01/08/08 第1回 医薬品・医療用具等対策部会議事録            第1回 医薬品・医療用具等対策部会                         日時 平成13年8月8日(水)                            10:00〜12:05                         場所 航空会館 ○安全対策課長  おはようございます。定刻になりましたので、ただ今から医薬品・医療用具等対策部 会を開会させていただきます。 委員の皆さま方におかれましては、お暑いなかを御出 席たまわりましてまことにありがとうございます。私は、厚生労働省医薬局安全対策課 長の黒川と申します。部会長選出までのあいだ、しばらく議事進行役を務めさせていた だきます。よろしくお願いいたします。  まず、お手元に配布の資料の確認を事務局よりさせていただきます。 ○安全使用推進室長  本日、お手元に何点か資料をお配りしております。クリップでとめております資料が、 1枚目が議事次第、そのあとに座席表、委員の名簿、配布資料一覧というのがございま す。  それからあと、右肩に資料番号を付したものが続いております。  1−1。1−2が 1から 9までありますが、一つ綴じになっております。それから1 −3、1−4、1−5、1−6とございます。  あと、委員の先生方の席には、最近、厚生労働省で発出いたしました通知「人工呼吸 器具警報基準の制定について」というものを参考資料としてお配りしております。  このほか、後ほどの御審議の参考ということでパンフレット類を何件か配布いたして おります。  御確認いただきまして、資料の不足等があればお申し出いただきたいと思います。 ○安全対策課長  引き続きまして、議事に入ります前に、私から委員の皆さま方を御紹介いたします。  日本歯科医師会常務理事 井堂孝純委員  聖路加国際病院婦長   甲屋早苗委員  宮城大学看護学部教授  菊地登喜子委員  日経BP社日経メディカル編集部副編集長  北澤京子委員  東京女子医科大学名誉教授  桜井靖久委員  東京医科歯科大学歯学部付属病院薬剤部長  土屋文人委員  法政大学社会学部教授  原田悦子委員  日本薬剤師会常務理事  藤上雅子委員  北里大学医学部教授   外須美夫委員  日本医師会常任理事   星北斗委員  日本大学医学部長    堀江孝至委員  日本製薬団体連合会安全性委員会委員長  宮城島利一委員  国立国際医療センター臨床工学室  目黒勉委員  北里大学薬学部教授  望月眞弓委員  日本医療機器関係団体協議会安全性情報委員会副委員長  山本章博委員  引き続きまして、事務局を紹介いたします。  まず医薬局からですが、医薬局長の宮島でございます。  大臣官房審議官医薬担当の鶴田でございます。  医薬局安全対策課安全使用推進室長の伏見でございます。  医薬局審査管理課医療機器審査管理官の北條でございます。  続いて医政局ですが、医政局総務課医療安全推進室長の新木でございます。  では、本部会の設置にあたりまして、事務局を代表して医薬局長からごあいさつを申 しあげます。 ○医薬局長  まず初めに、委員の先生方におかれましては、大変御多忙のなか、当部会の委員をお 引き受けいただきまして深く感謝申しあげます。  御案内のように、最近、さまざまな医療事故が相次いで報道されるなど、国民の医療 に対する信頼が大きく揺らいでおり、この信頼の回復が喫緊の課題であると私どもも受 けとめております。このため、昨年以来、大臣自ら直接、医療関係者の方がたに対しま して、医療事故防止の取り組みの必要性や、患者安全の一層の推進の呼びかけを行うな ど、省をあげて医療事故の防止に取り組んできているところでございます。  医療事故の要素としては大きく二ついわれておりまして、一つは、いわゆるヒューマ ンエラーといいますか人にかかる問題と、もう一つは、ハードといいますか物にかかる 問題がございます。  この中で物にかかる問題につきましては、医薬品や医療用具の安全対策を所管してお ります医薬局としては、医薬品や医療用具など、医療の現場で使用されている製品につ きまして、医療事故を引き起こしにくいものに改めることが医療安全を考える有効な防 止策の一つであると考え、昨年5月に医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会 を設置して、こういった製品の容器や仕様といった構造や表示の改良など、物からのア プローチを行い、既にいくつかの実行に移されたものがあるなど、着実に成果をあげて きているところであります。  本年5月に、医療事故防止のため人にかかる問題と物にかかる問題とを総合的に検討 していこうということで、医療安全全体のグランドデザインを策定するため、医政局と 医薬局が事務局となりまして、医療安全対策検討会議というものが設置されました。こ の検討会議のもとに二つの部会が置かれることになりまして、一つは、ヒューマンエラ ーといいますか人にかかる問題を議論する場と、もう一つは物にかかる医療事故の対策 についての検討を進めるということで、当部会は物にかかる問題について検討を行うと いうことで、先ほど申しました昨年5月に設置いたしました検討会を発展的に改組いた しまして、本日ここに第1回目の部会を開催することになった次第でございます。  今後はこの対策部会で御議論いただきながら、医薬品や医療用具の安全な使用がはか れるよう、施策をさらに進めてまいりたいと考えておりますので、委員の先生方におか れましては、ぜひ専門的な御見地から御指導、御協力をたまわりますよう、お願い申し あげます。  以上、簡単ではございますが、部会の開会にあたってごあいさつとさせていただきま す。どうもありがとうございました。 ○安全対策課長  では、本部会の設置要綱につきまして、事務局より説明いたします。 ○安全使用推進室長  資料番号1−1を御覧いただきたいと存じます。「医療安全対策検討会議 医薬品・ 医療用具等対策部会設置要綱」と題しており、この会の設置要綱でございます。  まず設置目的といたしましては、医療安全の専門的事項に関する審議を行うため、医 療安全対策検討会議をもとに医薬品・医療用具等対策部会、本部会を設置するというこ とでございます。  検討事項といたしましては、部会の検討事項は、医薬品・医療用具等の物の要因に係 る安全管理対策に関する事項とする。  組織といたしましては、部会の委員は別紙2枚目に添付しているとおりでございます。 なお、専門の事項について検討を行うため必要があるときは、専門委員を置くことがで きる。  部会長を置き、部会の委員の互選によりこれを定める、ということにさせていただき たいと存じます。  部会の運営に関しましては、本日と同様、原則として公開で審議を行います。  2点目として、審議の必要に応じまして、適当と認める有識者等を参考人として招致 することができる。たとえば個別の品目の議論、非常に特殊な品目でありますと、これ をつくっておられる企業の技術者の方にお越しいただくとか、そういうことも想定して おります。  庶務といたしましては、医薬局安全対策課安全使用推進室において総括し、及び処理 させていただきたいと思っております。  その他、必要な事項は、部会長がこれを定めることにさせていただきたいと存じます。 ○安全対策課長  次に部会長の選出でございますが、ただ今の設置要綱の説明にもありましたとおり、 委員の互選とさせていただきたいと存じますが、どなたか委員の先生方、御推薦ござい ますでしょうか。 ○堀江委員  僣越ですが、私から発言をさせていただきます。先ほど宮島局長から、この部会自体 が昨年5月に開始されておりました医薬品・医療用具等関連医療事故防止対策検討会が 発展的に改組されたというお話がありました。実際に委員の方を拝見いたしますと、そ の検討会のメンバーであった方が多いと思いますが、そのような意味で、この領域に大 変に造形が深くて、また昨年からの検討会で大変手際よく司会を担当されました桜井先 生が部会長として適切なのではないかと私は思いまして、推薦をさせていただきます。 ○安全対策課長  ただ今、堀江委員から、桜井委員に部会長をお願いしたい旨の御提案がございました が、いかがでしょうか。(「異議なし」の声あり)  皆さまの御賛同を得ましたので、桜井委員に部会長をお願いいたします。どうぞよろ しくお願い申しあげます。  この先、議事進行は部会長にお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたします。 ○桜井部会長  大変僣越でございますが、ふつつかですが司会を務めさせていただきます。よろしく お願いいたします。  では議事に入りたいと思いますが、ただ今もお話がございましたように、この会は、 第1回目とはいいながら、実質的には1年前からの続きでございます。あとで御説明が あると思いますが、この部会の親委員会ともいうべき医療安全対策検討会議がもたれま して、そこで医療全般の安全について対策を考えようということで、前の東京大学の総 長の森亘先生が座長でなさっているわけでございます。この部会はその一つの委員会と いう位置づけかと思いますが、その医療安全対策検討会議の概要について御説明をたま われればと思います。 ○安全使用推進室長  では、資料1−2に添って説明いたしたいと思います。  資料1−2−1が、いわゆる親委員会の医療安全対策検討会議の設置要綱でございま す。これに関しては、ことしの5月に設置されてからこれまで2回開催されております。  この会議の設置目的は、医療安全に関する対策の企画、立案及び関連事項に関する審 議を行い、医療安全の推進をはかることを目的とする、ということでございます。委員 は、今、桜井先生からも御紹介がありましたように森亘先生が座長をなさっておりまし て、2枚目にお名前が出ておる方がたでございます。  設置要綱の3.組織等の3)に、検討会議に次の二つの部会を置き、それぞれ上に掲げ る専門的事項の検討を行うものとする、ということがござまして、1ヒューマンエラー 対策部会、 2医薬品・医療用具等対策部会というのが規定されております。2が、私ど もが本日開催いたしております会議でございます。  ここの検討事項というのが、2の3)でございますので、医薬品・医療用具等の物の要 因に係る安全管理対策に関する事項を審議するということでございます。  以上が安全対策検討会議でございますが、この1−2の資料は、安全対策検討会議で 配布いたしたものでございます。この資料を使いながら、厚生労働省がこれまで医療用 具、医療事故防止対策、医療安全に対してどういう取り組みをしてまいったかというこ とを御説明いたします。資料は5ページの1−2−3を御覧いただきたいと思います。  御案内のように平成11年の1月に患者取り違えの事故が大学病院で起こりまして、そ れを受けまして、医療事故防止関連マニュアルを作成する、及びそれを周知徹底する取 り組みを行ってまいりました。  2点目は特定機能病院の安全管理対策の強化ということで、特定機能病院の承認要件 として、医療安全に係る事故を明確に位置づけたということがございます。それに基づ いて運用を現実に厳格に行っていくということでございます。  6ページ、調査研究ということで、11年度より3年計画で医療のリスクマネジメント システム構築に関する研究を、杏林大学の川村先生を主任研究者といたしまして開始い たしております。1年目には、主に看護の領域からインシデント事例、いわゆるヒヤリ ・ハット事例でございますが、これを収集して集計分析を行っております。これに基づ いて、この部会の前身の検討会でも少しいくつかの品目に関して検討を行ってまいって おります。  4点目は、医療関係者への周知徹底ということです。冒頭、局長のあいさつにもござ いましたように、厚生大臣(その後、厚生労働省大臣)から直接医療関係団体の代表の 方に、医療事故防止に対する緊急要請を過去3回行っております。3回目はことしの3 月でございますが、その場で、患者の安全を守るための医療関係者の共同行動、PSA とございますが、ペーシェント・セーフティ・アクションの実施を表明いたしておりま す。  PSAに関しては11ページに少し詳しい説明がございます。PSAと申しますのは、 これまで医療事故に関してはいろいろな医療関係者がそれぞれの立場でさまざまな努力 をされてまいりましたが、未だ国民の不安を払拭するに至っていないため、患者の安全 を前面に打ち出しまして、さらに幅広い関係者の参画のもとに広範な取り組みを推進し ようということでございます。具体的には、ことし2001年を患者安全推進年と位置づけ、 厚生労働省は厚生労働省としてさまざまな施策を展開していく。医療関係団体において もそれぞれセミナーでありますとか研修でありますとか、取り組みをしていただくとい うことでございます。  11ページの中盤以降に厚生労働省の取り組みというところがございまして、一つは医 療安全対策検討会議を設置するということ。それから、省内の組織として医政局の総務 課に医療安全推進室を設置すること。それから、ここにはございませんが、医薬局の安 全対策課に安全使用推進室も設置したということがございます。  12ページ、具体的な取り組みの一つとしまして、ことしの秋に「患者安全確保週間」 を予定いたしておりまして、それに向けて現在「患者の安全を守るための10か条」の制 定などの作業を行っているところでございます。  7ページに戻っていただきまして、これまで申しあげましたのはどちらかといいます と全体の取り組みということでございますが、この部会に関連いたします医薬品・医療 用具の物に関する安全対策については5番目に書いてございます。具体的には、これま でに以下の対策を実施しておりまして、輸液ラインの誤接続防止のための基準の整備、 医療事故を防止するための医薬品の表示の改良、人工呼吸器の安全性確保のための基準 の整備というところでございます。  この点に関しては、23ページにもう少し詳しい具体的な話を紹介いたしております。 これは、私ども安全対策課が発行いたしております『医薬品・医療用具安全性情報』と いう冊子に載せました記事からのコピーでございます。  まず1点目を簡単に御紹介いたしますと、医薬品に関連する医療事故防止対策という ことで、1点目はバイアル、アンプルに入っている経口剤あるいは外用剤といったもの は注射剤と誤用、誤認されやすいということがございますので、それを防止するために 「注射をしてはいけない」という表示をさらに目立つようにしましたことでありますと か、外用剤でありながら各種の錠剤のような形態をしたものがございますので、これも 経口剤と間違えやすいということでございますので、PTPシートなどに「のまないこ と」と必ず書いていただくような形にしている。そういう投与方法の間違いを防ぐため のいくつかの取り組みがそこに載せております。  医薬品に関しましては、あといくつかございます。  医療用具に関しては25ページ以降でございます。一つは、輸液ラインと経腸栄養ライ ンを誤接続する事故がございましたので、誤接続を防止するためのいくつかの基準の整 備を行っております。ひと言で申しあげますと、輸液ラインに対して経腸栄養ラインは 全体に太くいたしまして、お互いに接続できないようにするということでございます。  そういう取り組みをいたしまして、26ページにございますが、これまでいくつかの関 連の行政通知を出してきたところであります。  本日、傍聴の方にはお配りしていないと思いますが、委員の方にはお配りをいたして おります資料で、さる7月30日に発出された「人工呼吸器警報基準の制定について」 と題する通知でございます。この人工呼吸器に関しましても、この委員会の前身でござ います検討会で検討を重ねてまいりまして、3月に一度、通知を出しまして、この7月 30日に薬亊法に基づく42条基準として人工呼吸器の警報等に関して基準が制定される に至ったということでございます。  資料1−2の22ページを御覧いただきたいと思います。これは、親委員会の医療安全 対策検討会議のスケジュールでございます。現在、8月でございますので、ここ当面、 専門家・関係者からのヒアリングと意見交換を実施いたしまして、来春を目途に医療安 全に関するグランドデザインをとりまとめていくという方向でございます。  資料1−3は、医療安全対策検討会議における当面の検討事項でございます。1から 10までございます。幅広い分野から医療安全に関する問題を御議論をいただいていると いうことでございます。特に物に関しましては、5番「医薬品・医療用具に関連した医 療安全対策の推進について」ということで一つの柱立てをしていただいております。  以上、医療安全対策検討会議のこれまでの議論の御紹介と、厚生労働省の医療安全に 関するこれまでの取り組みについて説明させていただきました。 ○桜井部会長  どうもありがとうございました。では、ただ今の御説明で何か御質問あるいは御意見 はございますでしょうか。 ○星委員  一つ、質問をさせていただきます。7ページ、5番ですが、前の委員会でございまし たようですが、この三つのターゲットをどのようにして抽出したのか。つまり、ここに ア、イ、ウとございますが、どういうきっかけで始められたのかというのをまず御説明 をいただきたいと思います。 ○安全使用推進室長  これは、いろいろなインシデントの事例を収集するという取り組みは今、準備をいた しておりまして、これが出てくれば、ここからいろいろな事例を抽出することができる わけです。昨年来の取り組みといたしましては、まだ系統立って情報を収集する必要も なかったわけで、それまでにやられている先ほど少し申しあげました川村先生の研究で ありますとか、別途、厚生労働省にいろいろな形で入ってまいります事故報告とかそう いうところから、当面の問題として考えられるものを大きく分けますとこの3点でござ いますが、抽出させていただいたということでございます。 ○星委員  もう一つお伺いしたいのですが、三つ出しました、そして通知も出たようですが、そ の後、その普及状況、あるいはどのような成果があがったのか、対策を打ったわけです から、そういう評価はなされているのでしょうか。 ○安全使用推進室長  輸液ラインに関しましては、公式な形での調査はいたしておりませんが、非公式な範 囲では、一定のシェアを網羅しつつあると承知しております。  医療事故に関する表示の概要に関しては、これもいくつかの具体的な医薬品で販売名 のまぎらわしい問題に関して、各社がこういったところに基づいて具体的にいくつかの 取り組みをされているというところは承知しております。 ○星委員  製品ができましたとか、普及しましたというのがありますが、製品ができました、あ るいは「のまないこと」と書いてあるフィルムの外用薬がいくつ出ましたというのは、 たぶんおわかりになると思うのですが、いったいそれがほんとうに現場で役に立ってい るのかどうかということに関するモニタリングの仕組みはあるのですか。 ○安全使用推進室長  星委員の御指摘の点でございますが、どういった観点から選択したのかということに ついて、やや周辺情報を申しあげますと、局長のあいさつにもありましたとおり、平成 11年からインシデントそのものはあったわけでございますが、喫緊の課題として、とに かくできるものから片づけていこう、それくらいの緊急性のある重要な問題だというこ とで、平たくいいますと目についたものから、やれるものからやったという背景がござ います。  それからモニターの問題でございますが、たしかに合理的な評価のためには必要でご ざいますが、その以前にどれだけのインシデントがあったのかというコントロールがあ って初めて効果がわかるというものでございまして、科学的に申しますと、これから行 うものについて現在のインシデントとこれから先のインシデントを比べて対応がわかっ て、それをフィードバックする、こういう仕掛けになっていくのではないかと思います。  一方で、たしかに私どもの行っているものがほんとうに患者安全のために貢献してい るかどうかという点で、何か効果的な仕組みがあれば、たとえば御提案いただく、ある いは今後、ヒヤリ・ハットの仕組みの中で掲出していくということで、前向きに取り組 んでいきたいと思います。 ○星委員  私だけ発言してはなんですが、部会長が先ほど、これは前の部会の引き続きだという 認識をおもちだとおっしゃったのですが、私は全くそうは思っていないので、そのこと は確認をしておきたい。つまり、今まさに室長がおっしゃったように、場当たり的にや った、とにかく緊急性があってやったのだ、その成果についてはどうだかよくわからな いというお返事ですから、そういうものをこの先どんどん続けていってもなんの意味も ないと私は思います。ここは一回仕切り直しをしたわけですから、そのあたりのところ をきちんと整理をして、この部会で何を議論するのかということを明確にするためにも、 今までやってきたことについてはきちっと検証しておく必要があると思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました。ほかに何か御意見はございませんか。 ○宮城島委員  星委員への直接の回答ではないのですが、昨年9月に通知が出まして、私たち製薬企 業としては通知の内容がどのくらい実施されているかというのを調査しております。現 状調査と、さらに実施を徹底するような努力をしております。 ○桜井部会長  この委員会は物の安全ということでやろうということで始まったわけで、当然、医療 の安全というのは物だけの安全で終わるものではなくて、一貫した仕様とか、先生がお っしゃったあとのフォローアップとかいろいろな問題があるわけです。ただ、物の安全 ということでいいますと大きく分けて2種類あって、一つは、フールプルーフというか、 絶対間違えっこないというつくり方と、もう一つは、1カ所がだめになっても並列でや って、フェールセーフというか、飛行機などもそういうふうにできているそうですが、 そのようなものがあるかと思うのです。  したがって、この委員会が昨年の5月に始まったときに私どもが参加させていただい て、そういう明らかに必要なこと、やれば必ずそれがプラスに働くことはあってもマイ ナスに働くことはないだろうというようなことを、委員としては議論をして取り上げて きた、私はそのような感覚をもっています。よろしくお願いいたします。  では、ほかに御発言ございませんか。 ○原田委員  今の点に関連いたしまして、桜井先生から御指摘のありましたフールプルーフ、フェ ールセーフという2点のほかに、そもそもデザインとして人間がエラーを起こしやすい ものがあるという視点から製品をどのようにつくっていくか、そういう観点からの対策 が必要かと思っております。その点で、星先生も御指摘のとおり、今までともっと違う 面も入れていくことに私も賛成でございますので、ぜひいろいろな制度を考えていって いただきたいと思っております。  その点で一つ質問なのですが、今回、1−3の資料でカットされました10番目の項目 で「IT技術の応用における医療安全対策の推進について」という項目が、新しく親委 員会のほうの議案に入っております。これは医療情報システム化を指しているのだと思 いますが、この点に関しては、まさに物の要因と、ヒューマンエラー対策部会のほうで 扱っていらっしゃいます人あるいは組織の要因とが非常に絡み合っていて、しかもちょ っとしたことでエラーを引き起こしやすい、あるいは逆に事故対策にとても有効になり 得る部分と危険な部分とを併せもったものだと思っております。その点に関して、IT 関連を今後どのように扱っていらっしゃる御予定なのか、お聞かせいただければと思い ます。 ○医療安全推進室長  今、先生が御指摘の10番目、IT技術の応用による医療安全対策についてでございま すが、親部会で、これほどIT技術が進んでいるなかで、それを用いることによって医 療事故を防げるのではないか、安全対策が進められるのではないかという御指摘で入れ られたところでございますが、実際にこの内容をいったいどういうふうに活用していく のか、また活用できる技術がどのようにあるのかという具体的なところはこれから議論 をするというふうにしております。  したがいまして、この部会、またヒューマンエラー部会等での議論も踏まえまして親 部会で議論をしていただきたいと思っております。現時点で、今度どういうふうにする かということを申しあげるほど議論が煮詰まっているというか、親委員会で検討を進め ていただいている状況ではございません。したがいまして今後、各部会、また広くいろ いろな方の御意見を伺いながら検討していくべき問題と考えております。よろしくお願 いいたします。 ○目黒委員  今、医療用具安全対策部会の部分で、物に対する考え方、製品、薬品、機械等を含む のでしょうけれども、私たちの仕事の現場で最近、それほど多くはなくなってきたので すが、ときどきあるのは設備がかかわる問題です。ガスがこなくなった、それから電源 が途絶えた、水道水圧が下がった、そういう設備にかかわる問題点があるわけです。  そのほかに、外来から非常に強い電波がきたとか、病院の中でもそういう不要な電波 があるのですが、そういう、物と考えていいのか、設備の部分をどのように考えるのか ということをお聞きしたいのですが。 ○安全対策課長  今、目黒委員から御指摘いただいた問題につきましては、広くこの部会で御指摘いた だきまして、さらに、たとえば病院の運用とかそういったところにも関係しますので、 親部会とも適宜話し合いをしながら必要な対応を策定していく、こういうことではない かと思います。 ○井堂委員  「医薬品・医療用具等」とあるのですが、医療用具等ということになりますと、資料 1−3の検討すべき事項の8に「医療安全の推進に関連する法律的側面について」とい う項目があるのですが、医療用具につきましてはほとんどISOあるいはJIS規格と いうことで定められているのですが、ここで審議される薬亊法だけではなくて、ISO との関連はどのように考えておられるのでしょうか。 ○安全使用推進室長  医療用具に関しましては、国際的にはISO基準規格がつくられたものがございます。 それらは基本的には日本の場合はJISに取り込みまして、医療用具の扱いでいいます と、たとえば一定のJISに適合しているものであれば薬亊法上の承認を免除するとか、 あるいは、ISOではありませんが、ISEの電気安全規格は医療電気機器には必ずす べからくアプライされているというような運用をいたしております。  したがいまして、ISOに関してはそういう形で日本の医療用具のデザインとか性能 に反映されていると考えております。 ○井堂委員  もちろん、ISOとJIS規格との統一のためにいろいろやっておられるのは伺って おりますが、ただ、JIS規格のときには、薬亊法で定められたことについては免除と いいますか、審議対象にならない項目がたくさんあると思います。そして「特に人体に 害がなければ」というふうな文言でやっている部分があるので、そういった部門との関 連をある程度審議しないと、医療用具を物としてとらえるならば、なかなか対策は難し いのではないかと思うのですが。 ○安全使用推進室長  医療用具に関しましては、たとえば為害作用といいますか不具合などに関しましては、 まず法令に基づいて企業に報告義務を課しておりますし、あるいは医療機関から直接厚 生労働省に報告いただく仕組みがござます。そういったものに基づいて検討いたしまし て、たとえばJISで承認するようにしているけれど、その部分が仮に問題だというこ とであれば、たとえば承認上の扱いを検討するとか、その段階でたとえばユーザーに対 していろいろな注意喚起をするとか、そのような仕組みをとるスキームはこれまでもご ざいますし、今後ともそのラインで運用していきたいと考えております。 ○井堂委員  ということは、厚生労働省とJIS規格の通産省と連携をとりながらやっていくとい うことですね。 ○安全使用推進室長  はい。 ○医療機器審査管理官  補足して御説明いたします。JISを承認規格として採用して承認審査の効率化をは かっているところでございますが、JISにつきましては、おおむね5年に1回、見直 しが行われるということでございます。私どもといたしましては、この部会の御審議な どを踏まえまして、安全性の観点から必要なものを規格に追加するような修正なども今 後行っていきたいと考えております。 ○桜井部会長  ほかにいかがでしょうか。 ○土屋委員  前回の会議その他を通じまして、基本的には個々の医療用具あるいは医薬品について の対策は、たしかに少しずつとられるようになってきた、また現実に変わってきたと思 うのですが、おそらくこういうことをやっておりますと、ヒューマンエラーという観点 からいいますと、一個一個のものはそれぞれの決められたことに合っていたのだけれど も、トータルとしてみてみたらどこかに落とし穴があったと。要するに一つ一つの承認 はそれで問題はないのだけれども、医療の臨床の場で実際に使うときに相互のあいだで の問題点がある。それは最終的には機械側が考えなくてはいけないとかそういうことが あると思いますので、今はまだその段階ではなくて個々のものですらまだ問題点がある と思いますので、当面はそういう問題点かもしれませんが、必ず個と全体ということを 常に考えていかなくてはいけないのではないかと思っております。 ○桜井部会長  ほかによろしいでしょうか。いろいろ貴重な意見をいただいたと思います。星先生か らは、まず取り上げるべきテーマの合理性といいますか、そういうことについて十分考 える必要があるのではないか。それから、実際に使うユーザーの意見の反映を重視しな ければいかんのではないか。3番目は、成果のモニターの必要性があるのではないか。 そのようなことを御指摘いただいたように思います。  原田先生から、IT、ハイテクの活用ということについて御意見があったのですが、 これは私は昨年の冒頭にちょっと申しあげたのですが、安全対策ということはどうして も二つ要件が必要だと。一つは、これだけハイテクが進んだ時代に、そのハイテクを十 分活用して安全を高めなければいかんだろうということが一つと、もう一つは、安全は ただではないのだと。特に日本では安全はただという認識があるので、安全を確保する ための経済的なバックも必要だというようなことがあるのではないかということを申し あげた覚えがございます。  目黒委員から設備についてどうかということで、安全というのは、物と設備、環境、 システム、ヒューマンエラー、いろいろなものが重なってのトータルシステムというこ とで、これは土屋先生もおっしゃっていたと思いますが、そういうトータルシステム的 な点から考えなければいかんだろうという御指摘をいただいたかと思います。  井堂先生からは、国際化の問題、国際整合といいますか、グローバルハーモナイゼー ションの問題について御意見、あるいは国内においてはJISとの適合性といいますか、 そういう問題について御指摘いただいたように思います。  いずれも大変貴重な御意見をいただいてありがとうございました。ほかはよろしゅう ございますか。  では、本部会の検討事項について、事務局から御説明をお願いいたします。 ○安全使用推進室長  資料1−4を御覧いただきたいと思います。「医薬品・医療用具等対策部会の今後の 進め方(案)」というタイトルをつけております。  この部会でどういう御議論をしていただくかということでございますが、1と2とご ざいます。まず、順序が逆になりますが、2番目「直面する課題の取り組み」から入ら せていただきます。  直面する課題への取り組み。医薬品・医療用具等の個別事案に対して、医療事故の発 生を未然に防止するための具体的提言を行う(行政を通じた業界への指導)。これは、 これまでの例でいいますと、先ほども御紹介いたしましたように、この会議での御議論 を踏まえまして行政通知を発出するでありますとか、いろいろな承認基準を改めるであ りますとか、あるいは薬亊法上の基準を新たに制定するとか、そういった対応につなが っていくものであろうと考えております。  1番に戻っていただきまして、医療事故防止のための方策の検討(中長期的な取り組 み)ということでございます。医薬品・医療用具等の形態、構造、表示、名称その他、 医療事故を誘発するおそれがある事象の抽出を行い、審議することにより、医薬品・医 療用具等に起因する医療事故の発生を未然に防止するための方策を検討する。というふ うに書かせていただいております。  2番での個別の品目の議論を行っていく中で、医療用具とか医薬品の医療事故対策に 関して、横断的あるいは共通基盤的な考え方、あるいはガイドラインのようなものが求 められる可能性もあろうかと考えられます。今、私どもが具体的に何をという形の案を 必ずしも持ち合わせていませんが、そういった議論が可能になるような趣旨で1番の項 目も設けております。 ○桜井部会長  ありがとうございました。これは、今後の対策部会の進め方の骨子というか、基本的 な条件である問題でございますが、何か御意見をいただけますでしょうか。 ○星委員  まず、直面する課題への取り組みというのも非常に必要なことだと思うのですが、こ こで議論すべきことは、ここでしかできない話をすべきだ、あるいは厚生労働省が開い ている部会ですから、厚生労働省にしかできない仕事をしてもらいたと思うわけです。 ですから、なんでもかんでも、10ページのスキームにあるような、厚生労働省を中心に サーキットがクローズになるような古典的な行政の手法からは早く出ていただいて、も っと外側に向けていろいろなアンテナも伸ばす、そしてそれに対する責任をきちんと行 政にしかできないことをするということに徹してほしいと思います。  具体的に申しあげますと、たとえばどういうところにどういう問題があるのかという のは現場がいちばんよく知っているわけですから、その現場の声を集めるために、ここ にお集まりの先生方、それぞれアンテナをおもちですよね、それぞれのアンテナにひっ かかったものが非常に重要であって、私は、厚生労働省が事故報告を出させたところで、 大したものがあがってくると思っていません。むしろ、出すことによって自分の責任を 問われるという人たちが萎縮して、出てこない可能性のほうが高いのではないかと思う のです。  ですから、そんなところを強制的に厚生労働省がどうしろああしろというのではなく て、われわれがもっている問題意識を素直に聞いていただいて、そして厚生労働省にし かできない仕事、たとえば基準を改める、あるいは薬亊法を変えるということに結びつ くような仕事をしてほしい。ですから、個別のものにあまり拘泥することなく、全体の 話を中心にしてもらうべきだろうと思うのです。  具体的に申しあげますと、裏側に「のまないこと」「のまないこと」というのが書い てありますが、これは、錠剤の形をしたものに、あるいはこういうフィルムに入ってい るものに内服薬以外のものを入れていること自体が問題なのです。入れ物に入っていれ ば「のまないこと」と書いてありますが、出してしまって目の前に置いてあれば、錠剤 の形をしているわけですから、それを飲む、あるいは飲ませるということはあり得るわ けです。ですから、こういう対応をとりましたよ、ではなくて本質的な問題に取り組む。 それが厚生労働省にしかできない仕事だと思います。  入れ物の問題もあります。たとえば注射針を入れなければ吸い出せない外用薬、ある いはその他の薬があります。これは、注射器を使わなければできない、あるいは注射用 のアンプルと同じものに入っていることが問題であって、そういうものには注射剤以外 は入れないのだという議論がここではなされるべきである。  業界サイドからすれば、今の形からいえばこれしかできないのだ、あるいは滅菌法の 問題、あるいはさまざまな問題からいって、この入れ物に入れるのがいいのだというか もしれないけれども、それはしてはならないのだというこれまでの様な業界指導という スタイルではなくて、ほんとうに安全のために必要だとあれば基準自体を見直すことに つなげていかなければ全く意味がないと思いますので、その辺のところを肝を据えてや る気があるかどうか、局長にとりあえず聞いておきたいと思います。 ○医薬局長  今の星委員の御指摘については、基本的に私は全く同感でして、もちろん個々の製品 の改良も大事なのですが、せっかくこういう省の中で各界の先生方にお集まりいただい た会議ですので、星委員の御指摘のように行政として患者の安全のために、あるいは医 療事故防止のために共通的にきちっと基準なりガイドラインを示していくことが基本で ありますし、当然、必要であれば法改正なりといったこともやっていかなければいけな いと認識しています。  しかしながら、出発点は医療事故防止、患者の安全のために何が必要かということを まず整理していただいて、それを実現するために基準をつくったりガイドラインをつく ったり、あるいは必要があれば法律を改正するなど、われわれとしても積極的に取り組 んでいきたいというスタンスだということは、ここではっきりと申しあげておきたいと 思います。 ○桜井部会長  星先生が御参加いただいたおかげで、大変委員会が引き締まってまいりました(笑) 。 ほかに御意見、ございませんか。第1回目でもございますので、できれば全員の方から 御意見をたまわれればと思うのですが、いかがでしょうか。 ○堀江委員  昨年、スタートした段階での審議としては、具体的にその時点で大きく問題として取 り上げられているものをまず議論しながら、どういう改善が必要なのかということで、 それが具体的な結果にたぶん結びついていったのだろうと思います。一方で、この会に つながる前の段階での審議では、どういう問題が起こっているのか、それを抽出する必 要があるのではないか。そしてそれに向けた予算措置もとられて、そして今後は事例を あげて分析したうえで、何に取り組む必要があるのかを審議しようという方向性があっ たと思うのです。  その点について、星先生からは、必ずしも正確な情報が出てこないとの指摘もありま すが、具体的な事例をピックアップする、対象となる事例の抽出も非常に重要なのでは ないか。そういう方向に向けての動きが現在どうなっているのか、確認させていただい たほうがいいのかなと思います。 ○桜井部会長  ひととおり御意見をいただいてと思いますが、何かございませんでしょうか。 ○外委員  私も去年から参加しているわけですが、医療事故に関しては、こういう議論をしてい るあいだにも医療事故が現実に発生しているわけです。この時間帯にも発生しているか もしれない。そういうことから、去年、発足した委員会では、具体的な問題点を取り上 げて、それの原因分析をして、打てる対策をとにかく早く提示していく。そして、現実 に起こりつつある事故を、全体のすべてが浮き彫りになることを待たずに、とにかく先 に改良すべきところがあって、それが必ず改善、事故防止につながるということがみえ てくれば、早速手を打っていくという方針があったと思うのです。そして実際に素早く 手を打って、厚生労働省は文書化して通知を出した。  そういうことからすると、私はこの委員会の基本的なスタンスとしてスピーディさと いいましょうか、一刻も早く原因が明らかになってそのことがみえてくれば、手を打つ のだ。物に関していえば、その点がかなりはっきり明確に出しやすいと思うのです。で すから、そのスタンスは維持していただく。  もちろん基本的な法改正といいましょうか、根本的な改革をしなければいけないとこ ろがいくつかあるかと思います。ただ、それを待っていては、実際の医療事故は発生し ているわけですから、いろいろな情報収集をして、それが単に私たちのアンテナだけで なくて、報道機関からいろいろな問題点が出てくれば、すぐさまそれに対する原因につ いてここで対策を出していく。そのことはこれからもやるべきだし、今回、これまで二、 三、案件が出てきまして、対策を打ってきました。  それが十分かどうかは知りませんが、少なくとも私たちはそれをやってきたし、それ が現実の効果を出していると思うのです。モニター化して出すというようなことが、も ちろん将来的には必要になってくるかもしれませんが、今、医療事故の現実があって、 そしてその現実がある物の原因によって明らかになっているのであれば、早くそれに手 を打っていく。そういうことをやってきたし、これからもそれについてはどしどし進め ていくべきことだと思っております。 ○桜井部会長  ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。 ○甲屋委員  今、外先生からもお話がありましたように、現場におります者にとっては、毎日が非 常に危険な状態で業務をしている実態があります。一つ一つの用具が変わっていくこと も大切なのですが、ここの部会では、これだけのメンバーの方が集まっていらっしゃる わけですから、法改正のことなどシステム的なことに対する提案をしていくこととし、 あとの資料にある細かい具体的な物をどうしていくか、ということはここで審議すると いうよりは、もう少し小さい部会のほうで現場をやっている者をもっと集めて審議をし て、こちらに提案していくほうがいいと思います。  今、ここに提案されている具体的な変更案がどのように情報収集されて出てきている とか、実際に委員をしていながらはっきりキャッチができていませんが、もう少し細か いところはユーザーの意見をよく聞いていただく。実際にエラーをしているのは現場に いるナースが最も多いわけですが、それは、医師の指示を受けて実際にやっているのは ナースが圧倒的に多いはずですから、それだけ報告例が多く出ているという実状があり ます。そちらの部分に関しても情報収集が大切ですね。  ただし、インシデントレポート等をたとえば厚生労働省の方が集めたとしても、先ほ ど言ったように現場も守りに入る部分がございますし、実態が細かくみえるかというと、 そういった視点においては難しい側面もあるのかと思います。  私もこのメンバーになっておりますが、自分のところの事例はわかるのですが、他の 施設の事例がどうであるかというのは、大まかなものしかみえません。そうすると、自 分の施設特有のことなのか、はたして医療界全般で同じようなことが起こっているのか 全くつかめないなかで、その日その日をやりこなしていくというか、なんとかすぐ改善 につながるようなことを現場では日々努力はしているのですが、なかなか減らない。  医療が本当に複雑化、高度化していて、医療機器もどんどん新しいものが出てきます。 たしかにいろいろ安全対策や、使いいいものもたくさん出てきてはいるのですが、具体 的なことを申しますと、たとえば新しい人工呼吸器が出ると、ある利点があるので出て くるのですが、前に使っていた機械とたとえば電源のスイッチの位置から違う、操作の パネルの表示が違うとかいうところで、また一から勉強していかなければいけないよう な、そういった非常に煩雑なことが日々現場ではある。  薬にしてもそうです。同じような薬効のものなのに商品名は非常にたくんさあるとか、 各科によって使用するものが違うとか、そういったことでエラーを起こしやすい状況に 日々置かれております。  そういった現場の意見をかなり具体的に取り込んでいただいて、そこから提案をして いくような形の部会があってもいいのかなと思っておりますし、こちらはかなり各方面 の専門の先生方がいらっしゃるので、もう少し大きなレベルで、それを受けて実際に法 制化に働きかけるとか規格を見直していくとか、そういった部会になったらいいのでは ないかと思っております。 ○菊地委員  今度、情報収集センターが整備され、現場からインシデントが集められるようになる のは、大変良いことだと思います。国をあげて安全管理対策に動き出すようになりまし て、インシデントレポートを提出することに対しても、かつてよりはずっと抵抗が少な くなってきています。臨床の現場でも、特に看護部においては、インシデントレポート を取り上げる意味がだんだんと浸透してきました。  昨年、検討されたものも、すでに出ていますように、川村先生が看護部に働きかけて 集められた、1万1千程のヒヤリ・ハット事例に基づいていたはずです。命に直結する もの、緊急に改善しなければならないものを選択して検討されたと理解しています。  情報収集センターが設置される関係で申し上げますと、この部会も、現場とつながり を持つことで、実際的な検討が可能となるのではないかと考えます。今回、医療安全対 策検討会議という親委員会のもとに、人にかかる問題、物にかかる問題と、二つの部会 が設けられましたことは、また新たな形で、より現実的な対策へと発展させられるもの と期待します。 ○北澤委員  私は医学雑誌の記者で医療従事者ではないので、取材等で病院等に伺ってお話を聞く ことはあるのですが、そこで伺う話はほんとうに断片的なものにすぎないので、実際に ここで取り上げられ議論されるテーマがそれぞれ重要な問題だとは思うのですが、もう 少しそういった問題点をシステマティックに集める仕組みを、先ほども先生方がおっし ゃっておられるように、つくっていったらいいのではないかと思います。  それと、最初のほうで星先生から御指摘があった、こういった改善点がほんとうに改 善されているのかという評価については、ぜひやってほしいと思います。実際に私も聞 いたことがあるのですが、薬のシートに「のまないこと」とかいろいろ書いて改善され たのはいいのですが、実際に病棟で入院患者さんに出すときは、親切のためと思ってお られると思うのですが、わざわざそれから出して、朝はこれだけ飲むとかいうふうにし てひとまとめにしてベッドサイドに置かれるのです。そういうふうにしてしまったら、 せっかくの努力もなんの意味もないので、実際にそれがどう使われて、どのように医療 事故の防止に役立ったのか、という評価をぜひ並行してやってほしいと思います。 ○土屋委員  こういった対策の評価をすることはもちろん大切でありますから、それは全然問題は ないと思いますが、実はその前にもっとしなくてはいけないのは何かというと、基盤整 備ということがあると思うのです。  私は、ある意味では今はちょっと危険な状況になりつつあるのかなと思うのは、たと えば医療の場から製薬企業に対して、これは似ているから危ないという話が起きて、そ のときに、それぞれの企業がそれぞれの立場でデザイン変更を行う。それで何か起きて いるかというと、今度は出合い頭の事故が起きてしまっているということになるわけで す。今までのままだったら似ていなかったのに、デザイン変更したために新たなものと 似てしまった。ところがそれは相手も変えようとしていたりとかそういうことで、今、 そういう状況が全くわからない。  そういうことからいいますと、たとえばわが国においてどういう薬があるのか。私は 医薬品のコード法標準化をやっていたなかで、実は母集団がわからないということが非 常に残念でした。いったいいくつあるのかがわからない。では、そういうのは添付文書 はあるのかとみると、大手のものはあっても、あることになっているものについての添 付文書は必ずしも見ることができない。それから、いったい物(ブツ)はどうなってい るのだ、外箱はどうなっているのだろう、中はどうなっているのだろうと思っても、今 はそれがわからないという状況です。  それから、名前の類似性を問題にしようと思って商標部分だけを切り出そうと思いま すと、これは全くの手作業で、私は全部やってみましたが、大変な手間がかかるのです。  これだけの時代ですので、あたりまえのことといいますか、ごくごく基本のデータベ ースというかそういうもの、たとえば画像情報であるとか名称であるとか、英語の名称 も含めてですが、そういうことのデータベースがない。添付文書そのものを見るあれは ありますが、細かなところのきちんとした研究をしようと思っても、それができない。 もし全部の画像情報が全体でオープンになれば、たとえば心理学の先生方とか人間工学 の先生方が、それを題材にして新たな研究をなさると思うのです。  ですから、クローズドではなくてオープンにいろいろな専門の分野の方がたがチェッ クできる、そういう基本的なデータベースを早急につくらないと、この場でいろいろ議 論しても、今どうなっているのだというそのもとがわからないわけですから、評価のし ようがないのではないかと思うのです。今年度でもけっこうですから、急いでそういう 基盤になるデータベースができれば、対策のとりようも出てくるのではないかという気 がいたします。 ○藤上委員  今までの先生方からの御議論からしますと、小さいことかもしれませんが、今、土屋 先生がおっしゃいましたように、見た目、聞いた目の似た医薬品がたくさんある。 ではその名前、形を変更すればいいということになるのですが、これだけ医薬品が数多 くありますと、それにも限界がある。既存のものに関する事例の抽出も必要ですが、そ のリサーチと平行して、あるいはその結果を参考にしながら、医薬品にしても、医療用 具にしても新しいものが認可される時点で、実際の現場にそれが提供された時に生じる であろう問題点を、さまざまな角度から検討することも必要なのではないかと思います。  医療用具に関しましては、一社のもので、今日の例にでております麻酔回路と気管チ ューブとの関係のように、一社のもので一連の医療行為が完結することができれば、事 故をなくす手段の一つといえると思うのですが、それが不可能であるならば、新しいも のがでるとき、認可するとき、審査の段階で、現時点での市場の状況を横断的にみる機 関も必要なのではないかと感じました。 ○望月委員  今までの先生方と別の観点になりまして、本部会で検討するべき事項かどうか、私自 身、わからないところがあるのですが、先ほどから表示の問題あるいは形態の問題、い ろいろ企業も取り組まれて変更されてきて、その効果についてはまだ評価の段階に至っ ていないということなのですが、表示ですとか形態、構造、名称といったものを変更し ていっても、最終的に使うユーザーが変更されたという情報をどう受けとめているかと いうところが、エラーに対する対策としていちばん重要なところかなと思っております。  たとえば先ほどのヒートシールに「のまないこと」という表示があったとしても、た とえば出してしまう。出した場合に、飲んではいけないものだったとしたら、出すよう なことをしないという意識をもたせることも大事だろう。  実際にはあのヒートシールの場合、ヒートシールごと飲んでしまうことが問題になっ ておりまして、あれも「のまないこと」と書いてあったとしても、一つ一つヒートシー ルを切り離したときに、テレビを見ながら中身の錠剤を出して、錠剤のほうではなくて うっかりしてヒートシールのほうを飲んでしまうというようなできごともありまして、 非常に危険性の高いものだったら危険性の高いものとして取り扱う意識を啓発する、そ ういう仕組みも必要なのかなと思います。 ○宮城島委員  私たち製薬企業としても、事故防止についてはずいぶん技術的には努力しているので すが、医薬品だけではどうしても一つの限界があることも御承知をお願いしたいという ことです。  それと、今までは医薬品の医療事故を誘発することについて、医療機関と個々の企業 とで個別に対応してきましたので、先ほど土屋先生を含めていろいろな先生から御指摘 がありましたように、一つのものを変えますと、また新たな医療事故を誘発する原因に なる可能性があります。そこで、この部会ではいろいろな分野の専門家の人がいらっし ゃいますので、ぜひ医療現場の方あるいは民間の方を含めて、トータル的な考えで事故 防止に取り組んでいただきたいと思います。そのうえで、私たちもいろいろな面で努力 したいと考えています。ぜひ総合的な見地をお願いしたい。  それと、土屋先生からもお話がありましたように基盤整備、特に何をもって事故が起 こりやすいかという検証する実態もありません。それを検証したりするような試行的な ものが必要です。あるいはそれに伴うデータベースも必要ではないかと思いますので、 その辺の総合的な取り組みもぜひお願いしたいと思っております。 ○山本委員  医療用具の業界といたしましても、事故防止に対しては最近、非常に積極的に取り組 んでいるところでございます。ただ、私たちの業界からいっても、医療現場でどういう 問題が起こっているのかという情報はなかなかつかみにくいのです。そういうことで、 先ほど多少情報が出にくいというお話がありましたが、ヒヤリ・ハット事例などを集め るセンターが早く整備されて、その情報が素早く流れるようにしていただくことが非常 に重要ではないかと思っています。  もう一つは先ほどの栄養ラインのお話ですが、今、シェアの3割ぐらいになったと聞 いております。これが昨年の8月の末に新しい基準になったわけですから、3割という のが多いか少ないかというのはいろいろ取り方があると思うのですが、臨床現場の看護 婦さんなどに伺うと非常に評判がいいと聞いております。ただし、たしかにコストが高 くなるものですから医療機関で購入していただけない、評判の割には伸びていないとい う話もございます。  それは、先ほど桜井先生のお話にもありましたように、安全にはお金がかかるという ことでございますので、産業側につけるというのではなくても、医療機関につけてもけ っこうですので、ともかく、対策品が広まるように、今度は医政局と一緒になるわけで すから、ぜひ経済的な側面で促進するような何かシステムをつくっていただけたらと考 えております。 ○目黒委員  1点だけなのですが、ヒューマンエラー対策部会、要するに人が絡む部分のこれから の活動内容がこの部会とどういうふうにかかわりがあるのか。要するにヒューマンエラ ー部会の中でどのような議論をされるのか、その点だけあとで教えていただければと思 います。 ○星委員  今、輸液チューブの取り違えをしないための新しい規格の話が出ました。高いから売 れません、というのは業界の意見でしょう。しかし、高いものをつくっても売れないの はあたりまえの話でありまして、つくる時点で、安い値段、あるいは今までと同じ値段 でつくれる、それが普及のためにいちばん大事なのだということをどうして認知しなか ったのかということが問題だろうと私は思うのです。  ですから、高くなってしまうのです、安全はお金がかかります、という話はたしかに わかりやすいけれども、新しいものを開発するときに今までよりも安くする、今はそう いう世の中ですから、そういう世の中にあって、いや、安全は高いんですよ、というと ころにあぐらをかいていること自体が私は問題だと思います。  現場で導入するときにどういう問題があるのかということを考えずに、企画というの が先行したがゆえにそういうことが起こったと思っておりますし、現場の意見を反映で きなかった前の検討会のもち方自体に文句は言っておきたいなと思います。  私たち自身は今、医師会の宣伝をするわけではありませんが、医療の安全確保に役立 つ人の養成をしています。なんのために養成をしているかといえば、一つはもちろん医 療機関の安全管理をきちっとしてもらい、事故を減らそうと思っていますが、そういう きちんとした教育を施した人たちに、その現場で起こっていることをきちんと評価して もらって、その評価された結果を集めてわれわれが評価しようという仕組みをつくりた いからやっているのです。  先ほどからヒヤリ・ハット事例を集めればいいのだと。ヒヤリ・ハット事例とは何か というと、びっくりした、どっきりしたのをなんでもいいから出してくれという方式で すが、これほど専門家を愚弄した話はないと私は思います。それを集めて、われわれが 中身をみて問題点を抽出して、どういう対策をとればいいのか考えてやるというような 態度では、絶対にうまくいかない。現場はプロですから、うちの婦長でもそうです、た ぶん婦長さんたちはそうだと思いますが、現場で起こっていることで、あ、これは変え てくれればいいのにな、と思っていることは一つや二つではないはずなのです。  そういうことを現場は考えているのに、そこを全部飛ばして、起こった時点からみん なよこせ、みんなよこせというようなことをどうしてもやりたがる。マスコミもそうだ けれども、何が起こっているんだ、見せろ、見せろというけれども、われわれはプロな のだから、その辺のプロの意見を、あるいはプロの評価をきちんと整理したうえで、そ のプロの意見をわれわれがプロとしてみていくという仕組みをつくらなければ決してう まくいかないと、私は思います。 ○桜井部会長  そうしますと、資料1−4のこれからの進め方の骨子になるような問題ですが、だい ぶいろいろな御意見をいただきました。  たとえば「直面する課題への取り組み」は、現場の意見、必要に応じてはワーキング グループみたいなものをつくって吸い上げるとか、そういうことも必要なのかなと、そ ういう御意見もいただいたような気がいたします。  最初のほうの中長期的な取り組みの事象の抽出を行うというのは、これはリスク管理 のほうでいうとハザードの拾いあげということになるのだろうと思うのですが、こうい うことが必要なのですが、全体として何か仕組みとか、あるいは基準とか法改正につな がるような問題とか、そういう比較的大きな問題、ここに書いてあるのは比較的個々の 事例について議論するということに終始しているわけですが、そういう仕組みとか基盤、 データベース、トータル的なシステム、評価、モニターなどなどということ、今、御意 見をいただいたようなことを考えますと、今後の進め方の案について、今、出していた だいたような御意見を取り入れて少し考えていただいたほうがいいかなという気がいた しますが、それでよろしゅうございますか。  では、そのように事務局のほうでよろしくお願いいたします。  では、個々の案件が2件ばかりございます。最初に、麻酔の回路と気管チューブの接 続の問題です。これは参考人として、本日、アコマ医科工業の取締役研究室長・加藤文 彦さんと、マリンクロットジャパンの薬事・品質保証・臨床開発部部長の有馬毅彦さん、 お二人の方に参考人としておいでいただいておりますので、御着席いただければと思い ます。  では、資料の説明をお願いいたします。 ○事務局  では、資料の1−5を御覧いただきたいと思います。  経緯から御説明いたしますが、閉鎖循環式麻酔回路、ジャクソンリース回路と申しま すが、これと小児用気管切開チューブを併用した症例で、ジャクソンリース回路のフレ ッシュガス供給管が小児用気管切開チューブの内管にはまり込んだために、乳児が呼吸 困難になったという事故が発生したという経緯があります。  4ページを御覧ください。お手元にあるものは、実際にこの回路と気管切開チューブ を拡大したものが掲載されております。こちらがジャクソンリース回路というもので、 こちらが気管切開チューブというパートでございます。写真はこのガラスの部分、こち らの部分と気管切開チューブの拡大写真という形で掲載させていただいております。  よく見ていただきたいのは、この二つを押し込んだ形のあいだの隙間を御覧いただき たいと思います。4ページの上の写真は、かすかに白い気管切開チューブとガラス管の 内側の管とのあいだに隙間がございます。ここを通して呼気あるいは吸気が交換される 仕組みになってございます。これはかなり古くから使われているものでありますが、グ ッと押し込んでしまうと、下のようにぴったりと内側の管と気管切開チューブははまり 込んでしまいます。そうしますと空隙がございませんのでガス交換ができない、という 事件と御理解いただければと思います。  このような事件が発生いたしましたために、5ページでございますが、われわれとし ましては、医療機関への注意喚起という形で広く注意してくださいと。一報いただいて からすぐに、中の事実を確認して判明次第、こういう形で注意喚起をさせていただいて、 また、実際には該当企業からもそういった注意喚起を広くやっていただいた。  また、これ自身、それぞれ承認をとっていまして、それぞれ麻酔回路、人工呼吸器の 回路としては優秀な成績を示してきたものでございますが、このような使い方で事故が 起きるということでございましたので、それぞれの問題点等を御議論いただいたうえで 自主的に回収協力いただいた経緯がございます。  また、どのような組み合わせでこのような事故が起きるのかわからなかったものです から、それぞれの自主点検をお願いしまして、どれとどれがこわいのか、どれとどれが 危なそうなのかというのを、それぞれ皆さん方に個別に検査していただくと同時に、6 具体的な表では9ページになりますが、横軸がジャクソンリース回路、麻酔回路側、縦 軸のほうが小児気管切開チューブ側、〇×表を業界に依頼しまして、皆さまの御努力で、 このような組み合わせだと閉塞する可能性があるという話を詰めていただきまして、5 月には私どもの機関紙であります医薬品・医療用具等安全性情報で、このような形で広 く医療機関に情報提供をさせていただいた次第でございます。  これまで、緊急措置あるいは当面の組み合わせ等の問題点については、このような形 で対応してまいりましたが、2.現状の問題点に移りますが、まだ構造的な問題が残っ ているのではないかという観点で、以下のような問題点に立って今後、検討したらどう かと思っております。今日は、1ページ以降に問題点の例示という形で、問題意識を簡 単に説明したものをお示ししますが、それぞれの専門の立場から御意見、御助言をいた だけたらと考えております。  まず問題点の整理でございますが、1番は、それぞれはその専門の目的がありまして 開発された経緯がございます。それに対しまして、お互いのものを想定してあらかじめ 設計していない。先ほど御意見もございましたが、相手を想定してつくられていないと いう欠陥がそもそもあった。または、それぞれの目的意識があって開発されたものです ので、それぞれの限界というところもあろうかと思います。  2番目は、人工呼吸器回路の場合、実は臨床の場ではいろいろな病態、患者さん、事 件がありますので、それにそぐった実例治療をプロフェッショナルが設計する意味で、 あまりにも個別なジャンクションを決定しますと、多様なバリエーションになる様態に できない。医療機関の先生方がすばやく対応したい、臨機応変に対応したいというとき の支障になってしまうということもありまして、基本的に器具はかなり統一化されてい って、先生方の実際の臨床の場の状態をみて自由に回路を組み替えたり、あるいは必要 なパーツを組み込んだりという形で使われておりますので、一つはそういった面で臨床 現場の即応した対応を可能にする反面、逆にそれが適切に行われないと危険性を誘発す る一端があるという問題点もございます。  さらに3番目、審査の段階ではじくという議論もありますが、実はこの手のいろいろ な用途をもちますこういった機能製品は、数多く今までもございましたし、今後出てく る可能性は十二分にある。その際にすべての古いものとの相互作用は限りない組み合わ せになりますので、この辺も一義的にチェックしろというのもなかなか難しい問題もあ るのかなという観点に立ちまして、2ページ以降を御覧いただきますと、対応案として は、相互作用でございますのでこのような類型化された対応案があるのかなということ を、簡単に図式化して申しあげたいと思います。  逐次、先ほどの4ページと見比べていただきたいのですが、上の黒く示されたほうが ジャクソンリース麻酔回路でございます。下の赤い部分は気管切開チューブ側と理解い ただきたいと思います。  改善案1は、内管の長さを短くする。ぶつからなければいいではないかという側面で 検討したらどうかという考えでございます。もちろん、どちらかで長さを規定するとい う議論は具体的にはあるのかもしれませんが、わかりやすい類型化としては、ぶつから ないようにするというものが考えられるのではないかという視点でございます。  いろいろなところの文献を探りますと、内管の長さは麻酔ガスを口もとまで同じ濃度 で供給するためにどんどん長くなってきた経緯があると承知しております。既に企業で は内管を切ってしまって、ぶつかろうにもぶつかれないように改良した製品もおつくり になられている改善案を示されているところもございますので、各種そのような取り込 みが時々刻々やられているわけですが、総合的な対策として、枠組みというか基準とい うかそういったものを検討するうえでどうしたらいいのかという一例として、内管がぶ つからないようにするということはどうでしょうか。  2例目は、ぶつかってしまいますと閉塞しますので、横に抜け穴をつくるという概念 はあるのか。もちろん技術的な問題はあるのかもしれないのですが、側面的にこんな考 え方もできるのかなということでございます。  3ページのものは幅でございます。気管切開チューブにはいろいろな種類がございま す。先ほどお見せしました以外に山ほどあるのですが、実は内径が違います。内径が広 いものでありますと、当然、麻酔回路の内管よりも太くなりますからぶつからない。上 の段を見ていただくとわかるのですが、はまり込んでもぶつからないのです。そういう ことも論点としては考えられるのかなと。  改善案の4点目ですが、これは差し込まらない。グッと差し込んでも途中でとまるス トッパー機能という考え方もあるのかなと。  ざっと今までの問題点等を整理いたしますとこのような改善案の着目点、もちろん技 術的には流体力学でありますとかガス圧の問題であるとか、実際には研究していただか なければいけない点はたくさんあるかと思いますが、着目点はこのような視点で検討し たらどうかなと事務局は思っておりまして、先生方の専門のお立場から、いや、こうい った面も考えたほうがいいのではないかと御指摘、御教示いただける点がございました ら、教えていただければと存じます。  資料の説明は以上でございます。 ○桜井部会長  ありがとうございました。何か御意見、御質問はありますか。  一つの問題としては非常に会社の数が多いということと、これは輸入と国産とどのく らいなのですか。 ○山本委員  輸入が7割か8割だそうです。 ○桜井部会長  こういう事故が起こるのですから、一つの統一的な安全に対する規格というのが今ま ではなかったと考えていいわけですね。 ○有馬参考人  今、御指摘いただきました件なのですが、規格に関しましては、海外ではISO規格、 日本ではJISの規格ということで、コネクターの外径、内径にかかわる部分だけが用 意されておりますが、今回トラブルが起こった経緯に関しまして、あるいは中に出っぱ っている筒の長さに関する規格は入っておらなかったという状況で、各社さんともそれ は今まで知らなかった内容であったということが今回の事件の背景にはございます。  従いまして現段階では、先ほど御紹介がありましたが、9ページの表に記載されてい るチューブ側の会社さんとジャクソンリースの麻酔回路側の会社さんが集まって、既に 寸法等の確認をどこまでやったら安全になるかということの確認を今、進めておる最中 でございます。 ○外委員  一人の麻酔科医として、このような事故があったことは非常に残念に思っています。 私たちもこのジャクソンリースの回路は頻繁に使うわけですが、まさかこのようなこと が起こるとは実際、予期しなかったのです。それはなぜかというと、私たちは両方とも こういう工夫がなされているということの認識がなかったのですね。  ジャクソンリース側の回路の改良点は、なるべく先へ内腔のカテーテルを伸ばそうと した。これはそれなりに、このスペースを短くすることによって、いわゆる死腔という のですが、そのスペースが少なくなりますので、患者側の呼吸が少し楽になります。  一方では気管内チューブもだんだん改良を重ねて、このコネクションの部分の内腔を 狭くした。これもそれなりにプラスの効果があって、今いった死腔の部分の容積が少な くなることと、たぶん気管内吸引をするときに吸引チューブがスムーズに入っていく、 その二つのことからこのような改善がなされたと思うのです。  その二つの改善が今回は不適切に合致することがあって、事故につながった。実はこ れは事故といいましょうか、医療用具による物の事故ではありますが、私たち使う側は、 これを使うときにすぐ手に感じますから、そこで早急に対応できるはずなのですが、そ れを気づかなかった。そういうことによって不幸にも患者さんが亡くなるということが あったわけです。物としても、こういうことは絶対あってはならないと私は思います。  では、どちらの改善がなされなければいけないかというと、私の印象では、ジャクソ ンリース側の改良をすべきだと思うのです。というのは、お互いの利点はどうだったか というと、お互い、工夫して、少しずつ形状を変えることによってプラスの効果を得よ うとしたのですが、どちらの効果が大きいかというと、気管内チューブ側のほうが効果 としてはあると思います。つまり、ジャクソンリース側の内腔の先端を伸ばすことは、 1センチ伸びたとしてもそんなに大きな効果は期待できないわけです。というのは、こ のジャクソンリースの回路そのものが非常にアバウトな器具ですので、精密な流量とか、 あるいは死腔部の容量とか、その辺のことをそんなに要求されないのです。  しかも、これは臨時で使うものです。何分間かこれを使ってその場をしのぐという感 じで使うもので、何時間も何日も使うようなものではない。ですから、この死腔の容積 は、ほとんど私の印象では重要ではないと思います。ですからこういう事故が起こらな いようにするには、この先端を短くするしかないと思っています。改良1、2、3、4 とありますが、私は1のみが妥当だと思います。1ですべてが解決するし、内管は必ず この先端から何センチ以内にとどめる、そういうことによって解決する問題だと思うの です。  というのは、気管内チューブのコネクションの部分は長さが決まっておりますので、 その部分よりも短ければ絶対くっつくことはないわけです。ですから、ぜひすべてのジ ャクソンリースの回路については、内管を、この接続が絶対起こらないような長さまで 短くすべきです。それ以外のところは、たとえば2で改善するかというと、私はこれは 無理だと思うのです。2では先端が重なる部分があり得るわけですが、これはいろいろ な事故につながる可能性があると思っています。それ以外のところも、改良1で解決す ることと私は考えます。 ○桜井部会長  今の御指摘は、例えばたんが詰まるとかこびりついて閉塞するとか、そういうリスク も避けられる。 ○外委員  そういうことです。2などではそれは解決しないと思います。 ○星委員  質問をさせてください。私は門外漢でありますが、先ほど、そもそも用途の違うもの がたまたま外径が一緒というか、外径を一緒につくっているものですね。これは現場で 即応する云々で、それぞれの専用の製品にするわけにはいかないという説明があったよ うに思いますが、いかないというのは、だれがどうしていかないというのですか。  というのは、たとえば外径が全く合わないようにしてしまうというのが改善の方法だ と私は思います。つまり、用途の違うものをそもそも使っているのだから、それが外径 が合ってしまうことを前提に短くしろ、長くしろという議論がほんとうに意味があるの かどうか、その辺をもしかしたら先生がご存じなのかなと。 ○外委員  少し誤解されているというか、御理解が得られていない部分があると思うのです。こ の二つのジャクソンリース回路と気管内チューブは、合致しなければ意味がないわけで す。ふたつが一緒にうまく重なってこそ人工呼吸が可能になる。ですから、ジャクソン リースと気管切開チューブは必ずしっかりぴったり合う必要があるわけです。  ところが内管は、内管というのは細いところで、これはガスをそこから送ってくるわ けですが、これは気管内チューブと合致してはいけない。そもそも合致するはずがない ようにつくっていたわけです。ところが、ジャクソンリース側が、合致しないだろうと いうことでこれぐらいの径にしたところが、気管内チューブの径がだんだん細くつくら れていった。それは小児ということがあって、その部分は余計な部分だから工夫しよう ということでだんだん小さくして、たまたまそれが合うような大きさになっていったと いうことだと思うのです。  ですから、それは工夫としてあり得ることなので、それが合致しないところまで短く すべきで、それでしか事故を防げないと私は思います。ですから、そもそもは外径にぴ ったり合わなければいけないものなのです。 ○桜井部会長  このリストを拝見しますと、これは輸入品ですね。これはどこの国ですか。 ○加藤参考人  ジャクソンリースというのは私どもの自社製品で、国産でございます。 ○桜井部会長  国産なのですか。会社名というのが非常にたくさん、14会社あるのですが、これは卸 みたいな形でやっているわけですか。 ○有馬参考人  こちらに書いてある会社は複数ございますが、国内の製造を行っていらっしゃる会社 さんと、海外でつくられた製品を輸入している会社さんがございます。詳細は今は計算 しておらないのですが、おそらく海外から入れている商社さんのほうが数は多いとは認 識しております。 ○桜井部会長  私が言っているのは、6ページの該当商品名というのが左側にあって、右に会社名と いうのがございますね。これはみんなジャクソンリースの回路ということで、右側の会 社はみんな違いますよね。これは卸しているという感じになるのですか。 ○有馬参考人  こちらに記載されている会社名は、すべて薬亊法に基づく製造業の製造承認をとって いるか、もしくは輸入販売の承認をとっているか、そういう認識で御理解いただけたほ うがよろしいかと思います。 ○桜井部会長  そうでなくて、ジャクソンリースという商品がここにずうっと書いてありますね。そ れを取り扱っている会社名が14もあるのですが、どうしてそういうことが起こるのです か。 ○有馬参考人  ジャクソンリースというのは、先ほど外先生からも御説明があったとおりで、これは 一般的な名称にも既に使われている言葉だとご御理解ください。 ○桜井部会長  一般名なのですか。 ○有馬参考人  はい。ほんとうはそういう一般名という形ではないのですが、これは個人名、ドクタ ーのお名前だったかと思うのですが、お二人の先生の組み合わせで使われていた。そう いったものがだんだんその形態を代表する言葉として、化学調味料ではなんとかと皆さ んお使いになっているのと同じようなものと御理解いただければいい。ですから、メー カーさん、つくっているところと形もわずかに違うものが、実は全部ジャクソンリース という名前で呼ばれているということでございます。 ○井堂委員  冒頭に、どういう方向でやるかということを御質問させていただきましたが、ISO 規格とJIS規格と、あるいは薬亊法、その整合性がとれなかったことがこういった事 故につながった。これが同じ規格でつくってあれば、こういった事故にはつながらなか ったということがいえるのでしょうか。 ○有馬参考人  ISOの規格とJISの規格は、この段階では整合はとれておりました。ここではメ ンバーの方、日本の代表の先生はいらっしゃっていないのですが、外径に関しては標準 で15ミリ径というものが、人工呼吸器並びに麻酔装置に使われる回路と呼ばれているチ ューブコネクター関係では全部適用されているということで、これは日本においても海 外においても同じ基準でございます。それをベースに承認申請に提供させていただく企 業側からの情報ではその数字が入っておりますし、厚生労働省さんのほうもそれを御確 認されたうえで承認あるいは許可をお出しになっているという形態ですから、実際にそ この段階では、今おっしゃった三つのことに齟齬はなかったと企業側では考えておりま す。 ○星委員  そもそもなんで事故が起こったかというと、あのいろいろなものをみてみると、メー カーの違うものを組み合わせたから起こったと理解すればいいのですか、それとも、そ もそもの使い方をしていれは起こらなかったと私は説明を聞いたのですが。つまり、メ ーカーが指定をしている出っぱっているほうとへっこんでいるほうを組み合わせれば起 きなかったのですか。 ○事務局  それについては、個別の事例と相互事例とちょっと難しい問題があろうかと思います。 最初に申しあげた点はたくさん意味があるのですが、承認というのは、このパッケージ ですといって標榜されて承認を取得されますので、そのパッケージは、自分がどういう ふうにお使いになられることを推奨するかというパッケージで承認を取得されますので、 それの想定されたものとそうでないものがそれぞれ別々にあった場合に、その段階では 当事者はお互いの相互利用というのは想定していない設計であり、それ以前の性能試験 をパスしているという認識なのです。そういう意味では、先生の御指摘のように、それ ぞれ別々にちゃんと縦割りで使っていただければ問題はないという議論は成り立ちます。  ただ、外先生から御指摘のように、治療上、どうしてもマスクだけではあり得ない、 たとえば気管切開チューブが必要なような患者さんについては、このパッケージは使え ない場合が出てくるかと思います。そういう場合には、逆にいうと気管切開チューブと 御利用になられるパッケージのジャクソンリースというようなものを念頭に置いたもの でないと問題があるという可能性はある。  ですから個別ごとの議論ですと、それぞれの製品が、これは麻酔回路だけでしか使え ませんよといっているものなのか、あるいは麻酔回路も人工呼吸器回路も使えますと標 榜したものなのかという問題点が、実際には出てくる可能性があります。だから個別事 例になるとそういった問題点、実際、事例報告はそこのことを申しあげた次第でござい ます。 ○井堂委員  今、ISOとJISと薬亊法との齟齬がなかったということなのですが、それにもか かわらずこういった事故が起こったということを考えれば、先ほど、5年にいっぺんの 見直しということがありましたが、それなりの、ISOではどの規格であれば使っても いいようにということでグローバル化をはかっているわけですから、そういったことが できないということになると、これは実験とかあるいは改良については、ここで論議す るのは非常に問題があるのではないか。そういった部会があるわけですから、JISの 規格を審議している規格の委員会の中には学会の方がたくさん入っておられるわけです から、各大学の専門家のきちんとした研究結果によってこういったことを審議しないと、 ここで審議して、これはよろしいどうこうというのは、私はいかがかなと思うのですが、 いかがですか。 ○桜井部会長  どうでしょうか。 ○医療機器審査管理官  医療用具のJISにつきましては、経済産業省と厚生労働省の共管ということになっ ております。従いまして、この部会の中で種々安全対策のことについて御議論いただい た結果につきましてJISに反映させるということは、審査管理課の私どもから、そう いう御意見があったので、その点も勘案してJISの改定について御議論をお願いした い、と担当委員会に伝えることにより可能だと思われます。 ○井堂委員  JISを規格するために、各委員会で各部門にわたってずうっと規格案を審議してお りますね。そこにこの問題を御定義されることはないのですか。ここで決められたら、 それを規格を審議している委員会に提示をして、それを認めさせるということですか。 ○医療機器審査管理官  そういうこともできるかと考えています。 ○外委員  この件に関しては、私はJIS云々の範疇を超えていると思っております。JISの レベルではこの両方とも認められたわけです。その適用を誤らずにそのとおりに使えば 問題はないということで、マスクを使ってジャクソンリースで人工呼吸する分には何も 問題ないわけです。気管内チューブの人工呼吸器に接続する分には何も問題はない。と ころが、たまたまそれがいろいろな使用の仕方があり得たわけです。それは、マスクの ところを外せば気管内チューブにつながるわけですから、そういう使い方はどうしても あるわけですし、そのことはしてはいけないということではないわけです。  いろいろなことが現場の医療では起こり得る。起こり得るけれども、そういうことが 医療事故につながらないように、そういう可能性があったらそれはなくする。可能性が あるからこそ事故は起こるわけですから、そういう可能性がこういう委員会で明らかに なって、すぐにでもこれは対応しなければいけない。今でも使う可能性はあるわけです から、そういう事故の可能性をゼロにすべきだ。  それはJISでもう一回検討しても、そういう器具はこういう可能性があるからもう 一回やり直すということはあり得るのでしょうけれども、早く厚生労働省が先頭に立っ て、こういう組み合わせで事故が起こり得る可能性がある以上、それはないようにすべ きだし、そのためには改良の例を示していただきましたが、やはりこの改良例に従って 即刻、対応すべきだと思います。 ○桜井部会長  ありがとうございました。そうしますと、当面の対策ということと、JIS全般にわ たる組み合わせ使用の問題と二つ問題があると思いますので、そこはぜひ適宜とりはか らっていただければと思います。どうもありがとうございました。  最後に、輸液ポンプとシリンジポンプの検討ということで、参考人としてテルモ株式 会社の研究開発部長、藤井 正さん、お願いいたします。  では、資料の御説明をお願いいたします。 ○事務局  では、資料1−6を御覧いただきたいと思います。これまで知られております主な事 例と、考えられる問題点をいくつか挙げさせていただいております。お手元には、業者 の輸液ポンプあるいはシリンジポンプのパンフレットをお貸しいただいておりますので、 御参考にしていただければと思います。  まず、フリーフローという問題、過剰投与というところについて御説明いたします。 お手元にこのようなパンフレットがあるかと思いますが、こちらを開いていただきます とポンプの中の構造で、左上の写真で、中のチューブが曲がっているような状態を御覧 いただけるかと思いますが、このようにチューブが装着不良の場合にはポンプが正常な 作動をしませんので、輸液が直接流れるような感じでフリーフロー状態になることがご ざいます。  次に、正しく装着されて輸液を開始されまして、点滴が終わってポンプからチューブ を外す場合に、別にクレンメというもので一度チューブを閉じてポンプから外すことに なると思いますが、その場合にクレンメを閉め忘れてポンプからチューブを外しますと、 フリーフロー状態になってしまいます。そのような事例が問題点として取り上げられて おります。  次にシリンジの装着不良ということです。これはもう一つ別のパンフレットでシリン ジポンプという普通の注射器を機械で押し出すような感じのものがあるかと思いますが、 こちらの注射器の中の溶液を出すために押す部分、これを押し子といっていますが、こ の押し子の部分が機械本体に正しく装着されていないと投与過剰になるような事例が報 告されております。  次に流量と投与総量の錯誤ということです。こちらは、輸液ポンプを作動させる場合 に、1時間当たり何ccで投与する、あるいは全体的に 500ccとか1000ccとか投与すると いうように設定するわけでございますが、先ほど御覧いただいた輸液ポンプですと、予 定量1500、流量 200という感じで2段に分けて投与量が設定されていると思いますが、 一部の機械では一つの画面で切り替えによって入力する場合があります。そこで、通常、 流量を入力するはずなのに投与総量を入れてしまって、1時間当たりの流量が多くなっ てしまった、そんな事例が報告されております。  量の誤入力ということですが、例えば「40.0」と入力をする場合に「 400」と、小数 点以下の数字の入れ間違えというようなこともあるかと思います。  次に薬液の固着ということです。輸液ポンプにチューブを通して輸液を行うわけです が、チューブを通して薬液が漏れて機械本体の中に流れてしまう。その場合、その後す ぐに拭き取る作業をしないで放置しますと、ある程度薬液が固まってしまって、その後、 機械の操作不良を起こすというようなことも考えられております。  次に、バッテリーの充電不足。よく患者さんがバッテリーを作動させて移動しながら 輸液ポンプを使われていることがありますが、バッテリー残量の表示がないものについ ては、どのぐらいバッテリーが残っているかわからない状態で患者さんが移動されて、 移動中に警報が鳴っている、そのようなことが病院でみられると思います。そういうバ ッテリーの充電不足ということも考えられております。  最後に小児の場合には、流量そのものがかなり少ない量で投与されますので、閉塞な どを知らせる警報が鳴るまでにある程度時間がかかってしまうということがいわれてお ります。  2枚目に、「対応案」をいくつか書かせていただいております。  フリーフローについては、過剰投与の場合にはフローセンサーというようなものを設 置したらどうかというのが、対応案として挙げさせていただきました。  シリンジ、先ほどの押し子が正しく装着されていないような場合、これは押し子外れ の警報装置というようなものを装備したらどうか。  流量と投与総量の錯誤については、流量と投与総量を一つの画面ではなくて別画面で 入力をしたらどうかという例を挙げさせていただいております。  量の誤入力としては小数点の扱い方ですが、ここで小数点表示として 400と40を見た 目ではっきりわかるような感じで表示したらどうか。  薬液固着については、ある程度ポンプの中に直接薬液が染み込まないような構造、あ るいは使用後の掃除を含めた点検をしていただきたい。  バッテリーについては、これはあと何時間使えますよということではないですが、例 えばこの輸液ポンプについての資料ですと、中に挙げさせていただきましたバッテリー インジケーターというような三段階の表示が取り扱われておりますが、このような表示 をしたらどうか。  最後に小児使用時の場合には、閉塞による警報などがある程度時間がかかることがわ かっておりますので、その辺は情報を徹底して注意していただきたい。  そういうことで対応案を考えております。  以上でございます。 ○桜井部会長  あまり時間がないのですが、特段の御意見があればと思いますが。 ○星委員  今日はこれを御審議して、そのあとどうしようというのですか。先ほどの話でも、そ うですね、と言ったきりなのですが、それでどうするつもりなのですか。 ○安全使用推進室長  この会の進め方で、前半、星先生のおっしゃったとおりの話かもしれません。従来、 この場で今まで知られているインシデント事例等を踏まえてこういった問題があって、 こういう解決策でどうでしょうかということで御議論いただいています。それの延長と いうことでもあるのですが、輸液ポンプに関しましては今までの問題点と対応案として 考えられているところをお示しいたしまして、少し御意見などをいただいて、最終的に はこれをなんらかの形で基準化する、あるいは行政指導をする、いろいろな行政のとり 方のオプションはありましょうけれども、先ほどいった結論につなげていきたいと考え ております。このために何か、専門のお立場から御意見をいただければという趣旨で御 説明させていただきました。 ○星委員  前のほうもそうなのですが、通知が出ましたので通知に合っています、そして自分た ちの業界で安全対策品ですといってシールを張ったりして売るわけです。これは現場に 非常に混乱をきたす可能性があります。つまり、ポンプは一つや二つではありませんし、 100円、200円のものではありませんから、これを一気に業界とすれば新しいものにみん な取り替えてくださいというのかもしれませんが、前のものを使っているのが悪いこと のようにとられる可能性もあります。この部会でオーケーが出ました、それを行政対応 しました、そしてそれを業界は安全シールを張って売りました、というような流れでこ れから考えていくのか、そうではない流れで考えていくのか、その議論をしなければこ の審議はできないと思うのですが、どうでしょう。  それぞれのメーカーがこういう審議の状況を踏まえて新しい製品開発を今まさに行っ ているのでしょうし、まさに新しい製品ができてきているのだと思うのです。それに対 して行政がどのように対応するかということについて、あるいは現場でそれをどのよう に受け入れられるのかということについての議論がないと、これは前のものと同じ蹉跌 といっては申し訳ないのですが、その道を歩む可能性があるので、その議論をするとい うのが先ほどの皆さんの合意だったと思っておりますので、あわてずにやられたらいか がでしょうか。 ○安全使用推進室長  ありがとうございました。前半、いろいろな先生方からこの会の進め方の御意見をい ただきまして、それを踏まえて次回、それを反映させたものをお示しさせていただくこ とでございますので、ただ今の御指摘もその中で挙げさせていただきたいと考えており ます。 ○桜井部会長  藤井さん、せっかく来ていただきましたので。 ○藤井参考人  こういう対策をぜひメーカーもやりたいと考えているのですが、私たち関連企業は20 社ぐらいあるのですが、気にしているのは、やったことがほんとうに現場で喜ばれるの か。台数も多いですし、やりますと、先ほど問題にされました新旧混在の問題がありま すね。それでまたリスクが出るということで。ですから、改良したものをわれわれが提 供して、現場の方が、ほんとうにこれは使いやすくて操作性もよくて、そして事故も起 きなくなったと喜んでもらえる、そこへ結びつけないと、メーカーも大変ですし、現場 の方も押しつけになってしまう。ぜひそこのところをはっきりさせて、皆さん、大変な 努力と時間と金をかけてやるわけですから、結果をよくしたいなと。  その辺の議論はこういう場面だと無理だと思いますので、ぜひ現場の方も参画したワ ーキングのようなものをつくっていただいて、そこで徹底的に議論をやっていただく。 これをやれば現場で非常に喜ばれるという形にぜひもっていきたいと思いますので、私 のほうからもよろしくお願いしたいと思います。 ○桜井部会長  流れからいいますと、今年中にISOで昨年の12月に決まった医療用具のリスク管理 というのが全部ができるのですね。これはリスクアナリシスは既に発行されております が、それがおそらく今年の末か来年初めにはリスク管理という形でJIS化される運び になると思います。ちょうどそういう時期である。  それと、今日、私はいろいろ御意見を伺って感じますのは、リスク管理とか安全とい うのは、患者さん、あるいは医療関係者、あるいはその他の、メーカーも含めて、各方 面の人が不幸にならないような方策を迅速にやるというのが原点で、その方策がほんと うにそれに結びつくのかどうかということをたえず原点にフィードバックして考えませ んと、議論のための議論とか、法律のための法律ということになってはいけないので、 その辺は私どもとしても十分に考えてやらないといけないという気がいたします。  今日、いろいろ御意見をいただいたこと、大変有用な御意見だったと思いますので、 ぜひ反映してお願いしたいと思います。  では、事務局から何か。 ○安全対策課長  この輸液ポンプとシリンジを含めまして、繰り返しになりますが、前半で検討事項に ついて再度、事務局で見直しをして、次回出すことになっておりますので、改めて検討 方法、それからこういった個別の扱いについての私どものアイデアを御提示申しあげた いと思います。次回までに作業を進めたいと思いますが、その間、ぜひ、委員の先生方、 こうしたらいいよということがありましたら、私どもへ御提示いただければ大変ありが たいと思います。  次回は、先生方の御都合を伺いまして設定をし、改めて御連絡を申しあげたいと考え ております。 ○桜井部会長  では閉会にしたいと思います。どうも長時間、ありがとうございました。 紹介先 医薬局安全対策課安全使用推進室 電話 03-5253-1111(内線2744)