01/04/20 第1回保健医療技術情報普及支援検討会議事録 第1回保健医療技術情報普及支援検討会 平成13年4月20日(金) 15:00 〜16:30 厚生労働省別館特別第1会議室 1.開  会  【武末補佐】  それでは時間となりましたので、ただいまより第1回保健医療技術情報普及支援検討 会を開催させていただきます。それでは最初に伊藤医政局長より、一言ご挨拶させてい ただきます。 2.医政局長挨拶  【伊藤局長】  医政局長の伊藤でございます。保健医療技術情報普及支援検討会の開催にあたりまし て、一言ご挨拶をさせていただきます。まず、大変お忙しい委員の先生方に、この検討 会の委員をお引き受けいただきましたことを、まず御礼申し上げたいと思います。実は このテーマにつきましては、本日ご出席の高久先生を座長といたしまして、平成10年の 6月に、医療技術評価推進検討会の設置をいたしまして、11年の3月にこの報告書を受 けているわけでございます。  私どもといたしましては、その報告書を受けまして、治療ガイドラインの作成につき ましては、高血圧等、学会における診療ガイドラインの活動を厚生労働省としても支援 をしていくという活動を始めたところでございますが、実はこの医療技術評価推進検討 会の報告書の一番末尾のところに、医療技術評価の成果を臨床現場で利用するために は、実際の医療に有用な情報を、医療関係者や患者に提供するシステム整備の具体案に ついて検討していくことが重要な課題であると、そういうご提言をいただいているわけ でございます。  したがいまして、本日スタートいたしますこの保健医療技術情報普及支援検討会にお きましては、この前回の検討会に引き続きまして、医療の現場におきまして、適切な診 療のための情報を効果的かつ効率的に提供するシステム整備の具体案につきまして、委 員の皆様方にご検討いただきたいということが、今回、この検討会を立ち上げた趣旨で ございますので、何とぞこの設置の趣旨をご理解いただきまして、ご協力をお願い申し 上げたいと思います。  そして、いただきました結論に基づきまして、私どもといたしましては、その成果を 今後の行政に反映させていきたいと考えておりますので、何とぞひとつよろしくお願い 申し上げまして、ご挨拶にかえさせていただきます。 3.委員紹介  【武末補佐】  それでは、本検討会の委員の方々を五十音順にご紹介させていただきます。北海道家 庭医療学センター所長の葛西龍樹委員です。  【葛西委員】  よろしくお願いいたします。  【武末補佐】  医療情報システム開発センター理事長の開原成允委員です。  【開原委員】  開原でございます。  【武末補佐】  日本医師会常任理事の櫻井秀也委員です。  【櫻井委員】  櫻井でございます。  【武末補佐】  日本医学会副会長、自治医科大学学長の高久史麿委員です。  【高久委員】  (目礼)  【武末補佐】  愛知淑徳大学文学部図書館情報学科教授の野添篤毅委員です。  【野添委員】  野添でございます。よろしくお願いします。  【武末補佐】  徳島大学医学部衛生学講座教授の久繁哲徳委員です。  【久繁委員】  よろしくお願いします。  【武末補佐】  京都大学医学部付属病院総合診療部教授の福井次矢委員です。  【福井委員】  福井です。  【武末補佐】  国立国際医療センター総長の矢崎義雄委員です。  【矢崎委員】  矢崎です。  【武末補佐】  引き続き、事務局の紹介をさせていただきます。先ほどご挨拶申し上げました、医政 局長の伊藤でございます。大臣官房審議官医政局担当の中村でございます。医政局研究 開発振興課長の本間でございます。医政局研究開発振興課医療技術情報推進室長の谷口 でございます。同じく医療技術情報推進室長補佐の武末でございます。  なお高久委員には、局長の指名により、本検討会の座長をお願いしたいと思います が、よろしゅうございますでしょうか。  【各 委 員】  異議なし。お願いします。  【武末補佐】  それでは高久座長に以降の進行をお願いいたします。どうぞよろしくお願いいたしま す。 4.議  事  【高久座長】  指名ですので、保健医療技術情報普及支援検討会の座長を務めさせていただきます。 先ほども、局長さんのほうからご挨拶がありましたように、保健医療技術情報の……、 正確には覚えておりませんが、現実にはEBMについての理解、検討の会の座長を務め させていただいたので、その関係で、普及支援検討会の座長ということなのだと思いま す。具体的には、データベースなどの問題になると思いますが、委員の皆さん方のご意 見をよくお伺いいたしまして、方向性を出したいと考えていますので、よろしくお願い します。  それでは室長さんのほうから?  【谷口室長】  よろしくお願いします。  【高久座長】  ああ、そうですか。わかりました。本検討会では、公開ということですが……。  【谷口室長】  座長、一応この検討会、お願いを申し上げたと思いますが、原則といたしまして公開 という形で進めさせていただきたいと存じますが、ご了解をいただけますでしょうか。  【高久座長】  そういうことでしたね。今、お話がありましたように、この検討会は公開という形で 進めさせていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ご異議がなければ、公開 の形で進めさせていただきます。この点に関して、事務局から何かありますか。  【谷口室長】  検討会の議事内容につきましては、後日委員の先生方にお目通しを願いました上で、 議事録といたしまして、ホームページに公開をさせていただきたいと考えておりますの で、この点につきましても、合わせてご了承いただけますでしょうか。  【高久座長】  従来公開したときにはそうなっていますので、ご了承いただきたいと思います。  (1)「保健医療技術情報普及支援検討会」設置の主旨について  【高久座長】  それでは本日の議事に入ります。あとでこの検討会の今後の進め方について、皆さん 方のご意見をお聞きしたいと思いますが、本日は第1回目ということもありまして、ま ず事務局のほうから、この検討会開催の主旨と経緯について、ご説明、よろしくお願い します。  【谷口室長】  それでは検討会の設置の主旨でございますが、実はもう先ほど、局長のほうからご挨 拶の中でかなり詳細にお話がございましたので、私は何をしゃべっていいのか悩んでい るのですが。屋上屋を重ねるようでございますが、10年6月に「医療技術評価推進検討 会」が、高久先生に座長になっていただきまして開催されました。そこで、日本の医療 現場において医療技術評価を普及するために、いったいどのような形で推進していけば いいのかと。また、その成果が医療の現場で有効に活用されるためにはどのような方策 を進めていくことが必要であるか、という視点からご議論いただきました。  その結果といたしまして、いわゆるEBMを推進していくことが、医療技術評価のた めにも重要でありまして、それがひいては国民の医療の質の向上に寄与をするというふ うな考え方がなされたわけであります。その普及および推進の方策につきまして、11年 3月の段階で報告書に取りまとめをしていただいたところでございます。  資料1というのをお手元にお配りを申し上げておりますが、この資料1というのが、 そのときの委員会の報告書のコピーでございます。すべて説明するのはもう避けます が、簡単に目次をごらんいただいてもわかりますように、5つの柱がございまして、1 つ目の柱、「医療技術評価とEBMの関係」というところにつきましては、医療技術評 価というのが医療現場で用いる医療技術そのものが適正かどうかということを判定する ことでありまして、その判定された適正な医療技術を医療現場で活用するための基本的 な活動がEBMそのものである、というふうな認識でございました。  2番目の柱、「EBMの定義」のところあたりでございますが、EBMとは、「診察 している患者さんの臨床上の疑問点に関して、医師が関連文献等を検索をし、それらを 批判的に吟味をした上で、患者さんへの適用の妥当性というものを評価をし、専門技能 を活用して医療を行うこと」という定義をしていただいております。その中でさらに、 診療ガイドラインの位置づけというところも議論をいただきまして、医療技術評価の成 果というものをそれぞれの現場で利用する具体的な方法として、診療ガイドラインの活 用が重要である旨、諸外国の動向と合わせましてご紹介をしていただいたところでござ います。  それから4つ目の柱、5つ目の柱におきましては、EBMの具体的な推進方策が述べ られているところでございまして、「医療技術評価とEBMの総合的推進について」と いうくだりの中では、行政、医師会、学会等がEBMの総合的推進に向けての、分野ご との立場における今後の取り組み手法について具体的に提言をいただきました。このE BM推進のための環境整備の中では、「EBM推進のために、科学的な根拠をつくり出 す臨床研究を促進する体制整備が必要である」ということのご提言をいただきました。 さらに、「得られた臨床研究の成果を、早く確実に臨床の先生方にお届けすることが重 要である」というご指摘のもとに、そのためにでございますが、16ページあたりです と、「EBMを支える医療環境の整備」の中で、「医学的な情報等を系統的に収集、蓄 積、作成する必要」がございまして、「わが国におけるこれらの基盤となる環境の整備 が必要である」という問題提起がなされたところでございます。  6番目の柱の中では、「国内の臨床研究の充実のために、国民のご理解と協力が必要 である」として、さらに十分な説明の上に、安全性、倫理性に配慮した臨床研究環境を 確立するということの必要性が提言をされております。  最後の「おわりに」の中で、先ほど、局長のお話にもございましたように、「診療の ための有用な情報を提供するシステム整備等の具体案、疾病の予防のためのガイドライ ンなど、将来的な展望を踏まえて、具体的に検討する必要がある」というふうに結ばれ ているところでございます。  以上が前回の検討会報告書の内容でございますが、この報告書を受けまして、旧厚生 省といたしまして、平成11年度より医学会等で作成いただく疾患ごとのガイドラインに つきまして、厚生科学研究費において支援をしてまいりましたが、そのような診療に有 用な学術情報を具体的に提供するシステムなどにつきましては、先ほども述べました 「おわりに」で提言されているように、今後の課題としてまだ十分なコンセンサスが得 られていないことを踏まえまして、今後、日本における医療技術評価、つまりEBMを 推進していく上で必要なことにつきまして、どこが主体となってどのようにやっていく のかといったような具体的なご議論をしていただきたいというのが、本検討会の趣旨で ございます。  本日お集まりの先生方には、この点をご考慮いただきまして、ご議論をいただければ と考えております。以上でございます。  (2)これまでの旧厚生省の取り組み  【高久座長】  どうもありがとうございました。それでは引き続きまして事務局のほうから、これま での旧厚生省の取り組みについての紹介をお願いします。  【武末補佐】  お手元の資料の議事次第の、後ろから3番目になりますが、右肩に資料2と書いてご ざいます「これまでの旧厚生省の取り組み」という資料がございます。「検討会報告・ 施策等」と書いてございます。  平成9年度「医療技術評価の在り方に関する検討会報告書」および平成10年度「医療 技術評価推進検討会」に関しましては、今まで医政局長および谷口室長のほうからお話 があったところの次第でございますので、重複を避けるために、それ以降取り組んでき ました施策について、ご説明させていただきます。  それに関しましては、次のページのところに別紙として、表にしてまとめてございま す。まず平成11年度、医療技術評価推進検討会での提言を受けまして、厚生科学研究費 において、学会等が作成する疾患ごとの診療のためのガイドラインの支援を、始めてご ざいます。初年度といたしましては、本態性高血圧、糖尿病、喘息、心筋梗塞、それ と、ちょっと資料が間違ってございますが、泌尿器科領域としまして前立腺肥大と尿失 禁、計5疾患についての診療内容の作成支援を行っております。  平成12年度は、前年度に引き続き、また学会等が作成する疾患ごとの診療のためのガ イドライン支援としまして、胃潰瘍、脳梗塞、白内障、腰痛症、慢性関節リウマチ、ク モ膜下出血、アレルギー性鼻炎の、計12課題のガイドラインの作成支援を行っておりま す。で、その平成12年度に関しましては、ガイドラインの作成支援と並行しまして、別 紙の右下のほうに四角で囲ってあります「普及に関する研究」といたしまして、リサー チライブラリアンの養成研究等の計8課題の研究を行っている次第でございます。今ま での旧厚生省の取り組みとしては、以上のようなことであります。  【高久座長】  今、資料の1と2に基づいて、この支援検討会が設けられた経緯、さらに決定すべき こと、それから今まで厚生労働省が行ってきたEBMの推進に関する、これは主に厚生 科学研究費を出すという形で行ってきたわけですが、それについて説明がありました。 どなたかご意見あるいはご質問おありでしょうか。  手元の資料があるのは、これは別紙の2ですか、の左のほうにある平成11年度の藤島 先生の……。  【武末補佐】  これは一応、平成11年度の高血圧ガイドラインの作成案をもとにしましてつくられた ものでございます。一応こちらは専門医向けの疾患ガイドラインとして、厚生科学研究 の報告書とは別に出されたものを、今回参考までにごらんいただけるようにいたしまし た。  【高久座長】  わかりました。これは市販しているのですね。  【武末補佐】  そうでございます。  【高久座長】  どなたかご質問はおありですか。  【矢崎委員】  医療技術評価推進検討委員会で、EBMに基づいた診療ガイドラインを作成するとい うときに、メインは確か高久先生も、学会にてガイドラインの骨子をつくっていただい て、そして一般の臨床の先生方に活用していただくためには、ユーザー側の意見とか、 患者さんを含んだ、広く国民の意見を含むということで、これをつくるという。9ペー ジの一番下のところにあると思うのですが、「日本の事情を考慮したガイドライン」と 「幅広い視野でつくったガイドライン」ということがあったと思うのですが、この、私 が関係したことで、高血圧学会の治療ガイドラインというのは大変すばらしい、エビデ ンスに基づいた労作だと思います。これは学会の専門医がつくっているので、一般の臨 床医が使えるようなブレークダウンした形というのは、どういうプロセスでつくられて いるのか。ちょっと、その辺の事情がもしわかれば、お願いしたいのですが。  【谷口室長】  きょうは実は資料としてはお配りを申し上げておりませんが、同じ研究班のグループ の先生方が、今先生方がごらんになっていますが、これを踏まえまして、さらに一般の 臨床医の先生方にも役に立つようなアペンディックスといいますか、アディッションと 申しますか、そういったものを今年度、ご研究していただいております。それを取りま とめた形で、少しまだ乖離するかもしれませんが、学会のほうで臨床医向けのものとい うのがオーソライズされるのではないかと、私ども、考えているところでございます。  【櫻井委員】  今の矢崎先生からのお話については、ユーザーというのは国民ももちろん広い意味の ユーザーなのですが、やっぱり直接的に一番使うのは、日本医師会の十何万人の会員と いうのは一番のユーザーになると思います。その辺も含めて、例にあげられたこの高血 圧治療のガイドライン、何かうわさによると何万部も出たということで、需要も当然あ るのですが、その辺のところは矢崎先生がおっしゃっていただいたように、何か現場で 使いやすいようにというか。これが使いにくいという意味ではなくて、そういうことも 含めた意味での検討をした上で、日本医師会が、会員に対して「このガイドラインを使 って高血圧の治療をしていこう」というようなことの呼びかけができるようなものを医 師会が音頭をとってやってみたいと思います。  もちろんこの検討には、高血圧学会の先生初め、各専門分野の学会の先生方のお力を 借りざるを得ませんから、そういう先生方の力を借りて、日本医師会としては、診療ガ イドライン情報センターというような呼び方をしているのですが、そんな形で、矢崎先 生からもご指摘の「学会でつくったものを、現場でこうやって使っていったらどうか」 という、先ほど矢崎先生はブレークダウンとおっしゃいましたが、ブレークダウンなの かどうかは別として、その辺を検討するものをやっていきたいと、日本医師会としては 考えております。  【高久座長】  今、藤島先生が中心で、もっと実用的なものをつくっておられるわけですね。そうい うことですね。  【谷口室長】  はい。先ほどの説明がちょっと舌足らずでございましたが、昨年のこの本になったも のに加えまして、さらに一般の臨床の先生方にお使いいただけるような要素がないかど うか、今年度、研究をしていただいておりまして、その成果品をまた、多分日本医師会 あたりとご相談をしていただけるのではないかと、私も期待はしております。そういっ たものが一緒になりまして、最後には専門医向け、臨床医向け、その他向けというよう なものも、将来的にはできればいいなということで、考えているところでございます。  【高久座長】  9ページの下のほうに「最新の科学的な根拠を取り入れて数年ごとに更新されるべき である」と。その場合に、「臨床現場からの意見も直接反映できるようにする」と。こ の事については評価推進検討会のときに、何回も議論がありました。「EBMは基本的 にユーザーの意見を反映するものでなければならない」ということが何回も議論され た。この次にある「日本の事情を考慮する必要がある」。これは当然のことで、これは 書き方の順番が逆なのではないか。本当は、治療ガイドラインを作成するときの、これ が最初に来て、そのあと、いろんなモディフィケーションのときに臨床現場からの意見 を参考にすると思うのですが、逆になっていますね。更新のほうが先に来ていますね。  当然、学会の専門家が中心になって……。推進検討会でも、学会が中心になってつく っていただくという結論だったと思います。ですから、これをもっと一般化するとき に、学会が、医師会のご意見をお伺いしながらつくるというのが良いでしょうね。この 場合に「患者を含む国民の意見」とありますが、つくるときに聞けるのですかね。言葉 は良いけれども、実際に出来ますかね。  【福井委員】  更新のときだけではなくて、できましたら、最初につくる時点で、専門学会の先生だ けではなく、プライマリーケアを担われている先生、コメディカルの関係者、それから 欧米では、例えば腰痛のガイドラインですと、腰痛の経験者が1人入っております。最 初にガイドラインをつくるところで、いろんなバックグラウンドを持っている方が入る のが好ましいのではないかとは思います。  【高久座長】  わかりました。そうですね。  【久繁委員】  誠に福井先生のおっしゃるとおりで、多分この前の委員会でも、パネルをつくって、 そういう相互的な形でやるというのが望ましいということで、繰り返し申し上げたの で。今後は、改訂のときなどもそういう工夫が必要なのではないかと思いますのと、も う1つは、先ほどガイドラインの情報の提供のしかたが問題になりましたが、当然専門 医以外にも一般の臨床医の方が非常に大きなターゲットになるわけですが、それは恐ら くこういう厚いモノグラフ以外に、一般のプライマリーケアのお医者さん向けに簡略版 を、非常に使いやすい形でつくって……。  【高久座長】  それはつくるという話ですね。谷口さん。  【久繁委員】  そうですね。それからプラスアルファで、リーフレットみたいな患者向けのものをつ くるということが、やっぱり一般的なんですね。それで、いろいろウェッブサイトなど 出ているのですが、かなりわかりやすい形で、そういうものが提供されている国が結構 あるわけですね。  【高久座長】  そうでしょうね。  【久繁委員】  そういうのが多分、普及のためにはぜひ重要なので。恐らくそれを公表した段階で、 何か意見があったときに、そのウェッブサイトか何かで窓口を開いておけば、意見をし てもらえるということになると思うんです。  【高久座長】  わかりました。藤島先生が、その簡略版をつくられるときに、もう少し委員の範囲を 広げてくれと。それでいいですね。  【矢崎委員】  私が質問した真意は、先生のおっしゃるとおりでありまして。ですからつくるとき に、いろんなところの会が、例えは悪いのですが、例えば医師会版のガイドラインとか そういうのができるより、もうちょっとみんなが使えるような。ですから、もちろん医 師会も加わり、いろんな方が加わったオープンな状況で、谷口さんの言われるその版を つくっていただければ。それはもちろん学会が主導になりますが、一応そういう幅広 い……。 福井先生の今のご意見も含めて、ちょっと考えていただければ、大変ありがたい。  【高久座長】  だから、普及版ですな。  【矢崎委員】  はい。そうですね。  【高久座長】  高血圧に対する普及版をつくれば良いわけですかね。わかりました。その普及版のと きに、この9ページの下の要望を入れていただきたい。改訂をする必要がありますか ら、そういうときには、当然臨床現場からの意見を直接反映するということが極めて重 要だと思います。それがまさしくこの普及支援検討会のテーマの1つですから、普及版 作成のときに広い範囲の方を委員として加えていただきたい。それもいいですね。  【葛西委員】  私はガイドラインを使う一般臨床医の立場からお話しさせていただきます。全国で1 つのナショナルな統一ガイドラインがあっても、なかなかこれをみんなで使いましょ う、という普及は難しいものです。実際、医療のそれぞれの現場、現場で融通がかなり きくようなものでないと難しい。ユーザーの意見を聞くことは大事ですが、ユーザーと いっても均一ではなくて、いろんなところのいろんなユーザーがいますので、それぞれ でガイドラインがうまく応用がきかせられるような、融通のきくようなものになってほ しいというのが、私の希望でございます。  一例を申しますと、これはヨーロッパの家庭医の研究ですが、胃酸が出てきてムカム カしてくる状態(胃食道逆流)に対してどうするかという診断、治療のナショナル・ガ イドラインは、ヨーロッパにもいくつかあるのですが、それを調べてみたものがありま す(Eur J Gen Pract 1999;5:88-97)。その結果、同じ臨床研究からのエビデンスを使っ ていましても、ガイドラインとして出てきたレコメンデーションは、国によってかなり 異なっていたのです。治療では、日常生活のアドバイスを先にしていく国も、最初から プロトン・ポンプ・インヒビターを使う国もあり、診断でも、症状のチェック項目にも バラエティーがあり、内視鏡での診断を優先している国もありました。エビデンスは同 じでも、そこから作られたガイドラインはみんなそれぞれの国の実情で変わっていると いうところに興味があります。  これはヨーロッパの国々での話しですが、日本という1つの国でも、いろんなところ で実情が変わるでしょうし、そういったところで、均一化してかちかちに固まったガイ ドラインでは使われません。使いやすい、応用のきくものにしていただけたら、普及す るのではないかと思います。  【高久座長】  EBMの検討会のときに常に言われたことは、ガイドラインはあくまでもガイドライ ンであるから、現場の経験と両方合わせて診療するのが当然の事である。ガイドライン は一種の原則ですから、現場に応じて変えていくのは当然のことである。ただ、あまり 大きく変えるとまた問題になりますが。ドクターによって違うのと同じように、患者さ ん1人1人も、細かいことをいえば当然違ってくるわけですね。そこのところはそんな にストリクトに考える必要はないと思います。ガイドラインというのはあくまでもガイ ドライン、というふうに理解をすべきではないかと思っています。  矢崎先生、こんな厚いガイドラインはなかなか読めないですね。  【矢崎委員】  そうですね。確かにこれをつくったときは、もう本当に200 人以上の人が文献を探し て、すごく大がかりでやりましたので。これは専門家として、これは英文できっちり世 界に問える、レベルの高いガイドラインですので、ぜひこれは……。で、さっき、ブ レークダウンと言いましたが、もう少し選択肢の幅の広い原則みたいなものを、やはり ユーザー、日本医師会が一番そういうユーザーが多いので、ですからうまくその辺とデ ィスカッションしていただいて、比較的大きなガイドラインをつくっていただければ。 これは先生がおっしゃるように、本当に専門家向けのガイドラインですので。  ただ、辞書的にこれを用いるのは、非常にいいと思いますので。これがすごい部数発 売されたというのは、臨床医がいかにやはり。今、おかげさまでEBMというのが行き 渡って……。  【高久座長】  これはどれぐらい出たんですか。  【矢崎委員】  もう数万部……、10万部近く出てています。やっぱりお医者さんも自分の医療に根拠 を求めたいという気持ちがあって。だから、日本の臨床医の先生方はすごくまじめだと いうことがよくわかりましたね。  【高久座長】  そうですね。  【矢崎委員】  学会がすごくお金がもうかったという話を聞いた……。  【櫻井委員】  これは学会がもうかったんですか。そんなことを聞いちゃいけないかな。2,000 円で 10万部売って、売り上げは2億ですよ。  【高久座長】  そうですね。これは確かに版権が……。  【櫻井委員】  10%の印税としても2,000 万円か。これは本屋さんかな。  【福井委員】  水を差すわけではないんですが、診療ガイドラインは2つの側面から評価されており ます。1つは「EBMの手順にのっとったつくり方がきっちりされているか」という妥 当性の評価、それから「できたものを使って診療内容や、患者さんのアウトカムが本当 によくなったか」という有効性の評価であります。そのような評価をしますと、日本の 診療ガイドラインはインターナショナルなレベルまで恐らく到達していないと思いま す。  といいますのは、最初に「こういう形でつくってください」というつくり方を細か く、検討委員会として出していなかったものですから、各学会でかなりバラエティーに 富んだものができてきているように思います。今後は、できましたら方法論のところを きっちり詰めた上でつくっていただく必要がありますし、学会としてぜひまた「これを 使って医療の内容がどうなったか」ということも、検証するようにしていただきたいと 思っています。  外国では、EBMや臨床疫学の分野の専門家で、診療ガイドラインのつくり方の専門 家がチームの一員になってつくるということも行われておりますので、できましたらそ ういう点も、ぜひご配慮いただければと思います。  【高久座長】  先生、平成12年度にたくさん始めていますから、少し手遅れなのではないですか。だ けど、評価を学会に頼むのですかね。学会でやるのですか。  【矢崎委員】  これは評価は難しいのですが、先ほどの2年にいっぺん、3年にいっぺん、検討して これをブラッシュアップするということは、高血圧学会で決めたんです。  【高久座長】  ああ、そうですか。決めているんですね。  【矢崎委員】  はい。  【高久座長】  文献だけで検討するのではなくて、ユーザーの意見を聞かないといけないでしょう ね。使った人たちの意見を反映するとなると、もし学会で検討するという事は、学会で ユーザーの意見を集めるシステムを持つ事になりますね。  【櫻井委員】  そのことに関連してですが、今、福井先生のおっしゃったことも含めて、ガイドライ ンのいろんな話の中に、今迄の先生方のお話はいろんなことが混ざっていると思いま す。恐らく福井先生がおっしゃったのは、このガイドラインをつくる大もとのところ に、どんなデータベースがあって、そこからどういうものがつくられて、どれを採用し てどうやっていくとかというような、つくるところの作業の部分に、まだ十分でないと いうようなことをご指摘されたのだと思うし。  それから今度はできたもの、学会なら学会が「ガイドラインができた。これはでも、 割と学会の専門家向けだよ」というようなお話があって、「それではそれを一般に普及 するにはどうするか」というようなところの段階がある。さらにそれを実際使ったとき に、評価という意味は、1つにはまさにガイドラインによって実際に患者さんの状態が よくなったとか、国民の健康状態がよくなったというような成果と呼ぶべきようなもの の評価もあるだろうし、使い勝手がどうとかそういう切り口での評価もあると思いま す。それからさっき高久先生がおっしゃった、われわれとしてもそういう意味で先ほど 申し上げたわけですが、ガイドラインのユーザーとしては日本医師会の場合、会員とい う大きな対象がありますから、当然会員からフィードバックされる意見が学会に戻され るというようなことの窓口は当然やるべきだと思います。また学会自体としても、例え ば新しい薬が出たとか、考えが変わったとか、「新しいエビデンスがほかから出たか ら、学会みずから変えたい」とか、そういうこともあるでしょうから、ガイドラインと いうものを大もとからつくって、それからどうするというと、流れの中のいろんな段階 のものがあって、もちろん全部が必要なのだけれど、議論があちこちへ行っているか ら、なかなかまとまりにくい部分があるかなと思って聞いていたのですが。  もちろん全部が必要なのですが、恐らくその中のいろいろな場面で、しかも同じ評価 といっても、いろんな切り口があるのかなと思っていまして。  【高久座長】  そうですね。第1回目ですので、いろいろなご意見を自由に言っていただくような形 でお伺いしているのですが、10万部売れたということは……。  【矢崎委員】  確かな数字ではないです。5万部は少なくとも売れたという話ですね。  【高久座長】  確かに、ごく短期間に2刷までいっていますね。普及版をつくる必要があるのでしょ うね。  【福井委員】  もっと見やすいものにする必要があると思います。  【開原委員】  これ自身でも、また普及版をつくったときにでも、ぜひ電子化されたものをつくっ て、それも一緒に手に入るようにしておいていただけると大変ありがたいと思います。 最近の傾向としては、病院も随分コンピューター化されてきておりまして、臨床の現場 にこういうガイドラインがすぐ、画面の上で見られるようにするシステムが今後普及す る可能性があります。もう外国では実際にそういうのはたくさんあります。ですから、 本の形でもいいのですが、いちいち本を見なくてもその場ですぐ出てくるということが 考えられますので、ぜひそういう形でお願いをできるとありがたいと思います。  (3)わが国における有用な診療のための情報提供のあり方についてのフリートーキ ング  (4)今後の検討会の進め方について  【高久座長】  今、いろいろご意見が出ましたが、この検討会の検討項目について、一応案のような ものを事務局で用意していますので、説明していただけますか。 【武末補佐】  お手持ちの議事次第資料の一番最後のところに、右肩に資料3と書いてあります。 「保健医療技術情報普及支援検討会における検討項目(案)」としまして、3つ、大ま かにご提案してあります。これは、アラビア数字の1、2は前回の検討会で「今後検討 が必要であろう」と言われていたものでありますし、3についてはそれ以後の調整か ら、「こういう情報の提供に関する公民の役割分担についてを、きちんと明確にしてお く必要があろう」ということで、検討項目とさせていただいています。  具体的に、1としまして、「医療現場に役立つ診療情報の提供システムのあり方につ いて」ということで、丸1としまして「専門医が求めるシステム」、丸2としまして 「一般臨床医が求めるシステム」、丸3としまして「研修医および医学生が求めるシス テム」と。今、ちょうど先生方がお話しいただいたところを、少し整理させていただい た形になっているかと思います。  続きまして、アラビア数字の2。「求められる情報提供の具体的な方策について」と いうことですが、丸1としまして「医学文献やガイドラインはどのようにして収集・加 工していくのか」、丸2としまして「個別課題に関する系統的な評価(レビュー)はど のように行っていくのか」。これがアウトカムであり、手法であるところともいえるの かもしれません。丸3としましては「情報提供システムの運用について」どのようにし ていくか。で、その情報提供システムの運用については細かく、(イ)提供すべきシス テムの内容はどうするのか、(ロ)どのようにして有用なデータを収集していくのか、 (ハ)収集したデータをどのように整理していくのか、(ニ)整理されたデータをどの ように提示するのか、と少し細かく分けてございます。  アラビア数字の3としましては、「情報提供に関する公民の役割分担について」とい うことで、丸1としまして「どのような体制で情報提供を進めていくのか」、丸2とし まして「国の役割は何か」、丸3としまして「民間の役割は何か」、丸4としましては 「民間の役割に対する国の支援はどのようにしたらいいのか」と。  ということを、一応案としまして提案させていただいております。いろいろ過不足ご ざいますので、どうぞ、また先生方のご意見、よろしくお願いします。  【高久座長】  どうもありがとうございました。これについて、何かご意見はおありでしょうか。  【久繁委員】  これ、まとめていただいたのですが、いくつかつけ加えて検討していただきたいと思 うのは、1つは利用者ですが、専門医、一般医とあるのですが、患者の利用情報。イギ リスなんか、オン・コールでこれは24時間アクセスできて、簡単な病気については自覚 症状があろうというので、「どういうことをしたらいいのか」というところまでありま すから、やっぱり患者のそういう情報というか、利用者をかなり重視した形で。  先ほど開原先生がご指摘のように、もうウェッブサイトで電子化したものが一番普及 力もあるので、そういう情報センターをまず構想して、その中で利用者を、特に一番利 用が多いのが一般医の人と、それから患者、それから専門医という順序だと思うのです が。  【高久座長】  専門医はもうかなり知っていますしね。  【久繁委員】  ああ、そうですね。  【高久座長】  あと、患者さんでしょうね。家族の人もね。  【久繁委員】  ですから利用者がそれだけあって、恐らく利用情報の種類がまたあると思うんです。 で、先ほどからずっと集中して論議しているのは、診療ガイドラインだけですが、しか しそれの底になるような、例えば外国だとMEDLINEとかPubMEDとか、そう いう一次情報のやつもありますし、それからそれを評価してもう二次的に集めたコクラ ン・ライブラリーとかそういう、少しもう手が加わって、かなり自由に使えるような情 報になった種類がある。そういうものの使い方というのが、また別のランクであるんで すね。  それからもう1つは、恐らくそういう情報をどうやって使ったらいいのだろうかと。 実際にウェッブサイトへアクセスしたり、キーワードを含めて検索する、そういう情報 学のマネージメント能力というのは、一般医もそれから専門医の人も、恐らく患者の人 はもっと非常にきびしいと思うのですが、そういうようなノウハウをわかりやすく提供 するようなレベルのこともつくるようなことが、本当に必要なのではないかと。ですか ら、そういう大きな構想をぜひここで検討していただいて、具体的にどこでどうするか というのは、またいろんな、各所各所で責任を持っていらっしゃる方がいらっしゃいま すので、多分合意の上で、またそういう構想のもとで何かすべり出すというようなこと が必要なのではないかと思いますがね。  【高久座長】  そうですね。おっしゃるとおりで、電子情報を使うと、フィードバックが一番簡単で すかね。患者さんからのフィードバックを受けて、ガイドラインを改訂することなど も、取り上げる必要があると思います。そういうシステムをつくる必要があると。随分 お金がかかるでしょうね。国の支援というのは、このお金を出すということになるので しょうね。  【矢崎委員】  診療ガイドラインは、医療提供のガイドラインと思われているかもしれませんが、今 問われているインフォームドコンセントとか、そういう患者さんの選択とかという場合 にも、やはりそういう情報が重要だと思いますので、先ほどの「患者さんの目から見 た」という視点からのわかりやすい、インフォームドコンセントの、患者さんの診療の 選択に役に立つ情報というか、システムもやっぱり今後、必要ではないかと。  【高久座長】  そうですね。  【矢崎委員】  ぜひ、そういう面からも。  【高久座長】  患者さんのところに別の情報が入ると困るわけですね。  【矢崎委員】  ええ。  【高久座長】  共通にしておかないと、インフォームドコンセントがとれませんから。しかしどうい うものをつくるにしても、せっかくこれだけ立派なガイドラインができていますから、 これをある程度基本にしないと。  【矢崎委員】  そうですね。  【高久座長】  また別なものではおかしなことになりますから、学会の協力ということはどうしても 欠かせないと思います。この検討会では、有用な診療のための情報提供システムの整備 ということが、先ほどの久繁先生のお話にもありましたように、一番重要なことだと思 いますので、その整備の具体案が、何か事務局のほうでありますか。具体的なことにつ いて。  このことについては久繁委員から、先ほどからもいろいろお話しがありましたが、イ ギリスの電子健康図書館が参考になる様です。この次の会で、詳しくご説明いただきた いと思います。  【久繁委員】  恐らく世界でいろいろそういう試みはやられているのですが、アメリカの場合はNa tional Library of Medicine、NLMですか、あそこでP ubMEDとか、かなり包括的にやっていますし、HR2ですか、そういう評価の局が あって、そこでもウェッブサイトをつくって、クリアリングハウスというガイドライン の情報センターと。結構大きなものをつくっているんです。ただ、その連携という面で は、アメリカの国を反映しているのですが、連携が非常に悪くて、それを統括して使う ようなシステムがなかなかできていないんですね。  【高久座長】  コクランは、情報を提供するだけですね。  【久繁委員】  あれは、システマティック・レベルでは、ある情報についてそれを分析しているわけ ですから、それをいかに使うかというのはまた別の話で。  【高久座長】  また別なんですね。  【久繁委員】  はい。そういう意味では国際的に非常に貢献しているのですが、ただ小回りがきいて 個別に非常に使いやすいというのは、やはりイギリスが一番、EBMを国際的に広めた ような基盤もあってやっている。で、そこはとにかく、国として国民の健康をよくする ための情報戦略という、かなりかっちりした案をつくって、その中で、電子図書館とし て本当に患者向け、一般臨床医向け、それから専門医向け、しかも横断的に疾患ごとに そういうのを組み合わせた形で。例えばがんならがん、脳卒中なら脳卒中とかそういう 形の、疾患ごとのまとまりをもってつくるというような、ツリー型のいろんな枝分かれ したような格好で、でも窓口はかなり入りやすくやっているというようなことで、シス テムをつくる……。  【高久座長】  イギリスではファミリー・プラクティスの人がオフィスを持っていますね。そういう 人たちが、アクセスしやすいようになっているのでしょうね。  【久繁委員】  そうでしょうね。ですから、非常にそういう意味では使いやすい。ただ、ユニットご とで、例えばガイドラインについてはまた、ガイドライン特別の情報センターをつくっ たり、そういう一次の情報で評価するような機構については、この前の推進検討委員会 でもお話ししました、そういうセンターをつくって、そこと有機的に結んで、かなりも う整理された情報を使えるような格好にしていますので。日本はまだ、そこまで行って いないので。だから、そういうこともちょっとにらみながら、先ほど出た各司、司とい いますか、そういうところで、そういう機能を発揮するようなことをする……。  【高久座長】  お金は国が出しているのですか。  【久繁委員】  そうですね。明らかにそうです。健康投資という意味では、国民の健康をよくすると いうことと、医療の質を向上させるというのは、やっぱり国家的な課題だということ で、かなり投入していますね。だからそういう試みで、本当に、例えば患者向けの情報 でも、看護婦さんがいて、24時間とにかくオン・コールで電話の相談もするし、それか ら見ても、体の図があって「あなたの問題があるところはどこですか」という。そこを 押すと「どういう症状ですか」というのを聞いたりして。かなり工夫した試みをやって いるようですね。  ですから、そういうような情報を、とにかく機能的に全体を押さえてどういうふうに するのかという意味では、非常に進んだ試みだと思います。で、ガイドラインの情報選 択も、かなり国際的にいろんな……。まあ国ごとにいろんな特徴があるのですが、整理 されてきて、そのガイドラインの使い方はどういうことを……。ガイドラインのガイド ラインをマニフェストでちゃんとつくって、で、具体的に登録して、しかも質を評価し て、信頼のできるものだけとりあげて、それをウェッブサイトで公開して意見交換をす るというような形で進めていますので。  日本も決してそういう面では、情報の技術革新も進んでいますので、開原先生なんか がいらっしゃるので、そういうことをどんどん進めていただいて。やれば、かなり現代 の状況に追いついていくような可能性が、非常に高いのではないかと思いますが。  【葛西委員】  私は英国医学会のBMJ Publishing Groupが出しています、EBMを支援するツール であります「Clinical Evidence(クリニカル・エビデンス)」の編集委員をやっており ますので、英国の事情で知っているところを少しお話しいたします。そのBMJ自体は 週間の学術雑誌ですが、これは日本からでもインターネットで自由にアクセスして無料 で全部の内容(full text)を見ることができて、しかも自分の興味のある分野とか関心 のある疾患、トピックスなどを登録しておくと、毎週それに関係する論文や記事が掲載 されるとそれがメールで配信されてくるんですね。「今週号ではあなたが興味を持って いる分野のこれらの論文が掲載されています。」と。  英国で構築されているNational Electoric Library For Health(NeLH)には、そのノウ ハウをとり入れるようです(BMJ 1999;319:1476-1479/BMJ 2000;321:1309)。それを使う ことで、例えば英国の家庭医が自分の知りたいことを登録していると、それに関する新 しいエビデンスを含む論文や本が出たらすぐにその情報が配信されてくるのです。これ は将来的には一般の市民も利用ができるようになるそうで、例えば「自分の家族が白血 病で、骨髄移植についての最新の情報を常に知りたい」というふうに登録しておくと、 それについてのエビデンスが、研究データの生の情報だけでなくて、それらのデータを 臨床疫学の専門家がしっかりと評価して「このエビデンスの強さはこのくらい」、「こ れが現時点で最良のエビデンス」、というように配信されてくるシステムです。将来は それが、パーム型のコンピューターにも配信されるようなことになるという……。  【高久座長】  何型ですか。  【葛西委員】  パーム(palm)型ですね。手のひらに乗るような小さな電子端末やモバイル・コンピ ューターに配信されるということです。診療中にも適宜それを参照しながら最新のエビ デンスを考慮した診療をすることができるような環境になります。 私の友人は、そのBMJから独立して、そうしたシステムとサービスを専門にする会社 (Evidence Based Strategies Limited)をつくりました。とにかく何かすごい勢いで情 報普及が進んでいるように感じます。  【櫻井委員】  ダブったお話をすることになるかもしれませんが、開原先生から出されたような電子 化に関することとか、もちろん普及とフィードバックも含めてですが、日本医師会とし ては、現在でも日本医師会のホームページの中で2つ、一般向けのものと会員向けとい う形にしているのですが、一般向けのほうには、いってみれば今までの家庭医学事典み たいなものが、健康情報として入っているわけですが。  【高久座長】  一般向けというのは、一般の人?  【櫻井委員】  一般向けというのはだれでも、要するにホームページですから、だれでもアクセスで きるということで、それと会員だけのメンバーズルーム、パスワードで入る部分とに分 けているわけです。  日本医師会で出している雑誌、医師会雑誌みたいなものは、診療マニュアルというよ うな名前がついていて、ガイドライン的な要素を持っている部分もありますが、それは メンバーズルームだけにしか入っていません。今、お話であったように、もう少しきち っとした、従来の家庭医学全書ではなくて、エビデンスに基づくような一般向けのもの があれば、当然、日本医師会のホームページ、一般の人が読めるところにものせていく べきだと思っています。  極端にいえば、入れるものさえあれば入れること自体、割と簡単にというか、いろい ろそれのためのお金とか、マンパワーも必要になるとは思っているのですが、それはで きると思っています。  それから、実際の診療という、ユーザーというか、もちろん国民もなのですが、現場 の医師という意味では、まだ少し先の話になるかもしれませんが、日本医師会とすれ ば、十数万人の会員を全部ネットワーク化するようなことを考えています。そうすれ ば、いろんなものがすぐ伝わるし、また戻ってくる、というようなことをやろうかなと 考えています。  だから、この高血圧症のガイドラインの話、さっきから出ていますが、これは版権の 問題とかいろいろあるし、内容の問題もあるのですが、入れていいといえばすぐにで も、日本医師会のホームページにこれを入れることは恐らく簡単だろうと思うんです。 しかも、メンバーズルームならメンバーズルームに入れて、一応「医師だけが見てくだ さい」ということをやることは、例えばこれをただそっくり入れるという話だけをする のであれば、すぐできてしまうことだなとは思っています。  ただ、それをどういうふうにやって実際に体系づけて、どうやって実行していくかと いうことは、少し考えなければいけないなとは思います。  そんな形で、一般の人からも相当なアクセスが来ていますので、家庭医学から少し程 度を上げたものも出しています。それからトピックス的に、例えば、小児麻痺のワクチ ンでちょっと副作用が出たというようなときに、そのあと「心配ないから受けていい」 というようなことものせています。一般の人にとってはそういうことが関心があるだろ うというので、ホームページをあけると一番上にそういうような情報をのせるというよ うなことも、やっております。それをもっときちっとした形で系統だって、エビデンス に基づくような情報という形で広めていければ非常にいいな、と考えております。  【開原委員】  今、櫻井先生がおっしゃった中で、私は1つ大変大事なことがあると思うのですが、 それはコピーライトの問題です。私は、こういうガイドラインが、そもそもコピーライ トを持つべきなのか、持つべきでないのかというと、政府刊行物はみんなコピーライト はないですね。ですから、だれがどういうふうに引用しても、どういうふうに使っても いいというふうになっています。私はそういう意味で、ある程度国がお金を注ぎ込んで つくったガイドラインであるならば、少なくともコピーライトを持たない形で提供され るとかですね。何かそういう原則を、はっきりと立てておく必要があるのではないかと いう気が……。  【高久座長】  これから普及の支援システムをつくっていくという話のときには、コピーライトはな しで進めるべきです。そのかわり、国がお金を出してということですね。そうしない と、問題が残りますね。このガイドラインの場合にはしかたがないですかね。  この 様なガイドラインにコピーライトがあるのはおかしいかもしれませんね。共通のガイド ラインをつくって、それをモディフィケーションしていって、治療のスタンダードをつ くるとするならば、しかもそれを国が支援する形で行うならば、コピーライトはないよ うにすべきでしょうね。当然、一般の国民の方もアクセスできるような形にすべきでし ょうね。  【開原委員】  もう1つよろしゅうございますか。この資料3の1、2、3の検討項目の中で、私は この委員会が普及支援検討会だからこれでいいのかなという気もするのですが、何を申 し上げたいかというと、先ほど久繁先生もちょっとおっしゃったと思うのですが、こう いう情報提供にはガイドラインという形になった、すでに加工された形のものを提供す るのか、エビデンスになる部分をもきちんとした整備をして、そこの部分も日本でも整 理されていくような、そういう何らかの方策をとるのか。  【高久座長】  前者はむしろ専門家向けになりますかね。  【開原委員】  いいえ、必ずしもそうではないです。実はアメリカで、National Libr ary of MedicineがMEDLINEをつくったわけですね。それで、M EDLINEは最初、研究者向けだというふうにみんな思っていたわけです。  【高久座長】  専門家向け。  【開原委員】  専門家向けだと。だから当然医者向けだと、みんな思っていたわけですね。それで最 初は有料で提供していた。ところが、所長はリンドバーグといって、私は非常に親しい のですが、彼は今から大体10年ぐらい前ですか、大きな方針転換をしたんです。そのと きに「国が税金を注ぎ込んでMEDLINEをつくっている以上は、それを利用するの はだれでも利用できなければいけない」と言って、「これからは積極的に一般国民もど んどん利用してくれ」と言って、ある時期からそれは全く無料にした。それがPubm edなのですが。それで日本もそれは無料で使えるようになってしまったんですが。  この間、NLMへ行っていろいろまた議論をしてきたのですが、現在そのMEDLI NEをだれが使っているかというと、医者が使っているよりもむしろ一般市民が使って いるほうが多いんです。それが、彼自身も最初は、そんなことはあり得ないのではない かと思っていたと言うのですが、実際にそれをオープンにしてみたら、意外に一般の人 がそれを使う。  【高久座長】  アメリカはもう何でもありですからね。一般の人がどんどんメールを通じて薬を買え るから、当然でしょうね。  【開原委員】  ええ。それで今、National Library of Medicineはさ らにそれを一歩進めて、MEDLINEplusというのを最近つくったんです。これ は、実際にアクセスしてみると非常におもしろいのですが、MEDLINEの一般向け の非常にやさしい使い方とかですね。それだけではなくて、薬の情報とか最近の医学ニ ュースとか、さらには辞書がついているんですね。言葉がわからないとそのディクショ ナリーを実際に引いて、それを調べながらMEDLINEを使うことができるとか、何 かそんなようなものを最近つくっています。  何を言いたかったかというと、そういう、MEDLINEのようなエビデンスにあた る部分が、日本は非常に弱かったのだと思うんです。  【高久座長】  その事は前の推進検討会で随分議論されました。  【開原委員】  日本の文献に関していえば、『医学中央雑誌』があったわけですが、それは民間の方 が営々としてそれをやっておられて、ほとんどパブリックな経済サポートはなかったわ けです。しかし、私は、『医学中央雑誌』のようなものがあるというのは本当にすばら しいことだと思うんです。  ですから、せっかくああいうようなものがあったり、それから日本でもいろんな研究 が行われているわけですから、そういうものを含めたエビデンスの部分に対しても、私 はやっぱり何らかのサポートをするとか、それの交通整理をするとか、そういう視点も 必要ではないかなという感じがしております。  そのことと、このガイドラインがセットになって、本当の意味での情報提供体制がで きてくるのではないかと、私は思っております。その辺まで、議論をしていただくとい いのではないかなと、そういうことでございます。  【高久座長】  そうですね。  【葛西委員】  今、開原先生が言われたことは、私も常に思っておりまして、賛成します。で、エビ デンスということを軸として考えると、エビデンスがリザルトとして書かれている生の 研究が一方にあります。そして、それを検索するためのものとしてMEDLINEが対 応します。それからいくつかの研究をまとめたシステマティック・レビューがあって、 そこでのエビデンスはより重みがあると考えられています。そして、それを検索するた めのものとしてコクラン・ライブラリーがあります。さらにクリニカル・エビデンスの ように専門家がそのエビデンスのよしあし、重さをチェックして、現在のベスト・エビ デンスはこうだ、と示す資料があります。ここではいくつかのエビデンスが評価を経て 並べられて、それをどう臨床に応用していくかはユーザーに委ねられるのです。そし て、もう一方ではガイドライン、あるいは標準的なテキストなどがわれわれのツールと してありますが、こちらはエビデンスを示すだけでなくて、それに一定のポリシーを加 えて、診療の行動指針として示しています。それぞれのツールの特徴を知ることが大事 です。  【高久座長】  本来、それを全部網羅するのでしょうね。やるとすれば。  【葛西委員】  ええ。そしてこの検討会でわれわれが今行おうとしている普及支援のシステムという ときに、ここの資料(資料3)では、「医療現場に役立つ診療情報の提供システムのあ り方について」として、ユーザーで分けております。専門医が求めるもの、一般臨床医 が求めるもの、というふうになっておりますが、それぞれどの分野であっても、専門医 であってもわれわれ一般臨床医であっても、日常遭遇する問題の大体80%ぐらいは、 自分の今までの経験で対応できる(「自己ガイドライン」と言えます)とか、ちょっと 忘れれば教科書を見る、あるいはガイドラインを見るのでいいかもしれない。ですけれ ども、15%ぐらいのものは、ちょっと複雑で、どのぐらいエビデンスがあるのか、そ の強さはどうか、ということをクリニカル・エビデンスなどの二次資料を調べる必要が あるかもしれません。それから、もう5%かあるいはそれ以下かもしれませんが、それ はごくごく例外的な問題で、自分でコクラン・ライブラリーやMEDLINEにあたっ てみなければだめな場合がそれぞれの分野であると思うんです。  ですから、どの分野でも、どの立場でも、ユーザーのカテゴリーで分けるという提供 システムの考え方にプラスして、それぞれのカテゴリーのユーザーが、どんな問題を扱 うかについての考慮も必要です。日常診療の中で遭遇するコモンな問題、複雑な問題、 そしてさらに例外的な問題、という3段階に対して、それぞれどのツールを使ってやっ ていけばいいのかということまで含めていかないと、なかなかEBMの普及浸透は難し いのではないかと思います。  【高久座長】  そうですね。この資料3で、表現はいろいろですが、1の中に「国民一般が求めるシ ステム」と入れれば、今までの議論のことは大体、含まれているのではないか。3のほ うのことは別にしまして、1、2の中に「どういうシステムが必要なのか」ということ が大体書かれていると思います。先ほどは医学中央雑誌が必要だというお話がありまし たが、もう1つ、国際医学情報センターもある。そういうところに頼らざるを得ないと 思うのですが、そういうところの協力を得ながら情報提供をしていくというシステムが 当然なければならないし、それから診療ガイドラインを随時提供する。それからユー ザーの意見を聞いて、ガイドラインをモディフィケーションする。いろんな機能を持た ないと。もしやるとすれば、1つの機能だけというわけにはいかないでしょうね。  大きなシステムになりますね。  【福井委員】  その大きなシステムについては、先生方のおっしゃるとおりだと、私も思います。開 原先生にお伺いしたいのですが、どれだけすぐれたエビデンスや診療ガイドラインがで きても、診療の現場で医師が疑問に思ったときに、パッと欲しい情報にアクセスできな いとあきらめてしまうのではないでしょうか。  【高久座長】  それはそうですね。  【福井委員】  それで、前回の委員会のときも、20秒前後で欲しい情報がパッと出ないと、あきらめ てそのまま診療を続けてしまうということが、指摘されています。20秒前後で欲しい情 報がパッと、3、4回押したら自分の欲しい情報が出てくるようなコンピュータができ るのでしょうか。  【開原委員】  実は今、アメリカで、いわゆるメディカル・インフォーマティックスというのです が、それをやっている人たちが一番関心を持っているのは、福井先生の言われたことな んです。  【高久座長】  そうでしょうね。  【開原委員】  例えばスタンフォードなんかでつくっているシステムは、最近はいわゆる電子カルテ を使っているところもありますから、臨床の現場に実際にいろんなクリニカルなプロブ レムがあると、キーワードみたいなものを打つと、コンピューターが、極端なことをい えば世界中のデータベースを探して、その中でそれに一番近いものをMEDLINEか ら引っ張ってくる、クリニカル・ガイドラインから引っ張ってくる。そういうもののリ ストがパッと出てくる。その中で自分が興味のあるものを、さらに読むことができる。  まだ完全にできたわけではないんですが、今、一生懸命になってそういうことを計画 している。つまりデータベースを横断的に一度にサーチできるような、しかも世界中に 伝わっていくようなもの、それが夢なんですね。  ただ、なかなか完全な形ではできないのですが、領域を限るとかなりそれに近いもの が今、できつつあることもまた事実です。  【高久座長】  そこまで完全でなくても、手元の情報でもいいから、それをパッと提供することです ね。世界中のを集めなくてもいいから、まあそこそこのものでも、エビデンスのあるも のをパッと提供できればいいと思いますね。  【福井委員】  最低限、診療ガイドラインだけでも、非常に早い速度でピックアップできるような、 しかも目の前で簡単な操作でできるようなコンピュータ端末があれば、すごく普及する んじゃないでしょうか。  【高久座長】  ええ、高血圧の患者で何か問題が生じたときに、この内容で一番適切なものをパッと 拾い出してすぐ出せるというシステムは、できないことはないでしょうね。  【開原委員】  実はそれをやるためには何が必要だというと、診療ガイドを電子化するときに、ある 程度形式を標準化していくことが必要なんですね。そうするとこの部分にはこれが書い てある、この部分にはこれが書いてあるということがすぐわかるものですから、そこを コンピュータで探すことが非常に楽になる。  その研究者が今、何を考えているかというと、Clinical Guideline Exchange Format という、電子的な形式を提案しているんです。まだ現実にそうはなっていないんですけ れど。その辺がある程度整ってくると、自動検索ができてくるという話になってくると 思います。  【福井委員】  これから、そういうことを視野に入れたものをつくらない限りは、結局最後の利用者 である医師が、「あとで、夜勉強しよう」と思ってしまうと、絶対に勉強しないと思い ます。その場で、すぐアクセスできるようなシステムを考える必要があります。  【久繁委員】  今、論議されているような話は、実はほとんど、多くは実現されているところもあり ましてね。先ほど言ったように、キーワードを入れると、ガイドライン、それから二次 的な評価をしたエビデンス・ベースのレビュー、それから実際のデータ、それからそう いう関連の情報を一挙に引くような、トリックというデータベースなんかももうできて いるんです。それは収録している雑誌だとか情報の種類は全面的ではないにしても、だ から一瞬のうちにもう出てくるわけです。  だからイギリスなんかでも、患者との対話で15秒以内に必要な情報、それから患者の 総合的な検討で2分以内に必要な情報、1週間以内にトレーニングのために必要な情報 と、レベルを分けて、それが実現できるような格好でそういう情報センターを構想し て、それに向けてネットワークをずっと張り巡らしてやっているというのが、現状だと 思います。で、実際にある程度実現されていますし。例えば先ほどのガイドラインのク リアリングハウスは、実は40数項目でもうショート・サマリーと、それからかなりコン プリートなサマリー、要約をつくってもう一挙にアクセスできるガイドラインについて はわかっていますし、それを相互に比較するようなフォーマットがもうできていますか ら、今でも利用できるわけです。  ですから、日本でもやる場合は、当然そういうのを視野に入れてやったら非常にいい と思います。  【高久座長】  次回に久繁先生にその付近のことについて、少し詳しく、時間をとってお伺いしたい と思います。久繁先生、ご準備いただければと思います。そのお話を聞きますと、情報 普及の支援体制がもう少し具体化して、どのような規模でどのようなものかということ が、皆さんのイメージとして出てくると思います。久繁先生、よろしくお願い申し上げ ます。  【矢崎委員】  ちょっと一言よろしいですか。この高血圧のガイドラインをつくったときの経験で、 やっぱりMEDLINEで文献をリストアップするのは比較的、外国のはできますし、 それから日本のは『医学中央雑誌』でできたんですね。ただ、それを全部読んで評価を するというのが一番大変だったんですね。  【高久座長】  これは大変ですね。  【矢崎委員】  ですから、MEDLINEで簡単に引けますが、本当にエビデンスにどういう位置付 けになるかという、それがやっぱりポイントになるんじゃないかと。  【高久座長】  ですから結局、学会の人がある程度重要な役割をしていただかないと、本当はできな いでしょう。集めるのは簡単ですが、それを評価をして、今度は皆さんに正しい情報と して発信するのには、専門家の集団がどうしてもいないとできない。ということは事実 ですね。  【野添委員】  その件に関して、私はデータベースをつくるほうなのですが、AHRQのエビデン ス・レポートを解析していまして。文献検索のほうです。その次に、その文献をエビデ ンスの対象にするかどうかというときに、専門家の委員会で、いろいろ基準を、クライ テリアを決めて、それでセレクションしているみたいでね。その基準が一番重要なこと で、それで網をかけて必要な文献を通していくというのが。  【高久座長】  そうですね。  【野添委員】  だから、数千件選んだ中で、200 件あるいは数百件まで落としていく。そうやってい るわけですね。  【高久座長】  基準は専門家がつくって?  【野添委員】  もちろんそうです。  【高久座長】  網をかけるのは、専門家でなくてもいいわけですね。  【野添委員】  ええ、まあわかるところはですね。例えば、サンプル数は10人以上だとか。  【高久座長】  そういうのはですね。  【野添委員】  だからそういう粗いものは。そのためにはやっぱり、例えば抄録もちゃんとしていな ければいけないということになるわけですね。  【高久座長】  そうですね。ほかにどなたか?  【矢崎委員】  私は福井先生に反するかもしれませんが、AHCPRにより定められたエビデンスの 重さのあれがありますね。例えばRCTが一番、エビデンスとしてポイントが重いと か、ありますね。しかしRCTというのは、結局は、全部それでカバーできないわけで すね。で、意外とあるところに集中して、RCTのデータがあるというわけで、他のと ころは全然ないということで。僕は、そういう上意下達的なセレクションで本当にいい のかどうかというのも、ちょっと実際の診療にあたってもなかなか難しいところがあっ て。やはりある程度、みんなが、一般性のあるといいますか、一点豪華主義ではなく て、広い範囲で日常臨床の参考になるような文献をそろえていくというのも1つの道で はないかということを、ここで項目に入れていただければ大変ありがたいと思います。  【福井委員】  その点につきましては、決してRCTでなくてはだめだというわけではありません。 RCTがないところは観察研究のものでも当然いいわけです。そのことを明示さえして おけばよいと思います。  【矢崎委員】  ありがとうございます。  【高久座長】  RCTがすべてではないわけですね。  【福井委員】  最近では、観察研究も、ある基準を満たしたものはRCTと同じくらい結論が正しい という論文も出されていますので、日常診療の中で質の高い観察研究を日本でたくさん やればいいのではないかと思っています。  【高久座長】  RCTは、だんだんやりにくくなってきているでしょう?  【福井委員】  やりにくいし、お金はかかり、時間はかかるし、大変です。  【開原委員】  今、ずっとJAMAが、「医学文献を読むための利用者の手引き」という連載をして いますが、その中のどういうふうにセレクションしていくかということについてのガイ ドは非常によく書けている。今、あの中でも、RCTだけではないということは随分言 っていますね。  【高久座長】  でしょうね。  【葛西委員】  あと、研究する対象が治療についてなのか診断についてなのかの違いもあります。  治療についての研究は比較的RCTをしやすいのですが、それが診断についてという ことになると、なかなかいままで質の高いエビデンスは少ないのが実情です。さらに、 治療をしたあとの患者の満足度であるとか、そういうアウトカムになると、どう評価し たらいいか、研究の方法がまだまだの段階です。ですから、どれを良いエビデンスとし て考えていくかというあたり、かなり広い間口でとらえていかなければいけないのでは ないかと思います。  【高久座長】  きょうは第1回目ということで、皆さん方からいろいろご意見をいただきましてあり がとうございました。2回目は5月14日の3時ということになっていますので、よろし くお願いします。次回は最初に久繁先生から、イギリスを中心として外国のことをお聞 きいたしまして、そのあと、情報普及支援のあり方について、いろいろご意見をいただ きたいと思います、よろしくお願いします。本日はどうもありがとうございました。  【事務局】  どうもありがとうございました。 (了)  照会先 厚生労働省医政局研究開発振興課  医療技術情報推進室  (担当)武末、高橋  (代表)03−5253−1111 内線2589,2588