ワーク・ライフ・バランスを向上させる
働く方々の健康確保とワーク・ライフ・バランスの推進のために、「勤務間インターバル制度」を導入しましょう。
22時を超えると適用される「深夜勤務における翌日出社時間調整」
参考事例

本田技研工業株式会社

製造業
  • ● 設 立: 1948年9月
  • ● 事業内容: 二輪車、四輪車、汎用製品等の製造販売
  • ● 従業員数: 連結208,399名/単独22,399名(2016年12月31日現在)

本田技研工業株式会社 の勤務間インターバル制度

制度の開始時期
1970年代
インターバル時間
22時以降まで残業を行う場合、本社・営業で12時間。また、研究所では10時間、工場(製作所)では9時間30分~11時間30分と事業領域ごとに規定が異なる。
対象範囲
全組合員
規定根拠
労使協定で規定

ご回答 - 労政企画部 部長 影田 浩一郎 様 / 労政企画部 労政ブロック 主任 坪口 祐介 様

1.勤務間インターバル制度の実施状況

…貴社の勤務間インターバル制度の概要を教えてください。

当社における勤務間インターバル制度に該当する制度は、「深夜勤務における翌日出社時間調整」という名称で運用されており、勤務間インターバル制度という文言は使用していません。

この翌日出社時間調整ルールは、いつでも一定時間のインターバル時間を取りましょうというものではなく、一定の時刻、具体的には22時を超えて時間外勤務を行う場合に労働者の休息時間を確保しようというものです。そういう意味では、EUで導入されている勤務間インターバル制度とは異なり、突発的な事態への対応に焦点を当てたものと言えます。

なお、事業領域ごとに異なった形で運用しており、大きく「本社」「研究所」「工場( 製作所)」の3つに区分することができます。考え方自体は同じですが、インターバル時間に当たる部分については、各領域において時間数の設定が異なります。

本ルールの対象は全組合員であり、時間管理をしない管理職は適用外となっています。

また、このルールのほかに、社員の健康安全の観点から、月45時間以上時間外労働を行った社員( 特別条項を適用する組合員・管理職)を対象として問診票を提出させ、必要に応じて産業医の診察を受けさせるという取り組みも行っています。

…具体的には、先ほど挙げられた3つの区分でどのようなルールとなっているのでしょうか。

「本社」については、22時を超えて勤務を行った場合、翌日の出社時間は、22時を起点に、超えた時間を15分単位で遅らせることができるとともに、次の出社までの時間として、12時間を確保することとされています。また、標準労働時間は9:00〜18:00となっているため、12時間のインターバル時間をとった際、9:00以降の出社となっても9:00から出社時間までの時間は勤務したものとみなされます。

「研究所」については、「本社」と同様のルールとなっていますが、次の出社までの時間が10時間と設定されています。

「工場( 製作所)」については、例えば、平常勤務( 所定労働時間8: 10〜17: 00 )の社員が、22: 30を超えて勤務を行った場合、0: 29までの勤務であれば翌日の出社は10: 00 、0: 30以降2: 29までの勤務であれば翌日の出社は13: 00と設定されており、インターバル時間は9時間半から11時間半を確保することとされています。

このように事業領域に応じてインターバル時間が異なるのは、各事業場の仕事の特性や通勤事情を考慮にいれて時間設定を行っているからです。

…これらのルールの規定は、どのような形式で定めているのでしょうか。

本ルールは、労使協定において定めており、その内容は会社と労働組合との折衝事項ということになります。申し上げておきたいのは、このルールはまれに生じる長時間労働が避けられない事態、例えば設備トラブルやイベント準備などへの対応において、十分な休息時間を確保するための緊急避難的な規定であり、日常的にこのルールが適用される場面は少ないということです。

…インターバル時間の設定によって長時間労働を削減するというよりも、長時間労働が避けられない場合にのみ、インターバル時間を保証する規定となっているのですね。

そうです。総労働時間の短縮に関しては、これまで労使と交渉しながら一生懸命取り組んできており、本ルールを適用する事態は滅多に起こることでありません。通常の残業時間管理については、36協定を中心にルールを定めています。現状、36協定上の上限は月45時間となっていますが、運用上は月30時間に収めることとしています。仮にこれを超えることとなれば労働組合との折衝を行う必要が生じます。一般的な長時間労働対策としては、これらの制度の方が機能しているということです。

…本ルールに関わる時間管理は具体的にはどのように行われているのでしょうか。

実際の勤怠管理システムはIDカードによるタイムログで労働時間が自動計算される仕組みになっていて、仮にこのような働き方をした翌日、規定の時間より早く出勤してしまうとエラーが出るようになっています。

本ルールを適用するためには、個々の組合員毎に上長が労働組合に一報を入れ、組合からの了解を得た上で承認する仕組みとなっています。仮に事後申請となってしまう場合でも、労働組合と折衝を行い、労働組合の承認を求めることになっています。

また、当社の場合、フレックスタイム制が導入されていますが、例えば、研究所の組合員の場合、フレックスタイム制の可能労働時間を6:30〜21:00と設定しており、これを超える場合には、労働組合との折衝を行う必要があります。そのため、まずはそのフレックスタイムの設定時間の障壁があり、本ルールを適用する事態は、その障壁を超えて勤務する場合に限られます。したがって、通常の勤務形態で、本ルールを適用することは非常にまれであり、本ルールを適用しないようにすることがマネジメントとして求められています。

そういった事態はほとんどあり得ませんが、仮にこのルールを守れない場合、ルール上のみなし労働時間に加えて割り増し賃金を払う形をとっています。

なお、本ルールに関しては、どの事業領域においても例外規定は設けていません。

2.勤務間インターバル制度の導入経緯

…このルールは、いつ頃導入されたのでしょうか。

実は、「翌日出社時間調整ルール」が導入されたのは、おそらくは1970年代の初め頃のこととしかわかっていません。

…それはまた随分と歴史のある制度ですね。70年代というと、創業者の本田宗一郎氏が経営なさっていた時代ということですね。

はい。創業以来、当社の基本理念として「人間尊重」ということがあり、その理念を実現していくために、創業者自身が、「よく働き、よく遊べ」ということを言われていました。また、運営方針の中でも「理論とアイディアと時間を尊重すること」が掲げられていることもあって、労働時間の管理については随分以前から様々な取り組みを行ってきた実績があります。

それらの取り組みの歴史を紐解いていくと、1963年にはノー残業デーを導入しています。また、1965年には隔週での週休2日制を導入、1970年代には年次有給休暇カットゼロ運動を開始しています。これは、その年度の年次有給休暇は必ず年度内に消化しようという活動で、以来ずっと継続されています。結果として、当社の平均年次有給休暇取得日数は、毎年18〜19日( 新入社員を含む)で、年間の総労働時間は、かなり早い時期から1900時間台の前半となっています。

また、1972から1973年にかけて完全週休2日制を導入しています。そのような流れの中で「翌日出社時間調整ルール」も決められたと考えられます。正確な記録が残っていないので、いつから始まったのかはわかりませんが、わたしが入社した時点から、このルールは運用されていました。さらに1980年代にはフレックスタイム制を導入しています。

以上のような総労働時間の短縮の動きがある中で、各事業領域で独自のルールを造っていったという流れになっています。なお、先に示した時間の設定も、当初から変わらず今に至っています。

…長い歴史の中で、日本社会の中では非常に先駆的な取り組みをなさってこられているのですね。ところで、近年の働き方改革という点ではどのような取り組みをなさっているのでしょうか。

近年の取り組みということでは、マネジメント力を強化することに力を入れています。その強化策の例としては、本社領域では、課長職が担っていた日々の管理部分を主任クラスに権限委譲するといった職制の役割見直しに取り組んでいます。これにより、マネジメントスパンの適正化を図り、一人ひとりに対してきめ細かなマネジメントができる体制の構築を進めています。

また、研究所領域では、基本的にはフレックスタイムの自主管理下で働いているので、出退社の時間は従業員本人に委ねています。一方で、特に技術者はどうしても時間があれば設計の精度を上げていきたいといった専門職としての意識が高く、労働時間が長期化する傾向があるため、管理職と従業員がコミュニケーションをとりながら業務の進捗状況等を確認し、19時の段階で必要がなければ帰宅を促す方策を一昨年あたりから取り入れています。