01/06/01 医師分科会医師臨床研修検討部会(第1回) 医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会(第1回) 平成13年6月1日(金)10:00〜 経済産業省別館第825号会議室 ○医事課長  定刻になりましたので、ただいまから医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会を 開会させていただきます。部会委員の皆様方におかれましては、お忙しい中をご出席く ださいまして、誠にありがとうございます。私は、厚生労働省医政局医事課長の中島で ございます。座長選出までの間、議事進行役を務めさせていただきますので、よろしく お願い申し上げます。  それでは、議事に入る前に、私から委員の皆様方をご紹介させていただきます。聖路 加国際病院副院長井部俊子委員、国立肥前療養所長内村英幸委員、聖路加国際病院長櫻 井健司委員、関東中央病院長杉本恒明委員、日本経営者団体連盟参与環境社会部長高梨 昇三委員、まだ到着されておられませんが、朝日新聞論説委員高橋真理子委員、ささえ あい医療人権センターCOML代表辻本好子委員、関西医科大学医学部教授徳永力雄委 員、九州大学医学部附属病院長中野仁雄委員、日本医療保険事務協会理事長仲村英一委 員、日本労働組合総連合会生活福祉局次長花井圭子委員、京都大学大学院医学研究科教 授福井次矢委員、日本医師会常任理事星北斗委員、日本大学医学部長堀江孝至委員、医 療法人健康会理事長三上勝利委員、沖縄県立中部病院長宮城征四郎委員、国立国際医療 センター総長矢崎義雄委員、全国国保診療施設協議会特別顧問山口昇委員、横浜市立大 学医学部教授横田俊平委員です。なお、本日は慶應義塾大学医学部教授相川直樹委員、 千葉大学学長磯野可一委員、東海大学医学部長黒川清委員からご欠席の連絡をいただい ています。  続いて事務局を紹介させていただきます。医政局長の伊藤、医政局総務課長の大谷、 医政局歯科保健課長の瀧口、医政局医事課試験免許室長の馬渕です。また、本日、文部 科学省から、高等教育局医学教育課の村田課長が出席しておられます。以上、よろしく お願い申し上げます。  それでは、本検討部会の設置にあたり、医政局長からご挨拶申し上げます。 ○医政局長  一言ご挨拶を申し上げます。医道審議会医師分科会医師臨床研修検討部会の設置にあ たり、委員の皆様方におかれましては、大変ご多忙の中、本検討会の委員をお引き受け いただき、ご出席いただきましたことについて、まず御礼申し上げたいと思います。  医師の臨床研修については、戦後、医師法が施行されて、実地修練制度、いわゆるイ ンターン制度が昭和43年まで続いてきたわけですが、昭和43年にそれまでのインターン 制度を廃止して、大学附属病院及び臨床研修指定病院において、2年間の努力義務規定 の現在の姿になり、以後約30年間、その形で実施してきたわけです。21世紀を迎え、 医師と患者の関係、疾病構造の変化、それから国民の医師に対する様々な観点からの批 判などがあり、医師の養成制度については、多くの観点から見直しが必要であります。 とりわけ、基礎的な臨床能力や患者とのコミュニケーション能力などについて、いろい ろ意見があったわけです。  このような中で、医療制度抜本改革の一環として、昨年、健康保険法や医療法と同時 に、医師法の改正案が第150国会、具体的に申しますと、昨年11月30日に参議院において 可決成立され、平成16年4月から、卒後の臨床研修が必修化されることになったわけで す。この卒後臨床研修の必修化については、かなり長い経緯があります。平成6年に当 時の医療関係者審議会医師臨床研修部会から、必修化すべきとのご意見をいただいて以 来、今日までの間に医療関係者、大学関係者、また医療保険の支払い側等、様々な方々 に、それぞれ重要な課題としてご検討を重ねていただいた結果、ようやく合意に至り、 今回の法改正に至ったものと認識しております。  指導体制や研修中の医師の処遇等、国会審議の中においても、様々な観点から具体的 な問題点が指摘され、今後解決しなければならない様々な課題があります。私どもとし ては、研修医が適切な研修を受け、研修に専念できる体制づくりについて、厚生労働省 として努力していく必要があると考えています。この検討部会においては、必修化に向 けた今後の臨床研修の具体的な事項について、例えば2年間の到達レベルであるとか、 臨床研修病院の指定要件の見直し、臨床研修の修了の認定方法等、様々な具体的な事項 について、ご審議をお願いしたいと思っています。  今回の検討部会については、医療関係者はもちろんですが、いま申し上げたような観 点から、医療関係者、特に医師のみならず医療の受け手の立場の方々にもご参加いただ き、また医療費の負担をしていただいている皆様方にもご参加いただき、単に臨床研修 の必修化に係る技術的な論点のみならず、21世紀の我が国の医療はどうあるべきか、 また我が国の医療を担う医師の養成はどうあるべきかといった、幅広い観点からのご検 討をお願いしたいと考えております。平成16年の必修化の施行に向け、様々な現場の医 療機関における準備等を考えると、今後、かなり精力的なご検討をいただかなければな らないところでして、委員の皆様方には大変ご苦労をおかけすることになろうかと思い ますが、何卒よろしくお願い申し上げまして、簡単でございますが、ご挨拶に代えさせ ていただきます。 ○医事課長  次に、議事を進めるにあたり、この医師臨床研修検討部会においては、議事録を含 め、特別の場合を除いて公開ということで進めたいと思いますが、いかがでございまし ょうか。 (異議なし) ○医事課長  それでは、この医師臨床研修検討部会については、議事録を含め、基本的に公開とさ せていただきたいと思います。  次に、「部会長の選出」についてです。委員の皆様方からのご推薦をいただきたいと 存じますが、いかがでしょうか。 ○仲村委員  僭越ですが、私からご推薦申し上げたいのですが、国立国際医療センターの矢崎総長 にお願いしたいと思います。ご承知だと思いますが、臨床研修研究会の会長も務めてお られますので、適任ではないかということで、ご推薦申し上げたいと思います。 ○医事課長  ただいま仲村委員から、矢崎委員に部会長をお願いしたいという旨のご提案がござい ましたが、いかがでしょうか。 (拍手あり) ○医事課長  それでは、皆様のご賛同をいただきましたので、矢崎委員に部会長をお願いいたしま す。どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  ただいま部会長のご指名を受けました、矢崎でございます。大変重責でございます が、いま局長のお話にありましたように、平成16年の臨床研修の必修化に向けて、これ からは実際に詰めていかなければならない課題が多々ございます。何卒幅広い視点から 審議を進めていただきたく、よろしく今後ともご協力のほどをお願い申し上げます。  それでは、議事に入りたいと思います。まず事務局から、「臨床研修の概要につい て」と「臨床研修の必修化について」を一括して説明をお願いします。 ○事務局  それでは、「臨床研修の概要」並びに「必修化」について、ご説明をさせていただき ます。この「臨床研修の概要」については、非常に詳しい先生方もおられますので、若 干繰り返しの説明になる部分がありますが、第1回目の部会ということで、改めて説明 をさせていただきます。  まず、資料2−1の「臨床研修の概要について」に基づいて、現在の制度の概要をま ず説明させていただきます。1頁の「臨床研修制度」については、医師法に基づいて、 医師は免許を受けたあとも、2年以上、大学附属病院又は臨床研修病院において、臨床 研修を行うように努めるものとされています。平成11年度において、研修の対象者1万 5,041人に対して、1万3,000人強、87%の方が研修を行っています。戦後日本の医師・ 医療制度が定まるにあたり、欧米に範を取り、水準の高い医師を養成するという観点か ら実地修練制度、いわゆるインターン制度が創設され、卒業後1年以上の診療及び公衆 衛生に関する実地修練を行うことが、国家試験の受験資格の要件とされていました。し かしながら、学生でも医師でもないというインターンの行う医行為の法的位置づけの問 題、経済的問題、さらには指導体制の問題等から、昭和43年に医師法が改正され、実地 修練制度が廃止されました。これに伴い、臨床研修制度がそれに代わるものとして設け られ、医学部卒業直後に国家試験が受験できるようにするとともに、免許取得後、2年 間以上の臨床研修を行うことが努力規定として定められ、今日に至っております。  現在の臨床研修制度の医師養成課程における位置づけについては、2頁にまとめさせ ていただいています。臨床研修は、教育・研修に関する高い機能を有する病院におい て、適切な指導責任者の下に、卒前の臨床教育で得た幅広い知識及び技能を基礎に、実 地に技能、知識を練磨するとともに、資質の向上を図るものです。頁の下半分に「養成 課程のイメージ」ということで、概ねのイメージを載せておりますが、いわゆる大学の 卒前教育、6年間を終了したあとに、国家試験を受験し、医師免許を取得します。卒前 教育においては、医師として必要な知識、技能の修得がなされ、その知識、技能につい て国家試験で評価されております。  臨床研修制度は、大学卒業後の2年間という位置づけですが、先ほども申し上げたよ うに、診療に関する知識、技能という基本的な部分を練磨するという意味合いがあるわ けです。臨床研修を終了したあとは、医師は、いわゆる生涯教育ということで、常に専 門分野に関する知識、技能の修得、アップデートがなされているわけですが、特に一般 的な形式としては、臨床研修のあとに、いわゆる専門医・認定医等の教育を各専門学 会、また各病院施設等を通じて受けていると承知しております。  続いて3頁ですが、医師の臨床研修制度の充実に向けたこれまでの取組みを一覧にし ております。昭和43年の臨床研修制度発足後、様々な臨床研修の充実に向けた取組みが なされています。まず第1点として、指導者の養成という観点から、昭和49年の12月に は、医学教育者の方々のためのワークショップ、いわゆる「富士研」と言われているも のですが、第1回が開催され、以降年1回、今日に至るまで開催されています。  第2点目としては、「研修内容の充実」ということですが、これは研修プログラムと 研修目標の2つの大きな部分に分かれています。研修プログラムについては、どのよう な研修を受けられるかという観点から、昭和53年3月には、プライマリーケアを含む臨 床研修の実施を進めるよう通知が出され、以降、昭和55年には、1つの診療科だけでな く、内科系、外科系の診療科、また救急診療部門等を、2年間の研修期間中に行うとい うローテート方式の導入、さらには昭和60年に総合診療方式、いわゆるスーパーロー テートですが、内科系、外科系の各々1つの診療科のほか、救急診療部門、さらには小 児科について研修を行う方式の導入等の取組みがなされています。  研修目標については、平成元年には卒後の臨床研修について、到達すべき最低限の目 標を、全国共通のものとして明示しようというところから、この部会の前身である医療 関係者審議会臨床研修部会の意見具申として、卒後臨床研修目標が定められています。 これについては、後ほど詳細にご説明申し上げます。  3点目として、臨床研修を受ける場である。厚生労働大臣が指定する病院の類型につ いての取組みであります。具体的には、臨床研修病院は、それまで要件を満たす1つの 病院で研修を行うことになっていましたが、機能を補完し合う複数の病院をグループと して、より充実した研修を行う病院群による臨床研修病院の指定が昭和59年に定められ ました。また、平成5年には臨床研修病院のみならず、地域の中小病院、診療所、老人 保健施設、福祉施設等の様々な施設における研修も、この臨床研修制度の中に位置づ け、研修を行えるような指定基準の改正が行われています。以上が概要ですが、中段に ある「臨床研修研究会」は、臨床研修病院からなる任意団体であり、昭和58年に発足 し、臨床研修の向上のために毎年研修会ないしは総会等を開催され、今日に至っており ます。  続いて4頁は「臨床研修の現状」ということでまとめております。まず1点目の「臨 床研修を行う病院の状況」です。大学附属病院については、これは分院及び研究所等の 附属病院も含み、平成13年4月現在、134の病院があります。一方、臨床研修病院につい ては、同じく平成13年4月現在において、476病院が指定されています。内訳としては、 いわゆる一般病院が461施設、精神病院が15、合計が476ということです。さらに、この 一般病院461のうち、主病院、従病院としてグループで研修を行う病院群については、 主病院が118、従病院が131の、118のグループとなっています。これを開設者別にみま すと、臨床研修病院については、国立の病院・療養所が68、いわゆる公的医療機関が 222、そのほかの民間の医療機関が186という状況となっています。  続いて5頁の「臨床研修の実施状況」です。どの程度の方が臨床研修を受けておられ るかという数字です。先ほどからご説明しておりますように、臨床研修については、卒 後2年間ということですので、対象者数は毎年の大学医学部の卒業者数、または国家試 験の合格者数の概ね倍という数字になるわけですが、平成11年度で1万5,041人となって います。研修の実施者数は、1万3,079人であり、87.0%の研修実施率となっています。 内訳で申しますと、大学病院は9,805人、臨床研修病院は3,274人であり、大学附属病院 における研修実施率は75%、臨床研修病院における実施率は25%で、ちょうど3対1の 割合になっています。  また、研修実施率の年次比較を下の表に載せております。昭和45年には研修実施率は 50.6%、概ね2分の1であったものが、年々率が上昇して、平成11年には87%にまで至 っているという現状です。以上が現在の臨床研修病院の数字の状況です。  続いて6頁は、現在の臨床研修制度の運用に関する考え方をまとめております。先ほ どの経過の説明においても申し上げましたが、現在の臨床研修制度においては、質の高 い臨床研修が実施されるように、臨床研修において達成すべき目標である。卒後臨床研 修目標と臨床研修病院の指定基準というソフトとハードの両面から、目標・基準が定め られています。まず、ソフトの面の「卒後臨床研修目標」は、臨床研修についての標準 的な到達目標で、通常見られる疾患の患者さんに対して、適切な診療を行い、また特に 救急時の診療を行う能力を身につけることが基本的な考え方となっています。志向する 将来の専門領域にかかわらず、すべての専門医の方に必須のものということで整理をさ れています。  具体的には、10頁に卒後臨床研修目標の全文を記載しています。一方、ハード面にお ける質の担保という観点から、厚生労働大臣が指定する臨床研修病院については、一定 の基準を満たしていただくことを、その要件としています。  中段よりやや下からがそのまとめですが、臨床研修病院には3つの類型があり、それ ぞれに指定基準が定められています。具体的に申しますと、7頁に「臨床研修を行う施 設の類型」ということでまとめています。  臨床研修病院の大きな類型としては、(1)の「一般病院が単独で指定を受けるも の」は、1つの病院の中で研修が完結するというものです。(2)の「病院群として指 定を受けるもの」は、1つの病院ではなく、主として研修を行ういわゆるメインの病院 と、ある一定の部分、例えば小児科であるとか、精神科といったある特定の診療機能に ついて、主病院にはそれがない場合に、適切に連携を取れる医療機関を従病院として、 主病院、従病院を合わせて研修することにより、研修すべき内容を満たすという考え方 によるものです。さらに、精神医療の研修については、別立てで(3)の「精神病院が 単独で指定を受けるもの」という基準が定められています。  また、基本的な類型は、(1)から(3)までの類型ですが、特に地域医療等につい ての研修を、基本的な研修内容をより深めて行うという場合には、地域における中小病 院、また診療所、老人保健施設等と研修施設群という形で研修を行うことができるよう になっています。  8頁には、臨床研修病院の指定基準について、ポイントのみをまとめています。「一 般病院の単独指定の場合の基準」ということでまとめていますが、「施設、人員等に関 する基準」では、研修にあたり、より多くの適切な患者さんの症例を経験することがで きるように、病床規模、または入院患者数による基準が定められています。また、内 科、精神科、小児科、外科、整形外科等、記載されている各診療科をそれぞれ独立して 設置し、それぞれの診療科について、適当数の常勤医師が配置され、十分な指導力を有 する指導医が配置されていることが、要件として定められています。  また、臨床研修を行うにあたり、特に亡くなられた患者さんについて、その死亡した 原因を適切に検討し、以降のその症例に関する理解を深める観点から、病理解剖、剖検 の重要性が謳われており、年間の剖検例が20体以上であり、剖検率が30%以上という規 定も設けられています。さらには救急医療の研修が実施できること、臨床検査室、放射 線照射室、手術室等が相当数以上確保されていること、さらには、研究、研修に必要な 施設、図書、雑誌の整備、またカルテに係る病歴管理等が、十分に保持されていること が要件として定められています。  また、一方でこの臨床研修病院の指定基準の中では、研修プログラムに関する基準と して、研修目標、研修計画、指導体制等について研修プログラムとしてまとめ、さらに はその研修プログラムの作成、管理、評価を行うため、病院において教育責任者、さら には研修に係る委員会を置くことが定められています。この指定基準の全文は、15頁か らとなっております。  一方、実際に現在行われている研修プログラムの内容ですが、9頁の上段になりま す。臨床研修病院においては、研修プログラムはすべての病院で定められており、「臨 床研修ガイドブック」といった冊子等を通じて、また各病院の募集要項等により、全国 に公開されています。  具体的な研修プログラムの例については、矢崎部会長の所属施設である国立国際医療 センターの研修プログラムの例を、「参考資料2」としてお手元に配付させていただい ています。この冊子には、具体的な研修プログラムの内容が記載され、プログラムの目 的と特徴、プログラムの内容、そこでどのような研修を経験することができるのかとい うことが、体系的にまとめられています。後ほど、詳細にご覧いただければと存じま す。  こういった研修プログラムにより、現在の臨床研修は、大きく3つの方式で行われて おり、主な研修方式として、総合診療方式、ローテート方式及びストレート方式の3つ の方式がございます。まず「総合診療方式」、いわゆるスーパーローテートと呼ばれて いる方式は、内科系及び外科系各々1つの診療科、また小児科、救急診療部門を順番に 経験するというものです。例が必ずしも適切ではありませんが、例として1年目に内科 の1つの診療科、次に小児科、次に内科の2つ目の診療科、救急、外科、最後に内科を もう1度研修するといった例を挙げさせていただいています。  次に「ローテート方式」と呼ばれているものは、内科系の診療科を1つ、外科系の診 療科を1つを経験するというものが基本的パターンです。それぞれ2カ月以上、内科 系、外科系をローテートするものです。さらに「ストレート方式」については、単一の 診療科のみを研修するものです。例としては小児科であれば小児科を2年間、皮膚科で あれば皮膚科を2年間、その診療科のみを研修するというものです。概ね現在の大学附 属病院、また臨床研修病院においては、大きく分けると、この3つのいずれかの方式で 研修がなされている状況です。  ただいまの説明については、厚生労働大臣の指定をしている臨床研修病院を中心にご 説明させていただいておりましたが、資料の6頁の下に記述しているように、大学病院 については、臨床研修病院としての基準は定められていませんが、質の高い臨床研修が 実施されるよう、各大学において、臨床研修に関するプログラムを定め、研修を実施し ています。  資料2−1の19頁では、臨床研修に係る厚生労働省関係の予算補助の制度の状況を、 簡単にまとめています。臨床研修病院を指定し、臨床研修の効率的、効果的推進を図る ために、公・私立大学附属病院と臨床研修病院に対して、運営費及び施設・設備整備費 の補助を行っています。「臨床研修費補助金」の中身としては、臨床研修を行うために 必要な経費として指導医の手当、備品購入費等ということですが、これらについて、平 成13年度には43億円の予算が計上されています。  さらには下段の「施設・設備整備費補助金」として、臨床研修病院の施設整備、研修 施設の整備等に係る補助金があり、平成12年度には17件、7億円の補助実績となってい ます。併せて、資料にはありませんが、文部科学省関係において、国立大学に係る研修 関係の予算として、研修医の非常勤職員手当等に関して、平成13年度、予算額では125億 円弱の予算が計上されております。  続いて、資料2−2で、「臨床研修の必修化」について簡単にご説明させていただき ます。臨床研修の必修化については、冒頭の局長のご挨拶にもございましたように、医 学・医療技術が進歩する中で、より専門的な知識、技能が必要とされることに伴い、専 門分化が進んでいる。また、医師としての基盤形成の時期に、将来の専門性を問わず、 全人的に患者さんを診ることができる基本的な臨床能力を身につけることの重要性が、 多くの関係者の方々から指摘されてきました。このため、平成6年12月に本部会の前身 である「医療関係者審議会臨床研修部会」において、臨床研修制度の抜本的な改善が審 議され、平成6年12月に中間まとめとして、「基本的には臨床研修を必修とする。また 併せて内容等の改善を図ることが望ましい」との意見がまとめられ、平成11年2月に は、同じくこの部会において、臨床研修必修化に向けての大枠がとりまとめられまし た。これらを受けて、平成12年11月に医療法等の一部を改正する法律案において、臨床 研修の必修化に係る改正が行われ、12月6日に公布されました。施行については平成16 年4月となっています。  2頁では、「必修化に係る近年の主な動向」として、ただいま申し上げた平成6年の 医療関係者審議会の部会意見書の中間まとめから、平成12年11月の法改正の成立に至る までの経過をまとめています。平成11年2月の医療関係者審議会臨床研修部会における 医師臨床研修の必修化についてのとりまとめ、また平成12年1月には、医師の卒後臨床 研修に関する協議会、いわゆる「四者協」と呼ばれている、臨床研修病院の関係者、大 学病院の関係者、また当時の厚生省、文部省の関係者が一堂に会した協議会による臨床 研修の必修化に係る意見というアンダーラインをした2つの報告が、必修化に係る、直 近のそれぞれの機関におけるとりまとめということで、次の3頁からその概要を付けて おります。  医師法等改正の概要は、10頁にその項目をまとめています。11頁は現行の制度との 比較により、説明をしております。11頁の左側が現行、右側が平成16年4月の必修化以 降ですが、臨床研修について、医師は現行では臨床研修を行うように努めるものとする とされていますが、平成16年4月以降は、診療に従事しようとする医師は、臨床研修を 受けなければならないという規定になっています。また、専念規定として、平成16年4 月以降、臨床研修を受けている医師は、臨床研修に専念し、その資質の向上を図るよう に努めなければならないという規定が新たに定められています。また、臨床研修の修了 時の手続等に関して、平成16年4月以降は、修了した者を医籍に登録するとともに、修 了登録証を交付するという手続が新たに加わりました。  さらに診療所の開設、病院等の管理については、現行の規定では診療所開設の際の許 可を、都道府県知事から受けなければならない者は医師でない者ということですが、こ れが「臨床研修修了医師でない者」と変わります。病院等の管理についても同様に、 「臨床研修修了医師に管理をさせなければならない」という規定に改められました。  法改正の概要については以上ですが、この臨床研修必修化に係る、主な指摘・要望等 様々な団体等による一覧を12頁、13頁に載せております。まず、医師法等の改正が審議 された第150回国会の参議院の国民福祉委員会において、「医師及び歯科医師の臨床研修 については、インフォームドコンセントなどの取組みや人権教育を通じて、医療倫理の 確立を図るとともに、精神障害や感染症への理解を進め、さらにプライマリーケアやへ き地医療への理解を深めることなど、全人的、総合的な制度へと充実すること。その 際、臨床研修を効果的に進めるために、指導体制の充実、研修医の身分の安定及び労働 条件の向上に努めること」という附帯決議がなされています。  さらに(2)の「必修化に関する関係者等の主な意見、要望等」について、先ほど の、必修化について具体的な意見のとりまとめがあった平成11年の医療関係者審議会の 部会のとりまとめ以降のものを載せております。日本リハビリテーション医学会から、 リハビリテーションを加えてほしいという要望、私立医科大学協会からは、研修医が研 修に専念できる環境整備のため、給与財源について、適切な措置が図られることという 要望、13頁で衛生学・公衆衛生学教育協議会からは、予防的観点を視野に入れた公衆衛 生の研修が不可欠ではないかという要望。全国医学部長病院長会議からは、卒後臨床研 修必修化に不可欠な最低限の経費の確保について等の要望、全日本医学生自治会連合か らは、臨床研修必修化の審議内容を、医学生に情報提供すること等の要望、また精神科 七者懇談会からは、精神科の必修にかかる要望、四病院団体協議会からは、中小民間病 院を含め、研修病院・診療所群という概念で全人的な教育制度を確立すること等の要 望、また内科学会からは、内科の研修については12カ月以上を必須とすることといった 要望が、すでに出されているところですので、ご紹介させていただきます。  以上、資料No.2−1、および資料No.2−2に基づき、臨床研修の現状と必修化の規 定等についてご説明申し上げました。 ○矢崎部会長  資料に基づき大変広範囲に、制度的に臨床研修の必修化に至った、いままでの経緯の 概要と、そのカリキュラムの内容、あるいは指導体制、実施施設、評価、その他につい てまとめていただきましたが、何かご質問、ご意見はございますか。 ○三上委員  ただいま説明を受けましたが、その前に私の立場を。昭和43年に大学を卒業して、私 は学生運動で、インターン制度廃止のほうにかかわってきました。いま現在、病院を経 営する者として、逆に卒後研修に関して独自に研修委員会を設け、病院で後継者を育て ております。まず、そういう立場があります。そういう視点に立ちますと、先ほどの説 明の中で、私は少し疑問に思う点があります。  1つは、インターン制度が廃止されて30数年、厚生労働省が先ほど述べたようないろ いろな施策と、その間大学で行われてきた卒後研修とは、全く乖離があるというか、実 際にそのプログラムに基づいて、国公立大学で卒後研修をやっているという事実は、ほ とんどありません。ところがこれで見ると、研修実施率がどうこうと書いてある。これ は「研修実施率」と言うよりも、ただストレートに大学の医局に入局したにすぎない、 いわゆるストレート研修ということで曖昧にされています。「スーパーローテート」と か、「ローテート」とか、「ストレート研修」というような言い方をしていますが、こ れは言葉の綾であって、実際にいままでの大学の講座制の中に、ただそのまま入ってい るのです。それがこのストレート研修という、研修実施率の中に入っているわけです。  この間、実際の大学で卒後研修がどのように行われているのか、その資料を集めてき たわけですが、医学生や若手医師の回答から我々が知っている限り、ほとんどの大学で 大学の医局に入ったことを、厚生省は「卒後研修」と言っているだけで、今度義務化さ れるという意味での初期研修という形では、ほとんどなされておりません。そういう現 実がこの資料からは見えてこない上で、新しい卒後研修の義務化が始まることに対し て、私は非常に心配です。むしろ今までなされてこなかったという事実が、なぜなされ なかったのかということを明らかにして、その上に立って新しい研修制度を作らなけれ ば、以前のインターン制度と全く同じになってしまうという危惧を持っております。  その点で説明とは全然違う卒後臨床研修目標、研修プログラム、国公立大学でこれに 基づいた実施など、ほとんどされていません。研修率87%云々というのは、ストレート 研修が大部分です。先ほど国立国際医療センターの話が出ましたが、あのようにきちん となされているというのは、おそらく例外的ではないか。私が情報を集めた限りでは、 国公立あるいは私立大学においても、ほとんど同じです。ですから、そういう現実をま ずはっきりとらえるべきではないかというのが、まず第1点としてあると思います。 ○矢崎部会長  事務局から何かございますか。 ○医事課長  事務局としましては、今回の説明の中でそういった部分は盛り込め切れなかったわけ ですが、まさにそういう点を、この場でご議論いただければと思います。 ○医政局長  ここでの議論を踏まえながら実態調査などやりまして、臨床研修指定病院なり大学病 院の2年間で、実際にどういう研修をどういう体制でやっているのか、それらの結果も 含めて御検討いただくことを考えております。 ○三上委員  是非お願いしたいと思います。 ○中野委員  いまの三上委員の発言の趣旨を確認させてください。この場では医育機関であれ、そ うでない研修病院であれ、同じ場に立って討論が進むものという期待で、私はここにい るのです。いまのお話からしますと、ある対峙をしながら、過去の成否を自己批判した 上で進む、こういう入口をお作りになるというご発言ですか。 ○三上委員  いや、違います。現在、私自身はいま言ったような発言で、大学と対峙するという か、喧嘩するつもりは毛頭ありません。ただ今回の研修指定病院のところで、大学は研 修指定というところから、初めから外れているというか、最初から研修病院になってい るわけです。そのように現在の医局講座制をそのままにして、研修制度というものをど う考えていくのかを考えてみると、やはりその辺のところに問題があるのではないでし ょうか。むしろ卒後初期研修を考えるのであれば、大学の医局講座制とは別の形で、研 修制度というものを考えなければ、いままでの講座制と全く同じような形で、研修制度 が進むのではないかという危惧をしているわけです。 ○中野委員  ただいまのお話でしたら、大変落ち着いた話なので、これからいろいろ討論していく ことができるなと思っております。75%お引受けしているということは間違いないこと なので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○矢崎部会長  今日は文部科学省の医学教育課長さんがご出席ですので、いまの両先生のご意見を踏 まえ、文科省としてどう対応されているかというご説明をいただければ、少しはご理解 いただけるかと思います。ちょっとご説明いただけますか。 ○医学教育課長(文部科学省)  お手元のA3の紙で、ご説明させていただきたいと思います。いろいろな経緯のある 世界の話だと思います。私どもは医学・歯学の大学における教育のあり方について、自 治医科大学の高久先生に座長をしていただき、また、こちらの会議のメンバーの矢崎先 生にもご参画いただき、医学・歯学教育のあり方に関する調査研究協力者会議で、学部 教育再構築の方向性の報告を、今年3月にとりまとめていただきました。そこで目標と しておりますのは、学部の6年間の教育の中で、最終的に患者中心の医療を行うことの できる質の高い臨床能力と、課題探究能力、医師の卵に対するクオリティのインプルー ブメントを行っていくためのよすがを、お示しいただいたものと理解しております。  そこでポイントになりますのは、A3の紙の右上にあるコミュニケーション能力、安 全管理能力、基本的な臨床能力です。これは単に知識に留まらず、医師として、良き医 療人として、適切な態度や技能を身に付けるという観点です。カリキュラムにしても、 いままでの学問体系のほうからのアプローチと言うより、むしろ最終的な医療人という ことを念頭に置いた、総合的な、統合的なカリキュラムの編成の仕方についての提言が 必要であろうと。そのポイントとして1つありますのが、問題解決能力を向上させるよ うな、学習プログラムの提供です。A3の紙の真ん中辺りに、ピンクのレポートのポイ ントが、いくつか書いてあります。いちばん大きなものの1つが、「カリキュラムの改 革」です。さらに「臨床実習の改革」と書いてありますが、適切な臨床実習入る前の学 生の評価という、臨床実習に入るのに適したところまで間違いなくなっているか、適切 に評価していくというものです。その2つの大きな柱をいただいております。  A3の紙を1枚めくっていただきますと、「カリキュラムの改革」と「臨床実習の改 革」ということで、細かく説明させていただいております。「カリキュラムの改革」の ほうですが、真ん中にチャートがあります。チャートは、横軸が学部6年間という時間 軸と、ご理解いただければと思います。教育の内容として専門的な領域について、基幹 的領域と専門的領域というように分けております。基幹的な領域について、若干色が付 いてハッチングしてある所が、コア・カリキュラムの中心になります。必修の部分につ いては、豊かな人間性等々についての修練を積むということを、6年間を通じてやりま す。さらに専門領域で言うならば、臨床実習に入る前の段階で学んでおかなければなら ない部分のコア・カリキュラム等々について、いちばん下にAからGまで書いてありま す。このような従前の学問体系にとらわれない体系的な整理をいただいております。  Aでは基本事項として、医の倫理、患者の権利、インフォームドコンセント等々、現 在この世界においていろいろな議論がなされていることについて、教育の中で基本的な 理解を持たせます。B以降は医学一般のところから、人体各器官の構造等についての理 解、さらにはアレルギー等々、全身に影響が及ぶような疾患も念頭に置いた、人間の体 を全身としてとらえるような教育を行います。Eでは診療の基本、Fでは社会との関係 についての理解等について、モデル・コア・カリキュラムの中身が整理されておりま す。さらにGは、こちらの議論とも関係があろうかと存じますが、臨床実習の所です。 別冊のピンクの厚いほうの資料の目次に、一般教養的な部分から専門教育に移行する部 分における、専門に入る前の準備的な内容ということで、医学教育と歯学教育のモデル ・コア・カリキュラム、さらには準備教育のモデル・コア・カリキュラムがあります。  それを1枚めくりますと、医学のモデル・コア・カリキュラムになっております。目 次の3頁目にGとして、臨床実習ということが書いてあります。臨床実習のうち、特に 触れておきたいと思いますのは、Gの2と3です。内科系の臨床実習、外科系の臨床実 習ということで、内科、精神科、小児科、外科、産婦人科。そして救急医療の臨床実習 というあたりを中心に、学生のうちに臨床実習を行っていただくことを、モデル・コ ア・カリキュラムの中に入れさせていただいております。このモデル・コア・カリキュ ラムの性格は、全体で6年間を通して行う大学のカリキュラムのうち、大体3分の2程 度の時間で対応していただくような、基本的なものを体系的に整理したものです。残り の3分の1は、それぞれの大学において、特色のある教育をしていただくという構造に なっております。  私どもは、このカリキュラムを適切に実施していただきたいと思っております。それ をエンカレッジすることにもなるわけですが、「臨床実習の改革」、A3の紙の2枚目 の右のほうに、「臨床実習に入る前に、適切な学生の評価を行う」というのがありま す。これは大学によって若干違いますが、多くの大学において4年修了あたりから臨床 実習に入りますが、その際、各大学でのコア・カリキュラムの体系を念頭に置いた、各 大学で共用して使っていただくような総合試験のシステムを構築していただきたいと思 っております。それは主として知識等を問う、コンピューターベーストのテストシステ ムです。このコンピューターベーストのテスティングシステム、さらに客観的臨床能力 を試す、OSCEと呼ばれている試験とを併用することにより、臨床実習に入る前の段 階の学生が、臨床実習に適切に対応できるレベルまでいっているかどうかをチェックす るということで、いわゆる品質の作り込み作業をエンカレッジするという内容になって おります。  さらに今回の協力者会議のレポートでは、臨床実習は単なる見学型ではなく、「クリ ニカル・クラークシップ」と言われている、診療参加型の実習を推奨しており、そのた めの実施体制の充実ということで、診療参加型臨床実習のガイドライン等も作成してい ただいております。私どもはこのようなカリキュラムの改革、および臨床実習の改革を 推し進め、各大学の自主的な活動と合わせながら進めていただく体制を、今後数年で作 っていきたいと思っております。実は昨日もこのコンピューターベーストのテストシス テムに関連して、いろいろ議論をしておりましたが、その中でやはり卒後の研修と、こ うしたカリキュラムとの整合性というか、連携を十分付けていただきたいという、先生 方の強いご意見がありましたことも、申し添えたいと存じます。  A3の紙の3枚目には、このようなカリキュラムを推し進める大学側の教授の体制に ついて、教育能力・体制の改革ということで、1つの柱についての説明があります。先 ほど厚生労働省のほうから、いわゆる富士研についてのご説明もあったかと存じます が、私どもとしては全国の医学・歯学教育者、つまり個人ではなく、組織的な教育能力 の向上に関しての対応を、しっかりやっていく必要があるだろうということで、医学・ 歯学部長さん、ないし教務委員長さんになられているような指導者の方々を中心とし た、研修会等を実施するとか、当然のことながらご本人の自己点検ということもありま すが、教員それ自体の業績評価。同僚の先生方によるピュアレビュー等々、また学生の 評価についても、体系的にそれを実施し、それが教育業績の適切な評価に繋がるような システムを、今後各大学において構築していただきたいと思っております。  このような概要を平成13年3月27日にまとめていただいたことを、ご紹介申し上げま す。このような大学6年間での学生の質の向上に関する取組みと、義務化になった卒後 研修との整合性を取ることにより、より良い医療人を世に送り出すことについて、新た な展開ができるのではないかと期待しているところです。その努力を私どももしたいと 思っておりますので、よろしくご指導いただきたいと思います。 ○矢崎部会長  どうもありがとうございました。いまの学部教育のところですが、いろいろ工夫され て、三上委員からご指摘のあった、診療科や講座によって授業や臨床実習が分断される のではなく、共同作業でやろうという趣旨が、ここに盛られていると思います。卒後臨 床研修も今後はそういう方向で行われると、私どもは期待しておりますので、様子を見 ていただければと思います。 ○宮城委員  私も、先ほどの三上委員のご懸念はよく分かります。現時点では75%が大 学で卒後臨床を受けているという実態があるわけですが、この委員会はこれから50年の 日本の医療界に、大きなインパクトを与える委員会だと私は理解しております。ここの 委員会がしっかりとリードしなければ、日本の臨床医療は決して改善しないという意気 込みで、この会に参加させていただいております。  では何が問題なのか。平成16年を期して必修化するという動きが、ここまで盛り上が ってきているわけですが、私が臨床研修研究会でも立ち上がって意見を申し上げたよう に、研修医のカリキュラムについては、一生懸命論じられておりますが、指導医の資格 とか経験とかカリキュラムといったものが、一向に論じられません。教育というのは、 教育を受ける側と教育をする側が、一体となって推し進めなければならないはずなの に。現在、指導医とは何か。卒後10年以上で、各学会が指導医として定めた者という、 非常に曖昧な基準で指導医というものが定められております。私は、やはり各学会にお 任せするのではなく、この会で指導医の資格とはどういうものか、指導医のミニマムリ クワイアメントとはどういうものか、大きな方向付けをひとつすべきだと思います。各 学会だけに委ねる指導医の認定の仕方には、私は反対です。  もう1つ。文部省は各大学の研究員を、海外にたくさん派遣しております。それには 技術研究員という形で、奨学金を出しております。しかし臨床医学を学ぶ者について文 部省や厚生省は、研究費や奨学金を出したという話は、一向に聞きません。日本の医療 を担う臨床医学の問題が論じられている中で、そういう形で指導医を国が養成していこ うという動きが、どうしてないのか、これについても私は非常に疑問に思います。何百 人、何千人という方が医療技術員として、海外に派遣されております。しかし臨床教育 に携わる者が、そういう制度で派遣されたということは、あまり知りません。こんなに 臨床教育、あるいは臨床の問題が日本中を騒がせている中で、どうして国がそういう方 向に動かないのか、非常に疑問に思います。  それから今度16年に行われる基準の中で、ひとつ疑問なのは、やはり剖検の基準で す。20体以上及び30%以上というのは、臨床研修を行う710の病院にとっては、私はき ついと思います。現在、剖検が臨床研修に本当にどれだけ役立っているのか、剖検が臨 床研修にどれだけ必要なのか、もう一遍論じると。剖検体数が20体以上ということにつ いては、私も賛成ですが、30%以上となると、500人死ぬ病院、300人以上死ぬ病院では 、とてもきついと思います。  臨床研修にとって剖検が必要なのは、やはりCPC臨床病理検討会をちゃんとやるだ けの数、そしてCPCをやったという実績です。こちらのほうが臨床研修にとっては数 や率を揃えることよりも、ずっと意味のあることだと思います。したがって20体とか30 体という数の制限は必要だと思いますが、率の制限は大変きついと思います。例えば数 が25体以上あれば、2週間に一遍CPCができるだけの数です。そういう意味でCPC をちゃんとやったという実績を報告させることによって、数の上で制限したほうが、む しろ臨床研修にとっては、より研修医側に立った規定ではないかと思いますので、提言 させていただきます。 ○矢崎部会長  大変具体的なお話で、これを議論していると尽きないと思います。三上先生や宮城先 生からご意見がありましたが、ほかの先生もいろいろおありだと思います。今日は初回 の委員会ですので、これからの必修化の検討部会で、どういうものを検討していったら いいか、あるいは期待するものということで、全員の先生方に何かコメントをいただけ れば、大変ありがたいと思います。 ○横田委員  私の立場は、大学にいる小児科医であり、かつ今は研修医の委員長をやっておりま す。大学の現場の研修医たちの声を毎日聞いているという状況にあります。厚生省と文 部省のお話は、大変よく理解できましたが、その中で疑問に思ったことの1つが、宮城 先生の言われた研修というのは研修医と指導医から成り立っているのに、指導医に関す るお話が大変少なかったということです。資料No.2−2の7頁に、わずか6行書いて あるだけです。しかし実際のところ、医学部の卒前教育と研修医教育というのは、私は 一体化して見るべきだと思っております。医学部のほうの教育制度も大きく変わりつつ あります。それもテュートリアル制とか、クリニカル・クラークシップとか、ある意味 で指導に専門性が要求される状況になってきております。したがってここで述べられて いる屋根瓦式というのは、実態はそのとおりですが、それを統括する専門指導員がどう しても必要です。そこの部分をきちんと立ち上げていかないと、いつまで経っても大学 での研修に、実が上がらないという状況が出てくるのではないかと思います。それが1 つです。  それから、これは形の上での問題ですが、2年間の研修ということで話が進んでおり ますが、現在、研修医が実働に入るのは5月に入ってからなのです。これまでも厚生省 のご努力で、国家試験の前倒しが行われてきているわけですが、それをさらに進めてい ただいて、4月1日からの研修が可能にしていただきたいというのが現場の声です。実 際に大学での教育は、6年次生は7月でほぼ終わってしまって、夏休み以後は卒業試 験、国家試験のための勉強という形に移行しております。したがって受ける側は、2月 でも3月でも早い時期に受けることは、おそらく可能だと思います。研修医の2年間と いう期間を、きちんと設定するためには、4月1日からの研修をお願いしたいというこ とです。  それから研修が必修化されるという中で、研修修了書をもって、医師としての認定が されると思いますが、最近の遺伝子工学的なサイエンスの進化に伴って、まず基礎医学 を2年なら2年やってから、研修に入りたいという人たちが増えてきております。もう 1つは最近、女性の医師が増えてきているということがあって、卒業と同時に結婚、妊 娠、出産ということが出てまいります。したがって卒後、すぐに研修に入らない人たち が、今後は出てくるかと思います。これは技術的な話になってしまいますが、そういう ことも含めて研修修了認定書というものを考えていただければと思います。  あと、総合研修に関する厚生省の流れは、私どもの大学病院でも概ね賛成と言います か、認知しています。先ほどの話からですと、やはり内科系、外科系の必修、救命救 急、産科、小児科という言葉が続けて出てくるわけですが、内科系、外科系はともかく としても、産科とか小児科とか救命救急というのは、どこの大学も1つの科しかありま せん。内科ですと第1内科、第2内科、第3内科等がありますが、小児科、産科などは 1つの科しかありませんので、全部の研修医のトレーニングにかかわるとなると、やは り人数的、期間的な問題が大変にあります。私どもの大学でも、小児科医は15人しかお りません。そういう中で研修医全部の研修を受け入れるとなると、大変なことになって しまいます。あとは基幹病院とか、プライマリーケアの病院との群としての対応をせざ るを得ないと思います。ただし群として対応する場合、特に給与とか事務手続の問題が 大きく立ちはだかっており、それがスムーズに進められる状況にはありません。したが ってそういうモデルを作っていただいて、全国でそういうことが出来るようになれば、 ありがたいと考えております。  最後に、これはこの会とは主題が外れてしまうかもしれませんが、この会が大きく日 本の医療を変えるというように認識しますと、小児科医の立場として、特殊医療の1つ である小児救急というものが、全国的に話題になっています。これを突き詰めていっ て、この研修制度と繋げて考えますと、日本の医療の中から米国のように、小児医療を 特化して、特別な医療としてやっていかざるを得ないと、私は考えておりますので、そ の辺のご協力をいただければ、ありがたいなと思っております。 ○矢崎部会長  実際に臨床研修に携わっている先生方が、いろいろな問題点を肌で感じておられると 思います。それを検討するのがこの検討会です。しかし1人ひとりの先生方に、具体的 な検討課題を提示していただくと、時間がなくなってしまうと思いますので、事務局か ら検討課題と今後のスケジュールについて、お話いただいてから、大局的な立場でこの 検討会に対するご意見を伺いたいと思います。では今後のスケジュールということで、 説明をお願いします。 ○事務局  資料No.2−3、「検討課題と検討のスケジュール(案)等について」は、現在事務局 において検討課題の案として、考えられる項目をまとめたものです。まず1点目として は、研修制度の大きな仕組みに関することです。研修医の研修体制、先ほどもご議論が ありました指導体制のあり方、また研修施設の受入れ体制、研修施設と研修医のマッチ ング等の問題であります。  2点目の研修内容に関しては、現在、卒後臨床研修目標というものが定められており ますが、今後研修すべき事項、目標についてどう考えるか、それを具体的にどのような 研修プログラム、または研修方式で行うのが適当かという問題であります。  3点目は研修施設に関することです。研修病院の指定基準を見直す必要があるのかど うか、さらに研修を幅広く行うために、研修施設群といったものについて、今後どのよ うに考えていくべきかという取扱いの問題であります。さらに現在の制度においては、 研修病院として指定された病院については、フォローアップの仕組みはありませんが、 今後どのように考えていくべきかという問題があるものろうかと考えております。  さらに改正された医師法の規定では、研修の修了認定については、最終的には厚生労 働大臣が認定書を発行し、それに基づいて医籍に登録するという形になっております が、その認定についてどのように行うか、研修を行う研修病院、大学病院における認 定、評価の基準、仕組みをどう考えるか、それをこの部会としてどのように設定するか という問題が4点目の課題です。また厚生労働大臣の修了書の発行、および医籍への登 録の手続をどのように行うかという問題があるものと考えております。5点目の研修に 専念できる体制整備に関しては、研修医の方々の宿舎、待遇等の問題についても、ご意 見やご議論があるものという整理をしております。  スケジュールについては、資料の2頁の中段からやや下に二重線を引いている所が、 16年4月であり、左側の数字は年度で表しております。今回、13年6月に検討部会が本 日設置され、16年4月までには概ね3年弱の期間がありますが、16年度の初めから研修 がスタートまでに、この検討部会における検討スケジュールにかかわる事項として、ど のようなものがあるかを整理したものです。  逆算いたしますと、16年4月からの研修生については、概ね15年の夏場には研修生の 募集等があると考えられ、14年度中には各研修病院において、プログラム等を作成する ことが必要だろうということになりますと、13年度末にはある程度の研修目標の策定が 必要ではないかと考えられます。さらに研修体制ということに関して、16年4月の研修 開始という前提においては、15年度中には病院の指定を行う必要があります。それに必 要な施設整備等があれば、その関係も15年度中に必要になります。そうなりますと14年 度中の予算要求、さらに病院における体制準備の検討等が必要です。  そういった関係からしますと、研修体制、いわゆる指定基準をどう考えるか等につい ても研修内容と同様に、13年度中、来年の春までにはある程度の方向性をお出しいただ く必要があるものと整理をしております。この検討部会については、14年度末、15年3 月までを概ねの検討期間とさせていただいておりますが、ある程度のご意見のとりまと めは、13年度中にいただく必要があるのではないかというスケジュールになっておりま す。よろしくお願い申し上げます。 ○矢崎部会長  いまご提言いただいたいくつかの課題は、この検討課題を議論する中で、もう少し中 身を詰めていきたいと思います。ただ、必修化についてはもう制度化されておりますの で、予算の関係である程度のタイムスケジュールを立てて、議論を進めていかなければ いけません。いま事務局からご説明いただいたこのスケジュールが、施行へ向けてのタ イムスケジュールになると思いますので、何とぞご審議にご協力いただければと思いま す。 ○櫻井委員  課題に関してですが、いまご説明があった資料に沿っていけば、いい提言、いい研修 内容のものが出来ると思います。私から2つお願いしたいと思います。1つは、大学院 の問題です。2番目は、これが実践された後でどのように運営されたか、そのチェック についてです。最初の大学院の問題ですが、臨床分野における大学院のあり方というの は、かなり問題にはなっていると思います。今日の資料では大学院に関して、あまり述 べられていないというか、ほとんど出てこないのです。臨床研修と大学院は全く別だと いう、建て前的な考え方はあるかと思いますが、実際問題としては大学院に入っても、 全く医局員と同じ生活をしているのです。ある専門分科によっては、認定医または専門 医を受験する場合、大学院にいた期間も勘案して受験資格が出るといった問題がありま す。やはり必修化するに当たっては、大学院との関連はどこかで述べられたほうがいい のではないかと思います。2番目のチェックについては、こういった制度が発足するに 当たっては、得てしてよく検討されて、いいものが出来るのですが、問題はその後でそ れがどのように運営されているかというチェックが、ほとんどされていないことが多い のではないかと思います。そういった意味でこれをどういうようにチェックするか、そ のことに関してもご検討いただければと思います。 ○矢崎部会長  臨床系大学院と臨床研修との兼合いが、やはり今後問題になると思います。 ○星委員  全体的なことで、私のほうから発言させていただきたいと思います。先ほどからいく つかの問題点が指摘されておりますが、まず必要なことは、いまの問題点を洗い出すと いうことが、緊急に必要だろうと思います。その上で現状からスタートするということ に拘泥するのではなく、お金の問題も含めて高い目標を掲げて、その目標に向かって 是々非々でやるということが、やはり必要だろうし、そのことをこの検討会で議論すべ きだろうという決意で、私もここに参加しております。  振り返ってみますと、これまで学部教育は文部省にお任せし、試験は厚生労働省がや り、卒業した後は勝手にやってくださいという仕組みにありました。大部分が大学の医 局に入り、そこで研修を受けるという形が、長年取られてきたわけです。ふと考えてみ ますと、我々医師会、医師の先輩たる医師が、後輩の育成に関して無関心でいたことに 関して言えば、素直に反省し、そのことに関して我々がきちんと責任を持って、次の世 代を担う医師を養成するのは、我々先輩医師の責任なのだということを、まずはっきり させてスタートしたいと思っております。これは医療界全体の問題です。いま申し上げ たような話が、結果として現在の医師の質の向上にも繋がってくるものだろうと、私は 素直に思っております。  先ほど文部科学省がどうだとか、厚生労働省が何々をしてくれないというような発言 もありましたが、そういう発想からは脱却して、誰々に何々をしてもらおうではなく て、我々医師が次の医師をきちんと育てていく、それが国民のためであり、患者のため なのだというあたりをきちんと見据えて、してもらうべきことは何なのか、自分たちが しなければいけないことは何なのか、責任は何なのかということを明確にした上で役割 分担をしていかないと、制度は格好いいものができた、しかしやってみたら中身は前と 一緒だったということにもなりかねないと思いますので、その決意を私ども医師会もし ているということを、明確にさせていただきたいと思います。 ○山口委員  いま事務局から今までの経緯、また今後の検討課題の説明が縷々ありました。よく分 かりましたし、こういう手順で今後検討を進めるべきだろうと思います。私は現場にお りますので、この20〜30年間で特に痛感したことを二、三申し上げます。まさにこの内 容、臨床研修をどうして必修化したのかという、いままでの経緯の説明の中にもありま したように、特に「全人的医療」という文言がありましたが、まさにこの全人的医療が できる医師を養成するために、どのような臨床研修が必要なのかということであろうと 思います。  平成元年の研修目標を見ますと、総論的には大体同じことが謳ってあります。ただ、 それをこの10年間、どのようにやってきたのか。そういうところを踏まえながら、見直 すところはやはり勇断を持って見直すべきだろうと思います。特にこの10年、世の中は 随分変わりました。社会が変わって、特に少子・高齢化というのは大きなキーワードだ ろうと思います。地域保健法というものも、あのように誕生しましたし、昨年からは介 護保険法も実施されました。特にいま大学を出たばかりの若いお医者さん方が、介護保 険に関しての主治医の意見書が書けるのか。こういう問題も現場に行って初めて、そう いう場に出くわすことが多いだろうと思います。  臨床研修の必修化で、内科系や外科系の研修を積んでいくということは、これはこれ で非常に大きな柱ですから、大事なことだと思いますが、そのほかに今の高齢化と共 に、プライマリーケアも含めての地域医療、あるいは老人医療、在宅医療といった、間 口の広い医療が社会のニーズとしてあるわけですから、そういうことを若いお医者さん に是非学んでいただきたいと思います。医療だけではなくて、保健も、福祉も、介護も 視野に入れた臨床研修が、いま必要ではないか。そういう意味では1つの手法として、 折角こういう複数の指定病院群と言いますか、研修施設群という仕組みがあるわけです から、それを具体的にどういうようにしていくのか、あるいは見直す点があれば、どう いうように見直せばいいのか、積極的に議論していきたいと思います。そういう意味で この委員会が今後果たす役割は、非常に大きいと考えております。 ○辻本委員  私どもは11年前から電話相談などを行っております。また10年ほど前からSPとい う、シミュレーテッド・ペーシェントの活動を細々と始めまして、いま大変忙しくさせ ていただいている、NPOのグループです。いまのお話を伺いつつ、ここのテーマを考 えたときに、まず電話相談で患者からの不信感の訴えが、いま急増しております。その 裏側にはやはり研修医の資質の問題、研修内容の問題、研修体制の問題の不備が浮かび ますし、そして、いま臨床をしているドクターの背景にも、不十分だなと強く感じさせ られることもあります。また患者自身が研修医に、やみくもに不信を持っていますが、 それは指導体制の問題に繋がっているのだということも、強く感じさせられます。  それからSPということで、いまOSCEの形で教育現場にも参画させていただいて おります。ともかくいまの学生を指導する、ないし研修医を指導する世代の医者たち に、そもそもインフォームドコンセントの概念が身に付いていらっしゃらないのです。 「僕たちは勉強してこなかった世代だ」と豪語なさるのですが、そうした問題からも指 導というところの問題が、非常に大きいことを痛感させられております。さらに私ども の活動の中には、学生ないし研修医として、いま現場で非常に厳しい現実の中に身を置 いている人たちとの交流もあります。そうした話を聞くにつけ、その実態をあまりに多 くの国民が知らなさすぎることが、患者の意識の不在にもかかってくるのではないかと 思います。そういうことからこの検討会の問題を、ある意味で国民を巻き込んでの議論 として社会化していただくことが、非常に重要な問題ではないかと、患者等の立場から 申し上げたいと思いました。 ○中野委員  先ほどご説明いただいた総論の話がそのままになっていますので、総論ということで もう1回。ストラテジーな話になるかもしれませんし、非常に技術論的な小さな話にな ったらごめんなさい。ここに書いてある1頁目の検討課題は、私もこれでよろしいと、 まず賛成したいと思います。順番からいきますと、1番の「研修制度の仕組み」という のは、以下の2、3、4、5の全部にかかわるものだろうと思います。この辺がパラに 動くのではないかと、こう理解いたしました。着手順序から言いますと、何と言いまし ても(2)の研修プログラムは、一体何を目標にするかというイメージづくりからでは ないかと思いましたが、2頁目を拝見いたしますと、確かに載っておりますので、これ はこのままで良いのではないかと思いました。  ただ、どういうようにお考えなのか。主な検討事項としては、いくつかに分かれるわ けです。これを我々だけでシークエンスでやっていくのか、あるいはパラにやるのか は、ちょっと考えどころだなということを、ひとつ申し上げてみたいと思います。結 局、いくらぐらいの財政的な措置が必要かという話になるのでしょうけれど、それが最 後にくることはよく分かるのです。やはりこれなりに日程が、きっとあるのだろうと思 います。この委員会の仕事ではないかもしれませんが、それもひとつ頭の中に置いてお いてよろしいのか。  その場合、医師法等の改正の流れは、たしかこうでしたね。「大学病院と厚生大臣の 指定する病院、ならびに」ということで、並列で書いてあるでしょう。そうしますと現 行の予算要求体制でいきますと、出口が2つになって動いていくのかと思うわけです。 例えば文科省系統にいろいろ情報を流しながらと言いましょうか、あるいは医育機関の 附属病院にもこういう検討状況をお示ししながら、同じ歩調をとらないことには、冒頭 でいくつかご指摘があったような話を、また心配しなければいけないのではないかと。  以上2点。1つは、言い回しみたいな手順の話ですね。2番目の話は、パートナーと しての文科省系の、つまり医育機関とのすり合わせと言いましょうか、共同作業と言い ましょうか、そのあたりがいかがなものだろうかと思います。会議の営み方に関する話 として、この2点だけ確認、ないし質問をさせてください。 ○矢崎部会長  中島医事課長さん、どうですか。 ○医事課長  1つ目の、いくつかのテーマを並行してやるのか、連続的に議論するのかということ につきましては、事務局のほうの体制の整備の問題もございますので、今後、進め方を お示ししてまいりたいと思います。基本的には日程にかなり厳しい部分がありますの で、ある程度並行して進めざるを得ないのではないかと思っております。  財政的課題についての、文部科学省と厚生労働省の関係ですが、本日も文部科学省か ら参加いただいておりますように、密接に連携しつつ、仮に予算要求ということになっ た場合でも、齟齬を来さないように進めていきたいと思っております。 ○中野委員  わかりました。 ○仲村委員  いまご指摘のあったスケジュールですが、これは正直言って間に合わないのではない かと思うぐらい、非常にタイトだと思います。2頁にありますように、16年4月に施行 するとなれば、いま議論の出た財源問題については、その前の8月までに予算要求をし なくてはいけません。それから各病院が準備をするわけです。先ほど出た指導医をどう するかとか、募集をどうするかという問題がありますから、もっと前倒しになるわけで す。そうすると14年度ぐらいでもう決めておかないと、実際上、準備期間が足りないの ではないかと思います。  そのためにはいま議論が出ましたような検討課題も、もっと具体的にブレークダウン したものを作っていただき、次回には何をどう上げるというか、検討を済ませるように していかないと、制度として定着していかないのではないかと思います。事務局は大変 だと思いますが、我々のこの委員会がやるべきトータルの目標というか、アウトカムを まず設定していただく。積残しも、もちろん出ると思いますが、毎回何を議論して何を 決めていくかというスケジュールというか、ナビゲーションをしないと、おそらく時間 的に間に合わないという面があると思います。  もう1つには文部科学省とのデュアルの体制というのが、非常にわかりにくい。例え ば定量的に臨床研修指定病院が、一体いくつあればいいのかということを、前の部会の ときから私は言っているのですが、なかなか数字が出せないのです。75%は文部省でや っている、それも学生の希望によるということになると、25%の研修指定病院の研修生 のことだけやっても、あとの3倍は大学にいるわけですから、そういう全体の研修に期 待すべき成果と、定量的に一体どう考えていくべきかということを考えますと、間に合 わないのではないかと思います。余計な心配かもしれませんが、そういう点があります ので、事務局には会議の運びというか、今後のスケジュールとして、いま我々はどこま で行っているのか、ベースキャンプなのか、アタックのテントにいるのかどうかぐらい を、だんだん教えていただきながらやらないと、なかなか難しいということを申し上げ たいと思います。 ○矢崎部会長  今後はその心づもりでやっていきたいと思いますので、ご指導のほど、よろしくお願 いしたいと思います。そのほかにいかがでしょうか。 ○井部委員  医学・歯学教育の改革は、看護にとっても非常に注目すべきことなので、敬意を表し たいと思います。特に臨床研修指定病院で看護婦として見ておりますと、看護職と必ず 接点があります。いくら指導医が立派であっても、研修医の指導体制は、現状では多く の基礎的な技術、あるいは治療の内容まで、ベテランの看護婦や婦長が問われて、指導 と言うと語弊があるかもしれませんが、一緒に考えていかなければならないし、この医 師の指示はこれでいいのだろうか、というチェックをしているところも多々あります。 その意味でこうした卒後の臨床研修は、現在の医療提供体制の中でどうできるかとい う、現実的な視点を考えていただかなければならないと思います。医師の臨床研修は、 医師の指導体制がしっかりしていれば出来るというものではないのではないかと思いま す。その制度を考えるときに、是非医療提供体制全体を視野に入れて考えていただくこ とを、お願いしたいと思います。 ○星委員  いまの仲村委員のご発言や、ほかの委員のご発言で気になるのですが、文部科学省に 対する、あるいは大学病院に対する私たちのスタンスを、どういうようにするのかとい うことを、明確に局長に明らかにしてほしいと思います。つまり「デュアルに」とおっ しゃいましたが、私は1本でやるべきだし、お金の問題も含めて考えるべきだと思いま す。 ○医政局長  その問題については法律を国会に出す準備段階から、四者協という場で、当時の文部 省、学部長・病院長会議の関係者と、ずっと協議をしてきたという経緯があります。法 律上の規定は、大学附属病院および厚生労働大臣の指定する病院となっておりますが、 臨床研修指定病院の考え方なり研修の内容なりについては、大学病院における研修医の 2年間の中身と同じにしていただきたいというのが、基本的な考え方です。したがって こういう議論を、文部科学省の所管の大学病院に反映させていただくというのが、基本 の考え方だと思っております。そういう線に沿って、それぞれの指導体制および必要な 経費について、予算要求なり財源の手当てなりをしていくことが、基本だと思っており ます。  先ほど櫻井委員から、大学院の話がありましたが、大学院制度をどうするかというの は、基本的に文部科学省の所管事項です。臨床研修必修化の基本的な考え方は、臨床に 携わる医師が基本的に備えるべき臨床の知識、技能なりを要求するということから言え ば、自ずと将来臨床に携わる者は、まず卒業後の2年間は、臨床研修に入っていただく というのが基本だと思っております。そういう線に沿って、文部科学省とお話をしてい くということではなかろうかと思っております。 ○福井委員  大学との関連ですが、国立大学のほうでは病院長会議の下部組織で、卒後研修の共通 カリキュラムをずっと検討してまいりました。平成元年に厚生省のほうから出された卒 後臨床研修目標の基本的な考え方と、具体的なローテーションも越えて、プライマリー ケア・オリエンテッドなものを、一応提唱してきております。九州大学と名古屋大学を はじめ、いくつかの大学で、すでにそういう研修プログラムを実践されている所も出て きておりますので、向かっている方向は同じだと思います。ただ機構がまだ改善されに くいところが残っている大学が多数あります。目標に関してそれに反対する人は、おそ らく誰もいないような雰囲気づくりは出来てきていると思いますので、実際的にどうす るかという問題を、是非厚生省側と文部省側が協力して、大学病院が理想的なカリキュ ラムを実行できるような体制づくりを、是非行っていただきたいと思っております。 ○中野委員  ただいま福井委員がおっしゃった資料を次回以降、ご準備いただけないでしょうか。 よろしくお願いします。 ○矢崎部会長  もう時間がまいりましたので、本日の審議はこれで終了させていただきたいと思いま す。本日提示した今後の検討の進め方と、そのスケジュールについては、ただいまの議 論を踏まえて、次回までに事務局のほうと改めて整理して、お示ししたいと思っており ます。なお、今後の検討に当たっては、各委員の方々からもいまご指摘のように、必要 な資料の提供を受けて、より充実した議論をこれからも行っていきたいと考えますの で、ご用意のある方は、事前に事務局のほうにご連絡いただき、委員の皆様に配付し て、議論を進める1つの資料にしたいと思っております。そういうことで本日はご了承 いただければ、大変ありがたく思います。では次回の検討の日程について、事務局から 説明をお願いします。 ○医事課長  次回の日程は7月上旬の開催ということで、委員の皆様方のご都合を調整させていた だいた上で、後日、ご連絡させていただきたいと思います。また各委員からの資料の提 供等については、事前に事務局にお知らせいただきたいと思います。それでは本日はこ れにて閉会とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。 ○ 矢崎部会長  お忙しいところ、どうもありがとうございました。 照会先                       厚生労働省医政局医事課                        03−5253−1111(代表)                                2563(内線)                                2568(内線)