出てきている。  それから、21ページの同居期間別に見た離婚件数と構成割合では、同居期間の長い層 に近年離婚の増加という現象が現れているということでございます。  4番目のライフスタイルの変化と年金制度に入っていきたいと思いますが、まず22 ページ目でございますが、これは厚生年金を年々新規に裁定される方の平均的な被保険 者期間、あるいは報酬の月額、あるいは実際に支給される年金額というものを比較した ものでございます。男性と女性と両方データがございますが、平均被保険者期間は短 い。それから、平均標準報酬月額は低い。結果として、年金額は男性の大体半分程度に なっているという現状でございます。  23ページでございますが、ほかにも、例えば古い時代は福祉年金でありますとか、あ るいは新しくなっても国民年金だけというような方もいらっしゃるということで、公的 年金、あるいは恩給なども含めてどれくらい受給していらっしゃるかというのを国民生 活基礎調査で調べておりますが、明らかに男性と女性ではカーブが違うという現状にご ざいます。  それから、24ページでございますが、その中で例えば貧困といった問題を考えたとき に、生活保護の適用がどうなっているか。65歳以上の被保護者が大体三十八万人ぐらい 今いらっしゃるわけでございますが、そのうちの大体半分弱に当たります十七万人ぐら いが実は高齢の単身の女性という現実がございます。  それから、25ページにまいりますが、雇用形態の多様化ということを申し上げたわけ ですが、今、雇用形態の多様化ということに対して被用者年金制度の適用がどのように なっていっているかでございますが、いわゆる雇用者全体の中で第2号被保険者がどれ ぐらいいらっしゃるか。全体的にも率は落ちてきているわけですが、特に女性は男性に 比べて、まず率が低いということ。それから、近年、率の低下というものも男性よりは 大きくなっているという現状でございます。  26ページ以降は将来の話でございますが、平成11年に行いました財政再計算でどのよ うな女性労働の見通しを持ってやっているかということに関しては、以前も御説明した かと思いますが、女性の労働力のアップというものを見込んでいる。特に30歳、M字 カーブのボトムの年代で申し上げますと、2000年時点で57.4%程度のものが2025年には 65.5%まで上昇するだろう。そういう意味では労働力率の向上というものを相当見て推 計をしているということになるわけでございますが、27ページの方ですが、これらの労 働力人口がすべてきちんと支え手に回ってくれるかというと、実は労働力人口の中でど のような年金者の適用になるか、いわゆる被用者年金の適用される割合というものがあ って、そこを加味して推計を行っているわけでございます。今男性の30歳代で大体8割 強ぐらいが被用者年金の適用を受けている。男性はこのような割合でだんだん被用者率 が高まっていくということで推計をしておりまして、女性もそれと同じ程度、男性のア ップするのと同じ程度上がるだろうということを見通してやってきているわけでござい ますが、この女性と男性のカーブの構造的な差というものがございまして、先ほどの労 働力率の図に平成11年の財政再計算結果で推計いたしました2000年時点での2号被保険 者の数を重ねてみますと、27ページの下のグラフの点線のようなカーブになります。  このようないわゆる被用者年金でカバーされる率が低いということには幾つか理由が あるわけでございますが、こういう構造をそのまま引きずってまいりますと、次の28 ページ目になるわけでございますが、財政再計算の推計の中から女性の被保険者の1 号、2号、3号の割合を抜き出してみたわけでございます。上が2000年時点、下が2025 年時点になるわけですが、第3号の被保険者の比率というのはほとんど明示的には違い というものは見つけにくい結果になっています。勿論、女性の労働力率のアップを見て いますので、3号から2号への移動というものも見ておりまして、黒い部分は下の方は 若干膨らんでいるということが見てとれるかと思いますが、同時に就業構造が変化し て、1号の御夫婦の世帯が2号・2号、あるいは2号・3号という形に移行するという ようなことがございまして、3号の被保険者比率というのはほとんど変わらない形で表 れている。このようなことをどのように考えるかということが一つの論点になろうかと 思います。  最後に29ページでございますけれども、なかなか一つの座標軸では拾い切れないわけ ではございますが、「女性のライフスタイルの変化・多様化と年金制度」ということで まとめてみました。結婚される前はかなりの方が一定期間雇用者として就労する経験を 持つようになってきているということですが、結婚、出産した後に雇用を継続できる 方、あるいは離職を余儀なくされる方、離職をされた後に例えばお子さんが大きくなっ てフルタイムの再就職ができる方、あるいはパートタイムとしての就労になる方、その まま専業主婦を続けられる方というような形になろうかと思いますし、ここに実は結婚 ですとか、離婚ですとか、そういうのが絡んでくるということになろうかと思います が、一番最後に老齢年金の仮定計算をしてみました。これはモデル計算ということでご ざいますので、右側の配偶者の夫については、世帯のタイプ別に配偶者の給料に差があ ることは現実的には十分考えられるわけですが、ここではモデル計算ということで、男 性の標準的ないわゆるモデル年金の額を置いております。  女性の方でございますけれども、平成11年の女性の被保険者の平均的な標準報酬が大 体二十二万円というデータがございますので、これを使いまして、一番上のケースです と、この22万円を厚生年金の期間40年間働いた場合ということで試算をしてみました。 それから、フルタイム就業に再就職された方につきましては、実際にこのようなコース をたどった方の平均的な厚生年金期間というのは厳密にはわかりませんので、ここでは 平成11年度に新規裁定されました老齢相当と申しまして、昔の制度で言いますと、厚生 年金だけで受給権を得られる、原則的には20年ですけれども、そのような期間を持つ被 保険者の平均ということで、23年9か月で計算してみました。それから、パートタイム に再就職された方、あるいは専業主婦を続けられた方ということですが、ここはずっと 第3号被保険者の適用ということになりますので、通算老齢年金、ほかの制度と通算を して受給資格を得られるという方の平均6年5か月で計算してみました。それから、一 番下が非就労でずっと専業主婦という現在のモデル年金ということでございます。  それぞれ基礎年金と報酬比例に分けて額を言っておりますが、足し合わせますと、一 番上のケースですと、合わせて12.8万円、夫の17.1万円と合計しまして29.9万円という 額になります。それから、2番目のフルタイムで再就職というケースについては、自身 の方が10.3万円、配偶者の方が17.1万円で、合わせて27.4万円という計算になります。 それから、パートタイムあるいは専業主婦というケースにつきましては、自身の年金が 7.7 万円、配偶者の方は17.1万円で、合わせて24.8万円という計算になります。モデル 年金は、よく知られているように23.8万円という水準でございます。  女性の一番上のケースでいうところの女性の報酬比例年金の6.1 万円と男性の報酬比 例年金の10.4万円の差については、これは例えば賃金構造とか、基本的には労働市場で 解決をしないとどうしようもない問題だと考えますが、そこから下のケースの3.6 万円 の報酬比例、あるいは1.0 万円の報酬比例というものを年金制度上どういうふうにとら えていくかということになろうかと思います。  ※1から※3という注釈を次のページにまとめておりますが、特に、一たん離職をさ れた方については加入期間が短い、それから報酬額が低いということが影響いたしまし て、自身の支給される年金額が低くなるということでございます。特に、再就職が厚生 年金の適用されない短時間雇用といった場合には、更に再就職いたしました期間が年金 制度上評価されないということで、更に年金額が低くなるということでございます。こ の場合に、更に、例えば配偶者と離婚ですとか死別ということがあった場合には第3号 被保険者制度も適用されなくなるといったようなことがございます。  それから、3番目ですが、これは下の3つのケースに共通でございますが、離婚した 場合に年金給付が基礎年金のみ、あるいは基礎年金と低い報酬比例年金というふうにな ってしまう。これが年金を女性お一人で見た場合の問題点かと思います。  こういったデータの分析、あるいは見方についてはまだ議論があろうかと思いますけ れども、特に大きな論点を議論をしていく際に一つ前提に頭に置いていただければとい うことで、今回このような形でデータをまとめて御紹介をいたしました。説明が長くな って申し訳ございません。以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。大変な作業だったと感謝いたします。  それでは、ただいまの御説明につきまして、何か質問とか御意見をお伺いしたいので すが、特に資料2「『女性と年金』問題を検討していく上での諸論点(案)」ですが、 これを中心に議論を進めたいと思います。その前に今の御報告で何か聞きたいことはお ありでしょうか。  それでは、何か御意見、あるいはまとめ方そのものとか、あるいは全体の流れとか、 そういう大きなことでも結構ですし、それから資料2に挙げられてあります個々の項目 についてでも結構ですけれども、御意見がありましたらお願いいたします。 ○宮武委員  話のたたき台みたいなことで口火を切らせてもらいたいのですが、論点を拝見してい て思うことは、2ページ目にございますけれども、制度設計上の具体的な論点として挙 げられているように、どんな世帯をモデルとして年金の給付設計を行うのかということ で、今までは専業主婦世帯というものを基本モデルとして考えて、給付と負担というも のも決めてこられたわけですが、現実にはそれが合わなくなってきている。  一気に個人単位化という御意見も当然あるわけですけれども、しかし個人単位化まで 持っていくことになりますと、少なくなったとは言いながらも、1,200 万の専業主婦世 帯がいることを考えると、一気に個人単位化できるのか、自分名義の収入のない方に保 険料を賦課をすることができないという大きな壁にぶつかってしまう。  そうしますと、現実になるべく近いモデルを設定するとすれば、これを拝見してい て、共働きというものを基本モデルにしていくのが今の課題なのかなと考えました。男 女ともに働いて収入を得て一定の負担をし、その負担をしたことがちゃんと給付に返っ てくるという形で、共働きをモデルにすることが個人単位化を主張なさっている方にと ってみても一つのステップになるのではないかなという気がしてまいりました。  そうしますと、共働きを新しい基本モデルにすると、おのずから3号の問題とか、 パートの問題とか、離婚時の年金分割についても一定の整理ができるような気がしてな らないんいです。  3号の被保険者の問題から言いますと、共働きをモデルにしても何も変わらないので はないかとおっしゃるかもしれませんが、基本的に自分名義の収入を持たない人に対し て保険料を賦課することはどんなことが起きるかというと、それは二十歳以上の学生た ちに保険料を課したことがまさに大失敗だったと今でも私は思っていますけれども、結 局、自分の名義というか、十分な収入のない人に対して保険料を賦課したことによっ て、免除や滞納や加入拒否の大群ができてしまって、年金制度そのものに対して若い人 の信頼というのをなくして反発を招いてしまった。これは出世払いが今回認められたわ けですが、もし3号に負担を課せば、それの10倍、20倍の大混乱が起きてしまう。しか し、今の3号に対する、特に単身所帯から見た場合の批判については、やはりそれに応 えていかなければいけない。  そうしますと、今の標準報酬月額の62万円という限度額がございますけれども、それ をもっと引き上げまして、高所得の専業主婦所帯の場合は夫がもっと負担をしていく。 引き上げて、それが給付にそのまま反映されてしまうと、給付がどんどん膨らんでくる わけですので、上限は引き上げるけれども、給付への見返りというのは極力抑えると か、あるいは給付に反映させないとか、そういう形でお金持ちの専業主婦世帯は得をし ているという批判をそこで緩和したらどうかなと思います。  専業主婦世帯全部に保険料を賦課することになりますと、専業主婦世帯全体がお金持 ちではないわけでありまして、若い世代で子育てのために仕事を辞めざるを得ない人た ちは困るわけでありますし、ハンディキャップを抱えている子どもを持って、働くに働 けない専業主婦世帯もある。5人、6人もの子どもを育てているので働くわけにいかな い専業主婦世帯もいる。  専業主婦世帯のとらえ方そのものがお金持ちの専業主婦世帯ととらえること自体がお かしいわけで、少なくとも負担能力が十分におありになる専業主婦世帯は負担も高くし ていく。 しかし、給付には余りはね返らない仕組みができないかと思うんです。  2番目のパートに対する考え方もまさにそうでありまして、共働き世帯をモデルとす るならば、やはり働いて収入があれば負担をちゃんと払ってもらおうと。ただし、パー トのごくわずかな、月に5万、6万の収入しかないようなパートに対して今の2号の保 険料率を掛けていけば、下限が9万8,000円ですからその標準報酬の下限も引き下げて、 これは堀先生が前に御提案なさったと思いますけれども、基礎年金の相当部分について は給付には反映しない、基礎年金相当部分を超えた部分については反映する、要するに パートで一生懸命稼げばちゃんと標準報酬にはね返るという形の設計にできないのかな と考えております。  また、共稼ぎ世帯というのを基本モデルにすれば、例えば離婚時の年金分割について も、専業主婦もまた夫を支えて仕事をしてきたんですから、離婚したときには基礎年金 だけではなくて、報酬比例部分を含めて分割して受け取ることができる。それは一律に 制度として組み込むのか、あるいは当事者の話し合いが中心になってやるのか、そこの ところは議論になるかと思うんですけれども、そういう形で整理ができないか。  遺族年金についても、共働き世帯をモデルにするのであれば、共働きの世帯が不利に ならないような形の遺族年金の在り方が当然あるわけでありまして、私は5分の3を提 案しましたけれども、5分の3では今の専業主婦の方たちの遺族年金の給付がすごく下 がるということでありましたから、そこのところは逆に言えば、今は4分の3つまり報 酬比例部分の75%水準ですが、それを5分の3にすると60%水準になるわけで、15%の カットが実態に合わないのであれば、例えば70%水準にしていく。そうすると、共働き の方の場合はすごく有利になり過ぎるのですが、そういう工夫ができないのかなと考え ております。  大変差し出がましくて、最初に申し訳ありませんけれども、議論のたたき台にならな いかなということで申し上げました。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。確かに働き方も多様ですけれども、専業主婦も多様 ということが言えるかなと思います。  それから、今の世帯モデルというのは厚生年金に40年加入ですよね。そして、片一方 はずっと働かない。確かにこういうのは現実にあり得ないなという感じもするんです が、そうかと言って、共働きをモデルにするといっても、夫の方はフルタイムですけれ ども、妻の方もずっとフルタイムというモデルもまたちょっと現実的ではないかなとも 思うんですが、今、宮武委員の御提案、御意見で何かございますでしょうか。 ○高島委員  そういう具体的な中身ではなくて、1項目に「『能力に応じて拠出し、ニーズに応じ て給付する』原則の下に」と書いてありますが、能力に応じてというのは所得に応じて という意味ですか。ニーズというのは何ですか。やはりこういうものを書くまえに、日 本の年金制度がまず国民皆年金であるということ、年金というのは老後の生活保障をす るものであるという、その原則をまず一番最初に書いて、能力に応じて拠出しニーズに 応じて給付するということではないのか。確かにこれを前のときにおっしゃられた方が いますけれども、このことをきちんと議論しなければいけないのではないかと思いまし た。  それからもう一点、ここに全く触れられていない点で、育児休業中の社会保険料免除 は既に行われています。育児に関することはもっと広い意味のことが書いてありますけ れども、介護休業をとっている人は、法律では3か月ですけれども、3か月の人たちは 免除制度の適用を受けていません。ですから、介護の場合であったとしても、ここで言 っている仕事と家庭の両立、働き続けることとの関わりで言えば非常に重要だと思うの で、介護についても論点としては挙げてほしいと思います。 ○袖井座長  今のは御意見ですよね。では、駒村さん、どうぞ。 ○駒村委員  宮武先生のアイディアに関して、そういう案もあるのだと思いましたが、1点確認さ せていただきたいんですけれども、標準報酬の上限を引き上げて、そこで収入を確保す るという案なんですけれども、これは3号が今負担していない分というのは1万3,300円 掛ける1,200 万人分という費用があるわけですね。これは1.9 兆円ぐらいあると思うん ですけれども、これを標準報酬の上限引き上げで確保するという感じになるんでしょう か。 そうすると、どのくらい引き上げることになるんでしょうか。 ○宮武委員  そこのところがこの委員会に参加していて未だに吹っ切れない論点でして、少なくと も厚生年金なり共済年金の保険料の負担の仕方から言えば、同じ収入であれば、共働き であっても専業主婦世帯であっても、同じ負担をして同じ給付だということで制度設計 をされているわけで、私は物を書いたり、話をするときには、専業主婦の保険料は夫が まとめて払う形であるとずっと説明してきたんですね。それが間違いだとおっしゃれ ば、理屈が合わなくなってくるんです。私は基本的にそう理解してきた。現実にそうい うモデルで設定されている。ただし、単身所帯から見れば、専業主婦世帯は随分有利で はないかと、この批判は間違いなくありますよね。だけど、基本的には同じ負担をして きた。  そういうことから言えば、単身世帯なり共働き世帯から見たときに、今の専業主婦世 帯の特に高所得の人に対する反発というのが、62万のところでとまっているから起こっ てくるのではないか。月収70万、80万、100 万円の人でも62万円で保険料は計算されて いるわけですから、その部分を補うという意味ではなくて、公平性というものを実質的 に担保しようとするのだったら、高い人は高いなりに負担をしてもらう、より所得再配 分効果を出してもらう。ただし、給付にはね返ると、すごい年金をもらえることになる ので、そこを我慢していただく考え方が成り立たないのかなと、そういう思いから提案 しました。 ○高島委員  今の宮武先生の、同じ収入ならば夫1人働きでも夫婦2人働きでも保険料は夫婦合わ せて1人で、一緒だという話がずっとされてきたんですけれども、確かにそれはそのと おりです。個人が払う保険料はそうなんだけれども、今度は一たん入ったお金が国民年 金の方に入る場合は、3号被保険者が何人いるのかが計算されて、その分の国民年金保 険料が支払われているのではありませんか。そうすると、2号全体で3号分の保険料を 負担しているということになりませんか。 ○宮武委員  それはそうですね。 ○高島委員  ですから、その分が一体幾らなんですかと。それがなければ、2号の人はもうちょっ と安くなるという理屈ではないですか。だから、単身者が損をしている理屈になると私 は思います。 ○宮武委員  それを論議をしはじめますと、1号の方たちで払っていない方たちの部分というか、 国民年金の未加入とか滞納部分、それも全部いわば被用者年金の2号で負担をしている わけです。そこでも損得の議論になってしまいます。 ○高島委員  だから、1号は別にしても、ここでの論点である2号と3号の間でその分を上乗せさ れている。 ○宮武委員  おっしゃるとおりです。 ○袖井座長  ちょっと宮武さんにお聞きしたいんですけれども、青天井にとっていくという場合、 企業のいわゆる使用者にもそれを負担させるわけですよね。そうすると、やはりそっち も痛みを負うわけですね。では、その辺はちょっと難しいかなと思うんですが、どなた か何かありますか。 ○宮武委員  その通りで使用者側にも払って頂くことになります。 ○堀委員  今、宮武委員から御提言があったんですけれども、私は基本的にはそういう方向もあ り得るという感じをもっています。  ちょっと違った形で言いますけれども、多分同じ結論になると思います。やはり一番 の問題は女性の年金額が低いことです。低い理由は、雇用条件が悪く、女性が家事、育 児責任を負っているからです。その責任を前提に雇用の条件、賃金も含めて、そういう ものが決められている。これは従来、専業主婦が家事、育児をやるという社会的な役割 分担があったことの反映です。日本の被用者年金というのは働いて賃金をもらい、その 賃金に比例して保険料を払って、保険料を払った人に年金を支払うというものですか ら、そういうことはある意味で当然なわけです。貧困率が女性の単身で高いというのも そういうことから来ている。  ただ、従来のように、夫婦が一生生活を共にするというのであれば年金制度もそれで もよかったんでしょうけれども、現在では終身単身であるという人も増えていますし、 それから離婚も増えている。ここで言うライフスタイルが多様化しているということ で、夫の年金で夫婦が老後を過ごすというのが崩れてきているということがある。  したがって、こういうふうにライフスタイルが多様化してくると、女性自身の年金額 を高めていくという何らかの工夫が必要だった。昭和61年の改正で、従来夫に出ていた 年金の一部を妻に分割するという第3号被保険者制度ができて個人単位化して女性の年 金額を確保したという意義があるのではないかと思います。  そういう家族的責任とか、あるいは雇用慣行とか、そういうことを改めて、女性もき ちんと働ける条件をつくり、かつ賃金も高めていく。そういうことによって女性の年金 を高めていくという方向が基本だと思うんです。  ただ、それはなかなか実現しがたいため、年金制度の方でも女性の年金額が十分なも のになるように、遺族年金を改正するとか、あるいは離婚の際の分割を考えるとか、い ろいろなことを考える必要があるんだと思うんですね。そういったことが基本的に私は 重要だと思います。  現在のモデル年金は片働き世帯をモデルにしているわけですが、そうすると共働き世 帯の場合は給付水準が高くなるということを逆に意味しているわけです。片働き世帯が 中心的な形態であれば、モデル年金はそれでも妥当だと思うんですが、そうではなくな ってきているわけですね。  資料3の29ページの説明があったんですが、右側の一番下が現在のモデル年金額で23 万8,000 円ですね。そうすると、共働き世帯で非常に高い場合は一番上の29万9,000円。 これが果して妥当なのかどうか。妻も働いたんだから、賃金に応じた保険料を払ったん だから、これは当然だということになるんでしょうが、日本全体としての給付水準とし て考えた場合に、一番下がモデルの世帯でなくなっている場合にはやはり高くなり過ぎ ているのではないか。そうすると、宮武委員から提案があったように、やはりある程度 妻が働くということを前提にしたモデル年金をつくっていく必要があるのではないか。  年金白書の第1回目に、妻が働いて年金制度に加入した期間が確か平均8年とあった と思います。妻が8年働いた場合の年金額を一番下のモデル年金の23万8,000円にする。 妻の加入期間が8年から10年、12年、15年と増えるに従って、23万8,000 円を据え置き にした形でモデル年金を計算していく。それが今後の高齢化に対応し、共働きの増加と いう社会の実態に即し得るモデル年金の設定の仕方ではないかと思います。こういう意 味で、先ほどの宮武委員の提案に賛成をしたいと思います。  もう一点ですが、女性の就労形態がフルタイムからパートタイマーに移ってきてい る。パートタイマーに対しても厚生年金を適用していく必要があるということなんです が、パートにはいろいろな形態があって、週に2時間しか働かないといった人にも厚生 年金を適用するのか。適用してもいいんですが、年金制度が完全に所得比例である場合 には、賃金に応ずる保険料を払って、払った保険料に見合う所得比例の年金だけを支給 すればいい。しかし、日本の場合は基礎年金という定額部分がありますので、低い保険 料で定額部分に2階部分の所得比例をつけるというのは、いかにも公平性の観点から問 題があると思います。  今後、男性も含めてパートが増えていくとなると、基礎年金プラス所得比例という給 付体系ではなかなか対応が難しいですね。だから、さっきおっしゃったような標準報酬 月額の最低限を引き下げて、賃金に見合う保険料率を払うというのは問題がある。今の 2階部分の年金はすべての賃金を計算の基礎にしていますが、基礎年金部分の保険料は 見合う部分の賃金は本当は2階部分の年金の計算の基礎から外すべきではないか。  イギリスも改正前のスウェーデンも、基礎年金部分に見合う賃金については2階部分 の年金の計算の基礎から差し引いて、残りの賃金を基礎に年金額を計算している。日本 もそういうふうにしたら、低賃金のパートに対しても公平性の基準が満たせる形で厚生 年金が適用できるようになるのではないか。そういう意味で、先ほどの宮武委員の御提 案に賛成をしたいと思います。 ○袖井座長  ちょっと技術的なことでお聞きしたいんですが、基礎年金部分を引いてということに なると、収入のない人の場合はどうなるんですか。 ○堀委員  収入のない人はもともと厚生年金の適用はないので、考えているのはパートで働いて いる人です。 ○袖井座長  だから、収入がない人の基礎年金はどうするんですか。 ○堀委員  パートで働いていることが前提ですから。 ○袖井座長  そして、それ以下だった場合はどうなんですか。 ○堀委員  基礎年金だけしか支給しないということです。 ○袖井座長  でも、それがうんと少なくても基礎年金はちゃんと支給する。 ○堀委員  基礎年金は支給するということです。これは必要に応じた給付部分ですから。2階部 分というのは貢献に応じた給付という意味で、保険料で余り貢献していない人は2階部 分がない。例えば、月額10万円分の賃金は基礎年金に応ずる部分だとすると、月10万円 を超えた分についてのみ2階部分の年金を計算する。だから、10万円以下の場合には基 礎年金のみということです。 ○袖井座長  そういう計算は。 ○堀委員  イギリスとか改正前のスウェーデンはそういう方式ですね。 ○袖井座長  わかりました。どうもありがとうございます。 ○駒村委員  そこの額というのは幾らぐらいになるんでしょうか。1万3,300 円を払うような、等 しくなるような負担にするのか。それともそうではなくて、例えば標準報酬が10万円だ ったら、基礎年金への拠出部分は例えばどうなんですか。 ○堀委員  今は1万7,350 円ですね。 ○駒村委員  そういうふうに計算するわけですね。 ○堀委員  ただ、1万3,300 円というのは1号被保険者の保険料額で、これには1号の独自給付 分が入っていますから、実際に基礎年金部分というのは今1万1,000 円ぐらいです。だ から、保険料が1万1,000 円に相当する部分の賃金までの人は基礎年金だけで、それを 超える部分についてのみ2階部分の年金を計算する。 ○永瀬委員  今の話の内容をもう少しご説明いただけますか。そうしますと10万円だと1万7,350 円保険料を払っているわけですから、1万1,000 円は超えているわけですけれども。 ○堀委員  それは下げる。10万円というのは例であって、8万円か7万円になるか計算すれば 出てきます。 ○永瀬委員  例で、料率を変えるということですか。 ○宮武委員  料率は変えません。標準報酬の下限の9万8,000 円をもっと下げてはどうかという提 案です。 ○永瀬委員  わかりました。今のお話とは違う議論をしたいと思います。先ほど宮武先生の御意見 と堀先生の御意見で問題があると思う点は、やはり3号で無業である場合とパートで働 いた場合と比べて、パートで働くと保険料がとられるけれども、給付が余り増えない、 そういう大きな構造が残るというのが、今のお話ですと少し問題がというか、大いに問 題があるのではないか。  今、未婚の非正規就業者というのが非常に増えていまして、例えば女性に関して言い ますと、これは未婚ではなくて全体ですけれども、非正規就業は雇用者の大体四割〜五 割ぐらいで、そしてこの10年間に10%ポイント近く上がっております。男性でもそれほ どではないですけれども、若干上がっております。  未婚の方で非正規の方、非正規で働いているけれども、1号でなければならないとい う人のことは宮武先生、堀先生の御提案の方法にすると救われると思うんですね。確か に定率で保険料を払えるし、その分基礎年金がつくということでいいだろうと思うんで す。しかし、既婚で今まで3号だった人が子育て負担も軽くなってきたから働き出すと いうのが今のごく一般的な就業パターンですけれども、ご提案のように3号を残しつつ 非正規から保険料をとるとそういう方たちは働くと保険料を払う、給付の方は3号に比 べて増えないという構造が残るわけです。  先ほど厚生省の方からいただきました資料で、2025年にも3号の人がこれだけ残って いくという試算が現在されています。高齢化で今後の負担が非常に増えていく社会保障 の将来、それから労働力人口、生産年齢人口が大きく減少していく将来などを考えてみ ますと、このまま維持可能な制度にはとても思えないということがございます。  そういうことを考えますと、私が思いますのは、やはり3号は基本的には廃止なので はないか。ただ、現在1,200 万人の方がその恩恵を受けておりますので、勿論そこに経 過措置は入れる。  そして、今日本は皆年金ということになっていまして、失業者であっても、非正規で あっても、どういう人でも一応年金制度には加入することになっています。加入しない と基礎年金部分はもらえない。そして、今は1万3,000 円ですけれども、将来2万円ぐ らいに上がっていく、それを25年間納め続けないと基礎年金でさえももらえないという かなり厳しいというか、非現実的というか、そういう制度が想定されている一方で、第 3号はなぜかどういう事情があっても免除という不均衡が残っているように思います。  そういうことを考えますと、働けない事情というのは考慮して、そこを免除するのは 当然なのではないか。例えば育児期間中については免除する。何歳ぐらいまでかという ことで、女性の労働力率の現状を見ますと、これはかなり寛容ではないかとおっしゃる 方もいらっしゃるかもしれませんけれども、末子が10歳ぐらいになるとかなりのところ でパートの壁にかかってくる人が増えてくるように私は思うんですね。そこで免除を外 す。そして、残りの期間を第2号で働こうとしますと、その人は年金期間というのは二 十年ぐらいになってしまうわけです。二十年ぐらいの短い期間であっても、その方は非 常にしっかりと暮らしてきたわけで、20年しかない期間であっても、その前は働けな い、育児をしていたといったような事情があった場合に関しては、残りの期間でその人 なりの報酬比例部分がつくような方法を考慮したらいいのではないか。  具体的には、出産後の所得のない、あるいは所得がかなり低いような期間のうち一定 期間を年金加入期間としての平均報酬の加算から外す。そうすると、平均報酬がちょっ と上がるわけです。それから、あとは出産後の低所得期間の賃金をある程度アップする ような賃金評価制度を導入する。ドイツなんかはそれに似たようなことをしているとい うふうに聞いています。それから、育児休業に限らず、出産後の無職期間の例えば二、 三年とか、その程度のことは従前の報酬比例があったというふうに換算するとかする。 その一方で、結婚していなかったり、子どもを持っていなかったりしてフリーターで暮 らしている方たちもある程度の基礎年金を持てるような制度をひとつ考えていくという のも重要です。もう一方で、かなりの方が出産で離職しているという現状がある場合に は、そういう方たちがもう一度労働市場に戻ったときに、自分名義のそれなりの年金を もらえるようにする。  今ですと、報酬比例部分というのは例えば期間が20年だったら男性の半分、それから パートで男性でも賃金が3分の1になったら3分の1ということで、そうすると離職し た人というのはどうしても自分の十分な年金は持てない。しかも、第2号で働こうと思 うと、むしろ今は損をしてしまうくらいです。女性に関して言えば、基礎年金は持てる けれども、それも以上は持てないということを非常に誘導するような制度になっている ところを修正したらどうかなと考えます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。それは2号ですけれども、1号はどうしますか。 ○永瀬委員  1号につきましては、自営の方でもともと1号があったわけで、それを非正規の人も 全部1号に入れるというのは無理があるのではないかと思うんですけれども、いかがで しょうか。 ○高島委員  私は60年改正のときに、専業主婦家庭の男性というので主に男性を頭にモデルに描い ていますから、そのところの給付水準を維持するために、あのときに共働きや単身者の 額を高過ぎるということで減らしたんですよね。そして、国民年金の基礎年金と額をそ ろえるということをしたものだから、同じ金額で2つというふうに考えたことに無理が あったと思うんですよ。  この前、外国のものを説明していただいたのだって、そこのところが2倍にはなって いませんよね。75とか60、あるいは150 だという数字で、2倍になっていないけれど も、日本の場合は2つにしてしまったところに不公平感をすごく助長したと思うんで す。それで3号にとどまった方が得だというふうな感じをみんなに与えてしまった。  ですから、基礎年金の自営業者と、もし保険料をとらないといった場合に、それでは それと合わせて2倍にするんですかと。そうすると、また下がってしまうのではないか という議論は別にしておいて、さっきここでいただいた表を見ても、女性の1人働きだ ったら12万8,000 円、夫の単身者だったら17万1,000 円、夫が世帯主の場合は23万8,000 円ですとさっきおっしゃいましたね。そして、夫婦とも丸々年金をもらっていると29万 9,000 円で、すごい差がありますとおっしゃられたんですけれども、それでは40年掛け てきて12万8,000 円の女性は、これは賃金が安いから仕方がないとは言いながらも余り にも低い。これが公平なんだろうか。それは下駄をはかせている6万7,000 円が高過ぎ るのではありませんかというふうに私は逆に思うんですよね。だから、こちらが6万 7,000 円だったら、妻の方は半額でいいのではないか。3万3,500 円でいいじゃないで すか。なぜ、基礎年金と一緒にするんですかということです。 ○堀委員  しばしば年金の専門家も誤解して、第3号被保険者の基礎年金は夫と同じ6万7,000円 で多過ぎるじゃないかと言っているんですが、実際はそうではないんです。夫の年金額 に2階部分を含める必要がある。アメリカは夫が100 に対して妻は50で半額です。日本 は金額で多過ぎるではないかといわれている。ところがそうではないんです。アメリカ は日本の2階部分の年金を含めて計算している。日本も夫の2階部分の年金を含めれば アメリカとそう変わらない。1階部分同士で比較しているから金額は倍というふうにな るわけですが、2階部分も含めればそうならない。 ○永瀬委員  資料で質問があるんですけれども、今のことに関連するんですが、いただいた資料3 の22ページですが、これですと新規裁定の平均年金月額が男性が20万円、女性が11万円 というふうになっていますけれども、これは基礎年金を含めた額なんですか。そして、 このモデル年金と比べますと、男性がこちらのモデル年金は十八万ぐらいですけれど も、こちらは20万円になっていますが、何の要因でこの差が出ているのか、少し御説明 いただきたいと思います。 ○年金課長補佐  旧厚生年金の場合は、いわゆる定額部分と報酬比例部分のみで厚生年金が幾らと言っ ていたということがありますので、事業年報のデータにつきましては、自身の基礎年金 分といいますか、多くの方については、特別支給の老齢厚生年金の定額部分と報酬比例 部分込みの給付額が出ているものです。 ○永瀬委員  妻分も入ったものですか。 ○年金課長補佐  これは非常に難しいんですが、定額の単価が少しずつ落ちてきていまして、それが女 性の基礎年金の方に徐々に振り変わってきているということですので、時間軸で言う と、いわゆるモデル年金と比較して考えるとしますと、古い方から新しい方にかけて少 しずつ妻の年金に相当するものが抜け落ちていっているというふうに考えることができ ると思います。 ○年金課長  おっしゃるとおりです。妻の加給部分が加算されたような形でこの年金額は出ており ます。 ○永瀬委員  女性に関しては、20年間以上も厚生年金に入って厚生年金の老齢厚生年金を受けられ る女性というのは、平成11年度ですと何パーセントぐらいでしょうか。かなり低い割合 だろうと想像しますけれども、女性の中では非常に長いこと働き続けてきた部類に入る 人がこの人たちで、そういう人でも男性と比較すると半分しかもらえないというふうな 数字というふうに見るわけですね。 ○堀委員  前に私は書いたことがあるんですが、女性の年金額が低いのは2つの要因がある。賃 金額が低いということ、それから20年以上で計算しても、やはり加入期間が男性より短 いんですね。 ○年金課長補佐  今事業年報そのものを持ってきておりませんので、件数は何件ぐらいというのがすぐ に出てまいりません。申し訳ございません。 ○袖井座長  これはモデルはモデルなんですよね。私はモデルを示すというのはまやかしではない かなとときどき思うんです。実態はモデルに達していない。私は、このモデルをもらっ ている人はどのぐらいあるのかといつも疑問に思っているんですけれども、たしか40年 加入というモデルですよね。だけど、実際には40年なんか加入していないんですよね。 だから、実態がこうなので、白書なんかで日本の年金は欧米並みとか欧米を超えたとい うのはいつもインチキだなと私は思っておりまして、その点でもモデルを変えるという のはやはり重要ではないかなと思っております。  いろいろ細かいところまで行ってしまったんですが、ほかに何か御提案はございます か。 ○佐藤委員  先ほどからどのような世帯をモデルとして年金の給付設計を行うかという問いに対し て、宮武委員と堀委員からは共働きというのが一つのモデルになるのではないかという 御意見がありました。それについてお2方のお考えを伺いたいんですが、モデルという のを給付設計のモデルということで考えているわけですが、それとは別に、現行の23万 8,000 円というのは夫婦が老齢になって老後を暮らすのに適当な給付額であるという認 識が恐らくあるんだろうと思います。その点から間違っていればまたお教えいただきた いんですが、仮に妻が一定限度共働きの期間を持っていたとしても、老後の生活に必要 なお金は2人で23万8,000 円だという前提が変わらないとするならば、お2方のお考え というのは、例えば先ほどお示しいただいた再就職フルタイム型をモデルにしようとい うことで議論するのであれば、これに一つに決まるというわけではありませんが、これ をモデルにしようということで議論するのであれば、27万4,000 円の給付水準を23万 8,000円に何らかの形で下げるということを含意していらっしゃるのかどうかというこ とを伺いたいと思います。  それはなぜかと申しますと、堀委員がいみじくも最初に切り出されましたように、こ の問題そのものというのは女性の固有年金が現実には少額になってしまう。勿論制度的 にはフルに働けば、上にあるように同じようにもらえるはずであるが、現実には女性が それだけ働ける環境になくて、低い年金、あるいはある種の非常に少額の年金に甘んじ るケースが多い。それが問題だというところからスタートして、出てくる答えが全体と しては給付水準を切り下げるということになりかねない話になるわけで、私はそれはそ れで結論としてあり得る道だと思います。ただ、そうであれば、要するに現行の23万 8,000円を夫婦単位でどう配分するかの問題に帰着するというだけの話でありまして、 そういう問題のとらえ方で正しいかどうかを是非お教えいただきたいと存じます。 ○宮武委員  私自身は給付水準をいかにすべきかというところで発想しているのではなくて、現在 の専業主婦世帯をモデルにしている年金の基本モデルが実態に合わなくなっているんだ ったら、何を新しくモデルにするべきなのか。個人単位化という御意見は大変よくわか るけれども、現実には踏み切れないのであれば、将来的に個人単位化へのステップも含 めて、共働き世帯というのを基本モデルにしたらどうなんでしょうかということです。 だれが考えても、これから先行きなるべくたくさんの人々が男女ともに多様な働き方で 社会参画していくが求められているわけですから、そういうモデルを基礎に置いて今の 現行制度の矛盾点とか問題点というものを見直していく。そういう筋道で考えたらいか がでしょうかということを申し上げたんです。  ですから、そういう意味では、議論の結論が最終的に27万4,000 円の再就職コースの 給付水準を適切とするのか、あるいはもっと下げて、今の専業主婦家庭の23万8,000 円 にするのか、そこはこれから議論をすべき話だと考えております。この提案そのものは 私は以前から本に書いておりますので、突然の発想ではありません。 ○堀委員  私の説明がちょっと舌足らずだったかもわかりません。女性も働きやすい社会にす る。そうすると、共働きが増えてくる。そうすると、今の片働き世帯をモデルにしてい る年金水準は高過ぎるのではないか。こういう発想から、これからは妻の加入年数に応 じてモデル年金を設定すべきだといいました。  それはなぜかと言うと、高齢者夫婦で無職の老夫婦世帯を家計調査で見ると、大体23 万8,000 円で基本的な生活費は賄われているわけです。したがって、それより高い部分 というのは本来私的年金に任せるべき分野であるという趣旨です。 ○高島委員  私は夫婦世帯と単身世帯をモデルで同時に表すべきだと思うんです。単身世帯は幾ら なのか、そして夫婦世帯は幾らなのかを両方を並列して表せば、1人で暮らしていくた めには年金が幾らもらえて、これなら生活できる、夫婦世帯は幾らですと。老後保障と いう考え方に立ちますからね。この前いただいた先進国の公的年金制度も皆そういう表 し方になっていますよね。だから、これを常にモデルにすべきではありませんか。 ○住田委員  今日、最初に宮武先生の方からお話がありまして、男性の委員の先生が、今後は片働 きではなく共働きをモデルとすべきだという御意見が続いたことについて、個人的に非 常に力強く思っております。つまり、今男女共同参画というときに、女性を働かせる論 理で反対であるというような非常に信じられない意見が一部に有力に主張されている中 で、そういう御意見が出たということについてです。  それと、私自身、そういうときには資料、調査を基にしてお話しするのが一番合理的 で、かつ説得力を持つのではないかと思いますが、今日お配りいただいた資料3の1− 1「年齢別就業意識の推移」、これが今後の女性の働き方、生き方を探る上で非常に大 きな示唆をしているような気がしています。勿論、現実はこうはいかないんですけれど も、やはり就業意識としては、「子供が出来ても、ずっと職業を続けている方がよい」 という継続就労型が増えてきている。これは明らかなことであろうかと思います。最初 の御説明にあったとおりだと思います。  もう一つ問題なのは、「子供が大きくなったら再び職業を持つ方がよい」というのと かなり拮抗した状況にあるということなんです。実は、これは我が国の女性の意識をほ かの国と比べて見事に特異なものとして表しているわけでして、これがあるがゆえにM 字型カーブがあり、そして終身雇用制の中で女性の低賃金の一因となっているわけだろ うと思います。  この「子供が出来ても、ずっと職業を続けている方がよい」と「子供が大きくなった ら再び職業を持つ方がよい」というどちらに軸足を置くべきかというのは今はすぐには 言えないことかと思いますけれども、私個人としては、ほかの国を見ますともう既に継 続就労型というような政策をとっている国の方が多数であるというようなことからする と、やはり我が国も将来はそちらに行くんだろうという気持ちで、単に共働きというだ けではなく、やはり継続就労型を前提とした制度設計というのを是非考えていただきた いと思っております。  先ほど、仕事と子育て両立支援という形で、男女共同参画会議の最初の専門調査会が できまして、そこで待機児童ゼロ作戦を始めとしていろいろな両立支援策が出ています けれども、これはあくまで育児期間をお休みするということが前提ではなく、基本的に は継続就労を前提としていかに仕事が続けられるかという施策を、特に専業主婦が多い 都会を中心にして一生懸命模索した政策のいろいろな提言だったと理解しております。  それを前提にしますと、やはり今後は世帯間の不公平という意味でいくと、先ほども おっしゃったように、専業主婦世帯の優遇策、恩恵策である第3号というのをいずれ廃 止すべきであろうということは、恐らくこの中で皆さんそういうふうにおっしゃったと いうふうに私は理解しております。勿論その時期をいつにするかということはやはりき ちんと明言する責任がこの中ではあるかと思います。  あとは給付設計の問題なんですけれども、ここは私の個人的な意見で、制度にすぐ反 映するかどうかはともかくとしまして、私は男女が家庭内でも平等であると思っており ます。女性と男性がどこから収入を得て、収入を得ないで、どういう形で家庭の責任を 果して寄与しているかということであれば、たまたま夫がたくさん働いて外から収入を 得て、女性は少なくないしはゼロの収入であっても、女性は今それなりに家事労働でほ とんど貢献しているわけですから、給付のときには足して2で割った数字が女性の年金 額であるというふうに考えております。  勿論、婚姻期間中はそのような計算をする必要はありませんが、離婚する時には足し て2で割るという年金分割制度を今とっておきませんと、我が国の女性の賃金というの は先進国の中で格段に低い賃金水準です。ほかの国は男女比で8割、多いところは9割 近くいっているんですけれども、我が国はようやく五、六割です。それから、我が国の 場合、女性が格段に重い家事責任を負っております。男性は女性と比べまして家事労働 時間は先進国の中で日本は最低で、10%にいっていない。ほかの国ですと、男性の家事 労働時間については女性の5割とか6割とか、何十パーセント単位といっていますけれ ども、我が国の男性は家庭においては全く寄与していない。申し訳ないけれども、そう いう現実であります。  そうしますと、やはり年金を考えるときにも、給付のときには男女同額であるべきだ と私は理念として思っております。ただ、それを実際に計算するときに非常にややこし いことになるのであれば、せめて離婚したときだけでも、今の段階では年金分割は必要 な制度ではないかというふうな気がしております。  ですから、いよいよ世帯間の公平性の問題から世帯内での男女の公平も探る時期が来 た。ただ、それは本来はお互い夫婦間の話し合いで済ませるものであって、それを年金 制度の中に組み込むかどうかは全く別の問題かとは思っております。  以上です。 ○下村委員  私も、1ページの後段にあります年金制度において男女共同参画をどのように進めて いくのかということは、私にとっても大きな課題だと思っております。女性のライフス タイルの変化と言われていますけれども、依然としてこれは固定的な性別役割分業を崩 さないままのライフスタイルの変化というふうにとれて仕方がないんですね。そこを温 存する、あるいは補強するかのように、先ほど来出ております3号の問題ですけれど も、もしそこの保険料の負担というふうに変えるならば、これは急激には変えられない ことはよくわかりますけれども、具体的にはどのような不具合が生じてくるのかという 逆からの考察というのをどなたか教えていただければありがたいと思っております。  確かに、3号の中にもいろいろあるということはわかりますけれども、収入の少ない 若い世帯からいきなりということは負担感が増すということはわかっていますが、具体 的にどのような負条件がここには出てくるのか。あるいは、かなりの数の人が負担し得 るにもかかわらず優遇されているということが、ここらあたりは税とともに男女共同参 画を実質的に目指すにはネックになっている部分ではないかなと私は思っております。 ○大島委員  今のことに少し関連するんですけれども、資料3の6ページの第3号被保険者による 第3号被保険者制度の評価のところですが、私はこの検討会の中で若い3号被保険者の 声が聞ければということがありまして、6月に30代、40代を中心に200 名程度に、15項 目ぐらいなんですけれども、主婦の就労と年金に関するアンケートをとりました。  その中で、この表では現在の制度の見直しが必要が5.6 %、保険料をとるべきではな いというのが全部足しますと71.9%になっていますけれども、私のとりましたアンケー トでは、私もこういう数字はちょっと予想しなかったんですけれども、20代、30代では 負担しなくてもよいという人の方が多いんですけれども、40代、50代以上では負担する 方がいいというのが多くなっていました。平均しますと、負担するが48.5%で、負担し ないが40.8%、その他が10%という結果になりました。  この資料の調査は平成9年ですから、その後、ここ数年女性の自立については法的に も政策面でも労働の場でも少しずつ変化してきていますし、特にこの検討会が昨年でき ましてから、マスコミで相当取り上げられたこともあって、主婦の年金に関する意識と いうのも変わってきているのではないかと思います。ですから、3号を考える場合にこ れを基には考えてほしくないというふうに思いますので、一言申し上げておきます。 ○袖井座長  どうもありがとうございます。いずれまた3号を中心にしてヒアリングもいたします ので、そのときには大島委員にも是非御発言いただきたいと思います。 ○宮武委員  下村さんがおっしゃった3号も様々であるということは、私が申し上げたように、若 い人で子育てで大変なときに更に保険料をとるのかということになるわけで、まさに3 号はお金持ちの方も含めまして様々なんですね。  要するに、私はさっきも申し上げたように、もし今3号から直接に保険料をとるとい うことになれば、それは二十歳以上の学生と同じことが起きるのはもう火を見るよりも 明らかで、大島さんの御調査というのは熱心になさって私は敬意を表しますけれども、 では実際に財布を開いてお金を払うときになって、その気持ちが続くかというと、決し てなかなか続くものではないということです。  もう一つ、私がずっと気になっているのは、1万3,300 円という保険料そのものは、 自営業の方の所得把握が難しいから一律定額の保険料を課しているわけですね。金持ち であっても、所得の少ない人に対しても、極めて拙劣な人頭税のような形で1万3,300 円をとっているわけですね。それを更に3号の問題の解決に使ったら、矛盾がどんどん 拡大していくばかりですね。所得の差を無視して、一律で1万3,300 円をとっていく。 これは絶対避けた方がいいと思います。もし、3号が払うようにするんだったら、保険 料率で払うべきです。応能負担で払うべきです。そこのところでいつも気になっている ものですから、私なりにそう考えています。 ○堀委員  先ほど言いましたように、第3号で所得がある人というのは基本的にはパートで働い ている人だと思うんですね。130 万円というのは月10万円強ですから割と高いんです ね。先ほど言いましたように、パートにも厚生年金を適用して、定率の保険料を払って もらうというふうにすれば、所得のある第3号が減っていく。  問題なのは、所得が全くない、あるいは保険料も払えないほどに低い人たちです。こ れらの人たちに対しては、現在の第3号被保険者制度を残す。この制度は、サラリーマ ングループの中で夫が応能負担で、所得のない配偶者分も含めて保険料を払うという仕 組みで、私は合理的なシステムだと思います。所得が130 万円以下であっても保険料が 払えるパートの人はできるだけ厚生年金を適用していく。そういった形で解決は図り得 るのではないかと思います。  もう一つは、第3号被保険者制度があるから働かないと従来言われているんですが、 本当にそうなのか。むしろ、女性が働けない労働慣行とか、あるいは家事、育児を女性 が負担する、そういう社会慣行が働けないシステムをつくっている。第3号があるから 働かないというのは、そんなに大きな問題かなと私はいつも思っています。 ○永瀬委員  先ほど私は第3号廃止というふうに申し上げましたけれども、前回そういうふうに言 わなかったときに、新聞で全然逆の報道をされたことがあったので、はっきりそう申し 上げたんですが、それはそう簡単なことではないというのは勿論思うんですね。それか ら、収入がない事情のある人に対して、ある程度の基礎年金という部分ではいい制度だ と思うんです。  ただ、女性の立場から考えると、どれをすると一番いいかなというのはちゃんと考え て行動するわけで、そのときにパートで働いてある一定枠を超えるのと専業主婦でいる のとどっちが得かとか、それからフルタイムで第2号で一生懸命働く場合とどっちが得 かというのは、やはりよくよく考えて選択すると思うんです。そのときに、できれば余 り働かない方が得なような制度を残しておくというのはとても悪い。  そういう意味では、例えば末子が一定年齢に達するとか、あるいは介護負担がない人 に対しての今の3号のような便益部分を例えば半分に減らすとかを考える。今は所得免 除の人はもともと半分しかもらえないので、例えば3号も事情がない人は給付を半分に 減らす。ただし、そういう人が再就職をしたときにも、実は本当に微々たる年金しかも らえないところが私は大きい問題だと思うんです。  だから、例えば育児等の理由で離職していた人たちが、もう一度労働市場にカムバッ クしたときには働いてよかったというような年金がもらえるような設計にしたい。報酬 比例部分は単純に全く定率、男女同じ、期間比例、報酬月額比例となっていますが、こ れですと、そうやってカムバックした人の年金部分というのは本当に小さくなってしま います。ここも変えないと3号の廃止という変更は女性にとってはとても損な変更だっ たということになりかねない。変更するからにはみんながよかったと思うような変更に したいわけですし、それに今後の労働市場等の構造を考えていきますと、3号がうんと いて、少ない正規の人たちで全員を支えていけるような制度なんてできるわけがないの です。そうすると企業も正規社員を雇うのを嫌がって、正規はどんどん縮小していきま すよね。そして、ごくわずかの人が法外に高い保険料を払いながら大勢の人を支えると いうのは全く無理な制度ですので、そこのところを変更するとすれば、事情のある人に ついては十分に考慮する。しかし、そうではない人にとっては免除はやめる。その上で 現実の労働市場における大きな賃金格差がそのまま残るような公的年金というのは果し てどんなものだろうか、再配分の考慮を入れる、ということを申し上げたいと思いま す。 ○駒村委員  下村委員からお話があったように、例えば3号をとるといったときに、さっき宮武委 員からそれは難しいのではないかという問題があったんですけれども、とり方というの もいろいろな方法がありまして、以前お話ししたように、属性別の応益という方法もあ れば、いろいろな方法があって、そこは1つだけではないと思うわけです。  それから、3号の問題を給付で調整するか、負担で調整するかという考え方もありま すので、この辺は今日いただいた資料1はこれまでの議論をよく紹介してあるんですけ れども、一度こういう制度にした場合はこういうデメリットがある、こういう制度にし た場合はこういうデメリットがあるという形で、3号の問題、子どもの育児の問題、分 割に関する問題、遺族年金に関する問題というのが大きくテーマとしてあるので、その 各案についてデメリット、メリットを出していただいて、全体としてそれが哲学、理念 の中に整合性があるのか、また別の制度との整合性があるのか、それから柔軟性がある のかどうか、こういう形で一度整理していただくとわかりやすくなると思うんですけれ ども、お願いできますでしょうか。 ○年金課長  いずれ3号なり、個別の論点について詰めた議論をこの秋にお願いしなければなりま せんから、そのときに今のような、こういうふうになればこういう問題点があるとか、 そのような資料をきちんと準備して、御議論していただけるようにさせていただきま す。 ○袖井座長  その点については駒村さんにいろいろお知恵を拝借しなければいけないのではないか と思いますので、よろしくお願いします。 ○住田委員  それに関連してですけれども、年金と税制の問題とは大いに絡んでくると思いますの で、その意味では、所得税の非課税世帯の年収というのは日本は非常に高いと言われて おりますけれども、ただ今回、年金で豊かな専業主婦世帯と貧しい専業主婦世帯と最初 におっしゃいましたけれども、税制でそういうふうな一つの区分をやっているというの は、年金に反映しても一つあるのかなと思います。その数字がいずれ変わるかもしれま せんけれども、それを一つの基準として、是非税制との整合性ある検討もできればいい なと思っております。  それともう一つは、3号問題を言うときに、将来の3号廃止は皆さん異論がないんで すけれども、現実の今の専業主婦世帯から負担をしていただくかどうかというときに、 全くだめというのと、もう少しずつでもいいのではないかというのと、やはりそこでも 大きな理念は分かれていると思います。とれないと決めつけるのではなく、とれるんだ けれども、それはどの程度受入れ可能かということを決めるのが、ひょっとして私はこ の委員会の仕事ではないかと思っていますので、余り一方に偏することなく、旧来の制 度を墨守することなく、柔軟に是非考えていただきたいと思っております。 ○翁委員  私も今日のお話を伺っていて、特に短時間労働者への適用をそのレベルを下げるとい うような方向でどのぐらい3号保険者のシェアを小さくし、2号保険者とかそういった ところのウエートを上げていくのか。私は永瀬さんがおっしゃったとおりだと思うんで すね。やはりこれだけ高齢化が急速に進んで、人口ピラミッドが三角から四角になって しまうような世界の中で、これだけ3号保険者が多く、働き手が少ないというのでは、 やはり日本経済全体がもたないと思いますので、新しい働き方をしてきている大きな流 れの中で、短時間労働者、そういった人たちにどういう年金を適用していくかというの が一つの大きなポイントだと思いますし、同時に、これが企業にとって負担にならない ように、企業にとっても雇用促進的に働くような、そういった制度がどういうふうに設 計できるかというようなことを考えていくべきなのではないかと思いました。  もう一つは、今日は余り論点として出てこなかったんですけれども、確かに年金制度 というのは所得に応じて拠出し、ニーズに応じて給付するという原則があるわけですけ れども、やはりこういった厳しい環境の中で、公的年金でどこまでいろいろなことを面 倒を見ていくのかという部分があって、企業年金とか私的年金とか、そういった部分と の役割分担で、特に報酬比例部分についてどのぐらいを見ていけるのかということにつ いての将来像というのも少し見極めながら、公的年金のレベルというのを考えていく必 要があるのではないかなと思いました。 ○堀岡委員  今の意見については、全く私も同じ考えです。又、現状の公的年金制度について議論 する中で、宮武先生と堀先生の現実的な対応というのは我々も非常に良く理解できま す。一方、住田先生がいつもおっしゃるように、これからの社会を変えていく、あるい は若い世代の意識を変えていくために、公的年金というか、国がきちっとしなければい けない年金制度を変えていくという意見も理解できます。高島先生もおっしゃったよう に、本当にニーズのある人ですね、これを国がどこまで保障するかが大事だと思いま す。  現行の公的年金は当然確定給付といいますか、給付ありきの制度設計だと思います が、これからの人たちにすると、2階建ての部分を思い切って完全に拠出年金型のまさ に拠出した形の年金というふうに切り換えてしまえば、損得の議論もなくすっきりす る。当然経過措置がある前提ですけれども。公的年金の部分に私的年金的な、報酬比例 部分があるがゆえに損だ得だとか、1、2、3というのがあるので、そうではなくて、 基礎年金の部分は皆年金でみんな同じ年金にする。そこから上の部分は拠出年金ですよ と。その拠出年金は本来企業年金であり私的年金でやらなければいけないんだけれど も、国としてある程度まで強制的な自助努力でやりなさいと、こういうイメージの制度 設計が考えられるかどうか。年金の考え方を大きく変えない限り、どうも意見がかみ合 わない感じがして仕方がないんです。まさに自分が出したのは拠出年金にすれば財政上 もはっきりしますし、払っていない期間は払わないとはっきりしていますので。  一方、応能負担つまり相互扶助という考え方について、どうして年金の場合はこんな に議論になって、健康保険の場合は全然文句が出ないのか。健康保険もいっぱい損だ得 だとあるんですよね。何で健康保険が問題にならないで、年金が問題になるのか。それ はやはり年金には貯金みたいなイメージがあるからだと思います。公的年金は社会保険 という概念でありながら、それが応能負担、ニーズに応じた給付だと思うんですが、損 だ得だと出てくるのは、やはり社会保障の部分と私的保険が少しごっちゃになった公的 年金制度だからだと思います。  私は、堀先生がおっしゃるように家族単位というものを基本に設定したいわゆる社会 保険で、その中で1階建てと2階建てがあるよという理屈には十分納得できる。公的年 金に私的年金であり企業年金が加算されるんだから、自分で頑張る部分は私的年金でや ればいいと考えますし、公的年金の考え方は現状のままで、給付のニーズと負担につい て、公平という視点で多少制度変更を検討すべきだと考えています。住田先生がおっし ゃるように、将来はそうではないと考えるなら、1階建てと2階建てをはっきり分けた 議論をしないと根本的な解決にならないのではないか。そうすると、3号なんて要らな いというふうになりますので、3号を要らないとするなら、公的年金に拠出型年金を導 入すべきだという気がします。 ○袖井座長  ドラスティックな案が出てしまいましたが、中田さん、どうぞ。 ○中田委員  私も普段企業年金の仕事をしている関係で、この検討会で企業年金の話がほとんど出 ないので多少違和感がありました。現在、働いている人の半分以上は企業年金を持つ会 社で働いておりますので、企業年金なしに公的年金のことを議論すると、ちょっと片手 落ちの感じがあるわけです。したがって、給付レベルを議論するときに、本来ならば企 業年金のレベルも頭に入れてしなければならないと思うんですが、この委員会ではずっ と企業年金の話をしないできましたので、これから急にやるというのも変な感じがいた します。報告書を書かれるときに、企業年金は余り議論していないということを少しコ メントしていただければと思います。  それからもう一点、先ほどのモデル年金のところで、モデルといった場合に片働き世 帯、両働き世帯、個人、恐らくこの3つが中心だと思います。今日は両働き世帯のモデ ルという話が出てきているんですが、個人ベースの考えで年金制度をもう一回考えてみ るべきだという御意見の方はここにはおられないというふうに考えていいかどうか、私 の個人的な感じでは、今まではそういう意見がかなり強いような感じだったんですが、 今日は全く出ていないので、そういう御意見はないのか、そこを御確認いただけたらと 思います。 ○袖井座長  たまたま今日は出てこないだけで、そういうことはないと思います。 ○山口委員  最後に大変基本的な議論が出たんですけれども、この問題のもともとの発端というの は、我が国の年金制度が皆年金という制度でやってきて、これを実現しようという中で 皆年金の中から落ちこぼれてしまう女性、特に無業の女性の年金権をどうするかという のが基本にあってこの議論が続いてきたし、また改正もそういうことで基本的にやられ てきたわけですね。そういう意味で、議論を整理する最初の段階として、高島先生が言 われましたけれども、基本的には我が国が維持してきた国民皆年金体制というものを維 持するんだということをベースに置いた議論が必要だと思います。  それから、今のその中で皆年金というのは一体どういうことかということで企業年金 のことが出てまいりましたけれども、少なくとも最も普通の年金を必要とするサラリー マングループの老後保障ということになれば、従前の所得をどの程度保障していくか。 それから社会保険という形にすれば、拠出にある程度見合った保障をしていく。そうい う社会保険の中で、公的年金で最も大事な社会経済情勢に応じたそれなりの生活保障が できるという前提で国民的な支持を受けてやってきたわけですから、企業年金と公的な 部分の守備範囲ということは基本的には大変大事なことで、これからの年金制度の基本 を考えていく場合に、もしその議論があるんだとすれば、公的年金でどの程度の部分を カバーしていくかというのが、女性の年金問題も含めて、基本的なところでやはり議論 をしておかないと非常に変なことになるのではないか。  そういう意味では、最後に出ましたけれども、この問題を議論していく場合の基本的 な問題としてそのスタンスだけは十分議論をした上で、この先進めていきたいものだと 思います。 ○高島委員  終わりの方になって、比例報酬部分をどうするか、企業年金の話も出てきましたけれ ども、もし企業年金の話をするとしたら、女性は企業年金においた方がもっと不利にな っているんですよね。だから、公的年金でも女性は不利だという話をしているのに、企 業年金で補えばいいというものがどんどん出てくると、それはもっと厳密な議論が必要 だということを申し上げておきたいと思います。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。今2分の1が企業年金に加入しているとおっしゃい ましたけれども、女性の多くは企業年金のないところで働いている人が大変に多いとい う問題もありますので、その辺のところも議論しないといけないと思います。  そろそろ時間でございますが、今最後に出てきたような問題はこの論点のところの1 番最後のところですね。健康保険制度、税制、法律、企業年金はないんですが、企業の 扶養手当とか、そのあたりのところが十分議論できなかったんですが、最後になってど どっと出てきましたが、この辺も十分議論しないといけないかなと思います。  今日、モデルの見直しということでしたが、確かに片働きで片一方が専業主婦という のは余りリアリスティックではないと思いますけれども、共働きをモデルとするとした 場合に、どの程度の共働きを考えるか、全くのフルタイムを考えるか、あるいは子育て 後働くという短期間の人を考えるかとか、そういう問題が出てくると思います。  それから、高島委員から御指摘があった単身者の問題ですが、確かに女性の高齢者の 貧困ということが非常に大きな問題だと思うんですね。ですから、そこの部分をどうい うふうに保障していくか。モデルというものを考える場合にどういうモデルを考えるか ということと、それから実際にニーズに応じて受け取るということですけれども、高齢 になった場合にどの程度の生活費が必要なのかということを、このモデルをつくられた ときが大分前だと思いますので、やはり現在のレベルでもう一度どのぐらいあったらデ ィーセントな人間らしい生活ができるのかということを計算してみる必要があるのでは ないかと思っております。  それから、最後の方で出てきましたけれども、公的年金でどこまでカバーするのかと いう問題ですね。これもなかなか難しい問題だと思いますが、2階部分は全部確定拠出 にしてしまうというような非常にドラスティックな案も出てまいりましたけれども、そ こはかなり難しいのではないか。せいぜい3階部分はそれはいけるけれども、2階部分 まではというのはかなり難しいのではないかと私は個人的には思っております。  一応、今後考えていく上で、多分ずっと先の方はやはり個人単位とか3号廃止という ところへ行くと思うんですが、その途中段階をかなり現実的な案を構築しなければいけ ないのではないかと思いますので、今日皆様から出ましたいろいろな御提案を得て、更 に次回に議論を深めていきたいと考えております。  それでは、次回の予定について事務局からお願いいたします。 ○企画官  次回は9月25日火曜日午後4時から、場所は厚生労働省内の省議室を予定しておりま す。別途御案内を申し上げますので、よろしくお願いいたします。  それから、次回の検討会では専業主婦や専業主婦であった方を交えてのフリートーキ ングを予定しております。現在、座長、副座長と御相談させていただきまして、御出席 をお願いしたい方々と調整をとっております。これらの方々の日程の御都合等もござい ますので、御参加いただく方々が決まり次第、別途御連絡をさせていただきたいと存じ ております。  なお、12月の日程につきましては比較的皆様方の御都合がよい12月7日午後2時から を予備日として予定させていただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。 どうもありがとうございました。                                     閉 会 (照会先)  厚生労働省年金局年金課   課長補佐     度山   企画法令第3係長 三浦   電話03-5253-1111(内3338)     03-3591-1013(夜間)