厚生労働省 医薬局 審査管理課 化学物質安全対策室
内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第11回)議事次第
日時 | : | 平成13年7月31日(火) 13:00〜17:30 |
於 | : | 中央合同庁舎第5号館17階厚生労働省専用第18〜20会議室 |
1 開会 | |
2 前回議事録の確認 | |
3 議題 | (1)作業班報告と質疑 ・試験スキーム検討 ・採取・分析法検討 ・低用量問題対策 ・暴露疫学等調査 ・リスクコミュニケーション対策 (2)全体討論 (3)検討会中間報告書追補の作成について (4)その他 |
4 その他 | |
5 閉会 |
〔出席委員〕
伊東座長 | |||
青山委員 押尾委員 鈴木(勝)委員 寺尾委員 藤原委員 |
阿部委員 黒川委員 鈴木(継)委員 寺田委員 松尾委員 |
井上委員 櫻井委員 高杉委員 中澤委員 山崎委員 |
岩本委員 紫芝委員 津金委員 西原委員 和田委員 |
〔報告者〕
内山、神沼、菅野、関澤、牧野
〔事務局〕
宮島医薬局長、尾嵜食品保健部長、鶴田医薬担当審議官、池谷審査管理課長、山本化学物質安全対策室長、他課長補佐以下7名
〔オブザーバー〕
文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、水産庁
〔PC映写〕
これはいわゆるハイスループット・スクリーニング班において、その作業の位置付けを考えるためにずっと使ってまいりました図でありますが、流通している一般化学物質を含め、5万種類にのぼるとも言われる候補物質、あるいは試験すべき物質を相手にする場合に、in silico のスクリーニングを最初のステップとし、次に培養細胞を用いたレポーター試験などを用いた High Throughput Screening、それから動物を使いました in vivo 試験によって絞り込みまして、リスク評価のためのいわゆる詳細試験に供する物質の優先リストを作成します。
〔PC映写〕
この優先リスト作成は1998年に米国のEDSTACがまとめたレポートにある Tier Screening のストラテジーと共通するところがあります。ただし、このままの状態にしておきますと候補物質のリストだけが残ってしまいまして、いわゆる候補物質の店晒し状態ということが起こってしまうのではないかという危惧があります。そこで、それらが本当に有害作用を有するのか単なるホルモン作用で終わるのかというところをはっきりさせるための試験も同時に開発しなければならないだろうということで、このような流れ図を考えております。
この上段の3つの部分につきまして、詳しく御報告させていただきまして、さらに、そこから下の、優先リストができた後の事に関しての考え方の提案と申しますか、簡単なコメントをさせていただきます。
〔PC映写〕
ここでは、本当に有害かどうかという問題が重要でありますので、あらかじめ定義をはっきりさせると言う意味で、この様な用語を使っておりますが、これは、内分泌かく乱化学物質問題を受容体原性毒性という立場から考えようとするものです。まず、ホルモン活性のある化学物質を総称して、ホルモン様活性物質(HAA、ホルモナリー・アクティブ・エージェント)と定義します。このHAAのうち本当に有害な作用、adverse effect アドバース・エフェクトを示すものを内分泌かく乱化学物質として定義し、両者を頭の中できっちり区別しようと考えました。
この立場から言いますと、ホルモン作用というのは、通常は受容体を介する作用でありますから、内分泌かく乱化学物質というのは、受容体を介して毒性あるいはアドバース・エフェクトを発揮する物質というふうに定義され直されると考えます。そうしますと、既存の化学物質が例えば5万種類あったときに、そこからスクリーニングにかけて優先順位を付けるときに、現在用いている指標は、HAAとしての効果であり、そのランキングリストを作成するという作業になります。
それに対しまして、詳細試験というのは、ここから先の話でありまして、受容体原性毒性、有害性の有無を的確に示すような試験を行わなければならないということが問題となります。この「受容体原性毒性」というものが、正確に検出できるプロトコールが現在我々の手中にあるかというところが1つの問題点であります。現在、候補には、2世代試験などの繁殖試験がありますが、既知のエストロゲン、それもエストラジオールのような強力なものに対しても非常に感度が悪いということが以前からわかっておりましたので、その有効性が問われているところです。
〔PC映写〕
受容体原性毒性というのは本当にあるのかという簡単な例をご説明します。一番良い例はダイオキシンだと思います。ダイオキシン受容体をノックアウトしたマウスはダイオキシンに反応しません。つまり、体じゅうにダイオキシンが満ち満ちていても何も起こらないということです。野生型の動物がダイオキシン投与によって死ぬとしますと、それは受容体あるいは転写因子を介して何らかの遺伝子産物ができた上でのフェノタイプとして死に至る事であり、受容体原性毒性として非常に理解しやすい例になるわけです。但し、事故等による高濃度ダイオキシン暴露においてヒトが短期間に死亡した事例は報告されていません。そうしますと、エストロゲンの場合はどうかといいますと、エストロゲン受容体αノックアウトマウスというものがあります。この場合、DESの影響があらわれないとか子宮肥大反応はあらわれないということで、ダイオキシンの場合とアナロジーがあり、受容体原性毒性の考えが当てはまります。しかし、ダイオキシンの場合と決定的に違うのは何かといいますと、エストロゲンは体内に既にあって生理作用を営んでいるという点にあります。つまり有害作用と生理作用の区別がつきにくいことを意味し、ここに内分泌かく乱の問題の難しさがあるというふうにも考えられます。
〔PC映写〕
そういう立場からもう一回、教科書的なレベルに戻りまして、HAAはどこに作用し得るかをみますと、受容体がある、このフィードバックループの3カ所に作用し得るわけです。
〔PC映写〕
この3カ所、標的臓器とかで問題になるのは当然受容体そのもので、それと結合するかどうかであります。
〔PC映写〕
最初の段階の、in silico のシミュレーションのお話をいたしますが、これは医薬分子設計研究所、板井博士との共同研究として進めております。
〔PC映写〕
現時点におきましてACD(Available Chemical Directory)という、約20万化合物が含まれたデータベースがありまして、これのスクリーニングを2回ほど流しております。計算速度は結合様式推定に2〜3分/1ケミカル。結合自由エネルギーの推算に3〜4分ということで非常に早くスクリーニングできまして、20万を1週間ぐらいで計算可能です。この中から候補物質を釣り上げまして、検証はラットERαを導入した COS-1 細胞で検証しておりますが、陽性物質として約60物質がひっかかってまいりました。
〔PC映写〕
これはその中の一部ですが、エストロゲン作用に関して既知の官能基を含まない物質です。そういうものがとれてきておりまして、未知のものから候補物質あるいは可能性のあるものを釣り上げるという能力をさらに検証、改良中です。
〔PC映写〕
次に、これは無細胞 in vitro の系ですが、表面プラズモン共鳴なる原理を用いまして、分子間の相互作用をリアルタイムで見ることのできる機械を用いた系の研究であります。この場合、ERE、すなわちエストロゲン応答配列を含みますDNA断片と ERα との相互作用がリガンド依存性にどう変わるかということを指標にしまして、その化学物質がエストロジェン活性物質であるかどうかを見るものであります。
〔PC映写〕
これは横軸が時間、縦軸が結合であります。これはDNA断片に ER 分子が結合し、解離する様子を示しており、微妙な差がリガンドに応じて見られますが、一言で言いますと、エストロゲンアゴニストの結合したER分子は早く結合し、離れやすいという特徴を有していることを示しています。
〔PC映写〕
これに対して、抗エストロジェン物質であります ICI-182708 が結合した ER 分子は、さらに早く結合するようになるのですが、ERE からの解離は非常に遅くなっていることが示されます。この傾向は、タモキシフェンでも認められ、抗エストロジェン物質の特長と想定されます。この様な、結合と解離のデータを蓄積することにより、未知の化合物のエストロジェン・抗エストロジェン作用についての予測ができるのでないかと期待しております。
〔PC映写〕
今の話は、この図の左側の ERE と ER との結合解離の話でありましたが、この右の系におきましては、ER と co-factor との分子間相互作用も見ておりまして、この場合アゴニストが来ますと、co-factor 関連の部分との結合が急速に進みますが、抗エストロゲンですとこの結合が進みません。ですから全くの無細胞系なのでありますが、レポーターアッセイに近い内容の判別が出来ていまして、なおかつその様なデータの蓄積が非常にスピーディにできる可能性が出てまいりました。
〔PC映写〕
次がHela細胞を用いましたレポーターアッセイで、これをロボット化して、ハイスループット・スクリーニング化するという計画であります。今までに厚生省関係で 177 物質の測定がヒトERα の系で終わりました。その中で 29 のアゴニストが見つかりました。ちなみにこの系は、毎週5日間稼動するとした場合、理論上は検体となる物質さえあれば 120 物質/週のスピードでこなすことができます。
〔PC映写〕
これは化評研(化学物質評価研究機構)との共同研究で、METI(経済産業省)と一緒にスタートしたものでありますが、ロボット自体は化評研にあります。96 ウェルプレートに細胞を培養し検体をトリプリケートで7桁の濃度範囲にて測定いたします。
〔PC映写〕
このデータに関しましては、別添として委員の方々には全部お渡ししてあります。
〔PC映写〕
では、in silico シミュレーションあるいはQSAR予測と表面プラズモン共鳴原理による分子間相互作用をリアルタイムで見る系と、今申し上げました細胞を用いたレポーターの系、以上3つのデータにどの程度の相関があるかということを、3つを比較し得た現在までのデータをもとに御説明いたします。
〔PC映写〕
表面プラズモン共鳴の系の持つ原理的特性として、エストラジオールに近い強さのものに関しましては ER の結合部位をすべて占領してしまうため、ここで見られるように値が振り切れてしまいます。しかし、一番重要な低活性物質の領域では細胞株を用いた High Throughput Screening のデータとの間に直線性がとれております。
〔PC映写〕
次に in silico シミュレーション、細胞株を用いた High Throughput Screening、および表面プラズモン共鳴によるデータの関係をお示しします。一つのグラフにプロットしますとこのようになります。活性の高い物質については、先ほど申しました理由から表面プラズモン共鳴のデータは外れるのでありますが、中くらいのものに関しましては、絶対値はずれるものの、ほぼ直線に乗っており、平行した線に乗るということから、この3つの系はお互いにデータを確かめ合う関係にあるということは確認できました。また、微妙にデータがずれている点の解釈ですが、多数の物質のデータをクラスター解析していけば、リガンド固有の違いがある傾向をもって分類できる可能性を考えております。クラスター解析に持っていくことによって、更に予測が高まるといったインフォーマティックスとしての使い方が期待できると考えております。
〔PC映写〕
次に、生体を用いたアッセイ系について述べます。このアッセイは、先ほどお示した内分泌系フィードバックループの1カ所を壊してやったときに、系の恒常性が維持されなくなり、外来性のホルモン刺激に対して敏感に反応するようになることを利用したものです。
〔PC映写〕
その1つが子宮肥大試験でありまして、卵巣を摘出することによりフィードバックが効かない状態にした動物において、外来性のエトロゲンに対して高感度に子宮が腫大するところを見るものです。雄の動物では、精巣を摘出することでフィードバックを効かなくさせた上で、例えば前立腺を指標に高感度にアンドロジェンあるいは抗アンドロジェン作用を観測するという系で、ハーシュバーガー試験と言われるものであります。
〔PC映写〕
これも別添に多少の資料を掲載しております。これはOECDの子宮肥大試験のプロトコールをつくる段階で、日本の厚生省がリードラボとして参画しておりました都合上手元にすべてのデータがあるのでその一部を持ってまいりましたが、このようにきれいに陽性対照物質についての用量作用曲線がとれました。
〔PC映写〕
これは第2段階としましてエストロジェン活性の弱い5つの物質を世界約20ラボで分担して行ったときのすべてのデータをプロットしたものです。1個1個小さくて申し訳ありません。ゼロ用量での値がずれていたりしますが、一応うまくいったというところで、今まとめの作業に入っております。さらに、テストガイドライン作成にはいるところまでいって来ております。
〔PC映写〕
今までの話をまとめさせていただきますと、内分泌かく乱化学物質問題を受容体原性毒性と見た場合に、アンドロジェン系とエストロジェン系についてではありますが、その作用濃度域はナチュラルリガンドの体内濃度で言いますと、大体アンドロジェン系で10-6 M から10-7 M 付近、エストロジェンの系では10-9 M から10-10 M 付近で作用しており、子宮肥大試験の感度は大体この程度の濃度域をカバーするものです。ハーシュバーガー試験はここら辺のアンドロジェン系作動濃度域をカバーしています。そうしますと、今までの通常の毒性試験でのNOEL(無作用量)が大体ここのアンドロジェン系作動濃度域になります。ごらんの通り今までの通常の毒性試験でのその下の空白のところのエストロジェン系作動濃度域を放置していいかどうか、今までどおりの試験で、内分泌かく乱化学物質問題に対応しきれるのかという重要な問題を提起していると考えます。
〔PC映写〕
受容体原性毒性と今までの毒性の違いは何か、もう一度確認してみますと、特に核内受容体はリダンダンシーが高いこと、抗原抗体反応とは違って、幅広い化合物を受け入れて強弱はあるもののシグナルが流れ得るというところが1つ問題でありす。次にシグナル伝達の入り口であるので、化合物が受容体に結合したら、そこから先は化学物質自体は毒性発現の現場に行く必要がない、信号だけ流れればよいということでありますので、いわゆる「低用量問題」や用量作用曲線が今までのような単調関数で無い可能性の問題をどうしても論議せざるを得ません。また、胎児の発生を考えますと、同じ受容体でありながら、異なった時期に異なった臓器で異なった仕事を受け持っていることが知られており、胎児期の高感受性期、いわゆる「ウインドウ」問題に対する研究が必要であると考えます。
〔PC映写〕
今後の展開を考えますと、従来の毒性学の出発点であった症状の有無にかかわらずデータが蓄積できるDNAマイクロアレーを使った研究が挙げられます。
〔PC映写〕
そういうものでのデータとりも視野に入れ、全体の流れを考えていく時期に来ているのではないかと考えておりまして、そういう意味で、この図の縦のところにトキシコゲノミクスを縦断的に取り入れました。結局詳細試験というものが受容体原性毒性を本当に評価し得るものとするための1つの研究の切り口として遺伝子発現のプロファイリングを、症状が「出ている」、「出てない」とは一旦切り離して見てみるというストラテジーも存在するのではないか、そのような考えを持っている次第であります。そういうことで、スクリーニングの段階といたしまして、一応リストが作れる手段が出来上がった。あとはファインチューニングをすればよいことと、HAAとしてのランキングのみならず、アゴニスト・アンタゴニストの区別を含む生体影響メカニズム予測に発展させることを行う。ただし、リストができたところで放って置きますと、候補物質の店晒し状態になってしまいますので、詳細試験の方にそのリストを順次バトンタッチして、ここを解決しなければならないという段階に来たのではないかと考えております。
以上であります。
〔OHP映写〕
この作業班の内容でございますけれども、昨年度、厚生労働省の担当の方々と協議いたしまして、この研究班でまとめていきたい内容は、内分泌かく乱化学物質の標準的な分析法のガイドラインを作成するということでございます。1つは、共通する事項をまとめた一般的なガイドラインと個別の試験法の作成です。ビスフェノールAとノニルフェノールとフタル酸エステル類、この3項目について標準的な分析法を、特に食品と生体試料について作成していただきたいという御要望でございます。
2点目は、今もお話出ましたように、動物実験のデータに飼育環境の影響があるのではないかということで、実験動物の飼育環境を調査していただきたいということであります。
〔OHP映写〕
この作業班でございますが、今日いらっしゃっております東海大の牧野先生の研究班で分析を担当されている地方の衛生研究所の先生方と、私が主任研究者をしておりますプロジェクトで分析をお願いしている地方衛生研究所の先生方にお入りいただきまして、分析法の調査研究から始めました。
〔OHP映写〕
内分泌かく乱化学物質の分析にかけましては、平成10年度の補正予算のときから、私ども参画させていただきまして、現在も牧野先生あるいは私の研究班でこの分析は担当させていただいております。この内分泌かく乱化学物質の分析に関係する、私どもが今まで直面した問題、今後解決していかなければいけない問題をまとめてみますと、まずデータの信頼性が極めて重要であるということです。これは社会的に影響が非常に大きいということであります。データがひとり歩きしてしまう傾向にあるということです。データのばらつきが問題となります。特に低濃度のところでの評価ということになりますと非常に微量分析が要求されます。そのデータのばらつきを考えていきますと、1つはコンタミネーション。今回厚生労働省から要請のありました3品目も実は非常に測定環境からコンタミしてくるということが大きな問題でありまして、加えてサンプリングの段階、試料を保存しておく段階、いずれの段階におきましても汚染のおそれがあるということであります。
それから、いろんな方々が分析法を発表しているのですけれども、そのバリデーションというものはほとんどなされておりません。したがいまして、こういったものを考えていく上で分析法のバリデーションというものは非常に重要だと考えております。
それから、複数の試験研究機関によって同一のサンプルを分析するようなクロスチェックによってその方法もしくはデータの信頼性を確保する必要があるだろうと思っております。食品の方は、食品分析GLPというものが走っておりますが、この考え方を入れていく必要があるのではないかと考えています。
生体試料の分析、特にヒトの血液、母乳の分析に当たっては、いわゆるインフォームド・コンセントをとらないといけないということで、これも非常に私ども分析する方にとっては大きな越えなければいけない壁ということになります。
それから、生体試料の場合、非常にサンプル量が少ないという特徴があります。そのために高感度で、しかも一斉に分析できるような方法を構築していくことが望ましいということであります。
これはダイオキシンで見られるのですが、使用した理化学器材あるいは試薬類の廃棄というものが実は非常に大きな問題になってきております。この分析をするにはかなり熟練した分析者が必要であるということで、そういう人の育成も非常に大きな問題ではないかと思っております。非常に微量のものを共存しているものの中からはからなければいけないということで、1つはクロマトグラフィを使う必要がございます。その微量のものを同定するということでは、いわゆる質量分析計と結合したようなハイブリットな分析法です。特にGC/MSあるいはLC/MS、最近ではLC/MS/MSといったような分析装置を導入する必要があるということであります。
それから、これはぜひ行政の方に要請していきたいのは、サンプルバンクというものを国レベルで構築していってほしいということがあります。これは例えば、今現在私たちが食べている食品や血液、母乳といったサンプルを10年、20年保存していくということが非常に大事で、これによって長期間の暴露評価が可能になるのではないかと思っております。
〔OHP映写〕
今申し上げましたように、内分泌かく乱化学物質の存在量は非常に微量と考えられます。この表は米国FDAの Dr. W. Horwitz がまとめられた図です。こういった精度管理とかデータの信頼性について仕事されている方なのですが、サンプル中の存在濃度がこのように低くなればなるほど施設間のばらつきは非常に大きくなってきます。例えばアフラトキシンですと、1 ppb というレベルでやりますと、大体1施設間のばらつきは ±40〜50% あるということになります。今のダイオキシンなどになりますと、ppt のこのレベルになりますので、彼のスケルからはもうはみ出てしまっているということで非常に低濃度のレベルの施設間のばらつきというのは大きくなってくるというのが一般的な考え方でございます。
〔OHP映写〕
先ほどコンタミネーションのお話を申し上げましたが、今回、生体試料と食品試料について検討していくに当たりまして、サンプリングの段階、例えば塩ビ製の手袋を用いますと、DEHPのような可塑剤が食品もしくは生体試料に移行してしまうということがございます。それを保管しておく容器、搬送するときの容器から混入してくるおそれがあるということであります。実際今度分析をする段階で使っている器具、試薬、水、測定環境、分析装置、そういったものから汚染されてくるというおそれがございます。あと、保存の容器というのも非常に大きな問題になってきます。その具体的な例を少し御紹介申し上げたいと思います。
〔OHP映写〕
実験室で使う精製水、蒸留水、こういったものでガラスの容器には入っているのですが、非常に微量のビスフェノールAとかノニルフェノールなどが出てくるものがございます。それから、局方の水などを分析しましても、これはプラスチックのボトルに入っているものがあるのですが、ビスフェノールAあるいはアルキルフェノール類が非常に微量ですけれども、含まれております。タップウォーターについても含むものがあるということで、我々が実験に使う水についても注意を払う必要があるということでございます。
〔OHP映写〕
最近は血液などのサンプル試料を分析装置にかける前に、試料調製するに私ども学生時代のときはカラムクロマトグラフィーを行っておりましたが、最近は solid phase extraction、いわゆる固相抽出という方法を行います。この固相抽出法はこういったプラスチック製の注射筒のようなものに、いわゆる充填剤と外筒管の部分、それを押さえているフィルターの部分、これらが実はいずれも高分子でできております。我々は血液中のビスフェノールAを測っているときにどうもデータがばらつく、その理由がどこにあるかと探っていったときに、1つはそれぞれの部分を分析してみますと、非常に微量ではありますが、ビスフェノールAが含有されている。超純水と称されて、私たちが実験に使っている水を分析しましても、ビスフェノールAは、先ほど申し上げたように大変微量でありますが入ってまいります。これはいずれもどこかの部分にポリカーボネートの製品が使われているのだろうと思います。このことはこの検討班で以前発表させていただきまして、今市販のこういった純水製造装置あるいは固相抽出はこの部分がガラスになっているとか、いわゆる分析メーカーの方でも改良を加えておりまして、こういった問題は非常になくなってまいりました。
〔OHP映写〕
これは血液バックに水、あるいは豚の血液を入れまして溶出するものを見たものですが、ここで見ていただきたいのはスチレンです。これは 20 日間発泡スチロールの容器に血液バックを入れて、低温で保存しますと、20 倍ぐらいスチレンが増えてまいります。これで言えることは、発泡スチロールの方からスチレンが血液バックを通過して血液中に入ったと考えられます。このようにサンプルの保存も非常に配慮する必要があると実感している次第です。
〔OHP映写〕
今回の作業班として作成しました分析法の一般的なガイドラインは、お手元の資料のたしか3だと思いますが、そこにまとめてございますので後で見ていただければと思います。要は当該の分析法の中で一番大事なところはサンプリングとサンプルの試料調製のところが大事であることです。それぞれのところで、後からトレースができるような記録を残すということも大切です。場合によっては標準サンプルを入れて分析するというようなことを明示しております。この作成書は食品分析GLPの方のガイドラインの資料を参考にして作成したものであります。ここには内分泌かく乱化学物質の分析をするに当たって、今申し上げてきたことを含めて注意してほしい内容をサマライズさせていただきました。
〔OHP映写〕
個別のビスフェノールAとノニルフェノール、フタル酸エステル類でありますが、分析を担当している先生方にとっては多分、この3つはできれば測定対象としたくない化学物質でありますが、厚生労働省から要請のありました3化合物はいずれもそういった物質であります。ある意味では一番分析が難しいものです。ビスフェノールAは、アセトンで食品中から抽出しまして、液、液分配でサンプルをクリーンアップします。そしてODSカートリッジでクリーンアップをかけて、誘導体化後、GC/MSで測定します。この方法は、食品衛生学雑誌に発表されているものを参考に、内容を整理させていただきました。
いろいろ文献を調査してみますと、食品の中のこういったものを測っている方法の中で、非常に信頼される方法が非常に少ないということが1つ。それから私たちも含めてそうなんですが、厚生科学研究あるいは環境省の報告書等を見ていきましたときに、いわゆる第三者が目を通して客観的に評価している報告をこのプロジェクトでは取り上げる方針をとりました。作業班としては、現段階で活字になっている分析法で、いわゆる学術雑誌に載っているものを参考にしようということです。食品に関しては、これも含めて後ほど御紹介する2つの分析法もすべて食品衛生学雑誌に載っているものを参考にしました。
〔OHP映写〕
ノニルフェノールも、これは実は非常に複数の成分から成っていて、測定も結構ややこしいのですけれども、エタノールで抽出してから液、液分配あるいはアルミナカートリッジやイオン交換カラムを通し、誘導体化してGC/MSで測るという方法を採用しています。
〔OHP映写〕
フタル酸のエステル類でありますが、これは最も今私たちが苦労している物質であります。我々の手を脱脂綿で拭きまして、アルコールで抽出しても薄層クロマトグラフィーで見れるくらいのフタル酸エステルを検出することができます。そういうことで空気をGC/MSに注入しても検出されてきます。水を注入しましても検出されてしまうということで、これはどうにもならない一番厄介なものです。この物質についてはアセトンで抽出後、液、液分配を2回ぐらい実施後、フロリジルカラムクロマトグラフィーでクリーンアップしてGC/MSで測るという方法でございます。
〔OHP映写〕
これも昨年、厚生労働省から要請のありましたいわゆる食品用の塩ビ製の手袋からDEHPが食品の方に高濃度で移行するということが報告されました。それについてクロスチェック的な研究をやってほしいということで5機関でやってみました。対象の食品は切り干し大根とコロッケとおむすびだったのですが、各機関が使っている分析装置もさまざまでありまして、方法論は同じではございません。この方法でやってみました。
〔OHP映写〕
御存じのようにDEHPというのは、脂溶性なものですから、有機溶媒の存在の大きいところで抽出されます。40% あるいは 20% という含量であります。これは重量%でありますので、手袋の 40% から 20% がDEHPということになります。これは消毒のために約 70% のアルコールを手にスプレーしてからこの食品に触るのですが、そのときに、これはおにぎりへの移行を見た例であります。手袋にスプレーしてからすぐ触りますと非常に高濃度で移行します。ところが 30 秒ほど置いてから触りますと、このようなバックグラウンドレベルでの移行ということであります。DEHPがどういう状態で手袋の中に存在しているかはよくわからないのですけれども、非常に抽出されやすい状況であると思われます。
同じようなことがコロッケについても、これは 40% という高濃度の手袋で1回目には余り出てきてないのですが、2回目つまりコロッケの油が手についた状態で別のコロッケに触れますと、このように濃度が上がってくるということで、脂溶性の環境というのが大きく寄与することになります。
〔OHP映写〕
これには4機関が参画しまして、おむすび、切り干し大根、コロッケに対して移行実験をやりました。アルコールで消毒したものについては非常に高濃度で移行していくということが出ました。また、各機関の分析データも非常に安定したデータがとれています。ごらんになってわかりますように、ppm のオーダーでございますので、我々としては、現時点ではこれは十分分析できるレベルと思います。
〔OHP映写〕
厚生労働省から、ヒトの血液や母乳の中にどのくらいあるのかということを前から要請されておりますが、いまだにまだ解決できておりません。これはその微量分析をするために血液や水や溶媒をクリーンアップするために食品の世界で使いますところの精油定量装置というものを用いました。ここにサンプル等を入れまして還流しますとDEHPがこのように上昇しますが、ここで冷却してやります。そうしますと、ここの部分に抽出溶媒としてトルエンが最もいいのですけれども、ここで非常に効率よく抽出できます。といいましても、この還流操作は約 8 時間やりませんと、フタル酸やエステル類をサンプルもしくは使用する水等から除くことができないという非常に手間のかかる方法であります。これを使いますと目的の微量分析はある程度可能になってくるということであります。
〔OHP映写〕
これはまだ全くの学会発表レベルの研究レベルでありますが、今オンラインで先ほどの固相抽出がカラムのかわりにこういった非常に小さなカートリッジになっておりまして、このカートリッジがオンラインでできるようなシステムが市販されています。
〔OHP映写〕
これは多分使用できる装置の中で最もハイレベルだと思いますが、2つのカートリッジを埋め込むことができます。したがいまして、例えばC−18、イオン交換といった分離モードの違うカートリッジを装着してオンラインでサンプル調製をしまして、この分析のカラムの方に持っていける。この先にはMSをつけるということによってLC/MSをオンラインでサンプル調製をしながら実施します。そうしますと分析のサンプル調製の段階でのコンタミネーションはかなり抑えられる、クローズドな系での分析が可能になってまいります。これは今検討しておりますが、比較的いいデータがとれていると思います。
〔OHP映写〕
今まで申し上げてまいりましたのは、方法の問題点、概要を御報告させていただきましたが、次に実験動物の飼育環境下の調査研究についてはまだ全く手をつけてございません。
今、調査している中で、まず問題になってくるのが餌であります。餌の中に例えばフタル酸エステル類がどのくらい入っているのか、あるいはビスフェノールAがどのくらい入っているかという調査研究が少なくとも私どもが今見ている中では確認しておりません。
それから、水でありますが、給水瓶の中にはポリカボネート製のものがあります。このポリカボネート製のものからどれだけのビスフェノールAが溶出するのか。それから金属製もありますけれども、ポリカボネート製のケージも使用されており、ネズミがこれをかじる、あるいはなめるということがありまして、こういったものからどれだけ溶出するかということに関して調べているデータはございません。
あと床敷なんですけれども、この中にどれだけ当該化学物質が含まれているのか。あるいはエストロゲン様の活性があるものがこういったものの中にどれだけあるのかということに関しては今後やっていきたいと思っております。
〔OHP映写〕
餌に関しては今情報を収集しております。今国内で一般に実験動物で使われている餌はこういうものが出回っているのだそうです。それに使用されている原材料というものを見ますと、いわゆる脱脂の大豆、ホワイトフィッシュ・ミール、大豆油とか植物エストロゲンといわれるような物質が含まれている可能性がございます。こういった魚の飼料も使われているということになりますと、エストラジオールの存在も危惧されるわけであります。
また、包装は、クラフト3層、ポリ袋1層という形態でなっているものがほとんどでありますが、こういったものからどうなのかということに関しては全く情報を得ておりません。
〔OHP映写〕
餌の方について、私どもまだ余り情報を持ち合わせていないのですが、こういった保証汚染物質濃度というものが設定されています。これを見ますと、例えば重金属類、農薬類、PCB、エストラジオールなどに対して値が設定されております。例えばエストラジオールを見ますと、1.0 ppm という値が設定されています。これは何を意味しているのかよくわかりませんけれども、こういうものが含まれる可能性があるので、こういう値が設定されるというふうに考えますと、エストラジオールについても餌などについては測定する必要があるのではないか。ビスフェノールAとかそういうものに加えて、こういったエストロゲン活性のある物質を測る必要があるのではないかと思われます。
〔OHP映写〕
今、申し上げてまいりましたことで、分析値の信頼性を確保することは内分泌かく乱化学物質に限りませんで、すべての分析に携わる人にとって重要なことだと思っております。標準書、いわゆるSOPというものを必ず作成するということが必要であります。そして、検査データ、すべての関連の記録のデータは必ず保存することが大事だと思います。得られた数値が本当にどうなのかという議論になったときに、元に戻ってトレースできるかどうかという意味では記録の保存ということが非常に大事であります。先ほど申し上げましたように、分析も非常にハイレベルになっておりまして、大学の研究室でできるような状況ではないのでありますが、こういった専門家の養成というものが絶対的に必要であるということです。
それから、精度管理には、内部精度管理、外部精度管理ありますけれども、内分泌かく乱化学物質についても、本当はこういうものがあってしかるべきではないかと思っています。
クロスチェックでありますが、先ほどおにぎりへの移行などを調べた実験は、単純な内容ではあるのですが、多くの機関を入れてやるということは非常に時間と労力を必要とします。しかしながら非常に重要ではないかと思います。
ホウレンソウでありますが、これは実はこれの意味ではありません。学生にこの図をつくらせましたら、一生懸命書いてホウレンソウになってしまったのですが、私が言いたいのは、「報告」と「連絡」と「相談」でありまして、これは学生に私の気持ちが伝わらなかったのですが、ホウレンソウというのは、例の埼玉でのO−157のデータのときもそうだったと思うのですけれども、やはり異常なデータが出たときに関係の方々と相談する、ディスカッションする、あるいは慎重にそこでデータを評価するというような「報告」と「連絡」と「相談」ということが絶対的に必要だと思っております。
最後はこういう仕事をするのに分析の方も経費がかかる状況になってまいりました。最近は質量分析計というのが非常に進歩してまいりまして、安定同位体でレベル化した標準体を使うことによって回収率の補正等ができるようになってまいりましたが、中にはこういったものがまだ市販されてないものも合成させなければいけないというような、非常に経費がかかってきている状況であります。
〔OHP映写〕
これが最後でございますが、この検討班としては、今回実は食品のガイドラインしか設定できませんでした。生体についても調べているのでありますが、こういった内容を網羅した、包括したような分析法は今のところ見当たりませんでした。今後はそういった方法が発表されてくると思いますけれども、私どもも自分たちがやっている方法というのは、積極的に国際雑誌に出して評価を受けていきたいと思っております。
複数のラボで今回、作成しましたガイドラインのクロスチェック、実際のサンプルを分析するクロスチェックも分析のバリデーションをやる上では必要だと考えております。当面はビスフェノールAとフタル酸エステル類とノニルフェノールについて、今度は生体試料についても検討していきたいと思っております。
最後に、先ほど申し上げました実験動物の飼育環境下における化学物質のこういった存在量等については、今年度着手していきたいと思っております。
以上でございます。
〔OHP映写〕
この班は、私が責任者で、私どもの研究所の化学物質情報部の関澤先生に副責任者として大部分の調査をやっていただいております。
〔OHP映写〕
最初に、ここでの低用量作用問題検討の低用量作用の語義について一応表記しておきます。これはEPAの過日行われました低用量問題に関する討議のときに使われた低用量の語義をそのまま準用しておりますが、これでいいかどうかはいろいろ考え方によって多少の擬議があります。しかしながら、ここではこのようにいたします。ヒトにおける暴露濃度範囲又は生殖発生毒性の標準試験法で一般に使用されている用量より低い用量で起こる生物学的変化としております。必ずしもこれは毒性すなわちアドバースエフェクトを意味しておりません。
それで、なぜ擬議があるというようなもったいぶった表現をしたかと申しますと、これはエストロジェックな物質とアンドロジェニックな物質では用量が非常に違います。1,000 倍ぐらいのオーダーで違ってまいります。それはモル濃度でもそうです。ここで表現しますように、標準試験法で一般に使用されている用量より低い用量でというふうになりますと、必ずしも絶対量として低い用量のものばかり対象となってはきません。アンドロジェックなケミカルでは比較的高い用量のものも対象となります。エストロジェックなものでは絶対量にしますと 0.1 μg/・オーダーまで完全に生体反応が起こります。
それに対しまして、アンドロジェックなものでは、ミリグラムオーダーになります。しかしながら、過日のEPAの会議ではこれも含めて検討されましたので、概念としてはそのように取り上げておこうと思います。
〔OHP映写〕
低用量問題検討作業班のメンバーは、ここに掲げたようなメンバーの人たちで、JETOCの井藤さんには大変お世話になりました。
内分泌かく乱化学物質のトキシコロジーでの問題点は、いわばリスクアセスメントに必要な3つの要素、有害性の同定、用量相関性及び暴露評価がそれぞれ確定していないということであることは再三申し上げているところでありますけれども、有害性の特定ができない、つまりハザード・アイデンティフケーションがはっきりしない。それから用量相関が明らかに直線性を持たないものがデータとしてあらわれてきている。その中で暴露の測定などにつきましてはいろいろ難しい問題があることはるる御説明があってわかりましたけれども、そのような測定が一応可能であるけれども、こういったものが3つぞろいにならないためにリスクアセスメントに問題が生じているということであります。これらが特に低用量反応のところで問題になっているということで、その辺のところを整理をするようにということがこのプロジェクトで申しつかった課題であります。
〔OHP映写〕
問題点は、ここにもちょっと書きましたけれども、まず資料4の1ページの1.の「はじめに」のところに書いてありますことが、この報告の基本的な概略であります。何が書いてあるかと申しますと、訳のわからないということが書いてあります。(笑い)
低用量作用問題は、種々のホルモン様作用を持つ化学物質の・受容体を介した作用様式、・その受容体の側の多様な反応特性及び、・ホルモン物質の形態形成期にかかわる不可逆性変化に関連した要因など、幾つかの異なった要因によって構成されており、その解決はそれぞれの作用メカニズム、これは独立していることが多いわけですけれども、解明の困難な今日的課題につながっている。
この問題が可能性の問題とはいえ、もろもろのメカニズムにリンクした本質にかかわることが明らかになりつつあること、そのものはグローバルな研究の進展に基づく重要な知見であるが、同時にこれまでのいずれの化学物質の毒性解明に当たってもしばしばそうであったように、毒性メカニズムを明らかにすることはたやすいことではない。
そうした背景に立って、米国環境防護庁では、昨年10月、米国ノースカロライナ州で、低用量問題に関する国際的な専門家による文献査読会議を行った。ここでは低用量作用の存否にかかわるデータのそれぞれに対して低用量影響が存在するとする見解と低用量作用が認められないとする双方の報告に対する信頼性を確認するという結果に終わり、今後に解明すべき課題を残したが、同時に低用量作用が明確にならなかったという現段階における認識状況をも浮き彫りにした。
したがって、この問題では、以上のような現状に沿ってメカニズムの面からの解明と、現実的な面からの対策の双方から対応することが肝要であるということでございまして、メカニズムの解明は重要なのでありますけれども、メカニズムの解明に突っ込んでいくと解が得られるかどうか、時間的な関係からすると非常に問題がある。しかしながら、実用的に解決していこうとしている中で、現在まだいろいろ前に立ちはだかっているものがある。これを少なくとも幾つかの物質を対象にして、とりあえずプラクティカルに整理していくことを考えない限り、低用量問題があって、それがどういう意味を持っているのかというのを議論していると、際限なく時間がかかる可能性がはっきりしてきた。つまり、アドバースエフェクトか、単なるNOELの問題なのか、生理作用なのか、そこのところがわからないまま非常に極低用量のデータは確実に蓄積されております。
したがって、その問題の解明以前にプラクティカルに物事を解決していくということも同時に進行しないと状況の整理がつかないということがはっきりしてきていると考えております。
もう一つは、それと同時にプラクティカルの考え方の1つとして、ヒトに対する差し当たっての影響の問題も重視しなければならないと思っております。そのことに関しては、グローバルアセスメントをWHO/IPCSが進めておりますが、現在までこれにかかわるデータはありません。その全体を通じて低用量問題は考えていくしかないのではないかと思っております。今、申しましたように、受容体、リガンドそのものが、先ほど松尾委員もおっしゃられましたように、ノニルフェノールにつきましても、さまざまに自分たちでもって動いていくし混合比も変わっていきます。それぞれの影響が全く違っております。受容体についてはもちろんのこと、その後のシグナル伝達についてもそうであります。
それから、これは別の角度になりますけれども、形態形成期にかかわる不可逆性変化については、これも実際にチルドレンズプログラムとして重要性をますます帯びてきているというのが実情であろうと思います。
〔OHP映写〕
ホルモン様の作用物質の中から、植物ホルモンを除く傾向がありますけれども、植物ホルモンは厳然としてこれを入れて、これにもアドバースエフェクトが大量の場合には当然あり得るという考え方で対処すべきだという考え方が強くなっております。生体内の生理的ホルモンでありますけれども、実はこれは非常にトキシックなケミカルであります。そして生体内の生理的リガンドこそ、それから生体を守るためのさまざまな防衛機構が体の中に備わっております。そして、これは思春期と更年期以降には非常に揺らぎます。安定した成熟女性で通常の用量の内分泌かく乱化学物質による影響がどの程度あるかについては疑問視する人が多いし、事実そうだろうと思われます。思春期ないしはもっとその前の胎生期の形態形成期及び更年期以降の女性にはこれがきいてくることを示唆する動物実験データはかなり蓄積しております。それ以外についてはちょっと省きます。
〔OHP映写〕
これらについての問題点は、いつも申しますように、ホメオステーシスとの拮抗関係にある。そして少なくとも生理的リガンドが体の中にある状態にプラスあるいはそれを差し引くような形で拮抗するような形で働くというようなことがありますので、どうしても用量反応性が、体の中に何もないものの中に加えていくという反応と違うことが外的物質の中から見てもあります。それに加えて、レセプターの側に更に別の要素があるということを前のOHPでお示ししたわけですけれども、そういうことがあります。
あとは受容体の発現の低下(ダウンモジュレーション)というような現象がそれぞれの局面で起こってくるということ。それから生理的リガンドに対する防御作用がよくわかっていないということがあります。
それから、多世代試験と胎児影響の乖離ということがある意味であります。ノースカロライナ・ミーティングのことについても、多少後で触れますけれども、多世代試験でネガティブに出るという傾向がある物質とそのドーズでもって胎児影響が明らかに出ます。なぜ、そのような関係になっているのかということが、これまで実はきちんと調べられておりません。それは驚くべきことにという表現を使うべきかどうかわかりませんが、DESでもそうですし、PCBのかなりのものでもそうですし、非常に強いものについてさえも、それが生体影響がないぐらいの Low dose に関する、長期試験も短期試験もなかったというのが実情であります。
〔OHP映写〕
ノースカロライナのピアレビューミーティング(10月10日〜12日)が行われたわけですけれども、ここではとにかくプラクティカルにどういう状況になっているのかについてきちんと Low dose という問題のデータを調べようということでやったわけであります。
〔OHP映写〕
そのときに使われた語義はこのとおりでありますので、もう繰り返しません。
〔OHP映写〕
これから2つのOHPをお示しいたしますが、ビスフェノールAで Low dose effect があるとすることをまとめたのがこれであります。
〔OHP映写〕
これがラック・オブ・エフェクトをまとめたものであります。
〔OHP映写〕
前に戻りまして、アンダーラインを引いたところが、要するにフェアの部分でありますが、プロステート(前立腺)の重量が増加する。そして、思春期が早くくる。膣開口が早くなる。子宮重量が増える。これは子宮の上皮細胞の丈が高くなる。c−fosのエクスプレッションが見られる。プロラクチンレベルが血清で上がる。視床下部、視床あるいは下垂体のエストロゲンαのエクスプレッションが上がるというようなことがあった。
それに対してベントラルプロステートの重量が上がっているという報告があったけれども、多世代試験のところで、子どもを間引かないで見たら、その前立腺への影響はないというふうに判断されました。これはむしろ2枚目にかかわるかもしれません。
〔OHP映写〕
一方、シリーズ・オブ・スタディでもって影響がないことが認められた。いろいろな人たちがそういうことを言っております。あるいはタイルさんなどは、卵巣重量が増加することも確かにある。それはバイチャンスであると言っております。
〔OHP映写〕
今のように、一言で言いますと分かれたわけですけれども、そのどの論文についても一応クレディビリティがあるという結果になりました。それはもう一度、そこで討議された論文、これを私どもの関澤先生が中心になり班全員の方の御苦労で、これに限らず、全体の70編ほどの論文を全部もう一度日本でピアレビューしていただきました。このビスフェノールAに関して意見の出ている論文はこれだけであります。そして、それについて Low dose でプラスとマイナスというデータがこういうふうに分かれております。その内容は今申し上げたとおりであります。
〔OHP映写〕
今、途中でも申し上げましたが、低用量データがないということがこのピアレビュー全体を通じていろいろわかってまいりました。閾値問題における細胞膜透過性と受容体結合性の確率の問題などについての試算も必要であろうということになってまいりましたし、用量増加に伴う受容体機能発現の降下という問題ももう一度検討しなければならないし、あるいは核内受容体のシグナル修飾と相加反応性。相加反応性についてはかなりありそうだというデータも出ておりますので、それについての検討も、データギャップとして埋める必要があるだろうという考え方であります。
〔OHP映写〕
先ほどのような背景としていろいろ検討がピアレビュー会議では行われました。試験動物における問題としては、動物の系統だけ合っていても、生産コロニーによる群間差が結構観察されることであるとか、飼料における問題。これは青山委員が先ほど質問されたように、植物エストロゲンの混入がある。その他の未知物質もありそうである。飼育条件における問題。仔動物を個別に飼育する場合と群飼育をする場合で比体重の指数が変わってくるということがわかった。当たり前かもしれませんが、そういうことがあります。
データの解釈における問題としては、臓器重量の体重補正をすることがかえって混乱を招いているという面もあるかもしれないし、また、共分散分析そのものが実際に本当に正しいのかどうか、いろいろな問題が取り上げられたわけであります。
〔OHP映写〕
そういうふうなプラクティカルな問題で進めておりますので、そうするとヒトの問題を何とかしておかなければならないというプラクティカルな問題が当然出てまいりますので、その辺について、本来のこの班の目的ではありませんけれども、整理してみますと、またほかの班の方たちがいろいろお話しあるかもしれませんが、ダイオキシン類の生体障害性についても、乳がん等の成熟女性に与える影響についても、子宮内膜症についても、いずれもヒトに対するアドバースエフェクトとして確立した論文はないのが現在の基本的な考え方であることを同時に押さえておくことが必要だろうと思います。
子宮内膜症につきましては、サルのデータが追試が行われました。シェリー・ライヤーが出したデータと方法は違いますけれども、基本的に全く同じ結果になりました。したがいまして、生物学的な蓋然性、プロシビリティは非常に高いという結果になりましたけれども、一応現段階でヒトのデータはありません。
〔OHP映写〕
もう一方で、先ほどの試験法の話の中にもありましたが、確定試験法という問題がにわかに浮上してまいりました。にわかに浮上してまいった理由は、要するに本質的な機構問題がもう少し時間の関係でもって明らかになるといった希望的観測を持っていた方たちもいますし、これはえらい長い時間がかかると考えておられた方もいるわけですけれども、いずれにしても本質的な解明にはかなり時間がかかりそうだということがはっきりしてまいりました。
もう一方、プラクティカルな問題については、それはそれでプラクティカルに進めるわけですが、既に中澤先生の測定のお話、菅野先生が説明したようないろいろなハイスループットであるとかそういったもののデータがどんどん出せるようになりました。そうしますと、これは本質的にアドバースエフェクトがあるのかないのかわからないままいろいろなケミカルがパイルアップしてしまうというような状況が明らかになってまいりました。もちろん内分泌かく乱問題では、性ホルモン様の作用を持つ化学物質が我々の身の回りにあることそのものが危険性をはらんでいるのだという考え方が本質的にあります。したがいまして、姑息な方法で解決がつくとは思いませんけれども、一応はある線でもって非常に強いところだけは確定しておかないと、これはいつまでも問題がたなざらしになったり、あるいは結論は出せないまでも対策が出せないということになることは非常にはっきりしております。
そこで確定試験というものは何が確定試験になり得るのか。最低限の強い物質を選ぼうというわけであります。ただ、この報告書の中にも言葉を選んで書いてありますけれども、試験法によって強い、弱いが違います。ある試験で強いという結果が出たものが、ある試験では弱いという結果が出ます。したがいまして、先ほどの菅野先生の発表した中に、松尾先生からの御質問がありましたけれども、ある方法でもってネガティブだと判断されたものは、一応米国の考え方ではホールドであります。決してクリアーになりません。それはある程度本質的なことが明らかになったときにそのホールドが解けるという考え方が基本的な考え方であります。事実、例えばプラズモンレゾナンスでもって、アソシエーションで強く出る物質は必ずデソシエーションで強く出るかと申しますと、決してそういうことはありません。アソシエーションとデソシエーションが乖離することが非常にあるところがむしろ、このエンドクライン・ディスラプターの生物影響の難しいところであります。そういうことがありますので、確定試験法がつくれるのかどうかということそのものに対して疑問を持ちながら皆作業をどの国の人たちもやっていると思います。
このほど、EUの方でも、この確定試験法について検討を進めるということが、そういうことでEU議会から約20億円の研究費が出されるというようなことになりましたし、環境防護庁でも、ここに挙げたようなものが、そういう確定試験法になり得るかどうかについて検討をしているところであります。
当作業班における検討案というのはございませんけれども、検討中のものとしては、胎生期ウインドウの効果に注目した1世代試験、胎生期ウインドウ効果に注目した発がん試験、それプラス網羅的な遺伝子発現を何らかの形でもって評価方法に使うことができるかできないかの検討をこれから始めようとしているところであります。
以上でございます。
〔OHP映写〕
私の担当いたしますところは、このOHPにございますが、生体の暴露の量でございます。御承知のように、生体の暴露といいますと、測定された生体試料中の絶対値がまず問題になります。
〔OHP映写〕
最初に生体試料中の測定値を皆様に呈示する前にどうしても押さえておかなければならない点を申し上げたいと思います。1つは、測定法の確立でございますが、これにつきましては、分析作業班の中澤教授が既に御報告になっておられますので、ここでは触れません。
EDCの測定という問題に実際に直面しますと、まず最初に特異性に優れて感度に優れて、しかも安定性に優れた測定法がなければ全く一歩も進めません。散発的に報告がなされるデータほど、なぜか絶対値が高いというようなこともございます。したがいまして、測定法の確立ということが大変時間を要しますが重要な点であります。
第2に生体の暴露ということでございますが、臨床上、暴露ということが非常にあいまいであります。暴露という定義がさまざまなところでいろんな解釈があろうかと思います。暴露というのは、生体に影響が残っているものを暴露とするのか、あるいはターンオーバーが早くてハーフライフが非常に短くて、生体から出てしまったものは暴露とは言わないのかとか、暴露ということをとらえるときに非常に難しい点がございます。
それから、暴露ということにつきましては、AというEDC(かく乱化学物質)がそのままで生体で存在するというものは極めてまれでございまして、いわゆる異性体であるとか、代謝産物という形でも存在いたしますので、何をもって暴露量とするかということも大変難しい問題でございます。
第3に作用の発現ということでございますが、当然のことながら、これは発現するからには、レセプターという問題がございますが、私どもは専ら既知のレセプターという概念で考えておるわけでございます。恐らくEDCにはオーファンのレセプターも存在するわけでございますし、エストロゲンのレセプターに例をとりますと、サブタイプまで分析いたしますと、必ずしも、これらの化学物質というのは一様にエストロゲンとして作用するわけではございません。
したがいまして、作用発現というところ、レセプター1つ取り上げましても大変難しいところがございます。作用発現という考え方でございますが、どうしても内分泌かく乱化学物質はどちらかというと悪者に仕立て上げられるというか、マルかバツといえばバツに近い。シロかクロかと言えば、クロに近いという、ひょっとすると我々は測定前にそういう概念で作用発現を見てないかという問題がございます。
もう少し具体例を申し上げますと、御承知のように、米国の内分泌学者でロイオ・グリープという方がおられます。1905年に生まれて、93歳まで生きられましたので、3〜4年前に亡くなられた方でございますが、日本内分泌学会の外国の名誉会員の第1号でありまして、そのグリープ先生が、1930年代にLHとFSHというホルモンを発見しておりますし、50年代にはたまたま使ったラットに歯のないラットがあって、当然そういうものは捨てるわけですが、捨てないでブリーディングしていって、パラサイロイドホルモンの発見につながったという方でございますが、このグリープ先生は93歳まで内分泌学会では一番前に座って聞かれておられたという方で、いわば20世紀の内分泌のずっとヒストリーを身をもって生きてきて方でございますが、そのグリープ先生がおっしゃるには、「内分泌とは(ホルモン)」という定義の中で、ホルモンというのは天が生きとし生けるものに与えたギフトだと言っています。贈り物だと。もしホルモンというものがなければ、当然新しい生命もできないし、恋愛なんていうこともありません。生殖ということも起き得ないということで、英語で言うと、パラマウント・ベーシス・オブ・エブリー・ソーシャル・オーダーと言っておりますけれども、社会秩序というものまでホルモンというのは規制しているのだというようなことを彼は言っているわけでありますが、そういうことから考えますと、内分泌かく乱化学物質のホルモン作用を、どうも我々は悪者に見立てていろいろやっているのではないかと。検討するからには、いわゆるよい面というか、ホルモン作用としての、今申し上げたような、いわばグリープ先生の定義に則ったような検討をいたしませんと、片一方の評価だけで終わってしまいはしないかというおそれがございます。
作用発現ということにつきましては、ホルモンの作用発現のみでなく、解毒・代謝の一連のシーケンシャルところまでフォローしなければ、作用発現というものはなかなか議論できないのではなかろうか、こんなことがございます。
以上、私の担当いたしました生体の暴露ということでございますが、御承知のように生体というには大変限界がございます。vitro でやるか vivo でやるか。あるいは倫理委員会の問題がございまして、必ずしもヒトのマテリアルを自由に使えるというわけではございません。こういうことを踏まえて、今日お示しするような生体暴露量というものを呈示いたしたいと思います。
〔OHP映写〕
ここに幾つかのEDCのキャンディデイトを挙げております。これらについてすべて私どもは厚生科学研究におきまして、中澤班と連携をいたしまして測定してまいりました。後のOHPですべての絶対値をお示しいたしたいと思いますが、この8つのキャンディデイトすら果たして何の根拠で取り上げたかということは私自身もなかなかお答えできません。つまりEDCの定義そのものが難しいわけでございますが、とにかく生体試料測定として、この8つを取り上げたとお考えになっていただきたいと思います。
この生体試料につきましては、ほとんどが神奈川県の伊勢原市というところで採取してございます。伊勢原市というのは御存じのように、南に湘南の海岸がございまして、裏は大山、丹沢山塊がありまして、ある地域はいわば山紫水明というところになりますが、3本の大きな高速道路が通っております。東名高速と246号線と厚木〜小田原道路。この道路の沿線沿いというところといわゆる山岳地方とさまざまなところの症例をすべて患者さんのバックグラウンドを記録として残してございます。
これから呈示する試料は、すべて同一試料、母乳、母体血、さい帯血、羊水、その他すべて1人の患者さんから出てきたものセットで測定していくことになっております。ある母体である物質が出てほかのところでは何も出ない。あるいは濃度勾配というものを検討できませんと、大変おかしいことになりますので、そういう特徴のあるサンプルということで御解釈いただきたいと思います。
〔OHP映写〕
それでは暴露量について呈示いたしたいと思います。まず、試料のサンプリングの問題で、先ほど中澤先生もおっしゃいましたように、コンタミネーションの問題がございます。コンタミネーションと申しましても、好んでコンタミするわけではございませんで、これは無意識下にサンプリングしたときの容器、その他に既にそういう物質が含まれるということでございます。ここにございますように、さい帯を保存する容器、さい帯血を採取する器具、さい帯血を保存する容器、母体血を採取する器具、母体血を保存する容器、母乳の保存器具、腹水を採取する器具、そして、それを保存する容器、すべてについて検討いたしました。
下の方にはその結果がございますが、これはDEHPを1つの指標として検討してございますが、すべて私どもが用いたものは 10 ppb 以下、つまり測定限界以下のバックグラウンドの容器を用いたと解釈していただきたいと思います。
〔OHP映写〕
すべての資料は、お手元の資料の後半にございますので、それを参照されながらOHPの説明を申し上げたいと思いますが、これはビスフェノールAの濃度でございます。血中と腹水がございます。血中での平均が 0.46 ppb 、腹水の方は 0.56 ppb という値を私どもの試料からは得られたわけでございます。
〔OHP映写〕
下半分は、これは母体の静脈血とさい帯血でございます。絶対値は 0.43 と 0.64 というのが平均値でございます。詳しいデータにつきましては、お手元を参照いただきたいと思います。
〔OHP映写〕
先ほどまえおきが長くなりましたが、ビスフェノールAにつきましても、いわゆる抱合体がございますので、この生体内での濃度を把握することによって、逆に信頼性のあるビスフェノールAレベルを求めていこうと、今この問題を検討しております。いわゆる血漿中のグルクロン酸で抱合した形をビスフェノールAと同時に測定して、生体の動きを見ていこうと、こういう流れを今続けております。
〔OHP映写〕
これがパラベン類でございますが、御承知のようにパラベン類というのはドリンク剤等の中にもございます。化粧品にもございまして、母体から胎児への移行ということが考えられるわけでございますが、いわゆるメチルパラベンでさい帯血、母体血を眺めますと、ほぼ 90% から 100% に近い検出率でございまして、さい帯血中ではメチルパラベンで見ますと、24.1 ppb でございまして、母体血では 3.8 ppb という値でございました。
〔OHP映写〕
これはOHPが細かいものでございますが、この具体的な数値はお手元にそのままございます。
〔OHP映写〕
ヘキサクロロベンゼンにつきましては、ほとんど 100%、成人血中、腹水、母体、末梢血、さい帯血から検出しております。詳しいことは、お手元の資料を参照いただきたいと思います。
〔OHP映写〕
フタル酸エステル類につきましては、先ほど中澤先生がおっしゃいましたように、これは生体内の酵素でフタル酸のモノエステルに変換いたしますので、今こちらの方を中心に生体中で測定中でございます。
〔OHP映写〕
これはPCBでございますが、PCBにつきましては、ファットベースでお手元の資料にあるように、母乳、母体血、さい帯血でこのような絶対値で測定がなされました。
〔OHP映写〕
これは有機スズでございますが、有機スズは、2つの方法、片方がやや感度が上でございますが、測定いたしました。手元の資料には詳しく書いてございますが、家族性に1家族で高値で出てくるという症例もございまして、今後これにつきましては、他の試料で目下測定中でございます。
〔OHP映写〕
ヒト健康への影響をヒト由来の副腎の細胞で、植物のエストロゲンにつきまして検討いたしますと、これはコルチゾール産生抑制でみておりますが、ファーマコロジカルの量ではという条件で、vitro では副腎皮質の細胞にはこのような影響があるということであります。
〔OHP映写〕
同じくヒト由来の乳がんの細胞でも、これは植物性のゲニステイン、あるいはダイゼイン等はこの細胞の増殖に、いわゆるドウスウを考えなければこういう影響があるということでございます。ここで注目すべきは、ゲニスタインであるとかダイゼインというものを単独で vitro で検討するならば、それぞれ上2つのような結果が得られて、明らかなエフェクトがあるのですが、こういうものが2つ混じったようなものでフジフラボンのようなもので検討すると、こういうエフェクトが消えてしまう。生体内では、私どもはこういうものを混合して摂取いたしますので、単純な物質の検討だけでは解釈できないという点が興味ある点だと思います。
〔OHP映写〕
レセプターの問題です。サブタイプのレセプターでは、同じダイゼインであるとか、ビスフェノールAはα、βのレセプターにアゴニスティックに働きますけれども、植物エストロゲンのゲニステインなどはアンタゴニスティックに働くと。サブタイプで検討するとアンタゴニスト、あるいはアゴニスティックに働くという、2つに分かれた作用が同じ植物性のエストロゲンでもあるということでございまして、サブタイプで今後検討していくとさまざまな解釈が分かれてくるというところが生体への影響の複雑なところだと思います。
〔OHP映写〕
これはいわゆる解毒・代謝の問題でございます。一つはビスフェノールAというのは、御承知のように肝臓あるいは腸管で代謝されますが、このいわゆるグルクロン酸の抱合の酵素というのは、胎盤あるいは子宮に発現しておりまして、こういうところで次世代への影響ということを今後検討すべき点ということで今検討をしております。
〔OHP映写〕
これはいわゆる胎児・胎盤への特異的な遺伝子発現ということで、これもTS細胞を用いまして、このTS細胞というのは胎盤の分化にかかわる細胞でございますので、これに対して、今申し上げた生体に暴露がはっきりしている各物質がどのような分化に影響を及ぼしているかということを本年度検討しております。
これでOHP終わりです。ありがとうございました。
いずれにいたしましても、生体の暴露というものを絶対値だけを呈示いたしますと、甚だ数字だけの解釈というのは単純でございますが、とらえ方としてはなかなか複雑な面があるということを申し添えて報告にかえたいと思います。
ありがとうございました。