第2回 年金の福祉還元事業に関する検証会議                     日時 平成16年11月8日(月)                        15:00〜                     場所 経済産業省別館1028号室 ○森田座長 定刻になりましたので、ただいまから「第2回年金の福祉還元事業に関する 検証会議」を開催いたします。本日は、ご多用中のところご出席いただきましてありがと うございます。  まず、委員の皆様の出欠についてですが、本日は岩渕勝好委員がご欠席です。なお、前 回ご欠席でしたが、本日は田島委員のご出席をいただいておりますので、ご紹介させてい ただきます。田島優子委員でいらっしゃいます。 ○田島委員 弁護士の田島でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○森田座長 前回は、「大規模年金保養基地(グリーンピア)事業」「年金住宅融資事 業」「年金福祉施設事業」の概要に関する説明を受けた上で、本検証会議における検証検 討項目についてご議論をいただきました。本日は、前回に引き続き、まず、検証検討項目 について議論を行い、その後、具体的な事業として「大規模年金保養基地事業」「年金住 宅融資事業」について、突っ込んだ議論をしていきたいと考えております。  それでは本題に移ります。本検証会議の検証検討項目(案)について、事務局からご説 明をお願いいたします。 ○朝浦参事官 資料1に基づき検証検討項目(案)について説明いたします。前回、事務 局から、検証検討項目についてたたき台を提出いたしましたが、それに対し委員の方々か ら、さまざまなご意見を頂戴いたしました。そのご意見を踏まえ、検証検討項目について 再整理をいたしました。資料の左側の欄、「検証検討事項(案)」が再整理したものです。 右側は、第1回目の検証会議において委員の方々から指摘を受けた事項で、検証検討事項 に沿って整理しております。  検証検討項目の1は、年金の福祉還元事業(グリーンピア事業)、年金福祉施設事業、 年金住宅融資事業に関する政策決定過程において、厚生労働省及び社会保険庁は時代の変 化に適切に対応できていたかというものです。これについては、検証に当たっては、年金 の福祉還元事業にかかる政策決定に関する厚生労働省以外の動き、あるいは、具体的な運 営・執行状況についても十分留意しながら検証を進めるべきではないか、というご指摘が あったものと理解しております。  「具体的検証項目」として7つほど挙げております。(1)は、年金の福祉還元事業に 関する政策目的の妥当性について、どのように考えるかです。これについては、当時の社 会経済状況、あるいは国民のニーズを十分把握したうえで評価するべきではないか、とい うご指摘がありました。(2)は、年金の福祉還元事業は、その政策目的を達成するため の手段として果たして妥当であったのかどうかです。これについては2点ほどご指摘をい ただきました。1点目は、政策決定の際に適切なデータが用いられたかどうかです。2点 目は、評価に当たっては、一般的な政策評価の基準ですが、有効性、効率性、経済性とい った3つの基準以外に、国民の福祉ニーズの充足といった視点も加えるべきであると。  (3)は、個別事業において、立地場所の選定、あるいは、建物の設置は適切に行われ たのか。また、施設運営の効率化にどのように取り組んできたかです。これはすべての事 業について総浚いすると時間的に困難だろうと思いますが、幾つかのケースについて、こ ういった観点からの検証が必要であろうと考えております。これについて委員のほうから は、施設運営の透明性の確保、あるいは、施設の管理者の採用状況についても見ていくべ きではないか、といったご指摘がありました。  (4)は、その後の社会環境の変化をどのように認識していたか、また、変化の兆候を 把握するモニタリングのシステムといったものが出来ていたかどうかです。  (5)は、得られた兆候や情報の活用ができていたのかです。これについては、早い段 階で検証する仕組みを設けるべきではなかったのか、といったご指摘がありました。  (6)は、情報を把握して政策を変更するきっかけがあったのかです。これについては、 臨調答申など外部からの指摘が、これまでどのようなものがあったのかどうかを見ていく 必要がある、というご指摘がありました。  最後に、状況の変化、あるいは、きっかけがあったにもかかわらず、なぜ政策が変わら なかったのかです。これについては、政策を変更するときの具体的な目標が出ていたのか どうかといった点に留意すべきである、という指摘がありました。  1の「厚生労働省及び社会保険庁は時代の変化に適切に対応できていたか」といった点 の検証結果を踏まえ、2は、「今後の厚生労働行政の政策決定のあり方をどのように見直 すべきか」といったことをご議論いただくことではないかと思っております。 ○森田座長 ただいまご説明いただきました資料について、ご意見をいただきたいと思い ます。検証検討事項について基本的な視点といいましょうか、検討項目はここに挙げられ ているのではないかと思います。これを委員からご指摘されました事項を踏まえ、こうい う角度から検証を進めていくことになろうかと思います。これについて何か、ご意見はあ りますでしょうか。  実際の検証作業においては、これをさらに、きちんとブレークダウンした形で論点を押 さえていく必要があろうかと思います。これについては、概ねご了解をいただいたという ことでよろしいでしょうか。 (異議なし) ○森田座長 特にご異議はありませんようですので、こうした検証検討項目を踏まえ、具 体的な事業の議論に入りたいと思います。  まず、「大規模年金保養基地(グリーンピア)事業について」、ご説明をお願いいたし ます。 ○泉管理課長 お手元の資料2と参考資料をご覧ください。まず資料2のほうです。大規 模年金保養基地の@に「福祉還元をめぐる状況」と書いてあります。この@の所は、グリ ーンピアに限らず住宅融資も含めて共通の事項というか、考え方、状況です。  まず1つ目の○ですが、年金の積立金というものは、毎年毎年の年金の収支の差の剰余 金がずっと積み立てられて積立金となっていった性格のものです。なぜ積立金が発生して きたかというところは、制度の考え方にも言及しなければならないかと思います。ご案内 のとおり我が国の年金制度は、現役時代に保険料を払って、それが給付に結び付く、社会 保険の考え方で設計され運営されてきたわけです。社会保険の考え方でいきますと、保険 料を支払った期間が長くなれば給付額も延びていくような、基本的にはそういう構造があ ります。したがいまして、昭和の年代、制度が導入されてまだ間もないころということで すと、加入期間も短い年金給付ということになるわけで、満額の年金を受け取るというの は、制度が導入されてから相当経ってからとなります。これは年金制度の、こういう方式 をとった性格として、そういう状況があります。  制度発足のときから、毎年毎年必要な額だけ徴収するという、いわゆる賦課方式をとっ ていたとするならば、積立金は生じずにきたかもしれませんが、一方で、保険料負担とい うのが、当初はわずかだったものが、将来非常に増大するということにもなりかねません。 したがいまして、計画的に保険料を徴収して一定の積立金を保有する、その積立金の運用 益も活用して、将来、制度が成熟化したときの保険料負担の軽減を図りたいという考え方 で、一定の積立金が保有されてきたわけです。  2つ目の○ですが、一方でその積立金は、昭和26年の「資金運用部資金法」という法律 で全額、大蔵省資金運用部に預託しなければならないことになっていたわけです。これは 平成13年に財投の制度が改革されて変更になりましたが、それまでの間は、こういう義務 付けがありました。したがいまして、その次の○ですが、年金保険料を拠出する被保険者 としての立場からは、積立金の運用に直接携われないわけですので、安全確実かつ有利な 運用を行ってほしい、また、少しでも被保険者の意向を反映するべきだ、被保険者の福祉 を充実するように運用すべきだ、という意見が繰り返し述べられてきたわけです。参考資 料に関係審議会の意見書が28頁以降に、それと国会の附帯決議は38頁以降に、後ほど若 干触れますが、繰り返し述べられたという経緯があったわけです。  そこで、具体的に大規模年金保養基地の構想が出てきたころの問題ですが、昭和40年代 は高度成長が続き、所得も増えてきた。こういう中で環境問題、生きがい問題等々の議論 がなされはじめ、また、余暇の有効利用という議論が非常に出てきた時代でした。当時は 余暇活動を行うための公的な施設も十分ではない、という指摘も各方面からありました。  そういう中で、昭和44、45年ごろは、各省庁、あるいは各都道府県などにおいて、レク リエーション施設などの整備などの構想が次々と出されていた時期でした。昭和44年の、 いわゆる「新全国総合開発計画(新全総)」、参考資料115頁に載せておりますが、これ においても大規模な自然観光レクリエーション地区の整備ということが謳われていた。ま た、当時、通産省の産業構造審議会では「余暇部会」というものもあり、膨大な報告書を 作成したり、これは参考資料124頁以降に載せてありますが、そういった動きがあったわ けです。  2頁ですが、そういう状況の中で、当時の厚生省及び年金福祉事業団においても、被保 険者や受給者を対象とした余暇利用の場を検討していった状況がありました。  その次の○ですが、昭和47年に入り、ちょうど全額預託していた大蔵省から、預託金利 を引き下げるという話がまいりました。預託金利の引下げというのは運用利益の減少に結 び付くわけですので、非常に難航した交渉が行われたようですが、その際に、そうである ならば還元融資枠を拡大してほしいと。新たに預託する額の増加額の1/4ではなく1/ 3に還元融資枠を拡大してほしい、ということで決着をみたことがありました。そういう 形で還元融資枠が拡大されたというのも、ちょうど機会として、新しい還元融資の事業を 行っていくという時期に合致した、ということがあったように思われます。  それで、昭和47年10月に初めて大規模な保養基地の構想が発表されております。概要 は2頁の下に四角で囲ってありますが、「年金受給者に生きがいのある有意義な生活を送 るための場を提供する」ということで、生活、保養、教養、勤労などの諸施設を総合的に 組み込む。全国に10カ所程度、1カ所200億円、土地は100万坪、こういう考え方が提示 され、さらに具体的な中身については、引き続き有識者の懇談会などで検討していこうと いう発表がなされたわけです。  3頁ですが、その年の年末までに、その懇談会が「中間報告」を発表し、年末の予算編 成の時期に、2つ目の○ですが、昭和47年末に、厚生年金、船員保険、国民年金の、これ までの福祉施設とは別に、三制度にわたる新たな総合施設ということで、その設置を年金 福祉事業団が行うことに決定されました。  どういう金をどのように使うかが次の※2つで書いてありますが、その敷地の設置に要 する資金は、年金福祉事業団が資金運用部から借入れを行い、これを充てる。  借入金の償還財源については、広く被保険者に利用していただくという意味から、利用 料で償還していくのではなく、その償還財源は年金、厚生保険特別会計などが負担します、 という考え方が制度創設最初の年からとられていたものでした。その翌年、昭和48年に必 要な法律改正、当時の年金福祉事業団法に「保養のための総合施設の設置運営」という文 言を入れる改正が行われ、昭和48年9月に法律も成立し、事業団の事業として行われるに 至ったということです。  Cですが、基地の設置に関しての動きとしては、昭和47年10月に構想が発表されると 大変関心を集め、37の道府県から申し出がありました。その一覧は参考資料164頁に載せ てあります。その37の道府県からの申し出を受けて、厚生省において審査・検討が行われ た末、上にありました事業団法の改正法が成立した直後の昭和48年9月に、基地の設置に ついての発表が行われております。それが次の4頁の上のほうに四角で囲っておりますが、 昭和48年度を初年度として、3カ年に10カ所について建設に着手する。候補地としては、 自然条件、環境条件、立地条件等、土地取得の可能性、これについては特に公有地である こと、近接地帯に乱開発などがなされていないことを条件に選定します、ということを述 べています。  具体的には、こうした基準に合うものとして、岩手、新潟、兵庫、北海道の4カ所、い わば、これが第1グループということかと思いますが、これらのうち3カ所については昭 和48年度中に土地の取得に着手する。そのほか、いわば第2グループと呼んでいいのかも しれませんが、和歌山県、高知県等とありますが、これらについて昭和50年度までを目途 に選定をしていく、ということをこの時に述べられたわけです。  これは昭和48年ですが、昭和49年、具体的に、そのほか「複合型基地」という考え方 を導入すると発表され、昭和49年に至って、具体的に地区の指定を行い、順次土地の購入 も始められていきました。そして、いちばん下の○ですが、昭和50年7月に「全体基本計 画」を改めて策定しております。参考資料では167頁にそのものを載せておりますが、そ の概要は4頁の下から5頁に書いております。「基地は、年金受給者の生きがいのある有 意義な老後生活を送るための場を提供するとともに、被保険者等の健全かつ有意義な余暇 利用に資することを目的とする」としております。選定に当たっては、先ほどと同じよう に、いろいろな条件に合致し、また公有地であること、1カ所100万坪と言っております。 11カ所、うち2基地は複合型ということで計13基地ということになります。  施設としては、教養文化施設、保養(レクリエーション・スポーツ)施設、保健施設そ の他となっており、建設費用は総額2,000億を超えないこと、資金運用部からの借入金を 充てる。その償還は、年金特別会計から年金福祉事業団に出資金及び交付金を出して、そ れによって償還すると述べられています。昭和50年のときの全体計画がその後のベースに なり、概ね、ここに書いてあるとおりに基地が設置されていったということです。  具体的に基地の開業・運営ですが、いま申し上げました昭和50年の基本計画に至るまで の間に若干状況の変化がありました。昭和47年に最初に構想を発表した後、昭和48年に 第1次オイルショックもあり、社会経済情勢がいろいろ変化しました。この計画をそのま ま進めていいのかどうか、見直したらどうかという意見もありましたし、また、基地を設 置する予定の地方公共団体から、早くつくってほしいという話もあった、ということもあ りました。  そこで昭和50年7月の「全体基本計画」を見ますと、1つには工期を2期に分けて、1 期工事をまずやり、その状況を見て2期工事を考えていくということ。昭和47年の構想に あった生活や勤労という要素は取り除かれており、教養、保養、保健についての施設とい う考え方に整理されました。  6頁ですが、さらに基地の運営方法についても、その後見直しが行われ、昭和50年7月 の「全体基本計画」では、単一の公益法人に業務委託するということで、年金保養協会が その委託先に予定されておりましたが、その後の状況変化も踏まえ、昭和55年11月に、 その後建設されるものについては所在する地方公共団体に運営を委託しようと。建設とい うのは、費用は年金福祉事業団が出すわけですが、個別、具体にどういうものをそこに建 てるかというところは、各県で工夫いただこうということで、基地の建設及び運営も委託 することになりました。したがいまして、先行して設置された大沼はじめ4基地は保養協 会に、その後の9基地は地方公共団体に業務委託するといった形で順次設置されていきま した。  設置後の運営については、その下に四角で囲ってありますが、年金福祉事業団運用基金 においては、民間の経営コンサルタントを活用した経営診断、あるいは、それを踏まえた 改善策等の取組みをしてきた。また、運営委託先については、旅行代理店や鉄道会社との 提携、企業や団体との利用契約を結ぶなど、いろいろな経営努力はしてきたことが窺える わけです。  こういう形で事業は運営されていきましたが、7頁以降は、事業の見直しが、いつごろ どういう議論があったかということです。昭和60年代に入って、昭和40年代には少なか った民間の雇用施設が次第に普及してきたということもありました。また、余暇に関する 国民の考え方も変化してきた。さらに時代が下って、バブル経済崩壊後は、宿泊や観光へ の需要も大きく減ってきた。このようないろいろな変化にさらされてきたわけです。そう いう中で、かなり早い時期ですが第2臨調(昭和58年3月)に最終答申を出しており、そ の中で「大規模年金保養基地の新設を原則として中止し、運営の民間等への委託を行う」 という文言がその中に盛り込まれております。それを受けて、翌昭和59年の閣議決定でも 同じ趣旨が盛り込まれております。  結果として、それまでに基本設計の終わったものということで13カ所で打ち止めになっ ており、それ以後、新しい基地はつくられていませんし、民間などへの委託も、そのとお りに行われてきたということです。  そこからさらに12年ほど下り、平成7年に「特殊法人の整理合理化について」の閣議決 定がありました。この作業は年金福祉事業団に限らず、特殊法人全体についての見直しを やっていく中で取り上げられたわけです。「大規模年金保養基地については、地元の意向 を踏まえつつ、県に運営委託している施設の県への譲渡等地域利用を図る」ということで、 平成7年の時点では、県に渡しなさいという指摘を受けたわけです。これを受けて、当時 の厚生省年金福祉事業団では、運営を受託している9県に対し意向調査を行ったわけです が、すべての県から、受入れは困難という回答があったという事実がありました。  その後、平成8年に小泉厚生大臣が就任され、就任直後の記者会見で「年金福祉事業団 については見直すべし」という指示がありました。それも踏まえ、平成9年に再び、特殊 法人の整理合理化、全体の見直しがありました。その中で、事業団の職員や基地従業者の 雇用の問題、あるいは地域経済の問題等いろいろあるが、8頁ですが、「大規模年金保養 基地業務からは撤退」と決定されました。そこで再度、9県及び他の基地が所在する4道 県に対して取得の依頼をしたわけですが、財政状況等から、自治体での取得は困難である、 地域振興や雇用の観点から存続が必要で、国及び事業団で継続してほしいと、平成10年6 月には13知事の連名による要望書も出されました。要望書は参考資料190頁に載せており ます。  こういうやり取りがあったわけですが大きな方向として、この基地業務から撤退してい くという流れは、この辺りまでで出来てきたかと思います。平成9年の閣議決定を踏まえ、 年金福祉事業団という特殊法人は一旦解散し、資金運用を本来業務とする「年金資金運用 基金」が平成13年に設立されたわけです。その法律の中で、この基地業務については政令 で指定する日までの間において基地資産の譲渡を行う、譲渡が行われるまでの間、基地の 運営資産管理を行うということで、譲渡を行いなさい、それまでは運営してもいいです、 という位置づけになったわけです。  9頁ですが、この法律の制定を受けて、平成12年4月に厚生省で「基地業務からの撤退 に関する基本指針」を策定しております。参考資料の192頁に載っています。この基本指 針の中で、公的施設として引き続き活用されるなど一定の条件の下に地方公共団体等に譲 渡される場合には、鑑定価格から減額を行うという内容も盛り込んで、改めて地方自治体 などと話合いを進めていったということです。  その後、総務庁、会計検査院の報告等々でも同じ方向の指摘があり、「特殊法人等整理 合理化計画」(平成13年閣議決定)の中で、「平成17年度までに廃止し、特に自己収入 で運営費さえも賄えない施設については、できるだけ早期に廃止する」ということで、平 成17年度という明確なリミットが設定されたわけです。これを受けて法律上も、この春成 立した運用について、新たに独立行政法人を設置するという法律の中で、平成17年度まで の廃止が法律上も明記され、このような経過をたどったわけです。  なお、参考資料ですが、資料をたくさん載せておりますので、全てには言及しませんが、 グリーンピアに関する部分をざっと説明いたします。初めのほうは、「これまでの年金制 度の歩み」、あるいは「年金積立金の推移」等を載せております。28頁から、先ほど触れ ましたが「関係審議会等の動き」を載せております。いちばん最初の例だけを申し上げま すと、昭和27年の社会保険審議会建議の中で、「厚生年金保険、船員保険の積立金は、被 保険者、事業主が被保険者の老齢、廃疾、遺族等に備えてれい細な資金を集めたものであ るから、その運用方法においても被保険者の福祉に充分考慮を払うべきであり」云々とい うことで、福祉還元というような文言が繰り返し述べられているものであります。  国会の附帯決議は38頁以降に載せてあります。これも1つだけ例を挙げますと、38頁の 2つ目に、昭和29年第19回国会参議院、この中に7、8とあり、特に8では「厚生年金 積立金を大幅に還元融資し、老人ホーム、児童保護施設、医療施設及び住宅等を増設して、 被保険者の福祉増進を図ること」。文言はその時々いろいろですが、趣旨としてそうした 指摘が繰り返し行われてきたわけです。  42頁以降にグリーンピアなどをめぐる国会の議事録を、全部ではありませんが幾つか載 せております。さまざまな議論もありますが、少し例を挙げますと、昭和50年に参議院の 社会労働委員会で小平議員が、「その計画を見直す段階に来ているのではないか」という 質問をされたり、昭和53年に原議員が、このままこのグリーンピアを進めていいのかとい う質疑をなされています。しかしながら、すぐにやめるべきということではなく、事業を 若干縮小するなりという議論だったようです。  グリーンピアそのものではありませんが、53〜54頁に「年金客船」という質疑も作業を していく中で見かけられましたので、参考までに載せております。年金資金を使って客船 をつくればいいじゃないか、ということも昭和60年の国会でいろいろと議論もありました ので、参考までに載せました。  「福祉還元」というのは労働組合から強い主張が繰り返しあったわけです。56頁以降は、 労働組合が対外的に発表された文書などで、そういう記述があったものを幾つか載せてお ります。  61頁以降は新聞記事です。社説に限って載せてありますが、これもその時代時代を反映 したいろいろな議論がありました。2、3ご紹介しますと、64頁に「厚生年金の還元融 資」ということで、昭和38年の朝日新聞の社説があります。例えばいちばん上の段の最後 の3行ですが「厚生年金の還元融資のワクを拡大することは、厚生省だけでなく、厚生年 金保険加入者の多年にわたる強い要求であることを、このさい注目しておかなければなる まい」。最後の3行ですが、「厚生年金の性格からして、加入者への還元融資を拡大する ことは当然検討されてよいと思う」。当時こういう社説もありました。  その後、「住宅政策を十分行うべきだ」とかいろいろ見られますが、ちょうどグリーン ピアの構想が出された前後、79頁ですが「年金積立金の運用に望む」ということで、昭和 47年9月1日の毎日新聞の社説で、下から2段目の真ん中辺りに「これまでは社宅などに 限られていたのを、新たに個々の被保険者に対する住宅資金貸付けをも還元融資対象事業 に加えることや、大型保養地をつくる、といった構想も、年金制度の魅力を高めるものと いえよう」云々とあります。ただ、この社説も、いちばん下の段の真ん中ほどに「同時に 還元融資のワクの拡大や、それによる施設づくりも、年金制度の副次的な目的であって、 主目的は年金給付水準を高めること」と、こういうようなことも書いてあります。また、 左側は同じ日の朝日新聞の社説が載っています。  以上のようなことでしたが、その後に至って、昭和50年の朝日新聞の社説で「年金の保 養基地計画を見直せ」という社説がありました。83頁の下から2段目の真ん中やや後ろに 「しかし、この計画が打ち出された当時といまとでは、情勢が大きく変わった」とありま す。それで、いちばん下の段の1行目に「「基地」は、従来なかった型の福祉施設である。 これをつくる意義はあるものの、はじめの計画は人気とりのねらいもあって、ふろしきを ひろげすぎた。もっと、地道なものに改める必要がある」という指摘がありました。こう いった議論がこの当時行われていたということです。  あと、総務庁、会計検査院からの指摘事項などを何頁かにわたって載せてあります。  114頁は、前回の会議でも、関係する団体に出身者がいるという問題もいろいろ言われて いるではないかということで、一覧表を載せてあります。グリーンピアと住宅融資も併せ てですが、関係する特殊法人あるいは公益法人の役員数、うち厚生労働省の出身者数、こ れは今年10月1日現在の数字で、欄外に「注」がありますが、こういう形で把握したもの を参考までに載せてあります。  それ以後115頁からは、新全総の昔のもの、産構審等々を載せてあります。また、細か くは触れませんが171頁以降は、基地の設置に関する地方自治体からの要望、早く着工し てほしい、存続してほしいという要望等々、全部ではありませんが、幾つか文書が残って いたものを代表的なものとして、参考までに載せております。資料説明は以上です。 ○森田座長 かなり複雑なプロセスかと思います。ただいまご説明いただきました「大規 模年金保養基地(グリーンピア)事業」について、ご意見をいただきたいと思います。 ○都村委員 年金資金というのは、言うまでもなく国の制度と信用を通じて集まってくる 公共的な資金であるということです。したがって、社会経済の発展や国民福祉の向上とい った公共目的に沿って、運用なり、事業への投資が行われることが要請されると思います。 年金資金と民間の機関投資家の大きな相違点というのは、公共性の要請にあると思います。 皆年金がスタートした当初は、被保険者に対して直接還元するという、直接還元の要望が、 いまもご説明がありましたが、かなり強かったわけです。  また、政策立案者側から見ましても、保険料拠出者の拠出意欲の向上を図り、公的年金 制度の発展に役立たせたいという意向もあったと思います。1961年に皆年金になって、そ れ以降制度が整ってきて、年金資金がどんどん増加してきたということもあると思うので す。事業開始後何年間かは、公共性の要請を満たしていたと考えられます。国民福祉の向 上という有効な公共目的を達成するための事業であったと思います。例えばグリーンピア は、今まで4,355万人の方が利用し、住宅融資の利用は400万件に達しているということ は、ニーズが高かったということを示していると思います。  しかし、経済社会の大きな変動の中で、財投制度の抜本的な改革や行革の一環としての 特殊法人改革という観点から、事業の見直しの機運が高まってきたということです。先ほ ど申し上げました公共性を主張できる根拠が少しずつ薄弱になっていった、社会的要請か らの乖離が生じてきたということです。還元融資事業などを行うに当たっては、常に経済 社会の変動を先取りしながら事業を遂行していくという感覚が必要なのではないかと思い ます。  例えば、需要が伸びてきていることが分かれば、当然、民間部門は事業を興します。公 共性の高い事業かどうか、あるいは、官でなければならないかどうか、という見極めが重 要だと思います。公共性が要請される事業は、経済社会の変化に適切に対応しなければな らないと思います。政策決定者の意思決定の迅速性、意思決定を引き伸ばさないことが重 要なのではないかと思います。 ○森田座長 いくつか重要なご指摘があったと思いますが、ほかの委員の方々、いかがで しょうか。 ○篠原委員 この資料を見ますと、社会福祉施設の充実が必要だということを審議会や国 会で指摘されていますが、実際に制度ができるのはかなり遅れているような気がいたしま す。何故に遅れたかという部分で、いろいろと危惧というか、マイナス面もあったことか ら動かなかったのかなと。その辺を今回明らかにしてもらいたい。こういうものは、提案 してから遅れるのかなというよりは、何らかの遅れた理由があったのではないか。  改善についても、朝日新聞などは昭和50年ぐらいに出ていますし、国会でも55年あた りに指摘されています。指摘されたものとか国会の附帯決議は、機関あるいは委員会でき ちんと検討することがあったのだろうか。附帯決議はどう扱われるのか分からないのです が、1行か2行で非常に曖昧です。指摘していることは結構重要なことなので、ブレイク ダウンして、どこかで検討する必要があったのだろうという気がするのですが、その辺、 どの程度されたのかということです。 ○都村委員 年金保養基地事業についてですが、参考資料を拝見しますと、非常に経営努 力をしてがんばっている黒字の所と、これは立地などが関係すると思いますが、そうでな い所に分かれています。188頁に、昭和55年から平成15年までの利用状況として、日帰り の人、宿泊した方、それと合計が出ております。189頁に収支状況として、収入と支出、収 支の差、いちばん最後の列の所に類計が出ております。それを拝見しますと、兵庫、広島、 新潟などは非常に頑張っていると思います。良くないのは、これは立地条件もあって行き にくいということもあるのでしょうけれど、高知、鹿児島などです。  これを全部、画一的に処理しなければならないのかどうかというのは疑問に思います。 全国画一方式ということに問題があるのではないかと思います。こういう事業の場合は、 テストをしながら、実験的に進めていく方式も必要だったのではないかと思います。 ○山崎委員 今日の本題ではないかと思いまして控えていましたが、先ほどの資料53頁で、 国会で年金豪華客船のことが話題になっておりまして、中曽根総理が「政府部内で検討さ せていただきます」と答弁されております。実はこの検討に私も関わりまして、とてもじ ゃないが採算に合わない、という報告書になったと思います。この記録は事務局にあると 思います。当時は造船不況であり、雇用創出という観点からも、そういう要望がかなり上 がっていたと思いますが、私は的確な判断をしたと思っております。そういった検討結果 があるはずですから明らかにしていただきたいと思います。 ○篠原委員 資料189頁で、最後の収支差は8億1,500万となっていて、いまの報告だと 採算が合わないと言っています。採算のレベルですが、おそらく、施設設備費用は年金資 金から出すよという前提であれば、運営費用で採算を見ると大した赤字ではないではない か。施設投資資金まで回収できればいいのですが、先ほどの公共施設というのであれば当 然料金は安いわけですから、施設設備は年金資金でみる前提であれば、通常、運営でトン トンであれば、それほど悪くはないという意味で、これを見るとそれほど悪くはない。だ から、どういう点で中止とか、いろいろな問題が出てきたのか。いわゆる減価償却まで回 収するとは、この資料を見る限り、そうなっていないような気がするのです。 ○森田座長 これについては、事務局からご説明ください。 ○泉管理課長 いまご指摘のとおりで、減価償却はここに入っていません。全体で8億 1,500万というのも、言われるとおりランニングです。日々の人件費、物件費等々の運営を 利用料などで賄ってどうだというものです。先ほど、黒字の所と赤字の所といろいろある のに画一的でというお話もありましたが、これは交通の便や近隣に類似施設がある所、あ まりない所と、いろいろな状況によって、いろいろな形になっているということだと思い ます。  先ほど説明した閣議決定の中で、全体として撤退しなさい、赤字の所は少しでも早く撤 退しなさいということは、年金でこういう施設を持っていることが適当かどうか、という 議論だったと思います。設置費用は最初に借入れをしたものの償還金ですので、払ってい かなければいけないわけです。それとは別に、前回も説明しましたが、固定資産税などは、 運営費の中でも年金から毎年予算計上をしております。それも規模の大きい施設ですので、 無視できない額ではあるので、年金の施設として持ち続けることは、そういう支出をずっ と何年も続けていくのか、それはないようにしたらどうかという議論はあったのだろうと 思います。 ○篠原委員 確かに、年金資金は投入しないというのは今の状況を見れば分かります。だ けど折角つくったのですから、このくらいならば経営努力で何とかなるのではないか、と いう気もしないでもないのです。固定資産税とかいろいろとありますが、経営努力をして 採算がとれる計画というか、検討というか、意見はなかったのでしょうか。 ○泉管理課長 閣議決定といってもすぐに決まるわけではなく、当時の私どもの担当者と、 関係する行革なり、いろいろな方面との部署とで、さまざまなやり取りを繰り返し行って いって、資料としては最終の姿しか載せてありませんが、言われるようなやり取りをずっ と繰り返しやってきたのだろうと思われます。ただ、結論としては、こういうところに至 ったということだと思います。 ○篠原委員 利息の問題ですが、最初は財投資金から借りていますが、財投資金はかなり 利率は高いのではないか。年金資金があった状況では、年金資金で購入ということを何で やらなかったのか。財政資金を使うよりは年金資金を活用した方が少なく済んだのではな いか。相当の利息を払っているというのは国会でも指摘されています。当初の運用利回り は分からないのですが、年金の運用利回りのほうが財投の利息を払うよりは高かったので しょうか。それとも制度上年金資金からは、一遍に出せないということでしょうか。 ○泉管理課長 年金の運用利回りは市場運用ということですか。市場運用は昭和61年から わずかな規模で開始したわけです。今は全部、市場運用にもっていこうということですが、 そういう制度に変わったのが平成13年度からです。こうしたグリーンピアや住宅融資を始 めたころは、ご指摘のような発想というのは、そもそも市場運用と比べてどうというあれ はなかった。自主運用をしたいという意見は審議会ではありましたが。  当時は、年金の積立金は郵貯などと一緒に国家資金で統一して管理するのだ、という考 え方が非常に強かったし、財投も制度としてあったという時代だったので、そういう中で、 少し今とは置かれた状況が違っていたのだろうと思います。 ○篠原委員 制度をつくるときのいろいろな資料はあるのですが、何で撤退するのかとい う理由がないような気がするのです。制度としては素晴らしいものだったので、極端に言 うと、年金資金が足りないので全部やめてしまうよというのではなくて、もっと細かい議 論がされたと思うのです。その辺を知り得たらなということです。 ○山崎委員 私は国家公務員共済に関わっていまして、国共済も福祉施設としてKKRを 持っています。国共済のKKRに対しては、年金経理から貸し付けています。いま全体と して収支の状況は悪いです。仮に、時価で全部売却したとしても年金経理に全部返せない という状況で、これは数年前から言われています。国共済としては、そういう厳しい状況 の中で最大限の経営努力をしたいということで、最近はかなり頑張っていることを聞いて います。その1つとして、支配人を思い切って民間から公募したのです。明らかに経営は 良くなるのだそうです。そういったのも1つの参考になるのかなという気がいたします。  もう1つは、農林年金にも関わっていたこともあります。農林年金はかなり早い時期か ら不採算の施設はどんどん処分しています。横並びで見ますと、他の共済、あるいは健康 保険組合も最近では、施設に関しては同じような問題を抱えていると思います。そういっ た類似の社会保険での福祉施設の運営状況、あるいは撤退の判断、改善の努力と横並びで 比較してみるのも1つかと思います。 ○田島委員 年金の福祉還元事業が、当時の時代背景の下で必要とされていたというのは 分かるような気がします。ただ、私は団塊後の世代でして、年金福祉還元事業のご利益に もあずからず、少子高齢化によって年金財政が極めて逼迫し、年金保険料が値上げになる 一方、年金受給開始年齢はだんだん上がっていく、受給額も減っていくという、年金に関 して言えば、踏んだり蹴ったりの世代に属する者から見た感想としては、年金の福祉還元 事業の1つであるグリーンピア事業は必要であったのかもしれませんが、本当に適当な場 所に、適当な規模と予算でつくられたものなのかどうかについては、やはり疑問があるの ではないかという気がしております。  かなり多くの県から要望があった中で選ばれた11カ所ですが、どのようにしてこの11 カ所を選んだのかがよく分からない。国会質問などでは、厚生大臣、元厚生大臣の出身地 が選ばれているのではないかというような指摘もあったりしますが、この辺どういう基準 で選ばれたのかが分からない。それから、それぞれの施設に投下された資金に多寡がある と思いますが、それがなぜそれだけの事業規模になって、それぞれに差があるのかもよく 分かりません。  また、被保険者に対する福祉還元ということで、年金の納付意欲を高めることをかなり 大きな目的に掲げられているので、私は現役の保険料を支払っている世代が主として対象 になっている計画なのかなと思ってよくよく見ましたら、どうもそうでもなく、年金の受 給者のレジャー施設みたいなのが、主な計画対象だったのかなという気もしますので、本 当に必要なものを必要な場所につくたのかどうか、というところの検証が、もう少しなさ れるべきではないかという感想を持っております。 ○篠原委員 この検証会議の目的を超えるのかもしれませんが、この20年間、個人的にい ろいろな形で公の施設を使っているのですが、使用料が安すぎるのではないかという気も しています。民間は1桁高いです。これでは到底利用できない。そういう意味では、全体 的にいろいろな公共施設が必要とされている中で、ここを全部廃止するということですが、 全体的な必要量を検討した上で、これを止めてしまうというのか。  この資料を見ていると、低額所得者に対するある程度の配慮、という意味での年金資金 の活用を考えていますが、確かに、私が知っている60歳代から70歳代でかなりの財産が ある人たちは、非常に高い所へ、しょっちゅう旅行に行っています。このまま年金が少な くなっていくと、低額所得者が遊べる施設がなくなるのではないか。その辺も考えた上で の意思決定なのかどうか。その辺の危惧というか、こういうのをやめても安い施設がある のだという前提でやめたのか、という疑問を持ちます。 ○森田座長 その辺りは、事務局から何かございますか。 ○泉管理課長 グリーンピアの見直しの時間的な経過は資料のとおりです。平成7年とか いろいろな時期に、ご指摘のような観点で、公共施設全体と、という議論をされたかとい うのは、資料はちょっと確認できませんが、調べていた感じで言えば、そこまでやられて いたのかどうかはやや疑問かもしれません。むしろ、閣議決定が「特殊法人の整理合理 化」とあるように、視点は特殊法人にまず着目して、その特殊法人のやっている仕事が必 要かどうか、あるいは、もう時代遅れかどうか、という目でチェックされたということだ と思うのです。そういう意味では、特殊法人ではないけれども公共のもの、というのが自 治体直営のものだったり、公益法人のものだったりいろいろあります。そういうものを含 めての議論が、そこであったかというと、必ずしもそうではなかったのではないかという 気もします。 ○森田座長 ほかにはいかがでしょうか。大変複雑な問題ですので、全体像を理解するの も容易ではないかと思います。 ○山崎委員 審議会で長い間「福祉還元」という要望が出ていたのですが、撤退すべきだ という意見は、いつごろから出てくるのでしょうか。それともないのでしょうか。 ○泉管理課長 審議会でそういう意見が出されたということはなかったと思います。撤退 すべきというのは、専ら行政改革なり、特殊法人改革という観点から、いま申し上げたよ うな形で指摘がされ、閣議決定に至るいろいろな議論がなされ、もちろんその経過なり、 結果なりを審議会にその都度ご報告したり、ということはあったと思います。審議会の場 での意見交換もあったかもしれません。まだ十分に調べきっていませんが。 ○山崎委員 それは審議会に問題があったということになりませんか。 ○泉管理課長 失礼しました。参考資料の36〜37頁に、36頁は平成10年でございますけ れども、年金審議会の議論、それを受けての年金局の資料というのが載っています。左側 の年金審議会平成10年10月9日のところでは、本文4行目辺りから、「あるいは大規模 年金保養基地の設置運営事業を通じ、多くの被保険者の福祉向上に貢献してきたところで ある。今搬、行財政改革の流れの中で、これら事業からの撤退と同事業団の廃止が決定さ れたが、その実施に当たっては被保険者、年金受給者に悪影響が出ないよう、また事業に 従事している者の雇用や地域に配慮しながら、進める必要がある」と書いてあります。  下から3行目に、「民間でできることはできるだけ民間にゆだねるべきである、積立金 の運用については、行政改革や財政投融資制度の抜本的な改革の趣旨に沿った対応が必要 であるという意見があった」と。これは、さまざまな意見があった中で紹介されておりま す。 ○山崎委員 行革の大きな流れを、審議会としてどう受け止めるかということで、私は非 常に消極的な感じがするのです。時期的にも、平成10年というのは、もう流れは結着がつ いているわけで、この審議会の意見では、むしろ雇用への配慮ということに、意見として は意味があるのかなと思います。私も今回の年金審議にも関わりましたが、あまりにも、 こういう福祉施設とか年金業務ということに関しての審議がない、事務局も用意しないと いうことで、昭和50年代半ばには、もうこういう議論が出ていてもよかったのではないか なと思います。 ○森田座長 大変複雑なのですが、今日、最初にご説明いただきました資料に基づいて私 が理解したところを申し上げますと、最初は年金は積立方式ですので、かなりお金がたま ってきていた。他方においては福祉施設その他をはじめとして、民間のそういう施設が必 ずしも十分ではなかったという事情もあり、積み立てていく年金の基金をうまく、その時 の世代に還元していく制度を作ってはどうかということで、こういう形での福祉還元事業 が行われた、というご説明だったと思います。  その中で、制度の作り方としては、最初にいただいた資料の2頁から3頁にかけてでし ょうか、基本的に資金運用部に全部入れて、そこから借り入れて、財投で行う仕組みをと っていたわけです。さらに、制度を作っていく場合、3頁ですが、償還については、いわ ば施設ごとの採算をとれるような形ではなしに、むしろ、この厚生年金保険特別会計が全 部見ていくと。運用に関してはそれぞれ負担をいただくかもしれませんが、基本的な、先 ほどの公課であるとか、償却部分については年金で見ていくという形でやっていた。  その後のご説明を見ますと、一方では、だんだん民間の施設が充実してきたということ で、それに対するニーズが少なくなってきた。他方においては、今度は福祉施設に対する 要望から、このグリーンピアもそうですけれども、大規模なこうした施設に対する要望が 出てきて、それに応える形で拡張していった、と理解ではないかと思っております。  その中では、各都道府県から施設の設置の要望があるということなどを考えますと、こ こにも引かれておりますが、新全総と同じような形で、地域振興の1つのツールとして使 われてきたという気がしますし、先ほど、造船不況の時に、このような話があったとしま すと、そうした形での資金対策で、公的な需要を作り出す1つのツールとして使われてき たのではないかと理解したわけです。  その後だんだん、今度はいくつかの要素があると思いますが、少子高齢化と言いましょ うか、高齢化が進んできて、そうした年金の基金の中から運用益で余剰を生み出し、それ でもってそうした事業を行うことが難しくなってきた状況が出てきたと思います。同じこ とは、民間の施設の充足その他によって、それぞれの施設の収益性とか稼働率も問題にな ってきています。  そういう中で、行政改革はもっと効率化しろという話だったと思いますが、その動きが ずっと続きながら、これで言いますと、昭和50年代から平成10年ぐらいにかけて、途中 バブルもはさまれますが、その頃は制度そのものとしては、そういう危険をはらみながら も、許容されてきたのか。それが1990年代に入ってから、かなり状況が厳しくなってきて、 そこで、こういう論点が噴出してきたのか。最初ご説明いただきました資料から、私自身 はそう理解したわけです。ご専門の先生方もいらっしゃいますが、大体そういうことでよ ろしいでしょうか。 ○山崎委員 付け加えます。35頁の審議会の意見(抄)ですが、年金審議会の平成5年10 月12日の制度改正についての意見書の中で、「年金資金の被保険者還元融資については」 とあって、「要介護者向けの住宅新築・改造や介護機器、教育資金等に対する融資の創設 を図るべき」と、また「年金福祉施設については、国民に年金制度を身近なものとして感 じてもらうとともに、高齢社会のニーズに応えていくため、更に工夫を凝らすべき」とい うのは、昭和40年代と全く変わらない認識なのです。ですから、これはかなり問題だと私 は思います。世の中の流れがはっきりしているにもかかわらず、誰も気が付いていなかっ たのだという気がします。 ○森田座長 平成5年でも、まだこういう意見があったということですか。 ○山崎委員 ですから、これはかなり大きな問題ではないかと思います。ですから、政府、 あるいは厚生労働省、社会保険庁だけの問題ではないような、こういう雰囲気の中では事 務局も動きがとれなかったのではないかと思います。つまり、こういう福祉施設等は、ま だまだ充実させろという動きの中においては、ということです。 ○森田座長 私も専門は、年金や社会保障ではなくて、政治学ですから、そちらで申し上 げますと、こうした、いわば資金を配分するような制度の場合、一度できますと、それに かかわる団体や組織がかなり出てきて、「既得権」という言い方をするとちょっとストレ ートかもしれませんが、それが制度をむしろ支えていく形で、うまくいく時には、そうい う団体なり何なりが制度をさらに発展させていくことになりますが、周りの環境条件が変 わった時にも、それがうまく対応できるかと言いますと、なかなかそうはいきません。  そこで、いわゆる一種の制度的な慣性の法則が働いて、この制度があるからもっと活用 したらということになってきて、それを変えるのはなかなか難しいというのは、現在さま ざまな改革が直面しているところであると思っています。  したがって、巨大タンカーにたとえますと、艦橋で海を見ている船長さんは、舵を切ら なくてはいけないというのは分かるわけですが、なかなか乗っていらっしゃる方がそれに 賛成しないということで、切り始めてから曲がり始めるまでだいぶ時間がかかるという性 質をもっているところもあると思います。  したがって、今回の場合で申し上げますと、そもそも船長が、いつの時点でそれを認識 したのか、それがなぜ、なかなか皆さんの理解を得られなかったのか。今回もそうですが、 いまの山崎委員のご発言を踏まえて申し上げますと、時系列的に押さえていって、どの時 点で最初のサインが出ていたかということを、もう少し細かく見ていく必要があるという 気がいたしました。 ○都村委員 いま問題になっているのは大規模年金保養事業と住宅融資と次回の年金福祉 施設事業ということですが、35頁の年金審議会の意見は、公共的な資金を使って、官が何 をやるべきかという内容にかかわる議論だと思います。グリーンピアと住宅融資と福祉施 設を廃止するのと、次元が違うと言いますか、少し視点が違うと思います。1回目の会議 の時にも申しましたように、少子化というのは、経済社会に非常に大きな影響を与えるの ですが、日本では、いろいろな家族政策の中で、養育や教育に伴う家計の経済的負担の軽 減という施策が、外国に比べて遅れているのです。  将来、年金制度を支えていく、保険料拠出者になる、いまの高校生や大学生に、年金教 育資金貸付制度を大々的に行うことについては、かなりコンセンサスが得られるかもしれ ないわけです。グリーンピアとか住宅融資とかは、民間部門も出てきて、官としての使命 がある程度終わってしまったというものと、35頁に書かれているような年金審議会の見解 とは同じではないと思います。官が何をやるべきかということについて議論することは、 大いに審議会でもやっていただきたいし、これは大事なポイントではないかと思います。  先ほど申しましたように、もう少し早く経済社会の変化に対応して、こういうものはも う使命が終わったと、だから、もっと若い人たちを支援することは、また年金に対する理 解を深めることにもなるし、非常にプラスの面があるわけですから、そちらのほうに政策 を転向してもいいのではないか。平成5年というと10年以上も前ですから、そんな前に年 金資金の被保険者置元融資のあり方について議論が行われていたというのは、年金審議会 の議論としては、私は注目すべきではないかと思います ○山崎委員 私も、特に教育資金等については、同じような考えをもっています。ただ、 今回の話は、年金資金は年金以外には使わないということを決めてしまったわけです。な ぜ遅れたのかということになると、教育資金がいいか悪いかは別にして、そういう今日の 意思決定が遅れた理由を辿るということにあるとすれば、やはり問題だ、と私は申し上げ たわけです。 ○森田座長 いまの議論を、私なりに整理しますと、2つ次元と言いますか、議論がある と思います。一つは、いわゆる官と言いますか、公的な政策として、少子化や教育の支援 を行うことがあると思います。第2に、それを行うとして、グリーンピアとか、そうした 保養施設まで行う必要があるかどうかというのは、1つの判断で、政策の問題です。仮に 公的な少子化対策とか何かを行うとしても、それを年金の資金でやるべきなのか、あるい は年金は年金で完結させておいて、一般会計のほうからきちっと社会保障政策とか福祉政 策の一環としてすべきなのか、それは両方の次元があるのではないかという気がいたしま すが、その辺はいかがでしょうか。 ○都村委員 いままでの流れを見ていると、育英会の奨学金とか児童手当は拡充が難しか った。日本の風土は、自分の子どもは親が育てていけばいいという意識が結構あって、社 会連帯の仕組みで子育てを支援しようというのは、今まであまりなかったわけです。です から、いまおっしゃった福祉政策として養育費・教育費の負担軽減を行うことは、私はち ょっと困難ではないかと思ってます。  もっと積極的に、将来の年金を支える人たちを、いま支えていくことが大事です。いま の子どもたちの世代、保険料を拠出する現役世代、高齢世代というのはつながっているわ けです。現役世代と高齢者のつながりは非常によく認識されているのですが、子どもたち と、現役世代、高齢世代との関連というのは今まであまり考えられてこなかったのです。 ○森田座長 私は、その辺はよく知りませんが、ただ、ここはあくまでもこれまでの政策 を検証する場で、これからの政策提言をする場ではありませんので、逆の観点から見ます と、過去の検証としては、年金の中からそうした形でほかのものにも支出していく考え方 がなぜとられてきたのか。いまは、それが途中でまずいのではないかという話になったか と思いますが、その辺についてきちっと押さえていく必要があるのではないかと、そうい うことを申し上げたかったのです。 ○青柳運営部長 たまたまいま平成5年の年金審議会の意見書のことが話題になっている のですが、私は当時、年金局に籍を置いていて、当事者なものですから、別にこの意見書 を書いた責任云々はないにしても、当時の雰囲気を、政策立案の側にあった人間としてど う考えていたか、ご参考になればということで、口を差し挟ませていただきました。端的 に申し上げて、当時、年金の保険料、資金をさまざまな福祉還元事業に使うことについて、 それが問題だという問題意識は、年金局の政策担当者としてもっていなかった、と申し上 げるのが正直なところだろうと思います。  むしろ、ここに書いてあるように、1つには、介護の問題というのは、今日では介護保 険の制度ができましたから、いわば現物給付を中心にしたサービスを行って、それによっ て、適切な要介護状態にならないように、ないしは要介護状態になっても適切な暮しがで きるようにということで制度を組み立てるという結論が出ていますので、いまから見ると、 こんなことを議論したのかなと、改めて私も思い返してみたような次第です。当時は、例 えば介護保険そのものにしても、今のような現物給付でやるか、あるいは現金給付みたい なサービスを組み合わせるべきか、あるいは、いきなりそこにいかないとしても、社会保 障制度全体の中で、どうやってそういった介護ニーズを充足していくか、ということは皆 の関心事であったし、いろいろな意見があった時代でもありますので、その意味で言った ら、単に年金資金を使うということでなくて、社会保障制度全体の中で、その介護のニー ズをどうやって充足していくかということに、年金としてどのような関わりをもっていく か、という問題意識がここに現われているのかなというふうに、思います。  教育資金の問題は、いまもちょっとお話が出ていたようですが、当時、この教育資金の 問題を年金の問題と絡めて考えたのは、単に公共的なニーズを充足するということに止ま らず、言ってみれば、教育資金をきちんと貸してあげることによって、優良な被保険者を 形成することができれば、それがあとできちんとした保険料として戻って来ると、そうい った年金制度側にとっても、直接的な形でメリットがあるという認識を、少なからずもっ ていたように私は記憶しております。この平成5年より前の公共的なニーズを何らかの形 で充足するために年金積立金を使うという議論よりは、もう一歩年金制度のほうに引き寄 せた認識をもちながらの議論をしていたように記憶しています。必ずしも、そこのところ が文字で書かれたものとして残っているかは、私も定かではありませんが、そういう問題 意識をもっていたように、10年前の記憶ではありますが思い出したところです。何かの参 考になればと思います。 ○都村委員 現に、翌年の平成6年に、年金教育資金貸付けが制度としてできているので す。 ○森田座長 現在の基準で過去の政策の是非を計るというのは、あまりいいことではあり ませんので、その当時の判断基準でということになると思いますが、ただ、そのあと、い ま申し上げましたように、何らかの変化があった時に、それをどのような形でインプット していく、フィードバックしていくかという話になろうかと思います。そういう意味で言 いますと、大変貴重なお話をありがとうございました。  ただ、その当時は、年金財政の見通しについては、どのようなことだったのでしょうか 。 ○青柳運営部長 このあとに、平成6年の改正が行われました。平成6年の改正は、年金 財政については、当時、標準報酬制度でしたが、保険料率を標準報酬ベースで30%まで上 げることができれば、いわば年金制度を、その当時の水準として維持ができるであろうと いう見通しに立ったものでした。  ところが、少子化のその後の急速な進展によって、平成12年の改正時には成り立たなく なりましたので、その意味では、平成6年の改正時点における財政見通しは、結果的に見 直しが必要になったということも事実だろうと思います。 ○森田座長 ありがとうございました。次の議題に移りたいと思いますが、この件はこれ でよろしいですか。 (異議なし) ○森田座長 ありがとございました。続いて、「年金住宅融資事業について」、お願いい たします。 ○泉管理課長 資料2の10頁以降に「年金住宅融資」について説明しています。個人向け の住宅融資制度は昭和48年でしたが、それに先行する形で、昭和37年度から、事業主が 社宅を造るのに貸付けをしたり、昭和41年度から、個人ではなくて、分譲住宅を建設して 供給する公益法人などに貸付けを行うものが先行して行われていました。  しかし、昭和40年代、「一人一室」という第2期住宅五箇年計画等々、政府全体として 持ち家政策が推進されていた一方で、今と違って、民間金融機関は個人向け住宅融資をほ とんど行っていなかった、とりわけ行っていても、長期固定低利のローンは難しかったと いう状況もあり、要望としては、住宅金融公庫だけでも足りないので、もっといろいろな 制度があっていいと。例えば財形の制度もそのころできたりという動きもありました。  そういう中で、住宅資金に対する需要に対応することが福祉還元のやり方として適切で はないか、という議論もいろいろありました。昭和45年に一度予算要求をしたようですが、 その時は話がまとまらなかったようです。昭和47年になって、先ほどのグリーンビアと一 緒ですが、預託金利を引き下げる動きがあった中で、期待の大きい住宅融資制度を創設す べきではないかという議論があり、新たに行われるように決定を見ました。  具体的な内容は11頁にありますが、「転貸融資方式」というのがとられることになり、 年金福祉事業団が財投から借入れをして、それを事業主あるいは公益法人に貸付けをいた します。そうしますと、事業主あるいは公益法人が本人に貸すという転貸融資を原則とす る。また、転貸融資を受けることが難しいケースや、事業主の存在しない国民年金の被保 険者については、年金福祉事業団が住宅金融公庫に業務委託をして、住宅金融公庫が貸付 けをするという仕組みで、制度としてはスタートしました。これも、その後昭和48年に法 律改正を行い、事業団の業務として明記されたということで、業務が開始されていきまし た。  年金保険料の使い道という意味では、その次の○ですが、事業団が運用部から借り入れ た利率と貸し出す利率との差額について、結局、低利で融資することが福祉の向上に意味 があるということだったわけで、要するに、逆ザヤで貸出しをしたわけです。そこを埋め るべく、年金特別会計からの交付金という形で利子補給を事業団に対して行い、事業団は その受けた利子補給金とユーザーからの回収金で財投に借金を返すという仕組みでスター トしたわけです。  その後、この転貸融資の制度は、いちばん下の○ですが、当初は分譲住宅の整備をやっ ている民法法人でなければ駄目だという限定もあったので、あまり普及いたしませんでし た。しかし、12頁ですが、昭和52年になって専ら転貸業務を行う民法法人もこの業務を行 えるように見直しが行われて、それ以後、急速に普及していきました。  事業の運営については、「被保険者に着目して」ということがあります。例えば、一定 以上の加入期間があること、その加入期間の間に保険料の未納や滞納がないことなどを貸 出しの条件として設定して、融資制度として行われてきました。また、昭和52年度、先ほ ど転貸法人が広く認められるようになった時ですが、物上保証や連帯保証人による保証に 加えて、取扱い金融機関の保証も併せて行う形で、債権の保全に万全を期すという形で制 度の見直しが行われました。その後、昭和60年代に入ってさまざまなタイプの住宅、バリ アフリーなど、いろいろ貸付対象の拡大、条件の改善等々が行われて、普及していった経 過がありました。  13頁からは事業の見直しについてですが、その後、低金利時代もきて、民間の金融機関 が次第に住宅融資に取り組むようになってきました。平成6年には住宅ローン商品の自由 化もありました。こういう動きも経て、また低金利ですので、公的なローンを、昔の高い 金利で借りていた方が、民間の安い金利のものに借り換えて、繰上げ償還が順次行われて いくということで、次第に公的ローンの魅力が減り、あるいは需要も減ってきたというよ うなこともありました。  その間、会計検査院あるいは総務庁などからは、事務手続き面でいくつかの指摘も受け ましたが、特に制度を見直せというご指摘はあまりなかったわけですが、平成8年に小泉 厚生大臣が就任されて、グリーンピアと同様ですが、事業団のあり方を再検討せよという ことで、いろいろな議論が進んでいきました。  平成9年の「特殊法人等の整理合理化について」の閣議決定の中で、「被保険者向け融 資業務については、適切な措置を講じた上、撤退する」ことになりました。適切な措置と 言いますのは、この制度を期待しているユーザーがおり、あるいは、いろいろと関係者の 雇用の問題等々あり、直ちにというと問題が非常に多いということが、その四角の中に書 いてあります。  14頁ですが、撤退という方向が出ましたので、その後さまざまな形で検討が進められて いき、平成13年、やはり年金福祉事業団が解散して、新たに年金資金運用基金という特殊 法人が設立された際には、その法律の中で、「別に法律で定める日までの間、資金の貸付 等を行うこと」と。別に法律で定める日というのは、「次々回以降の財政再計算が行われ る際、事業の実施状況等を踏まえて検討」と。財政再計算というのは、5年に一度という ルールでしたので、次々回以降ということは、10年程度のリードタイムをおいて検討して、 やめる時期を考えていくべし、というのが法律に盛り込まれました。  平成13年ではそういう状況でしたが、その後、15頁ですが、平成13年暮れの閣議決定、 「特殊法人等整理合理化計画」の中で、「住宅融資を民間に委ねる等の観点から、平成17 年度までに廃止する」と。平成17年度という終期が設定されて、これを受けて今回の運用 の独立行政法人法の中で、融資業務は平成17年度末で廃止し、融資業務については、これ までに貸し付けた債権の管理回収という仕事がありますので、これについては、福祉医療 機構という独立行政法人のほうに業務を承継して行うという形に整理されたというのが経 過です。  参考資料ですが、193頁以降に住宅融資関係のものを載せています。こちらは住宅政策全 体の変遷、あるいは五箇年計画の推移、データとして住宅着工戸数、融資の件数、融資に 占める公的ローンと民間ローンの割合などで、最後の数頁は、いわゆるリスク管理債権と 言いますか、延滞がどれぐらいあるかというものについて公表している数字、また、比較 対照の意味で、他の公的金融機関との対比の形で資料を載せています。  以上で説明を終わらせていただきます。 ○森田座長 引き続いてこちらについてのご意見、ご発言をお願いいたします。 ○都村委員 特殊法人の年金福祉事業団が、年金住宅融資事業についてどういう人が利用 しているかを調べているのです。利用者の平均像というのを示しています。年齢が37.1歳、 家族数が3.3人、3,952万円の住宅取得費用に対して、この融資制度から1,008万円を借り 入れているということです。37.1歳というと、老齢年金の受給まで約30年弱あるわけです。 年金積立金を利用して30代にマイホームを持てるということは、やはり被保険者のウェル フェアを高めるという点で、私は大いに寄与してきたと思います。当時は民間の金融機関 の住宅資金を借り入れるということは、非常に困難であったわけですから、そこの穴をこ ういう公的資金でかなり埋めたという意味で、非常に歓迎すべき事業であったと思います。  資金計画の規模から言うと、先ほどご紹介のあったグリーンピア事業よりも、住宅融資 事業のほうが遥かに大きいわけです。住宅は生活の基盤でありますし、被保険者のウェル フェアの基礎になるものですから、年金住宅融資を利用することによって被保険者と家族 の福祉の増進のために、年金資金がかなり配分されたということであって、私は意義があ ったと思います。  しかし一般には、住宅貸付が果たしてきた個人や経済への影響はそれほど知られていな くて、専ら大規模年金保養基地の事業のほうが批判の対象になっているというのは、ちょ っとどうかなと思います。  私はこの事業を評価したいのですが、確かに民間部門がどんどん進出し、経済社会に大 きな変化があったので、そこのところはもっと適切な対応を考えるべきだったという点で は、グリーンピアと同じだと思うのです。過去のこの事業についての評価という意味は、 評価できるのではないかと思っております。 ○篠原委員 この年金住宅融資というのは、全体的に言えば、資金運用ではそれほど悪く はなかったのではないか。それと、質問したいのは概要の12頁で、債権の保全を図ってき たと言われているのですが、参考資料の205頁に不良債権が902億とある。これは住宅融 資の関係ですか。 ○泉管理課長 205頁に902億とございますが、住宅融資と、先ほど申し上げた年金福祉事 業団が行ってきた事業主への貸付け、分譲住宅や社宅など、昔からやってきたもの全体を ひっくるめてのリスク管理債権です。ですから、どちらかと言うと、400万人の個人に借り ていただいた部分では保証がむしろ働くので、個人の債務不履行があってもこういった形 になるのは少なく、むしろ貸した事業主の倒産というようなケースですとか、そういうも ののほうが比重としては大きいです。 ○篠原委員 後にいろいろな資料があるのですが、貸した金額に対する不良債権の割合と いうのは、他の公的機関のこういうものと比べると、比率的に言うと高かったのですか。 ○泉管理課長 206頁に、これをそのまま対比していいのかどうかということはあろうかと 思うのですが、リスク管理債権というものは何を捉えるというのは割と共通した考え方で できているかと思いますので、その数字を載せています。ただ、この数字だけ比較すると、 ほかの機関のほうが比率が高くなっている部分がありますが、それぞれ融資対象なり、方 式なりに違いがあると思いますので、単純に比較はできないのではないかと思いますが、 データとしてはこういう形になっております。 ○田島委員 融資制度自体が社会的に評価されているからこそ、いま批判されていないの だと思いますので、これは相当な期間にわたって社会的使命を果たしてきた制度だと思い ます。ただ、昨今、民間の金融機関も住宅ローンの取合いということで、非常に金利が低 下をし、むしろ、この融資を受けた方々が民間の金融機関に乗り換えるということで、借 り換えをするような事態に立ち至ったこの段階においては、もう使命を終えたので、この 制度を廃止するというだけのことではないか。だから、これについてそんなに細かく議論 する必要はないのではないかなという感想です。 ○篠原委員 確かに少子化社会となって、例えば子どもが一人ずつだったら、結婚すれば 両方の親から住宅をもらえる。そう言えば新たに建てるものは少ないという感じなのです。 ただ、10年以上前の統計資料ですが、日本の木造住宅というのは10年ちょっとで建て替え てしまうと。戦後どんどん質が上がったということもあるのかもしれませんが、今はかな り質が高いから、アメリカ型のように100年、200年と長期に使うのかなと。そういうもの であれば、確かに制度的には無くしてしまうことも考えられます。  ただ、ちょっと興味があるのは、低額所得者の部分は、この制度では必ずしもなくて、 ほかの制度でやればいいのかなという気もするので、制度としては役割は終わったなとい う気がします。将来、景気対策だとか、低額所得者に対する住宅というのは別に行われる のかなという気がしますので、これはやめてしまってもそんなに問題ないのかと思います。  ちょっとお伺いしたいのは、昔は民間金融機関の住宅融資金利と、ここの制度の金利の 差はありましたが、今はもうほとんど差がない、この低金利時代だと、制度の意識がなく なっていると思われます。これがまた上がってくれば、当然、民間とここの差が出てくる のではないか。過去はどんな状態だったのですか。 ○泉管理課長 資料に金利の推移や経緯を載せていないのであれですが、住宅金融公庫も そうですし、この年金資金もそうですが、おそらく、長期固定というところが、ユーザー にとってはどれだけ返せばいいかというのが、はっきりわかる、そういう意味での安心感 があるみたいです。それが以前は、民間ではなかなかそういうローンを組めなかった。あ るいはもっと雑駁な議論ですけれども、民間金融機関も個人営業ではなく、もっと別のほ うに力を入れていたというのが変わってきて、あと制度的な商品の自由化ということもあ り、どんどんこちらにシフトしてきたというのがあったかと思います。それと、非常に低 金利が長く続くという状態になったのとが軌を一にしてきたということで、この公的な制 度の優位性というのがだんだんなくなってきたのではないかと思います。 ○篠原委員 このような制度をやめるのであれば、制度として有効であったのかどうかと いう部分、こういう面でいいという、総括的な報告書をどこかで作る必要があるのではな いか。 ○泉管理課長 特に作ってはおりません。 ○山崎委員 正確なことはわかりませんが、たしかこういった融資というのは、共済組合 のほうがずいぶん緩やかであったような気がして、むしろ共済組合が先に走っていて、厚 生年金のほうが後を追ったのではないかと思いますが、この辺の事実を確認していただき たいと思います。  それから、今回、住宅融資はやめるわけですが、共済組合はどうなっているのかという ことも教えていただきたい。しかし、共済組合は事業主たる国と、自治体あるいは組合員 との間で合意があればいいということで、問題にする必要はないかもわかりませんが、国 民の間では官民の格差という中で、かつては挙がっていたことですから、共済は今後どの ような状況になっていくのかというのはちょっと気になります。 ○篠原委員 そういう意味では、昔、企業は結構住宅融資をしていました。おそらく現在 では、ほとんどやめてしまったのだと思いますが。 ○森田座長 いま田島委員からお話がありましたように、額が大きい割には、こちらのほ うはそれほど社会的には批判をされていないと言いますか、専らグリーンピアのほうにか なり注目されているような気がします。  いまのお話を伺っていても思いましたし、資料を拝見しても思ったのですが、ある意味、 歴史的に大きな使命を果たしたけれども、その必要性がなくなったときに、非常に縮小し てきていると。それがうまく適用できているかどうかわかりませんけれども、そういう傾 向が見られるのではないかというお話でしたが、私自身もそういう気がいたしました。  そうすると、次回の年金福祉施設事業のほうも一緒に併せて考えてみなければいけませ んが、それぞれ三者において、そうした性格の比較ということが必要になってくるのでは ないかという気がいたしました。そのとき気が付くのは、やはりこの住宅融資の場合には、 市場メカニズムと言いますか、それが競争の中で状況を変えてきて、非常に鮮明に現われ てきて、それに対する対応というのが、かなり効いてきたのではないかなという気がいた しました。逆に言うと、そうした市場のシグナルみたいなものが少ないところで、いろい ろと舵とりが難しかったということも言えるのではないかと思います。  それでは、前半のグリーンピアのほうも含めていかがでしょうか。これから作業を進め るに当たり、次回は「年金福祉施設事業」についてご説明いただき、ご議論いただきたい と思います。さらに、今回の分も含め、情報や資料というものが必要であるとか、この辺 についてこれは論点ではないかというご発言もいただければと思いますが、いかがでしょ うか。 ○山崎委員 参考資料の114頁に「事業関連法人の役員集」という表がありますが、役員 に限定し、しかも、注を見ると「厚生労働省(旧厚生省)課長相当職以上の経験者」につ いての調査なのですが、おそらく、世間から言うと役員以外、あるいは課長経験者以外の 者も含めて問題にするのではないかなという感じがいたします。ですから、それも含めて お出しになったほうがいいと思います。  それから、大規模年金保養基地が県に運営委託し、さらに県が財団法人に運営委託をし ているという部分がたくさんあるのですが、その場合の財団法人についても同じような調 べが必要ではないかという気がします。 ○森田座長 その辺については、資料のお願いはできますか。 ○泉管理課長 114頁のは、「公益法人概況調査」という定期的に取っている資料を取りま したので、こういう注書きにあるとおりのものだったのですが、いまご要望があったよう なものというのは、作業時間をいただければできないものではないと思います。  県の財団というのがあったのですが、おそらく、県の財団のほうは厚生労働省の出身者 というのは考えにくいかもしれませんが、逆に県の出身者がいるというケースはあるかと 思います。そういう者もというご趣旨であれば、いろいろと調べるお時間をいただければ。 ○都村委員 114頁の事業関連法人を見ますと、いろいろあるわけですけれども、やはりス タッフとしては、公的年金制度について経験があり、ある程度の専門的知識をもつものが 一定割合いないと、素人ばかりでは運営が大変なのではないでしょうか。厚生労働省出身 者が何パーセントというのは、こういう法人を設立するときに、必要な条件ではないかと 逆に思います。経験があり、しかもかなりの専門家が一定比率いないと、却って効率的な 運営ができないということが生じてくると思うのですが。 ○篠原委員 施設の運営主体は、前回の報告で民間という話があったのですが、財団とか がやると、官に近いと言ったら失礼なのですが、純粋の民間ではないような気がするので す。その辺の、実際の運営で、ある程度区分して資料が出てこないかなと。  というのは、赤字とか黒字という検討の資料として、いま大きくは民営化という方向に いっています。そういう意味で、JRなどはよくやるというか、いろいろなことをやりす ぎるのではないかなというのがあるのですが、いわゆる財団というのは民とは言えないと 思います。そこが運営していると、やはり効率化というのはあまり確保できなくて、必ず しも純粋の民でなくてもいいのですが、そういう仕組みができているところに運営をやっ ていたのかなと。やはり経営努力しているというのでしょうか。そういう仕組みとの関係 です。  ただ、株式会社でも第三セクターが大いに失敗をして、去年の7月の国会で片山総務大 臣が、民のいいところと官のいいところをとって第三セクターをつくったというのですが、 民の悪いところと官の悪いところが出てしまったと答弁されていました。やはり、中途半 端な運営主体だと、案外効率化や経営努力をしないので、運営上の問題が結構あるのでは ないかという気がするのです。もっとうまくやれば何とかいったのではないかという疑問 を持っています。その辺の資料は。 ○森田座長 その辺もお願いできますでしょうか。ただ現実の問題として、こうした形の 組織についてきちんと整理をして、性格付けをする、そしてどこまでカウントするかとい うのは、統計上なかなか大変なことだと思いますので、既存の分類であるとか、方式であ って、それで明らかになるようなデータがあればということなのか、さらに踏み込んでと いうのはなかなか難しいかなという気がいたします。  もう1つ私のほうからお願いをしますと、これは平成16年10月1日ですけれども、も し可能ならば、少し時系列的なデータも、どういう形で推移してきたかについても出して いただければと思います。ほかにいかがですか。 ○田島委員 ちょっと確認をさせていただきたいのですが、グリーンピアの事業運営を民 間に委託していたという、その民間というのは財団法人のことを意味しているのですか。 ○泉管理課長 ここで言う民間とは、財団法人、公益法人を含めて民間と呼んでいるとい う理解です。 ○田島委員 財団法人と公益法人以外の純粋の民間という委託先もあるのですか。 ○泉管理課長 前回の資料でちょっと不十分かもしれませんが、県が更に財団をつくり、 財団と別に株式会社を設立し、そこが現場の運営に当たっていたというケースもあります。 ただ、その株式会社は誰が出資し、どんな構成というのはさまざまですので、もし、その 辺りもということであれば、追加資料みたいなものも若干考えたいと思います。閣議決定 で民間にも委託と言っている民間というのは、要するに国なり地方公共団体でない、つま り公益法人も民間と考えての文言だと理解しています。 ○篠原委員 最近大磯に、簡保のほうか、こちらの年金施設か、運営をニューオータニか どこかに頼んだら結構黒字になったという話を聞いています。それなりのブランドと経営 努力をすると、結構黒字になるのかなという気がしたものですから、財団法人というより は、民間の運営とか、そういう部分もどういう状況か知りたいのです。 ○山崎委員 共済組合では、株式会社のホテルへ運営委託している場合がかなりあります。 ○篠原委員 恵比寿のサッポロビールが、ウェスティンというホテルの建物はもっていて、 運営はウェスティンがやっているのです。そういう意味では、専門のところが運営したほ うが結構うまくいくのではないかという気がします。 ○森田座長 その辺はいろいろとご議論のあるところだと思いますが、その辺についても 純然たる民間がどれぐらい入っているか、そうでない場合にはどういう形の民間と言われ ているものかについて、もう少し資料を出していただければと思います。ほかにはよろし いですか。  だいぶ残り時間も少なくなってまいりましたので、そろそろ今日のまとめに入りたいと 思います。本日、最初に検証検討事項についてご承認いただき、その後、大規模年金保養 基地事業と住宅融資事業についてご議論をしてきたわけですが、第1回のときに大臣から お話があったことでございますが、今回の検証会議の目的というのは、大臣の言い方をし ますと、潮目が変わったときになぜ政策が変わらなかったか、そこを検証してもらいたい というお話だったと理解しております。  そういう意味で言うと、一定の評価というものが前提になっているという気がいたしま す。その評価が正しかったかどうかも含め、ある時点である政策がつくられたとき、それ はどういう根拠によっていたのか。その時点で十分、さまざまな要素について考慮された いい政策であったのか。あるいは、そうだとしても、ある時点で潮目が変わったとき、何 故にうまく対応できなかったのか。できなかったと言うのか、いまの住宅融資事業がそう ですが、比較的うまく対応したと言えるのかもしれません。その辺について検証していく ということになっております。  その項目については、資料1にあるような事項を少しずつ押さえていくということにな ろうかと思います。今後、それぞれ3つについて資料を出していただき、それについてお 話を伺った後、これについてどういう形で検証を進めていくかが更に議論になるかと思い ます。一応、この会議のミッションそのものは、そういう前提になっているということは、 もう一度確認させていただきたいと思います。  したがって、次回は「年金福祉施設事業」についてお話をいただきたいと思います。そ れについてどういう形で議論をしていくかについては、また事務局とご相談の上、ご案内 をさし上げたいと思っております。  本日は大体そういう形で、特にご発言がなければ議論は尽きてきたと思いますので、こ れで終わります。どうもありがとうございました。 1 - -