第3回 年金の福祉還元事業に関する検証会議 議事録 日  時:平成16年12月15日(水)13:00〜14:30 場  所:厚生労働省 9階 省議室 出席委員:森田座長、岩渕委員、篠原委員、田島委員、都村委員 事務局 :大谷年金局審議官、貝谷年金局総務課長、泉年金局資金管理課長      青柳社会保険庁運営部長、中野社会保険庁企画課長、朝浦大臣官房参事官      三枝社会保険庁企画課施設管理室長 1.開会 2.議事 (1)  年金福祉施設事業について     (2)  その他 3.閉会 ○森田座長 定刻になりましたので、ただいまから、第3回年金の福祉還元事業に関する 検証会議を開催させていただきます。  本日は、御多用中のところ御出席いただきまして、ありがとうございます。  まず、委員の皆様方の出欠についてでございますが、本日は山崎泰彦委員が御欠席でご ざいます。なお、都村委員は途中退席されると伺っております。  前回は、大規模年金保養基地(グリーンピア)事業、年金住宅融資事業について御議論 いただきました。本日は、年金福祉施設事業について御議論いただき、その後、前回、委 員の皆様方から出されました質問に関する事項について議論を進めていきたいと考えてお ります。  それでは、本題に入らせていただきます。年金福祉施設事業につきまして、まず事務局 から資料の説明をお願いしたいと存じます。 ○朝浦大臣官房参事官 それでは、資料に沿って御説明したいと思います。年金福祉施設 事業に関しまして、本日は3点の資料を用意させていただいております。資料1「年金福 祉施設等の設置経緯及び背景等について」でございます。資料2「年金福祉施設事業につ いて」でございます。参考資料として若干分厚い資料がついておりますけれども、この3 点の資料で御説明をさせていただきたいと思います。あわせて、第2回の資料を一部お手 元に置いておりますけれども、前回、冒頭で整理させていただきました検討項目を横目で 見ながら御議論いただければと思っております。  資料1によりまして、年金福祉施設事業につきましてのこれまでの全体の流れを見てい ただいた上で、資料2によりまして補足説明を行いたいと思います。なお、資料1、資料 2の説明の際には、適宜、参考資料についても触れさせていただきたいと思っております。  それでは、資料1の1枚目をお開きいただきたいと思います。年金福祉施設等の設置経 緯及び背景等についてでございます。年金福祉施設制度の歴史を振り返るということでつ くらせていただいたものでございます。年代ごとに「設置経緯・社会的背景」、中欄で 「福祉施設の設置、見直し状況等」、備考として「(主な年金制度改正等)」を並べて見 ております。年代ごとに当時の被保険者数や受給者数をあわせて記載させていただいてお ります。  まず、昭和19年に整形外科療養所が設置されたのがこの年金福祉施設事業の始まりでご ざいます。労働者年金保険法の制定過程で福祉施設の必要性について議論がされまして、 法律に福祉施設を行う根拠規定が設けられております。  参考資料の 222ページをお開きいただきたいと思います。日本全国の病院数の推移を、 平成15年度までの期間をとって出しております。昭和19年当時は病院数は非常に少なかっ たということもありまして、病院を設立するという動きがございました。当時、戦時体制 下において、産業傷痍者の国内における生産戦線への復帰を図る必要があったということ で、当時の病院施設は戦争により荒廃し、また、既存施設も貧弱な状態にあったというも のでございます。戦後、急激なインフレの影響で、相対的に年金給付の水準が低下して、 年金制度に対する懸念が出始めていたということで、当面の対策として、福祉施設の拡 大・強化を図ったものでございます。 福祉施設事業の意味合いとしましては、真ん中の欄に書いておりますけれども、被保険 者の長期にわたる保険料の納付意欲の維持、制度に対する信頼感、安心感の確保を目的と して設置したものでございます。 続きまして、昭和30年代に入りまして、年金により老人ホーム等の設置を求める旨の附 帯決議がなされております。参考資料の36ページ、衆議院の第19回国会の附帯決議として、 こういった趣旨の決議がなされております。その後、福祉の増進、勤労生活者の教養文化 の向上を図るサービスに意義があるということで、厚生年金会館の設置、スポーツセンタ ー等が設置されてきております。 続きまして、昭和40年代に入りますと、高度成長に対応するために、給付水準等の充実 が図られ、被保険者の保険料も増加したということで、あわせて保険料の負担も増加した ということで、福祉施設事業の重要性が高まったという認識の下に、当時、余暇の活用と いうことが社会的背景としてありまして、国民年金保養センターあるいは休暇センター、 国民年金会館といったものがつくられてまいりました。 次に、昭和53年から「第一次国民健康づくり対策」ということで、健康への関心が高ま りまして、健康づくりの基盤整備を行うという趣旨で、厚生年金健康福祉センターあるい は社会保険センターが設置されております。参考資料の62ページに「第一次国民健康づく り対策」としてうたわれた基本方針が示されております。真ん中の欄に書いておりますよ うに、保養所的な施設から健康づくり機能を持った施設への転換が図られております。  続きまして、次のページでございます。厚生年金病院におきまして、入退院が長期にわ たる患者のリハビリテーションや生活指導等に限界があるということで、病院と家庭との 中間的な施設を設置するということで、これは病院の関係者の方からの強い要望があって つくられたと聞いておりますけれども、厚生年金保養ホームを設置しております。  続きまして、昭和60年代に入りますと、「第二次国民健康づくり対策」を推進すること になりまして、これも62ページに「第二次国民健康づくり対策」の基本的な考え方が載っ ております。運動習慣の普及に重点を置いた施策の推進というものでございまして、栄養、 運動、休養のうち、遅れていた運動習慣の普及を図っていこうという方針の下に、社会保 険健康センターというものをつくり、国民年金健康センター、総合健康センターの設置を 図ってきております。  その次に「ゴールドプラン」というものが作成されまして、総合的な高齢者への施策が 政府全体の課題になりまして、そういった動きを踏まえて、厚生年金の終身型利用老人ホ ームを設置するということで、千葉の方に1カ所、終身型の老人ホームを設置しておりま す。  これが年金福祉施設設置の経緯ですけれども、同時に見直しの議論も徐々に出てきてい るということを紹介させていただきます。  2ページの2段目の○印ですけれども、行政管理庁から、社会保険庁の年金施設として 厚生年金会館、国民年金保養センターを対象として実態調査が行われまして、これらの施 設については民間との競合という観点で、民間と競合するものについては原則として新設 はしないという改善意見が示されております。  それから、平成8年以降ですけれども、小泉厚生大臣より、年金福祉については民営化、 統廃合等の手段をとるべきという指示が出されまして、それを踏まえて部内で検討してお ります。それから、総務省の行政監察局におきまして、収支改善が見込めない施設は廃止 を検討するという指摘、会計検査院からも今後の改善、統廃合の要否の検討の必要性の指 摘が出されております。平成12年には、閣議決定で、国または特殊法人等が設置する公的 な施設、会館、宿泊施設等については、新設の禁止、早期(5年以内)に廃止、民営化そ の他の合理化を図るという決定がなされております。近くは、今回の年金改正に関連いた しまして、年金保険料は今後、福祉施設の整備及び委託には投入しないことと、5年をめ どに廃止、売却するといった方針が示されております。  見直しの議論につきましては、資料2の方でもう少し詳しく御説明をさせていただきた いと思います。  それでは、資料2をお開きいただきたいと思います。まず1ページ目ですけれども、制 度の発足当時の議論につきまして、若干、補足的に説明をさせていただきたいと思います。 労働者年金保険法が昭和16年に制定されておりますけれども、これは現在の厚生年金保険 法の前身でございます。その際に、2番目の○印ですけれども、長期保険である年金保険 の魅力に欠けているところをできるだけ補って、被保険者の長期にわたる保険料納付意欲 の維持、制度に対する信頼感、安心感を確保するという観点から、福祉施設の必要性につ いて議論がなされ、法律上、手当をされたというものでございます。参考資料の 209ペー ジですけれども、労働者年金保険法の規定をつけさせていただいております。 210ページ が、その解説本から取った抜粋でございます。 続きまして、資料2の2ページですけれども、年金福祉施設事業の運用主体をどうする かという議論が当時なされておりまして、政府みずからが実施する方法、既存の団体に委 託して実施する方法、新たな機関を設置して実施する方法の3案が提起されて議論されて おります。政府がみずから実施する方法につきましては、ここに5点ほど掲げております けれども、いろいろな制約があることと、特殊な経営技術あるいは経営組織を必要とする ために特別の法人が必要であろうというようなことで、政府みずから行うのではなくて、 別の団体に行っていただくということがなされております。  既存の団体につきましても、ここに挙げておりますようなものが候補として挙げられま したけれども、法律に基づく年金保険事業の一部であるという重要な施策を推進する観点 から、新たに財団法人年金保険厚生団を設けまして、そこに施設の運営をお願いすること になっております。  3ページをお開きいただきたいと思います。最後の○印になりますけれども、最初は厚 生団みずから施設を設置して運用する、いわゆる民有民営方式をとっていたわけですけれ ども、ここに掲げておりますように、大蔵省預金部からの融通資金がGHQの指令により 停止されまして、厚生団がみずから融資を受けて設置することが困難になったこともあり まして、これを契機に、国が直接施設を設置して、厚生団にその運営を委託する現行の方 式がこの時点で出来上がったという経緯がございます。  資料2の説明ですが、4ページから、先ほど御説明したものが詳しく並んでおりますの で、そこは時間の関係上、割愛させていただきたいと思います。  続きまして、17ページをお開きいただきたいと思います。年金福祉施設等の見直しに関 する提言についての御紹介をさせていただきます。まず、昭和58年に、行政管理庁におき まして、国及び特殊法人が設置している宿泊施設のうち、民間の宿泊施設と競合または紛 争を生じているもの及び全国的に設置され身近に利用可能なもので紛争が生じるものとい うことで、11種類の施設を対象にして改善意見が出されております。  参考資料の 150ページでございます。厚生省関係といたしましては、 150ページ目の右 下にあります政府管掌健康保険保養所、厚生年金会館、船員保険保養所、国民年金保養セ ンターが対象になっております。この施設につきましては、2番目の○印で書いておりま すけれども、民間と競合するものについては、原則、新設は行わないとされております。  続きまして、小泉厚生大臣の指示の内容ですけれども、18ページに書いてございます。 平成8年11月、前回もグリーンピアあるいは年金住宅融資の際にも御説明があったかと思 いますけれども、所管事項説明時におきまして、年金福祉施設は基本的に年金福祉事業団 と同様の話であって、厚生省として行う必要がない分野であると。民営化、委託、統廃合 等についての手段をとるべきとの指示がなされております。  次に、総務省の行政監察局の意見がございまして、参考資料の 163ページでございます。 平成10年6月に、国民年金の福祉に関しまして、また、平成10年9月に、厚生年金保険の 福祉施設に関しまして、総務庁の行政監察局の勧告がなされまして、累積赤字を計上して いる施設については、収支改善が見込めない施設は廃止を検討すると。それから、施設の 建替えについては、利用状況等を十分に勘案して、収支の改善が確実にできているものに 限定するとの指摘が出されております。  会計検査院からの指摘ですけれども、 167ページをお開きいただきたいと思います。右 の「まとめ」のところにもございますけれども、施設の稼働率、収支状況の低下の原因等 を究明した上で、今後の改善、統廃合の要否を検討する必要がある。本来、被保険者が利 用者であることを念頭においた施設運営を行う必要がある。被保険者が本来は利用者であ ることを念頭に置いた施設運営を行う必要がある。民間同種施設の充実、利用者のニーズ 等公的宿泊施設を取り巻く状況、国の特別会計の財政見通しなどを十分考慮した上で設 置・運営する必要があるという指摘が出されております。  同じく会計検査院から平成14年に報告がなされております。参考資料の 181ページでご ざいます。有料老人ホーム等の施設につきまして、本来の設置目的に沿った運営がなされ ていないという観点から、事業実績の評価に当たって、施設の収支、損益の状況にとどま らず、当該施設の目的を十分に踏まえて達成状況を分析し、適切に評価する。目的達成の 評価に当たっては、施設設置後の社会経済情勢の変化等を十分踏まえて、存在意義につい て適切に評価する。整理合理化計画の策定に当たっては、実態に応じて、譲渡、廃止等の 方策を検討するといったことで、施設の見直しやあり方の検討を望むという指摘がなされ ております。 それから、 168ページに戻っていただきますと、民間と競合する施設についての閣議決 定がございます。国または地方公共団体等が設置する公的な施設(会館、宿泊施設、会議 室、結婚式場、健康増進施設、総合保養施設、リフレッシュ施設等)について、不特定の 者が利用する施設の新設及び増築の禁止というものと、個々の施設ごとに企業会計準則に 準ずる特殊法人等会計処理基準により経営成績等を明確にして、早期(5年以内)に廃止、 民営化、その他の合理化を行うことが決定されております。  それから、財政審議会等でも指摘がなされております。 179ページの右の欄で四角に囲 んだ部分でございます。すべての施設について、独立採算による運営原則を徹底し、自己 財源で整備費を賄い、保険料財源を投入しないことを基本とする。赤字を計上し、改善見 込みのない施設等については早急に廃止するという見直しの記載がございます。 次に、社会保険庁内部における福祉施設事業の見直しについての検討でございます。平 成6年7月に「年金福祉施設事業のあり方の検討会」から中間報告をいただいております。 参考資料の 153ページに、その中間報告をつけさせていただいております。報告の中身と いたしましては、年金福祉施設事業の存在そのものについての重要性を前提にいたしまし て、年金制度の成熟化、高齢化、少子化の進行、国民意識、ライフスタイルの多様化など の環境の変化を踏まえて、今後の基本的方向と具体的な事業展開についての提言が行われ ております。 報告書の内容といたしましては、21ページにその抜粋をつけさせていただいております けれども、3つ目の○印で、基本的な方向としては、既存施設と同種の施設の新設の抑制、 高齢化、少子化に伴う新しいニーズに対応した新規の福祉施設事業の展開、高齢者の就労 や社会後見等を支援する事業の推進、経営の効率化及び地域における役割の重視といった ものを方向性として出しまして、具体的な施策の展開としては、2以降で既存施設のあり 方の見直し、 (2)で年金制度を支える現役世代の福祉の向上、 (3)で高齢化に対応した福 祉施設事業の取組みといったことで報告をいただいております。 22ページの (2)、「小泉厚生大臣の発言等を踏まえた検討」として、平成8年に指示を いただいたわけですけれども、その後、2つ目の○印のところに書いてありますが、年金 福祉施設事業の基本的な方向をまとめるに当たりまして、各界の有識者から幅広く意見聴 取を実施し、これらの意見を踏まえた見直しを行ったという記録が残っております。各界 有識者として、労働関係2名、使用者側2名、大学教授2名、マスコミ関係者2名、都合 8名の有識者の方々から意見をいただいております。  その意見を踏まえた上で基本方針をつくっております。資料の 162ページですけれども、 平成9年10月21日の年金審議会に、厚生年金保険及び国民年金の福祉施設事業の今後の整 備方針ということで示した資料ですけれども、新規の施設整備については従来の方針を転 換して、計画進行中のものを除き設置しない。施設整備費を大幅に圧縮して、平成11年度 までに半減する。施設の整備運営については、保険料拠出者、労使の参加を求める。既存 施設の見直しについては、利用状況、経営状況等を勘案して、廃止、譲渡等を含めて見直 しを行う。全施設とも建替え時期には、必要性を含めてその適否を判断する。利用料金の 適正化、運営方法の改善などによって採算性の向上を図り、修繕費は施設の負担とすると いった方針が示されております。  続きまして、5番目の項目、「年金の福祉施設の整理合理化」でございます。これは第 1回目の会議でも御紹介しましたけれども、今回の年金制度改正に当たりまして、なされ た議論の経緯でございます。社会保障審議会の年金部会におきまして、福祉施設につきま しては、四角で囲んだところに書いてありますけれども、年金の福祉事業につきましては、 一定の役割を果たしてきたところであるけれども、厳しい財政状況等を踏まえ、その見直 しを行う必要があるといった意見をいただいているところでございます。それを踏まえま して、厚生労働省として案を11月17日に出しておりますけれども、今後、施設整備につい て保険料財源を投入しないことを基本とする見直しを行うということを公表しております。 それを踏まえまして、与党の方で年金福祉施設についての御議論がされて、25ページにご ざいますけれども、3月10日に与党年金制度改革協議会におきまして、年金保険料は、今 後、福祉施設の整備費及び委託費には投入しない。年金の福祉施設については5年をめど に売却するといった方針が示されております。  26ページでございますけれども、現在、社会保険庁といたしましては、この方針を踏ま え、平成16年度につきましては、予算化されている年金福祉施設の整備にかかる執行は凍 結するとともに、17年度要求におきましては、整備費及び委託費を要求しないこととして おります。また、福祉施設の整理・合理化を行うための独立行政法人の設置を要求してい るところでございます。  以上、補足説明を踏まえまして説明いたしました。  参考資料につきまして、若干の説明をさせていただきたいと思います。まず、50ページ をお開きいただきたいと思います。50ページには、年金の福祉施設の設置及び廃止の状況 をつけさせていただいております。昭和20年から最近まででございます。50ページの左の 表が全体の施設の状況でございます。合計欄を見ていただきますと、これまで設置した年 金福祉施設は 273か所でございます。廃止した施設が、平成8年度から出てまいりますけ れども、12か所。それを差し引きますと、現在 261か所の施設がございます。 それから、52ページですけれども、施設に対する地元からの要望書のサンプルをつけさ せていただいております。これは、「サンピア姫路ゆめさき」という、現在、兵庫県にあ る施設についての兵庫県知事からの要望書です。次のページが、西播磨市町村会からの要 望書でございます。 57ページは、沖縄県から出ておりますけれども、国民年金健康センター「サンセット美 浜」というところがありますけれども、それに係る要望でございます。 75ページ以降に施設の利用状況をつけさせていただいております。75ページからは、延 べ利用者数と被保険者の利用割合でございます。 87ページ以降には、客室の稼働率の状況をつけさせていただいております。 それから、施設の運営状況はどうなっているかということですけれども、97ページ以降 に、年金の福祉施設の収支状況を、平成11年から15年までの5年間にわたってつけさせて いただいております。   107ページですけれども、委託先法人の役職員数の調べが載っております。この調査は、 本省の企画官相当職以上で退職した者を対象にしておりまして、平成16年10月現在で21人 という数字になります。本省庁の企画官相当職以上に限定しないで、それ以外の退職者も 対象にした数字につきましては、平成15年10月1日時点の数字がありますけれども、 154 名でございます。この限定しない数字につきましては、今後また調査をさせていただいて、 一番新しい数字を次回の会議の場で発表できればと思っております。 それから、 182ページですけれども、年金福祉施設の廃止状況を、個別にどういった施 設が廃止され、どういうことが廃止理由だったのかというものをつけさせていただいてお ります。平成8年度ですけれども、国民年金健康センターの翠湖苑を地方自治体に有償譲 渡しております。平成10年度は、みやぎ社会保険センター、きょうと社会保険センターで すけれども、これは運営が非常に厳しいということで閉じております。平成11年の埼玉厚 生年金福祉センターも運営が厳しいという理由でございます。平成12年の西宮厚生年金ス ポーツセンターは、平成7年にありました阪神・淡路大震災の被災を受けまして、その後、 業務を停止したというものでございます。それ以降の施設につきましては、有料老人ホー ムでございまして、有料老人ホームが民間でもかなりできてきていることもありまして、 ニーズがかなり減っているという背景のもとに廃止に至ったものでございます。  以上でございます。 ○森田座長 詳細な御説明をありがとうございました。  ただいま御説明いただきました資料につきまして、御意見を承りたいと思います。御自 由に御発言いただいて結構ですが、早めに退席されます都村先生からお願いいたします。 ○都村委員 大学の委員会があるものですから、恐縮ですけれども、2時に退席させてい ただきたいと思います。  今、大変膨大な資料で御説明をいただきまして、今日は福祉施設ということで、福祉施 設の収支状況を見ますと、資料としては近年のところのみが入っているわけですけれども、 赤字を計上している施設が多いですね。平成15年度で見ましても、厚年関係の施設で約4 分の1、国民年金の関係の施設でやはり4分の1、制度共通の施設で14%が赤字というこ とで、累積赤字も厚年関係は結構多いということですね。  もう少し早い段階で施設の部門別収支などの経営分析を行い、もし事業内容にむだがあ るのであれば、それを見直すべきだったし、収支均衡の見込みがあるかどうかがもっと早 く分析されるべきだったのではないかと思います。  それから、国民年金や厚生年金を通じる制度共通の福祉施設に対しては、旧厚生省から 一律に委託費が交付されていたこと、例えば、健康づくりとか、いきがいとか、いろいろ あって、講座なども開かれていたようですけれども、その受講料などが、近くの類似施設 よりもかなり低く設定されていたとか、委託費が交付されていて、それも一律であったと か、そういう点が妥当かどうかについても、もっと早く検討されるべきだったのではない かと思います。  事業運営の見直しとは別に、被保険者や受給者のための福祉施設という観点から、若干 の疑問点もあります。それは、第1に、年金積立金は、みんなが保険料を拠出した一種の 社会的な貯蓄と考えてもいいわけです。最初に御説明がありましたように、もう60年以上 前の、労働者年金保険法の中に、被保険者や受給者のための福祉施設についての根拠がき ちんと法律に書かれているということは、私にとって大変興味深いことでした。最初から 長期保険であるがゆえに、被保険者の生活安定のために利用されてもいいということを意 味するような条文があったということです。これは大変興味がある点です。その後、20年 ぐらい前に、行政管理庁の議論では見直しの問題が出てきているわけですが、行政管理庁 の議論とは別の観点からの検討があってもよかったのではないかと思います。  行政の議論とは別に、みんなが拠出した一種の社会的な貯蓄ですから、それを有効に活 用することについて、被保険者や受給者がどう考えているかということを把握することも 重要だったのではないかと思います。すなわち、被保険者や受給者の意向を反映するよう な社会的貯蓄の有効な活用とは何かということが検討されてよかったのではないかと思い ます。  今、御説明がありましたように、有識者による検討会とか意見聴取はあったようですけ れども、一般の国民の被保険者や受給者を有識者が代表しているのかどうかわかりません が、被保険者や受給者に対するかなり大規模なニーズ調査を行うとか、あるいは、一般の 被保険者や受給者も参加する検討会のようなものを設けるとか、そういうことがあっても よかったのではないかと思います。  行革の議論は議論としてあるのですけれども、もう少し観点の違う、労働者年金保険法 の条文にも書かれたような、被保険者や受給者のための福祉施設というその目的達成の点 からどうなのかということ、あるいは、一般の被保険者や受給者が何を希望しているのか ということを、もう少し徹底的に調べることがあってもよかったのではないかと思います。  第2点は、この資料を拝見しますと、大ぜいの方が平成15年を中心とする、その少し前 ですか、毎年、厚年の施設では 3,000万人弱、国民年金の施設で 500万人強、制度共通施 設で 1,200万人ぐらいの人が利用しています。しかも、当然のことかもしれませんけれど も、被保険者の利用割合が90%位で高いわけですね。その中には、私の勤務先の近くとか ではよく見ていますけれども、若年層がこういう福祉施設で、コンサートや演劇、スポー ツ、宿泊などで利用しています。しかし、こういう年金福祉施設には、厚年会館の場合は 入っていますけれども、必ずしも「年金」という名前が入っていないのです。若年で利用 している方たちが、年金の福祉施設であることを、知らないのではないかと思います。 長期保険であるがゆえに、年金制度を特に若い層に理解してもらって身近なものに感じ てもらうことは非常に大事だと思います。年金の福祉施設であることを利用する人たちに もっと明確にわかってもらうような、工夫があった方がよかったのではないかと思います。 今の御説明をお聞きしまして、検討が必要だったと思うところと、被保険者や受給者の ための福祉施設という観点からの若干の疑問点とがあります。以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。 それでは、ほかの委員の方、いかがでしょうか。 ○岩渕委員 おおむね都村先生がおっしゃるとおりだと思いますが、被保険者がどういう 意見を述べるであろうかと想像しますと、利用している人は、もっともっと欲しいという 反応ではなかったかと思います。そんなに有益な意見が返ってきたかどうか。  被保険者に対するPRが足りなかったというのは、事実としてそうだろうと思います。 別に、日本自転車振興会のように、施設に競輪マークをつけろというわけではありません けれども、年金の施設を利用しているという意識がやや薄かったのではないかと思います。 本来、年金福祉事業は世間から指弾を受けるような事業ではなかった。今、ここに至って 過去を評価すると、様々な問題もあります。印象としては、いくら何でも数が多すぎたな ということが実感としてあります。そういうものに対しては、これからもうちょっときち んと考えなければいけないなと思います。  それと、行政に対する影響力の大きさでは、最も大きいのは、やはり立法府、国会及び 政治家の動き、言動、意向であったのではないかと推察されます。私はマスコミにいまし たので、過去、そういったような風評及び実際の政治家の言動も耳にしたことがあります。  そういう点からいきますと、我々の検証作業は、立法府とのかかわりがかなり重要な部 分を占めるのではないか。小泉流に言えば、本丸に近いようなところに位置するのではな いかと思われます。  なお言えば、この間、60年にわたって様々な施策が行われてきたわけですから、ポイン ト、ポイントで、国会での議論はどうなっていたのか、議事録は残っているわけですので、 そのあたりのところをもう少し見てみたいなということが一つあります。  さらに言えば、国会のみならず、自民党、各政党の、例えば部会など、こちらには記録 はないかもしれませんけれども、何らかの申し入れがあったとか、そのような動きも含め て、政治の動きについて、細大漏らず知りたいと思いますので、手数かけてすみませんけ れども、ひとつよろしくお願いしたいと思います。 ○森田座長 ありがとうございました。今、最後の資料の点について、事務局からござい ますか。 ○朝浦参事官 国会の議事録につきましては、検索システムがございますので、御意向を 踏まえて資料を整理させていただきたいと思います。 ○森田座長 よろしくお願いいたします。  では、ほかにどうぞ。 ○篠原委員 まず広報ですが、マスコミは、私どもが見ていてもちょっとひどい報道だな という気がしております。パブリックをやっているのでいろいろな役所の方と会うと、こ の問題について、結構、きちんと理解していないように見受けられる。ということは、や はり比較的関心のあるべき人たちにも適切な情報が行っていないのかなと。国民に対して という部分もあるのですが、それもものすごく大事だけど、政府関係の人たちも意外と、 こういう経緯がわかっていないなという意味では、どういう経緯でやったかということは きちんと説明しておくことが必要だなという気がします。  第2点として、この資料を見せていただきますと、それぞれ結構指摘されていますよね。 それが遅かったのか、早かったのかわからないのですが、傾向としては、指摘がだんだん 厳しくなってきて、最後は統合・廃合と。ということは、問題点として、それぞれの指摘 が社会情勢に対してちょっと遅れたような指摘なのか、それを十分にやらなかったので 次々と厳しい指摘が来て、最後は統廃合、売却の話になったのか。その辺が、指摘を見て いるとそれぞれ納得がいくようなものですよね。それをきちんとやっていれば、もうちょ っと適切な、現在においても対応ができたのではないかという印象を受けます。ですから、 その辺で、第3番目として、それぞれ指摘されたときに、内部的にどのような検討をされ て、どういうことをやったかということをもう少し具体的な資料がないのかなと。この辺 は難しいのでしょうか。 ○森田座長 事務局、お願いします。 ○朝浦参事官 今回の資料をまとめるに当たりましては、文献での調査を中心にしており まして、場合によっては当時の職員からの聴取もやっておりますけれども、さらに、今、 御指摘がありましたような点につきましても、これからの検討に資するようなものになる かわかりませんけれども、私どもとしては、事実関係をぜひ調べてみたいと思っておりま す。 ○岩渕委員 私は別にマスコミ代表というわけではありませんけれども、マスコミはかな り厳しい批判を現在していることは事実ですけれども、それがひどいということになるの かどうかは、若干疑問を感じているところです。先ほど申し上げましたように、それは、 現時点で後講釈風に歴史を再評価しているので厳しくなっている部分がかなりあると思い ます。 ○篠原委員 ひどいと表現したのは、ちょっと厳しい意見かもしれないのですが、今、パ ブリック関係での報道のタイトルとか何かを見ると、もうちょっと何とか言い方がないの かなと僕などは感じるような表現になっているんですね。実態をあらわすよりは、一言で 言うと、めちゃくちゃにやっているような雰囲気の言葉になっているので、その部分をそ ういう形でやると、国民というのは、ちょっと誤解する部分が多いのではないでしょうか。  我々はこういう資料を見ていれば、いろいろと問題点はあるけれども、それなりの法律 でやっている部分があるのに、根拠なしでやっているような雰囲気というか、そういうよ うな報道があるので、今後、年金を適切にやっていくためには、もうちょっと報道を考え てもらったらどうかという感じが僕自身はしていますが、どんなものでしょうか。 ○岩渕委員 これ以上議論するわけにはまいりませんけれども、確かに、おっしゃるよう に、一部過激なというか、極端な報道があることは事実でありまして、それは、この事業 に限らず、年金問題全般に関してそういうことが言えると思います。さはさりながら、一 方では、火のないところに煙は立たないと昔から申しますけれども、ややそれに類するよ うなところがないわけではないことも、一応御承知おきいただきたいと申し上げておきま す。 ○森田座長 よろしゅうございますか。 ○篠原委員 はい。 ○森田座長 それでは、田島委員、お願いいたします。 ○田島委員 年金福祉施設事業の成り立ちにつきましては、それぞれ必要性があり、根拠 もあって実施されてきたことは、御紹介いただいた資料で理解できるのですけれども、そ の後、社会情勢が変わりまして、年金福祉施設等の見直しに関する提言が昭和60年代以降、 各方面から指摘されて、その後の対応について非常に問題があるのかなという気がいたし ます。  行政管理庁、当時の小泉厚生大臣、行政監察局、会計検査院等、それぞれいろいろと見 直しについて、廃止も含めた指摘をしているわけですけれども、これを受けて、実際に、 例えば福祉施設がどれだけ廃止されたのかということの数を見ると、大変少ないのではな いかという印象を受けまして、こういう指摘がなされました当時、それを受けて、一体ど ういうことが検討されたのか、だれが何を検討したのか、しなかったのか。その検討結果 について、指摘した者は一体それをどう評価したのか、それによって何が行われたのか、 行われなかったのか。そこら辺がよくわからない。資料がないのは、何もなされなかった ということかもしれませんけれども、その辺に疑問を感じております。 ○森田座長 一巡いたしましたけれども、いかがでございましょうか。  都村先生、もう余り時間が残っておりませんが、一言お願いします。 ○都村委員 年金福祉施設事業は、範囲がかなり広いですね。病院は、当初は整形外科医 療機関としてスタートしたということですが、後には総合病院となり、地域医療の中核と なっています。公的な病院というのは、設備がいいことと、優秀な人材を集めているとい うことで、地域医療の中核として地域住民のために重要な役割を果たしてきました。病院 の他スポーツ振興とか健康増進、余暇利用、生きがい増進のための施設も多いのですが、 病院とその他の施設とは若干性格を異にすると思います。  それから、先ほど申しました、長期保険であるがゆえに被保険者に何か還元する、特に 若い層に還元する施策は全くなしでいいのか、被保険者に還元する施策をある程度残しな がら見直しを行っていくことがいいのか。やはり被保険者がどう考えているか、特に若い 層の被保険者がどう考えているか、そちらへの影響も少し考える必要があるのではないか と思っております。  以上です。 ○森田座長 ありがとうございました。一応一通り御感想を伺いました。  ここで確認させていただきたいのですが、お手元に資料があるかと思いますけれども、 最初の「年金の福祉還元事業に関する検証会議の発足に当たって」という厚生労働大臣決 済の文書と、前回の検討事項案です。この大臣決済の文書を見ますと、趣旨の第2段落目 以降に、「年金財政の厳しい状況に鑑み、今後、これらの事業については徹底的に整理合 理化することとしているが、先般の年金改正法案の国会審議においても、これらの事業の 意義、実施経緯等について議論されたところである。本検証会議は、第三者の参画を得て、 厚生労働大臣が主宰し、今後の厚生労働行政の政策決定のあり方の見直しに資することを 目的として、これらの年金福祉還元事業の実施経緯やそのあり方等を検証するものとす る。」と書いてあります。  こういう形でこの会議のミッションが与えられているとしますと、少なくとも、この事 業について徹底的に整理合理化するというのは、与件とするということです。そして、い ろいろ「議論されたところ」の中身については、この文章からは必ずしも明確ではありま せんけれども、第1回目の冒頭に大臣から潮目を見誤ったのではないかという御発言があ りました。なぜそうなったのか。そういう観点から見ますと、今後見誤らないようにする ためにはどのようにすればいいのか。それが今後の厚生労働行政の政策決定のあり方の見 直しに資する回答になるのではないかと思っております。そこで、そういう観点から、議 論を収れんさせていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。  それにつきまして、具体的な検討項目は、前回御承認いただいたことですけれども、福 祉還元事業に関する政策目的の妥当性についてどのように考えるか。2番目が、この事業 は政策目的を達成するための手段として妥当であったか。個別事業において、立地場所の 選定や建物の設置は適切に行われたか。効率化にどのように取り組んできたか。さらに言 いますと、その後の社会環境の変化をどのように認識していたか。変化の兆候をモニタリ ングできたかどうか。そして、兆候がモニタリングできたとして、その情報が政策の変更 に対してきちんと活用されていたかどうか。そうしたことを、一応手順を追って少し詰め ていくというように、この前御了解いただいたところですけれども、この会議のミッショ ンと前回御了承いただきました検討の手順のようなものを踏まえて、これからまた御発言 をいただければと思いますが、いかがでしょうか。 ○岩渕委員 行政絡みの各種施設、事業というのは、かなり広範囲に霞が関の各役所は展 開してきたわけで、そうした中、あえて申し上げますけれども、年金福祉関連事業という のは、質がいいといいますか、最初からそういう政策目的をきちんと明示しながら展開し てきた。しかも、なおかつ、被保険者に対しての福祉あるいは還元という意味合いからし ても、少なくとも途中までは成果を上げ得たと一応評価しておきたいと思います。  しかるに、ほかの役所の様々な事業に比べて、現在、かくも厳しい批判にさらされてい るか、あるいは、さらされてきたかといえば、やはり国民の年金資金という、国民にとっ てみると自分の老後の支えとなるべき資金がつまみ食いされたのではないかという疑念が 常につきまとっている。やや認識が甘かったというのは当然ながら言えると思いますが、 国民にとってみると、そういったようなことは許し難いことでありまして、些細なことで も敏感に反応するものであるという点の認識が、もともと欠けていたということが言える のではないかと思います。  もう一つは、先ほどから申し上げているように、政治家からの働きかけがどういったよ うなものであったか。私どもが承知している限りでは、個別の箇所づけ、事業量について は、政治の側から様々な要望、要請、圧力があったと認識しております。ですから、この あたりがどうであったのかをもう少し知りたい。  それから、昭和58年の行革以来、様々な答申あるいは勧告が行われて、なぜ止まらなか ったのかということがいつも議論になっておりますけれども、厳しい言い方をすると、も ともとブレーキのない車で走っているのが行政である、極端に言えばそういうことが言え るのではないかと思っております。民間というのは、かなりいい加減な組織ですけれども、 採算がとれなければ、倒産という破局を迎える。それが大きな歯止めとなって、事業の見 直し、撤退、様々な企業ビヘイビアが行われるわけですが、少なくとも行政に関連する事 業においては、採算性を全く考えないとは言いませんけれども、どちらかというと、さほ ど厳しく考えないということもありますし、マスコミ流の表現をすれば、親方日の丸的な 考えで、例えば倒産して路頭に迷うという恐怖感がもともとないので、判断は多分間違え ていないと思いますし、その時点で勧告が出れば、これはもうそろそろ撤退に入るべき時 期だという判断は、多分その当時の皆さんなさっていたと思います。だけど、判断と決断 とはまた違うわけですから、決断するシステムがもともとなかったと言わざるを得ないと 思います。 つまり、だれが、どこで、どういう決断をして、例えば廃止、撤退に持っていくか。大 臣が政治的な決断で行えばできますけれども、行政内部でそれができたかとなると、残念 ながら、はなはだ難しかったのではないか。ある意味で同情しながらものを言っているつ もりですけれども。そこのところで、小泉さんが、おれはあのときああ言ったとは言いま すが、それをきちんとフォローできていたかというと、一番在任期間の長い小泉さんだっ て、すぐに大臣の職は去っていきます。さらに言えば、幹部職員についても、在任2年ぐ らいでどんどん交代していく。そういうローテーションがあって、その先まで見通した上 で責任を持って決断して、行政を引っ張っていくだけの人物といいますか、それを公務員 に求めることはやはり無理だろうと思います。  最初から申し上げておりますように、走っている車にブレーキをちゃんとつけないと、 これはどうしようもない。そういう意味で言いますと、システム的な問題でありまして、 官僚、個々人に、あのときなぜ決断できなかったのかというのは酷ではないかと思います。  霞が関の精神風土あるいは行政のビヘイビアとしても、例えばだれかがそういうことを 主張したとすると非常に奇異なものに感じられて、うとんじられた可能性の方が強いと思 います。そういう意味で言いますと、普遍化して問題点を拡散するつもりはありませんけ れども、行政が持っている本来的な一つの限界というものが当然ながら反映しておりまし て、そこのところを、これからブレーキをつける努力をしない限り、やはり同じような形 でいろいろな問題が次々に起こってくるのは、これは間違いないところではないかと思い ます。 ○森田座長 ありがとうございました。要するに、どのようにして効くブレーキをつくる のか、それを提言するというのがこの会議の最終的な使命かと思います。  あと、今日は2時半までですので、残りの時間は前回の第2回の質問事項についての御 説明をいただくことになっておりますけれども、この件につきまして、最後に何か御発言 がございますか。  よろしゅうございますか。  それでは、この件につきましては、今もお話が出ましたように、システム自体の問題で あるとなりますと、システムをどう変えていくかという話になろうかと思います。それか らこれからまた御審議いただくことではないかと思いますので、この件につきましてはこ れくらいにいたしまして、前回、委員の皆様から出されました質問に対して、事務局から 御説明をいただきたいと思います。  なお、今の点につきましては、御発言の内容を事務局で整理していただきまして、次回 以降、さらに御議論いただきます。  それでは、お願いいたします。 ○泉年金局資金管理課長 それでは、資料3、「第2回会議における質問事項について」 を御覧いただきたいと思います。  前回、グリーンピア及び住宅融資について御説明して、何点か御質問等がございました 点について、資料でまとめてみたものでございます。  1ページを御覧いただきますと、「基地の設置について」とございます。グリーンピア については、昭和47年に10月に構想が発表され、48年9月に、そのうち何か所という選定 が始まりました。37の道府県から申し出がございました。そこをどのように選んだのかと いうことですが、そこにありますように、自然条件、環境条件、立地条件など、保養基地 としての適性があること。土地についての取得の可能性があること。その土地が公有地で あり、近隣で乱開発などがないこと。基地周辺の整備として、具体的には、道路、用水と いう問題ですが、これらについて地元の地方公共団体の協力を得られること。こういう観 点から選定作業を行ってまいりました。また、あわせて、最終的には、全国的な配置の問 題として、特定の地域に偏らないということも加味して総合的に判断した結果、13か所を 選定したわけでございます。  したがいまして、この選に漏れたところにつきましては、それぞれ、例えば土地が公有 地として取得できなかったケースもあったと思われますし、また、最終的な配置バランス の問題から選ばれなかったというところもあったのであろうと思われます。  続いて3ページでございます。「基地の運営形態について」です。13か所をどういう形 態で運営したかということの具体的なものを図にしたものでございます。設置者は、旧年 金福祉事業団ですが、運営は、みずから行わずに、大沼をはじめ4基地については財団法 人年金保養協会。これは、民間企業が出資してつくった財団ですが、こちらに運営を委託 する形で、協会が運営主体として行ってきたものです。そのほかの9基地につきましては、 岩手県をはじめ地元所在の県に対して事業団は運営委託契約を結びました。それぞれ県も 直轄で運営というわけにはまいりませんので、県あるいは所在する市町村などの出資によ り、それぞれ財団法人グリーンピア某というものを設置し、そちらにさらに運営を委託す る形で実施されてまいりました。そのうちの幾つかについては、いわゆる第三セクターと いうことで、財団がさらに出資をし、一部には地元の企業などもあわせて出資して、株式 会社グリーンピア某という形の株式会社を設立し、財団との間で請負契約の形で運営を行 っていたという形態が見られました。  次の4ページ以降には、それぞれの財団法人などの概要を載せてございます。  次に6ページでございますが、「基地の撤退に向けた議論」でございます。前回御説明 いたしましたとおり、6ページの下の方にありますように、グリーンピアに関しましては、 平成7年の閣議決定で、まず県への譲渡を図れと。真ん中の平成9年の閣議決定では、撤 退するようにと。右側の平成13年の閣議決定では、17年度までに廃止。このように段階を 追っていっていたわけですが、それぞれこういう閣議決定をするときにどんな議論がされ たのかというお尋ねがございました。上の方に、当時の資料をいろいろひっくり返してみ たのですが、必ずしも議事録というものがきちんとあるわけではございません。担当者の メモとかそういうものから資料を構成してみました。「外部からの意見」というのは、厚 生省に対して、他の省庁なりほかの機関からこのような指摘があったと。これが必ずしも 網羅はされていないと思いますが、幾つか拾い上げられたものを書いてございます。  例えば平成7年の際には、年金資金は有利運用に徹するべきだ、年金本来の目的に回す べきだ、民業を圧迫しているのではないか、県に譲渡するとかもっと進めるべきだとか、 こういう指摘があったと。厚生省も、移譲も含めて検討していくということを最終的には 述べたやりとりがあったようでございます。  平成9年については、平成7年で譲渡となっているけれども、進んでいないではないか という指摘もございました。当時の厚生省では、県に打診などしているけれども、相手も あってなかなか進んでいないと。ただ、これはずっとやっていくということではなくて、 廃止の方向も検討したいと。こういうやりとりがあったようでございます。  さらに平成13年の際には、撤退の計画が遅いのではないかと。改革期間内というのは17 年度までという意味合いでございます。これに対して厚生労働省は、グリーンピアはそれ ぞれ地元の経済、雇用に果たしている役割など、個々の施設で状況が違うし、また、自治 体の事情も踏まえなければいけないと。また、自治体に買ってほしいけれども、それぞれ の財政状況も厳しく、なかなか簡単ではないと。いろいろ言っておりますが、最終的には1 7年度までに廃止だという形で閣議決定に至ったと。このようなやりとりがあったというこ とでございます。  次に7ページ以降は、審議会で具体的にどういう議論があったのかということですが、 平成12年の制度改正に向けた年金審議会の議論を7ページの左側に載せております。主に 住宅融資をめぐってですが、上の3つほどは肯定的意見で、現役の被保険者の理解を得る ためにも、現役の福祉向上に資するようなものは必要だ、現にニーズが存在していると。 それから、共済各制度にはこういうものがあるので、こちらだけ廃止すると官民格差にな るという御議論がございました。  一方で、4つ目以降では、景気対策のために事業が肥大化したりすることもあると。そ れから、便益を受けるのは一部の被保険者のみだ、民業圧迫のおそれがある。むしろ共済 も見直すべきだと。このようないろいろな御意見もありました。両方の御意見があったと いう形でございます。  それから、下の方の○印は、少子高齢社会に対応して、年金積立金を社会保障の基盤整 備に使ってはどうかという御議論もされましたが、上の方の2つは前向きといいますか、 高齢者の介護費用や社会的入院の支出を減らすことにつながることは、積立金でやっても いいのではないかと。世代間の合意形成を図る上でも有効ではないか。一方、下の方です が、いろいろと肥大化する可能性、あるいは、財投改革の趣旨にも反するのではないか。 年金は給付に純化すべきだという御意見もあったようでございます。  結論としては、右側に、意見書では、下の方にありますけれども、両論併記という形で、 活用すべきという意見がある一方で、そうではない意見もあったと、両方並べて書かれて いる経緯であったわけでございます。  その次の8ページは、諮問・答申という平成11年に入ってからのやりとりですが、右下 の答申書の○印のところで、被保険者向け融資については撤退すべきという意見と、引き 続き実施すべきという意見と両論あったと書かれております。  9ページは、今回の年金改正に向けた議論、昨年から行われた審議会の議論でございま す。左側に「主な意見」とございますが、むしろ今回は、次世代育成支援に年金資金を活 用してもいいのではないかという点についての御議論がございました。上の2つは肯定的 な意見で、若い世代がメリットを受けられるように考えてはどうか。少子化の要因となっ ている教育費負担を軽減する点でも意義があるのではないか。一方、その次ですが、年金 は給付以外の目的に使うべきではない。特殊法人整理合理化の方向にも逆行する。こうい う御意見もございました。したがいまして、その右側の「次世代育成支援」のところです が、これも両論を併記する形の意見書になったということでございます。  点線から下は、福祉施設についての問題です。これについては、グリーンピアについて は廃止すべきという御意見でございました。また、その他の福祉施設についても、一番下 のところは、長期制度だから理解を深めるために施策があってもよいという御意見がござ いましたけれども、右側の「福祉施設等」のところで、上の○印は、福祉施設について見 直しを行う必要がある。下の○印は、グリーンピア住宅融資は閣議決定の方向で廃止とな っているので廃止すべきという意見で最終的にまとめられたという経過でございます。  10ページですが、官民格差論みたいな御指摘もあって、共済組合の住宅貸付はどうなっ ているかということでございます。省庁によって多少の違いがある部分もあるようですが、 足元の厚生労働省共済組合が現在行っている貸付制度について一覧にしました。貸付事由、 貸付資格、限度額、利率など、これは御覧いただくとおりの仕組みの制度があるというこ とでの御紹介でございます。  最後ですが、11ページ以降は、年金資金で客船をつくってはどうかという議論があった ということで、報告書があったのではないかという御指摘がありました。これは、当時、 内閣官房の方で調査を委託してまとめられた報告書でございます。既に保存年限は切れて いるもののようですが、たまたま確認したところ、当時公表されたものということでした ので、私ども事務局として、ここに資料として出させていただいたものでございます。  報告書の内容は、海外におけるクルーズの状況、我が国の状況等々いろいろ述べられて おり、また、コスト計算なども行われております。30ページを御覧いただきますと、真ん 中ほどに、「建設資金に公的資金(年金資金)を導入することの問題点」ということで3 つほど書いてございます。  1つ目ですが、年金積立金は、安全第一に、できるだけ有利に運用していくべきだと。 2点目に、年金客船構想は採算の点で難しい点があり、船自体の担保としての価値も次第 に減っていくという問題も考えれば、年金資金を融資することは大きな問題がある。3点 目ですが、当面、利用者が限られる豪華客船の建造に積立金を用いることについては、国 民一般の同意が得られるか疑問があろうと。こういうことで、問題であるという趣旨の報 告書になっているものでございます。  説明は以上でございます。 ○森田座長 ありがとうございました。残された時間も余りございませんけれども、前回 御質問された方を中心に、これでよろしいかどうか、さらに何か御質問、御意見等がござ いましたらお願いいたします。 ○篠原委員 審議会とか検討会で、両論併記という報告でしたが、当然、その立場であれ ば両論併記になってしまうと思いますが、それをその後、政策というか、政治でどのよう な検討をされてきちんと決めたのかということ。そのままで来てしまったのか。となると、 具体的な執行でのあれは従来どおりになってしまうのではないかということで、その辺の 政策決定がされたのかということです。 ○泉資金管理課長 審議会では、それぞれの御意見があると、こうした形で両論併記とい う形になることはありますが、それを踏まえて、政府として、具体的にどういう判断をと るか。これは必ずしも、両論併記だと現状維持かというと、そうとも限らないかと思いま す。ケース・バイ・ケースだと思います。そこは、この審議会の意見などをいただいた上 で、政府として、あるいは、もちろん与党との調整なども経て具体的な方向をそれぞれ、 話題になっている課題だけではなくて、両論併記という形があっても、いずれかの方向を その時点で決定していく形かと思います。 ○篠原委員 もう一つ質問したいのですが、結局、年金財源を使ったということになって いますが、最初の資料を見たときに、運用益でやると書いてあるところがあって、それ以 外には一切資料がないのですが、いわゆる国民からもらった年金を使ったのか。運用益と いうと一緒になるからわからないのですが、その辺のことで、例えば運用益の1割以内で やるとか、先ほど言ったブレーキの部分で、歯止めというか、そういう類のものが指摘さ れてきても、効率化とか何かいいながらも、全体の資金の枠組みがないのですが、その辺 は余り議論されなかったのでしょうか。 ○泉資金管理課長 財投の資金を還元融資という形で借りてきて行った部分と、福祉施設 については毎年の予算でやった部分と、性格がちょっと違うかなと思います。福祉還元の 方は、年金積立金はすべて資金運用部に預託することが義務づけられていて、その中で、 一方で、被保険者の意向を反映した運用もしてほしいという意見も審議会などでも繰り返 しあって、そういう中で、預託したものの一定割合、時期的に4分の1だったり、3分の 1だったりとございますけれども、その範囲で福祉還元に回していく。そういう議論なり 歴史的な経緯があったことは事実でございます。 ○森田座長 ほかにいかがでしょうか。 ○田島委員 基地の設置について御質問を申し上げて、37の候補地の中から13か所が選定 された経緯を御説明いただいて、これはこれでそうなのかなと思うのですが、私が疑いを 持っていた、こういうことにはどうしても政治家の圧力がかかわっていないとは思えない。 いろいろな例で、四国に幾つも橋がかかったり、ある県の道路の設置状況が、全国平均の レベルをはるかに凌駕してすばらしかったりということが往々にしてあるものですから、 こういったことについても、それぞれ選ばれた施設の地元を地盤とする政治家はどんな人 がいたのかをもう少し見ていくと、何かかかわりが出てくるような気もしないでもありま せん。けれどもそこまで疑うのでさらに資料をお出しいただきたいというお願いをするつ もりはございません。これはこれで結構でございます。  それから、基地の運営形態について、3ページのところでわかりやすく説明していただ いているのですけれども、これを見て若干疑問に思うのは、委託契約が幾つか重なって存 在するようなところは、なぜこのように再委託する必要があったのか。要するに、こうい う機関が間に幾つも入れば入るほどむだなコトスがかかるでしょうし、そういう意味で、 その必要性について、若干問題視されるところがあるかなという感想を持ちました。  さらに、クルーズ船の件につきましては、当時、これも業界あるいは政治家から要望が 出されて、それで検討されたのかなという気もいたしますけれども、こういった具合に検 討をして、その結果、導入には問題があるということでこれを採用しなかった一つの例が あるというのは、当時、何か提言があればそれを受け入れて、何でもこういうものを作っ て来た、あるいは、施設を導入して来たということでもなかったことの一つの証明材料に はなるのかなという感想を持ちました。  以上です。 ○森田座長 今のことにつきまして、事務局から何かございますか。 ○泉資金管理課長 運営形態について契約がたくさん介在しているというお話がございま したけれども、確かに、当初の4施設について、それ以外の9施設については、前回も御 説明いたしましたが、考え方を若干変更して、むしろ、地元の県が主体になって進めてほ しいという方向に切り替えたということがございます。そこで、委託先として県が出てき たということがございました。ただ、現実問題としては、県が直営で運営するというのは なかなかあり得ない形で、こういった形でさらに県が財団などを設置して運営していく形 がとられたということでございます。  なお、その運営委託契約の部分では、前にも御説明しましたが、設置と運営、ランニン グ部分は分かれておりますので、委託費を払うという関係はございません。財団法人と株 式会社のところは請負契約ですので、年間いくらでやってくれという形で、財団が株式会 社にそういう契約を結んだという形が実際にはございますけれども、事業団と県、県の財 団の間ではそういう関係にはないということでございます。 ○森田座長 岩渕委員、何かございますか。 ○岩渕委員 結構です。 ○森田座長 ありがとうございました。だいぶ時間も迫ってまいりましたし、一応、前回 御質問に出た事項については資料をそろえてお答えいただいたものと思われます。  これからどういう形で議論を進めていくかにつきましては、また事務局と検討させてい ただきますけれども、前回一応御了承いただきました、検証の検討事項というものに沿っ て少しずつ固めていく必要があるのではないかと思っております。  その場合、これは私の個人的な感想ですけれども、先ほど篠原委員がおっしゃったこと にもかかわっておりますけれども、被保険者の方にお金を出していただいて、それを蓄積 していって将来支払うという仕組みで、その間にタイムラグがあるわけですから、運用益 が出るわけですけれども、基本的に、いうなれば、利子の部分で事業を行うならば成り立 つわけですけれども、元本を使うことは、制度としてはあり得ないし、それが可能だとし ますと、その元本が無限に増えていくという前提でしかないのではないかという気がいた しております。私も年金の細かい仕組みについては必ずしも専門ではないので知らないと ころもありますけれども、そうした形での基本的な資金運用の仕組みが、どの程度認識さ れてきたのか。逆に言いますと、右肩上がりの時代には、必ずしもその規律を厳格に維持 しなくてもそれなりにやってこられたのかもしれませんけれども、いろいろな事業を拡大 するときに、そうした形でのチェックなり議論がどのようになされたのかということが気 になるところでございます。  まして、年金の資金が財政的に厳しくなったときに、先ほどもおっしゃいましたけれど も、そこに対してきちんとした形での規律が働くようなシステムないしメカニズムがなか なか作動しなかったのではないかという気がしまして、それは、岩渕委員が御指摘のとお りですけれども、どういう形でそれを考えていくかということが、この会議の最終的なミ ッションであるという感想を持ちました。  以上でございます。  それでは、特にほかに御意見がないようでしたら、予定された時間が参りましたので、 本日の会合はこのあたりで閉会とさせていただきたいと存じます。  次回は、前回の会議及び本日の会議において指摘された問題点を含めて、さらに議論を 深めていきたいと考えておりまして、次回の日程につきましては事務局の方で調整してい ただきたいと思いますし、どういうことをどう議論するかについても私と御相談をさせて いただければと思っております。  特に御発言がなければ、本日の会合は、以上をもちまして終了させていただきます。本 日は、御多用のところ、長時間にわたりありがとうございました。これで終わらせていた だきます。                                     (了) - 24 -