年金の福祉還元事業に関する検証会議 第5回議事録 厚生労働省 社会保険庁運営部企画課 第5回年金の福祉還元事業に関する検証会議 議事次第 日 時:平成17年6月30日(水) 13:30〜15:30 場 所:厚生労働省省議室  1.開  会    2.議  題    (1)年金福祉還元事業等について      (2)その他    3.閉  会 ○森田座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから「第5回 年金の福祉還元 事業に関する検証会議」を開催させていただきます。本日は御多用中のところ、またお暑 い中お集まりいただきましてありがとうございます。 それでは、まず委員の皆様方の出欠について報告いたします。本日は、全員が御出席で ございます。 前回は、年金福祉還元事業全般にわたりまして御議論いただきました。本日は、前回委 員の先生方から出されました要求事項について、事務局に資料を用意していただいており ますので、それにつきまして事務局より説明をいただきます。 そして、その後でそろそろこの検証会議をまとめていく時期が近づいてまいりましたの で、これまで御議論いただきましたことを踏まえまして、とりまとめ(案)を山崎委員に 作成していただいております。それについて、本日委員の皆様に御議論いただきたいと思 っております。 それでは、まずその順序でまいりますので、事務局から資料の説明をお願いいたします。 ○朝浦大臣官房参事官 それでは、資料1に沿いまして説明をさせていただきたいと思い ます。 1ページ目をお開きいただきたいと思います。前回、年金保険料を年金給付以外に使っ ているものについて、どのぐらいの額が使われていたのかといったことを資料として出し てほしいといった御要請がありましてつくった資料でございます。 1ページ目の資料でございますけれども、毎年度の決算ベースでとらえた数字でござい ます。厚生年金保険の保険料に占める保険料に対しまして、年金給付以外の支出に係る保 険料率がどの程度の規模を占めるのかというものを示したものでございます。 年金給付以外の支出に係る事業といたしましては、恐縮でございますけれども、3ペー ジをまずお開きいただきたいと思います。この検証会議で御議論いただいております、年 金福祉施設の整備費、グリーンピア、年金住宅融資もございますけれども、それ以外に幾 つか保険料を使った事業を行っております。 まず1つが、年金福祉施設の整備費でございます。厚生年金会館等の年金福祉施設の新 設及び改修工事費に使われるものでございます。 それから、次が社会保険オンラインシステムに係る経費でございます。年金相談あるい は年金の裁定等の被保険者等へのサービス向上のためのシステム経費として計上している ところでございます。 平成9年度から、財政構造改革の推進に関する特別措置法の特例措置を受けて、保険料 財源を充てた事務費がございます。 年金手帳、納入告知書等の印刷費。 適用、徴収及び給付に係るシステム経費。 社会保険事務所庁舎、職員宿舎経費等でございます。 年金相談経費、委託費といたしまして、振込通知書、年金制度周知に係るリーフレット 作成費等。 年金相談等に係る謝金及び旅費、年金相談センター等の借料。 委託費といたしましては、整形外科療養等の事業委託に係る経費が計上されてきており ます。 旧年金福祉事業団関係の経費としまして、グリーンピア建設に係る資金運用部借入金の 元本償還金及び利息の支払い。 事業団の事務費、それから被保険者住宅等の貸付事業に係る利子補給金がございます。 最後に一番下に書いておりますけれども、被保険者住宅等の貸付事業の原資といたしまし て、また後ほどごらんいただきますけれども、昭和55年〜昭和63年までの間に資金運用 部からの借り入れではなくて、直接保険料を貸付事業の原資として充てたものがございま す。 それでは、1ページ目にお戻りいただきたいと思います。年度の推移を見てまいります と、昭和27年から書いておりますけれども、昭和51年ぐらいまでは1‰というラインを 下回って推移をしてきております。 ここにございますように、昭和54年、55年ぐらいから保険料を使った給付が少し伸び ていることが見て取れるのではないかと思っています。最終的に、ここは平成15年の数字 をお示ししておりますけれども、全体としてこの総額で1.82‰という数字になってござい ます。 2ページ目でございますけれども、これは「保険料収入に占める年金給付以外の支出の 割合(厚生年金保険)」ということで、保険料収入として見ると何%ぐらいが年金給付以 外に使われていたのかというものを示したものでございます。これを見ますと、全体的に は1%〜2%の間というところではないかと考えております。 4ページに参考までに「保険料(率)の推移」を示しております。厚生年金保険料、労 使折半でございますけれども、平成8年までは標準報酬ベースで記載をさせていただいて おります。平成15年4月以降は総報酬ベースの率でございます。 先ほどの1ページ目の料率換算についての説明で説明するのを忘れておりましたけれど も、平成15年の数字は標準報酬ベースに換算した数字とさせていただいております。 続きまして、5ページでございます。「船員保険保険料率の改正経過」でございます。 前回の検証会議におきまして、船員保険の福祉施設の見直しの状況について御説明をした 際に、船員保険の福祉事業の保険料率の推移がどうなっていたのかということについての 御質問があったことに対する資料でございます。 船員保険の福祉事業費はすべて事業主負担というもので賄われておりまして、昭和20 年に8‰という数字になっております。昭和22年からは、7という数字がずっと続いてき ておりまして、次のページでございますけれども、昭和50年に10になっております。こ の10の内訳といたしましては、昭和49年から職務上の事由による障害年金の上乗せ支給 を始めたと、特別支給金制度を設けたということで、これまでの7の上に3がオンされて いるものでございますけれども、7という数字はずっと続いてきているものでございます。 福祉事業費のうち特別給付金以外の事業といたしましては、雇用施設の運営ですとか、 あるいは疾病予防検査の実施ですとか、海上救急医療の援護などの事業を賄ってきており ます。 保養施設の運営につきましては、直近の数字で言いますと、2.6 ‰という数字になって おります。 次のページでございますけれども、平成15年4月から7という数字が6になっておりま すけれども、これは標準報酬制から総報酬制に変えたという中での料率でございまして、 実態的には変わっていないというものでございます。 続きまして、次の8ページについての説明をいたしたいと思います。 ○泉年金局資金管理課長 8ページの「公的宿泊施設の状況」でございます。前前回にな るかと思いますが、他の共済組合で福祉施設というものを、どういうふうにやっているの かということを調べられないかということで、私どもではわかりませんので、財務省、総 務省、文部科学省の方へ書式を示して欄を埋めていただくような形でお願いして、集まっ た資料をここに出させていただいたものでございます。 一番上の方ですが、国家公務員共済については、各省庁の共済組合で持っているもの、 それから、連合会で持っているものと二様ございますが、そこにありますように、それぞ れ施設数、定員数の数字はごらんいただくとおりでございます。 なお、黒字・赤字の別がございますが、下の注意書きのポツの4つ目をごらんいただき たいんですが、「国家公務員共済」というところで「収支差額(施設の原価償却費は含ま ず、固定資産税及び各所修繕費等の維持管理費を含む」、こういう形で取った収支差額が、 黒だったあるいは赤だったということで仕分けをして載せているものでございます。 次に「地方公務員共済」でございますが、ここは「総務省所管組合分」と注書きがござ いますが、地方公務員の共済組合は非常に多岐にわたっておりまして、都道府県職員ある いは市町村、政令市職員などの組合のものは、総務省所管でございますが、そのほかに学 校職員あるいは警察署の職員等々の方はここにはカウントされていないということでござ います。 また、多く分かれていて、総務省として全体の施設の利用者あるいは黒字・赤字といっ た状況を把握していないので埋められないということでございましたので、資料にはバー でそのままにさせていただいております。 「私立学校共済」ですが、これはここにごらんいただくような形の施設、また黒字・赤 字の状況でございます。 なお「年金福祉施設」あるいは「グリーンピア」については、下の注にございますが、 固定資産税あるいは修繕なども含まないようなことでの黒・赤を比べてございますので、 共済組合とはちょっとそこのベースが異なるということで、そこは注書きの方をごらんい ただければということでございます。 次に9ページ及び10ページでございますが、これも委員から調べてみてはということで お話がありました、福祉の目的で別建ての掛金を徴収しているのではないかと、それはど うなっているのかということでございますので、各制度を調べてみたところでございます。 厚生年金保険は福祉のためということでの別建ての保険料は取ってございません。法律 上は一番上に「事業の根拠」とございますが、福祉を増進するため必要な施設をすること ができるという条文に基づき、事業をやっているということでございます。 真ん中の船員保険につきましては、先ほどちょっと御説明がございましたが、法律上は 2つ目の○で「福祉を増進するため、必要な事業を行うことができる」という規定がござ います。保険料については、保険料額のうち一定額を被保険者が負担し、残りは船舶所有 者が負担ということで、この福祉事業については、下の方の四角の中にございますように、 すべて船舶所有者の負担で1,000 分の6というのが充てられている形でございます。 右側は、ちょっと別の制度で、児童手当でございますが、児童手当については法律上手 当の支給に支障がない限りにおいて、児童育成事業を行うことができると。児童育成事業 というのは、放課後児童クラブであったり、児童館だったりするわけですが、これはすべ て一般事業主からの拠出金でございます。拠出金の率は、真ん中の下の方にございますが、 この育成事業分については1,000 分の0.164 というのが掛金率で充てられている形でご ざいます。 次に10ページは、3つの共済について、福祉掛金というものを調べてみたものでござい ます。 初めに、国家公務員共済ですが、法律の条文としましては、左上ですが「組合員の福祉 の増進に資するため、福祉事業(組合員の保養若しくは宿泊又は教養のための施設の経営 等)を行うことができる」という規定がございます。 掛金の負担割合は、次の四角の中にありますが、100 分の50、要するに、労使折半とい うことでございます。 掛金は下の四角の中ですが「組合の定款で定める」ということになってございまして、 それぞれの組合ごとに定めてございます。1つの例として、厚生労働省共済組合の定款を 持ってきてございますが、その中では福祉の掛金として1,000 分の1.03というふうに定 められております。 次に、真ん中の地方公務員共済ですが、法律の規定などは国家公務員とほぼ同様でござ います。ちなみに一番下に都道府県職員を対象とした地方職員共済組合の定款から持って きてございますが、福祉事業の掛金として、これはちょっと定め方が変わっておりまして、 給料について1,000 分の1.48、期末手当などは1,000 分の1.18というふうに分けてござ いますが、それぞれ掛金率を決めているというものでございます。 右側の私立学校教職員共済については、法律上の規定は福祉事業を行うという規定がご ざいます。負担割合は、労使折半でございまして、これは共済規定で定めるというふうに なっておりまして、この共済事業団の共済規定を見ますと、下の四角にございますように、 短期掛金として1,000 分の1.2 、長期として1,000 分の1.2 ということでございますの で、要するに、両方足した1,000 分の2.4 分が福祉掛金として徴収されているということ のようでございます。 次の11ページ以降は、それぞれ今、申し上げましたところに関係する法律の条文などを、 参考までに数ページにわたって載せてございます。 以上でございます。 ○朝浦大臣官房参事官 資料2でございますけれども、これは前回第3回までの委員の御 発言の内容を整理したものをお配りしましたけれども、それに前回の検証会議の委員の先 生方の御意見をまとめて整理させていただいたものでございます。説明は割愛させていた だきたいと思います。 ○森田座長 どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明いただきました 資料につきまして、御質問等ございましたら御発言願いたいと思います。どなたからでも どうぞ。 都村委員、どうぞ。 ○都村委員 今、各共済の福祉事業について御説明いただきまして、よくわかりました。 各共済も結構立派な施設をつくっているわけですけれども、こちらは廃止・撤退の予定は ないのでしょうか。 ○森田座長 お答えいただけますか。 ○泉年金局資金管理課長 8ページの一覧の数字をごらんいただきますと、例えば、共済 組合の施設数も年々数字が変化して、やや国家公務員共済など数が減ってきているという 傾向がございます。詳しくどういうルールでやっているかは、私ども直接ではないので承 知しておりませんけれども、それぞれもう赤字でやめた方がいいというような部分につい ては、施設を廃止したりというようなことをそれぞれのお立場で取り組んでいらっしゃる のではないかというふうに承知しております。 それから、政府全体としては、特殊法人等整理合理化計画という閣議決定がございまし て、そのまま閣議決定の文言を読みますと、「組合員のニーズもしくは事業の意義が低下 し、または著しい不採算に陥っている施設は整理する」ということが、いずれの共済組合 についてもそういった閣議決定がございまして、それに基づいて取組みが行われていると いうことでございます。 ○都村委員 それは何年ですか。 ○泉年金局資金管理課長 平成13年12月の閣議決定でございます。 ○都村委員 ありがとうございます。 ○森田座長 よろしゅうございますか。 ○都村委員 はい。 ○森田座長 ほかにいかがでございましょうか。 前回要望された資料が、こういう形で提供されたものでございますけれども、よろしい でしょうか。 特に御質問・御意見等ございませんようですので、それでは、次にこの検証会議のとり まとめ(案)について御議論いただきたいと思います。前回お願いいたしましたように、 山崎委員にとりまとめ(案)を作成いただいておりますので、山崎委員の方から御説明を お願いしたいと思います。 よろしくお願いいたします。 ○山崎委員 座長の方から私の方に案を起草するようにという御指示がありまして、過去 の経緯、事実関係等につきましては、改めて事務局に調べていただくこともありましたけ れども、皆さんの意見を踏まえまして、今日のような案をまとめました。一旦私の素案を 御提案させていただいて、そして各委員からの御意見をいただき、若干手直したものがこ こに用意されております。事務局の方から読み上げていただきたいと思います。 ○朝浦大臣官房参事官 それでは、読み上げたいと思います。 (資料3「とりまとめ(案)について」読み上げ) 以上でございます。 ○山崎委員 どうもありがとうございました。 ○森田座長 山崎委員、何か補足されることはございますか。 ○山崎委員 昨日まで委員の皆さんのところに行っていますものとは若干変わっておりま すが、それは委員の意見を踏まえたもので、私といたしましても、当初の案よりはめりは りが付いてわかりやすい表現になっていると思います。 ただ、起草する者としてちょっと気になっていますことは、大臣が潮目の変化を的確に とらえることができなかったのではないかと、そういう反省をしているということだった んですが、それに対してこの検証会議でどのように答えるべきかということが、まだ宿題 として残っているのではないかという気がいたします。 つまり、潮目の変化というものを的確にとらえる上で、今後どのような措置が必要なの かということについて不十分ではないかということであります。 ○森田座長 ありがとうございました。 それでは、ただいま読み上げていただきましたとりまとめ(案)につきまして、御議論 をしていただきたいと思います。まず、御質問等がございましたら、どうぞ御発言願いた いと思います。 都村委員、どうぞ。 ○都村委員 まず、最初に山崎委員始め、事務局の方々、とりまとめ(案)をおつくりい ただきまして、本当にありがとうございました。案に対して一委員として感想を申し上げ るのもどうかなと思いますけれども、ちょっと感じましたのは、今日5回目ですね、1回 から4回までの間に事務局の方で非常に膨大な資料をつくっていただいて、50年間を振り 返って、本当に貴重な、なかなか手に入らないような記録とか、今までの福祉事業の流れ がわかるいろいろなデータとか、それをたくさん出していただきました。大変貴重な資料 であると思います。 それをもう少し活用した方がいいのではないかと思います。いろいろなまとめ方があっ て、このぐらいの7ページぐらいにまとめてしまうというのもあると思うのですけれども、 貴重な資料をもっと活用し、内容をふくらませたほうがよいと思います。 それから、1 回から4回までの会議の議事録が既にホームページで発表されているということですから とりまとめと議事録が整合的なものかどうかもあると思います。 それから、スタートするときの検証会議の運営において、検証結果については厚生労働 大臣に報告するとともに公表すると書かれていますね。そうすると、ここに参加されてい る方たちとか、我々委員とかは、ずっと資料を見たり、議論をしてきているので、よくわ かっている部分があるのですけれども、初めて、例えば一般の方が公表された福祉還元事 業について検証が行われたこと、それではどういう検証が行われたのかを、今の時代です からすごく関心を持たれると思うのですけれども、そのときにこの案ではわかりにくいと 思います。とりまとめがやや簡単で、一般の人たちが見た場合に、わかりにくいのではな いかと思います。 検証作業のポイントというのは、例えば、これは個人的な考え方ですが、幾つかあるわ けです。第1のポイントは事業の目的です。昭和29年の厚年法の79条、それから昭和34 年の国年法の74条で、はっきりと「被保険者、被保険者であった者及び受給権者の福祉を 増進するため必要な施設をすることができる。」と書かれています。最後のところはおか しい文章ですけれども、施設をすることができると、設置根拠は法律に明記されているわ けです。すべて国会で決議し、手続を踏んだ上で3つの福祉事業がスタートしているわけ です。 ですから、その点はやはり一番最初にはっきりと書くべきで、とりまとめ案に7 行ぐらい書かれているのですけれども、地元の要請というのは、むしろそういう設置根拠 が法律にはっきり書かれて、その後のことではないかと思います。昭和29年と34年の両 方の法律に基づいて、手続を経て、福祉事業を行ってきたということを、やはり最初にき ちっと書く必要があるのではないかと思います。その後の昭和57年の国年法の一部改正で も、「被保険者に対する福祉還元についても、なお一層努力をすること」という衆議院の 決議が行われているわけです。 そういう国会の決議とかをずっとたどって来ているわけで、最初に目的をはっきり書く ことは1つのポイントではないかと思います。 第2番目のポイントは、年金福祉還元事業の見直しが、いつ、どういう理由で必要とな ったかということを明記すべきです。10年ぐらい前とか20年ぐらい前に見直すべきであ ったということが、しばしば最近は言われるわけですけれども、そうであったとすると、 その見直しのタイムラグが生じたのはなぜなのかということについて検証することが、非 常に重要なのではないかと思います。これが、第2のポイントです。 第3のポイントは、この3つの年金福祉還元事業の見直しに当たっての問題点を明確に するというのが、この検証会議としては大事なのではないかと思います。膨大なインフラ の投資をしているわけです。だから、再生をどう図るかということは、これは国民にとっ ても、保険料を出した者にとっても、すべての人にとって大事なわけです。その場合に課 題となるのは、1つ目はやはり雇用の確保だと思います。今、現に厚年病院とか厚年会館 とか、いろいろな施設で雇用されている者の雇用の確保をどうするかというのは、これは 最大の課題だと思うのです。国会の議論でも、それからここのとりまとめの中でもそれは 出てこないのですけれども、これは働く者の立場に立つと非常に重要な点ではないかと思 います。 2つ目は、地域経済への影響が大きいということです。撤退をするということは、地域 経済に非常に大きな影響を及ぼします。事業内容によりまして、地域での社会的、経済的 機能は異なると思うのです。だから、役割によって整理する必要があるのですけれども、 例えば、病院とか、集会所とか、健康増進施設とかによって、それぞれ機能は違うと思う のですけれども、それが地域経済にどういう影響を及ぼすかということをチェックするこ とは大事ではないかと思います。 3つ目は、譲渡なり手放した後のサービス向上をどう考えるかということです。公共的 利用などの条件を満たすものかどうかというようなサービスのことです。それも大事なの ではないかということで、福祉事業の見直しに当たっての問題点を書くべきだと思います。 3ページから4ページに、何年に廃止とか、何年に撤退というふうに簡単に書かれてい るのですけれども、そこで働いている人がいるわけだし、それによって地域経済に非常に 大きな影響を及ぼすわけですから、それについて検証というか分析をする必要があるので はないかと思います。 4つ目のポイントは、政策評価の取組みをどう行うべきかというのを引き出す必要があ るのではないかと思います。検証を通じて、いろいろな施策目標に照らして、各政策がど れだけ有効に機能しているかを把握して、目標達成状況について評価を実施する必要があ ると思うのです。民間企業で言いますと、コーポレートガバナンス、その仕組みを機能さ せることも必要ではないかと思います。 これらのポイントについて、もう少しはっきりとわかりやすく書くべきと思います。こ ういう形で3事業が始まって、このような目的があって、こういう実績を上げてきたけれ ども、潮目が変わって、遅れたけれども、こういう状況になっていると。だけど、それを ただ投げ出してしまうということではなくて、そこで働いている人の雇用の確保や地域経 済への影響は重要な問題であるということを、書かなければならないと思います。 それと、今後の厚生労働省の政策の評価をする場合に、何かこういう点が役に立つので はないかというような示唆を与えるということですね。それがもう少し書かれた方がいい のではないでしょうか。私の個人的な意見なんですけれども、書かれた方がもっとわかり やすくなるのではないかと思いました。 昨日までに前もって意見を、事務局の方にお送りすればよかったのですけれども、忙し くて、昨日の夜これを読ませていただいたものですから、当日になってしまい申し訳ござ いません。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。本日は、最初の案ということで、いろいろ御意見 を出していただきまして、それを踏まえた上でまた修正をするということになろうかと思 います。 それでは、一つひとつ御議論いただく方法もあろうかと思いますけれども、むしろ関連 してほかの委員の方からも御意見を伺っておいた方がいいと思いますので、いかがでござ いましょうか。 岩渕委員、お願いします。 ○岩渕委員 今、都村委員が述べられたことは、ほとんど正鵠を射ていると思いますので、 賛同いたします。 では、具体的にどういうに書くかというのも、それはなかなかはっきり言ってこの場で きちんと論議が深められたか、あるいは検証できたかどうかという、その問題がクリアー できないので、このような中途半端な書き方になってしまうのも、これもまた残念ながら 現実ではないかと思います。 ただ、例えば、最初に大臣がおっしゃったような潮目を見誤ったということに対して、 それに対して言及できないのはなぜなのかというのは、私自身は余りよく理解できません。 それから、個人的なことを申し上げますと、だからそういうものの背景として、さまざ まな問題点を私は私なりに指摘したつもりでありますし、今後の行政に生かすということ から言えば、もっと最後のところで、このように木で鼻をくくったような格好での何点か の箇条書きみたいな格好で終わっているので、やはり一般に読んだ人もさっぱり意味がわ からないし、それだったら別に検証会議なんかやらなくたっていいというふうに思われて しまうのではないかということを懸念いたします。 でありますので、もう少しこのまとめのところをブレークダウンというか、わかりやす く書くことにもう一回考え直す必要があるんではないかと。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。 ほかにいかがでしょうか。篠原委員、田島委員、いかがですか。 それでは、篠原委員、お願いします。 ○篠原委員 まず1点目は、1ページ目の福祉還元事業の実績の件ですが、ここでの説明 では、幾ら使ったどうのという説明となっていますが、アウトプットとしての有効性や、 効果というのは把握が困難であるということもあるのかもしれないのですけれども、予算 投入という形で表現されていると、マスコミの報道で見ていても、どうも無駄遣いしたと いう形で報道されやすいのではないでしょうか。やはりその効果の部分が具体的にどうだ ったというのを書いた方が状況を明確に示す事が出来るのではないでしょうか。 例えば、グリーンピアとか、社会福祉施設などは、当然民間より安く利用できるので、 利用者数に安く利用できる分をかけてみて、それが減価償却に相当するならまあまあかな とか。いろんな形で見るのと。それと年金住宅融資においても、財投から借りた資金を、 融資すると金利差が赤字で出てきます。さらには通常の民間の住宅融資での金利との差額 を示す事により、実績がより明確になるのではないかという気がします。 次に、先ほどから皆さんが指摘されていますように、潮目の話では、タイムラグという のを最初からいろいろと指摘されていると思うんですけれども、政策が企画され、具体的 な制度や、組織もできて、推進している状況では、マスコミとか様々な機関が指摘されて も、やはりなかなか方針転換ができないなという印象を受けています。それぞれの段階で やはり何ができたかというのを示した方がいいのではないかという気がしております。 3点目は、いわゆる会計データの件ですが、国会等の議論においても、黒字・赤字とい う話が多いんですけれども、民間であれば最終的にフルコストの回収が重要ですが、官の 場合には、何処までのコストを回収するか示されていないことから問題点が明確になって いません。どの範囲のコスト負担で黒字か赤字かということを明確にしていく必要がある のではないでしょうか。会計的な費用及び効果等とを比較しながら検討できるようなデー タが必要ではないかという気がします。 資料の中で、3ページの説明で事務費という形で投入していますが、借入金元本の償還 金とか利息として払っているんですが、それ以外の具体的なランニングコストとしての事 務費とかによる、先ほどの宿泊施設等の赤字・黒字での分析以外に、全体の運営している、 いわゆる財団とか公益法人の損益状況についても分析や検討が必要とされているのではな いでしょうか。  今のところは、この3点です。 ○森田座長 ありがとうございました。 それでは、田島委員、お願いいたします。 ○田島委員 山崎委員にとりまとめていただきました、このとりまとめ(案)の性格につ きましては、私のとらえ方はポイントを筋書き的にまとめていただいたもので、これが完 成版と同程度のボリュームのものというふうにはとらえておりませんでしたけれども、こ の検証会議に与えられた最大の使命というのは、大臣がおっしゃっているように、潮目を 見誤って、この年金福祉還元事業をずっと続けてきたことが問題であったので、なぜ潮目 を的確にとらえられなかったか、そして今後こういうことを犯さないためにも、どうした らきちんと潮目を的確にとらえられるように制度を整えられるかということの御提言をす ることではないかと思っておりまして、このまとめていただいた案の中では、最後の1枚 の「6.まとめ」の部分をもうちょっときちんと書き込むことが大事ではないかというふ うな印象を持っております。 山崎委員が、大臣がおっしゃいましたことについての回答が十分ではないというような お考えでいらっしゃるようなんですけれども、この「6.まとめ」の3つの○のところに、 それを書き込んでいただいたのかなというふうに私は受け止めておりましたけれども、そ ういうことではなくて、これは結び付きのないものなのか確認させていただきたいと思っ ております。 それから、津村委員がおっしゃいましたような、今までいろいろ集めていただいた貴重 な資料が生かされていないので、そういうものをもうちょっと利用して取り組んでいくべ きだというお考えには賛成ですけれども、それにつきましても、この年金福祉還元事業が 発足した当時必要なものであったというところをるる説明するのではなく、むしろ時代が 変わって、それが同じ形で続けていくべきものでなくなったときに、なぜそれをきちっと 受け止めて適切に対処できなかったかというところに重きを置いて、もうちょっと書き込 んでいくということがなされるべきではなかったかというふうに思っております。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。 それでは、それぞれの先生方から、共通するところもございますけれども、一応意見を 伺いましたので、山崎委員の方からそれについてお考えというか、コメントをお願いでき ますか。 ○山崎委員 田島委員のお話の中で、大臣の宿題に十分応えられているかどうかというこ とで、私自身ももう少し何とかならないかなという気持ちはあるんですが、この「6.ま とめ」の3つの○の中に表現したつもりですが、これでも恐らく不十分なんではないかと、 ではどうすればいいかということなんでございます。 先ほど委員の中に、もう少しこの部分をブレークダウンして書くべきだというアドバイ スがありました。それも1つだと思います。 それから、全体として都村委員の方から冒頭に、これまで膨大な、詳細な資料を用意し てもらっていると、非常に貴重な資料であると、そういったものをこの報告に生かせない かという御意見がありましたが、私自身はできるだけ簡潔な報告にして、そういった資料 類といったものは別冊の資料集としてまとめる方がわかりやすいのではないかという気が しております。 それから、これを一般の方が読んでわかるかということにつきましては、恐らく語句の 注のようなもので処理できるのかなという気もいたします。したがって、冒頭の厚生年金 保険法、国民年金法の条文の何条に書かれて規定されていると書いてありますが、その辺 も注のような形で該当する条文をそのまま入れるということの方が全体のバランスを取る 上でいいのではないかと思っております。 その他、御指摘いただきました点は、何とか、これは都村委員だけではございませんが、 生かせるような手直しをさせていただきたいと思います。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。という山崎委員の御説明でございますけれども、 更にそれに加えて何か御発言ございますでしょうか。 委員の方々の御意見を承っておりますと、私自身思いましたのは、例えばですけれども、 もう少し潮目を見誤ったというか、それについて明確にするべきではないかという御意見 があったと思いますし、あと最後のまとめの部分について、もう少し具体的にブレークダ ウンをしたらというお話があったと思いますけれども、これまでのこの会議の議論におき ましては、いつ、どういう形で潮目を見誤ったかとか、どうすべきかということについて、 それほど踏み込んだ議論はまだしていなかったのではないかと思います。 確かにそのことを書く必要があるということについては、皆さん共通の御意見をお持ち のようですけれども、具体的にどういう形でそれを書くかということにつきましては、山 崎委員に引き続きここの原案の方について、更にお書きいただくわけですけれども、その 場合にどういう形でこの会議として、そのフォーカス、より具体的な方向性を出したらい いかと、そのまとめの部分もそうですし、それ以外の部分もあろうかと思いますけれども、 その辺について少し前向きな御発言を更にいただければと思いますが、いかがでございま しょうか。 ○森田座長 篠原委員、どうぞ。 ○篠原委員 年金資金を福祉還元事業に投入すべきでないという議論が途中ではなくて、 最後の方でぽこっと出てきたような気がするんです。様々な福祉還元目的として、いろん な施設を作っていますが、個々の施設が福祉還元の目的に対応しているかどうか、適応し ているかというチェックがどこかで行われていたか、次の段階では施設を運営していて赤 字になっている状況において、それを黒字化するのか、どこまで赤字を年金の方から投入 するかの検討機関とか、歯止めとなる指標がないことから、突然、無駄な投資であるから 全部やめてしまうという決定をされた感じを受けています。 ○森田座長 ありがとうございました。ただいまの点は、最後の「6.まとめ」の3番目 の黒ポツですけれども、そこに書かれているようなことをもう少し詳しくするという御趣 旨でございますでしょうか。 どうぞ。 ○岩渕委員 潮目につきましては、勿論事業によって潮目は全然違っているはずでありま すし、問題は潮目かどうかを判断する、そういった検討作業が全くなされていなかったと いうことではないかと思われます。それは、外部から指摘を受けたことはあったようです が、ですから、それを内部的あるいは内部が設置した第三者評価みたいな形で、要するに、 3番目に書いてありますけれども事業の実績評価、評価には勿論再検討も含まれるという 前提でありますけれども、そういうシステムがもともとなかったということが最大の問題、 それがブレーキがないと言ってもいいんですが、そういう辺りのところが潮目を見誤った 最大の原因であるということは、言えるのではないかと私自身は思っております。 ○森田座長 ただいまの潮目を見て判断する仕組みがなかったという御趣旨だと思います けれども、それをこれから設けるべきであるというのが最後のところに入るということで ございますね。 ○岩渕委員 はい。 ○森田座長 要するに、今回の検討に当たりましては、これまでの事例ではどういう形で 潮目を見誤ったのかということについては、いかがでございますか。 ○岩渕委員 潮目を見るという考え方はもともとなかったわけでして、先ほど言ったよう に、一旦この政策が決定して、施策が進んで、予算が付いてということになれば、もう予 算はその年度内に全部使うのが最大の義務でありますし、それは民間とも決定的に違うと ころでありますけれども、そこが官による事業の最大の問題点であると思っているんです けれども、ですから、そういうシステムでありますので、もともとシステムがそういう意 味で言うともう全く、こういう事業に適応できないシステムで、極端に言えばそういう意 味で言いますと、こういう形になるのは当たり前といいますか、最初からわかっていたと、 後講釈になりますけれども、そう言わざるを得ないシステムであったと、もともとシステ ム自体がなかったと言ってもいいぐらいですね。 ○森田座長 ありがとうございました。今の点も含めて、ほかにいかがでございましょう か。 ただ、今の岩渕委員の御意見ですけれども、現段階ではまさに最初の大臣の検証会議の 発足についてという文言にもございますけれども、明らかに徹底的に整理合理化すること としているということで、潮目を見誤ったということについての判断、評価はされている わけですね。 したがって、ある時点でそれをやる仕組みがなかったということなんですけれども、そ のある時点でというのはいつごろで、なぜそうなったのかというのが、先ほど1つの問題 点で出てきたところだと思うのですが、その辺についてはいかがでございましょうか。 どうぞ。 ○都村委員 いただいた膨大な資料をずっと年代順に並べてまとめていくと、ある年代の ところで、事業によって時期は違うかもしれませんけれども、3事業について見直しをし なければならないということが明らかになっていると思います。資料をずっと並べていく と、一定の年度のところに集中して出てくると思うのです。そのときはそういう検証とか、 検討とか、見直すための行動というのは起こされなかったわけですが、資料には国会での 議論とか、審議会での意見とか、行革の方からとか、はっきりと出てきていたように思い ます。資料を年代順に並べていくと、見直しをして、継続するものもあるかもしれないけ れども、廃止したり撤退する必要もあるというのが出てきた時点があるのではないかと思 います。 ○森田座長 今のような御意見でございますけれども、データについて余り膨大なもので すから細かく覚えていませんけれども、その辺について事務局の方は今の御意見を踏まえ ていかがでございましょうか。 要するに、何を申し上げたいかと申しますと、潮目が変わったという兆候が認識された のは、いつだったのか。それから、言うなれば方向転換をするまでに時間がかかったとい うのが、ここでも問題になるかと思うんですけれども。 どうぞ。 ○青柳社会保険庁運営部長 私が口を出すのも余りよくないかもしれませんけれども、こ の年金福祉施設の整理機構法案というのを今国会に出しておりまして、独立行政法人をつ くって整理するというふうに既に御紹介しているものですが、法案が成立いたしまして、 その過程でそういったこともいろいろお尋ねがあったものですから、答弁をした人間がお 答えをするのがいいのかなと思って、今、手を挙げたんです。 今、先生方の潮目という面で見ると、私は大きく見れば、まずはポイントとして見てい ただきたいなと思う点が2、3点ございます。 1つは、例えば、それぞれの今お話の出た事業の種類ごとにどう見るかという点、これ は例えば宿泊施設であればどうだったのか、それから年金の住宅融資であればどうだった のか、そういう見方で見ていただく面があると思います。 その点で言えば、まず私のところの直接の担当である宿泊施設。これについては、私の 承知している限りでは、潮目というかきっかけになるような要素というのは、3つの要素 を持っていたと思います。 1つは、いわゆる民間の宿泊施設との競合問題。これは、実はかなり昔からある問題な ので、だから実は年金の福祉施設、宿屋は余り宣伝ができなくて、それでもっと営業成績 を上げればいいではないかと、だけど宣伝ができないと、こういうジレンマに追い込まれ ていたということは、極端に言えば施設発足時からあった話であります。 ただ、これについてそれが顕在化してきたのは、1つは行政管理局が、当時まだ行政管 理庁と言っていたときに、昭和58年ごろからそういった施設の実態調査を始めたり、そう いったものについて行政観察に基づくところの指摘をしたり、あるいは第二次臨調の五次 答申で指摘をしたりして言ってきた流れがあって、これはただどちらかと言うと民間との 競合という問題があるものについては、新しいものはつくるなというのがこの時点での結 論でありましたので、この新しいものをつくるなという指摘については、ある程度厚生労 働省、社会保険庁の施設は応えてきたということは、間違いなく申し上げることができる と思います。 もう一つのきっかけは赤字問題、すなわち政府のいろいろやっている事業について、赤 字であるようなものは早くやめろと、こういう指摘が、これは検査院なんかの流れの中か ら出てきたものがあって、これも最終的には観察局がまず平成10年に言った話があったり して、最終的には検査院がまた同じ年にそれを指摘するということがあったので、赤字の ものについては、これもちょっと腰が重かったんですが、例えば、赤字の宿泊施設等につ いて廃止していくということ、あるいは逆に収支の改善が図れるものは、収支の改善を図 っていくという取組み、これはかなり行ったと思います。 したがって、年金の福祉施設も今回の法案の審議の中で、私も改めて認識したんですけ れども、実は相当程度の施設が、特に一昨年ぐらいから経営改善をやったことによって黒 字体質に変えることができたと。勿論、減価償却分を入れる、入れないということで、黒 字・赤字の問題に違いが出てくるというのは、先ほど篠原先生から御指摘がございました けれども、少なくともこの年金の福祉施設はハコモノは国が建ててやると、そのかわりラ ンニングコストは全部自分でやれというルールですから、そのルールの中では黒字に転換 したものが随分出てきたということで、これもそれなりに実はその限りにおいては効果が あったと言えるんではないかと思います。 3つ目の契機は、恥ずかしながら、内部でもそれまで検討があったんですけれども、小 泉さんが大臣になったときに、年金の福祉施設はグリーンピアと同じではないかと、グリ ーンピアの方を整理するんだったら年金の福祉施設も整理しろという御下命を平成8年ご ろにされまして、これも実はその御下命に沿ってかなりの見直しをして、さっきの民間競 合の流れで言えば、新しい新規の施設はやらないということを、このときに完全に確認を してやらせていただいたので、実は平成12年に改めてこういった施設についての見直しと いう閣議決定をしたときにも、小泉さんの発言の流れの中で社会保険庁が対応してきた流 れにうまくつながる形で対処ができたということは言えるだろうと思います。 したがって、その限りにおいては、赤字を出さないとか民間競合をしないという限りに おいては、指をくわえていたわけではなくて、それまでの対応をしてきたということは、 歴史的事実としてもある程度申し上げることができるんだろうと思います。 ただ、これはこれで1つの流れの中で、同じようなことを、例えば、年金住宅融資につ いて見たらどうか、グリーンピアについて見たらどうかということで、それなりのヒスト リーが編めるんだろうと思います。 もう一つ、大きな2点目の柱として、是非先生方にも御議論いただかなければいけない と思っているのは、それぞれのところは言わば部分最適化をしたかもしれないけれども、 実は全体として部分最適化ができたかどうかと、年金の福祉還元事業というのは、今日お 出しした資料の中でも、4種類ないし5種類大きな柱だけでもあるものですから、それを 全部がっちゃんこさせたものがどうだったかということを見ていただく、あるいは議論を 少ししていただく必要があるだろうと思います。 その場合に、一番大きなポイントを持っているのは、全体を合わせたボリュームが年金 の全事業に対してどういうウェートを持ったかと。この検証が潮目というのを見ていただ くときに、量的な意味でも必要なポイントになるのかなというふうに思います。 以上の2点が、大きな柱としては、そういった国会での答弁などを対応しながら、私自 身も考えているところでもありますので、是非先生方にもそういう切り口で御意見をいた だけたらありがたいと思います。 ○森田座長 という御説明でございますけれども、いかがでございましょうか。 篠原委員、どうぞ。 ○篠原委員 本来の報告書とはポイントがずれるんですが、今回年金施設の独立行政法人 ができて、全部売り払うと計画となっていますが、処分価格がたたき売りに近くなってし まうのではと危惧があります。せっかく黒字になっている施設については、もう少し時期 を見て徐々に処分していく方がよいのではと思われます。効率化等の改革はある程度やっ てきましたが、撤収に際しては余りにもドラスティック過ぎて、年金資金の回収が少なく なってしまう心配があります。 ○青柳社会保険庁運営部長 お答えするものではないのかもしれませんけれども、実はこ の問題は年金の福祉施設自身が無駄ではないかという議論と同時に、その年金の福祉施設 を運営委託している公益法人が不適切ではないかという、存在そのものがですね。あるい は事業のやり方は赤字を出さなければいいんだろうと思うんですけれども、赤字・黒字に かかわらず、そういった形で多くの職員が天下りをして不適切な運営をしているんではな いかというのも、実は大きな問題点として指摘をいただいているところでありますので、 その意味ではこの事業を継続すること自身にノーというサインが出たというのが、私ども の受け止めです。 ただ、その期間が5年でいいのか、もっと長い方がいいのかというのは、これは御意見 あるかもしれませんし、専門的なお考えも大変貴重なお考えかとは思いますが、1つの割 り切りとして5年という期間の中でそういった施設自身にとどまらぬ、それの抱えている 問題を解決しろというふうに宿題をいただいているというふうに受け止めております。 ○森田座長 ありがとうございました。ほかに、いかがでしょうか。 それでは、ちょっと議論を整理させていただきたいと思いますけれども、お手元に参考 資料としてあるかと思いますけれども「『年金の福祉還元事業に関する検証会議』の発足 について」ということですけれども、我々の与えられたミッションというのはここに書い てあることで、具体的には検証対象は3つの事業ということですけれども、それはともか くとしまして、「1 趣旨」のところの2番目のパラグラフで「年金財政の厳しい状況に 鑑み、今後、これからの事業については徹底的に整理合理化することとしているが、先般 の年金改正法案の国会審議においても、これらの事業の意義、実施経緯等について議論さ れたところである」ということで、「徹底的に整理合理化する」ということについては、 前提として受け止めざるを得ないわけでございまして、更にそれが「年金財政の厳しい状 況に鑑み」ということで、年金財政全体の中でこういうことを、厳しいがゆえに整理合理 化すると。なぜそういう経緯を経てきたのかということを検証するというのが、ここでの ミッションだと思います。 したがって、今のお話にもございましたけれども、個々の事業についての部分的な最適 化というお話がございましたけれども、例えば、民間との競合が問題になったということ であるとか、赤字・黒字の問題もございましたけれども、議論されている前提としまして は、民間との競合がないから、あるいは黒字だから継続していいのではないかという議論 になるのか、そもそもそれにかかわらず年金財政本体そのものが大変厳しい状況にあると きに、こうした事業をやること自体を見直そうということになっているのではないかと。 それが、なぜそうならなかったのかというのがここでの課題ではないかと思っておりまし て、その観点から申し上げますと、部分的最適化の問題もさることながら、言わばもう少 し大本の部分の年金財政全体の悪化のシグナルというものを、どういう形でとらえられな かったのかというのが論点になろうかと思います。 したがいまして、今日、山崎委員に御提出いただきましたとりまとめ(案)について言 いますと、6ページの一番上の?の部分が、それに触れたところかと思いますけれども「従 来の見直しは、行政改革や民間との競合の指摘を踏まえた対応に止まっており、年金財政 の踏まえた検討が不十分であった」というところを、どう考えるかということではないか と思うんです。ここも先ほどからの潮目の話にも関わってくると思いますけれども、どう してここの部分がきちっと押さえられなかったのか、ある意味で言いますと全く潮目が変 わったということをだれも認識しなければこの問題はなかったと言えるのかもしれせんけ れども、やはりある時点でこれは大変なことになるぞというシグナル、兆候が出たわけで ございますから、それを察知してからこういう形でどう対応してくるかというところに少 し時間がかかったのはなぜなのかというのが論点ではないかと思います。 その意味で言 いますと、今日は詰めた形で、このとりまとめ(案)を更にここをどうという細かい修正 よりも、もう少し大筋の話になるのかなと思いますけれども、その辺につきまして委員の 方々の認識は、どのようなものなのかというのは伺っておく必要があるのではないかと思 いますが、いかがでございましょうか。 更に申し上げますと、前回から出ていますように、例えば、船員保険であるとか、ほか の分野によりましては、一定の仕組みを持っていたために、それなりの対応のメカニズム が働いたのではないかと見られるところもあるわけでして、それとの違いにおきましても、 なぜこの国民年金と厚生年金においては、そういうメカニズムがうまく働かなかったのか。 終わったことですから、それ自体がどう悪かったということよりも、なぜそういうことが 起こったかということを究明することによって、これからそれを防ぐためにはどうすれば いいのかということが論点になるわけでして、それにつきましては、まとめの部分で挙げ られておりますけれども、情報公開、保険料拠出者の意見の反映、そして第三者による意 思決定と評価ということでございますけれども、それでいいのか。あるいは更にそれを具 体的にもう少し踏み込むとしたら、どういうことを考えて言わなければいけないのか。そ の辺につきまして、何らかのメッセージを発信することが、ここに期待されているのでは ないかと思いますけれども、いかがでございましょうか。 どうぞ。 ○岩渕委員 方向性としては、今おっしゃったような方向でいいと思うんですけれども、 6ページの?、?、?であるようなところと、一番最後のまとめのところで、それだけで いいのかなというのは、私自身は考えているわけです。 要するに、外部から、行改とかさまざまなところから指摘されて、その対応が遅れたと か。それに対応するために、それをきちんと踏まえた格好でやるために、拠出者や有識者 の意見を聞く恒常的な場、あるいは第三者の意見を聞いて対応するという。勿論それは必 要なんですが、それ以前に行政としてそういったものを、先ほどからおっしゃっているよ うに全体としての最適化まで踏み込んで、自分たちがつくった政策の是非を自分たちでま ず判断するというシステムも当然ながら必要ではないかと私は思うんです。 つまり、そういうものを全部第三者だ、第三者だというふうに最近はやりになっていま すけれども、本当にそれだけでうまく機能するのかというと、多分うまく機能はしないと 思います。でありますので、実際に第三者にどういう意見を求めて、どういう意見を聞い ても、それを実施するかどうかという判断、及び実行について言えば、それは行政が主体 的にどう関わっていくかという、どういうふうに判断して、どういうふうに実施していく かということは、行政が一にかかってやることでありますので、まさか今の行政が第三者 に丸投げしようとしているなどとは決して思いません。思いませんが、そうではなくて、 そういうふうな格好での対応の仕方というふうな、少なくともここのレポートの中で言え ば、潮目も含めた格好での行政自身の、先ほど青柳さんがおっしゃったように、総体とし ての最適化も含めた形での行政の自己評価のシステムと言いますか、勿論常々行政は自分 たちの行政政策を見直す作業をやっているというのは知っていますけれども、そのやって いることが果たして政策の見直し、あるいはそういったことに今まできちんと結び付いて きたかというと、外から見ると非常に心もとない印象を受けているというのが、私の正直 な感想でございます。 ですから、そういう意味で言いますと、行政内部での見直しシステムというのも構築し ていく必要があるのではないかというふうに私は思っています。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。 今の点も含めて、お書きになった山崎委員、何かございますでしょうか。 ○山崎委員 年金の事業の中で、この3事業といったようなものは補足的な事業であると。 その補足的な事業が実は年金財政が非常に逼迫する中で、次第次第に膨脹してきていたと いうことなんですが、これは都村委員にお伺いしたいんですが、年金数理部会で年金財政 の検証をされているんですが、全くこういった要素は財政検証の中で出てこなかったです ね。 ○都村委員 はい、出てこないですね。あくまで年金の中の話です。 ○山崎委員 ですから、資料の1ページに、最近では1,000 分の1を超える費用が投じら れてきて、次第に上がってきていたわけなんですが、年金財政の検証では全くこういった ことが出ていないわけで、その辺の反省もあるのかなという気がいたします。 それから、他の共済組合や船員保険では、きちっと福祉事業の要する費用が料率で出て いるわけですけれども、これは厚生年金、国民年金についてはこれがないわけで、これも 非常にルーズな運用を生んできた原因なのかなという気がいたしております。 ○都村委員 年金数理部会だけではなくて、年金審議会も本当は議題にするべきですね。 ○山崎委員 そういうことですね。ただ、今までの年金審議会は、むしろどちらかという と長い歴史の中では応援団の方であったわけですね。 それから、あとはこういった施設等は基本的に廃止するということなんですが、年金財 政を検証するという中で、例えば、一般の事務費は税金が原則だという本来の姿に戻った ときに、その費用を見なくていいのかということが恐らくあるんだと思うんです。 つまり、保険料以外にかかっている費用というのも広い意味では年金にかかる費用とい うことなので、見る必要があるのではないかという気がいたします。 ○都村委員 どういうふうに譲渡が、もう廃止とか撤退というのは決定しているわけです から、グリーンピアについても譲渡が今かなり行われつつありますからね。だから、どう いうふうに譲渡が行われているか、ほとんどが地方自治体に譲渡することが決定している わけですからね。そうじゃないところも民間にも入ってもらうということが決まってきて いるわけですから、そこの部分について、一度資料はいただきましたけれども、簡単な資 料だったので、そこの御説明を少ししていただいてもいいのではないかと思います。もう 今、譲渡は進行中ですね。 ○森田座長 事務局の方でお答えになられますか。 ○泉年金局資金管理課長 グリーンピアは、もう13年に17年度までということで、どん どん譲渡を進めておりますので、13か所ありましたうちもう半分以上既に譲渡が終わって おります。残ったところも内定と言いますか、地元の自治体と大体話が煮詰まっていると いうところが、ほとんどというか、あと未定のところはごくわずかというのが現状でござ います。 ○朝浦大臣官房参事官 年金の福祉施設、全部で265 施設ございますけれども、これにつ きましては、先ほど部長の方からも説明がありましたけれども、今通常国会においてその 施設を整理合理化するための独立行政法人をつくるための法案を提出して、可決成立した ところでございまして、今年の10月に独立行政法人を立ち上げまして、そこで整理合理化 を5年以内に行っていくということで進めさせていただきたいという状況でございます。 ○森田座長 ありがとうございました。 篠原委員、どうぞ。 ○篠原委員 新聞報道等を見ると、年金制度において少子化とかいろんな前提が崩れてき たと報道されていますが、年金の専門家の方にお聞きしたいのですが、いろんな要因の下 で年金の給付と保険料収入とかの長期的な予想がされている状況において、この十何年運 用利回りは低くなり、それと恐らく厚生年金を納める従業員がパート化してしまうとか、 いろんな要因により、年金制度の前提が崩れてきているのではと思われます。 このようになった環境において福祉還元事業との関係で議論するような場があったので しょうか。 ○大谷年金局審議官 公の形でそういう場があったとすれば、例えば、5年ごとの改正の 前には、年金審議会とか、年金部会とかいうことで、制度の財政検証から制度の在り方を 議論し、その中でシェアは非常に小さかったですけれども、こういったものについては議 論された形跡は恐らくあったと思うんです。 例えば、年金の財政が本格的に厳しくなってきたという検討をしたのは、今回の法律改 正とその前の改正、その前の改正もありましたけれども、本格的に給付の抑制まで行った のは前回ぐらいからです。そのときに、やはり住宅融資についても議論されましたけれど も、廃止は決めたけれども期限は決めなかったと。廃止を決めたということで、やはりそ ういう反省はあったと。 それから、こういった事業について、ちょっと議事録を確認しなければいけませんが、 一定のシェアをどうするかという議論をした痕跡はないと思います。むしろ年金に対して そういう批判、理解を求めなければいけないということが一方でありましたから、こうい った福祉事業の効果も、よりまた理解を求めるためにはこれも存在意義があるということ であって、財政が厳しいからやめろという明快な指摘は余り記憶になかったかなという気 はします。 ○森田座長 どうもありがとうございました。 そうすると、私も一般的な質問ですけれども、そういう指摘がなかったということで、 では何がきっかけで16年の改正でやめるという決断をしたのでしょうか、その根拠になっ た事実と言いましょうか、状況というのは一体どういうものだったんでしょうか。 どうぞ。 ○朝浦大臣官房参事官 年金福祉施設を始めとして、年金給付以外に使われた事業が存在 しておりまして、今回の16年の年金制度改革においては、非常に国民の方々に御負担を強 いるという状況の中で、年金給付の身にならないものについては、これは以上保険料を投 入しないということが決定をされたというふうに理解をされております。 ○森田座長 もし、今の場合、我々の認識の問題にも関わりますけれども、だれもそうい う状況について認識して来なかったのが、ある段階でその事実がわかって、それに応じて 一番早い段階でやめるという決断をしたということであれば、制度そのものの問題という より、決断そのものは何も間違ってなかったんではないかということになろうかと思いま すし、それまでの前提についての認識が合っていれば、それはそれでよかったので、むし ろそれに対して後の状況を前提にして批判する方にむしろ問題があるということになるの か。 あるいはそうではなくて、別な仕組みをきちっとやっていけば、そうはならなかったの ではないかという話になってくるのか、その辺は我々がどういう方向で結論を出すかとい うことに関しては、1つのポイントになるような気もいたしますが、その辺についてはい かがでございましょうか。 と申しますのは、今日のまとめで言いますと、5ページの上の方から書いてありますけ れども「厳しい年金財政の状況を踏まえた改革が進められていく中で、年金福祉還元事業 を進めてきた国や関連団体に対して国民の厳しい批判の目が注がれ、また、年金給付以外 に年金保険料を投入している諸事業に対し、貴重な保険料財源の使い方として厳しい批判 があった」ということです。 その結果「年金給付に関係しない事業へ保険料を投入しないこととするとともに、年金 福祉施設については、17年度に年金福祉施設の整理を行う法人を設立し5年以内に整理合 理化を進めることとされた」という改革の中身が書かれているわけです。上の批判があっ たという事実だけ書いてありますけれども、この検証会議の認識としては、その批判その ものはそういうものとして妥当なものとして認識するのか、そうでないのかというのは、 その後の我々の結論にもかなり密接に関わってくるという気がします。 その後の3.(1)では「・年金制度においては年金給付が本体であり、年金福祉還元 事業は補完的な事業として位置づけられる」という形になっているわけでして、本体の方 がかなり厳しい状況になってきたときに、その補完的な事業をどのような形で持続してい くのか、していくべきでないのかというのが議論になっているわけですけれども、これま での考え方として、補完的な事業の位置づけについて、今までの御議論を整理しますと、 必ずしも明確な形での対応の仕方というものが、今までなかったということは言えるかと 思います。 それは、またこれからの形としては、それ自体はやむを得なかったのかもしれませんけ れども、今後どうするかということについては、もしこれが補完的な事業は本体が厳しい ときには、――ストレートに言ってしまいますと――やるべきではないというのか、これ は少なくとも既になされた政策決定はそういう姿勢、そういう前提になっていると思いま す。いやそうではないということになりますと、これはまた別な、我々としての認識を示 すことになるのかと思っております。 なお、関連して申し上げますと、このまとめの中でも触れられておりますけれども、こ こで取り上げられた、我々が検証の対象とするようにという大臣から御指示を受けました 3つの事業以外でも年金本体から、かなりのいろんな支出がされているということは、今 日のデータでも出てきたわけでございますけれども、それも含めておかしいというのか。 そのことも問題であろうかと思います。 更に余計なことをもう一言申し上げますと、補完的な事業というのはある意味で言いま すと、年金給付をし続けていくためには、必要不可欠であるとしても、それにおいてはあ る程度の限度があると、まさに限度を超えないように、どうコントロールするかというの が、もう一つの在り方として言えることなのかというのが、船員保険の例も見て感じたと ころでございます。 余り座長が意見らしいことを言うのは、いかがかと思いますけれども、少し整理をさせ ていただくと、そういうことになるのかなと思いますが、その辺についていかがでござい ましょうか。 どうぞ。 ○大谷年金局審議官 こういう見直しと言いますか、存在意義も含めて議論になった一番 大きな契機は、少子化を含めて年金財政が、かつて想定した前提よりもはかるかに厳しく なっていく。そのために、負担も頭打ちをしなければいけない。ということは、保険料の 上限を決めるということは、もうこれ以上お金が入らないという前提で考えろと。そうな ると給付を、言わば給付以外のものにお金を使うことについての抵抗感というか、それは よくないということについては、より以前よりも強まってきたことは事実で、恐らく今回 の改正のプロセスの中で、決定的にもう給付以外に保険料を使ってくれるなという主張は 非常に強く出たと思います。 ただ、そのことが、もっと詳しく検証されたかというと、ではその給付以外に使うなと いう意味の中に、しかし本当は使ってもいいものもあったかもしれないので、そこの検証 は議論がどのぐらい緻密にされたかということは、私も確認できませんけれども、大きな 流れはここまで行き詰まったので、もうできる限りやめろというブレーキはかかったとい うところは間違いないと思います。 ○岩渕委員 こういう年金の給付以外に年金の金を使うなというのは、今回初めてと言っ てもいいんではないかと思うんですが、かなり強烈なメッセージとして出てきたというの が事実でありまして、その限りでは、では今まで、先ほど座長がおっしゃったように、そ のタイミングの遅れも含めてさほど非難すべき問題ではないという見方も、一つには成り 立つようには思うんです。思うんですが、なお言えば、それでもなお年金財政の窮迫とい うのは、かねがねずっと予測されてきたことでありまして、行政の方でもさまざまなデー タも出しておりましたので、流れの中で言えばかねがね申し上げておりますように、最適 化のシステムがないような状況の中では、比較的きちんと対応できたと評価することはで きないわけではありません。 でありますが、もっときちんと見直し、最適化のシステムが、少なくとも行政の中にあ れば、もっと早くきちんとできたであろうということは明らかに言えます。でありますの で、我々の報告書の書き方としては、私はそのようにすべきであろうというふうに思いま す。 では、年金の資金をそれ以外に使うなという今回の結論について言えば、使い道として 言われたのが、少子化対策にもう少し年金としての役割を果たすべきだという、山崎委員 などの主張もございましたけれども、今回はそれはある程度と言いますか、ほとんど結果 として改革に結び付かったというのも実態でございまして、それもこれも含めて言えば、 もっと早い段階できちんとした対応、見直しをしておけば、もう少しやりようがあったの ではないかと。 つまり、いろいろな形で見直しのシステムがきちんと機能していれば、いろんな施設の 整理にしても、バナナのたたき売りみたいに最後のところに行って全部やめということで はなくて、もう少し余裕を持ってやれたということも言えないこともないというふうに思 います。 以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。 篠原委員、どうぞ。 ○篠原委員 最初の説明によりますと、福祉還元事業等の全体的に費用は大体1‰以下で すね。そうすると、当然この部分が厚生年金の給付に反映すると考えれば、せいぜい1‰ ぐらいだと考えられます。5兆円の絶対額が示されれば国民感情として無駄遣いという話 になって、0.何‰まで引っくり返ってしまったのかなという印象を受けます。通常1‰ ぐらいだったら附帯事業で行われる事もありますが、福祉還元等には出さないという政策 を打ち出す、そういう意味では潮目というか、これを出さないという決定は非常に難しか ったなという気がします。 ○森田座長 どうぞ。 ○都村委員 先ほどからお話に出ている、とりまとめの6ページの「4.3つの事業を含 めた年金給付以外の事業の実施状況」、これが入っていることは、よいと思います。ただ、 小見出しが実施状況というのは変えた方がいいのかもしれない。在り方についての検証と か。 先ほど参事官から、最初に御説明がありました、財革法による特例措置で保険料財源を 事務費に充てるようになったことを、もう少し詳しく書いてもいいのではないかと思いま す。ここの部分に対する批判というのは、非常に強いと思いますので、そこはもっと見直 すべきだということです。 以上です。 ○森田座長 まだ、余り御発言がございませんが、田島委員、何かございますでしょうか。 ○田島委員 やはり保険料というのは、年金の給付のために使われるのが原則だと思いま すので、大変余裕があるときに別の政策の目標のために使うということは考えられても、 保険料で年金の給付が賄えなくなって、保険料率の引き上げなり、保険料の引き上げなり というようなことが現実に実施されて、給付の減額ということも出てくる段階では、当然 それ以外のことに使うべきではないという判断になるのが当然ではないかというふうに思 っております。 とりまとめの最初の「(1)3つの年金福祉還元事業の目的」のところに書いていただ いておりますものも、そういう趣旨で書いていただいているのかなというふうに思ってい たんですが、そもそもこの年金福祉還元事業等につきましては、グリーンピア事業のこと について書いてございますけれども、年金給付が本格的となるに至っていない時代におい て始められたもので、長期間にわたって保険料を納める被保険者らの制度に対する理解と 信頼を得るということが目的だったというふうになっていますのも、そういうことを踏ま えて書いていただいているというように理解しておりましたので、これまで平成16年に至 って初めてこういったことが問題になったというのは、非常に意外な気持ちがしておりま して、今までの保険料率の引き上げ等の際に、保険料が年金の給付以外のことに使われて いるということが、具体的に説明されていて、保険料を負担する者がそれを理解していれ ば、もっと早い段階にこういった事業は見直すべきだという意見が出るべきなのに、それ が出なかったのはなぜかなということを、むしろ意外に思っております。 ○森田座長 ありがとうございました。予定された時間があと10分ぐらいになってまいり まして、もし当初のとりまとめ(案)をもう少し修正する形で御了承が得られるならば、 次回にはその修正したもので最終的にとりまとめをしたいという心づもりでおりましたけ れども、今日出た御意見を加味しますと、もう少し手を入れて直す必要があるという気も いたしておりますけれども、これはまた山崎委員の方に大分お手をわずらわせることにな りますけれども、それは事務局とも御相談の上でお願いしたいと思います。 ただ、その方向に持っていく場合に、また蒸し返しの議論は極力避けるようにするため に、ある程度確認をさせていただきたいと思っております。 基本的にこのとりまとめのところ、今日御議論出ましたけれども、資料を活用すべきで あると、これはもう少し丁寧な説明をすべきであるというような御主張かと思いまして、 その分だけ分量が多くなると思います。 また、確かに説明を加えるもう一つの理由としましては、わかりやすさということを踏 まえるということだと思います。 今日、御議論を伺っていて、私自身感じましたのは、我々が与えられたミッションその ものが、過去のことについて、何が問題であったということは勿論そうですけれども、そ れは価値判断でもって批判的にいけないというのではなしに、なぜそういうことが起こっ たのか、一定の価値判断というのは既に下っているわけですから、なぜそういうことが起 こったのかということを解明をして、そしてそれに対してどういう対応策があるのかとい うことを書いていくことになろうかと思います。 ただ、何が問題点であるのかという潮目の問題にしましても、どういうことを書いてい くのかということにつきましても、この場でということもあったかもしれせんけれども、 いま一つ具体的な御提案、御発言がなかったというのが私の印象でございまして、ただ、 これはここで会議を続けていても、出てくるかどうかわかりませんので、事務局、山崎先 生には、その辺も少し含めて次回は具体的な御提案をお願いしたいと思いますし、ほかの 委員の方もお持ち帰りになって、そういう意味での具体的な御提案があれば事務局の方に お知らせいただければと思っております。 私自身、最後にどうしても気になるところと言いましょうか、むしろマスメディアの論 調を見ていると思いますのは、平成15年で大きく変わったということですし、その前に年 金の5年ごとの見直しの中で、大変厳しい状況になるということが認識されたということ だと思いますけれども、よくこの分野の批判的な評論家、研究者等の書いたものを拝見し ますと、少子高齢化の傾向そのものは、もっと早い段階から予測できたのではないかと。 それに対して、何ゆえにこういうことをしてきたのかと。それがある意味で言いますと、 ある段階になってやはり年金が厳しくなってきたということが、非常に大きくクローズア ップされるようになってきたのではないかという批判がされていることが多いんですけれ ども、この辺はまさにデータに基づいて検証していただかざるを得ないと思いますが、そ の批判が当たっているのかどうか、それについてきちんとお答えできませんと、我々が出 したものに対して、また同じような批判が繰り返されるということにもなりかねないかな という気がしております。 これは、先ほど申し上げましたけれども、まさに潮目が変わったというのは、自然現象 として変わった潮目がいつなのかというのと、それを認知したのがいつなのかと、認知し たから実際に政策を変えるまでにどれぐらいかかったのか、それぞれ段階があるわけでご ざいまして、少しその辺についてきちんとした、もう少し踏み込んだ説明が必要であると 思っております。 もう一つは、これは確認をさせていただきたいところですけれども、私自身そのように 理解してよろしいかということでございますけれども、この福祉還元事業につきましては、 補助的な事業であるということについては間違いないわけですけれども、ただこれが全く 不要かどうかということについては、むしろ否定的な御意見もあったと思います。そのよ うな観点から見ますと、こういう福祉還元事業については、無駄な福祉還元事業と必要な 還元事業があるのではないかと。福祉還元事業というよりも付随的なシステムの活用とか、 これは何事業というのかよくわかりませんけれども、そうした年金の本来の給付以外の事 業で、必要なものと、なくてもいいのではないかというものがあって、その辺の仕分けを どうするかということも1つの論点になるのかという気がいたしました。 もう一つは、その付随的な事業にについて、やはり一定の位置づけなり比率というもの が明確にされるべきではないのかという気がします。船員保険、その他もそうですけれど も、負担者と、その比率についてある程度はっきりしているということが1つのシグナル になり得るのかなという気がします。 多分この議論ですと、今回対象になっております3事業については廃止ということにな るようですけれども、それ以外のシステムの管理費というのも、比率で言いますとそれな りの比重を占めているわけでございまして、また先ほどの事務関係のものもそうですけれ ども、そういったものについては、どういう形でそれを負担していくのか、保険料の一部 にそれが入っているというふうにみなして、そして年金制度を動かしていくべきなのかど うか。 個人的な意見ですけれども、そうしたものメッセージに入れておくということが、この 検証会議の意見というものを、価値あるものにするためには必要ではないかと、かように 思っているところでございます。 ちょっと余計なことを申し上げましたけれども、もう時間が5分ぐらいになりました。 最後に御発言何かございますでしょうか。 どうぞ。 ○岩渕委員 今、座長がおっしゃったシステム、財革法の辺りのメッセージを少し込める ということには賛成でございます。福祉還元事業という枠から若干はみ出すかもしれませ んけれども、しかし、さはさりながら関連として当然ながら我々の議論の中にも入ってき ておりますので、当然それは入れていくべきであろうと思います。 それから、座長がおっしゃった、少子高齢化がもう以前からわかっていたのにというこ とについて、1つだけ申し上げておきますと、やはりそういう意味で言いますとかつては それほど危機意識が薄かったというのも事実でありますが、ある程度その危機意識が高ま ってから以降については、いかに年金財政を維持するか、あるいは財政再計算をスムーズ にいかせるかという意識がやや働き過ぎたということも一応指摘しておきたい。私は個人 的にはそういうふうに思います。 なお、少子化に関しては、山崎委員も十分御承知でいらっしゃいますので、あとは山崎 委員にお願いしたいと思う次第です。 ○森田座長 御指名ございましたけれども、山崎委員。書く方でということですね。失礼 いたしました。 ほかに、いかがでございましょうか。 どうぞ。 ○大谷年金局審議官 あとは、この福祉事業、あるいは保険料を給付以外に使うというこ とが、年金制度にとってどういう意味があるのか。それは、例えば、その使うことによっ て年金制度の信頼が高まるとか。あるいは年金制度を、例えば少子化に使えれば基盤が厚 くなって、年金がより安定するというふうに使うならどうかという切り口もあれば、一方 で財政的に見て、国の一般会計に頼っていっても、これは毎年減しかないので、保険料で 自力でやった方が、言わば外から注入するよりも自ら注ぎ込んだ方が行動しやすくなると か、そういう財政的な要素がいろいろあるわけですが、財政論を余りここで展開するとな かなか言い切れない面もありますので、あえてそこは避けるにしても、年金としてそうい うお金を使うことがプラスかどうかという判断は、若干でも書き込んでいただければ、今 後の参考になるんではなかろうかと思います。 ○森田座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。事務局の方、よろしい でしょうか。 若干強引なまとめ方をさせていただきますと、とりまとめ(案)につきまして、流れそ のものについては、大きな問題の御指摘がなかったと思いますけれども、もう少し肉づけ をして、ある意味での方向性を明確にするというような形で修正をしていただいて、それ をまた次回議論するということで、よろしいでしょうか。 (「はい」と声あり) ○森田座長 それでは、本日の会合は、これまでとさせていただきます。次回は今、申し 上げたとおりでございまして、山崎委員には大変な御負担をおかけいたしますけれども、 事務局に手伝っていただきまして、修正した原案を出していただきたいと思いますし、で きるだけその修正、まとめの作成を効率的にするために個別的に御意見を是非事務局の方 にお寄せいただきたいと思います。また、それにつきまして、少し事前にフィードバック ということもしていただければと思っております。 それでは、よろしくお願いいたしたいと思います。 次回の日程につきましては、事務局の方で調整をお願いいたします。 それでは、事務的にもよろしいでしょうか。本日の会合は以上をもちまして終了いたし ます。御多用中のところ長時間にわたり、ありがとうございました。