検討会、研究会等  審議会議事録  厚生労働省ホームページ

第6回「ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題に関する研究会」(議事概要)


日時 平成13年7月23日(月)10時00分〜12時00分

場所 厚生労働省16階専用第17会議室

出席者  浦川委員、高橋委員、堀内委員、森島委員、矢崎委員、野々下専門家
厚生労働省医薬局長、総務課長、医薬品副作用被害対策室長、血液対策課課長補佐、審査管理課オーファンドラッグ専門官等

議事

1.第5回研究会の議事概要
2.救済制度の性質論
3.救済の必要性
4.財源、制度の安定性
5.救済対象となる健康被害の範囲
6.因果関係の認定
7.今後の研究会の予定

[主な発言内容]

○ 救済制度を考える場合、その1つに損害賠償がある。民法第709条において、「故意又は過失」で他人の権利を侵害した場合には損害賠償の責任を負うこととされている。また、現在では、製造物責任法があり、過失の有無にかかわらず、通常備えるべき安全性を備えていないという「欠陥」があれば、それで損害賠償の義務が生ずることとされている。

○ 損害賠償では、何が適切な損害賠償額かということがあるが、一応、損害のすべてを補償するという考え方になっている。

○ 損害賠償では、「故意又は過失」又は「欠陥」及び因果関係を立証しなければならないとともに、損害がどれ位あるかも言わなければならない。

○ 一方、行政上の救済の場合、被害者側で一応の資料を用意すれば、救済する側の方で認定をするという仕組みが通常ではとられている。

○ 行政上の救済の場合の救済額については、民法の損害賠償とは異なり、生活費、医療費等の項目がほぼ決まっており、また、定期金で支払うのが通例である。

○ 行政上の救済の場合、救済の財源が必要となる。医薬品副作用被害救済制度の場合、医薬品製造業者等が売上高に応じてあらかじめ拠出金を出すこととなっているが、他の制度では、公費が入っているものもある。このような財源を、どういう理由で誰が負担するかという問題がある。

○ 行政上の救済でも、非常に被害が広がった場合には、金銭給付だけでなく、復旧作業や仮設の建物を建てるのに必要な補助などをすることが多く、最近はそのような行政施策とパッケージになっていないとあまり評判が良くない。

○ 今日の救済制度では、損害賠償を民法又は特別法的なものでいくか、損害賠償に近い形で行政上の救済を考えるというのが現在の主たる流れではないか。

○ 製造物責任法を考えた場合に一番の問題となるのが開発危険の抗弁ではないか。製造物責任制度では、「欠陥」があれば本来責任を負うべきであるが、開発危険のリスクまで企業に負わせてしまうと、新規技術に挑戦することがなくなり、結局産業の発展が阻害される。そのため、開発危険の抗弁が設けられたのであろうが、開発危険の抗弁で落ちる者を助けるためにも、行政上の救済を考えるのが筋ではないか。

○ 製造物責任法の制定時の、ウイルスの混入等は血液製剤の本来の性質上やむを得ないものであり、欠陥に当たらないという政府の見解からすると、新しく仕切り直すというのは立法的に難しいのではないか。

○ 開発危険の抗弁が認められないと、先端医療は何もできなくなってしまうし、医療の開発もできない。

○ ヒト由来製品の場合、ロットの問題、すなわち製造の材料由来が大きな議論になるが、患者側が因果関係を立証することは難しいので、それほど立証されていなくとも救済されるようにするべきではないか。

○ 予測し得る健康被害と予測し得ない健康被害がある。予測し得るものは医薬品の添付文書に記載されている。医薬品副作用被害救済制度では、添付文書に書いてあるにもかかわらず、投与量を守らなかったなどの場合の健康被害は救済の対象とされていない。

○ 損害賠償の場合には、仮に、ヒト由来製品による感染者を源とした2次感染、3次感染であると医学的に分かったとしても、病室の管理の不備による院内感染など第3者の行為や介入もあり得るため、法律的に因果関係があるかどうかということも問題となる。

○ 現行法上、製造物責任では欠陥があっても開発危険の抗弁で否定されてしまえば、責任を問えず補償されないことからすると、開発危険の抗弁を認めないという制度にすれば、現行法よりも一歩動くのではないか。また、欠陥がなくとも因果関係さえあれば補償することにすれば、もう一歩進むのではないか。ただし、因果関係の認められないものは補償できないのではないか。

○ また、今の救済制度は、欠陥がなくとも因果関係があれば個体差で生じるリスクまではカバーしている。感染の場合はリスクとしては大きいから、開発危険の抗弁ではねられるところを救済するという考え方もある。

○ 医薬品副作用被害救済制度における因果関係の認定は、予防接種に比較して厳しいという意見があるが、医学的な因果関係の判定にはそれほど差がないものの、予防接種の場合はある程度パターン化しているのに対し、医薬品の副作用の場合は非常に微妙なものがあるため、判断が難しいものと、申請すればすんなり認められるという結果の違いに現れているのではないか。

○ 抗がん剤等は、正常な細胞にもダメージを与えることが前提となっており、その結果、副作用が起こることは予想されているのに対し、ヒト由来製品による感染は全く期待していないことであるから、医薬品副作用被害救済制度と同様に扱って良いのではないか。

○ 救済制度の枠を決めておかず、起きてからの対応とすると、救済の財源を拠出する側の合意が得難いので、あらかじめ決めておくべきではないか。

○ あらかじめ枠組みを決めてしまうと、後から多くの問題点が出てくるのではないか。

○ 現在想定されないような問題についてもカバーしておくというのが、このような制度を作る理由なのではないか。

○ 医薬品副作用被害救済制度の対象に感染も含めると、将来予見し難いものも出てくるが、認定の段階で専門家も含めて審査することになるので、一番単純なやり方ではないか。

○ 現行の医薬品副作用被害救済制度を基に、感染による被害を救済する必要性があるかどうかを考えた場合、メーカー側に責任を負う要素として濃淡があるかという問題があるのではないか。

○ 健康被害を受けた側からすると、副作用であろうと感染であろうと、医薬品により健康被害を受けたということに変わりはない。しかし、メーカー側からすると、医薬品副作用被害救済制度は帰責性の非常に薄い制度ではないか。

○ 副作用の場合は、その発生が予想されており、その確率は非常に小さし、発生の範囲も非常に限定されているため、ある程度限定された救済で済んでいる。一方、感染の場合は、未知のウイルスが混入したり、2次感染、3次感染が起きる可能性があり、完全に救済を行えないという要素があるのではないか。

○ 副作用と感染では、現実的に差があるので、その差を理由に、両者の健康被害に対する救済を同一レベルにしないことも考えられるのではないか。

○ 医薬品を製造していて、感染の原因因子が混入する可能性はあるが、一般的に医薬品を製造した場合に必ず伴うことになっていない。その点で、副作用とは異なるのではないか。

○ 一般の感染症の場合は、因果関係の判定が難しく、結局は未知のウイルスやクロイツフェルト・ヤコブ病など、現在問題となっているようなものに絞られていくのではないか。相当限られたものでないと判定は難しい。

○ この問題で一番大きいのは、予期できないものの規模をどう見込むかということではないか。

○ 救済の対象となる健康被害の種類を、予測される範囲でポジティブリスト化する方法があるのではないか。未知のものには災害救助的に対応することも考えられる。

○ HIVや肝炎など、これまでの感染症は、みな予測されていなかったものであるし、これからも未知の感染症も含めて起きる可能性があるのであるから、未知のものも含めて救済されるようなシステムを作る必要があるのではないか。


照会先:医薬局総務課医薬品副作用被害対策室
    野村
    03-5253-1111(内線:2719)


トップへ
検討会、研究会等  審議会議事録  厚生労働省ホームページ