01/08/15 第2回厚生科学審議会生殖補助医療部会議事録 第2回 厚生科学審議会生殖補助医療部会 議 事 録 厚生労働省 雇用均等・児童家庭局母子保健課 第2回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第 日 時  平成13年8月15日(月)14:00〜17:00 場 所  厚生労働省専用第21会議室(第5合同庁舎)17階 議 事  1.法制審議会生殖補助医療関連親子法制部会における検討状況について  2.生殖補助医療の現状について  3.AID関係の調査について  4.検討事項の全体について  5.検討課題1について  6.その他 ○桑島生殖補助医療対策準備室長  定刻になりましたので、ただいまから第2回厚生科学審議会生殖補助医療部会を開催 いたします。  本日は大変お忙しい中、お集まりいただきましてまことにありがとうございます。  本日は金城委員、渡辺委員がご欠席のご連絡をいただいてございます。なお、相良洋 子委員は前回ご欠席でございましたので、冒頭でぜひ一言ご挨拶をいただければと思い ます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○相良委員  ご紹介いただきました相良といいます。品川区でクリニック(産婦人科)をやってお りますけれども、前回、都合がつきませんで欠席いたしまして、申し訳ありませんでし た。  私はどちらかといいますと、産婦人科医の中でも生殖補助医療を専門としない立場の 方におります。私のクリニックには、どちらかというと体外受精までは踏み切れないと いうお考えの患者さんかぱらぱらといらっしゃるというのが現状でございます。  こんな立場ですけれども、それなりにこの審議会の中でお役に立てればと思っており ますので、よろしくお願いいたします。 ○桑島室長  どうもありがとうございました。  それでは、早速議事に入りたいと存じます。矢崎部会長、議事の進行、どうぞよろし くお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  どうも本日はお暑い中、また、お盆のシーズンにお集まりいただきまして重ねて御礼 申し上げます。  議事に入ります前に、お手元の資料について確認をお願いいたします。 ○桑島室長  それでは、委員の皆様方のお手元に配付してございます資料の確認をさせていただき ます。欠落等ございましたら、ご指摘をいただければと思います。  まず資料1から4まで、私どもが本日ご説明をさせていただく資料でございます。机 上配付資料といたしまして、右肩の方に書いてございますけれども、1から9の、事前 に委員の皆様方からいただきました論文等をまとめてございます。  それから、各委員の皆様方のお手元に専門委員会の報告書の関係資料集をご用意させ ていただいてございます。白表紙のものでございますけれども、これは今回に限らず、 毎回先生方のお手元にご用意させていただきたいと考えてございます。  それから、昨日、総合研究開発機構(NIRA)というところから、これに関する法 的なところについて関係資料を送ってまいりましたので、参考にということで冊子を準 備させていただいてございます。  以上でございます。 ○矢崎部会長  それでは早速議事に入りたいと思います。まず議事の1でありますけれども、「法制 審議会生殖補助医療関連親子法制部会における検討状況について」ということで、法制 審議会では、本年4月24日から専門委員会報告書の親子関係の確定の部分との関係で、 生殖補助医療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を規律するための法 整備についての検討を行っております。  本日は、本部会の検討課題とも密接に関連する法制審議会の同部会の検討状況につい て、法務省民事局の清水参事官から、きょうご参席いただけましたので、説明をいただ くことになっております。それではよろしくお願いいたします。 ○清水参事官  法務省の清水でございます。座って説明させていただきます。  今、部会長からご紹介があったとおりでございまして、私、法務省民事局管理課室と いうところで法制審生殖補助医療関連親子法制部会の担当している者でございます。  もともとこの審議会が立ち上がった経緯自体は、ご存じのとおり、平成12年12月、旧 厚生省の専門委員会において報告書が取り交わされて、そして一定の条件の下に第三者 が提供する精子・卵子・胚による生殖補助医療を認めると。そして代理懐胎を禁止する という方向性が出されて、ただし、このいわば枠の中での生殖補助医療を行うために は、法規制及び条件整備を3年以内にやる必要がある。その中の1つの項目として掲げ られたのが親子法制の整備ということでございます。  これはもともとこのような報告書が出る前から、実は親子法制に関する問題はあった わけでございますが、一方では、どの範囲までこの種の生殖補助医療というものが許容 されるのかということがわからないとなかなかルールもつくれないし、逆に生殖補助医 療を正面から制度として実施していく場合には、そもそも親子関係がどうなのかという ことがわからないと実施もできないと、そういう関係にあるということだろうと思いま す。  そういう報告書を受けまして、法務省では、お手元の第2回生殖補助医療部会資料1 に、法制審における検討状況を時系列でまとめております。  この2月16日に、第 133回法制審議会の総会において、法務大臣より諮問第51号とし て、それは2枚目に付けておりますが、「第三者が提供する配偶子等による生殖補助医 療技術によって出生した子についての民法上の親子関係を規律するための法整備を早急 に行う必要があると思われるので、その要綱を示されたい」。この諮問がされまして、 同時にこの総会において部会を立ち上げるということについてのご了承をいただきまし た。  立ち上がった部会にどのような方にご参加を願ったかということは3枚目に名簿が付 いております。部会長には学習院大学の法学部野村豊弘先生にお願いしております。そ して、お気づきのとおり、この部会といいますのは、医療部会と法制審の部会とでいわ ば併任といいますでしょうか、重なっておられる方が4名ほど、石井先生、福武先生、 矢崎部会長、吉村先生という形で、やはり両方にまたがるという観点から相互に密接な リンクを部会としても組織として持たせるということだと思います。  そういうわけで、第1回目の法制審の親子法制部会は4月24日に立ち上がりまして、 ここではまずフリーディスカッションをやりました。  第2回目は5月22日、ここで一応母子関係というものについてのルール。つまりさき の専門委員会の報告書では、分娩者を母とするルールを設けるべきであるということが 提言として挙げられておりますので、それを踏まえて、いわば一般的な議論をしたとい うことでございます。  第3回目は、委員の方々から外国法制の紹介、ドイツ法については岩志先生、フラン ス法について水野幹事、イギリス法について石井先生、アメリカ法について樋口先生と いう形で各国法制、アメリカ法という場合には、統一法(モデル法)ということです が、紹介いただきまして質疑応答をした。  第4回目は、吉村先生から、慶應大学におけるAIDの実態について一応ご説明いた だきまして、その後、今度は父子関係についての議論を開始したと、そういう状況でご ざいます。  もともとどこが不備かということで、民法上の親子関係を規律するための法整備をす る必要があるかということについて若干ご説明したいと思いますが、まず母子関係、母 と子の関係、法的な親子関係という面から見た場合に、現行民法上も判例も踏まえて考 えますと、原則としては分娩した者が母となるというルールだと一応言われておりま す。しかし、その分娩者が母であるという、そのことの意味は、結局分娩した人と卵子 を提供した人が違うことは全然予想してないわけですから、民法の世界としては、分娩 者を母とするということの意味は、分娩という事実を前提にそこから血縁が推定できる ので、分娩者を母として差し支えがないと、そういう思想に基づいているルールという ことになります。  そうしますと、第三者提供の配偶子、第三者提供の卵子によって、女性の方が懐胎し て出産した場合には卵子の提供者と分娩した人は別の人になるわけですから、結局現行 法上の分娩者・母ルールというものの射程距離というのはどうか、そういう疑義が生ず る。そうしますとそこを確認するために、分娩者・母ルールであれば、そういうものと して規定する必要がある。これが母子関係でございます。  その場合は、つまり理論的にはどうして分娩者が母であって、卵子提供した、血縁が ある人が母でないかということについての一応理論的な説明は最終的には考えないとだ めだろうと思っています。まだ法制審においては、そこまでの具体的な話は出ておりま せんが、基本的に意識としてはそういうことになります。  それから、父子関係でございますが、これも現行民法の世界というのは、血縁がある からこそ親子関係だという思想に基づいていると考えられるわけです。もちろん現行の 民法のとらえ方についても必ずしもそうは言い切れないという立場からのご異論はある ところでございます。つまり民法には血縁がある者が父とするということをはっきりと は書いていませんから、見方によってはそうでないという解釈も十分成り立つわけです が、基本的には、例えば法律上の夫婦間で生まれた子を考えますと、もし仮に夫でない 人の精子によって妻が懐胎して出産した場合には、理論上、夫は嫡出否認の訴えを起こ すことができて、そして嫡出否認というものが認められるというのはどういう場合かと いうと、結局血縁関係がないということになるわけですから、そういう意味において は、AIDのような類型、第三者提供の精子による生殖補助医療技術によって子が懐胎 した場合においては、父子関係がどういう契機で成立するのか、そういう問題がありま す。  そもそも嫡出推定の制度は、要するに妻が婚姻中に懐胎した子の父は夫と推定すると いう制度でございます。なぜ、それが推定できるかというと、それは夫婦間には排他的 な性関係があって、したがって当然妻が婚姻中に懐胎した子であれば夫が父になるであ ろう。つまり血縁があるということが暗黙のうちに前提とされているわけです。したが って、第三者提供の精子で生殖補助医療をしたということは、見方によってはそもそも 嫡出推定を及ぼす基礎がないということも言えるわけです。そういう面からしますと、 結局不妊のカップルで子どもが欲しくて第三者提供の精子で子どもをつくった場合に、 このままほっといた場合には、ある意味では嫡出推定そのものが及ばないかもしれない し、仮に及ぶとしても否認の訴えを起こされた場合には血縁関係がないということによ って父子関係が飛んでしまう、そういう問題がある。そういう意味において子どもの地 位が不安定になる。  したがって、そこを明確に、つまり生殖補助医療に同意した者については、血縁がな い場合であっても父になるというルールを設けてほしいというのが専門委員会の報告書 になっております。この場合も父の同意によって血縁関係がない者に実父としての責任 を負わせるということについての根拠の説明が必要になるということになりますし、技 術的にどのように法文に表現していくか、そういう問題があると思います。  もう一つの問題は提供者との関係でございます。現行法上は血縁関係を前提としてい るということを考えますと、血縁がある者、つまり提供者の方はいずれも認知によって 法的親子関係を成立させる、あるいはさせられる。強制認知の場合にはそういう可能性 もあるわけですが、ここについては、逆に提供者との間には、仮にその意味での血縁関 係があったとしても親子関係が法的に成立する余地がないということについてのルール を設けるべきであるというのが厚生省の報告書の考え方ということになります。  法制審においては提供者の地位についてはまだ議論は進んでおりませんので、これは これから議論をしていくことになるかと思います。  これまでの審議の過程でよく問題になった点は、第1に、専門委員会における報告書 の結論にどの程度法制審が拘束されるかということでございます。この点については、 事務局としては、理論的にはともかく、プラクティカルにも内容的にも最大限尊重すべ きものであるという立場で考えております。  第2に、行為規制法、つまりこれからこの医療部会でつくろうとする法律、規制法の 枠組法との関係はどうなるかというのは、要するに行為規制法の枠組みで許容されてい るような生殖補助医療に該当しないような生殖補助医療がされた場合、親子関係はどう なるか、そういう問題が一応ある。法律の建前としては、原則としては明らかに違法な ケースを前提として、特別な規定を法律に設けることは非常に難しいのではないかと思 われますが、この点についても、どの程度のずれまでいわば親子法の世界で拾うのかと いう問題が出てきます。  これに関連しまして、例えば細かい話にはなりますけれども、同意というものが父子 関係の成立の要件と考えていった場合に、それについて親子関係を創設するための要件 としての同意についてのどういう法規制を要求するかどうか。専門委員会の報告書で は、書面によって同意をするとされています。仮に書面によらずにして同意がされたと いうことが主張・立証された場合において、仮に書面であることが親子関係の要件だと すると、署名がなしにやった場合には親子関係が成立しないのかどうか。この辺もまた これから検討すべき問題だと思います。  あと立法形式はどうなるのか、立法事実がどのように把握しているのか、そういうご 指摘もあったところでございまして、特に最後のところはなかなか実証的なデータがな いわけで、できる限りいろいろな専門の方のご意見を伺う必要があると考えております し、また、さきの法制審の部会でも、吉村先生からAIDについての実態のご説明をい ただいたところでございます。  いずれにせよ、これからも理論的及び技術的な問題点を検討していくわけですが、今 後、例えば近親婚の禁止について規定を設けるかどうか、出自を知る権利をどうするか という関係で、この医療部会でこれから検討されようとする情報アクセスの制度がどの ようなものになるのかということは非常に大きな影響を持ってくるわけです。また紛争 になった場合に、同意とか承諾の証拠化の問題、これも福武先生からもご指摘をいただ いたところでございますし、それもこの行為規制法に基づく指定医療施設であるとか公 的管理運営機関のあり方と非常に関連してくると考えられるわけです。  法制審の案、今後の検討を進めた後、あといろいろ意見照会をして、また最終的に固 めることになると思いますが、そのタイミング自体も、こちらの医療部会でつくられる 枠組みを踏まえてやる必要があることは当然のことでございますので、その意味で今後 とも密接な関連を持ちつつ、いろいろご協力をいただきながら、当方の審議会の審議も 進めていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。  以上でございます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。法制部会での今までの審議の経過をご説明いただき ましたけれども、どなたか、ご質問、コメントございますでしょうか。よろしいでしょ うか。今、お話いただきましたように、民法の親子法を規定する場合に、この部会での 主な枠組みがその根底になるというお話でございますので、今後とも委員の皆様のご協 力を得たいと思います。よろしいでしょうか。  それでは、清水参事官ありがとうございました。  次に、議題の2の「生殖補助医療の現状について」に入りたいと思います。前回は、 第1回目ということで特に項目を絞らずに、この問題全般について各委員の方々で自由 討議を行っていただいたところであります。今回からいよいよ個別の検討項目の議論に 入りたいと思います。そこで個別の検討項目の検討に入ります前に、この部会の委員の 中には既に生殖補助医療について非常にお詳しい方もいらっしゃるかと存じますが、配 偶者間の生殖補助医療も含め、生殖補助医療全般について、もう一度おさらいをしてお きたいと思います。これについては、吉村委員にご説明をお願いしておりますので、吉 村委員よろしくお願いいたします。 ○吉村委員  ただいまご紹介にあずかりました吉村ですが、当然のことながら、こういった医療、 よくご存じの方もお見えになると思いますけれども、そういった方にはちょっと失礼か もしれませんが、現実に行われている生殖医療についてスライドを使ってご説明をさせ ていただきます。 〔スライド映写)  まず人工授精という方法でありますが、これが子宮でございまして、子宮の中に精液 を入れるという、こういった方法で非配偶者間の人工授精も行われるわけであります。 体内で当然のことなから受精が起こります。卵管の膨大部で受精が起こりますので、通 常の受精と同じ現象が卵管内で起こるというご理解で結構だと思います。通常では膣内 に射精された精子でありますが、それを子宮腔内に精液を入れるということでございま す。自分の精子の力で卵管膨大管まで達します。 〔スライド映写〕  こういった非配偶者間の人工授精は昭和24年から行われてきたわけでございますが、 日本産科婦人科学会では、平成8年にこういった非配偶者間の人工授精と精子提供に関 する見解を出したわけでございます。その際には、当然のことながら本法によって挙児 を希望する者を対象とするわけでありますし、本法によってしか妊娠成立の見込みがな いと判断された者としたわけでございます。そして被実施者は法的に婚姻している夫婦 であるということ。実施者夫婦、出生児のプライバシーを尊重するのは当然のことでご ざいます。 〔スライド映写〕  精子の提供者のプライバシー保護のため精子提供者は匿名であります。当然のことな がら精子提供者の名前は知らされない。しかし、実施医師は提供者の記録を保存してお く必要があるというふうにしたわけでございます。そして日本産婦人科学会へ施設登録 を行わなければならないというようにいたしました。こういった見解に従って現在行わ れているわけでございます。 〔スライド映写〕  2年前に厚生省から凍結精液を用いるべきであるという見解が出されまして、それ以 後は凍結精子ばかりで行われているわけでありますが、以前は新鮮な精液で行われてい たこともございました。凍結をいたしますと、AIDの場合にどの程度の妊娠率かと申 しますと、新鮮精液では1回受精を行います妊娠率の割合は大体 4.8%、5%ぐらいと いうことでございます。ですから、私どももこういった医療を行う際には5%前後であ ると。妊娠する方は大体6回から7回行いますと、ほぼ90%ぐらいの方が妊娠します。 しかし1回の妊娠率は5%前後であるということをお知らせしています。  凍結精液はどのくらいかと申しますと、最近はすべて凍結で行っておりますが、大体 半分まではまいりませんが、3%前後に低下するわけでございます。これはエイズその 他の感染症の予防のために凍結精液を用いるべきであるということに従いまして、現在 は凍結精液のみで行っているわけであります。 〔スライド映写〕  これは日本産科婦人科学会でまとめましたデータでございますが、1999年に約妊娠数 は 343、流産は48、生産分娩数は 199、出生児数が 220。 200人から 250人ぐらいが生 まれているということでございます。これはしかし実際にわかった数だけでございまし て、わからないものも含まれているということは皆様方よくご存じだと思います。 〔スライド映写〕 これはAID児がどういうような身体発育と精神発達をしているか。きょう資料にお 配りいたしましたが、これは極めて貴重なデータでございまして、世界にも余りこうい ったデータはございません。体重を見ましても身長を見ましても平均より超えている。 精神発達がIQで表されるかどうか、これについてはまた問題がありますけれども、I Qを調べたところ 111ポイントぐらいであったということでございます。 〔スライド映写〕 これは17歳まで、身長、体重、胸囲を調べたデータです。これも大変貴重なデータで ありまして、世界にもこういったデータは余りありません。大体女児も男児も平均ぐら いであるということでございます。 〔スライド映写〕 私どもが最近アンケート調査を行いました。これは父親がどう思っているのかという ことについて報告がほとんどありません。夫婦間で子どもとの関係はどうなのかという ことでありますが、AIDに関しては、父親がどう考えているかということが非常に問 題となってくるということで、2〜3年ほど前に、きょうも資料がございますが、アン ケート調査を父親に出したわけでございます。この場合には、夫婦関係や家族関係にど のように貢献しているかを調査する必要性が生まれた。AIDを体験されたご主人にお 願いをする。差出人は病院名ではなく医師の住所とさせていただきました。こういった ようなお手紙を出したわけでございます。 〔スライド映写〕  これは平成6年から平成10年にAIDにより挙児を得た父親でございます。平成11 年、2年半前ぐらいに調査を行いました。宛て先不明が18通あったわけでございます。 子どもが生まれていても、こういったようにあて先不明が非常に多い。返信率は 146通 で大変いい回収率が得られました。この一部をご紹介いたします。 〔スライド映写〕 AID施行を決めたときの気持ち(父親)でありますが、「本当にしたいと思った」 64%、「本当はしたくなかった」という方もお見えであります。「妻の希望が強いので 賛成した」という方もございます。「よくわからない」方。「したい」という方が半数 以上を占めます。 〔スライド映写〕 AIDを望んだ理由、赤いのが強い理由でありますが、「自分の強い希望」、「妻の 強い希望」、これらが多い。「子どもが好きだから」、「他に方法がなかったから」、 こういったものがAIDを望んだ理由でございます。 〔スライド映写〕 AIDをやってどういう感想を持ったかということでありますが、父親は「大変よか った」、「よかったと思う」。これを合わせますと95%前後でございます。 〔スライド映写〕 終わった後、人生観に、子どもを持ってどういうプラスになったか。「仕事に張りが できた」、「家庭をより大切に思うようになった」。こういったものが多くを占めてい ます。 〔スライド映写〕 一方、マイナス面はどうだったか。「物事に対してより神経質になった方」もお見え になりますし、「子どもの成長への不安」を抱えられている方も多いというのも現実で ございます。 〔スライド映写〕 AID出産の子どもを抱いたとき、どう思ったか。「とてもうれしい」、うれしさと 不安が半数。「心配だがうれしい」。いずれにしても、「心配だがうれしい」、「不安 がある」という方が28%(1/4)ぐらいの方が、うれしいけれども、そういった不安 を持っておられる。「とてもうれしい」という方が3/4ぐらいであります。 〔スライド映写〕  AIDについて、終わってからどう思うかということも聞いてみたわけであります が、「あった方がよいと思う」方が97%、「どちらでもよい」という方が3%。 〔スライド映写〕  第2児目を希望されるかどうかということも一応聞いてみました。「強く希望する」 方が36%。「一応希望する」、「機会があれば考える」。こういうように第2児目を希 望される方も、「強く希望する」、「一応希望する」という方合わせますと大体半数程 度である。「希望しない」、「余り希望しない」という方を合わせると大体20%前後と いうことでございます。 〔スライド映写〕  これも大切なことなのでありますが、出自を知る権利について、子どもに対してAI Dをしたことをお知らせしますか。「絶対にしない」という方が63%、「必ずする」と いう方は0でありました。「できればしたい」という方が1人お見えになったというこ とでございまして、出自を知る権利についても、81%の方は「絶対にしない」か、「し たくない」と思っておられる方が多いということでございます。  これがAIDのデータでございます。次が体外受精です。 〔スライド映写〕  体外受精につきましても、現在ずっと行われているわけでありますが、1978年にイギ リスでエドワード、ステプトーらが世界初の体外受精児に成功したわけでございます。 このときは、当然のことながら自然排卵で行っておりましたので、卵子1個を採り出し ましてやっていました。受精をしなければ、その周期はだめということでなかなか難し かったわけでございます。エドワード、ステプトーらが本当に初めてヒトの卵を使って 体外受精を成功したのはこれから約10年前であります。1968年か1969年ごろに成功して いるわけでありますが、これまで10年以上かかってルイーズ・ブラウンちゃんが生まれ たわけでございます。  その後、オーストラリア学派等らによりまして、ゴナドトロピンを使用する。要する に排卵誘発剤を使用することによって多数の卵子を得ることができるようになってき て、飛躍的に体外受精が全世界に広まり、妊娠率も非常によくなったわけでございま す。83年には凍結の受精卵に成功いたしました。最近では余り行われておりませんが、 「GIFT」という方法は1984年。当時は全身麻酔をかけまして、当然腹腔鏡で採卵を していたわけでありますが、85年ごろから経膣の超音波、膣の方から採卵することがで きるようになってまいりまして、最近ではほとんどの施設において全身麻酔はかけてお られない。静脈麻酔程度でやっておられるところが多い。非常に患者さんに対する侵襲 も少なくなってきたわけであります。85年ごろ、これは欧米で卵又は胚の提供によるも のが出てまいりました。  もう一つの進歩は、これは89年、90年になる少し前ぐらいから顕微授精が行われるよ うになってきたわけであります。1cc当たり 100万以下の精子でありますとなかなか体 外受精でも受精が起こらないわけであります。極度の男性不妊の方に関しては顕微授精 が望まれていたわけでありますが、当時は囲卵腔に注入する方法が行われていたわけで ありますが、多精子受精その他が起こりましてうまくいかなかったわけであります。92 年にベルギーのパレルモ等によりまして、細胞質内に1匹の精子を注入するという方法 が成功いたしました。それ以来この顕微授精はまたたく間に全世界に広まったわけでご ざいます。 〔スライド映写〕  体外受精におきましては、先ほど申しましたが、エドワード、ステプトーらが10年も かかったということに関しては、1個の人間というのは単胎動物でありまして、1周期 には1個の卵胞しか大きくなってこないわけでありますが、HMG製剤を使いまして卵 巣を刺激いたしまして、多数の卵子が回収できるようになった。こういった方法が現在 行われているわけであります。  しかし、最近では非常に培養技術がよくなりまして、自然周期で採卵するというとこ ろも出てきております。一般的には卵胞刺激法を用いています。 〔スライド映写〕  体外受精の方法でありますが、要するに多数の卵胞がこういうふうに見えるわけでご ざいます。採卵針を膣の方から入れまして卵胞を刺す。その中の卵胞液を採り出しまし て、その中から卵子を探すわけでございます。卵子をシャーレで探しまして、その卵子 に精子を媒精する、かけるわけでございます。そして、それが前核期になり、大体これ が12時間ぐらいであります。24時間、36時間か48時間たちますと、4細胞期になるわけ でございます。こういった卵を胚移植するということでございます。  現在では培養技術が非常に進んでまいりまして、これよりずっと進んだ胞胚期という 時期に 64とか 128細胞期に戻すようにして、卵のクオリティを評価してから数少ない1 個及び2個を戻すといった方法が用いられるようになってきたわけでございます。 〔スライド映写〕  これが実際に採卵しているところでありまして、経膣の超音波を見ながら、患者さん の方は余り見ないで、モニターを見まして、そして針で刺すわけでございます。 〔スライド映写〕  出血により開腹しなくてはならないというような症例を私どもはまだ経験しておりま せん。1日、2日の入院ということはございますけれども、出血によって開腹しなくて はいけないというようなことはありません。これは実際にモニターで見ているところで ありますが、こちらが膣の方でありまして、1cm、2cm、3cmとなっておりまして、針 でぷすぷすっと刺すわけであります。そして、卵胞液とともに卵子を採り出してくるわ けでございます。 〔スライド映写〕  これがヒトの卵でありまして、大体80ミクロンでありますから0.1mm よりもやや小さ いぐらいでありますから、目をこらしてみますと卵は見えるわけであります。人間の体 の中で見える細胞は卵だけだと思います。これは成熟した卵でございます。極体がある わけでありまして、第1極体が放置されている、こういった卵はマチュアなオーサイト (成熟した卵)であると評価していいと思います。 〔スライド映写〕  これが受精した卵でありまして、大体これが12時間後ぐらいにこういった雄性前核と 雌性前核、この2つに合わさって2nという固体になるわけであります。 〔スライド映写〕  これが4細胞期でありまして、きれいな4細胞期でこういった卵を子宮腔内に戻すわ けでございます。 〔スライド映写〕  こういった体外受精を始める前に、日本産科婦人科学会は昭和58年に会告を出してお ります。こういった医療で、これ以外の医療行為によって妊娠成立の見込みないと判断 される者を対象とする。当然のことながら承諾書、十分なインフォームド・コンセント をとるということが書いてございます。 〔スライド映写〕  そのときに「被実施者は婚姻しており」ということを明記しているわけでございま す。ですから非配偶者間の体外受精に関しましてはこれに抵触するわけでございます。 当然のことながら出生時のプライバシーを尊重する。そして、これらについても報告を しなければならないということを義務づけたわけでございます。 〔スライド映写〕  これは日本産科婦人科学会で登録されている実施施設数でございます。一番新しいの が99年のデータでございます。これが8月に出ましたが、 471施設、実際に行っている のが 423施設。赤いバーが凍結を行っている施設でございます。多数の受精卵が得られ る場合がございます。そういった場合には一部を凍結しておくわけでございます。凍結 の施設数とこれが本来ならば一致するのが理想的でございますが、約半数の施設で凍結 が日本では行われているということでございます。 〔スライド映写〕 これが妊娠率と生産率を示しております。これは昔は青い線で書いてございました が、これは妊娠反応が出たものだけでございまして、赤い線が実際の臨床妊娠率でござ います。大体どの程度妊娠するかと申しますと、一番新しいデータで19.7%でございま すので、5人に1人ぐらいが妊娠できるだろう。重要なのはこの黄色い線でございまし て、受けた患者さんがどの程度赤ちゃんを連れておうちに帰れるかということでござい ますが、16.8%前後で、思ったよりまだそんなに高い値ではないということでございま す。6人に1人ぐらいがおうちに連れて帰れるということでございます。 〔スライド映写〕  これが顕微授精でございます。顕微授精と申しますのは、初めは1980年の終わりころ は、透明体という殻がありますが、この殻に串刺しを行いまして、精子の侵入をよくし てあげようといった方法でやられていたわけでございます。その次、90年ごろには囲卵 腔内に精子を注入するという方法を行っていたわけです。でもこういった方法を用いま すとどうしても精子が2匹入り3匹入る多精子受精が非常に多いというのが欠点でござ いました。当時はまだ動物でも細胞質に精子を打ち込むということがなかなかうまくい かなかったわけでありますが、92年にパレルモたちがヒトで初めて細胞質内に精子を注 入して、これが成功したわけでございます。  思ってみると、ほかの種よりもヒトはそれほどICSIという方法がやりにくい種で はない。精子の形が非常にいいわけでありまして、例えばほかの種では、精子が非常に 平べったいものでありますと、どうしてもこの針を大きくしなくてはいけない。そうす ると細胞質に与えるダメージも大きかったということでなかなか成功しなかったわけで ありますが、ヒトの場合では形が非常にそういう意味ではよかったということで、卵細 胞質内のICSIという方法がうまく行われるようになってきたわけでございます。現 在はほとんどがこのICSIという方法で行われているわけであります。こういった方 法を用いますと、現実に精子1匹がどこからか見つかれば、要するに顕微授精によって 妊娠できるようになってきたわけでありまして、従来はこういった症例はAIDになら ざるを得なかったというところもあるわけでありますが、ICSIによって妊娠できる ようになってきたということであります。 〔スライド映写〕  これがICSIの図でありますが、精子がここにあります。細い針を刺します。こう いったものを今コマーシャルで買えることができるわけであります。非常に細い針があ りまして、少し細胞質を吸入して入ったことを確認いたしまして、精子を1匹打ち込む ということであります。こちらは卵をホールドしているピペットであります。 〔スライド映写〕  顕微授精はどの程度の成績を得られるようになってきたかということでありますが、 92年パレルモたちが初めてやったのはこの辺でありますが、このころは日本では囲卵腔 内に注入したりPZDという方法で切開を加えたりする方法でやっていたわけでありま す。この辺から日本でもICSIという方法が行われるようになってきて、妊娠率が通 常の体外受精の成績よりも大体2%前後いい成績が得られるようになってきたわけでご ざいます。生産率も18.5%であります。 〔スライド映写〕  これが99年に日本産科婦人科学会でまとめられました出生児数でございますが、約1 万 1,929人が1年間で生まれているわけであります。全国の出生児数が120万人前後であ りますから、 100人に1人が体外受精関連技術によって生まれています。その中でも顕 微授精が非常に多くの割合を占めるようになってきたという現実でございます。 〔スライド映写〕  これが実施数と妊娠数の推移でございますが、出生児数を見ていただきたいのです が、こういうように増えてきた。これはIVFです。そして凍結、黄色いのが顕微授精 でありますが、非常に顕微授精の伸びがいいといった成績が得られております。 〔スライド映写〕  目安でございますが、AIHと申しますのは大体目安でありますから絶対ということ ではございませんが、1ml当たり精子数が 100万個以上あればAIHで妊娠することは 可能であります。 60万個あるいは 100万個でAIHで妊娠された方もお見えになります し、 1,000万個以下でも正常なナチュラル・インセミネーションで通常の性生活でお産 みになった方ももちろんおられるわけですが、目安は大体 1,000万個であると人工授 精、500万個以上あれば体外受精ができるであろう。これ以下になりますと、なかなか 体外受精でも受精が起こらないことがある。先ほどご説明申し上げましたICSIとい う方法では、精子数が1個見つかればICSIをすることができる。現在ではメサとい う方法とテセという方法が行われています。これは射出精液、出た精液中には精子は1 匹も見つからないのだけれども、精巣内あるいは精巣上体というところに精子を探すこ とができれば、こういった精子を使ってICSIを行うことができるということでござ います。 〔スライド映写〕  そういった体外受精が非常に発達してきたわけでありますが、これがすべてがいい方 向に向かったわけではありません。これは特に3胎以上の多胎(赤い線)を見ておりま すが、これが非常に急激に増えてきたわけであります。それは生殖医療の実施の施設数 と全くパラレルに動いておりますし、生殖医療によって生まれた数とも非常にパラレル に動いているということを考えますと、3胎以上の妊娠というものは体外受精によって 生まれてくることが非常に多いということも現実でございます。 〔スライド映写〕  多胎がおこると、胎児側から見ますと当然流産・早産の危険が多いわけであります。 IUGRといった発育遅延、低出生体重児が非常に多くなるということであります。母 体側から見ますと、当然妊娠中毒症の発生頻度が高くなってまいります。それから、 流・早産が起こりやすくなってまいりますので早期から入院をしなくてはならない、頸 管縫縮術を予防的に受けるとか、帝王切開が当然増える、産後の異常出血が多いとかさ まざまな多胎によって問題点が起こってくるわけでございます。医療経済上を考えます と、例えばNICUの施設とかスタッフの不足、こういったことが今大変な大きな問題 となっているわけでございます。 〔スライド映写〕  そこで平成7年に日本産科婦人科学会は体外受精、胚移植において移植胚数を制限い たしましょうという会告を出したわけでございます。これを3個以内といたしました。 3個以内ということにしておけば、現実面において3個が全部ついたとしても3胎にな るわけでありまして、3個としましょうと。こういった規制を示している国もあります が、結構こういった規制は日本は外国に比べて早かった。まだ規制を決めてない、何個 返してもいいといった国もございます。韓国などは何個返してもよろしいですし、ヨー ロッパでもこういった国々は多いわけであります。  多胎といいますのは、体外受精だけではなくて、3分の1から5分の2ぐらいは排卵 誘発によって起こってくるわけであります。これは体外受精をしなくても排卵を起こす ために排卵誘発剤にはゴナドトロピン製剤というものを用いるわけでありますが、こう いった場合には完全に予防できる手段がございません。ですから、こういったときには 使用量を減らそうではないかといった見解を出したわけでございます。これによって現 実に多胎の数は減ってきたわけでございます。 〔スライド映写〕  今まではAIDを除いて通常の生殖医療についてご説明申し上げましたが、精子提供 による体外受精をもう一回考えてみますと、これは妻には卵子があるわけでございま す。ご主人に精子がないわけであります。例えば射出精液中に精子がない。テセ、メサ を行う場合もございますが、精巣内に精子が見つかれば、そういった精子を用いるわけ でございます。そういったものによっても妊娠できないといった場合には第三者の精子 を用いて体外受精を行うわけでございます。そしてこの受精卵を妻の子宮に戻すという ことであります。そうしますと、その適用は夫が無精子症、精子が見つからない。ある いは精巣内に精子が見つかったとしても、ICSIを行っても妊娠できないといった場 合は適用になると思うわけであります。そして、かつ妻に体外受精が適用となるような 不妊原因がなければならないわけであります。こういった不妊原因がなければ通常のA IDでいいわけでございます。これが精子提供による体外受精でございます。 〔スライド映写〕  世界ではどういうふうになっているかと申しますと、スパーム・ドネーションに関し ましては、これはアメリカ生殖医学会がまとめた1999年のデータでございますが、AI Dを禁じているのはこういった国でございます。エジプト、ヨルダン、サウジアラビ ア、トルコ、こういった国以外はAIDは認められております。  スパーム・ドネーションのIVF−ETを禁止している国といいますのは、オースト リア、アイルランド、ジャパン、ノルウェー、スウェーデンです。 〔スライド映写〕  次が卵子の提供による体外受精でございます。これは女性に卵子がない場合、これは 早発閉経というものもございます。43歳未満に月経がなくなってしまう、これを早発閉 経と言っております。そういった患者さん、30歳代で卵巣の中に卵子がなくなってしま うような病気がございます。こういった患者さんやターナー症候群のように索状卵巣で 卵子を持たない患者さん、こういった患者さんが適用になるわけであります。そういっ た場合に第三者から卵をいただいて、そして夫との間で体外受精をいたしまして、これ を妻の子宮に戻す。さまざまな問題点は皆様の方がよくご存じだと思います。 〔スライド映写〕  オーサイト・ドネーションを禁止している国はこれだけございます。日本もその中に 一応入っておりますが、法律で禁止している国はドイツ、ノルウェー、スウェーデンで あります。そのほか、オーストリア、エジプト、アイルランド、ジャパン、ヨルダン、 ポルトガル、サウジアラビア、こういった国がオーサイト・ドネーションを禁止してい る。特に赤いところはprohibitで書いてございます。 〔スライド映写〕  オーサイト・ドネーションで医学的に問題となるのは高齢出産のリスクだと思いま す。高年齢でも卵子が若ければ、卵子がエージングを起こしてなければ妊娠できるわけ であります。60歳の方でも63歳の方でも現実面では妊娠することが可能であります。そ うしますと高齢出産に伴うリスク、母体合併症、これは当然のことながら内科的疾患、 高血圧、糖尿病、腎疾患、こういったものが増えますし、産科的にもさまざまな合併症 が増えてくるわけでございます。 〔スライド映写〕  これはちなみに母体の年齢別の周産期死亡率でございます。これは卵子のドネーショ ンには当てはまらないかもしれません。これは大体 1,000につき、6.0 ぐらいの割合で ありますが、45歳以上となりますと、当然のことながら46.6という周産期死亡率になっ てくる。40歳以上になりますと急激にその周産期死亡率が増加してくるというデータで ございます。これは通常のお産をされた方のデータでございます。だから当てはまらな いということがあるかもしれませんが、こういった年齢が高くなってくると子どもさん が亡くなる率も高くなってくるということで、これは必ずしも卵子提供には当てはまり ません。 〔スライド映写〕 母の年齢別の死亡率であります。海外におきましても、卵子のドネーションを受けた 場合にどういった妊婦死亡率が起こったかというデータはございません。イギリスのD r.ブリンスデンがお見えになったときに聞きましたけれども、そういったデータはない と言っておりましたが、使えるとすると、厚生省から出されている「母子保健の主なる 統計」を見ますと、40歳以上の方がどのくらいに1人ぐらいお亡くなりになっているか と申しますと 1,406人に1人ぐらいです。これは平成11年の一番新しいデータだと思い ますが、普通は1万 6,356人に1人ぐらいでございますが、40歳以上になってまいりま すと非常に死亡率が高くなってくるというのも事実でございます。 〔スライド映写〕  これは胚の提供でございます。胚の提供は適用になる方は非常に少ないだろうとは思 われますが、ご主人に精子もなくて奥様に卵子もない場合でございます。そういった場 合に胚の提供を受ける。第三者の卵子を体外受精し、それを妻の子宮に戻す。要するに 全く違うご夫婦が体外受精された余剰卵が適用になる場合が多いと思いますが、こうい った卵子をいただいて妻の子宮に戻すということでございます。厚生省のこの前の見解 では、卵子の提供にもこれを当てはめようではないかという案が出ていると思います。 胚の提供によって代用しようということでございます。 〔スライド映写〕  エンブリオ・ドネーションを禁止している国はこれだけございます。prohibitしてい るのはジャーマニーとスイスランドであります。かなりの国がエンブリオ・ドネーショ ンに関しては禁止をしております。 〔スライド映写〕  これは代理母であります。80年代というのはサロゲートが非常に多かったわけであり ます。これはどういうことかと申しますと、夫の精子を代理母、全く関係のない女性に 人工授精をするという方法であります。ホストマザーというのは、妻に子宮がない場 合、妻の卵子と夫の精子を使いまして体外受精いたしまして、それを第三者の子宮に入 れる場合でございます。これが非常に原理的な方法で、2つの方法、サロゲートとホス トであります。最近では専らホストが行われているわけでありまして、これを外国で、 最近ではIVF−サロゲートといっております。ほとんどこういった方法で行われてい る。最近ではこの方法は余り行われなくなってきているということでございます。 〔スライド映写〕  最後だと思います。IVF−サロガシーに関してはかなり多くの国が禁止をしており ます。禁止をしている国がこれだけでございます。  では、一方、許可している国はどこかと申しますと、オーストラリアは州によって違 います。サウスとウエストは禁止しておりますが、そのほかの州では許可されておりま すが、代理母については多くの国でまだ許可していないというのが現状であります。  以上で説明を終わらせていただきます。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。生殖補助の実態的なデータ、アンケート調査なども ご説明いただきました。今の吉村委員のお話にどなたかコメントあるいはご質問ござい ませんでしょうか。 ○高久委員  2〜3教えていただきたいのですけれども、AIDについて非常に詳しい成績参考に なりました。父親が子どもの将来について少し不安を感じるというパーセンテージがあ りましたですね。AIDでなくても、父親というのは、時どき子どもの将来に対して不 安を感じることがあると思うのですが、ナチュラルに生まれた子どもとAIDで生まれ た子どもとで、父親の不安感に差があるかどうかというデータはおありなのでしょう か。 ○吉村委員  そういったデータはちょっとないのですが、ただ、うれしいけど心配だという割合は AIDに特徴的なことなのではないかと思います。 ○高久委員  もう一つ、IVFのために卵子を採るときに、先ほど1日か2日の入院とおっしゃっ たのは、これは何か事故があったときに1日か2日入院。 ○吉村委員  例えばきょう12時に採卵をしたとします。そうすると大体3時間から4時間後に刺し たところの出血のぐあいを見るわけでございますが、時々と申しますか、200例に1例ぐ らいは、出血が溜まってきた場合にその出血量のぐあいを見まして1日ぐらい入院を延 長していただくということはあるかもしれません。こういったケースは非常にまれであ ると。ですから私どものところでもそうですが、多くの機関で今そうだと思いますが、 来て、例えば昼に採卵をしたら夕方にはほぼ帰っていただくということであります。 ○高久委員  IVFのサロガシーを禁止している国がたくさんありますですね。それは法律で禁止 しているのか、それともガイドラインで禁止しているのですか。 ○吉村委員  ガイドラインで禁止しているところもありますし法律で禁止しているところもござい ます。 ○高久委員  どうもありがとうございました。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。 ○平山委員  今の吉村先生の体外受精等に関する妊娠率についてですけれども、日本の場合、登録 施設については荒木先生の方が大変お詳しいと思いますけれども、 470超えている施設 ですけれども、実際にIVFを恒常的にやっている、年間採卵数 200以上やっているよ うなクリニックや病院は実はそのうちの10%にも満たない程度と私は聞いております。 ですので、成績に関しましても、クリニックや病・医院によってのばらつきは大変ある ように私は感じております。ですからいちがいに妊娠率が低い、高いとか、そういうふ うにはなかなか言えないんです。クリニックによってレベルは非常に違うということは 一応知っておいていただいた方がいいのではないかと思うのですけれども。 ○荒木委員 IVFやETに関する登録施設はこの6月現在 530を超えています。先ほど吉村委員 のご報告はペーパーになった報告でございます。その中で登録施設で一番多いのはクリ ニックです。クリニックと病院あるいは不妊専門病院、大学病院などに分けた統計はと っておりません。印象としてはクリニックの方が妊娠成功率は高い。いろいろな施設を 回って大学病院とか慶應病院などへ来ましたら、当然妊娠率は低くなると思っておりま す。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。 ○才村委員 今の調査では、平成6年から10年までのそういうのを行った方への調査ということ で、子どもさんの年齢は1歳から5歳ぐらいまでということになりますね。そうした場 合に、子どもさんが5歳であれば別に養育もそんなに困っておられないのかもしれない のですけれども、将来の不安ということでアンケートされているのですけれども、現在 子どものことで何か養育上困っているようなことがあるかどうかといった質問はなかっ たのかということと、もう一つ、妻と夫の方で、子どもへの意識の差みたいなものがあ るのかないのかということについての質問はなかったのでしょうか。 ○吉村委員  何でしょうか。 ○才村委員  子どもに対する夫と妻との意識の差、そういうふうなもの。 ○吉村委員  この質問の項目も書いてございますので、それを読んでいただければ。これは妻にわ からないように夫だけにとりましたので、妻のバイアスが入らないということが前提に なりますので、そういった比較は少しできないかもしれません。ですから3分の1ぐら いの方は、こういった手紙が病院から来たよいったことを奥様にお見せになっていると いうことがわかるようなアンケートの返却もございました。そういった方は非常に夫婦 関係もうまくいっているし、いろんな親子関係もうまくいっている方だともちろん思い ますけれども、それはそういったことが見てとれました。自分でお名前を書いてくださ っている方もお見えになりました。 ○矢崎部会長  そのほかいかがでしょうか。どうぞ。 ○桑島室長  今の才村先生のお答えに少し、吉村先生もおっしゃいましたけれども、机上配付資料 3の後ろの部分に、今このアンケートの内容が具体的に示されてございますので、ごら んいただければと思います。 ○安藤委員  ただいまの質問と関連があるのですけれども、母親側の方のアンケートはしなかった のでしょうか。といいますのは、不妊治療したときに男性側にインタビューをするとい う場面があったのですけれども、そのときに必ず妻側も同席してという条件が入ったこ とがあったんですね。ですので、今回なぜ父親だけにとったのかということと、今後母 親に対する質問をする予定があるのかどうかというところもお聞かせ願いたいと思いま す。 ○吉村委員  前の審議会で父親がどう思っているのだろうかということを皆さんがお聞きになりた いという意見が非常に強かったわけであります。母親に対しては、海外もこれほど詳し いものはございませんが、ありますので、父親に対してはとったことがないということ で、ある委員から言われましたので、その点は本当に私もそう思うと。父親がどう考え ているかということも大切だということで父親をとったわけでありまして、母親につい てはまだとっておりませんので、この子どもさんも今2年ほど経過しております。もう 少し大きくなって、学校へ上がるような状況にもなっておりますので、あと2〜3年た ったら、またとってみたい。その際には母親にも意見を伺いたいなという考えは今持っ ております。 ○矢崎部会長  いかがでしょうか。よろしいでしょうか。  それでは、吉村委員どうもありがとうございました。  次に議事の3の「AID関係の調査について」にまいります。前回の部会では、現行 においても実施されているAIDによって生まれた子どもやドナーなどの心理状況など について論文の収集やそれらの人からのヒアリングを実施することが必要なのではない かというご意見が出されたところでありますが、これについて事務局から報告よろしく お願いします。 ○桑島室長  前回、部会で先生方のご意見を踏まえまして、事務局から各委員の先生方にAID関 係の論文、ヒアリングの参加者、質問票への回答などについて対応していただけるAI D関係者について情報提供をお願いをした経緯がございます。その結果、本日、机上配 付資料としてお配りしてございます資料が、5人の先生方から論文等をご提供いただい たところでございます。まず、その点が1点。  それから、しかしながらヒアリング等についてでございますけれども、対応していた だけるAIDの関係者につきましては、何人かの委員の先生方に当たっていただいたわ けでございますけれども、ご本人の心情等、やはり非常に問題があり、現時点において は対応していただくことは非常に難しいという結論でございます。  また、前回、吉村委員からお話をいただきましたAIDを受けた父親調査の自由記載 欄、この部分につきましては、先生ともご相談をさせていただきました。そうした中 で、その結果として、回答者からこうした場で公開をさせていただくことについて同意 をまず得ていないということ。それから、プライバシー等の問題がございますので、部 会の資料として公開することについては差し控えさせていただきたいということでござ います。ただ、母子保健課の方で、委員の皆様方に閲覧していただくことについてご了 解をいただいたというところでございます。  ということですので、委員の皆様方には非常に恐縮ではございますけれども、こうし た事情もございますので、吉村先生からご提供いただいた自由記載欄等の資料につきま しては、こういった部会の前後、あるいは先生方が厚生労働省にお越しいただいた際に 事務局でごらんいただいて、心証形成等を行っていただきたいと考えてございます。分 量といたしましては、おおむねちょっと時間はかかりますけど、1時間ぐらいごらんい ただければ、一通り目を通していただけると思います。  以上でございます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。ただいま事務局から報告がありました机上配付資料の内 容、またAID関係者に当たっていただいた結果などについて、各委員から簡単にご説 明、ご報告をお願いしたいと思います。順序はどういう。 ○桑島室長  資料の順番でお願いをしたいと存じますが。 ○小林主査  そうしましたらば、一番最初の議事次第の方に机上配付資料の一覧がございますかと 思いますが、ここに書いてある順番で、吉村委員から簡単にご説明いただければと思い ます。 ○吉村委員  私の方は1980年にとられました「AID児の知的ならびに身体的発育のfollow−up」 ということで、これは先ほども少し申し述べましたが、一応17歳ぐらいまでの子どもの 発達についての論文。1990年のアメリカの論文、これはドナー・インセミネーションの プレグランシーのアウトカムですから、子どもの健康状態や妊娠の経過がどうだった か、ファミリー・アジャストメントがどうだったか、そういった論文です。 もう一つは、私ともが行いました男性不妊患者の意識調査でございます。先ほども少 し申し述べました。 それからAIDをなさったご夫婦についても3名ほどお話を申し上げました。しか し、こういったことは私どもは秘密にしておきたいし、匿名ということでやっていただ いたわけだし、こういった席に出るつもりはないと。私も再三再四お願いを申し上げま したけれども、出たくないということでお断りになられました。 またこの前申し述べ たのですが、AIDのドナーになった方に関しましては、私どもがAIDをする際に は、匿名であるということを前提にドナーの提供をいただいておりますので、そういっ たことはお話はできませんでした。以上であります。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。これは皆さん、資料の裏のページにありますね。ど うも失礼しました。それでは続いて、平山委員からよろしくお願いいたします。 ○平山委員  私の方で用意させていただきました資料は、ことし出ました『Human Reproduction』 という雑誌、これはヨーロッパ生殖医学会が出している雑誌ですけれども、そちらの方 で、これまでに出された第三者生殖によるフォローアップ調査のレビュー、つまり今ま でいろんな研究が出ているわけですけれども、それをまとめたものということで、こう いうものを出した方が一覧できていいかなと思いまして出させていただきました。私は まだ詳しく検討しておりませんで、恐縮なのですけれども、一応簡単に内容の方を言っ ておきます。 論文自体は5つありますけれども、1つ目はPreface ですので概論ということです。  2つ目が、Outcome and follow-up of children born after IVF-surrogacyというこ とですけれども、先ほど吉村先生から説明がありましたIVF-surrogacy の子どもさん で、生まれた子どもさんのフォローアップ調査が行われています。先天異常とか子ども さんの発達に関しては2歳時点までは自然児と変わらないということです。  3つ目に関しては、Pregnancy and child outcome after oocyte donation というこ とですけれども、今度は卵子提供、すいません、AIDではないのが続くのですけれど も、卵子提供で生まれたお子さんに関する妊娠と出産後のデータです。これも一応まだ 研究数は少ないけれども、大体どの研究でも発達的には標準範囲以内にあるということ です。家族研究についても子どもの社会的発達、情緒的発達というのは正常範囲以内、 または温かい親子関係を築けているという論文が多いということです。  4つ目は、follow-up of studies of children born after frozen sperm donation 、これは凍結精子のドネーションによって生まれた子どもさんの健康調査で す。 吉村先生おっしゃったように、どの国でも匿名で、もともとAIDをやっておられる ところが多いわけですので、調査をするにしても難しいということがここにも書いてあ りました。どうしても研究が後方視的になってしまうということですね。もともとそう いうスタディをやると決めてAIDをどの国でもやっていたわけではないので、どうし ても後からやるのは難しかったりバイアスがかかっているために余り信頼性のあるデー タは少ないんだけれどもということですけれども、子どもさんの発達に関しては一般集 団と変わらない。ただ、多胎はやはり多いということですけれども、あとは心理・社会 的発達についてはよくわかっていないということですが、一応10歳までのデータとして は、多くの研究で問題がないというふうになっているのではないかという研究です。こ れからも長期的な研究が必要であろうという論文です。  最後の論文が一番、今回の趣旨に合っているかもしれないです。donor insemination families ということで、AIDによって生まれた子どもの親子関係と発達に関する論文 です。これも非常に論文自体に信頼のおける、ちゃんとした研究はなかなか少ないんで すね。ですので、なかなか難しいんだけれどもということですけれども、親子関係につ いては非常にうまくいっているという研究が多いということです。ただ、問題があると いう研究も多少あるのでまだ結論は出ていないですし、あとは子どもの発達に非配偶者 間人工授精をしたことが悪影響を与えるという証拠はないといったまとめに一応なって います。ただ、Donor Inseminationで生まれたお子さんはまだ若い段階での調査がほと んどであるために長期的な影響はわからない。どの論文も長期的な影響についてはわか らないけれども、現在のところでは、身体的発達に加えて、心理・社会的発達に関して も問題は少ないのではないだろうかという論文が多いというような結論であると思われ ます。 以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ご質問などは後でお受けしようと思います。次に渡辺委員からよろしくお願いしま す。きょうお休みでいらっしゃいますね。それでは、渡辺委員のは次回ご説明いただく ということで、岸本委員から、よろしくお願いします。 ○岸本委員 この資料は、昨年デンマークの方からベンテ コンラドセン女史という方が来日され たときの議事録なんですけれども、ベンテ コンラドセンさんというのは、ベンテさん 自身がターナー女性本人で、デンマークのターナーセンターとターナーコンタクトグ ループ協会のコーディネーターをされている方なんです。実際は自分の本職は弁護士さ んなんですけれども、ターナーセンターのお仕事が忙しくなってきたので、今は弁護士 さんを休んでいらっしゃるということでした。 たくさん資料ある中で、卵子提供、不妊関係に関する問題はページが少ないのですけ ど、デンマークのターナー症候群の女性の卵子提供をどれだけ希望しているかとか、ど れだけの人が卵子提供を受けて妊娠を果たしたとか、そういう実態が示されています。 きょうは資料に載ってないのですけど、イギリスでのデータも少し日本で出された ターナー女性の本の中に書かれてありますので少しだけ言わせていただきます。1996年 の調査で、85人のターナー女性に 138の胚移植が行われました。そのうち38%が妊娠し て、22%が出産に至ったという事実が日本で、すいません、きょう持ってこなかったの ですけれども、『ターナー女性』という本の中にイギリスの実情が示されています。あ とは読んでいただければわかると思いますので、以上で終わらせていただきます。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。  それでは、最後に鈴木委員の提供の資料をお願いします。 ○鈴木委員 私はとりあえず手持ちの自分の本棚にあった本からこれを引っ張ってきたのですが、 傍線を引いておきましたが、アメリカではアネット・ベイラン、リューベン・パナーと いった研究者によって、AIDについて調査がなされているようです。私自身にこうい った英語の論文を検索したりする能力が実はないものですから、ここの委員会か、ある いはほかの方に調べていただければという意味で実はこれは出したものです。 これ以外に、先日の委員会でもお話しました精子提供をなさったという男性に委員会 に来ていただく、もしくは書面での質問に回答いただけるかということをご連絡いたし ました。関東に住む40代の男性で、私もたまたま彼がそういうことをしたということを 知り得たのですけれども、医療系の大学で運動部に所属なさっていて、教授から精子提 供を勧められ、当時軽い気持ちで余り考えずにというふうにおっしゃっておりましたけ れども、提供したと。しかし、そのことが非常に心のつかえとして残っており、ただ、 そのことを現在のパートナー、子どもにも影響のある問題であるということと、それか ら、自分なりに今この問題について思うところもあり、ほかにどなたか書面で回答なさ る方が複数いらっしゃるのであれば、自分も協力するにはやぶさかではないが、自分ひ とりであれば遠慮させていただきたいという回答を電話でいただきました。 以上です。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 きょうは渡辺委員がお休みでありますけれども、提供していただいた資料は大変興味 深い、AIDによって生まれたお子さんが、成人に達した人のアイデンティティとカウ ンセリングを進めるに当たっての問題点について論じている論文を提供していただきま した。機会があれば、渡辺委員にまたご説明いただきたいと思いますけれども、ただい ま委員の皆様から提供いただいた資料のコメントについて何かご質問ございますでしょ うか。よろしいでしょうか。 もし、この資料に基づいてご質問あるいはコメントがありましたら、また次回に述べ ていただくということで、今回は次の議事の4の「検討事項の全体について」というと ころに入りたいと思います。前回の部会において、この部会の検討課題全体が示され、 それが検討課題1から3という大まかな分類ごとの今後の検討スケジュールが示された ところです。各々の検討項目ごとにどのような検討事項があるのか、具体的なイメージ を委員の方々につかんでいただくために事務局でペーパーを作成していただきましたの で、説明をよろしくお願いいたします。 ○桑島室長  それでは、今、部会長の方からいただきましたように、本部会資料3でご説明を申し 上げます。「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療に関する制度整備の具体化の ための要検討事項(案)」ということでお示しをしてございます。  この資料の目的は、今、部会長からお話いただいたとおりでございますけれども、全 体のイメージをしていただく中で、どういうものがあるのかということを私どもの方で 暫定的に整理をした資料でございます。そういった意味では、これからいろんな、まだ まだこれにつけ加わってくる部分があろうかと思いますが、現時点において、私どもで 整理したものでございます。検討課題1から3まであるわけでございますけれども、す べてをご説明する時間もございませんので、幾つかについてかいつまんでご説明を申し 上げたいと思います。  まず検討課題1、「○」の1つ目でございますけれども、「提供された精子・卵子・ 胚による生殖補助医療の実施、精子・卵子・胚の提供の条件」ということでございます けれども、課題1の大きなテーマでございます。  その中で、まず(1)でございますけれども、「生殖補助医療を受けることができる者 の条件等」ということでございます。  まず1つ目の「○」でございますけれども、専門委員会の報告書の中では、「加齢に より妊娠できない夫婦は対象とならない」と決めてございますが、その中で「加齢によ り妊娠できない」と。この具体的な判定基準はどういうふうに設定するのかということ がまず1つ問題になってくるかと思います。  2つ目の「○」でございますが、報告書の中では「自己の精子・卵子を得ることがで きる」と。こうした場合にはそれぞれ精子・卵子の提供を受けることができないと。も ちろん自分の中にあるわけでございますから、そういう方については提供を受けること ができないということになってございますが、実際に自己の精子・卵子を受けることが できないということについての細かな判定基準をつくる必要があるのではないか。  3つ目に、「各々の提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けなければ妊 娠できない〜」というようなことが書いてございますけれども、その具体的な判定基準 はいかがかということでございまして、こういうようなことを幾つか私どもの方で考え た次第でございます。  次のページをごらんいただきますと、(2)でございますけれども、今度は精子・卵 子・胚を提供できる者、提供する方の条件でございます。  1つ目の「○」でございますけれども、報告書の中では、提供精子の採取・使用に当 たっては十分な検査等の予防的措置を講じるという表現があるわけでございますけれど も、実際にどのような感染症等の提供者に対する検査を行うのかというようなことを決 めるべきではなかろうか。  それから、これに関連づけて、例えばエイズをイメージしていただければよろしいと 思いますが、2つ目の「○」でございますが、「ウインドウ・ピリオド」、いわゆる抗 体ができるまで、エイズに感染したかどうかを判明させるまでに非常に時間がかかると いった場合について、もしかしたら、仮にですが、感染しているものを使用する場合が あるというようなことについて、提供を受ける側のインフォームド・コンセントを得る 必要があるのだろうか、そういうようなことも検討事項の中に入れてございます。  3つ目の「○」でございますけれども、感染症のほかに、例えばでございますが、遺 伝疾患ですとか、そういったことについて提供者について検査すべき項目はほかにない のだろうか。  あるいはそういったことの検査の結果を提供者に知らせるべきか。  というようなことで上から4つ目まで整理をしてございます。  例えば「実費相当分」というふうに報告書の中で言ってございますが、具体的にどの ような範囲まで指すのか、以下いろいろと私どもの方で整理したものを提示させていた だいてございます。  次の3ページ目でございますが、課題2でございます。これは実際に提供するまでの 手続、実施医療施設の施設基準あるいは設備の基準を大きく括っておりますが、(1)で ございますが、インフォームド・コンセント、カウンセリングの具体的な内容について 提示してございます。  1つ目の「○」は、生殖補助医療を受ける夫婦、精子・卵子・胚の提供者及び配偶者 に対して具体的にどのようなインフォームド・コンセントをとるのか。具体的な中身を 言ってございます。  2つ目の「○」は、そういった方々に対するカウンセリングが必要となってまいりま すが、どのようなカウンセリングを行うのか。どのような機会を与えていくのかという こと。  3つ目の「○」は、カウンセリングを行うカウンセラーの要件について定める必要が あるのかということでございます。  その下でございますが、(2)で、実際に医療施設としての指定基準を具体的にどのよ うにしていくのかということでございます。  検討課題3でございますが、今度は管理体制ということで、(1)が、実際に報告書の 中で、公的管理運営機関というものが出てまいりますが、そういったところが実際にど のような業務を行うのかということでございます。  次のページでございます。(2)で実際に幾つかの指定医療機関ができたといたしまし て、そうしたものを監督していくわけでございますけれども、実際の監督のあり方につ いて、どういった体制でどう具体的にやっていくのかということが問題となろうと思い ます。  (3)でございますが、生まれた子が知ることができる提供者の個人情報の管理の方法 等ということでございますが、提供者を特定できない個人情報とは具体的にどの範囲の 情報を指すのか。  あらかじめそのような個人情報をどのように集めていったらいいのかというようなこ とを問題提起として整理をしてございます。  この資料につきましては、以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。専門委員会の報告をベースに、実際の条件整備とい うことで、いろいろな条件、具体的な検討内容をご説明いただきましたけれども、1つ ひとつが大変難しい問題で、具体的にどこまで議論が進められるか、大変時間のかかる 課題がたくさんあると思います。何か今の検討課題について、委員の方々でご質問、コ メントございますでしょうか。 ○松尾委員  この前のときも少し発言させていただいたのですが、将来生まれてくる子どもの幸せ がどういうふうに担保されるかという検討項目がないと思います。当委員会としてどう いうスタンスで今後の審議を進めるか、可能でしたら検討項目の中に加えていただきた いと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。この部会そのものが1つの大きな視点は、子どもの 将来の福祉とかそういうことを包括的に考えた上での検討項目になるということで、法 制部会でもそういう視点から法整備を行うことになっておりますので、委員ご指摘のと おり、全体に係る問題ですので、委員の方々が、基本的に子どもの立場ということを尊 重して今後議論をしていただければ大変ありがたいと思いますので、その点、委員の皆 さんにもよろしくお願いしたいと思います。  そのほかいかがでしょうか。この検討課題たくさんございますけれども、それを3つ に大きく分類しましたけれども、中の課題によっては、検討課題1と2と3とお互いに 考えながら、今、松尾委員がご指摘の子どもの福祉の立場、あるいは出自を知る権利を どう対応しているかということは、この検討課題全体にかかわり得ることでございます ので、このグループには余りこだわらずに、この検討課題に従って、そういう全体的な 視点からもお考えになって議論を進めていくことも可能だと思いますので、よろしくお 願いいたします。 ○鈴木委員  これからの議論がこの検討課題に沿ってどのようになっていくのかちょっとまだわか らないのですけれども、印象として、まずこれは精子・卵子・胚の提供はオーケイだと いう前提で、すべて条件についての検討になっていますよね。是非についてはもうここ では話し合わないということなのか、それをまず確認させていただきたいということ。 もう一つ、意見としては、精子・卵子・胚というのは全く別物ではないかと思いますの で、この検討課題はよく整理していただいたとは思うのですけれども、ちょっと一緒く たに議論するのは非常に危ない面があるのではないかということ。  それからもう一つ、先ほど松尾先生がおっしゃったように、この委員会で何を最優先 にすべきかということをできれば確認していただきたいと思うのです。前の専門委員会 の報告書で、6つのポイントというのがありましたけれども、生まれてくる子の福祉を 尊重するというふうにさっき矢崎部会長がおっしゃったわけですが、これを最優先する という言い方と、尊重するという言い方では微妙にニュアンスも違うのではないかと思 うんですね。この6項目の中でどれが一番私たちは重大なポイントにしなければいけな いのか。そのあたりも確認してからお話しを進めていただければと思うのですが。 ○藤崎母子保健課長  最後の点につきまして、また当時の専門委員の先生方おられますのでいろいろとご意 見をいただきたいと思うのですが、基本的なこの部会のスタンスといいましょうか、ど のような議論をしていただくかということについての事務局としての考え方と、前回の 先生方のご議論等をまとめてお話しをしたいと思います。まず、この部会において先生 方にお願いしたいことは、専門委員会での報告を踏まえて制度の具体化を図るという趣 旨でございますので、これを1つずつ精子・卵子の提供等について、そもそも論から始 めるということは時間的な問題も含めて困難であろうと考えております。  前回の第1回目の会議の中で、代理懐胎の部分につきまして、この間いろいろと議論 も巷間ございましたので、その点について少し議論をしてほしいというご要望が委員の 先生方から、特に専門委員を行っておられました先生方からも出されたということで、 前回ご議論いただいたと理解しております。そういう中で一応代理懐胎についても専門 委員会の報告書に沿って考えていくということであったのかと私の方としては理解をい たしております。一義的にこの専門委員会の中でいろいろ議論され報告書がまとめられ ましたが、一番のポイントは、現在行われております第三者の配偶子等を用いました生 殖補助医療の技術を認めるのか認めないのかということでした。どの技術について認め るのか認めないのか、認めるとすればどういう条件の下で認めるのか。こういうことを ご議論をいただいたわけでありまして、その個別技術について、どれを認めるか認めな いかというのがまず1つの大きなポイントになってまいります。  それをある程度判断した上で、その前提となるさまざまな6つの基本的な考え方であ りますとか、親子関係の確定も含めましたさまざまな条件整備、これがどう担保される かということが大事になってくるわけです。  私ども事務局としてはこの部会の設置に当たりまして、厚生科学審議会の方にもお諮 りいたしましたけれども、そういう個別技術の適用については一応の方向性が出ている ので、その場合に前提となる条件でありますとか、実施に当たってのさまざまな規定が 必要ですので、これを一番いい形で、どのような形で考えていくのかということのご議 論を願いたいと考えております。ただし、そのことは一律に一切今までの議論について は言及しないということではなくて、例えば出自を知る権利ですとか、あるいは近親者 等からの提供の問題ですとか、非常にコントラバーシャルな部分がございましたので、 そういうものについてはこういう中で適宜、今、松尾先生からもご指摘ありましたよう に、子どもの福祉という観点から、十分な条件というのは整備されるのだろうかという ことなどについてはどんどんご議論いただいてお進めいただければと考えております。 一応、事務局としては、前回の第1回目のご議論も含めて、そのような考え方で先生方 のご審議をお願いできればというふうに考えております。  それから、個々の6つの事項の優先順位等につきましては、当時の専門委員の先生方 から少しご意見をいただきながら、この部会の中でご議論いただけるとありがたいと考 えております。 ○矢崎部会長  この6つの条件は、一応上から並んでいますけれども、どれが一番ということではな くて、どれも生殖補助医療には欠かせない精神だと思いますので、これが一番大事だ、 いや、違うところが大事だという議論にはちょっとなりにくい問題だと思いますので、 それはよくご理解いただければと思います。 ○石井委員  今、課長さんからお話多少あったのですけれども、気になりましたのは、子の出自を 知る権利の問題が管理体制の中に入っているということなんですね。これ自身がかなり 重要な問題だと思いますし、法制審の方でも、これをどこでどう取り扱うのかというこ とが問題になっていますので、これは管理体制の問題ではない、もう少し別というか、 これ自体として検討する必要があるのではないかということです。 ○矢崎部会長  確かに課題を見ますと、管理体制のみを羅列しているようですけれども、実際の議論 をするときにはそういう視点で、そこを固めて、その上で管理体制をどうあるべきかと いうことに入らないとなかなか具体的な議論進まないと思いますので、それにつきまし ては、例えば提供する側の条件とかそういうのにもかかわってくる問題とも思いますの で、折々にまた委員からご指摘いただいて議論させていただければと思っています。そ のほか、いかがでしょうか。 ○福武委員  検討課題1から3までありますけれども、実際には例えば法案をつくるときに法律で 規定すべきもの、あるいは規則に回すもの、それから審議会などのガイドラインに回す べきものといろいろあると思うんですね。ここでは検討課題1として今回出されている ものについては、条件の物すごく詳しいところまで書かれているように思うんですね。 それをここで全部やっていたら、それはとてもできない話だと思うんです。むしろある 程度どの範囲まで許されるかというところを大枠なら大枠で決めて、あとはある程度実 際には審議会のガイドライン作成の方に回すとかにするしかないのかなと思うんです ね。  ただ、法律としてつくるべきものは、公的管理機関をどのようなものにするかとか、 審議会をどんな形でどこに設置するのか。そういったものはかなりウエイトを占めるの だろうと思うんです。それと石井先生がおっしゃった子どもの出自を知る権利というの は独立項目だと思うので、その辺あたりを課題として、どのレベルまで細かく議論する かというのを決めた上でやっていかないと、話があっちへ行ったりこっちへ行ったりな らないかという気がするんですが。 ○岩田雇用均等・児童家庭局長  前回も同じようなことを申し上げたかと思うのですが、今回のこの部会の役割は、昨 年の12月の専門委員会の報告書の方向で政策を実現をするためには、相当その間埋めな いといけない、いろいろ合意形成をしないといけないさまざまな課題があると思うので すが、それが大体どの範囲のものかということを委員の皆様方に一応イメージしていた だくという趣旨でこの資料3はつくったものでございますから、今ここで余り具体的に 項目の項立てですとか具体的な項目の是非をご議論いただくということでもないかと思 います。  それで、議論が一巡したときに、私どもの事務局の方で、法律レベルで対応すべきも のとそうではないレベルのものを少し区分けいたしまして整理をした上でご議論いただ くというのが来年の今ごろかもしれませんけれども、そういう段階も来るかと思います が、当面はレベルのことは、具体的なレベルを念頭に置いた議論というよりも、専門委 員会の報告の結論を実際に実施するに当たって主要な議題でぜひコンセンサスをつくっ て前に進まないといけないというものがございましたら、それはレベルを問わずにご議 論いただければ大変ありがたいと思います。  中にはこういうものはここで議論するまでもなく事務局の方で案をつくればいいとい うような項目がございましたら、それはそういうご指示に従って私どもの方で事務的に 作業を進めたいと思います。 ○藤崎課長  若干補足ですけれども、今、資料3で全体の検討課題1から3まで、とにかく全貌が どうなるかなということでお示しをしているわけですが、実はその後の資料4で、すぐ に検討課題1についてどうかという資料があるんですね。こちらの方を今度ごらんいた だくと、具体的に何をどう問題にして、どういう選択肢を含めて議論していただくのか というのが出てまいりますので、これをごらんいただきながら、これがこれからの進め 方のひな形になってまいりますので、そちらの方で、今度こういう形ではまずいとか、 この辺を省いていこうとか、そういう形で議論して、きょうの段階でいただいて、次回 以降、また少しやり方が若干変更になってもこちらとしては差し支えありませんので、 そんなふうにしていったらどうかなと。  とりあえず今の資料3については、あくまでも全貌だというふうにご理解いただけれ ばと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。膨大な全貌でどこからどう手をつけていいか、委員 の皆さん、今、福武委員が言われたようになかなか難しい問題がありますので、せっか く事務局が資料4で、検討課題1という検討事項の案をつくっていただきましたので、 とりあえずその説明からよろしくお願いいたします。 ○桑島室長  それでは、今度は資料4と白表紙の報告書の関係資料、この2つの資料に基づきまし てご説明を進めさせていただきたいと思います。  資料4の全体をまずご説明する中で、1ページ目でございますけれども、本資料は、 専門医療部会におけます「提供される精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施及び精 子・卵子・胚の提供の条件」、いわゆる課題1の具体的に検討に資するために事務局に おいて主要な検討項目と考えられる事項につきまして、さきの専門委員会の報告書の関 係部分を引き抜きまして、それぞれに想定されます検討事項を暫定的にまず整理をした ものでございます。  2つ目の「※」でございますけれども、ページ(p)の数字が入ってまいるわけでご ざいますけれども、このページにつきましては、今申し上げました関係資料集のページ とリンクしてございます。こちらの白表紙の資料でございます。  3つ目の「※」でございますけれども、資料4の本文中のゴシック体の部分につきま しては、専門委員会の報告書による結論の部分ということでございます。資料集の中で は四角で囲った部分でございます。それから、本文中の明朝体の部分については、結論 の説明の部分ということで、資料集の中では四角で囲った下の部分で記載をされている 部分が該当してございます。  「※」の4で言ってございますことは、日本産婦人科学会の会告もこの中でいろいろ と参考にさせていただいた部分ございますので、そういったものを引用させていただい てございます。その会告につきましても、この関係資料集の中で集載してございますの で、そのページ数をわかるように記載してございます。  それでは中身に入らせていただきます。1ページをおめくりいただきます。  まず提供の部分でございますが、(1)「提供された精子・卵子・胚による生殖補助 医療を受けることができる者の条件」ということで整理をいたしてございます。報告書 の中では、「子を欲しながら不妊症のために子を持つことができない法律上の夫婦に限 る」と書いてございます。  次の「○」でございますけれども、「加齢により妊娠できない夫婦は対象とならな い」と。これはこの資料集の中の22ページを見ていただきたいと思いますが、22ページ の下の箱の中の2つ目の「○」でございますけれども、「加齢により妊娠できない夫婦 は対象とならない」。この部分を具体的に要検討事項として、「加齢により妊娠できな い」とは具体的にどういうふうに決めるのかということでございますけれども、ここは ご議論いただくところでございますが、実際に医師の裁量に任せるのか。あるいは具体 的なある程度の年齢制限を設けるべきなのかということについてご議論を賜りたいと思 います。  先ほどの吉村先生のお話の中でも、例えば40歳以上とか、ある程度の周産期の死亡の 関係ですとかいろんな具体的なデータが出てまいっておりますのでご議論をいただきた いと存じます。  それから、2つ目の「○」、これもこの結果の結論の中に出てきてございますが、 「自己の精子・卵子を得ることができる場合には、それぞれ精子・卵子の提供を受ける ことができない」ということでございますが、要検討事項として、「自己の精子・卵子 を得ることができる」ということは、具体的な判定基準をどういうふうにするか。ここ は大前提として、医師の裁量に任せる。あるいはそうではなくて具体的な基準を設ける べきではないかということでございます。  また、かなり具体的な話になりますが、「成熟した卵子・精子がそれぞれ精巣内・卵 巣内に存在する場合に限定するのか」。これは何を言っているのかと申し上げますと、 ある程度成熟したものが未熟なものであっても、段階的なものであっても、それをつか まえてくることによって実際に受精させることができるというようなことを前提にいた しまして述べておるわけでございますけれども、その後、「精子・卵子の形成過程によ る受精能力を持った生殖細胞が存在する場合にも」というこの部分でございますが、 「自己の精子・卵子を得ることができる」ということにするのかということでございま す。  次のページでございますけれども、これらのことについては、実際に医学上、精巣や 卵巣の生検によって実際にそういうことを確かめなければそういうことが言えないのか というようなこと。こういうかなり具体的なことについて定める必要があるのかという ことでございます。  次の「○」でございますけれども、精子・卵子に実際に受精を困難にする形態的・質 的な異常があって、最終的な顕微授精など、かなり数回実施しても受精しない場合につ いて、「自己の精子・卵子を得ることができない」ということにみなすのかということ でございます。実際に何回もやってできない場合について、自分の精子・卵子が得るこ とができないということで規定できるのかということでございます。  次の「○」でございますが、精子・卵子に受精の可能性を極めて低くする。明らか な、例えば括弧で書いてございますが、高度な奇形精子症、精子が全然ないというよう な場合について、実際に顕微授精までいかなくても、そういう事実だけで自己の精子・ 卵子を得ることができないと、こういうふうにみなすことができるのかということでご ざいます。こういったことについてご議論いただきたいと存じます。  次の項目でございますが、精子・卵子の提供を受けることができる者について優先順 位が設けられるのかということでございます。括弧の中に書いてございますが、無精子 症、ターナー症候群・卵巣機能不全などで物理的に精子・卵子が存在しない者を優先す べきなのか。受ける者の年齢、何人既に子どもを有しておられるか、いろんな条件があ ろうかと思いますが、そういった優先順位をつける項目といいますか、そういう事項を 定める必要があるのかということ。プライオリティをつけることが必要なのかというと ころから始まりますが、そういうことについてもご議論いただきたいと思います。  次の(1)のAIDのところでございますが、「精子の提供を受けなければ妊娠できな い夫婦のみが、提供精子による人工授精を受けることができる」ということでございま すが、これは今大体ご説明を申し上げました、そもそも医者の裁量とするのかというと ころ、あるいは具体的な要件を設けるべきなのかというところでございます。こうした 考え方につきましては、今の大体ご説明を申し上げましたような趣旨でAIDについて も整理をしてございます。  少し飛ばさせていただきますが、4ページ(2)で「提供精子による体外受精」につき ましても、同様な考え方で整理をしてございます。ただ、若干違いますが、1つ目の検 討項目の中で、「女性に体外受精を受ける医学上の理由がある」ということでございま すけれども、検討の結果の中では、「女性に体外受精を受ける医学上の理由があり、か つ精子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦に限って」云々と書いてございます。そ の場合の、今、女性に体外受精を受ける医学上の理由という部分でございますけれど も、これを医師の裁量とするのか、あるいは具体的な疾患、必須の医学的な検査とその 結果などについて具体的な基準を設けるべきかということでございます。  以下はごらんいただきますとおりでございます。  (3)、(4)でございますが、(3)は「提供卵子による体外受精」、(4)は「提供胚の 移植」ということで、今申し上げましたように、精子のところでご説明を申し上げまし た趣旨で検討課題を整理させていただいてございます。  少し飛ばしてまいりますが、7ページでございます。真ん中の「○」でございます が、この提供胚のところにかかわってまいりますが、これは報告書の結論のところでご ざいますが、「ただし、卵子の提供を受けなければ妊娠できない夫婦も、卵子の提供を 受けることが困難な場合には、提供された余剰胚の移植を受けることができる」という 結論をいただいておるわけでございますが、その下の箱の中でございますが、「卵子の 提供が困難な場合」の具体的にどういうことなのかということで、判定基準をどのよう に設定するのかということでございます。括弧の中では、それは医療機関にお任せする のではなかろうか。あるいは全国的な卵子の提供状況を勘案して判断するのか、いろい ろと事務局で考えてございます。この部分につきましては、関連といたしまして、公的 管理運営機関の情報の範囲という中でもご議論いただきたいと存じます。  それから、その下で「卵子の提供」の困難な場合、優先順位についてもこの中でご議 論いただきたいと思っております。  その下が「また、提供を受けなければ妊娠できない夫婦は、余剰胚の提供を受けるこ とが困難な場合には、精子・卵子両方の提供によって得られた胚の移植を受けることが できる」と。この検討事項につきましても、具体的な基準づくりについてご議論賜りた いと存じます。  次のページにまいりますが、(2)で「子宮に移植する胚の数の条件」についてでご ざいます。日本産婦人科学会の会告では、後でごらんいただければと思いますが、資料 ページの 110、111 ページに3個と規定してございますが、専門委員会のご議論の中で は「原則として1回2個、移植する胚や子宮の状況によっては、3個までとする」とい うことで結論をいただいてございますが、ではどういう場合に、3個まで移植すること を認めるのかということについてもご議論いただきたいと思っております。  次の9ページでございますが、今度は、精子・卵子・胚の提供者の条件でございま す。これは報告書の中にかなり細かく規定を設けて結論をいただいてございますが、  (1)としまして、精子の提供できる方は、満55歳未満。  卵子については、既に子どものいる成人に限り、満35歳未満。  (2)で、同一の人から卵子の提供は3回までとする。  (3)で、同一の方から10人の方が妊娠した場合については、それ以上使用しない。  (4)で、精子提供の採取・使用に当たっては十分な検査等の予防的な措置が、感染予 防ですけれども、講じられるべきである。こういうような結論をいただいてございま す。  具体的に、次のページになりますが、私どもの方で考えた要検討事項といたしまして は、どのような感染症について提供者の検査を行うのかということでございます。最低 限どのレベルまで行う必要があるのかということをご議論いただきたいと思います。  それから、先ほどの資料3でもご説明しましたが、ウインドウ・ピリオドのこともご ざいますので、そういったことのインフォームド・コンセントの要件でございます。  感染症のほかにも遺伝病等のこともあろうかと思いますが、検査すべき項目はないの か。  それに併せてその結果を提供者に知らせるのかということでございます。  (2)でございますが、「提供に対する対価の条件」でございますが、これも日産婦 の会告の中でご提言をいただいてございます。  報告書の結論といたしましては、「提供に係る一切の金銭等の対価を供与すること及 び受領することを禁止する」とうたってございますが、「ただし」のところで、「実費 相当分については、この限りではない」という結論いただいてございますが、では「実 費相当分」とはどのぐらいの範囲のことを設定しているのかということでございます。 交通費、通信費のほかにいろいろとあるのではなかろうかということで、事務局ではこ ういうふうに記載させていただいてございます。  それから、「実費相当分」の金銭のやりとりの方法はどうするのかということも入れ てございます。  次のページでございます。「他の夫婦が自己の体外受精のために採取した卵子の一部 の提供を当該卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費の半分以下を負担を受け、当該 卵子を用いて提供卵子による体外受精を受けることを認める」ということでございます が、ご自分でお使いになった卵子等の余剰の部分について、ほかの方々に提供すること ができるということになりますが、そうした場合、この要検討の項目としては、「当該 卵子の採卵の周期に要した医療費等の経費」の具体的な内容についてということでござ います。先ほども実費相当の部分で出てきておりますが、実際にどういうものまで含む ということで考えるのかということでございます。  2つ目の「○」では、実際には、それを例えばですが、標準的な医療費等の経費か ら、経費を一律に設定するようなこともあり得るのかというようなこと。  3つ目の「○」では、排卵誘発、採卵までの経費そこまでに限るのか。あるいはもう 少し広げて夫婦の胚の凍結や胚移植にかかる経費まで含めてもいいのかというようなこ とまで、私どもは提案させていただいてございます。  それから、2つ目の課題でございますが、卵子のシェアリングの場合について、提供 する卵子の数はどこまでなのかということでございますが、排卵誘発などでいただいた 卵子のうち提供者側が半分ぐらい提供していただけるのか。あるいはそういう数につい ては提供者がお決めになるのか。医者の方が決めてしまうのか。いろんなまだ課題があ ろうかと思います。そういったことを整理させていただきます。  それから、卵子をシェアリングする場合に提供する卵子を選別するようなことが受け る方でできるのか、そういうような問題もあろうかと思います。  次のページにまいります。(3)「精子・卵子・胚の提供における匿名性の条件」で ございますけれども、原則的には「提供をする場合には匿名とする」という結論をいた だいてございます。  ただ、(2)の中で、前回もいろいろとご議論ございましたけれども、一定の条件の下 に例外として、兄弟姉妹等からの提供を認めるということになってございます。そうし た場合、2つ目の「○」で、審査を受けなければならないということでございますけれ ども、実際に公的管理運営機関の審査基準をどういうふうにつくっていくのか。どうい うときに兄弟姉妹からというような条件を認めるのかということでございます。  次のページにまいります。(4)で、提供者と実際それを受ける方との属性の一致等 の条件ということでございますけれども、「○」のところで、下線を引いてございます が、「生殖医療を行う医療施設が当該生殖補助医療を受けることを希望する夫婦に説明 すべき具体的な事項としては〜」、例えば血液型のような条件について、「〜夫婦に合 わせることができない場合もあること〜なども考えられるところである」と報告書の中 でいただいてございます。  では、実際に精子・卵子・胚の提供者と提供を受ける者との属性を実際に合わせてい くのかというところでございます。その際に、合わせる範囲はどこまでを考えるのか。 血液型として例示を出してございますが、ABO式血液型なのか、Rh式血液型なの か。あるいはもっと極端な話になりますと、髪の毛、身長、いろんなところまで、デザ インビベーのような話も出てくるかと存じます。  それから、属性以外に提供を受ける者の希望に応えることができるのかということで ございますが、第1子を生殖補助医療を受けられて、第2子、第3子も同じ提供者から 提供してほしいというような要望に応えることができるのかということでございます。  最後のところでございますが、「その他の条件」として、要検討事項の中に、提供者 が精子・卵子等を提供する前に死亡された場合に、精子・卵子・胚の使用について取り 決めをしなくてはいけないのではないか。  精子・卵子等の保存期間についても具体的な期間を決める必要があるのではないかと いうことで、下にはワーキンググループの方で結論をいただいたものがございますけれ ども、その中では参考でございますが、「精子並びに卵子は本人の死亡により廃棄され る」という結論を出されてございます。  「保存期間は5年か10年とする」という形でおまとめをいただいてございます。  以上でございます。 ○藤崎課長  若干補足をさせていただきたいと思います。今、概要についてはこういうことでご説 明させていただきましたが、先生方、かなり絶望的な気分になっておられるのではない かと思いますので、なぜ、こうしたかということと。 ○加藤委員  悪夢の再現という気分に。 ○藤崎課長  1つまず、なぜこのような形でお願いしたかといいますと、ルールづくりを急ぐよう にというご指摘をいただいて、なるべく急いで準備をしたいと事務局としても思ってお るわけです。これを15年の通常国会に法律案として出したいと考えておるわけですが、 ここでの審議がどのようになるかといいますと、法律の骨格だけでは審議がなかなか進 まないんです。必ずその審議をしていくときに、具体的にこれはどうなんだという突っ 込んだ話の議論にならざるを得ないわけです。  先般、いわゆるクローン法と呼ばれる法律ができて、先生方、深く関与された方もお られますが、そういう中で、具体的にこれは規則でどうなるんだ、基準はどうなるんだ ということがやはり審議の中でいろいろと出てまいりました。生殖補助医療の個別技術 を認める、認めないという議論の前提として、さまざまな条件をクリアーして、そうい うものが満たされて初めて認めるのだというような形での構成になっておりますので、 それが具体的にどういうことを役所としてはイメージしているのだと。具体的にどうな んだということが示せませんと、法律も通るのは非常に難しくなってくるという状況で ございます。そういう意味で、そういう基準なり規則なりを決めていくときに必要な事 項について、私どもは行政的に考え得るものをここに提示して、先生方のご意見をいた だきたいというのが基本的な考え方であります。  ただ、そのときに、今度は進め方でありますけれども、これを一個一個議論していく のは当然時間がかかるというご指摘でございますし、この議論の方向性では、そういう ことを決める必要があるのかないのかという問題の立て方をしている部分もございます ので、先生方の方で、いや、それは専門家に任せればいいのだと、あえてそういうこと まで行政の方で決める必要はないのだというようなご判断がされる部分があれば、それ はそのように、先生方のご意見として賜れば、我々としてはそのように対応できるのか なと思います。  また、個別一個一個を全部先生方にお決めいただくのは時間的に非常に難しいわけで すけれども、ある程度議論がこの中でなされて、右か左か、あるいはこれが必要か必要 でないかということも含めて、自由に先生方にご議論をいただいた後で、事務局として その具体案を提示をして、このような形でよろしいでしょうかということをお示しをさ せていただきたいと考えております。一個一個の数値的なものですとか、細かい技術的 なことまでなかなか全員でここに議論するというのは、先生方のお時間の中で大変なの かと思いますので、議論でずっと洗っていただいて、先生方のご意見をいただいた上 で、そういうものを提示して、それをどうご判断いただくかという形で提示をしてまい りたいと思います。そういう形で時間的にもある程度節約してまいりたいと考えており ます。  もう一点、長くなって恐縮ですが、進め方として、このような議論で、限られた時間 ですので、先生方から随時ご意見を委員会と委員会の間にファックスでも電話でも何で も結構ですから、常にいただいて、その意見をフィードバックさせたものを次回の会合 に出していくという形態で、可能な限りいろいろな先生方のご意見がこの場だけでなく て、実際のたたき台づくりの中に反映されるような形で進めてまいりたいと考えており まして、そのようなことを通じて進めていくことによって、今ざっとごらんいただいた ときのような、すごく時間かかるのは大変だなというよりは、緩和されたものになって いくのではないかと私の方では考えております。  それから、出自を知る権利については、この中で個別には触れておりませんけれど も、例えば、今申し上げた13ページの(5)「その他の条件」という中に、要検討事項 として2つほど挙げておりますが、例えばこういう中に「出自を知る権利」という立て 方なのか、それとも提供者の条件として、提供者が知られてもいいと。自分が将来知ら れてもいいと、子どもにわかってしまうということでもいいということを前提として、 それを認めた人をここの提供者の条件として考えるか、考えないかを検討しようという ような問題の立て方をして、ここの第1の検討課題の中で議論することも可能だろうと 思います。そういう意味では、これは1つの整理としてここへ出しておりますけれど も、課題2にも3にもかかってくる問題ですし、極めて重要なテーマだろうと思います ので、事務局としてそういうことについて、第1の課題の中で大いにご議論いただい て、かなり全体の方向を左右するような部分だろうと思いますので、早い時期にご議論 いただくのも大変ありがたいと感じております。  少し長くなりました。 ○加藤委員  例えば、今出した例で、加齢により妊娠できない者の基準を決めるかどうかというよ うな問題ですね。私は医学上の判断については主治医の判断に委ねるという原則があっ て、このガイドライン、ここでもって医学上の判断について、こういう判断をすべきで あるという指示をするのはこの委員会の任務ではないだろうと思うんですね。ですから 医学上の判断については、原則として主治医の判断に委ねる。その主治医の判断に委ね るという規定では不十分である場合に、あえてこういう基準を設けなさいと。  例えば、出自を知る権利について、どこまで知らせるかということについて、これは 厳密な意味で医学上の判断ではありませんので、これについて、この委員会でもってガ イドラインを決める必要はあると思うのですけれども、例えば加齢によるというのはど こまでかなんていうことについては、医学上の判断ですから、原則として医学上の判断 は主治医の判断に委ねるでいいと思います。  例えば別の例なんですが、性転換手術を期待する患者に対して、それが医学上のある 疾患に基づくものであるのか、それとも恣意的な要求であるのかということの判断は主 治医の判断に委ねるというのが実際の原則でもって運用されていると思うんですね。で すから医学上の判断の範囲がどこまでかということについて委員会で決める必要は原則 としてない。だから、医学上の判断について、こちらが介入し、これでは医学上の判断 に委ねるわけにいかないという、その原則を示さない限り、議事は非常に細目にわたり 過ぎて無意味になると思います。  もう一つは、医学上の判断については時期によって変わってくると思うんですね。例 えば加齢によって妊娠できない者の判定基準をどうするかなどというのはかなり変わっ てくる可能性があるし、今ここで細かいガイドラインを出せといったことについては、 かなりその当時の時代時代の医学上の研究状況によって変わってくる場面もあると思う んです。ですから、まず今検討項目の中で、医学上の判断に委ねられるというのは全部 落として、まずそれを全部削って、削った後の議題について議事を進めるという方向が いいのではないかと思います。 ○石井委員  ある程度専門家の判断に委ねる部分はあることは確かだとは思うのですけれども、こ の委員会で決めなくても、私は審議会とか管理運営機関とかで一定の指針のようなもの を定めるべき事柄があるのではないか。加齢についても、加齢だというよりは、一般的 には今の医療水準で言えば、幾つであるということをある程度までガイドラインで示す というようなことを、管理運営機関になるのか審議会になるのか、そこはわかりません けれども、そういうことは必要なのではないか。この医療は普通の医療とは違う医療で あるということを前提にして、一定のガイドライン的な規制というものは必要である。 それはもちろんここの委員会でそれができるとは思いませんので、審議会か管理運営機 関かそういうものが必要である。  その点で、先ほど福武先生がおっしゃったように、審議会、管理運営機関というもの がどのようなものになるのかというのはかなり重要な要素になるのではないかと私は思 うんです。ここで、これを管理運営機関に任せるという形を決めていくことによって、 ある意味で管理運営機関というものが決まるという要素もあるかもしれませんけれど も、管理運営機関に任せられるというためには、ある程度それがどのようなものである かというイメージも必要である。そこはちょっと難しいのですけれども、私は加藤先生 ほど専門家にすべて任せてしまうということには疑問を感じるんですけれども。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。そのほか、ご意見ございませんか。どうぞ。 ○荒木委員  前回の第1回の委員会で日本産科婦人科学会の見解をご説明させていただいたわけで す。私どもは専門委員会の報告書は尊重するということを発言させていただきましたけ ど、たった1つだけ、兄弟姉妹の精子、卵子の提供に関しては私ども学会としては譲れ ないというところなんです。特例を削除することに関しての議論をもう少しやっていた だきたいと思うんです。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございます。そのほか、ございますでしょうか。 ○石井委員  ここで提供を受けられる者について優先順位をつけるかどうかという話が出ていたと 思うのですけれども、それに関連する点では、提供された精子・卵子・胚が集中的に管 理されて、いわゆる移植のネットワークのようなものを考えないと、優先とか優先しな いということはできないと思うので、その体制、つまり提供というものがどういう体制 でなされるのかということもかなり重要な要素なのではないかと思うのですけれども。 ○加藤委員  それは提供者がないから、優先順位を決めても意味がないという可能性だってあるわ けですよね。 ○矢崎部会長  ありがとうございました。そのほか、この際一言ございますでしょうか。確かに、こ れはこれからの医療のガイドラインですけれども、既にこの冊子の67ページに不妊治療 の種類の中で、例えば非配偶者間の人工授精、今言われているAIDというのが行われ ているわけですね。ですから基本的には、ここでAIDで行われている基本線に沿っ て、そしてそこで埋まらないところをここの検討課題1に挙げていただいたと思うので すけれども、先ほどのお話のように、加齢については医学的な平均的な値は出ますけれ ども、医学的な平均値というのは個人差の方が大きいので、平均値として出せますけれ ども、個人個人でどうかといった場合には話が違ってきますので、今お話のように、ガ イドラインとしてこのぐらいという、加藤委員と石井委員との中間的な提案ですけれど も、そういうようなガイドラインで個々のケースは、施設ないしは医師に任せるという ような、そういうことでないとなかなか現実的なものではないような気がします。 ○加藤委員  加齢によるという場合、このガイドラインで決めているのは、加齢による不妊という のはいわば治療対象ではなくて自然的不妊の一種であると。だから、これは本来、生殖 補助医療の対象にならないという、そういうコンセプトを示してあればそれで十分なの であって、加齢によるということが大体の幅でどのくらいということを定義するのは医 学上の問題であって、この委員会ではともかくコンセプトとしての適用範囲が出ていれ ばそれで十分だと私は思います。 ○藤崎課長  私ども先ほどちょっと申し上げたような、法律として出すときにどのような審議がさ れるかという想定の中でのお願いになっていくわけなんですけれども、例えば、今先生 おっしゃったのはごもっともだと思いますし、もし医療に委ねて、医師に委ねるのだと いうことであれば、そこをある意味で項目ごとにこれを追っていく中で、これはもう決 めなくていいのだというふうに個々にご判断をいただけると大変ありがたいと思うんで すね。先に全部落としちゃいますと、個々のものが判断が要らないものなのかどうなの かというのが私どもの方で恣意的にやるというのがつらいもので、一度ここの場にお示 しをした上で、これは医師の方の判断でいいのではないかというふうにチェックをして いただいた上で委員会としてのご判断をいただきたいと思っております。  もう一点は、物によって先生方にそういうご判断をいただいたときに、我々事務局の 立場から、しかしながら、ある程度ここは困るんですよというものもあるときに少しご 審議お願いせざるを得ないこともあるのかなという気がしております。これは各論に入 って恐縮ですが、例えば加齢という場合に、確かにコンセプトはそうなんですが、60歳 で生まれましたという事実があったときに、実際に産めるではないかということです ね。それを平均的な形で判断をしたときに医師によってばらつきが出てよいのかという ようなことも含めて、実際の審議の中で、ある程度の基準を示す必要があるのではない かという議論が想定されるわけですね、私どもの立場からは。そういうものについて、 ある程度こちらでも申し上げますので、そこを包括的に、そういうことも含めて医師の 判断なのだというのであれば、そういうふうに、ここの委員会としてのご判断をいただ ければありがたいと思いますので、今いただいたようなことを今度各論の中で個々にま たご判断いただければありがたいと思っています。 ○鈴木委員  仮にある程度の部分は専門家であるドクターのご判断に任せていく、それはもちろん そういう部分もたくさんあると思います。だとしたら、先ほどほかの方もおっしゃって いましたけれども、それがどういう医師なのかということを最初に決めていただかない と、私としてはちょっと困るなと思うんです。産婦人科のドクターの中でも不妊の専門 医とそうでない方がいらっしゃるわけですし、まずその判定する医師の基準がある程度 示されていない限り、医師の判断と言われても、申し訳ないけれども信用がおけないと いう部分がございます。 ○矢崎部会長  何か、医療不信の。 ○鈴木委員  というわけではないんですけれども、不妊の問題は非常に専門的だと思うんですね。 先ほどの体外受精の話にしても、実は不妊の専門ではないドクターの方々、知らないこ ともむしろ多いですし、例えば学会登録施設となっていますけれど、それ自体も実はピ ン・キリだというお話、それは私たちもよく知っていますし、そういう意味では登録機 関なり監督機関と監督する医師、そこがどうあるべきかという話を先にしていただきた いと思います。 ○町野委員  いま一つ、どういうイメージで規制をされようとしているのか、それが皆さんにおわ かりにならないというのがかなり問題ではないかと思いまして、つまり法律だけではな くて、例えば一番下ですと、行政的な通知があったり、あるいはこの間のクローン法の ように法律に基礎を置いた指針というやり方があったりいろんなことがあるわけです ね。だから、その割り振りをどのようなイメージで、今まだイメージないのかもしれま せんけれども、それが1つの問題だろうと思います。  それから同時に、今、ご質問がありましたとおり、結局公的な規制をやったときに、 どういう格好でといいますか、例えば臓器移植法については余りよく存じあげてません けれども、あれは法律があって、そして通知という行政通知があって、その間にいるの が大体移植関係の何団体かという、その移植関係のお医者さんたちがそれでやって運用 していると、そういう格好なんですね。  今回のこれについて、もし規制を考えられるということであるとするならば、一体い わば政府の段階の公的な規制と、それを実施する団体といいますか、その人たちとして は同じようなことを想定されているのか。そのイメージが私わからないのでお伺いした いと思います。 ○藤崎課長  全体的な法律本条とそれが委ねました政令ですとか省令あるいはさらに通知レベルで 示すものとか幾つかございますが、そういうものの細部まで、私どもの方もまだ詰まっ ている段階でございませんし、これからの中身の個々の検討課題を詰めていく中で、全 体の構成もまた構築しながらというふうに、実体の具体的な部分を詰めながら、全体と しては構成していきたいと思います。ただ、概略のフレームのようなもの、そういう考 え方はお示しを次回にもできるだろうと思いますので、その関係、スケルトンみたいな ものをお示しできればと思っております。  もう一つ、今、鈴木委員、町野委員からも出ましたが、全体の規制のスキームといい ましょうか、実施機関との関係についてはこのように私ども理解をしております。専門 委員会の報告書として提示されておりますのは、第三者の配偶子等にかかわる生殖補助 医療の実施は、指定医療機関、国が指定する医療機関でなければできないという構成に なっております。これは一般的な生殖補助医療全部ではなくて、今回問題にしておる精 子・卵子・胚等の提供にかかわる生殖補助医療については、これはある機関を指定し て、そこのところでしかできないという形にすべきだというご提案でございます。その 指定基準として具体的な施設設備という物理的な要件と、そこにおける医療従事者の方 々の要件。それから、そこで期待される情報の管理、プライバシーの問題、カウンセリ ングの提供等にかかわるソフト面のサービスの提供、これをどうするかということをま さしく決めていけというご指摘なわけです。  今議論されているような提供者の条件、提供を受ける側の条件、さまざまなインフ ォームド・コンセントのとり方の問題、そういうことが実施施設の実施基準のような形 でガイドラインとして示されることになっていくだろうと思います。そのときに、もし それに従わない、それに違反したような場合にどの程度のペナルティをかけて、その実 施の可能性を担保していくのか、こういうあたりについては実際上の制度の構成の中で 具体的にしていく話だと思います。このような具体的な中身の部分を実はここで今議論 しているわけであります。  もし、どうしても指定基準等がなければ全体の議論が進まないということであれば、 ある程度スケルトンのようなものは出せるかと思いますけれども、全体の我々の作業ス ケジュールからして、こういうふうに組んでおりましたので、次回9月3日ということ ですけれども、そこまでにたたき台が提示できるかどうか、お約束は今しかねるわけで すが、なるべく早い時期に、その部分もお示しをして、それもにらみながら、行ったり 来たりになるかもしれませんが、ご議論いただくような形でもいかがかなと。とりあえ ずはそこのところも提示するということをお示ししながら、多少議論を検討課題1の方 について進めていただければありがたいと考えております。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。 ○町野委員  はい。 ○矢崎部会長  不妊治療を医療として定着するには、さっき鈴木委員から言われたように、医療の質 のコントロールといいますか、評価をしっかりできないと、国民の皆さんの理解も得ら れないですし、医療として定着もしないということで、条件整備ということでこの審議 が行われておりますので、その点はご理解いただければと思います。  このような検討課題の今1の中で、私から見ても、とてもコメントできないというよ うな専門的な知識を要求される項目もありますので、全部ここで結論づけるということ ではなくて、一応先ほど加藤委員と石井委員が言われたように、1つひとつ課長が言わ れたようにステップを踏んで、これはこういった対応をしていったらいいのではないか ということを委員の方々にご示唆を得られればよろしいのではないかと思いますので、 よろしくお願いします。  それともう一つは、荒木委員から言われた、学会の指針と専門委員会の指針の大きな 違い点は、兄弟姉妹の件ですけれども、その議論もいずれしなければいけないのではな いかと思います。これは進め方として、今課長さんが言われたように、1つひとつの項 目で、実際には吉村委員と荒木委員、可能であれば相良委員に加わってもらってという ことでメインにお考えいただくということでいいですか。もしご質問があれば、お答え 願うということで。そうすると、これを1つひとつ順に議論していく必要ございますで すか。 ○藤崎課長  先ほど加藤先生言われましたように、原則的にそれで可能なものは医療関係者の判断 に委ねるのだと、そういう原則がもし承認されるのならばそういうことなんだろうと思 いますので、我々のお願いは、委ねられるものかどうかということをある程度これに沿 ってご判断いただけるとありがたいということです。それで、もし委ねられないとした 場合に、どこまでここの委員会で議論するのかということも含めてご判断いただければ ありがたいと思います。  そういう意味では、事務局としては、一応この線に沿ってつぶしていっていただきた いというのがお願いでございます。その中で、今、荒木先生がおっしゃられたような近 親者からの配偶子の提供という問題、卵子の問題ですけれども、そういう問題について は、そこの項目に至ったときに議論をしていただいて、それで妥当なのかどうかという ことを含めてご議論いただけるとよろしいのではないか。出自を知る権利については、 この順番でいけば、その他の条件のところになるのかと思いますが、これをあと2回ぐ らいで、こちらで余りスケジュールを言ってはいけないのですが、例えばこの論点に沿 ってざっと、先生方に、これは検討する、これでいいぞということも含めて洗っていた だく中に、そこの部分も入ってまいると思いますので、先延ばしにならずに、そのこと の議論にいく手順になるだろうと思いますので、そういうふうにして進めていただけれ ばありがたいと。  全体として、今年中ぐらいに、前回お示しした検討スケジュールでは、検討課題1を 終えていただきたいというのが暫定的なこの前のお願いだったわけですが、そういう意 味では、今申し上げたような形で論点を洗いながら、今言ったようにつぶしていただ く。その上でまだ何回か審議の機会がありますので、私どもの方で具体的な案・たたき 台をお示ししたいと思います。先生方に洗っていただいたことを集約するとこんな形に なりましょうかねというものを出させていただきますので、それで再度ご議論をいただ くような形でお願いをしたいと思っております。  個々の専門的な部分についてのお話で、ここでは手に余るという部分について、先ほ ど部会長がおっしゃられたように、専門の先生方からご意見いただきなから、多少事務 局の方で案としてまとめて、たたき台のような形でお示しをするといったことで扱わせ ていただければと考えています。 ○矢崎部会長  今、課長さんから、今後の議事の進め方をお話いただきましたけれども、大体それに 沿って議論を進めさせてよろしいでしょうか。                (「はい」と声あり) ○矢崎部会長  ありがとうございます。本日の余すところの時間が少なくなりましたけれども、せっ かくですので、あと15分ぐらい時間をいただいて、この1つひとつ議論を進めさせてい ただきたいと思います。  1番目は、「提供された精子・卵子・胚による生殖補助医療の実施の条件」で、「提 供された精子・卵子・胚による生殖補助医療を受けることができる者の条件」というこ とであります。ここに幾つかの項目がありますけれども、問題は、先ほどの「加齢によ り妊娠できない夫婦は対象とならない」と、22ページにございますけれども、これにつ いては、専門家として吉村委員何かご意見ございますでしょうか。 ○吉村委員  何歳から加齢とするというのを医師の判断に任せるといっても、医師のそれぞれの考 え方によってまたかなり違うと思うんですね。例えば、閉経した人という考え方からい けば52〜53歳という考え方になりますし、妊孕性という点を考えますと45〜46歳という ことになりますし、それは判断によってかなり違ってくる。例えば、そういった場合 に、この前新聞報道でありましたが、60歳の人が卵子を提供受けて妊娠した場合に、こ れは明らかに妊孕性がない状態で妊娠しているわけですね。当然閉経された人でしょう し、そういったケースを考えていく場合に、どの辺で医師の裁量にと言われても大変困 る。私自身もしそう言われたら非常に困るという状況ですけど、50歳にするのか55歳に するのか。55歳以上で月経があられる方は極めてまれだと思いますので、55歳にするの か。  子どものことを考えますと、子どもが20歳になったときに75。果たして子どもを育て ていけるのかということだって大変大きな問題になってまいりますし、ただ、妊娠とい うものがゴールではないわけでありまして、分娩して子育てが始まるということを考え ると、50歳前後かなと、私は個人的には最高に見積もっても50歳かなと、そういうよう に思っています。子どものことを考えると45歳というのが一番理想的だと思います。大 体60歳以上で 20歳になる前の子どもを育てていくというのは大変なことではないかと、 私は個人的には思っています。だから医師の裁量というのも大変これは難しいものだと 私は思いますけど。 ○加藤委員  大体これはもともは卵子の提供があるという条件でこの文言を理解するか、卵子の提 供はないという条件で考えるかという問題で、この文言を最初に考えたときには、閉経 した人にまで卵子の提供を認めるわけではないという、そういう含みだったのではない かと思うんですね。もしも加齢による妊娠できないという条件を、たとえ卵子を提供し ても妊娠できないという状況を考えて、それで何歳まで妊娠可能かという議論は考えて なかったと思うんですよ。この言葉を考えたときに。 ○吉村委員  それは考えていましたけど。 ○加藤委員  そうですか。 ○吉村委員  はい。例えば60歳で産めるということはわかっていますし、63歳で産んだというイギ リスの方もお見えになりましたし。 ○石井委員  おっしゃっている意味違います。 ○吉村委員  違いますか。 ○加藤委員  この言葉の定義ですね。加齢により妊娠できないというのは、閉経によって妊娠でき ないというのとほとんど事実上同じ意味だったのではないかと思うんです。 ○吉村委員  そうですね。 ○高久委員  一般の人に理解しやすいのは閉経でしょうね。あとの子どもが育てられる、育てられ ないという問題は考える人によって随分違うと思うので、一般の方が一番理解しやすい のは閉経ということではないかと私は思います。 ○才村委員  議論に温度差があると思うんですけれども、報告書の作成の段階の議論に参加してま せんので、議論が別方向に行くかもしれないのですけれども、どちらかといえば、この 報告書は、子どもを欲しながら持つことのできない夫婦の側に立つ報告書というふうな 感じが児童福祉を専攻するものとしてはどうしても思ってしまうところがありまして、 生まれてくる子の福祉を優先するというふうに6項目のうちの1つには挙がっています けれども、何かそれが前面に出ているというふうには思えない感じがいたします。  今、先生からもおっしゃっていただいたように、閉経とかそういうこともあるかもし れませんけれども、できた子どもの妊娠というのは、そこからスタート、育児の問題と いうのはすごく大きいですし、できた子どもの権利を考え、福祉を考えるのであれば、 子育ての大変さに乗り越えられるというのは、人為的に子どもをつくっていくわけです から、できた子どもは幸せに生きる権利があると思うんですね。だから自然にできた夫 婦の子どもさんよりも幸せが確保される育て方ができるといった観点から言いますと、 どんな夫婦でも欲しいからといってそれを認めていいのかと。今さらそれが条件整備は なかなか難しいかもしれない。加齢もその1つだと思うんです。  年齢的な要件は、前も持ち出しましたけれども、特別養子縁組とかでも、里親の業務 をしておりますときに、年齢的な要件にある程度制限を持って里親の認定し、そして特 別養子縁組の斡旋をしてまいったわけです。特別養子縁組のときには、全く子の福祉の ため、子の利益を優先するという考えで、もちろん制度ができておりますし、特別養子 縁組と生殖補助医療とでは差異があるとは思うのですけれども、人工的に子どもをつく って親になるのと、できてしまった子どもに親を与えるとの違いはあると思うんですけ れども、人工的に親子関係をつくること自身では一緒だと。全く一緒だというのは極論 になると思うのですけれども、子どもができた、その子どもをできるだけ幸せに、今の アンケートでは、皆さん幸せに育てられているような様子ですけれども、子どもの非行 とかいろんな虐待問題とか、今かなり子育ては難しい問題が出てきていますし、里親さ んを申し込まれるときに、子どもが欲しいというときには、夫婦関係に溝があって、夫 婦関係の溝を埋めるために里親になりたいと申し出た方もあったわけです。別に皆さん そうだというわけではないです。里親さんになるためには、かなりの条件、いろんな調 査、それは経済的なことだけではなくて、夫婦関係とか人間関係も調査して、できるだ け子どもの幸せにつながるという形をしておりますので、できたら加齢だけではなく て、子どもの養育がその子の福祉にとって十分担保できるというふうな条件にまで広げ られないのかなと思います。議論よろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。 ○鈴木委員  検討事項以外は検討してはいけないのでしょうかという質問でもあるのですが、今の お話を伺っていても、例えば、私は最初にある「子を欲しながら不妊症のために子を持 つことができない法律上の夫婦に限る」という、ここも検討しなければいけないだろう と考えるのです。例えば男性、夫の方がHIVであると。そういったご夫婦はAIDと いうか精子提供は受けられないのだろうかとか、もちろん6つの基本事項にかなり関係 のあることですが、現実には遺伝病を持っていらっしゃるという理由でAIDを希望な さっているカップルもいらっしゃるわけですよね。  1つ質問は、これが法律の条文として、こういう条文ができ上がるのかということで 話し合っていくのと、例えばガイドラインでもいいのですけれども、だとするとそうし た人たちは完全にそういうことが受けられないというふうに将来的に決まっていってし まうのか。「加齢により妊娠できない夫婦は対象にならない」というのが法律の文案に なったとしますよね。あるいはガイドラインでもいいのですけれども、だとしたら60歳 で卵提供を受けた方というのは法律違反をした方ということになってしまうのでしょう か。ちょっとその辺もわからなく、質問も兼ねてなんですけれど。 ○藤崎課長  その辺の具体的に、今言われたような、ここで提供者の条件ですとか提供を受ける方 の条件に反して医療が行われた場合にどうするか。それをどのように扱うかというのは 実は非常にデリケートな問題でありまして、どこまでどういう形で規制をするのかとい うことであります。それについて、今事務局として明確にこうだというものはありませ んので、これから、そういう原則的な考え方を出しつつ、どちらが先かという問題も当 然あるだろうと思いますけれども、その中でいろいろ検討していかなければいけないお 話かと思います。  全く私の私見ということで申し上げさせていただくならば、この報告書全体の構成と しては、いわゆる法的な規制、罰則を伴う規制は多くせずに最低限のものにとどめるよ うにというのが報告書の基本的なスタンスでございます。そういう意味で3つの点に限 定して罰則を設けるということで規制をするという形になっておるわけです。代理懐胎 の問題、秘密の漏洩の問題等々でございますが。そのほかのものについて、しかしどう やって担保していくのかというところがまだ詰まり切ってないところでありまして。 ○加藤委員  今の鈴木さんの質問でいうと、お母さんの方が処罰の対象になるのではなくて、お医 者さんの方がなる。 ○藤崎課長  それは先生のおっしゃるとおりです。そういう形には基本的にはならないだろうと。 つまり実施をしたお母さんの方なり、提供した人が罰則を受けるということにならず に、そこを媒介した方々、医師であるとか指定医療機関であるとか、斡旋業者であると か、そういう方々になるのだろうというふうに考えております。その場合の医療機関の ペナルティなどをどういう形でどこまでやるのかということはまだ具体的には詰まって いないということです。 ○鈴木委員  すいません。もう一つの質問の、対象外の人が出てきてしまいますよね、この今の文 章ですと。法律上の夫婦に限るという話に関しても、随分パブリック・コメントで反対 の意見は入ってきたかと思うんですが、私も前の議事録は半分までようやく読み終え て、法律上の夫婦に限らないと今子どもの福祉が担保されないということでこういうふ うな中身になったということは理解したのですけれども、その前の不妊症の夫婦に限る というふうになった理由、あるいはほかの人たちのことを逆にどうやって担保すればい いのか。そこだけ確認させていただきたいのですが、加藤先生か石井先生。 ○石井委員  すいませんが、ほかの人たちというのは事実婚の人とか。 ○鈴木委員  いえ、事実婚のことは私はこだわっておりません。その件ではなく、先ほど言ったよ うに、病気が理由でAIDなり提供を受けたいという方がここからは外れてしまう。そ の方たちは提供を受けてはいけないのか、この文章だとそういう解釈になってしまうわ けです。その辺はどのような議論になっていらっしゃったのか。 ○石井委員  あの場では、一応不妊症に限るという、障害を理由等々については認めないという考 え方だったと思いますが、違いますか。 ○吉村委員  私もそういうふうに理解しております。例えば遺伝病があるから、HIVの感染者で あるからといったことで、私どももAIDを行っておりませんし、男性側の精子にエイ ズウイルスが検出されたといった場合には、このエイズウイルスをいかにして除去でき るかという方法は我々は考えております。そしてご主人の精子を使っていかにしてでき ないかということは考えておりますが、そういう理由からだけで、例えばAIDを受け てもいいといった基準はつくっておりません。そういったものは委員会でも認めないと いうコンセンサスが得られたと私は理解しています。 ○鈴木委員  それで本当に大丈夫なのでしょうか。そこでもう一度議論というか。 ○吉村委員  私はかえって逆にそういった考え方の人に対してこういった医療がありますと提供す るということは、私は許されることではないと思うのですが。 ○鈴木委員  許される、許されないという判断をしているわけではないのですけれども、条文にし たときに大丈夫でしょうかという話なんです。例えば今「加齢により妊娠できない夫婦 は対象とならない」と1つだけ禁止項目がぽこっと挙がっているわけですけれども、も しわかりやすくするのであれば、こういった夫婦は逆にならないというようなことがも う少し入っていた方が。拡大解釈ということも当然ありますし。 ○加藤委員  今、吉村さんがおっしゃったことで十分だと思うのですけれども、例えば優生的な理 由で、よりよい遺伝子を獲得するために他人の遺伝的要因をもらうということは排除し ているというのが1つの考え方ですね。それから、例えばHIVのように1つのある病 気を排除するというのは、本来、不妊と普通言われる、不妊という広い意味での病気の 治療として、これが医療行為として正当化されるという考え方なので、HIVの感染を 回避するためにこれを使っていいかどうかというのは、この中では規定されていないと 解釈することもできるかもしれませんけれども、ですからHIVの場合には、もしつく るとすれば、別の規定ということになるかと思いますし、簡単に言えば、妊娠できない 人を妊娠できるようにするという大枠でもって考えていこうということなんですね。 ○藤崎課長  今の部分に関係する点として、報告書の22ページから23ページに概略として書いてあ るわけですが、今、加藤先生がおっしゃいましたようには具体的にそこまで想定して外 してあるということでは必ずしもないのだろうと思うんですが、概括的に22ページの一 番下の行からですが、「受ける条件について」ということで、「生命倫理の観点から、 人為的に生命を新たに誕生させる技術である生殖補助医療の利用は不必要に拡大される べきではなく、生殖補助医療を用いなくても妊娠・出産ができるよな場合における生殖 補助医療の便宜的な利用は認められるべきではない」と。「こうした観点から」云々と いうふうに書いてあります。  ですから、報告書の説明の文章としては、こういう形での状況を想定をしているとい うことですので、そこに含まれるもの、含まれないもの含めて、どのようにこれから具 体的にこういうところを考えていくのかというのはまたご議論いただければよろしいの かなと考えております。 ○矢崎部会長  よろしいでしょうか。それではこの件については継続審議ということで、本日は時間 も参りましたので、この辺で一応議論はとめさせていただきたいと思います。次回か ら、皆さんいろいろ議論の進め方のコンセンサスが得られたと思いますので、もう少し 対応が早くできるのでないかと思います。次回も引き続き検討課題1の議論を進めてい きたいと思います。  事務局から何かございますでしょうか。 ○桑島室長  ありがとうございました。  それでは次回の当部会の日程でございますけれども、9月3日(月曜日)14時から17 時までと予定させていただいてございます。場所は、今回までと違いまして、経済産業 省の別館11階のE会議室となってございます。また、地図等も含めまして、後日ご案内 を申し上げたいと思います。  なお、先ほど私ども課長からも申し上げましたように、当部会の検討時間をできるだ け有効に活用させていただくために、本日事務局から提案させていただきました資料 3、4等の要検討事項につきまして、また、委員の皆様方からご意見やご指摘をメー ル、ファックス等で事前にいただけますれば、非常に効率的に進めることができると思 います。その意見の集約につきましては、勝手でございますけれども、部会の10日前ま でということで整理させていただければ存じますので、できましたら8月24日、非常に タイトなスケジュールでございますが、事務局までお送りいただけますれば幸いでござ います。  併せまして、先生方のお手元に、生殖補助医療部会の第4回以降のお知らせというこ とで日程調整の紙を配らせていただいてございます。第4回目から8回目までの日程を 9月17日から12月21日まで、もう年末まで実はスケジュールを入れさせていただいてお るわけでございますが、その先生方の日程の確認の紙も配らせていただいてございま す。ここに8月24日までということでございますが、もしこの場で先生方の日程が確認 をいただけますならば、机の上に置いていただければ事務局の方で回収をさせていただ きますのでよろしくお願い申し上げます。  それから冊子、今回資料集として配付させていただきましたが、これは次回以降の会 議でも使用させていただきますので、机の上にどうぞ置いておいていただきたいと存じ ます。以上でございます。 ○高久委員  意見を言うファックスの番号を教えていただけますか。 ○桑島室長  後ほどご連絡を申し上げます。 ○矢崎部会長  本日は暑い中、長時間にわたってご議論いただきましてありがとうございました。大 変タイトなスケジュールと盛りだくさんの検討課題で前途多難な感じもいたしますけれ ども、この専門委員会の資料を委員の方々も内容を十分把握されて、またご議論してい ただければ大変ありがたいと思います。                     照会先:雇用均等・児童家庭局 母子保健課   03−5253−1111(代)   桑島(内線:7933) 小林(内線:7940)