ワーク・ライフ・バランスを向上させる
働く方々の健康確保とワーク・ライフ・バランスの推進のために、「勤務間インターバル制度」を導入しましょう。
日本の勤務間インターバルの先駆けとなった通信会社
導入事例

KDDI株式会社

情報通信業
  • ● 設 立: 1984年6月1日
  • ● 事業内容: 電気通信事業
  • ● 従業員数: 31,834名( 連結ベース、2016年3月31日現在)

KDDI株式会社 の勤務間インターバル制度

制度の開始時期
全社適用は2015年7月、部分的にはそれ以前から実施
インターバル時間
8時間(継続性のある業務や緊急性の高い業務、繁忙期の対応等については、上長判断による適用除外ができる)別途健康管理指標として、月のうち11日以上は11時間というラインを設定
対象範囲
インターバル規定は全非管理職、健康管理指標は管理職を含む全社員
規定根拠
インターバル規定は就業規則に明記、健康管理指標は安全衛生管理規程に明記

ご回答 - 総務・人事本部 人事部 給与グループリーダー 茂木達夫 様

1.勤務間インターバル制度の実施状況

…KDDIでの勤務間インターバル制度の概要を教えてください。

現在の制度は、2015年に、就業規則に最低8時間のインターバル時間を確保することを義務化するように規定するとともに、安全衛生管理規程の中に、11時間のインターバルを健康管理の指標として規定しています。8時間の勤務間インターバル制度においては、翌日の始業時刻に食い込んだ場合、所定労働時間はそのままで終業時刻を後ろにずらすこととなります。安全衛生管理規程については、義務ではないけれども、月の半分、11日以上11時間のインターバル時間が確保できていない人は、健康管理の対象となります。

…そうすると8時間については、完全に義務規定としているけれども、11時間というのはインターバルとしての履行義務ではないということですね。

ええ、月に11日以上11時間のインターバル時間を確保するのが望ましいという健康管理指標にしています。まずは、自身の健康状態について、セルフチェックをしてくださいという形をとっており、11時間を守りましょうといった規定は、規則上していません。なお、就業規則については全非管理職が対象ですが、安全衛生管理規程については、管理職を含む全従業員を対象としています。したがって、管理職には8時間の勤務間インターバル制度は適用されていませんが、11時間の健康管理指標は適用されており、非管理職には8時間の勤務間インターバル制度と11時間の健康管理指標の両方が適用されます。

…結構複雑な仕組みのように思われますが、運用上問題は生じていないのでしょうか。

現在ではスムーズに運用されているといえます。ただし、8時間の勤務間インターバル制度には、適用除外の規定があり、継続性のある業務や緊急性の高い業務、繁忙期の対応等については、上長判断による適用除外ができるようにしています。時間外労働を行う必要があるときは、社員は上長に対してシステムを用いて事前申請を行い、上長の承認を得ることとしています。そして、8時間の勤務間インターバル制度を考慮して、翌日の始業時刻を決めることとなりますが、翌日の業務を考えると、どうしてもインターバル時間の8時間を確保できない場合のみ、適用除外とすることとしています。ただし、二日連続の適用除外はできないようにするとともに、適用除外の対応をした翌日は、必ず健康配慮の措置( 勤務シフト変更による早帰りなど)を講ずるようにしています。これらの取扱いについては、就業規則上に明記されています。基本は上司としっかりコミュニケーションをとって頂き、その中で運用を図っていくということです。

…その前提となる時間管理はどのように行われているのでしょうか。

勤怠管理については、自己申告制をとっており、そのための参考データとして、パソコンのログを取っています。その他、今年の1月から本社ビルではゲートのログ( 通過時間)も表示できるようしています。このゲートのログと、パソコンのログオン、ログオフの時間を参考に、「昨日の仕事は何時から何時まででした」という形で自己申告してもらうようになっています。ただし、インターバル時間については、自己申告を待っていては管理できないので、日々の管理はパソコンのログにより確認しています。翌日の昼頃には前日のインターバル時間が何時間だったという形で表示され、本人及び上司は部下全員の時間を閲覧できるようになっています。

…インターバル時間が確保できないような場合、何らかのペナルティがあるのでしょうか。

8時間の勤務間インターバル制度については就業規則で定めている事項なので、インターバル時間のみに限定したペナルティ等は特に定めていません。服務規程全体の一部であるという扱いの中で処理しています。11時間の方については、安全衛生管理規程なので、もともとあった法令に準拠した基準、例えば45時間を超える時間外が何カ月続いたとか、そういった基準と合わせて運用しています。守れないケースが出てきた場合は、まず健康のセルフチェックを行ってもらい、それを産業医と人事部でチェックします。その上で、問題がありそうな場合は、面接を行い、産業医にも会ってもらいます。場合によっては、業務の負担軽減や配置転換等の措置につなげていくことになります。

2.勤務間インターバル制度の導入経緯

…勤務間インターバル制度導入に至る経緯を、特に全社に拡大する契機となった事項を中心に教えてください。

当社で勤務間インターバル制度を全社に拡大適用したのは2015年の7月のことですが、それ以前から部分的に実施していました。当社は2000年に3社( DDI 、KDD 、IDO )が合併して成立しましたが、通信設備の保守管理の部門に限って、今でいう勤務間インターバル制度(当時はそういった言葉を使用していませんでした)を導入していた会社があり、それが引き継がれました。さらに、2012年に裁量労働制を導入しましたが、その際に、裁量労働の方に限定した形で勤務間インターバル制度を導入しています。そして、2015年7月に、それまで裁量労働の方に限定していた勤務間インターバル制度を全社( 全非管理職)に適用することになりました。

2015年7月の適用範囲の拡大については、直接労働組合の方から、春闘要求において勤務間インターバル制度が提示され、人事部として検討を行いました。当初、経営側としては、まだ全社的な勤務間インターバル制度の導入は早いのではないかという意見もありました。人事部としても、裁量労働制の人には、自分で仕事をコントロールする権限があるため、勤務間インターバル制度も馴染みやすいと考えていましたが、一般社員にはそのような権限は与えられていないので、制度として勤務間インターバル制度を導入することは仕事の妨げになるのではないか、という懸念もありました。

…全社拡大に至るタイミングでは労組と人事の間でせめぎ合いがあったということですね。

ええ。しかし、社員の勤務実態を調べてみると、8時間のインターバル時間が確保できていない人はそれほど多くはないということもわかってきました。本当に忙しい人の休息時間をどう手当てするか、という視点で休憩時間の確保を考え直すのであれば、8時間の勤務間インターバル制度については、拡大適用すべきではないか、という方向に変わってきたのです。そして、導入に際しては、日本の法制度にはない規定なので、いきなりガチガチに定めて運用するのではなく、ゆるやかに導入していくようにしていきました。制度導入は2015年7月で、最初は声をかけるだけでしたが、10月にシステムが導入されたことによって、パソコンのログを活用できる環境が整ったので、社内に対応するよう告知していきました。そして、年明けごろから、違反者に警告のメールを出していくといったように、徐々に制度対応を進めていきました。

…人事部として勤務間インターバル制度導入の目的はどの辺りに置かれているのでしょう。

人事部としては、健康を意識して、より生産性の高い働き方を追求していきたい、という考え方をとっています。しかし、勤務間インターバル制度のみで、働き方が変わってくるとは考えていません。変形労働制等の様々な勤務制度と組み合わせる中で、健康とアウトプットを両面で考えて頂き、生産性を向上させて頂く点に、会社としては期待しているのです。

…貴社のような規模の大きな会社では、このような制度の改定には、それなりのコストが生じるのではないかと思われますが、その点についてはいかがですか。

2015年7月の拡大適用時にかかったコストとしては、システム改修費を挙げることができます。もともとパソコン上で操作できる勤怠管理のシステムはありましたが、そこにインターバル時間を表示し、時間計算ができるようにシステムを改修しました。その他のコストとしては、e-ラーニングを使用した、就業規則変更の学習教材を作成し、全社に展開していますが、そこにも多少のコストはかかっています。また、変則的な勤務を行っていた部門については、勤務間インターバル制度の導入に際してシフトの組み換えを行っているので、そういった点では、導入当初に人件費として見えないコストがかかっていたということができます。

3.勤務間インターバル制度の導入により期待される効果と課題

…導入前後の社員からの反応にはどのようなものがありましたか。

導入前に、非公式で社員に話をきいたところ、一部でそんな制度を導入されては困る、といった声もありましたが、いざ導入してみると、無理なく受け入れられています。

…制度は概ね守られているということでしょうか。

適用除外と単発の違反の発生件数は、毎月100人弱くらいで、その割合は概ね半々くらいとなっています。ただし、違反の人は、大概月1回の違反で、しかも常習者といえるような人はいないので、そういう意味では、概ね守られていると考えています。

…制度導入後の効果としては、どのようなことが挙げられますか。

会社として効果を実感したのは、安全衛生管理規程の方で、11時間のインターバル時間を考慮することにより、それまでの労働時間基準では見えてこなかったピンポイントでの過重労働を見出すことができるようになりました。幸い、産業医面談までいくような事例は今のところ生じていませんが、インターバル時間を意識したセルフチェックを行ってもらうことで、これまで見いだせていなかった健康リスクを回避することが可能になってきました。

…今後の課題は何だと思いますか。

今後については、就業規則、安全衛生管理規程のいずれも、現在の規定で十分であるかの検証が必要と認識しているところです。

4.勤務間インターバル制度の普及に向けて

…今後、インターバル制度をより普及させていくには、どのようなことが必要だと思われますか。

最低ラインを国の法制度としてきちんとした基準を定めて頂いた方が、より制度は普及していくのかもしれません。しかし、その一方で、当社では健康管理指標として、月の半分は11時間のインターバル時間を確保できているかという基準を設定していますが、そういった、自社に合わせた柔軟な運用が可能なのは、法制度として明確な基準がないが故ということもいえるので、そこはなかなか難しいところだと思います。