第4回 年金の福祉還元事業に関する検証会議 議事録 日時:平成17年3月8日(火)13:00〜15:30 場所:経済産業省 別館 944号室 出席委員:森田座長、岩渕委員、篠原委員、田島委員、都村委員、山崎委員 事務局:大谷年金局審議官、貝谷年金局総務課長、泉年金局資金管理課長 中野社会保険庁企画課長、朝浦大臣官房参事官、三枝社会保険庁企画課施設管理室長 ○森田座長 ただいまから第4回「年金の福祉還元事業に関する検証会議」を開催さ せていただきます。本日はご多用中のところ、ご出席いただきましてありがとうご ざいます。まず、委員の皆様方の出欠についてですが、本日は全員ご出席です。前 回は、「年金福祉施設事業」についてご議論いただきました。本日は、前回までに 委員の皆様方から出されました要求項目を含めて、年金の福祉還元事業全般にわた る議論を行いたいと思っています。早速ですが、事務局から資料の説明をお願いし ます。 ○朝浦大臣官房参事官 本日の資料は、資料1「年金福祉還元事業の状況等について」、 資料2「検証検討項目について」、参考資料として国会の議事録を付けています。  まず資料1に沿って説明いたします。  資料1「目次」に書いていますが、これまで3回にわたりご議論いただきましたが、  その中で宿題として積み残していた資料も含めて整理をしました。資料1の1〜2  頁は、前回「年金福祉施設事業」について、このような形の経緯、背景等々の資料  を出していますが、それにグリーンピア、年金住宅融資の実施状況について追加し、  まとめたものです。説明は割愛させていただきます。   3頁以降、国会の審議の状況を付けています。これは年金福祉施設関係の昭和20  年代から平成に入るまでの議事録をまとめたものです。簡単に国会審議の概要につ  いて説明します。1頁は、20年代から30年代にかけての議論です。昭和28年12月に、  政府委員からの答弁として、厚生年金の予算についての質問があったわけですが、  当時は厚生年金病院の予算が中心で、福祉施設費については、保険料率のうち0.1%  は年金被保険者のための福祉施設に使うことで了解されており1パーミリを上限に、  福祉施設の費用を賄うということが、当時はあったと推測されます。その後、有料  老人ホームや厚生年金病院についての議論が昭和30年代まで起こっています。   4頁、昭和40年代の議論としては、昭和48年3月に健康管理センター、厚生年金  スポーツセンター、国民年金の保養所関係の設立についての議論がありました。昭  和50〜60年代に入り、年金福祉施設についての見直しの議論が始まっています。オ  イルショック以降においての建物の拡大は実態と合っているのかといった議論や、  昭和61年には、厚生年金の各種施設と管理者の結びつきについて再検討する時期に  きているのではないかといった議論。昭和62年には、民業圧迫といった観点から、  その点について配慮すべきではないかといった議論が行われています。   5頁は、平成に入ってからの議論です。平成元年6月に、厚生年金に入っている  人は、有料老人ホームのような施設に対する期待が大きいといった指摘がありまし  た。平成6年には、障害者福祉、高齢者福祉についても、積立金をうまく利用して  やっていくことが大切だ、といった指摘。平成11年の決算委員会では、会計検査院  の報告についての指摘があり、健康増進機能の必要性も含めて説明してほしい、と  いった指摘がありました。   6頁以降は、年金福祉施設事業に関して、前回見直しのいろいろな経緯を紹介し  ましたが、委員のほうからその後の行政側の対応状況について調べてほしいという  要望があり、まとめたものです。昭和58年9月に行政管理庁の意見があり、ここに  書いてあります政府管掌健康保険保養所等々の施設について、指摘があったわけで  すが、これらの施設の新設は行わないということで対応しています。ただ、健康増  進機能を併せ備えた多機能の施設については、その後も整備を行ってきたといった  状況です。   平成7年4月に、社会保険庁の主催で開催した年金福祉施設事業の基本的な方向  について、有識者の方に中間報告をいただいています。その後の対応については、  書類を探したのですが、具体的な対応といったものは、現在は見つかっていません。  平成8年に小泉厚生大臣が、社会保険庁の福祉施設は、厚生省としては、もうやら  なくてもいいのではないかといった指摘があり、それに対しては、年金福祉事業に  関する有識者の意見等に基づいて見直しを行う、という対応をしています。この有 識者の意見については、後ほどご紹介したいと思います。その際の基本方針として  は、新規の施設は計画中のものを除き新たな設置はしない。平成11年度までに施設  整備は半減する。既存施設の見直しを行う、といったことを決めています。最後に  施設の整備運営について、保険料拠出者(労使)の参加を求めるということを決定  しています。   7頁、行政監察局が平成10年に、国民年金と厚生年金両制度について指摘をして  いますが、これについては施設業務運営、あるいはその適正化について関係団体、あ  るいは各都道府県に通知をしています。平成10年の会計検査院の公的宿泊施設の検  討結果についての対応についても、現在調査中です。平成12年の閣議決定、民間と  競合する公的施設の改革について指摘があったわけですが、これについては「備考」  で書いていますが、船員保険については、平成14年12月に合理化計画を策定し、整  理合理化を進めています。その他の施設については、今般の年金改革の議論の中で、  年金福祉施設については、整理合理化のための独立行政法人を設置し、5年を目処  に売却廃止をするということを決めています。   8頁、行政改革大綱は、ただいま説明したものと同じですが、行革大綱について  は、毎年の措置状況についてフォローアップをしています。平成15年の指摘につい  ても、年金福祉施設については5年を目処に廃止売却するという方針です。平成15  年には、会計検査院からの指摘、平成16年3月には、与党からの指摘がありました。  対応状況はここに書いてあるとおりです。   9頁以降、有識者の意見ですが、小泉厚生大臣の指摘を受けて、平成9年5月23  日から8月6日に、社会保険庁のほうで、有識者8名の方に聴いています。労使そ  れぞれ2人、大学教授が2人、マスコミ関係者の方が2人といった構成です。質問  事項は、1〜6まであります。1.被保険者、受給者、事業主の年金制度に対する  今後の期待は何かといった質問。2.年金には福祉施設事業が制度化されているが、  今後のあり方をどう考えるか。3.現在の福祉施設事業の規模、方法についてどう  考えているか。(11頁)4.福祉施設事業の年金会計からの支出はどの程度が適当  か。5.民間との協調について、どうしたらよいか。6.その他といった質問です。   この有識者の方々の意見を読んでみると、施設整備に関しては、整備についての  積極的な推進派から、存続派、消極的な見解をお持ちの方までいらっしゃるという  ことです。ちなみに、2の「年金には福祉施設事業が制度化されているが、今後の  あり方をどう考えるか」といった質問に対する回答は、Aの方は、「利用者のニー  ズの把握が必要であり、スクラップ・アンド・ビルドにより社会的合意を得る必要  がある」という回答です。Bの方は見直しの見解だと思いますが、「一部の人のみ  への還元となっている。過去には意義があったが、今は見直しの時期にある」とい  った回答です。Cの方は存続ということで、「施設の運営等については透明度を上  げる必要がある。不足している施設は必要である」という回答でした。Dの方も存  続という整理だと思いますが、「真に正しければ信念を持って行動することも必要  である。十分説明し、納得してもらえば個々の事業主、被保険者の協力は得られる  はず」ということです。   Eの方は見直しの見解です。「これ以上は要らない。逆に縮小してもよいのでは  ないか。特定の人だけが利用する事業はよくない。場所によっては、投資するのが  無駄な施設は思い切って潰すしかない」ということです。Fの方は、存続・推進と  いう立場から、「もっと広報すべきである。やめろという話は聞こえてこない。も  っと施設をつくったほうがいいくらいだ。自主運用のあり方から、不動産投資も必  要である。売却を考えるのは最後の最後である。逆に施設を廃止するとどういうこ  とになるかを考えるべきである」といった意見を寄せられています。   次のの頁、Gの方ですが、見直しの立場から、「福祉施設事業は当初は意義があ  ったが、拡大方針を見直すべきである」といった意見です。Hの方は存続の立場か  ら、「福祉施設事業は評価する。しかし、公共施設が不足した時期にはニーズがあ  ったが、近年は経済が豊かになり、状況が変わってきている。事業の見直しはケー  スバイケースで、一律には判断できない」といった意見が寄せられています。Gの  方はどちらかというと見直し、Hの方は存続という見方ができると思いますが、い  ずれも「拠出者の意見を反映できる仕組み、あるいは拠出者の意見を聴くことが必  要である」といった意見を併せて寄せられているところが注目されるのではないか  と思います。   13頁以降、事業関連法人における厚生労働省出身者の調べです。前々回、委員か  ら要求された資料です。13頁がグリーンピア関連と年金住宅融資の関連の団体につ  いて整理をしたものです。役員数438名のうち、厚生労働省出身者47名です。これ  は非常勤を含む数になっています。職員数644名のうち12名が厚生労働省出身者で  す。14頁は、年金福祉施設の関連法人の状況です。役員数1,372名のうち162名が厚  生労働省出身者、これも非常勤を含む数です。職員数2万9,042名のうち557名です。  13頁の数と合わせると、役員数のうち厚生労働省出身者が209名、職員数が569名と  いう数字になります。15頁が平成12年度から5年間にわたって役員数がどのように  推移してきたかを整理したものです。合計覧で見ると、厚生労働省出身者の数は、  常勤者は4名から5名という形で推移しています。これはグリーンピアと年金住宅  融資の関連の法人です。16頁が年金福祉施設関連の法人です。12名から13名という  ところで推移してきています。   17頁以降、共済組合関係の施設の状況についてです。17〜19頁は、平成13年12月  に閣議決定された特殊法人等整理合理化計画のまとめをしたものです。私学共済、  農林共済、衆議院共済組合等々23の共済、日本たばこ共済、鉄道共済、国家公務員  共済組合連合会、警察共済、19頁は地方共済、公立学校共済といった共済組合につ  いて、宿泊施設、医療施設、保養・保健施設等に関する指摘がなされています。   20頁以降、国家公務員共済組合の状況で、事業年報を付けています。21頁の真ん  中から下方に、宿泊施設の状況が載っていますが、平成14年度末の宿泊施設は、宿  泊所21、保養所27、合計48施設であるという記載です。昭和46年度がピークで83施  設、現在までに35施設が減っています。全体として42%減となっています。   32頁以降、地方公務員共済組合の事業年報を付けています。34頁の表は、右に1  〜17まで番号が振ってありますが、この10のところは医療機関の数で、52施設あり  ます。14は保養所の数で、98施設です。16は宿泊所の数で、130です。   41頁以降が私学共済の資料です。43頁、施設の数は平成15年度で会館が8、宿泊  所が6、保養所が8施設あります。宿泊所のうち、松島、有馬は15年4月に閉鎖、  それを除いて宿泊所は6施設です。58〜59頁は農林共済の状況です。虎ノ門パスト  ラルだけが、現在は稼働していると聞いています。   66頁は船員保険の福祉施設事業についてです。社会保険庁は、船員保険法の規定  に基づき、保険者として船員保険の被保険者等の健康の増進、あるいは福祉を図る  ために船員保険病員、あるいは船員保険保養所等の施設を設置し、運営してきてい  ます。船員保険の福祉施設事業の特色としては、給付に必要な財源とは別に船舶所  有者が全額負担する、いわゆる全額事業主負担で、その保険料を財源として福祉事  業を行っています。「参考」で書いていますが、「施設等を含む福祉事業は6パー  ミリという中で運用をしてきています。昨今、被保険者数がかなり減少していると  いうこともあり、この福祉事業そのものの財源もその傾向を受けて縮少している状  況です。その中で、事業の実施にあたっては、船舶所有者の代表、被保険者の代表、  保険者の代表で構成する船員保険福祉施設問題懇談会で協議をし、実施してきてお  り、施設の整理合理化、どこの施設を廃止するかといった議論もここで行っていま  す。   67頁以降は、この懇談会の報告書をまとめたものです。68頁は直近の報告書の中  で、整理合理化計画を作成しています。5番で書いていますが、平成14年12月10日  に「船員保険国内保養所および福祉センター合理化計画について」というものをま  とめ、年次的に整理合理化を図って、昭和17年度末までに、平成13年度末現在の施  設を半分程度にするということで進めています。これに基づいて、14年度2カ所、  15年度2カ所、16年度は5カ所廃止する予定です。最後の頁は船員保険保養施設の  推移を整理したものです。施設のピーク時には70施設ありましたが、現在は19施設  まで減ってきています。   続いて資料2の説明をいたします。資料2は、これまでの検証会議の議論を、検  証項目ごとにまとめたものです。1〜4頁はグリーンピア関連、5〜7頁が年金福  祉施設、8〜10頁が年金住宅融資事業に関する発言内容の整理です。検討項目によ  っては、3事業共通した指摘もあり、それぞれの事業特有の指摘も様々いただいて  います。   グリーンピア事業についての意見としては、「年金の福祉還元事業に関する政策  目的の妥当性について、どのように考えるか」といったテーマについては、労働者  年金保険法の中に、被保険者や受給者のための福祉施設についての根拠が法律に書  かれているのは大変興味深い。最初から長期保険であるがゆえに、被保険者の生活  安定のために、保険料が利用されてもいいということを意味するような条文があっ  たということだ。年金福祉関連事業は質がいいというか、最初からそういう政策目  的をきちんと明示しながら展開してきた、なおかつ被保険者に対しての福祉あるい  は還元という意味合いからしても、少なくとも途中までは成果を上げ得たと一応評  価しておきたい、というご指摘がありました。   ほかの役所の様々な事業に比べて、なぜ厳しい批判にさらされているのか、ある  いはさらされてきたのかと言えば、やはり国民の年金資金という国民にとってみる  と自分の老後の支えとなるべき資金がつまみ食いされたのではないかという疑念が  常に付きまとっている。そういったことは許し難いことで、些細なことでも敏感に  反応するものであるという点の認識がもともと欠けていたと言えるのではないか、  という指摘もありました。また、いろいろな役所の方と会うと、この問題について  の理解がされていない。比較するべき人たちの適切な情報が入っていない。国民に  対しての説明も大変大事であるが、政府関係の人たちも意外と施設を設置した経緯  がわかっていないので、どういう経緯でやったかはきちんと説明しておくことが必  要である、という指摘がありました。   年金の福祉還元事業が、当時の時代背景の下で必要とされたということはわかる。  ただ、年金福祉還元事業の利益にあずからず、少子高齢化によって年金財政が極め  て逼迫し、年金保険料が上がる一方、年金受給開始年齢はだんだん上がっていく、  受給額が減っていくという世代に属する者から見れば、グリーンピア事業は必要で  あったかもしれないが、本当に適当な場所に適当な規模と予算でつくられたものな  のかどうか疑問だ、という指摘もありました。グリーンピアについては、本当に必  要なものが必要な場所につくられているか、という検証がなされるべきではないか  といった指摘がありました。   個別事業について、「立地の場所の選定や建物の設置が適切に行われたのか、ま  た施設運営の効率化にどのように取り組んできたか」というテーマですが、グリー  ンピアについては、全国画一方式ということに問題があるのではないか。こういう  事業の場合は、テストをしながら実験的に進めていく方式も必要だったのではない  かといった指摘。また、グリーンピアの設置については、多くの県から要望があっ  た中から選ばれているが、どのようにして選ばれたのかよくわからない。それぞれ  の施設に投下された資金に多寡があると思うが、なぜそれだけの事業規模になって  それぞれに差があったのかよくわからない、という指摘もありました。グリーンピ  アの候補地の選定経緯はわかるが、政治家の圧力が関わっていないとは思えない。  グリーンピア等の関連法人のスタッフとしては、公的年金制度についての経験があ  り、ある程度の専門的知識を持つ者が一定割合いないと、素人ばかりでは運営が大  変なのではないか、といった指摘もありました。グリーンピアの運営主体である財  団は民とはいえない。そこが運営していると効率化はあまり確保できない、という  指摘。グリーンピアの運営について、委託契約がいくつか重なって存在するところ  は、なぜこのように再委託する必要があったのかというご指摘もありました。   「その後の社会環境の変化をどのように認識していたか、また変化の兆候を把握  するモニタリングはできていたか、併せて得られた情報の活用はできていたか」と  いうことについては、行革の大きな流れを審議会がどう受け止めるかについては非  常に消極的な感じがする。審議会であまりにも福祉施設や年金業務に関する審議が  なく、事務局も用意しない。昭和50年代半ばに撤退の議論が出ていてもよかったの  ではないか。   平成5年の年金審議会の意見書は、昭和40年代に行ったものと全く変わらない認  識であり、かなり問題である。世の中の流れがはっきりしているにも拘わらず、誰  も気がついていなかったのだという気がする。政府あるいは厚生労働省、社会保険  庁だけの問題ではない。福祉施設等をまだまだ充実させるという雰囲気の中では、  事務局も動きがとれなかったのではないか、という指摘がありました。   「状況の変化やきっかけがあったにもかかわらず、なぜ政策が変わらなかったの  か」といった点については、厳しい言い方をすると、もともとブレーキのない車で  走っているのが行政であり、民間は採算がとれなければ倒産という破局を迎える。  それが大きな歯止めになって事業の見直し、撤退、様々な企業ビヘイビアが行われ  るが、行政に関連する事業においては、マスコミ流の表現をすれば、親方日の丸的  な考えで、例えば倒産して路頭に迷うという恐怖感がもともとない。もうそろそろ  撤退に入るべきだという判断は、多分その当時の皆さんがされていたと思うが、判  断と決断とは違う。決断するシステムがもともとなかったと言わざるを得ない。シ  ステム的な問題である。行政が持っている本来的な1つの限界というものが当然な  がら反映しており、これからブレーキをつける努力をしない限り、同じような形で  いろいろな問題が起こってくる。年金の資金が財政的に厳しくなったときに、きち  んとした形での規律が働くようなシステムないしメカニズムがなかなか作動しなか  ったのではないか。   4頁、上記検証結果を踏まえて、「今後の厚生労働行政の政策決定のあり方をど  のように見直していくべきか」というテーマについては、大臣から潮目を見誤った  のではないかという発言があったと思うが、それはなぜなのか。そういう観点から  見ると、潮目を見誤まらないようにするためにはどうすればいいのか、それが今後  の厚生労働行政の政策決定のあり方の見直しに資する回答になるのではないか。ど  ういう形で効くブレーキをつくるのか、それを提言するのがこの会議の最終的な使  命である。年金の資金が財政的に厳しくなったときに、それに対してきちんとした  形で規律が働くようなシステムないしメカニズムが、なかなか作動しなかったとい  う気がする。どういう形でそれを考えていくかが、この会議の最終的なミッション  になる、という指摘がありました。   年金福祉施設と、年金住宅融資の関連については、グリーンピアに対して行われ  た意見以外のところをご紹介したいと思います。「年金の福祉還元事業は、その政  策目的を達成するための手段として妥当であったか」といったテーマについて、年  金福祉施設事業は、範囲がかなり広い。病院と他のスポーツ振興や健康増進、余暇  利用、生きがい増進の施設とは若干性格が異なるという気がする。保険料は、みん  なが拠出した一種の社会的な貯蓄であるから、それを有効に活用することについて  被保険者や受給者がどう考えているかを把握することも重要だったのではないか。  本来、年金福祉事業は、世間から指弾を受けるような事業ではなかったが、今、こ  こに至って過去を評価すると、様々な問題がある。印象としては、いくら何でも数  が多すぎたという実感がある。年金福祉施設事業の成り立ちについては、それぞれ  必要性があり、根拠もあって実施されてきたことは理解できるが、その後社会情勢  が変わり、年金福祉施設の見直しに関する提言が昭和60年代以降、各方面から指摘  されており、その後の対応については非常に問題がある。   個別事業についてのご指摘ですが、これは先ほどの発言と同じです。行政に対する  影響力の大きさでは、最も大きいのはやはり立法府、国会および政治家の動き、言動、  意向ではないかと推察する。我々の検証作業は、立法府とのかかわりがかなり重要な  部分を占めるのではないか。「その後の社会環境の変化について」は、先ほどと同じ  指摘です。「得られた兆候や情報の活用ができていたのか」ということについては、  もう少し早い段階で施設の部門別の収支などの経営分析を行い、事業内容に無駄があ  るのであれば見直すべきだったし、収支均衡の見込みがあるかどうかという判定をも  っと早く分析すべきであった。制度共通の福祉施設については、委託費が交付され、  講座の受講料など、近くの類似施設よりもかなり低く設定されていたとか、委託費の  額は一律であるという点が妥当かどうかについて、もっと早く検討されるべきであっ  た。それぞれの指摘が社会情勢に対してちょっと遅れたような指摘なのか、それを十  分にやらなかったので、次々に厳しい指摘が出て、最後は統廃合、売却の話になった  のか。指摘を見ていると、それぞれ納得がいくようなものなので、その対応をきちん  とやっていれば、もうちょっと適切な、現在においても対応ができたのではないか、  といった指摘がありました。   7頁の「その他」ですが、年金制度を若い層が理解し、身近に感じることはすごく  大事である。そういう点で何らかの工夫があって、年金の施設であることを利用する  人たちにわかってもらえるような、そういう工夫があったほうがよかったのではない  か。若い層に還元する施策が全くなしでいいのか、あるいはそれをある程度残しなが  ら見直していくほうがいいのか。やはり被保険者がどう考えているのか、特に若い層  の被保険者がどう考えているか、そちらへの影響も少し考える必要があるのではない  か、といった指摘です。   8頁以降は、年金住宅融資事業に関する意見です。年金住宅融資事業は、被保険者  のウェルフェアを高める点で大いに寄与してきた。当時は、民間の金融機関の住宅資  金を借り入れることは非常に困難であり、その穴を公的資金でかなり埋めたという意  味で、非常に歓迎すべき事業だった。しかし、一般には住宅融資が果たしてきた個人  および経済への影響はそれほど知られていない。年金住宅融資事業は、全体的に言え  ば資金運用ではそれほど悪くなかったのではないか。   9頁、「その後の社会環境の変化をどのように認識していたか、また変化の兆候を  把握するモニタリングはできていたか。得られた兆候や情報の活用はできていたか」  といった点については、年金住宅融資事業は評価したいが、民間部門がどんどん進出  し、経済社会に大きな変化があったので、もっと適切な対応を考えるべきであったと  いう点ではグリーンピアと同じだと思う。年金住宅融資の場合は、競争の中で状況を  変えてきて、それが鮮明に現れて、それに対する対応というのがかなり効いてきたの  ではないか。逆に言うと、市場のシグナルが少ないところでは、舵取りが難しかった  ということも言える。融資制度自体が社会的に評価されているからこそ、いま批判さ  れていないのだと思うので、年金住宅融資は相当な期間にわたって社会的使命を果た  してきた制度だと思う。ただ、昨今、民間の金融機関も住宅ローンの金利が非常に低  下し、年金住宅融資を受けた方々が、民間の金融機関に借り換えをするような自体に  立ち至った段階においては、もう使命を終えたので制度を廃止するというだけのこと  ではないか。だから、これについてはそんなに細かく議論する必要はないのではない  か。低所得者に対しては、年金住宅融資制度では必ずしもなく、他の制度でやればい  いのであって、制度としては役割は終わった、といった意見がありました。説明が長  くなりましたが、以上です。 ○森田座長 詳細な説明でしたが、ご説明いただいた資料に基づいて、ご意見をいただ  きたいと思います。いろいろな論点がありますが、最初にこれまでに委員の皆様から  出されました要求項目に関する資料1のほうからご議論いただければと思いますが、  いかがでしょうか。 ○岩渕委員 国会における質疑を拝見すると、全体の流れについては評価したり評価し  なかったりということで、様々な意見が出ていたという感じはするのですが、要する  に政治力云々ということで、我々がどうかと思う点は、国会の表の場では当然ながら  出てこないということだったというのは、これを拝見してそのように思いました。で  すから、それをでは今からどう検証するのかと言われても、当時、たぶん役所に対す  る国会議員の個別具体的な要求というのは、かなりのものがあったのであろうと推察  されますが、表向きの国会の場では、こういうことだったのでしょうというところで、  問題の所在というのはなかなか厄介といいますか、きちんと把握できない、検証でき  ないという点で言うと、難しいという感じをとりあえず受けました。  ですから、個別具体的に、誰がどこをどういうように誘致したのかということは現実  的ではありませんし、そういう意味で言えば、この中にも一部出てきたように、厚生  大臣および厚生大臣経験者などという表現が当たっているかどうかわかりませんが、  突き合わせると大体そのようなことであったと言われているということなので、それ  はその限りでそのように受け止めていいのかなという感じを受けています。 ○森田座長 いまの点を含めて、他の方いかがでしょうか。 ○都村委員 1980年代の初めに臨調の答申とか、行政管理庁での実態調査などがあって、  いろいろ意見が出てきたわけですが、やはり行革の視点とは別に、年金福祉事業と保  険料拠出者との結びつきについて検討することが必要だったのではないかと思います。  施設の整備や運営について、保険料拠出者(労使)や保険者の参加を求める、特に、  中小企業およびその従業員の方たちの意見を反映できる仕組みというようなことが必  要だったのではないかと思います。それで質問なのですが、66頁の船員保険の福祉施  設事業のところで、最初に「社会保険庁は船員保険法第57条の2の規定に基づき」と  ありますが、これが何年の制定なのかという年次と、その下の「船員保険福祉施設問  題懇談会」というのが設置されて、定期的に協議が行われているようなのですが、こ  れが何年に設置されたかということをおたづねしたいと思います。  先ほどのご説明で、厚生年金、国民年金については、年金福祉施設事業に関する有識  者の意見聴取ということで、6項目について有識者から意見を聴く、というのが1回  だけあったとのことです。船員保険で設置され、定期的に協議をしていく「福祉施設  問題懇談会」というのは、大変重要だと思うのですが、社会保険庁はどうして船員保  険だけにこのような協議の場を設けたのでしょうか。労使、保険者、受託団体の代表  がバランスよく入って構成され、議論されているわけですが、国年、厚年の福祉施設  についても、こういう懇談会がどうして行われなかったのでしょうか。行革の議論が  出てくる前後ぐらいに、こういうものが設置されて、定期的に議論なり調査なりが行  われていれば、1985年年金改革のころに、グリーンピアの対応についても、もっとは  っきりした議論が盛り上がっていたのではないでしょうか。この船員保険の「福祉施  設問題懇談会」というのは大変興味深いのですが、これが何年に設置されたかを教え  てください。 ○朝浦大臣官房参事官 船員保険法は非常に古く、戦前の昭和14年に制定されています。  その中で、この第57条の2の規定ができたのは昭和18年です。「船員保険福祉施設問  題懇談会」というのは、所有者の代表、被保険者の代表、保険者の三者構成ですが、  これができたのは昭和44年1月です。ただ、それ以前に財団法人の船員保険会という  のがあり、ここが福祉施設事業の委託を受けて運営をしているのですが、その船員保  険会において、「海上打合せ会」という名前で労使の方が集まって、福祉施設事業に  ついての議論が行われていたという歴史があり、その歴史の上にこの三者構成の懇談  会ができたと聞いています。 ○都村委員 国民年金や厚生年金の福祉施設事業について、こういう懇談会が1969年以  降に設置されなかったというか、そういう議論が全くなかったということでしょうか。  1回限りの有識者の意見を聴いたのは、わりと最近ですね。 ○朝浦大臣官房参事官 これまでの調査の中では、特に年金の福祉施設に関して、拠出  者の代表を入れた恒常的な会議を開いて議論していくといった事実は判明しておりま  せん。先ほどご紹介した有識者会議も、小泉厚生大臣の指摘を受けた後に1回、集ま  って会議をしたということではなく、個別に有志からヒアリングを行っているという  ものです。 ○岩渕委員 船保は、別途使用者側がお金を負担しているので、それに対するシビアな  検証のような格好でそういう懇談会ができていた、ということで受け止めていいので  しょうか。国年、厚年のほうは、内規が0.1パーミルということで、その限りであれ  ば「まあ、いいや」という感じでズルズルときたというように受け取れるのですが、  そういうことではないのですか。 ○朝浦大臣官房参事官 財団法人の船員保険会ができた切っ掛けはちょっとわからない  のですが、1つは福祉事業の保険料率が決まっていますので、被保険者がどんどん少  なくなってくる状況の中で、福祉事業に使う財源も限りがある、その中でいかに効率  的に福祉事業を行っていくかということを、労使が集まって議論をしていこうという  ことではなかったかと思います。 ○岩渕委員 有識者のは、個別のヒアリングだったようですが、これを見ると、いろい  ろな方の意見の中で、マスコミが悪いという大合唱ですね。とにかく年金不信に対す  るマスコミのミスリードというか、言いたい放題というと変ですが、ここにはマスコ  ミの代表が2人いたようですが、私は「何をやっていたんだ」と、ちょっと怒りを感  じたのです。確かにマスコミのせいもあるのは否定しませんが、行き場のない憤懣は  マスコミに向けておけば何となく、というのが社会の通例というか、最近では行政の  手法でもやや見られるのではないかと私は若干その辺のところを危惧しているわけで  す。確かにマスコミの問題は様々ありますが、1回だけの言いっ放しで、結局「マス  コミが悪いんだ」という格好で終わってしまったというのは、非常に残念というか、  何をやっていたのだろうという感じはしております。 ○森田座長 ご意見は承っておきます。 ○都村委員 有識者に対するヒアリングのポイントは、2とか3とか4とか5とか、そ  ういったところにあり、1は導入部で、有識者の意見として本当に聞きたかった内容  は、2・3・4・5というところではないでしょうか。 ○森田座長 以前行われた意見聴取の結果をどう評価するか、というのはいろいろある  と思いますが。 ○山崎委員 いま都村委員がご指摘になったように、船員保険の福祉施設事業への取組  みについて、非常に興味を持ちました。ブレーキ、決断をするシステムをいかに作る  か、あるいは規律が働くシステムをどう作るかというのは、今後に向けての1つの課  題、教訓だろうと思うのですが、そういう意味では船員保険というのは、かなりその  条件を満たしていると思います。  厚生年金については、昭和27年の国会での政府委員の答弁で、創設当初は保険料のう  ち0.1%は年金の被保険者のための福祉施設に使うということで了解されていたとい  うのですが、これは制度創設当初ですから、その後はどうなのか。事務局も、こうい  った0.1%などという数字は、今回の検証で初めて知ったことだろうと思うのです。  ですから、ほとんど野放しできたというのが実態だろうと思います。船員保険は現在  は6/1000ですが、これは今までどのように推移してきたのか、当初からずっとこう  なのかをお聞きしたいと思います。共済組合や厚生年金基金等においても、たしか福  祉掛け金というのを別途とっている場合があったと思うのです。そういった他の社会  保険などで取り組んだものが船員保険以外にもあるとすれば、参考にすべき事例があ  るのではないかという気がいたします。 ○朝浦大臣官房参事官 先ほどの0.1パーミリについて、現在、福祉施設関連、あるいは  福祉施設事業としてやっている額はどの程度かといったことについては、データがあ  りませんので調べてその実態をご紹介します。 ○山崎委員 事務局は、こういう数字は頭になかったのでしょうね。船保の6/1000と  いうのは、今はこうですが、今までの推移はどうだったのでしょうか。 ○三枝社会保険庁企画課管理室長 当初、昭和16年のころ、法律ができたときですが、  まだ福祉の規定が盛り込まれておりませんで、そのころは船員保険会の会費制で行っ  ていたわけです。その後、昭和20年に法律に福祉規定が盛り込まれ、ここからは国が  これを実施するということで、船員保険会に替わって社会保険庁が、厚生省が担当す  るようになりました。保険料を徴収したのは昭和20年からで、会費制に替えて保険料  として徴収するようになりました。当時の料率がどうだったかは、調べさせていただ  きたいと思います。 ○森田座長 確認ですが、今のは船員保険の話ですね。 ○三枝社会保険庁企画課管理室長 はい、これは船員保険の話です。 ○森田座長 山崎委員のご質問は、必ずしもそれだけではなくて。 ○山崎委員 他の共済組合等でも福祉掛け金というのをはっきり明示して徴収している  所があると思いますが。同じく厚生省の中でも、児童手当の事業主の拠出金について  は、その一部をはっきり明示して、児童館の整備やベビーシッターの利用料という形  で、現物給付に充てることができるということになっております。その辺も調べてい  ただきたいと思います。 ○森田座長 山崎委員の論点を確認させていただきたいのですが、要するに当初は0.1%  なり何なりで歯止めのようなものが存在したのではないか、それがその後、認識され  なくなってきたのではないかということですね。 ○山崎委員 国会の政府委員の答弁では、「そのように了解されていた」ということで  すから、おそらく公式の文書には残っていないのではないかと思うのです。これでは  何の歯止めにもならない。もともとそういうルーズなものだったのではないかと思い  ますけれども、いかがでしょうか。 ○森田座長 その後の福祉掛け金などについても、それは別途それをやるという意味で、  この福祉関連事業については、暗に枠のようなものが存在していたのではないかとい  う趣旨のご質問ですね。 ○山崎委員 はい。 ○森田座長 他にいかがでしょうか。 ○篠原委員 8頁の平成15年のところで、財政制度等審議会で、独立採算による運営を  原則とすると記載されています。この前、熱海と湯河原(ハートピア、保養ホーム)  に行ったのですが利益が出ていました。ただ、費用には通常の減価償却や利息の費用  が含まれていないと考えられます。いわゆる民間でいうフルコストが含まれていない  状態での利益だと思われます。一般的に言うと、利用料等は公的施設は民間よりいく  らか安くしているということで、独立採算を確保することは、困難ではないかという  気もするのです。このような観点からの検討はされたのでしょうか。  今日紹介されたいろいろな共済組合宿泊施設は、おそらく安い宿泊料だろうと思われ  ますので、設備費というか、減価償却はほとんど回収していないのではないかという  気がします。もし回収したら民間と同じになるか、それ以上高くなってしまうことが  あると思われます。こういう方針に対してもっと積極的に、それはできないというか、  安くして福祉還元の部分があることから、独立採算はできないのではないか。公的施  設においては、今の状況のように施設設備費や利息を回収しないで運営費だけトント  ンにすればいいという考え方と、一部の設備費を負担する等の方針を決めておく必要  があるのではないでしょうか。  そういう意味で、何らかの検討をすべきではなかったのかという気がします。 ○朝浦大臣官房参事官 年金福祉施設については、保険料を財源として施設整備費、あ  るいは修繕費というか更新費に充てており、運営費用はその施設の収益で賄っていく  システムになっております。したがいまして、ここで言っております独立採算という  のは減価償却を除いた形での独立採算という意味であって、委員が言われているよう  に運営費はトントンといいますか、収支相償なう形で運営をしていくことを基本にし  ているわけです。 ○篠原委員 最近報道で年金で1兆5,000億ぐらいを投資していると書かれています。  これは設備費だと思いますが、この金額が回収できないという論調となっています。  もともと回収予定はなく、その部分が福祉還元事業に該当するものではないか。費用  は正確に把握しても、その効果は表示できないことが多い。そこのところが語られて  いないものですから、どうしても1兆5,000億をドブに捨てたという印象を与えてし  まうような気がしています。ただ、厳しく見れば、無駄というか、経済性や効率性に  おいて問題があったということも認めなければいけないと思いますが、かなりの部分  は福祉還元しているのではないかという印象を受けています。  そういう意味で、先ほどの設備費は回収しないと言いながらも、そこの部分は何で回  収しないかという説明をきちんとしておかないと、政策が間違っていたと言われかね  ない危惧があります。 ○朝浦大臣官房参事官 保険料で投入した金額は、現在固定資産として土地なり建物と  してあります。それについては、本来であれば回収を予定していない額。ただ昨今指  摘されているのは、回収した資金を現金化し、年金給付に結び付けるというところま  で求められております。新しく独立行政法人をつくり、そういった作業なり業務を行  うことになろうかと思います。 ○森田座長 いまの点ですが、最初にご指摘がありました財政制度等審議会「自己財源  で整備費を賄うこととし」というのは、この整備費は、更新や施設の維持管理のほう  だけですか。 ○中野社会保険庁企画課長 平成15年の財政制度等審議会の議論は、この時点では、福  祉施設に新たに社会保険から年金の保険料を追加的に投入していくこと自体が適切で  はないのではないかという議論がありました。社会保険庁は建物を造るハードの整備  費として従来資金を投入していたわけですが、そのこと自体、今後はしないことを基  本とするという考え方を示されているわけです。そうしますと、その後の整備ができ  なくなりますので、その部分も含め費用は事業収入の中から捻出していく考え方を取  っていくべきではないか、というご指摘と私どもは受け止めておりました。その背景  にあるのは、平成12年ごろから特に強くなってきましたが民間との競合関係の問題が  ありました。従来の年金の福祉施設の場合は料金を低くすることでハードをつくり、  それを利用していただく。低料金にして、たくさんの方に利用していただくことで還  元するという考え方だったわけです。この考え方そのものが、民間で同様の宿泊施設  を運営している事業者から見ると、競合していると。したがって、低料金設定の考え  方そのものが民間の多くの施設との関係で、適切なのかという問題提起が平成12年ご  ろからなされてしていた。そういう中で年金財政が厳しくなってきたということもあ  って、財政制度等審議会のようなご指摘になってきたのだろうと思います。 ○篠原委員 細かい話になりますが、融資制度の概要の中に、一部の人のみが利用、特  定の人だけ利用している、もっと広報すべきという一方、宣伝し過ぎではないかとい  う話があります。いまホテルなどはホームページを使うと、非常に安いものがうまく  検索できる仕組みになっており稼働率が上がると思います。公的施設はホームページ  を持っているようですが、安い所を検索してうまくたどりつけるようになっていない  ような気もするのです。そういう意味で公的施設の利用率を上げるには不利となって  いるのではないか。宣伝はできない、料金は一定限度に抑えられている状況で、自己  財源でやりなさいとなってくると、なかなか難しいのではないか。民間並みの採算を  とろうとしたら非常に不利ではないかという印象を受けています。どんなものでしょ  うか。 ○都村委員 今日いただいた私学共済の宿泊利用率は、保養所の利用率は大体30%前後  の所が多く、宿泊所の利用率は40%前後の所が多く、非常に利用率が低いです。時系  列で見ますと、平成2年から5年はやや高かったのですが、その後、かなり低下して  います。これは経済の影響があるのかもしれません。いま厚生年金、国民年金の年金  福祉事業が問題になっているのですが、旧厚生省以外の、郵政省、旧労働省、あるい  は各種共済も同じような宿泊や保養所を保持しています。共済組合とのバランスが考  えられたのかどうか、その辺はどうなっているのでしょうか。概して利用率は低いで  す。私学共済の宿泊の所も全国にありますが赤字の所が多いです。 ○森田座長 いまのはよその共済の話ですが、コメントありますか。 ○都村委員 旧厚生省の施設が大きく問題になりますが、ほかのも結構、郵貯会館、簡  保の保養センター、旧労働省関係の雇用促進事業団、労働福祉事業団、各種共済、こ  うした福祉施設もあるわけです。現状では、公的な施設間の格差もあります。 ○朝浦大臣官房参事官 他の省庁が所管する施設は十分把握しておりませんので発言で  きませんが、もし比較できるものがあればご紹介したいと思います。 ○山崎委員 国共済、地共済、私学について出してもらいましたが、少し整理されて、  時系列で施設数あるいは宿泊定員がどのように推移してきたかを一枚紙で見られるよ  うにしていただきたいと思います。先ほど来のご意見にもありますが、私自身も、健  保では政管健保、それと厚生年金のこういった施設については、大企業の福利厚生と  のバランスをとる意味もあったのだと思うのです。そういう意味で、安い料金で中小  企業の労働者に気軽に利用していただくという意味も、かつては相当あったように思  います。  もう1つは、これは昭和30年代の話として聞いたのですが、当時の年金財政計画は、  将来的には積立金の運用収入をものすごく当てにしていて、それで保険料を安くする  財政計画になっておりました。つまり、積立方式を基本にし、それを修正しているわ  けですから、相当な積立金の運用収入を予定していたわけです。その中で、膨大に膨  れ上がる積立金を何に使うか、関東平野全部買ったらどうかという話もあったそうで  す。年々の施設の収支は赤であっても、将来的に地価が上がれば膨大な資産として残  るわけですから、おそらく1つの不動産投資、資産運用の有力な方法の1つとして考  えられた時期もあるのではないかと思います。ただ、年金の財政計算の中では、こう  いったものは全く出てこないのです。   企業年金等で言えば簿価から時価の評価へということですが、現実に時価評価して  売却した場合にどのぐらいの資金になり、それが年金財政にどのような影響を与える  のか、というようなことは全く行われてこなかったわけです。その辺も1つの反省材  料かと思います。つまり、こうした施設を持つことが年金財政にどのような影響を与  えているのかを定期的に検証する必要があったのではないかと思います。 ○田島委員 他の省庁が所管する宿泊施設等についても、赤字体質であったり、利用率  が低かったりという実態があるわけで、このことはいま問題にされている厚生労働省  の年金関係施設に限った問題ではなく、他の省庁が所管する施設も共通の問題として  現在残っていることなのではないかと思います。国会審議でも昭和57年ごろから、オ  イルショック以後において年金財源を使って建てる建物が拡大していく計画はいまの  実態と合っているのかという疑問が呈され、行政監理庁でも施設の新設を中止すべき  だと意見が出され、それに対する対応も一部あることはあったと思いますが、その後  のいろいろな施設事業に関する行政改革等の動きに社会保険庁がどう対応してきたか  を見ても、何か意見が出される都度、それに対して積極的に行政として関わって、大  きな改革をしていったようには見受けられない。  また、年金福祉施設事業に関する有識者意見、これは平成9年の段階でまとめられた  意見ですが、この時点でもなおかつ消極意見がある一方、もっと積極的に施設を充実  していくべきだという意見もあり、現状維持という意見も含め3つの意見が併立して  いるような状況があるわけです。こういった環境の中で行政として社会保険庁、厚生  労働省が抜本的に施設の見直しをしていくということができる環境はなかったのでは  ないかと考えるわけです。結局は、もともとこういう政策をとるときは、当初の段階  から法律の中に定期的に、その時代に施設等の施策が合致しているかどうかをチェッ  クする仕組みを組み込んでおく、あるいは、何らかの第三者機関により、定期的にチ  ェックを加える仕組を行政機関が組み込んで、一旦決めた施策をずるずると承継して  いくことのないように制度面で大きな手当をしないと、こういった間違いが今後も起  きるのではないかという印象を持ちました。 ○篠原委員 今回の厚生年金は福祉還元事業に一切投入しないというのは、まさに政策  の転換となっています。赤字の問題ではなく、年金制度そのものからチェックされる  ようにしておく必要があるのではないでしょうか。運営の面では効率的にいくとか、  赤字をなるべく少なくする方向での対応が充分であったかの検討が必要とされるので  はないか。 ○山崎委員 拠出者の意向をどのように反映するかということですが、一般にそういう  機関をつくった場合は労働組合の代表の方が入ると思います。しかし、労働組合の代  表の方は、本当に拠出者の意向を反映する人なのかどうかが、私にはかなり疑問があ  ります。平成9年の有識者意見の中に、お二人労働組合を代表する方がいらっしゃる  というのですが、今日言われているような全面的な見直し撤退ということにつながる  ご発言はされていないと思います。拠出者の意向を反映する場合は、その人選が非常  にポイントになると思います。 ○森田座長 資料1について、これまで委員の方から要求があって出された情報につい  てご審議いただきました。この検証会議もそろそろ中間点を過ぎる時期になりました。  これからまとめに入っていくということになりますと、どういう形で意見を集約して  いくかを、そろそろ考えながら議論を進めていかなければならないと思います。それ  に関しては、いちばん最初のときに何を議論するかについて整理していただいたもの  があります。それは皆さんのお手元に資料としてあると思います。   資料2は、これまでそれぞれの三事業についてご発言いただいたものを事務局が整  理したものです。検証項目と、それに対する発言の内容を見ながら、どういう形でこ  れからの議論を整理していったらいいのか。いくつか個別的な論点は出ていると思い  ますが、これをシステマチックに結び付けて、こういう形で検証し、もう1枚の資料  に出ていますように、この検証会議の趣旨で言うと「今後の厚生労働行政の政策決定  の在り方の見直しに資することを目的として検証する」ということですので、政策決  定の在り方の見直しに資するような内容を最終的にまとめていかなければならないと  思っております。こちらのほうに論点をシフトし、これからご発言いただきたいと思  います。もちろん、前の部分を含めても構いません。そういう観点からいかがでしょ  うか。 ○岩渕委員 皆さんのこれまでの議論は、方向性としては対立点や別の方向はあまりな  いわけで、どうやってきちんとしたまとめをするかに尽きるだろうと思います。   それについて言えば、最近の行政の見直しでいうと、「ときのアセスメント」、ダ  ムや干拓をやめたりとか何か行われてきましたが、それがここでは有効に機能してい  ないということであります。これは事柄の性格が違うのかもしれませんが。しかも、  ときのアセスメントの格好でのやめるのも、かなり政治的な、ずいぶん思い切った決  断をしないとできないというのでは、誰がどう決断するかに係ってくるというのでは、  いささか心許ないと思います。   これはお願いですが、座長がこの間、チェック機能の設定で、どこか具体的な制度  設計みたいなのをやっている所がありそうだ、という話をなさっていたのではないか  と私の記憶にあるのですが。事務局のほうはいかがでしょうか、最近ほかの役所で、  猫の首に鈴を付けるかどうかわかりませんが、新たなシステムの取組みというような  形での話を聞いたことはないですか。 ○森田座長 私は何を発言したか覚えておりませんが、一般的には、いわゆる政策評価  によって定期的に評価をし、見直して、継続するかどうかの判断が、法律もあります  し、行われるようになった。それが有効に機能しているかどうかはまた別な評価の問  題になると思います。   もう1つは、法律の中でも、いわゆる時限立法で一定の時期に見直すと、条文中に  組み込んでいる仕組みもかなり出てきていると思います。そういう意味で言うと、見  直すということはかなり制度的に言われております。ただ、実際にどういう形でその  制度を組み込むかということと、それがどう機能しているかは別な問題であると思い  ます。 ○岩渕委員 そういう意味で、原則としてすべてサンセット方式にしてしまえと思うの  です。時限立法、ときのアセスメントも含めてシステマチックにするにはサンセット  方式でと。それは法律だけではなく、いろいろな制度、場合によっては政策について  も、サンセット方式をきちんと組み込んでおかないと、その時の誰かが判断してやっ  てくれと言ったところで、今までこの検証をやってきたように、それを個人の責めに  負わせるのは酷ですし、当然ながら官僚の世界の通弊としては、あまり目立ったこと  をやるとか、また、いちばん大きい問題としては、過去の間違いを指摘して直すこと  が、官僚の世界、行政内部にとってみると非常に大変難しいことであることは確かに  言えると思います。すべての行政の問題点はほとんどそこに起因するのではないかと  思うぐらいであり、行政無びゅう論と言っていいのかどうかあるいは官僚無びゅう論  なのかよくわかりませんが、間違えたということでの反省は、放っておけば永久に出  てくるものではないと思われます。   極端な例は、薬剤エイズとか様々な事件となって出てくるのもあります。そういう  ことを含めて言えば、きちんとした歯止めといいますか、システム的な見直し機能を  どう構築していくかを皆さんで話し合っていけばいいと思います。 ○篠原委員 統廃合の検討は独立行政法人評価委員会に付託しているし、地方独立行政  法人法は、法律の中に解散などを検討する項目が入っています。従来の特殊法人は、  そういう部分は何もなく、つぶすところを書いたら、そんな法律は作れなかったなと  いう気がします。今後はいま言われたように、検討するとか解散とか、いろいろな事  由を入れておく必要があると思います。やはり従来とは変わってきたと思います。 ○岩渕委員 私も独立行政法人の評価委員会に出席しております。ただ、それぞれセッ  トされて見直し、あるいは、前倒しなどいろいろやっていますが、積極的にこの独立  行政法人を廃止すべきだという意見は出ません。私は統廃合すべきだと意見を申し上  げましたが全く反映されませんでした。結局どこで実現するかというと、それは総務  省から出てくる。そういう格好で、何か印籠か何かで、これが目に入らぬかというの  が出てこないとなかなか。実を言うと、ほとんどの委員が応援団だという問題点があ  ることはある。そこのところは、仕組みとしてどう仕組んでいくかが非常に悩ましい  ところであると思います。 ○森田座長 いかがでしょうか。先ほどご意見として第三者機関というお話もありまし  たが。 ○都村委員 経済社会状況の変化に応じて変えるべきものと、変えるべきでないものを  きちんと識別していくことができる組織をつくることが重要なのではないか、自己改  革を続けていくことができる組織を築くことが、まず何よりも大事ではないかと思い  ます。今までの経緯を見ても、経済社会状況の変化に対応して政策が変わる度合いは、  その要因にもよりますが、かなりタイムラグがあるわけです。国民のニーズに応じた  政策を講じるという意味では、いま申し上げたような組織をつくる、できるだけ変化  に対応し、素早く意思決定ができる組織にすることが重要だと思います。 ○篠原委員 公認会計士の立場から言うと、いまの予算制度のもとでは費用が正確に把  握できない状況なのです。意思決定する際に、費用を把握し、効果はどうしても数値  にならない文章になってしまうのですが、比較データが示されないと問題や課題が見  えてこないのではないか。現状では投入金額しかなく、費用で毎年どれだけかかって  いるという情報がありません。今は、公会計システムの構築が必要とされているので  はないから考えられますが、厚生労働省だけではなく全省庁に関係してきます。 ○岩渕委員 私は組織論はよくわかりませんが、組織というのは少なくとも人間の性善  に頼るべきものではないと思います。ですから、制度とか組織というのは、その人が  正しい判断をしてくれれば間違いはないというのでは組織でも制度でもないと思いま  す。つまり、最も悪い、あるいは、横しまな人間がいても、きちんと運営できるとい  うのが組織であり制度だと思っています。そういう意味で言うと、性善説はとるべき  ではないと思います。そのほうがやっている人も楽です。やってはいけないことがき  ちんと決まっていれば、あるいは、こうしなければいけないと罰則付きで決まってい  れば、それに則ってやっていけば、たんたんと進められるわけです。しかも見直しも  改革もできるわけです。そういうところをきちんと歯止めをかけるようなシステム、  それこそ第三者機関でもいい。ただ、単に第三者機関だけでいいのかというと、その  第三者機関を選ぶのは誰かという話になってきますから、そこのところの問題はあり  ます。そういう意味で言えば、最もきちんと、最も性悪な人間が、そこの担当につい  てもきちんと機能する組織、制度であるべきだと、原則としてはそのように思います。 ○森田座長 性善説という言葉が出ましたが、田島委員、いかがですか。 ○田島委員 政策評価の制度はきちんと機能させれば有意義なものだと思います。これ  はまだ始められたばかりで、主として自己評価の段階にとどまってるという気がしま  す。第三者による正当な評価をすることにより、例えば政治からの圧力を排するよう  なことまでも担保するものであってほしいと思い、きちんと充実する方向にできない  かという希望は持っております。 ○山崎委員 難しい問題でして、特別会計は、ある意味で政治からかなり自由な部分を  持っているのだろうと思うのですが、逆に非常に不透明を生みやすいことが問題だと  思うのです。最終的には国会でお決めになることだろうと思います。それが国民の意  思を反映することになると思います。したがって、今日の資料でも、国会でほとんど  議論になってこなかったということが問題で、やはり年金の財政検証の中で、こうい  った事業が行うことがどのような費用面で影響を与えているのかを定期的に検証し、  国会の審議に委ねるという仕組みが必要ではないかという気がします。 ○森田座長 資料2に関していかがでしょうか。委員の方々の発言を整理されたもので  すが、いまご発言があったところはかなり含まれていると思います。さらに、こうい  う点もあるのではないかとか、この認識についてはどう思うとか、そういうご意見で  も、いかがでしょうか。 ○山崎委員 民間との住み分けをどうしたらいいかということですが、実は日本の医療  の提供は民間主体です。しかも昭和30年代後半に医療法の改正の中で、公的病院は民  間病院で不足している場合のみ設置を認めるという病床規制を入れてきています。そ  して民間に対しては医療金融公庫を通して低利で融資を行うということで、それ以来、  今日の民間主体の日本の医療提供体制が出来上がって、日本の医療費は、経済規模か  らいうと非常に安くあがっている。そういう意味で、外国から見ると効率的になって  いる。いちばん大きな要因は、民間主体で施設整備を進めてきたということです。医  療法の中ではっきりした住み分をする仕組みをつくってきています。この年金の場合  どう考えたらいいのかについては、全くアイディアがありません。 ○森田座長 いまご指摘があったのは大変重要なところではないかと思います。多くの  公的機関が行った事業は、やはり民間でマーケットをカバーできない部分について進  出していくという形で、多分グリーンピアもそうだと思います。福祉関係の事業につ  いて言いますと、先ほどの共済組合もそうです。サービスの質は民間より落ちるけれ  ども、低廉の料金でサービスを供給していく。民間のサービスを購入できない人たち  に対し、そういうサービスを供給する機会をつくっていくという意味で大変大きい役  割を果たしてきたと思います。いまの病院の場合も同じようなことだったと思います。  ただ、その後どうなってきたかと言いますと、だんだんだんだん、特に右肩上がりで  成長が進んできて需要に対して供給が不足してくると今度は供給力を強化していくと  いう意味では、民間のほうは民間で収益は上がりますし、こうした公的施設も、高い  質のサービスに対するニーズが高まってきます。そうすると、料金は低廉に据え置い  たまま、サービスの質を上げていく形で変化してきたところもあろうかと思います。  病院にしてもそういうことがあろうかと思います。   それが1990年代に入りバブル経済が終わった後、ニーズ・需要が減ったときにどう  なってくるかというと、民間は限られたマーケットの奪い合いになりますから、競争  条件が不利であるということで、民間との競合の話が批判として出てくる。そのとき  に公的な機関は、サービスの質を落として本来の機能に戻れるかというと、それがな  かなか戻れなかったのではないか。そうすると何が起こるかというと、両方でお客さ  んの取り合いになるわけです。ここは篠原委員も言われましたが、民間は、その意味  でいうとサバイバルのために、創意工夫をし、競争力が強くなってくる。それが公的  部門にしわ寄せがきているという気がします。   医療の話と施設の話は少し違いますが、施設のほうは、いまの高等教育に関する大  学の学部教育についても同じことが言えると思います。需要が拡大している部分と、  減ってきている部分のところで性格が違っているのかもしれませんが。需要が減って」  きているところについて、どういう形でこの仕組みをうまく転換していくかというの  が、先ほど岩渕委員からもご指摘がありましたが、大きな問題になってきているとこ  ろだと思いますし、都村委員が言われましたように、その兆候が見えた段階で、いか  に早く舵をきることができるか、それがなかなかできなかったのはなぜなのかという  話になるか、という問題であると思います。 ○大谷年金局審議官 いま山崎委員から医療との比較で意見が出ました。これは実際年  金の施設について非常に重要な視点だと思いました。医療はあくまでサービスを提供  するのが使命ですが、年金はあくまで、現金を老後に年金という形で支払いするのが  最大の使命です。実は、宿泊施設は年金本来の使命ではない。宿泊施設は,年金が財政  的にある程度余裕があり、利用者に対して年金が将来、何十年も現金をもらうまでの  間に、いわば参加意識を高めるために提供したにすぎなくて、資産保有の一形態であ  ったと思うのです。何で今回見直しをしてきたかというと、年金の収支が非常に厳し  いことが完全に明らかになってきて、保険料を上げなければいけない、給付は下げな  ければいけないという現実の中で、そういう資産を持っている余裕があるのかという  ことで、深刻な反省を突き付けられたわけです。   そうなると、先ほどの官・民の議論でいくと、もし現時点で官に対して、もっと宿  泊施設をつくれという需要があったとしても、いま年金が逼迫している中では年金は  宿泊施設からは撤退するしかないわけです。年金制度においては、宿泊施設を提供す  ることは、いわゆる加入者に対するサービスであったにしても、国民に対してその責  任を背負っているわけではないということになって、その辺が我々に対する潮目とい  うか、判断を誤ったといわれるあたりかなと思います。   仮に、いま年金で施設が順調に運営して黒字を出していたとしても、もう撤退しろ  という潮目にきたのかなと。そんな官・民比較論であるという気がいたします。 ○山崎委員 たしか法律ではできるという規定ですから、あくまでも財政の余裕のある  範囲内でできるということだろうと思います。 ○森田座長 こういうときに議論する場合に、うまく適用できなかったという政策転換  の失敗であるか、運用の失敗であるかという話もありますが、そもそも元のスタート  ラインの政策そのものがサステナブルな仕組みになっていたかどうか。なっていたと  してもその前提条件は何なのかという1つの視点があるかと思います。   先ほど山崎委員がご指摘になりましたように、0.1%というのが何らかの形でサステ  ナブルになるためのビルト・イン・スタビライザーのようなものであったのかどうか。  そうした場合には、それが1つの原則として、それからの運用のときに機能したのか  しなかったのか、その辺が少し気になるところです。   そのあとは、とにかく多すぎるという形で発展してしまったと。そこから方向転換  を図るときに一体どういうきっかけがあるのか。これは都村委員がご指摘になったと  ころです。その後、確かにいろいろな視点がありますが、さまざまな形で行革から指  摘されたときに少しずつ変わってきている、そして、最終的に撤退するという形にな  ってきたと思います。そして、その間にタイムラグがあったと思います。その辺りが  検証の1つのポイントになるのかなという気がしております。  審議官からご発言ありましたが、事務局からいかがでしょうか。 ○山崎委員 検証会議ですからざっくばらんなことを申し上げたいと思います。事務局  からはおそらく出てこない話だと思いますが、いわゆる天下りの問題です。特に社会  保険庁の人事と一体になってきたのだろうと思います。つまり、行き先がないと円滑  な人事が行えない仕組みが組み込まれていたということで、それは考えなければいけ  ないのではないかということです。つまり、役所の人事は人事できちんと完結するよ  うな仕組みに改めるべきです。これは人事院にお願いしなければいけないのかもわか  りませんが。こういった施設を当てにしなくてもいいような人事制度をどう確立する  かということです。これは座長のご専門かもわかりませんが。 ○森田座長 先ほど言いましたが、このままではうまくいかないということが認知され  てから方向転換をするまでにかなり時間がかかったというわけですが、その場合、転  換の障害になる要因というのは、1つは、いまご指摘のありました、行政組織の内在  的な要因だと思います。もう1つは、岩渕委員がご指摘になっていますが、やはり外  の政治、あえて言いますとマスメディアも関わることになりますが、そうした政治的  な要因に対して、それをどう説得をし転換していくか。その辺りの仕組みがいちばん  難しいのではないかと思います。少しずつその話が検証のほうに向かってきたという  気もいたしますが、ご発言がおありの方はお願いします。よろしいでしょうか。   事務局の方とは少ししかお話をしていないのですが、これからどうまとめるかにつ  いて、ただいま何人かの方からご意見が出ました。それについて特にご意見がないと  いうことですと、大体その方向性といいましょうか、先ほど言われましたように、そ  れほど大きな皆さまのご意見の差がないとしますと、どういう形で検証を、最終的に  報告をまとめていくかという方向で考えていきたいと思っております。その際に、事  務局でいろいろ案を用意していただき、それをたたき台にご議論いただくのもいいか  と思いますが、いま山崎委員がご指摘されたような問題もありますので、できればど  なたか委員の方に、たたき台のようなものをご提案いただいて、それをベースに少し  詰めていく、それを事務局で肉付けしていただく、ないしは補強していただく形で整  理してはいかがかと思っていますが、いかがでしょうか。こう申しますと、どなたに  お願いするかという話が次に出てくるわけですが、この辺については別途ご相談をさ  せていただきたいと思います。いずれにしてもそういう形で進めさせていただくとい  うことでよろしいでしょうか。   次回以降はもう少し具体的な検証の在り方についてのイメージをお出しして、それ  をベースにご議論いただくことにしていきたいと思います。それでよろしいでしょう  か。   本日ご議論いただいたことについては更に事務局で整理していただき、それも含め  て次回議論したいと思います。   それでは、本題以外で何かご発言、ご意見はありますでしょうか。特にないようで  す。効率的に会議が進みまして、早目ですがこれで終わらせていただきたいと思いま  す。次回の日程については、原案の準備等もありますので事務局で調整していただき  たいと思います。   それでは、本日の会合は以上をもちまして終了といたします。どうもお忙しいとこ  ろありがとうございました。