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ドイツ・バイエルン州がん登録法

放射線影響研究所 増成直美(訳)

地域がん登録の実施に関する二〇〇〇年七月二五日のバイエルン州法(BayKRG)

 バイエルン州州議会は、以下の法律を議決した。

第1条(本法の目的および規制範囲)

(1) 1本法は、がん制圧のために、とくにがんに関する疫学のための基礎データ改善のために、悪性新生物の発生に関して、その早期の段階も含めた個人に関するデータの継続的かつ統一的収集および収集したデータの処理と利用のあり方について規定する。2この責務のために、バイエルン州地域がん登録事業が設立される。

(2) 1バイエルン州地域がん登録機関は、あらゆる形態のがん疾患とその消長傾向を観察し、とくに統計的疫学的に評価し、公衆衛生計画およびがん罹患の原因究明を含めた疫学研究の基礎を用意し、かつ予防的および治療的処置の評価に寄与しなければならない。2とくに匿名化されたデータは、学術研究のために自由な利用に委ねられなければならない。

(3) 1国家は、この法律の執行で生じる費用を負担する。2参加機関は、節約と経済性の原則に従って発生する必要な費用を支払われる。

第2条(信用機関と登録機関)

(1)バイエルン州地域がん登録機関は、それぞれ場所的、組織的、人事的にも互いに分離され、医師の指導の下にある一つの独立した信用機関と一つの独立した登録機関から構成される。

(2)バイエルン州地域がん登録事業の信用機関は、ニュルンベルク市立大学附属病院の病理学研究所に置かれる。

(3) 1バイエルン州地域がん登録事業の登録機関は、エルランゲン、ニュルンベルクにあるフリードリヒ・アレクサンダー大学の附属病院に置かれる。2登録機関は、そこで行われる臨床登録機関とは技術的、組織的に分離されていなければならない。

第3条(データの収集地域)

(1)バイエルン州地域がん登録事業のためのがん罹患に関するデータは、遅くとも二〇〇二年一月一日からバイエルン州の全地域で収集される。

(2)患者の常居所が、地域確定の規準となる。

第4条(定義)

(1)個人識別データとは、患者の識別を可能にする以下の届出事項をいう。

1.姓、名、旧姓

2.性別

3.住所

4.出生年月日

5.原発腫瘍診断日

6.死亡年月日

(2)疫学的データとは、以下の届出事項をいう。
1.性別、多胎児特性

2.出生年月

3.居住地または市町村番号

4.国籍

5.職歴(従事した職業、最長期間にわたって従事し、および最後に従事した職種と期間)

6.ドイツ医療記録・医療情報機構により、連邦保健省の委託を受けて編集され、かつ連邦保健省によって効力を与えられた版による国際疾病分類(ICD)基準による腫瘍診断、国際腫瘍疾病分類(ICD-O)基準による組織学的診断

7.両側性臓器における左右片側別の申告を含めた腫瘍部位

8.原発腫瘍診断年月

9.以前に腫瘍に罹患したことがあるときはその旨

10.臨床進行度(とくに、がん病巣の拡がりと転移程度の表示のためのTNM-基準)

11.診断の確定方法(臨床所見、組織診、細胞診、剖検等々)

12.治療方法(治癒的手術もしくは姑息的手術、放射線療法、化学療法および他の治療方法)

13.死亡年月

14.死因(原疾患)

15.解剖の有無

(3)管理番号とは、識別データから形成され識別データに復元されえない数字の組合せをいう。

(4)その他の点においては、バイエルン州データ保護法の定義規定が適用される。

第5条(届出)

(1) 1医師もしくは歯科医師、およびその委託を受けた臨床登録機関(届出機関)は、信用機関に、四条一項および二項に掲げられた届出事項を申告する権限を有する。2臨床登録機関の届出においては、届出を委託した医師もしくは歯科医師の氏名および住所を申告しなければならない。3常居所がバイエルン地域がん登録機関の収集地域内にない患者の届出を、信用機関が受理したときは、これをただちに管轄するがん登録機関へ転送するか、またはデータを管轄するがん登録機関に受理するよう申し出なければならない。4転送された後で、信用機関によって、残されていた基礎資料およびデータは、遅滞なく破棄されなければならない。5これは、地域がん登録機関が他に管轄権を有しないときにも、適用される。

(2) 1医師もしくは歯科医師は、意図されている届出あるいはすでに行われた届出について、速やかに患者に通知しなければならない、これは、医師もしくは歯科医師が臨床登録機関に届出を委託したときにも同様である。2患者は、届出に対して異議申立権を有する。3患者への通知は、それによって患者に健康上障害が生じることが予想されうるかぎりにおいてのみ、省略することができる。4患者に通知する場合、患者は、異議申立権を有することを指摘されなければならない。5患者は、自ら要請することにより、届出の内容に関しても知らされることができる。6患者が異議を申し立てたときには、医師もしくは歯科医師は、届出を中止し、あるいはすでに届け出られたデータの抹消を指示しなければならない。7がん登録機関は、医師もしくは歯科医師に、抹消が行われたことについて書面で通知しなければならず、医師もしくは歯科医師は、その通知を患者に伝えなければならない。8医師もしくは歯科医師が一文に基づく通知を行わなかったときは、医師もしくは歯科医師は、通知が適切な時期に追完されるようにするために、このことを、治療を引き継いだ医師もしくは歯科医師に、書面で理由を示したうえで伝えなければならない。

(3)届出の中で、患者が届出について通知されたか否かが、申告されなければならない。

(4)届出は、統一書式で、あるいは機械的に処理できるデータ記憶媒体で提供されなければならない。

(5) 1届出に対して、届出報酬が与えられる。2バイエルン州労働社会、家庭、女性保健省は、これについて詳細を定める。

(6) 1保健所は、信用機関に、またはその求めに基づき当該地域を管轄する臨床登録機関に、すべての検死証明書のコピーもしくは検死証明書から得られるデータを、機械的に処理できる形式で送付する義務を負う。2一文は、故人が生前に一項による届出に異議を申し立てたか否かにかかわらず、適用される。

第6条(臨床登録機関の責務と権限)

(1) 1医師もしくは歯科医師は、バイエルン州労働社会、家庭、女性保健省によって一五条一号に基づいて定められた臨床登録機関にのみ、五条一項による届出を委託することができる。2臨床登録機関は、五条一項による信用機関への届出の前に、届け出られたデータを論理性および完全性、ならびに届出の重複について審査する権限を与えられる。3臨床登録機関は、必要なかぎりで、委託した医師に対して問い合わせることによってデータを補正する。4臨床登録機関は、その目的のために、この届け出られた疫学的データ(四条二項)を処理し利用することができる。5個人識別データ(四条一項)の処理と利用は、当事者の同意によってのみ許される。

(2)五条六項により保健所から信頼機関に送付された検死証明書のデータは、直接的にも臨床登録機関に送付されることができ、臨床登録機関によって処理され利用されることができる。

第7条(信用機関)

(1)医師の指導の下にある信用機関は、

1.論理性と完全性の観点から、届け出られたデータを審査し、かつそのデータを必要なかぎりで届出機関に問い合わせることによって、補正しなければならない。

2.五条六項に基づいて保健所から送付された検死証明書のコピーもしくはそこから得られるデータを、届け出られたデータと同様に、処理しなければならない。

3.個人識別データと疫学的データとを分離し、別々のデータ記憶媒体に収納しなければならない。

4.個人識別データを、一〇条一項によって暗号化しなければならず、かつ一〇条二項により管理番号を形成しなければならない。

5.届出事項を、九条一項により登録機関へ送付しなければならず、登録機関による処理の完了後遅滞なく、遅くとも送付がなされてから三ヵ月以内に、当該患者に関わるすべてのデータを抹消しなければならず、かつ五条六項により保健所から送付された検死証明書のコピーもしくはそこから得られたデータを含む届出の基礎として用いられた基礎資料を破棄しなければならない。

6. 一一条一項によって許可された場合は、個人識別データを照合し、もしくは解読し、一一条三項二文に基づいて追加される届出事項を届出機関に対して問い合わせ、患者の同意を得るよう必要なかぎりで指示し、申請機関にデータを送付し、かつ一一条一項および同条三項二文により得られたデータおよび一一条一項により用意されたデータを抹消しなければならない。

7.一二条一項の場合は、報告を行い、もしくはデータがもはや信用機関に存在しないかぎりで、登録機関に対して必要なデータの提供を要請しなければならない。

8.患者が届出に対して異議を申し立てたときは、届け出られたデータが抹消され、かつ存在する基礎資料が破棄されるよう指示しなければならない、すなわち抹消を有効とみなさなければならず、かつ医師もしくは歯科医師に、抹消が行われたことにつき、書面で通知しなければならない。

(2) 1信用機関は、バイエルン州データ保護法七条に従って必要な技術的、組織的な措置をとらなければならない。2信用機関は、とくに一時的に存在する個人識別データが権限なく閲覧、もしくは利用されえないことを保障しなければならない。

第8条(登録機関)

(1) 医師の指導の下にある登録機関は、

1.送付されたデータを、蓄積し、管理番号により既存の一連のデータと照合し、論理性を審査し、補正しもしくは補完しなければならない。登録機関は、信用機関に問い合わせることができ、かつ信用機関に処理の終了について通知しなければならない。

2.管理番号を手がかりに、疫学的データの補正と補完のために、定期的に、他の地域がん登録機関のデータと照合しなければならない。この照合は、ベルリンのローベルト・コッホ研究所によっても引き継がれうる。

3.疫学的データを、一条二項に掲げられた目的を達成するために、処理し利用しなければならない。

4.疫学的データを、一年に一回、ローベルト・コッホ研究所に設けられた「ドイツ中央がん登録機関(Dachdokumentation Krebs)」に統一された形式で送付しなければならない。

5.一一条一項により許可された場合は、適切な計画の実現のために、必要な届出事項を信用機関に対して送付しなければならない。

6.一二条一項の場合は、求めがあれば、必要なデータを信用機関に送付しなければならない。

7.信用機関を通じて患者へ通知した後に、患者が自分の届け出られたデータの蓄積に対して異議を申し立てたときは、そのデータを抹消しなければならない。

(2) 1一項三号および四号に従ったデータは、登録機関によって、その送付の前に匿名化されなければならない。2そのデータは、受領機関によって、そのデータが提供された目的のためにのみ、処理され利用されることができる。

第9条(登録機関によるデータの蓄積)

(1) 登録機関において、個々の患者について、以下の届出事項が、自動化された処理方法により蓄積される。

1.非対称的に暗号化された個人識別データ

2.疫学的データ

3.管理番号

4.届出医師もしくは歯科医師の氏名および住所、届出を委託した医師もしくは歯科医師の氏名、住所、ならびに届出臨床登録機関の住所、ならびに五条六項により送付を行う保健所の住所

5.届出がなされたことについての患者への通知

(2)登録機関による暗号化されていない個人識別データの蓄積は、許されない。七条一項三号および五号は、本項により影響を受けない。

第10条(個人識別データの暗号化および管理番号の形成)

(1) 1個人識別データは、非対称性の暗号形成法により、暗号化されなければならない。2その適用されるべき方法は、技術水準に添ったものでなければならない。

(2)データ補正および補完のために、ならびに他の地域がん登録機関のデータとの照合のために、管理番号は、すべてのがん登録事業に連邦レベルにおいて合意された統一の、個人識別データへの復元を許さない方法で形成されなければならない。

(3)暗号形成法、管理番号形成の方法の選択、ならびにこのために不可欠なコンピュータおよびこれに必要とされるコンピュータプログラムの確定は、連邦情報技術保護庁との協議に基づいて行われなければならない。

(4)非対称性の暗号化および管理番号の形成のために開発され使用されるコンピュータプログラムは、秘密にされなければならず、かつ信用機関によって、本法の目的を果たすためにのみ、使用されることができる。

第11条(個人を識別するデータの照合、解読および送付)

(1) 1保健施策上の措置のために、かつ重要でしかも他の方法では遂行しえない公共の利益を有する研究課題について、バイエルン州労働社会、家庭、女性保健省は、信用機関に対して、

1.個人識別データとバイエルン州地域がん登録機関のデータとの照合

2.必要な、一〇条一項により暗号化された個人識別データの解読

および、必要な範囲内でのその送付を、許可することができる。2それ以外の場合には、個人を識別するデータを照合することはできず、また暗号化された個人識別データを解読し、送付することもできない。

(2) 1信用機関は、一項によるデータの送付に先立ち、届出もしくは治療を行う医師もしくは歯科医師を通じて、解読された個人識別データもしくは受領機関が特定の個人に帰属させることのできるデータの他人への提供が予定されているときには、患者の書面による同意を取りつけなければならない。2患者が死亡しているときは、信用機関は、不相応な費用を伴うことなく可能であるかぎりで、データの送付に先立ち、最近親者の書面による同意を得なければならない。3その際、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹が、この順序で、最近親者とみなされる。4同一順位の近親者間で、同意するか否かにつき意見が異なっており、かつがん登録機関がこのことを認識しているときは、同意は得られなかったものとみなされる。5故人が三文による近親者を有しないときは、その地位は、故人と婚姻類似の共同生活をしていた成人に移る。

(3) 1データが一項による照合の後に、データ受領機関により特定の個人に帰属させることのできないような方法で送付されるときは、二項による同意の取得は必要でない。2一項により許可された研究計画が、ある患者に四条二項九号ないし一二号に掲げられたデータについて追加の届出を必要とし、かつこの届出事項が受領機関により特定の個人に帰属させることができないときは、信用機関は、患者の同意を得ることなく、必要とされるデータを届出機関に問い合わせ、かつ受領機関に転送することができる。3届出機関は、この届出事項を知らせることができる。4データ受領機関は、がん登録機関によって送付されたデータと結びつけられることによって患者の識別を可能にするであろう届出事項を、第三者から得てはならない。

(4) 必要な同意が得られないときは、一項に基づいて送付されたデータは、抹消されなければならない。

(5) 1識別データの解読のために不可欠なコンピュータ、およびこれに必要なコンピュータプログラムは、バイエルン州医師会に保管されなければならない。2一項により解読が許可された場合には、コンピュータと、適切な技術上の安全措置によりとくに濫用に対して保護されたコンピュータプログラムが、許可された範囲内での使用のために、信用機関に提供されなければならない。

(6) 1送付されたデータは、受領機関によって、書面で申請されかつ許可された目的のためにのみ、処理され利用されることができる。2データが二年以上蓄積されるときは、患者は、このことについて、信用機関を通じて指摘されなければならない。3データは、計画の遂行のためにもはや必要でなくなったとき、遅くとも計画が完了したときには、抹消されなければならない。

(7)受領機関が非公的機関の場合には、この規定違反を示す十分な手がかりが存在しないときにも、監督官庁がデータ保護に関する法規の施行を監視するという条件で、連邦データ保護法三八条が適用される。

第12条(患者への回答)

(1) 1がん登録機関は、患者の申請に基づいて、患者によって指名された医師もしくは歯科医師に対して、当該患者自身について記録が蓄積されているか否か、および事情によっては、如何なる記録が蓄積されているかを回答しなければならない。2指名された医師もしくは歯科医師は、がん登録機関からの回答について、口頭によってのみもしくは回答書を閲覧させることにより、患者に知らせることができる。3がん登録機関からの書面による回答および回答書のコピーは、いずれも患者に渡してはならない。

(2)指名された医師もしくは歯科医師は、患者の同意を得た場合であっても、与えられた回答を、口頭においても書面によっても第三者に伝えてはならない。

第13条(抹消)

 暗号化された個人識別データは、患者の死亡から五〇年経過したとき、もしくは遅くとも患者の出生から一三〇年を経過したときには、抹消されなければならない。

第14条(秩序違反と罰則)

(1)権限なく、暗号化されていない個人識別データを、自己もしくは他人のために得させた者は、25.000ユーロ以下の過料に処する。

(2)以下の者も同様に、25.000ユーロ以下の過料に処する。

1.七条一項五号もしくは一一条六項三文に反して、データを抹消せず、もしくは適時に抹消せず、または基礎資料を破棄せず、もしくは適時に破棄しなかった者

2.七条一項八号に反して、抹消もしくは破棄を行うよう指示しなかった者

3.八条一項七号もしくは一一条四項に反して、データを抹消しなかった者

4.八条二項二文もしくは一一条六項一文に反して、他の目的で、データを処理もしくは利用した者

5.九条二項に反して、暗号化されていない個人識別データを蓄積した者

6.一〇条四項に反して、コンピュータプログラムを他の目的で使用した者

7.一一条一項二文に反して、データを照合し、解読し、提供した者

8.一一条三項四文に反して、届出事項を得させた者

9.一二条一項二文に反して、情報を口頭で、もしくは回答書を閲覧させることにより提供しなかった者

10.一二条一項三文に反して、回答書、もしくはそのコピーを渡した者、あるいは、

11.一二条二項に反して、回答を伝えた者

(3)一項と二項に掲げられた行為を、対価と引き換えに、あるいは自己もしくは他人に利益を得させることまたは他人に損害を与えることを意図して行った者は、二年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

第15条(命令による授権)

 バイエルン州労働社会、家庭、女性保健省は、この法律を実施するために、およびこの法律ががん制圧のためにとくにがん罹患に関するデータ基盤の改善のために必要なかぎりで、省令によって、以下の権限を与えられる。

1.六条一項二文ないし四文および二項に従う権限を与えられる臨床登録機関を定めること

2.臨床登録機関の地域管轄権を個々の場合に定めること

3.個人識別データの照合、解読と提供の許可に対する権限を、一一条に従って、他の官庁に移すこと

第16条(発効と失効)

(1) 1この法律は、二〇〇〇年一月一日から施行する。2ただし、一四条は、二〇〇〇年九月一日から施行する。

(2) この法律は、二〇〇五年一二月三一日の経過とともに失効する。

(3)一項とは別に、一四条一項および二項は、二〇〇一年一二月三一日までは、「25.000ユーロ」を「50.000ドイツマルク」に読みかえるという条件で、適用される。

ミュンヘン、二〇〇〇年七月二五日
バイエルン州政府首相
博士エドムント・シュトイバー
(Dr. Edmund Stoiber)


ドイツ・ラインラント−プファルツ州がん登録法

長崎県立大学経済学部 山下登

癌登録の実施に関する1999年12月22日の(ラインラント・プファルツ)州法(LKRG)

 ラインラント−プファルツ州議会は、以下の法律を議決した。

第1条(本法の目的および規制範囲)

(1)本法は、癌の制圧のために、とくに癌に関する疫学のための基礎データの改善のために、悪性新生物の発生に関して、その早期の段階も含めた個人に関するデータの継続的かつ統一的収集および収集したデータの処理について規定する。

(2)癌登録機関は、あらゆる形態の癌疾患の発生および消長傾向を観察し、就中、統計的・疫学的に評価し、公衆衛生計画および(癌罹患の)原因究明も含めた疫学研究の基礎を用意し、かつ予防的および治療的処置の評価に寄与しなければならない。癌登録機関はとくに、匿名化されたデータを医学研究のために自由に利用できるようにしなければならない。

第2条(癌登録機関の運営)

(1)癌登録機関は、被融資者たるマインツのラインラント・プファルツ州癌センターに設置される信用機関とマインツ大学付属病院の医療統計医療記録機関に設置される登録機関から構成される。管轄省は、法規命令により、1項に挙げられた施設に代えて他の公的もしくは私的機関に癌登録の職務を委ねることができる。

(2)信用機関と登録機関は、場所的かつ人的に、独立した組織体として互いに独立して運営される。両機関は、その職務を行使する際に、両機関の職務を調整する管理機関を利用することができる。ただし、管理機関は癌登録機関に存するデータを利用することができない。信用機関、登録機関および両者を調整するための管理機関はそれらの職務を管轄する省の法的および専門的監督に服する。癌登録機関に存するデータは、ラインラント・プファルツ癌センターの他のデータおよびマインツ大学付属病院医療統計医療記録機関の他のデータと分離して保管し、かつ、特別な技術的組織的処置により、権限なき処理に対して保護されなければならない。

(3)癌登録事業に要する費用は、届出に対して支払われる報酬を含め、州が負担する。ただし、他の機関が費用を負担する場合は、そのかぎりでない。法律上の職務と直接関連しない癌登録機関の業務に要する費用は、当該業務を要請した機関によって負担されねばならない。

第3条(概念規定)

(1)個人の身上に関するデータ(個人を同定するためのデータ)とは、患者の同定を可能にする以下の届出事項をいう:

1.姓、名、旧姓、

2.性別、

3.住所、

4.生年月日、

5.初めて癌の診断がなされた期日および、

6.死亡期日。

(2)疫学的データとは以下の届出事項をいう:
1.性別、

2.生まれた年および月、

3.居住地および自治体番号(郵便番号のことか?)、

4.国籍、

5.職歴(従事した職業、最も長期間従事した職業および最後に従事した職業の種類および勤務期間)、

6.ドイツ医療記録医療情報機関によって編集された最新版による、国際疾病分類(ICD)による癌の診断内容。国際腫瘍疾患分類(ICD−O)による組織学的所見

7.腫瘍の局在(発生部位)、両側性の臓器についてはいずれの側に発生したかを含む、

8.最初に癌が診断された月および年、さらに、癌の診断がなされたきっかけ(偶然の発見、早期発見のための検査、症状に関連してなされた検査その他)、

9.以前に罹患した癌、

10.病気の進行段階(とくに、腫瘍の大きさおよび転移の程度を表すためのTMN−基準による表示),

11.診断の確定方法(臨床所見、組織学的検査、細胞学的検査、検死等)

12.治療方法(治癒的手術および姑息的手術、放射線治療、化学療法、および他の治療方法)

13.死亡年月

14.死亡原因(基礎疾患およびそれ以外の死亡原因)

15.検死が行われた場合にはその旨

16.信用機関への届出期日

(3)管理番号とは、身上に関するデータについて付される番号をいう。ただし、身上に関するデータの再現を可能にするものであってはならない。

第4条(届出)

(1)医師および歯科医師(以下では「届出義務者」という)および医師または歯科医師から届出を委託された臨床登録機関およびアフターケア機関は、3条1項および2項に掲げられた患者に関する記載事項を信用機関に通知する義務を負う。届出が臨床登録機関もしくはアフターケア機関によってなされるときは、それらの機関は届出の際に、届出を委託した届出義務者の氏名および住所を知らさなければならない。

(2)届出義務者は、患者に対し、届出が意図されていることもしくはすでに届出が行われたことをすみやかに通知しなければならない。病院登録機関もしくはアフターケア機関が届出を委託された場合も同様である。通知は、通知により患者に健康上の障害が生じうることが予想されるかぎりにおいてのみ省略することができる。患者は届出に対して異議を申立てる権利を有する。通知の際に、患者に対して異議申立権を有することを指摘しなければならない。求めがあれば、届出の内容についても知らさねばならない。届出義務者は、患者が異議を申立てたときは、届出を中止し、あるいはすでに届出られたデータの抹消を指示しなければならない。届出の際には、患者が届出について知らされたか否かが告げられねばならない。

(3)患者と直接接触しない病理医は、1項1文による義務を免れる。病理医は、2項1文と異なり、患者に予め通知することなく届出を行う権限をも有する。届出が病理医によって行われるときにも、検査標本を送付した届出義務者の1項1文および2文による義務および病院登録機関もしくはアフターケア機関の1項による義務は存続する。病理医が患者に対して届出が意図されていること、もしくは既に行われたことを通知していないときは、標本を送付した届出義務者は、そのかぎりにおいても、2項による手続きをとらねばならず、かつ、患者が異議を申立てたときは病理医による届出の中止もしくは既に病理医の届け出たデータの抹消を指示しなければならない。病理医は、標本を送付した届出義務者に対し、届出が行われなかったこと、意図されていることもしくは既に行われたことを通知しなければならず、かつ1項1文および2項による義務を負うこと、および、患者に通知することなく届出が意図されている場合もしくは既に届出が行われた場合においては、本項4文による義務をも負うことについて指摘しなければならない。

(4)信用機関への届出は、書面、機械的に処理しうるデータ記憶媒体、もしくは電子的手段によるデータの送付によって行われる。届出および届出に対する報酬支払についての詳細は、管轄省と協議のうえ、信用機関が定める。信用機関は、届出に際してデータの保護がはかられるために必要な技術的かつ組織的処置を講じるものとする。

(5)信用機関はラインラント−プファルツ州外に常居所を有する患者について届出を受けたときは、7条1項に掲げられたデータを、患者の常居所を管轄する癌登録機関にも、管轄機関に対して適用される規定によるデータの受領のために、提供し、かつ求めがあればデータを送付するものとする。登録機関は、自らに送付されたデータを信用機関から送付されたその余のデータと同じように処理しなければならない。

(6)保健所は、すべての死亡証明書の身上に関わる部分のコピーもしくはそれから得られるデータを、機械的に利用しうる形態で、信用機関に送付する義務を負う。1文は、死者が1項による届出に対して生前に異議を唱えていたか否かにかかわらず、適用される。

第5条(信用機関)

(1)医師の指導する信用機関は以下の業務を行わねばならない。

1.届出られたデータの一貫性および完全性を吟味し、必要なかぎりで、届出機関に照会することにより届出られたデータを補正すること、

2.4条6項に基づき保健所から送付された死亡証明書の身上に関する部分のコピーもしくはそれから得られるデータを届出られたデータと同様に処理し、かつ必要なかぎりで、死亡証明書を発行した医師に照会することにより補正すること、

3.身上に関するデータと疫学的データとを分離し、身上に関するデータを8条1項により暗号化し、これに8条2項により管理番号を付けること

4.届出られた内容を7条1項により登録機関に送付し、登録機関による処理の完了後遅滞なく、遅くとも送付がなされてから3ヵ月以内に、当該患者に関わるすべてのデータを抹消し、かつ、4条6項により保健所から送付された死亡証明書のコピーもしくはそれから得られたデータを含む届出の基礎として用いられた資料を破棄すること、

5.9条1項により許可された場合につき、個人を同定するデータを照合し、もしくは解読し、9条3項2文に基づいて追加される届出事項を届出機関に照会し、必要なかぎりで、申請機関にデータを送付し、9条1項および同条3項2文により獲得されたデータおよび9条1項により提供されたデータを抹消すること、

6.10条1項の場合において、報告を行い、もしくはデータが最早信用機関に存在しないかぎりで、登録機関に対して必要なデータの提供を要請すること、および、

7.患者が届出に対して異議を唱えたときに、届出られたデータを抹消しかつ、存在する資料を破棄するよう指示すること、および、異議を届出た機関に抹消が行われたことを通知すること。

(2)信用機関は、州を跨がる疫学的データの照合、収集もしくは利用処置に際して、必要な範囲で協力する。信用機関はこのために、とくに、登録機関に対して、管理番号および疫学的データの提供を求め、この処置のためにのみ使用されかつ身上に関するデータの再現を不可能にする特別の鍵によって、登録機関から得た管理番号を再暗号化し、かつ、再暗号化された管理番号を疫学的データとともに、照合、収集もしくは利用する機関に送付しなければならない。信用機関は他の癌登録機関の管理番号および疫学的データを受領したかぎりにおいて、管理番号を新たに付するものとする。それ以外の点では、信用機関は、一連のデータを4条による届出と同様に処理するものとする。

(3)信用機関は、本法の規定のデータ保護に適った実施および他の法規に含まれているデータ保護に関する規定の遵守が保障されるようにするために、必要な技術的、組織的処置を講じなければならない。信用機関はとくに、一時的に存在する個人を同定するデータが権限なしに閲覧されもしくは利用されえないようにするための処置を講じなければならない。

第6条(登録機関)

(1)登録機関は、以下の業務を行わねばならない。

1.送付されたデータを蓄積し、管理番号により既存の一連のデータと照合し、論理的一貫性の有無を吟味し、補正し、もしくは補充しなければならない;登録機関は、信用機関に再度問い合わせることができ、かつ、処理が完了したことを信用機関に通知しなければならない。

2.管理番号を手がかりに、疫学的データをその補正および補充のために、可能なかぎりで、他の住民に関する癌登録機関と、一定の期間ごとに照合しなければならない。

3.疫学的データを1条2項に掲げられた目的を達成するために処理しなければならない。

4.9条1項により許可されたケースrにおいて、適切な計画の実現のために、必要なデータを信用機関に送付しなければならない。

5.10条1項の場合において、求めがあれば必要なデータを信用機関に送付しなければならない。

6.信用機関による通知ののちに、蓄積することに対して患者が異議を唱えた、届出られたデータを抹消し、かつ、抹消されたことを信用機関に通知しなければならない。

(2)登録機関は州を跨がる疫学的データの照合、収集もしくは利用処置がなされるに際して協力するものとする。このために管理番号の再暗号化が必要なかぎりで、登録機関はとくに、登録機関に蓄積された管理番号およびデータを、必要な範囲で、信用機関に送付しなければならない;登録機関は信用機関から送付された他の癌登録機関の管理番号および疫学的データを受領し、かつ処理しなければならない。

第7条(登録機関による蓄積)

(1)登録機関は、個々の患者につき、以下の届出事項を自動化された処理方法により蓄積する:

1.対称不可能な方式により暗号化された身上に関するデータ

2.疫学的データ

3.管理番号

4.届出者の氏名および住所、届出が病院登録機関もしくはアフターケア機関によってなされるときには、届出をこれらの機関に委託した届出義務者の氏名および住所、4条6項による送付を行う保健所の住所、および、届出がなされたことについての患者への通知。

(2)登録機関による暗号化されていない身上に関するデータの蓄積は、許されない。

第8条(身上に関するデータの暗号化、管理番号の付与)

(1)身上に関するデータは、対称不可能な暗号作成法により、暗号化されなければならない。

(2)疫学的データの補正、補充および分類のために、身上に関するデータの再現を妨げ、かつ、できるかぎり多くの他の全住民を対象とする癌登録機関との調整を可能にする方法により、管理番号が付けられねばならない。

(3)暗号作成法、管理番号付与法の選択およびこのために必要なデータ処理プログラムの確定は、連邦情報技術保護庁の意見を聴取したのちに行われねばならない。

(4)非対称性の暗号化および、管理番号の付与のために開発されかつ、使用される鍵は、秘密にされねばならず、かつ信用機関によって、本法の目的を果たすためにのみ使用することができる。技術水準が、身上に関するデータの一時的な解読をともなう再暗号化を必要とするときは、解読のために必要な鍵および使用される技術的な構成要素が、権限なき干渉に対して保護されるよう保障されていなければならない;鍵が信用機関に蓄積され、さらに第三者に提供されることを妨げる特別な処置が講じられねばならない。9条5項2文が準用される。

第9条(個人を同定するデータの照合、解読および送付)

(1)保険施策上の処置のために、かつ、重要でしかも他の方法では遂行しえない公共の利益を有する研究課題について、管轄省は、ラインラント−プファルツ州医師会倫理委員会の意見を聴いたのち、さらに、非公的機関にデータが送付されることが予定されていないかぎりで、州データ保護担当者の意見を聴いたのち、信用機関に対して、

1.個人を同定するデータと癌登録機関のデータとの照合および、

2.必要な、8条1項により暗号化された身上に関するデータの解読

および必要な範囲内でのその送付を許可することができる。それ以外の場合には、個人を同定するデータを照合することはできず、また、暗号化された身上に関するデータを解読し、送付することもできない;8条4項2文および10条はこれにより影響を受けない。

(2)信用機関は、1項によるデータの送付に先立ち、届出もしくは治療を行う医師もしくは歯科医師を通じて、解読された身上に関するデータもしくはデータを受領した機関が特定の個人に帰属させることのできるデータの他者への提供が予定されているときは、患者の書面による同意を取り付けねばならない。患者が死亡しているときは、信用機関は、データの送付に先立ち、最近親者の書面による同意を取り付けねばならない。ただし、このために不相当な費用を要するときはこのかぎりでない。その際、配偶者、子、両親、兄弟姉妹が、順に、最近親者とみなされる。同一順位の近親者間で、同意するか否かにつき意見が異なっており、かつ癌登録機関がこのことを認識しているときは、同意は得られなかったものとみなされる。死亡した患者が3文により、近親者を有しないときは、その者と婚姻類似の共同生活をしていた成年者がこれらの者に代わって同意することができる。

(3)データが1項による照合の後に、データを受領した機関により、特定の個人に帰属することができないような方法で送付され、あるいは、死者の死亡期日と死亡原因のみが伝達されたときは、2項による同意を得ることは必要でない。1項により許可された研究計画が、ある症例に関して、3条2項9号ないし12号に掲げられたデータについて追加の届出を必要とし、かつ、この届出事項を受領機関が特定の個人に帰属しえないときは、信用機関は、2項による同意を取り付けることなく、必要とされるデータを届出人もしくは届出機関に問い合わせ、かつ、受領機関に転送することができる。届出人もしくは届出機関は、この届出事項を知らせることができる。データ受領機関は、癌登録機関によって送付されたデータと結び付けられることによって、患者の同定が可能になるであろう届出事項を第三者から得てはならない。

(4)必要な同意が得られないときは、1項に基づいて提供されたデータは抹消されなければならない。

(5)身上に関するデータを解読するために必要となる復号鍵を含むデータ処理プログラムは、ラインラント−プファルツ州データ・情報処理センターにより保管され、かつ、適切な組織上および技術上の安全処置により、とくに濫用に対して保護される。1項により、解読が許可された場合には、データ処理プログラムおよび復号鍵は、必要なかぎりで、許可された範囲内での使用のために、信用機関に提供されなければならない。8条4項2文は、これにより影響を受けない。

(6)送付されたデータは、受領機関によって、申請されかつ許可された目的のためにのみ、処理することができる。データが2年以上蓄積されるときは、このことにつき、信用機関を通じて患者に指摘しなければならない。データは、計画の遂行のためにもはや必要でなくなったとき、遅くとも計画が完了したときには、抹消されなければならない;抹消が行われたことにつき、信用機関に通知しなければならない。

第10条(患者への回答)

(1)患者の申立てに基づき、癌登録機関は、患者によって指名された医師もしくは歯科医師に対して、当該患者自身について記録が蓄積されているか否か、および事情によっては、如何なる記録が蓄積されているかを回答しなければならない。指名された医師もしくは歯科医師は、癌登録機関からの回答を口頭によってのみもしくは、通知書を閲覧させることにより、患者に知らせることができる。癌登録機関の書面による回答および回答書のコピーは、いずれも患者に渡してはならない。

(2)指名された医師もしくは歯科医師は、患者の同意を得た場合であっても、与えられた回答を、口頭においても書面によっても第三者に転送してはならない。

第11条(身上に関するデータと届出登録機関のデータとの照合)

(1)癌登録の完全性を検証するために、ラインラント−プファルツ州データ・情報センターは、届出官庁の委託に基づき、それに伴う費用の支払いと引換えに、信用機関に対し、氏名の変更、転入、他の州への転出もしくは死亡の場合において、信用機関によって定められた時期に、ただし1年に2回を超えない限度で、以下に掲げるデータを通知する:

1.氏名

2.旧姓

> 3.生年月日

4.性別

5.現住所

6.最後の旧住所および、

7.氏名変更の期日、転入もしくは転出期日または死亡期日

(2)信用機関は、1項により送付されたデータを4条による届出と同様に処理するものとする。登録機関は、送付されたデータを信用機関によって送付されたその他のデータと同様に処理しなければならない。登録機関に存在する一連のデータとの照合により、当該個人について全くデータが蓄積されていないことが明らかとなったときは、遅滞なく、データを抹消しなければならない;登録機関は信用機関に対して、抹消が行われたことを通知しなければならない。

第12条(小児癌登録)

 マインツ大学付属病院医療統計・医療記録機関に設けられた小児癌登録機関は、蓄積されているデータを、3条1項および2項および7条1項および5号に掲げられた届で事項に照応するかぎりで、患者の常居所もしくは最終常居所を管轄する癌登録機関に、当該機関に対して適用される規定に基づいてデータを受領させるために、提供し、かつ求めがあれば、送付するものとする。信用機関と管理機関は、送付されたデータを本法の規定にしたがって届出られたデータと同様に、処理することができる。それ以外の点では、小児癌登録機関は、本法の規定によって影響を受けない。

第13条(抹消)

 暗号化された身上に関するデータは、患者の死亡から50年経過したときもしくは遅くとも、患者の出生から130年を経過したときは、抹消されなければならない。

第14条(罰則)

(1)以下の行為を行った者は1年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

1.5条1項4号、9条6項3文もしくは13条に反してデータを抹消せず、もしくは適時に抹消せず、または資料を破棄せず、もしくは適時に破棄しなかった者、

2.5条1項5号、6条1項6号、9条4項もしくは11条2項3文に反して、データを抹消しなかった者

3.5条1項7号に反して、抹消もしくは破棄を勧告しなかった者、

4.7条2項に反して、暗号化されていない身上に関するデータを蓄積した者、

5.8条4項1文に反して、鍵を他の目的のために使用した者

6.9条1項2文に反して、データを照合し、解読し、もしくは送付した者

7.9条3項4文に反して、届出事項を入手した者、

8.9条6項1文に反して、データを他の目的のために処理した者、

9.10条1項2文に反して、情報を口頭で、もしくは通知書を閲覧させることにより提供しなかった者、

10.10条1項3文に反して、回答書、もしくはコピーを渡した者、

11.10条2項に反して、回答を第三者に転送した者

(2)前項の行為が、対価を得て、または、自らもしくは他者に利益を得させもしくは他者に損害を与えることを意図して行われたときは、2年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

第15条(経過規定)

(1)1997年7月1日以前に、癌登録機関の設立途上で、もしくはモデル的試みの場面において、本人またはその身上監護権者の同意を得てデータが蓄積されたかぎりで、当該データは、本法に基づいて届出られたデータと同様、癌登録機関において処理することができる。

(2)1994年11月4日の連邦癌登録法(BGBl.IS.3351)に基づき、1997年7月1 日の州癌登録法(GVBl.S.167)の規定にしたがって蓄積されたデータは、この法律に基づいて蓄積されたデータとみなされる。

第16条(施行期日)

(1)この法律は、2000年1月1日から施行する。

(2)この法律の施行と同時に、1997年7月1日の州癌登録法(GVBl.S.167, BS2126-5)は、失効する。

マインツ,1999年12月22日
州政府首相
クルト・ベック(Kurt Beck)


ドイツ.シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州がん登録法

放射線影響研究所 増成直美(訳)

がん登録の実施に関する一九九九年一〇月二八日のシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州法(州がん登録法:LKRG)

 州議会は、以下の法律を議決した。

第1条(本法の目的と規制範囲)

 がん登録事業の運営者と責務

(1)本法は、がん制圧のために、とくにがんに関する疫学のための基礎データ改善のために、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州がん登録事業(がん登録事業)によるがん発生に関する個人および疾病に関連する疫学的データの継続的処理について規定する。

(2)がん登録事業の運営者は、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州である。

(3)がん登録事業は、あらゆる形態のがん疾患の発生とその消長傾向を観察し、とくに統計的疫学的に評価し、公衆衛生計画およびがん罹患の原因究明を含めた疫学研究の基盤のために、とりわけ匿名化されたデータを用意しなければならず、かつ予防的および治療的処置の評価に寄与しなければならない。

第2条(がん登録機関の構成)

(1) がん登録機関は、常に独立で、場所的、組織的、人事的にも互いに分離された信用機関と登録機関から構成される。

(2)シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州医師会は、指示に従った履行のために、医師の指導の下で、信用機関の責務を果たす。

(3) 1リューベックにある社団法人がん疫学研究所は、公法上の行為形式に基づいて処理するために、および指示に従った履行のために、登録機関の責務を果たす。2管轄機関は、その研究所の理事会である。

(4) 1州最高保健庁は、州登録局として、信用機関に関する専門監督と、登録機関に関する監督を行う。2登録機関に関する監督の範囲と手段に関しては、州行政法規の一五条二項、一六条一項および三項、ならびに一八条三項が準用される。3三項により研究所が解散される場合には、州登録局は、蓄積されているデータの安全を確保する。4確保されたデータが蓄積限度を超えるかぎりで、州登録局は、確保されているデータを処理することはできない。5登録機関の責務が他の機関に委託されるかぎりで、確保されたデータのこの機関への提供が、許可される。

(5) 1個人を認識させるデータを州登録局に提供すべき旨の州登録局の指示は、許可されない。2個人を識別するデータと疫学的データとの照合は、九条一項と一〇条に従う場合以外は、禁じられる。

第3条(定義)

(1)個人識別データとは、以下の届出事項をいう。

1.姓、名、出生名および旧姓

2.性別

3.住所

4.出生地と出生年月日

5.原発腫瘍診断日、および、

6.死亡年月日

(2) 1名前コードとは、添付資料として添えられた表に基づいて確定されたコード番号をいう。2添付資料は、この法律の構成部分である。

(3)発症住所とは、新生物の初回診断の時点での居住地とその郵便番号、必要な場合には、通りと番地に限定された住所の届出事項をいう。

(4)届出義務のある早期段階とは、まだ浸襲性を有するまでに進行していない悪性新生物の早期の形態をいう。元の状態に戻りうる前がん状態は、それに入れない。

(5)疫学的データとは、以下の届出事項をいう。

1.性別、多胎児特性

2.出生地と出生年月日

3.発症住所の郵便番号および市町村標示番号

4.国籍

5.推定される原因に関する届出事項

6.職業病としての届出

7.国際疾病分類(ICD)基準による診断

8.腫瘍の部位

9.原発腫瘍診断年月

10.以前に腫瘍に罹患したことがあるときはその旨

11.臨床進行度

12.診断確定方法

13.治療方法

14.死亡年月

15.死因(原疾患)、ならびに、

16.解剖の有無

(6) 1患者番号とは、個人に属する一連のデータの統一的標識づけのために、信用機関によって定められた個人を識別する届出事項を含まない通し番号をいう。2患者番号が匿名で届出られた患者の識別のために利用されることは、許されない。

第4条(届出)

(1) 1医師、歯科医師(届出人)は、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州に通常居住する患者について、早期の段階を含めた悪性新生物に関して、二項ないし五項を留保して、六項に定められた用紙もしくは一連のデータで、信用機関に届け出ることを義務づけられる(届出義務)。2病理学者および病理学研究所は、その届出において、さらにつけ加えて、鑑定された検査材料の送付者をも申告しなければならない。3届出義務は、アフターケア機関に患者の同意を得たうえで記録用紙が送られ、アフターケア機関が届出人の委託によりその住所とともに届出をなしたときに、履行されたものとみなされる。4届出義務は、悪性新生物の最初の診断から三年の経過とともに消滅する。5信用機関は、州登録局と協議のうえ、特定の多重悪性新生物に関しては、届出が一度行われれば足りる旨を定めることができる。

(2) 1二人以上が共同で活動している届出人、届出人が雇用されている機関の医師の指導部、およびアフターケア機関が、届出機関を構成する。2これらは、届出人として、各悪性新生物の届出がなされることを保障しなければならない。3他の届出機関による届出は、自己の届出義務を免除しない。

(3) 1届出人は、以下に掲げる患者について、届出権を有する。

1.シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州に常居所を有する患者について、一九九七年からこの法律の施行まで、および届出義務が消滅した後における悪性新生物の届出に関して、および、

2.シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州に通常住んでいない患者について、当該患者が自己の居住地を管轄するがん登録機関もしくはその信用機関へのデータの送付、およびそこで有効な規定に従ったデータの処理に同意するかぎりで

2この場合、信用機関は、そのデータを適切な方法で転送し、そこに蓄積されたデータを遅滞なく破棄する。

(4) 1届出人は、患者に、届出義務または届出権を有することについて、がんに罹っていることの説明が行われているかぎりで、知らせなければならない。2この場合、患者に、届出の内容が開示されるべきであり、個人識別データに基づき実名での届出が第三者によっても研究においてデータとして利用されうることについて、患者の同意が取りつけられなければならない。3この同意が得られないときは、九条一項の要件の下で氏名および住所を送付のために自由に使用させるよう、患者に求めるものとする。4届出人は、適切な要求がなされた場合には、同意を得た後に、このデータを送付する義務を負う。

(5) 1患者が実名での届出に同意しないときは、患者は、名前コード、三条一項二号および四号ないし六号に掲げられた届出事項と、発症住所、ならびに届出人によって作成されるべき問合わせ一覧表において患者をとくにその住所で分類する問合わせ一覧表番号の使用を通じて、匿名化される。2届出は、四項二文もしくは三文に従った通知または同意があったかどうかについて申告しなければならない。3匿名の届出に対して、常居所がシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州にある患者による異議申立ては、許されない。

(6) 1州登録局は、州データ保護担当者と協議のうえで、疫学的データ届出用の申告用紙の見本と電子的データ記憶媒体にふさわしい一連のデータの利用マニュアルを定める。2届出機関がすでに存在しないときは、五項に従った問合わせ一覧表は、保管のために、州データ保護担当者に譲渡されなければならない。

(7) 1区保健所は、信用機関に、届出と同様にそこで処理されるすべての死亡証明書中の必要なデータを送付する義務を負う。2これまでに登録されていない患者のデ−タは、その際、匿名で登録されなければならない。3すでに匿名で登録されたデータに、個人識別データを添付することは許されない。

(8) 1悪性新生物の届出に対しては、信用機関は、報酬を支払う。2州最高保健庁は、行政規則によって、その詳細を定める。

第5条(管理番号)

(1)個人識別データへの復元が管理番号を通じては不可能であるときは、他州の地域がん登録機関のデータとの照合のために、管理番号は、連邦レベルにおいて合意された統一的手続によって形成されうる。

(2) 1管理番号の形成手続は、秘密にされなければならない。2そのためのコンピュータプログラムは、信用機関によって、この目的のためにのみ使用されうる。

(3)管理番号の形成に関する現行規定と合意は、これによって影響を受けない。

第6条(信用機関での手続)

(1) 1信用機関は、届け出られたデータの論理性と完全性を審査しなければならず、かつ必要な場合には、届け出られたデータを補正しなければならない。2信用機関は、実名での届出の場合には個人識別データを三条一項に従って蓄積し、匿名の届出の場合には以下のものを蓄積する。

1.名前コード

2.三条五項一号ないし三号、九号および一四号に従ったデータ

3.問合わせ一覧表番号、および、

4.四条四項による患者への通知と患者の同意に関する届出事項

2信用機関は、すべての届出について、さらに加えて管理番号と患者番号および届出機関と届出人に関する届出事項をも蓄積する。3三条五項による疫学的データは、別のデータ記憶媒体に収納されなければならない。4それぞれの一連のデータに対して五条により管理番号が、および同一人に関わるすべての届出に対しては三条六項により一義的な患者番号が、形成されなければならない。5届け出られた一連のデータは、すでに蓄積されている一連のデータと照合されうる、この照合は、匿名の届出の身元を明らかにするものであってはならない。

(2) 1登録機関に対して、以下のデータを送付しなければならない。

1.必要なかぎりで、三条五項七号に基づく届出事項に関しては、暗号文にされていないものも含めた疫学的データ

2.管理番号と患者番号

3.届出機関の種類、郡に属さない都市もしくは郡によって示されるその所在地、および届出年月日

4.四条四項による患者への通知と患者の同意に関する届出事項

5.死亡証明書から得られたデータ

2一号によるデータ、ならびに届出に伴って送付された基礎資料およびデータは、信用機関において処理の完了後、遅くとも送付の三ヵ月後には、破棄または抹消されなければならない。

(3) 1信用機関は、臨床研究の支援のために、臨床登録機関の申請に基づいて、性、氏名、出生名および出生年月日によって指定された故人について、患者番号を確定し、それを登録機関に送付することができる。2登録機関は、信用機関に、この患者番号で蓄積されている死亡年月とその死因を、臨床登録機関への公表のために伝達することができる。

第7条(登録機関での手続)

(1) 1登録機関は、信用機関から六条二項により送付された一連のデータを、管理番号および患者番号を媒介として、存在する一連のデータと照合し、論理性について審査し、補正し、もしくは補完し、蓄積しなければならない。2登録機関は、信用機関に、審査の終了を通知しなければならない。3管理番号は、疫学的データの補正および補完のために、定期的に、ローベルト・コッホ研究所の関与の下、他の地域がん登録機関のそれと照合されなければならない。

(2) 1登録機関は、毎年、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の疫学的データを掲載した基本報告書を作成しなければならない。2その基本報告書は、州登録局と区保健所に、送付されなければならない。3登録機関は、少なくとも三年ごとに、その評価の結果を公表しなければならない。4届出庁は、登録機関の要請に基づいて、登録機関によって記述された市町村の人口を、年齢群および性別ごとに算出し、登録機関に無料で伝達することを義務づけられる。5疫学的データは、一年に一度、ローベルト・コッホ研究所に設置された「ドイツ中央がん登録機関(Dachdokumentation Krebs)」へ連邦レベルにおいて統一された形式により送付されなければならない。

(3) 1一項によるデータの処理に対して、シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州に常居所がある患者が異議を申し立てることは、許されない。2個人識別データと名前コードの蓄積は、登録機関では許されない。

第8条(抹消)

 患者の死亡から五〇年を経過したとき、もしくは遅くとも患者の出生から一三〇年を経過したときには、以下のものは抹消されなければならない。

1.信用機関においては、管理番号と患者番号以外のすべてのデータ

2.登録機関においては、管理番号、患者番号と疫学的データ以外のすべてのデータ、および、

3.すべての届出機関と州データ保護担当者については、問合わせ一覧表中の記載

第9条(データの照合)

(1) 1照合が、研究計画の遂行のために重要で、かつ公共の利益を有する研究計画の遂行のために必要であるときは、州登録局は、申請に基づいて、個人関連データと疫学的データの照合を許可することができる。2申請には、理由が付されなければならない。3研究計画に対して意見の表明が規定されもしくは要請されているときは、倫理委員会もしくはがん登録機関諮問委員会の意見が、申請に付されなければならない。

(2) 1一項に従った申請が許可されれば、信用機関は、四条四項により同意を与えた者の氏名と住所を確定し、これらのデータを登録機関から送付される疫学的データと暫定的に照合する。2申請者が、データの処理を州データ保護担当者を通じて州データ保護法二七条に従って管理させ、かつこのために生じる費用を負担する義務を負うときは、必要な範囲で、申請者がデータを自由に使用できるようにしておかなければならない。3非公的機関に対する管理業務に対して、100マルク以上20000マルク以下の手数料を徴収することができる。4一九七四年一月一七日のシュレースヴィヒ・ホルシュタイン州の管理費法(シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州法令集、三七頁)は、法律の四条によって、一九九八年一二月二一日に最終修正され(シュレースヴィヒ・ホルシュタイン州法令集、四六〇頁)、準用される。

(3) 1信用機関は、二項による送付において、

1.データの受領機関、および計画責任者

2.送付された個人関連データが専らそのために使用されうる計画

3.送付されたデータが保管されうる期日

を定めなければならない。2三号による期間が二年以上にわたるときは、患者は、信用機関によってその旨を知らされなければならない。3受領機関へのデータの送付については、事後的にも、附随的規定を設けることができる。

(4) 1データの受領機関が送付されたデータを第三者にさらに送付することは、許されない。2受領機関は、州登録局に、申請の決定にとって本質的であったすべての事情の変化を、遅滞なく、届け出なければならない。3送付のための前提が欠落した場合、州登録局は、受領機関がデータを抹消しなければならないか、それとも信用機関へ返却しなければならないかを決定する。4それによって、もしくは三項三号により必要となる蓄積されていたデータの抹消を、信用機関へ通知しなければならない。

第10条(患者への回答)

(1) 1信用機関は、実名で届け出られた患者の申請に基づいて、患者の指名する届出人自身に、信用機関に当該患者の身上に関して如何なるデータが蓄積されており、かつ登録機関に疾患に関して如何なるデータが蓄積されているのか、あるいは如何なるデータが処理されようとしているのかを、書面で回答しなければならない。2届出人は、信用機関の回答について、患者本人に口頭によってのみもしくは回答書を閲覧させることにより知らせることができる、通知の事実は文書によって明らかにされなければならない。3信用機関の回答書も、そのコピーも、患者に渡してはならない。4回答書は、口頭によりその内容が患者に伝えられた後に、届出人によって破棄されなければならない。5指名された届出人は、患者の同意を得た場合であっても、与えられた回答を第三者に伝えてはならない。

(2)信用機関は、届出人への回答および届出人の住所に関わるデータを蓄積しなければならず、かつ登録機関から回答として受け取ったデータを抹消しなければならない。

第11条(患者への問合わせ)

(1) 1九条により個人関連データが提供された計画の場合には、受領機関は、患者に問い合わせることができる。2電話による問合わせは、許されない。

(2) 1口頭での問合わせの意図は、患者に、予定された期日を告げたうえで少なくとも三週間前に、書面であらかじめ通知されなければならない。2通知の際に、患者は、計画の目的と質問の内容について知らされなければならず、かつその問合わせへの協力は、自由意思によるものであることを指摘されなければならない。3患者が協力する用意のあることを書面で表明し、かつ問合わせの期日が取り決められたときにのみ、問合わせが実施されうる。

(3)書面による問合わせの場合には、計画の目的、および協力するか否かが自由意思に委ねられていることについての通知が、質問の前になされ、もしくは書面に添付されなければならない。

第12条(第三者への問合わせ)

1九条により送付された個人関連データを用いる計画の実行のために、患者の書面による同意があるときにのみ、第三者から情報を得ることができる。2患者が死亡しているときは、信用機関は、不相応な費用を伴うことなく可能なかぎりで、最近親者の同意を得なければならない。3その際、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹の順序で、最近親者とみなされる。4同一順位の親族の中で、同意について意見の相違があり、かつ信用機関がこのことを認識しているときは、同意は得られなかったものとみなされる。5故人が、三文による親族を有しないときは、故人と同一住居で生活していた成人が、近親者に代わって同意することができる。6同意を得る際には、患者もしくは最近親者に対して、計画の目的を知らせなければならない。7一一条三項が、準用される。

第13条(疫学的データの送付)

(1) 1学術研究にとって、または統計的疫学的評価のために必要であり、かつ必要なかぎりで、登録機関から蓄積されていた疫学的データの送付を受けることができる。2データは、特定の個人を識別させるものであってはならない。データは、個人を確定しうるものであってはならない。

(2) 1他の州の州登録局および登録機関への疫学的データの送付については、一項一文の制限は、適用されない。2登録機関は、申請に基づいて、登録機関に蓄積されていたデータを、特定のグループについて編成し、一括して送付することができる。

第14条(命令による授権)

 州最高保健庁は、命令によって、以下の権限を与えられる。

1.二条二項もしくは三項に従った責務委任が終了した場合は、信用機関または登録機関の責務を、公法上あるいは私法上の他の法人に、指示に従った履行のための公法上の行為形式に基づく処理のために委託すること、および、

2.以下の目的を達成するために、必要なかぎりで三条二項とは異なる匿名での届出のコード化、四条五項とは異なる匿名での届出の内容および処理、ならびに七条とは異なる登録機関におけるデータの蓄積のあり方について規定すること、
 a.登録の誤まりを減らすため
 b.九条の場合に、個人を再び識別するため
 c.届出られたデータを他の州の地域がん登録機関のデータと照合するため
 d.データからの身元判明を困難にするため、ならびに、

3.六条二項一文とは異なり、登録機関へのデータの送付の範囲を、登録データの地域的評価のために必要とされる場合に、より広範な、個人に関連しないデータにまで拡張すること

第15条(罰則)

(1) この法律の規定に反して、個人関連データを処理し、もしくはこれを行うよう指示し、かつそれによって個人の情報自己決定権を侵害した者は、一年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。一六条は、本条によって影響を受けない。

(2)対価と引き換えに、あるいは自己もしくは第三者に利益を得させまたは他人を害することを意図して行為した者は、二年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

第16条(秩序違反)

(1) 以下の者は、秩序違反を犯した者である。

1.四条七項、六条一項、もしくは七条三項に反して、データを非匿名で入手し、もしくは蓄積し、または七条三項に反して、名前コードを蓄積した者

2.五条二項に反して、コンピュータプログラムを他の目的で使用した者

3.六条二項、八条、もしくは九条四項に反して、データを抹消せず、もしくは適時に抹消せず、または基礎資料を破棄せず、もしくは適時に破棄しなかった者

4.一〇条一項三文に反して、回答を患者に渡した者

5.一〇条一項四文に反して、書面による回答書を破棄しなかった者

6.一〇条一項五文に反して、患者の同意のある回答を第三者に伝えた者、あるいは、

7.一一条一項および二項に反して、問合わせを実施した者

(2)秩序違反は、100,000ドイツマルク以下の過料で罰せられうる。

第17条(施行期日)

 この法律は、二〇〇〇年一月一日から施行する。

 上記の法律は、これをもって認証され、公布される。

キール、一九九九年一〇月二八日
州政府首相 ハイデ・ジモニス(Heide Simonis)
法務、連邦・欧問題大臣 ゲルト・バルター(Gerd Walter)
内務大臣博士 エッケハルト・ビーンホルツ(Dr. Ekkehard Wienholtz)
労働、保健社会大臣 ハイデ・モーザー(Heide Moser)



フランスのガン登録について

摂南大学法学部 寺沢 知子

【資料】
 情報、ファイルおよび自由に関する1978年1月6日の法律no78-17(1994年7月1日の法律no94-548等による一部改正)(一部添付)
 登録国家委員会(CNR)報告におけるガン登録に関する部分(概要に記述、訳不添付)
 登録国家委員会に関する1995年11月6日のアレテ(一部後述)
 カナダの大学からの質問に対するグロスクロード博士(タルン県フランスガン登録網)の回答(訳添付)

[上記の各資料の入手に当たっては,在フランスの松田智大氏に非常にお世話になった。記して厚くお礼申し上げたい――丸山]

★概要

 ★★登録は、「ふさわしい権限を有するチームによる、研究および公衆衛生を目的とした、特定地域の住民におけるひとつまたは複数の衛生の状況に関する記名のデータの継続的網羅的収集(登録国家委員会に関する1995年11月6日のアレテ第3条―以下の概要については、おおむね関連法条に記載のアレテおよび法律に依拠した。詳細は、これらを参照されたい。)」と定義され、資格を付与されるためには次の手続きを必要とする。すなわち、研究と公衆衛生の各々にとって資格および科学的利益に関する、INSERMおよびDGSの科学委員会(一種の行政委員会と思われる)の資格付与に賛成する意見、既存の登録の維持の適時性または新登録の創設の適時性についてのCNRの資格付与に賛成する意見、研究の方法論および記名のデータに頼ることの必要性を対象とする保健衛生領域における研究に関する情報の処理についての諮問委員会Comite consultatifの資格付与に賛成する意見を得ること、情報管理および自由の国家委員会(以後CNIL)の承認を得ることの4段階を経て(アレテ第5条)、登録としての資格を付与される。資格を付与されると、公的財政援助の対象となり、医療機関からデータを集めることができる(グロスクロード博士の回答および法40条‐3)。もっとも、グロスクロード博士の回答によると、国家l'etatによる資金調達はもはやほとんど内実を伴っておらず、事例調査に必要な予算の20から25%でしかない。残りの資金調達は地方のソース(各地方の行政機関)や、私的基金または付属の研究計画のための予算からのものであるとされている。この登録として認められた資格は、すでに機能している登録については4年、創設途中の登録については3年の有効期間を有する。この資格付与は、4年間で更新される。
 以下は、データの自動的処理の場合における法律(1994年7月1日の法律no94-548)に規定されている、記名データの本人の保護と権利についてである(詳細は、後述の同法を参照されたい。また、治療および予防の活動の評価または分析を目的とする保健衛生の個人データの処理についても1999年7月27日の法律no99-641を参照されたい)。まず、職業上の秘密に関する規定にもかかわらず、医療関係者は、登録として承認されたデータの処理の範囲内で自分が保持している記名データを伝えることができる。これらデータが人の身元の特定を可能にする場合、これらのデータは伝達される前にコード化されなければならない。しかしながら、データ処理が副作用観察報告の研究または国家のもしくは国家間の共同研究の一環として行われる研究のプロトコールに関連する場合は、コード化の義務に違背することができる。同様に、研究の特徴からそうすることが必要であれば、コード化されずともよい。ただし、データ処理の結果の提示は、いかなる場合においても、関係当事者の直接的または間接的な特定を可能にしてはならない。処理されるデータにアクセスした人々も刑法典226条―13に規定された守秘義務を負う。
 自動的に処理される記名データの本人について、自分に関する記名のデータがデータの自動的処理の目的とすることに反対する権利を有する。また、研究が特定している生物学的採取見本の収集を必要とする場合において、関係当事者の啓発され、説明を受けた同意が、データ処理の使用に先立って得られなければならない。しかし、死亡原因の証明書上に記載されている人々も含めて、死亡した人に関する情報は、当該当事者が生存しているときに、書面で拒絶を表明している場合を除いて、データ処理の目的とすることができる。
 記名データの本人は、当該データの処理が始まる前に、個別に、伝えられる情報の性質、データ処理の合目的性、データの受取人である自然人または法人、アクセス権および訂正権、先述のデータの自動的処理の目的とすることに反対する権利(同意を求める義務)を有していること、について説明を受けなければならない。しかしながら、主治医が裁量の範囲内で適法な理由であると評価するために、病人がその診断または重大な予後を知らない状態で置かれる場合、これらの情報は当該病人に伝えられることはできない。また、未成年者について、親権を有する者les titulaires de l'autorite parentale、または、法的保護措置を受ける対象となる人について、後見人は、説明の名宛人であり、かつ、訂正権や反対する権利を行使する。
 なお、罹患率に関するフランスの登録は、当初は公の政策もなく、ガン(1975年)、先天的奇形(1979年)、虚血性心臓障害(1984年)という、3つの分野において、本質的には地方のイニシャチブの結果として次第に実施されていった。政府は、登録が自発的な進展をすることを望んでいたので、1986年2月10日のアレテによって、登録国家委員会(以後CNR)を創設した。CNRは,保健衛生と研究の二重の保護監督のもとにおかれ(保健衛生統括局および保健衛生と医学研究の国家研究所Direction Generale de la Sante et Institut National de la Sante et de la Recherche Medicale)、研究と同時に公衆衛生についての二つの活動をすることを明らかにした(以下は、CNRの報告に依拠)。

★★ガンに関する疫学的データは、ガン発生の多さのため、その重大性のため、そして、患者が引き受けなければならない病気のリスクの要因と予防対策がどのようにされるかという保護の要因を識別することの必要besoinのために非常に重要である。そのコンテクストにおいて、ガン登録は公衆衛生の政策の実施と評価にとって必要不可欠なデータをもたらすのである(以下、CNRの報告より)。
 フランスのガン登録は、バ-ラン県le Bas-Rhinにおける最初のガン登録の1975年の創設以来、重要かつ急速な発展がみられた。とりわけ記述的疫学の領域において、個別に作業を行うことによって記録された展開の段階が過ぎると、ガン登録の責任者たちは、緊密な協力が必要であると気づいた。協力は、CNRによって技術的に同等であると認められたすべての登録を再編成したフランスのガン登録網の設立にいたる。1996年に国家の公的財政援助を受ける八つの登録(バ-ラン、ブルゴーニュ(消化器ガン)、カルバドス(消化器ガン)、コート-ドール(悪性の血液疾患)、ドゥーブ、タルン、ロレイン(小児ガン)、プロバンス-アルプス-コート-ダジュール(小児ガン))および国家の公的財政援助を受けない八つの登録(カルバドス、コート-ドール、婦人科系のガン)、オート-ガロン(消化器ガン)、エロル、イゼール、マルティニク、ノルパ-ドゥ-カレー(ORLガン)、ソム)がそうである。公衆衛生のINSERM網、l'ARC,GEFLUCの資金援助の獲得は、疫学的そして公衆衛生上の作業により大きなダイナミズムを与えることができた。
 当初、同網は、データ比較を容易にするようにガンケースの体系と運営規定を定義していた。データ収集に取り組む技術者と医師に用意された一週間の講座が、1996年1月に、トゥルーズで開催された。その結果、協力作業が、記述的疫学l'epidemiologie descriptiveの領域で企図され、共同出版物を出すにいたった。さらに最近では、研究は、衛生システムの政策の評価、すなわち、分析的疫学epidemiologie analytiqueや予防対策の評価における協働作業の方向に向かっている(グロスクロード博士の回答にも「協働作業のたまもの」という記述がある)。CNRのガン領域における活動報告の結論として、「フランスのガン登録は記述的疫学のデータの提供者という伝統的役割に限定されていない。その大部分は、医療の実施の評価、検診の評価、分析的疫学研究の実行を可能にする疫学的研究の実験所となっている。国家の公的資金援助の永続性、FRANCIM網における共同研究の発展、ヨーロッパ研究網における積極的関係implicationによって、ガン登録は疫学的研究におけるその地位を強化し、そして、公衆衛生の決定権保有機関の特権を与えられた交渉相手になることができなければならない」と記述されている。

 ★★国家登録委員会CNR、および、★★情報管理および自由の国家委員会CNILについては、次の関連法条を参照されたい。

★関連法条

情報管理、ファイルおよび自由に関する1978年1月6日の法律no78−17
記名情報に関する法律。

第1章 原則と定義

第1条 情報管理は、市民個人に供されなければならない。その展開は国際協力の一環として行われなければならない。情報管理は、人間のアイデンティティにも、個人の人権にも、プライバシーla vie priveeにも、個人のまたは公的な自由にも侵害を及ぼしてはならない。

第2条 人の行動についての評価を含む、いかなる司法の決定や判決も、利害関係者のプロフィールまたは人格を定義する情報の自動的な処理を唯一の根拠とすることはできない。
人の行動に関する評価を含む、いかなる行政上のまたは私的な決定も、利害関係者のプロフィールまたは人格を定義する情報の自動的な処理を唯一の根拠とすることはできない。

第3条 人は、いかなる者であっても、自動的な処理をされるとその結果がその者に対立するような処理で利用される情報および議論を知りかつ争う権利を有する。

第2章 CNIL

第6条 情報管理および自由の国家委員会une Commission nationale de l'informatique et des libertes(以後CNIL)が創設される。CNILは、とりわけ自分の権利・義務に関係がある人すべてに知らせ、その人々と打ち合わせをし、記名情報の処理に対する情報管理の実施をコントロールすることにおいて、現行法の諸規定を尊重することに注意を払う責任を負う。現行法の尊重に注意を払うために、CNILは、現行法に規定された場合においては、条例を発する権限を有する。

第8条 CNILは独立した行政の権力機関une autorite administrative independanteである。
 CNILは、委任期間または5年につき指名された17名の構成員からなっている。

〇国民議会および元老院によってそれぞれ選ばれた2名の国民議会議員と2名の元老院議員。

〇同会議によって選ばれた経済と社会評議会の2名の構成員

〇コンセイユデタの二人の構成員または元構成員。このうち1名l'un d'un gradeは少なくともコンセイユデタの総会によって選ばれた、判事の階級と同等である。

〇破毀院の2名の構成員または元構成員。このうち1名l'un d'un gradeは少なくとも破毀院の総会によって選ばれた、判事の階級と同等である。

〇会計検査院の二人の構成員または元構成員。このうち1名l'un d'un gradeは少なくとも会計検査院の総会によって選出された、評議員の階級と同等である。

〇情報管理の実践applicationsを明確に認識していると資格を与えられた2名。そのものは国民議会議長と元老院議長のそれぞれの提案にかかるデクレによって指名nommeesされる。

〇閣議のデクレによって、その権威と権能に比例して指名designeesされた3名の有識者委員会は、5年につき、1名の議長および2名の副議長を互選する。
委員会は内部規定を明らかにする。
票が割れた場合、議長の票が優越する。
委任期間に、議長または委員会の一人の構成員が自分の任務の履行を中止する場合、その後継者に委任された任務は、残余の期間に制限される。
委員会の構成員の資格は、次のものと両立することができない、すなわち、政府のメンバーの資格情報処理もしくはテレコミュニケーションで使用される材料の製造、または、情報処理もしくはテレコミュニケーションのサービスの提供に協力する企業における職務遂行、または、出資分担の保有。
委員会がメンバーに言い立てることができる両立不可かどうかについてを、委員会は、各々の場合において評価する。
辞職の場合以外は、、委員会が定める要件において委員会によって認められた不都合がある場合のみ、メンバーの任務を終了させることができる。

第12条 同委員会の構成員およびその代理人les agentsは、《刑法典413条―10に》規定された要件において(1992年12月16日の法律no92-1336、256条)、その職務に応じて知りえた事実、行動actesまたは情報renseinementsにつき、職業上の秘密secret professionnel(以下守秘義務)を負う。ただし、刑法典《226条―13および226条―14で》以下に規定された(1992年12月16日の法律no92-1336)年次報告作成の必要については留保される。

第3章 自動的処理を実行するについての予めの定式

第14条 CNILは、記名情報の公的なまたは私的な自動的処理が現行法の諸規定に合致して実行されることに注意を払う。

第15条 法律によって処理が自動的になされなければならない場合を除いて、国、公私立もしくは領土の団体、または公役務を管理する私法人のために実行される記名情報の自動的処理は、CNILが意見を開陳した後にとられる規則に則った行為un acte reglementaireによって決定される。
同委員会の意見が好意的でないならば、コンセイユデタの一致した意見に基づきとられたデクレによる、または、領土の団体に関する以外は、コンセイユデタの一致した意見に基づき置かれたデクレによって承認された、行政の審議機関の決定の名において、その意見は無視されることはできない、
委員長の決定に基づいて1回のみ更新可能な2ヶ月の期間に、委員会の意見が通知されない場合、その意見は好意的であると評価される。

第16条 第15条の規定に従う者以外の者のために実行される記名情報の自動的処理は、その実行に先立ち、CNILへの申告の対象とならなければならない。
この申告は、同処理が法の要求するところを充足するという取り決めを含む。
CNILによって遅滞なく引き渡された受取証を受領した後は、申告をした請求者は同処理を実行できる。処理の実行者はいかなる責任も免責されることはない。

第17条 プライバシーla vie privee または自由を侵害しないことが明白である、公的性質または私的性質の処理のうち最も一般的なカテゴリーに入る処理については、CNILは、第19条に掲げられた(処理の)特質に示唆を得て、簡略化された基準を明らかにし、かつ、公表しなければならない。
基準に適合する処理については、基準のひとつに合致する問いいう簡略化された申告のみがCNILに提出される。CNILの個別の決定を除いて、申告の受取証が遅滞なく引き渡される。受取証の受領後は、申告の請求者は処理を実行することができる。処理の実行者はいかなる責任も免責されることはない。

第18条 記名のままの処理を実行するために自然人の特定を国が収集したものの利用は、CNILの意見の後にとられたコンセイユデタのデクレによって承認される。

第19条 意見の請求又は申告は次のことを明確にしていなければならない。すなわち、

● 請求する人、および、処理の創設の権限を有する人またはその人が外国に居住している場合はフランスにおけるその人の代理人、

● 特質、合目的性、および、場合によっては、処理の名称、

● 処理を実行することに責任を負う役務機関、または、複数の役務機関、

● 第5章以下に規定されたアクセス権が行使される役務機関、および、同権利の行使を容易にするためにとられる方法、

● その職務を理由に、または、役務の必要のために、登録された情報にアクセスした人のカテゴリー、

● 処理される記名情報、情報源、保存の期間、および、情報の報告を受ける資格を与えられた名宛人または名宛人のカテゴリー、

● 情報と関連する関連性、相互連結、または、他の定式、同様に、第三者への譲渡、

● 処理ならびに情報の安全保障を確保するためにおかれる規定、および、法律によって保護された秘密の保証、

● 処理が、いかなる定式をとるにせよ、フランスの領土内と外国の間の記名情報の発送を予定される場合。処理が、フランス国外で以前に実行された作業からフランスの領土内で部分的に実行される作業の対象である場合も含む。

以下に列挙されるものに対するいかなる修正、または、いかなる処理の廃止も、CNILに報告されなければならない。
以下に列挙される一定のものは、国家の安全、防衛、および公共の安全保障に関連する記名情報の自動的処理に関する意見の請求を含めることができない。

第4章 記名情報の収集、情報および保持

第25条 データの収集に、詐欺的、不忠実または違法な手段によることは禁じられる。

第26条 いかなる自然人も、正当な理由で、自己に関する記名情報が処理の対象とすることに反対する権利を有する。
この権利は、第15条に定められた規則に則った行為において限定的に指定された処理には適用されない。

第27条 記名情報が収集されるその本人は次のことを知らされなければならない:

● 回答が義務的な性質か任意的性質か、

● 回答しないことに対する結果、

● 情報の名宛人たる自然人または法人

● アクセス権および訂正権の存在。

アンケートという方法によってこのような情報が収集される場合、アンケートはその時効prescriptionsが記載されていなければならない。
これらの規定は違反の証明に必要な情報の収集には適用されない。

第5章 アクセス権の行使

第34条 身元につき正当性が付与されるいかなる個人も、当該処理が自分に関係する記名情報に及ぶかどうかを知るために、場合によっては、自分に関係する記名情報の報告を受けるために、処理されたリストが前22条を適用して公にアクセスできるような、そのような自動的処理を行うことにつき責任を負う役務機関または組織に質問をする権利を有する。

第35条 アクセス権を有する人le titulaire du droit d'accesは、自分に関係する情報の報告を得ることができる。
金額が委員会(CNIL)の決定によって定められ、経済財政省のアレテによって認可される処理のカテゴリーによって変わりうる、査定課税による使用料徴収に反対してアクセスの要求をするアクセス権を有する人には、コピーが渡される。
しかしながら、ファイルにつき責任を負う者によって(アクセス権を有する者と)相対して付託された委員会は、その者に次のことを同意するaccorderことができる。すなわち、

● 応答の期間、

● 数、反復的または融通のきかない性質による明らかに濫用的な一定の要求を考慮しないことの許可。

本条第1項に述べられた情報の隠蔽または紛失を心配する理由がある場合、および、裁判所に提訴する前にも同様、管轄の裁判官に、このような隠蔽または紛失を避けることができるあらゆる手段が命じられることが請求されることができる。

第36条 情報が不正確、不完全、不明確、時代遅れ(有効期限切れ)である、または、その収集もしくは使用、報告もしくは保存が禁じられている、そのアクセス権を有する人は自分に関する情報が訂正される、完全にされる、明確にされる、アップトゥデートまたは有効にされることを要求することができる。
事実上の利害当事者がこれを請求する場合、関係役務機関または組織は修正された登録のコピーを無料で引き渡さなければならない。
争いがある場合に、証明責任は、争われる情報が関係する本人によって報告されたまたはその同意を得て報告されたことが明らかにされる場合を除いて、アクセス権が行使されるところの役務機関に課される。
アクセス権を有する人が情報の修正を獲得する場合、35条を適用して支払われた使用料は返金される。

第37条 記名ファイルは、職責を負う組織が、そのファイルに記載されている記名情報につき、間違いを知ったり、不完全な性質であると知る場合は、職責によってでさえ、完全にされる、または、訂正されなければならない。

第38条 情報が第三者に伝えられた場合、委員会に認められた免除を除いて、その訂正または無効は当該第三者の通知されなければならない。

第39条 国家の安全、防衛、および、公的安全保障に関係する処理に関するものにおいて、(アクセスの)請求は、委員会宛に向けられる。委員会は、有益なあらゆる調査をして必要な修正に行わせるために、コンセイユデタ、破毀院、または、会計検査院に属するまたは属していた構成員の一人を指名する。指名された構成員は、委員会の一人の代理人にアシストしてもらうことができる。

第40条 アクセス権の行使が医学的性質の情報に適用される場合、当該情報は、利害当事者がその目的で指名する一人の医師の仲介によってのみ、当該利害当事者に報告されることができる。

第5章の2 保健衛生領域における研究を目的とする記名データの自動的処理

(1994年7月1日の法律no94-548、第1条から)

第40条―1 保健衛生領域における研究を目的とする記名データの自動的処理は本法の諸規定に従う。ただし第15条、第16条、第17条、第26条、第27条は例外とする。
患者の個人の治療上または医療上の検査を目的とするデータの処理は、本章の規定に従わない。研究が検査を確保する要員によって行われ、その排他的使用のためであるとされる場合、このように収集されたデータから研究を実行することを可能にする処理も同様、本章の規定に従わない。

第40条―2 データ処理実行の請求があるたびに、衛生領域における研究に関する情報処理にかかる諮問委員会が、CNILの係属に先立って、当該研究の責任を負う大臣のところに創設され、保健衛生領域における研究、疫学、遺伝学そして生物統計biostatistiqueに関して権限を有する人々が構成員となって、本法の諸規定の点から当該研究の方法論、記名データに頼ることの必要性そして研究目的に比べて記名データの適切さについての意見を表明する。
諮問委員会は請求者に意見を伝えるために1ヶ月を有する。意見が伝えられなければ、諮問委員会の意見は好意的であると評価される。緊急の場合には、その期間は2週間とすることができる。
諮問委員会の議長は簡略化した手順を実行することができる。
さらに、データ処理の実行はCNILの承認に委ねられる。CNILは、データ処理の実行の承認を請求する者によってCNILの手に委ねられてから、決断を下すための2ヶ月の期間を有し、この期間は1回だけ更新されることができる。この期間内に決定がなければ、データ処理は承認される。

第40条―3 職業上の秘密に関する規定にもかかわらず、保健衛生を専門の職業とする構成員は、40条―1を適用して承認されたデータの処理の範囲内で自分が保持している記名データを伝えることができる。
これらデータが人の身元の特定を可能にする場合、これらのデータは伝達される前にコード化されなければならない。しかしながら、データ処理が副作用観察報告の研究または国家のもしくは国家間の共同研究の一環として行われる研究のプロトコールに関連する場合は、コード化の義務に違背することができる。同様に、研究の特徴からそうすることが必要であれば、コード化されずともよい。[承認の請求は、コード化の義務に違背することの科学的および技術的正当化と当該研究に必要な期間の提示を含む。この期間の後に、データは28条に定められた要件において保存され処理される。(2000年4月12日の法律no2000-321によって改正、5条4号)]
データ処理の結果の提示は、いかなる場合においても、関係当事者の直接的または間接的な特定を可能にしてはならない。
データは、処理の実行を承認された自然人または法人によって、そのために指名された当該研究の責任を負う者によって受け入れされる。当該責任者は、情報とデータ処理の安全保障につき、および、データ処理の合目的性につき注意を払う。
データ処理を実行するように要請された人々、および、処理されるデータにアクセスした人々は、刑法典226条―13に規定された刑罰によって職業上の守秘を義務付けられる。

第40条―4 いかなる人も、自分に関する記名のデータが第40条―1を対象とする処理の目的とすることに反対する権利を有する。
研究が特定している生物学的採取見本の収集を必要とする場合において、関係当事者の啓発され、説明を受けた同意が、データ処理の使用に先立って得られなければならない。
死亡原因の証明書上に記載されている人々も含めて、死亡した人に関する情報は、当該当事者が生存しているときに、書面で拒絶を表明している場合を除いて、データ処理の目的とすることができる。

第40条―5 その人々に対して記名データが収集されたり、または、その人々に関するこの様なデータが伝えられる場合に、その人々は、当該データの処理が始まる前に、個別に次のことについて、説明される。すなわち、

1.伝えられる情報の性質

2.データ処理の合目的性

3.データの受取人である自然人または法人

4.第5章に規定されたアクセス権および訂正権

5.第40条―4第1項および第3項に規定された反対する権利、または、同条第2項に規定された場合における、同意を求める義務

しかしながら、主治医が良心に恥じることなく適法な理由であると評価するために、病人がその診断または重大な予後を知らない状態で置かれる場合、これらの情報は当該病人に伝えられることはできない。
データが当初データ処理以外の目的のために収集された場合において、個別に説明義務を履行しようとしても関係当事者を再び探し出すことが困難である場合、そのデータ処理は個別の説明義務に違反する。研究目的でその人に関するデータの活用をされる人に説明する義務の違反は、この点について規定するCNILに渡された承認の請求書類の中で言及される。

第40条―6 未成年者について、親権を有する者les titulaires de l'autorite parentale、または、法的保護措置を受ける対象となる人について、後見人は、説明の名宛人であり、かつ、第40条―4および第40条―5に規定された権利を行使する。

第40条―7 本章の規定に関する説明は、第40条―1に照準を合わせた治療のために記名データが伝達されるその元となる予防、診断そして治療という活動が行われる施設またはセンターはいずれにおいても確保されなければならない。

第40条―8 本章に規定された要件に違反しているデータの自動的処理を利用することは、CNILによって、第40条―2の規定を適用して行われる承認につき、一時的または決定的な資格剥奪le retraitを生じさせる。
第21条2号に規定された管理に従うことを拒絶する場合も同様である。

第40条―9 保健衛生領域における研究を目的とする自動化されたデータ処理の対象となる、コード化されていない記名データをフランス領以外に伝達することは、第40条―2に規定された要件において、名宛人である国家の法律がフランス法と同質の保護を規定している場合に限り、認められる。

第40条―10 コンセイユデタのデクレは、本章の適用を受ける方式を規定する。

第5章の3

治療および予防の活動の評価または分析を目的とする保健衛生の個人データの処理(包括的に病気を把握することを創設することに関するportant creation d'une couverture maladie universelle1999年7月27日の法律no99-641,第41条)

第40条―11 治療および予防の実践の評価を目的とする保健衛生の個人データの処理は、本章に規定された要件において承認される。「本章の規定は、健康保険の基金の制度の管理を引き受ける組織によって支払いまたは管理のために行使される個人データの処理に適用されることはない。また、公衆衛生法典L第710条―6第2項に規定されている要件において医療上の説明に責任を負う医師らによる保険衛生施設の中で行使されるデータの処理にも適用されない。」

第40条―12 公衆衛生法典第L710条―6に照準を合わせた情報のシステムに由来するデータ、すなわち、保健衛生を専門的職業とする者の自由な行使の範囲内で保持される医療書類に由来するデータ、同様に、健康保険の窓口の情報システムに由来するデータは、凝集した統計という形でのみ、または、関係当事者が特定されることができないように設定された患者ごとのデータという形でのみ、治療および予防の活動と実践の評価または分析の統計上の目的に伝えられることができる。「第40条―13から第40条―15までに規定された要件におけるCNILの承認に基づいてのみ、前項の規定に違背することができる。その場合において、使用されたデータはデータの本人の姓名が付されていないし、自然人を特定する国家の登録簿の登録番号を付されることもない。」

第40条―13 個人データ使用の請求があるたびに、同委員会は現行規定を適用するために請求者によって提示された個人データを保障するものを調べ、そして、場合によっては、その社会的使命または目的にその請求が合致しているかどうかを調べる。同委員会は、個人データに頼ることの必要性および治療と予防の実施または活動の評価または分析について明言された合目的性の見地からの処理の妥当性を確保する。同委員会は、その処理が検討される個人データが関係当事者の姓名も自然人を特定する国家の登録簿の登録番号も付されていないことを調べる。そのうえ、請求者がその処理が検討される個人データ全体の中での一定の情報を所有する必要性を証明するための十分な要素を示さない場合、同委員会は、情報を保持し、かくして限られたデータのみ処理を承認する組織によってこれらの情報を伝えることを禁じることができる。「同委員会は、処理に必要なデータの保存の期間を決定し法律によって保護された秘密の安全保障を確保する。」

第40条―14 同委員会は、請求者による係属(承認の可否を審理すること)から、承認の可否の判断を下すために2ヶ月の期間を有する。これは1回のみ更新できる。この期間内に承認の決定がなければ、この沈黙は承認の拒絶の決定に相当する。承認の請求を同委員会が証拠調べを行う様式は、コンセイユデタのデクレにより定められる。「同一のデータのカテゴリーにかかわる同じ合目的性に見合う、そして、名宛人または同一の名宛人のカテゴリーを有している処理は同委員会の唯一の決定の対象とすることができる。」

第40条―15 第40条―13および第40条―14に合致して承認された処理は、研究または個人の特定のために役立てることはできない。これらの処理を利用することになる人々は、処理が間接的に記名のままである場合に処理の結果にアクセスしたり、または、処理の対象とするデータにアクセスしたりする人々と同様、刑法典226条―13に規定された刑罰のもと、職業上の守秘義務を負う。「処理の結果は、データが求められた個人の状態から個人の特定が不可能である場合にのみ、伝達、公表、伝播の対象とすることができる。」

国家登録委員会に関する1995年11月6日のアレテ

第1条 CNRは、研究および保健衛生を担当する省庁において構成される。

第2条 本アレテにおいては、登録は、研究および公衆衛生の目的で、適合する権能を有しているチームによって、特定地域の住民における保健衛生に関する1つあるいは複数の事柄に関する記名データにつき、排他的かつ継続的に収集すること定義される。

第3条 CNRは次のことを使命とする。すなわち、

―公衆衛生、および、明確な疫学的研究、とりわけ公衆衛生の上級Haut委員会および科学的技術的性質の研究の公施設の権限を有する決定機関によって明確にされた疫学的研究、について必要であるということに依拠してs'appuiyant、登録の政策を提言すること、

―本アレテの意味で資格付与された登録によって提示される情報の普及と活用の年間計画を作成し、これに参加すること、

―新しい登録の創設の機会に意見を与えること、

―本アレテの根拠である法律no94-548に定められた手続きのために、あらかじめ定められた政策に関して、および、検討されるまたは適用される手段と開陳される合目的性とが適合していることに関して、既存登録延長の機会に意見を与えること。本意見は、とりわけ保健衛生および医学研究の国家研究所の科学委員会および保健衛生総合局la Direction generale de la santeによってあらかじめ出された意見に依拠しなければならない。

第4条 本アレテの意味で資格付与された登録とは、法律no94-548に定められた手続きを適用して、国家登録委員会の資格を与えることに賛成する意見、保健衛生の領域における研究についての情報処理に関する諮問委員会の資格を与えることに賛成する意見、および、情報管理と自由の国家委員会の承認によって正当付けられた登録である。
本資格の有効期間はすでに作動している登録につき4年間、創設途中の登録につき3年間であり、本資格付与は、国家登録委員会の事務局によって証明さえる。本資格付与は、4年ごとに更新されることができる。

第5条 資格付与された登録のみが、国家の公的財政援助を獲得することができる。
登録は文書の公表の場合、および、第三者機関との関係においては、本資格付与を考慮しなければならない。

第6条 委員会は、14名の法律委員と研究および保健衛生に責任を負う省庁によって指名された11名の資格を付与された有識者からなる。
法律委員は次のとおり、

―当該研究につき責任を負う省庁で当該研究および技術を統括する長またはその代理人

―健康につき責任を負う省庁での健康を統括する長またはその代理人

―健康につき責任を負う省庁での病因の長またはその代理人

―健康および医学研究の国家機関を統括する長またはその代理人

―健康につき責任を負う省庁での統計、研究、および情報システムの役務の主任またはその代理人

―公衆衛生の国家網の長またはその代理人

―医学評価発展のための国家機関の長Directeur de l'Agence nationaleまたはその代理人

―医師会国家評議会の議長またはその代理人

―CNILの議長およびその代理人

―健康領域における研究に関する情報処理についての諮問委員会の議長またはその代理人

―給与労働者の健康保険の国家基金の最高業務執行機関の議長またはその代理人

―農業共済組合の最高業務執行機関の議長またはその代理人

―非農業を職業とする非給与労働者の健康保険および妊産婦保健の国家基金の最高業務執行機関の議長またはその代理人

―公衆衛生の問題につき権限と利益を有することを理由に連盟の議長によって指名された、県会議長連盟のメンバー。

資格付与された有識者は次のとおり、

―7名の疫学および保健衛生の専門家で少なくとも登録について責任を負う者

―4名の登録によってカバーされる領域における専門家で少なくとも登録について責任を負う者。

★★★添付

カナダの大学からの質問に対するグロスクロード博士(フランスガン登録網)の回答

1 ガン診断報告義務
 フランスでは、ガンは報告義務の対象とされていない。医師は、患者名を記した医療情報を受ける許可を我々が得ているという条件で、ガン症例を知らせることができる。実際には、医師がこれらの情報を得るために、登録調査員が医局や公病院および私設診療所の担当部所を定期的に訪れ、そこでガン登録に関係のある情報を回収するべく患者の医療書類les dossiers des maladesを利用する。

2 ガン登録に考慮されるデータの種類
 患者全体についてルーチン的に集められた情報は、(すべての腫瘍を調査する)総合的登録用にかなり簡略である。

3 患者個人に関する情報
 氏名、(既婚女性については)夫の姓、誕生年月日、性別、住所(市町村)、出生地(市町村)(網羅的ではない)

4 ガンに関する情報
 患部(code CIM-O)、ガンの形態(code CIM-O)および進行などの状態(code CIM-O)morphologie et comportement tumoral、診断日、診断の根拠、診断TNMとpTNM(網羅的でない)でのステージ、左右差

5 経過に関する情報(一定の登録に関しては網羅的でない)
 最新情報の年月日、最新情報による患者の状態(生存または死亡)
 また、ガンの種類別に個別化された登録も存在する。それらの登録では、社会保険で保険金支払いの負担引受けおよび個別の経過に関する更なる情報を集めている。

6 情報のソース

(1) 医療書類の臨床の情報と病院の医療情報部門

我々には情報を探し求める調査員がいる。病院の医療情報部門は患者の入院生活を調査する部所である。この部所の目的は、第一義的には行政であるが、ここでは診断された患者のリストを所有している。可能であれば、がん患者に関連する医療書類を探し求めようとして、これらのリストを利用する。我々にとって、このリストへのアクセスできるかどうかは、この部所の長の行為しだいである。

(2) 死亡証明書

フランスでは、死亡証明書の医療当事者は匿名である。我々は法律上その者にアクセスできない。

(3) 行政のソース:健康保険基金

法律上、いかなる情報も健康保険基金からは直接には我々に伝えられることはない。我々は、患者の社会保障番号を書き留める権利もない(この番号は、間違いをおかす危険なしにあらゆる個人の識別を可能にする、ほぼ唯一の番号であると言える。)

(4) 非医療情報のソース

法的理由のために常に、戸籍のようなファイルまたは(特定地域の)住民調査に起因する情報ファイルと自動的につながりを持つことはまったくない。個人の名前および誕生年月日と場所を識別する戸籍etat civilについては、当該個人が死亡しているかどうかを知ることができる。

7 登録の中に含まれたデータ管理の方法

 すぐれた管理の観点から、我々はl'IARCの勧告を利用する。
 我々の活動の合法性という観点から、監督組織によるシステマチックな管理を受けない。がん登録およびその中で働く者による諸規定の尊重については、当該登録の長の責任下にある。

8 機密性に関する主導的方向

 関連法条参照。

9 登録の管理(運営、資金調達、人事)に関する主導的方向

 国家l'etatによる資金調達はもはやほとんど内実を伴っていない(事例調査に必要な予算の20から25%)。残りの資金調達は地方のソース(各地方の行政機関)や、私的基金または付属の研究計画のための予算からのものである。

10 ガン登録間のデータの交換の取り決め

 患者名を記したいかなるデータも情報処理・自由国家委員会CNILの特別な許可無くして譲り渡されることはできない。
 フランスのすべてのガン登録間に共通の基本データが存在する。この基本データは匿名である。
 フランスの登録は共同の研究作業のたまものである。

11 民事責任または刑事責任

 −機密性を尊重しない場合(関連法条参照)
 −患者への説明がない場合(関連法条参照)
 −身体的特徴を書かない場合:責任どころか、そのような義務はない

12 関連法条

 情報、ファイルおよび自由に関する1978年1月6日の法律no78-17

1994年7月1日の法律no94-548
 登録国家委員会報告におけるガン登録に関する部分(登録発効手続きを含む)



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