01/08/22 第3回医師臨床研修検討部会議事録 第3回 医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会                     日時 平成13年8月22日(水)                        14:00 〜 16:00                     場所 厚生労働省本館専用第21会議室 ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから「医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部 会」を開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご 出席いただきまして誠にありがとうございます。  はじめに本日の出欠状況についてご報告をさせていただきます。本日は飛行機の便等 の関係によりまして中野委員、徳永委員がご欠席です。  また、本日は前回に引き続きまして文部科学省から高等教育局医学教育課の村田課 長、今回新たに厚生労働省労働基準監督課の扇義人主任中央労働基準監察監督官が出席 しております。どうぞよろしくお願いいたします。それでは矢崎部会長よろしくお願い 申し上げます。 ○部会長(矢崎)  台風が間近に迫っているところ大勢の委員の方々にお集まりいただきまして、重ねて 御礼を申し上げます。議事に入りたいと思いますが、この検討部会では、これまで第1 回、第2回の検討会において、ヒアリング等を行って臨床研修の現状について理解を深 めてまいりました。そろそろ現時点で考えられる論点を整理しまして、論点ごとの実質 的な議論を行っていきたいと考えています。本日の検討会では、はじめに論点整理を行 いまして、その後、具体的な議論に入っていきたいと考えますので、よろしくお願いい たします。事務局にあらかじめ論点を整理していただいていますので、はじめにご説明 をお願いいたします。 ○事務局  事務局から資料に基づきまして説明をさせていただきます。説明に先立ちまして資料 の確認をさせていただきます。資料1として第2回の議事録、資料2として論点整理メ モ(案)、その後に資料3−1「研修医の給与と勤務の状況について」、最後に資料3 −2として「労働者に該当する場合に適用される主な労働基準法等関係法令」でありま す。 また、委員の先生方のお席には、これ以外に本日ご欠席の中野委員から提出されました 資料1枚紙と、福井委員からご提出をいただきました「研修医の採用等について」とい う1枚紙を配付させていただいています。よろしくお願い申し上げます。  資料2「論点整理メモ」について簡単に説明をさせていただきます。先ほど部会長か らもございましたように、この論点整理メモは第1回、第2回の議論を踏まえた、現在 の時点での論点ということで整理をしているものであり、第1回の検討会の際に説明を いたしました「本検討部会における検討事項」に沿って、まとめております。順に読み 上げましてご説明とさせていただきます。 ○部会長  ありがとうございました。いまお話のように、過去2回にわたりまして、この部会で 委員の皆様に大変ご熱心に幅広い視点からご討論をいただきました。その間に具体的に 詰めるべきポイントを挙げていただきました。それを今回、事務局が整理してこのよう なメモの形で先生方にお配りいたしました。この中で付け加えるポイント、論点があれ ば付け加えていただきたい。あるいは議論の間にこの趣旨と少し違うのではないかとい う項目がありましたら、それについてもご訂正いただければ大変有難く思います。皆様 からご意見をいただくところですが、まず福井先生から何かございますか。 ○福井委員  前回の委員会の最後に10数分しかなかったものですから、国立大学医学部附属病院長 会議の中にあるワーキンググループで行っている検討について、前回の話に少しだけ補 足させていただきたいと思います。「研修医の採用等について」平成13年8月22日と書 いてある資料を使って簡単に説明させていただきます。  私たちの検討部会では、第一に研修医の採用につきまして、前回も触れさせていただ きましたが、研修医に情報を提供するという意味だけではなくて、研修施設の競争的な 環境をつくるという意味でも、研修医の採用時には是非マッチング・システムを導入し ていただきたいと考えております。  2番目が「研修医の身分」についてです。曖昧な位置付けに決してならないように、 研修医を当該病院の研修を行う医師として明確に位置付けをしていただきたい。病院の 中では特定の診療科に所属しないで、少なくとも2年間の研修の期間は卒後臨床研修セ ンターのような研修運営組織が一元的に管理して、一人ひとりの研修医の研修進行具合 に目配せをする必要があると思います。大学附属病院と研修協力病院が群を作って、研 修協力病院においても、研修医は同様の処遇、身分、給与を得て、勉強できるようにお 願いしたいと思います。  3番目、「給与」についてです。これも以前から問題になっていることです。なかな か司法修習生のような形での給与の出し方は難しいということは伺ってはおりますが、 少なくとも基本給や、社会保険、時間外手当、当直手当などの支給をしていただいて、 研修に専念できる額を保障していただきたい。そして、研修病院を通して支給するとい う形ではなくて、研修医個人に支出して、病院を移ってもその個人に付いていくような 形で支給していただきたい。都会の研修施設だけでなくて、特に遠方の地域の研修施設 で勉強をする研修医も多いわけですので、是非宿舎の確保をお願いしたいと思います。 このような事柄が担保されるように、国からの財政的な支援をお願いしたいと考えてい ます。  「研修医の当直」についてですが、これは欧米でも20年ほど前から大問題になってき て、研修のプログラムがここ十数年間で非常に改善されました。そのいちばんの大きな 問題は、レジデントが過度の夜勤をしていて睡眠不足のために、臨床上のいろいろな医 療過誤に繋がったということがあります。そのような轍を踏まないよう、最初から我が 国での今回の必修プログラムでは、過度の夜勤をしたり、身体的に過度の負担にならな いよう、しかも研修医任せになることのないような研修プログラムにできればと思いま す。  アルバイトについては研修に専念できるよう、当初からアルバイトをさせないで、し かも適切な生活の保障を行ってもらった上で、研修に専念させるということが今回の最 初のスターティング・ポイントだった思います。是非アルバイトはさせない、その代り 生活保障は十分するという形のシステムを作りたいと、私たちの検討部会では考えてい ます。以上です。 ○部会長  ありがとうございました。いくつかの具体的な論点をここで提起されたと思います。 先ほど事務局から申し上げました「論点メモ」について、このような形で整理させてい ただくということでご異論はございませんでしょうか。 ○山口委員  この論点整理はいままでの2回の意見を大体まとめてある、原則的にはそう思いま す。この中で少し追加と言いますか意見を述べさせていただきたいと思います。  第1回目に私は申し上げたのですが、いわゆる専門医療、内科系、外科系に分けての 従来の研修の在り方、この臨床部門のそういう面は私は従来どおりの踏襲と言います か、考え方を踏まえていいのではないか。ただ、プライマリケアの分野がもし欠けてい るとすれば、それはやはりもう少し充実、強化すべきであろう。スーパーローテート方 式の中で、それをしていただきたい。  私が申し上げたいのはそれ以外の分野です。地域医療あるいは保健、福祉、更に今度 の介護、あるいは在宅医療、老人医療、従来も書いてありましたが末期医療、ターミナ ルケア、こういうものの研修も非常に大事だろうと思います。特に「国民から見た医師 像」といいますか、お医者さんというものがこういう分野について、やはりきちんとし た認識を持ち、患者さんに対してもそれが指導できるという医師像が望ましいのではな いかと思います。  私が所属しています国保診療施設協議会は、全国で病院が400、診療所が800、計1,200 ほどあります。大きい病院は1,000ベッドから、小さい病院は本当に数十床までいろいろ あるわけです。そのほとんどが全国自治体病院協議会の会員でもあるわけです。国民健 康保険の理念に則って、我々、国保直診と言っている「直営診療施設」、そういう病院 や診療所の理念というのは、一言で言うと「地域包括医療の実践」ということになろう かと思います。包括というのは保健、医療、福祉を総合的にという意味でして、いま申 し上げました地域医療から在宅医療から、老人医療から、末期医療から、保健福祉の分 野までということですが、非常に間口の広い医療を展開しています。  先ほど言いましたように、国民の目から見た時には、やはりそういう医師像が望まし いのではないかと思っています。そのために1つの仕組みといいますか、手法としては 従来も検討されたと思うのですが、複数の病院群、研修施設群の連携による仕組み、方 法が必要ではないかなと思います。そのためには国保直診がやってきたような視点でお 考えいただければ有難いなと。  更にターミナルケアにつきましては緩和ケア病棟が、まだ数は少ないのですが、全国 あちこちにあります。私の病院もそうですが、緩和ケア病棟、病院でやるだけではなく て、在宅ホスピスと言いますか、在宅でもがんの末期を診ておりますし、そういうとこ ろの連携というものが私は必要だろうなと思いました。そういうところを臨床研修の中 で是非見ていただきたい。老人医療に関して言いますと、今度の「介護」もそうです が、介護保険施設、例えば老健施設のような施設も短期間であっても少し覗いていただ いて、臨床研修中にそういう認識を持つということも必要なのかなと思います。  先ほど言いました「保健」という面では、保健所あるいは市町村の保健センター、そ ういう所での研修も場合によっては必要になってくるのかなと、このようなことを思っ ています。  最後になりますが、このような臨床研修をやっていただくとすれば、これは卒後だけ でなく、卒前の医学部教育の中にも、今日文部科学省から課長さんがおいでですが、是 非ある面では医師の教育の在り方の中に入れていただいて、連携といいますか、整合性 を図っていただければ有難いなと思います。  先ほどの研修医の処遇の問題ですが、福井委員から国立病院長会議のワーキンググ ループのお話がありましたが、誠にごもっともだと思います。給与に関しては、私この 間のヒアリングを聞いてびっくりしたのですが、大学病院の給与が非常に安い。あれだ ったらアルバイトをせざるを得ないのかなという感じがします。最低必要な額を担保し てやるべきではないか。健康保険証も持っていない、社会保険というひとつの保障の中 でそういうものも与えてやるということは、研修医を医師として遇する。特に研修指定 病院で保険診療をやるということになりますので、保険診療を行う研修医としての位置 付け、これもやはり必要なのかなと思います。以上、4、5点申し上げましたが、こう いう点を論点整理の中で今後追加といいますか、少し入れ込んでいただければ有難い、 具体的な細かいことはまた次回以後、いろいろと議論されることになろうかと思いま す。以上です。 ○部会長  山口委員から包括的なお話がございましたが、この論点整理メモの中で、委員の言わ れたことは、例えば1の「臨床研修全般に関すること」で、国民から見た今後養成すべ き医師像についてどのように考えるか。次の卒前教育との連携についてどのように考え るか。あるいは3頁目にありますようにプライマリケア、救急医療、地域医療、これは おそらく保健所の見学も入るでしょうし、末期医療、その他在宅ケア、老人医療、こう いうものを十分加味した研修プログラムを定めるようにというお話であったかと思いま す。またその時々にいまのご主張をお話しいただければ大変有難いと思います。よろし くお願いいたします。 ○星委員  眺めて見ますと厚生労働省のお役人さんが苦労をして書かれたのだと思うのですが、 1つ、整理の仕方として「内容としてその仕組み」ということと、実は非常に関連をし ていて、いまの山口委員のご発言にもありましたが、研修の内容としてはみんなで、組 でやればいいのだと言うけれども、病院に所属すべきだとか、お金をそこから出すとか という話が一緒になっているので、そういう意味で非常に分かりにくいのだと思うので す。内容はみんなでいろいろな施設、いろいろなプログラムを作りましょうと言いなが ら、施設に関する所には、病院、病院、研修病院、病院といって、やはり施設という固 有の病院という名前が出来て、特定のものを想定してしまうようなまとめ方をされてい るものですから、その辺が分かりにくいのではないかなと思うのです。  これは読み込みの仕方だと思うのですが、いくつかの施設が、あるいはいくつかの機 能を提供できる人たちが集まって、その研修をみんなで提供するのだということが仕組 みとしても分かりやすいような論点にまとめていただけると、もうちょっと分かりやす かったかなと私は思います。 ○部会長  これは地域、地域で特色あるそういう仕組みを作るということで、今後も具体的に詰 めていきたいと思っております。 ○三上委員  まとめとしてはおおよそ網羅されていると思うのですが、臨床研修を必修化すること に対する国の果たすべき責任というのは、この中のどこにも書いてないのではないかと 思うのです。当然、先ほどの財源とか、研修医の身分、経済的保障、その辺の所では、 多かれ少なかれ国がどういうふうにそれに係わるか、という問題が重要な問題だと思い ます。そういう意味で臨床研修全般に関することの中で、卒後臨床研修必修化に関する 国の果たすべき責任、それを是非入れてほしいと思います。 ○部会長  この部会が出来ているということも、国も真剣に取り組まなければいけないという姿 勢の1つの現われだと思います。先ほど福井委員からお話があったように、やはり研修 制度は国がサポートしてほしいという病院長会議の提言がありますので、それも踏まえ て議論を進めていきたいと思います。そのほかいかがでしょうか。 ○黒川委員  国の責任は確かにそうだと思いますが、私どもみんなが研修医と言うかお医者さんを 育てる、あるいは医療にかかっている立場から言えば「聖域なき構造改革」なんていう キャッチフレーズですから、この間言ったように、供給者側の理屈では国民はもう納得 しないだろう。国民が納得するような予算を付けるようなプログラムを、ここで知恵を 出さないかぎり、そんなことは絶対付かないだろうと思います。いままでのような診療 型ではプログラムを良くしますよとか、研修医はどうですかなんて言っても、絶対納得 しないわけです。  そういう意味では、私はしょっちゅう書いているけれども、1つはマッチングをする ことによって、研修病院が各学年の卒業生によって評価される、というふうになってし まいます。最初の年では分からないかも知れないが、2年目3年目になれば「あの病院 は良いよ」とか、「あの病院の医者はひどいや」とかいう話が、1年の間にどんどん通 じてきますから、その評価というのが卒業生によって毎年毎年評価されるということに なれば、これは必ず資質が良くなるだろうと思いますし、卒業生もいろいろな病院に行 きますから、「あそこの卒業生はひどいな、あれでトップの10%だって」なんていう話 がすぐに分かってしまうので、お互いに非常に良い緊張関係になると思うのです。だか ら、評価、評価ということもそれをやって初めて、みんなが見る標準がバラエティを見 せることによって、標準が出来てくると思うのです。  もう1つは、内容についてはもう少し各論があるかもしれないが、山口委員も言われ ていましたが、私が言っているのはいろいろな開発途上国、国のお金を出してやるので あれば、国に対してサービスしろということは結構やっている所もあるわけです。いま 過渡期かなと思うのであれば、研修医はマッチングで混ざった後の2年目は、例えば無 医村に行くというようなプログラムをする。そうすると高齢者医療とか、下層度のなん とかプライマリケアとか、それが単純に計算しても1年に8,000人出て、国家試験で90% 受かったとすると7,200人いる。その人たちが4カ月行くということは、2万8,000人/ 月あるのです。無医村の定義は厚生省の定義だから970いくつあるのだろうと思うのです が、そういう所にその人たちが4カ月行くということは、常に2年目の研修医が3人弱 そこにいることになります。そういう人たちがいると無医村がなくなってしまうので、 是非これを。こういうこともちゃんとするのだから財源を出してよ、というようなア ピールの仕方をしないかぎり絶対国民の納得は得られないだろうなと思うので、その辺 のパッケージを出す。  いろいろな地域医療だなんだかんだ、そこに指導医がいないとか、いろいろあるけれ ども、いまいない所よりは、いたほうがまだいいではないかという話をして2、3年も すれば、あそこの地域の人は親切ですごく待遇が良いやとか、いろいろな話が出て、そ のうち結婚する人も出てくるかもしれないし、医者が充足してくるかもしれないし、あ そこの医師会はひどいやとか、いろいろな話が。毎年の卒業生の情報が広がってくると いうのは、やはりものすごいパワーがあると思うのです。そういう見込みがあるから出 してくださいよという話をすべきだというのが2点です。  3点目は日本の公共事業の建設国債は毎年35兆ぐらい借金をしちゃって、もう700兆に なっているらしいのですが、先進G7のほかの6ケ国でそういう予算をどのぐらい使っ ているかというと、6カ国を足しても日本1カ国よりまだ少ないのです。そのぐらい土 建国家であることはみんなに分かっちゃっているのですが、突然それを聖域なくしても 土建屋さんは困るだろうと思うので、それを宿舎に当ててくれという話をすべきではな いか。しばらく建築もサポートしましょうという話はやはりすべきではないかな、とい うようなパッケージを出さないと、伊藤局長としても大蔵省の納得も得られないし、局 長が話に行ってもしようがないから、高橋さんとかいろいろな人がそういうことを書い てくれれば、少しは国民の理解が得られるのではないかなということも是非考えてもら いたいと思います。 ○部会長  ありがとうございました。臨床研修全般に関することで、初期臨床研修というのは国 民が求める医師を育てるためにこういうことをするので、まず国民の皆さんに研修制度 というのを理解していただいて、その上でいまお話いただいた方策を立てていかなけれ ばいけないというふうに思います。そのほかいかがでしょうか。 ○横田委員  先ほどの福井委員のご説明の中にあった1つですが、「卒後の臨床研修センターを設 立して、そこに研修医が付属して広域の研修制度を確立せよ」ということだったと思い ますが、大変理に適ったものだろうと思います。ただ、これは国大協の附属病院会議か ら言っている見方であって、地域の基幹病院の側の見方もおそらくあるだろう。我々が そこに協力を頼んでいくときに、医学研修というのが、ちょっと青臭い話になるかもし れませんが、大学の人間が育てるだけではないのだと、医療従事者が寄ってたかって良 い研修医を育てるのだというスタンスのアナウンスメントも、私は是非必要だろうと思 います。  地域の病院に行きますと大変忙しい状況があって、研修医なんか見ていられるかとい うのが場面場面でよくあることだと思います。良い研修医を育てるというスタンスから のアナウンスメントをすることで、そういう人たちも研修医の教育に巻き込んでいくと いう姿勢が必要かなと思いますので、ポリシーとしてそういうことを最初に言っておき たいと思いました。 ○黒川委員  先生の言われることはもっともなのですが、いま指導をしているような先生たちはそ ういう研修を受けていないから立前としてはそうだけれども、いままでの医療政策と人 材の配置が違うので、病院に来られても大変だと思うのです。だけど、マッチングをや って2年目に無医村に行ってなんていう人たちが育ってきた5年とか6年になって、そ の人たちがスタッフになってくれば、「ああ、こうやって育てられたのだ」ということ を、もっともっと理解するようになると思うのです。それが効果的に見えてくるのには ちょっと時間がかかるけど、中長期的に10年先はこういうふうにしようという話の第一 歩はこうだという話を、是非アピールしたいと思っています。 ○部会長  いまの話などは「論点整理メモ」で研修制度の仕組みに関することとか、そういう所 で具体的に詰めることができますので、過去2回で一応幅広い視点でご議論をいただい たので、何かこれに付け足すこととかいう視点からご発言をいただくと大変有難いので す。 ○宮城委員  先ほどの黒川先生がご提言の臨床研修をする上で、国にある程度補助を求めるという のですか、国のほうに経済的な保障をお願いする上では、やはり国民がそれを支える。 臨床研修にこれだけのお金を出す代りに、国民にどれだけ還元されるシステムに作って いくかという論点はとても大事だと思うのです。  沖縄では4年間の臨床研修医制度を確立しているのですが、県が3億円という金を出 して臨床研修を支えてくれているわけです。毎年3億円を出すその根拠としては、沖縄 は離島が多くて19の診療所、大きな総合病院を持つ離島が2つあるということで、そこ に医者をどうしても送り込まなければならない。そういう人たちを育てるための臨床研 修という形で県民がサポートしてくれているわけです。これは1つの県のモデルとして は私は国にも参考になる制度ではないかと思います。  初期研修についてはある程度要望されている制度ですから、これについてはこの2年 間の教育だけでは義務を課さないのですが、3年、4年という後期研修を受けた者につ いては、必ず離島の総合病院で1年間の赴任義務を負うという契約で、県が3億円の研 修費を出して、この34年間臨床研修生をずうっとサポートしてくれているわけです。県 民が支持してくれているのは、離島の医療に私たちの病院で育った人が行って必ず還元 するのだという保障があるから、県民が財政支出を支持してくれているのだと思うので す。そういう点ではこういう臨床研修を国が本当にサポートするためには、国民がそれ を支持し国民が納得のいく制度にもっていかないと確かにうまくいかないのではない か。沖縄県の例からしてもそうではないかと思います。 ○部会長  ありがとうございました。 ○相川委員  事務局が整理していただいた「論点整理メモ」に関して、既にその内容に関する大変 貴重なご意見を伺っていましたが、論点整理メモ全体に関してどうかという部会長のお 問いですので、その点に関してです。  いままでの1回、2回を踏まえた論点を大変よく整理はされています。所々字句の使 い方等のご指摘もありましたが。ただ1つ、いままで論点には出なかったかもしれませ んが、研修修了後の、つまり3年目以降の身分とか、あるいは研修の継続の在り方とい うものについても、全体の中でもし時間がありましたらその辺の所も示しておきません と、これは2年のプログラムで、その後どうなるのだということが見えてこない、また そのプログラム自身がなかなか理解できないのだと思います。論点の5番と6番の間ぐ らいなのでしょうか、どこでもよろしいのですが、その辺の所で、その辺のビジョンも 示せるような形があったらいいかと私は個人的に考えます。 ○部会長  ありがとうございました。よろしいでしょうか。それでは本日具体的な議論を進める に当たって、いま研修医の処遇の問題が労働法との関連で大きく取り上げられています ので、まずこの問題にフォーカスを当てたいと考えます。本日は研修医の処遇問題の中 でも特に労働法との関係についてご議論をいただきたいと考えますので、よろしくお願 いいたします。事務局に資料を準備していただいていますので、はじめに事務局から説 明をお願いします。 ○事務局  事務局より説明をさせていただきます。資料3−1ですが、研修医の処遇の関係につ いてご議論いただくに当たりまして、研修医の給与と勤務の状況に関する資料でござい ます。順に説明申し上げます。  まず「研修医の給与の状況」ですが、1の(1)は、「臨床研修病院ガイドブック」 から、研修医の給与についての部分を抜粋して平均を取った資料です。  大学病院、臨床研修病院ごとに分けていますが、はじめに大学病院について、「国 立」となっているのは「国公立」の誤りです。国公立59病院中、9病院の集計ですが、 平均19万764円、私立大学については75病院中46病院の集計で平均9万8,532円という状 況です。対しまして臨床研修病院については国立、公立、公的、私立の4つの類型に分 かれていますが、それぞれ表のとおりとなっています。  次に1(2)ですが、「平成6年度の厚生科学研究」で行われた調査による資料で す。これは、平成4年の春に国家試験に合格をされて医師免許を取得された方に対し、 2年間の研修を終えて、平成6年の時点でアンケートを取ったものです。2年間を振り 返ってどうだったかという調査です。それによりますと、1,964名の方を対象とし、585 名、約3分の1の方から得た回答ですが、全体の平均として月平均で主な研修先から21 万7,000円、アルバイト先から14万6,000円、合計しますと36万2,000円ほどの収入を得 ている。  これを大学、臨床研修病院、その他の病院ということで分けていますが、これは「2 年間通してどうであったか」とい聞き方をしていますので、丸々2年間大学でやってい た者、丸々2年間臨床研修病院でやっていた者という整理ではありませんが、それぞれ 病院に勤務したことがあるという前提で、表のような3つの病院類型に分けた表になっ ています。それぞれ大学病院の場合、収入合計35万8,000円、臨床研修病院の場合35万7, 000円、その他の場合41万3,000円、このような状況になっています。  2頁目、「研修医の勤務の状況」です。2の(1)の「勤務日数」とあります2つの 表、ア、イについては、ただいま説明いたしました平成6年度の同じ研究による調査で す。まず「主な研修先での勤務状況」ですが、それぞれ大学病院に勤務されたことのあ る方では、通常の日勤帯の勤務として、1週間に5.5日勤務をされている。いわゆる日 直、これは日曜日、休日の昼間の当直ということですが、月1.7回の当直をされておら れる。また宿直ですが、夜間の当直について月々3.3回の勤務をされておられるという 表です。それぞれ大学、臨床研修病院、その他の病院ということです。  (1)のイですが、これは同じ方々につきまして、主な研修先ではない「アルバイト 先」でどのような勤務を行っているかというものでして、大学附属病院の場合、日勤で は1週間当たり0.7日、日直については月0.7回、宿直については2.2回というような状況 です。  (2)ですが、「診療時間」として、これは「国立大学医学部長・病院長会議の医療 事故防止対策の策定に関する作業部会」におかれまして、今年の1月に15の国立大学病 院、本院につきまして研修医ならびに教官等の病院に勤務する医師について、調査を行 ったものです。この15の病院について1年目の研修医は228人おりましたが155人、 68%。2年目については41人在籍ですが、36人、87.8%から回答を得たという調査で す。  この調査におきまして、診療科ごとの入院受持医1人当たりの1週間当たり入院診療 時間、入院にかかる医療に携わった時間について、内科の研修医については1年目の場 合78.4時間、研修医2年目については75時間、1週間当たりです。以下同様に外科、小 児科、その他ということで時間をまとめています。以上が資料3−1の研修医の給与な らびに勤務の状況についてご説明をさせていただきました。 ○医事課長  引き続きましてこういった状況を踏まえての「研修医の処遇について」ということで 説明をさせていただきます。現状の研修医の処遇については、ただいまも説明いたしま したように、特に給与などについて見られますように、研修先によって大きな較差があ ることは、これまでも様々な所で指摘をされてきたところです。臨床研修の必修化に伴 いまして、研修医が研修に専念できるための環境整備の一環として、社会的に妥当な処 遇の水準をどのように考えるべきかという問題については、今回政策的な課題としてこ の部会におきましても、今後順次検討をしていただく必要があると考えています。  一方、一部の病院における現状の処遇については、現行の関係法規に照らしましても 問題があるということは否定できない面があります。必修化に伴う問題を考える前提と して、速やかに適切に対応していく必要があると考えているところです。  資料3−1に「参考資料」ということで付けておりますが、関西医科大学におきまし て研修医が98年に心筋梗塞で死亡した事件に関連して、労働基準法(労働者名簿の作成 義務など)に関する違反の容疑によりまして、関係者が書類送検をされていました関西 医大について、大阪地検は起訴猶予処分などとしたわけです。研修医については労働基 準法上の労働者に該当し、関西医大らには「労働者」として扱わねばならないという意 識が欠けており、労働者名簿にも記載していなかったという指摘をした上で、その名簿 の作成義務違反について、犯罪は成立するけれども他病院でも同様の状況が慣習化して おり、訴追までするのは妥当ではないという判断をしたものです。  労働基準法上の労働者であるか否かに関しては、具体的な仕事の依頼、業務に従事す べき旨の指示などについての諾否の自由が有るか無いか。また業務の内容、遂行方法に ついての指揮命令が有るか無いか。そして時間的、場所的な拘束性が有るか無いかとい うことを総合的に勘案しまして、個別具体的に判断をするというのが基本となっている ところです。  しかしながら、臨床研修については、医師として実際に患者の診療を行うことを通じ て行われる職場の実践研修、オン・ザ・ジョブ・トレーニングということでして、その 診療行為については、人件費相当分も含めて、診療報酬が支払われているということが ありますし、また、関西医大のケースを通じて把握されましたように、現状における研 修医の稼働状況については一般的に、あるいは指導医の残業とか休日の出勤に合わせて 残業とか休日出勤をするというようなことなど、実質的にその仕事の諾否の自由がある とは言えないということ。診察や手術の補助などの診療行為であるとか、カンファラン スの準備などの雑務、実質的に労働と判断される作業について指揮命令を受けていると 思われるということ。また、実質的に始業、終業時刻などについて、出退勤が自由でな いなど一定の拘束があるという実態があると考えられることから、研修医は一般的に言 えば労働者に該当するのではないかと考えられるわけです。  以上のように、研修医が労働者に該当するという整理をすれば、少なくとも給与に関 する限り、一部の臨床研修病院においては、研修医に対する労働者としての基本的な処 遇が保障されているとは言い難い状況にあると言えるのではないかということです。先 ほど資料3−1で説明申し上げたとおりです。また、労働時間の問題についても、問題 が潜在しているということが見て取れるわけですが、これについても別途評価検討が必 要であろうと考えているわけです。  臨床研修病院を含む関係者に、研修医が現状では基本的に労働基準法上の労働者に該 当するということとともに、研修医の処遇に関して同法及びこの法に関連した法令、例 えば最低賃金法等が適用されるということを、まず認識する必要があるのではないかと いうことです。  その上で各臨床研修病院については、国家公務員法、あるいは地方公務員法が適用さ れる場合を除いては、労働者に該当する場合に適用される主な労働関係法令ということ で、資料3−2の中にも書かれているように、労働基準法上の労働時間、休日時間外及 び休日労働等に関する規定の遵守、最低賃金法に基づく最低賃金水準以上の賃金の保 障、労働者災害保障保険法に基づく保険料の負担などを行う義務がある、ということを 認識するとともに、不備な点があれば速やかに必要な措置を講ずることが求められるの ではないかということです。  必修との関係については、いま申し上げましたような論点については、現状における 臨床研修の実態をどう評価するかという問題でして、必修化以降の研修をどのようにす るかということとは基本的に別の問題であろうということです。必修化の議論をするに 当たっての前提であろうということで、先ほど申し上げた次第です。必修化に伴いまし て社会的に妥当な給与水準などの処遇をどう考えていくべきかという問題については、 今後更に順次検討をいただきたいと考えているところです。以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。研修医は労働者として整理せざるを得ないというお 話のようですが、それにはいくつかの規制がありますので、それをどう対応していった らいいかということがあるかと思います。ただいまの研修医の処遇についてのお話につ いて、ご意見ご質問をどうぞ。 ○高橋委員  司法修習生は労働者と位置付けられているのでしょうか。 ○主任中央労働基準監察監督官  司法修習生の場合は一般的には資格を得る前の研修という位置付けになろうかと思い ますので、直接司法に関する業務に従事をしているわけではなく、教育的な側面が非常 に強いということで、一般的には労働者ではないというふうに考えられます。 ○星委員  たぶん今日お示しになられたのは行政府としての有権解釈ということになるのだと思 うのですが、司法の判断は起訴猶予ということですね。ですから司法判断がされていな いということで、ここで軽々に研修医は労働者であるという認定をして議論を進めるの が本当にいいのかどうか。つまり、それはひいては医者は労働者か、勤めている医者は 労働者かという話になって、開業をしている人は労働者ではないが勤めている医者は労 働者みたいな話になってくるわけです。そうなってきますと、いまの現況からいって、 まさにここに書いてあるようなことに抵触することは、日常的に行われていることは皆 さん当然ご存じだと思うのです。そのことを前提にこのことを考えないと、このことと いうのは研修医だけが労働者で、出来上がった医者は労働者ではないという議論は全く あり得ないわけですから、その辺のことをきちんと考えないで、「労働者らしいです ね」ということでスタートしていいのかどうか私は疑問に思うのです。その辺はいかが でしょうか。 ○部会長  「労働者」という言葉をとらえてではなくて、こういう勤務状態のときにどう対応す るか、という1つの基準になると思いますので、そういう基準として考えていただけれ ばと思います。労働者の本質を問うていることではありませんので、そういうふうにお 考えいただければ有難いと思います。 ○星委員  その事をはっきりさせて議論をしないと。多分、労働者だから雇用者はお金を払わな ければいけないのだよ、という話をするのだと思うのです。ただ研修のやり方を、黒川 委員も言われておりましたが、地域で引き受けるのだ、あるいは、いろいろな所へ行く のだと話をしたときに、じゃあ誰が雇用者で誰が労働者なのだということが明確でなく なってくる可能性もあるわけです。そのことを前提に我々は議論しなければいけないの に、いや、労働者ですと、じゃあ誰が雇用者なのですか、というような話に引きずられ ると、我々がやりたい研修というものの仕組みを作ることに対してはマイナスではない か。ですから、こういう仕組みにしたいのだと、そのときに、そういう判断はどうなの だと。それで過剰な労働やなんかについては、こういう仕組みを作ろうではないかと。 我々はプロなのですから我々が作ればいいので、こんな労働基準法などにと言ったら失 礼ですが、私は引きずられて議論をスタートすべきではないと思います。 ○部会長  この意見はもっともだと思いますが、ほかに委員の方々でご意見はありますでしょう か。 ○磯野委員  この問題を考えていく上で、研修医というものを、労働者として一人前の医師という 形の中で使っていくのか。それとも、これは実際に教育を受ける者であるという形の中 で、受けていくのか、という大きな違いがあるのではないか。例えば大学病院などの場 合には1つの教育を受けるものであるという形の中で、いまの給与の問題とか、労働時 間の問題、研修の内容の問題などは、これまでははっきりしていなかった。それに対し て研修指定病院の場合には、実際には給与の問題、労働時間の問題、あるいは労働とい いますか、そういうものについてのはっきりとした区分があり、給与もきちんと与えら れてきた。我々は研修医の人たちをどういう形の中で見ていくのか、ということをしっ かりしていかないと。いま給与の問題として1人ひとりにどの程度与えていくのか、ど うするのか、という問題も議論の分かれるところで一致しないのではないかと思うので すが、この見方をどういうふうに考えているかということだと思います。 ○事務局  事務局から若干補足させていただきます。星委員のご指摘になった点ですが、まず関 西医大の件について地検は起訴猶予にいたしましたが、「研修医は労働者に該当する」 とはっきり言っており、違法性についても、ちゃんと認定している、ただ起訴するに値 しないということです。 ○星委員  裁判所がということではないでしょう。 ○事務局  裁判所がということではありませんが、一応準司法官憲がそういうふうに判断したと いうことです。あと勤務医については、雇用関係にある以上は労働者ということで労働 基準法が適用されますので、研修医と何ら区別する余地はないということです。 ○仲村委員  中身についてはいろいろ議論はあるのでしょうけれども、このまま放っておいて制度 の仕組みを考えてきて、実際上、制度が仕組めるかという話になるのだろうと思うので す。そうしますと、いまのこの解釈は有権解釈になっているのかどうか知りませんが、 どういう手順でどういうふうに制度の中に仕組むというスケジュールというか、プロセ スというか、そういうのはあるのですか。  つまり、どこかに書くとか。何に書くのかは知りませんが、臨床研修必修化について 通知を出す、研修生は労働者であるとか、基準法を守るべきだとか、書いてはじめてい まあなたがご説明になったようなことに仕組めるわけでしょう。どういう手順にするの ですか。 ○医事課長  基本的に基準法の適用になるかならないか、労働者であるかないかというのはケー ス・バイ・ケースの判断になると思います。仮に、それが判断された場合にも、例えば 基準法違反になっていない、というような状況を実現していくということが必要なので はないか。だから、労働者であるかないかということをまず決めてから入るということ ではなくて、結果として、それは基準法から見てもクリアしているという状態を作って いくという必要があるのではないかと考えております。 ○局長  この部会でご審議をしていただいている主要な件は、16年以降の必修化された以降の 研修のいろいろな枠組みなり、内容をどうするかということが主たるテーマです。そこ でアルバイトをしなくても臨床研修に専念できる体制を整備していく、ということで論 点整理として1つ挙げさせていただいております。それについては、今後具体的な中身 をご検討いただきたいと思います。しかしながら、先般関西医大の事例というのは、い ま事務方からご説明したとおりです。私どもとしては、16年以降に、少なくとも労働基 準関係法令に違反するような状態を解消すればいいという問題ではなくて、この問題は1 6年以降ということだけではなくて、現在どうするかという性格の問題でもあるのではな いかと思っております。そういうことで非常に私どもとしても苦しいわけですが、ま ず、そういう現状を知っていただくと。  私もいろいろ関係者とお話をさせていただきますと、研修医は労働者かということに ついては全く驚きというか、天地がひっくり返ったみたいに、びっくりされる方は実は 少なくないのです。したがって、少なくともこういう実態であれば労働基準関係法規が 適用されないとは言えませんよと。いまいちばん重要なことは、研修病院の関係者に研 修医の一部の実態と労働関係法規がきちんと適用される、ということを知っていただく ということがまず。16年以降ということだけではなくて、そこが1つのポイントではな いかということで今日ご説明をさせていただいたわけです。  したがって、これは当然16年以降の処遇の問題と、それから、できるだけ16年を待た ないで現場の方にもご尽力をいただきながら状況を改善していく、という努力を併せて していかなければいけないということで、何卒ご理解をいただきたいというふうに申し 上げたいと思います。 ○櫻井委員  この会議では理念がいろいろと出てくるのでしょうけれども、実際問題として実現で きるような、または具体化できるようなことを話し合わないとまずいと思います。いま の問題で、「労働者である」と定義して、それでは労働法に準拠して働かせろ、または 研修させろという意見になると思うのです。この関西医大の件でも、違反しているが皆 がやっているから送検しないというのは、これも素人考えでもおかしいのではないかと 思います。実際にはいま、おそらく100%労働法に違反した研修をしていますし、また医 師自身もやっているのではないかと思います。  そういった意味で、労働者であるというのは、定義で出発するところにちょっと無理 がありますので、その辺を少し配慮したほうがいいのではないかと思います。 ○仲村委員  議論が空回りしてしまい、実態と法理論との組み合わせ方がなかなか進まないのでは ないか。制度を仕組むという立場で考えれば、先ほど星委員が言ったような意見、誰が 雇用主だ、なんていうのはどこかで決めてやって、地域医療に行った場合でも、その人 が面倒を見るとか、あるいは福井委員のところで出てきた研修運営組織とか。私は前に 「コントロールタワー」と言ったのですが、どういう人がどこへ行って何をやってい る、というのをちゃんと見る仕組みも作らないと糸の切れたタコみたいになってしまう のではないか。だから、そういうのをだんだん決めていって、労働者なのかどうか、あ るいはみんなで渡れば怖くないというのはあまりよくないので、そこを局長が言われる ように16年を待たないでも、だんだん是正していくような方向を打ち出したいという気 持はよく分かりますが、仕組みとしては、そういう仕組の仕方をしたほうがいいのでは ないかと思います。 ○宮城委員  研修医がいい待遇を受け、いい保障をされることは大賛成ですが、しかし現実に臨床 研修というのは、どなたかも言われていましたようにオンザ・ジョブ・トレーニングで す。ですから、週40時間のオン・ザ・ジョブ・トレーニングで本当に臨床研修が全うで きるかというと私は大変疑問です。いま百何十時間という研修を受けている人たちは、 それでも足りなくて死ぬほど働くわけです。本当に一生懸命研修を受けようとしている 人たちは、やはり40時間だけのオン・ザ・ジョブ・トレーニングで自分たちの臨床研修 が全き形にならないと思って、ある意味ではボランティアみたいに40時間を超えて働い ているのだと思うのです。これを本当に「労働者」と定義して週40時間というオン・ ザ・ジョブ・トレーニングを限定すると、私はいまの仕組みよりも、はるかに劣悪な臨 床研修制度を作ってしまうことになりかねないと思うのです。  「労働者」という定義がどうこうというのはよく分かりませんが、少なくとも現状の 臨床研修が週40時間では到底賄えるとは思っていません。そんなに長く働いてもらう必 要はありませんが、少なくとも各病院が当直医に任せられるぐらいの当直医制度をちゃ んと確立して、当直医が本当に全病院の入院患者を任せられるぐらいの実力のある研修 病院になってもらわないと、この問題は到底解決しない。当直医だけでは賄えないから 研修医は自分の患者のために夜中の10時とか12時まで頑張って診ているわけです。当直 医が本当に実力があって、どんな患者さんでも夜中、その晩を全責任をもって診てくれ るような当直医が確立しない限り、この問題は解決するとはとても思いません。 ○堀江委員  関西医大の結果が出るまで私立医科大協会での議論でも、研修医というのはトレーニ ングを受ける立場で「労働者」という認識でなはなかったと思います。今回、関西医大 の具体的な問題が出たときに初めて「労働者である」という見解が突然のように出てき て考え方を変えなければいけない。多分、費用的な面は、最低賃金ということで何とか 手当を考える方向性は皆さん意識していると思うのです。しかし、宮城委員も言われた ように時間的な問題について、トレーニングを受ける立場、あるいはトレーニングをす る立場にとっても、8時間の勤務体制で診療体制を維持するということは、非常に困難 な問題です。  そういう意味で、医師としての仕事をやっていく上で、この条件をすべて網羅しなが らのトレーニングを受ける人たちのカリキュラムを組むということが果たして可能なの か、疑問です。いま新しい方向性に向けて研修カリキュラムを組立てている所も多いと 思いますが、この点について、この委員会は非常に重要な委員会だと思いますので、あ る方向性を提示するぐらいのことをしていただかないと混乱を招くのではないかという 気がいたします。 ○部会長  何か「労働者」という言葉で議論がちょっと混乱しているみたいですが、決してそう いう意味ではなく、勤務状況から見ると先ほど局長が言われたように、労働者として当 てはめられる、十分そういう状況を整えているので、そういう視点からも見ていただき たい。この条件の下で研修カリキュラムを、ここをどうする、という意味ではありませ ん。ちょっと「労働者」という言葉が悪かったので混乱していると思いますが誤解のな いようにお願いいたします。 ○杉本委員  臨床研修を必修化するということは、また「労働」という言葉が出てくるかと思いま すが、研修医に国が研修費を出して病院に預けるという形をとることだろうと思うので す。病院の医療収益を上げるために一定の労働を病院側に提供して、それに対して賃金 を支給されるというものではないので、そういう意味では病院に雇用された労働者とい う考え方は合わないのではないかと思っています。  しかし、今回こういう事件があったことで私たちも、そう言えば研修医は労働者かな というふうにも思っているわけですが、やはり労働基準法が適用され得るというような ことも考えるといいますか、こういうものである程度研修医も保障をしてやるべきか な、というふうにも思うわけで、その辺を今後運用に当たっては配慮しなければいけな いのではないかと思っています。 ○星委員  話をかき混ぜてしまったような気もするのですが、決して私は20時間研修をしなけれ ばいけないのだとは思ってもいませんし、根性、根性でやる日本式のトレーニングが必 ずしもいい結果を生むとも思っていません。ですから「労働者」という言葉、あるいは4 0時間というものにこだわるつもりはありませんが、どんな研修をするのか、させるのか という議論の過程で、そういうことを横目で見ればいいのだろうというのが1つです。  それと、この問題の本質は、彼がどんな研修を受けて、どんな生活を送っているのか というのを見る人がいなかった、というのがいちばんの問題であって、そこを本質とし て捉えていけば、我々がどんな研修の仕組みを作るのか、評価の仕組みを作るのかとい うものの中に、どんな生活をしているのだというような見方が入ってくれば、もしかし たら、それだけで解決する問題だったのかもしれないのです。  スタート時点で労働基準法にかかって「労働者なんです」というようなスタートの仕 方ではなく、それは横に置いて、そういうこともありましたねと、しかしながら我々が 目指す研修の制度はこういう形で作りたいね、と言ったときに、雇用者は誰だ、お金は 誰が払うのだ、社会保険は誰が用意するのだという時に、この社会保険は誰が用意する ことにしましょう、便宜上誰々が雇用者ということにしましょう、ということになるの かもしれませんが、そういう話の筋にしていかないと結局のところ、何を議論していた のだ、ということになってしまうような気がします。 ○部会長  今日、ご出席できなかった中野委員からの資料が皆さまのところにあると思います が、これを事務局からご説明お願いしたいと思います。 ○事務局  中野委員からの資料について読み上げさせていただきます。  検討事項、「研修医の処遇について」は検討対象として時宜にかなうものと思いま す。  2の「研修医の身分」は、新聞報道によれば関西医大の事例に対して労働者として取 扱う旨の論調が目立ちます。さらに、会議の事前配付資料3−2は、「労働者」として その如何を議論するのに役立てる資料です。  これに対して、研修医は本邦現在の法制に定める「労働者」として位置付け取り扱わ れてよいものではありません。医師免許を有し、それなりの業務遂行能力に期待できる としても、一方では医療行為の責任能力を持たない立場であることが強調されなければ なりません。このような身分の定義が現行の法制で不可能な場合は新たな定義を導入す るルール作りが必要でしょう。  3として、「研修医の処遇」(その1)。新聞資料では低賃金労働者との記事が含ま れます。この点、まさに昭和40年代のインターン問題と酷似した研修医の今日の実態で あり、それが問題であると言えます。前車の轍を避けるためには、研修医の「労働者」 として誤解を受けかねないような行動規範を厳に排除すべきです。例えば、いわゆるア ルバイトは認めるべきではありません。そのためには適切な給与等、研修の専念義務を 果たすのにふさわしい条件設定が不可欠です。  4として、「処遇」(その2)。身分や給与等が研修医の間で格差があってはなりま せん。同様に研修のプログラムから見ても、研修医のすべてを覆って高質でかつ等価な ものが準備されなければなりません。この問題も翻って研修医の処遇を考える重要な要 素です。そのためには研修施設の整備が重要です。研修指導医、研修教材、施設・設備 の広範にわたってしかるべく措置を行うことが必須となります。以上です。 ○部会長  どうもありがとうございました。花井委員、どうぞ。 ○花井委員  司法修習生と絶対的に違うというのは、医師の場合には国家試験合格後に臨床研修を 受け、医療に携わることができるというであると聞いております。そうしますと、いま 臨床研修を終えて医師になった方はどうなのか、先ほど星委員が言われたような疑問も 確かに出てきます。患者の立場からは、研修されている先生が生活に困らなくて十分な 研修を受けて医療をしてくださる、ということがいちばん望んでいることです。それか ら考えると、現状のようにアルバイトをしなければ生活ができない、いただいた資料の 新聞記事で2万5,000円の奨学金という名目でしか出ないという状況で、果たして研修に 専念できるとは到底思えないわけです。ですから、そこは何としても労働条件を上げな ければいけない。  「労働者」という言葉にちょっとこだわられているようですが、2万5,000円で、それ が果たして労働者性を問うに足るものなのか、最賃にも満たないようなお金で何十時間 なり研修、労働をしている状況です。むしろ労働者以前の、こういうことが今も残って いるのかというぐらい私などは驚いております。  私は労働組合で労働基準法の適用ということを非常に強く思っておりますが、その事 と、臨床研修に焦点を当てた場合、実態としてどうしていくのかということが非常に重 要ではないかと思います。前回のヒアリングでお見えになっていました研修医の方は、 結局、親がかりでないと生活ができないわけです。それが20歳を超えた大人がそういう 状況に置かれているという中で、お医者さんが養成されているということに対して患者 の立場に立つと恐怖心のほうが非常に強くなる。現代的な、奴隷労働とまでは言いませ んが、そこを改善するような仕組みをどうやって作っていくか、ということが最大重要 なことではないかと考えております。 ○高梨委員  連合の皆さん方とは賃上げなどの問題で対立することも多いのですが、研修医の実態 について関西医大の例が新聞に報道されています。その実態を私自身、つまびらかには しておりません。  ただ、今日配付された資料では、国立大学では19万円ぐらいのお金が出ていて、私立 大学ではその半分以下となっています。何でこんなに低いのかよく分からないのです が、臨床研修病院の所では20万ないし29万ぐらい出ています。これは誰が出しているの でしょうか、卒業させた大学が出しているはずはないと思います。また、指導医の先生 が自分のポケットマネーから出しているはずもないと思います。多分病院が、ご本人も ひっくるめたものが保険医になっているはずですから診療報酬の請求をしている。それ で得られたものの中から病院自身が払っているだろうと思います。病院自身がお金を払 っているというのが多分、実態ではないかと私は推測をいたします。  一方において、労働基準法の適用があるかどうかというのは、報酬を得ているかとい うことと、労務の指揮がなされているかどうか、この2つの面を見なければならないわ けです。さて、それでは単純な、学生と同じようなことだけの指揮命令を病院なり、あ るいは指導医の先生がしているかというと必ずしもそうではなくて、何時に来なさい、 要するに診療行為が何時に始まりますから何時に来なさい、あるいは何時から何時まで はこういうことをやりなさい、ということを多分やっているのだろうと思うのです。そ れを「労働でない」ということをどこまで言えるのかどうかです。あくまでも、これは 事業であります。民間企業でも研修はちゃんと賃金を払っています。それは会社の業務 命令で研修をさせているわけですから当然払います。従ってもらうことにしています。 もし研修中に反する行為が行われれば懲戒処分を行います。生徒さんというか、研修医 という皆さん方がどういう立場にあるか、そこのところがもっとスッキリと。  私は認識が全然違うのかもしれないのですが、通常の考え方でいけば、私ども経営の 立場に立っている人間からすれば「労働者」と言わなくてもいいのです、私らは「従業 員」と呼んでいますので、そういうものなのだと私は思います。ただ実態が違えば、そ れは違う判断も行われるのかもしれませんが、どうもそのような状況にあるようには思 えません。現実に働いているとは言いませんが、時間数で1週間のうち70時間とか何と か、少なくとも拘束されている時間があるわけです。これがすべて労働時間ではない、 ということが本当に言えるのかどうか。  また一方において、研修先からお金をもらっています。またアルバイト先でお金をも らっています。じゃあアルバイト先でもらっているお金は一体何なのでしょうか。それ は多分、労働だと私は思いますし、得られているのは賃金だと思います。アルバイト先 がお金を払っているのだと思うのです。そこは指導医の先生の目は及んではいないので しょうけれども。  病院で勤務している病院の医師が労働基準法の適用を受けるかどうかという問題です が、それは私立病院なのか国立病院なのかによって違いますけれども。私立病院の勤務 医は、外科部長であろうが、何々課長であろうが、これは労働基準法でいけば労働者で す。労働者は労働者名簿は作らなければいけませんが、管理監督の地位にあれば労働時 間の適用は排除されるという点がちゃんと手当されています。医師の先生が管理者でな いケースだってもちろんあり得ますし、管理者のケースのほうが多いだろうと思いま す。そこのところをもうちょっとスッキリ議論をしていかないといけない。ただし、こ れは実態の問題です。  もう1つは、我々が作ろうとしているのは、2年後に法制度としてどうするかという 問題があるわけですから、そのときに、それでは基準法の適用のないような仕組みで設 けることができるのであれば、それはそれで考えていかなければいけないと思います。 その場合は、研修医の皆さん方が全くの無報酬で研修が受けられるかというと、生活を しなければいけないわけですから、それはできません。そうすると、そのお金をどこか ら出すのかという問題につながっていくのだと思いますが、そこのところは次の段階と して整理をしなければいけないと思います。  私自身は、もっと勤務の実態を率直に見て、物事の判断をしていかないといけないの ではないかと思います。 ○部会長  高梨委員から経営マネジメントの視点から議論が絞られていくという話をなされまし た。 ○高橋委員  長期にわたるオン・ザ・ジョブ・トレーニングが必要な職業というのは医師だけに限 らないし、新聞記者もそのうちの1つかと思います。我々も入社したてのころは、おそ らく今の研修医にあるような労働者以前の状況に置かれて、夜討ち朝駆けで朝から晩ま で仕事をしているわけです。だけれども我々は入社したときから労働者でありますか ら、そういうところはいくらでも日本にはあるのだ、ということを皆さん前提にお考え いただいたほうがいいと思います。  これは質問ですが、研修医がアルバイトをしなくても済むようなことがいい、という ことは大体皆さんのご意見は一致しているように聞こえるのです。それは私も異論あり ません。その場合、アルバイトを受け入れていたほうの方々は、お困りにはならないの でしょうか。その点の手当はどういうふうにお考えなのか、ちょっとお伺いしたいと思 います。 ○黒川委員  そのとおりだと思います。それでアルバイト先がどこかというと、やはり有床の診療 所とか、その地域で開業している人、当直はもちろんそうです。それから会社の診療所 に行けるなんていう割に恵まれている人はいいのですが、有床の診療所の当直をすると いうのは結構大変で、医師会の先生たちは、ある程度年齢になれば有床診療でも家で寝 たいわけですし、それは当然です。そのアルバイトのインカムは「医療費ではないか」 というアーギュメントがすぐに出てくるわけです。それをやめるのであればトランジシ ョンの間をどうするかという話と、やはり2年間はやらないで3年目からやればいいわ けだから。  いま1年目、2年目の人を安く使っていると、その辺は融通はきくと思いますので、 有床の診療をやっている先生としては、2年目までは駄目だったら何とかして3年目以 後の人でカバーしてくれませんか、という話になるのではないかなと思うのです。なか なか微妙な問題ですが、基本は、やはり構造改革だからやむを得ないと思います。 ○星委員  黒川委員はよく「医師会の先生」とおっしゃるのですが、医師会は別に開業医の先生 だけではありません。その声は地域の先生方から聞こえてきます。研修で、やはり皆が そういった大きな病院に貼りつくようになっている、私たちの所に来てくれないのでは ないかと言うわけです。私も危惧はしておりますが、やはり2年間という間に我々がど れだけの教育をその人たちにしてあげられるのか、そして地域医療の喜びとか、自分た ちがやっている医療の良さというものを本当に伝えることができれば黙っていても来て くれるようになるのだ、というぐらいのことを思わなければ、いつどこから、何大学か ら何人もらわないと大変です、ということをいつまでもやっているから、結局この研修 制度はうまくいかないだろうと思うのです。ここは、私は医師会の代表として来ていま すので、そういう意味では、確かに現場はそういう苦しみはある、産みの苦しみはある けれども、それを耐えても、やはりいい研修を作りたい、ということをここではっきり させておきたいと思います。 ○福井委員  それはアルバイト先の病院だけではなくて、もっとシリアスな問題は大学病院での入 局の問題です。実質的に入局を禁止するわけですので、各医局が2年間、今までの初期 研修医がいなくなるわけで、教室を運営していけないという声がものすごく強いので す。そこも黒川委員が言われたように、私たちは2年間我慢してください、3年目以降 の人たちが入局でできるようになるまでの時間をちょっとください、ということで説得 するよりしないわけです。それは研修の質を高めるという作業のための2年間だという ふうに考えています。 ○三上委員  研修医が労働者であるかという問題で、前回のヒアリングのときに慈恵医大のほうと 名古屋第二日赤のほうの給与の違い、5万円と30万円の違いについて質問したのです が、それは研修医の労働というものをどういうふうに見ているか、という見方による違 いだったわけです。しかし、この前のヒアリングでも分かりましたように、一方は労働 者としてみなしているというところが、非常にえげつない研修をさせているのかという と決してそんなことはないわけです。  我々の病院でも研修医については一応労基法を適用しており、これによって研修医の 身分保証をしているわけです。そういう意味では、これまでの議論では、労働者である か研修医であるかというのが非常に対立というか、相容れないものとして議論されてい ますけれども、そういうふうに捉える必要はないのではないかと思うのです。少なくと も研修医の身分保証に関しては労基法に準拠するということを基本において考えるとい うことなのです。ただし、研修医が病院にいた時間をすべて労働時間であるかとみなし ているかというと、必ずしもそうではないわけです。労働基準法はもちろん考慮するけ れども、本来研修医の研修に関しては労働時間ではないというか、研修時間であるとい うみなし方をしていますから、必ずしも、それはどちらかで決めなければならないとい う問題ではないと思うのです。その辺が先ほどの議論の中で、相容れないものというか そのように受けとめましたので意見を述べておきます。  卒後初期研修制度については、先ほどの議論の中にもありましたが、私は3つの点が 重要だと思っています。1つは、国と研修医の受入れ施設が応分の負担をして、最低賃 金保証をすること。2つ目は先ほどの点で、研修医の身分保証として労基法に準拠する こと。3つ目は、すべての研修医受入れ施設は募集要項の中に賃金その他の労働条件を 明記すること。これは最低賃金保証ですから、自分の所はこれだけのものを出しますと か、あるいは研修内容はこういうものですから、例えば10万円しか出せませんというこ とであっても構わないと思います。ただし先ほどの国と受入れ病院は、最低賃金保証は 出してほしいということで、この3点を提案したいと思います。それと、労働者と研修 医は相対立するものではないと我々は考えているという点です。 ○部会長  どうもありがとうございました。今までのご議論と資料を見ますと、研修病院と大学 ではその対応がずいぶん違っているような印象を受けますが、やはり臨床研修をする場 合には大学であろうと、ほかの研修病院、あるいは、いろいろな所で研修をするにしろ 同じ条件でやってほしい、ということは皆さんお感じだと思います。  いま黒川委員がおられますが、朝日新聞の資料を見ますと、黒川委員の所は比較的、 東海大学は下から2番目ですけれども、給料は私立大学としては異例の高さです。先ほ どどういう仕組みでこういうふうになっているか、というご質問があったかと思います が、少ない所はお聞きする必要はないと思いますので、まず黒川委員からひとつ。 ○黒川委員  朝日新聞がこういうことを社会面ではなくて、生活面でしょっちゅう書くことが大事 なのです。すぐヤマノウチさんに電話をして「これももっともっと書いてくれ」と言っ たのです。そういうことを国民と情報をシェアしない限り絶対いいものができるはずは ないのです。関係者は、実態は何だか知っていたのです。それを言わないだけの話で、 これをもっと出すべきです。どれぐらい働いているとか、アルバイトは何とかかんとか もそうですけれども。  国立大学の場合は、国立学校特別会計のほうでみんなきているのだと思いますので、 日給か何かのもので20万ぐらい払っているのです。これは税金からいっています。私立 の場合は、厚生省かどちらから少し補助金か何かしているのだと思います、図書費充実 とか何とか言って来ているのだけれども、そんなので人件費が出るわけではないので、 これは全部診療費から出ているということになります。  研修指定病院も国立と私立では、例えば聖路加のような所と国立の研修指定病院にな っている所は、財源と額がちょっと違うのではないかなと思います。私立大学は、うち は良心的に待遇をしているということであります。  もちろん、都内で非常に人気がある安い所では、黙っていても人が集まるから、これ でも来るというマーケットの力のバランスでやっているということだと思います。 ○ 堀江委員  私は日本大学ですが、これは研修カリキュラムによって臨床研修補助金の申請基準が 変わり、ストレート研修は、例えば皮膚科とか耳鼻科に入ってそのまま2年間研修する ようなシステムです。その基準は5万程度で日大ではストレート研修医が3万円です。 それからフルローテーションをする研修医の基準額は20万円に近く日大ではフルロー テート研修医に対しては15万円の月の手当を払っています。実際には、この研修医は当 直もやりますので、大学として支給するに当たっていろいろと検討しましたが、1回に つき1万3,000円払っています。実際に受取っているのは3万とか15万と書いてありま すが、研修手当以外も含めて20万平均ぐらい受けているのが実情です。  平成16年から必修化になって研修手当のあり方も変わってくると思いますが、うちで はいま当直手当の支給の仕方も含めて再検討をして、月額いくらという、支払いの仕方 を実際にやっていこうということで、いま平成14年度の実現を目指して取り組んでいる ところです。多くの私立大学の研修医の支払われている額というのは、この額がすべて ということではないのではないかと思います。 ○黒川委員  そうですかね。 ○相川委員  朝日新聞の記事が慶應義塾大学では2万5,000円と。大学の中の医師だけではなく卒業 生も含めていろいろな意見が出ました。実は、本日ここに来る前に医学部長とも大学と してのスタンスをお話して、私は大学を代表しているわけではありませんが、いずれこ のような質問といいますか、場におかれるであろうと思いますので簡単にご説明させて いただきます。  いまは日本大学と非常に近い状況であり、2万5,000円プラス当直料として1回につき 1万数千円が出ております。どうして2万5,000円なのかと言いますと、補助金としてい ただいているお金は、1人当たりいくらというお金ではなく、施設当たりいくらという お金なのです。しかしながら、私どもの大学に希望して来る研修医希望者が非常に多い わけです。もちろん慶應の卒業生以外にも、他大学からもかなりの希望者がおりますの で、そこで選抜ではなくて主に資格試験という形を中心に採用しますと研修医の数が多 くなります。多くなっている関係で補助金を研修医の数で割ると、どうしても2万5,000 円になっている、というのが基本的なところです。そうしますと、それでは研修医を少 なくすればいいのかというご意見も確かにあると思います。  これからは発展的なお話になりますが、先ほど何人かの方が言われましたが、うちの 大学ではこういうプログラムがあって、例えば外科ならば2年目にはこういう手術にも 参画できるとか、患者さんは何人見られ自分は何人担当できる、指導者はどういう人た ちが指導者になっている、というようなプログラムをしっかり公開し、かつ、うちの場 合には、これからは2万5,000円でいくはずはないのですが、これだけの賃金というか、 奨学金と関西医大は言っていますが、どういう名目にしろ月これだけの収入があると、 プラス当直が月に数回あってこれだけあるということをはっきり公開した上で、マッチ ングプログラムのようなことで競争原理を入れることによって、場合によっては今の数 よりも少なくなるかもしれない、場合によっては今の数よりも多くなるかもしれませ ん。何しろ私は競争原理が大事かなと思っています。  以上のこととは別に、先ほどの「労働者であるかどうか」ということも含めて、ちょ っと発言させていただきますと、我々医師は、今までは、でっち奉公という言葉がいい のかどうか分かりませんが、何しろ見て習え、上の人のやっていることを習えというこ とで、あまりプログラムもないし、勤務時間も上に言われるままですし、指導者が病院 から帰る前にトレイニーというのですか、研修の人が先に自宅に帰るというようなこと は日本の文化ではできない状況でトレーニングを受けてきていました。そこにドップリ つかっていたわけです。  しかしながら、今日はオブザーバーの方もいらっしゃると思いますが、この朝日新聞 の記事とか、あるいは今日の議論の中で、一般社会で行われていることと医師の研修と いう場で行われていることが、大変な乖離があるということが国民の方々も分かってき たのではないかと思います。人によっては大学卒業したパリパリのお医者さんというの は、格好が良くて、お金も儲かって、お休みの時もそれなりにけっこういいだろう、と 思っている方もずいぶんいたのではないかと思いますが、実情はここに出てきたことで はないかと思います。  一方、我々医師の立場からしますと、やはり労働基準法というものを詳しく知ってい る指導者がどれだけいるかということを考えますと、特に大学等で若い人を指導してい る人は労働基準法の内容もほとんど知らないのではないかと思います。そういう乖離が あまりにも激しかったが、こういう議論のもとでそれがずいぶん近づいてきた、理解が 近づいてきたのではないかと思うのです。  ですから、研修医を「労働者」と定義するかどうかというのは別の問題ですが、局長 が先ほど言われたように、16年をみないでも、今からでもそういう理解の近づきがあっ て努力目標ができてきますし、また16年にこれを法律なり何なりで作るときには、例え ば国会で質問されても、国民の代表者が、つまり議員さんが国会で、研修医の労働時間 はどうなのだ、というようなことを質問されてもちゃんと答えられるだけの考え方をこ こで持っていく必要があると思います。これは少し時間がかかるかもしれませんが、そ れを持っていく必要があると思います。 ○磯野委員  研修医の処遇を改善しなさい、最低いくらという形で身分保証するために給与を与え て、そして研修に専念させなさい、ということは大体決まっていることだろうと、了解 されます。前の委員会のときにも論議になったのですが、やはり一律に大変な差額があ るのではなく、最低限これだけは保証する、これは世間一般並みの常識でということで す。つまり司法修習生なら司法修習生を1つのスタンダードにとるのであれば、それを とって、ある最低限のものをすべての研修医に保証するという形をとるべきです。  その後の「労働時間云々」の問題に関連しては、ひとつトレーニングされるというこ との問題であるということもありますが、これは医師の職業内容を十分に理解していた だければ分かると思うのです。重傷患者さんを抱えている場合、果たして時間的な割合 できちんと整理して変えられるとか、あるいは、やめることができるかというと、そう ではないのですね。例えば、いちばんいい例を挙げれば外科手術をやっているときで す。外科手術をやっているときに胸があいている、腹があいている、時間がきましたか らこれで終わりにしますというわけにはいかない、明日の朝までかかろうがやらなけれ ばいけないのです。  また医師である以上は、それの結果を見たい、最後までどうこうしたい。「あなた、 もう帰っていいよ」と言われても、やはり医師としての1つの職業という認識の上から おいて、それに従事していくということです。「労働時間云々」という問題を別にして も、少しでもいい医者になりたいということは、私はほとんどの研修医は持っていると 思うのです。ですから、自らトレーニングをやっていると思うのです。  従って、労働時間の問題ではなく今やっていただきたいことは、世間の人たちが常識 で認められるような最低限の給与保障をしていただきたい、というところをお願いすれ ばいいだろうと思っています。 ○辻本委員  患者の立場でお話をさせていただきます。ずっと研修医の身分制度保証ということが 議論されていますが、私もここに座わらせていただいて、いい研修をしてほしい、本当 にいいお医者さんと私たち患者は出会いたい、そのことを強く強く願っています。た だ、今も研修医と患者の出会いというのはあるわけです。  前回、相川委員が2人の研修医に「研修医の名札を付けたらやりにくいか」と聞いて おられます。そうしましたら「やりにくい」とはっきり答えている現実があります。そ れはやはり、ちゃんとした医者としてみてもらわないと仕事ができないから、という状 況があるんだろうと思います。  ただ、本日中野委員が提出された資料によると「いろいろな所で、一方では医療行為 の責任能力を持たない立場であることが強調されなければならない」とあります。この 辺りで患者たちが今どういう状況に置かれているというと、研修医の方の身分、立場、 役割というものが非常に曖昧な状況に不安を抱いているわけです。いま患者たちの医療 に対しての不信感ということがさらなる高まりをみている中に、実はこの研修医がどう いう身分で、どういう仕事をしている人で、どういう立場に置かれている人なのか、と いうことが曖昧なことが、漠然とですが医療不信を高めている一因になっているという ことが否めないと思うのです。  そういう意味からも、今日ここで議論されていることは「研修医の身分保証をどうす るか」ということですが、どうするか、という議論になるほど曖昧な状況にある研修医 に、今現実に私たちは医療費を払って医療を受けているということの中で、もっともっ とこの議論そのものを国民、私たち患者に分かりやすく、そして、曖昧を是正していこ うとしているのですよ、という方向性をはっきりお示しいただくことが、患者もこの議 論に参加できることになると思います。少しテーマに沿ったお話とはずれるかもしれま せんが、私は強く強くそこのところをお願いしたいと思います。 ○福井委員  いまのはおそらく、一方では医療行為について完全な責任能力を持たないということ と、それと診療能力自体が、やはり十分経験を積んだ医師とは違う、レベルがまだまだ 低いということであります。そこのところは指導医がどのぐらいの時間をとって、責任 を持てる体制を形づくるかということになるわけでして、今の野放し状態だからこそこ うなっているわけです。今後、この点については、きちんとしたシステムを作ることに よって、クリアできると思います。 ○星委員  実は日本医師会でも非常にこの辺は興味があり先般調査を実施いたしました。これは 現実に研修を受けている方々、あるいは研修を指導している人たち、あるいは、その施 設ということを対象に調査しました。本日、間に合えば持って来たかったのですがまだ 調査結果が最終的にまとまっておりません。それがまとまり次第、ここに提出して議論 に加えていただきたいと思います。  それはそれとして、今の発言はそのとおりだと思います。先ほどから話を聞いていま すと、やはり病院が引き受ける、というイメージを皆さんお持ちだと思うのです。病院 との契約、あるいは病院との雇用契約を。確かに法律上も、そのように書いてあります ので「大学病院と臨床研修指定病院」と。  しかし、先ほど冒頭に発言をさせていただいたとおり内容に関して言えば、必ずしも 病院の管理監督下のある所へ行って受けるべき研修だけではないわけです。地域に行 く、あるいは開業の先生の所に泊り込みで行く、あるいは離島に行く、どこに行くとい ろいろなことがあると思います。そのときに、いまの雇用契約、ある特定の医療機関と の雇用契約ということをベースに皆がイメージを持っていると、踏み間違えるのかな、 と思いますのであえて発言をさせていただきます。その中でマッチングプログラムとか 研修委員会という話が出てきます。研修委員会もどうしても今のイメージだと、病院の 中にある研修委員会というイメージをしがちですが、それで本当に監視能力があるの か。先ほど言ったように、この人ちょっと働らかせ過ぎじゃないの、という話を、やは り誰が、外から見ていておかしいのではないの、ちゃんと能力を高めるような研修をし ているの、というような話がどこかから、第三者という言い方はあまり好ではありませ んが、評価されなければならない。  ですから、そういうイメージを先生々の1人ひとりの中にもう少しお持ちいただい て、これから先の議論をしていかないと、どうしても今の、都会の、病院の、私立大学 の、国立大学の、あるいは日赤の何のと大きな病院に身を委ねている、というところに 引っ張られてしまう気がする。そういう意味で先ほど、申し上げた内容と仕組みとの間 に齟齬がある、と申し上げたわけです。その辺の議論を深くしていただきたいと思いま す。 ○部会長  それは論点を議論する過程で、もう少し具体的に詰めていきたいと思っております。 そのほかには、いかがでしょうか。 ○宮城委員  私たちの病院はこの臨床研修のプログラムを組んで34年になります。諸外国との連携 のもとに628名の研修医を送り出してまいりました。そういう実績の中で、私たちはどう いうふうに臨床研修をしてきたかというと、やはり医者というのはどなたかも言われて いましたように、私はプロフェッショナルな職業だと。ここで労働者として認識すると いう感覚からすると非常にずれた臨床研修をしていたのだと思うのです。プロとして私 たちは鍛えあげてきましたので、時間とかそういったものに対する感覚は実はあまりあ りませんでした。私たちはプロですから研修1年目は何百万、2年目は何百万という年 俸制です。  したがって、時間外に働いたからなんぼ、当直をしたからなんぼという感覚は全く考 えずにやってまいりました。したがって私たちはオン・ザ・ジョブ・トレーニングとい う観点から、研修医は少なくとも月に最低6回は当直をすべきだ、それがオン・ザ・ジ ョブ・トレーニングの最低条件だと。しかし8回以上は多いということで、研修医に対 しては6回から8回の当直を課して今日までやってまいりました。当直代は一銭も出し ませんし、時間外も何時間働いたからといってその対価も今まで一度も払ったことはあ りません。しかし、1年目には月22万8,000円、2年目には25万円という給与でやってま いりましたが、いまの労働者扱いとして、週40時間を超える時間に対しては、週125%、 週末では135%以上を対価として払わなければならないというような、労働基準法に照ら されると、我々の今までの臨床研修の中身からするとずいぶんずれていくので、本当に そういう方向にいっていいのかという危惧は非常に強く抱きます。 ○部会長  どうもありがとうございました。そろそろ時間がまいりました。この問題については 大変幅広い視点から白熱した議論をいただきました。今日は最初に事務局から労働基準 法のお話がありましたので、ちょっと皆さん戸惑って議論が少し交差しているところが あったかと思います。やはり、そういう視点が我々関係者としては十分認識して、先ほ どから皆さん研修医として十分トレーニングが受けられるような待遇をすべきだ、とい うお話になったかと思います。  本日ご議論いただきました研修医の処遇について、さらに具体的なあり方に関して は、ほかの課題の検討が済んだ後で、改めて取りまとめていただきたいということにし たいと思います。議論の進め方ですが、当初は9月下旬に「研修達成目標」と「研修プ ログラム」、10月には「研修施設」というふうに順々に検討を進めていきたいと思いま す。今日の「処遇」の問題について、もし次回に時間がありましたら、この件について はいちばん大切なところですので、議論を詰めていきたいと思っておりますが、事務局 はそれでよろしいでしょうか。 ○医事課長  はい。 ○部会長  本日は本当にご熱心な審議をいただきましてありがとうございました。次回の検討会 について事務局から連絡をお願いします。 ○医事課長  本日は大変熱心なご討議ありがとうございました。次回の検討会は論点検討2回目と いうことで、「どのような研修内容プログラムとすべきか」ということについて主とし て検討を進めていただきたいと考えております。  日程については、9月28日(金)、14時〜16時までということで予定をさせていただ いております。会議室等については、改めて後日ご連絡をさせていただきたいと思いま す。 ○ 部会長  それでは、本日は以上で終わりたいと思います。どうもありがとうございました。 厚生労働省医政局医事課 電話  03−5253−1111 内線 2563,2568