資料4−1 |
1.将来人口予測の種類 |
注: | 1.コーホートとは人口観察の単位集団で、通常、同一年に誕生した出生集団を指す(出生コーホート)。 |
2.国際連合における世界人口推計、アメリカ政府推計、イギリス政府推計など、各国の将来人口推計で用いられている方法は、すべてコーホート要因法である。 |
2.コーホート要因法による人口推計 |
人口をコーホート集団としてとらえた場合、人口は時間の経過に即し、
(1)「死亡」と「移動」(転出・転入)のコーホート変動要因により変化
(2)当該人口の出生力によって新たな人口が誕生(=「出生」)
そこで、このような人口学的なメカニズムを推計手法として定式化したものが、人口推計におけるコーホート要因法である。
上記の考え方に基づいて将来の人口を予測するためには、コーホート要因である
3.出生率仮定の考え方 |
1)出生率の考え方
(1)出生率の人口学的概念
人口学的に出生水準を捉えるに当たり、「合計(特殊)出生率(TFR)」という概念を考える。その定義は次の通りである。t年における合計特殊出生率(TFR(t))は、
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ただし、
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上記式は、年次別の合計(特殊)出生率は、
の2つの構成要素によって決まることとなる。これが、未婚化の進行により合計特殊出生率低下がもたらされる構造的メカニズムとなっている。
(2)期間合計(特殊)出生率とコーホート合計(特殊)出生率の特徴
通常、毎年人口動態統計で公表されている「合計特殊出生率」は、ある年次(期間)に観察された女子の年齢別出生率により算定されるが、これは生年が異なる女子の出生率を合計したものであり、それぞれの生年毎では異なった結婚・出産行動を経験している。したがって、この合計特殊出生率は、仮に、ある年の女子の年齢別出生率が一人の女性の結婚・出産行動であると見なし合成した出生率指標である。これを、特に明示的に、「期間合計(特殊)出生率(PTFR)」と呼ぶ。
一方、本来、一人の女子の一生での出生水準を考えるためには、同一年に誕生した出生集団(出生コーホート)の出生率(コーホート年齢別出生率(CASFR))を経時的に観察する必要があり、これが「コーホート合計(特殊)出生率(CTFR)」である。
結婚や出産の行動は、コーホート(世代)を単位としてその行動が異なる。女性の就業機会の少ない時代に結婚適齢期を迎えたコーホート(世代)では、ある一定の年齢層で多くの女性が結婚していたが、女性の就業機会が広がったあとに結婚適齢期を迎えたコーホート(世代)では、結婚年齢が上昇し、従来の結婚適齢期の未婚率が上昇している。現在、このような結婚行動やそれに続く出産タイミング変化がコーホート(世代)間で見られている。
出産タイミングが変化している状況では、「期間合計特殊出生率」は結婚・出産行動の異なる世代の出生率が合成されているため、見かけ上の出生率変動を引き起こす場合がある。したがって、出生率の将来予測においては、一般に「コーホート出生率」を予測し、将来の出生率を仮定する。
2)出生率推計モデル
(1)一般化対数ガンマ分布モデル
コーホート年齢別出生率を出生順位別出生率に一般化対数ガンマ分布モデルを当てはめ、モデル・パラメターを推定する。
(2)目標コーホートについて、平均初婚年齢、生涯未婚率、夫婦子ども数の仮定に基づいて、目標コーホートの出生順位別出生率を推定し、モデル・パラメターを推定する。
(3)推計時点までのモデル推定されたコーホート出生率と目標コーホートの年齢別出生を補完推定し、推計に必要な将来出生率を求める。
3)出生率の仮定設定
(1)平均初婚年齢と生涯未婚率
平成4年推計では1950年出生コーホートの24.4歳から1973年出生コーホートの27.3歳まで上昇すると仮定した。平成9年推計では、1980年出生コーホートが27.4歳に上昇すると仮定した。
生涯未婚率は、平成4年推計では1936〜40年出生コーホートの4.2%から1965年出生コーホートの11.0%へ上昇を仮定した。一方、平成9年推計では、1980年出生コーホートが18.3%へ上昇するものと仮定した。
平成4年と平成9年推計では、平成9年推計において、晩婚化と生涯未婚率の上昇がより厳しく仮定された。
(2)夫婦の子ども数
夫婦が最終的に実現する夫婦子ども数は、平成4年推計においては、2.30人を仮定し、その後1965年出生コーホートで、2.13まで低下すると仮定した。平成9年推計では、2.18人から1980年出生コーホートの1.96人に低下するものと仮定した。
(3)長期のコーホート出生率仮定(目標コーホート)
平均出生児数=(女性の結婚割合)×(完結出生児数)×(離死別効果係数) |
3.将来生命表の考え方 |
4.国際移動の考え方 |
5.出生性比の考え方 |
7.新推計における論点 |
2)夫婦の完結出生児数の動向
1980年代半ば以降から見られるようになった結婚した夫婦の出生率低下は、今後一層拡大して行くのか、あるいは比較的根強い二人っ子規範のもとで、出産タイミングの調整に留まるのか。あるいは、女性就業の高まりのなかで、いよいよ出産を抑制する行動が顕著になるのかどうか議論する必要がある。
1.総人口の予測結果と実績との比較
平成9年推計に基づく、平成11(1999)年の総務庁推計人口と比較すると、推計結果が126,665千人(中位推計)であったのに対して、総務庁の推計人口は126,686千人で、2万1千人ほど推計結果が下回った。平成12年国勢調査の1%抽出推計結果と比較すると、推計結果が126,892千人(中位推計)であるのに対して、国勢調査1%抽出結果は126,920千人と、推計結果が2万8千人下回るという結果であった。
2.出生数の予測結果と実績との比較
人口動態統計に基づく外国人を含む出生総数は、2000年推計数が1,239千件であるのに対して、人口動態統計は1,203千件と、推計結果が3万6千件過大であった。実績数と推計数の差は年次によって異なるが、おおむね中位推計と低位推計の間にある。
3.合計特殊出生率の予測結果と実績との比較
人口動態統計による合計特殊出生率と推計の仮定値との差は、平成8年から平成10年まで、上下0.01の差の範囲であった。しかし、平成11(1999)年では0.04ポイント仮定値の方が大きく、平成12(2000)年では、実績と仮定値の差は0.03となっている。
4.死亡数・平均寿命の予測結果と実績との比較
人口動態統計に基づく死亡数と人口推計によって得られた死亡数を比較すると、平成8年から平成11年までは、実績数と推計結果との間の差は1万件未満間にあった。しかしながら、平成12年はその差が3万7千件に拡大した。推計では、インフルエンザによる死亡数などが平準化されモデル化されているため、平成12年のようなインフルエンザによる死亡が少ない年では差が生じる。
平均寿命も死亡数と同様の傾向を示し、平成11年まではおおよそ実績と寿命仮定値は同程度の水準にあったが、平成12年は死亡数と同様の理由から実績が仮定値を上回っている。