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第2回身体拘束ゼロ作戦推進会議議事要旨

1 日時及び場所

平成13年3月5日(月)14時00分〜16時00分
厚生労働省省議室(合同庁舎5号館9F)

2 出席委員

青柳、井形、市原、木下、見坊、斉藤、笹森、高崎、田中、外山、時田、橋本、山口、山崎、吉岡 各委員

3 発言概要

・事務局より委員の出欠状況と資料の確認。
・山崎委員よりマニュアル分科会の審議状況及び手引きの概要について説明。
・事務局より手引きを読み上げ、詳細について説明。


(井形座長)

 現実の問題も重要だが、それ以上に、身体拘束ゼロを目指すという姿勢が重要である。そのためにも、各委員の先生からいただいた意見を取り入れて、できるだけ早くこれが現場へ届くようにしたい。各委員の先生には、自由に発言していただきたい。

(青柳委員)

 内容的によい。個人的感想になるが、スタッフの人数不足という問題について、この内容でよいと思う。法律で人員配置を決めよという動きがあるとも聞いているが、個々の状況に応じて、スタッフの数を決めるべきである。ソフト(ケアの中身)をどうするかで対応できると考える。
 ただし、この考えでいくと、後半に記載されている判例のケースで、ケアマネジメントどおりに頻回な見回りがされていなかったことへの責任が問われるとあり、これとの整合性をどうとるのか。前者は納得できるが、後者について、人手が十分にあれば頻回な見回りができたと言われた時に、どう対応するのか。この点について整合性がとれるようにしたらよい。

(木下委員)

 スタッフのところで成功例が書いてあるが、これらは基準より多い人数で対応しているところが多い。現状で、どこでもできるかというと、難しいところもあるよ思う。介護療養型医療施設については、二年後に現在の2:1から減らすということになっており、この場合には、現状でやっているものができなくなる可能性があるということを考慮してほしい。

(見坊委員)

 目を開かされた思いがする。身体拘束に対する理解を深めなくてはならない。危険防止のために身体拘束という実態があると認識していたが、手引き書を読んで全くこのとおりだと思った。
 預けさせてもらっているという意識を持つ家族が、病院や施設に意志表示をすることは難しいかもしれないが、これができるようにならなければいけない。施設の方にお任せするだけではだめということ。
 また、家族もこういう認識をもって在宅介護をしなくてはならない。在宅での事例があれば積極的にとりあげてほしい。

(井形座長)

 まずは施設からだが、ゆくゆくは在宅にもこれが普及することを期待している。

(山口委員)

 この手引きはわかりやすい。現場のデータが集約されていることを評価する。いくつか意見を言わせていただく。
 まず、現場が強い意志を持つことが何より大事。これは「寝たきりゼロ作戦」の時と同じこと。作られた寝たきりとも言われていたが、寝たきりゼロの時には十年かかった。身体拘束をなくすのにも時間がかかると思う。二点目は家族への説明。拘束を求める家族に対しての説明は、大変難しい問題である。将来的に、スタッフのケアカンファレンスの場に、家族にも加わってもらってはどうかと思う。三つ目は痴呆の問題。施設と専門医との連携は不可欠。専門医の意見を取り入れるべきである。最後に、身体拘束ゼロは、最終的には在宅までいかないといけない。施設と在宅は平行してやりたいところ。理解してもらっている家族には在宅でもやってもらってはどうかと思う。車いすやベッドなど適切な機器を活用できるような環境づくりが必要である。

(外山委員)

 身体拘束については、安全第一主義ということで、体に目が集中している。転倒の議論になるのだが、法的責任のところで大事なのは入所時の説明だと思う。入り口のところで、「安全第一主義」でケアをするのではないこと、利用者の命をどう捉えるのかを、家族に納得してもらい、理解してもらう必要があると思う。
 拘束を求める家族の問題については、家族の二面性が表れている。本人の意思も確認せずに、体のことだけを心配しているのだが、これは物理的拘束は行っていなくても、心を縛っているといえる。それをなくすためには、入所時の説明が大事。また、安全第一主義のスタッフが増えれば増えるほど、精神的拘束が強まるといえるのではないか。最初のところで書かれていることが重要であり構成はよいと思う。

(時田委員)

 これは、寝たきりを作らないというのとは方向性が逆。これまでは、拘束という概念さえなかった。また、行動制限は、介護力のバロメーターとも言える。実際には介護困難事例が増えており、職員が痛んでいると聞いている。介護力が高まるような研修・研究が必要。また、介護は人格的専門職だと思う。スキルや知識ではなく、お年寄りに受け入れてもらわないとできないことである。その意味で、総合的な学習をしないと介護力は高まらない。このように、いかにして経験を増やし、人間性を磨いていくかが今後の課題である。

(橋本委員)

 精神論だけでなく、課題についての対応方法が書かれていることを評価したい。職員体制が整っていないとできないと言われがちだが、必ずしもそうではない。むしろ、職員の倫理観、やる気の問題である。時間をかければ状況は変わる。やれないのではなく、やらなくてはいけないのだと思う。個人の尊厳の保持はやらなくてはいけないこと。そのためには、丁寧な努力が必要。これを進めていく上で、事故は起こるだろう。批判もあるだろうが、お年寄りを縛ることはしないという決意を徹底して進めてほしい。
 家族は三面性があると思う。家族は、施設から出されると困るから、縛ってもいいと言う。したがって、縛らないということを、とにかく大原則にしていかなくてはならない。また、痴呆とはどういうものなのか、痴呆への理解が進むような分かり易いマニュアルを今後作り、研修の場で使えるようにしていったらよい。

(吉岡委員)

 福岡の実態調査によると、根拠のない抑制である85%の抑制はすぐやめられた。残る15%の根拠のある抑制をなくすには、工夫が必要であり、また、看護婦がQOLをあげていった。また、25%程度の患者が医療的措置を受けているが、縛らずにを看護を行えていることもわかった。あと二年で人員が減った際に、これを継続させていくためには、やはりある程度の人数が必要だと思う。
 また、痴呆性高齢者をどうケアし、治療するかということは重要な問題である。啓蒙活動だけでなく、実際にうまくやっている現場を見て実感したり、マニュアルなどを読んで、その気にさせることも重要だと思う。

(笹森委員)

 利用者の側からすると、身体拘束をしていない施設かどうかが表示などでわかるとよい。在宅については、身体拘束だけでなく家庭内虐待という問題もある。転倒を未然に防ぐためのアセスメント例は、在宅でも役立つものであり、こういうのをまとめてもよいのではないかと思う。また家族は、身内が縛られてもいいとは決して思わない。この手引きに書かれていることを実現していってほしい。

(市原委員)

 有料老人ホームについても、身体拘束ゼロを徹底していきたいと考える。スタッフにその意識はあるが、完全なる実施には至っていないので、このマニュアルを実践していきたい。また、第三者の見学などによるチェックも呼びかけていきたい。
家族に対しての説得については、契約時にきちんと説明すれば、十分理解してもらえると思うのであまり心配はしていない。また、福祉用具の開発についても進めてていっていただきたいと思う。

(斉藤委員)

 ハード分科会でも作業を進めているところ。ハード面と、介護の精神など介護体制の両方が重要。当面は、物理的改善を考えているが、個人対応や価格の問題、流通の問題などがあり、これらについて整理していこうと思っている。当面の問題と将来の問題とを分けて継続的に考えていきたいと思う。往々にして、安全性と優しい介護は対立するが、場面に応じて柔軟に対応していかなくてはならない。 また、安易なハイテクの導入は危険な場合がある。介護の精神的なことだけでは解決できないこともあるので、マニュアルとハード面を調整して進めていきたいと考える。

(田中委員)

 現場サイドからすると、身体拘束は現場の士気を低下させ、悪循環を生むものである。工夫という面で、この手引きは先駆的役割を果たすと思う。さらに意見を踏まえてよりよい手引きにしていってほしい。また、先行例は、スタッフ配置に恵まれたものだというかもしれないが、そうではなく、どこの施設においても実践できるように手引きをうまく活用していってほしい。

(高崎委員)

 意識改革が重要である。その点で、このマニュアルは意義あるものだと思う。これは出発点であり、やらなくてはいけないことはたくさんある。今後は、データを積み重ねることにも力を入れていく必要があり、研究費や研究体制を充実させていくことも必要である。さらに、高齢者だけでなく、スタッフを守り、人員を確保していくことも重要であると思う。

(山崎課長)

 行政として、まずは、この手引きを普及させていく必要がある。一方で、情報公開や在宅の問題、人員の問題なども認識している。これは始まりであり、これをきっかけとして、行政としても積極的に取り組んでいきたいと考える。

(井形座長)

 みなさまの賛同をいただいたと理解している。まさにこれはスタートであり、今後、試行錯誤をしていく。まずは、この流れができたことが意義あることだと考える。絶えずチェックしながら前進していきたい。この手引きを認めていただいたということでよろしいか。それではこれで了承していただいたということにする。ありがとうございました。

・事務局より、その他の配付資料について説明。

(木下委員)

 どこの施設で身体拘束を行っていないかが、わかるような方法を考えているのか。

(山崎課長)

 身体拘束に限らず、サービスの実態がわかるようにとの要望を多数いただいているところ。行政だけでなく、市民団体などの力も借りながら、サービス評価をできるように情報提供を進めていきたい。

(橋本委員)

 このようなビデオを作っていただけないか。

(山崎課長)

 検討させていただく。

(笹森委員)

 痴呆に関する意見が多数でていたが、痴呆介護研究・研修センターでの成果とこの身体拘束廃止との連携についてどうお考えなのか。

(山崎課長)

 全国規模で指導者を養成し、各都道府県に持ち帰っていただくことになるが、その中に身体拘束の問題も当然に含まれる。ビデオと同じように、これをどうやって広めるかも議論・勉強していただきたい。

(木下委員)

 介護施設だけでなく、急性期病院も含めた対応ができるようになればよい。

(局長)

 実践的かつ格調高い手引きであり、関係の先生方に感謝する。これは、現場の関係者にとって、大変参考になるものと考えるので、できるだけ幅広く配布したい。
 身体拘束ゼロは最終目標ではない。これがよりよい介護を考え直すきっかけとなることを期待する。
 また、介護保険制度の二年目の課題は、どうやってサービスの質を確保し、向上させるかということである。利用者と事業者の信頼関係が重要であることは、身体拘束ゼロにおいても同じ。信頼関係が確立されていれば身体拘束ゼロも実現すると考える。
 相談事例を集めるなどの各都道府県の取組に対して、推進会議、行政も一緒になって、引き続き身体拘束ゼロへの取組を進めていきたいと思う。

(井形座長)

 一歩踏み出したことが大きい。今後とも、委員の先生方のご協力と身体拘束ゼロの実態が進むことを念願して、本日の会議を終了させていただく。ありがとうございました。



照会先 老健局 計画課 法令係
      TEL 03(5253)1111内線3929


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