01/07/13 女性の年金の在り方に関する検討会(第8回) 「女性のライフスタイルの変化等に対応した年金の在り方に関する検討会(第8回)」                 議  事  録          厚 生 労 働 省 年 金 局 年 金 課          「女性のライフスタイルの変化等に対応した         年金の在り方に関する検討会(第8回)」議事次第            日 時 平成13年7月13日(金)13:30〜15:30             於  厚生労働省省議室 1.開  会 2.委員出席状況報告 3.議  事   委員のレポートとそれに基づく協議    ・日興リサーチセンター副理事長 中 田   正 委 員    ・上智大学法学部教授      堀   勝 洋 委 員 4.閉  会 ○袖井座長  それでは、時間になりましたので、ただいまから「女性のライフスタイルの変化等に 対応した年金の在り方に関する検討会」を開催いたします。本日は大変お忙しい中、非 常に暑い、もう35℃とか何とか言っていますが、猛暑の中をお集まりいただきまして誠 にありがとうございます。  それでは事務局より委員の出席状況を報告していただきます。よろしくお願いしま す。 ○中原企画官  本日の委員の出席状況についてご報告申し上げます。本日は佐藤委員と藤野委員が所 用のため欠席されております。その他の委員は全員出席あるいはそのご予定でいらっし ゃいます。また、本日、事務局では審議官の吉武が所用のため欠席をさせていただいて おります。  以上でございます。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。  それでは、早速議事に入りたいと思います。本日は既にお知らせしてありますよう に、中田委員から主に年金数理面からのレポート、堀委員から主に社会保障面からのレ ポートをそれぞれお願いしております。大体お一人20分から25分程度のお話をしていた だきまして、その後で皆さんからご質問をお受けすると。ですからお一人50分程度とい うことで、お一人報告して質疑、お一人報告して質疑という形でやっていきたいと思い ます。  それでは、早速中田委員からよろしくお願いいたします。 ○中田委員  それでは、お手元にお配りしていただいております資料に沿いましてご説明させてい ただきたいと思います。  「『女性と年金』に関する技術的問題」ということで2つのことを申し上げたいと思 います。第1点はここでいろいろ議論されております「女性と年金」という問題、この 問題は、実はどうも日本だけの問題ではなくて先進国共通の問題であるようだという点 でございます。  もう一点は、この検討会でいろいろ議論されております、例えば二分二乗法ですとか そうした案につきまして、数理的といいますか、あるいは技術的な点から見た場合にそ のままではうまくいかないような点が幾つかあるのではないかという点でございます。 後者につきましては、堀先生も、資料を拝見した限りでは同じような話をされる可能性 もあると思うのですが、ご説明させていただきます。  1ページをごらんいただきたいと思います。「社会保障と家族」セミナーと書いてご ざいます。これにつきましては少し経緯をお話しした方がよろしかと思うのですが、実 は私は「女性と年金」という問題は、問題自体はほかの国でもあるかもしれませんが、 こうした議論がされているのは日本特有のものではないかとずっと思っておりました。 ところが、ことしの3月にウィリアム・マーサーというコンサルティング会社のスーザ ン・ベルマンという人が日本に参りまして、たまたま少しお話しする機会がありまし た。そのときにスーザン・ベルマンに日本では政府がこうした検討会をつくってやって いるのだけれども、アメリカではどうなんですか、という話をしましたところ、私の想 定していた答えは、アメリカでは問題ありませんよ、ということだったのですが、実は そういう答えではなくて、スーザン・ベルマンが言うには、アメリカでもやっぱり大き な問題ですよということでございました。  スーザン・ベルマンの言い方では、バックシートにある、つまり後ろの席にいて、そ のときは特にブッシュ大統領の関係で、年金につきましては、アメリカでは個人勘定の 問題が非常に大きな問題になっていましたので、その問題が今問題になっているが、そ うした問題が片づけば、今バックシートにいるこの問題が出てくる、そういった問題で すよという話をしておりました。  そうしたことでしたので、私としては根拠が欲しいという意味で、論文か何かないん ですかという話をしましたところ、私はそういう専門ではないので、アンナ・ラパポー トという同僚を紹介してあげるということで紹介していただきました。  早速、そこにメールを送りましたところ、その人の返信メールによりますと、アメリ カでは女性の関係の団体、そういうところでよく研究されているということでありまし た。  さらに具体的な話といたしまして、ワシントンのアンバーン・インスティテュート で、昨年6月にこうした問題についてのコンファランスが行われているということ、そ こにローレンス・ソンプソンという人の書いたペーパーが出ていて、これは各国比較な んだけれども、これが非常に役立つという話がございました。それで早速それを取り寄 せてみたというのが1ページ目のところでございます。  ローレンス・ソンプソンとカラソという人の共著なんですが、本日参考として、その 一部を私どもの有森という者が訳したものをお手元にお配りしていただいていると思い ます。これは先進16カ国につきまして、「社会保障と家族の扱い」ということを比較し て、その中でアメリカはどうなんだろうかということを述べているものでございます。 その中で、ソンプソン自身は次のように言っております。  1つは、そこに書いてありますように、アメリカの国の年金給付は競合する次の2つ の社会目標の妥協の産物である、ということです。その2つの社会目標というのは何か と言いますと、1つは 「個人的な公平性」(individual equity)と言っています。こ れは日本で「保険原理」と言っているものだと思います。保険料をたくさん払った人は たくさん給付がもらえる、そういった考え方です。もう一つは「社会的な十分性」 (social adequacy)と言っています。これは「再分配」みたいな考え方、あるいは堀先 生の資料によりますと、恐らく「扶助原理」と言っているものに相当すると思うのです が、所得の低い人にもそれなりの給付を与えるといったような考え方でございます。  こうした2つの考え方が1つの制度の中に妥協の産物として入っている、米国の制度 はそういうものであるということを言っております。  それから、現行のアメリカのシステムの問題点として、社会保障と家族といった観点 から見た場合に次の5つの問題があるということを言っております。  1つは、特に未亡人に対して給付が不十分であるといったことを言っております。こ れは具体的には、お手元に参考としてお配りしました「社会保障と家族の扱い」という ものの1ページの真ん中辺に5つほど丸ポツがついておりますが、その最初のところに ある、「特に寡婦に見られる不十分な給付水準」ということであり、アメリカでは独身 高齢者の貧困率というものが全国平均よりも50%高い、高齢者の夫婦と比べると独身高 齢者の貧困率は3倍になっている、こういった非常に貧困の状態にあるということを言 っております。  それから、2番目に片働きと共働き夫婦を比較しますと、どうも共働き夫婦の方が不 平等になっているということを言っております。  3番目が低所得者の拠出に対する見返りが不十分であると言っています。これは日本 でも問題になっていますが、例えば低所得者の場合、拠出をしても遺族年金にはね返る 場合が少ないとか、あるいは例えば最低保障などがありますと、低所得者は拠出しても それが給付にはね返らない、こういった問題を指しているのではないかと思います。  それから、離婚の不十分な取り扱い。  さらに、非市場的な活動の社会的価値、子どもとかあるいは介護を要する家族の世 話、こういったものが年金にはね返らない。こういった問題を指摘しております。  それで、ソンプソン自身は、こうした問題は実はアメリカだけでなくて先進16カ国す べてに共通している問題ではないかといったことを述べております。日本の問題意識と 非常によく似ているということでご紹介させていただいたということでございます。  それとあともう一つ、ソンプソンが述べております最初の問題、未亡人の高齢女性の 所得が低いという問題、この問題は必ずしもこの検討会で十分な注意が払われていなか ったのではないかと思いまして、これをご紹介させていただいたということでございま す。  ただ、こうした問題意識というものが、アメリカ人すべてが共有しているかという と、必ずしもそこまではいってないと個人的な接触の範囲では思います。ほかの人に聞 いた範囲では必ずしもここまでの意識を持っていることはないということはつけ加えさ せていただきたいと思います。  それから2ページでございますが、ここからは「検討会に提出されました各案の技術 的疑問点等」ということでお話しをさせていただきたいと思います。この検討会で何度 か2分2乗法ということが議論されています。私自身はこの2分2乗法というのはもう 一つどういうものかというのは必ずしも正確に理解しているかどうかわからないわけで すが、例えば次のように考えてみたということでございます。そこの上に書いてござい ますように、例えば夫が20歳で働き出しまして、30歳のときに妻と結婚をした、65歳で 年金をもらい始めて75で死んだという場合を考えてみます。妻は5歳違いで20から働き 出して、25で結婚して60のときに夫が年金をもらい始めます。  これはどちらの絵がいいか迷ったのですが、実際65のところで妻に基礎年金が出ます ので、必ずしもこの絵がいいかどうかというのがあるんですが、夫と妻で一緒に年金を もらっているという形で書いてございます。妻が70のときに夫が亡くなりますので、後 は遺族年金をもらう、こういう状態を考えてみます。2分2乗法になりますと、夫が30 から65まで働いている間、その間の所得を妻と半分ずつにいたします。これに伴いまし て、それぞれのところで年金が65から支給されると、こういう形になるのかと思いま す。  こういうふうにいたしますと、そこの丸に書いてございますように、この制度のいい 点は、妻の持ち分というのが非常に明確になるということが挙げられようかと思いま す。実際の運営を、例えば個人別に行うとすれば、それはもっと明確になるということ だろうと思います。この場合は離婚分割というものはある意味では不要になるというこ とでございます。実際にこうした夫、妻半分ずつというのは、遺族年金にある意味で一 部既に導入されているということも言えようかと思います。  ところが実は疑問点もありまして、2分2乗法のところで、妻の60から65のところを 白で書いていますが、この間は妻に年金が出ませんので、夫婦で考えた場合は夫だけの 年金になってしまうという非常に所得の低い状態になってしまうということがございま す。  それから、子どもの遺族年金をどうするかという問題があろうかと思います。また、 実態としては、遺族年金は妻が4分の3もらっている場合が多いわけですが、これが2 分の1になるというだけのことではないのかという批判を受ける可能性もあります。  年金給付というのは、本来世帯ベースであって、これは消費を考えればはっきりする わけですが、1人と1人を足しても2になるものでもない、1.5 倍ぐらいにしかならな いということがあろうかと思います。したがいまして、逆に世帯ベースの年金を2つに 分けてしまいますと、例えば 1.5の半分は0.75ですので、それぞれちょっと少な過ぎに なってしまうということがございます。 それから、こういうことが起こりますと、妻は60とか65以降、夫と一緒にいる必要は ありませんので、離婚が増えるのかなということも心配したりしているわけでございま す。 もう一つ、企業年金の問題がございます。公的年金だけ2分2乗法にして、企業年金 を分けなければ変だと思うのですが、企業年金につきましては、現在遺族年金とか加給 とかというものはございません。今度新しい制度で遺族年金をつくれるようになってい るわけですけれども、現在のところまだありません。  それから、確定拠出年金という制度が今度導入されますが、確定拠出年金は基本的に は給付を一時金でもらいます。したがいまして、一時金を年金化する必要があるわけで すが、年金化するときに女性の方が長生きしますので、半分にして男女で分けますと、 女性の方が年金額が少なくなります。そういった問題があるということでございます。  こういった面では、そのままの形で2分2乗法を導入するのは個人的には難しいのか なという感じがしております。  続きまして、「属性別保険料」ということでございます。これは2分2乗法が難しい としたら、それぞれのグループごとに保険料を変えたらいいのではないかという発想で ございます。これにつきましては、前々回のご報告で佐藤先生からアメリカの税では属 性別の税というものがあるというお話を伺いました。  それから、駒村先生から、片働き世帯と共働き世帯で差をつけたらいいのではないか というようなご提案ございましたので、そうしたものを踏まえて少し考えてみたわけで ございます。これは例えば共働き、片働き、こういったもので保険料を変えるという案 でございます。  こういうふうにしますと、子どもあるいは先ほどの介護の老人の世話をしている人の 保険料を変えるとか、こういったものは比較的楽にできるのではないかというふうに考 えられます。  また、こういうふうにしますと、夫婦世帯あるいは単身世帯、こういったグループご との給付・負担水準の分化を図るということが容易になるということがございます。し かしながら、どういうグループで給付・保険料負担を考えるかというのはかなり難しい 問題になろうかと思います。  それから、データにつきまして、こういったデータがうまく入手できるのか、財政計 算を行うわけですので、将来の見通しも必要になるわけですが、こういったグループが 将来どうなるのかという見通しもかなり難しいのではないかと思います。  それから、こうしたものをやる1つの発想のもとには、共働き世帯よりも片働き世 帯、3号被保険者を抱えています片働き世帯の方を保険料を高くしたいということがあ ろうかと思うのですが、実際にはこれをやりますと、逆に共働き世帯の方が高くなる可 能性があるということがございます。と申しますのは、3号被保険者を抱えています片 働き世帯の方が所得が高ければ、片働き世帯から共働き世帯に所得の移転が起きるわけ ですが、今度それぞれのグループごとにしますと、この所得の移転が遮断されますの で、片働き世帯は所得の移転をする分を自分のところに使えるということで保険料を下 げることができる。共働き世帯は片働き世帯から所得をもらっているわけですから、そ れが来なくなりますと共働き世帯の方が保険料が上がる、こういうことがございます。  それから、医療、介護、こうしたことを考えれば、医療、介護を含めた総合保険料と いうようなことが自然なのかなという感じが個人的にはいたします。  こうしたことを考えますと、なかなかこうしたものも実は難しいのかなというふうに 思います。その次にそういうことを言わないで、3号被保険者から直接負担してもらえ ば良いではないかという案があろうかと思います。定額あるいはその分を夫が率で負担 するということでございます。これは何回も議論されておりますが、給付と負担のバラ ンスの問題が1つございます。それから、低所得者の負担が重くならないかという問題 もございます。  それから、もう一つ、これをしますと、先ほどの属性別保険料のところと同じ議論に なるわけですが、片働きの夫は、所得の移転をして、なおかつ自分のところの3号分も 払うということでかなりの不満が出る可能性があるのではないかということでございま す。  次に4ページですが、3号被保険者に負担をしてもらおうと思うと、ほかの案も幾つ か考えられるわけですが、例えば基礎年金部分は全部定額にしてしまって、報酬比例部 分は全部定率負担にするというような考え方、あるいは下に書いています全部の人を定 率負担にして、低給付に対しては別途手当をするというような考え方もできようかと思 います。ただし、これをいたしますと、これは個人ベースの大きな制度変更ということ にならざるを得ないということでございます。ここでは議論いたしませんけれども、3 号被保険者に負担してもらおうと思うとかなり全体的な仕組みを変えないとなかなか難 しいという感じがしているということでございます。  その次に女性の労働力化と年金財政への影響ということですが、今までは全体の規模 について余り大きく変わらないで、中の配分を変えるということで議論をしてきたわけ でございますけれども、実は妻が働き出すようなことがあれば、全体の規模自体も変わ ってくるということがございます。例えば妻が働き出しまして3号から2号になる場 合、そのまま所得が増えれば、もちろん保険料も増えますので、年金財政は改善される ということになります。  ところが実際には妻が働きましても、妻が働くということはそれだけ労働市場からみ れば、需給が緩んでくるわけですので、ほかの人の賃金が下がるということが考えられ ます。一番極端な場合で、会社側としては人が増えても、全体の賃金を変えないという 前提を置いて、総労働賃金が変わらないというふうにしてみますと、もちろん保険料総 額も変わりませんので、今度は妻の年金の増額によりまして、全体的に年金財政が悪化 するということになります。  実際には、これらの間にくると思うのですが、どのぐらいのところに来るかというこ とについては、これはモデルをつくっていろいろやってみないとわからないような問題 ではないかと思います。通常の年金のモデル以外に、賃金決定も実際には中に組み込ま ないとわからないような話で、分析するのはかなり大変だと思います。こういった問題 があるということでございます。  それから、5ページになりますが、5ページに離婚時の年金分割ということで、イギ リスの企業年金の例を挙げてみました。これはイギリスで昨年の12月から、一種の離婚 時の年金分割、シェアリングと言っていますが、こういったものができるようになりま して、それに伴いまして、政府から例示として、こういうふうにやるのですよという例 示20個ぐらいのパンフレットみたいのが出ているというものでございます。その中で一 番簡単な例がここに出ているものでございます。  制度的には確定給付型の年金で、1年につきまして最終給与の60分の1を給付する、 60歳の支給開始ということでございます。この人は50歳の男性で、年収は3万ポンドあ った。20年勤続。50歳のときに離婚して、妻の取り分は40%、これは裁判所の方で40% と決めたという例でございます。  そういたしますと、50歳の時点で年金額が3万ポンドの60分の20年ということで、1 万ポンドということになります。妻の分は1万ポンドの40%ということは 4,000ポンド ということになります。 60歳になりますと、給与が4万 8,000ポンドに増えたといたします。勤務期間は10年 延びますので30年になります。年金額は4万 8,000ポンドの60分の30年で2万 4,000ポ ンドになります。 妻の方が 4,000ポンドだったのですが、それから10年たっておりますので、再評価いた します。再評価の率がここでは例示的ですが、毎年 4.1%という再評価率を使っており ます。 4.1%というのは、10年たつと 1.5倍になるように逆に決めているものですが、 10年たつと 6,000ポンドになります。そうすると年金額は2万 4,000ポンドでしたの で、夫の取り分は2万 4,000ポンドから 6,000ポンドを引いた1万 8,000ポンドにな る。こういうことで妻が 6,000ポンド、夫が1万 8,000ポンドになるということです。  政府の例示はここでおしまいなんですが、実はNAPFというイギリスの企業年金の 協会みたいなところがあって、そこでもパンフレットを出しているのですが、そこの例 示も同じものを用いていまして、この後にもう少し説明がございます。そこでやってい ますのは、こういうふうにして一回 6,000ポンド、1万 8,000ポンド出るのだけれど も、実はよく考えると次のようにも考えられるということで、その括弧の中に書いてあ ります。 離婚時の妻の取り分40%というのは、実は20年のうちの40%で8年分に相当するだろ う。そうすると60歳のときに男性が差し引かれる年金額というのは4万 8,000ポンドの 60分の8で 6,400ポンド。したがって男性の年金は1万 7,600ポンドになるということ で、上の答えと違う答えが出てきている、こういうものも考えられるということを言っ ております。 つまりここで申し上げたかったのは、やり方にもよるのでしょうが、必ずしも年金分 割といった場合に一通りの答えが出てくるとは限らないということでございます。 これは最終給与比例という比較的簡単な形なのですが、日本の厚生年金の場合は、再 評価後の平均賃金を使っていますので、分けるときに期間をベースにするのか、賃金を ベースにするのかという問題があり、また保険料率自体が上がってきていますので、保 険料でやると、また違う答えが出てくる、そういう悩ましい問題もございます。  それで問題点でございますが、これは妻の取り分、ここでは40%になっていますが、 これはだれがどうやって決めるのかという問題、協議離婚の場合でこういうのがうまく できるのかどうかという問題があります。  それから、年金分割の事務に要するコストをだれが負担するのかという問題。  現在、遺族年金などは事実婚ベースでやられていると思うのですが、年金分割などの 場合には法律婚でないと難しい面があるのかなという感じがいたします。  それから、企業年金はどうするのかというような問題がございます。  イギリスではこの分割は sharingと言っていますが、offsetting、相殺するというこ とで、離婚のときに、例えば家は妻が取るけれども年金は要らないとか、そういう相殺 をするというのもできるようになっています。それからearmarking、これはどういうや り方かよくわからないのですが、年金をもらうときにはこれだけ私はもらうようにして くださいという、そういうものをマークをつけておくという意味ではないかと思うので すが、こういった3つの中からどれかを選択するというのができるようになっておりま す。  6ページですが、最後に今までのことをまとめて「コメント」という形で、現在の意 見を述べさせていただいております。  1つは2分2乗法を年金制度に適用するには、かなりの工夫が要るのではないかとい うことでございます。  それから、属性別の保険料は保険料率の算定根拠を得るのが難しいのかなという感じ がいたします。  3番目は、3号被保険者が負担する制度とするためには、実際には個人ベースにした かなり大がかりな年金制度の変更がないと難しいのではないかという気がいたします。 そういうふうにした場合、所得なし、あるいは低所得者には、制度の組み方にももちろ んよるわけですが、現在よりも厳しい制度になる可能性もあるということでございま す。  それから、離婚時の年金分割には具体的な手段もありそうだという感じがいたしま す。ただし、離婚時の年金分割といっても、現在日本人の離婚件数は20万件を超えてい ますので非常に数が多いということがございます。  現在、個人ベースで報酬比例部分の年金権が確立していないというのは、3号被保険 者になるわけですけれども、離婚時の年金分割というものを行えば、報酬比例分につい ても年金をもらえるということになりまして、事態はかなり改善されるのではないかと 思います。  ただし、年金権という意味ではしっかりしていないということがございますので、妥 協的といえば妥協的ですが、例えば連生年金というような形で受給権を確立する、ある いは家族手当という形での受給権確立、そんなことも考えられるのかと思います。  以上でご報告を終わらせていただきたいと思います。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。それでは、ただいまのご報告に何かご質問とかご意 見ございましたらどうぞ。駒村委員。 ○駒村委員  幾つかあるのですけれども、ほかの方も質問あると思いますので、私、まず1点。3 ページのところで、「属性別保険料」というところで、「データの入手可能性」または 財政に実際の計算にどうやって組み込むかというのが、この制度設計で決定的な難しい ところというふうにおっしゃっているような理解をしました。これは本当にそうなのか というのは、私は年金再計算をある程度仮定を入れて計算しなければ、いずれにしても できないわけですね。5年ぐらいのものだったらば、ある程度仮定を入れればできるの ではないかと思ったのですが、もう一点、これはどういう理屈というか論理か教えてい ただきたいのですけれども、「現在は、年金給付等に片働世帯から共働世帯へ所得の再 分配が行われている」、ここのところを解説をいただきたいと思うのですけど、お願い いたします。 ○袖井座長  よろしくお願いします。 ○中田委員  最初の「データの入手可能性」なんですが、どういうグループにするかによって違う と思うんですが、そのグループの分け方によってはデータの入手が難しい可能性がある ということでございます。  それから共働き、片働きといった経済的な属性を将来にわたって推計するというのは かなり難しいのではないか、そういった意味でございます。通常は共働き、片働きとい うのは割に短期に動くような話ですので、それが長期的に、年金の計算ですと通常 100 年ぐらいやったりしますので、 100年といわなくても数十年でもそういったものの推計 はかなり難しいのではないかと思われます。 それから、2番目の件ですが、現在は基礎年金という部分と報酬比例部分というのが ございますので、負担に対して給付というものを考えた場合には低所得の人の方が少な い負担でより多い給付を受けているということになるわけです。したがって、片働きと 共働きを考えた場合に、片働きの方が所得が高いとすれば、片働きの人はたくさん払っ た割には少しの給付しか受けてない。共働きの人は相対的に所得が低いとすれば少しの 保険料でたくさんの給付を受けているということになる。ということはどういうことか というと、所得が給付段階では、片働きの世帯から共働きの世帯に流れていると見てい いのではないかということでございます。  以上でございます。 ○袖井座長  よろしいですか、駒村さん。何か普通とちょっと反対ですよね。この説明は。一般に 説明は共働きから片働きにいくというのが普通なので、私もちょっとひっかかったの で。 ○駒村委員  『社会保険事業年報』での集計して考えると、前も厚生省の計算に出されたように、 属性別にすると保険料にその差があることによって逆の流れがとまるという推計だった んですね。いまひとつご説明が理解できていません。 ○堀委員  ちょっといいですか。よく言われるように、片働きと共働きの所得が同じであれば保 険料額も年金給付額も同じです。統計的に見ると平均的には共働き世帯の方が所得が多 いから、駒村さんの報告にあったように、共働き世帯から片働き世帯へという所得移転 の流れがある。しかし、これは平均的に見た場合のもので、個別にみると共働きでも片 働きよりも所得が低い場合もある。だから個別の世帯によって所得移転が方向が違う。 ○袖井座長  首をひねっていらっしゃる。駒村さん、ほかにまだありますか。 ○駒村委員  いいです。 ○袖井座長  いいですか。どうぞ、大島委員。 ○大島委員  難しい議論に入る前に少し資料を読みながら疑問に思ったところをお聞きします。 「非市場的な活動の社会的価値」というようなことが初めて出てきたのですけれども、 この中では働いている人の場合の非市場的な活動といいますか、子育てとか介護の問題 で、それは割合休業期間をどうするかというようなことで考えられるように書いてあり ました。今アンペードワークには専業主婦の家庭的な仕事以外にも、ボランティアなど の社会的な活動などもアンペードワークとして考えるというような定義があるようなん ですけれども、専業主婦の中ではそういう家庭的な仕事、それからボランティア活動の ようなものも評価してほしいというような意見も出てきています。そういうのを数量的 にといいますか、はかるような手法といいますか、指標といいますか、そういうのは今 あるのでしょうか。 ○袖井座長  これはどなたにお答えいただけますか。 ○堀委員  経済企画庁が計算したものが一応あります。しかし、ああいう計算は、前提によって 結果が変わってくる。一定の前提を置くと、年間 300万円とかそういう数字が出ていま す。 ○袖井座長 よろしいですか。あれは生活時間をはかって、女性の平均賃金を掛けたり、家政婦さ んなどの賃金を掛けるとか、女性のパートの賃金を掛けるとか、そういう形で一応計算 はやっていますけれども。 ○大島委員 家事労働あるいは育児とか、そういうものに関しての評価のようなので、割合ボラン ティア的な社会的な活動の面というのは、今までは評価はされてきてないような気がす るのですね。難しいところではないかと思うんですけれども。 ○袖井座長 私もよく覚えてないんですが、多分日本ではないのではないですか。アメリカでは、 私見たことあるんですけれども、そういうのを計算してGNPの何%とかというのは出 ていたんですけど、ほかの方、どなたかご存じでしたら。 ○下村委員  ちょっと別になってしまうのですが、5ページの「離婚時の年金分割」のところ、こ の例示は、例えば日本の場合にどういったところが、中田さんは参考になるとお示しに なられたのか。あるいは日本でも裁判例はなくもなくて、この間、1〜2年前でした か、横浜で4割でしたか、別れた妻のももらえるという判例が出たのですけれども、そ れは非常に画期的だなと受けとめてはいたのですが、これがどういうふうに日本の場 合、先ほどおっしゃったように26万組離婚があるわけですけれども、それとこれをどう いうふうに参考になさろうとしてのご提示なのか。  それから、ちょっと細かいことで申しわけないのですが、最初の方のご説明のとき に、「未亡人」というお言葉をお使いになられていたんですけれども、これはまだ私ど もからしますと、夫が亡くなって、妻はまだ亡くならない存在という表現に聞こえて、 国の検討会の語意としてはちょっとふさわしくないのではないかと、その辺気がつきま したので、それはつけ加えということで、よろしくお願いいたします。 ○袖井座長  最初のご質問だけでよろしいですか。 ○中田委員  後の「未亡人」というのは、そういう意味があるのでしたら、知りませんでしたの で、失礼いたしました。  私が例示というのを出させていただいた理由は、これは簡単な例ですが、具体的なや り方というのを出してみたということが一つと、必ずしも一意的に結果は決まらない可 能性があるということでございます。それから、幾つかのポイント、40%という妻の取 り分をどうやって決めるのかというような問題、あるいは事実婚と法律婚という問題、 そういった幾つかの問題を見ていくときに考えやすいのではないかということでござい ます。  イギリスの例をとりましたのは、たまたまイギリスのこういうのを資料として入手で きた。昨年の12月から始まっていますので、資料的にはよく出されているということで ございます。  もう少しお話しさせていただきますと、先ほど26万組離婚があるというお話をされて いましたが、ご紹介しましたソンプソンのペーパーの、後ろの方に実はカナダとドイツ の離婚の例が出ていまして、その中ではドイツは10万組の離婚があって、離婚した人は 強制的に年金分割をするということにどうもなっているようで、10万組に対して分割す るということですごく大変だということが書かれていたと思います。ファミリーコー ト、これは家庭裁判所みたいなんですが、ファミリーコートのジャッジは、この離婚分 割のために自分の仕事の17%を使っているというようなことが書いてありまして、強制 的に全部やり、26万組の離婚を裁こうと思うと大変なことになる。何かの形で選択し て、分割するのもできるけど、ほかの方法でもできるとか、何かそういうのを考えない と、26万組やるのはかなり大変ではないかと思いますので、そういったものも含めてイ ギリスの例を出させていただいたということでございます。 ○袖井座長  それは機械的にやるのではなくて、1つひとつ裁判で決めていくのですか、ドイツの 場合。 ○中田委員  そこまではっきり書いていませんが、恐らくある程度は機械的になっていると思うの ですが、ドイツの場合は、公的年金だけではなくて、企業年金とかそういうのも全部分 ける、まず公的年金を分けるのですが、分けるときうまく分かれない場合は次のものも 考えて一緒に分けるとか、仕組みはかなり複雑なこともあるのだと思います。 ○袖井座長  そうするとケース・バイ・ケースで1つひとつ検討する。 ○中田委員  原則は決まっていても、実際にはそういうことだと思います。 ○袖井座長  わかりました。どなたかありますか。どうぞ。 ○山口委員  アメリカでも共働き、片働きの年金制度上の給付を中心にした不公平というのが議論 になっているというご紹介をいただいたのですが、専業主婦が保険料を納めずに給付に 結びついているというあたりについては、アメリカでの女性の年金問題の議論の中では 余りないのですか。 ○中田委員  そこまで詳しいことは必ずしも存じないのですが、先ほど申しました共働き世帯が片 働き世帯に比べて不平等な取扱いをされているという中の1つに恐らくそれが入ってい るのだと思います。ただ、これはこの人の意見で、先ほども申し上げましたけれども、 必ずしもアメリカじゅうがこういう意見でみんな議論しているわけではなくて、違う意 見を申しますと、去年オリビア・ミッチェルという、ペンシルベニア大学の先生で社会 保障の関係ではそれなりに名前の通った人が日本に見えまして、私の研究所にいる人が たまたまオリビア・ミッチェルに、日本ではこういう3号被保険者の問題があるのだけ れども、アメリカではどうですか、という質問をしたというのです。  ミッチェルが答えるには、お金を払える人が払って必要な人がもらう、これは当然な んですよ、何であなたはそんなこと問題にするんですかと、そういうふうに言ったとい うんですね。アメリカは社会保障税という税なんですが、税を払えるということは所得 があるということでいいことなんじゃないですか、何であなたは変なことを言っている んですかと言われたと言ってました。したがって、必ずしもソンプソンの議論が全部の 人にあてはまる訳ではないと思いますが、そういう意識を持っている人があるし、実際 にそういうセミナーが開かれたということでございます。  それから、先ほど申しませんでしたけれども、アメリカのアクチュアリー会でも、こ としの11月にこうした関係のシンポジウムをするという話を聞いていますので、そうい う問題意識を持っている人がいるし、そういう実際の動きもあるのも事実だと思うんで すが、それがすべての人がそうかというと、そういうことは必ずしもないということで ございます。お答えになったかどうか。 ○堀委員  ちょっと参考までにいいですか。 ○袖井座長  はい、どうぞ。 ○堀委員  最近、私は『年金と雇用』という雑誌を見ましたが、これにアメリカの年金制度にお ける女性と年金の問題について書いてありました。基本的に女性の年金で問題なのは女 性の年金額が低く、貧困率が女性の方が高いということです。  被扶養配偶者への年金支給をやめると女性の年金額がますます低くなるということ で、結局は年金という形で支給するか、あるいは公的扶助、生活保護という形で支給す るかの違いにすぎない、こういうふうなことが書いてありました。  もう一点、1983年にアメリカは大改正やったのですが、その際に女性の年金について 大議論があった。被扶養配偶者に対する年金支給はおかしいという議論があったのです が、結局1983年の改正には盛り込まれなかった。やっぱりこの制度は必要だということ で、余り最近そういう議論はないというふうに私は聞いております。 ○袖井座長  永瀬さんどうそ。 ○永瀬委員  私、アメリカのことそれほど詳しくはないのですが、最近少し調べてみました。アメ リカでどうしてこういう問題が少ないかというと、日本の厚生年金の平均が男子20.5万 円、女子11.1万円ですけれども、アメリカは男子 860ドル、女子 662ドルです。後者は 日本の国立社会保障・人口問題研究所が出している本に基づきます。つまり男女差は日 本ではほぼ倍なんですけれども、アメリカの場合はその差は非常に少ない。 その理由はなぜかといいますと、アメリカの場合は所得が低い人の場合にはその低い 部分のかなりの部分を計算に入れる。高くなっていくと年金に反映する部分が小さくな っている。その仕組みは、きょう中田委員がお配りくださったものにも説明してござい ます。さらに日本の場合は年間 130万円までは保険料ゼロですけれども、アメリカの場 合を調べてみますと、四半期に 590ドル以上の収入があること。これは大体 100ドル1 万円という簡単な計算をしますと年間24万円。それ以上になるとソーシャル・セキュリ ティ・タックスがかかってくると。だから払う方はかかってくる。  ただ、もらう方は、確かに被扶養の配偶者は報酬比例部分も含めて50%もらえるとい うのがある。ただし、報酬比例部分というのは、高所得者はすごく小さく給与が反映さ れる形になっています。一方、日本の場合はそれがなくて、報酬比例部分は低所得者で あろうが高所得者だろうが0.00715 ですか、全く同じである。どこが違うかというと、 日本では基礎年金部分だけが違う。その基礎年金部分は何によって違うかというと、世 帯類型によってまさに異なる。つまり専業主婦とみなされるかどうかによって異なると いうことです。一方、アメリカでその問題が小さいのはなぜかというと、アメリカの中 では、大きな再分配が社会保障制度を年金を通じて行われてはいますけれども、日本の ような歪んだ形にはなっていないのと同時に、その歪みの大きさがあるとしてもより小 さいのだろうなというふうに私は理解するんです。130 万と24万というのは随分違いま すよね。 ○袖井座長 ほかにどなたかありますか。 ○堀委員 日本の基礎年金はまさにアメリカと同じなんですよ。これは後で話しますけれども、 日本のシステムというのはアメリカと極めて似ているんです。 ○永瀬委員 基礎年金部分で評価するのが女性の年金を高めるというのはまさにそのとおりだと思 っています。私もそれは事実だと思います。事実だと思うけれども、それが被用者の130 万未満の妻という一定の類型に余りにリンクしすぎているのではないかということがあ るということです。 質問してもよろしいですか。 ○袖井座長 どうぞ。 ○永瀬委員 6ページ目の「連生年金として受給権を確立したらどうか、又は、家族手当としての 受給権確立はどうか」、この辺のところはどういうことなのか、もう少し詳しく教えて いただきたいというのが1つ。  それから、お配りいただいた論文、とてもおもしろく読ませていただいたのですが、 22ページ目のChart 6a. というのが、これは製造業のブルーカラーで男性が 100%、女 性が平均の75%を得たと仮定した上で、妻が働いている場合、妻が働いてない場合、夫 分の持ち分を計算したものであると書いてあるんですけれども、この図はちょっとこれ は違うのでないかという点を申し上げたい。全体に非常におもしろい論文でしたけど、 いろんなところで、これはどうやって計算したのかというのがあったということは申し 上げておきたいと思います。 ○中田委員 後者については、著者に聞いてみないとわかりませんので、直接お聞きいただくか、 必要ならば聞いてみてもいいですが。 前者につきましては、「連生年金として受給権を確立したらどうか」ということで、 民間の年金ですと、例えば夫が入って、妻はどうしますかというときに、2人で合わせ て連生年金ということで、どちらかが死ぬまで払いますよという形の保険も結構あるわ けですね。そういうことがありますので、夫の受給権を確立して、死んだときに遺族年 金で初めて受給権が出てくるというのでなくて、一緒に最初にもらい出すときに、死ん だらもらいます、あるいはどちらか長生きした方のところまでの受給権というような形 も考えられるのではないかということでございます。家族手当というのは、それのバリ エーションです。 ○永瀬委員  別の給付が来るんですか。 ○中田委員  家族手当として、多分夫のほかにプラスアルファの家族手当として一緒に受給権を出 す。 ○永瀬委員  いわゆる付加年金みたいな形ということですか、昔の形の。 ○中田委員  今もあります。 ○袖井座長  永瀬さんよろしいですか。 ○永瀬委員  どうしてわざわざ付加年金という形の提案なされるのかちょっとよくわからないんで すけど、それはどういう理由からなんでしょうか。 ○中田委員  付加年金じゃないです。付加というのは、夫が受給権を持って、プラスアルファする 訳ですが、家族手当というもので受給権を一緒に発生させるということです。 ○永瀬委員  家族年金ということなわけですか。 ○中田委員  そういうことです。 ○袖井座長  駒村さんどうぞ。 ○駒村委員  2分2乗のところの疑問点とおっしゃっているところなんですけれども、私の理解は 2分2乗の注目されているのはお金の取り方の話だと思うんですね。税金の議論から来 て、それを社会保障の徴収に援用できないかという話で、その話に関しての話でなく て、どちらかというと、これは年金分割みたいな話のことによるだめだという話になっ ているんですけれども、その辺、私違うのではないかと思うんですね。今の制度だと、 例えば夫婦で 300、 200を取っている世帯と 500と0、または 400と 100となった場 合、 100の奥さんは保険料を払っていなくて済むわけですよね。そこで 500にして 250 ずつのそれに比例して負担させれば、世帯内の働くパターンによって完全に中立になる という議論で、2分2乗が注目されているのは、私はそっちの取り方の議論だと思うん ですけど、それについて全く触れられてないので、むしろこれは2分2乗の欠点ではな くて、分割の方法に関してタイミングとかの問題であって、だとするならば、分割みた いな話は別に消費世帯がどうであろうか、離婚時に初めてそれが発生するだけというふ うに理解すればいいわけですから、個人単位という話と2分2乗というのが一緒になっ てしまっているような気がします。 ○住田委員  私自身もこの2ページの小さなポツの方が恐らく疑問点だろうということで一生懸命 理解しようとしたのですが、今、駒村先生おっしゃったように、これは給付のレベルで おかしくなっているというようなご批判がほとんどで、年金給付は世帯ベースだから、 それを前提に個人ベースですると0.75になるからおかしいと言われるについてですけ ど、1つ制度をいじる場合には、恐らく給付率についても当然反映させて検討すべきな のであって、1つ変えたから、後の方が全く決定的におかしくなるのであれば、そこも いじらざるを得ないと思うんです。ですから、そういう形での疑問点というのは出され るのは結構ですけど、それに対しては手当、対応が可能な場合は可能であって、こうい う考え方の決定的な欠点ではないと、そういう形で考えていただかないと、これがある からだめなのかというような誤解を与えかねないと思います。 もう一つだけよろしいでしょうか。4ページの「女性の労働力化と年金財政への影 響」ということをここでお書きになっているんですけど、ライフスタイルということに 関係しますと非常に大きな問題でして、こういうふうな前提で物をお考えるなると、女 性の立場からしていかがかなと思います。例えば(4)のイですが、今後受給が緩んで人 が余るから全体として賃金が下がるというような言い方をされますと、女性が働かない 方がよい、男性の賃金を押し下げるからと。これはたしかほかの委員も、これからおっ しゃると思うんですけれども、この趣旨が書いてあったので申し上げるんですけれど も、現在、我が国の賃金体系が変わろうとしていますし、それとともに、ここは決定的 な事実としてあるのですが、少子高齢化ということが見えておりまして、働き手、特に 若年労働者が足りなくなったときには高齢者の活用、女性の活用というのが、日本の喫 緊の課題となっています。そういうことに目を向けないで、女性が働くと年金財政は悪 化するというような結論に導かれるのは非常に不本意だと思っております。  感想めいたものですいません。 ○袖井座長  どうもありがとうございます。どうぞ。 ○中田委員  初めの2分2乗法の方ですが、2分2乗法を、年金制度に適用した例がないので、ど ういうものかというのはもう一つはっきりしないわけですけれども、ここでは、2分2 乗法ということで、保険料の拠出段階で分けたのであれば、それは給付にも当然反映さ れるという前提で考えております。したがって、拠出段階だけ分けて給付自体で分けな いという考えももちろんあろうと思います。そういうのであれば、こうした問題は起き ないということですが、ここでは拠出段階で分けているのであれば、当然給付段階も分 けるだろうということでやってみたということでございます。  それから、幾つか問題点が出ているのだけれども、これは給付段階ではないかという お話がありましたけど、これは今申し上げたように、拠出段階で分けたらば、給付段階 にも反映するという前提になれば、こうした問題が出てくるということでございます。  こうした問題が解決できれば、もちろんそれでいいわけですが、個人的にはいい案が なかなか出てこなかったということでございます。  それから、4ページの(4)のイですが、別にこれは妻が働いた場合に総労働力所得が 変わらないと言っているわけでなくて、変わらないというふうに仮定すればこういうこ とになると、そういう極端な場合を言ってみているということで、別に実際に変わらな いと言っているわけでも何もありませんし、変える必要があるとか、そういうことも何 も言っているわけではありません。単に1つの、上か下かわかりませんが、そういう極 端な例として、こういう仮定であれば、こういう結果になりますという、その両端をお さえるという意味で出してみているということだけでございます。 ○袖井座長  いいですか。そろそろ時間も大分経過しましたので、次の方に移らせていただきたい のですが、よろしいですか。  それでは、堀さんにお願いします。 ○堀委員  それではレジュメに沿いまして報告させていただきます。レジュメと資料編がありま すけれども、報告の都度資料編の話をしたいと思います。  現行制度にどういう問題があって、どういう代替案があるか、あるいは代替案の問題 点について、私が書いたものを資料編の3ページに掲げてあります。これは日経新聞の 「経済教室」に書いたものですが、後でお読みください。  資料編の4ページ以下に、1997年、4年前に出した『年金制度の再構築』という本の 中で、第3章で第3号被保険者について、第4章で遺族年金についていろいろ論じたも のを掲げていますので、これも後でごらんいただきたいと思います。  きょうの報告は大きく2点について、私の考えを述べさせていただきます。1つは 「公的年金制度の基本的考え方」です。2つ目としてはいろんな改革案が出されていま すけれども、どういう代替案があって、それについてどういう問題点があるかについて 述べたいと思います。もちろん代替案にはメリットがあるのですが、メリットは比較的 わかりやすいのに対して、問題点というのはわかりにくい面がありますので、問題点を 指摘します。問題点を指摘するのは、代替案を否定するということではなくて、制度化 する際に考慮すべきことを明らかにするためです。  最初に第1の「公的年金制度の基本的考え方」ですが、これは女性と年金の問題を考 える場合に公的年金とはどういうものかということを踏まえて議論する必要があるので はないかという趣旨から述べたものです。  (1)ですが、公的年金の考え方として、両極端というか2つの考え方−(1)自分が払 った掛金が戻ってくる貯蓄のような仕組み(2)国家が国民の生活保障のために年金を支給 する制度−がある。  (1)の考えは私的保険の考え方で、給付反対給付均等の原則に則っている。(2)は社会 保障制度の考え方です。公的年金制度は基本的には(2)の社会保障制度の考え方によって いるわけですが、保険の仕組みでもあるため(2)の考え方も一部入っている。  我々、社会保障を研究している者は、このことを扶助原理と保険原理という考え方で 説明をしているわけです。  資料編の1ページですが、「保険原理と扶助原理」について、どういう違いがあるか を表にしました。保険原理というのは基本的に私的保険の原理ということです。左側の 表側の一番下の「給付反対給付均等の原則の適用の有無」の欄を見て頂きたい。 この 原則は市場における等価交換の原則と同じで、対価性・等価性があるかどうかというこ とです。この原則によれば、負担は応益負担原則になりますし、給付は貢献給付原則に なります。貢献給付原則というのは保険料に見合った給付ということです。  しかし、社会保険の原則はそれとは違う、むしろ国家による生活保障の制度です。先 ほどの中田さんの報告のアメリカの考え方でいうと、social adequacy−これは社会的 妥当性というふうに訳していますけれども−によっており、したがって、当然給付反対 給付均等の原則は適用されない。負担は応能負担であり給付はニーズに応じた給付とい うことになるわけです。 それを具体的な制度で見たのが資料編の1ページの図表2です。一番左側に「社会扶 助」とあります。これはいわゆる税方式で、我々は「社会扶助方式」と言っていますけ れども、これは扶助原理に基づいている。例としては老齢福祉年金を挙げています。  一番右端が「私的保険」で、これは保険原理に基づくということで、企業年金とか個 人年金のような私的年金です。  その中間に社会保険があって、これは扶助原理と保険原理から成っている。  社会保険はこの両方を含むわけですから、保険原理に近い考え方でつくることもでき れば、扶助原理に近い考え方でつくることもできる。例えば国民年金基金というのは保 険原理に極めて近い形です。国民年金とか厚生年金は割と扶助原理に近いのですが、も ちろん保険原理も含まれている。  レジュメに戻っていただきまして、第1の(2)ですが、社会保障とか社会保険は 「能力に応じて拠出し、ニーズに応じて給付する」、そういう原則が望ましいと言われ ておりますけれども、これは扶助原理に基づいている。  こういう、扶助原則に基づいて制度設計すれば必ず損得が発生するわけです。保険原 理だけであれば、保険に基づく所得再分配はありますけれども、福祉的な所得再分配は ない。したがって、(3)の公的年金制度と損得のところに書きましたように、所得再 分配によって生活保障を行う社会保障に損得はつきものだと思います。ただ、過度の所 得再分配は費用負担者の合意確保が困難となりますので、合理的で公平な所得再分配で ある必要があると思います。  (4)ですが、我が国は国民皆年金体制というのをとっているわけです。ところが社 会保険方式で皆年金というのは無理がある。保険というのは拠出なければ給付なしとい うことですが、国民の中には必ず負担能力のない者がいるわけです。その中で皆年金の 仕組みをつくるために2つの措置でそれに対応している。1つは保険料の減免です。2 つ目としては、これは諸外国でもとられているんですけれども、サラリーマンに扶養さ れている者については、サラリーマンが払った応能負担保険料で被扶養者に給付を行う という仕組みです。  (5)世帯単位と個人単位の問題です。個人単位化すべきであるという議論が多いわ けですが、基本的には私もそれに賛成しますが、ただ、問題がある。1つは、保険料に ついては、負担能力がない者をどうするかという問題です。というのは保険料拠出を個 人単位にすると、保険料負担能力のない被扶養者は無年金になるという問題が生じま す。  給付については、社会保障はニーズに応ずる給付ということですが、世帯共通経費を どうするかという問題が生ずる。世帯共通経費というのは、例えば新聞代とかお風呂代 とか、そういうものが個人単位の給付に含まれると、夫婦ではそれが重複するという問 題が生ずる。  遺族年金は、外国でも大体夫婦の年金額の6割か7割にしている。個人単位化すると 単身者は過小給付、夫婦は過大給付となるおそれがある。  以上が、公的年金制度の基本的考え方です。公的年金についてはこれ以外の考え方も ありますけれども、女性と年金に関連するものとしてはこういったことかと思います。  第2は、いよいよ女性と公的年金の問題に入るわけですが、1で、女性と公的年金に ついて、やはり正確な理解に基づいた議論が必要だということで、余計なことかもわか りませんけれども、誤解されていることをここに書いています。これは時間がないので 説明を省きます。後でお読みいただきたいと思います。  それから、レジュメの3ページの上の2で、女性と年金問題の改革に当たっての原則 を3ページの下の方の3で、具体的な改革案とその問題点を指摘しています。  2の「改革に当たっての原則」ですが、ここに掲げた原則は女性と年金の問題に限ら ず、公的年金あるいは社会保障制度一般にも通ずるような原則も掲げてあります。こう いった原則に基づいて考えていく必要があるのではないか。  (1)が、公的年金は老齢年金、障害年金、遺族年金からなりますから、「高齢者・ 障害者・遺族の生活保障」、あるいは所得保障を最優先に考える必要があるのではない かということです。  (2)が「公平性の確保」ということです。ただ、公平性というのはいろんな意味が ありまして、世代間・世代内、男女間、所得階層間といった公平性が考えられる。  問題は何が公平かということで、これは哲学上の問題でもある。具体的に制度化する に当たって幾つかある公平基準のどれを採択するかも、極めて難しい問題です。  (3)が「効率性・中立性の確保」ということで、公的年金制度が労働力供給、資本 蓄積、技術革新を妨げない仕組みである必要がある。  ただ、社会保障というのは、市場の失敗を是正するために設けられたため、効率性よ りも公平性を優先する面が強い。ニーズに応じた給付というのは公平性の要素からきて いる。  中立性原則からは外れるわけですが、女性の就労支援や育児支援のための仕組みを公 的年金制度に設けたらどうか、そういう意見もある。  (4)が「社会妥当性・現実性の確保」ということで、現行制度からの移行可能性、 他制度との整合性とかそういったことも考慮する必要があるのではないかということで す。  そこに「*」印で書きましたように、女性が現実に置かれた環境、条件を考慮した制 度設計は本当に必要ないのか。  (5)は「年金財政の健全性の確保」ということで、現在及び将来の保険料・税を負 担可能な範囲におさめる必要があるということです。  これ以外にも幾つかの基本的考え方があると思いますけれども、こういった原則を踏 まえた上で制度設計をする必要がある。ただ、これをすべて満たす制度というのは実際 にはほとんど不可能で、いずれかの原則を優先適用せざるを得ないのではないかと思い ます。  最後の「改革案とその問題点」ですが、これについては(1)から(3)まで3つに 分けました。  (1)は長期目標、(2)は公的年金制度の抜本改革案、4ページの下の方、(3) は女性の年金に係る部分的な改正案でこの3つに分けて考えました。  3ページの下のところへ戻っていただきまして、「長期目標」というところです。男 女の雇用機会、賃金等の雇用条件、雇用環境、雇用慣行、家族的責任等に差のない社会 が実現し、男女が等しく働けるようになった場合には、第3号とか遺族年金を廃止する のは当然ではないかと思います。こういった長期目標を達成するための社会経済の改革 というものも必要になってくると思います。  (2)抜本改革案ですが、これは必ずしも女性の年金の問題だけではなくて、公的年 金制度全般にかかわる改革案ですが、女性の年金の問題を解決するためにも提案されて いるものがあるわけで、それについて考えてみたいということです。抜本改革案として は、そこにありますように3つある。これはいずれか1つの選択という意味でorと書い てあります。(1)が完全所得比例化案、(2)が基礎年金の社会扶助方式(税方式)、(3)が 賃金分割案です。  4ページのところですが、完全所得比例案というのは、これは東大の大澤さんが報告 された案に近いものですけれども、定額の基礎年金をなくして、保険料・年金をすべて 所得比例にするというものです。ただし、日本のように高齢化が大幅に進む国では、大 澤案のように確定拠出にするのは無理で、確定給付にする必要がある。加えて、全額公 費負担のミニマム年金を創設する。  これの問題点ですが、以下に書いてあることを全部説明すると時間がかかりますので 主なものだけピックアップしたいと思います。  (1)の完全所得比例案の問題としては、現在の第3号など、無所得者・低所得者は無年 金・低年金となる。ミニマム年金を支給すれば皆年金にはなるのですが、ミニマム年金 は、日本のような国では年金額が低く設定され、所得制限が導入される可能性が大きい のではないかと思います。  また、基礎年金による垂直的所得再分配がなくなるということで、現在低賃金である 女性は不利になります。  (2)の基礎年金の社会扶助方式化、税方式化ですが、これは第3号制度の問題を解決す るために提案されているわけです。これは基礎年金を全額公費負担の社会扶助方式にす るということです。  これの問題点ですが、私は、社会扶助方式案というのは大きな問題があって、導入す るのは望ましくないと思っています。  その点は、資料編の2ページに、社会保険方式と社会扶助方式のメリット・デメリッ トを幾つかの基準を設定して比較したものを表にしてあります。例えば、経済システム との適合性、給付の普遍性、給付の権利性、給付水準の高さ、そういう基準で比較した ものです。理論的な面と現実的な面に分けているのは、理論的な面と日本においてその 方式がどう運営されているかに違いがあるからです。社会保険方式が優れているのでは ないかというのが私の結論です。  詳しくは、下の(資料)にありますように、ミネルヴァから出した本を見ていただき たいと思います。  資料編の一番最後の50ページに、基礎年金について税方式にすべきであるという議論 に対して、いや、そうではない、社会保険方式の方がメリットが大きいということを書 いたものを掲げてあります。これも字が小さいですけれども、後で読んでいただければ と思います。  レジュメに戻っていただきまして、4ページの真ん中辺ですが、(3)の案です。これは いわゆる賃金分割案で、婚姻期間中の夫婦の賃金額を各月ごとに合算して2分の1をそ れぞれの賃金額とみなして年金額を計算するというものです。これの問題点は幾つかあ るのですが、一番大きな問題点としては、年金額計算のためとはいえ、「賃金を分割」 するということが、我が国の法体系の下で認められるかどうかということです。夫婦別 産制との関係はどうなのか。あるいは当事者の合意なくして賃金額を決めるというのは 本当に妥当なのかどうか、そういう点が問題になるかと思います。  以上が、抜本的な改革案です。次は、4ページの下の(3)「女性の年金に係る部分 的な改正案」のところです。1)が第3号制度です。  6ページの真ん中辺に2)とありますが、これは遺族年金制度の改正案です。  7ページの上の方、3)ですが、離婚時の年金分割制度の創設案です。  7ページの一番下、4)で配偶者加算、振替加算、中高年寡婦加算についてです。  4ページの一番下、第3号制度の改正案ですが、これについては、5ページにa)、 加入と保険料サイドで解決する案と、6ページの上の方、b)給付サイドで解決する 案、こういう2つに分けてみました。  まず5ページのa)のところですが、加入・保険料サイドで解決する案としては、(1) 任意加入案、(2)付加保険料案、(3)定額・定率保険料案、(4)年収・就労時間の基準引下 げ案がある。  (1)の任意加入案ですが、第3号制度を廃止して現在の第3号は国民年金任意加入にす る。この案の問題点ですが、任意加入というのは年金財政を不安定にするという問題が ございます。任意に加入しなかった者は無年金、低年金になるということで、皆年金で はなくなる、そういう問題もあります。  (2)の付加保険料案ですが、これは夫の厚生年金の保険料に定率または定額の妻分の保 険料を付加する。この問題点としては、現在の応能負担に応益負担を加味するために矛 盾が生ずるということで、「*」印のところに書いてありますように、現在は例えば50 万円の片働き世帯と共働き世帯では保険料額も年金額も同じなんですが、こういうふう に改正すると片働き世帯の方の保険料負担が多くなる。  付加保険料を定額にするか定率にするかによって違うのですが、定額保険料を付加し た場合には、負担が逆進的になる、そういった問題があります。  (3)の定額・定率保険料案、これはどういうものかというと、厚生年金保険は、現在は 定率の保険料ですけれども、これを基礎年金分の定額保険料と厚生年金分の定率保険料 に改めるというものです。これは第3号だけでなくて共働きの人も定額プラス定率にす るということです。片働き世帯の夫は夫婦2人分の定額保険料を納めることになりま す。  この(3)の問題点としては、定額保険料は逆進的で、低賃金の者の負担が重くなる、そ ういった問題があります。  (4)は、年収基準の 130万円、就労時間基準の4分の3を引き下げるというものです。 どれくらいに引き下げるかによっても違う面もあるかと思いますけれども、問題点とし ては 130万円の基準を 103万円未満に引き下げると税金がかかりませんので、所得把握 ができるかという問題がある。あるいは 100万円近辺に設定すると、現在でもある就労 調整問題が悪化する。そういうふうな問題があります。  次に6ページの「給付サイドで解決」するという案ですが、これは第3号の給付水準 を引き下げるというものです。例えば国庫負担のみの3分の1にするということです。 こういうようにすれば問題はなくなるのですが、ただ、片働き世帯をモデルとしている 被用者年金の水準の見直しが必要となります。私は将来的には片働き世帯をモデルとす るものから共働き世帯をモデルとするものに移行すべきだと思っています。  その下の2)ですけれども、「遺族年金制度の改正」ということで、(1)が遺族厚生年 金の新合算分割案、orは代替案、それに代わる案ということですが、(2)は遺族保険料案 です。それからand なんですが、そういった案とは別に別途考えるということで、(3)再 婚による遺族年金失権見直し案、同じくand で(4)遺族年金の男女差見直し案です。 (1)の遺族厚生年金の新合算分割案ですが、現在遺族厚生年金は、ご承知のように現在 3つの選択肢がある。夫の老齢厚生年金の4分の3の遺族厚生年金か、あるいは自分自 身の老齢厚生年金か、あるいは夫婦の老齢厚生年金の合算額の2分の1ずつか、この3 つです。これを夫婦の合算分割ということですから、夫婦の老齢厚生年金額の合算額の 5分の3を遺族厚生年金にする。5分の3というアイディアは宮武委員からありまし た。  5分の3にした理由は、2分の1では低過ぎますし、4分の3では高くなりすぎるか らです。ただ、5分の3にすると現行制度より年金額が下がるものが出てくる、そうい う問題があります。  (2)が遺族保険料案ということですが、これには強制加入と任意加入の選択肢がある。 遺族年金の支給を望む者が任意に遺族保険料を納めるという案と、妻帯者から遺族保険 料を強制徴収する案が考えられるわけです。その問題点としては、遺族保険料が任意で ある場合には、拠出せずに遺族となった者の生活保障に欠けるというような問題があ る。  公的年金制度に任意加入を認めるといろんな問題点が生ずる。そこに書いてあるとお りです。  強制加入にするにしても、妻帯者のみの保険というのは社会保険として妥当か。応能 負担であるところに応益負担を加味することの可否、そういったことが問題になるわけ です。  それから、(3)の再婚による遺族年金失権の見直し案ですが、これは再婚すると遺族年 金が失権するという問題に対し、失権しないようにする。ただ、遺族年金には老齢死亡 の場合と若年死亡の場合があってその性格は違う。若年死亡の場合には再婚した相手が 働いている場合が多い。そういう場合に、再婚した夫が働いて、十分な給料もらってい るのに遺族年金を支給する必要があるのか、そういう問題があるのではないか。  最後の(4)の遺族年金の男女差見直し案ですが、これはご承知のように遺族基礎年金・ 遺族厚生年金・寡婦年金について男女差があります。これを是正するということです が、是正するのはいいとして、どういうふうに格差を是正するのかという問題がある。 極端な案として2つあり、一つは遺族年金を廃止する。もう一つは男性にも遺族年金を 支給するという案が考えられるのですが、いずれも現在の社会の実態に合うか、そうい う問題があります。  それから、7ページの3)ですが、「離婚時の年金分割制度の創設」ということで、 (1)法律上当然離婚分割する、(2)現在の民法のルールである財産分与によって離婚分割 するの二つの案が考えられる。  法律上、当然離婚分割する、離婚時に婚姻期間中の夫婦の賃金額を各月ごとに合算し てその2分の1を夫婦それぞれの各月の賃金とみなして、老齢厚生年金額を計算すると いうものです。  その問題点としては、当事者の合意なくして法律上当然年金権を分割することが認め られるかどうか。年金保険法上合意を要するとした場合であって、夫婦が合意しなかっ た場合には裁判所を関与させる必要があるのかないのか、そういう問題があります。  (2)の財産分与による離婚分割ということですが、そこに参考として横浜地裁相模原支 部の判決を掲げてあります。扶養的財産分与として、夫と妻の年金の差額の4割に相当 する16万円、(この16万円というのは高いのですが、企業年金とかそういうものも含ん でいます。)を存命中妻に支払うよう命じた。これは公的年金の扶養的財産分与として は初めての判決ではないかと思います。  民法のルールを活用するということですが、ただ、この方法では、夫が分与して、直 ちに死亡すれば年金権は消滅して妻は年金がもらえなくなりますので何らかの手当てが 必要かなと思います。  それから民法の財産分与の制度だけ十分ではないので、年金保険者が分割支給するよ うにするとか、あるいは年金権の譲渡禁止規定・差押禁止規定の適用除外の法改正が必 要ではないかと思います。  最後の4)ですが、配偶者加算など制度については第3号制度の改正いかんによって は変わってくる。  最後にこういういろんな代替案がありますが、私の考えはどうかということが必ず問 われると思います。それについては、資料編の3ページの日経の「経済教室」にその当 時書いた私の考えを紹介します。1つは年収の 130万円、就労時間の4分の3の基準を 引き下げるという提案をしております。  2つ目としては、育児休業中の保険料免除、現在は1年ですけれども、これを3年程 度に延ばす。  3つ目としては、中長期的には離婚分割というのを考えていく必要があるのではない か、そういうことをこの当時は考えておりました。  以上です。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。それでは、今の堀委員の発表に何かご質問、ご意見 ありますでしょうか。 ○住田委員  いろいろな制度の考え方を整理していただいたので非常に、これをもって今後議論す るときに、私は頭の整理ができたと思いまして、その点については感謝申し上げたいと 思います。  それぞれのところでどれを選ぶかというようなことで非常にお話ししやすくなったと 思いますので、この順序に基づいて私の意見を述べさせていただきたいと思いますが、 まず4ページの部分ですと、やはり私としては長期目標の次の抜本改革案としては、今 現在の男女の、特に女性の地位の状況に鑑みましたときには、ポツが一番私の気持ちに ぴったりくるかなという気がしております。ただ、これに対して一番たくさんの疑問 点、反対意見を書いておられますので、1つずつ申し上げていると多分きょうは時間が なくなると思いますが、少なくともこの4つ目の「夫婦別産制との関係」はということ であれば、計算の根拠としてこういう考え方はいけるというのを私は今までもお答えし ていたつもりです。ただ、それができるということを言っているだけであって、妥当か 相当か国民意識に沿うかどうかというのは次のレベルの問題として考えたいと思いま す。  これはできるかできないか、可否と相当かどうかで、当否の問題を今まではかなりご っちゃにされてきたきらいがございますけれども、少なくともできるという部分につい て、法律上、民法上問題がないというレベルでは、今までの問題については私自身お答 えしたつもりですし、多分法律学者、これから意見聞かれたら、私に近い意見を言って くださる方が増えてくるのではないかと思っております。  次の問題の5ページのところで、どれに一番近いかなと思って、これはポツを私はと れるのではないかと思います。3号で今一番の問題は支払っていないのに給付だけはし っかり受けることに対するいろいろな不公平感だと思います。支払っていないというこ とに対して、いや、支払っているというふうな堀委員のこのご見解を見たのですけれど も、やはり支払っているというからには形式的にも実質的にも、経済行為、法律行為が なくてはならないわけですけれども、今の支払っている根拠というのは、夫(被保険 者)が支払った後、プールされたものが基礎年金として支払われると。それが妻の分も 支払っているというような理屈につながっているのですが、妻の分として支払っている という形式的な名義がまずありませんし、妻の分として上乗せした部分がありませんか ら、これは経済的にも法律的にも社会的に見ても、支払ったというのは詭弁であろうと いうふうに考えております。  ですから、それに対してまず支払っていないということは明確にして頂きたい。その 上で支払うことができない、支払い能力がない、負担能力がないということがこれまで の3号保険問題の大前提になっていたと思いますけれども、いや、実は、負担能力はあ るというのが、これまで私が何回も申し上げてきた理屈でございます。  そこで支払おうと。支払うことができるので支払うときにどうするかというときに付 加保険料案のポツに一番私は魅力を感じることなんですけれども、そのときに問題とさ れました、よくおっしゃっていましたのが4ポツだと思います。「現在の応能負担に応 益負担を加味するため矛盾が生ずる」ということなんですが、特にこの「*」印で、こ れはおかしいじゃないかとおっしゃっているわけです。保険料の方が、片働き世帯に今 度は重くなるのではないか、そういうご批判だと思います。  これに対して、私は経済学者でありませんので、ぜひそこら辺、経済学者の先生に教 えていただきたいのですけれども、片働きの場合には帰属所得を発生させているのでは ないか。帰属所得といいますのは、例えば家事、育児等、共働きですと外注していま す。その費用が、共働きだと発生していますが、片働きの場合は払わなくて済んでいる という、そういう経済的メリットが生じていると。だからこそ保険料が若干高くなって もそれはやむを得ないのではないか。わかりやすく言いますと、専業主婦の妻の家事労 働を家庭内では有償評価することにつながって、そこが保険料として若干重くなっても やむを得ないのではないかという理屈につなげたいというふうに思っているわけです。 ですから、ここで「矛盾」と書いてありますけれど、社会的、経済的に見ても、合理的 な考え方になるのではないかというところを私としては考えております。  その次の逆進的になるということですけれども、一般的に片働き世帯の方が世帯の所 得は高い、やはり専業主婦でいられるところは、今はともかくとして、これからはかな り豊かな世帯になってくるかと思いますので、そこら辺、逆進的になるといいまして も、下の部分、どうしても低所得者の部分については減額するなり免除するなりのセー フティネットを考えれば、大きなところでは問題は生じないのではないかなというふう に思っております。  それから、給付サイドでの解決ということが、次の6ページの問題になるかと思いま す。これについて、今どれがというような気持ちは持っておりませんが、給付サイドで 一番考えなくてはいけないのは、世帯単位か個人単位かのときに、私は個人単位の受給 権の確立ではないかと考えております。最初に1ページの一番下の行に「第3号の保険 料を夫の賃金から天引きする案、賃金分割案等は、世帯単位の考え」と書いてありま す。確かに負担の部分で世帯単位とみられる考え方を採るとしても、個人の年金権の確 立の点から、給付サイドではぜひ個人単位の考え方をとっていただきたい。  たまたま共働きで過剰給付の場合があるかもしれませんけれども、それは今まで働い てきて支払ってきたその当然の結果で、見返りではないかということと、それから、こ れはライフスタイルを考える検討会ですので大事なことだと思うのですが、今後は単身 者世帯が増えるだろうということ、老夫婦が常に同じ世帯に住んでいる可能性は少なく なってくるだろう。いろんな意味で別居する、病院に入る、それぞれが別のところで施 設に入るとか、そういうことが非常に増えてくる。  逆に高齢者人口の増加に伴って集合住宅というのも増えてくるのではないかと思いま す。そうすると世帯単位の考え方の生活費が切り詰められるのではないかという発想は やめて、要するに個人でまず最低限必要な部分を持って、そしてたくさんの方が一緒に 住まうことによって、それぞれの生活費を合理的に切り詰めていくような、そういう自 助努力によることをこれからの高齢化社会というのを考えた方がいいのではないか。 コーポラティブハウスとか、そういうものは、私は非常に魅力的な制度だと考えており ますので。  そういう意味でも給付における個人単位化というのが非常に重要で、これは離婚時の 分割等にもつながる考え方ではないかと思っています。ちょっと長くなりました。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。堀委員何かありますか、ご意見。 ○堀委員  ご意見だということで承りたいんですが、1〜2疑問点がありますので、まず帰属所 得の議論なのですが、これは片働きだけではなくて共働きもあるんですね。片働きだけ 帰属所得に保険料を課すというのはどういうことなのか。帰属所得というのはあくまで も観念的というのか、現金があるわけではないので、その部分について保険料を課すと なると、例えば帰属家賃に保険料を課すべきだということにもなる。あるいは失業者は 暇がいっぱいあって帰属所得があるから、それに保険料を課すとか、そういうことにも なりかねない。帰属所得については理論的にはあるのですが、制度にのせるのはなかな か難しいというような感じがします。  付加保険料案に賛成ということですが、医療保険についてはどうされるか。例えば5 人世帯は1人世帯の5倍の健康保険料を払うようにするのか。  6ページの「給付サイドで解決」についてですが、これは第3号被保険者についての 問題ですので、既に個人単位になっています。給付について世帯単位になっているのは 2階部分です。 ○袖井座長  よろしいですか。 ○下村委員  堀さんのコメントが日経記事で総括されているというふうにおっしゃっていますので ちょっとお伺いしますけれども、「『専業』優遇の批判当たらず」と書いてあります ね。しかも慶應の樋口さんの研究によれば、パートの女性は賃金で就労を抑制している というふうに書いてあるところを取り上げていらっしゃいますけれども、働いて社会保 障費を払って、やはり自立的に生きていきたいという賃金に無関係で働かざるを得ない 女性も非常に多いわけでして、それも一理ありますけれども、パートの女性は賃金だけ で就労抑制しているのではないということですよね。  しかし、もしこれであれば、恵まれた立場の男性を持っている専業主婦が働いている ような専業主婦の優遇というところに行くのかなというふうにここでは私は感じ取れる わけですね。この間も樋口さんがおっしゃっていましたけれども、「ダグラスアリサワ の法則」ですか、そういったどうしてもパートでしか働けない方と、そういう恵まれた 専業主婦の働くパートの内実も違いますから、やはり専業主婦の批判の中には賃金だけ で抑制しているというふうなところだけをお取り上げになるのはどうかなというふうに 思っておりますが、いかがでしょうか。 ○袖井座長  何かありますか、どうぞ。 ○堀委員  ちょっとよくわからなかったので、すみません、もう一度お願いします。 ○下村委員  専業主婦の優遇の批判は当たらないというふうにここには書いてございます。働く女 性は就労時間を調整するだけではなく、賃金で時間を調整して働くということをおっし ゃっていますよね。でも賃金を結局抑制しなければ、扶養から外れるという心配で賃金 を抑制しているという、恵まれた主婦層もパートでやっているという方いらっしゃいま すよね。その辺はおわかりいただけましたでしょうか。  必ずしも専業主婦が優遇されているというふうな批判のものの中には、そうした恵ま れた専業主婦だけではなくて、もう少し賃金を限界超えてでも働かざるを得ない低い所 得の人たちもいるということですね。 ○堀委員  要するに 130万円を超えて働かざるを得ない人もいて、その人は保険料を払わざるを 得ないということでしょうか。 ○下村委員 ですから、それが専業主婦を優遇しているという批判には当たらないということをお っしゃっているところが私はよくわからないんです。パート女性の中には、そうした賃 金だけで就労調整しているというわけではないということを言いたいわけですか。 ○堀委員 ここで言っているのは、130 万円という基準は、経済的には2つのマイナスの影響を 与えるということです。1つはパートの時間当たり賃金を抑制するのではないかという ことです。2つ目としては、 130万円を超えて働くのを抑制するという就業時間へのマ イナスの影響です。  樋口さんが言っているのは、時間当たり賃金を抑制する効果は余りないということで す。5%程度にすぎないと言っています。問題となるのは就業時間の調整でそこが問題 となると私は言っているわけです。樋口さんの研究は第3号制度による賃金抑制の効果 は高くはない、そこを引用しているだけです。 ○袖井座長 よろしいですか。それではほかに何か、駒村さん。 ○駒村委員 住田先生から、経済学者はどう思うのかということで、私と永瀬さん、翁さんがいる わけで、仮に2つのカップルがいて、資産とか子どもがともに同じ条件であったと。子 どもさんがいないという条件で、片方のカップルが共働きを選んで、片方のカップルが 専業主婦を選んでいるということは、やはり専業主婦を選んだからにはそれなりの賃金 を犠牲にしてもいいだけの帰属所得が存在しているのだというふうに私は理解するので すけれども。 ○堀委員  そこは経済学者と決定的に違うところで、結婚した女性が働くかどうかは仕事と家事 の両立といったことと関係する。このことは旧労働省もそのように分析しています。ま た、育児後の女性には雇用機会がそもそもない。要するに就業はお金だけの問題ではな いのではないか。私の「年金制度の再構築」をよく読んでいただければ雇用慣行あるい は家事、育児をするという社会慣行とか、そういったことが働くか働かないかに影響を 与えていることがわかると思います。 ○住田委員  すいません、論点がずれたので、私が申し上げたかったのは、片働き世帯の場合には はるかに共働き世帯よりも帰属所得が大きく発生しているので、保険料の負担も大きく してよろしいのではないか。要するにこれは矛盾というよりも当然の結果ではないか と。消極的に払わなくて済んだという経済的なメリットがある以上は、それについては 共働き世帯より片働き世帯の方が全体として経済的な大きな利益を享受しているので、 保険料も応能負担というレベルでいっても高くなってもやむを得ないのではないか、そ ういうことで矛盾ではないというふうに申し上げたんです。  もっとはっきり言いますと、私は子ども2人のために、あるときには、2年間ぐらい は、私の毎月のお給料は全部消えてました。ボーナスが若干残っただけです。やはり共 働きはそのぐらいの経済的な費用を使っているわけでして、専業主婦の場合はそれは使 わなくて済むという意味では数字からしてもきちんとしたその差は出るはずなので、そ の分を保険料に少し考えて専業主婦の世帯はその部分を負担していただければ非常によ ろしいのではないかということを言いたかったわけです。 ○袖井座長  何か、永瀬さんどうぞ。 ○永瀬委員  1つは今の話の続きで、もう一つは質問なんです。今の話の続き、『人口学研究』に 今月号で出た私のつまらない論文ですが、「家計調査」を用いて分析しますと、外食費 を含めた食費シェアで見ると共働きの場合は4から10%、食費シェアが上がることがわ かります。つまり4から10%ぐらい貧しくなっている、すなわち食費からみた就業コス トがかかっているというのが共働き世帯の共働きのコストだと家計調査からの分析で言 えるという実証例がある。これが1つでございます。ただし外食費を含めた場合ですの で、外食は娯楽だというのだったら違うかもしれません。  あと、もう一つ、質問の方は、遺族年金については、先ほど堀委員は、特にどれがい いというコメントはなさらなかったのですけれども、遺族年金については掛け捨てとい うことがよく言われていますけれども、2)のポツ案ということにすると、それがなく なるということでしょうか。ポツの夫婦合わせた分の5分の3というのです。 ○袖井座長  6ページですね。 ○永瀬委員  はい、6ページのポツです。よく言われているのが、例えば年金白書などにも書いて ありますけれども、共働きで夫婦それぞれ20万、20万の世帯でも、片働きで40万の世帯 でも年金は同じだよというふうに書いてあるけど、実は現状では遺族年金になると変わ ってくるということです。 ○堀委員  いわゆる掛け捨ての問題はなくなります。夫婦の老齢厚生年金の合計額の5分の3で すから、必ず自分の老齢厚生年金はいかされる。ただ、5分の3ですから満額ではな い。 ○永瀬委員  報酬比例部分の5分の3。それでこの中では、堀委員としてはこのポツ案を一番とい うことでしょうか。 ○堀委員  私は最後に言いましたのは、離婚分割に賛成ということです。これは遺族年金の問題 ですね。 ○永瀬委員  遺族年金。 ○堀委員  遺族年金の解決法というのはいろんなのがある。抜本改革案とかそういうのがあるの ですが、遺族年金についてはこの案は1つの解決法だと思います。 ○袖井座長  ついでに、私も6ページのところで、堀さんにお聞きしたいのですが、2)のポツの 再婚による遺族年金失権見直し案というのは、ですから老齢の場合には再婚してもその まま遺族年金持っていられる、そういうご提案ですか。 ○堀委員  そうです。だから、老夫婦で片一方が死んで再婚すると遺族年金がなくなっちゃうの で再婚できないと、こういう問題の指摘がありましたので、それでは再婚しても失権し ないようにしてもいいのではないか。ただ、その場合、過剰給付になる場合があるし、 老後になって、何回も再婚すると、どんどん遺族年金額が膨れ上がる、そういう問題も あります。 ○袖井座長  ちょっとそういうことがある。もう一度、次の人というと、どんどん積み重なってい くという問題ですね。  ほかにどなたかご質問、ご意見とかありますでしょうか。  私もこの日経のは余りちゃんとよく読んでないのですが、堀先生の一番の提案という のは、微調整という感じですか。現在の制度の。 ○堀委員  これも繰り返して言っていることなんですが、今 1,100万人強が第3号制度の適用を 受けている。社会全体としても女性が正規職員として働ける、そういう状況があればい いですが、家事負担もまだ多いという状況の中で抜本的に解決していくのはまだ時期が 早いのではないか。もう少し第3号の数が減っていけば、第3号制度うのはなくしても いいかもわかりません。 基本的なことはこれから高齢者や女性にもどんどん社会に参画してもらわなければい けないわけで、そういう要請を考えると、少し第3号の範囲を狭めていくことが考えら れる。そこをゆるやかな形でやっていったらどうかと私は思います。 ○袖井座長 大体非常にアバウトな感じで、どのぐらいの比率になったらいけそうですか、3号と 2号の比率が。 ○堀委員  それはとても私には分かりません。政治の問題だと思います。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。何かほかにご意見、どうぞ、中田さん。 ○中田委員  1点だけお伺いしたいのですが、堀先生がお話になったのは、公的年金についてなの ですが、公的年金についていくらか変えたとした場合、企業年金の方はどういうふうに されたらいいとお考えなんでしょうか。そのまま反映させようとしても、実際にはかな り難しいと思います。ただ、今は公的年金だけで年金というのは考えにくくて、企業年 金まで入れないと全体がわからないと思うのですが、その点はどうなんでしょうか。 ○堀委員  私は公的年金と私的年金は全く違うものだと思っています。公的年金は基本的には国 家が国民の老後保障のためにやる。個人年金も企業年金も、基本的性格は貯蓄だと思う んですね。個人年金は自分で貯蓄する、企業年金は賃金の後払いという考え方もありま すが、いずれにしても企業が、あるいは従業員が拠出して積み立てて老後に備えるとい うものですから、これはまさに貯蓄です。貯蓄だとすれば、分割ということも容易です し、第3号のような制度も考える必要はない。  ただ、先ほど連生年金の話がありましたけれども、連生年金というのは、夫が死んで も妻は年金を全額もらうというものですが、それはちょっとどうかなという感じはしま す。ただ、いずれにしても貯蓄ですから、夫婦でいかように、あるいは企業がいかよう に制度設計するのも自由だと私は思います。 ○住田委員  先ほど袖井座長がどのぐらいの人数の割合ができれば、3号について改正できるかと おっしゃったんですけど、私は時期的にある程度明言して、これからの女性はこの何年 後にはこうなるので、この年代のこういう方はこういうふうな将来設計をするのがよろ しいのではないかというようなことを今からやらないと、次の改正に間に合わないので はないかと思っているんですね。ですから、私より上の世代、50代以上になりますと、 ライフスタイルといっても選択の余地がかなり狭まっておりますので、余りそこに対し て急な要求は私はできないと思っております。  ただ、若い方が、これからだんなさんがリストラに遭ったりとか場合によっては離婚 も増えたりとかいうような形でだんなさんだけに依存できないということが見えてきて いるときには、女性としても経済的な自立も必要な部分があるという覚悟をしていただ くためにも、経過的な時期を見て、何年後にこうするとか、そういうふうな方向性を少 なくともこの検討会では出しておいた方がよろしいのではないかという気がしておりま す。 ○翁委員  私も今の住田委員の意見と同じでございまして、やはり方向として第3号遺族年金の 見直しというのはそのとおりだと思います。かなり差し迫った少子高齢化、そして年金 制度の要請として、女性が働いていくということが、年金制度そのものの要請として出 てきているわけですから、やはりある程度、時期を明示するような形で、こういった3 号の見直しというのを打ち出していくということが非常に重要なのではないかと感じま す。  それから、改革に当たっての原則ということで、堀先生がお書きになったように、ま ず最優先課題はナショナルミニマムとしての生活の保障であり、そして公平性の確保で はあるんですけれども、公的年金制度が労働力の供給とか、そういったことに対して中 立的であるということは、こういった経済情勢の大きな変化の中でますます必要な要請 になってきていると思いますので、この点も非常に重視して改革を考えるべきだと思い ます。  堀先生の日経の「経済教室」の中などには、例えば育児休業中の年金保険料の免除と か、そういった対応で女性の就労支援とか少子化対応をするべきではないかというふう にお書きになっていて、これは方向としてはリーズナブルなような印象を受けるのです けれども、ただ、少子化対応は少子化対応として、そのポリシーの目的に合った形の政 策をとるというのが一番本質的な解決だと私は思いますので、年金制度で少子化政策を 解決していこうというふうに無理に考えるということではなくて、少子化対応には少子 化対応で、とにかく一番ベストなポリシーを割り当てていくという考え方の方がいいの ではないかというように思います。 ○袖井座長  何か堀委員ありますか。よろしいですか。 ○堀委員  はい。 ○袖井座長  そろそろ時間も参りましたけれども、何か一言、この際とか、どうぞ。 ○堀岡委員  住田委員がおっしゃられたこともよくわかりますし、これからの社会というのは理解 できるのですが、実感としてきょう堀先生がおっしゃった長期目標達成の条件、我々企 業は門戸を開放していると思っていますが、雇用の機会、賃金等の雇用条件、雇用慣行 あるいは家族的な社会、責任等に差のない社会の実現については、現場にいて実態は大 変厳しいと考えます。男性と女性の働き方の違いもありますし、先生がおっしゃるよう に、社会経済の変革が必要だと思います。日本の社会が流動性も含めて、もう少し意識 も変わっていかないと、特に女性の考え方とか、そういうものも少し変わっていかない といけないと思います。夫婦分割といっても、私なんかもそうですけど、分割したらか えっていいなと思うぐらい家庭の中ではいろいろあると思うんですね。そういう実感か らすると、きょうの堀先生の話はかなり現実的で、企業にいる者としては理解できま す。  ただ、住田先生がおっしゃるような社会に向けて準備を進めていかなければいけない というのはよく理解するのですが、本来持っている公的年金制度の抜本的な改革の方が 少し気になるなというのが実感です。  それと企業年金について、確定給付から確定拠出とありますが、確定拠出にしても、 第3号の方は拠出できないような仕組みになっています。公的年金と私的年金を分割し て考えるのではなく、セットで考えていかないと。結局公的年金だけでは生活できない のではないかと思います。 ○袖井座長  どうもありがとうございました。変わっていくのを待っているか、変えようとするの か、男性対女性みたいな感じになってしまいましたが、きょうは時間も来ましたので、 この辺で意見交換を終わらせていただきます。  それで、今回で委員の皆さんからのレポートを終了いたしまして、それから有識者か らのヒアリングも今回で終わりということにさせていただきます。  次回以降の検討会の予定について、事務局から説明よろしくお願いいたします。 ○中原企画官  次回は既にご案内申し上げておりますが、7月26日、今月もう一度お願いしたいとい うことで予定しております。これまでの議論の中でご要望のございました外国の制度に おける配偶者給付、年金分割などにつきまして、事務局で調査できたものを取りまとめ てレポートし、ご討議いただきたいというふうに考えております。  また、次々回以降の日程につきましては、9月から11月にかけての日程調整をさせて いただきたく思っております。お配りしております記入用紙にご都合記入いただいて、 事務局あてにお届けいただけますようお願い申し上げます。今後の回数、内容等につき ましては、座長、副座長と相談の上、調整をさせていただきます。なるべく早く決定し てご連絡申し上げたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。 ○袖井座長  それでは、本日の検討会はこれで終了いたします。どうもありがとうございました。                                   −以 上− (照会先)  厚生労働省年金局年金課   課長補佐     度山   企画法令第3係長 三浦 電話03-5253-1111(内3338) 03-3591-1013(夜 間)