障害者差別解消法 社会保険労務士の業務を行う事業者向けガイドライン 〜社会保険労務士の業務を行う事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する対応指針〜 平成27年11月 厚生労働大臣決定 はじめに  平成28年4月1日から「障害者差別解消法」が施行されます。  この法律は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項や、国の行政機関、地方公共団体等及び民間事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置などについて定めることによって、すべての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現につなげることを目的としています。  この対応指針は、「障害者差別解消法」の規定に基づき、社会保険労務士の業務を行う事業者が障害者に対し不当な差別的取扱いをしないこと、また必要かつ合理的な配慮を行うために必要な考え方などを記載しています。  日々の業務の参考にしていただき、障害者差別のない社会を目指しましょう。 目     次 第1 趣旨   (1)障害者差別解消法制定の経緯 ……………………………………… 1  (2)対象となる障害者 …………………………………………………… 2  (3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針 ………… 2  (4)社会保険労務士の業務を行う事業者への対応指針………………… 2 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方  (1)不当な差別的取扱い     @不当な差別的取扱いの基本的考え方 ……………………………… 4    A正当な理由の判断の視点 …………………………………………… 4  (2)合理的配慮    @合理的配慮の基本的な考え方 ……………………………………… 5    A過重な負担の基本的な考え方 ……………………………………… 6 第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例   (1)不当な差別的取扱いと考えられる例 ……………………………… 7  (2)合理的配慮と障害特性に応じた対応について …………………… 7 第4 事業者における相談体制の整備 ……………………………………… 9 第5 事業者における研修・啓発 …………………………………………… 9 第6 国の行政機関における相談窓口 ……………………………………… 9 第7 主務大臣による行政措置  …………………………………………… 10 おわりに ………………………………………………………………………… 10 p1 第1 趣旨 (1)障害者差別解消法制定の経緯 近年、障害者の権利擁護に向けた取組が国際的に進展し、平成18年に国連において、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進するための包括的かつ総合的な国際条約である障害者の権利に関する条約(以下「権利条約」という。)が採択されました。我が国は、平成19年に権利条約に署名し、以来、国内法の整備を始めとする取組を進めてきました。 権利条約は第2条において、「「障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。」と定義し、その禁止について、締約国にすべての適当な措置を求めています。 我が国においては、平成16年の障害者基本法(昭和45年法律第84号)の改正において、障害者に対する差別の禁止が基本的理念として明示され、さらに、平成23年の同法改正の際には、権利条約の趣旨を踏まえ、同法第2条第2号において、社会的障壁について、「障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものをいう。」と定義されるとともに、基本原則として、同法第4条第1項に、「何人も、障害者に対して、障害を理由として、差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない」こと、また、同条第2項に、「社会的障壁の除去は、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重でないときは、それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定されました。 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号。以下「法」という。)は、障害者基本法の差別の禁止の基本原則を具体化するものであり、すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害者差別の解消を推進することを目的として、平成25年6月に制定されました。我が国は、法の制定を含めた一連の障害者施策に係る取組の成果を踏まえ、平成26年1月に権利条約を締結しました。 法は、平成28年4月1日から施行されることになっています。 p2 (2)対象となる障害者   対象となる障害者・障害児(以下「障害者」という。)は、障害者基本法第2条第1号に規定する障害者、すなわち、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」です。 これは、障害者が日常生活又は社会生活において受ける制限は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(難病に起因する障害を含む。)のみに起因するものではなく、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるというモデル(いわゆる「社会モデル」)の考え方を踏まえているものです。 したがって、法が対象とする障害者は、いわゆる障害者手帳の所持者に限りません。なお、高次脳機能障害は精神障害に含まれています。 また、特に女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、さらに複合的に困難な状況に置かれている場合があること、障害児には、成人の障害者とは異なる支援の必要性があることに留意する必要があります。 (3)障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針  法第6条第1項の規定に基づき、「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」(平成27年2月24日閣議決定。以下「基本方針」という。)が策定されました。 基本方針は、障害を理由とする差別の解消の推進は、雇用、教育、医療、公共交通等、障害者の自立と社会参加に関わるあらゆる分野に関連し、各府省の所掌に横断的にまたがる施策であるため、政府として、施策の総合的かつ一体的な推進を図るとともに、行政機関間や分野間における取組のばらつきを防ぐため、施策の基本的な方向等を示したものです。 (4)社会保険労務士の業務を行う事業者への対応指針   法第11条第1項の規定に基づき、主務大臣は、基本方針に即して、事業者が法第8条に規定する事項に関し、適切に対応するために必要な指針(以下「対応指針」という。)を定めることとされています。   本指針は、上に述べた法の目的を達成するため、特に社会保険労務士の業務を行う事業者の対応指針を定めたものです。   本指針において定める措置については、「望まれます」と記載している内容等法的義務ではないものも含まれますが、法の目的を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟な対応を積極的に行うことが期待されるものです。 p3   本指針の対象となる事業者の範囲は、社会保険労務士法(昭和43年法律第89号)第2条及び第2条の2に規定する社会保険労務士の業務を行う事業者です。   注)事業者が事業主としての立場で労働者に対して行う障害を理由とする差別を解消するための措置については、法第13条により、障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号)の定めるところによることとされており、同法に基づき別途定められた「障害者差別禁止指針(※1)」及び「合理的配慮指針(※2)」を参照してください。    ※1 「障害者に対する差別の禁止に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針」(平成27年厚生労働省告示第116号)    ※2 「雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会若しくは待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するために事業主が講ずべき措置に関する指針」(平成27年厚生労働省告示第117号) p4 第2 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方 (1)不当な差別的取扱い   @不当な差別的取扱いの基本的考え方    法は、障害者に対して、正当な理由なく、障害を理由として、役務の提供を拒否する又は提供にあたって場所・時間帯などを制限する、障害者でない者に対しては付さない条件を付するなどにより、障害者の権利利益を侵害することを禁止しています。    なお、障害者の事実上の平等を促進し、又は達成するために必要な特別の措置は、不当な差別的取扱いではないことに留意する必要があります。    したがって、障害者を障害者でない者と比べて優遇する取扱い(いわゆる積極的改善措置)、法に規定された障害者に対する合理的配慮の提供による障害者でない者との異なる取扱いや、合理的配慮を提供するために必要な範囲で、プライバシーに配慮しつつ障害者に障害の状況等を確認することは、不当な差別的取扱いには当たりません。    不当な差別的取扱いとは、正当な理由なく、障害者を、問題となる事務・事業について本質的に関係する諸事情が同じ障害者でない者より不利に扱うことです。   A正当な理由の判断の視点    不当な差別的取扱いであるのかどうかの判断には、その取扱いを行う正当な理由の有無が重要となります。正当な理由に相当するのは、障害者に対して、障害を理由として、役務の提供を拒否するなどの取扱いが客観的に見て正当な目的の下に行われたものであり、その目的に照らしてやむを得ないと言える場合です。    正当な理由に相当するか否かについて、事業者は、個別の事案ごとに、障害者、事業者、第三者の権利利益(例:安全の確保、財産の保全、事業の目的・内容・機能の維持、損害発生の防止など)の観点に鑑み、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、事業者は、正当な理由があると判断した場合には、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。    なお、「客観的に判断する」とは、主観的な判断に委ねられるのではなく、その主張が客観的な事実によって裏付けられ、第三者の立場から見ても納得を得られるような「客観性」が必要とされるものです。    また、「正当な理由」を根拠に、不当な差別的取扱いを禁止する法の趣旨が形骸化されるべきではなく、抽象的に事故の危惧がある、危険が想定されるといった理由により役務の提供を行わないといったことは適切ではあり p5   ません。 (2)合理的配慮   @合理的配慮の基本的な考え方   <合理的配慮とは>    権利条約第2条において、合理的配慮は、「障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」と定義されています。    法は、権利条約における合理的配慮の定義を踏まえ、事業者に対し、その事業を行うに当たり、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮(以下「合理的配慮」という。)を行うことを求めています。    合理的配慮は、事業者の事業の目的・内容・機能に照らし、必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られ、障害者が障害者でない者との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであり、事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及びません。    合理的配慮は、障害の特性や社会的障壁の除去が求められる具体的場面や状況に応じて異なり、多様かつ個別性の高いものであり、当該障害者が現に置かれている状況を踏まえ、社会的障壁の除去のための手段及び方法について様々な要素を考慮し、代替措置の選択も含め、双方の建設的対話による相互理解を通じ、必要かつ合理的な範囲で柔軟に対応がなされるものです。合理的配慮の内容は、技術の進展、社会情勢の変化等に応じて変遷することにも留意すべきです。   <意思の表明>    意思の表明に当たっては、具体的場面において、社会的障壁の除去に関する配慮を必要としている状況にあることを、言語(手話を含む。)のほか、点字、拡大文字、筆談、実物の提示や身振りサイン等による合図、触覚による意思伝達など、障害者が他人とコミュニケーションを図る際に必要な手段(通訳を介するものを含む。)により伝えられます。    また、知的障害や精神障害(発達障害を含む。)等により本人からの意思の表明が困難な場合には、障害者からの意思の表明のみでなく、障害者の家 p6   族、支援者・介助者、法定代理人等、コミュニケーションを支援する者が本人を補佐して行う意思の表明も含まれます。    なお、意思の表明が困難な障害者が、家族等を伴っていないことなどにより、意思の表明がない場合であっても、当該障害者が社会的障壁の除去を必要としていることが明白であるときには、法の趣旨に鑑みれば、当該障害者に対して適切と思われる配慮を提供するために自主的に取り組むことが望まれます。   A過重な負担の基本的な考え方    過重な負担については、事業者において、具体的な検討をせずに過重な負担の意味を拡大解釈するなどして法の趣旨を損なうことなく、個別の事案ごとに、具体的場面や状況に応じて総合的・客観的に判断することが必要であり、過重な負担に当たると判断した場合、障害者にその理由を説明するものとし、理解を得るよう努めることが望まれます。 p7 第3 障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の例 (1)不当な差別的取扱いと考えられる例   社会保険労務士の業務を行う事業者がその役務を提供するに際して、次のような取扱いをすることは「不当な差別的取扱い」となるおそれがあります。   ここに記載する事例はあくまで例示であり、これに限られるものではありません。また、客観的にみて正当な理由が存在する場合(第2(1)A参照)は、不当な差別的取扱いに該当しない場合があることにご留意ください。  ○役務の提供を拒否すること   ・身体障害者補助犬の同伴を拒否すること、また、身体障害者補助犬の同伴を理由に役務の提供を拒否すること  ○役務の内容を制限すること(場所・時間帯などの制限)   ・正当な理由なく、対応を後回しにすること  ○役務の提供に際し条件を付すこと(障害のない者には付さない条件を付すこと)   ・家族や支援者・介助者の同伴を役務の提供の条件とすること (2)合理的配慮と障害特性に応じた対応について   事業者は、個々の場面において、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合には、合理的配慮を提供することが求められています。合理的配慮を提供する際には、障害者の性別、年齢、状態等に十分に配慮することが必要です。また、障害者と接する際には、それぞれの障害特性に応じた対応が求められます。   ここに記載する事例はあくまで例示であり、これに限られるものではありません。また、事業者に強制する性格のものではなく、ここに記載された事例であっても、事業者の事業規模等によっては過重な負担となる可能性があるため、事業者においては、法、基本方針及び本指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待されます。 p8 ■障害特性に応じた具体的対応例 自分のタイミングで移動したい(視覚障害)  全盲の視覚障害者Aさんは、労働相談のため社会保険労務士事務所を訪問する際、案内看板が見えず単独で行くことができませんでした。しかし、労働相談の予約を取る際に、事務所の入り口付近に職員を配置しておいてほしい旨伝えたところ、快く引き受けていただき、職員の方が事務所の外で待ってくれており、声をかけていただいたので、付き添いがいなくとも一人で通うことができました。 講演会等での配慮(聴覚障害)  聴覚障害者(2級)のBさんは、ある社会保険労務士事務所が開催する講演会に参加することとなりました。Bさんは補聴器を付けていましたが、講演会の事務局に聴覚障害があるため配慮してほしいと事前に伝えたところ、当日は、手話通訳者や要約筆記者に対応してもらえるよう配慮していただきました。 建物の段差が障壁に(肢体不自由)  車椅子を使用している身体障害者(1級)Cさんが、外出中、社会保険労務士事務所の建物に入ろうとすると大きな段差があり立ち往生してしまいました。事務所に協力をお願いしてみると、事務所のスタッフが段差を車椅子で乗り越える手伝いを申し出てくれました。介助のお陰で、無事に建物に入ることができました。 苦手なことに対しては、事前のサポート(発達障害@)  発達障害のDさんは文字の読み書きが苦手であり、様々な手続きの際、書類の記入欄を間違えたり、誤字を書いてしまったりして、何回も書き直さなければなりませんでした。そこで、Dさんの相談を受けている社会保険労務士事務所の職員が、「記入欄に鉛筆で丸をつけたり付箋を貼って示す」「書類のモデルを作成して示す」などを試してくれ、Dさんは書類作成を失敗する回数が少なくなりました。 相談対応での配慮(発達障害A)  発達障害のEさんは吃音症で、会話の際に単語の一部を何度も繰り返したり、つかえてすぐに返事ができないことがあります。本来は電話をかけることは苦手なのですが、職場の悩みについてどうしても相談することが必要になったので、社会保険労務士事務所に電話をかけました。  その際、相談を受けた社会保険労務士事務所の職員は、Eさんの吃音症に気づき、時間がかかっても話を急がせることなく、不快感を示すこともなく、話す内容を丁寧に聞いてくれました。  そして、Eさんは、いろいろな場面で時に言われることのある「性格に問題がある」「それでは仕事にならない」という誤解や無理解からくる言葉をかけられなかったので、安心して相談をすることができました。 p9 第4 事業者における相談体制の整備  障害者差別の解消を効果的に推進するには、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に的確に応じることが必要です。そのためには、法で定められた国や地方公共団体における相談及び紛争の防止等のための体制整備のみならず、障害者に役務の提供を行う事業者において、直接、障害者及びその家族その他の関係者からの相談等に応じるための体制の整備や職員の研修・啓発を行うことが重要です。  社会保険労務士の業務を行う事業者においても、より充実した相談体制の整備(対面のほか、電話・ファックス・電子メール等多様な相談方法を用意しておくこと)や相談窓口の分かりやすい周知をはじめ、日頃から、障害に関する理解や人権意識の向上・障害者の権利擁護に向けた職員の研修に積極的に取り組むことが重要です。  なお、実際の相談事例や対応については、相談者のプライバシーに配慮しつつ順次蓄積し、その後の合理的配慮の提供等に活かしていくことが望まれます。 第5 事業者における研修・啓発  障害者差別は、障害に関する知識・理解の不足、意識の偏りなどにより引き起こされることが大きいと考えられることから、障害の有無にかかわらず、相互に人格と個性を尊重する共生社会を目指すことの意義を職員が理解することが重要です。  また、こうした理念が真に理解されることが、障害者差別や、障害者が時に感じる大人の障害者に対する子ども扱い、障害者に対する命令的、威圧的、強制的な発言などの解消にもつながるものと考えられます。  このため、事業者においては、研修等を通じて、法の趣旨の普及を図るとともに、事業所の地域の取組のなかで近隣住民への理解を促していくことが重要です。  なお、障害者差別の理解には、障害者虐待防止に関する理解も極めて重要になってくることから、併せて研修を行うことが望まれます。 第6 国の行政機関における相談窓口  法第14条において、「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする」と規定されています。  相談に際しては、地域の自治体の様々な相談窓口(福祉事務所、児童相談所など)や各都道府県において組織される障害者差別解消地域協議会などもご活 p10 用ください。  なお、厚生労働省における社会保険労務士関係の担当窓口は、労働基準局監督課社会保険労務士係です。 第7 主務大臣による行政措置 事業者における障害者差別解消に向けた取組は、本指針を参考にして、各事業者により自主的に取組が行われることが期待されています。しかし、事業者による自主的な取組のみによっては、その適切な履行が確保されず、例えば、事業者が法に反した取扱いを繰り返し、自主的な改善を期待することが困難である場合など、特に必要があると認められるときは、主務大臣は、「事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる」と法第12条に規定されています。 おわりに  法の理念を実現していくには、国民一人ひとりの障害に対する理解と適切な配慮が不可欠であり、差別と解される事例についても、お互いの意思疎通不足や理解の不足に起因していると思われることも見受けられます。法に定められたから義務として行うという姿勢ではなく、事業者や障害者が歩み寄り理解を深めていくことが、差別解消の第一歩につながると考えられます。  本指針は、そうした事業者の取組に資するよう、今後も、より具体的な事例、特に好事例をお示しできるよう随時見直しなどに努めてまいります。  事業者のみなさまの本法に関するより深い理解とともに、障害者差別解消に向けた取組を積極的に進めていただくようお願いします。 p11 【参考ページ】 ■ 障害者差別解消法関係の経緯  平成 16年 6月 4日  障害者基本法改正              ※ 施策の基本的理念として差別の禁止を規定  平成 18年12月13日  第61回国連総会において障害者権利条約を採択  平成 19年 9月28日  日本による障害者権利条約への署名  平成 23年 8月 5日  障害者基本法改正            ※ 障害者権利条約の考え方を踏まえ、合理的配慮の概念を規定  平成 25年 4月26日 障害者差別解消法案閣議決定、国会提出       6月26日 障害者差別解消法 公布・一部施行  平成 26年 1月20日 障害者の権利に関する条約締結  平成 27年 2月24日 障害者差別解消法「基本方針」閣議決定  平成 28年 4月 1日   障害者差別解消法施行(予定) p12 【参考ページ】 ■ 障害者権利条約とは      障害者権利条約は、障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定めた条約です。   2006(平成18)年12月13日に国連総会において採択され、2008(平成20)年5月3日に発効しました。我が国は2007(平成19)年9月28日に条約に署名し、2014(平成26)年1月20日に批准書を寄託しました。また、同年2月19日に同条約は我が国について効力を発生しました。   この条約の主な内容としては、以下のとおりです。  (1)一般原則     障害者の尊厳、自律及び自立の尊重、無差別、社会への完全かつ効果的な参加及び包容等  (2)一般的義務     合理的配慮の実施を怠ることを含め、障害に基づくいかなる差別もなしに、すべての障害者のあらゆる人権及び基本的自由を完全に実現することを確保し、及び促進すること等  (3)障害者の権利実現のための措置     身体の自由、拷問の禁止、表現の自由等の自由権的権利及び教育・労働等の社会権的権利について締約国がとるべき措置等を規定。社会権的権利の実現については漸進的に達成することを許容  (4)条約の実施のための仕組み     条約の実施及び監視のための国内の枠組みの設置。障害者の権利に関する委員会における各締約国からの報告の検討 p13 【参考ページ】 ■ 本指針に関する障害者差別解消法の参照条文 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成25年法律第65号) (目的) 第1条 この法律は、障害者基本法の基本的な理念にのっとり、全ての障害者が、障害者でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項、行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより、障害を理由とする差別の解消を推進し、もって全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 第6条 政府は、障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針を定めなければならない。 2〜6 (略) (事業者における障害を理由とする差別の禁止) 第8条 事業者は、その事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は、その事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 (事業者のための対応指針) 第11条 主務大臣は、基本方針に即して、第8条に規定する事項に関し、事業者が適切に対応するために必要な指針を定めるものとする。 2 (略) (報告の徴収並びに助言、指導及び勧告) 第12条 主務大臣は、第8条の規定の施行に関し、特に必要があると認める時は、対応指針に定める事項について、当該事業者に対し、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができる。 p14 【参考ページ】 ■ 国の「基本方針」に定められた「対応指針」に関する規定 障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(平成27年2月24日閣議決定) W 事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項 2 対応指針 (1)対応指針の位置付け及び作成手続   主務大臣は、個別の場面における事業者の適切な対応・判断に資するための対応指針を作成するものとされている。作成に当たっては、障害者や事業者等を構成員に含む会議の開催、障害者団体や事業者団体等からのヒアリングなど、障害者その他の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、作成後は、対応指針を公表しなければならない。   なお、対応指針は、事業者の適切な判断に資するために作成されるものであり、盛り込まれる合理的配慮の具体例は、事業者に強制する性格のものではなく、また、それだけに限られるものではない。事業者においては、対応指針を踏まえ、具体的場面や状況に応じて柔軟に対応することが期待される。 (2)対応指針の記載事項   対応指針の記載事項としては、以下のものが考えられる。   @趣旨   A障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の基本的な考え方   B障害を理由とする不当な差別的取扱い及び合理的配慮の具体例   C事業者における相談体制の整備   D事業者における研修・啓発   E国の行政機関(主務大臣)における相談窓口 p15 【参考ページ】 ■ 身体障害者補助犬とは                                           「身体障害者補助犬」は、目や耳や手足に障害のある方の生活をお手伝いする、「盲導犬」・「聴導犬」・「介助犬」のことです。                                      身体障害者補助犬法に基づき認定された犬で、特別な訓練を受けています。 補助犬の種類  ○盲導犬   目の見えない人、見えにくい人が街なかを安全に歩けるようにサポートします。障害物を避けたり、立ち止まって曲がり角を教えたりします。ハーネス(胴輪)をつけています。  ○介助犬   手や足に障害のある人の日常の生活動作をサポートします。物を拾って渡したり、指示したものを持ってきたり、着脱衣の介助などを行います。“介助犬”と書かれた表示をつけています。  ○聴導犬   音が聞こえない、聞こえにくい人に、生活の中の必要な音を知らせます。玄関のチャイム音・FAX着信音・赤ちゃんの泣き声などを聞き分けて教えます。“聴導犬”と書かれた表示をつけています。  補助犬の同伴については、「身体障害者補助犬法」で、人が立ち入ることのできるさまざまな場所で受け入れるよう義務づけられています。「犬だから」という理由で受け入れを拒否しないでください。 補助犬の同伴を受け入れる義務がある場所 ・ 国や地方公共団体などが管理する公共施設・ 公共交通機関(電車、バス、タクシーなど) ・ 不特定かつ多数の人が利用する民間施設−商業施設、飲食店、病院、ホテルなど ・ 事務所(職場)−国や地方公共団体などの事務所−従業員50人以上の民間企業 補助犬の同伴を受け入れる努力をする必要がある場所 ・ 事務所(職場)−従業員50人未満の民間企業 ・ 民間住宅 補助犬の受け入れ施設の方へ ●補助犬は、ユーザーの指示に従い待機することができるので、特別な設備は必要ありません。 ●補助犬の同伴を受け入れる際に他のお客様から苦情がある場合は、「身体障害者補助犬法」で受け入れ義務があること、補助犬の行動や健康の管理はユーザーが責任をもって行っていることを説明し、理解を求めてください。 ●補助犬が通路をふさいだり、周りのにおいを嗅ぎ回ったり、その他、何か困った行動をしている場合は、そのことを補助犬ユーザーにはっきり伝えてください。 ●補助犬を同伴していても、補助犬ユーザーへの援助が必要な場合があります。補助犬ユーザーが困っている様子を見かけたら、まずは声をかけたり、筆談をしたりコミュニケーションをとってください。 p16 【参考ページ】 ■ 障害者に関するマーク 「H26年版 障害者白書」(内閣府)より 【障害者のための国際シンボルマーク】所管:公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 【身体障害者標識】所管:警察庁 【聴覚障害者標識】所管:警察庁 【盲人のための国際シンボルマーク】所管:社会福祉法人日本盲人福祉委員会 【耳マーク】所管:一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 【ほじょ犬マーク】所管:厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部 【オストメイトマーク】所管:公益社団法人日本オストミー協会 【ハート・プラスマーク】所管:特定非営利活動法人ハート・プラスの会 ■コミュニケーション支援用絵記号の例 「H26年版 障害者白書」(内閣府)より 【絵記号の例】  わたし あなた 感謝する 助ける 【絵記号による意思伝達の例】  朝起きたら、顔を洗って歯を磨いてください。 p17 【参考ページ】 ■ 障害特性や特性ごとの配慮事項等(※障害特性や特性ごとの配慮事項等が分かるホームページ例) 【内閣府】公共サービス窓口における配慮マニュアル ‐障害のある方に対する心の身だしなみ-  http://www8.cao.go.jp/shougai/manual.html 【厚生労働省】みんなのメンタルヘルス  http://www.mhlw.go.jp/kokoro/ 【政府広報オンライン】発達障害って何だろう?  http://www.gov-online.go.jp/featured/201104/ 【発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)】  http://www.rehab.go.jp/ddis/ 【青森県】障害を知るためのガイドブック  https://www.pref.aomori.lg.jp/soshiki/kenko/syofuku/kyouseishakai.html 【群馬県障害者社会参加推進協議会】障害のある方へのマナーブック  http://www.normanet.ne.jp/~gunmasin/pdf/syogai_mb.pdf 【千葉県】障害のある人に対する情報保障のためのガイドライン  https://www.pref.chiba.lg.jp/shoufuku/shougai-kurashi/jouhouhoshou/guideline.html 【東京都心身障害者福祉センター】改訂版「障害のある方への接遇マニュアル」  http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shinsho/tosho/hakkou/index.html 【八王子市】みんなちがってみんないい(障害のある人を理解するためのガイドブック)  http://www.city.hachioji.tokyo.jp/korei_shogai/36129/37422/index.html 【武蔵野市】心のバリアフリーハンドブック  http://www.city.musashino.lg.jp/shogai/shogaishafukushi_c/015620.html 【厚木市】この街でともに…〜障害のある人を理解するためのガイドブック〜  http://www.city.atsugi.kanagawa.jp/shiminbenri/iryofukusi/fukushi/shougai/guide/d014788.html 【富山県】障害のある人もない人も共に暮らしやすいまちづくりのためのアドバイス事例集  http://www.pref.toyama.jp/cms_sec/1209/kj00011743.html 【大阪府】障がい者が必要とする社会的障壁の除去のための配慮や工夫の事例について  http://www.pref.osaka.lg.jp/keikakusuishin/go-hai/ 【島根県・鳥取県】障がいを知り、共に生きる〜まず、知ることからはじめましょう〜  http://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/ippan/aisupport/supporter.data/H26panhu.pdf  http://www.pref.tottori.lg.jp/aisupport/ 【熊本県】障害のある人もない人も共に生きる熊本づくりのために(パンフレット)  http://www.pref.kumamoto.jp/kiji_3020.html 【宮崎県】障がい理解のためのハンドブック  http://www.pref.miyazaki.lg.jp/shogaifukushi/kenko/shogaisha/shougairikai.html 【沖縄県】こころのバリアフリー2(各種冊子)  http://www.pref.okinawa.lg.jp/site/kodomo/shogaifukushi/keikaku/jorei/bf2.html 【名古屋市】こんなときどうする?‐障害のある人を理解し、配慮のある接し方をするためのガイドブック‐  http://www.city.nagoya.jp/kurashi/category/22-2-0-0-0-0-0-0-0-0.html 【福岡市】ユニバーサルデザインに配慮した印刷物作成の手引き  http://www.city.fukuoka.lg.jp/shisei/kouhou-hodo/kankoubutsu-video/ud.html p18 【参考ページ】 ■ 障害者差別解消支援地域協議会とは  障害者差別解消法では、国及び地方公共団体の機関であって、医療、介護、教育その他の障害者の自立と社会参加に関連する分野の事務に従事する者(以下「関係機関」)は、社会生活を円滑に営む上での困難を有する障害者に対する支援が効果的かつ円滑に実施されるよう、関係機関により構成される障害者差別解消支援地域協議会(以下「地域協議会」)を組織できるとされています。(法第17条第1項) 1 地域協議会とは  <地域協議会の事務>   障害者差別に関する相談等に係る協議や地域における障害者差別を解消するための取組に関する提案に係る協議を行う    ※個別事案ごとに差別か否かの判断を行うことまでは想定されていない   ・事案の情報共有や構成機関への提言   ・地域における障害者差別解消の推進のための取組に関する協議・提案   ・事案の解決を後押しするための協議  など  <対象となる障害者差別に係る事案>   一般私人による事案は地域協議会における情報共有の対象としないが、環境の整備に関する相談、制度等の運用に関する相談については情報共有の対象とする 2 地域協議会の組織   都道府県、市町村、特別区など地方公共団体が主導して組織する    詳細については、内閣府ホームページに掲載されています。   http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html ■ 関連ホームページ  障害者権利条約(外務省)   http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken/index_shogaisha.html  障害者差別解消法(内閣府)  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html  障害者基本法(内閣府)  http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/wakugumi.html  厚生労働省  http://www.mhlw.go.jp/