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ドイツの癌登録事業について

長崎県立大学経済学部 山下登

1.はじめに

 ドイツの癌登録事業はかなりの歴史を有する。すでに1980年代において、癌登録事業について規律する州法が、いくつかの先駆的な州において制定されていた。しかし、連邦レベルにおける癌登録法の制定は1990年半ばまで待たねばならなかった。すなわち、1995年1月1日から施行された連邦癌登録法がそれである。同法は各州に対して、1999年1月1日までに、同法が規定する目的を達成するために、各州の全領域をカバーする癌登録機関を設置することを義務づけるとともに、各州に対して、届出の要件および手続、さらには、データの収集および処理の方法について、連邦法とは異なる規定を設ける余地を、かなり広範に認めていた(連邦法1条4項および13条5項)。この結果、連邦法と各州法、また、各州法相互の間には、いくつかの点で、規律内容に相違が生じるに至っている。連邦癌登録法は、その規定する条文(全14条)のうちの半分以上について、州法による変更の余地を認めている。このため、各法律相互間に見受けられる相違は、些細な点まで含めれば、かなりの点に及んでいる。しかし、癌登録法の規制内容、さらには、同法全体を貫く基本的ポリシーに照らして、最も重要な点は、患者のプライバシーおよび情報についての自己決定権の尊重と、医学、就中、疫学研究の促進のために、必要かつ十分なデータの収集および利用という互いに矛盾をはらんだ2つの要請の間で、如何にして適切なバランスを確保するか、ということにある。そこで、以下では、各法律相互間に見受けられる相違点のうち、この観点から重要と思われる、届出の方式、および、研究目的でのデータの利用が認められるための要件、さらには、届出られたデータに対する患者の情報請求権の3点についてのみ、概観することにしたい1)

2.届出の方式について

(1)基本的態度

 癌登録機関への届出の方式については、各法の態度は、3つに大別される。第1は、患者を診療した医師・歯科医師等に対して、癌登録機関に、患者に関するデータを届け出る権限を与えるに止め、届け出るか否かは、医師等の裁量に委ねるものである(以下では、これを「届出権方式」と呼ぶ)。連邦法は、この立場を採用しており、これに追随する州法もいくつか存在する。第2は、連邦法とは異なり、医師または歯科医師等に、診療した患者に関するデータの届出を義務づけるものである。(以下ではこれを、「届出義務方式」と呼ぶ)。シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、ラインラント・プファルツ州、ヘッセン州、旧東ドイツを構成していた6州は、この立場を採用している。第3は、第1の立場のバリエーションともみることができるが、届け出る際に、当該患者が既に、癌に罹患していることについて医師から説明を受けているかぎりで、届出についての患者の事前の同意を取り付けることを医師等に要求するものである(以下では、これを「同意方式」と呼ぶ)。ハンブルク州、ノルトライン・ヴェストファーレン州法は、この立場を採用している。
 全体的な傾向としては、次第に「同意方式」から「届出権方式」へ、さらに、「届出権方式」から「届出義務方式」へと移行しつつあるようである。とりわけ、連邦法制定後、いくつかの州法が、それまでの「届出権方式」から「届出義務方式」へと立場を変更したことは注目に値する2)
 各届出方式に対しては、以下のような批判が寄せられている3)
 まず、患者の情報についての自己決定権を最も重視する「同意方式」に対しては、同意を届出の要件とすることは、届出率の低下を招き、疫学研究に必要な全住民のデータを収集するという目的の達成を困難にする、と批判されている。加えて、患者と直接接触する機会のない病理医については、患者から同意を得ることができないために、届出への協力を得ることが困難になる、との批判もなされている。そして、以下の2点が、連邦法および連邦法施行後に制定された州法が「同意方式」を採用しなかった理由である、との指摘がなされている。
 ついで、「届出権方式」については、「同意方式」を支持する立場から、届出について、事前の患者への説明なしに届出を行う途を開き、かつ、患者の届出に対する異議申立て権を奪うことになる、との批判が寄せられている。他方、「届出義務方式」の立場からは、「届出権方式」では、疫学研究の実効性を確保するために必要な、高率でのデータの収集は困難である、と批判されている。
 最後に「届出義務方式」」に対しては、この方式を採用した州法がいずれもかなり最近において――すべて1990年代後半以降において――制定されたものであるためか、他の立場からの明確な批判を見出すことができなかったが、おそらく、「同意方式」の立場からは、「届出権方式」に対すると同様の批判が寄せられることが予想される。

(2)届出に対する患者の異議申立て

 これまでに収集し得たかぎりでは、すべての癌登録法が、医師もしくは歯科医師等に対して、届出が予定されていること、あるいは既に届出が行われたことについて、患者に説明ないしは通知をすることを義務づけており、さらに、説明ないし通知を受けた患者に、届出に対する異議申立権(拒絶権)を認めている。
 そこで、届出に対して、患者が異議を申立てた場合に、医師・歯科医師等は、如何なる処置を採るべきかが明らかにされる必要があるが、この点についての各法律の態度は、2つに分かれている。一つは、届出を中止し、もしくは既に届出たデータの抹消を、癌登録機関に対して求めるというものであり、他の一つは、氏名、住所、性別のような患者を識別するためにデータについては、匿名での届出への変更を義務付ける、というものである。
 連邦法はじめ、多くの州法が、前者の立場を採用しているのに対し、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州、および、ヘッセン州法は、後者の立場を採用している。

2.届出られたデータを研究目的で利用するための要件

 癌登録機関に届出られ、蓄積されたデータを、研究目的で利用しようとする場合、研究のためのデータの利用を申請する研究機関は、研究目的でのデータの利用について、患者の同意を取り付けておかなければならない。この点について、各法律の立場は一致している。ただし、同意の取得時期および同意の対象については、連邦法およびほとんどの州法が、届出自体についての患者への通知もしくは患者の同意とは別に、個々の研究課題ごとに、書面により患者の同意を取り付けることを要求しているのに対し、シュレルヴィヒ・ホルシュタイン州法は、届出の際に、将来個人識別データが第三者によって研究目的のために利用される可能性があることについて、事前に包括的な同意を取り付けることで足り、個々の研究課題が申請される度ごとに、患者の同意を取り付けることは必要でない、と規定している(シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州法4条4項)。
 さらに、いくつかの州では、患者の書面による同意の他に、研究目的でデータを利用しうるための要件として、倫理委員会の意見の聴取(ラインラント・プファルツ州法9条2項、ヘッセン州法7条1項、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州法9条1項)、州データ保護担当者の意見の聴取(ラインラント・プファルツ州法9条1項)、州保険省の同意およびそれに先立つ学術審議会での意見聴取(ヘッセン州法7条1項)が要求されている。

3.登録内容についての患者の情報請求権

 患者は、癌登録機関に自己に関するデータが蓄積されているか否かを知ることができるであろうか。言い換えれば、癌登録機関の所有する情報について、アクセス権を有するであろうか。この点に関して連邦法および各州法の規定内容は、完全に一致している。すなわち、第1に、癌登録機関は、患者の請求に基づき、患者の指名した医師に対して、当該患者に関する記録が、登録機関に蓄積されているか否か、および如何なる記録が蓄積されているかを、通知しなければならないとされている。第2に、通知は患者本人に対して、直接行われてはならず、患者の指名を受けた医師が、癌登録機関からの通知内容について患者に口頭で知らせるか、あるいは通知書を閲覧させるかのいずれかの方法で行われなければならない、とされている。

4.おわりに

 ドイツの連邦および各州レベルにおける癌登録法の規定を概観したとき、そこに、今後、わが国において、癌登録法を規定する場合に、留意すべき、問題点のほとんどが、盛り込まれていることに気付く。
 今回収集し得たものは、ドイツの全ての州をカバーしておらず、それ故、この小稿における概観も、ドイツの現在の法状況を完全に正確に明らかにしたものとは言いがたい。しかし、この程度の検討であっても、ドイツにおける癌登録に対する法的規制のおおよその傾向はつかめたのではないか、と思われる。
 今後わが国において、癌登録法の制定が日程に上った場合に検討すべき点として、既にこれまでに触れたことの繰り返しになるが、数点につき指摘しておく。第1は、患者に関するデータの届出のあり方についてである。ここでは、患者の情報への自己決定権と疫学研究の実効性の確保という両立しがたい2つの要請の折り合いをどのようにしてつけるべきかが慎重に検討されねばならない。ドイツでは、従来主流であった、同意方式および届出権方式から、届出義務方式に移行したいくつかの州において、データの収集率の向上がみられるようであるが、これを届出方式の変更に直結しうるのか否かについては、さらに詳細な分析が必要と思われるうえ、仮にこれが届出方式の変更によるものであることが証明できたとしても、直ちに、わが国においても届出義務方式を採用すべきである、との結論を導き出すべきかについては、なお検討を要するように思われる、というのは、癌登録において収集されるデータは、癌罹患に関するものに限られるとはいえ、かなり広範な点に及び、それらを総合すると、患者の人格像をかなり正確に描き出すことができるように思われる。そうだとすると、医療行為の実施に際して要請されるインフォームド・コンセントの場面にも増して、患者の情報の利用について認識し、かつ、同意していることが必要となるのではないか、と思われるからである。第2は、届出に対して、患者に異議申立て権を認めるべきか否か、さらには、異議申立て権を認めた場合の対処のあり方についてである。これについても、第1の問題点について指摘したことが妥当するように思われる。第3に、研究目的で第三者が届出られたデータを利用しようとする場合について、データの利用を認めるための要件をどのように設定すべきかが、問題となろう。ここでは、とくに、登録機関へのデータの届出の際に、将来起こりうる研究目的でのデータ利用について包括的な同意を取り付けることで足りるとするか、それとも、届出の際の同意もしくは、通知とは別に、個々の研究課題の申請の度ごとに関連する患者の同意を取り付けることを要求すべきかについて、検討すべきであろう。この点に関しては、データの蓄積期間の長短にもよるが、かなりの長期にわたる蓄積が予定される場合には、その間における医学研究の進展により、当初の届出の際には全く予想し得なかった研究計画のためにデータが利用されることが起こりうる。それ故、個々の研究課題ごとに患者の同意を取り付けることを原則とすべきではなかろうか。最後に第4に、これまで触れなかった点であるが、単なる技術論として軽視すべきでないと思われることとして、患者データ、とくに個人を識別しうるデータの取り扱いをどのようにすべきか、という問題がある。ドイツの連邦法および州法は、いずれも、個人識別データについては、暗号化を要求しており、しかも暗号化の際には、容易に復元できないようにするために、非対称性の確保を命じている4)
 他方、ドイツの各法律は、例外的に個人識別データによる個人の同定が公共の利益を有する研究目的の達成のために不可欠であるときにかぎり、個人識別データの復元を認めている。我が国においても、個人識別データの利用については、暗号化を考えるべきであると思われるが、その際の暗号化の方法および、例外的に復元が許される場合として、どのような場合を想定すべきかについても、検討する必要があろう。



1)本稿で検討する各法律相互の相違点を、表の形で示すと、下記のとおりである。

連邦および州の癌登録法における規制内容の相違点
  届出への対応 異議申立への対応 届け出られたデータを研究目的で
利用するための要件
届出義務
方式
届出権
方式
同意
方式
届出の中止
・抹消請求
匿名での
届出に変更
患者等への通知
・同意の取付
患者以外の者
による認可手続
連邦癌登録法  
III(1)
 
III(2)
 
VIII(2)
 
バイエルン州癌登録法  
V(1)
 
V(2)
 
X@(2)
 
シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州癌登録法
IV(1)
     
IV(5)
×  
ラインラント・プファルツ州癌登録法
IV(1)
   
IV(2)
 
IX(1)
○(IX(2):州倫理委員会の許可)
※※ヘッセン州癌登録法
II(1)
     
II(2)
○(VII(1)(2):州医師会倫理委員会の同意、学術審議会の意見聴取、州保険省の同意)
※ハンブルク州癌登録法    
II(1)

XA(5)
     
その他の州法
(新連邦6州)
   

NWVI(1)
×
(新連邦6州)

NWVI(2)
  ※※※○
NW19(3)
 

〔凡例〕

 各法律に付された数字のうち、ローマ数字は条を、まるで囲んだ数字は項を示す(例;V(2)→5条2項)。

 ※ハンブルク法は、1985年9月1日に施行され、1999年12月31日まで有効であったものである。連邦癌登録法が1999年12月31日に失効するに伴い、それまでの各州法も、同日に失効することとなる(これ以降は、癌登録事業はもっぱら州の管轄となる)ため、各州はそれまでに新たな法を制定しなければならないこととされていたが、現時点までにすべての州が実際に新法を制定したか否かを確認することは出来なかった。

 ※※従来の州法は、1999年12月31日をもって失効したが、それに代わる新法を制定し得なかったため、1999年12月7日のヘッセン州癌登録法施行法変更法により、2000年1月1日から2001年12月31日までの期間に限って、連邦法の大部分が、ヘッセン州においては適用されることとなった。  ※※※ノルトライン・ヴェストファ−レン州保険制度における個人データ保護法

2)例えば、ラインラント・プファルツ州がそうである。

3)これについては、Vgl. A.Hollmann, Patientengeheimnis und medizinische Forschung Medizinrecht 1992,177ff.,182;
Ders.,Das Bundeskrebsregistergesetz NJW 1995,762ff,763. 4)暗号化に関わる問題点を検討したものとして、W.Thoben/H.-J.Appelrath,Verschluesselung personenbezogenener und Abgleich anonymisierter Daten durch Kontrollnummern,http://www.krebsregister-niedersachsen.de/Veroeffentlichungen/Paper/VIS95.HTMLがある。


連邦癌登録法の実施とその長期間の諸結果の評価

マインツ大学医学部 イェルク・ミヒャエリス

日本医科大学医学部 長島隆(訳)

1.一般的な状況の記述

 10年以上にわたる科学、政治そしてデータ保護の領域において議論があらかじめ広範に行われていたが、その議論は不毛であった。それゆえ、1994年に、連邦の癌登録法(Krebsregisterrgesetz/KRG)が議決されたことは、真の出発点を表した。1995年1月にKRGを施行された。癌登録および癌の疫学研究は、このKRGの施行によって本質的な衝撃と決定的な前進をこうむった。KRGの施行以来、連邦各州で立法活動が進められ、ならびに基礎作業が行われてきた。すでに今日確認することができるのは、KRGの期限は計画では1999年末までであったが、これらの動きがその期限をこえて、長期にわたって癌との戦いに成功裡に役に立つことである。というのも、KRGの施行は癌研究にとって改善された条件の枠組みを作り出したからである。
 KRGの実施は連邦各州で取り組まれたがその強さは異なっていた。強調されなければならないのは、5つの新しい[統一によって組み込まれた]連邦諸州とベルリン(1995年以来)、そしてシュレスヴィヒ・ホルシュタイン州およびラインラント・プファルツ州(1997年以来)においては、急激な日常の登録への移行によってKRGの諸要求が実施されたことである。他の諸州では、いくぶん押さえ気味に始まった。たとえば、バーデン・ヴュルテンベルク州においては概観できる試験領域(KRGの準備を通じてそれとともに1994年にすでに始まっていた)で始まった。バイエルン州では、既存の腫瘍センターの付置施設、登録機構にたちもどることで始まった。ブレーメンでは1998年に始まった。ニーダーザクセン州ではすでに1993年に――ラインラント・プファルツ州における試験的な展開(Pilotentwicklung)に類似して――癌登録にたいする技術的要求の実現が検証された。その一方で、本来の資料調査(Datenerhebung)はこの州のある県(Regierungsbezirk)で非常に遅れてやっと最初の改造段階で始められた。州法の議決はニーダーザクセン州ではもちろんまだ終わっていない。ヘッセン州の州法は、1998年に公布された。この州法はKRGの実施には不十分な付け足ししか含んでいない。ザールラント州、ハンブルクそしてノルトライン・ヴェストファーレン州では(この州ではミュンスター県に制限される)、癌登録は、KRGの施行以前にすでに州法にもとづいて行われていた。
 しかしながら、すべてのドイツの癌登録のなかで、最近10年で――なかんづく旧東ドイツの癌登録の実施以来――ザールラント州の癌登録は、科学的言明に必要な90パーセントを超える達成率(Vollständigkeit)を実現していた。そのために、ドイツにおける癌登録を現実的に評価する場合には、しばしばもっぱらこの比較的小さい連邦州の土台にせざるを得ない。したがって連続性という理由から、この登録をさらに進めることは、とりわけ重要である。たとえ、目下の法的な基礎のもとでこの州では登録にもとづく疫学的研究を実行するために重要な諸規定が欠けているとしても、である。期待されるべきは、他州における若干の癌登録がかなり早くザールラント州と比較可能な達成率を実現することである。

2.連邦各州における癌登録の基礎の相違

 連邦各州におけるKRGの実施が異なった強さで行われたことについては冒頭ですでに記した。それとならんで、現在各州で登録が実現されたが、これらの登録の間にも独特の相違がある。この相違は、KRGを構想するさいには、意図されていなかったし予期されてもいなかった。むしろ、そもそも意図されていたのは、KRGにもとづいてできるかぎり統一的で、広域的な癌登録をドイツで達成することであった。この意味で、KRGは情報上の権力分立のモデル(「信託モデル(Treuhandmodell)」)を含んでいる。この権力分立モデルは、データ保護者が好むものである。この信託モデルの場合、癌登録の信託所(Vertrauensstelle)は、医師の申請を受け取り、[その申請データを]加工するとされる。この加工として挙げられるのは、診断をコード化(Verschlusseln)し、申請者である医師のもとにいくつかの点を照会して申請内容の蓋然性を検証すること、そして登録所(Regierungsstelle)において長期間保存するためにデータを暗号化することが属している。登録所は、暗号化された、またそれによって事実上匿名化されたデータを保存し、同一の患者についてのさまざまの申請を照合し統計上の利用を企図する。この申請と類似しているのが死亡証明(Todesbescheinigungen)の場合のデータの加工がある。このような加工がこの死亡証明と同様にKRGではあらかじめ組み込まれている。さらに、KRGは、情報[を守秘する]義務(Informations-verpflichtung)と結びついた申請権を医師にたいして選んでいる。KRGの施行以前からある既存の住民に相関する癌登録制度は、それぞれ[従来]確立された取り扱いにしたがって[そのまま]更に動き続けてよく、KRGが提起したモデルに切り替える必要はない。このモデルは実際のところこれまで詳細にはまだ検証されていないからである。KRGには、このような既存のシステムにもとづいて癌登録を行う可能性を与えるために、州に特有の申請モデルと申請様式の変更にたいする例外の規則があらかじめ組み込まれている。もちろんKRGにもとづいて新しい癌登録を築いた諸州もまた、例外規則を拡大利用した。
 ドイツにおいては、今日多数の癌登録制度が存在する。この多数性は、KRGを構想したさいに期待されたよりも大きく、調査データを制度的に逸脱させる危険を含んでいる。今日の状況から見れば、もちろん、さまざまの他の制度との間で、その成果を比較する機会もまた生じている。このために、個々の癌登録の透明で、比較可能な報告が必要とされている。そのための準備は、「ドイツにおける住民に相関した癌登録の共同研究グループ(Arbeitsgemeinschaft bevolkerungs-bezogener Krebsregister in Deutschland)」において成し遂げられた。この研究グループは、KRGの施行後短時日のうちにすでに結成された。グループ内部の緊迫した議論において、研究のレベルで個々のアプローチがもつ長所と短所は、すでに原理的によく解明されることができる。この原理的な解明の前提は、それぞれ「固有の」規則を批判的にすすんで背後にある根拠を問いながら個々のアプローチの強さと弱さを明白で客観化できるように叙述することである。この脈絡で、連邦各州の法的な規制がこれまでの経験にもとづいて取り扱い様式を変更する可能性をもまた開いておくことは、望ましいことであろう。たとえば、このような変更は、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の癌登録法において組み入れられているような費用のかからないなどの立法上の規準を要求する。
 目下のところ多数の登録制度があることが癌登録の欠点である。このことは確認することができる。この欠点は、登録において集められたデータの比較可能性を連邦レベルで保証するために、癌登録間の調整が必要だという要求が高まっていることに現れている。この調整は、多くの側面で、上述の共同研究グループによって成功裡に遂行されている。しかし、その調整はかならずしもすべての点でうまく行ったわけではない。すなわち、暗号化された、個人を同定する申請内容から、それぞれにコントロールナンバーを与える。このナンバーは、個々の登録[制度]間で行われた申請を比較できるように平準化することを可能にすると考えられる。まさしくこの場合、バーデン・ヴュルツベルク(そこで法はもちろんKRG以前にすでに議決された)、ヘッセンそしてシュレスヴィヒ・ホルシュタイン各州では、連邦モデルからの逸脱が次のところまで進んでいる。すなわち、ただコントロールナンバーの混入だけがなされている可能性があり、患者の平準化がこれらの諸州にとりわけ申請されない患者がいるために困難になり、またこれらの諸州の間では可能ではないというところまで進んでいる。
 各州が、なかんづく平地の州が(?Flachenstaaten)がKRGが許した広域的な癌登録の例外を選択することを決定した。これもまた残念なことである。不断に健康をモニターするという課題は、癌登録の本質的な問題設定の一つを表している。この課題は、こうして、癌登録に組み込まれなかった地域にも課されることができる。また多層的な諸問題も、申請者の動機づけと申請の実際のやりとりのさいに、一部しか登録に組み込まれていない諸地域から生じる。病院登録に関する申請のバイエルンモデルは、個々の点で正確には量化することができない調査の隙間を生じさせる。該当する諸州では、やはり登録によってカバーされた地域の完成が段階的に生じることが期待することができる。

3.癌登録法の核心的諸側面の考察

3.1 申請様式

 これまでの経験は、特にザクセン、シュレスヴィヒ・ホルスタイン州とラインラント−プファルツ州における経験は(さしあたって、そこではさらに申請法モデルが確立されている)、KRGにおいて選ばれた申請権の解消と対立して、申請義務の導入が癌登録の完全性にかんしてより大きな成功の可能性を含んでいることを示唆する。これはわれわれの評価によれば、まず第1に、あいかわらず――実践的にどの場合にも義務として定められた――患者の情報を取り扱うさいに医師たちが安全を欠くことに帰することができる。申請義務モデルについての経験によれば、医師たちは、申請義務に依拠できるとき、情報[を申請する]義務に容易に応じることができる。申請権だけが実行された場合には、これまでの考察によれば、不快だ、困難だと感じられた患者との対話を回避し、申請権の実行を断念する傾向が存在している。
 さらに、我々が緊急に必要だと考えるのは、次のことである。何ら患者との直接的な接触を持たない(病理学者に多い)申請者のために、明瞭な規則を定義することである。この規則は、この申請者グループの複雑ではない統合を許し、できるかぎり申請者による治療を受ける患者たちの利害に反して取り扱う、あるいは最初に治療を行う医師との衝突を解決するという感情を申請者に与えないはっきりとした規則である。したがって、たとえば、ラインラント・プファルツ州の癌登録法の新しさとして現実的な草案に、医師にたいする一般的な申請義務とならんで組み込まれているのは、病理学者が個人的に情報義務に応じる必要はないということである。というのも、治療を行う医師は一般的な申請義務にもとづいて、病理学者が申請を行うことを知り、それによってこれを申請義務と情報義務を遂行するさいに考慮することができるからである。病理学者の申請の実行にたいするまさにこの種の、あるいは比較可能な解決は、そのためとくに重要である。というのも、診断のための提示内容が高い有効性をもつことにもとづいて大きな意義をこれらの申請に帰するからである。
 たとえば、ザクセン州とシュレスヴィヒ・ホルスタイン州における申請義務についての十分な実践的経験にもとづいて、また上述の申請権の解消(KRGにかなった情報義務と結びついて)という肯定的ではない経験にもとづいて、私が申請義務を選ぶとする(ちなみに、ラインラント・プファルツ州とならんでまたメックレンブルク・フォルポメルン州とザクセン当局も申請義務の導入を計画している)。そうであるとしても、やはり次のことが確認されなければならない。すなわち、ザールラント州では、これまでまた純粋な申請権でもって登録を科学的な要求にとって十分な登録の達成率(Vollstandigkeitsgrad)を実現できたことである。とりわけ[ザールラントのような]小さい連邦州においては、さまざまの個人の申請者個人と個人的に接触することにたいする十分な下部構造上の諸前提があったし、さまざまな個人が際だって関与している。それがこの連邦州において高い達成率を実現している本質的な原因をなしている。けれども、それとならんで、また考慮されなければならないのは、次のことである。データ保護者によって今日、本来断念し得ないと見なされる情報[守秘]義務――それはすべての個々人にふさわしい抵抗権の可能性にたいする一つの前提を創り上げる――がザールラントでは定められていないことである。そのかぎり、ザールラント州に目下存する既存の法的な規制は、――すでにあらかじめ述べたように――獲得されたデータの科学的な必要にたいする不十分な諸規定を含んでいる。この法的規制は、他の連邦諸州にたいする例示として推奨されることはできない。
 ハンブルクにおいては、またミュンスター県においては、同意モデル(Einwilligungs-modell)にもとづいて高い達成率が、少なくとも若干の診察にたいしては実現できた。この肯定的な経験は、またドイツにおける小児ガンの登録の経験と符合する。小児ガン登録はすでに数年来、同意モデルにもとづいて95パーセントを超える達成率を実現している(ここではもちろんまったく特殊的な諸条件が存している。というのも、同意は主として両親によって共有され、たいてい最善の治療のための研究(Therapieoptimierungs-studie)への参加への同意と関連しているから。両親はその最善の治療に動機づけられている)。けれども、癌登録が一定の年齢と診断グループに制限されないで、科学的に有効な活用のために必要な90パーセントを超える達成率を実現し、持続的に維持することができるという証明は、これまでまだなされていない。ハンブルクとミュンスターにおいては長年にわたって緊迫して努力されているが、私が疑問を抱いているのは、癌登録に参加するものの高い関与にもかかわらず、この目標を達成できるかどうかである。

3.2 信託モデル

 KRGにおいて確立された信託モデルは癌登録を信託所と登録所へと配分するが、このモデルが効果的な研究を可能にすることを示すことができた。このアプローチのもとで原則的に予期できる欠陥がある。つまり、さまざまの患者のデータを誤って都合よく照合すること、あるいは同一の患者のデータを誤って分離して調査することである。このような欠陥は、申請局(Melderate)が高い地位におかれ、申請とデータ調査とのさいの質の保証について十分な規準が当てはまるとき、登録の科学的遂行能力に照らして無視することができる範囲にある。
 [信託所と登録所が併存しているという]非階層的構造を持つ信託モデルは、二つの登録機関の職員に特別の規律と共同能力を要求する。もっとも不都合な場合には、機能単位への配分は、課題の分割が一義的に確定されておらず、公式的な調整の可能性が存しない場合に、反生産的になる可能性があるだろう。したがって、特に重要なのは、いずれの場合にも、二つの登録部門の機能的な統一を保証することである。二つの登録部門が完全に自立しているとすれば、実際の業務の経過において強過ぎる摩耗を引き起こし、研究効果とデータの質を損傷すれば、喪失に至る可能性がある。したがって、二つの登録部門の共同を促進するためには、適切な諸道具を利用できなければならない。これは、たとえば、業務に近い共同事務所を連結することによって行うことができる。たとえば、所轄の厚生省(das zustandige Gesundheitsministerium)が純粋に専門的な監督を行うことは、われわれの見解では、十分ではないだろう。というのも、厚生省には登録の日常的な研究への理解と日常的な登録の型どおりの経過にたいする理解がほとんどないからである。
 情報上の三権分立を実際的に実現すれば、人的コストが一定高くなる。というのも、たとえば、旧来のモデルよりも意思疎通の経費が費やされなければならず、二つの登録部門の分離された個人信託の規則が必要とされることがあるから。けれども、これに加えて、現場では、データ保護者との建設的な取り決めは実現できる。たとえば、このデータ保護者は、二つの単位組織における登録特有の課題にたいする電子データ処理を挟み込み、限定された代理の課題にたいしては医学上の専門職員を挟み込むことを可能にする。

3.3 核心的データ指針(Kerndatensatz)

 KRGは、疫学的データのカタログを定義したが、その定義は、もう一度批判的にその背後にある根拠を問わなければならない。とりわけ、その申請データは自由に利用できなければならない。申請データを獲得することは、申請者にとって平均以上の経費がかかることを意味するし、その証言能力は、科学的観点から見れば、少ないと見なされなければならない。これは、たとえばとりわけ職業活動と数多性という[癌登録のあり方の]特性への申請内容に関係する。
 癌登録の最高の目標は、癌登録の本来の課題にとって不可欠な措置にたいして、申請内容が同時的完全性と提示の高い内容的な有効性を持つ高い達成率である。これらは、とりわけ、病気の形態学と段階からみた発病の記述である。ありうべきリスクの諸要素あるいはどんな治療を受けたのか[既往症](KRGにおいてではなく、しかしおそらく若干の州法で見込まれている)の申告は、多数の事例を日常的にデータ調査をすることにとって、問題がある。というのも、それらはただ患者の小部分にとってのみ処理可能であり、こうしてできるとしても高度に選択的であり、さらにしばしば非常に不正確であるから。
 小空間の地域研究は、病因研究の場合に必要になる可能性がある。このような研究にとって、住居の申告についての現行の処理は問題を含んでいる。というのも、癌登録の登録所にはただ自治体の番号(Gemeindeziffer)、あるいは住所(Wohnort)だけが記録されていればよいから。これは、一般に可能であるとしても、特定の地域の分析にとって包括的な、時間がかかる事後調査を必要とする。したがって、たとえば、大都市にとっては、住所の申告を少なくともその都市のどの地域に住んでいるかが分かる次元まで登録するべく努力されなければならないだろう。調整制度に関連地域をコピーすることは望ましいように見える。そのさい、データ保護の理由から、その正確さはそのつどの人口密度に依存させられるだろう。日常的に連結の追求のために利用することは、方法的な根拠から、推薦することはできない。そうだとしても、やはり、しばしば癌登録にとって必要なのは、癌の事例を地域的に蓄積するという指示にしたがうことである。したがって、発病の事例の該当する異なった地域的な調査は、該当する照会を現代に即して答えることができることにたいする基礎を作りあげることであろう。

4.選択的な技術的側面

4.1 暗号化

 すでに第3節で確認したように、データ保護を保証するために暗号化のプログラムの日常的な入力が導入された。ラインラント・プファルツ州では、これがもっとも早くから始められた。この州では処理は良く保全された。実際、暗号化プログラムの型どおりの入力については、この間に、実際、他の領域からの積極的な経験もある。たとえば、インターネット環境における経験である。癌登録の諸課題を引き受けるためには、癌登録の入力にさいして使用した暗号化プログラムを長期間にわたって保存することが、保証されなければならない。実際、このプログラムは、その癌登録に利用するために特別に書かれたし、高い範囲において課題に関連して、登録の他のデータ処理プログラムに統合されている。それゆえ、この特別プログラムの保存のためにおそらくすぐ次の時代に組織的に成立すると思われる外部のサーヴィス組織に任せることは目的に適っていないように思われる。さらに、当該の州法にもとづいて癌登録に暗号化プログラムを入力するにさいして、疑似主権的な諸課題が問題であるという見解を私たちは主張する。したがって、特別の安全策が保全と更なる展開のために取られなければならない。原理的には、連邦情報技術安全庁(Bundesamt für Sicherheit in der Informationstechnik)の入力されたプログラム、ローベルト・コッホ研究所の癌の包括的資料(Dachdokumentation)、あるいはそれぞれ地方的に制限する登録にたいする三つの登録の整備を企図することは考えることができるだろう。最後に挙げたヴァリアンテは、われわれが選んだものであるが、「住民に相関する癌登録の共同研究グループ」の多数によっても重要であると見なされている。
 暗号技術の進歩によって、あるいはまた暗号解読という原理的に存する可能性のためにも、入力するキーを短期間に交換することが必要になるのはありうることである。KRGの指示と対立して、そのために目的に適った仕方で、癌登録の内部で、直接的に関連する新しいコード化のために解読が行われる可能性は存している。

4.2 検視証明の加工

 特に登録の基礎段階では、しかし、長期間特に不都合な予診を持つ診断にとってもまた、癌登録はさしあたって検視証明(Leichenschauscheine)にかんする一つの事例の申請を獲得する。この証明はただ発病について痕跡となる申告だけを含む。そしてしばしばただ限定的にのみ有効である。したがって、若干の州法において、KRGは、職責を果たす医師に検視証明について再照会し不備を埋め合わせる実り豊かな可能性をめぐってすでに拡大された。申請義務の例においては、死を確認した医師に再照会することは、補足的規則がなくても可能であろう。

4.3 他の登録との調整

 申請登録の平準化は、KRGではただ最善であるとしてのみ予見されている。けれども、このような調整は特に情報の完全性のために重要である。だから、なかんづく生存時間についての更にすすんだ分析に照らしてみれば、すでに各州の登録法に含まれている相応する規則は、実践的に実行可能であるかぎり、他の連邦州によってもまた継承されるだろう。
 近隣の癌登録の間で申請を調整することが必要であることは、目標とする人口を重層する疾病扶助のさいに信頼できるように調査するためには、やむを得ない。その一方で、さしあたってまだ未解決であるのは、そのような調査を超えて、癌の包括的資料の場合にすべての癌登録にかんする連邦全域の調整が成功を約束されているかどうかである。このさい原理的には、若干の州で記録された患者の二重登録を排除することによって癌登録の正確さを高めることは実現できるだろう。他面で、誤って照合された患者のデータの比率の上昇は、外部の大量のデータを暗号化して照合するさいに、考慮に入れるべきである。これについて、さしあたってなお最初の実践的な諸経験が集められる。それ故、対応する成果は終了をまたざるをえない。ここからすでに改良の諸提案が取り扱いにたいして行われる可能性がある。けれども、現在経過している研究の積極的な出発点にさいして、データの範囲がさらに本質的に増大したとき、なおいっそうの検証が後の時点で必要である。

5.質の保証

 冒頭で確認したように、癌登録の導入は、KRGにもとづいて、また補完的に公布された州法にもとづいて、都合良く内部的に促進されている。それにもかかわらず、確認されなければならないのは、次のことである。科学的な評価にとって必要な達成率、あらゆる事実的な発病の事例の90パーセントを超える達成率が新しく確立された登録によってまだ実現されなかったことである。けれども、国内の経験と国際的な経験にもとづいて、これを総体として正しく制限があり自由にならない時間において考慮に入れることができない。個々の登録において登録率が発展することは、もちろん次のことを推測させる。ずっと前からかつて国際的な経験領域から挙げられた10数年の経過の時代が下回っている可能性があることである。それにもかかわらず、最近の達成率の側面には持続的に強い意味が帰されなければならない。なかんずくすでに数年前からその研究が採用した登録の場合にはそうである。なおいっそう強まっている持続的な公共の研究とならんで、この研究は、われわれの経験からみれば、むしろ当該の患者よりも医師たちに向かわねばならない研究(ここでは「ドイツにおける癌」というパンフレットの刊行にたいする大きな反響が指示されている)であるが、この研究とならんで、上述のように、連邦各州法における申請様式の変更が検証される必要がある。
 達成率とならんで、よりいっそう決定的な質のパラメーターが存在する。その遵守は、登録の基礎と将来の日常的な研究のさいに誠実に検証されなければならない。これについて個々の登録において標準化された手続きの規則(SOPs)にもとづいて、内包的な措置が把握されなければならない。この意味で、「ドイツにおける住民に相関する癌登録についての共同研究グループ」のふさわしい努力もまたとりわけ強調し、指示することができる(癌登録マニュアル)。この国内的な質保証の措置は、将来さらに強まる国際的な共同へと拡大されるはずである。個々の登録にとって、外的な質保証(監査Audit)の規則的な取り扱いは制度化されるだろう。個々の登録の監査機能が相互に守られ、事情によっては科学的専門学会(ドイツ疫学共同研究グループあるいはGMDS)もまたこれに協力することは、この場合当然考えられることだろう。

6.更なる経過への勧告

 先行する節においてすでに将来の各州の立法にさいして、現在の状態の改良のためにまだ考慮されるべき個々の側面が述べられた。この勧告は、ここでは繰り返さない。目下の知識にしたがえば、周知の財政的制約にもかかわらず、たいていの連邦各州のうちに、癌登録が健康政策上の認識および予防医学と治療医学の改良にとって重要な道具であり、それをさらに遂行しようという意図が存する。この意図は明らかに歓迎することができる。
 人口に関連する癌登録の共同研究グループにおける共同は保持され、さらに継続されなければならない。それに加えて、地域的に限界がある登録間で、研究関係が強化されるのは望ましい。
 個々の癌登録を総括する連邦規模の価値を持っている発展段階は目下のところ強く異なっている。そのために、RKI(ローベルトコッホ研究所)のもとに定着させる癌の包括的記録によって、これまデータだモデルに適ってしか遂行されることができなかった。そうだと、このような利用は将来重要で必然的であるだろうということが認識できる。したがって、これにたいしてもまた、必要な財源は長期間にわたって準備されるだろう。
 将来に連邦はこの癌登録にさらに関与しなければならないが、財源の準備はその連邦の関与の一部であろう。そしてこの関与は必要だと見なされる。RKIの研究とならんで、この場合に挙げられなければならないのは、連邦各州における、将来より強く統一される癌登録にたいする枠組みの諸条件を促進することである。これについては、すでに人口に関連した癌登録という共同研究グループがフォローすることは、BMGによって支援されうる。さらに、望ましいのは、連邦が中間的な期間で質の保証のための措置に、たとえば、なかんずく国内的地域においては、達成率の検証のさいに、これと結びついた国際的なコンタクトの促進のために、この質保証のための措置に関与することであろう。さまざまの登録モデルの比較的な評価は、数年の間停滞しているが、目的に適った仕方で、連邦によって主導権を取られ、ことによると一部の地域で(例えば、RKIによって)遂行されるだろう。
 このような評価の核心点は、次のような問いの回答をなすだろう。

−登録の達成率は(件数の90パーセントを超える)達成され、信頼できるほど証明されたのか。

−達成率は持続的に保証されることができるのか。

−質の保証の規準は国際的な基準にしたがって成功裡に確立されたのか。

−調査されたデータは科学的研究にとって適切に必要であるのか、またどの範囲でそのデータはすでに利用されているのか。

−登録モデルの異質性は登録を包括する研究計画を妨げるのか。

 重要な質の要求が個々の登録において満たされると言うことが強調されるとすれば、検証されなければならないのは、これが当該の登録モデルあるいは他の諸条件に還元できるかどうかである。たとえば、それに依存するとすれば、実践化されたモデルは「成果の多い」モデルに適合するだろう。
 このような登録を包括する評価できる時点は、個々の登録の基礎段階が終わり、また科学的必要もまた動き出すことができるように選択されなければならないだろう。このためには今日の観点からみれば、なおほぼ5年が見積もることができる。

7.総括

 KRGの成果は、肯定的と評価できる。というのも、若干の例外をともなって連邦各州において、一部は広域的な癌登録の基礎で効果的に始められたから。KRGの本質的な諸要素は、実践的な動きにおいて守られた。個々の側面にたいする改良が提案される。
 できるかぎり広範囲にドイツにおける癌登録にたいする標準的な諸条件を定めることがKRGで意図されていたとしても、結果として生じる多数の異なったこれまで確立された登録モデルは予期したよりも大きい。しかし、ここでは、さしあたって長所をみよう。目下なおすべての登録のさいに存する基礎段階に関連してで登録モデルの体系的な評価が企図されうるし、またそれにしたがって、各州の法的な登録をもっとも成果のあるアプローチと調整する可能性が存すると言うことである。
 たいていの場所で遂行された基礎作業の質ははっきりと強調されなければならない。癌登録にたいする本質的な質の指標、すなわち登録の達成率は予期したとおり、これまで処理できる時間内ではまだ達成することができなかった。けれども、これが多くの箇所で近いうちに達成可能であると期待できる根拠のある誘因が存している。
 なかんずく情報義務と登録にたいする異議申し立てという患者の権利をともなう申請義務の導入にまで将来、規則を広げようという提案とならんで、質を保証することを強化し安定させることにたいする提案がなされる。ほぼ5年間における登録を包括する評価が必要である。

マインツ、1999年9月16日
教授、医学博士 イェルク・ミハエリス


ドイツ連邦がん登録法

放射線影響研究所 増成直美(訳)

がん登録の実施に関する一九九四年一一月四日の法律(がん登録法:KRG)

 連邦議会は、連邦参議院の承認を得て、以下の法律を議決した。

第1条(本法の目的および規制範囲)

(1) 1本法は、がん制圧のために、とくにがんに関する疫学のための基礎データ改善のために、悪性新生物の発生に関して、その早期の段階も含めた個人に関するデータの継続的かつ統一的収集および収集したデータの処理と利用のあり方について規定する。2この責務のために、各州は、段階的に地域毎に一九九九年一月一日までに、地域を網羅する地域がん登録制度を設立し運営しなければならない。ただし、地域的網羅性については、例外を設けることができる。

(2) 1がん登録機関は、あらゆる形態のがん疾患とその消長動向を観察し、とくに統計的疫学的に評価し、公衆衛生計画およびがん罹患の原因究明をも含めた疫学研究の基礎を用意し、かつ予防的および治療的処置の評価に寄与しなければならない。2とくに匿名化されたデータは、学術研究のために自由な利用に委ねられなければならない。3このために、各州は、統一的で拘束力のある原則を確立しなければならない。

(3) 1がん登録機関は、独立で、場所的、組織的、人事的にも互いに分離された信用機関と登録機関から構成される。2各州は、本法に準拠して、さらに詳しい規定を定めることができる。

(4)州法において、一三条五項に準拠したがん登録事業の設立と運営のために、本法とは異なった規定が定められうる。

第2条(定義)

(1)個人識別データとは、患者の識別を可能にする以下の届出事項をいう。

1.姓、名、旧姓

2.性別

3.住所

4.出生年月日

5.原発腫瘍診断日

6.死亡年月日

(2)疫学的データとは、以下の届出事項をいう。
1.性別、多胎児特性

2.出生年月

3.居住地または市町村番号

4.国籍

5.職歴(従事した職業、最長期間にわたって従事し、および最後に従事した職種と期間)

6.ドイツ医療記録・医療情報機構により、連邦保健省の委託を受けて編集され、かつ連邦保健省によって効力を与えられた版による国際疾病分類(ICD)基準による腫瘍診断、国際腫瘍疾病分類(ICD-O)基準による組織学的診断

7.両側性臓器における左右片側別の申告を含めた腫瘍部位

8.原発腫瘍診断年月

9.以前に腫瘍に罹患したことがあるときはその旨

10.臨床進行度(とくに、がん病巣の拡がりと転移程度の表示のためのTNM-基準)

11.診断の確定方法(臨床所見、組織診、細胞診、剖検等々)

12.治療方法(治癒的手術もしくは姑息的手術、放射線療法、化学療法および他の治療方法)

13.死亡年月

14.死因(原疾患)

15.解剖の有無

(3)管理番号とは、識別データから形成され識別データに復元されえない数字の組合せをいう。

(4)その他の点においては、連邦データ保護法の定義が適用される。

第3条(届出)

(1) 1医師もしくは歯科医師、およびその委託を受けた臨床登録機関もしくはアフターケア機関(届出機関)は、患者の常居所を管轄するがん登録信用機関に、二条一項と二項に掲げられた届出事項を申告する権限を有する。2臨床登録機関もしくはアフターケア機関により届出がなされる場合には、届出を委託した医師もしくは歯科医師の氏名および住所を申告しなければならない。

(2) 1医師もしくは歯科医師は、意図されている届出あるいはすでに行われた届出について、速やかに患者に通知しなければならない、これは、医師もしくは歯科医師が臨床登録機関やアフターケア機関に届出を委託したときにも同様である。2患者は、届出に対して異議申立権を有する。3患者への通知は、それによって患者に健康上障害が生じることが予想されうるかぎりにおいてのみ、省略することができる。4患者に通知する場合、患者は、異議申立権を有することを指摘されなければならない。5患者は、自ら要請することにより、届出の内容に関しても知らされることができる。6患者が異議を申し立てたときには、医師もしくは歯科医師は、届出を中止し、あるいはすでに届け出られたデータの抹消を指示しなければならない。7がん登録機関は、医師もしくは歯科医師に、抹消が行われたことについて書面で通知しなければならず、医師もしくは歯科医師は、その通知を患者に伝えなければならない。8医師もしくは歯科医師が一文に基づく通知を行わなかったときは、医師もしくは歯科医師は、通知が適切な時期に追完されるようにするために、このことを、治療を引き継いだ医師もしくは歯科医師に、書面で理由を示したうえで伝えなければならない。

(3)届出の中で、患者が届出について通知されたか否かが、申告されなければならない。

(4)届出は、それぞれの州によって決められた統一書式で、あるいは機械的に処理できるデータ記憶媒体で提供されなければならず、かつ各州によって、統一的原則に則って、報酬が支払われなければならない。

(5) 1保健所は、地域管轄の信用機関に、すべての検死証明書のコピーもしくは検死証明書から得られるデータを、機械的に処理できる形式で送付する義務を負う。2一文は、故人が生前に一項による届出に異議を申し立てたか否かにかかわらず、適用される。

第4条(信用機関)

(1)医師の指導の下にある信用機関は、

1.論理性と完全性の観点から、届け出られたデータを審査し、かつそのデータを必要なかぎりで届出機関に問い合わせることによって、補正しなければならない。

2.三条五項に基づいて保健所から送付された検死証明書のコピーもしくはそこから得られるデータを、届け出られたデータと同様に、処理しなければならない。

3.個人識別データと疫学的データとを分離し、別々のデータ記憶媒体に収納しなければならない。

4.個人識別データを七条一項によって暗号化しなければならず、かつ七条二項により管理番号を形成しなければならない。

5.届出事項を、六条一項により登録機関へ送付しなければならず、登録機関による処理の終了後遅滞なく、遅くとも送付がなされてから三ヵ月以内に、当該患者に関わるすべてのデータを抹消しなければならず、かつ三条五項により保健所から送付された検死証明書のコピーもしくはそこから得られたデータを含む届出の基礎として用いられた基礎資料を破棄しなければならない。

6. 八条一項によって許可された場合は、個人識別データを照合し、もしくは解読し、八条三項二文に基づいて追加される届出事項を届出機関に対して問い合わせ、患者の同意を得るよう必要なかぎりで指示し、申請機関にデータを送付し、かつ八条一項と同条三項二文により得られたデータおよび八条一項により用意されたデータを抹消しなければならない。

7.九条一項の場合は、報告を行い、もしくはデータがもはや信用機関に存在しないかぎりで、登録機関に対して必要なデータの提供を要請しなければならない。

8.患者が届出に対して異議を申し立てたときは、届け出られたデータが抹消され、かつ存在する基礎資料が破棄されるよう指示しなければならない、すなわち抹消を有効とみなさなければならず、かつ医師もしくは歯科医師に、抹消が行われたことにつき、書面で通知しなければならない。

(2) 1信用機関は、連邦データ保護法九条に従って必要な技術的、組織的な措置をとらなければならない。2信用機関は、とくに一時的に存在する個人識別データが権限なく閲覧、もしくは利用されえないことを保障しなければならない。

第5条(登録機関)

(1) 登録機関は、

1.送付されたデータを、蓄積し、管理番号により既存の一連のデータと照合し、論理性を審査し、補正しもしくは補完しなければならない。登録機関は、信用機関に問い合わせることができ、かつ信用機関に処理の終了について通知しなければならない。

2.管理番号を手がかりに、疫学的データの補正と補完のために、定期的に、他の地域がん登録機関のデータと照合しなければならない。

3.疫学的データを、一条二項に掲げられた目的を達成するために、処理し利用しなければならない。

4.疫学的データを、一年に一回、ローベルト・コッホ研究所に設けられた「ドイツ中央がん登録機関(Dachdokumentation Krebs)」に統一された形式で送付しなければならない。

5.八条一項により許可された場合は、適切な計画の実現のために、必要な届出事項を信用機関に対して送付しなければならない。

6.九条一項の場合は、求めがあれば、必要なデータを、信用機関に送付しなければならない。

7.信用機関を通じて患者へ通知した後に、患者が自分の届け出られたデータの蓄積に対して異議を申し立てたときは、そのデータを抹消しなければならない。

(2) 1一項三号および四号に従ったデータは、登録機関によって、その送付の前に匿名化されなければならない。2そのデータは、受領機関によって、そのデータが提供された目的のためにのみ、処理され利用されることができる。

第6条(登録機関によるデータの蓄積)

(1) 登録機関において、個々の患者について、以下の届出事項が、自動化された処理方法により蓄積される。

1.非対称的に暗号化された個人識別データ

2.疫学的データ

3.管理番号

4.届出医師もしくは歯科医師の氏名および住所、届出を委託した医師もしくは歯科医師の氏名、住所、ならびに届出臨床登録機関もしくは届出アフターケア機関の住所、ならびに三条五項により送付を行う保健所の住所

5.届出がなされたことについての患者への通知

(2)登録機関による暗号化されていない個人識別データの蓄積は、許されない。四条一項三号および五号は、これにより影響を受けない。

第7条(個人識別データの暗号化および管理番号の形成)

(1) 1個人識別データは、非対称性の暗号形成法により、暗号化されなければならない。2その適用されるべき方法は、技術水準に添ったものでなければならない。

(2)データの補正および補完のために、ならびに他の地域がん登録機関のデータとの照合のために、管理番号は、すべてのがん登録事業に統一の、個人識別データへの復元を許さない方法で形成されなければならない。

(3)暗号形成法、管理番号形成の方法の選択、ならびにこのために不可欠なコンピュータおよびこれに必要とされるコンピュータプログラムの確定は、連邦情報技術保護庁との協議に基づいて行われなければならない。

(4)非対称性の暗号化および管理番号の形成のために開発され使用されるコンピュータプログラムは、秘密にされなければならず、かつ信用機関によって、本法の目的を果たすためにのみ、使用されることができる。

第8条(個人を識別するデータの照合、解読および送付)

(1) 1保健施策上の措置のために、かつ重要でしかも他の方法では遂行しえない公共の利益を有する研究課題について、管轄官庁は、信用機関に対して、

1.個人識別データとがん登録機関のデータとの照合

2.必要な、七条一項により暗号化された個人識別データの解読

および、必要な範囲内でのその送付を、許可することができる。2それ以外の場合には、個人を識別するデータを照合することはできず、また暗号化された個人識別データを解読し、送付することもできない。

(2) 1信用機関は、一項によるデータの送付に先立ち、届出もしくは治療を行う医師もしくは歯科医師を通じて、解読された個人識別データもしくは受領機関が特定の個人に帰属させることのできるデータの他人への提供が予定されているときには、患者の書面による同意を取りつけなければならない。2患者が死亡しているときは、信用機関は、不相応な費用を伴うことなく可能であるかぎりで、データの送付に先立ち、最近親者の書面による同意を得なければならない。3その際、配偶者、子ども、両親、兄弟姉妹が、この順序で、最近親者とみなされる。4同一順位の近親者間で、同意するか否かにつき意見が異なっており、かつがん登録機関がこのことを認識しているときは、同意は得られなかったものとみなされる。5故人が三文による近親者を有しないときは、その地位は、故人と婚姻類似の共同生活をしていた成人に移る。

(3) 1データが一項による照合の後に、データ受領機関により特定の個人に帰属させることのできないような方法で送付されるときは、二項による同意の取得は必要でない。2一項により許可された研究計画が、ある患者に二条二項九号ないし一二号に掲げられたデータについて追加の届出を必要とし、かつこの届出事項が受領機関により特定の個人に帰属させることができないときは、信用機関は、患者の同意を得ることなく、必要とされるデータを届出機関に問い合わせ、かつ受領機関に転送することができる。3届出機関は、この届出事項を知らせることができる。4データ受領機関は、がん登録機関によって送付されたデータと結びつけられることによって患者の識別を可能にするであろう届出事項を、第三者から得てはならない。

(4) 必要な同意が得られないときは、一項に基づいて送付されたデータは、抹消されなければならない。

(5) 1識別データの解読のために不可欠なコンピュータ、およびこれに必要なコンピュータプログラムは、州政府によって、がん登録機関以外の特定の場所に保管されなければならない。2一項により解読が許可された場合は、コンピュータと、適切な技術上の安全措置によりとくに濫用に対して保護されたコンピュータプログラムが、許可された範囲内での使用のために、信用機関に提供されなければならない。

(6) 1送付されたデータは、受領機関によって、書面で申請されかつ許可された目的のためにのみ、処理され利用されることができる。2データが二年以上保管されるときは、患者は、このことについて、信用機関を通じて指摘されなければならない。3データは、計画の遂行のためにもはや必要でなくなったとき、遅くとも計画が完了したときには、抹消されなければならない。

(7)受領機関が非公的機関であるときは、この規定違反を示す十分な手がかりが存在しないときにも、監督官庁がデータ保護に関する法規の施行を監視するという条件で、連邦データ保護法三八条が適用される。

第9条(患者への回答)

(1) 1がん登録機関は、患者の申請に基づいて、患者によって指名された医師もしくは歯科医師に対して、当該患者自身について記録が蓄積されているか否か、および事情によっては、如何なる記録が蓄積されているかを回答しなければならない。2指名された医師もしくは歯科医師は、がん登録機関からの回答について、口頭によってのみもしくは回答書を閲覧させることにより、患者に知らせることができる。3がん登録機関からの書面による回答および回答書のコピーは、いずれも患者に渡してはならない。

(2)指名された医師もしくは歯科医師は、患者の同意を得た場合であっても、与えられた回答を、口頭においても書面によっても第三者に伝えてはならない。

第10条(ローベルト・コッホ研究所)

 ローベルト・コッホ研究所は、五条一項四号に従って提供されたデータを統合して解析し、がん発生の傾向および地域的相違を確定し、定期的に公表しなければならない。

第11条(抹消)

 暗号化された個人識別データは、患者の死亡から五〇年経過したとき、もしくは遅くとも患者の出生から一三〇年を経過したときには、抹消されなければならない。

第12条(罰則)

(1)権限なく、暗号化されていない個人識別データを、自己もしくは他人のために得させた者は、一年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

(2)以下の者も同様に処罰される。

1.四条一項五号、八条六項三文もしくは一一条に反して、データを抹消せず、もしくは適時に抹消せず、または基礎資料を破棄せず、もしくは適時に破棄しなかった者

2.四条一項八号に反して、抹消もしくは破棄を行うよう指示しなかった者

3.五条一項七号もしくは八条四項に反して、データを抹消しなかった者

4.五条二項二文もしくは八条六項一文に反して、他の目的で、データを処理もしくは利用した者

5.六条二項に反して、暗号化されていない個人識別データを蓄積した者

6.七条四項に反して、コンピュータプログラムを他の目的で使用した者

7.八条一項二文に反して、データを照合し、解読し、もしくは送付した者

8.八条三項四文に反して、届出事項を得させた者

9.九条一項二文に反して、情報を口頭で、もしくは回答書を閲覧させることにより提供しなかった者

10.九条一項三文に反して、回答書、もしくはそのコピーを渡した者、あるいは、

11.九条二項に反して、回答を伝えた者

(3)行為者が、対価と引き換えに、あるいは自己もしくは他人に利益を得させることまたは他人に損害を与えることを意図して行為したときは、二年以下の自由刑もしくは罰金刑に処する。

第13条(最終規定)

(1)各州は、以下のことを規定することができる。

1.医師もしくは歯科医師による他の疫学的データの収集と届出

2.登録機関による統計的疫学的データ評価の他の詳細および追加の研究課題

3.八条一項に従った許可手続のより詳しい形態

4.個人識別データの解読後の研究計画の範囲内での、患者および第三者への問合わせのやり方

5.データ送付の他の前提と条件

6.複数の信用機関が一つの登録機関とがん登録機関を設立すること

7.一一条に掲げられた期間とは異なるもの、ならびに、

8.個人識別データと住民登録台帳データとの照合

(2)各州は、医師もしくは歯科医師に、法律によって、届出に関して三条一項に従った患者のがん罹患の経過に関する他の届出事項を、信用機関へ送付する権利を与えることができる。

(3)連邦保健省は、連邦参議院の承諾を得て、一般の行政規則を、以下のことに関して公布することができる。

1.一条二項三文に従った統一的で拘束力のある原則の確立

2.三条四項に従った統一的報酬金額の制定

3.五条一項四号に従った統一形式の制定

4.七条二項に従った管理番号の形成のための方法、および、

5.八条一項に従った許可の原則の形成

(4)各州は、すでに存在する地域がん登録機関によって本法の施行の前にすでに収集されていたデータの処理および利用のために、必要な暫定規定を公布することができる。

(5) 1一条四項に従って認可された差異は、以下のことにまで及びうる。

1.三条一項ないし三項に従った届出の前提および届出手続

2.五条一項四号を除いた四条ないし八条に従ったデータ収集および処理

2異なる規定の範囲内で届け出られたデータが他州の地域がん登録機関のデータと通常照合がなされるということ、および、そのデータが公衆衛生と疫学研究の措置のために利用されうるということは、保障されなければならない。

第14条(施行期日)

(1)この法律は、一九九五年一月一日から施行する。

(2)この法律は、一九九九年一二月三一日の経過とともに失効する。

 上記の法律は、これをもって認証され、連邦官報において公布される。

ベルリン、一九九四年一一月四日
連邦大統領 ロマーン・ヘルツォーク(Roman Herzog)
連邦首相博士 ヘルムート・コール(Dr Helmut Kohl)
保健省大臣 ホルスト・ゼーホォファ(Horst Seehofer)


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