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第4回「ヒト細胞組織等に由来する医薬品等による健康被害の救済問題
に関する研究会」(議事概要)

日時 平成13年5月28日(月)13時30分〜15時30分
場所 厚生労働省別館7階第10会議室
出席者 浦川委員、高橋委員、鴇田委員、堀内委員、森島委員、矢崎委員
厚生労働省医薬局長、総務課長、医薬品副作用被害対策室長、血液対策課課長補佐等

議事

1.第3回研究会の議事概要

2.ヒトの細胞組織等に由来する医薬品等を介した感染についての専門家ヒアリング

(1) 国立感染症研究所副所長 倉田毅 氏
(2) 広島大学医学部教授 吉澤浩司 氏

3.今後の研究会の予定

[主な発言内容]

○ リスクを危険と訳すのは誤りである。危険とは例えば検体の99%が病原体陽性であることを指し、リスクとは、ほとんど病原体陽性の検体は出ないが全体としては安全であるとは言えない状態を表している。
○ ヒトはバクテリアや多数のウイルスを体内に持っており、無菌ではない。潜伏感染しているウイルスや持続感染しているウイルスが活性化して生じた場合について、新たに医薬品により体内にウイルスが入って何かが起きたと誤解される場合がある。
○ HIVなどの持続感染と異なり、ヘルペス系のウイルスは潜伏感染期には潜伏感染細胞の中で核内に遺伝子が入ったままとなっているので捕えられない。免疫状態が悪くなると再感染となり、病巣を形成して臨床症状を呈する。今では、臓器移植の場合など免疫抑制剤がうまく使われるようになったが、感染症の問題は克服されていない。
○ ヒト・動物由来製剤への病原体混入の可能性は全てのステップにある。材料収集の過程での汚染、材料を医薬品にするプロセスでの汚染、医薬品を患者に使用する段階での汚染があり、起こったものが何によってのものかが分かるような監視体制をひいておくことが重要。
○ 人畜共通感染症が現在非常に注目されている。また、輸入製品については、家畜、野生動物からの直接、間接感染のおそれがある。動物の臓器等が医薬品等に使われる場合に、その処理過程で問題がクリアできるかについて、動物ごとにチェックされる必要があるのではないか。
○ 生ワクチン精製の過程で、ウイルス培養の培地に胎児血清あるいはウシ血清が使われており、これらの安全性が当然のことながら問題になってくる。
○ 感染ルートを判定する際には、因果律と随伴現象を区別する必要がある。肝炎ウイルスキャリアの配偶者がキャリアであっても、ウイルスの株、遺伝子の配列を調べていくと因果律が否定される場合がある。
○ 抗体検査、核酸増幅検査(NAT)で、輸血後の感染というものは限りなくゼロまで来ている。ただし、現在のNATの検出感度以下のところで感染が起こる可能性はあり、こういったものは不可抗力である。これにどう社会対応するのか。
○ 保健所では現在無償でHIV感染の検査をやっているが、気恥ずかしさから日赤にHIV検査のために献血をする者がおり、その者がリスクを高めている。ウインドウ期に献血した血液は感染源になる可能性があるので、対策が必要である。
○ 単純ヘルペスに感染した場合、血中に出ることはほとんどないから、DNAレベルでも感染源が医薬品等であるかどうかを特定することは難しい。
○ 血液分画製剤の製造工程において原料の中にウイルスが大量に存在すると、不活化のプロセスは効かないため、原料血漿中のウイルスの量を限りなく少なくすることが大切である。
○ 我が国においては、献血血液に関し、HIV、HBV、HCVについて一定の規範でチェックしているが、諸外国では、HBVのNAT検査を行っていない国がある。分画製剤による感染の被害を最小限に止めるために、輸入血漿を含めた原料血漿の検査の基準化が必要である。
○ 外国の血液を我が国に持ってくる場合、我が国の基準でチェックされていない。感染価との関係をつけた標準品が確立していないため、NATのクオリティーがコントロールできていない状態にある。日本で作り上げた方式は諸外国のモデルになっていくのであるから、早く確立させる必要があるのではないか。
○ NATは、それをやる人と場所によって、その検出精度がバラつくという宿命がある。測定法それ自体の標準化、クオリティーコントロールをしないと、NATをやったから良いということにならないのではないか。
○ 日赤のNATセンターは3つあるが、全部共通化されている。
○ 検査の費用をかけることによって感染の危険性は限りなくゼロに近づくが、ゼロにはならない。現時点では不可抗力であると認定できる感染について、多くの人が納得される分については、救済を考える必要があるのではないか。
○ 献血者側の口腔常在菌等の汚染は完璧にはゼロにはならない。
○ ドナーの血液検査をすべて行い、感染のリスクを全くなくすることは相当困難である。
○ 献血者側のバクテリアによる血液中の汚染の他に、採血時のハンドリングの問題や製剤の製造時のハンドリングの問題がある。後者は人為的なものであるから避けられるが、献血者自体に関しては、問診を厳密にしても限界がある。
○ 感染に関しては絶対ということが存在しないことから、これらの実態を多くの国民に正確に知ってもらうことが必要。ここまで努力したけれどもこうだということを客観的にオープンにできる環境を作ることも必要ではないか。
○ 医薬品被害という場合に一番の問題は、医薬品で被害にあったのか、あるいは日常的な他のリスクが原因となっているかが選り分けられるかではないか。選り分けられれば、救済制度を設けて救えるが、そこに紛れがあると、制度構成ができなくなってしまうのではないか。
○ ある特定の血液製剤によって肝炎やHIVに罹患したという因果関係の特定については、感染は複合要因で発生しているので、過去に遡ることは難しい。今後の問題については、輸血したロットの記録があって、その医療を受ける前に感染していなかったという証拠があって、医療を受けた後に合理的な期間内に発症していて、原因のロットの中にウイルスの核酸があって患者の中にもあったことが分かれば、因果関係の立証となる。
○ 血液製剤の安全性を高めるための検査にかかった費用は、薬価に反映されている。
○ プリオン病に関しては、もしウシが原因となったとして、動物に注入したもの、食べたもの、注射したものといった別にかかわらず、発生してくるときのパターンは同じである。そのため、食べたものか医薬品かの区別はできないのではないか。
○ クロイツフェルト・ヤコブ病を発症した人の血中から異常プリオンが検出できた事例はない。
○ 今はトランスジェニック・マウスなどを使うと1か月半から3か月ぐらいでプリオン病のチェックが可能であるが、大変な費用がかかる。分画製剤の最終精製物について、ロットごとにチェックできる可能性があるのではないか。


照会先:医薬局総務課医薬品副作用被害対策室
    野村
    03-5253-1111(内線2719)

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