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第11回 内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会
議事録

厚生労働省 医薬局 審査管理課 化学物質安全対策室

内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会(第11回)議事次第

日時平成13年7月31日(火) 13:00〜17:30
中央合同庁舎第5号館17階厚生労働省専用第18〜20会議室

1 開会
2 前回議事録の確認
3 議題
(1)作業班報告と質疑
   ・試験スキーム検討
   ・採取・分析法検討
   ・低用量問題対策
   ・暴露疫学等調査
   ・リスクコミュニケーション対策
(2)全体討論
(3)検討会中間報告書追補の作成について
(4)その他
4 その他
5 閉会

〔出席委員〕
 伊東座長
 青山委員
 押尾委員
 鈴木(勝)委員
 寺尾委員
 藤原委員
 阿部委員
 黒川委員
 鈴木(継)委員
 寺田委員
 松尾委員
 井上委員
 櫻井委員
 高杉委員
 中澤委員
 山崎委員
   岩本委員
   紫芝委員
   津金委員
   西原委員
   和田委員

〔報告者〕
内山、神沼、菅野、関澤、牧野

〔事務局〕
宮島医薬局長、尾嵜食品保健部長、鶴田医薬担当審議官、池谷審査管理課長、山本化学物質安全対策室長、他課長補佐以下7名

〔オブザーバー〕
文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、水産庁

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第11回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を開催させていただきます。本日は御多忙中のところお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は3名の委員が欠席ということで、また3名ほど遅れておりますけれども、合計23人の委員の方々の出席予定で進めさせていただきます。まずは開催に当たりまして、宮島彰医薬局長から御挨拶申し上げます。
○医薬局長 医薬局長の宮島でございます。本日は各委員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただきまして心からお礼申し上げます。
 御案内のように、本年の1月に政府全体の組織の再編がございまして、それまで生活衛生局の食品と化学物質関係のセクションが医薬局に移管になりました。したがいまして、本検討会も従来生活衛生局の方で担当しておりましたが、1月以降は医薬局の方で担当させていただくということになっております。事務局の方も医薬局の中の審査管理課の化学物質安全対策室というセクションが担当することになってございます。
 さて、本検討会は平成10年4月に設置されて以来、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する諸問題について精力的に審議され、平成10年11月には中間報告書を取りまとめていただいたところでございます。その後、厚生科学研究成果の報告や最新の科学的知見の入手、国際的動向などを踏まえまして、昨年12月の第10回の検討会では、各課題を整理していただきまして、5つの作業班を置いて専門的に検討を行うこととされたところでございます。それから約半年間、各検討課題につきまして、作業班による専門的な検討が精力的に進められまして、本日はその成果が報告されることになっております。委員の先生方には、専門的見地からの活発な御意見をよろしくお願いしたいと思います。
 内分泌かく乱物質の健康影響につきましては、まだ科学的に未解明の点が多く、検討すべき課題もたくさんあるわけでございますが、次世代の健康を確保するため、また国境を越えた世界共通の問題として、その解決を図っていくためにも、厚生労働省といたしましても、精力的に取り組んでいく所存でございますので、委員の先生方につきましては、引き続き御協力のほどよろしくお願い申し上げたいと思います。
 簡単ではございますが、一言御挨拶させていただきました。
○事務局 ありがとうございました。
 続きまして、本検討会の委員の交代がありましたので紹介させていただきます。
 高田勗氏の後任といたしまして、今回から参加いただくことになりました櫻井治彦委員でございます。
○櫻井委員 よろしくお願いします。
○事務局 ありがとうございました。
 また、今日の会合では、検討作業の結果報告がありますが、事前に座長とも相談いたしまして、その関係者にも出席をお願いしてございますので、順に御紹介いたします。まず内山充先生でございます。菅野純先生でございます。牧野恒久先生でございます。あと、ちょっと遅れておるようですけれども、神沼二真先生、関澤純先生にも同席いただくことになっております。
 次に事務局のメンバーの交代がありましたので、紹介させていただきます。
 まず初めに御挨拶いたしました宮島医薬局長でございます。次に尾嵜新平食品保健部長でございます。鶴田康則医薬担当審議官でございます。池谷壮一審査管理課長でございます。山本徹化学物質安全対策室長でございます。
 こちらの席ですけれども、宮原室長補佐でございます。川嶋主査でございます。平野主査でございます。黒羽専門官でございます。志田係長でございます。私、室長補佐の吉田と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは座長の伊東先生よろしくお願いいたします。
○伊東座長 それでは、ただいまから、第11回内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会を開催いたします。
 まず事務局から本日の配付資料の確認をお願いいたします。
○事務局 それでは配付資料の確認をいたします。既に委員の先生方には事前に郵送で送付しておりますけれども、一部資料等の差し替えがありました関係上今日改めてセット版を配付いたしております。
 まずお手元の「議事次第」でございます。次に本検討会の「委員名簿」でございます。本日の検討会の「席次表」でございます。続きまして、資料1、前回(第10回)の検討会の「議事録(案)」でございます。資料2といたしまして、試験スキーム検討作業班の報告資料でございます。タイトルが「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 試験法開発検討班 資料概要」というものでございます。資料3、採取分析法検討作業班からの資料、タイトルが「内分泌かく乱化学物質測定に関する暫定精度管理等ガイドライン」でございます。続いて資料4、これは低用量問題対策作業班報告用資料ということで、タイトルが「低用量問題検討作業班報告」というものでございます。資料5につきましては、暴露疫学等調査作業班報告ということで2つに分かれております。まず最初のものが、タイトルが「内分泌かく乱化学物質と人への健康影響との関連−疫学からの知見−」、もう一つが「暴露・疫学情報解析班:「内分泌かく乱化学物質に関する生体試料(さい帯血等)分析法の開発とその実試料分析結果に基づくヒト健康影響についての研究」というものでございます。次に資料6、リスクコミュニケーション対策検討班からの資料、タイトルが「リスクコミュニケーション対策」というものでございます。資料7、「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 中間報告書追補の作成について」でございます。
 参考資料1といたしまして、「内分泌かく乱化学物質問題の現状と今後の検討課題について」、参考資料2、「内分泌かく乱化学物質ホームページ」でございます。
 また、先ほど配付いたしました資料で、タイトルが「内分泌かく乱化学物質等ヒトへの健康影響との関連」という一枚紙でございます。
 また、事前に送付した資料のうち、ただいま御説明いたしました中で、資料5の暴露・疫学情報解析班の資料につきましては、概要部分がついておりませんでしたので、今回概要部分をつけて配付いたしております。
 資料6の「リスクコミュニケーション対策」につきましても、内容に一部修正等がありましたので、今日差し替え版を配付いたしております。資料7につきましても、内容等を修正いたしましたので、今日改めて差し替え版を配らせていただいております。
 また、資料2から資料6につきましては、主に概要部分と添付資料から成っておりますけれども、委員の方々には概要と資料の両方、また傍聴者の方々には概要部分のみを配付させていただいております。
 事務局からは以上です。
○伊東座長 ありがとうございました。続きまして、前回議事録の確認でございますが、事務局から御説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、まず資料1をごらんください。これは前回の議事録でして、速記録をもとにして事前に委員の方々には内容を確認いただいたものでございます。特段の問題がなければ、この内容で確定の上、公開の手続に入らせていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
○伊東座長 よろしゅうございますでしょうか。御意見ございませんか。
              (「異議なし」と声あり)
○伊東座長 ありがとうございました。
○事務局 それでは、これにつきましては、厚生労働省のホームページ掲載等公開の手続に入らせていただきます。
○伊東座長 ありがとうございました。
 それでは、これから議事に入りたいと思います。議題の1、作業班報告と質疑でございますが、まず初めに事務局から、前回の検討会からの経緯などについて簡単に説明をお願いいたします。
○事務局 それでは、まず参考資料1をごらんください。「内分泌かく乱化学物質問題の現状と今後の検討課題について」でございます。よろしいでしょうか。
 これは第10回、平成12年12月の検討会で確認された事項でございますので、内容を紹介いたします。
 「内分泌かく乱化学物質問題の現状」といたしまして、まず厚生省では、人への健康影響の観点から平成10年11月に取りまとめた「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会中間報告書」で示された方向性を踏まえ、厚生科学研究等によって内分泌かく乱化学物質の問題を解決するための調査研究等を行ってきております。
 そこで「検討課題」ですけれども、昨年の12月に行われました検討会にて、「これまでに得られた科学的な知見や国際的な動向を踏まえると、中間報告で示された調査研究の内容は適切であり、今後ともこれらを継続する必要がある。しかしながら、短期的には主に試験法の開発に関するもの、主に人の健康影響を解明するもの、その他を特に整理・検討する必要がある。」ということで、この検討課題の1番から7番に示しますそれぞれの課題、すなわち「1.HTPSの対象物質の選定等」、「2.OECDスクリーニング試験法の検討」、次のページに行きまして、「3.内分泌かく乱化学物質同定・確認のための詳細試験方法」、次に「4.サンプリング・分析方法の確立」、「5.逆U字効果の解明(低用量の作用・影響の有無)」、「6.暴露・疫学的情報等の収集、解析」、「7.リスクコミュニケーションの充実」、以上の7課題について重点的な検討を加えるということで確認いただいたところでございます。
 そして、次のページのIII「検討課題実施のための方途」といたしまして、個々の課題のついて、詳細にわたる専門的な検討を加える必要から、ワーキンググループを設置して、個々の課題を整理して、この検討会で取りまとめを行うことになりました。その際に、ワーキンググループの設置に当たっては、既存の厚生科学研究班を活用するなどにより作業の効率化を図るということにされております。
 そこで、ここに示します1番から5番の作業班、「1.試験スキーム検討作業班」、「2.サンプリング・分析法検討作業班」、「3.低用量問題対策作業班」、「4.暴露疫学等調査作業班」、「5.リスクコミュニケーション対策作業班」、以上の5つについて作業を進めてまいりました。
 今日は、この議題にもありますように、それぞれの1.から5.の作業班について、その検討結果を御報告いただくことになっております。
 また、各先生方にはこの作業班の報告をしていただくわけですけれども、一応目安として、各班とも、これは質疑応答含みますけれども、30分前後のプレゼンを考えております。また各先生方のプレゼンがすべて終わった後に全体討論の時間を設けておりますので、その際にも活発な議論等をお願いできればと思っております。  事務局からは以上です。
○伊東座長 ありがとうございました。  それでは議題に示されました順番で進めたいと思います。まず第1番に「試験スキーム検討」について、御報告をお願いいたします。
○菅野先生 報告させていただきます。
 本作業班は、内分泌かく乱物質の健康影響に関する事前スクリーニング、スクリーニング及び詳細試験を整理いたしまして、今後の方針とするということであります。

〔PC映写〕
 これはいわゆるハイスループット・スクリーニング班において、その作業の位置付けを考えるためにずっと使ってまいりました図でありますが、流通している一般化学物質を含め、5万種類にのぼるとも言われる候補物質、あるいは試験すべき物質を相手にする場合に、in silico のスクリーニングを最初のステップとし、次に培養細胞を用いたレポーター試験などを用いた High Throughput Screening、それから動物を使いました in vivo 試験によって絞り込みまして、リスク評価のためのいわゆる詳細試験に供する物質の優先リストを作成します。

〔PC映写〕
 この優先リスト作成は1998年に米国のEDSTACがまとめたレポートにある Tier Screening のストラテジーと共通するところがあります。ただし、このままの状態にしておきますと候補物質のリストだけが残ってしまいまして、いわゆる候補物質の店晒し状態ということが起こってしまうのではないかという危惧があります。そこで、それらが本当に有害作用を有するのか単なるホルモン作用で終わるのかというところをはっきりさせるための試験も同時に開発しなければならないだろうということで、このような流れ図を考えております。
 この上段の3つの部分につきまして、詳しく御報告させていただきまして、さらに、そこから下の、優先リストができた後の事に関しての考え方の提案と申しますか、簡単なコメントをさせていただきます。

〔PC映写〕
 ここでは、本当に有害かどうかという問題が重要でありますので、あらかじめ定義をはっきりさせると言う意味で、この様な用語を使っておりますが、これは、内分泌かく乱化学物質問題を受容体原性毒性という立場から考えようとするものです。まず、ホルモン活性のある化学物質を総称して、ホルモン様活性物質(HAA、ホルモナリー・アクティブ・エージェント)と定義します。このHAAのうち本当に有害な作用、adverse effect アドバース・エフェクトを示すものを内分泌かく乱化学物質として定義し、両者を頭の中できっちり区別しようと考えました。
 この立場から言いますと、ホルモン作用というのは、通常は受容体を介する作用でありますから、内分泌かく乱化学物質というのは、受容体を介して毒性あるいはアドバース・エフェクトを発揮する物質というふうに定義され直されると考えます。そうしますと、既存の化学物質が例えば5万種類あったときに、そこからスクリーニングにかけて優先順位を付けるときに、現在用いている指標は、HAAとしての効果であり、そのランキングリストを作成するという作業になります。
 それに対しまして、詳細試験というのは、ここから先の話でありまして、受容体原性毒性、有害性の有無を的確に示すような試験を行わなければならないということが問題となります。この「受容体原性毒性」というものが、正確に検出できるプロトコールが現在我々の手中にあるかというところが1つの問題点であります。現在、候補には、2世代試験などの繁殖試験がありますが、既知のエストロゲン、それもエストラジオールのような強力なものに対しても非常に感度が悪いということが以前からわかっておりましたので、その有効性が問われているところです。

〔PC映写〕
 受容体原性毒性というのは本当にあるのかという簡単な例をご説明します。一番良い例はダイオキシンだと思います。ダイオキシン受容体をノックアウトしたマウスはダイオキシンに反応しません。つまり、体じゅうにダイオキシンが満ち満ちていても何も起こらないということです。野生型の動物がダイオキシン投与によって死ぬとしますと、それは受容体あるいは転写因子を介して何らかの遺伝子産物ができた上でのフェノタイプとして死に至る事であり、受容体原性毒性として非常に理解しやすい例になるわけです。但し、事故等による高濃度ダイオキシン暴露においてヒトが短期間に死亡した事例は報告されていません。そうしますと、エストロゲンの場合はどうかといいますと、エストロゲン受容体αノックアウトマウスというものがあります。この場合、DESの影響があらわれないとか子宮肥大反応はあらわれないということで、ダイオキシンの場合とアナロジーがあり、受容体原性毒性の考えが当てはまります。しかし、ダイオキシンの場合と決定的に違うのは何かといいますと、エストロゲンは体内に既にあって生理作用を営んでいるという点にあります。つまり有害作用と生理作用の区別がつきにくいことを意味し、ここに内分泌かく乱の問題の難しさがあるというふうにも考えられます。

〔PC映写〕
 そういう立場からもう一回、教科書的なレベルに戻りまして、HAAはどこに作用し得るかをみますと、受容体がある、このフィードバックループの3カ所に作用し得るわけです。

〔PC映写〕
 この3カ所、標的臓器とかで問題になるのは当然受容体そのもので、それと結合するかどうかであります。

〔PC映写〕
 最初の段階の、in silico のシミュレーションのお話をいたしますが、これは医薬分子設計研究所、板井博士との共同研究として進めております。

〔PC映写〕
 現時点におきましてACD(Available Chemical Directory)という、約20万化合物が含まれたデータベースがありまして、これのスクリーニングを2回ほど流しております。計算速度は結合様式推定に2〜3分/1ケミカル。結合自由エネルギーの推算に3〜4分ということで非常に早くスクリーニングできまして、20万を1週間ぐらいで計算可能です。この中から候補物質を釣り上げまして、検証はラットERαを導入した COS-1 細胞で検証しておりますが、陽性物質として約60物質がひっかかってまいりました。

〔PC映写〕
 これはその中の一部ですが、エストロゲン作用に関して既知の官能基を含まない物質です。そういうものがとれてきておりまして、未知のものから候補物質あるいは可能性のあるものを釣り上げるという能力をさらに検証、改良中です。

〔PC映写〕
 次に、これは無細胞 in vitro の系ですが、表面プラズモン共鳴なる原理を用いまして、分子間の相互作用をリアルタイムで見ることのできる機械を用いた系の研究であります。この場合、ERE、すなわちエストロゲン応答配列を含みますDNA断片と ERα との相互作用がリガンド依存性にどう変わるかということを指標にしまして、その化学物質がエストロジェン活性物質であるかどうかを見るものであります。

〔PC映写〕
 これは横軸が時間、縦軸が結合であります。これはDNA断片に ER 分子が結合し、解離する様子を示しており、微妙な差がリガンドに応じて見られますが、一言で言いますと、エストロゲンアゴニストの結合したER分子は早く結合し、離れやすいという特徴を有していることを示しています。

〔PC映写〕
 これに対して、抗エストロジェン物質であります ICI-182708 が結合した ER 分子は、さらに早く結合するようになるのですが、ERE からの解離は非常に遅くなっていることが示されます。この傾向は、タモキシフェンでも認められ、抗エストロジェン物質の特長と想定されます。この様な、結合と解離のデータを蓄積することにより、未知の化合物のエストロジェン・抗エストロジェン作用についての予測ができるのでないかと期待しております。

〔PC映写〕
 今の話は、この図の左側の ERE と ER との結合解離の話でありましたが、この右の系におきましては、ER と co-factor との分子間相互作用も見ておりまして、この場合アゴニストが来ますと、co-factor 関連の部分との結合が急速に進みますが、抗エストロゲンですとこの結合が進みません。ですから全くの無細胞系なのでありますが、レポーターアッセイに近い内容の判別が出来ていまして、なおかつその様なデータの蓄積が非常にスピーディにできる可能性が出てまいりました。

〔PC映写〕
 次がHela細胞を用いましたレポーターアッセイで、これをロボット化して、ハイスループット・スクリーニング化するという計画であります。今までに厚生省関係で 177 物質の測定がヒトERα の系で終わりました。その中で 29 のアゴニストが見つかりました。ちなみにこの系は、毎週5日間稼動するとした場合、理論上は検体となる物質さえあれば 120 物質/週のスピードでこなすことができます。

〔PC映写〕
 これは化評研(化学物質評価研究機構)との共同研究で、METI(経済産業省)と一緒にスタートしたものでありますが、ロボット自体は化評研にあります。96 ウェルプレートに細胞を培養し検体をトリプリケートで7桁の濃度範囲にて測定いたします。

〔PC映写〕
 このデータに関しましては、別添として委員の方々には全部お渡ししてあります。

〔PC映写〕
 では、in silico シミュレーションあるいはQSAR予測と表面プラズモン共鳴原理による分子間相互作用をリアルタイムで見る系と、今申し上げました細胞を用いたレポーターの系、以上3つのデータにどの程度の相関があるかということを、3つを比較し得た現在までのデータをもとに御説明いたします。

〔PC映写〕
 表面プラズモン共鳴の系の持つ原理的特性として、エストラジオールに近い強さのものに関しましては ER の結合部位をすべて占領してしまうため、ここで見られるように値が振り切れてしまいます。しかし、一番重要な低活性物質の領域では細胞株を用いた High Throughput Screening のデータとの間に直線性がとれております。

〔PC映写〕
 次に in silico シミュレーション、細胞株を用いた High Throughput Screening、および表面プラズモン共鳴によるデータの関係をお示しします。一つのグラフにプロットしますとこのようになります。活性の高い物質については、先ほど申しました理由から表面プラズモン共鳴のデータは外れるのでありますが、中くらいのものに関しましては、絶対値はずれるものの、ほぼ直線に乗っており、平行した線に乗るということから、この3つの系はお互いにデータを確かめ合う関係にあるということは確認できました。また、微妙にデータがずれている点の解釈ですが、多数の物質のデータをクラスター解析していけば、リガンド固有の違いがある傾向をもって分類できる可能性を考えております。クラスター解析に持っていくことによって、更に予測が高まるといったインフォーマティックスとしての使い方が期待できると考えております。

〔PC映写〕
 次に、生体を用いたアッセイ系について述べます。このアッセイは、先ほどお示した内分泌系フィードバックループの1カ所を壊してやったときに、系の恒常性が維持されなくなり、外来性のホルモン刺激に対して敏感に反応するようになることを利用したものです。

〔PC映写〕
 その1つが子宮肥大試験でありまして、卵巣を摘出することによりフィードバックが効かない状態にした動物において、外来性のエトロゲンに対して高感度に子宮が腫大するところを見るものです。雄の動物では、精巣を摘出することでフィードバックを効かなくさせた上で、例えば前立腺を指標に高感度にアンドロジェンあるいは抗アンドロジェン作用を観測するという系で、ハーシュバーガー試験と言われるものであります。

〔PC映写〕
 これも別添に多少の資料を掲載しております。これはOECDの子宮肥大試験のプロトコールをつくる段階で、日本の厚生省がリードラボとして参画しておりました都合上手元にすべてのデータがあるのでその一部を持ってまいりましたが、このようにきれいに陽性対照物質についての用量作用曲線がとれました。

〔PC映写〕
 これは第2段階としましてエストロジェン活性の弱い5つの物質を世界約20ラボで分担して行ったときのすべてのデータをプロットしたものです。1個1個小さくて申し訳ありません。ゼロ用量での値がずれていたりしますが、一応うまくいったというところで、今まとめの作業に入っております。さらに、テストガイドライン作成にはいるところまでいって来ております。

〔PC映写〕
 今までの話をまとめさせていただきますと、内分泌かく乱化学物質問題を受容体原性毒性と見た場合に、アンドロジェン系とエストロジェン系についてではありますが、その作用濃度域はナチュラルリガンドの体内濃度で言いますと、大体アンドロジェン系で10-6 M から10-7 M 付近、エストロジェンの系では10-9 M から10-10 M 付近で作用しており、子宮肥大試験の感度は大体この程度の濃度域をカバーするものです。ハーシュバーガー試験はここら辺のアンドロジェン系作動濃度域をカバーしています。そうしますと、今までの通常の毒性試験でのNOEL(無作用量)が大体ここのアンドロジェン系作動濃度域になります。ごらんの通り今までの通常の毒性試験でのその下の空白のところのエストロジェン系作動濃度域を放置していいかどうか、今までどおりの試験で、内分泌かく乱化学物質問題に対応しきれるのかという重要な問題を提起していると考えます。

〔PC映写〕
 受容体原性毒性と今までの毒性の違いは何か、もう一度確認してみますと、特に核内受容体はリダンダンシーが高いこと、抗原抗体反応とは違って、幅広い化合物を受け入れて強弱はあるもののシグナルが流れ得るというところが1つ問題でありす。次にシグナル伝達の入り口であるので、化合物が受容体に結合したら、そこから先は化学物質自体は毒性発現の現場に行く必要がない、信号だけ流れればよいということでありますので、いわゆる「低用量問題」や用量作用曲線が今までのような単調関数で無い可能性の問題をどうしても論議せざるを得ません。また、胎児の発生を考えますと、同じ受容体でありながら、異なった時期に異なった臓器で異なった仕事を受け持っていることが知られており、胎児期の高感受性期、いわゆる「ウインドウ」問題に対する研究が必要であると考えます。

〔PC映写〕
 今後の展開を考えますと、従来の毒性学の出発点であった症状の有無にかかわらずデータが蓄積できるDNAマイクロアレーを使った研究が挙げられます。

〔PC映写〕
 そういうものでのデータとりも視野に入れ、全体の流れを考えていく時期に来ているのではないかと考えておりまして、そういう意味で、この図の縦のところにトキシコゲノミクスを縦断的に取り入れました。結局詳細試験というものが受容体原性毒性を本当に評価し得るものとするための1つの研究の切り口として遺伝子発現のプロファイリングを、症状が「出ている」、「出てない」とは一旦切り離して見てみるというストラテジーも存在するのではないか、そのような考えを持っている次第であります。そういうことで、スクリーニングの段階といたしまして、一応リストが作れる手段が出来上がった。あとはファインチューニングをすればよいことと、HAAとしてのランキングのみならず、アゴニスト・アンタゴニストの区別を含む生体影響メカニズム予測に発展させることを行う。ただし、リストができたところで放って置きますと、候補物質の店晒し状態になってしまいますので、詳細試験の方にそのリストを順次バトンタッチして、ここを解決しなければならないという段階に来たのではないかと考えております。
 以上であります。

○伊東座長 ありがとうございました。
 御質問、御意見ございましたらどうぞ。
○青山委員 EDCの中で受容体原性の作用については非常にきれいなスクリーニング系ができ上がっていると感じますが、一方で、定義にも関係するかもしれませんが、例えばレセプターに結合しないでP450の作用を介して影響を及ぼすようなもの、例えばケトコナゾールでありますとか、農薬で言いますとフェナリモルのようなものですとか、直接受容体に結合しないけれども、結果としては内分泌かく乱を起こすであろうと予測されるようなものがあると思うのですけれども、そのあたりの扱いについては、先生はどのようにお考えでしょうか。
○菅野先生 その点に関しましては、例としてフェノバルビタールが挙げられると思います。といいますのは、フェノバルビタールは、CARという受容体が入り口の1つであるということがわかってきて、CARをノックアウトしたマウスでの所見についても論文報告が出てまいりました。そうしますと、昔はフェノバルビタールがなぜ肝がんをつくるかというと、肝酵素誘導、ひいては細胞の増殖を誘導するからだと習って、みんな納得していたわけですが、今や、ダイオキシン毒性と同じく、核内受容体がそのシグナルの入り口にあることが分かってきました。ということは、P450を誘導して何かをするという場合もひょっとすると入り口の受容体があって、受容体原性毒性としての見方をしなければいけないことになる可能性をむしろ考えます。もちろん、従来どおりに酵素を直接的に失活させる化合物もあるのでが、おそらく、低用量の問題とか用量作用曲線の問題とかは、その毒性発現段階については、従来型のアプローチで対処できるのではないかとも想像しています。
 主に ER だけを対象としましたが、だんだんこういうふうに、各種の化合物について受容体原性毒性の概念を拡張させるべき状況にあるのではないかと思っております。
○松尾委員 2つばかり質問したいのですけれども、1つは試験スキーム班でいらっしゃいますので、スキームをつくるということは非常に大事な命題だと思うんです。今、お示しのように縦の矢印がありますね。In silico で始まって High Throughput、子宮肥大/ハーシュバーガーへと。この矢印というのは物質の数を見ますとどんどん減っていますよね。ということは、下に行くほど上位であると。上位という言葉、この前、どこかの委員会で怒られたんですけれども、というふうに考えてよろしいんですね。
 この委員会では、例えば具体的に言いますと、High Throughput でポジになったので、矢印に従って子宮肥大に行ったところ、ネガであったと。こういうときは、そちらの方が、情報量が非常に多いですよね。したがって、そちらの方を取る。文章を読みますと非常に子宮アッセイを評価していらっしゃいますので、そう考えてよろしいですか。まず第1の質問。
○菅野先生 途中でシロになった物質の扱いということですね。
○松尾委員 ですから矢印の意味、数が減っている意味は?ということです。
○菅野先生 ここではプライオリティリストをつくるという立場で書いております。ですからプライオリティリストを書いていったときにリストの下位に回った、5万物質目になってしまった物質をどう扱うかということでありますが、これは今の段階では基本的にエストロゲン・レセプターしか標的にできておりません。あるいはアンドロゲン系だけです。ですからそれでうんと下の方に行ってしまった場合は、事実上これ以上、当分の間は何もできないということになります。ですから、作業班の方ではそれで実質的に手がつかないリストに入ってしまうというのは了解しておりますが、そこは常に、だから完全にシロで無罪放免であるとは当然言えないと思っておりますので、そこの判断は実を言いますと、この検討班などの高い方のレベルで定義していただいた方がよろしいかと思うのです。
○松尾委員 その内容からして、そういうふうに選んでしまうということに関してはまず問題ないと考えてよろしいのですね。基本的には in silico で 9万9,999 番目になったものは永久に日の目を見ませんよね。
○菅野先生 そうですね。
○松尾委員 そういうことはありえますね。サイエンスの目から見て、それは文句ないと、こう考えていいですね。
○菅野先生 念を押されて、私が「はい」と言って済むかどうかですね。
○松尾委員 非常に大事なことですので、あえて聞いているんですけれども、委員会としてはそういうふうに考えてもいいのでしょうか。
○菅野先生 ですから、それでもなおかつ化学式をごらんになったどなたかが、これは怪しいはずだということで、何か研究されるということは当然道としては残ると思います。それで、何らかの所見が出てきた場合は当然拾い上げるのだけれども、そういうことがない限り、事実上お目にかかることはないということになるのは確かだと思います。
○松尾委員 同じ質問で In silico と High Throughput についてですが、アメリカだと High Throughput はもう忘れていますよね。
○菅野先生 それに関しては、実は先週EPAの Jim Kariya 氏と話してきたのですが、というのは、彼らが私が行った先に来てくれたのですが、EDSTACの次のレベルのアドバイザリーパネルを今年の後半に打ち立てるかもしれないと言っておりまして、その段階で、我が国のというか、ここで培いました High Throughput Screening が使えるであろうということで、そのサイエンティフィック・アドバイザリー・パネルに上程するような動きになっております。ですから向こうから日本のものを使わせてもらえるなら使わせてほしいというような要望が回ってくる可能性は十分にあります。
○松尾委員 現実には12月で In silico は検証を終わって走り出そうとしていますね、今年いっぱいで。
○菅野先生 アメリカですか。
○松尾委員 それだと High Throughput なんて飛んでしまっているわけですね。だから、両者はイクイバレントだと。
○菅野先生 そこに関しては in silico を 100% 信じていいかという危惧は向こうのEPAの中にもあると感じ取りました。ですから手放しで in silico で突っ走ろうとしているわけではない。実を言いますと、in silico の検討にバインディングアッセイを走らせるとEPAは言っておりまして、「そのリストをよこしてください、こちらの High Throughput Screening で測定するリストの参考にします」からと言ってあって、先方も了解しているのですが、それが上がってきてないので、思ったほどスムーズにはいってないのではないかという印象を持っております。
○阿部委員 種による差という問題なんですが、動物の種、例えば乳がんの薬でタモキシフェンがありますが、これはヒトの乳がんに対してはレセプターに結合してアンチエストロジェニックですね。ところがマウス、ラットなどでは明らかにエストロジェックです。ヒトの臓器においても乳腺に対してはアンチエストロジェニックですが、下垂体とか子宮に対しては弱いがエストロジェニックなんですね。こういう問題はどう考えたらよろしいか。
○菅野先生 それはスクリーニングのレベルでは、現状では太刀打ちできない問題だと考えておりまして、むしろメカニズムのレベルで詳細に検討していただくものだと思います。多分 Co-factor などの臓器特異的に違う要因が絡んでいると思うのですが、一応この細胞系でアゴニスト、アンタゴニスト両方見るようにはしておりまして、どちらかでひっかかるということを前提に動いております。タモキシフェンはアゴニストでひっかかります。
○伊東座長 そのほか、よろしゅうございますか。紫芝先生何か、山崎先生いいですか。よろしゅうございます。
 それでは、菅野先生ありがとうございました。また、後ほど全体討論のときにいろいろとディスカッションあろうかと思いますが、そのときにはよろしくお願いいたします。
 次に「採取・分析法検討」についての御報告を中澤先生よろしくお願いいたします。
○中澤委員 それでは、サンプリング分析作業班の内容を御報告させていただきます。

〔OHP映写〕
 この作業班の内容でございますけれども、昨年度、厚生労働省の担当の方々と協議いたしまして、この研究班でまとめていきたい内容は、内分泌かく乱化学物質の標準的な分析法のガイドラインを作成するということでございます。1つは、共通する事項をまとめた一般的なガイドラインと個別の試験法の作成です。ビスフェノールAとノニルフェノールとフタル酸エステル類、この3項目について標準的な分析法を、特に食品と生体試料について作成していただきたいという御要望でございます。
 2点目は、今もお話出ましたように、動物実験のデータに飼育環境の影響があるのではないかということで、実験動物の飼育環境を調査していただきたいということであります。

〔OHP映写〕
 この作業班でございますが、今日いらっしゃっております東海大の牧野先生の研究班で分析を担当されている地方の衛生研究所の先生方と、私が主任研究者をしておりますプロジェクトで分析をお願いしている地方衛生研究所の先生方にお入りいただきまして、分析法の調査研究から始めました。

〔OHP映写〕
 内分泌かく乱化学物質の分析にかけましては、平成10年度の補正予算のときから、私ども参画させていただきまして、現在も牧野先生あるいは私の研究班でこの分析は担当させていただいております。この内分泌かく乱化学物質の分析に関係する、私どもが今まで直面した問題、今後解決していかなければいけない問題をまとめてみますと、まずデータの信頼性が極めて重要であるということです。これは社会的に影響が非常に大きいということであります。データがひとり歩きしてしまう傾向にあるということです。データのばらつきが問題となります。特に低濃度のところでの評価ということになりますと非常に微量分析が要求されます。そのデータのばらつきを考えていきますと、1つはコンタミネーション。今回厚生労働省から要請のありました3品目も実は非常に測定環境からコンタミしてくるということが大きな問題でありまして、加えてサンプリングの段階、試料を保存しておく段階、いずれの段階におきましても汚染のおそれがあるということであります。
 それから、いろんな方々が分析法を発表しているのですけれども、そのバリデーションというものはほとんどなされておりません。したがいまして、こういったものを考えていく上で分析法のバリデーションというものは非常に重要だと考えております。  それから、複数の試験研究機関によって同一のサンプルを分析するようなクロスチェックによってその方法もしくはデータの信頼性を確保する必要があるだろうと思っております。食品の方は、食品分析GLPというものが走っておりますが、この考え方を入れていく必要があるのではないかと考えています。
 生体試料の分析、特にヒトの血液、母乳の分析に当たっては、いわゆるインフォームド・コンセントをとらないといけないということで、これも非常に私ども分析する方にとっては大きな越えなければいけない壁ということになります。
 それから、生体試料の場合、非常にサンプル量が少ないという特徴があります。そのために高感度で、しかも一斉に分析できるような方法を構築していくことが望ましいということであります。
 これはダイオキシンで見られるのですが、使用した理化学器材あるいは試薬類の廃棄というものが実は非常に大きな問題になってきております。この分析をするにはかなり熟練した分析者が必要であるということで、そういう人の育成も非常に大きな問題ではないかと思っております。非常に微量のものを共存しているものの中からはからなければいけないということで、1つはクロマトグラフィを使う必要がございます。その微量のものを同定するということでは、いわゆる質量分析計と結合したようなハイブリットな分析法です。特にGC/MSあるいはLC/MS、最近ではLC/MS/MSといったような分析装置を導入する必要があるということであります。
 それから、これはぜひ行政の方に要請していきたいのは、サンプルバンクというものを国レベルで構築していってほしいということがあります。これは例えば、今現在私たちが食べている食品や血液、母乳といったサンプルを10年、20年保存していくということが非常に大事で、これによって長期間の暴露評価が可能になるのではないかと思っております。

〔OHP映写〕
 今申し上げましたように、内分泌かく乱化学物質の存在量は非常に微量と考えられます。この表は米国FDAの Dr. W. Horwitz がまとめられた図です。こういった精度管理とかデータの信頼性について仕事されている方なのですが、サンプル中の存在濃度がこのように低くなればなるほど施設間のばらつきは非常に大きくなってきます。例えばアフラトキシンですと、1 ppb というレベルでやりますと、大体1施設間のばらつきは ±40〜50% あるということになります。今のダイオキシンなどになりますと、ppt のこのレベルになりますので、彼のスケルからはもうはみ出てしまっているということで非常に低濃度のレベルの施設間のばらつきというのは大きくなってくるというのが一般的な考え方でございます。

〔OHP映写〕
 先ほどコンタミネーションのお話を申し上げましたが、今回、生体試料と食品試料について検討していくに当たりまして、サンプリングの段階、例えば塩ビ製の手袋を用いますと、DEHPのような可塑剤が食品もしくは生体試料に移行してしまうということがございます。それを保管しておく容器、搬送するときの容器から混入してくるおそれがあるということであります。実際今度分析をする段階で使っている器具、試薬、水、測定環境、分析装置、そういったものから汚染されてくるというおそれがございます。あと、保存の容器というのも非常に大きな問題になってきます。その具体的な例を少し御紹介申し上げたいと思います。

〔OHP映写〕
 実験室で使う精製水、蒸留水、こういったものでガラスの容器には入っているのですが、非常に微量のビスフェノールAとかノニルフェノールなどが出てくるものがございます。それから、局方の水などを分析しましても、これはプラスチックのボトルに入っているものがあるのですが、ビスフェノールAあるいはアルキルフェノール類が非常に微量ですけれども、含まれております。タップウォーターについても含むものがあるということで、我々が実験に使う水についても注意を払う必要があるということでございます。

〔OHP映写〕
 最近は血液などのサンプル試料を分析装置にかける前に、試料調製するに私ども学生時代のときはカラムクロマトグラフィーを行っておりましたが、最近は solid phase extraction、いわゆる固相抽出という方法を行います。この固相抽出法はこういったプラスチック製の注射筒のようなものに、いわゆる充填剤と外筒管の部分、それを押さえているフィルターの部分、これらが実はいずれも高分子でできております。我々は血液中のビスフェノールAを測っているときにどうもデータがばらつく、その理由がどこにあるかと探っていったときに、1つはそれぞれの部分を分析してみますと、非常に微量ではありますが、ビスフェノールAが含有されている。超純水と称されて、私たちが実験に使っている水を分析しましても、ビスフェノールAは、先ほど申し上げたように大変微量でありますが入ってまいります。これはいずれもどこかの部分にポリカーボネートの製品が使われているのだろうと思います。このことはこの検討班で以前発表させていただきまして、今市販のこういった純水製造装置あるいは固相抽出はこの部分がガラスになっているとか、いわゆる分析メーカーの方でも改良を加えておりまして、こういった問題は非常になくなってまいりました。

〔OHP映写〕
 これは血液バックに水、あるいは豚の血液を入れまして溶出するものを見たものですが、ここで見ていただきたいのはスチレンです。これは 20 日間発泡スチロールの容器に血液バックを入れて、低温で保存しますと、20 倍ぐらいスチレンが増えてまいります。これで言えることは、発泡スチロールの方からスチレンが血液バックを通過して血液中に入ったと考えられます。このようにサンプルの保存も非常に配慮する必要があると実感している次第です。

〔OHP映写〕
 今回の作業班として作成しました分析法の一般的なガイドラインは、お手元の資料のたしか3だと思いますが、そこにまとめてございますので後で見ていただければと思います。要は当該の分析法の中で一番大事なところはサンプリングとサンプルの試料調製のところが大事であることです。それぞれのところで、後からトレースができるような記録を残すということも大切です。場合によっては標準サンプルを入れて分析するというようなことを明示しております。この作成書は食品分析GLPの方のガイドラインの資料を参考にして作成したものであります。ここには内分泌かく乱化学物質の分析をするに当たって、今申し上げてきたことを含めて注意してほしい内容をサマライズさせていただきました。

〔OHP映写〕
 個別のビスフェノールAとノニルフェノール、フタル酸エステル類でありますが、分析を担当している先生方にとっては多分、この3つはできれば測定対象としたくない化学物質でありますが、厚生労働省から要請のありました3化合物はいずれもそういった物質であります。ある意味では一番分析が難しいものです。ビスフェノールAは、アセトンで食品中から抽出しまして、液、液分配でサンプルをクリーンアップします。そしてODSカートリッジでクリーンアップをかけて、誘導体化後、GC/MSで測定します。この方法は、食品衛生学雑誌に発表されているものを参考に、内容を整理させていただきました。
 いろいろ文献を調査してみますと、食品の中のこういったものを測っている方法の中で、非常に信頼される方法が非常に少ないということが1つ。それから私たちも含めてそうなんですが、厚生科学研究あるいは環境省の報告書等を見ていきましたときに、いわゆる第三者が目を通して客観的に評価している報告をこのプロジェクトでは取り上げる方針をとりました。作業班としては、現段階で活字になっている分析法で、いわゆる学術雑誌に載っているものを参考にしようということです。食品に関しては、これも含めて後ほど御紹介する2つの分析法もすべて食品衛生学雑誌に載っているものを参考にしました。

〔OHP映写〕
 ノニルフェノールも、これは実は非常に複数の成分から成っていて、測定も結構ややこしいのですけれども、エタノールで抽出してから液、液分配あるいはアルミナカートリッジやイオン交換カラムを通し、誘導体化してGC/MSで測るという方法を採用しています。

〔OHP映写〕
 フタル酸のエステル類でありますが、これは最も今私たちが苦労している物質であります。我々の手を脱脂綿で拭きまして、アルコールで抽出しても薄層クロマトグラフィーで見れるくらいのフタル酸エステルを検出することができます。そういうことで空気をGC/MSに注入しても検出されてきます。水を注入しましても検出されてしまうということで、これはどうにもならない一番厄介なものです。この物質についてはアセトンで抽出後、液、液分配を2回ぐらい実施後、フロリジルカラムクロマトグラフィーでクリーンアップしてGC/MSで測るという方法でございます。

〔OHP映写〕
 これも昨年、厚生労働省から要請のありましたいわゆる食品用の塩ビ製の手袋からDEHPが食品の方に高濃度で移行するということが報告されました。それについてクロスチェック的な研究をやってほしいということで5機関でやってみました。対象の食品は切り干し大根とコロッケとおむすびだったのですが、各機関が使っている分析装置もさまざまでありまして、方法論は同じではございません。この方法でやってみました。

〔OHP映写〕
 御存じのようにDEHPというのは、脂溶性なものですから、有機溶媒の存在の大きいところで抽出されます。40% あるいは 20% という含量であります。これは重量%でありますので、手袋の 40% から 20% がDEHPということになります。これは消毒のために約 70% のアルコールを手にスプレーしてからこの食品に触るのですが、そのときに、これはおにぎりへの移行を見た例であります。手袋にスプレーしてからすぐ触りますと非常に高濃度で移行します。ところが 30 秒ほど置いてから触りますと、このようなバックグラウンドレベルでの移行ということであります。DEHPがどういう状態で手袋の中に存在しているかはよくわからないのですけれども、非常に抽出されやすい状況であると思われます。
 同じようなことがコロッケについても、これは 40% という高濃度の手袋で1回目には余り出てきてないのですが、2回目つまりコロッケの油が手についた状態で別のコロッケに触れますと、このように濃度が上がってくるということで、脂溶性の環境というのが大きく寄与することになります。

〔OHP映写〕
 これには4機関が参画しまして、おむすび、切り干し大根、コロッケに対して移行実験をやりました。アルコールで消毒したものについては非常に高濃度で移行していくということが出ました。また、各機関の分析データも非常に安定したデータがとれています。ごらんになってわかりますように、ppm のオーダーでございますので、我々としては、現時点ではこれは十分分析できるレベルと思います。

〔OHP映写〕
 厚生労働省から、ヒトの血液や母乳の中にどのくらいあるのかということを前から要請されておりますが、いまだにまだ解決できておりません。これはその微量分析をするために血液や水や溶媒をクリーンアップするために食品の世界で使いますところの精油定量装置というものを用いました。ここにサンプル等を入れまして還流しますとDEHPがこのように上昇しますが、ここで冷却してやります。そうしますと、ここの部分に抽出溶媒としてトルエンが最もいいのですけれども、ここで非常に効率よく抽出できます。といいましても、この還流操作は約 8 時間やりませんと、フタル酸やエステル類をサンプルもしくは使用する水等から除くことができないという非常に手間のかかる方法であります。これを使いますと目的の微量分析はある程度可能になってくるということであります。

〔OHP映写〕
 これはまだ全くの学会発表レベルの研究レベルでありますが、今オンラインで先ほどの固相抽出がカラムのかわりにこういった非常に小さなカートリッジになっておりまして、このカートリッジがオンラインでできるようなシステムが市販されています。

〔OHP映写〕
 これは多分使用できる装置の中で最もハイレベルだと思いますが、2つのカートリッジを埋め込むことができます。したがいまして、例えばC−18、イオン交換といった分離モードの違うカートリッジを装着してオンラインでサンプル調製をしまして、この分析のカラムの方に持っていける。この先にはMSをつけるということによってLC/MSをオンラインでサンプル調製をしながら実施します。そうしますと分析のサンプル調製の段階でのコンタミネーションはかなり抑えられる、クローズドな系での分析が可能になってまいります。これは今検討しておりますが、比較的いいデータがとれていると思います。

〔OHP映写〕
 今まで申し上げてまいりましたのは、方法の問題点、概要を御報告させていただきましたが、次に実験動物の飼育環境下の調査研究についてはまだ全く手をつけてございません。
 今、調査している中で、まず問題になってくるのが餌であります。餌の中に例えばフタル酸エステル類がどのくらい入っているのか、あるいはビスフェノールAがどのくらい入っているかという調査研究が少なくとも私どもが今見ている中では確認しておりません。
 それから、水でありますが、給水瓶の中にはポリカボネート製のものがあります。このポリカボネート製のものからどれだけのビスフェノールAが溶出するのか。それから金属製もありますけれども、ポリカボネート製のケージも使用されており、ネズミがこれをかじる、あるいはなめるということがありまして、こういったものからどれだけ溶出するかということに関して調べているデータはございません。
 あと床敷なんですけれども、この中にどれだけ当該化学物質が含まれているのか。あるいはエストロゲン様の活性があるものがこういったものの中にどれだけあるのかということに関しては今後やっていきたいと思っております。

〔OHP映写〕
 餌に関しては今情報を収集しております。今国内で一般に実験動物で使われている餌はこういうものが出回っているのだそうです。それに使用されている原材料というものを見ますと、いわゆる脱脂の大豆、ホワイトフィッシュ・ミール、大豆油とか植物エストロゲンといわれるような物質が含まれている可能性がございます。こういった魚の飼料も使われているということになりますと、エストラジオールの存在も危惧されるわけであります。
 また、包装は、クラフト3層、ポリ袋1層という形態でなっているものがほとんどでありますが、こういったものからどうなのかということに関しては全く情報を得ておりません。

〔OHP映写〕
 餌の方について、私どもまだ余り情報を持ち合わせていないのですが、こういった保証汚染物質濃度というものが設定されています。これを見ますと、例えば重金属類、農薬類、PCB、エストラジオールなどに対して値が設定されております。例えばエストラジオールを見ますと、1.0 ppm という値が設定されています。これは何を意味しているのかよくわかりませんけれども、こういうものが含まれる可能性があるので、こういう値が設定されるというふうに考えますと、エストラジオールについても餌などについては測定する必要があるのではないか。ビスフェノールAとかそういうものに加えて、こういったエストロゲン活性のある物質を測る必要があるのではないかと思われます。

〔OHP映写〕
 今、申し上げてまいりましたことで、分析値の信頼性を確保することは内分泌かく乱化学物質に限りませんで、すべての分析に携わる人にとって重要なことだと思っております。標準書、いわゆるSOPというものを必ず作成するということが必要であります。そして、検査データ、すべての関連の記録のデータは必ず保存することが大事だと思います。得られた数値が本当にどうなのかという議論になったときに、元に戻ってトレースできるかどうかという意味では記録の保存ということが非常に大事であります。先ほど申し上げましたように、分析も非常にハイレベルになっておりまして、大学の研究室でできるような状況ではないのでありますが、こういった専門家の養成というものが絶対的に必要であるということです。
 それから、精度管理には、内部精度管理、外部精度管理ありますけれども、内分泌かく乱化学物質についても、本当はこういうものがあってしかるべきではないかと思っています。
 クロスチェックでありますが、先ほどおにぎりへの移行などを調べた実験は、単純な内容ではあるのですが、多くの機関を入れてやるということは非常に時間と労力を必要とします。しかしながら非常に重要ではないかと思います。
 ホウレンソウでありますが、これは実はこれの意味ではありません。学生にこの図をつくらせましたら、一生懸命書いてホウレンソウになってしまったのですが、私が言いたいのは、「報告」と「連絡」と「相談」でありまして、これは学生に私の気持ちが伝わらなかったのですが、ホウレンソウというのは、例の埼玉でのO−157のデータのときもそうだったと思うのですけれども、やはり異常なデータが出たときに関係の方々と相談する、ディスカッションする、あるいは慎重にそこでデータを評価するというような「報告」と「連絡」と「相談」ということが絶対的に必要だと思っております。
 最後はこういう仕事をするのに分析の方も経費がかかる状況になってまいりました。最近は質量分析計というのが非常に進歩してまいりまして、安定同位体でレベル化した標準体を使うことによって回収率の補正等ができるようになってまいりましたが、中にはこういったものがまだ市販されてないものも合成させなければいけないというような、非常に経費がかかってきている状況であります。

〔OHP映写〕
 これが最後でございますが、この検討班としては、今回実は食品のガイドラインしか設定できませんでした。生体についても調べているのでありますが、こういった内容を網羅した、包括したような分析法は今のところ見当たりませんでした。今後はそういった方法が発表されてくると思いますけれども、私どもも自分たちがやっている方法というのは、積極的に国際雑誌に出して評価を受けていきたいと思っております。
 複数のラボで今回、作成しましたガイドラインのクロスチェック、実際のサンプルを分析するクロスチェックも分析のバリデーションをやる上では必要だと考えております。当面はビスフェノールAとフタル酸エステル類とノニルフェノールについて、今度は生体試料についても検討していきたいと思っております。
 最後に、先ほど申し上げました実験動物の飼育環境下における化学物質のこういった存在量等については、今年度着手していきたいと思っております。
 以上でございます。

○伊東座長 ありがとうございました。
 どなたか御質問、御意見などございましたら、どうぞ。
○青山委員 私、実験動物で実験をやっている手前、餌の問題は随分と困っておりまして、実はエストロゲンの 1 ppm というのは、日本で ppb オーダーで分析できる機関が1カ所しかなくて、そこが満員で測っていただけないので、しようがないから 1 ppm だというような説明をクレアさん(製造者)に聞いたことがあります。実際に測っていただくと、自腹を切って測るんですけれども、実際には 0.5 から 1 ppb ぐらい入っております。
 こういった部分、先生が御指摘のとおりで、ほかのコンタミナントについても、わかっていながら技術が安定していない、あるいはやっていただけるところがないというので困っている状況ですので、ぜひともスタンダードをお作りいただいて、どこでも分析できるような方向でやっていただけたらありがたいと思っております。よろしくお願いいたします。
○中澤委員 大変貴重なアドバイスありがとうございました。一番最初にお見せした、我々の検討班のメンバーの中はほとんどが地方の衛生研究所の先生方、私から見まして、本当に分析のスペシャリストです。この中には松本のサリン事件で、日本に最初にサリンを見つけたような方も入っておりますので、今、先生おっしゃったように、餌の中に構造未確認の、あるいは構造はわかっていても、我々の対象としてないものについて検索をかけていくことは多分可能になってくると思いますので、トライしてみたいと思っています。
○寺尾委員 先生の研究の目的は、最終的に公定法をつくろうというところにあるのでしょうか。
○中澤委員 行政の要望は多分そういうところにあると思うんですが、公定法については、内分泌かく乱化学物質の分析法に関して、こういったバックグラウンドの問題や汚染の問題を考慮したような、非常にバリデーションのきいた分析法が、今後出てくるかどうかわかりません。今回作成したガイドラインを見ていただきますとわかりますように、なるべく注釈と解説を多く入れ、そして参考資料には、現在我々が見ることのできる最新の分析方法で、それをごらんになっていただければ、有用な情報は得られるだろうというようなものをまとめたということで、公定法までは無理だと私自身は感じております。
○寺尾委員 今のお話を伺っていますと、非常にデータのばらつきの可能性があるということで、なるたけ方法を統一しないと、各々のデータの横並びの比較はできないと思うんですね。そうしますと、どうしても公定法あるいはそれに準ずるような方法にしていかないと、なかなか解釈が難しくなってくるのではないかと思います。
○中澤委員 先生おっしゃるとおりで、実はこれを検討したメンバーも、食品衛生学雑誌に出ている方法を採用したわけですが、実際現場でこの仕事をされている先生方は、これらの方法は操作が結構煩雑であるということで、悪い方法ではないと私は思いますけれども、たくさんの検体を相手にするときには日常分析法として非常に難しいと思います。いわゆる受託の試験検査をやっている機関は、自分のところで開発された、日常分析に耐え得る、バリデーションのきいた分析法をお持ちだと私は思います。ただ、それはビジネス上非常に重要な知的財産だと思いますので、残念ながら余り我々の目には触れてきません。ただ、少しかいま見えるところを見ていますと、そういう情報がもし入手できましたら、それらを網羅して、少し丸い方法をつくりたいと思っております。
○安田委員 今のお話を伺っていても、これは非常に限界がないというか際限がないというか難しい問題だと思うんですね。サンプリングから試料調製から測定に至ってハードな部分・装置の部分と熟度の部分、これについての差を縮めていくことは難しいですね。先生のお手元にいらっしゃるメンバーの方はかなりのレベルを持った方だと思うのですが、ここで測定がいろいろなところからいろいろな測定データが出てきて、さっき寺尾先生も指摘されましたけど、評価の対象になり得るかという問題があるわけですね。  そのときに、先生もちょっとおっしゃったけれども、記録が大事だとおっしゃる。私はいろいろな方がいろいろな熟度とか装置を使って測定されたにしても、記録がきちんととれていて、それが後で評価の対象になり得るかどうかというところが非常に大きなポイントではないかと思うんです。先生おっしゃった記録というのが、これだけは必ず記録をとってほしいと、そういうものがガイドラインの中に入れられるかどうか、そのことを伺いたい。
○中澤委員 先生おっしゃったとおりでございまして、そのデータがどうだったかということをさかのぼって見るときに、私ども極端なことを言いますと、物を秤量した標準品、サンプルを秤量した目方の部分から数値がトレースできればいいと思います。また、クロマトグラム見ますので、GC、LC、GC/MS、LC/MSのクロマトグラムは絶対的に残していただきたい。そうしませんと、テーブルに出てきた数値だけで、先生方が御議論をされることになります。分析の先生方がごらんになったときに、こんなクロマトグラム上でわかっているのかということになりますと、その辺からまず疑問が出てくるということになります。
 クロマトグラムのピークのリテンションタイムだけでは評価できる時代ではなくなりましたので、どうしても質量分析計のようなハイブリッドな方法を持っていかないと難しくなりました。最近は安定同位体でラベルしますと、これで結構回収率の補正等できるようになってきておりますので、技術的なレベルは少しずつですが向上しているのではないかと思っています。ぜひ、そういう内容は解説の中に網羅していきたいと考えております。
○松尾委員 ノニルフェノールの分析についてお伺いしたいのですけれども、この本文を見ますと、異性体の分離が可能であるかのように書いてあります。御承知のようにノニルフェノールの異性体は、パラのものであっても鎖状になりますと十幾つあるんですか。なぜ、こういうことをお聞きするかといいますと、例えばノルマルですと、いわゆる環境ホルモンのアクティビティというのは非常に弱いんですね。枝分かれしていきますとだんだん強くなってくる。これは vitro の系ですけれども。
 もう一つは、生体成分あるいは環境成分を見てみますと、生分解性、バイオアベイラビリティその他で組成バランスがどんどん狂ってくる。抽出したものについてはかなりの分布が違ってくるものがあるわけですね。その1つひとつが全部活性が違うものですから、ちょうどダイオキシン、TCDDのあれと同じように、そういうような考えが適用できるのではないか、こう思います。
○中澤委員 先生おっしゃるとおりだと思います。このダイオキシンで対応しているような考え方を、こういう複数成分でできているものについては、アジピン酸のエステル類も実はそうなんですけれども、そういう考え方を持っていくべきではないかと思っています。
○伊東座長 そのほか、よろしゅうございますか。どうぞ。
○西原委員 今のと同じような感じなんですが、いわゆる簡単なバイオアッセイ、そういうもので、いわゆるTEQといいますか、相当量という形で分析トータルを評価する。これは個々のというより暴露評価の1つとして、その辺を使えるのではないかと私自身は思っているのですけれども、その辺に関してはこのグループではする予定は全くない。
○中澤委員 個々の物質を測定するのに、例えばELISAも含めてそうなんですが、設定するのは無理だろうと思っています。ただ、今、先生おっしゃいましたように、先ほどの例えば餌の抽出物の中のエストロゲン活性がどのくらいあるかとか、そういうものを見るのにはそのようなキットや先生のおやりになっている方法を含めて私は非常に有用だと思っていまして、その中で活性を示している物質が何であるかというのは、次の解明の段階かと。最初のステップとしては意義のある方法だと私は思っています。
○伊東座長 よろしゅうございますか。中澤先生ありがとうございました。
 次に「低用量」問題について、井上先生よろしくお願いいたします。
○井上委員 それでは、低用量問題検討作業班の御報告を申し上げます。

〔OHP映写〕
 この班は、私が責任者で、私どもの研究所の化学物質情報部の関澤先生に副責任者として大部分の調査をやっていただいております。

〔OHP映写〕
 最初に、ここでの低用量作用問題検討の低用量作用の語義について一応表記しておきます。これはEPAの過日行われました低用量問題に関する討議のときに使われた低用量の語義をそのまま準用しておりますが、これでいいかどうかはいろいろ考え方によって多少の擬議があります。しかしながら、ここではこのようにいたします。ヒトにおける暴露濃度範囲又は生殖発生毒性の標準試験法で一般に使用されている用量より低い用量で起こる生物学的変化としております。必ずしもこれは毒性すなわちアドバースエフェクトを意味しておりません。
 それで、なぜ擬議があるというようなもったいぶった表現をしたかと申しますと、これはエストロジェックな物質とアンドロジェニックな物質では用量が非常に違います。1,000 倍ぐらいのオーダーで違ってまいります。それはモル濃度でもそうです。ここで表現しますように、標準試験法で一般に使用されている用量より低い用量でというふうになりますと、必ずしも絶対量として低い用量のものばかり対象となってはきません。アンドロジェックなケミカルでは比較的高い用量のものも対象となります。エストロジェックなものでは絶対量にしますと 0.1 μg/・オーダーまで完全に生体反応が起こります。
 それに対しまして、アンドロジェックなものでは、ミリグラムオーダーになります。しかしながら、過日のEPAの会議ではこれも含めて検討されましたので、概念としてはそのように取り上げておこうと思います。

〔OHP映写〕
 低用量問題検討作業班のメンバーは、ここに掲げたようなメンバーの人たちで、JETOCの井藤さんには大変お世話になりました。
 内分泌かく乱化学物質のトキシコロジーでの問題点は、いわばリスクアセスメントに必要な3つの要素、有害性の同定、用量相関性及び暴露評価がそれぞれ確定していないということであることは再三申し上げているところでありますけれども、有害性の特定ができない、つまりハザード・アイデンティフケーションがはっきりしない。それから用量相関が明らかに直線性を持たないものがデータとしてあらわれてきている。その中で暴露の測定などにつきましてはいろいろ難しい問題があることはるる御説明があってわかりましたけれども、そのような測定が一応可能であるけれども、こういったものが3つぞろいにならないためにリスクアセスメントに問題が生じているということであります。これらが特に低用量反応のところで問題になっているということで、その辺のところを整理をするようにということがこのプロジェクトで申しつかった課題であります。

〔OHP映写〕
 問題点は、ここにもちょっと書きましたけれども、まず資料4の1ページの1.の「はじめに」のところに書いてありますことが、この報告の基本的な概略であります。何が書いてあるかと申しますと、訳のわからないということが書いてあります。(笑い)
 低用量作用問題は、種々のホルモン様作用を持つ化学物質の・受容体を介した作用様式、・その受容体の側の多様な反応特性及び、・ホルモン物質の形態形成期にかかわる不可逆性変化に関連した要因など、幾つかの異なった要因によって構成されており、その解決はそれぞれの作用メカニズム、これは独立していることが多いわけですけれども、解明の困難な今日的課題につながっている。
 この問題が可能性の問題とはいえ、もろもろのメカニズムにリンクした本質にかかわることが明らかになりつつあること、そのものはグローバルな研究の進展に基づく重要な知見であるが、同時にこれまでのいずれの化学物質の毒性解明に当たってもしばしばそうであったように、毒性メカニズムを明らかにすることはたやすいことではない。
 そうした背景に立って、米国環境防護庁では、昨年10月、米国ノースカロライナ州で、低用量問題に関する国際的な専門家による文献査読会議を行った。ここでは低用量作用の存否にかかわるデータのそれぞれに対して低用量影響が存在するとする見解と低用量作用が認められないとする双方の報告に対する信頼性を確認するという結果に終わり、今後に解明すべき課題を残したが、同時に低用量作用が明確にならなかったという現段階における認識状況をも浮き彫りにした。
 したがって、この問題では、以上のような現状に沿ってメカニズムの面からの解明と、現実的な面からの対策の双方から対応することが肝要であるということでございまして、メカニズムの解明は重要なのでありますけれども、メカニズムの解明に突っ込んでいくと解が得られるかどうか、時間的な関係からすると非常に問題がある。しかしながら、実用的に解決していこうとしている中で、現在まだいろいろ前に立ちはだかっているものがある。これを少なくとも幾つかの物質を対象にして、とりあえずプラクティカルに整理していくことを考えない限り、低用量問題があって、それがどういう意味を持っているのかというのを議論していると、際限なく時間がかかる可能性がはっきりしてきた。つまり、アドバースエフェクトか、単なるNOELの問題なのか、生理作用なのか、そこのところがわからないまま非常に極低用量のデータは確実に蓄積されております。
 したがって、その問題の解明以前にプラクティカルに物事を解決していくということも同時に進行しないと状況の整理がつかないということがはっきりしてきていると考えております。
 もう一つは、それと同時にプラクティカルの考え方の1つとして、ヒトに対する差し当たっての影響の問題も重視しなければならないと思っております。そのことに関しては、グローバルアセスメントをWHO/IPCSが進めておりますが、現在までこれにかかわるデータはありません。その全体を通じて低用量問題は考えていくしかないのではないかと思っております。今、申しましたように、受容体、リガンドそのものが、先ほど松尾委員もおっしゃられましたように、ノニルフェノールにつきましても、さまざまに自分たちでもって動いていくし混合比も変わっていきます。それぞれの影響が全く違っております。受容体についてはもちろんのこと、その後のシグナル伝達についてもそうであります。
 それから、これは別の角度になりますけれども、形態形成期にかかわる不可逆性変化については、これも実際にチルドレンズプログラムとして重要性をますます帯びてきているというのが実情であろうと思います。

〔OHP映写〕
 ホルモン様の作用物質の中から、植物ホルモンを除く傾向がありますけれども、植物ホルモンは厳然としてこれを入れて、これにもアドバースエフェクトが大量の場合には当然あり得るという考え方で対処すべきだという考え方が強くなっております。生体内の生理的ホルモンでありますけれども、実はこれは非常にトキシックなケミカルであります。そして生体内の生理的リガンドこそ、それから生体を守るためのさまざまな防衛機構が体の中に備わっております。そして、これは思春期と更年期以降には非常に揺らぎます。安定した成熟女性で通常の用量の内分泌かく乱化学物質による影響がどの程度あるかについては疑問視する人が多いし、事実そうだろうと思われます。思春期ないしはもっとその前の胎生期の形態形成期及び更年期以降の女性にはこれがきいてくることを示唆する動物実験データはかなり蓄積しております。それ以外についてはちょっと省きます。

〔OHP映写〕
 これらについての問題点は、いつも申しますように、ホメオステーシスとの拮抗関係にある。そして少なくとも生理的リガンドが体の中にある状態にプラスあるいはそれを差し引くような形で拮抗するような形で働くというようなことがありますので、どうしても用量反応性が、体の中に何もないものの中に加えていくという反応と違うことが外的物質の中から見てもあります。それに加えて、レセプターの側に更に別の要素があるということを前のOHPでお示ししたわけですけれども、そういうことがあります。
 あとは受容体の発現の低下(ダウンモジュレーション)というような現象がそれぞれの局面で起こってくるということ。それから生理的リガンドに対する防御作用がよくわかっていないということがあります。
 それから、多世代試験と胎児影響の乖離ということがある意味であります。ノースカロライナ・ミーティングのことについても、多少後で触れますけれども、多世代試験でネガティブに出るという傾向がある物質とそのドーズでもって胎児影響が明らかに出ます。なぜ、そのような関係になっているのかということが、これまで実はきちんと調べられておりません。それは驚くべきことにという表現を使うべきかどうかわかりませんが、DESでもそうですし、PCBのかなりのものでもそうですし、非常に強いものについてさえも、それが生体影響がないぐらいの Low dose に関する、長期試験も短期試験もなかったというのが実情であります。

〔OHP映写〕
 ノースカロライナのピアレビューミーティング(10月10日〜12日)が行われたわけですけれども、ここではとにかくプラクティカルにどういう状況になっているのかについてきちんと Low dose という問題のデータを調べようということでやったわけであります。

〔OHP映写〕
 そのときに使われた語義はこのとおりでありますので、もう繰り返しません。

〔OHP映写〕
 これから2つのOHPをお示しいたしますが、ビスフェノールAで Low dose effect があるとすることをまとめたのがこれであります。

〔OHP映写〕
 これがラック・オブ・エフェクトをまとめたものであります。

〔OHP映写〕
 前に戻りまして、アンダーラインを引いたところが、要するにフェアの部分でありますが、プロステート(前立腺)の重量が増加する。そして、思春期が早くくる。膣開口が早くなる。子宮重量が増える。これは子宮の上皮細胞の丈が高くなる。c−fosのエクスプレッションが見られる。プロラクチンレベルが血清で上がる。視床下部、視床あるいは下垂体のエストロゲンαのエクスプレッションが上がるというようなことがあった。
 それに対してベントラルプロステートの重量が上がっているという報告があったけれども、多世代試験のところで、子どもを間引かないで見たら、その前立腺への影響はないというふうに判断されました。これはむしろ2枚目にかかわるかもしれません。

〔OHP映写〕
 一方、シリーズ・オブ・スタディでもって影響がないことが認められた。いろいろな人たちがそういうことを言っております。あるいはタイルさんなどは、卵巣重量が増加することも確かにある。それはバイチャンスであると言っております。

〔OHP映写〕
 今のように、一言で言いますと分かれたわけですけれども、そのどの論文についても一応クレディビリティがあるという結果になりました。それはもう一度、そこで討議された論文、これを私どもの関澤先生が中心になり班全員の方の御苦労で、これに限らず、全体の70編ほどの論文を全部もう一度日本でピアレビューしていただきました。このビスフェノールAに関して意見の出ている論文はこれだけであります。そして、それについて Low dose でプラスとマイナスというデータがこういうふうに分かれております。その内容は今申し上げたとおりであります。

〔OHP映写〕
 今、途中でも申し上げましたが、低用量データがないということがこのピアレビュー全体を通じていろいろわかってまいりました。閾値問題における細胞膜透過性と受容体結合性の確率の問題などについての試算も必要であろうということになってまいりましたし、用量増加に伴う受容体機能発現の降下という問題ももう一度検討しなければならないし、あるいは核内受容体のシグナル修飾と相加反応性。相加反応性についてはかなりありそうだというデータも出ておりますので、それについての検討も、データギャップとして埋める必要があるだろうという考え方であります。

〔OHP映写〕
 先ほどのような背景としていろいろ検討がピアレビュー会議では行われました。試験動物における問題としては、動物の系統だけ合っていても、生産コロニーによる群間差が結構観察されることであるとか、飼料における問題。これは青山委員が先ほど質問されたように、植物エストロゲンの混入がある。その他の未知物質もありそうである。飼育条件における問題。仔動物を個別に飼育する場合と群飼育をする場合で比体重の指数が変わってくるということがわかった。当たり前かもしれませんが、そういうことがあります。  データの解釈における問題としては、臓器重量の体重補正をすることがかえって混乱を招いているという面もあるかもしれないし、また、共分散分析そのものが実際に本当に正しいのかどうか、いろいろな問題が取り上げられたわけであります。

〔OHP映写〕
 そういうふうなプラクティカルな問題で進めておりますので、そうするとヒトの問題を何とかしておかなければならないというプラクティカルな問題が当然出てまいりますので、その辺について、本来のこの班の目的ではありませんけれども、整理してみますと、またほかの班の方たちがいろいろお話しあるかもしれませんが、ダイオキシン類の生体障害性についても、乳がん等の成熟女性に与える影響についても、子宮内膜症についても、いずれもヒトに対するアドバースエフェクトとして確立した論文はないのが現在の基本的な考え方であることを同時に押さえておくことが必要だろうと思います。
 子宮内膜症につきましては、サルのデータが追試が行われました。シェリー・ライヤーが出したデータと方法は違いますけれども、基本的に全く同じ結果になりました。したがいまして、生物学的な蓋然性、プロシビリティは非常に高いという結果になりましたけれども、一応現段階でヒトのデータはありません。

〔OHP映写〕
 もう一方で、先ほどの試験法の話の中にもありましたが、確定試験法という問題がにわかに浮上してまいりました。にわかに浮上してまいった理由は、要するに本質的な機構問題がもう少し時間の関係でもって明らかになるといった希望的観測を持っていた方たちもいますし、これはえらい長い時間がかかると考えておられた方もいるわけですけれども、いずれにしても本質的な解明にはかなり時間がかかりそうだということがはっきりしてまいりました。
 もう一方、プラクティカルな問題については、それはそれでプラクティカルに進めるわけですが、既に中澤先生の測定のお話、菅野先生が説明したようないろいろなハイスループットであるとかそういったもののデータがどんどん出せるようになりました。そうしますと、これは本質的にアドバースエフェクトがあるのかないのかわからないままいろいろなケミカルがパイルアップしてしまうというような状況が明らかになってまいりました。もちろん内分泌かく乱問題では、性ホルモン様の作用を持つ化学物質が我々の身の回りにあることそのものが危険性をはらんでいるのだという考え方が本質的にあります。したがいまして、姑息な方法で解決がつくとは思いませんけれども、一応はある線でもって非常に強いところだけは確定しておかないと、これはいつまでも問題がたなざらしになったり、あるいは結論は出せないまでも対策が出せないということになることは非常にはっきりしております。
 そこで確定試験というものは何が確定試験になり得るのか。最低限の強い物質を選ぼうというわけであります。ただ、この報告書の中にも言葉を選んで書いてありますけれども、試験法によって強い、弱いが違います。ある試験で強いという結果が出たものが、ある試験では弱いという結果が出ます。したがいまして、先ほどの菅野先生の発表した中に、松尾先生からの御質問がありましたけれども、ある方法でもってネガティブだと判断されたものは、一応米国の考え方ではホールドであります。決してクリアーになりません。それはある程度本質的なことが明らかになったときにそのホールドが解けるという考え方が基本的な考え方であります。事実、例えばプラズモンレゾナンスでもって、アソシエーションで強く出る物質は必ずデソシエーションで強く出るかと申しますと、決してそういうことはありません。アソシエーションとデソシエーションが乖離することが非常にあるところがむしろ、このエンドクライン・ディスラプターの生物影響の難しいところであります。そういうことがありますので、確定試験法がつくれるのかどうかということそのものに対して疑問を持ちながら皆作業をどの国の人たちもやっていると思います。
 このほど、EUの方でも、この確定試験法について検討を進めるということが、そういうことでEU議会から約20億円の研究費が出されるというようなことになりましたし、環境防護庁でも、ここに挙げたようなものが、そういう確定試験法になり得るかどうかについて検討をしているところであります。
 当作業班における検討案というのはございませんけれども、検討中のものとしては、胎生期ウインドウの効果に注目した1世代試験、胎生期ウインドウ効果に注目した発がん試験、それプラス網羅的な遺伝子発現を何らかの形でもって評価方法に使うことができるかできないかの検討をこれから始めようとしているところであります。
 以上でございます。

○伊東座長 ありがとうございました。どなたか御意見、御質問ございますか。
○松尾委員 今の最後のOHPで、胎生期ウインドウを考えて、それで1世代というふうにされたのでしょうか。世の中といいますか、OECDにしろEPAにしろ2世代を考えていて、1世代では検出できないものが世代を越えて出てくるということがあるのではないかとしています。何か1世代とするには理由があるのですか。それとも確定ではなくてスクリーニングだとこういう位置づけですか。
○井上委員 いえ、確定にならないだろうかという期待を込めているのですけれども、2世代試験やっても無駄みたいなんです。時間が無駄なだけで本質的なこともわからない。どうもそういう傾向が強い。つまり2世代、DESでもって明らかにハザードがあるドーズで、2世代ではネガティブになってしまうんです。
○松尾委員 だからその逆もあるわけですよね。2世代をそういうふうに捨て去る理由、そういうサイエンティフィックな・・・。
○井上委員 捨て去りたいと思っているだけです。
○松尾委員 そういう科学的な根拠があるかどうかですね。
○井上委員 危険性をはらんだものは2世代をやるべきだという方向に持っていかなければならないとしたら、なるかどうかの問題ですから、それは本当にそうだったら、もちろんそうすればいいと思っていますけれども。
○松尾委員 だから、ここでは、2世代はだめだというふうにお考えで、1世代をとられた、こういうふうに解釈してよろしいですか。
○井上委員 難しい問題で、私の今の判断では難しいと思います。例えば1世代で出なかったものが2世代で出て、2世代までやって出なかったものが3世代までやったら出たというケミカルがかつてありましたから、だから、それと同じように、このエンドクライン・ディスラプターを考えるのか、それよりももっと本質は短期のところでもって、意外にきちんとした勝負がつく面すらあるのではないか、そこのところの問題だと思います。
 ですから、ここの案でもって、2世代をやらないでもう済むような、そういう方向を考えているという意味では確かにあります。
○松尾委員 もう一つ、概要を読ませていただきましたら、非常に哲学的な表現がありまして、蓋然性、生物学的・・・。
○井上委員 これは plausibility をそういうふうに訳しただけです。
○松尾委員 ○○ビリティですか。
○井上委員 プロオロジカルプロシビリティ。
○松尾委員 これはつまりポジであるというニュアンスが強いんですか、それともネガであるという。読んでみると、どうもポジであるというニュアンスが伝わってきますが。
○井上委員 それは生物学的動物実験をやる限りにおいてはポジに出るということです。ただ、それがヒトに出るとは限らないという気持ちを強く滲ませている。
○松尾委員 何か非常に難しい表現ですが、もう一度読み直ししますけれども。
○井上委員 EPAの文章とほとんど同じです。
○松尾委員 プロバビリティですか。
○井上委員 plausible.
○松尾委員 それに対して可能性というのがありますよね。
○井上委員 可能性とは全く違います。
○松尾委員 違います?
○井上委員 はい。
○松尾委員 それの可能性というのはどういうことですか。何か哲学的な問答なので。
○井上委員 蓋然性の可能性ですか。蓋然性の可能性と使っていますか。
○松尾委員 使っています。
○井上委員 それだったら表現、もう一度確かめてみます。
○松尾委員 後でまた詳しくお聞きしますけれども。
○藤原委員 私は化学のことはわからないのですが、先ほどのお話の途中で、多世代試験と胎児影響というお話の中で、子どもを間引かないでいたら影響が低下したというお話、たしかなさったように思うのですが、つまり、そのことは子どもをたくさん産むことによって体内に蓄積されたものが子どもを通して排出されると。つまり間引かないでいると、子孫にあらわれる影響が薄まるというふうに解釈してよろしいのでございますか。
○井上委員 まず私の説明をお詫びいたします。先生のような委員がおられるということをちゃんと念頭に置いてお話しすべきだったと思います。本当に深くお詫びします。あれはこういうことです。多世代試験をやるときに、子どもは系統によって何匹子どもが生まれるかというのはいろいろあるのですけれど、例えば多いものでは12〜13匹、5匹ぐらいに達するストレーンもありますし、7匹ぐらいのストレーンもあるわけですけれども、その子どもを全部それがメーティングさせたときに次の子どもをつくらせて、ずっと調べると、ある意味では文字どおりのネズミ算ですから、実験室が膨大に要るわけです。そのために一般にその中から6匹とか3匹とか選んで子どもをつくらせるわけです。
 そうやるものですから、そのときの選び方というのは、ある意味で選びようがないわけです。無意識に何かそこにスクリーンが入っちゃっている可能性があるわけなんですけれど、それが問題だということをCIITという研究所のポール・フォスターという人が、自分でその子どもをできるだけ全部調べたところ、そういう結果が出たのです。それでタイルさんも同じようなことをやったわけなんですけれど、要するに一言で言いますと、たくさんの子どもの中のばらつきがたくさんあって、それをきちんと見ると差がなかった、こう言っているわけです。それでその中の何匹かをとって調べた結果で見ていると、無意識に大きい子どもだけとったんですね。そんなことはしないのですけれども、無意識に何かスクリーンがかかって、その結果が有意差が出ているという可能性が高いというのがタイルさんの主張です。先生のおっしゃったこととは全く違いますので。
○藤原委員 わかりました。どうもありがとうございました。
○津金委員 ちょっと総論的な質問なのですけれども、低用量問題、逆U字というふうに言われるんですけれども、例えば栄養学で言われるU字型、要するに少な過ぎても悪いし多過ぎてもトキシックに働くと、そういう問題とはまた全然違う問題なのでしょうか。例えばホルモンだって体にとって必要なものなので、ある程度量が必要だけれども、ある程度多くなるとトキシックになるということとはまた違う問題なのでしょうか。
○井上委員 いえ、違うとは全く思っていません。そういうものも含まれる。
○伊東座長 そのほか、どなたか、御意見ございませんか。それでは、井上先生ありがとうございました。また、後で総合討論のときに、先ほど難しい先生がおつくりになった言葉などについてもディスカッションしていただきます。
 それでは、次に「暴露疫学」などの調査についての御報告でありますけれども、これは紫芝先生、牧野先生、津金先生ですか。
○紫芝委員 私が最初に5分ばかりイントロダクションさせていただきましてから、津金先生、牧野先生にお願いすることにします。
○伊東座長 よろしくお願いいたします。
○紫芝委員 私どもの暴露疫学班に関しましては、厚生科学研究の方から牧野先生と津金先生に全面的な御協力をいただきました。
 それでサマリーといたしましては、先ほどこの会の開始時にお配りいたしましたA4、2枚の紙がございます。こういう外的要因のヒトへの健康影響につきましては、例えば放射線について、広島、長崎、チェルノブイリの事例などが明らかにされており、放射線爆射量と発がんの関係が甲状腺初めいろいろな臓器について非常にはっきりしております。そういうことから暴露量の正確な決定が健康影響の検討には不可欠であると思われています。
 現在問題となっております内分泌かく乱物質につきましても、事故とか不注意による大量暴露によりまして健康影響が問題となった事例がいろいろありまして、例えば、1958年に日本で、1968年に台湾で起こりました食用油の精製過程でのクーラントからのPCB汚染では臨床的疾患としての油症が出現いたしましたし、その暴露量と臨床症状の関連も検討されております。
 また、1975年にイタリアのセベソで起きました工場爆発によるダイオキシンの地域暴露に関しましては、成人男性の暴露量とその成人男性が結婚してから、その後にパートナーから生まれた子どもの性比の問題、性比がほとんど女の子に偏ったということがございますけれども、そういう関係が最近明らかにされております。
 また、最近になりまして、スロバキアのPCBの高度汚染等につきましては、暴露量と甲状腺の自己免疫異常の頻度が関係することが明らかにされております。これら暴露の初期にたまたま生体試料の採取・保存がなされ、その後、測定技術が成熟いたしましてから、測定が行われまして、暴露量と健康影響の関係について報告がなされ、更にそのフォローアップにつきまして新しい知見が次々と追加され続けているコホートもあります。
 このような事故や高濃度汚染以外に、より普通の人の生活に近い場面でも内分泌かく乱化学物質の影響が懸念される場面が幾つもございます。これらにつきましては、人間の側での何らかの異常を検出する手段と生体試料採取など暴露量を評価する体制を確立した上で、厳密な免疫学的手法によりまして、暴露と異常との関係が確立されなければならない。人間の側の異常を、発がん、器官形成、神経発達、生殖機能と設定しましたときに、これまで報告されているコホート研究に関して、内分泌かく乱化学物質との因果関係についてのまとめが津金先生から報告されます。
 また、本邦でも厳密なコホート研究が実施される必要があることは明らかでありまして、その際に必要なEDCの濃度測定法の抜本的改良につきまして、また因果関係の傍証となる実験的研究の成果につきまして、牧野先生から御報告があります。
 津金班の検討の結果でありますけれども、結論としては、1として、乳がんのリスクはジエチルスチルベストロールによりまして 20 ないし 30% 上昇する可能性がある。その他のEDCでは明らかな上昇はなさそうである。その他のがんとEDCの関係では余り信頼できる研究がなくて言及するのが難しい。PCBは高度暴露群におきまして甲状腺異常を来す可能性がある。尿道下裂、停滞精巣など器官形成にかかわる問題につきましては研究が余りなくて言及ができない。PCBは日常摂取されるレベルで小児の神経系の発達に一時的に影響する可能性がある。精子数の低下、子宮内膜症、この問題につきましては、先ほど井上先生からも話がありましたが、これらの関連につきましては、疫学研究がなくて言及できないということなどが示されております。
 今後、本邦で質の高い疫学研究が行われる必要がありますが、それに関して具体的な研究方法、例えば一般的な健康診断をどういうふうに利用するかということも言及された提言がなされるはずであります。
 それから、牧野班ではEDCのうち、ビスフェノールA、クロロベンゼン、パラベン、フタル酸エステル、ベンゾピレン、PCB、クロルデン、ジブチルスズなどにつきまして、抽出法、測定法を改良して、さい帯血、母体血、母乳、尿、毛髪、腹水、臓器、その他の濃度を測定して、クロルデン、ナフタレンを除くいろいろな物質は、いずれかの生体試料の中に含まれるということで、暴露として問題になり得るかもしれないということが示されております。
 EDCの一部はヒト由来細胞を用いた受容体に結合するということと、EDCの作用機序として乳腺細胞、子宮内膜細胞を増殖させますし、栄養膜幹細胞分化に影響するということが示されております。
 それから、EDCの代謝過程ではグルクロン酸抱合が大きな役割をしているということが明らかにされております。
 このような成果は、今後疫学的な研究の成果と相まって、EDCとヒトの健康影響の因果関係について重要な示唆を与えると思われますが、詳細につきましては各サブ班の班長の先生からお話を承りたいと思います。津金先生よろしくお願いいたします。
○津金委員 私どもは内分泌かく乱化学物質をたくさん摂取している人がある病気にかかる確率が高いか否かということを示している疫学研究の論文をレビューすることによって現状を把握して、今後こういう研究が必要なのではないかというようなことを考えてみました。
 これは厚生科学研究で、主に人への健康影響を研究している3つの研究班の共同作業として進めさせていただきました。私どもの班以外にも主に生殖泌尿器系、先天異常の研究をしています北大の岸先生の研究グループ、精子数などの研究をしております聖マリアンナ医大の岩本先生の研究グループ、その3つの研究班の合同作業として、本報告書、仮の報告書を作成してみました。
 次の目次ですが、まず最初「はじめに」、次に「総論」、疫学研究の方法論について、後の各論を見ていただくときに必要な用語とか知識を示させていただきました。
 各論としては「発がん影響」、「甲状腺機能への影響」、「器官形成への影響」、「小児神経発達への影響」、「生殖機能への影響」というふうに限りまして、そこに示している12の主に疾病、機能異常について関連に関する文献をレビューしました。
 4.として「まとめ」、5.現状から「必要な研究の提言」。
 そして、資料として実際に検討した健康影響、疾病、頻度がどのぐらいあるのか。主に日本においてどのぐらいあるのか、内分泌かく乱化学物質以外のリスク要因はどういうものがあるのかというようなことをお示しするために資料をつけさせていただきました。
 「はじめに」ですが、疫学研究で実際に我々の人間社会に存在している量のEDCが人に対して何らかの健康影響を及ぼしているか否かということを知るためには、人間集団を対象としてEDC暴露と健康影響との関連を検討した疫学研究からの証拠が重要であろうというようなことを記しています。
 次に「総論」に関しまして、疫学研究の方法に関しては比較的なじみがない人たちも多いと思いますので、幾つか簡単にまとめさせていただきました。
 まず「疾病頻度の指標」としては、罹患率、死亡率、有病率というものがあるという話。
 2番目、「暴露の指標」として、たばこに関しては、たばこを吸うとか吸わないとか、比較的把握しやすいのですが、EDCは非常に微量のものもあるので、主に血液とか生体試料中の存在量というものが非常に重要な暴露の指標となります。そういう意味でも、後で紹介される牧野先生たちの暴露指標を測定するという技術が疫学研究に取り入れられるということによりいろんなことがわかってくる可能性があると思います。
 3番目、「関連性の指標」としてはどんなものがあるのか。相対危険度、オッズ比、相関係数について簡単に説明しています。後の各論においてはこういう相対危険度、オッズ比、相関係数などで関連を示しています関係上、用語の説明をさせていただきました。
 4番目として、「研究デザイン」について、1)無作為化割付臨床試験から、7)の地域相関研究まで、疫学といってもいろんな研究デザインがありますので、研究デザインについての説明をしています。レビューにおいても、どの研究デザインを用いた研究かということを特に重点に置きながらレビューをしています。表などでも研究デザインごとに分けている関係上、この研究デザインについて簡単に概説させていただきました。
 5番目として、「研究デザインにもとづく疫学研究の評価」、これは明らかに研究デザインによって研究の質が異なりますので、順位づけ、一般的に無作為割付臨床試験が最も信頼性が高い研究であり、断面研究とか地域相関研究が最も相対的には信頼性が低い研究であると、研究の順位づけを記しています。
 6番目として、疫学研究から「因果関係の評価」をするに当たっての注意点を幾つか示しています。疫学研究というのは人を対象にした研究ですので、いろんな複雑な要因が入ってきます。特に偶然、バイアス、交絡、因果性という4つの要因が影響を及ぼし合いまして、最終的に因果性を証明するためには、残りの偶然、バイアス、交絡をいかに排除していくかというようなことが研究の質を決めます。偶然というのは、P<0.05 とか統計的に有意というようなことにおり、偶然である可能性が低いということでよく使われていると思います。
 それから、バイアス、交絡をコントロールするために一番いいのが無作為化割付ということになっていて、無作為割付試験がそういう意味では最も研究デザインとして質が高いと考えられているわけであります。
 今まで因果関係に関しましては Hill の判定基準、先ほど井上先生もおっしゃっていましたけれども、プロウシビリティ(plausibility)とかそういうようなものを考えながらやっていくというのが、今まで歴史的に1つありました。ただ、最近ダイオキシンの健康影響に関する全米科学アカデミーでのヒトに健康影響があるかどうかの判定とか化学物質などの発がん性評価に関する米国保健省の判定基準、IARC(国際がん研究機関)の判定基準等々は比較的共通性がありまして、総論本文、14ページの6)因果関係の評価の現状としまして、そこに共通点として5つ書いてあります。
 ・ 専門家の審査を経て出版された疫学研究論文を、主な資料として採用している。
 ・ 因果関係は「ある」「ない」というものではなくて、「十分な知見がある」「限定的な知見がある」「不適切な知見がある」などの段階的な判定を採用している。
 ・ 疫学研究と動物実験の双方を利用するが、最終的には疫学研究の知見をより重視している。
 ・ 疫学研究の評価に当たり、Hill流の判定基準というよりも、偶然・バイアス・交絡という競合的解釈をいかに排除しているか、そういう研究の質で判断していく。いわゆる反証主義的な立場から、疫学研究の妥当性が判断されている。
 ・ 研究の進展に合わせて、判定の見直しと更新が繰り返されているということであります。
 そして各論ですが、最初乳がんについて記しています。ほかのすべての疾病について共通の文献検索のストラテジーを主にとっていまして、乳がんのところを例に説明いたしますと、「研究方法」のところに書いてありますように、pubMed のデータベースを使って、疾病とかつEDCとしては殺虫剤(Insecticides)、農薬(Pesticides), Chlorinated Hydrocarbons, PCB, Bisphenol, Phenol, Phthalate, Styrene, Furan, Organotin, Diethylstilbestrol, Ethinyl Estradiol に関して、病気とこういうものの暴露との関係を調べている論文を検索してレビューしました。
 乳がんに関しては48件ありまして、コホート研究6件、症例対照研究34件のうち、コホート内症例対照研究10件と非常に多く、唯一多く研究されている臓器でありました。
 これを1つひとつ言っていくときりがないので、各論の部分は、最少に説明します。乳がんの表の3−1−1を見ていただくと、主に Diethylstilbestrol に関しては、それが投与されてきた人たちがたくさんいるので、コホート研究がたくさん行われていて、大体相対危険度 1.2 倍とか 1.3 倍というデータがどの研究においても出ているのが現状です。
 次は症例対照研究、いわゆるコホート研究において保存されていた血液を用いて症例対照研究というものを行った研究で、前向きのコホート研究はランダマイズ・コントロール・トライアルの次に信頼性が高いと考えられているのですが、こういう研究において、DDEとPCBに関しては非常に多く研究されていました。結論から言うと、こういうような信頼性の高い研究が行われた結果として、DDEとかPCB、有機塩素系農薬は、実際人にはたくさん残留しているのですけれども、乳がんの発症には影響してないと言えます。関連がなさそうであるということが言えるぐらいに、ある程度質の高い研究が存在していたということであります。
 そのほか、乳がんに関して、表3−1−3の後ろ向き研究で、ノニルフェノール、ビスフェノールA、フタル酸に関する研究が1件ありました。これは血液中の濃度を測ったのではなくて、職業暴露で推定したものなのですが、これらの関連はありませんでした。PCBとか有機塩素系農薬とかそういうもの以外の内分泌かく乱化学物質に対する人の研究知見というのは非常に少ないということです。
 あとの各論は全部飛ばしまして、最後の方に、「4.まとめ」というところがあります。紫芝先生に、今、御紹介していただきましたけれども、発がん影響に関しては、複数のコホート内症例対照研究の成績より、有機塩素系化合物による乳がんのリスクの上昇はなさそうである。しかしながら、層別解析で関連が出てくる可能性を示唆する報告があるので、日本人において果たしてどうなのかという研究などが必要だということになります。
 それから、そのほかの部位のがんに関しては研究はほとんどない。
 甲状腺機能に関しては、PCBの高度暴露者において甲状腺機能の低下をもたらす可能性はあるのですが、ただ、研究の質が高いものではない。断面研究なので、より質の高い研究が必要であろう。
 器官形成についてはほとんど成績はない。
 小児神経発達への影響。これに関して幾つかコホート研究があって、PCBがもしかしたら日常摂取されるレベルにおいて、小児の認知機能や知能、思春期の発達を低下させる可能性があるのではないかという示唆する知見が得られています。
 精子数とか子宮内膜症に関しては、ほとんど何も言及できないというのが現状です。
 最後に、「5.必要な研究の提言」を行っています。欧米ではたくさん疫学研究あるのですが、この文献レビューを通して、日本人に関するものはほとんどゼロでありました。欧米の人での知見をそのまま日本人に採用できるかという問題もありますので、日本人の研究をやはり推進する必要があるのではないかということです。最近注目されている、遺伝的な素因とか食べている植物エストロゲンなどの量が欧米の人とは違いますので、日本人における知見を示す必要があるのではないかということで幾つか研究の提言をしています。
 1つは暴露と疾病の現状把握とモニタリングを継続すべきである。実際に米国のCDCにおいては、いわゆる国民栄養調査において、Environmental Health Profile として、血清や尿中の残留農薬、PCB、ダイオキシン類、植物エストロゲン、フタル酸、多環芳香族炭化水素などの測定が含められています。
 それから、疾病のモニタリングに関しましても、死亡統計は日本はかなり信頼性の高いものがありますが、ほかの罹患統計、特にがんでさえも罹患統計が国レベルでは整備されていないという現状があります。
 2番目として、疫学研究の方法論を基盤とした、人を対象とした研究をもっと行うべきであろう。ただ、統計をとる、件数を多くして偶然性を排除するだけでなく、バイアス・交絡というものを最小限にするようなきちんとしたデザインによる研究が行われることが望ましい。
 その中で特に具体的な研究としては、いわゆるコホート内の症例対照研究で内分泌かく乱化学物質を測定していくという研究が、実際今、日本で2つ大きな血液が保存されている研究がありますから、そういうものを利用したコホート内症例対照研究が非常に今後重要なのではないか。
 それから、妊婦や乳幼児、特に子どもなどに対する影響に関しては非常に未知の部分が多いので、ここら辺をきちんとするような研究が必要ではないか。日本においては、母子健康手帳の交付とか乳幼児の健診などがありますから、そういう機会を利用しながら研究を進めていくというようなことが必要なのではないか。
 精子数に関しましても、増えているか減っているかという問題だけではなくて、実際本当に内分泌かく乱化学物質が影響を与えているのかどうかというようなことをきちんと調べていく必要があるだろう。
 日本は特に職域での作業環境測定とか健康診査などの情報が豊富にありますので、こういうような職域からの研究の成果が期待できるだろう。
 3番目としては、情報公開、こういうようなレビューを継続してやっていく。
 最後に頻度についての資料をつけました。例えば乳がんを例にすれば、実際何人日本においてはかかっているのか、何人乳がんで命を落としているのか。それから、年齢としてはどのぐらいの年齢の人がかかっているのか。増えているのか、減っているのか。日本ではどうか、アメリカではどうか。日本ではその病気が多いのか、少ないのか。それからほかのリスク要因、いわゆる交絡要因になり得るようなリスク要因としては何が今のところわかっているのかというようなことを添付資料として加えました。
 特に尿道下裂とかそういう先天奇形に関しましては増えているか減っているか、よくわからないというのが現状であるということであります。
 以上です。
○伊東座長 ありがとうございました。
 それでは、牧野先生、引き続きお願いいたします。
○牧野先生 東海大学の牧野でございます。

〔OHP映写〕
 私の担当いたしますところは、このOHPにございますが、生体の暴露の量でございます。御承知のように、生体の暴露といいますと、測定された生体試料中の絶対値がまず問題になります。

〔OHP映写〕
 最初に生体試料中の測定値を皆様に呈示する前にどうしても押さえておかなければならない点を申し上げたいと思います。1つは、測定法の確立でございますが、これにつきましては、分析作業班の中澤教授が既に御報告になっておられますので、ここでは触れません。
 EDCの測定という問題に実際に直面しますと、まず最初に特異性に優れて感度に優れて、しかも安定性に優れた測定法がなければ全く一歩も進めません。散発的に報告がなされるデータほど、なぜか絶対値が高いというようなこともございます。したがいまして、測定法の確立ということが大変時間を要しますが重要な点であります。
 第2に生体の暴露ということでございますが、臨床上、暴露ということが非常にあいまいであります。暴露という定義がさまざまなところでいろんな解釈があろうかと思います。暴露というのは、生体に影響が残っているものを暴露とするのか、あるいはターンオーバーが早くてハーフライフが非常に短くて、生体から出てしまったものは暴露とは言わないのかとか、暴露ということをとらえるときに非常に難しい点がございます。
 それから、暴露ということにつきましては、AというEDC(かく乱化学物質)がそのままで生体で存在するというものは極めてまれでございまして、いわゆる異性体であるとか、代謝産物という形でも存在いたしますので、何をもって暴露量とするかということも大変難しい問題でございます。
 第3に作用の発現ということでございますが、当然のことながら、これは発現するからには、レセプターという問題がございますが、私どもは専ら既知のレセプターという概念で考えておるわけでございます。恐らくEDCにはオーファンのレセプターも存在するわけでございますし、エストロゲンのレセプターに例をとりますと、サブタイプまで分析いたしますと、必ずしも、これらの化学物質というのは一様にエストロゲンとして作用するわけではございません。
 したがいまして、作用発現というところ、レセプター1つ取り上げましても大変難しいところがございます。作用発現という考え方でございますが、どうしても内分泌かく乱化学物質はどちらかというと悪者に仕立て上げられるというか、マルかバツといえばバツに近い。シロかクロかと言えば、クロに近いという、ひょっとすると我々は測定前にそういう概念で作用発現を見てないかという問題がございます。
 もう少し具体例を申し上げますと、御承知のように、米国の内分泌学者でロイオ・グリープという方がおられます。1905年に生まれて、93歳まで生きられましたので、3〜4年前に亡くなられた方でございますが、日本内分泌学会の外国の名誉会員の第1号でありまして、そのグリープ先生が、1930年代にLHとFSHというホルモンを発見しておりますし、50年代にはたまたま使ったラットに歯のないラットがあって、当然そういうものは捨てるわけですが、捨てないでブリーディングしていって、パラサイロイドホルモンの発見につながったという方でございますが、このグリープ先生は93歳まで内分泌学会では一番前に座って聞かれておられたという方で、いわば20世紀の内分泌のずっとヒストリーを身をもって生きてきて方でございますが、そのグリープ先生がおっしゃるには、「内分泌とは(ホルモン)」という定義の中で、ホルモンというのは天が生きとし生けるものに与えたギフトだと言っています。贈り物だと。もしホルモンというものがなければ、当然新しい生命もできないし、恋愛なんていうこともありません。生殖ということも起き得ないということで、英語で言うと、パラマウント・ベーシス・オブ・エブリー・ソーシャル・オーダーと言っておりますけれども、社会秩序というものまでホルモンというのは規制しているのだというようなことを彼は言っているわけでありますが、そういうことから考えますと、内分泌かく乱化学物質のホルモン作用を、どうも我々は悪者に見立てていろいろやっているのではないかと。検討するからには、いわゆるよい面というか、ホルモン作用としての、今申し上げたような、いわばグリープ先生の定義に則ったような検討をいたしませんと、片一方の評価だけで終わってしまいはしないかというおそれがございます。
 作用発現ということにつきましては、ホルモンの作用発現のみでなく、解毒・代謝の一連のシーケンシャルところまでフォローしなければ、作用発現というものはなかなか議論できないのではなかろうか、こんなことがございます。
 以上、私の担当いたしました生体の暴露ということでございますが、御承知のように生体というには大変限界がございます。vitro でやるか vivo でやるか。あるいは倫理委員会の問題がございまして、必ずしもヒトのマテリアルを自由に使えるというわけではございません。こういうことを踏まえて、今日お示しするような生体暴露量というものを呈示いたしたいと思います。

〔OHP映写〕
 ここに幾つかのEDCのキャンディデイトを挙げております。これらについてすべて私どもは厚生科学研究におきまして、中澤班と連携をいたしまして測定してまいりました。後のOHPですべての絶対値をお示しいたしたいと思いますが、この8つのキャンディデイトすら果たして何の根拠で取り上げたかということは私自身もなかなかお答えできません。つまりEDCの定義そのものが難しいわけでございますが、とにかく生体試料測定として、この8つを取り上げたとお考えになっていただきたいと思います。
 この生体試料につきましては、ほとんどが神奈川県の伊勢原市というところで採取してございます。伊勢原市というのは御存じのように、南に湘南の海岸がございまして、裏は大山、丹沢山塊がありまして、ある地域はいわば山紫水明というところになりますが、3本の大きな高速道路が通っております。東名高速と246号線と厚木〜小田原道路。この道路の沿線沿いというところといわゆる山岳地方とさまざまなところの症例をすべて患者さんのバックグラウンドを記録として残してございます。
 これから呈示する試料は、すべて同一試料、母乳、母体血、さい帯血、羊水、その他すべて1人の患者さんから出てきたものセットで測定していくことになっております。ある母体である物質が出てほかのところでは何も出ない。あるいは濃度勾配というものを検討できませんと、大変おかしいことになりますので、そういう特徴のあるサンプルということで御解釈いただきたいと思います。

〔OHP映写〕
 それでは暴露量について呈示いたしたいと思います。まず、試料のサンプリングの問題で、先ほど中澤先生もおっしゃいましたように、コンタミネーションの問題がございます。コンタミネーションと申しましても、好んでコンタミするわけではございませんで、これは無意識下にサンプリングしたときの容器、その他に既にそういう物質が含まれるということでございます。ここにございますように、さい帯を保存する容器、さい帯血を採取する器具、さい帯血を保存する容器、母体血を採取する器具、母体血を保存する容器、母乳の保存器具、腹水を採取する器具、そして、それを保存する容器、すべてについて検討いたしました。
 下の方にはその結果がございますが、これはDEHPを1つの指標として検討してございますが、すべて私どもが用いたものは 10 ppb 以下、つまり測定限界以下のバックグラウンドの容器を用いたと解釈していただきたいと思います。

〔OHP映写〕
 すべての資料は、お手元の資料の後半にございますので、それを参照されながらOHPの説明を申し上げたいと思いますが、これはビスフェノールAの濃度でございます。血中と腹水がございます。血中での平均が 0.46 ppb 、腹水の方は 0.56 ppb という値を私どもの試料からは得られたわけでございます。

〔OHP映写〕
 下半分は、これは母体の静脈血とさい帯血でございます。絶対値は 0.43 と 0.64 というのが平均値でございます。詳しいデータにつきましては、お手元を参照いただきたいと思います。

〔OHP映写〕
 先ほどまえおきが長くなりましたが、ビスフェノールAにつきましても、いわゆる抱合体がございますので、この生体内での濃度を把握することによって、逆に信頼性のあるビスフェノールAレベルを求めていこうと、今この問題を検討しております。いわゆる血漿中のグルクロン酸で抱合した形をビスフェノールAと同時に測定して、生体の動きを見ていこうと、こういう流れを今続けております。

〔OHP映写〕
 これがパラベン類でございますが、御承知のようにパラベン類というのはドリンク剤等の中にもございます。化粧品にもございまして、母体から胎児への移行ということが考えられるわけでございますが、いわゆるメチルパラベンでさい帯血、母体血を眺めますと、ほぼ 90% から 100% に近い検出率でございまして、さい帯血中ではメチルパラベンで見ますと、24.1 ppb でございまして、母体血では 3.8 ppb という値でございました。

〔OHP映写〕
 これはOHPが細かいものでございますが、この具体的な数値はお手元にそのままございます。

○伊東座長 先生、もう少し簡単にお願いいたします。時間が大分たっておりますので。
○牧野先生 はい。持ち時間が15分ということですね。あと7〜8分で終わりたいと思います。

〔OHP映写〕
 ヘキサクロロベンゼンにつきましては、ほとんど 100%、成人血中、腹水、母体、末梢血、さい帯血から検出しております。詳しいことは、お手元の資料を参照いただきたいと思います。

〔OHP映写〕
 フタル酸エステル類につきましては、先ほど中澤先生がおっしゃいましたように、これは生体内の酵素でフタル酸のモノエステルに変換いたしますので、今こちらの方を中心に生体中で測定中でございます。

〔OHP映写〕
 これはPCBでございますが、PCBにつきましては、ファットベースでお手元の資料にあるように、母乳、母体血、さい帯血でこのような絶対値で測定がなされました。

〔OHP映写〕
 これは有機スズでございますが、有機スズは、2つの方法、片方がやや感度が上でございますが、測定いたしました。手元の資料には詳しく書いてございますが、家族性に1家族で高値で出てくるという症例もございまして、今後これにつきましては、他の試料で目下測定中でございます。

〔OHP映写〕
 ヒト健康への影響をヒト由来の副腎の細胞で、植物のエストロゲンにつきまして検討いたしますと、これはコルチゾール産生抑制でみておりますが、ファーマコロジカルの量ではという条件で、vitro では副腎皮質の細胞にはこのような影響があるということであります。

〔OHP映写〕
 同じくヒト由来の乳がんの細胞でも、これは植物性のゲニステイン、あるいはダイゼイン等はこの細胞の増殖に、いわゆるドウスウを考えなければこういう影響があるということでございます。ここで注目すべきは、ゲニスタインであるとかダイゼインというものを単独で vitro で検討するならば、それぞれ上2つのような結果が得られて、明らかなエフェクトがあるのですが、こういうものが2つ混じったようなものでフジフラボンのようなもので検討すると、こういうエフェクトが消えてしまう。生体内では、私どもはこういうものを混合して摂取いたしますので、単純な物質の検討だけでは解釈できないという点が興味ある点だと思います。

〔OHP映写〕
 レセプターの問題です。サブタイプのレセプターでは、同じダイゼインであるとか、ビスフェノールAはα、βのレセプターにアゴニスティックに働きますけれども、植物エストロゲンのゲニステインなどはアンタゴニスティックに働くと。サブタイプで検討するとアンタゴニスト、あるいはアゴニスティックに働くという、2つに分かれた作用が同じ植物性のエストロゲンでもあるということでございまして、サブタイプで今後検討していくとさまざまな解釈が分かれてくるというところが生体への影響の複雑なところだと思います。

〔OHP映写〕
 これはいわゆる解毒・代謝の問題でございます。一つはビスフェノールAというのは、御承知のように肝臓あるいは腸管で代謝されますが、このいわゆるグルクロン酸の抱合の酵素というのは、胎盤あるいは子宮に発現しておりまして、こういうところで次世代への影響ということを今後検討すべき点ということで今検討をしております。

〔OHP映写〕
 これはいわゆる胎児・胎盤への特異的な遺伝子発現ということで、これもTS細胞を用いまして、このTS細胞というのは胎盤の分化にかかわる細胞でございますので、これに対して、今申し上げた生体に暴露がはっきりしている各物質がどのような分化に影響を及ぼしているかということを本年度検討しております。
 これでOHP終わりです。ありがとうございました。
 いずれにいたしましても、生体の暴露というものを絶対値だけを呈示いたしますと、甚だ数字だけの解釈というのは単純でございますが、とらえ方としてはなかなか複雑な面があるということを申し添えて報告にかえたいと思います。
 ありがとうございました。

○伊東座長 ありがとうございました。
 それでは、この3人の先生からの御報告につきまして、御意見ございましたらどうぞ。ございませんか。
 特にないようでございますので、大分お疲れだと思いますけれども、もうちょっと頑張っていただいて、最後の御報告でありますけれども、「リスクコミュニケーション対策」についての御報告を内山先生と神沼先生にお願い申し上げます。
○神沼先生 それでは、神沼から簡単に最初に御説明しまして、あと班長の内山先生に追加していただきたいと思います。
 これは、私どもの班といいますか、この作業は極めて簡単でございまして、ほかの発表とは大分意味合いが違います。この資料に沿って御説明したいのですが、「はじめに」というところに書きましたように、私どもはこの3名、内山先生、私、吉田淳氏と2回ほど会合して、そしてこのリスクコミュニケーションという班の作業をどういうものにすべきだということを論じました。
 したがって、実際の今まで発表と違いまして、今までの発表では実際行われた作業が報告されておりますが、私どもの御報告はいかなることをなすべきであろうか。そういう作業班がつくられたときに、それがスムーズに立ち上がり、意味のある結果が出るようにするにはいかなることを用意しておくべきかという観点から考えてみました。
 まず「リスクコミュニケーション」ということなので、結局コミュニケーション、一番問題は、この研究班自身の目的が多少まだあいまいなところがあるのではないかと思っております。それは一番重要な点なので最初から申し上げますと、私どもはここではリスクコミュニケーションというのは双方向であるというようなことを考えておりますが、つまり誰から誰に何を伝えるかということが、双方向というのが情報のやりとりと考えておりますが、実際に今日の後の方のところで出てきますリスクコミュニケーション班の目的というのは何々を理解せしめると書いてあるんです。これはこれと矛盾しておりまして、何々を理解せしめるというのは、あるものがある一方向への情報伝達ということをうまくやろうということが後ろにありますので、この点、リスクコミュニケーションの班自身がまだ目的がどのようなものかということがちょっと揺れているというふうに、私ども自身も考えております。
 あとは、「リスクコミュニケーションの定義」、次のページのもともとの「リスクの概念」、「リスクマネジメント」の問題、「内分泌かく乱物質の概念」を最初にはっきりしておこうということで、これはまさに蛇足といいますか、先生方はよく御存じのことが多いのですが、実際にこれは誰を対象にするかというと、こういう問題については、格別な予備知識がない、あるいは今日のこの検討会で使われておりますさまざまな用語、言葉についてほとんど理解がされない方を対象にすることを考えておりますので、一応リスク、リスクの概念、内分泌かく乱物質の概念、それらの用語については理解可能のようにしなければならないということで幾つか書きました。
 これについては、それほど特別なことを書いたわけではありません。先ほどの疫学の説明と同じような一般的な方法論でございます。
 ただ、リスクコミュニケーションというのはどういうふうに位置づけるかというと、1つはリスクマネジメントの一環としてリスクコミュニケーションがあるといった考えをするかです。そのあたりが問題だと思います。
 非常に重要なことは、3ページのところで、リスクコミュニケーションのときに、お互いに共通の概念、言葉、あるいは言葉に対する理解がありませんとコミュニケーションは不可能でございます。その意味で、何がコミュニケーションを難しくしているかということで、これは内分泌かく乱物質の問題が凝縮されているわけですが、現在提出された作業観察といいますか、仮説自身が専門家の意表をつくものであるとか、逆U字の問題とか、植物エストロゲンのようにある意味で専門家もメカニズム的に矛盾するような考え方をせざるを得ないようなものとかさまざまな問題がございます。こういうものを意識的にきちんと説明しなければならないだろうということでございます。
 それから、最後の3番に「検討すべき課題の範囲」というのが書いてありますが、ここはこれを見ていただければ大体おわかりと思いますが、誰から誰というときに、国民、市民、消費者、政府、NGO/NPO、企業、その他のいわゆる関係者(Stakeholders) といわれている方、特別な関係者、海外の方、市民の方という場合を想定する。かなり広くとってあります。
 コミュニケーションの目的としては、今申し上げましたように、これは一番実は重要なんですけれども、例えば行政が市民あるいは国民に対して説明をする。あるいは政策の理解を求める。これは昨今アカウンタビリティという言葉が大変使われておりますが、あるいはここには書いてありませんが、合意の形成というような意味で、例えばパブリック・アクセプタンス(PA)という言葉が使われる。これは私が後から気がついて、今つけ加えたいと思ったPA(パブリック・アクセプタンス)ということが目的の場合もあると思いますし、リスクの提言、問題解決の加速、緊急の警告、その他があると思います。
 更に情報発信者、生活者や消費者が情報発信者である場合は、逆に意見の表明、政策への提言、問題解決への参画というようなことがあるだろう。このほかたくさんございますが、これはこれだけということではなくて、あくまでも作業班をつくったときにこういうものをたたき台として参加してくださる方々が、よりスムーズにこの問題について研究班に参加していただくということが目的でございますので、別にこれだけで閉じているわけではございません。
 それから、「提供情報の内容(コンテンツ)」ということで、どういうことを伝えるかでございますが、これはさまざまな行政が行っているマネジメントの内容、例えば調査研究の内容、誤解解消のための説明。人が誤解と考えていれば、誤解の解消の説明、その他がございます。
 また、リスクに関しては当然、ちょっとここは抜けておりますけれども、集団(ポピュレーション)、疫学流ポピュレーションの概念は当然重要でございまして、誰が、例えば子ども、幼児、女性、男性それぞれによってもリスクが違いますし、更に遺伝的な特性、いわゆる今で言いますとゲノムの方から見たセプタビリティといいますか、感受性の問題がございます。こういうものは当然考えなければいけないだろうということでございます。
 それから「メディア」、これは非常に広範にございます。例えばそれぞれの省のニューズレター、パンフレット、ウエーブサイト、マスメディアを通ずる場合、雑誌、単行本、ステークホルダーへの説明会とか対話集会、その他さまざまなものがございます。
 それから、それを使う人のユーザーといいますか、その情報を受け取った方への使い方の問題。例えばウエーブサイトを単につくるのでなくて、ウエーブサイトは使いやすいようにしておかなければいけないというようなことでございます。
 それから、リスクコミュニケーションというものは、単独、ある時期一回やればいいのだということでは決してないと思うので、どういうふうに継続するかというものが非常に重要でございます。実際にこれは余談になりますが、私も国立医薬品食品衛生研究所におきまして、ウエーブサイトでこの種の情報を出したところ、ずっと継続してどなたか専門家がいる必要があると感じました。
 「実行と組織」、そういう意味でどのような組織でこの研究班が実行するか。フォローアップをどうするかというようなことが必要で、これは当然のことです。
 その他「検討事項」は、この問題、特に重要な問題幾つかございます。この報告書をまとめたときに1つ強く感じたのは、さまざまな報告書がわかりやすいか、わかりやすいような、例えばそれは専門家のためであるということであれば、わかりやすい解説を書くべきか。できるだけそういうものが利用されるようにすべきではないかというようなことが話し合われました。
 「試案」としては、例えば衛研におけるウエーブサイト、既にあるものは十分に活用し、更にそれを伸ばしていくにはどうしたらいいか。対話集会その他をこれから考えるべきであろうかということでございます。
 あと、参考文献として、URLをいろいろつけようということでありましたが、これが完成した作業報告書でありませんので、まだ、それをそこにつけ加えるに至っておりません。
○内山先生 今、神沼さんがお話になったのは約10分かかっていますけど、あとよろしいですか、15分ぐらい。
○伊東座長 大体10分前ということになっていますので、まだ十分ありますから。
○内山先生 このコミュニケーションという問題ですが、皆様方に基本的なことをお話しをしないと、コミュニケーションの作業班をつくった意味を御理解いただけないのではないかという気が実は私はしております。
 私この話を今年の1月でしたか、伺いました。それは、ここに議事録がありますが、それをゆっくり拝見をいたしますと、恐らく去年の12月に御議論なさったときにコミュニケーションの作業班をつくるということが決定したのだろうと思います。この議事録を拝見しながら、コミュニケーションの問題についてどのくらいの評価を受けているのかということを改めて私は感じたのですけれども、端的に申しますと、研究と生活との間の結ぶものはコミュニケーションである。
 これは最初の局長の話にもありましたけれども、内分泌かく乱物質の問題というのは、一般の人たちが非常に気にしている問題なんですね。ですからそれに対する研究が極めて重要で、しかも非常にわかりにくいところがあって、世界の人たちがみんなそれについていろんな研究をし、それで何かわかろうとしていることは理解しておりますけれども、一体どこまでわかったので、そのわかったことに対してどういう行動を明日からとったらいいかということについての説明は今のところ全くなされていない。そこが実はコミュニケーションとして重要ですけれども、これまでの平成何年から始まった長い間の厚生科学研究の中では、コミュニケーションという部分だけが完全に抜けているんです。抜けている理由は何かということをよく考えてみますと、コミュニケーションが実際にリスクの問題を検討する中の1つの重要な部分として入っているということ自体が認められてないのが1つ。コミュニケーションというのが、科学と思われていない、これが2つ目です。この2つが非常に重要なことなんです。
 そこで、これは余り長く時間かけたくないのですけれども、まずはリスクの問題を議論する中で、コミュニケーションが1つの重要なファクターと考えられていないというのが日本だけだと私は思うんですね。日本だけというより、この委員会だけかもしれません。なぜかというとリスクアナリシスという言葉です。リスクアナリシスの中にはリスクアセスメントとマネジメントとコミュニケーションの3つがセットになって入っているということは現在では既に常識であります。
 リスクアセスメントというのは、今までずっとお話がありましたように、科学者が科学的データに基づいて、科学的結論を出すということのできるステージなんですね。
 その次のリスクマネジメントというのは、アセスメントで得られた結論に基づいてどういう対策を立てるかということです。その対策というのには、先ほどの神沼のお話したペーパーにも入っておりますけど、そこには非常にいろいろな価値観が入っています。ということは、要するにいろいろな専門家の立場もあり、いろいろな人の環境とかそのほかの立場もあり、そこにいろんな価値観が入ってきて、対策というものの判断が行われるということです。
 ところがその次のコミュニケーションというのは、これはすべての人がそのリスクについていろいろなことを知るということです。そうなると、それは科学者だけがやるのではない。それから、いろいろな立場の違った専門家だけがやるのではない。そうではなくて、すべての人がそれに参画して、自分でわかるような結論を出さなくてはいけないわけです。それをやるのは誰かということが一番の問題でして、コミュニケーションというのは、サイエンティストがやるものではないと先生方が思っておられるとしたら、これは大間違い。なぜかというと、コミュニケーションというのは、サイエンティストと一般の人・非科学者とを結ぶ非常に重要な情報なわけです。
 それはどちらの人がつくるのかと言われたら、それでは一般のサイエンティストでない人がつくればいいということをまさか考えていらっしゃらないだろうと思います。そうなるとコミュケートをする内容は実は科学者がつくらなければならない。科学者がつくらなければならないのですけれども、それをつくるだけの準備もなければデータもなければ経験もないというのが今の現状だろうと思います。したがって、リスクコミュニケーション対策というのが1つ作業班として取り上げられたのだと思っているわけです。
 ですから、この話は詳しく申し上げるとかなり時間かかるので大変恐縮なんですけれども、コミュニケーションというものを、誰かほかの人がやればいいと思っていただかないように、先生方がずっとこれまでお話になったデータをどう解釈するかというのは、自分たちではないのだと思わないようにしていただきたい。そのデータから何を、明日すればいいかということを指示するのは、それは行政でもなければ一般の消費者でもないのです。それは実験を担当した先生方に言っていただかなければ結論は出ないのです。
 ところが今までのお話の中で、もちろん結論が出ているものもありますけれども、わからないことがたくさんあるわけです。わからないことがたくさんある場合に、科学者というのは結論を言わない。「例外がある」あるいは「不明である」、「これはデータがない」、「これは何も言えない」。それは科学的には正しいことなんですけれども、コミュニケーションということが絶対必要だという立場からすれば、コミュニケートする内容をつくるという意味では全く何もやってないということと同じことなんです。コミュニケーションは「誰から誰へ」と先ほど申しましたが、これはこの紙には、「行政から国民へ」と書いてありますが、この行政というのは、何も行政をやっている担当者の事務方がという意味ではありません。これはこの検討班ということだと御理解いただきたい。行政がということは、行政研究をやっている研究者だと御理解いただきたい。
 そうすると研究者から一般国民にどういうメッセージを出すか。どういうニーズを受け取って、それを研究の中に活かしていくかというようなことが直接の問題になります。それは科学的に結論が出ていなくても、何らかのことを言っていただかなければならない。判断をしていただかなければならないのです。その判断はすべて予測であります。これは実証ではないです。実証ではないことは科学ではないと思っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃると思いますが、この場合のコミュニケートというものがもしこの世の中で必要であって、それがなかったら、一般の人が明日の行動がとれないということであれば、それは科学者が結論を出すべき予測的な結論なんです。
 予測というのは、後になってから、その予測が間違っていたことが分かるかもしれません。間違っていた場合には当然それを変えなければいけません。予測は現時点において、最終的にここまでは言えるというところでもちろん十分ではあるのですけれども、それは担当している科学者たちがそれに同意した上で世の中のために発表する中身であると思います。その同意を得るのは、何も一般の人がいろんなことを解釈して同意するのではなくて、やはり専門家がここまでは、あるいはこういうことだけは、今のところは言ってもいいだろうという結論を出していただかなければならないです。
 ですからリスクコミュニケーションをやる上で大事なことは、リスクコミュニケーションのコミュニケートする内容を決めるときに、いろんな方に御参加いただくと神沼が申しましたけれども、御参加いただくのは先生方に御参加いただきたいのです。したがって、研究班の責任を持っていらっしゃる方が、お手元に持っていらっしゃるデータをもとにしてどこまで何が言えるかということです。データの種類によって言えるものの種類も変わってきます。言える範囲も変わってきますし、言ったことの正確さも変わってきます。そうなるとデータは予測に役に立つデータを出していただかなければならない。ただ、何かわかればいいというのではなくて、出てきた実験あるいは研究の成果によって、多くの予測ができるような成果を出すように心がけていただきたいと思います。
 これはいろんな例を取り上げてお話しする時間ありませんから申しませんけれども、例えば、一番わかりやすいのは恐らく分析のデータと思うのですが、中澤先生いろいろなことをおっしゃいました。全部をまとめれば、今は分析はできないという結論になってしまうわけです。できる状態になってないということになっている。しかし、それではいけませんね。それはどこまでが何をもって予測ができるかというと、昔と今とは違っているのか、あるいはここと向こうとは違っているのか。時間的、地域的な差というようなことがだんだんわかってくると、国民の一般がこの物質について現状を理解して、それならば自分はここだけは避けよう、あるいはこれは選択しよう。選択とか回避するという行動を起こす根拠にすることはできるようなデータを出すことはできますから、そういったようなことです。
 ずっといろいろお伺いしていて、実験データの種類として、コミュニケーションの根拠として使うことができるデータが得られるかということが一番大事なのだと思っています。今日の資料の6の、お配りした資料ではなくて、新しい資料の「提供情報のコンテンツ」というところに、「情報を発信するか、または、それを誰が作成するか」の後に「根拠として利用できる科学的研究データが得られるか」というのをわざわざ入れてもらったのは、そういった意味であります。
 この内分泌かく乱化学物質の問題は、今までるる先生方のお話にございましたように、ほかの問題とは根本的に違うのです。1つは人工的な、世の中に今までなかったものが世の中に出てきていろんな影響を起こすことですが、これは昔からあったんです。これは有機塩素剤、有機物に塩素が共有結合している有機塩素化合物というのは天然物の中には今まで全くなかった。それが出てきたことによっていろんなことが起こったというのは、農薬でもPCBでもいろんなケースを我々は経験しております。
 しかし、この内分泌かく乱化学物質というのは、作用が天然物と一緒だということです。それから、天然物も人工物もみんな同じように議論されているというところに混乱があります。その作用も、よりによってホルモン作用であったというところにまた非常に大きな宿命的なものを感じるわけです。なぜかといいますと、これも先ほどどなたでしょうか、ホルモンというのは決して悪いものではないというお話がありましたけれども、地球上に一番先に上がってきた動物は昆虫だと言われていますが、大昔、地球上に初めて上がってきた昆虫が地球上に見たものはシダ類だったと言われています。実は、今シダ類を分析してみますと、昆虫変体ホルモンがたくさん出てきます。シダ類と昆虫との共生状況というのは、地球始まって以来続いているのではないかと思っても不思議でないぐらいのことです。したがって、ホルモンというのは、生物にとっては極めて重要なというか、非常に深い関連のあるものですから、ホルモン作用を単に物質の量とか1つの反応でもって判断をするということは非常に難しい。そういう宿命的なところを持っているものだから、なおさらコミュニケーションをするのは極めて難しいということになろうかと思っております。
 それから、我々は昔から重金属でも有機化合物でも有害物質についてのいろいろなリスクアセスメントなりリスクマネジメントなりしてきたわけですから、先生方、御承知のとおり、重金属だったら水銀と鉛とアンチモン、この3つ以外は何らかの有益な作用があるのではないかと言われている。ところが鉛でも世の中に非常にたくさんあって、これもアメリカでは有名な話ですが、まな板の上にサンプルを置いておいて、包丁で切る間に鉛でどんどん汚染されるということは昔から言われております。したがって、我々はこういう有害物質のバックグラウンドの中に住んでいるということだろうと思います。
 したがって、コミュニケートするときに、安心とか安全とかということを判断する場合に、安全というのは一体どういう状況を安全というのかということを基本的に決めておかないと、アセスメントの結果をもとにしてコミュニケートをする中身を決めていただくときに基準が全くなくなってしまいます。
 そこで、ここではバックグラウンドは安全と見るのか。要するに現在の我々の健康状態は健康と見るのかというところも議論をしていただきたいです。バックグラウンドを1つの安全レベルと見ることができれば、そうすれば一番大事なことは、個人個人が外からバックグラウンド以上のものを体内に入れないというところに絞られてきます。そうすれば一般の国民の人たちは、明日とるべき行動の一番大事なところとして、自分の体の中にバックグラウンド以上のものを入れないということを注意すればよろしい。その注意のためにどのようなデータがあるのかということを考えながら聞いていただければよろしいことになります。
 したがって、先ほどの中澤先生のお話の中にたくさんありましたけれども、要するにこれらの物質はバックグラウンドとしてたくさんあるわけです。いろんな物質の種類によって違いますけれども、バックグラウンドでたくさん物がありますから、そのバックグラウンドを一応越えないといいますか、バックグラウンドは安全という根拠から立ってやっていただくのもいいのかもしれません。それは物によって大分違いますけれども、そういったいろいろな基準を最初に決めていただいてから、コミュニケートに取りかかりたいと思っております。
 重ねて申しますけれども、科学的な研究の結論は例外が必ずあるのだろうと思われます。しかしリスクコミュニケーションの中身というのは、例外というのは言うわけにはいきません。その例外があるというのは、科学的には絶対のことで、科学者がそんなことをわかってないのでは困るではないかと言われるかもしれませんし、例外があるということを一般の国民の人に理解してもらうのが科学者の仕事だというようなことをおっしゃる方もいらっしゃいますけれども、しかし、一般の人たちの判断というのは、その例外を理解するということではなくて、例外のない結論をもとに自分の行動を考え出す、明日の行動を考え出すのだということを御理解いただきたいと思います。
 ちょっと余計なこと申しましたけれども。
○伊東座長 ありがとうございました。  この会議は、前回3年前に我々が検討いたしました中間報告、その後にたくさんの研究費が国から投入された。そして、また世界的にもたくさんのデータがこの問題に関して蓄積されつつあるということを勘案いたしまして、この会議で現在の状態はこういうことなんだということをきっちり報告していくようにしたいということでございます。
 したがって、先ほど来、内山先生、神沼先生がお話いただいたことが、むしろ私が言いたかったことであります。神沼先生の御報告の後ろの「備考」というところにいろいろと書いておられますけれども、私も全く同意見でありまして、こういったことをたくさんの研究費、国民がどういうことについて不安に感じているかということは、この委員会で現在の状況をきっちりと報告することが必要である。
 そういう観点から、リスクコミュニケーション対策ということの問題を、前回と違って、今度の会議に取り上げたということでありますので、今、内山先生、神沼先生お二人でお話になったことを、これからしばらく休憩いたしますので、その間にしっかりと考えていただきたい。
 それで休憩なしにやりますと、皆さんパニックに陥られると。私自身も本当にどうしようかと思っておりますので、申し訳ございませんが、これから15分ぐらい休憩いたしまして、それから全体的なディスカッションに入りたいと思います。よろしゅうございますか。
               (「はい」と声あり)
○伊東座長 これから休憩に入ります。20分から再び会議を始めさせていただきます。
(休 憩)
(再 開)
○伊東座長 先ほど来も委員の先生方からたくさんのいろいろ御発表がございましたけれども、これからはどの問題についてというよりも、今までの御発表いただいたこと、最後に内山先生がまとめて言っていただきましたように、コミュニケーションというか、一般の方々に、またタックスペイヤーに対するアカウンタビリティという立場からもきっちり今までの成果を発表する必要があろうかと思います。
 この会議ですべて結論を出すというところまではいかないと思いますけれども、これからしばらくの間、活発な御議論をいただきまして、その結果を踏まえて、この原稿に更に手を加えていただくということをやりまして、あと1〜2回ということですけれども、できたら1回ぐらいにとどめておきたいと思っておりますが、これからその最終原稿をつくるためのアドバイスになるようなことを各先生方から賜りたいと思います。
 ですから、この問題とかということを限りませんけれども、どうぞ活発な御議論をいただきたいと思います。そう言いましても、そんなややこしいこと言うなということもありますので、一番最初の御報告について、それから、次の試験スキームの検討、採取・分析法の検討というような順番で、これから御議論いただくことにいたしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、「試験スキーム検討」の菅野先生が御発表になりましたけれども、このあたりについて何か御意見ございましたらどうぞ。
○内山先生 菅野先生と松尾先生のお話を伺っておりまして、菅野先生が説明されたハイスループットのスクリーニングの方法、もちろんコンピュータデータからのスクリーニングも入ってまいりますけれども、そういうものの優先順位づけはどうしたらいいのかというようなお話がありましたですね。
 私は私の言い方をさせていただければ、データは自ら物語るものではない。要するにデータを利用して何を言うかということは専門家が別に考えなくてはいかんと思います。ですから、このスクリーニングでクロ、このスクリーニングでシロということは、そのまま、それをリストアップして、それは公表してもいいのではないかという気がいたします。もちろん座長よく御存じの発がん物質の評価にはそういうやり方を使っているわけですからデータをリストアップをするときに現時点での研究者の間での納得づくの同意事項というものをつくるべきであろう。
 その納得づくの同意事項が新しいデータで変わった場合には、これをすぐ変更すればいいと思います。変更するということを前提として、現時点ではこういうふうに言えるというスクリーニングのデータを使っていただけると大変ありがたいと思います。
○伊東座長 松尾委員いかがですか。今こういう御意見がございましたけれども。
○松尾委員 私が申し上げましたのは、データの値打ちというものが全然違うと思うんですね。ハイスループットも値打ちがないとは言っておりません、ある程度のことは言えると。私が質問したのは、例えばそこでポジであったと。ところが次のウテロトロフィックかハーシュバーガーでネガだったと。こういう場合はどう解釈をするのですかと、こういう質問なんです。
 今のお話ですと、確かにハイスループットでポジですと、正確に言います。でもウテロではネガです、こういうふうに言いますね。そうすると、ではどうするんですかと、こういうことになるわけです。ハイスループットの方は捨てて、ウテロの方をとりますと。そういう理論的な、実験的な根拠がそこにあると考えてよろしいかという質問だったのです。そうしませんと前に進まないわけですね。
 結局、今のお話ですと、全部データを開示しても、それによってどう進むのか、どう判断してどう料理するのかというのがわかりません。それを示すことが必要だと、こう申し上げたんですね。その自信のほどをしつこくお聞きした訳です。
○内山先生 お二人で議論して決めていただくよりは、まさにそのことをこの場で議論していただくとよろしいかと思います。
○青山委員 先ほど私が菅野先生に質問したところも入っているのですが、例えば今はエストロゲン・レセプターとアンドロゲン・レセプターについてのスキームが出ているわけですけれども、当然サイロイドホルモンについても必要でしょうし、例えばPPARαのノックアウトを使いますと、DEHPのようなフタレートの作用がなくなるということから、菅野先生がお答えされたとおり、P450系への影響というのも、いずれはレセプター・メディエイティッドで説明がつく可能性も十分あると思うんです。ですから、そういうことを正確に示すとともに、こういったものは繰り返しスクリーニングする必要があって、次の網の目、次の網の目というふうに行く必要があるということを正確に伝えた後に、「今の方法ではここまでわかっている。したがって、ここからの判断はこう考えるべきである」というようなまとめ方は可能ではないかと思うんですが。
○伊東座長 いかがですか。菅野先生、何か言われっぱなしみたいですね。菅野先生のお考え、お立場というのはどうですか。
○菅野先生 基本的には内山先生、青山先生のような考え方をしておりまして、一応認められた方法で出たデータに関しては客観的にオープンにしていくべきだろうと思っておりまして、特に本日これに添付しました棒グラフでありますが、これなどは真っ先にオープンにしてよろしいのではないかということで、こちらにプリントアウトしたものであります。
 そういう意味で、松尾先生がおっしゃるように、子宮肥大試験でポジティブで、今までのハイスループットでネガティブだった物質がひょいとあらわれたらどうするのだと言うご指摘ですが、そういう事は当然あり得まして、in silico で見つかって、子宮肥大試験をやったら陽性に出た。だけれども、ハイスループットに戻してみたら陽性に出ないとか、そういうディスクレパンシーは当然あるという前提で動くべきだと思っております。それはそれでオープンにして、非常に問題があると思われれば、そこに関するメカニスティックスタディをやるしかないと、そういうふうに考えております。
○伊東座長 現状ではどらちらの方を重く見られますか。例えばハーシュバーガーの方でポジティブに出て、ほかのテクニックではネガティブである。あるいは逆にほかのやつがポジティブに出るけれども、ハーシュバーガーではネガティブであるというときにはどちらの方を、つまりリスクコミュニケーションですから、内山先生おっしゃるように、そういうデータをデータとして出すということについては、私は全然ノーと言っているわけではないのですけれども、そういったときにどちらの方を、この委員会としては重視して、現状ではこうだというふうに言っていくかということですね。どちらの方を重視されますか、先生の立場では。
○菅野先生 シークエンシャルに書いてしまったからまずいというお咎めは受けるのですが、基本的にはバッテリーだと思っています。ただ、現実的に子宮肥大試験をやる数が限定されてしまう。それは時間的にもお金的にも限定されるのでこうせざるを得なかったのですが、基本的には3本同時にデータがあるべきであって、それでバッテリーで考察するというのが正しいと思います。ですから絞り込んでリストをつくるというふうには書いてありますが、陽性に出たものがどこかにあれば、それは基本的にはバッテリーで、3本まず横並びで見た上で判断するのが基本姿勢だと考えておりますので、どれが本当に一番大事なんだと言われると難しいところあります。
 ただ、1つ、この3つのシステムは、感度的には各々かなり近いところを見ておりますので、そういう意味でも、だんだん感度の悪いシステムで絞り込んでいるというわけではないというところは御理解いただけると思います。
○内山先生 今の議論はリストアップのレベルの話なんですね。ですから定量的な数値を議論しているわけではない。要するに反応を議論しているわけです。したがって、リストアップということであれば、この方法ではプラス、この方法ではマイナスということはそのまま出してもよいと思います。だけど、どれが一番大事で、この方がマイナーなデータだということを決める必要はないという感じがします。まだ、順位がわかってないんですから、と思っております。リストアップですから、どういう種類のものがこのグループに入るのか、どういう物質があるのかということを知るのには非常にいいだろう。
○伊東座長 もう一つ、菅野先生のテーブルのときに、右側の方にトキシコゲノミクスでやるというようなこと、ポインテッドアウトされていましたけど、トキシコゲノミクスというのは、そもそもまだどの程度の評価ができるかということすらわかっていない段階でしょう。その段階で、まだそこで論議するというのはもっと早いのではないですか。
○菅野先生 これに関してはかなりいいところまで実質的には来ていると考えざるを得ないんです。それは実は先々週アメリカに行って、ナショナルセンター・フォー・トキシコゲノミックスの人とも会ってきましたが、おっしゃるとおり完璧ではないですが、NIEHS内では既に批判を受ける時期は過ぎて、大きな予算で動き出しております。
○伊東座長 そんなにたくさんのデータ出てますか。菅野先生おっしゃるように、膨大なデータが蓄積されてこそ言えるんですから、まだいいデータが出ているとかと言える段階でもないのではないですか。
○菅野先生 ただし、もうやらないと間に合わないだろうと思います。
○伊東座長 それはわかります。ですけれども、これをここで取り上げるというのには、私は絶対に早いと思います。
○菅野先生 ですからこの検討班でどうなさるかという問題と。
○伊東座長 テーブルに出てましたから。
○菅野先生 出しました。
○伊東座長 それはちょっと早いと私は思うんです。
○井上委員 確かに試験法の中に入れるのは早いのかもしれないのですけれど、今FDAとEPAが一番心配していますのは、結局試験法がばたばたいろんなものが出てきて、お金ばかりかかってということとの関係で言いますと、もし整合性がつくとトキシコゲノミクスが一番安上がりだ、それで包括的だという考え方がEPAの試験法のこの問題で、ついせんだってまで責任者であったペニー・フェニクリシップさんの最終的なサイエンスで発表した見解だという面がございまして、したがって、これがリスクアセスメントに使えるか使えないかを検討している段階であるという以上のところにはいっていませんけれども、かなり必死になって調べ始めているという実態は出てきているというふうに御説明させていただきたい。
○伊東座長 それは私も十分に承知してますから、これは大事だと思うんですけど、この問題について、すぐ入っていくというのでは、まだ早いのではないかということを私は申し上げているだけです。ですから、これとは全然別の立場で別の物質について検討されるということについて一向私は反対しているわけではございません。ですけれども、この内分泌かく乱化学物質についてのときにトキシコゲノミクスの問題を直ちに持ってくるというのは少し早いのではないか、そういう立場です。
○井上委員 ぜひ皆さんの御意見を伺いたい。
○松尾委員 しつこくフローのことを聞くのですけれども、上下関係がないというお話になりそうなんですけれども、どう処理するか、その辺がもう一つ、頭が悪いのでわからないのですけれども、どうするのですか。10万をそのまま全部やってしまうと、こういうことでしょうか。
○菅野先生 In silico は20万もう試行的にやってしまいましたので、そういう意味ではもう始まっています。ですから、それでハイスループット・スクリーニングに持っていけるだけのケミカルが手に入ればすぐにやります。
○松尾委員 全例を?
○菅野先生 実を言いますと、5万8,000 から拾ったときに、コンピュータ上で陽性に出たと判定したのは 2,000 ぐらいです。ですから、それはデータベースによります。あと、ACDの方からリストすると、やはりそのぐらいで、なおかつ今まで知られてないユニークなものは、先ほどお示ししたのは15になります。ですから、データベースが巨大だからといって、すべてがぽんぽんポジティブに上がってくるわけでもないです。ということで、それほど心配はしていないのですが、もちろん問題なのは、コンピュータ上のケミカルはコンピュータ上で存在しますけれども、細胞にまぶすとなった途端にミリグラムオーダーで物質が必要になりまして、そこのギャップはどうしても物理的に存在はしております。
○松尾委員 私が質問してますのは、スクリーニングという矢印で数をどんどん減らしていくという意味においては非常に意義があるのですけれども、今までの議論だと、全部イクイバレント、対等だということでありますと、まず in silico でやる。それがポジであろうとネガであろうと、そんなの関係ない。次にハイスループットでやり、ポジである、ネガである。結局ウテロにしろ全部やらないとわからないわけですから、そうすると10万件ずっと流すと、こういうフローが目に浮かんでくるのですけれども。
○菅野先生 ですから優先順位づけを各々でやっているわけですから、可能な限りにおいて。
○松尾委員 ポジをやっぱりつくようにするわけですか。
○菅野先生 優先的に強いものからやっていくということです。
○松尾委員 また、ちょっとよくわからなくなりましたけれども。
○井上委員 この問題は、実際にデータを出してみないとわからないというところがあるのですけれど、出てきているデータについても、どういうふうに考えるのかということを整理しないと、今の問題は回答できないので、菅野先生は困っていると思うんですけれど、松尾先生におかれては、例えば20万のスクリーニングの中でシロになったものはどんどんシロというふうに宣言してくれ、その方が合理的だろうという先入観をお持ちなのかもしれませんけれども、これでもってクロになってしまうものは結構あります。それで混乱するようなことは、私はリスクコミュニケーションの立場からもそういうことは起こしたくないです。
 したがいまして、この in silico のところでもって、どういうふうに判断するのかというところをもって、そこから順々に、それはそれでプラオリタイゼーションをやりますけれども、その都度発表することだけは御堪忍いただきたい。全体を見なければわかりません。
○松尾委員 シロとかクロとか言っているわけでなくて、このスクリーニングのかけ方にはポジ、ネガが非常に有効にきいているということを申し上げた。ネガだからシロだと、こういうことを言えとは言ってません。だから、このスクリーニングの仕組みですね。
○井上委員 それはわからないです、先生。そんなに単純ではないです、この問題は。
○松尾委員 ではどう流すんですか、これは。
○井上委員 ですから、ある程度の相関関係は見て、例外が相互間にどのぐらいあるのか、試験法によって強さも弱さも全く違いますし、あるいはエストロゲン?ニッセキも全く違うこともしばしばありますから、どのぐらいの例外があるのかだけはつかみたいということがあります。
○伊東座長 井上先生、これは物すごく金がかかるんですか。安いんですか。
○井上委員 まず大前提は、必要があって、国家的に大きくこれをやらなければならないということで動き出したら、要するに大量の処理の機構が動き出したら、どんな検査でもみんな安くなるんです。それがまず基本です。ただし動物実験は安くなるのに限界があります。その程度でいかがでしょうか。
○山崎委員 私は理解が足りないのかもしれないのですが、ここで扱っているのは、試験法スキームの検討ですね。スクリーニングですね。ですから、ここで出てきた化合物にシロ、クロつける作業過程ではないわけですよね。我々は in silico の段階で、5万から10万あるいは20万というたくさんの化合物に囲まれていて、それが内分泌かく乱物質という多少あいまいなクライテリアの中に入るかどうかというのをまず最初にスクリーニングしてみようとしているわけです。ですから、最初からシロ、クロつけるような段階での評価はここではもちろん不可能なわけで、したがって、私は今までの試験法から見ると、この in silico から始まってハイスループットをやって次第に数を絞っていくことになりますが、最後のハーシュバーガーに行っても、そこでもまだこれはシロ、クロをつける段階にはいってないわけで、そこで灰色になったものが更に詳細な試験によって、これは警戒しましょうということになると理解しています。そういう化合物が我々の環境中にどのぐらいあって、どのぐらい摂取するのかというようなデータをはっきりさせましょうということを最終目的として、この研究班全体が動くのだろうという理解をしていたんです。
 したがいまして、今やられている議論というのが、この段階の試験に対して必要なのかどうかということ自体が私にはよく理解できないところがありまして、愚問を発した次第なわけです。
○伊東座長 山崎先生の今お話のことで大体結論的なことだろうと思うんですね。ですから、先ほどリスクコミュニケーションのときにお話になりましたように、我々の環境中にどれくらいあるか、わずかよりもないというようなものについては、それが非常に強い作用があるかどうかということであれば、改めて検討するということでいいし、今、井上先生がおっしゃったように、その結果を全部発表していくというようなことでいたずらに混乱を招くことは避けたいということも、私はそれで非常にいいことだろうと思うんですね。
 ですから検討していただいて、そして、それがどれくらい関係があるかということをやっていただく。ハーシュバーガーテストにしましても、我々の環境中にどれくらい危険なものとして存在するかということがやはりそこで論議の対象にならないとだめである。ですからほとんど問題にならない程度のものについて、それを大量やればデータがポジティブにクロに出てくるということは確実であろうと思いますから、そういうものについての問題は最後のところで、リスクコミュニケーションのときに書いていただければいいのではないかと思うのですね。
 何かこのことで御意見ございましたらどうぞ。
○櫻井委員 この最初の図1を拝見していて、ちょっと気になりましたのは、点線の下の「詳細試験」のところ、「リスク評価のための〜」と書いてあります。その下にも「リスク評価のための詳細試験」と書いてありますが、いろいろな表現の仕方あると思いますが、むしろこの部分はまだハザード評価、要するに化学物質固有の有害性の評価のレベルで、それに更に暴露の可能性を加味してリスクを判断するというステップを考えますと、ここをどういうふうに整理するか、私はちょっと混乱しているような気がする。
○菅野先生 「リスク評価に資するための」というのを短くしたものですからそうなってしまいました。誤解のない表現に改訂させていただく分には全然問題なくて、中身はそのとおりでございます。
○櫻井委員 化学物質の優先リストというのは、優先リスト候補であって、それに先ほど座長もおっしゃったように、現実には暴露の可能性を考えて詳細試験をやるかどうかを決めるという順番になるのではないかと。
○伊東座長 先生がおっしゃったのが現実的なのではないですか。余りここでこの問題については、最先端のテクニックで簡単にしかもデータが絞れるということをやろうと、データが絞れるというか、物質を絞ることができるような方法が見つかればということで、菅野先生たちは一生懸命におやりになっているわけですから、それは私はそれでいいのではないか。今、おっしゃったような立場で、これから文章を吟味して書いていただきたいと思いますけれども。よろしゅうございますか。
 松尾先生、なかなかしつこいですけれども、やってください。
○松尾委員 スクリーニングとハザードと混乱していらっしゃる方が多いので、あくまで上の方はスクリーニングですから、ホルモン活性をスクリーニングするわけであって、それが即障害性につながるということではない。シロ、クロというのはそういうことではありませんので、誤解のないように。
○伊東座長 ですから、松尾先生、今、量の問題とか、例えばDESでも少量であっても非常に強いものはポジティブに出てきますよね、いろんなレスポンスで。ですから、我々の環境中にあるもので、非常に少ない、ほとんど影響のないようなものまで、これがポジティブであろうというようなディスカッションとは別に、これは内山先生のお考えになっている、今、櫻井先生のおっしゃってくださったような立場で、ひとつ菅野先生、いい文章に仕上げてください。
 それでは、また後で御議論がございましたらいただきますけれども、次に「採取・分析法の検討」ということで、先ほど内山先生が、そんなにあちらこちらに出てくるのだったら、どのデータを信用していいのかわからないというようなことになるというような話もございましたけれども、「採取・分析法の検討」についての御意見ございましたら、どうぞ。
○内山先生 生体影響も暴露というか採取・分析、存在量のデータも両方とも同じ意味があると思います。少なくとも暴露と作用の強さというものの両方が組み合わされてリスクになるわけですから、それは基本的な理解をそこに置いていただきたいと思います。
 中澤先生の御苦労はよくわかりまして、これは少なくとも30年も40年前から同じ苦労をしているわけです、分析やっている連中は。技術が進めば進むほど苦労の種類が増えるということですから、その苦労は結局相互比較ができるかできないかというところだけにかかってくる。ですから相互比較ができるデータを出しておけば、そうすればそれは感度がよかろうが悪かろうが、分離度がよかろうが悪かろうが、とにかく相互比較というのはどうやってやればいいかということを最終的にわかるように、まずそれに近づけるような報告書にしなくてはいけないと思っております。
 問題点をずっと書き並べるというのは、非常に楽と言ってはおかしいですけれども、問題点を書き並べるのは正しい。しかし、いろいろな人が分析をしてデータ出したときに、その分析法をバリデートしなくちゃいけないということを言うのは簡単ですが、これは非常に難しい。したがって、分析法をバリデートするのではなくて、誰かが何らかのデータを出したら、そのデータをバリデートすることができるかというところが問題だと思いますね。データのバリデートとは一体何だというと、これは標準品をもう一遍分析するということです。標準品があって、中澤さんのOHPには「クロスチェック」と書いてありましたけど、要するに確かな方法で出た確かなデータかということをもう一回確かめるというステップが入ればよろしい。
 そのためには、安定同位体を使った標準品というのは今幾つかありますね。先ほど来お話が出ている重要な焦点を当てるべき物質については、安定同位体を使った標準品を準備しておく必要があると思います。それはOHPになかったものですから、それだけお願いしておきたい。まず1つ。
 それから、サンプルバンキングの話が出ましたけれども、サンプルバンクというのは、国が大々的にもちろんやる必要もあるかもしれませんが、国が大々的にやるというほかに、分析者1人ひとりがサンプルバンクということを心がけてほしいというふうにおっしゃっていただいた方がいいと思います。日本全国たくさんの人が分析していますが、何か分析したらサンプルはとっておくと、基本的なことです。とっておくおき方が非常に問題なんだという話は中澤さんの話にも出ましたから、とっておき方を注意してもらう。サンプルバンキングは研究者1人ひとりのレベルでもやるべきことである。
 現在サンプルバンクがどこかにあるかというと、これは大阪府の衛研の母乳は、これは、私が食品部長やっていたころですから、30年前か40年前です。その時のものがまだあるはずです。
 それから、食品の材料については、そのころのものが東京の近辺のものはありますが、これはガラスの瓶に入っていますから、恐らくコンタミしてないとは思いますけれども、ただ、−30度にしか保存できなかったから、もう既に大分傷んでいると思います。30年たってますから。しかし、それ以降、サンプルバンクというのは、形の整ったものはできていない。厚生省が数年前に、寺尾先生の時代に始めたということを伺いました。それがどのくらいの規模か私よくわかりません。ですからバンキングは、個人個人がまずは−80度、容器とサンプルの種類を気をつけながらとっておくということをやろうではないかという提案はいかがでしょうか。
○岩本委員 今、内山先生の、研究者1人ひとりでサンプルをキープせよという御意見なんですけれども、私どもがキープしておりますヒト血清、DNA、性漿等の試料のバンキングにも限度がありますので、またこれらの試料は国の財産でもあるわけで、私としてはぜひとも国規模でキープしていただけるシステムを望みたいと思います。
○内山先生 それは当然なことで、ただ、国がやるまでほっとくというのはぐあい悪いから、国は当然やらなくてはいけないけれども、個人個人も心がけてください。持っていられないくらい、たくさんお持ちの方は非常にリッチな方でして、サンプルというのはそんなにたくさんとっておく必要ないですよ。とっておけるだけとっておいてくださいということです。これは、私はできないことをやってほしいと言っているわけでもないし、とっておいてない人が余りにも多いものですから、申し上げているだけの話です。分析というのは、むしろ生体試料などをお使いの方は大体とっていらっしゃるんです。それでパンクしそうになるほど量は増えているんです。ところが生体試料ではない、環境試料を分析している人は余りとってないんです。それがいけない。
 裁判科学なり法医学なりだと少なくとも3分の2はとっておきます。そういう原則がまだ守られてないのではないかという不安があったものですから、申し上げたんです。失礼しました。
○西原委員 今、サンプルのバンキング言ったんですけれども、もう一つ、分析で大事なのはケミカルのバンクというものをつくるべきだと思うんですね。純粋でなくてもいいと思うんです。特にスクリーニングやるときにケミカルを集めるわけです。何十種類も何百種類も、あるいは何万種類も。その一部を少なくとも置いておくといいますか、そういうものも絶対私は必要だといつも言っているのですが、その分析データもつければ、非常に今後それこそ有用だと思います。10年後にひょっとしたら、今の不純物がそういう活性を持っていたということがあり得るわけです。そういう意味で、そういうものを国でひとつどこかで集めてほしいなという気はします。
○津金委員 サンプルバンキングの話なんですけれども、生体試料の場合、今世の中でインフォームド・コンセントということがものすごく言われていて、簡単にはとっておけないのですね。長期保存するということを含めて同意をとらなければいけないということになってしまうと本当に大変なことで、過去に保存されていたものを使おうと思ってもだめだと。倫理学者は30年前とった人に再同意得ろとまで言うわけなんです。別の目的でとっていた生体試料、今、内分泌かく乱化学物質、過去には予想できなかった物質が我々の脅威として出てきた場合に、それを研究に使ってはいけないとまでいう議論が今あるんです。そこら辺ももう少し議論していただかないと簡単にはとっておけないという現状があります。
○伊東座長 それでは、大分時間も迫っておりますので、その次の「低用量問題」の対策について、御意見賜りたいと思います。何かございませんか。先ほど井上先生難しい言葉を使われたと松尾委員から何かごちゃごちゃとありましたけれども、もう少しわかりやすいように井上先生お書きください。わかりやすいような言葉でお書きいただいたらありがたい。そのほか、何かございませんか。
○松尾委員 内山先生もおっしゃったように、低用量問題というのは非常に深刻だと思うのですけれども、この検討会では、一体これをどうとらまえて、どういうふうにコミュニケーションするのか。その辺、何かアイディアがあれば、こうやっていきたいというようなことがあればぜひ教えていただきたいと思うんですけれども。
○内山先生 何をお答えしていいのかちょっとわかりませんが、私は先ほどの井上委員のお話は、今日傍聴していらっしゃる方は一番よくわかったと思うんです。井上委員が言われた、ここはわからない、ここまでしかわからない、こんなにわからないことがあるというのは非常によくわかったと思うんですね。それが一番大事なんです。わからないということを言ったら、恥ずかしいと思っていただかない方がいいわけです。ですから、わからないことはもう仕方がない、わからない。
 ただ、わからないから、後はおまえたち考えろでは困るんです。わからないけれども、現状では、自分はこうこういうことを、井上委員はちょこっと言っておられたけれども、そういう言い方をしていただくとよろしいかなと。
○伊東座長 井上先生、ちょこっとじゃなくて、どっと言っていただいた方がいいのではないかと思いますが。
○井上委員 過分なお言葉で、一層わかりやすいように努力すると申し上げる。
○伊東座長 ここはわからない、ここまではわかっているということをはっきりと、先生のお考えでお書きいただいたらいいのではないかと思います。
○井上委員 わかりました。
○藤原委員 今のお話に関連してですけど、井上先生が、先ほどの御報告の中で、何度か、「プラクティカルな対応」ということをおっしゃいました。そのプラクティカルな対応というのは具体的に何を意味していらっしゃったのかなと思っていたのですが、それをもしお差し支えなければお話しいただきたい。つまり、わからない部分が多い中での実際的な対応、何が一体専門家並びに行政ができるかということです。
○井上委員 幾つかの考え方ができると思うのですけれど、1つは試験法が見ている側面というのは起こっているメカニズムの本質を見ているとは限らないんです。例えばウテロトロフィック・アッセイなんていうのは何を見ているのか、もちろん受容体を介するものを見ているのですけれど、そうでないものも含まれているということがわかっているんです。それでメカニズムはわからないけれども、メカニズムのところはよくわからないし、ハザード(障害性)とホルモン受容体反応性、ホルモン関係の反応性との区別がつかないまんま、とりあえず測って、今、座長もちょっとおっしゃいましたように、強いもの。強いもの弱いものについても、先ほど申しましたように、根本的なところからいくと、本当にこの試験法で見ている強いということは、障害性がそのまま強いかどうかがわからないですけれども、そこのところは置いておいて、つまりプラクティカルに、例えばウテロトロフィックな子宮肥大試験なら子宮肥大試験の持っている意味をとりあえず何らかのハザード・アイデンティフィケーション、そういうものの基礎として、暫定的に考えていくという方法も考えないと収拾がつかない。いつまでたっても結論が出ないのではないかという意味が1つです。
 あと、そのほかにも、例えば動物実験で明らかに障害性を引き起こしているものが、早い話が人にさえもいろいろなことを起こしたわけですから、DESなどはそうでした。そういうものとイクイバレントに何かを起こしているケミカルがあったとします。実際問題としてはそんなにDESに比肩するものは全くないわけですけれども、あれは人類がある意味では別の目的でつくった栄光の薬でもあるのですが、それはともかくとしまして、それとイクイバレントな反応をするようなものについては、強いものからとりあえず暫定的な判断をしておこうと、そういうことも今申し上げたプラクティカルの1つに含まれるという立場です。
○寺尾委員 これは非常に重要な問題なのですけれども、この委員会でよくわからないという結論になりまして、どうしたらわかるようになる、どういう研究をやったらわかるようになるのだというような提言をするべきだろうと思うのです。1つのやり方は、井上先生、こういう議論はないのですか。非常にいろいろなファクターが入ってきますね。先ほど言いましたように、動物、同じストレーンなんだけど、遺伝的に少し違っているのではないか、あるいは餌が違うのではないかとか、そういうものをすべて統一しまして、幾つかのグループでいろいろなバリアブルを非常に少なくして、それで実験やったとき、どういう結果になるか。そういう実験を組もうという考えはないのですか。
○井上委員 これからの問題だと思います。実際にその比較をやって、こういうところを合わせなければならないというようなことがやっとはっきりしてきたのです。
○寺尾委員 そうですか。そういう何か、どうしたらわかるようになるのだということを提案というか提言すべきではないでしょうか。
○伊東座長 ありがとうございます。それは含めて大事だと思います。先ほど試料の話がたくさんございましたけれども、試料とかケージも話もまだ全然やられてないです。ああいうことは、我が国でやられてない、外国でやられているのかということも含めて検討していくことは大いに重要であろうと思います。ありがとうございました。
○井上委員 先生、すいません、ちょっと一言つけ加えさせていただきます。寺尾先生、困った問題は、それを調整すると同じ結果が出ると思うんです、ゆくゆくは。ただ、それはわかるということとは違うという意味で、本質面のところは残ってしまうんですね。そこに対する提言は、そこに対する提言としてつくるということはそれでいいと思うんですけれど、試験法の開発に、今の先生の御提言は結果的には近くなってしまうんです。つまり、ノースカロライナ・ミーティングでは、あくまでもこれを議論する、決着の方向が出ると思ったんです。出なかったから、これはむしろ方向性はやっても無駄だという方向になっているのです。
○寺尾委員 無駄だという話になりますと、永遠に決着はつかないと、そういう意味ですか。
○井上委員 いや、そういう意味ではございませんで、もっとプラクティカルに、今開発されている方法で、ノースカロライナ・ミーティングで指摘されたような点を気をつけながら進めればもうそれで十分だと。低用量問題があるかないかの問題は、恐らく決着がつかない、もしくはあるだろうという方向の推測のまんま、そこを解決することによって、全体が解決するのではない。もっとプラクティカルにいこうという方向に進んでいると認識しております。試験法と関係するから、菅野さん何かあったらつけ加えてください。
○菅野先生 OECDの子宮肥大試験のプロジェクトは、餌も揃えずストレーンも揃えずという前提でやりまして、あの系は非常にロバストな系なもので全部うまくいったという形でおさまっていますが、ケミカルだけは全部レポジトリーを置いて全世界に同じロットのものを配りました。
 餌の問題は当然モニターしてまして、全サンプルを回収して分析に当たっています。それとは別個に、私のところでも、植物エストロジェンを抜いた餌をつくったりしてみて、それは結果的に子宮肥大に対して影響することはわかっていますが、ドーズ・レスポンス・カーブを書かせるところでは大丈夫だったというレベルであります。ですから検討は試験法としては進んでいます。ただ、メカニズムとしては別途の話になります。
○伊東座長 時間が迫っておりますので、あと、まだまだディスカッションがあろうかと思いますが、「暴露・疫学調査」、「リスクコミュニケーション」のことについて何か御意見ございましたら、どうぞ。
○阿部委員 また、余計なことと言われるかもしれませんが。
○伊東座長 言いません、どうぞ。
○阿部委員 津金先生、非常によくお調べいただいたのですけれども、私いつも言うのですが、日本では本当にがんが毎年何例発症しているかわからないのです。これは非常に困ることであって、それがきちんとしないからいい疫学のデータも出ないのではないかと思うので、これはもう少しお金を使えばできると、いつも寺田先生とも昔から話しているのですけれども、我々の責任かもしれません。これは非常に困った問題で、むしろ厚生労働省の行政をどうするかという点においても非常に重要なポイントだと思うのですけれども。
○津金委員 欧米など先進国はみんな国が責任を持ってそういうのをやっています。
○松尾委員 リスクコミュニケーションの点に関して一言提言したいと思うのですけれども、日本は御承知のように、リスクコミュニケーションとか、リスクというのが全然わからないんです。一体何なのかというのもわかってません。そこへもってきてコミュニケーションしたらますますわからなくなるということで、提言を、リスクコミュニケーションの中に、リスクエデュケーション、これをぜひ項目として加えていただきたい、こういうふうに思います。
○伊東座長 内山先生、何か。
○内山先生 それは恐らく、先ほどの神沼氏の出した「リスクの概念」というところに、何を伝えるのか、何に当たるのがリスクであるというようなところから書いてあることだと思います。確かにたばこのよしあしを議論するときもリスクの概念全然わかっていただけなかった。たばこは別に吸ったらどうかなるというのでなくて、リスクが増えるだけだという話が全くわかっていただけなかった経験があります。
 したがって、リスクエデュケーションというのはちょっとおかしいけど、とにかくリスクのことをよくわかってもらうためのコミュニケーションですね。それはもちろん含める必要があると思います。
○伊東座長 時間が議長の不手際で過ぎましたけれども、いろいろと御議論いただいたことを引き続き検討作業を進めていただくということになろうかと思いますが、一方で、次の議題にありますように、これらの検討成果をもとに、検討会としての報告書を取りまとめたいと思っております。今日出されました御意見や検討を踏まえまして、年内にもう1〜2回このような会議をやりたいと考えておりますので、ぜひ御協力方お願いいたします。いかがでございましょうかというような聞き方をすると、嫌だと言われるかもわかりませんので、御協力をお願いしたいということであります。
 次回の開催などにつきまして、最後に事務局から。
○事務局 次回の開催等につきましては、差し支えなければ、議題が終わった、閉会の直前にお伝えいただければと思います。
○伊東座長 わかりました。そういたします。
 それでは、「検討会中間報告書追補の作成について」ということで、事務局から資料7について御説明ください。
○事務局 それでは御説明いたします。資料7をごらんください。「内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会 中間報告書追補の作成について」でございます。
 この検討会におきましては、平成10年11月に中間報告書を完成、公表しておるわけですけれども、その間、この3年間いろいろな調査研究等の成果、新しくわかったことがいろいろ出てきていますので、それについて追補ということで、この検討会の報告書を作成したいと思っております。
 今日お示しています資料については、この作業経過を紹介するための作業中のものでありまして、ここに掲げてあります項目や内容につきましては、今日御議論いただいた、特に全体討論等で御議論いただいた内容等に基づきまして、また更に必要な検討を行って全体版を作成したいと思っています。
 表紙の[内容]のところをごらんいただくとわかりますように、4番の「検討課題と成果」、(1)から(5)までありますが、これが今日御報告いただいた各作業班の成果に該当する部分でございます。
 まず1枚めくっていただきまして、2ページでございますが、「1 はじめに」ということで、最初の段落にありますように、この報告書の追補の目的としまして、「平成10年11月に公表した中間報告書以降、主として調査研究を中心に進められた取組から明らかになった、内分泌かく乱化学物質とその健康影響に関する知見と、今後の調査研究の戦略と作業計画を提示するものである」という目的で報告書を作成したいと思っております。
 3ページには、本検討会の委員名簿を紹介しておりまして、4ページに行きまして、まだ空欄ではございますが、その他、今回の作業班等でいろいろ御協力いただいた先生方がおりますので、その専門家の方々のお名前。
 あと「審議経過」ということで、平成10年11月以降、第7回から、今日は第11回ですが、開かれておりますので、それについても記したいと思っております。
 その下の「要旨」ですけれども、これは括弧書きに書いてありますように、この「検討課題と成果の要約」ということで、今日の検討の資料2から6からの要約をここに便宜上抜粋しております。これにつきましては、今日御議論いただいた内容をもとにして、一部文章の精査、修正等がありますので、それについてまた中身を精査したいと思っております。
 あと5ページの一番最後のところに書いてありますが、「今後の調査研究等のスケジュールの要約:作業中」ということで、今回、発表いただきました調査研究に基づいて、先ほど何人か委員の先生からも発言がありましたが、今後どういう研究をしていくかという提言をすべきだというような御意見もありましたので、そういったことについても触れたいと思っております。
 続きまして、6ページをごらんください。6ページの3番目といたしまして、「中間報告以降の内分泌かく乱化学物質問題の現状と厚生労働省における調査研究等の取組について」ということで、これまでの取組について紹介したいと思っております。
 まず最初に中間報告で、「人の健康を確保するための具体的な対応方針」が報告書の中に定められております。すなわち、内分泌かく乱作用が指摘されている物質について優先的に試験を実施すること、内分泌かく乱作用について十分な情報が得られない物質については、スクリーニングを実施すること、個々の段階における試験方法の評価等を十分に実施すること、上記を実施する上で関連する主な調査研究等を推進すること、多岐にわたる調査研究を円滑に実施するための基盤整備を行うこと、データベースを核とした情報管理及び情報提供システムを整備すること、国際機関や諸外国との協力を図り国際的なリーダーシップをとること、これらが対応方針として述べられているわけです。
 これに基づきまして、例えば調査研究の分野におきましては、厚生科学研究の生活安全総合事業を中心とした調査研究等を進めておりますので、まず最初にその概要を紹介することで考えております。
 括弧書きにありますが、これは昨年の第9回、9月に開かれておりますが、そのときに、厚生科学研究のそれぞれの成果を各研究班から報告いただいておりますので、ここでは便宜上、そこで発表された資料を抜粋した形でまとめております。
 (1)としまして、「暴露に関する調査研究」。ページをめくっていただきまして、8ページでございますが、8ページの下の方に行きますと、(2)、「毒性に関する調査研究」。更にページを進めていただきまして、12ページに行きますと、(3)として「疫学的調査研究」ということで、大きくこの3つに大別できるわけなんですが、大体合計で17の厚生科学研究班がございまして、それぞれについて報告がされましたので、その概要を簡単にまとめております。
 13ページですけれども、(4)といたしまして、「内分泌かく乱化学物質ホームページとデータベース構築」ということで、これについても行政の方で幾つか進展がございましたので、これはこの後、参考資料2について説明したいと思っております。
 (5)としまして、「国際協力とリーダーシップ」、これにつきましてはこの報告書の5.に項目がありますので、そこで解説したいと思っています。  次に14ページでございます。14ページ以降が、本報告書の核となる部分でございます。「検討課題と成果」。まず初めに、今日検討会の一番最初に御紹介いたしましたが、第10回の検討会で議論されて確認されました重点的に検討する事項についての紹介。あと、それにつきまして、こういった作業班を設けて検討を行ったということの紹介を15ページ、16ページにかけてしております。
 17ページ以降は、それぞれの各論でありまして、この資料につきましては、便宜上今日使いました資料からの抜粋をそのまま編集しております。これにつきましても、今日の御討論を踏まえまして、各先生等におきまして、更に文章等の精査をしていただきまして、内容の再検討をしたいと思っております。
 続きまして、後ろの方になりますが、60ページまでお進みください。この各検討課題と成果についての説明が終わって、次に60ページ以降ですが、それ以外の情報ということで、ここ3年間の「世界における最近の主な取組と国際協力」ということで幾つか説明したいと思っております。これは第10回の検討会の資料で配付されたものに追記してここに記載したものです。
 1つは国際化学物質安全性計画(IPCS)における進捗。
 経済協力開発機構(OECD)における進捗。
 例えば、経済協力開発機構では、最近の取組の中で御紹介いたしますと、下に下線が引いてある「内分泌かく乱化学物質の試験評価戦略会議」というものが3月に開かれておりまして、これについて簡単に御紹介しております。
 ページめくっていただきまして、61ページでございますが、ここでは米国での取組を紹介しておりまして、ここの3)、先ほど井上先生から簡単に一部説明がございましたが、アメリカで開かれました低用量問題評価会議についての報告書が今年の6月に公表されておりますので、それについて簡単に紹介してございます。
 62ページでございますが、これは「欧州」における取組で、これにつきましても、今年の6月に欧州委員会から欧州議会あてコミュニケということで、「内分泌かく乱化学物質の欧州戦略の実施」という文書が公表されておりますので、それについて紹介しております。
 6番でありますが、「国内における最近のその他の取組」ということで、これは年表形式で、その他の取組について、他省庁の取組等も含めて簡単に御紹介する目的でここに取り上げてございます。これにつきましても、第10回の検討会資料に追記して編集いたしました。
 新しく追加になったところは64ページの一番上のところですが、今年の7月、つい先週でございますが、厚生労働省の「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会毒性・器具容器包装合同部会」にて、食品衛生法に基づく以下の規格基準案を審議ということで、フタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関する器具及び容器包装の規格基準(案)、フタル酸エステル類を含有するポリ塩化ビニルに関するおもちゃの規格基準(案)、これが審議されて、案として公表されております。
 これは内分泌かく乱作用があるからという視点ではございませんで、通常の一般毒性もしくは生殖発生毒性の観点から、この物質に関して食品衛生法上の基準を改正するというものでございます。ただ、物質自体が内分泌かく乱作用が疑われている物質というふうにこれまで言われていますので、活動としてここに取り上げました。
 7番に関しましては、「今後の調査研究等のスケジュール」ということで(作業中)とありますけれども、今日各先生方に報告いただいた研究成果を踏まえて、今後どういう研究をしたらいいのかというものを具体的に示せればと考えております。
 あと、一番最後のページ、65ページでございますが、これにつきましては、今年の1月、省庁の再編がございまして、関係省庁の取組図に一部変更がございましたので、これは中間報告書を出したときにもこの図を載せていますので、今回その修正版を改めて載せております。
 事務局からの説明は以上です。
○伊東座長 ありがとうございました。何かこの御説明いただいたことについて御質問ございましたらどうぞ。
 それでは、特にないようでございますので、まだまだ御意見があろうかと思いますが、本検討会の中間報告書追補の作成につきましては、御議論いただきました内容を参考として御検討いただくということで今後進めていきたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
               (「はい」と声あり)
○伊東座長 ありがとうございました。
 それでは、本検討会では資料7に示された考え方で、今日皆様が出された御意見も踏まえまして追補の作成に入っていきたいと考えております。どうぞ事務局の方、今日のディスカッションも随分長うございましたけれども、これからもひとつよろしくお願いいたします。
 本日の議題は以上でございますけれども、長時間の御議論、誠にありがとうございました。まだ言い足りないというしつこいのもあると思いますけれども、それはまた随時賜るということで、これで終わりたいと思います。
 そのほか事務局から何かございましたらどうぞ。
○事務局 差し支えなければ、今日参考資料2として配付しております「内分泌かく乱化学物質ホームページ」について、事務局から簡単に説明させていただければと思います。
○事務局 それでは事務局より、参考資料2に基づきまして簡単に内分泌かく乱化学物質ホームページについて御説明申し上げます。
 本ホームページは、平成10年度中間報告により指摘されております情報管理、情報提供システムの整備の一環として、我が国や欧米の研究機関や国際機関における内分泌かく乱化学物質の研究成果、他省庁のデータ等をホームページで広く公表することを目的としております。
 内容につきましては、参考資料2の1枚目とその裏が一応現在のホームページの案として作成されているものでございます。現在このホームページにつきましては、パスワードを入力することで、関係者のみに公開しているものでございますが、修正等を現在実施しておりまして、8月中に一般に公開するという予定でございます。
 内容につきましては、まず「内分泌かく乱化学物質とは」ということで、簡単な内分泌かく乱化学物質の解説。
 2番目として、「Q&A」ということで、内分泌かく乱化学物質の簡単なQ&Aを作成いたしましたので、それを紹介しております。それは3ページ目以降に案を載せております。
 3番目として、「米国EPAの内分泌かく乱化学物質関連データベース」の日本語版ということでございまして、EPAが作成いたしました内分泌かく乱化学物質スクリーニングプログラム−プライオリティ設定データベースというものの日本語版でございます。
 4番目として、「研究情報」といたしまして、これまでの厚生科学研究の報告書等について掲載しております。
 5番目、「その他」といたしまして、内分泌かく乱化学物質の健康影響に関する検討会の議事録等を収載しております。
 6番目として「関連ホームページのリンク」ということ。
 7番目は「世界の情報を探す」ということで、検索エンジンを収載しております。
 今後はEPAのデータベースの和訳、こちらは和訳がまだ完成しておりませんので、和訳を順次進めるとともに情報の更新や追加を実施する予定でございます。
 以上でございます。
○伊東座長 ありがとうございました。何か御質問ございますか。
 それでは、おおむねこれで用意したディスカッションは終わりにしたいと思いますが、何か御検討いただいた事項を踏まえて、これからも積極的な御意見を賜りたいと思います。事務局の方から。
○化学物質安全対策室長 本日は長時間にわたりまして御議論いただきましてありがとうございました。本日御議論いただいた内容、それと先ほど座長から御指示いただいた内容を踏まえまして、次回会合に向けて必要な作業を進めさせていただきたいと思っております。
 なお、次回ですけれども、次回の開催につきましては、事前に委員の皆様に御都合をお伺いしておりまして、その結果、10月16日(火曜日)の午後ということで開催をさせていただきたいと思っております。なお、詳細の時間、場所等につきましては、また追って開催の御案内を差し上げますので、よろしくお願いしたいと思います。
 事務局からは以上でございます。
○伊東座長 それでは、長時間ありがとうございました。また、10月16日に1時からということで、5時半か6時ぐらいまでやられるのではないかと恐れておりますが、そのときは、皆様御覚悟の上、御出席賜りますようにお願いいたします。
 本日はどうも長時間ありがとうございました。
(了)


照会先
厚生労働省医薬局審査管理課化学物質安全対策室
担当:川嶋
TEL:03・5253・1111(2424)


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