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厚生年金及び国民年金における積立金運用の状況が
年金財政に与える影響評価のあり方について
(公的年金における積立金の位置付けについて)


1.公的年金における積立金の位置付け

 公的年金においては、段階保険料方式、すなわち、賦課方式(そのときどきの高齢者の年金をそのときどきの現役世代の保険料で賄う方式)を基本としつつも将来の急速かつ過度となる保険料の上昇を避けるために一定の積立金を保有することを前提とした財政計画に基づき段階的に保険料を引き上げていく方式をとっている。
 そのときどきの国民の合意に基づく財政運営を行っているので、私的年金のようにいわゆる給付現価に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのではなく、基本的に、財政計画上の積立金に相当するものを現に積み立てるべき額と考えるのが適当である。


2.積立金運用の状況が年金財政に与える影響評価のあり方

 公的年金における積立金の位置付けの観点から、積立金の運用評価のあり方を整理する必要がある。具体的には、財政再計算の見通しどおりに実績の積立金が推移しているかどうかをチェックするという立場に立ち、その乖離要因のひとつである運用収益について、その状況が年金財政に与える影響を評価することとなる。
 その際、公的年金の給付額は長期的にみて名目賃金上昇率に連動して増加するものであることから、名目運用利回りと名目賃金上昇率の差である実質運用利回りにより運用収益を捉える必要がある。
 さらに、運用収益を複合ベンチマークとの乖離分(運用管理上の問題)とそれ以外(ポートフォリオ策定や財政再計算の前提の問題)に分解して評価・検討を行うこととなる。


3.積立金運用の状況が年金財政に与える影響評価について

 積立金運用の状況が年金財政に与える影響については、報告書を作成して、社会保障審議会に提出し、公表することが義務づけられている。

(参考)

厚生年金保険法(抄)

(報告書の提出及び公表)

第79条の5 厚生労働大臣は、毎年度積立金の運用についての報告書を作成し、当該年度における年金資金運用基金の決算完結後遅滞なく、社会保障審議会に提出するとともに、これを公表しなければならない。

2 前項の報告書には、当該年度の積立金の運用の状況及びその年金財政に与える影響並びに年金資金運用基金における年金資金の管理及び運用の評価を記載するとともに、当該年度における年金資金運用基金の業務概況書を添付しなければならない。


国民年金法(抄)

(報告書の提出及び公表)

第78条 厚生労働大臣は、毎年度積立金の運用についての報告書を作成し、当該年度における年金資金運用基金の決算完結後遅滞なく、社会保障審議会に提出するとともに、これを公表しなければならない。

2 前項の報告書には、当該年度の積立金の運用の状況及びその年金財政に与える影響並びに年金資金運用基金における年金資金の管理及び運用の評価を記載するとともに、当該年度における年金資金運用基金の業務概況書を添付しなければならない。

注:報告書は、積立金の自主運用が開始された平成13年度の決算より作成される。


(参考)

(1) 厚生年金の保険料率の見通し

厚生年金の保険料率の見通しの図

(*1)  保険料率5年間据置き
 国庫負担割合は1/3
(*2)  保険料率は、すべて標準報酬ベース


(2) 厚生年金の財政見通し

改正制度

年度 保険料率
対総報酬(標準報酬換算)
収入合計 支出合計 収支
差引残
年度末
積立金
年度末
積立金
(11年度価格)
積立
度合
  保険料収入 運用収入
平成(西暦)
12(2000)
13(2001)
14(2002)
15(2003)
16(2004)
17(2005)
22(2010)
27(2015)
32(2020)
37(2025)
%%
17.35
17.35
17.35
13.58   (17.35)
15.50   (19.85)
15.50   (19.85)
17.42   (22.35)
19.35   (24.85)
21.27   (27.35)
21.6    (27.8)
兆円
33.1
33.9
35.1
35.7
38.2
41.6
50.8
60.7
71.9
80.6
兆円
22.9
23.4
24.4
24.7
26.7
29.5
36.4
44.7
54.4
60.9
兆円
6.2
6.2
6.3
6.4
6.6
7.1
8.1
8.4
9.0
10.6
兆円
28.1
29.8
31.5
33.4
35.2
37.1
47.7
57.9
65.0
71.2
兆円
5.0
4.1
3.6
2.3
3.0
4.5
3.1
2.7
6.9
9.5
兆円
177.2
181.3
184.9
187.2
190.2
194.8
209.2
216.3
234.2
275.1
兆円
177.0
178.4
179.3
178.9
173.8
175.4
168.2
155.2
149.9
157.2
6.1
5.9
5.8
5.5
5.3
5.1
4.3
3.7
3.5
3.7
42(2030)
52(2040)
62(2050)
72(2060)
21.6    (27.8)
21.6    (27.8)
21.6    (27.8)
21.6    (27.8)
88.7
103.6
118.6
137.8
66.1
75.2
87.7
105.3
12.6
15.5
15.1
14.9
78.5
101.7
121.8
134.9
10.2
1.9
-3.2
3.0
327.1
396.9
383.7
382.3
165.2
156.6
118.2
92.0
4.0
3.9
3.2
2.8

(注1) 保険料率は5年間据置き、平成16(2004)年10月に19.85%とする。
以降は5年毎に2.5%ずつ引き上げるものとしている。(保険料率は、標準報酬ベース)国庫負担割合は1/3としている。
(注2)
賃金上昇率 2.5%
物価上昇率 1.5%
運用利回り 4.0%
年金改定率(新規裁定者分、年当たり) 2.5%(ただし、平成36年財政再計算期までは2.3%)
(注3) 「積立度合」とは、前年度末積立金の当年度の支出合計に対する倍率である。


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